説明

ポリアミド化合物及びそれを含有してなるエポキシ樹脂組成物

【課題】充填剤の配合量を増加させることなく、エポキシ樹脂に対して、表面粗度の小さな面に対する高いピール強度を付与することのできる硬化剤を提供すること
【解決手段】繰り返し単位中に、下記一般式(I)及び/又は一般式(I’)で表される部分構造を有することを特徴とするポリアミド化合物。但し、式中のXは水素原子又は水酸基を表す。






【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規なポリアミド化合物及びそれを含有してなるエポキシ樹脂組成物に関し、特に、繰り返し単位中に特定の構造を有する新規なポリアミド化合物、及び、それを含有してなるビルドアップ型絶縁材料に好適なエポキシ樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂は、絶縁性、寸法精度、強度が供に優れているので、従来からプリント配線基板に繁用されており、特に、高ガラス転移温度、低線膨張係数、可撓性等に優れた硬化物を得る観点から、フェノール性水酸基を有するポリアミド化合物を硬化剤に使用することが提案されている(特許文献1)。
【0003】
一方、微細化するプリント基板を開発するにあたり、プリント基板の表面粗度を小さくする傾向があるため、近年においては、表面粗度の小さな面に対して高いピール強度を維持することのできる熱硬化型絶縁樹脂が求められている。また、ピール強度を高くするためには、樹脂に充填剤を添加して線膨張性を低くする手段があるが、充填剤の添加量が増えると、樹脂の引張強度が低下するという問題点が生じる。したがって、配合する充填剤の量を増やさずに線膨張性を低下させなければならないが、未だそのような材料は見出されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開2006/129480号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって本発明の第1の目的は、充填剤の配合量を増加させることなく、エポキシ樹脂に対して、表面粗度の小さな面に対する高いピール強度を付与することのできる硬化剤を提供することにある。
本発明の第2の目的は、表面粗度の小さな面に対するピール強度が高いエポキシ樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、上記の諸目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、エポキシ樹脂に対して、表面粗度の小さな面に対する高いピール強度を付与することのできる硬化剤として機能する、新規なポリアミド化合物を見出し本発明に到達した。
【0007】
即ち本発明は、繰り返し単位中に、下記一般式(I)及び/又は一般式(I’)で表される部分構造を有することを特徴とするポリアミド化合物、並びに、該ポリアミド化合物を含有するエポキシ樹脂組成物である。


但し、上記一般式中のXは、水素原子又は水酸基を表す。
【0008】
本発明のポリアミド化合物は、前記繰り返し単位中に、上記スルホン結合を有する部分構造に加えて、更に下記一般式(II)で表される部分構造を有していても良い。

【0009】
また本発明のポリアミド化合物は、前記繰り返し単位中に、上記スルホン結合を有する部分構造に加えて、更に下記一般式(II’)で表される部分構造を有していても良い。

