説明

プロジェクター

【課題】解像度低下、寿命低下、照明効率低下を抑制し、アスペクト比の切り替え機構が簡単であり、アスペクト比を自由に変更可能なプロジェクターを提供する。
【解決手段】本発明のプロジェクター1は、光源5と、入力画像信号による画像の水平方向、垂直方向のいずれか一方へのアスペクト比の伸張処理を行う画像処理部(画像処理コントローラー26)と、光源からの光を変調して伸張処理後の画像を形成する光変調素子(液晶パネル7)と、光変調素子により形成された画像を被投写面上に投写する投写光学系(マスターレンズ10)と、水平方向、垂直方向のうち、画像処理部において伸張処理を行った側の方向とは異なる方向に対する画像の拡大の倍率を変更可能とされたアナモフィックズーム光学系11と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロジェクターに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、プロジェクターには様々なアスペクト比(画像の水平寸法と垂直寸法との比)の画像信号が入力されるが、画像を形成する液晶パネルのサイズが一定なため、入力される画像信号のアスペクト比と液晶パネルのアスペクト比とが一致しない、という問題が発生する。
【0003】
入力画像信号のアスペクト比と液晶パネルのアスペクト比とが一致しない場合、プロジェクターで入力画像信号を表示するには以下の方法が知られている。一般的な方法(従来例1)として、画面の上下あるいは左右にブランク部(黒表示部)を設ける方法がある。例えば、16:9のアスペクト比を持つ液晶パネルに対して4:3のアスペクト比を持つ画像信号を表示する場合には、画面の左右にブランク部を表示する。
【0004】
この方法では、上下あるいは左右にブランク部を設けることで液晶パネルの全表示領域を使用できないことになり、解像度の低下を招く。具体的には、アスペクト比16:9の液晶パネルに対してアスペクト比4:3の画像信号を表示した場合は、水平解像度が約25%低下する。逆に、アスペクト比4:3の液晶パネルに対してアスペクト比16:9の画像信号を表示した場合は、垂直解像度が約25%低下する。さらに、ブランク部に相当する箇所にも常に照明光が照射されることから、液晶パネルの寿命が低下しやすい、という課題を抱えていた。また、ブランク部の存在によって照明効率が低下する、という課題も抱えていた。
【0005】
そこで、上記の課題を解決すべく、アスペクト比16:9の画像を水平方向に圧縮してアスペクト比4:3の液晶パネルに表示し、アナモフィックレンズを介して一旦圧縮された画像をアスペクト比16:9の画像に復元して投写レンズで投写するプロジェクターが提案されている(例えば、特許文献1参照)。このプロジェクターでアスペクト比4:3の画像を表示する際には、アナモフィックレンズと投写レンズとの間に設置された平面ミラーを光路から退避させることにより、アナモフィックレンズを通さずに投写レンズで画像を投写している。このような平面ミラーの切り替えによりアスペクト比が異なる2種類の画像を表示している。
【0006】
また、入力信号のアスペクト比に基づいて、設定が可能な2種類のアスペクト比から最適なアスペクト比を選択し、それに応じてアナモフィックレンズを回転させることにより、表示画像の2種類のアスペクト比の切り替えを実現したプロジェクターが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平4−170178号公報
【特許文献2】特開平6−253242号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載のプロジェクターにおいては、従来例1のような解像度の低下は生じないものの、アナモフィックレンズと通常の投写レンズとを平面ミラーで切り替える機構が必要であり、構造が複雑になる、という課題がある。
【0009】
また、特許文献2に記載のプロジェクターにおいては、特許文献1に記載のものと比べて切り替え機構が簡単なものの、2種類のアスペクト比にしか対応できない上、切り替えるアスペクト比によって液晶パネルのサイズが制約を受けるため、設計の自由度が著しく低下する、という課題がある。
【0010】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、解像度の低下、寿命の低下、照明効率の低下が生じることなく、アスペクト比の切り替え機構が簡単であり、アスペクト比を自由に変えることができるプロジェクターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、本発明のプロジェクターは、光源と、入力される画像信号により形成される前記画像の水平方向、垂直方向のいずれか一方の方向へのアスペクト比の伸張処理を行う画像処理部と、前記光源からの光を変調して前記伸張処理が施された画像を形成する光変調素子と、前記光変調素子により形成された前記画像を被投写面上に投写する投写光学系と、前記水平方向、前記垂直方向のうち、前記画像処理部において伸張処理を行った側の方向とは異なる方向に対する前記画像の拡大の倍率を変更可能とされたアナモフィックズーム光学系と、を備えたことを特徴とする。
【0012】
