説明

プログラム管理装置

【課題】車両に搭載される機器の動作を制御する制御装置のプログラムをユーザに望ましい環境で更新するようにしたプログラム管理装置を提供する。
【解決手段】車両に搭載されるナビゲーション装置(機器)の動作を制御するナビゲーションECU(制御装置)のプログラムを格納するメモリ(ROMあるいはEEPROM)と、車両にとって安全な場所を地図データ上に記憶する安全場所記憶手段(地図データ記憶部)を備えると共に、プログラムの更新がセンタ側から要求されたか否か判定し(S10)、プログラムの更新が要求されたと判定されるとき、車両10の位置を検出し(S12)、検出された車両の位置が安全な場所であるとき、プログラムの更新を許可する(S14からS20)。これに応じてセンタ側からプログラムが送信され、プログラムの更新が行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はプログラム管理装置に関し、より具体的には車両に搭載される機器の動作を制御する制御装置のプログラムの更新を管理するプログラム管理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に搭載される機器の動作を制御する制御装置、例えばナビゲーション装置のプログラムの更新(リプログラミングあるいは書き換え)は、修理工場や販売会社(ディーラ)などで行われているが、近時、特許文献1記載の技術のように、ネットワークを介して地図データを配信することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−333322号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1記載はナビゲーション装置においてネットワークを介して地図データを配信する技術を開示するが、今後、制御装置のプログラムの更新もネットワークを介して配信することが考えられる。そのような場合、車両の走行中などに不用意にプログラムが更新されると、ユーザに望ましくない事態も生じ得る。
【0005】
従って、この発明の目的は上記した課題を解決し、車両に搭載される機器の動作を制御する制御装置のプログラムをユーザに望ましい環境で更新するようにしたプログラム管理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を解決するために、請求項1に係るプログラム管理装置にあっては、車両に搭載される機器の動作を制御する制御装置のプログラムを格納するメモリと、前記車両にとって安全な場所を地図データ上に記憶する安全場所記憶手段と、前記プログラムの更新が要求されたか否か判定するプログラム更新要求判定手段と、前記プログラムの更新が要求されたと判定されるとき、前記車両の位置を検出する自車位置検出手段と、前記検出された車両の位置が前記安全な場所であるとき、前記プログラムの更新を許可するプログラム更新許可手段とを備える如く構成した。
【0007】
請求項2に係るプログラム管理装置にあっては、車両に搭載される機器の動作を制御する制御装置のプログラムが更新されたとき、前記制御装置に対して前記プログラムの更新を要求するプログラム更新要求を送信するプログラム更新要求手段と、前記制御装置から前記プログラムの更新を許可するプログラム更新許可信号が送信されてきたか否か判定するプログラム更新許可判定手段と、前記プログラム更新許可信号が送信されてきたとき、前記更新されたプログラムを前記制御装置に送信する更新プログラム送信手段とを備える如く構成した。
【0008】
請求項3に係るプログラム管理装置にあっては、前記制御装置は、前記車両が安全な場所にあるとき、前記プログラム更新許可信号を送信する如く構成した。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係るプログラム管理装置にあっては、車両に搭載される機器の動作を制御する制御装置のプログラムを格納するメモリと、車両にとって安全な場所を地図データ上に記憶する安全場所記憶手段とを備え、プログラムの更新が要求されたか否か判定し、プログラムの更新が要求されたと判定されるとき、車両の位置を検出し、検出された車両の位置が安全な場所であるとき、プログラムの更新を許可する如く構成したので、プログラムを車両にとって安全な場所で更新することで、ユーザに不都合な事態が生じるのを回避することができる。
【0010】