【0010】
本発明のポリアミド化合物は、特に、ジアミン化合物とジカルボン酸化合物からなるポリアミド化合物であって、前記ジアミン化合物が3,3’−ジアミノジフェニルスルホンのみ、又は、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン及び2,4−ジアミノフェノールのみからなることが好ましい。
【0011】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂100質量部に対し、本発明のポリアミド化合物1〜100質量部を含有することが必要であり、充填剤として、平均粒径が0.01〜20μmの球状シリカ、及び/又は、リン系難燃剤を更に含有することが好ましい。また、上記リン系難燃剤の使用量は、エポキシ樹脂とポリアミド化合物の合計100重量部に対して、5〜100質量部であることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明のポリアミド化合物をエポキシ樹脂の硬化剤として使用することによって、小さな表面粗度を有する面に対して高いピール強度を有する熱硬化性エポキシ樹脂組成物が得られ、このエポキシ樹脂組成物は、ビルドアップ型絶縁樹脂材料として好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明のポリアミド化合物は、3,3’−ジアミノジフェニルスルホンを主成分とするジアミン化合物と、ジカルボン酸化合物との反応によって得られるポリアミド化合物であり、文献未載の化合物である。本発明においては、上記3,3’−ジアミノジフェニルスルホンと共に、種々のジアミン化合物を併用することができる。
【0014】
上記3,3’−ジアミノジフェニルスルホンと共に使用することのできるジアミン化合物としては、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、m−トリレンジアミン;4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルチオエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルチオエーテル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニルチオエーテル、3,3’−ジエトキシ−4,4’−ジアミノジフェニルチオエーテル、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノジフェニルチオエーテル;
【0015】
4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン;3,3’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン;2,2’−ビス(3−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン;ベンチジン、3,3’−ジメチルベンチジン、3,3’−ジメトキシベンチジン;3,3’−ジアミノジフェニル;p−キシリレンジアミン、m−キシリレンジアミン、o−キシリレンジアミン;2,2’−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)ベンゼン、1,3’−ビス(3−アミノフェノキシフェニル)プロパン;ビス(4−アミノ−3−メチルフェニル)メタン、ビス(4−アミノ−3,5−ジメチルフェニル)メタン、ビス(4−アミノ−3−エチルフェニル)メタン、ビス(4−アミノ−3,5−ジエチルフェニル)メタン、ビス(4−アミノ−3−プロピルフェニル)メタン、ビス(4−アミノ−3,5−ジプロピルフェニル)メタン;2,2’−ビス(3−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2’−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン;2,4−ジアミノフェノール等があげられる。
【0016】
本発明においては、特に3,3’−ジアミノジフェニルスルホンを単独で用いるか、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン及び2,4−ジアミノフェノールとを組合せて使用することが好ましい。このようにすることによって、種々のエポキシ樹脂との反応性が向上するので、より樹脂強度の高い樹脂組成物を得ることができる。
【0017】
本発明で使用するジカルボン酸化合物としては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、4,4’−オキシ二安息香酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、3,3’−メチレン二安息香酸、4,4’−チオ二安息香酸、3,3’−カルボニル二安息香酸、4,4−スルフォニル二安息香酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,2−ナフタレンジカルボン酸、5−ヒドロキシイソフタル酸、4−ヒドロキシイソフタル酸、2−ヒドロキシイソフタル酸、3−ヒドロキシイソフタル酸、2,2’−ビス(3−カルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2’−ビス(4−カルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン等があげられる。本発明のポリアミド化合物に適度な熱安定性と溶解性を付与する観点から、特に、イソフタル酸及び/又はテレフタル酸を用いることが好ましい。
【0018】
以下に、本発明のポリアミド化合物を具体的に例示するが、本発明はこれらの具体例によって限定されることはない。
【0019】