本発明のプロジェクターによれば、画像処理部が画像の水平方向、垂直方向のいずれか一方の方向へのアスペクト比の伸張処理を行い、アナモフィックズーム光学系が水平方向、垂直方向のうち、画像処理部にてアスペクト比の伸張処理を行った側の方向とは異なる方向に対する画像の拡大の倍率を変更できるため、画面の上下や左右にブランク部を設けることなく画面全体に画像を表示でき、解像度の低下、寿命の低下、照明効率の低下をそれぞれ抑制できる。また、アスペクト比を切り替えるための平面ミラー等が不要であるため、切り替え構造が複雑になることがない。さらに、アナモフィックズーム光学系により画像の拡大倍率を変更できるため、異なるアスペクト比を持つ画像信号が入力されても、それに対応した高解像度の表示が可能なプロジェクターを提供できる。
なお、本発明の上記の表現では、あくまでも画像の水平方向、垂直方向のいずれか一方の方向への「アスペクト比」の伸張処理を行うのであって、解像度の観点から言えば、例えば光変調素子の全表示領域に画像を表示するためには水平方向、垂直方向の双方への「画像」の伸張処理を行ったり、入力される画像信号によっては「画像」の圧縮処理を行ったりする場合もある。
【0013】
本発明のプロジェクターにおいて、入力される画像信号のアスペクト比を検出するアスペクト比検出部を備え、前記画像処理部が、前記アスペクト比検出部によるアスペクト比検出結果に対して伸張処理後の画像のアスペクト比と前記光変調素子のアスペクト比とが一致するように前記画像の伸張処理を行う構成としても良い。
この構成によれば、光変調素子の表示領域の全体を用いて表示を行うため、最も効率が良く、画像処理部が、入力される画像信号の情報に基づいて最適な拡大率で画像の伸張処理を行う構成を実現できる。
【0014】
あるいは、前記アナモフィックズーム光学系を構成するレンズの移動量に基づいて前記アナモフィックズーム光学系の倍率を算出するアナモフィック倍率算出部を備え、前記画像処理部が、前記アナモフィック倍率算出部による前記倍率の算出結果に基づいて前記画像の伸張処理を行う構成としても良い。
この構成によれば、例えば使用者が強制的にアナモフィックズーム光学系の倍率を変更した場合などに対応でき、そのアナモフィックズーム光学系の倍率に応じた最適な拡大率で画像の伸張処理を行う構成を実現できる。
【0015】
本発明のプロジェクターにおいて、前記投写光学系、前記アナモフィックズーム光学系の各々が、前記画像のフォーカスを調整するためのフォーカス駆動部を備えることが望ましい。
この構成によれば、投写光学系、アナモフィックズーム光学系の双方のフォーカス駆動部の作用により被投射面上での画像のフォーカスが調整されるため、鮮明な画像が得られる。
【0016】
本発明のプロジェクターにおいて、前記投写光学系、前記アナモフィックズーム光学系の各々を構成するレンズの位置を検出するレンズ位置検出部を備え、前記フォーカス駆動部の各々が、前記レンズ位置検出部による前記レンズ位置の検出結果に基づいて前記フォーカスの調整を行う構成としても良い。
この構成によれば、プロジェクターが内蔵するレンズ位置検出部からの検出結果を用い、投写光学系のフォーカス駆動部とアナモフィックズーム光学系のフォーカス駆動部とを連動させることができ、高精細なプロジェクターを実現できる。
【0017】
あるいは、前記被投写面上に投写された画像を撮像する撮像部を備え、前記フォーカス駆動部の各々が、前記撮像部による前記画像の撮像結果に基づいて前記フォーカスの調整を行う構成としても良い。
この構成によれば、例えば、投射光学系やアナモフィックズーム光学系のズーム機構が複雑で、互いを連動させることが難しい場合でも、撮像部の撮像結果に基づいて双方のフォーカスを自動的に合わせることが可能となり、高精細なプロジェクターを実現できる。
【0018】
本発明のプロジェクターにおいて、前記アナモフィックズーム光学系が、自身の光軸を中心として回転可能とされていても良い。またその場合、前記光変調素子のアスペクト比が1:1であることが望ましい。
この構成によれば、アナモフィックズーム光学系を回転させることによって、1種類のアナモフィックズーム光学系を用いるだけで水平方向、垂直方向のいずれにも倍率を変化させることができる。したがって、画像信号と光変調素子との組み合わせによってアナモフィックズーム光学系の倍率を1以下にしたい場合にも対応でき、種々の画像信号が入力されたときの対応性が向上する。このとき、光変調素子のアスペクト比が1:1であれば、プロジェクターを縦置きにしても横置きにしても同じ倍率を実現でき、設置方向に依存しない自由度の高いプロジェクターを提供できる。
【0019】
本発明のプロジェクターにおいて、前記画像処理部が、前記被投写面の形状に応じて予め設定された補正量分だけ前記画像の歪曲を補正する構成としても良い。
この構成によれば、入力信号の種類や用途に応じて画像の歪曲を適宜補正することができ、幅広い種類の入力信号に対応可能なプロジェクターを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1実施形態のプロジェクターの概略構成図である。
【図2】アナモフィックズーム光学系のレンズ構成を示す図である。
【図3】アスペクト比を検出する一方法を説明するための図である。
【図4】伸張処理の過程を説明するための図である。
【図5】入力画像信号優先モードの処理工程を示すフローチャートである。
【図6】アナモフィックズーム優先モードの処理工程を示すフローチャートである。
