説明

ポリアルミノシロキサンを含む光半導体素子封止用樹脂およびそれを用いて得られる光半導体装置

【課題】光透過性が良好で、低吸湿性であり、高温使用時の変色がない光半導体素子封止用樹脂、および良好な輝度保持率を有する、該樹脂を用いて光半導体素子を封止してなる光半導体装置を提供すること。
【解決手段】ケイ素化合物とアルミニウム化合物を反応させて得られるポリアルミノシロキサンを含む光半導体素子封止用樹脂、および該光半導体素子封止用樹脂を用いて光半導体素子を封止してなる光半導体装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光半導体素子封止用樹脂およびそれを用いて得られる光半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオード(LED)等の光半導体素子を封止する際に用いられる光半導体素子封止用樹脂組成物としては、その硬化物が透明性を有することが要求されており、一般に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂や脂環式エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂と、酸無水物系硬化剤とを用いて得られるエポキシ樹脂組成物が汎用されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
しかし、エポキシ樹脂は吸湿性が高く、光半導体装置を半田リフローにより実装する際に、封止材にクラックが発生する場合がある。また、エポキシ樹脂は、高温で長時間使用すると変色したり、発光ダイオード装置の輝度が低下する場合がある。
【特許文献1】特開2006−274249号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、光透過性が良好で、低吸湿性であり、高温使用時の変色がない光半導体素子封止用樹脂、および良好な輝度保持率を有する、該樹脂を用いて光半導体素子を封止してなる光半導体装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち、本発明は
〔1〕ケイ素化合物とアルミニウム化合物を反応させて得られるポリアルミノシロキサンを含む光半導体素子封止用樹脂、および
〔2〕〔1〕記載の光半導体素子封止用樹脂を用いて光半導体素子を封止してなる光半導体装置
に関する。
【発明の効果】
【0006】
光透過性が良好で、低吸湿性であり、高温使用時の変色がない光半導体素子封止用樹脂を実現することができ、また、良好な輝度保持率を有する、該樹脂を用いて光半導体素子を封止してなる光半導体装置を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の光半導体素子封止用樹脂は、ケイ素化合物とアルミニウム化合物を反応させて得られるポリアルミノシロキサンを含むことに特徴を有する。
【0008】
ケイ素化合物としては、式(I):
【0009】
【化1】

【0010】
(式中、R1 及びR2 は、それぞれ独立してアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基又はアリール基、X1 及びX2 は、それぞれ独立してアルコキシ基、ヒドロキシ基又はハロゲンを示す)
で表される化合物が好適である。
【0011】
式(I)中のR1 及びR2 は、それぞれ独立してアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基又はアリール基を示し、これらの炭素数は、反応性、安定性、経済性の観点から、1〜18が好ましく、1〜12がより好ましく、1〜6がさらに好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;ビニル基、アリル基等のアルケニル基;エチニル基、プロピニル基等のアルキニル基;フェニル基、トリル基等のアリール基が例示される。なかでも、アルキル基及びアリール基が好ましく、R1 及びR2 がそれぞれ独立してメチル基もしくはフェニル基であることが好ましい。
【0012】
式(I)中のX1 及びX2 は、それぞれ独立してアルコキシ基、ヒドロキシ基又はハロゲンを示し、アルコキシ基の炭素数は1〜4が好ましく、1〜2がより好ましい。具体的には、メトキシ基、エトキシ基が例示される。なかでも、メトキシ基が好ましい。また、ハロゲンとしては、塩素、臭素が好ましい。
【0013】
かかる式(I)で表されるケイ素化合物としては、ジフェニルジメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジヒドロキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、ジイソプロピルジエトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、メチルフェニルジエトキシシラン、ジメチルジクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、ジエチルジクロロシラン、ジイソプロピルジクロロシラン、メチルフェニルジクロロシラン等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのなかでも、R1 及びR2 がメチル基、X1 及びX2 がメトキシ基であるジメチルジメトキシシラン、R1 及びR2 がフェニル基、X1 及びX2 がメトキシ基であるジフェニルジメトキシシランが好ましい。
【0014】
また、ケイ素化合物としては、式(II):
【0015】
【化2】

