プレーナ型アクチュエータ
【課題】 アクチュエータチップの向きを適正に認識することができ、実装作業を容易にかつ確実に行うことのできるプレーナ型アクチュエータを提供する。
【解決手段】 デバイス基板に設置された枠状の固定部2と、固定部2の内側にトーションバー3を介して可動自在に支持され駆動手段により駆動される可動部4と、固定部2に形成され少なくとも上下方向が認識できる認識部5と、を備えている。
【解決手段】 デバイス基板に設置された枠状の固定部2と、固定部2の内側にトーションバー3を介して可動自在に支持され駆動手段により駆動される可動部4と、固定部2に形成され少なくとも上下方向が認識できる認識部5と、を備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプレーナ型アクチュエータに係り、特に、アクチュエータチップを実装する際に、設置された位置を確実に認識することを可能としたプレーナ型アクチュエータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、枠状の固定部に平板状の可動部を揺動可能に軸支する構造のアクチュエータとして、例えば半導体製造技術を利用し、シリコン基板を異方性エッチングし、枠状の固定部と平板状の可動部と固定部に可動部を軸支するトーションバーとを一体に形成し、可動部に駆動コイルを設け、可動部の駆動コイルに静磁界を付与する例えば永久磁石のような静磁界発生手段を設け、通電により駆動コイルに発生する磁界と静磁界発生手段による静磁界との相互作用により発生するローレンツ力を利用して可動部を揺動させる電磁駆動タイプのプレーナ型アクチュエータがある。
そして、このようなアクチュエータは、例えば、可動部にミラーを設けることで光ビームを偏向走査する光スキャナなどに適用される。
【0003】
このようなプレーナ型アクチュエータにおいて、アクチュエータを構成するアクチュエータチップを実装する際には、例えば、トレー上に複数のアクチュエータチップを配列し、このアクチュエータチップを1つずつ取り出して、デバイス基板への接着や、配線などを行うようになっている。このとき、トレーから取出したアクチュエータチップの向きが、表裏逆方向に設置されたり、上下逆方向に設置されてしまうと、デバイス基板への接着や配線などを適正に行うことができなくなるという問題を有している。
【0004】
このような設置方向の誤りを防止するため、例えば、基板表面に電極を形成する工程において、電極の形成される基板表面の角部に、基板の上下・左右を識別する識別マークを電極の形成と並行して同時に形成するようにした技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−016926号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記特許文献1に記載の発明においては、逐次、基板の表面に識別マークを形成する必要があるため、余分な作業が必要であり、実装作業を容易に行うことができないという問題を有している。
【0007】
本発明は前記した点に鑑みてなされたものであり、アクチュエータチップの向きを適正に認識することができ、実装作業を容易にかつ確実に行うことのできるプレーナ型アクチュエータを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は前記目的を達成するために、請求項1の発明に係るプレーナ型アクチュエータは、枠状の固定部と、前記固定部の内側に支持梁を介して可動自在に支持され駆動手段により駆動される可動部と、を備えたプレーナ型アクチュエータであって、
前記固定部に、少なくとも前記固定部の上下方向が認識できるように認識部が形成されていることを特徴とする。
【0009】
請求項2に係る発明は、請求項1において、前記識別部は、前記固定部の表裏も認識できるように形成されていることを特徴とする。
【0010】
請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2において、前記認識部は、前記固定部の内側に形成されていることを特徴とする。
【0011】
請求項4に係る発明は、請求項1から請求項3のいずれか一項において、前記固定部に、前記デバイス基板に固定するための固定用片を設けたことを特徴とする。
【0012】
請求項5に係る発明は、請求項4において、前記固定用片は、少なくとも前記固定部の上下方向が識別できるように形成されており、前記固定用片は前記認識部として機能するものであることを特徴とする。
【0013】