【0020】

【0021】

【0022】

【0023】
本発明のポリアミド化合物は、エポキシ樹脂の硬化剤として有用であり、エポキシ樹脂100質量部に対し、本発明のポリアミド化合物1〜100質量部、好ましくは5〜80質量部含有することによって、小さな表面粗度を有する面に対して高いピール強度を有する熱硬化性エポキシ樹脂組成物を得ることができる。
【0024】
本発明のエポキシ樹脂組成物に用いられるエポキシ樹脂は特に制限されず、公知の芳香族エポキシ化合物、脂環族エポキシ化合物、脂肪族エポキシ化合物等の中から適宜選択して使用することができる。芳香族エポキシ化合物としては、例えば、ハイドロキノン、レゾルシノール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ノボラック、テトラブロモビスフェノールA、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン等の、多価フェノールのグリシジルエーテル化合物が挙げられる。
【0025】
脂環族エポキシ化合物としては、少なくとも1個の脂環族環を有する多価アルコールのポリグリシジルエーテル、又は、シクロヘキセンやシクロペンテン環含有化合物を酸化剤でエポキシ化することによって得られる、シクロヘキセンオキサイドやシクロペンテンオキサイド含有化合物が挙げられる。例えば、水素添加ビスフェノールAジグリシジルエーテル;3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、3,4−エポキシ−1−メチルシクロヘキシル−3,4−エポキシ−1−メチルヘキサンカルボキシレート、6−メチル−3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−6−メチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシ−3−メチルシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシ−3−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシ−5−メチルシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシ−5−メチルシクロヘキサンカルボキシレート;ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、メチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサン)、2,2−ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロパン、ジシクロペンタジエンジエポキサイド、エチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジオクチル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ−2−エチルへキシル等が挙げられる。
【0026】
脂肪族エポキシ化合物としては、脂肪族多価アルコール又はそのアルキレンオキサイド付加物のポリグリシジルエーテル、脂肪族長鎖多塩基酸のポリグリシジルエステル、グリシジルアクリレート又はグリシジルメタクリレートのビニル重合により合成したホモポリマー;グリシジルアクリレート又はグリシジルメタクリレートとその他のビニルモノマーとのビニル重合により合成したコポリマー等が挙げられる。
【0027】
代表的な化合物としては、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンのトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンのトリグリシジルエーテル、ソルビトールのテトラグリシジルエーテル、ジペンタエリスリトールのヘキサグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールのジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールのジグリシジルエーテル等の多価アルコールのグリシジルエーテル;プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン等の脂肪族多価アルコールに1種又は2種以上のアルキレンオキサイドを付加することにより得られるポリエーテルポリオールのポリグリシジルエーテル;脂肪族長鎖ニ塩基酸のジグリシジルエステルが挙げられる。更に、脂肪族高級アルコールのモノグリシジルエーテルやフェノール、クレゾール、ブチルフェノール、又、これらにアルキレンオキサイドを付加することによって得られるポリエーテルアルコールのモノグリシジルエーテル;高級脂肪酸のグリシジルエステル、エポキシ化大豆油、エポキシステアリン酸オクチル、エポキシステアリン酸ブチル、エポキシ化ポリブタジエン等が挙げられる。
【0028】
本発明のエポキシ樹脂組成物には、本発明のポリアミド化合物以外のエポキシ樹脂硬化剤を用いることもできる。他の硬化剤と組み合わせて使用することにより、得られる硬化性組成物の粘度や硬化特性、硬化後の物性等を制御することができる。本発明のポリアミド化合物と共に使用する他の硬化剤としては、公知の、潜在性硬化剤、ポリアミン化合物、ポリフェノール化合物等が挙げられる。
【0029】
上記潜在性硬化剤としては、ジシアンジアミド、ヒドラジド、イミダゾール化合物、アミンアダクト、ケチミン、三級アミン等が挙げられる。これらの潜在性硬化剤を使用することにより、取り扱いが容易な一液型の硬化性組成物を得ることができるので、上記潜在性硬化剤を併用することは本発明の好ましい態様である。
【0030】
前記ポリアミン化合物としては、例えば、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等の脂肪族ポリアミン;メンセンジアミン、イソホロンジアミン、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン等の脂環族ポリアミン;m−キシリレンジアミン等の芳香環を有する脂肪族アミン;m−フェニレンジアミン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、α,α−ビス(4−アミノフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン等の芳香族ポリアミンが挙げられる。
【0031】
前記ポリフェノール化合物としては、例えば、フェノールノボラック、o−クレゾールノボラック、t−ブチルフェノールノボラック、ジシクロペンタジエンクレゾール、テルペンジフェノール、テルペンジカテコール、1,1,3−トリス(3−第三ブチル−4−ヒドロキシ−6−メチルフェニル)ブタン、ブチリデンビス(3−第三ブチル−4−ヒドロキシ−6−メチルフェニル)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン等が挙げられる。特にフェノールノボラックは、得られるエポキシ樹脂の電気特性及び機械強度が、積層板用として適しているので好ましい。
【0032】
本発明のエポキシ樹脂組成物には、リン系難燃剤等の難燃剤を配合することができる。該難燃剤の配合量は、エポキシ樹脂と硬化剤の配合量の合計100質量部に対して5〜100質量部であることが好ましい。本発明においては、下記一般式(III)で表されるリン酸アマイド化合物を使用することが特に好ましい。
【0033】

