説明

ポリアミン組成物

本発明は、老化関連の皮膚の色素沈着を抑制する効果、皮膚の弾力性を促進する効果、皮膚の血色を向上させる効果、および皮膚の滑らかさを向上させる効果のうち少なくとも1つを達成するための、皮膚の局所治療に使用される局所皮膚治療組成物の製造における非分岐状脂肪族ポリアミンの使用を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアミンを含有する局所用美容用または医薬美容用組成物、美容または医薬美容処置の方法における前記組成物の使用、およびその製造におけるポリアミンの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚は非常に代謝の高い組織であり、身体の最大の表面面積を占め、体内の臓器の保護層として機能する。物理的、生化学的保護を与えるように作られ、数々の防御メカニズムが備わっている。皮膚は脂質、たんぱく質、およびDNAが豊富であり、これらはすべて劣化しうる成分である。
【0003】
一般的には、皮膚は、コラーゲンやエラスチンなどの原線維成分と、グリコサミノグリカン(皮膚の色調や保水性に関わる)などの非原繊維ゲル成分とから成る細胞間マトリクス間に配置された細胞から成る。細胞間マトリクスは、繊維母細胞と称される、マトリクス中にある特殊な種類の細胞の中で合成される。コラーゲンとエラスチンは、真皮の構造的基盤をなす三次元ネットワークを形成し、その中にそれ以外の物質や細胞が分散している。原繊維コラーゲンは、最も豊富な結合組織の高分子である。その中心的な機能は、組織の機械的性質と構造的結合性とを確保することである。エラスチンは、物理的および化学的強度が高いという特徴があり、特に皮膚の柔軟性と塑性に関わっている。エラスチンは特に老化に敏感であるだろう。エラスチンのネットワークの微小繊維状構造はフィブリリンから成り、フィブリリンはマルチドメイン構造を有する巨大な糖タンパク質である。エラスチンが引っ張られるとすぐに、弾力的な作用により、当初の位置への復帰という傾向が現れる。この弾力性はいくつかの理由により経時的に減少する。皮膚の自然な老化が1つの原因であるが、この自然なプロセスを加速させたり変更させたりする、日光曝露などのいくつかの要因がある(「外因性老化」)。
【0004】
最も目に付く皮膚の老化の徴候は、弾力性の損失と細胞間マトリクスの損失である。分子レベルでは、老化は、コラーゲンとエラスチンの分子間架橋形成の増加を伴う。これら架橋は、発育期には最適な機能を提供するのに有益である。しかし歳をとるにつれ、制御された架橋プロセスのかわりに無制御な現象が起こるようになり、収縮性の特性、弾力性、精彩や皮膚のハリが無くなるようになる。その結果、皮膚にしわができたり、皮膚表面が荒れたりする。
【0005】
老化は若年期から開始するが、その潜在的な構造的変化が組織学的に検出されるのは中年期前である。約35歳〜45歳の間に、臨床的に目に見える変化が明白になり、その後はどんどん顕著になっていく。
【0006】
老化色素は、神経系、筋肉、および皮膚に歳をとるにつれて蓄積し、老化した動物の細胞レベル下の変化としては最も際立った変化の1つを呈する。その存在には、特定の病気や傷害がかかわっているわけではなく、その存在についての何らかの積極的な原因が示されたことは無かった。老化色素はまた、リポフスチン、セロイド、消耗色素、色素脂質、等とも呼ばれ、その特徴的な蛍光により識別でき、それらは黄褐色の、膜に豊富な不均一の物質として細胞中に位置し、1〜5ミクロメータという特徴的な寸法を有する。
【0007】
かかる老化関連の色素沈着は、しばしば肝斑と呼ばれ、老化の悩ましい特徴の1つであり、これに対する予防的な、または治療的な処置が特に求められている。
【0008】
老化、とくに皮膚の老化を防ぐ努力は、おそらく人類自身と同じくらい古い。数千年もの間、数々の療法が提案されてきたが、その中には突飛な物もあった。
【0009】