請求項6に係る発明は、請求項5において、前記固定用片は、前記固定部の表裏も識別できるように形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明によれば、固定部に、少なくとも前記固定部の上下方向が認識できるように認識部を形成し、この認識部によりアクチュエータチップの少なくとも上下方向の識別を行い、アクチュエータチップを正しい位置に設置した状態で、配線や基板の接着などを実装を行うようにしているので、アクチュエータチップの設置位置を間違えることがなく、常に、正しい位置で確実に実装作業を行うことができる。
【0015】
請求項2に係る発明によれば、識別部を固定部の表裏も認識できるように形成しているので、上下方向のみならず、表裏の識別を行うことができ、アクチュエータチップを正しい位置に設置した状態で、配線や基板の接着などを実装を行うことができる。
【0016】
請求項3に係る発明によれば、認識部を固定部の内側に形成するようにしているので、固定部の外形を維持したまま表裏あるいは上下方向の識別を行うことができる。
【0017】
請求項4に係る発明によれば、固定部にデバイス基板に固定するための固定用片を設けるようにしているので、固定用片をデバイス基板に固定用ねじにより締め付け固定することにより、アクチュエータチップをデバイス基板に固定することができ、アクチュエータチップを固定するための接着剤が不要となり、実装工程の簡略化を図ることができる。
【0018】
請求項5に係る発明によれば、固定用片を少なくとも固定部の上下方向が識別できるように形成し、固定用片を認識部として機能させるようにしているので、固定部の内側に別個に認識部を形成することなく、固定用片のみにより、アクチュエータチップの少なくとも上下方向の識別を行うことができる。
【0019】
請求項6に係る発明によれば、固定用片を固定部の表裏も識別できるように形成しているので、上下方向のみならず、表裏の識別を行うことができ、アクチュエータチップを正しい位置に設置した状態で、配線や基板の接着などを実装を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係るプレーナ型アクチュエータの第1実施形態を示す概略図である。
【図2】本発明に係るプレーナ型アクチュエータの変形例を示す概略図である。
【図3】本発明に係るプレーナ型アクチュエータの変形例を示す概略図である。
【図4】本発明に係るプレーナ型アクチュエータの変形例を示す概略図である。
【図5】本発明に係るプレーナ型アクチュエータの変形例を示す概略図である。
【図6】本発明に係るプレーナ型アクチュエータの変形例を示す概略図である。
【図7】本発明に係るプレーナ型アクチュエータの変形例を示す概略図である。
【図8】本発明に係るプレーナ型アクチュエータの実装工程におけるトレー上のアクチュエータチップの配列状態を示す概略図である。
【図9】本発明に係るプレーナ型アクチュエータの実装工程における撮像カメラによる方向の識別状態を示す概略図である。
【図10】本発明に係るプレーナ型アクチュエータの第2実施形態を示す概略斜視図である。
【図11】本発明に係るプレーナ型アクチュエータの第2実施形態を示す概略図である。
【図12】本発明に係るプレーナ型アクチュエータの変形例を示す概略図である。
【図13】本発明に係るプレーナ型アクチュエータの変形例を示す概略図である。
【図14】本発明に係るプレーナ型アクチュエータの認識部を不要とした変形例を示す概略図である。
【図15】本発明に係るプレーナ型アクチュエータの認識部を不要とした変形例を示す概略図である。
【図16】本発明に係るプレーナ型アクチュエータの認識部を不要とした変形例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0022】
図1は本発明に係るプレーナ型アクチュエータの実施形態を示す概略図である。
【0023】
図1に示すように、本実施形態のプレーナ型アクチュエータ1は、図示しないデバイス基板上に設置された枠状の固定部2を備えている。この固定部2の内側には、支持梁としてのトーションバー3を介して枠状の可動部4が揺動自在に支持されており、これら固定部2、可動部4およびトーションバー3は、一体的に形成されている。
【0024】
また、固定部2の周囲には、可動部4を挟んで互いに反対磁極を対向させて配置される二対の静磁界発生部材(図示せず)が配置されている。なお、静磁界発生部材は、永久磁石でも電磁石でもよい。
【0025】
また、本実施形態においては、固定部2の内側の1つの角部(本実施形態においては、図1において左上角部)には、この角部分を斜めに突出するように形成してなる認識部5が形成されており、この認識部5は、本実施形態においては、表裏非対称および上下非対称となるように形成されている。この認識部5としては、表裏非対称および上下非対称となり、かつ、可動部の動作の妨げとならない位置であれば、いずれの位置に形成するようにしてもよい。また、固定部2の内側から突出するようにしてもよいし、固定部2の内側辺を切欠いて形成するようにしてもよい。
