説明

プロピレン系樹脂組成物を用いた自動車内装部品

【課題】 各種物性のバランスに優れた自動車内装部品を安定的に提供する。
【解決手段】 下記の条件(A)及び(B)を満足するプロピレン系樹脂組成物を、下記の条件(I)及び(II)を満足する金型を用いて射出成形して得られる自動車内装用部品。
(A):互いに直行する方向の成形収縮率S1とS2の算術平均値Sa[=(S1+S2)×1000/2]が7〜15であること
(B):DSC(熱示差分析計)により得られる結晶化ピーク温度が100℃以上であること
(I):意匠面を除く金型表面について、10点平均粗さ(Rz)が1〜50μmの部分を有すること
(II):意匠面を除く金型表面について、表面の凹凸の凸部と凸部の平均距離(Lm)が120μm未満の部分を有すること

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の成形金型を成形したプロピレン系重合体組成物を用いた自動車内装部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車内装部品には、プロピレン系樹脂組成物が多く用いられており、多くは射出成形にて製造される。なかでも、エアバッグカバーに用いられる成形品は、その性能上、低温展開性が重要である事から非晶成分が多く含まれるため、成形品の離型性が悪化しやすい。
【0003】
この離型性を改良する方法として、例えば特許文献1にはゴムや樹脂などの高分子材料を成形する金型の表面にメッキ層とセラミック層により凹凸を形成させ、離型性の向上をはかる技術が開示されている。
また、特許文献2には金型表面の凹凸の形状を規定することで、樹脂と金型との離型性を向上させる技術が開示されている。
【0004】
開示された技術はいずれも金型の表面性状を変化させる事で離型性改良を図ったものである。ただし、何れの技術も、本発明の目的であるプロピレン系樹脂組成物を用いた自動車内装部品を成形する際に充分な効果が得られない場合があった。
【0005】
【特許文献1】特開2004−154998号公報
【特許文献2】特開2004−193379号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
かかる状況において、本発明が解決しようとする課題はプロピレン系樹脂組成物の離型性を、特定の条件を満足する金型を用いる事で顕著に改良できることを発見し、各種物性のバランスに優れた自動車内装部品を安定的に提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明は、下記の条件(A)及び(B)を満足するプロピレン系樹脂組成物を、下記の条件(I)及び(II)を満足する金型を用いて射出成形して得られる自動車内装用部品に係るものである。
(A):互いに直行する方向の成形収縮率S1とS2の算術平均値Sa[=(S1+S2)×1000/2]が7〜15であること
(B):DSC(熱示差分析計)により得られる結晶化ピーク温度が100℃以上であること
(I):意匠面を除く金型表面について、10点平均粗さ(Rz)が1〜50μmの部分を有すること
(II):意匠面を除く金型表面について、表面の凹凸の凸部と凸部の平均距離(Lm)が120μm未満の部分を有すること
【発明の効果】
【0008】
本発明のプロピレン系重合体組成物を、特定の表面形状を有する金型を用いて成形する事により、要求物性を充分に満足する自動車内装用部品を安定的に提供する事ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明のプロピレン系樹脂組成物は、互いに直行する方向の成形収縮率S1とS2の算術平均値Sa[=(S1+S2)×1000/2]が7〜15、好ましくは7〜13、より好ましくは8〜12の範囲である。
【0010】
成形収縮率が7より小さいと成形後の収縮が小さい事から離型不良を生じやすく、15を越えると成形品の変形による反りや寸法安定性に問題を生じやすい。
【0011】
成形収縮率は、所定条件で射出成形した成形品を23℃、湿度50%雰囲気下で射出成形後12時間以上経時させた後、成形品の寸法と金型寸法との差を1000分率で表した。寸法は、図1に示されるように、樹脂の流れに対し平行にゲート中心線から両側35mmを測定した収縮率の平均値をS1、樹脂の流れに対し垂直に成形品中心線から両側65mmを測定した収縮率の平均値をS2とし、測定したS1とS2の算術平均値をSaとした。
【0012】
成形収縮率を測定する試料は、縦150mm、横90mm、厚み2mm、ゲート面積2×5mmのサイドゲート金型を用いて、成形温度220℃、射出率30〜100g/秒、射出時間10秒、金型温度50℃、冷却時間30秒の条件で実施される。
【0013】
プロピレン系樹脂組成物の結晶化温度は、DSC(熱示差分析計)により得られ、該結晶化ピーク温度は100℃以上、好ましくは100℃〜150℃、より好ましくは、110℃〜130℃の範囲である。
【0014】
該結晶化ピーク温度が100℃未満の場合、プロピレン系樹脂組成物の互着や成形品の耐熱性に問題を生じる場合がある。
【0015】