多くの人々が皮膚において顕著な老化の徴候の出現に悩み、それを回避することを望み、その結果、皮膚の老化の影響を抑制する、すなわち皮膚の老化の影響を防ぐ、遅らせる、小さくする、減少させる、または除去する、局所用の皮膚治療製品に対する大きな要求がある。ひとつの例としては、ここ数十年、皮膚を刺激してポンピング効果を起こし、皮膚のしわの出現を減らすα−ヒドロキシ酸含有クリームが入手可能である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ポリアミン、すなわちポリアザアルカンは、酸化防止効果をもたらすことで古くから知られており、局所皮膚治療製品のための成分として提案されてきた。かかるポリアミンの一例としては、哺乳動物の精液中の天然化合物であるスペルミン(1,5,10,14−テトラアザテトラデカン)がある(欧州特許出願公開第209509号参照)。かかるポリアミンを皮膚治療製品に使用することは、例えば、微量のスペルミンを含有する光防護皮膚治療組成物(例えば日焼け止め軟膏)を提案している欧州特許出願公開第884046号から公知である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
しかしまだ、皮膚老化に関連するその他の影響も抑制できる別の皮膚治療組成物への要求があり、また、スペルミンやその他のポリアミンを使用するとまったく予測不可能な皮膚治療効果が得られることを、我々は今や認識した。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
特に、局所的に適用されるスペルミンは以下のような効果をもたらす:
老化関連の皮膚の色素沈着の発現(例えば、リポフスチンの製造とそれによる「肝斑」の発現)の低減、遅延、または防止;
グリコサミノグリカンの劣化の低減、遅延、または防止とそれによる皮膚の滑らかさの維持または向上;
表皮毛細血管の血流の改善(および、それによる皮膚の血色の改善);ならびに
皮膚弾力性低下の低減、遅延、および防止。
【0013】
特に:
1. ポリアミンは、皮膚の弾力性繊維の損傷を防止し、したがって皮膚の弾力性を保全し;
2. ポリアミンは、老化色素の形成を減速させ;
3. ポリアミンは、ヒアルロン酸を変質しないよう保護し、表皮の水分結合容量を保全し;
4. ポリアミンは、表皮の外側毛細血管の血流を活性化させ、皮膚の血色(flush)を改善し、同時に表皮の代謝プロセスを活性化させる。
【0014】
このように一様態から鑑みると、本発明は、老化関連の皮膚の色素沈着を抑制する効果、皮膚の弾力性を促進する効果、皮膚の血色を向上させる効果、および皮膚の滑らかさを向上させる効果のうち少なくとも1つを達成するための局所皮膚治療において使用される局所皮膚治療組成物の製造における、非分岐状脂肪族ポリアミンの使用を提供する。
【0015】
別の様態から鑑みると、本発明は、老化関連の皮膚の色素沈着を抑制する効果、皮膚の弾力性を促進する効果、皮膚の血色を向上させる効果、および皮膚の滑らかさを向上させる効果のうち少なくとも1つを達成するための、被治療者への美容処置の方法であって、前記被治療者の皮膚に非分岐状脂肪族ポリアミンの効果的な量を局所的に塗布する工程を含む方法を提供する。
【0016】
本発明によって使用されるポリアミンは、明らかに、例えば精液などの天然の体液の形態で使用されるのではなく、一般的には、単離された純粋な物質であり、適当な美容用または医薬用担体または添加物とともに無菌の組成物に配合されている。
【0017】
本発明によって治療される被治療者は、哺乳類であればいずれでもよく、標準的な被治療者として、人間を、特に成人の人間、さらに特定すると35歳以上の成人を想定している。
【0018】
特に好適な実施形態においては、本発明の方法は、老化関連の皮膚の色素沈着を抑制するための、被治療者に対する治療方法であって、前記方法は、前記被治療者、例えば、目に見える老化関連の皮膚の色素沈着を有する被治療者の皮膚に、非分岐状脂肪族ポリアミンの効果的な量を局所的に塗布する工程を含んでいる。
【0019】
さらに別の様態から鑑みると、本発明は、非分岐状脂肪族ポリアミンと、少なくとも1つの生理学的に許容可能な担体または添加物とを含む局所皮膚治療組成物であって、老化関連の皮膚の色素沈着を抑制する効果、皮膚の弾力性を促進する効果、皮膚の血色を向上させる効果、および皮膚の滑らかさを向上させる効果のうち少なくとも1つを達成するために、前記組成物の局所的塗布の指示書を伴う組成物を提供する。かかる指示書は、例えば、外部包装上に備えられても、外部包装中の挿入物として備えられても、または組成物容器自体の上に備えられてもよい。