【0026】
例えば、図2に示すように、固定部2の内側の1つの角部に四角形状に突出する認識部5を形成するようにしてもよい。また、図3に示すように、固定部2の左上角部に図1に示すような斜めに形成してなる認識部5を形成するとともに、この対角に位置する角部(図3において、右下角部)に四角形状に突出する認識部5を形成するようにしてもよい。さらに、図4に示すように、左上角部に斜めに形成された認識部5、右下角部に四角形状に突出する認識部5、右上角部に弧状に形成された認識部5というようにすべての角部の形状が異なるように、認識部5を形成するようにしてもよい。なお、認識部5としては、画像処理でエッジを抽出することができる形状であれば、いずれの形状を用いるようにしてもよい。
【0027】
また、可動部4にミラーが付くタイプ(例えば、可動部4の裏面のみにミラーをつけるタイプ)では、撮像カメラで反射光強度の高低により表裏を判別できるため、左右は非対称ではなく、上下のみを非対称とし、上下方向の認識ができるように認識部5を形成するようにしてもよい。例えば、図5に示すように、固定部2の左右の角部(本実施形態においては、図5において左右上角部)に、この角部分を斜めに突出するように形成してなる認識部5をそれぞれ形成するようにしてもよい。また、図6に示すように、固定部2の左右の角部に四角形状に突出する認識部5をそれぞれ形成するようにしてもよいし、さらに、図7に示すように、固定部2の左右の角部に弧状に形成された認識部5をそれぞれ形成するようにしてもよい。
【0028】
また、本実施形態においては、固定部2の上端縁部分および下端縁部分には、配線を行うための複数の金属パッド6が形成されている。
【0029】
次に、アクチュエータの実装工程について説明する。
【0030】
まず、図8に示すように、所定のトレー7に複数のアクチュエータチップ8を配列する。このアクチュエータチップ8が配列されたトレー7は、図示しないベルトコンベアにより所定の実装位置に搬送される。
【0031】
そして、トレー7に載置されたアクチュエータチップ8を1つずつピックアップし、所定の実装位置に設置される。その後、図9に示すように、撮像カメラ9を用いてアクチュエータチップ8を撮影し、この撮影画像を処理して画像認識することにより、認識部5の位置を識別するようになっている。例えば、図1に示すアクチュエータの場合、左上角部に認識部5が位置している場合は、アクチュエータチップ8が正常位置と判断する。一方、右上角部に認識部5が位置している場合は、アクチュエータチップ8の表面と裏面とが反転していると判断し、左下角部に認識部5が位置している場合は、アクチュエータチップ8の上下位置が反転していると判断するものである。
【0032】
そして、アクチュエータチップ8の位置が正常位置でないと判断した場合には、アクチュエータチップ8の位置を正常な位置に揃える。その後、アクチュエータチップ8をデバイス基板に接着するとともに、このデバイス基板の端子パッド(図示せず)と金属パッド6とを、例えば、ボンディングなどの手段により配線するといった実装が行われる。
【0033】
次に、本実施形態のプレーナ型アクチュエータの動作について簡単に説明する。
【0034】
このプレーナ型アクチュエータ1の駆動原理は、例えば、特許第2722314号公報等で詳述されているので、以下、光スキャナの場合を例として簡単に説明する。
【0035】
可動部4の駆動コイルに電流を流すと磁界が発生し、この磁界と静磁界発生手段による静磁界との相互作用によりローレンツ力が発生し、トーションバーの軸方向と平行な可動部4の対辺部分に互いに逆方向の回転力が発生し、この回転力とトーションバーの復元力とが釣合う位置まで可動部4が回動される。
【0036】
そして、駆動コイルに直流電流を流すことにより、駆動電流量に応じた回動位置で可動部4を停止させることで、反射ミラーにより光ビームを所望の方向に偏向することが可能となる。
【0037】
一方、駆動コイルに交流電流を流すことにより、可動部4が揺動し、反射ミラーにより光ビームを偏向走査できる。可動部4を回動させるための回転力は、駆動コイルに流す駆動電流値に比例するので、駆動コイルに供給する駆動電流値を制御することで、可動部4の振れ角(光ビームの偏向角度)を制御することができる。なお、本実施形態においては、光スキャナの場合を例として作用を説明したが、本発明は光スキャナ以外にも適用できるものである。
【0038】