結晶化温度は、示差走査熱量測定装置(セイコー電子工業社製DSC220C:入力補償DSC)を用いた。測定は、常温から200℃まで30℃/分で昇温後、5分間保持し、−150℃まで10℃/分で降温する際の放熱曲線を測定した。得られた放熱曲線から単位重量当たりの放熱量を算出し、得られた曲線から放熱量のピーク位置を求め、ピーク温度の最高値を結晶化ピーク温度とした。
【0016】
プロピレン系樹脂組成物を成形する金型は、意匠面を除く金型表面について、10点平均粗さ(Rz)が1〜50μm、好ましくは1〜30μm、より好ましくは1〜20μmの部分を有する。
【0017】
該表面粗さが1μ未満の場合、樹脂組成物の離型改良効果が不充分であり、離型不良を生じやすい。50μmを越えると成形品表面の凹凸により、機械的物性が低下し、自動車内装用部品に要求される性能を満足できない場合がある。
【0018】
成形品の意匠面を除く金型表面とは、意匠としてシボなどの模様がつけられた部分以外を示す。離型性に影響が大きいのは、金型から成形品が取り出される際に成形品と金型とが剪断剥離、あるいは、それに近い状態で剥離される部分であり、当該部分を本発明に示される特定の表面状態とする事が重要である。
【0019】
プロピレン系樹脂組成物を成形する金型は、意匠面を除く金型表面について、表面の凹凸の凸部と凸部の平均距離(Lm)が120μm未満、好ましくは100μm未満、より好ましくは80μm未満の部分を有する。
【0020】
Lmが120μm以上の場合、表面粗さが所定の範囲内であっても離型性の改良効果が得られない場合がある。
【0021】
金型表面の粗さは、表面粗さ測定器(東京精密製サーフコムE−RC−S01A)を用いた。測定は成形品の抜出方向と並行方向に実施し、測定長8mm、測定倍率2000倍、速度0.3mm/分、カットオフ値0.3、測定子先端半径0.3mmで実施した。表面表面粗さ(Rz)が測定不可となった際は、表面状態に合わせて測定倍率を調整した。
【0022】
本発明の自動車内装部品は、金型温度とプロピレン系樹脂組成物のDSCにより得られる結晶化ピーク温度の差が30℃を越える条件、好ましくは40℃を越える条件、より好ましくは50℃を越える条件で成形される。
【0023】
成形時に金型温度とプロピレン系樹脂組成物のDSCにより得られる結晶化ピーク温度の差が30℃以下の場合、本発明のプロピレン系樹脂組成物を用いた自動車内装部品は離型不良を生じ易くなり、本発明の自動車内装部品を安定して得られない場合がある。
【0024】
成分(a)のプロピレン系重合体は、プロピレンから誘導される単量体単位と、炭素原子数2〜20の鎖状オレフィン(ただしプロピレンを除く)から誘導される単量体単位とを含有する重合体である。炭素原子数2〜20の鎖状オレフィン(ただしプロピレンを除く)としては、例えば、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−へプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセン等の直鎖状オレフィン;3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、2−エチル−1−ヘキセン、2,2,4−トリメチル−1−ペンテン等の分岐状オレフィンなどがあげられ、これらは1種以上用いられる。
【0025】
成分(a)のプロピレン系重合体としては、具体的には、プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−1−ブテン共重合体、プロピレン−1−ヘキセン共重合体、プロピレン−エチレン−1−ブテン共重合体などをあげることができる。これらは、ランダム共重合体であってもよく、ブロック共重合体であってもよい。
【0026】
成分(a)のプロピレン系重合体としては、第1工程で重合された第1セグメントである結晶性プロピレンホモポリマー部分もしくは結晶性プロピレン−α−オレフィンランダムコポリマー部分と、第2工程で重合された第2セグメントであるプロピレン−α−オレフィンランダムコポリマー部分とを有する結晶性プロピレン−α−オレフィンブロックコポリマーを用いることが好ましい。
【0027】
成分(a)のプロピレン系重合体がプロピレン−α−オレフィンブロックコポリマーの場合、プロピレンホモポリマー部分とプロピレン−α−オレフィンランダムコポリマー部分とを有する重合体であって、以下の要件(a4)、(a5)および(a6)を充足する重合体であることが好ましい。
(a4)20℃キシレン可溶部の含有量が2.0重量%以下であること
(a5)沸騰ヘプタン可溶部の含有量が5.0重量%以下であること
(a6)プロピレンホモポリマー部分の沸騰ヘプタン不溶部のアイソタクチック・ペンタッド分率が0.970以上であること
【0028】
20℃キシレン可溶部の含有量とは、以下の方法で測定されるものである。すなわち、成分(a)のプロピレン系重合体5gを沸騰キシレン500mlに完全に溶解させた後、20℃で4時間放置し、次にこれを濾別し、20℃キシレン不溶部を分離する。濾液を濃縮、乾固してキシレンを蒸発させ、さらに減圧下60℃で乾燥して、20℃のキシレンに可溶な重合体を得る。この乾燥重量を仕込みサンプル重量で除した値を百分率で表現したものが20℃キシレン可溶部の含有量である。