【0020】
さらに別の様態から鑑みると、本発明は、少なくとも1つの生理学的に許容可能な担体または添加物と、第1の非分岐状脂肪族ポリアミンと、別の活性な薬剤とを含む局所皮膚治療組成物であって、前記別の活性な薬剤は、前記第1の非分岐状脂肪族ポリアミン以外のポリアザアルカン、ジメチルスルホキシド、角質溶解剤、不飽和脂肪酸(例えば、オメガ−3、オメガ−6、およびオメガ−9不飽和脂肪酸、とくにEPA、DHA、およびALAなどのオメガ−3酸)およびその誘導体(特にエステル)、HMG−CoAレダクターゼ阻害剤、ピペリン酸、8−ヘキサデセン−1,16−ジカルボキシル酸、天然トリテルペン、コエンザイムQ10(ユビキノン)、ビタミンB3、アロエ、アセチルグルコサミンエステル、ACE阻害剤、アンギオテンシン受容体アンタゴニスト、オイゲニルグルコシド、アカメガシワ抽出物、ヒドロキシ酸(例えばグリコール酸などアルファヒドロキシ酸)、ベータ−(1,3)グルカン、カエル抽出物、玄米抽出物、尿素、松の実油、海洋コラーゲン、植物細胞抽出物、ウルソール酸塩およびオイゲノール誘導体、セラミド、コレステロール、グルタチオン、カルニチン、脱酸素剤(oxygen scavanger)、フィトスフィゴシン、カルシウムチャンネル抑制剤、リノレン酸スクロース、カフェイン、カタラーゼ、ローズヒップ油、グリシン、シアバター、過フルオロポリエーテル、システイン誘導体、アセチル化ヒアルロン酸およびアルファアミノ酸、ならびにそれらのうちいずれかの塩からなる群から選択される。
【0021】
ポリアザアルカン以外の特に好適な活性成分としては、コエンザイムQ10、ビタミンB3、アルファヒドロキシ酸、不飽和脂肪酸(例えば、オメガ−3、オメガ−6、およびオメガ−9不飽和脂肪酸、特にEPA、DHA、およびALAなどのオメガ−3酸)およびそれらの誘導体(特にエステル)、カタラーゼ、ならびにローズヒップ油が挙げられる。
【0022】
特に、本発明は、二種類以上の非分岐状脂肪族ポリアミン;または非分岐状脂肪族ポリアミンおよびカタラーゼ;または非分岐状脂肪族ポリアミンおよびビタミンB3;または非分岐状脂肪族ポリアミンおよびローズヒップ油;または非分岐状脂肪族ポリアミンおよびコエンザイムQ10;または非分岐状脂肪族ポリアミンおよび不飽和脂肪酸(例えば、オメガ−3、オメガ−6、およびオメガ−9不飽和脂肪酸、特にEPA、DHA、およびALAなどのオメガ−3酸)もしくはその誘導体(特にエステル);または非分岐状脂肪族ポリアミンおよびアルファヒドロキシ酸を含む、局所用組成物を提供する。
【0023】
本発明で使用されるポリアミンは、好適にはアミン基が末端にある非分岐状構造物である。望ましくは、それらは天然に生じる非分岐状脂肪酸化合物である。ポリアミンは好適には、nが2〜6、特に3または4である、窒素を結合した(CH2n基を含み、(CH2n基は特に2〜6個の窒素、とりわけ2、3、または4個の窒素を含む(CH2n基である。これらポリアミンは、哺乳類の精液または(例えば大豆やアンチョビからの)発酵製品など天然の供給源から得てもよいし、例えば固体状態ポリペプチドの生成を行いその後アミド生成および還元を行う技術など、従来の技術により製造してもよい。天然のポリアミン、例えばプトレシン(H2N(CH24NH2)、カダベリン(H2N(CH25NH2)スペルミジン((H2N(CH23NH(CH24NH2)およびスペルミン(H2N(CH23NH(CH24NH(CH23NH2)、この中でも特にプトレシン、スペルミジン、またはスペルミン、この中でもとりわけスペルミンを使用するのが、特に好ましい。かかるポリアミンのうち二種類の、例えばモル比1:99〜99:1、特に10:90〜90:10での組み合わせの使用が特に好ましく(例えばスペルミンとスペルミジン)、かかるポリアミンのうち3種類以上の、例えばそれぞれの比率が、最も比率の大きいものに対して1〜100モル%、特に10〜100モル%、とりわけ30〜100モル%での組み合わせも同様に好ましい。
【0024】