以上述べたように、本実施形態においては、固定部2に認識部5を形成し、この認識部5を撮像カメラ9により撮影し、撮影された画像からアクチュエータチップ8の表裏および上下の識別を行い、アクチュエータチップ8を正しい位置に設置した状態で、配線や基板の接着などを実装を行うようにしているので、アクチュエータチップ8の設置位置を間違えることがなく、常に、正しい位置で確実に実装作業を行うことができる。また、認識部5を固定部2の内側から突出するように形成することにより、認識部5も金属パッド6の形成スペースとして利用することが可能となり、金属パッド6の配置の自由度を増加させることができる。また、認識部5を形成することにより、アクチュエータチップ8の向きを揃えるのが容易となるため、実装作業のみならず、出荷時の外観検査の効率化などを図ることができる。
【0039】
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
【0040】
本実施形態においては、図10および図11に示すように、固定部2の外側対角線上に、固定用片10を形成するようにしている。この固定用片10は、固定部2の外側縁から四角形状に突出した形状に形成されており、この固定用片10の中央部には、固定用ねじ11が挿通されるねじ穴12が形成されている。
【0041】
この固定用片10の形状は、固定用ねじ11によりデバイス基板に固定することができる形状であれば、いずれの形状であってもよい。例えば、図12に示すように、ほぼL字状に突出形成され、内側の凹部が固定用ねじ11が挿通されるねじ溝として機能するようにしてもよいし、図13に示すように、固定部2の外側四隅に4つの固定用片10を形成するようにしてもよい。また、図14に示すように、一方の固定用片10を四角形状に形成するとともに、他方の固定用片10をL字状に突出するように形成するようにしてもよい。この場合には、左右の固定用片10の形状が異なることから、固定用片10が表裏非対称および上下非対称となるため、固定用片10を認識部5として機能させることが可能となる。そのため、この場合には、固定部2の内側の認識部5は不要となる。さらに、このような固定用片10を認識部5として機能させる他の例として、例えば、図15に示すように、一方の固定用片10を四角形状に形成するとともに、他方の固定用片10を2本の突出片から形成するようにしてもよい。また、図16に示すように、固定部2の一側に2つの固定用片10を形成するとともに、他側に1つの固定用片10を形成するようにしてもよい。なお、ねじ穴12は、丸穴などの四角穴以外の形状でもよい。
【0042】
したがって、本実施形態においては、固定用片10をデバイス基板に固定用ねじ11により締め付け固定することにより、アクチュエータチップ8をデバイス基板に固定することができるので、アクチュエータチップ8を固定するための接着剤が不要となり、実装工程の簡略化を図ることができる。また、固定用片10を表裏非対称および上下非対称に形成し、固定用片10を認識部5として機能させることにより、固定部2の内側に別個に認識部5を形成することなく、固定用片10のみにより、アクチュエータチップ8の表裏および上下の識別を行うことができる。
【0043】
なお、前記各実施形態においては、1次元のアクチュエータに適用した場合について説明したが、2次元のアクチュエータについて適用するようにしてもよい。
【0044】
また、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0045】
1 プレーナ型アクチュエータ
2 固定部
3 トーションバー
4 可動部
5 認識部
6 金属パッド
7 トレー
8 アクチュエータチップ
9 撮像カメラ
10 固定用片
11 固定用ねじ
【技術分野】
【0001】
本発明はプレーナ型アクチュエータに係り、特に、アクチュエータチップを実装する際に、設置された位置を確実に認識することを可能としたプレーナ型アクチュエータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、枠状の固定部に平板状の可動部を揺動可能に軸支する構造のアクチュエータとして、例えば半導体製造技術を利用し、シリコン基板を異方性エッチングし、枠状の固定部と平板状の可動部と固定部に可動部を軸支するトーションバーとを一体に形成し、可動部に駆動コイルを設け、可動部の駆動コイルに静磁界を付与する例えば永久磁石のような静磁界発生手段を設け、通電により駆動コイルに発生する磁界と静磁界発生手段による静磁界との相互作用により発生するローレンツ力を利用して可動部を揺動させる電磁駆動タイプのプレーナ型アクチュエータがある。
そして、このようなアクチュエータは、例えば、可動部にミラーを設けることで光ビームを偏向走査する光スキャナなどに適用される。
【0003】
このようなプレーナ型アクチュエータにおいて、アクチュエータを構成するアクチュエータチップを実装する際には、例えば、トレー上に複数のアクチュエータチップを配列し、このアクチュエータチップを1つずつ取り出して、デバイス基板への接着や、配線などを行うようになっている。このとき、トレーから取出したアクチュエータチップの向きが、表裏逆方向に設置されたり、上下逆方向に設置されてしまうと、デバイス基板への接着や配線などを適正に行うことができなくなるという問題を有している。