【0029】
沸騰ヘプタン可溶部の含有量とは、以下の方法で測定されるものである。すなわち、上記の20℃キシレン可溶部の測定で得られた20℃キシレン不溶部を乾燥後、沸騰n−ヘプタンで8時間ソックスレー抽出する。この抽出残渣を沸騰ヘプタン不溶部と称し、この沸騰ヘプタン不溶部の乾燥重量を仕込みサンプル重量(5g)から減じた値を仕込みサンプル重量で除した値を百分率で表現したものが、沸騰ヘプタン可溶部の含有量である。
【0030】
沸騰ヘプタン不溶部のアイソタクチック・ペンタッド分率は、上記沸騰ヘプタン可溶部の含有量の測定で得られた沸騰ヘプタン不溶部を用いて測定される。
【0031】
アイソタクチック・ペンタッド分率とは、13C−NMRを使用して測定される結晶性ポリプロピレン分子鎖中のペンタッド単位でのアイソタクチック連鎖、換言すればプロピレン単量体単位が5個連続してメソ結合した連鎖の中心にあるプロピレン単量体単位の分率であり、A.ZambelliらによってMacromolecules,6,925(1973)に発表されている方法を、Macromolecules,8,687(1975)に基づいたNMR吸収ピークの帰属によって行うものである。具体的には13C−NMRスペクトルのメチル炭素領域の全吸収ピーク中のmmmmピークの面積分率としてアイソタクチック・ペンタッド分率を測定する。なお、この方法により英国NATIONAL PHYSICAL LABORATORYのNPL 標準物質CRM No. M19−14Polypropylene PP/MWD/2のアイソタクチック・ペンタッド分率を測定したところ、0.944であった。
【0032】
該ブロックコポリマーはスラリー重合法および気相重合法によって製造が可能である。特に高い耐衝撃性が要求される用途に用いる場合、第2セグメント量を多くすることが必要であり気相重合法によって好適に製造される。
【0033】
成分(a)のプロピレン系重合体のプロピレンから誘導される単量体単位の含有量は、60〜99重量%であり、好ましくは70〜98重量%であり、より好ましくは80〜97重量%である。ただし、プロピレン系重合体の全単量体単位の含有量を100重量%とする。該含有量が少なすぎると樹脂組成物の低温衝撃強度に不足することがあり、該含有量が多すぎると樹脂組成物の剛性や耐熱性が低下することがある。該含有量は赤外吸収スペクトル測定装置で測定される。
【0034】
成分(a)のプロピレン系重合体のメルトフローレート(MFR)は、0.3〜300g/10分であり、好ましくは0.5〜100g/10分であり、より好ましくは1〜80g/10分である。該MFRが小さすぎるとプロピレン系樹脂組成物の流動性が不足する場合があり、該MFRが大きすぎると衝撃強度が低下することがある。該MFRは、JIS K7210に従い、荷重21.18N、温度230℃の条件で測定される。
【0035】
成分(a)のプロピレン系重合体の融解熱量は、50mJ/mg以上であり、好ましくは55mJ/mg以上であり、より好ましくは60mJ/mg以上である。該融解熱量が低すぎると重合体が互着を起こす場合がある。また、該融解熱量が高すぎると低温衝撃強度が低下する事があるため、好ましくは150mJ/mg以下であり、より好ましくは120mJ/mg以下である。
【0036】
なお、該融解熱量は、JIS K7122に従い、示差走査熱量測定(DSC)法により測定される。
【0037】
成分(a)のプロピレン系重合体の製造方法としては、公知のオレフィン重合用触媒を用いた公知の重合方法が用いられる。例えば、チーグラー・ナッタ系触媒、メタロセン系錯体や非メタロセン系錯体などの錯体系触媒を用いた、スラリー重合法、溶液重合法、塊状重合法、気相重合法等があげられる。また、市販の該当品を用いることも可能である。
【0038】
成分(b)のエチレン系重合体は、エチレンから誘導される単量体単位と、炭素原子数3〜20の鎖状オレフィンから誘導される単量体単位とを含有する重合体である。炭素原子数3〜20の鎖状オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−へプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセン等の直鎖状オレフィン;3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、2−エチル−1−ヘキセン、2,2,4−トリメチル−1−ペンテン等の分岐状オレフィンなどがあげられ、これらは1種以上用いられる。
【0039】
成分(b)のエチレン系重合体としては、具体的には、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−1−ブテン共重合体、エチレン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−1−オクテン共重合体、エチレン−プロピレン−1−ブテン共重合体、エチレン−1−ブテン−1−ヘキセン共重合体などをあげることができる。
【0040】
成分(b)のエチレン系重合体において、エチレンから誘導される単量体単位の含有量は、40〜85重量%、好ましくは45〜80重量%、より好ましくは45〜70重量%である。ただし、エチレン系重合体の全単量体単位の含有量を100重量%とする。