【0016】
(式中、R3 はアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基又はアリール基、X3 、X4 及びX5 は、それぞれ独立してアルコキシ基、ヒドロキシ基又はハロゲンを示す)
で表される化合物が好適である。
【0017】
式(II)中のR3 は、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基又はアリール基を示し、これらの炭素数は、反応性、安定性、経済性の観点から、1〜18が好ましく、1〜12がより好ましく、1〜6がさらに好ましい。かかるものとしては、前述の式(I)中のR1 及びR2 の具体例として挙げたものと同様のものが挙げられ、なかでも、R3 はアルキル基、アリール基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0018】
式(II)中のX3 、X4 及びX5 は、それぞれ独立してアルコキシ基、ヒドロキシ基又はハロゲンを示し、アルコキシ基の炭素数は1〜4が好ましく、1〜2がより好ましい。具体的には、前述の式(I)中のX1 及びX2 について挙げたアルコキシ基と同様のアルコキシ基が挙げられる。なかでも、メトキシ基が好ましい。また、ハロゲンとしては塩素、臭素が好ましい。
【0019】
かかる式(II)で表されるケイ素化合物としては、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、フェニルトリエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリクロロシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリクロロシラン等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのなかでも、R3 がメチル基、X3 、X4 及びX5 がメトキシ基であるメチルトリメトキシシランが好ましい。
【0020】
また、本発明の封止用樹脂は、本発明の効果を損なわない範囲で、上記式(I)で表されるケイ素化合物及び式(II)で表されるケイ素化合物以外の他のケイ素化合物をさらに用いて調製してもよいが、耐熱性、透明性、耐光性の観点から、式(I)で表されるケイ素化合物及び/又は式(II)で表されるケイ素化合物の総使用量は、反応に供される混合物中に30〜95重量%が好ましく、50〜95重量%がより好ましく、60〜95重量%がさらに好ましい。
【0021】
式(I)で表されるケイ素化合物と式(II)で表されるケイ素化合物を併用する場合の重量比(式(I)で表されるケイ素化合物/式(II)で表されるケイ素化合物)は、生成物の耐熱性と柔軟性の観点から、20/1〜1/10が好ましい。
【0022】
また、式(I)中のR1 及びR2、ならびに式(II)中のR3において、アルキル基とアリール基のモル比(アルキル基/アリール基)は耐熱性、耐光性、透明性の観点から、好ましくは100/0〜5/95、より好ましくは100/0〜15/85の関係を満たすことが好ましい。
【0023】
アルミニウム化合物としては、式(III):
【0024】
【化3】