【0004】
このような設置方向の誤りを防止するため、例えば、基板表面に電極を形成する工程において、電極の形成される基板表面の角部に、基板の上下・左右を識別する識別マークを電極の形成と並行して同時に形成するようにした技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−016926号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記特許文献1に記載の発明においては、逐次、基板の表面に識別マークを形成する必要があるため、余分な作業が必要であり、実装作業を容易に行うことができないという問題を有している。
【0007】
本発明は前記した点に鑑みてなされたものであり、アクチュエータチップの向きを適正に認識することができ、実装作業を容易にかつ確実に行うことのできるプレーナ型アクチュエータを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は前記目的を達成するために、請求項1の発明に係るプレーナ型アクチュエータは、枠状の固定部と、前記固定部の内側に支持梁を介して可動自在に支持され駆動手段により駆動される可動部と、を備えたプレーナ型アクチュエータであって、
前記固定部に、少なくとも前記固定部の上下方向が認識できるように認識部が形成されていることを特徴とする。
【0009】
請求項2に係る発明は、請求項1において、前記識別部は、前記固定部の表裏も認識できるように形成されていることを特徴とする。
【0010】
請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2において、前記認識部は、前記固定部の内側に形成されていることを特徴とする。
【0011】
請求項4に係る発明は、請求項1から請求項3のいずれか一項において、前記固定部に、前記デバイス基板に固定するための固定用片を設けたことを特徴とする。
【0012】
請求項5に係る発明は、請求項4において、前記固定用片は、少なくとも前記固定部の上下方向が識別できるように形成されており、前記固定用片は前記認識部として機能するものであることを特徴とする。
【0013】
請求項6に係る発明は、請求項5において、前記固定用片は、前記固定部の表裏も識別できるように形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明によれば、固定部に、少なくとも前記固定部の上下方向が認識できるように認識部を形成し、この認識部によりアクチュエータチップの少なくとも上下方向の識別を行い、アクチュエータチップを正しい位置に設置した状態で、配線や基板の接着などを実装を行うようにしているので、アクチュエータチップの設置位置を間違えることがなく、常に、正しい位置で確実に実装作業を行うことができる。
【0015】
請求項2に係る発明によれば、識別部を固定部の表裏も認識できるように形成しているので、上下方向のみならず、表裏の識別を行うことができ、アクチュエータチップを正しい位置に設置した状態で、配線や基板の接着などを実装を行うことができる。
【0016】
請求項3に係る発明によれば、認識部を固定部の内側に形成するようにしているので、固定部の外形を維持したまま表裏あるいは上下方向の識別を行うことができる。
【0017】
請求項4に係る発明によれば、固定部にデバイス基板に固定するための固定用片を設けるようにしているので、固定用片をデバイス基板に固定用ねじにより締め付け固定することにより、アクチュエータチップをデバイス基板に固定することができ、アクチュエータチップを固定するための接着剤が不要となり、実装工程の簡略化を図ることができる。
【0018】
請求項5に係る発明によれば、固定用片を少なくとも固定部の上下方向が識別できるように形成し、固定用片を認識部として機能させるようにしているので、固定部の内側に別個に認識部を形成することなく、固定用片のみにより、アクチュエータチップの少なくとも上下方向の識別を行うことができる。
【0019】
請求項6に係る発明によれば、固定用片を固定部の表裏も識別できるように形成しているので、上下方向のみならず、表裏の識別を行うことができ、アクチュエータチップを正しい位置に設置した状態で、配線や基板の接着などを実装を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係るプレーナ型アクチュエータの第1実施形態を示す概略図である。
【図2】本発明に係るプレーナ型アクチュエータの変形例を示す概略図である。
【図3】本発明に係るプレーナ型アクチュエータの変形例を示す概略図である。