ジブチレントリアミン、トリブチルテトラミン、1,6,10,15−テトラアザペンタデカン、1,5,9,13−テトラアザトリデカン、および6−アミノブチル−1,6,11−トリアザウンデカンを使用することも考えられる。
【0025】
本発明で使用されるポリアミンにおいては、平均的な炭素鎖すなわち異種原子間の炭素鎖の長さは、1または2と小さくてもよい。ただし、この平均値が3.0より小さい場合、ポリアミンは好適には組成物中の少量の成分、例えば5重量%以下、好ましくは1重量%以下である。
【0026】
一般的に、本発明のポリアミンにおいては、平均的な炭素鎖の長さは、好適には少なくとも2.5、より好適には少なくとも3.0、とりわけ好適には少なくとも3.25、例えば3.25〜6.0である。
【0027】
望ましくは、本発明で使用されるポリアミンは、88〜202Daの範囲の分子量を有する。
【0028】
本発明で使用されるポリアミンは、好適には、生理学的に許容可能な対イオンを有する塩の形態、例えば有機酸などであってもよく、特に好適には、アルファ−ヒドロキシ酸または脂肪酸である。例えばほぼ等モル量などの溶液中でのポリアミンと酸との反応により調製できる、このような塩は、新規であり、かつ、当該塩と担体または添加物を含む局所用組成物として本発明の別の様態を形成するものである。
【0029】
本発明の、および本発明で使用される組成物中で、全ポリアミン含有量は好適には0.0005〜5重量%であり、より好適には0.001〜1重量%であり、特に0.005〜0.5重量%であり、特段に0.01〜0.08重量%であり、さらに特段に0.02〜0.06重量%であり、とりわけ0.03〜0.05重量%であり、例えば0.04重量%(すなわち400ppm)である。
【0030】
本発明の組成物は好適には、多価の、そうでなければ不安定な形態の金属(例えば遷移金属)イオンをポリアミンに対して10モル%を超える濃度では含まず、とりわけ1モル%を超える濃度では含まない。
【0031】
本発明の、または本発明で使用される組成物は、例えばクリーム、ジェル、溶液、乳液、分散液、懸濁液など、局所塗布に適した任意の形態であればよく、必要であれば織布または不織布などの担体基体を含んでもよい。前記組成物は、例えば溶媒、油(例えば植物性油)、芳香剤、着色剤、pH調整剤、粘度調整剤、結合剤、希釈剤、柔軟剤、抗酸化剤、皮膚刺激剤、増粘剤、ビタミン、防腐剤、安定剤、保湿剤、皮膚浸透促進剤、ベシクル壁形成剤等の通常の局所用組成物成分を含有してもよい。適切な製剤の例としては、ボディーミルク、ボディーローション、ハンドクリーム、日焼け止めローションおよびオイルなどがある。
【0032】
ひとつの好適な形態では、本発明に使用される組成物はアイライナーやその他のアイメイクアップ用品であり、例えば酸化鉄または酸化クロムなどの遷移金属酸化物など、金属酸化物等の無機着色剤を含有する。ポリアミンはこれらに結合してもよく、それによって持続放出状態で存在できる。
【0033】
本発明の組成物の成分は、一般的には、皮膚治療組成物にとっての通常の濃度で存在する。活性な成分、すなわち単純な保湿または潤滑性付与以上の皮膚保護効果を有する成分は、通常0.001〜20重量%、特に0.01〜10重量%、とりわけ0.05〜5重量%の濃度で存在する。
【0034】
さらに別の様態において、本発明はまた、非分岐状脂肪族ポリアミン(例えばスペルミン)およびコエンザイムQ10を含む、水溶性局所皮膚治療クリームを提供する。
【0035】
本発明の、および本発明で使用される組成物は、好適には(a)手(特に老化関連の色素沈着抑制のため);(b)胸;(c)目の下の薄い皮膚;(d)上腕部(特に胴体に隣接した表面);(e)顎の下面;(f)襟あき部分(すなわち開襟シャツにより露出される領域)への塗布用である。これら領域専用の組成物および方法も本発明のさらなる様態をなす。
【0036】
本発明の、および本発明で使用される組成物は、特に好適には、クリーム、乳液、ジェル、ベシクル分散液、またはベシクル形成組成物である。ベシクルという観点では、リポゾームが、ポリアミンの皮膚浸透を促進するので特に利益がある。リポゾーム製剤は従来のように、たとえば市販の前駆物質を使用して調製されてもよい。同様に、DMSOなどの、角質溶解剤および皮膚浸透促進剤の含有も特に利益があり、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンB6、ビタミンE、およびそれらの誘導体などのビタミンの含有についても同様である。