【0025】
(式中、Y、Y及びYは、それぞれ独立して水素又はアルキル基を示す)
で表される化合物が好ましい。
【0026】
式(III)中のアルキル基の炭素数は、好ましくは1〜12、より好ましくは1〜6、さらに好ましくは1〜3である。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基が例示される。これらのなかでも、エチル基、イソプロピル基が好ましく、イソプロピル基がより好ましい。
【0027】
式(III)で表されるアルミニウム化合物としては、アルミニウムメトキシド、アルミニウムエトキシド、アルミニウムプロポキシド、アルミニウムブトキシド等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのなかでも、アルミニウムトリイソプロポキシドが好ましい。
【0028】
なお、反応に供されるケイ素化合物とアルミニウム化合物のモル比(ケイ素化合物/アルミニウム化合物)は、耐熱性、透明性、耐光性の観点から、1000/1〜1/1が好ましく、500/1〜1/1がより好ましい。
【0029】
本発明の効果を損なわない範囲内であれば、上記の化合物以外のもの、例えば塩酸を反応に用いてもよい。塩酸(pH2〜6)の使用量は、反応速度向上の観点から、反応に供される混合物中に5〜30重量%が好ましく、5〜20重量%がより好ましく、5〜15重量%がさらに好ましい。
【0030】
ケイ素化合物とアルミニウム化合物の反応は、例えば、0〜100℃で、1〜48時間攪拌しながら行うことができる。この場合、例えば、ケイ素化合物をトルエン、THF、アルコールなどの溶媒に溶解させた液に、アルミニウム化合物を添加して反応させる方法が挙げられるが、これに限定されない。なお、ケイ素化合物を複数用いる場合には、複数の化合物を一度に反応に供してもよいが、化合物の有する官能基により反応性が異なることから、化合物毎に分割して反応に供してもよい。
【0031】
ケイ素化合物とアルミニウム化合物の反応後には、例えば、エバポレーターを用いた蒸発処理等をして、揮発成分を除去してもよい。
【0032】
上記のようにして得られた光半導体素子封止用樹脂は、スピンコート等により塗布して、好ましくは50〜300℃、より好ましくは50〜250℃で、好ましくは1〜48時間、より好ましくは1〜24時間乾燥させて光半導体素子を封止してもよい。該樹脂の封止後の厚さは、光半導体素子保護の観点から、好ましくは50〜5000μm、より好ましくは100〜4000μmである。
【0033】
本発明の樹脂は、液晶画面のバックライト、信号機、屋外の大型ディスプレイ、広告看板等に用いられる光半導体素子封止用樹脂として好適に使用し得るものである。
【0034】
また、本発明は、上記の光半導体素子封止用樹脂を用いて光半導体素子を封止してなる光半導体装置に関する。
【0035】
本発明の光半導体装置の輝度保持率は、耐久性確保の観点から、好ましくは70%以上、より好ましくは90%以上であることが好ましい。かかる輝度保持率は、以下の式:輝度保持率=(300 mA連続点灯300時間経過後の輝度/試験開始直後の輝度)×100として定義することができる。また、輝度は、後述の実施例に記載される方法を用いて測定することができる。
【実施例】
【0036】
実施例1
ジメチルジメトキシシラン4.82 g(40.2 mmol)のトルエン溶液(5 mL)に対してアルミニウムトリイソプロポキシド0.410 g(2.01 mmol)および塩酸(pH 2) 1.3 mLを添加した。この混合物を80℃で2時間撹拌した後、ロータリーエバポレーターで揮発成分を除去して、無色透明オイル状のポリアルミノシロキサンを含む光半導体素子封止用樹脂を得た(2.17 g、収率70%)。
【0037】
青色発光ダイオードが実装された基板を用意し、得られた光半導体素子封止用樹脂を、スピンコートにより青色発光ダイオードを含む基板表面に塗布して、150℃で3時間乾燥させ、青色発光ダイオードを封止し、青色発光ダイオード装置を得た。
【0038】
実施例2
ジフェニルジメトキシシラン4.90 g(20.1 mmol)とジメチルジメトキシシラン2.41 g(20.1 mmol)のトルエン溶液(5 mL)に対してアルミニウムトリイソプロポキシド0.410 g(2.01 mmol)および塩酸(pH 2) 1.3 mLを添加した。この混合物を、80℃で2時間攪拌し、揮発成分を除去して無色透明オイル状のポリアルミノシロキサンを含む光半導体素子封止用樹脂を得た(4.36 g、収率78%)以外は実施例1と同様にして、青色発光ダイオード装置を得た。
【0039】
実施例3
ジフェニルジメトキシシラン4.90 g(20.1 mmol)とジメチルジメトキシシラン2.41 g(20.1 mmol)のトルエン溶液(5 mL)に対してアルミニウムトリイソプロポキシド0.164 g(0.804 mmol)および塩酸(pH 2)1.5 mLを添加した。この混合物を、80℃で2時間攪拌し、揮発成分を除去して無色透明オイル状のポリアルミノシロキサンを含む光半導体素子封止用樹脂を得た(4.22 g、収率76%)以外は実施例1と同様にして、青色発光ダイオード装置を得た。
【0040】
実施例4
ジフェニルジメトキシシラン4.88 g(20.0 mmol)、ジメチルジメトキシシラン1.80 g(15.0 mmol)およびメチルトリメトキシシラン0.681 g(5.01 mmol)のトルエン溶液(5 mL)に対してアルミニウムトリイソプロポキシド0.017 g(0.083 mmol)および塩酸(pH 2) 1.4 mLを添加した。この混合物を、80℃で2時間攪拌し、揮発成分を除去して無色透明オイル状のポリアルミノシロキサンを含む光半導体素子封止用樹脂を得た(4.30 g、収率76%)以外は実施例1と同様にして、青色発光ダイオード装置を得た。
【0041】
比較例1
エポキシ当量7,500のビスフェノールA型エポキシ樹脂(エピコートEP1256、ジャパンエポキシレジン社製)45重量部とエポキシ当量260の脂環式骨格のエポキシ樹脂(EHPE-3150ダイセル化学社製)33重量部と4-メチルヘキサヒドロ無水フタル酸(MH-700、新日本理化社製)を22重量部、2-メチルイミダゾール(2MZ、四国化成社製)1.2重量部をメチルエチルケトンに50%ベースで溶解し、塗工溶液を作製した。これをポリエステルフィルムの上に100μmの厚みになるように塗布し、130℃で2分間乾燥させた。さらに、ポリエステルフィルムを適宜剥離しながら、このシート3枚を100℃にて熱ラミネートし、300μm厚のエポキシ樹脂シートを作成した。
【0042】
青色発光ダイオードが実装された基板を150℃に加熱した後、得られたエポキシ樹脂シートを、青色発光ダイオードを覆うように基板上に載せて、0.5 MPaの圧力で青色発光ダイオードを封止し、青色発光ダイオード装置を得た。
【0043】
上記で得られた各樹脂または装置は以下の各評価に従って調べられ、その結果を表1に示す。
【0044】
(光透過率)
各実施例及び比較例の樹脂について、分光光度計(U−4100;日立ハイテク社製)を用いて波長450nmにおける光透過率(樹脂の厚さ50μm換算)を測定した。
【0045】
(耐熱性)
各実施例及び比較例の樹脂を、150℃の温風型乾燥機内に100時間静置した。100時間経過後の樹脂の透明性を目視で観察し、保存前の状態から変色がないものを○、保存前の状態から変色があるものを×として評価した。
【0046】
(吸湿性)
各実施例及び比較例の樹脂は、60℃,90%RHの条件下で24時間後の重量増分を算出した。なお、吸湿性は、式:〔(24時間後の樹脂の重量−測定前の樹脂の重量)/測定前の樹脂の重量〕×100(%)で表される。
【0047】
(輝度保持率)
各実施例及び比較例の青色発光ダイオード装置に300mAの電流を流し、試験開始直後の輝度をMCPD(瞬間マルチ測光システムMCPD-3000、大塚電子社製)により測定した。その後、電流を流した状態で放置し、300時間経過後の輝度を同様にして測定し、下記の式に従って輝度保持率を算出した。なお、輝度保持率が70%以上のものを耐光性が良好と判断した。
輝度保持率(%)=(300 mA連続点灯300時間経過後の輝度/試験開始直後の輝度)×100
【0048】
【表1】