【図4】本発明に係るプレーナ型アクチュエータの変形例を示す概略図である。
【図5】本発明に係るプレーナ型アクチュエータの変形例を示す概略図である。
【図6】本発明に係るプレーナ型アクチュエータの変形例を示す概略図である。
【図7】本発明に係るプレーナ型アクチュエータの変形例を示す概略図である。
【図8】本発明に係るプレーナ型アクチュエータの実装工程におけるトレー上のアクチュエータチップの配列状態を示す概略図である。
【図9】本発明に係るプレーナ型アクチュエータの実装工程における撮像カメラによる方向の識別状態を示す概略図である。
【図10】本発明に係るプレーナ型アクチュエータの第2実施形態を示す概略斜視図である。
【図11】本発明に係るプレーナ型アクチュエータの第2実施形態を示す概略図である。
【図12】本発明に係るプレーナ型アクチュエータの変形例を示す概略図である。
【図13】本発明に係るプレーナ型アクチュエータの変形例を示す概略図である。
【図14】本発明に係るプレーナ型アクチュエータの認識部を不要とした変形例を示す概略図である。
【図15】本発明に係るプレーナ型アクチュエータの認識部を不要とした変形例を示す概略図である。
【図16】本発明に係るプレーナ型アクチュエータの認識部を不要とした変形例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0022】
図1は本発明に係るプレーナ型アクチュエータの実施形態を示す概略図である。
【0023】
図1に示すように、本実施形態のプレーナ型アクチュエータ1は、図示しないデバイス基板上に設置された枠状の固定部2を備えている。この固定部2の内側には、支持梁としてのトーションバー3を介して枠状の可動部4が揺動自在に支持されており、これら固定部2、可動部4およびトーションバー3は、一体的に形成されている。
【0024】
また、固定部2の周囲には、可動部4を挟んで互いに反対磁極を対向させて配置される二対の静磁界発生部材(図示せず)が配置されている。なお、静磁界発生部材は、永久磁石でも電磁石でもよい。
【0025】
また、本実施形態においては、固定部2の内側の1つの角部(本実施形態においては、図1において左上角部)には、この角部分を斜めに突出するように形成してなる認識部5が形成されており、この認識部5は、本実施形態においては、表裏非対称および上下非対称となるように形成されている。この認識部5としては、表裏非対称および上下非対称となり、かつ、可動部の動作の妨げとならない位置であれば、いずれの位置に形成するようにしてもよい。また、固定部2の内側から突出するようにしてもよいし、固定部2の内側辺を切欠いて形成するようにしてもよい。
【0026】
例えば、図2に示すように、固定部2の内側の1つの角部に四角形状に突出する認識部5を形成するようにしてもよい。また、図3に示すように、固定部2の左上角部に図1に示すような斜めに形成してなる認識部5を形成するとともに、この対角に位置する角部(図3において、右下角部)に四角形状に突出する認識部5を形成するようにしてもよい。さらに、図4に示すように、左上角部に斜めに形成された認識部5、右下角部に四角形状に突出する認識部5、右上角部に弧状に形成された認識部5というようにすべての角部の形状が異なるように、認識部5を形成するようにしてもよい。なお、認識部5としては、画像処理でエッジを抽出することができる形状であれば、いずれの形状を用いるようにしてもよい。
【0027】
また、可動部4にミラーが付くタイプ(例えば、可動部4の裏面のみにミラーをつけるタイプ)では、撮像カメラで反射光強度の高低により表裏を判別できるため、左右は非対称ではなく、上下のみを非対称とし、上下方向の認識ができるように認識部5を形成するようにしてもよい。例えば、図5に示すように、固定部2の左右の角部(本実施形態においては、図5において左右上角部)に、この角部分を斜めに突出するように形成してなる認識部5をそれぞれ形成するようにしてもよい。また、図6に示すように、固定部2の左右の角部に四角形状に突出する認識部5をそれぞれ形成するようにしてもよいし、さらに、図7に示すように、固定部2の左右の角部に弧状に形成された認識部5をそれぞれ形成するようにしてもよい。
【0028】
また、本実施形態においては、固定部2の上端縁部分および下端縁部分には、配線を行うための複数の金属パッド6が形成されている。
【0029】
次に、アクチュエータの実装工程について説明する。
【0030】
まず、図8に示すように、所定のトレー7に複数のアクチュエータチップ8を配列する。このアクチュエータチップ8が配列されたトレー7は、図示しないベルトコンベアにより所定の実装位置に搬送される。
【0031】