【0037】
例えば、第4級アミン官能基を含むことにより、またはアミン窒素のプロトン化によりポリアミンが荷電するので、前記組成物は電界の作用下で、すなわちイオン導入により、経皮的にポリアミンを送達する。前記組成物は従来のように、電極および蓄電池を備えたパッチ中にゲル形状で提供されてもよい。所望の皮膚治療が局所的であるとき、たとえば局所的な皮膚の斑点の治療においては、この形式が特に利益がある。
【0038】
一般的に、前記組成物は、予防的に、すなわち色素沈着などの皮膚の斑点の発現を防ぐために皮膚に適用されるか、または、皮膚の斑点がすでに存在する被治療者の皮膚患部に適用される。皮膚の色素沈着という斑点の場合、患者は通常少なくとも50歳であり、より一般的には少なくとも55歳であり、特には少なくとも60歳であり、とりわけ、少なくとも65歳である。
【0039】
前記ポリアミンは通常、一回分約0.01〜50g/m2、好適には0.1〜10g/m2、特に1〜5g/m2で投与される。他に活性な成分があれば、それは通常、正規の投与量の10%〜200%で、好適には50〜110%で、より好適には80〜105%で、使用される。
【0040】
本発明の、および本発明で使用される組成物は、たとえば単なる混合を行い、その後必要であれば殺菌を行なう等の、標準的な美容用の、または医薬美容用の組成物製造技術により製造することができる。前記組成物は望ましくは一回分ごとの単位で包装されるか、または、100回分以下、例えば2〜10回分の適用に適した単位ごとで包装される。小袋、スプレーディスペンサ、ポンプディスペンサ、および塗付用布の使用が特に好適である。
【0041】
本発明はこのように、皮膚の健康を改善し、しわ、老化色素、およびその他の皮膚の不調を防ぎ治療するための優れた医薬美容用組成物および方法を提供する。本発明は皮膚の老化の進行を遅らせ、皮膚の弾力性、柔軟性、および血色を保つ医薬美容用組成物を提供する。また、損傷した皮膚を若返らせる製剤も開示されている。本発明は、老化による変化が臨床的に初めて表面化する以前に若年期の老化による変化を緩やかにするか進行を遅らせるための、皮膚の局所治療用美容製剤を提供する。前記治療は、生理活性なポリアミン(特にスペルミン)が皮膚の弾力性物質の劣化を防止し、若々しい外観を保全するという所見に基づいている。ただし、ポリアミンは皮膚細胞の老化や老化色素(リポフスチン)の形成を遅らせ、(ヒアルロン酸のような)グリコサミノグリカンを劣化から守るので、この効果はまた、(血管の弾力性維持のような)健康かつ機能的な身体性能の維持にも根本的に重要なことである。後者の効果により、皮膚は水との結合能力を保ち、自然な滑らかさを維持する。医薬美容用組成物は、表皮毛細血管の血流を増加させ、皮膚の血色を改善し、同時に表皮の新陳代謝プロセスを刺激する。これら効果が加算されて、皮膚の外観および機能における全般的な改善をもたらす。前記ポリアミンはケラチノサイトにより積極的に取り込まれ、それによって、他の美容用組成物の大部分とは異なり、皮膚に浸透する。本発明はこのように、2つの目的を達成する。第一に、経時的に損傷が進行および悪化することを防ぐという予防的効果が達成される。第二に、皮膚の構造および機能がより若い皮膚の特徴を獲得するという程度まで、様々な異常が修正され変更される。
【0042】
このように、本発明の組成物は、望ましくは、アルファヒドロキシ酸等の皮膚刺激剤を含有して、皮膚に対してさらに望ましい効果を有する。その上、本発明の方法は、皮膚刺激剤を含有する組成物の適用と同時に、またはそれ以前もしくはその前に、ポリアミンを適用する工程を含む。
【0043】
下記の実施例を参照して本発明をさらに説明するが、本発明は実施例により限定されるものではない。
【実施例1】
【0044】
局所用クリーム
成分 重量部
水 61〜66
ジカプリル酸/ジカプリン酸プロピレングリコール 6〜8
ステアリン酸エチルヘキシル 3〜4
アプリコットカーネル 0.5〜1.5
ホホバ 0.4〜0.6