但し、上式中のR1、R2及びR3は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1〜8の、アルキル基、シクロアルキル基、又はハロゲン原子を表し、Z及びZは直接結合、又は炭素原子数1〜4の、アルキレン基若しくはアルキリデン基を表し、環Cは、炭素原子数6〜18の、アリーレン基、シクロアルキレン基又はアリーレン−アルキレン(アルキリデン)−アリーレン基を表す。
【0034】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、充填剤を使用しなくても、その硬化物の物性(高ガラス転移温度、低線膨張係数、引張強度、伸び、可とう性等)は優れているが、更に、充填剤(フィラー)を使用することが好ましい。この場合の充填剤としては、ガラス繊維、ホウ酸アルミニウムウィスカー、窒化ホウ素ウィスカー、チタン酸カリウムウィスカー、酸化チタンウィスカー等の繊維状充填剤や、シリカ、溶融シリカ、アルミナ等の球状充填剤を用いることが好ましい。
【0035】
特に、硬化物の前記物性の点から、球状シリカ又は球状の溶融シリカを充填剤として使用することが好ましい。しかしながら、繊維状、球状等の形態に限らない、シリカ、アルミナ、ホウ酸アルミ、窒化アルミ、窒化ホウ素、チタン酸カリウム、酸化チタン等も用いることもできる他、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、ガラスフレーク、ガラスビーズ、ガラスバルーン、ケイ酸カルシウム、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、マグネシア、フェライト、各種金属微粒子、黒鉛、及びカーボン等;炭素繊維、ガラス繊維、ボロン繊維、シリコンカーバイト繊維、アルミナ繊維、シリカアルミナ繊維等の無機系繊維;アラミド繊維、ポリエステル繊維、セルロース繊維、炭素繊維等の有機系繊維等を用いることもできる。
【0036】
繊維状充填剤を使用する場合には、長軸方向の長さやアスペクト比を用途に応じて適宜選択することが好ましい。球状充填剤の場合には真球状で粒径が小さいものが好ましく、特に、平均粒径が0.01〜20μmの範囲内のものを使用することが好ましい。
【0037】
本発明のエポキシ樹脂組成物には、必要に応じて、更に他の添加物を加えることができる。例えば天然ワックス類、合成ワックス類及び長鎖脂肪族酸の金属塩類等の可塑剤;酸アミド類、エステル類、パラフィン類等の離型剤;ニトリルゴム、ブタジエンゴム等の応力緩和剤;三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、酸化錫、水酸化錫、酸化モリブデン、硼酸亜鉛、メタ硼酸バリウム、赤燐、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、アルミン酸カルシウム等の無機難燃剤;テトラブロモビスフェノールA、テトラブロモ無水フタル酸、ヘキサブロモベンゼン、ブロム化フェノールノボラック等の臭素系難燃剤;前記したリン系難燃剤以外のリン系難燃剤;シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤等のカップリング剤;染料や顔料等の着色剤;酸化安定剤、光安定剤、耐湿性向上剤、チキソトロピー付与剤、希釈剤、消泡剤、他の各種の樹脂、粘着付与剤、帯電防止剤、滑剤、紫外線吸収剤、更には、アルコール類、エーテル類、アセタール類、ケトン類、エステル類、アルコールエステル類、ケトンアルコール類、エーテルアルコール類、ケトンエーテル類、ケトンエステル類やエステルエーテル類、芳香族系溶剤等の有機溶剤等を配合することもできる。
【0038】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、多層プリント配線版、半導体インターポーザー、半導体パッシベーション膜等の、電気・電子材料絶縁樹脂として、或いは航空宇宙用耐熱複合材料等の用途に使用するのに好適である。
【実施例】
【0039】
以下に、合成例及び実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらによってなんら限定されるものではない。
【0040】
〔合成例1〕PA−1の構造を有するポリアミド化合物の合成
3,3’―ジアミノジフェニルスルホン39.7g(0.16モル)を、N−メチルピロリドン(以下NMP)160g、ピリジン30.3gに溶かした。イソフタロイルクロライド32.5g(0.16モル)をNMP64gに溶かし、−15〜0℃の温度で上記溶液に滴下した。
【0041】
−15〜0℃の温度を保持したまま2時間反応させ、更に室温で2時間反応させた。約2リットルのイオン交換水で再沈させた後ろ過し、150℃で3時間減圧乾燥して、白色の粉末(実施ポリマーPA-1)50g(収率83%)を得た。赤外吸収スペクトルから、得られた化合物がアミド結合を有することを確認すると共に、ゲルパーミエーションクロマトグラフにより、重量平均分子量が11800のポリマーであることを確認した。また、25℃におけるE型粘度計による測定の結果、粘度は430mPas(30重量%NMP溶液)であった。
【0042】
〔合成例2〜4〕
合成例1と同様にして、下記のポリアミド化合物PA−2〜4を合成した。得られたポリアミド化合物の重量平均分子量及び粘度は下記の通りであった。
【0043】
PA−2:
重量平均分子量:5970、
粘度:200mPas(25℃、30重量%NMP溶液)
PA−3:
重量平均分子量:13540、
粘度:525mPas(25℃、30重量%NMP溶液)
PA−4:
重量平均分子量:50370、
粘度:2500mPas(25℃、30重量%NMP溶液)
【0044】
実施例1〜4
ポリアミド化合物PA−1〜PA−4を用い、表1に記載下エポキシ樹脂組成物を調製した。配合量は重量比である。
【0045】
PETシート上に、ポリアミドを含むエポキシ樹脂組成物を40μmの厚みとなるように塗布し、100℃で10分間乾燥させた薄膜樹脂を、ガラスエポキシ基板に、100℃で真空熱ラミネートした。更に180℃で1時間硬化させ、表面を清浄にした後、めっきを施して密着強度測定試験片を得、下記の測定を行った。
【0046】
(1)JIS-C6481に基づき、1cm幅パターンの90度剥離試験によってフィルムのピール強度を調べた。
(2)JIS-B0601に基づき、株式会社キーエンス製VK−9710を用いて、表面粗度を測定した。
(3)JIS-K7197に基づき、エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製TMA/SS6100を用いて、線膨張係数を測定した。
【0047】
比較例1〜7
表2に記載したエポキシ樹脂組成物を調製した。配合量は重量比である。
【0048】
【表1】