そして、トレー7に載置されたアクチュエータチップ8を1つずつピックアップし、所定の実装位置に設置される。その後、図9に示すように、撮像カメラ9を用いてアクチュエータチップ8を撮影し、この撮影画像を処理して画像認識することにより、認識部5の位置を識別するようになっている。例えば、図1に示すアクチュエータの場合、左上角部に認識部5が位置している場合は、アクチュエータチップ8が正常位置と判断する。一方、右上角部に認識部5が位置している場合は、アクチュエータチップ8の表面と裏面とが反転していると判断し、左下角部に認識部5が位置している場合は、アクチュエータチップ8の上下位置が反転していると判断するものである。
【0032】
そして、アクチュエータチップ8の位置が正常位置でないと判断した場合には、アクチュエータチップ8の位置を正常な位置に揃える。その後、アクチュエータチップ8をデバイス基板に接着するとともに、このデバイス基板の端子パッド(図示せず)と金属パッド6とを、例えば、ボンディングなどの手段により配線するといった実装が行われる。
【0033】
次に、本実施形態のプレーナ型アクチュエータの動作について簡単に説明する。
【0034】
このプレーナ型アクチュエータ1の駆動原理は、例えば、特許第2722314号公報等で詳述されているので、以下、光スキャナの場合を例として簡単に説明する。
【0035】
可動部4の駆動コイルに電流を流すと磁界が発生し、この磁界と静磁界発生手段による静磁界との相互作用によりローレンツ力が発生し、トーションバーの軸方向と平行な可動部4の対辺部分に互いに逆方向の回転力が発生し、この回転力とトーションバーの復元力とが釣合う位置まで可動部4が回動される。
【0036】
そして、駆動コイルに直流電流を流すことにより、駆動電流量に応じた回動位置で可動部4を停止させることで、反射ミラーにより光ビームを所望の方向に偏向することが可能となる。
【0037】
一方、駆動コイルに交流電流を流すことにより、可動部4が揺動し、反射ミラーにより光ビームを偏向走査できる。可動部4を回動させるための回転力は、駆動コイルに流す駆動電流値に比例するので、駆動コイルに供給する駆動電流値を制御することで、可動部4の振れ角(光ビームの偏向角度)を制御することができる。なお、本実施形態においては、光スキャナの場合を例として作用を説明したが、本発明は光スキャナ以外にも適用できるものである。
【0038】
以上述べたように、本実施形態においては、固定部2に認識部5を形成し、この認識部5を撮像カメラ9により撮影し、撮影された画像からアクチュエータチップ8の表裏および上下の識別を行い、アクチュエータチップ8を正しい位置に設置した状態で、配線や基板の接着などを実装を行うようにしているので、アクチュエータチップ8の設置位置を間違えることがなく、常に、正しい位置で確実に実装作業を行うことができる。また、認識部5を固定部2の内側から突出するように形成することにより、認識部5も金属パッド6の形成スペースとして利用することが可能となり、金属パッド6の配置の自由度を増加させることができる。また、認識部5を形成することにより、アクチュエータチップ8の向きを揃えるのが容易となるため、実装作業のみならず、出荷時の外観検査の効率化などを図ることができる。
【0039】
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
【0040】
本実施形態においては、図10および図11に示すように、固定部2の外側対角線上に、固定用片10を形成するようにしている。この固定用片10は、固定部2の外側縁から四角形状に突出した形状に形成されており、この固定用片10の中央部には、固定用ねじ11が挿通されるねじ穴12が形成されている。
【0041】
この固定用片10の形状は、固定用ねじ11によりデバイス基板に固定することができる形状であれば、いずれの形状であってもよい。例えば、図12に示すように、ほぼL字状に突出形成され、内側の凹部が固定用ねじ11が挿通されるねじ溝として機能するようにしてもよいし、図13に示すように、固定部2の外側四隅に4つの固定用片10を形成するようにしてもよい。また、図14に示すように、一方の固定用片10を四角形状に形成するとともに、他方の固定用片10をL字状に突出するように形成するようにしてもよい。この場合には、左右の固定用片10の形状が異なることから、固定用片10が表裏非対称および上下非対称となるため、固定用片10を認識部5として機能させることが可能となる。そのため、この場合には、固定部2の内側の認識部5は不要となる。さらに、このような固定用片10を認識部5として機能させる他の例として、例えば、図15に示すように、一方の固定用片10を四角形状に形成するとともに、他方の固定用片10を2本の突出片から形成するようにしてもよい。また、図16に示すように、固定部2の一側に2つの固定用片10を形成するとともに、他側に1つの固定用片10を形成するようにしてもよい。なお、ねじ穴12は、丸穴などの四角穴以外の形状でもよい。