12-20酸PEG−8エステル 8〜12
植物油 3〜4
プロピレングリコール 2.5〜3.5
ステアリン酸グリセリル 1.5〜2.5
セチル燐酸カリウム 0.8〜1.2
グリセリン 0.4〜0.6
PCAナトリウム 0.1〜0.2
ジメチコーン 1.5〜2.5
スペルミン 0.03
パルミチン酸アスコルビン 0.005〜0.015
ユビキノン 0.08〜0.12
PEG−7グリセリルココエート 0.05〜0.1
変性アルコール 0.05〜0.1
酢酸トコフェリル 0.05〜0.1
パンテノール 0.05〜0.1
パルミチン酸レチニル 0.05〜0.1
ヒマワリ 0.05〜0.1
トコフェロール 0.05〜0.1
乳酸 0.5〜1.5
グルコン酸ナトリウム 0.05〜0.15
フェノキシエタノール 0.4〜0.6
安息香酸ナトリウム 0.2〜0.3
上記リストの成分は混合され乳化される。
【実施例2】
【0045】
局所用クリーム
成分 重量部
水 80〜85
変性アルコール 5〜10
プロピレングリコール 2〜4
ソルビトール 1〜3
ポリクオタニウム−10 1〜3
炭酸ジカプリリル 0.5〜1.0
ヒアルロン酸ナトリウム 0.5〜1.0
トコフェロール 0.05〜0.1
酢酸トコフェリル 0.05〜0.1
スペルミン 0.02〜0.04
ユビキノン 0.008〜0.012
パルミチン酸レチニル 0.05〜0.1
PEG/PPG−14/4ジメチコーン 0.3〜0.7
グルコン酸ナトリウム 0.5〜1.5
乳酸メンチル 0.05〜0.15
フェノキシエタノール 0.3〜0.7
乳酸 0.5〜1.5
ジカプリル酸/ジカプリン酸プロピレングリコール 0.008〜0.012
アプリコットカーネル 0.08〜0.012
パンテノール 0.05〜0.1
ヒマワリ 0.05〜0.1
PEG−7グリセリルココエート 0.05〜0.1
前記成分は混合され乳化される。
【0046】
さらに別のクリームを、これら成分の前記重量含有率の中点値を使用し、さらに下記の成分を下記の重量部含んで、同様に調製する:(A)スペルミン、0.03;(B)ビタミンB3、0.07;(C)カタラーゼ、0.07;(D)ローズヒップ油、0.07;(E)スペルミジン、0.03と、ビタミンB3、0.07と、カタラーゼ、0.07と、ローズヒップ油、0.07。
【0047】
本実施例の前記6つの組成物は、例えば手、上腕部、首および顎、目の下などの治療すべき皮膚領域に、一日一度、好適には一日二度、たっぷりと塗布すればよい。
【実施例3】
【0048】
生体での研究
スペルミン400ppmを含有する美容製剤で、スペルミンの効能を生体において評価した。評価は、まずその皮膚の機械的特性(弾力性)に対する効果を測定し、その後、画像解析によって行った。画像解析は治療前後に皮膚表面、とくにしわへの効果を観察するために使用した技術である。
【0049】
皮膚の弾力性は、SEM474キュートメーター(皮膚弾力測定機)(カレッジ&カザカ社(Courage & Khazaka))を使用して吸引した後、その回復を測定することにより分析した。この研究で、350mbarの一定の吸引圧力が使用され、測定は3度記録され、パラメータR0、R1、およびR9を示す弾力性曲線を示した。ROは吸引圧力が印加されるときの曲線の高さであり、RIは同曲線の幅であって圧力が印加された後に皮膚が初期状態に回復する能力を表す。R9は、皮膚弾力性であって、ROおよびR1から得られた実験値である。
【0050】
前記試験は、年齢45〜55歳(平均:50歳)の6人の女性の一群に対し、目の周りの領域で行った。前記美容製剤は一日2回、45日間適用した。
【0051】
画像解析は、皮膚の微地形を研究するために必須なツールである。この基本原理は、投射光によりシリコーンプリントの表面上に生じる影を計測することを含んでいる。皮膚表面の形状は、皮膚表面にシリコーンの薄い層を貼り付けることにより得られる。このゴムの型を皮膚からはずし、皮膚の痕のついた面を下側にして、平らな面に置く。この皮膚の複製をパーソナルコンピュータにつないだカメラの下に置き、横から(26°)光を当てる。これら実験条件の下で、皺の影に対応する様々な階調を記録し、分析することができる。286階調に基づく濃度計測プログラムによる画像処理装置を使用することにより、線の平均本数や線の平均深さについて、前記対応する型を定量化した。