【0041】
該含有量が少なすぎると成形品の互着を発生することがあり、該含有量が多すぎると成形品の低温衝撃強度が不足することがある。該含有量は、核磁気共鳴装置により測定される。
【0042】
成分(b)のエチレン系重合体の温度100℃で測定されるムーニー粘度ML100℃(1+4)が10〜90であり、好ましくは20〜80であり、より好ましくは20〜60である。ムーニー粘度ML100℃(1+4)が大きすぎると樹脂組成物の流動性が低くなり成形不良を生じることがあり、ムーニー粘度ML100℃(1+4)が小さすぎると低温衝撃強度が不足することがある。ムーニー粘度ML100℃(1+4)は、ASTM D−927−57Tに準拠して測定される。
【0043】
成分(b)のエチレン系重合体のガラス転移温度(Tg)は、−20℃以下であり、好ましくは−30℃以下であり、より好ましくは−40℃以下である。該Tgが高すぎると、低温衝撃強度が不足することがある。また、該Tgが低すぎると重合体が互着を生じやすいため、好ましくは−70℃以上、より好ましくは−60℃以上である。なお、該Tgは、JIS K7121に従い測定される。
【0044】
成分(b)のエチレン系重合体の製造方法としては、公知のオレフィン重合用触媒を用いた公知の重合方法が用いられる。例えば、チーグラー・ナッタ系触媒、メタロセン系錯体や非メタロセン系錯体などの錯体系触媒を用いた、スラリー重合法、溶液重合法、塊状重合法、気相重合法等があげられる。また、市販の該当品を用いることも可能である。
【0045】
成分(c)のエチレン、プロピレン、および、非共役ジエンから誘導される単量体単位とを含有する重合体は、温度100℃で測定されるムーニー粘度ML100℃(1+4)が30〜150であり、好ましくは60〜150であり、より好ましくは60〜120である。ムーニー粘度ML100℃(1+4)が小さすぎると低温衝撃強度が不足することがあり、大きすぎると樹脂組成物の流動性が不足して成形不良を生じることがある。ムーニー粘度ML100℃(1+4)は、ASTM D−927−57Tに準拠して測定される。
【0046】
成分(c)を構成する炭素原子数2〜20の鎖状オレフィンから誘導される繰り返し単位の鎖状オレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−へプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセン等の直鎖状オレフィンや、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、2−エチル−1−ヘキセン、2,2,4−トリメチル−1−ペンテン等の分岐状オレフィンなどがあげられ、これらは1種以上用いられる。
【0047】
成分(c)を構成する炭素原子数2〜20の鎖状オレフィンから誘導される繰り返し単位は20〜60重量%、好ましくは25〜60重量%、より好ましくは25〜55重量%である。ただし、成分(c)を構成する全単量体単位の含有量を100重量%とする。
【0048】
該含有量が少なすぎると成形品の低温衝撃強度が不足することがあり、該含有量が多すぎると成形品の互着を発生することがある。該含有量は赤外吸収スペクトル測定装置で測定される。
【0049】
また、成分(c)を構成する非共役ジエンとしてはジシクロペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、シクロオクタジエン、メチレンノルボルネン、エチリデンノルボルネン等があげられる。なかでもジシクロペンタジエンとエチリデンノルボルネンが好ましい。
【0050】
成分(c)の非共役ジエンから誘導される単量体単位の含有量は、0.1〜30重量%、好ましくは0.3〜15重量%、より好ましくは0.5〜5重量%である。ただし、成分(c)を構成する全単量体単位の含有量を100重量%とする。該含有量が少なすぎると射出成形時の流動性に不足することがあり、該含有量が多すぎると成形品の各種耐久物性が悪化することがある。該含有量は赤外吸収スペクトル測定装置で測定される。
【0051】
成分(c)のエチレン、プロピレン、および、非共役ジエンから誘導される単量体単位とを含有する重合体の製造方法としては、公知のオレフィン重合用触媒を用いた公知の重合方法が用いられる。例えば、チーグラー・ナッタ系触媒、メタロセン系錯体や非メタロセン系錯体などの錯体系触媒を用いた、スラリー重合法、溶液重合法、塊状重合法、気相重合法等があげられる。また、市販の該当品を用いることも可能である。
【0052】
成分(c)のエチレン、プロピレン、および、非共役ジエンから誘導される単量体単位とを含有する重合体のガラス転移温度(Tg)は、−70℃以上であり、好ましくは−60℃以上、より好ましくは−50℃以上である。
【0053】
該Tgが低すぎると、当該重合体の互着が生じやすくなる。また、該Tgは、樹脂組成物の生産安定性の観点から、好ましくは80℃以下であり、より好ましくは60℃以下である。なお、該Tgは、JIS K7121に従い測定される。
【0054】