【図7】本発明の第2実施形態のプロジェクターの概略構成図である。
【図8】フォーカス合わせの一方法を説明するためのフローチャートである。
【図9】マスターレンズとアナモフィックズーム光学系との位置関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態のプロジェクターについて、図1〜図6を用いて説明する。
本実施形態のプロジェクターは、光変調素子として液晶パネルを採用した液晶プロジェクターの一例である。
図1は本実施形態のプロジェクターの概略構成を示すブロック図である。図2は同プロジェクターのアナモフィックズーム光学系のレンズ構成を示す図である。図3はアスペクト比を検出する一方法を説明するための図である。図4は伸張処理の過程を説明するための図である。図5は入力画像信号優先モードの処理工程を示すフローチャートである。図6は、アナモフィックズーム優先モードの処理工程を示すフローチャートである。
【0022】
本実施形態のプロジェクター1は、図1に示すように、投写レンズ部2、エンジン部3、制御回路部4を備えている。実際には、この他に光源電源部等も備えているが、本発明に関係しないため、図示および説明を省略する。
エンジン部3は、光源5、均一・色分離照明系6、透過型の液晶パネル7(光変調素子)、色合成光学系8を備えている。均一・色分離照明系6は、例えばフライアイレンズもしくはロッドレンズ、ダイクロイックミラー等から構成されている。色合成光学系8は、例えばダイクロイックプリズム等から構成されている。
【0023】
光源5から射出された光が、均一・色分離光学系6を経ることにより強度分布が均一化されるとともに、R(赤),G(緑),B(青)の各色光に分離される。そして、液晶パネル7に各色光が入射され、制御回路部4から入力された画像信号に基づいて各色光が変調されて画像が形成される。したがって、エンジン部3は実際には3枚の液晶パネル7を備えているが、図1では1枚の液晶パネル7のみを図示する。各液晶パネル7で変調された色光は色合成光学系8で合成され、投写レンズ部2に向けて射出される。以上の構成は従来一般の液晶プロジェクターと同一であるため、詳細な説明は省略する。
【0024】
投写レンズ部2は、マスターレンズ10(投射光学系)、アナモフィックズーム光学系11を備えており、本実施形態ではアナモフィックズーム光学系11がマスターレンズ10に対してスクリーン12側に配置されている。ここで言うマスターレンズ10とは、従来一般のプロジェクターのズームレンズや固定焦点レンズに相当し、これ単独でも投写レンズとして機能する。また、アナモフィックズーム光学系11は、X軸(水平軸)とY軸(垂直軸)の倍率が異なるズーム光学系のことである。
【0025】
図2を用いて、アナモフィックズーム光学系11について説明する。
ここではアナモフィックズーム光学系11が2枚のレンズ、マスターレンズ10が1枚のレンズで構成されるものとし、図2における符号L1,L2がアナモフィックズームレンズ、Mがマスターレンズを示す。図2(a)、図2(b)はある特定の平面で切断したときの断面図、図2(c)、図2(d)は前記特定の平面に直交する平面で切断したときの断面図である。また、図2(a)、図2(c)が広角側、図2(b)、図2(d)が望遠側のレンズ配置を示す。
【0026】
図2から判るように、アナモフィックズームレンズL1,L2はシリンドリカルな面を有しており、ある特定の軸方向についてはマスターレンズMの画角よりも光を広げることができるが、ある特定の軸と直交する方向についてはマスターレンズMの画角のままである。アナモフィックズームレンズL1,L2はアフォーカルな関係になっており、マスターレンズMの像面を移動させることなく、一方向のみ拡大することが可能になる。なお、図2はあくまでも基本構成を示しただけのものであって、実際には広角側、望遠側の双方でアナモフィックズームレンズL1,L2をアフォーカルな関係にするには、レンズL1,L2のそれぞれを複数枚のレンズからなる構成とし、個別に移動させる必要がある。
【0027】
図1に戻り、マスターレンズ10は、フォーカス駆動部14を備えている。フォーカス駆動部14は、制御回路部4から出力されたフォーカス移動量指示信号に基づいて、フォーカス駆動部ドライバー15を通じてフォーカス移動に必要なレンズを移動させる。このとき、レンズの移動量は、レンズ機構部(図示せず)に取り付けられたエンコーダー等の位置検出器によりフォーカス駆動部14から出力され、フォーカス移動量カウンター16(レンズ位置検出部)にてフォーカス現在位置信号として制御回路部4に出力される。
【0028】
また、アナモフィックズーム光学系11は、アナモフィックフォーカス駆動部17、アナモフィックズーム駆動部18を備えている。マスターレンズ10側と同様、アナモフィックフォーカス駆動部17は、制御回路部4から出力されたアナモフィックフォーカス移動量指示信号に基づいて、アナモフィックフォーカス駆動部ドライバー19を通じてフォーカス移動に必要なレンズを移動させる。このとき、レンズの移動量は、レンズ機構部に取り付けられたエンコーダー等の位置検出器によりアナモフィックフォーカス駆動部17から出力され、アナモフィックフォーカス移動量カウンター20(レンズ位置検出部)にてアナモフィックフォーカス現在位置信号として制御回路部4に出力される。
【0029】