請求項2に係るプログラム管理装置にあっては、車両に搭載される機器の動作を制御する制御装置のプログラムが更新されたとき、制御装置に対してプログラムの更新を要求するプログラム更新要求を送信するプログラム更新要求手段を備え、制御装置からプログラムの更新を許可するプログラム更新許可信号が送信されてきたか否か判定し、プログラム更新許可信号が送信されてきたとき、更新されたプログラムを制御装置に送信する如く構成したので、制御装置からプログラム更新許可信号が送信されてきたことを確認してからプログラムを送信することで、制御装置がユーザに不都合な事態を生じない時点でプログラム更新許可信号を送信することが可能となり、プログラムを更新するとき、同様にユーザに不都合な事態が生じるのを回避することができる。
【0011】
請求項3に係るプログラム管理装置にあっては、制御装置は、車両が安全な場所にあるとき、プログラム更新許可信号を送信する如く構成したので、プログラムを車両にとって安全な場所で更新することで、ユーザに不都合な事態が生じるのを一層確実に回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】この発明の実施例に係る、車両の制御装置あるいは車両のディーラなどのセンタのサーバからなるプログラム管理装置を全体的に示す概略図である。
【図2】図1に示すプログラム管理装置のうち、車両の制御装置からなるプログラム管理装置の動作を示すフロー・チャートである。
【図3】図1に示すプログラム管理装置のうち、センタのサーバからなるプログラム管理装置の動作を示すフロー・チャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面に即してこの発明に係るプログラム管理装置を実施するための形態について説明する。
【実施例】
【0014】
図1は、この発明の実施例に係る、車両の制御装置あるいは車両のディーラなどのセンタのサーバに格納されるプログラム管理装置を全体的に示す概略図である。
【0015】
図1において車両10には機器、より具体的にはナビゲーション装置12とその動作を制御する制御装置(ECU(Electronic Control Unit。電子制御装置)。以下「ナビゲーションECU」という)14が搭載される。
【0016】
ナビゲーション装置12は、ナビゲーションECU14に加え、地図データ記憶部16と、入力部20と、GPS(Global Positioning System)信号を受信するGPS受信部22と、車両の走行速度(車速)に応じた信号を出力する車速センサ24と、車両の重心軸周りの回転角速度(ヨーレート)に応じた信号を出力するジャイロセンサ26と、ディスプレイ30と、スピーカ32とを備える。
【0017】
ナビゲーションECU14はCPU,ROM,EEPROM,RAMおよび入出力I/Oなどで構成されるマイクロコンピュータからなり、現在地検出部14aと、ルート算出部14bとプログラム更新許可判定部14c(後述)を備える。上記のROMあるいはEEPROMには、ナビゲーションECU14の動作を規定するプログラムが格納される。
【0018】
ナビゲーションECU14はROMなどに格納されたプログラムに従い、現在地検出部14aにおいてGPS受信部22で受信されたGPS信号と車速センサ24とジャイロセンサ26の出力から車両10の現在地(位置)を検出し、ルート算出部14bにおいて検出された現在地から入力部20を介してユーザ(運転者)によって設定された目的地(あるいは経由地)までのルート(誘導経路)を算出し、ハードディスクなどからなる地図データ記憶部16に記憶された地図データと共に、映像信号としてディスプレイ30に送出すると共に、必要に応じてスピーカ32を駆動する。ディスプレイ30はナビゲーションECU14から送出された映像信号に基づき、算出されたルートを地図上に表示する。
【0019】
また、車両10を製造する自動車会社の関連施設などからなるセンタ100には、サーバ102と、地図情報DB(データベース)104と、プログラムDB106と、無線送受信装置110が配置される。
【0020】
サーバ102は、ナビゲーションECU14を構成するマイクロコンピュータに比して記憶容量と処理速度で優れた大型コンピュータからなる。地図情報DB104は、ナビゲーション装置12の地図データ記憶部16に記憶される地図データなどの地図情報を格納する。
【0021】
プログラムDB106は、ナビゲーションECU14のROMなどに格納される上記したナビゲーション用のプログラムの他、車両10に搭載される機器の動作を制御する制御装置のプログラム、例えばインジェクタを介した燃料噴射制御、自動変速機を介した変速制御、車両10がハイブリッド車両であるとき、電動モータを介した走行制御などの各種のプログラムを格納する。
【0022】
車両10においてナビゲーション装置12も無線送受信部34を備え、センタ100と通信自在に構成される。無線送受信部34も送受信用のアンテナ34aを備える。
【0023】