本発明のプロピレン系重合体組成物の成分(a)、成分(b)および成分(c)の含有量は、成分(a)〜(c)の合計量を100重量%として、成分(a)の含有量が、20〜80重量%であり、好ましくは30〜60重量%であり、成分(b)の含有量が、1〜40重量%であり、好ましくは5〜30重量%であり、成分(c)の含有量が、20〜60重量%であり、好ましくは30〜50重量%である。成分(a)が少なすぎると成形品の耐熱性に問題が生じることがあり、多すぎると低温衝撃性が不足することがある。成分(b)が少なすぎると成形収縮率が大きくなり寸法安定性に問題を生じる事があり、多すぎると成形品の耐熱性に問題を生じることがある。成分(c)が少なすぎると低温衝撃性が不足する事があり、多すぎると流動性が不足することがある。
【0055】
本発明のプロピレン系樹脂組成物は、動的に部分架橋させる成分(d)として架橋剤が添加される。
【0056】
架橋剤は公知のものを用いる事が可能であるが、例えば、有機過酸化物としては、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパ−オキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパ−オキシ)ヘキシン−3、1,3−ビス(t−ブチルパ−オキシイソプロピル)ベンゼン、1,1−ジ(t−ブチルパ−オキシ)3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(パ−オキシベンゾイル)ヘキシン−3、ジクミルパ−オキシド等がある。これらの中では臭気、スコ−チ性の点で特に2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパ−オキシ)ヘキサンが好ましい。
【0057】
成分(d)の添加量は、本発明のプロピレン系樹脂組成物を100重量部とすると、それに対して0.005〜2重量部、好ましくは0.01〜0.6の範囲で選ぶことができる。成分(d)の添加量が0.005重量部未満では架橋反応の効果が小さく、2重量部を超えると反応の制御が難しく、又経済的にも有利ではない。
【0058】
本発明のプロピレン系樹脂組成物を製造する際、架橋剤と併用して架橋助剤も使用することができる。
【0059】
架橋助剤としては、N,N’−m−フェニレンビスマレイミド、トルイレンビスマレイミド、P−キノンジオキシム、ニトロベンゼン、ジフェニルグアニジン、トリメチロ−ルプロパン等のパ−オキサイド架橋助剤、又はジビニルベンゼン、エチレングリコ−ルジメタクリレ−ト、ポリエチレングリコ−ルジメタクリレ−ト、トリメチロ−ルプロパントリメタクリレ−ト、アリルメタクリレ−ト等の多官能性のビニルモノマ−を配合することもできる。
【0060】
本発明のプロピレン系重合体組成物はさらに離型性を高める観点から、成分(a)〜(c)に加え、下記成分(e)を含有することが好ましい。
(e):炭素原子数5以上の脂肪酸、炭素原子数5以上の脂肪酸の金属塩、炭素原子数5以上の脂肪酸のアミド、および、炭素原子数5以上の脂肪酸のエステルからなる化合物群から選ばれる少なくとも1種の化合物
【0061】
成分(e)の炭素原子数5以上の脂肪酸としては、ラウリル酸、パルミチン酸、ステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、ベヘニン酸、オレイン酸、エルカ酸、リノール酸、リシノール酸、エチレンビスステアリン酸、エチレンビスオレイン酸、ヘキサメチレンビスオレイン酸などを例示することができる。
【0062】
成分(e)の炭素原子数5以上の脂肪酸の金属塩としては、上記脂肪酸と、Li、Na、Mg、Al、K、Ca、Zn、Ba、Pbなどの金属との塩を、具体的には、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛などを例示することができる。
【0063】
成分(e)の炭素原子数5以上の脂肪酸のアミドとしては、ラウリル酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、ステアリルジエタノールアミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミドを例示することができる。なかでも、エルカ酸アミドが好ましい。
【0064】
成分(e)の炭素原子数5以上の脂肪酸のエステルとしては、脂肪族アルコール(ミリスチルアルコール、パルミチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、12−ヒドロキシステアリルアルコールなど)、芳香族アルコール(ベンジルアルコール、β−フェニルエチルアルコール、フタリルアルコールなど)、多価アルコール(グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、ソルビタン、ソルビトール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパンなど)などのアルコールと、上記脂肪酸とのエステルを、具体的には、グリセリンモノオレート、グリセリンジオレート、ポリエチレングリコールモノステアレート、クエン酸ジステアレートを例示することができる。