同様に、アナモフィックズーム駆動部18は、制御回路部4から出力されたアナモフィックズーム移動量指示信号に基づいて、アナモフィックズーム駆動部ドライバー21を通じてズームに必要なレンズを移動させる。このとき、レンズの移動量は、レンズ機構部に取り付けられたエンコーダー等の位置検出器によりアナモフィックズーム駆動部18から出力され、アナモフィックズーム移動量カウンター22(レンズ位置検出部)にてアナモフィックズーム現在位置信号として制御回路部4に出力される。
【0030】
制御回路部4は、画像信号変換部24、アスペクト比検出部25、画像処理コントローラー26(画像処理部)、パネルドライバー27、マイクロプロセッサー28、モードセレクター29を備えている。画像信号変換部24は、テレビジョン、ビデオプレーヤー、パーソナルコンピューター等から入力される画像信号をデジタル処理するためのものである。アスペクト比検出部25は、入力される画像信号のアスペクト比を検出するものである。画像処理コントローラー26は、検出されたアスペクト比に基づいて画像を伸張処理するためのものである。パネルドライバー27は、伸張処理された画像を液晶パネルに表示するための駆動信号を出力するものである。
【0031】
マイクロプロセッサー28は、アスペクト比検出部25から入力されたアスペクト比信号に応じて、アナモフィックズーム光学系11、マスターレンズ10の各種ドライバーに信号を送る処理モード(第1の処理モード)、およびアナモフィックズーム光学系11、マスターレンズ10の各種カウンターから出力されるレンズの現在位置信号からアスペクト比信号を算出し、画像処理コントローラー26に送る処理モード(第2の処理モード)を司る。モードセレクター29は、上記の第1の処理モード、第2の処理モードを切り替える手段である。
【0032】
次に、具体的な処理の流れについて説明する。
上述したように、本実施形態のプロジェクター1は、2つの処理モードを備えている。第1の処理モードは、入力される画像信号のアスペクト比に応じてアナモフィックズーム光学系11のアナモフィックレンズL1,L2を駆動し、スクリーン12上に最適な画像を表示するモードである。第2の処理モードは、アナモフィックレンズL1,L2を強制的に手動で移動させて倍率変更した際に、その倍率に最適な画像を液晶パネル7上に表示することでスクリーン上に最適な画像を投写するモードである。
【0033】
第1の処理モードについて、図5のフローチャートを参照しつつ説明する。
第1の処理モードが選択された場合、図1におけるモードセレクター29は、破線の矢印の経路が有効であり、実線の矢印の経路が無効であるものとする。
最初に、テレビジョンやブルーレイディスクプレーヤー、パーソナルコンピューター(PC)等から出力された画像信号が画像信号変換部24に入力される。次いで、デジタル信号に変換された画像信号はアスペクト比検出部25に入力される。アスペクト比検出部25では、以下に説明する2種類の方法で画像信号のアスペクト比を検出する(図5のステップS1)。
【0034】
第1の方法は、入力した画像信号自身のアスペクト比を検出する方法である。
[表1]に示すように、一般的に、画像信号の種類に応じて、アスペクト比は4:3、16:9、…等、複数種類が有る。ここでは、アスペクト比=水平寸法Xi:垂直寸法Yiと表現する。
【0035】
【表1】

【0036】
[表1]においては信号全域を有効表示領域としてアスペクト比を検出しているが、映像信号の中には、信号の一部にブランク領域(黒表示領域)を設け、残りの部分を有効表示領域としているものがある。この有効表示領域のみでアスペクト比を検出しようとするのが第2の方法である。
図3は有効表示領域の例を示している。図3(a)の場合は画面全域を有効表示領域Yとしてアスペクト比を検出すればよいが、図3(b)、図3(c)の場合は中央の有効表示領域Y以外はブランク領域Bとして無信号(あるいは黒信号)で収録されており、ブランク領域Bを除く有効表示領域Yのみでアスペクト比を検出する必要がある。したがって、図3(b)、図3(c)の場合、アスペクト比検出部25は、有効表示領域Yのみを検出してアスペクト比とする。
【0037】
入力信号全域のアスペクト比と有効表示領域のアスペクト比(収録アスペクト比)とが異なる場合の例を[表2]に示す。特に、[表2]に示すような映像系の画像信号の場合、メディアや放送波の規格で画像信号が入力されることが多い。そのため、アスペクト比を検出する第2の方法は必須となる。
【0038】
【表2】

【0039】
ここで、図4(b)に示すように、画像を表示する液晶パネル7のアスペクト比Xp:Ypは予め判っているので、マイクロプロセッサー28はアスペクト比検出部25で検出されたアスペクト比Xi:Yiと液晶パネル7のアスペクト比Xp:Ypとを比較する(図5のステップS2)。
ここで、画像信号のアスペクト比Xi:Yiと液晶パネル7のアスペクト比Xp:Ypとが等しい場合(図5のステップS3)には、伸張処理を行うことなく、液晶パネル7にそのまま画像を表示する(図5のステップS7)。
【0040】