【0049】
【表2】

【0050】
上記HPA−1〜HPA−7は以下に示した化合物である。

【0051】

【0052】

【0053】

【0054】

【0055】

【0056】

【0057】
表1及び表2から明らかなように、本発明のエポキシ樹脂組成物を硬化させた場合には粗度が低い表面に対しても高いピール強度を有することが確認された。
特に、比較例1の結果から、4位にアミノ基を有するジアミノジフェニルスルホンを使用したポリアミド化合物を硬化剤として使用しても、3位にアミノ基を有するジアミノジフェニルスルホンを使用した本発明のポリアミド化合物を硬化剤として使用した場合のような、高いピール強度が得られないことが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明のポリアミド化合物をエポキシ樹脂の硬化剤として使用することによって、小さな表面粗度を有する面に対して高いピール強度を有する熱硬化性エポキシ樹脂組成物が得られ、このエポキシ樹脂組成物は、ビルドアップ型絶縁樹脂材料として好適であり、多層プリント配線版、半導体インターポーザー、半導体パッシベーション膜等の電気・電子材料絶縁樹脂及び航空宇宙用耐熱複合材料等に使用することができるので産業上極めて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繰り返し単位中に、下記一般式(I)及び/又は一般式(I’)で表される部分構造を有することを特徴とするポリアミド化合物;


但し、上式中のXは水素原子又は水酸基を表す。
【請求項2】
繰り返し単位中に、更に、下記一般式(II)で表される部分構造を有する請求項1に記載されたポリアミド化合物。

【請求項3】
繰り返し単位中に、更に下記一般式(II’)で表される部分構造を有する請求項1に記載されたポリアミド化合物。

【請求項4】
前記ポリアミド化合物が、3,3’−ジアミノジフェニルスルホンとジカルボン酸化合物を反応させてなるポリアミド化合物である、請求項1に記載されたポリアミド化合物。
【請求項5】
前記ポリアミド化合物が、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン及び2,4−ジアミノフェノールとジカルボン酸化合物を反応させてなるポリアミド化合物である、請求項1又は2に記載されたポリアミド化合物。
【請求項6】
エポキシ樹脂100質量部に対し、請求項1〜5の何れかに記載されたポリアミド化合物1〜100質量部を含有させてなることを特徴とするエポキシ樹脂組成物。
【請求項7】
更に、充填剤を含有させてなる請求項7に記載されたエポキシ樹脂組成物。
【請求項8】
前記充填剤が、平均粒径が0.01〜20μmの球状シリカである、請求項7記載されたエポキシ樹脂組成物。
【請求項9】
エポキシ樹脂とポリアミド化合物の合計100重量部に対して、リン系難燃剤を5〜100質量部配合してなる、請求項6〜8のいずれかに記載されたエポキシ樹脂組成物。
【請求項10】
前記リン系難燃剤が、下記一般式(III)で表されるリン酸アマイド化合物である、請求項9に記載されたエポキシ樹脂組成物;

但し、上式中のR1、R2及びR3はそれぞれ独立に、水素原子、又は炭素原子数が1〜8の、アルキル基、シクロアルキル基若しくはハロゲン原子を表し、Z及びZは直接結合、又は炭素原子数が1〜4の、アルキレン基、若しくはアルキリデン基を表し、環Cは、炭素原子数が6〜18の、アリーレン基、シクロアルキレン基又はアリーレン−アルキレン(アルキリデン)−アリーレン基を表す。

【公開番号】特開2011−105803(P2011−105803A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−259933(P2009−259933)
【出願日】平成21年11月13日(2009.11.13)
【出願人】(000000387)株式会社ADEKA (987)
【Fターム(参考)】