【0065】
本発明のプロピレン系重合体組成物は、必要に応じ、無機フィラー(タルク、炭酸カルシウム、焼成カオリン等)、有機フィラー(繊維、木粉、セルロースパウダー等)、滑剤(シリコーンオイル、シリコーンガム等)、酸化防止剤(フェノール系、イオウ系、燐系、ラクトン系、ビタミン系等)、耐候安定剤、紫外線吸収剤(ベンゾトリアゾール系、トリアジン系、アニリド系、ベンゾフェノン系等)、熱安定剤、光安定剤(ヒンダードアミン系、ベンゾエート系等)、顔料、造核剤、吸着剤(金属酸化物(酸化亜鉛、酸化マグネシウム等)、金属塩化物(塩化鉄、塩化カルシウム等)、ハイドロタルサイト、アルミン酸塩等)等を含有してもよい。
【0066】
成分(e)の含有量としては、成形製造時の離型性と、金型汚染性とのバランスから、成分(a)〜(c)の合計量100重量部あたり、好ましくは0.01〜5重量部であり、より好ましくは0.05〜2重量部である。
【0067】
本発明のプロピレン系樹脂組成物は、成分(a)と成分(b)、成分(c)と、必要に応じて他の成分とを、公知の方法、例えば、二軸押出機、バンバリーミキサーなどにより溶融混練することにより得ることができる。
【0068】
本発明のプロピレン系樹脂組成物は、自動車内装用部品としての性能を損わない範囲で、無機充填剤、例えば炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、クレー、カオリン、タルク、シリカ、ケイソウ土、雲母粉、アスベスト、アルミナ、硫酸バリウム、硫酸アルミニウム、硫酸カルシウム、塩基性炭酸マグネシウム、二硫化モリブデン、グラファイト、ガラス繊維、ガラス球、シラスバルーン、カーボン繊維等あるいは着色剤、例えばカーボンブラック、酸化チタン、亜鉛華、べんがら、群青、紺青、アゾ顔料、ニトロソ顔料、レーキ顔料、フタロシアニン顔料等を配合することができる。
【0069】
プロピレン系重合体組成物は自動車内装用部品、例えば、インストルメントパネル、ステアリングホイール、各種ハンドルレバー、ドアトリム、エアバッグカバーに用いられる。好ましくはエアバッグカバー、特に好ましくは運転席用エアバッグカバーとして好適に用いられる。
【実施例】
【0070】
以下、実施例および比較例によって、本発明をより詳細に説明する。
[I] 物性測定方法
(1)ガラス転移温度(Tg)
示差走査熱量測定装置(セイコー電子工業社製DSC220C:入力補償DSC)を使用し、JIS K7121に従い測定した。
(2)結晶化熱量(ΔHc)
示差走査熱量測定装置(セイコー電子工業社製DSC220C:入力補償DSC)を使用し、JIS K7122に従い測定した。
(3)単量体単位含有量
成分(a)、成分(c)は赤外吸収スペクトル(日本分光製 FT−IR5200型)を用い、検量線による方法により求めた。
成分(b)は、核磁気共鳴装置(Brucker製 AC−250型)を用いて、13C−NMRスペクトル、1H−NMRスペクトルの測定結果に基づき算出した。
【0071】
(4)離型性
図2に示す形状の成形を得る金型により、離型状態を2段階評価した。
(○:離型不良なし、×:離型不良発生)
成形は、日精工業製射出成形機(FS160S25ASEN)を用い、シリンダー設定温度220℃、射出率90〜110g/秒、射出時間15秒、冷却時間30秒、エアエジェクター圧力1.8kg/cm2で、ヒケなどの成形不良が生じない条件で実施した。
(5)静摩擦力
静摩擦力の測定には、所定条件で射出成形した厚さ2mmの平板状成形品の中心部から25×25mmの試験片を準備し、ホットプレート(新東化学 HP2000)とASTM平面圧子を装備した表面試験機(新東科学 HEIDON−14S)を用いた。
測定は離型性を評価した金型と同一の表面状態を有する金型を離型性評価時の金型温度に合わせ、測定速度75mm/分、状態調整時の荷重2100g、状態調整時間30分、測定時の荷重100gの条件下で、樹脂と金型との静摩擦力を測定した。静摩擦力は、n=7の平均値を用いた。
(6)引張破断伸び(TE)
所定条件で射出成形した厚さ2mmの平板状成形品からJIS3号試験片を作成し、標線間距離20mm、引張速度200mm/分、23℃、湿度50%の条件下で測定した。測定した引張伸びを2段階評価した。
(○:TEが300%を越えている、×:TEが300%以下)
【0072】
実施例1
成分(a)としてプロピレン・エチレンランダム共重合体A−1(住友化学工業 ノーブレンZ144A、MFR=25g/10分、ΔHc=82mJ/mg、プロピレン含量96重量%)50重量%と、成分(b)としてエチレン・プロピレンランダム共重合体B−1(住友化学 エスプレンSPO E201、ML100℃(1+4)=43、Tg=−58℃、プロピレン含量53重量%)10重量%と、成分(c)としてエチレン・プロピレン・エチリデンノルボルナジエン共重合体C−1(住友化学工業 エスプレンEPDM E512P、ML100℃(1+4)=90、Tg=−49℃、プロピレン含量30重量%、エチリデンノルボルナジエン含量0.6重量%)40重量%を配合し、バンバリー混練機(神戸製鋼製 BB−16 MIXER)を用いて溶融混練した後、ペレット状のプロピレン系樹脂組成物(樹脂組成物1)を得た。