一方、画像信号のアスペクト比Xi:Yiと液晶パネル7のアスペクト比Xp:Ypとが異なる場合(図5のステップS4)には、アスペクト比検出部25は画像信号のアスペクト比係数arを、ar=Xi/Yiとして算出する(図5のステップS5)。アスペクト比係数arも合わせて、前出の[表1]、[表2]に示した。また、液晶パネル7のアスペクト比係数parは、par=Xp/Ypとして予め記憶されている。また、アスペクト比検出部25は、算出した画像信号のアスペクト比係数arを、モードセレクター29を介してマイクロプロセッサー28に送る。
【0041】
アスペクト比検出部25により画像信号のアスペクト比係数arが算出されると、画像処理コントローラー26は、画像信号のアスペクト比係数arが液晶パネル7のアスペクト比係数parと等しくなるように画像の伸張処理を行う(図5のステップS6)。画像信号のアスペクト比係数arと液晶パネル7のアスペクト比係数parとを一致させることによって、液晶パネル7の全域に画像が表示されることになる。
【0042】
図4は伸張処理の過程を説明するための図であり、図4(a)は画像信号自体から得られる画像、図4(b)は液晶パネル7を示す図であり、図4(c)は従来の表示画像を示す図、図4(d)は本実施形態の伸張処理後の画像を示す図である。
図4(a)の画像信号による画像G1を図4(b)の液晶パネル7に表示する場合、液晶パネル7よりも画像G1の方が横長のため、画像信号のアスペクト比係数arと液晶パネル7のアスペクト比係数parとの関係はar>parである。
【0043】
この場合、従来の表示方法では、図4(c)に示すように、液晶パネル7の上下にブランク領域Bを設けて横長の画像Gxを表示していた。これに対して、本実施形態の表示方法では、画像信号のアスペクト比係数arと液晶パネル7のアスペクト比係数parとの関係がar=parとなるように、図4(d)に示すように、水平寸法Xiに対して垂直寸法Yiが相対的に大きくなるように画像信号を垂直方向に伸張し、画像G2を表示する。画像処理コントローラー26は、このように伸張処理を行った画像信号を、パネルドライバー27を介して液晶パネル7に出力し、液晶パネル7が表示を行う(図5のステップS7)。
【0044】
すなわち、図4(d)に示す本実施形態の表示方法によれば、図4(c)に示す従来の表示方法のようにブランク領域Bを設けないため、液晶パネル7に照射される光を有効に利用することができる。また、図4(c)に示す従来の方法においてブランク領域Bに相当する領域が、図4(d)に示す本実施形態の方法では光を吸収しないため、耐久性が向上し、液晶パネル7の信頼性が向上する。さらに、ブランク領域Bに相当する領域も表示に利用するため、従来に比べて解像度を向上することができる。しかも、ブランク領域Bの黒浮きの問題も解消できるため、黒のしまった画像を実現できる。
【0045】
次に、マイクロプロセッサー28は、アスペクト比検出部25から入力された画像信号のアスペクト比係数arに基づいて、アスペクト比係数arの逆数の倍率(以下、アナモフィック倍率と称する)で一方向に拡大するためにズーム駆動に必要な駆動信号を、アナモフィックズーム駆動部ドライバー21を介してアナモフィックズーム駆動部18に送る。アナモフィックズーム駆動部18はその駆動信号を受け、アナモフィック倍率に見合う量だけアナモフィックレンズを移動させ、図4(d)のように伸張処理された画像G2を水平方向に拡大し、図4(a)のような元のアスペクト比に戻す(図5のステップS8)。
【0046】
次に、マイクロプロセッサー28は、アナモフィックレンズL1,L2の移動に伴ってずれるフォーカスを合わせるために、アナモフィックズーム光学系11、マスターレンズ10の各々のフォーカス駆動部17,14に信号を送る。具体的には、予めマイクロプロセッサー28内にプリセットされたアナモフィック倍率とフォーカスとの関係から、アナモフィックフォーカス駆動部ドライバー19とマスターレンズ10のフォーカス駆動部ドライバー15とに信号を送り、アナモフィックズーム光学系11、マスターレンズ10の各フォーカス駆動部17,14がフォーカス合わせに必要なレンズを移動させる(図5のステップS9,S10)。このとき、図1に示すように、アナモフィックフォーカス移動量カウンター20、フォーカス移動量カウンター16を用いて現在のレンズ位置をカウントして、マイクロプロセッサー28でフィードバックしつつレンズを駆動するのが望ましい。
【0047】
なお、マスターレンズ10、アナモフィックレンズL1,L2がカム機構等を用いて連動する構成としても良い。その場合、アナモフィックフォーカス駆動部17、マスターレンズ10のフォーカス駆動部14のいずれか一方は不要になる。
以上の過程を経て、第1の処理モードによる画像表示が完了し、スクリーン12上に最適な画像を表示することができる。
【0048】
第2の処理モードについて、図6のフローチャートを参照しつつ説明する。
第2の処理モードは、例えば、使用者がアナモフィックレンズを手動で強制的に移動させ、画像の倍率を変えたときに、その倍率に最適な画像を液晶パネル7に表示することでスクリーン12上に最適な画像を投写するモードである。
第2の処理モードが選択された場合、図1におけるモードセレクター29は、実線の矢印の経路が有効であり、破線の矢印の経路が無効であるものとする。
【0049】