【0052】
前記複製を横から照射し、カメラによって撮影した。その画像は皺(複製上では逆の凹凸で関連付けられる)を識別できる処理装置に送信され、影により生じる色の差異および強弱によってその深さを計測する。かかる画像により、領域の皮膚の型を研究し、特定の治療下における進展を観察することができる。この研究では、治療前後で皺の深さを調べ、美容製剤の効果について定期的に対照試料と比較した。
【実施例4】
【0053】
細胞の再生とエラスチン合成
スペルミンにより誘発された細胞(call)再生と繊維芽細胞中のエラスチン合成について調査するために、下記のようなフレイ(Frei)らの皮膚等価物(DE)モデル(Int. J. Cosmetic Science 20: 159-173 (1998)(「美容科学国際ジャーナル」20号159〜173頁(1998年))参照)を使用した。牛の新生児の血清10%、ゲンタマイシン25mg/L、ペニシリン100,000UI/L、アンホテリシンB、1mg/L、アスコルビン酸ナトリウム50mg/L、L−グルタミン(シグマ(Shigma)社、米国セントルイス)4mMを加えた、ダルベッコによる変型イーグル培地(DMEM)から成る、繊維芽細胞培地(FCM)に、ヒトの包皮の外植片からの繊維芽細胞を継代培養した。4回目の継代と10回目の継代からの繊維芽細胞(200,000)を、FCMで事前に再水和され24穴プレートに入れられた真皮マトリクスのそれぞれに植えつけた。FCMを2mLずつ各穴に加えた。それから、DEを37℃、CO2/空気(5%/95%、v/v)の大気中で3週間培養し、培地は一週間に2度変えた。この期間の終わりまでに、前記細胞が増殖し、移動し、それ自身の細胞間マトリクスを合成して真皮基体の孔を充填した。
【0054】
DEモデルにおける繊維芽細胞の再生を誘発する能力についてスペルミンを試験した。子牛の血清2%およびペプチド1.25%(v/v)を加えたDMEM培地中で2週間DEモデルを培養した(n=6)。ペプチドを加えない対照例DEも同じ条件で試験した(n=6)。
【0055】
ペプチドを使用して1週間および2週間培養した後のMTTを使用した比色法により、前記細胞の生存能力を評価した。生存可能な細胞は、無色のテトラゾリウム塩MTTを青色のホルマザンに変えるので、それをジメチルスルホキシド(DMSO)で抽出した後、570nmで吸光光度分析により測定できる。生存可能な細胞の数に比例して光学濃度が示された。
【0056】
細胞間成分(エラスチン)の形成に関するスペルミンの誘発効果を、20日間調製したDEについて調査した。同時に、繊維芽細胞は真皮基体中で融合し、休止状態になった。21日目より、スペルミン400ppmを8日間DE培地に加えると、子牛の血清の濃度が5%(v/v)に減少した。スペルミンを加えなかった対照例DEも同じ条件で試験した。実験の最後には、実験例DEおよび対照例DEにおける細胞密度をMTT法により評価した。この試験は、成長期後の細胞再生にはスペルミンがそれ以上の効果を持たないことを確認するために行った。
【0057】
ウィンクルマン(Winkelman)およびスパイサー(Spicer)により記載された特殊な比色法(Stain Technol. 37:303-305 (1962)(「染色技術」37号303〜305頁(1962年))参照)を使用して、29日目(すなわちペプチドは8日間存在)に採取した培地中でエラスチンの可溶部分を評価した。培地中に存在した可溶トロポエラスチンの析出(6個のDE対照例およびDE実験例をそれぞれ集めることにより)後、析出物を合成ポリフィリン(porphrine)と混合する。エラスチン染色複合体を遠心分離により分離し、可溶化し、光学濃度を513nmで測定した(n=5)(ファスタン(Fastin)、レレフ(Realef)、フランス)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
老化関連の皮膚の色素沈着を抑制する効果、皮膚の弾力性を促進する効果、皮膚の血色を向上させる効果、および皮膚の滑らかさを向上させる効果のうち少なくとも1つを達成するための、皮膚の局所治療に使用される局所皮膚治療組成物の製造における非分岐状脂肪族ポリアミンの使用。