溶融混練の前に(a)〜(c)成分の全樹脂量100重量部に対し、酸化防止剤(チバスペシャリティーケミカルズ製 Irganox1010)を0.1重量部、成分(e)としてエルカ酸アミド(日本精化製 ニュートロンS)を0.05重量部になるようにプロピレン系樹脂組成物に添加した。
得られた樹脂組成物1を東芝機械製射出成形機IS−100ENを用いて、物性評価に使用する平板状成形品を得た。成形は、成形温度220℃、射出圧力50〜100MPa、金型温度50℃、冷却時間30秒、射出率20〜40g/秒の範囲内で実施した。成形には縦150mm、横90mm、厚み2mm、ゲート面積2×5mmのサイドゲート金型を用い、成形収縮率、静摩擦力、引張伸びを測定した。結果を表1に示す。
また、所定部分の表面粗さ(Rz)が3.1μm、表面の凹凸の凸部と凸部の平均距離(Lm)が39μmの金型を用い、金型温度とプロピレン系樹脂組成物のDSCにより得られる結晶化ピーク温度の差が60℃の条件で樹脂組成物1の離型性を評価した。結果を表1に示す。
【0073】
比較例1
金型温度とプロピレン系樹脂組成物のDSCにより得られる結晶化ピーク温度の差が30℃の条件で離型性の評価をした以外、実施例1と同様の項目、評価を実施した。結果を表1に示す。
【0074】
比較例2
成分(a)としてプロピレン・エチレンブロック共重合体A−2(住友化学 ノーブレンAX568、MFR=65g/10分、ΔHc=96mJ/mg、プロピレン含量94.2重量%)50重量%と、成分(b)としてエチレン・ブテン共重合体B−2(三井化学 タフマー A1050、ML100℃(1+4)=40、Tg=−57℃、ブテン含量27重量%)50重量%を配合し、実施例1と同様の方法でペレット状のプロピレン系樹脂組成物(樹脂組成物2)を得た。
得られた樹脂組成物2を実施例1と同様の方法で同様の項目を評価した。結果を表1に示す。
【0075】
比較例3
成分(a)としてプロピレン・エチレンブロック共重合体A−2 50重量%と、成分(c)としてエチレン・プロピレン・エチリデンノルボルナジエン共重合体C−2(住友化学 エスプレンEPDM E6192S、ML100℃(1+4)=150以上、Tg=−49℃、プロピレン含量38重量%、エチリデンノルボルナジエン含量3.5重量%)50重量%を配合し、実施例1と同様の方法でペレット状のプロピレン系樹脂組成物(樹脂組成物3)を得た。
得られた樹脂組成物3を実施例1と同様の方法で同様の項目を評価した。結果を表1に示す。
【0076】
比較例4
成分(a)としてプロピレン・エチレン・ブテンランダム共重合体A−3(住友化学 ノーブレンW531、MFR=10g/10分、ΔHc=−77mJ/mg、エチレン含量2重量%、ブテン含量5.4重量%)50重量%と、成分(b)としてエチレン・オクテン共重合体B−3(デュポンダウエラストマー エンゲージ 8180、ML100℃(1+4)=43、Tg=−54℃、オクテン含量42重量%)50重量%を配合し、実施例1と同様の方法でペレット状のプロピレン系樹脂組成物(樹脂組成物4)を得た。
得られた樹脂組成物2を実施例1と同様の方法で同様の項目を評価した。結果を表1に示す。













【0077】
【表1】

【0078】
本発明の請求範囲内にある実施例1の離型性は良好であり、自動車内装部品として好適に使用できる。ただし、本発明の請求範囲に含まれない比較例1〜4は金型から成形品を取り出す事が困難であり、成形品が安定的に得られない。したがって、本発明の目的を達成するには請求範囲を満足するプロピレン系樹脂組成物である事が重要である。
【0079】
実施例2
樹脂組成物1を、離型性を除いて実施例1と同様の項目、評価を実施した。所定部分の表面粗さ(Rz)が2.9μm、表面の凹凸の凸部と凸部の平均距離(Lm)が26μmの金型を用い、金型温度とプロピレン系樹脂組成物のDSCにより得られる結晶化ピーク温度の差が60℃の条件で静摩擦力を評価した。結果を表2に示す。
【0080】
実施例3
樹脂組成物1を、離型性を除いて実施例1と同様の項目、評価を実施した。所定部分の表面粗さ(Rz)が10.8μm、表面の凹凸の凸部と凸部の平均距離(Lm)が45μmの金型を用い、金型温度とプロピレン系樹脂組成物のDSCにより得られる結晶化ピーク温度の差が60℃の条件で静摩擦力を評価した。結果を表2に示す。
【0081】
比較例5
樹脂組成物1を、離型性を除いて実施例1と同様の項目、評価を実施した。所定部分の表面粗さ(Rz)が0.8μm、表面の凹凸の凸部と凸部の平均距離(Lm)が123μmの金型を用い、金型温度とプロピレン系樹脂組成物のDSCにより得られる結晶化ピーク温度の差が60℃の条件で離型性の変わりに静摩擦力を評価した。結果を表2に示す。
【0082】
比較例6
樹脂組成物1を、離型性を除いて実施例1と同様の項目、評価を実施した。所定部分の表面粗さ(Rz)が3.3μm、表面の凹凸の凸部と凸部の平均距離(Lm)が148μmの金型を用い、金型温度とプロピレン系樹脂組成物のDSCにより得られる結晶化ピーク温度の差が60℃の条件で離型性の変わりに静摩擦力を評価した。結果を表2に示す。
【0083】
比較例7