第2の処理モードでは、第1の処理モードで既に画像が投写されている場合、もしくは、プロジェクター1の電源をオンした際に電源オフ時のアナモフィック倍率が記憶されている状態から開始となる。このモードは、使用者が強制的にアナモフィックレンズL1,L2を動かしたときに機能するモードである。その場合、アナモフィックレンズL1,L2の移動量がアナモフィックズーム駆動部18を経てアナモフィックズーム移動量カウンター22に送られる。そして、アナモフィックズーム移動量カウンター22でのカウント値に基づいて、マイクロプロセッサー28(アナモフィック倍率算出部)はアナモフィック倍率を割り出し、アナモフィック倍率の逆数である画像のアスペクト比係数arを算出し、モードセレクター29を通じてアスペクト比係数arを画像処理コントローラー26に出力する(図6のステップS1)。
【0050】
ここで、画像処理コントローラー26は、マイクロプロセッサー28から入力されたアスペクト比係数arを優先的に採用し、そのアスペクト比係数arが液晶パネル7のアスペクト比係数parと等しくなるように画像の伸張処理を行う(図6のステップS2)。画像処理コントローラー26は、このように伸張処理を行った画像信号を、パネルドライバー27を介して液晶パネル7に出力し、液晶パネル7は画像として表示する(図6のステップS3)。
【0051】
一方、マイクロプロセッサー28は、即座に、アナモフィックレンズL1,L2の移動に伴ってずれるフォーカスを合わせるために、アナモフィックズーム光学系11、マスターレンズ10の各々のフォーカス駆動部17,14に信号を送る。具体的には、予めマイクロプロセッサー28内にプリセットされたアナモフィック倍率とフォーカスとの関係から、アナモフィックフォーカス駆動部ドライバー19とマスターレンズ10のフォーカス駆動部ドライバー15とに信号を送り、アナモフィックズーム光学系11、マスターレンズ10の各フォーカス駆動部17,14がフォーカス合わせに必要なレンズを移動させる(図6のステップS4,S5)。この処理モードの場合も、第1の処理モードと同様、アナモフィックフォーカス移動量カウンター20、フォーカス移動量カウンター16を用いて現在のレンズ位置をカウントして、マイクロプロセッサー28でフィードバックしつつレンズを駆動するのが望ましい。
【0052】
なお、マスターレンズ10、アナモフィックレンズL1,L2がカム機構等を用いて連動する構成としても良い。その場合、アナモフィックフォーカス駆動部17、マスターレンズ10のフォーカス駆動部14のいずれか一方は不要になる。
以上の過程を経て、第2の処理モードによる画像表示が完了し、スクリーン12上に最適な画像を表示することができる。
【0053】
第2の処理モードは、アスペクト比に規格がある映像系の画像信号が入力された場合には自動的に適用されない構成とすることが望ましい。その理由は、この種の画像信号に対して強制的にアスペクト比を変更しても、元の画像が歪むだけだからである。したがって、第2の処理モードは、例えばパーソナルコンピューターのように、デスクトップのサイズが自由に設定できる画像信号に対して適用するのが望ましい。図1では図示を省略しているが、マイクロプロセッサー28から出力されるアスペクト比係数arをパーソナルコンピューター上のデスクトップの解像度値に変換し、USB等のシリアルバス、LAN等を通じてパーソナルコンピューターに送り込むことで、アナモフィック倍率と連動する構成としても良い。この構成によれば、スクリーン上の画像サイズの変化に連動してパーソナルコンピューター上のデスクトップサイズを変化させることもでき、非常に柔軟性の高いパーソナルコンピューターのデスクトップを実現できる。
【0054】
以上、2つの処理モードについて説明したが、例えばモードセレクター29をスイッチ等の入力手段からの信号で制御し、使用者が2つの処理モードを自由に選択できる構成としても良い。あるいは、入力された画像信号が映像系の信号であるか、パーソナルコンピューターの信号であるかを判別し、制御回路部4が2つの処理モードを自動的に選択する構成としても良い。あるいは、アナモフィックレンズL1,L2が強制的に動かされたことを検出する検出手段を備えておき、アナモフィックレンズL1,L2の強制移動が検出されたときに自動的に第2の処理モードに移行する構成としても良い。
【0055】
本実施形態のプロジェクター1によれば、画像処理コントローラー26が、例えば図4(b)に示したように、画像の垂直方向への伸張処理を行うとともに、アナモフィックズーム光学系11が、液晶パネル7上で垂直方向に伸張された画像を水平方向に拡大してスクリーン上に投写するため、ブランク領域を設けることなく画面全体に画像を表示でき、解像度の低下、液晶パネル寿命の低下、照明効率の低下をそれぞれ抑制できる。また、アスペクト比を切り替えるための平面ミラー等が不要であるため、切り替え構造が複雑にならず、装置の大型化を抑えることができる。さらに、アナモフィックズーム光学系11により画像の拡大倍率を変更できるため、種々の画像信号に対応して高解像度の画像の表示が可能なプロジェクターを提供できる。
【0056】
[第2実施形態]
以下、本発明の第2実施形態について、図7、図8を参照して説明する。
本実施形態のプロジェクターの基本構成は第1実施形態と全く同様であり、撮像素子を備えた点のみが異なっている。
図7は本実施形態のプロジェクターの概略構成を示すブロック図である。図7において図1と共通の構成要素には同一の符号を付し、説明は省略する。
【0057】