【0042】
したがって、本実施形態においては、固定用片10をデバイス基板に固定用ねじ11により締め付け固定することにより、アクチュエータチップ8をデバイス基板に固定することができるので、アクチュエータチップ8を固定するための接着剤が不要となり、実装工程の簡略化を図ることができる。また、固定用片10を表裏非対称および上下非対称に形成し、固定用片10を認識部5として機能させることにより、固定部2の内側に別個に認識部5を形成することなく、固定用片10のみにより、アクチュエータチップ8の表裏および上下の識別を行うことができる。
【0043】
なお、前記各実施形態においては、1次元のアクチュエータに適用した場合について説明したが、2次元のアクチュエータについて適用するようにしてもよい。
【0044】
また、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0045】
1 プレーナ型アクチュエータ
2 固定部
3 トーションバー
4 可動部
5 認識部
6 金属パッド
7 トレー
8 アクチュエータチップ
9 撮像カメラ
10 固定用片
11 固定用ねじ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠状の固定部と、前記固定部の内側に支持梁を介して可動自在に支持され駆動手段により駆動される可動部と、を備えたプレーナ型アクチュエータであって、
前記固定部に、少なくとも前記固定部の上下方向が認識できるように認識部が形成されていることを特徴とするプレーナ型アクチュエータ。
【請求項2】
前記識別部は、前記固定部の表裏も認識できるように形成されていることを特徴とする請求項1に記載のプレーナ型アクチュエータ。
【請求項3】
前記認識部は、前記固定部の内側に形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のプレーナ型アクチュエータ。
【請求項4】
前記固定部に、前記デバイス基板に固定するための固定用片を設けたことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のプレーナ型アクチュエータ。
【請求項5】
前記固定用片は、少なくとも前記固定部の上下方向が識別できるように形成されており、前記固定用片は前記認識部として機能するものであることを特徴とする請求項4に記載のプレーナ型アクチュエータ。
【請求項6】
前記固定用片は、前記固定部の表裏も識別できるように形成されていることを特徴とする請求項5に記載のプレーナ型アクチュエータ。
【請求項1】
枠状の固定部と、前記固定部の内側に支持梁を介して可動自在に支持され駆動手段により駆動される可動部と、を備えたプレーナ型アクチュエータであって、
前記固定部に、少なくとも前記固定部の上下方向が認識できるように認識部が形成されていることを特徴とするプレーナ型アクチュエータ。
【請求項2】
前記識別部は、前記固定部の表裏も認識できるように形成されていることを特徴とする請求項1に記載のプレーナ型アクチュエータ。
【請求項3】
前記認識部は、前記固定部の内側に形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のプレーナ型アクチュエータ。
【請求項4】
前記固定部に、前記デバイス基板に固定するための固定用片を設けたことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のプレーナ型アクチュエータ。
【請求項5】
前記固定用片は、少なくとも前記固定部の上下方向が識別できるように形成されており、前記固定用片は前記認識部として機能するものであることを特徴とする請求項4に記載のプレーナ型アクチュエータ。
【請求項6】
前記固定用片は、前記固定部の表裏も識別できるように形成されていることを特徴とする請求項5に記載のプレーナ型アクチュエータ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2011−39227(P2011−39227A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−185660(P2009−185660)
【出願日】平成21年8月10日(2009.8.10)
【出願人】(000004651)日本信号株式会社 (720)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年8月10日(2009.8.10)
【出願人】(000004651)日本信号株式会社 (720)
【Fターム(参考)】
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