樹脂組成物1を、離型性を除いて実施例1と同様の項目、評価を実施した。所定部分の表面粗さ(Rz)が82.0μm、表面の凹凸の凸部と凸部の平均距離(Lm)が154μmの金型を用い、金型温度とプロピレン系樹脂組成物のDSCにより得られる結晶化ピーク温度の差が60℃の条件で離型性の変わりに静摩擦力を評価した。結果を表2に示す。
【0084】
【表2】

【0085】
実施例1より、プロピレン系樹脂樹脂組成物は静摩擦力が442cN以下の場合は離型性に問題は生じないと判断され、比較例1より、静摩擦力が703cN以上の場合に離型不良を生じると判断される。この判定基準により、実施例2〜3、および、比較例5〜7の離型性を判定した。
【0086】
本発明の請求範囲である実施例2〜3は、実施例1と同様に離型性に問題は生じないと判断され、自動車内装用部品として好適に使用できる。
【0087】
一方、本発明の請求範囲に含まれない比較例5〜6は離型不良を生じ、成形品が安定的に得られないと判断される。また、比較例7は離型性に問題は生じないと判断されるが、成形品の引張伸びが300%以下であり、自動車内装用部品として要求物性を満足する事ができない。
【0088】
したがって、本発明の目的を達成するには金型の表面形状が請求範囲を満足する事が重要である。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】成形収縮率測定部位を示す図である。
【図2】離型性評価成形品の概略を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の条件(A)及び(B)を満足するプロピレン系樹脂組成物を、下記の条件(I)及び(II)を満足する金型を用いて射出成形して得られる自動車内装用部品。
(A):互いに直行する方向の成形収縮率S1とS2の算術平均値Sa[=(S1+S2)×1000/2]が7〜15であること
(B):DSC(熱示差分析計)により得られる結晶化ピーク温度が100℃以上であること
(I):意匠面を除く金型表面について、10点平均粗さ(Rz)が1〜50μmの部分を有すること
(II):意匠面を除く金型表面について、表面の凹凸の凸部と凸部の平均距離(Lm)が120μm未満の部分を有すること
【請求項2】
金型温度とプロピレン系樹脂組成物のDSCにより得られる結晶化ピーク温度の差が30℃を越える条件で成形される請求項1記載の自動車内装用部品。
【請求項3】
プロピレン系樹脂組成物が下記の成分(a)〜(c)を含む請求項1記載の自動車内装用部品。
(a):プロピレンから誘導される単量体単位と、炭素原子数2〜20の鎖状オレフィン(ただしプロピレンを除く)から誘導される単量体単位とを含有する重合体であって、下記要件(a1)、(a2)および(a3)を充足するプロピレン系重合体20〜80重量%
(a1)プロピレンから誘導される単量体単位の含有量が60〜99重量%であること。(ただし、プロピレン系重合体の全単量体単位の含有量を100重量%とする。)
(a2)温度230℃および荷重2.16kgで測定されるメルトフローレートが0.3〜300g/10分であること。
(a3)融解熱量が50mJ/mg以上であること。
(b):エチレンから誘導される単量体単位と、炭素原子数3〜20の鎖状オレフィンから誘導される単量体単位とを含有する重合体であって、下記要件(b1)、(b2)、(b3)および(b4)を充足するエチレン系重合体1〜40重量%
(b1)エチレンから誘導される単量体単位の含有量が60〜95重量%であること。(ただし、エチレン系重合体の全単量体単位の含有量を100重量%とする。)
(b2)温度100℃で測定されるムーニー粘度ML100℃(1+4)が10〜90であること。
(b3)ガラス転移温度が−20℃以下であること。
(b4)融解熱量が80mJ/mg以下であること。
(c):エチレン、プロピレン、および、非共役ジエンから誘導される単量体単位とを含有する重合体であって、下記要件(c1)および(c2)を充足するエチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合体 20〜60重量%
(c1)非共役ジエン単量体単位の含有量が0.1〜30重量%であること。(ただし、エチレン−プロピレン−非共役ジエン系重合体の全単量体単位の含有量を100重量%とする。)
(c2)温度100℃で測定されるムーニー粘度ML100℃(1+4)が30〜150であること。
【請求項4】
プロピレン系樹脂組成物が、請求項3記載の(a)〜(c)を架橋剤(d)により動的に部分架橋したものである請求項3記載の自動車内装用部品。
【請求項5】
自動車内装用部品がエアバッグカバーである請求項1記載の自動車内装用部品。
【請求項6】
自動車内装用部品が運転席用エアバッグカバーである請求項1記載の自動車内装用部品。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−248156(P2006−248156A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−70978(P2005−70978)
【出願日】平成17年3月14日(2005.3.14)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】