本実施形態のプロジェクター31は、図7に示すように、スクリーン12上の画像を撮像するための撮像素子32を備えており、撮像素子32が捉えた画像データがマイクロプロセッサー28に入力される構成となっている。マイクロプロセッサー28は、この画像データに基づいてマスターレンズ10、アナモフィックズーム光学系11のフォーカス調整を行う。
【0058】
図8を用いて、本実施形態のフォーカス調整方法について説明する。
アナモフィックレンズL1,L2は画像のズーム方向に大きな収差を持っているので、最初にズーム方向と平行な方向に延在する直線を表示し(図8のステップS1)、マスターレンズ10のフォーカス合わせを行う。ズーム方向と平行な方向の直線を表示したら、撮像素子32によりその直線を撮像し、マイクロプロセッサー28にてコントラスト比を算出する(図8のステップS2)。次いで、マスターレンズ10を移動させてフォーカスを合わせた後(図8のステップS3)、撮像素子32により直線を撮像し、フォーカスを合わせる、…という手順をコントラスト比が最大となるまで繰り返す。
【0059】
次に、ズーム方向と直交する方向に延在する直線を表示し(図8のステップS4)、アナモフィックレンズL1,L2のフォーカス合わせを行う。ズーム方向と垂直な方向の直線を表示したら、撮像素子32によりその直線を撮像し、マイクロプロセッサー28にてコントラスト比を算出する(図8のステップS5)。次いで、アナモフィックレンズL1,L2を移動させてフォーカスを合わせた後(図8のステップS6)、撮像素子32により直線を撮像し、フォーカスを合わせる、…という手順をコントラスト比が最大となるまで繰り返す。
【0060】
本実施形態においても、解像度の低下、寿命の低下、照明効率の低下が生じることなく、アスペクト比の切り替え機構が簡単であり、入力される画像信号に応じて高解像度の表示が可能なプロジェクターを提供できる、といった第1実施形態と同様の効果を得ることができる。さらに本実施形態の場合、マスターレンズ10やアナモフィックズーム光学系11のズーム機構が複雑で、互いを連動させることが難しい場合でも、撮像素子32の撮像結果に基づいて双方のフォーカスを自動的に合わせることが可能となり、高精細なプロジェクターを実現できる。
【0061】
[変形例1]
上記実施形態のプロジェクターに付加する構成として、画像コントローラーが、スクリーンの形状に応じて予め設定された補正量分だけ画像の歪曲を補正する機能を有していても良い。
【0062】
例えばアナモフィックレンズを使用した場合、一般に、投写画像に糸巻き型の歪曲が発生する。パーソナルコンピューターからの画像信号を表示する際にはこの歪曲を補正することが望ましい。しかしながら、映像系の画像信号を表示する場合には、例えば映画館等にあるようなカーブスクリーンを用いるのであれば、むしろ歪曲を補正しない方が良いケースがある。特に、入力画像信号がシネマスコープ(アスペクト比2.35:1、20世紀FOX社の登録商標)の画像信号である場合、歪曲を残したままで画像を投写することで画面の隅々まで高精細な画像を実現できる。したがって、パーソナルコンピューターからの画像信号等、歪曲補正が必要な画像信号を入力する場合には、予め装置に記憶されている設計値である歪曲補正プリセット量を簡単に選択できる構成とすることで、幅広い種類の入力信号に最適に対応可能なプロジェクターを実現できる。
【0063】
[変形例2]
また、アナモフィックズーム光学系が、自身の光軸を中心としてマスターレンズに対して回転可能に構成されていても良い。
【0064】
例えば図2に示すレンズ構成の場合、ある特定の方向に対しては画像を拡大することが可能であるが、特定の方向に直交する方向に対しては画像を拡大することができない。2つの方向に対応可能なアナモフィックレンズの設計も可能であるが、レンズ構成が複雑化してしまい、実用上はあり得ない。また、液晶パネルのアスペクト比よりも小さなアスペクト比を持つ画像信号が入力された場合、アナモフィック倍率を1以下にする必要があるが、アナモフィックレンズのズーム比を大きく取る必要があり、設計が困難になる。そこで、アナモフィックズーム光学系が自身の光軸を中心として回転可能な構成とすれば、アナモフィックレンズとしての性能を維持したまま、縦横ズーム比を大きく取ることができ、自由度が向上する。
【0065】
このようにアナモフィックズーム光学系が自身の光軸を中心として回転できる構成とした場合、液晶パネルのアスペクト比を1:1にするのが好ましい。この構成によれば、プロジェクターの使用時に縦置きにしても、横置きにしても同じアナモフィック倍率を持つことができ、プロジェクターの姿勢に依存せずに自由なアスペクト比を持つプロジェクターを実現できる。例えばアナモフィックズーム光学系を回転させる手段として、アナモフィックズーム光学系に錘などを取り付けておけば、プロジェクターの設置姿勢を変えた場合でもアナモフィックズーム光学系が自動的に回転し、同じアスペクト比を実現できる。
【0066】
なお、アナモフィックズーム光学系を回転させると、アナモフィック倍率が回転前の逆数となるため、アナモフィックズーム光学系が回転したことを知らせる回転検知信号をマイクロプロセッサーに送信し、画像処理コントローラーによる伸張処理を補正する必要がある。
【0067】