図1に示す構成において、ナビゲーションECU14、より具体的にはそのプログラム更新許可判定部14cがプログラム管理装置として動作する。また、センタ100においてはサーバ102がプログラム管理装置として動作する。
【0024】
この実施例はこのプログラム管理装置による、上記したナビゲーション用のプログラムなどの更新(リプログラミング)に関するので、以下それについて説明する。
【0025】
尚、センタ100では作業者によって上記したナビゲーション用のプログラムなど車両10に搭載される機器の動作を制御する制御装置のプログラムの改訂が定期的に行われる。
【0026】
以下、ナビゲーション用のプログラムが更新される場合を例にとって説明するが、同様のことは車両10に搭載される機器の動作を制御する制御装置のプログラム、例えばインジェクタを介した燃料噴射制御、自動変速機を介した変速制御、車両10がハイブリッド車両であるとき、電動モータを介した走行制御などの各種のプログラムについても妥当する。
【0027】
図2は図1に示すプログラム管理装置のうち車両10のナビゲーションECU14からなるプログラム管理装置、図3はセンタ100のサーバ102からなるプログラム管理装置の動作を示すフロー・チャートであり、共に所定の時間割り込みで実行される。
【0028】
以下説明すると、センタ100においてはプログラムが更新(リプログラミングあるいは書き換え)されたとき、作業者によって適宜なフラグのビットが1にセットされて搭載車両10に対してプログラムが更新されたことが示される。
【0029】
従ってセンタ100のサーバ102の処理においてS100ではそのビットを参照することでプログラムが更新されたか否か判断する。
【0030】
S100で肯定されるときはS102に進み、該当するプログラムを格納するナビゲーション装置(機器)が搭載される車両10のナビゲーションECU(制御装置)14に対してプログラムの更新を要求するプログラム更新要求信号を無線送受信装置110と無線送受信部34を介して送信する。
【0031】
他方、ナビゲーションECU14にあっては図2フロー・チャートのS10においてプログラム更新要求信号を受信したか否か判断し、肯定されてプログラムの更新が要求されたと判定されるときはS12に進み、現在地検出部14aを介して自車(車両)10の位置(現在地)を検出する。
【0032】
次いでS14に進み、自車10が安全な場所に駐車中か、即ち、検出された自車10の位置が安全な場所であるか否か判断する。
【0033】
プログラム更新許可判定部14cは、自車10にとって予め設定された安全な場所(例えばディーラ、自宅、駐車場など)を、地図データ記憶部16に記憶される地図データ上に記憶しており、S14の判断は検出された自車10の位置がその場所のいずれかに該当するか否か判定することで行う。尚、安全な場所は空間ではなく、時間(真夜中、勤務時間)で設定しても良い。
【0034】
S14の処理において駐車中か否かの判断は、車速センサ24から検出された車速が零あるいはブレーキスイッチ(図示せず)の出力からブレーキ装置が作動中であり、かつ適宜な手法でエンジンが停止されていると判断されるとき、駐車中と判断する。
【0035】
S14で否定されるときはS16に進み、プログラムの更新を許可しない旨のプログラム更新不許可信号を送信する。次いでS18に進み、安全な場所に駐車中か否か再び同様な手法で判断し、否定されるときはS16に戻る。
【0036】
他方、S14あるいはS18で肯定されるときはS20に進み、プログラムの更新を許可するプログラム更新許可信号を無線送受信部34と無線送受信装置110を介してサーバ102に送信する。
【0037】
図3フロー・チャートにおいてはS104においてそのプログラム更新許可信号を受信したか否か判断し、肯定されるときはS106に進み、更新(リプログラミング)されたプログラムをナビゲーションECU14に送信する。
【0038】
図2フロー・チャートのS22においては送信されたプログラムを取得し、ROMあるいはEEPROMに格納されたナビゲーションECU14の動作を規定するプログラムに上書きしてプログラムを更新(リプログラミング)する。このように車両10がナビゲーション情報に基づいて得られる安全な場所に駐車されるとき、プログラムの更新を行う。
【0039】