【0049】
表1の結果より、光半導体素子封止用樹脂は、良好な光透過性で、低吸湿性であり、高温使用時の変色がないことが分かる。また、該樹脂を用いて光半導体素子を封止してなる光半導体装置は良好な輝度保持率を有していることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明の光半導体素子封止用樹脂は、液晶画面のバックライト、信号機、屋外の大型ディスプレイ、広告看板等に好適に使用し得るものである。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケイ素化合物とアルミニウム化合物を反応させて得られるポリアルミノシロキサンを含む光半導体素子封止用樹脂。
【請求項2】
ケイ素化合物が式(I)で表される化合物及び/又は式(II)で表される化合物である、請求項1記載の光半導体素子封止用樹脂。
【化1】

(式中、R1 及びR2 は、それぞれ独立してアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基又はアリール基、X1 及びX2 は、それぞれ独立してアルコキシ基、ヒドロキシ基又はハロゲンを示す)
【化2】

(式中、R3 はアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基又はアリール基、X3 、X4 及びX5 は、それぞれ独立してアルコキシ基、ヒドロキシ基又はハロゲンを示す)
【請求項3】
アルミニウム化合物が式(III)で表される、請求項1又は2記載の光半導体素子封止用樹脂。
【化3】

(式中、Y1、Y2及びY3は、それぞれ独立して水素又はアルキル基を示す)
【請求項4】
請求項1〜3いずれか記載の光半導体素子封止用樹脂を用いて光半導体素子を封止してなる光半導体装置。
【請求項5】
輝度保持率が70%以上である、請求項4記載の光半導体装置。

【公開番号】特開2009−127022(P2009−127022A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−306818(P2007−306818)
【出願日】平成19年11月28日(2007.11.28)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】