あるいは、入力された画像信号に応じてアナモフィックズーム光学系を自動的に回転させる回転駆動部を設けた構成としても良い。回転駆動部を設けた場合、例えば第1の処理モードに従ってアナモフィック倍率を算出した結果、アナモフィック倍率が1以下になったときに、アナモフィックズーム光学系を自動的に90度回転させてアナモフィック倍率を1以上とする構成が実現できる。この構成によれば、アナモフィックズーム光学系が対応し得るアナモフィック倍率の範囲を狭くでき、コスト的、設計的、性能的にも有利になる。
【0068】
[変形例3]
また、アナモフィックズーム光学系とマスターレンズとの位置関係は、以下の3通りを採用できる。
図9(a)は上記実施形態と同様、液晶パネル7に近い側からマスターレンズ10、アナモフィックズーム光学系11を順に配置したフロントコンバーター方式、図9(b)は、液晶パネル7に近い側からアナモフィックズーム光学系11、マスターレンズ10を順に配置したリアコンバーター方式、図9(c)は、マスターレンズ10を構成するレンズ群の中にアナモフィックズーム光学系11を配置した内蔵方式、である。
【0069】
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。例えば上記実施形態では、3板式の透過型液晶パネルを用いたプロジェクターの例を示したが、この構成に代えて、3板式の反射型液晶パネルやDMD(Digital MicroMirror Device)等を光変調素子に用いたプロジェクターに本発明を採用することもでき、エンジン部は特に限定されるものではない。その他、装置の詳細な構成については適宜変更が可能である。
【符号の説明】
【0070】
1,31…プロジェクター、2…投写レンズ部、3…エンジン部、4…制御回路部、5…光源、7…液晶パネル(光変調素子)、10…マスターレンズ(投写光学系)、11…アナモフィックズーム光学系、16…フォーカス移動量カウンター(レンズ位置検出部)、20…アナモフィックフォーカス移動量カウンター(レンズ位置検出部)、22…アナモフィックズーム移動量カウンター(レンズ位置検出部)、25…アスペクト比検出部、26…画像処理コントローラー(画像処理部)、28…マイクロプロセッサー(アナモフィック倍率算出部)、32…撮像素子(撮像部)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、
入力される画像信号により形成される前記画像の水平方向、垂直方向のいずれか一方の方向へのアスペクト比の伸張処理を行う画像処理部と、
前記光源からの光を変調して前記伸張処理が施された画像を形成する光変調素子と、
前記光変調素子により形成された前記画像を被投写面上に投写する投写光学系と、
前記水平方向、前記垂直方向のうち、前記画像処理部において伸張処理を行った側の方向とは異なる方向に対する前記画像の拡大の倍率を変更可能とされたアナモフィックズーム光学系と、を備えたことを特徴とするプロジェクター。
【請求項2】
入力される画像信号のアスペクト比を検出するアスペクト比検出部を備え、
前記画像処理部が、前記アスペクト比検出部によるアスペクト比検出結果に対して伸張処理後の画像のアスペクト比と前記光変調素子のアスペクト比とが一致するように前記画像の伸張処理を行うことを特徴とする請求項1に記載のプロジェクター。
【請求項3】
前記アナモフィックズーム光学系を構成するレンズの移動量に基づいて前記アナモフィックズーム光学系の倍率を算出するアナモフィック倍率算出部を備え、
前記画像処理部が、前記アナモフィック倍率算出部による前記倍率の算出結果に基づいて前記画像の伸張処理を行うことを特徴とする請求項1または2に記載のプロジェクター。
【請求項4】
前記投写光学系、前記アナモフィックズーム光学系の各々が、前記画像のフォーカスを調整するためのフォーカス駆動部を備えたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載のプロジェクター。
【請求項5】
前記投写光学系、前記アナモフィックズーム光学系の各々を構成するレンズの位置を検出するレンズ位置検出部を備え、
前記フォーカス駆動部の各々が、前記レンズ位置検出部による前記レンズ位置の検出結果に基づいて前記フォーカスの調整を行うことを特徴とする請求項4に記載のプロジェクター。
【請求項6】
前記被投写面上に投写された画像を撮像する撮像部を備え、
前記フォーカス駆動部の各々が、前記撮像部による前記画像の撮像結果に基づいて前記フォーカスの調整を行うことを特徴とする請求項4に記載のプロジェクター。
【請求項7】
前記アナモフィックズーム光学系が、自身の光軸を中心として回転可能とされたことを特徴とする請求項1ないし6のいずれか一項に記載のプロジェクター。
【請求項8】
前記光変調素子のアスペクト比が1:1であることを特徴とする請求項7に記載のプロジェクター。
【請求項9】
前記画像処理部が、前記被投写面の形状に応じて予め設定された補正量分だけ前記画像の歪曲を補正することを特徴とする請求項1ないし8のいずれか一項に記載のプロジェクター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−186150(P2010−186150A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−31840(P2009−31840)
【出願日】平成21年2月13日(2009.2.13)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】