上記した如く、この実施例に係るプログラム管理装置にあっては、車両10に搭載されるナビゲーション装置(機器)12の動作を制御するナビゲーションECU(制御装置)14のプログラムを格納するメモリ(ROMあるいはEEPROM)と、前記車両(自車)10にとって安全な場所を地図データ上に記憶する安全場所記憶手段(地図データ記憶部16)と、前記プログラムの更新が要求されたか否か判定するプログラム更新要求判定手段(プログラム更新許可判定部14c,S10)と、前記プログラムの更新が要求されたと判定されるとき、前記車両(自車)10の位置を検出する自車位置検出手段(プログラム更新許可判定部14c,S12)と、前記検出された車両の位置が前記安全な場所であるとき、前記プログラムの更新を許可するプログラム更新許可手段(プログラム更新許可判定部14c,S14からS20)とを備える如く構成したので、プログラムを車両10にとって安全な場所で更新することで、ユーザに不都合な事態が生じるのを回避することができる。
【0040】
さらに、プログラムの更新は安全な場所に駐車されるときにのみ行う、換言すれば走行中には行うことがないので、対象機器(ナビゲーション装置)12を使用している状況にないことから、ユーザにとって不都合な事態が生じるのを一層良く回避することができる。
【0041】
また、この実施例に係るプログラム管理装置にあっては、車両10に搭載されるナビゲーション装置(機器)12の動作を制御するナビゲーションECU(制御装置)14のプログラムが更新されたとき(サーバ102,S100)、前記制御装置に対して前記プログラムの更新を要求するプログラム更新要求を送信するプログラム更新要求手段(サーバ102,S102)と、前記ナビゲーションECU14から前記プログラムの更新を許可するプログラム更新許可信号が送信されてきたか否か判定するプログラム更新許可判定手段(サーバ102,S104)と、前記プログラム更新許可信号が送信されてきたとき、前記更新されたプログラムを前記ナビゲーションECU14に送信する更新プログラム送信手段(サーバ102,S106)とを備える如く構成したので、ナビゲーションECU(制御装置)14からプログラム更新許可信号が送信されてきたことを確認してからプログラムを送信することで、ナビゲーションECU(制御装置)14がユーザに不都合な事態を生じない時点でプログラム更新許可信号を送信することが可能となり、プログラムを更新するとき、同様にユーザに不都合な事態が生じるのを回避することができる。
【0042】
また、前記制御装置は、前記車両が安全な場所にあるとき、前記プログラム更新許可信号を送信する(プログラム更新許可判定部14c,S14からS20)如く構成したので、プログラムを車両(自車)10にとって安全な場所で更新することで、ユーザに不都合な事態が生じるのを一層確実に回避することができる。
【符号の説明】
【0043】
10 車両、12 ナビゲーション装置、14 ナビゲーションECU(制御装置)、14a 現在地検出部、14b ルート算出部、14c プログラム更新許可判定部、16 地図データ記憶部、20 入力部、22 GPS受信部、24 車速センサ、26 ジャイロセンサ、30 ディスプレイ、32 スピーカ、34 無線送受信部、100 センタ、102 サーバ、104 地図情報DB、106 プログラムDB、110 無線送受信装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される機器の動作を制御する制御装置のプログラムを格納するメモリと、前記車両にとって安全な場所を地図データ上に記憶する安全場所記憶手段と、前記プログラムの更新が要求されたか否か判定するプログラム更新要求判定手段と、前記プログラムの更新が要求されたと判定されるとき、前記車両の位置を検出する自車位置検出手段と、前記検出された車両の位置が前記安全な場所であるとき、前記プログラムの更新を許可するプログラム更新許可手段とを備えたことを特徴とするプログラム管理装置。
【請求項2】
車両に搭載される機器の動作を制御する制御装置のプログラムが更新されたとき、前記制御装置に対して前記プログラムの更新を要求するプログラム更新要求を送信するプログラム更新要求手段と、前記制御装置から前記プログラムの更新を許可するプログラム更新許可信号が送信されてきたか否か判定するプログラム更新許可判定手段と、前記プログラム更新許可信号が送信されてきたとき、前記更新されたプログラムを前記制御装置に送信する更新プログラム送信手段とを備えたことを特徴とするプログラム管理装置。
【請求項3】
前記制御装置は、前記車両が安全な場所にあるとき、前記プログラム更新許可信号を送信することを特徴とする請求項2記載のプログラム管理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−243339(P2010−243339A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−92662(P2009−92662)
【出願日】平成21年4月7日(2009.4.7)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】