【請求項2】
プトレシン、スペルミジン、およびスペルミンから選択されるポリアミンの請求項1に記載の使用。
【請求項3】
老化関連の皮膚の色素沈着を抑制するための皮膚の局所治療に使用される組成物の製造における請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
老化関連の皮膚の色素沈着を抑制する効果、皮膚の弾力性を促進する効果、皮膚の血色を向上させる効果、および皮膚の滑らかさを向上させる効果のうち少なくとも1つを達成するための、被治療者に対する治療方法であって、非分岐状脂肪族ポリアザミンの効果的な量を前記被治療者の皮膚に局所的に塗布する工程を含む方法。
【請求項5】
非分岐状ポリアミンと、少なくとも1つの生理学的に許容可能な担体または添加物とを含む局所皮膚治療組成物であって、老化関連の皮膚の色素沈着を抑制する効果、皮膚の弾力性を促進する効果、皮膚の血色を向上させる効果、および皮膚の滑らかさを向上させる効果のうち少なくとも1つを達成するために、前記組成物の局所的塗布のための指示書を伴う組成物。
【請求項6】
プトレシン、スペルミジン、およびスペルミンから選択されるポリアミンを含む請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記第1の非分岐状脂肪族ポリアミン以外のポリアザアルカン、ジメチルスルホキシド、角質溶解剤、不飽和脂肪酸およびその誘導体、HMG−CoAレダクターゼ阻害剤、ピペリン酸、8−ヘキサデセン−1,16−ジカルボキシル酸、天然トリテルペン、コエンザイムQ10(ユビキノン)、ビタミンB3、アロエ、アセチルグルコサミンエステル、ACE阻害剤、アンギオテンシン受容体アンタゴニスト、オイゲニルグリコシド、アカメガシワ抽出物、ヒドロキシ酸、カエル抽出物、玄米抽出物、尿素、松の実油、海洋コラーゲン、植物細胞抽出物、ウルソール酸塩およびオイゲノール誘導体、セラミド、コレステロール、グルタチオン、カルニチン、脱酸素剤、フィトスフィゴシン、カルシウムチャンネル抑制剤、リノレン酸スクロース、カフェイン、カタラーゼ、ローズヒップ油、グリシン、シアバター、過フルオロポリエーテル、システイン誘導体、アセチル化ヒアルロン酸およびアルファアミノ酸、ならびにそれらのうちのいずれかの塩からなる群から選択される、別の活性な薬剤をさらに含む請求項5および6のいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
少なくとも1つの生理学的に許容可能な担体または添加物と、第1の非分岐状脂肪族ポリアミンと、別の活性な薬剤とを含む、局所皮膚治療組成物であって、前記別の活性な薬剤が、コエンザイムQ10、ビタミンB3、アルファヒドロキシ酸、不飽和脂肪酸およびそれらの誘導体、カタラーゼ、ならびにローズヒップ油からなる群から選択される組成物。
【請求項9】
二種類以上の非分岐状脂肪族ポリアミン;または、
非分岐状脂肪族ポリアミンおよびカタラーゼ;または、
非分岐状脂肪族ポリアミンおよびビタミンB3;または、
非分岐状脂肪族ポリアミンおよびローズヒップ油;または、
非分岐状脂肪族ポリアミンおよびコエンザイムQ10;または、
非分岐状脂肪族ポリアミンおよび不飽和脂肪酸もしくはその誘導体;または、
非分岐状脂肪族ポリアミンおよびアルファヒドロキシ酸を含む請求項5〜8のいずれかに記載の組成物。
【請求項10】
非分岐状脂肪族ポリアミンおよびコエンザイムQ10を含む水溶性局所皮膚治療クリーム。

【公表番号】特表2008−519022(P2008−519022A)
【公表日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−539639(P2007−539639)
【出願日】平成17年11月7日(2005.11.7)
【国際出願番号】PCT/GB2005/004279
【国際公開番号】WO2006/048671
【国際公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【出願人】(507147518)
【Fターム(参考)】