説明

ポリエステルフィルムの製造方法及び太陽電池部材用ポリエステルフィルム

【課題】極限粘度が高い原料樹脂を用いても、溶融押出時の熱分解と未溶融樹脂の発生を抑えつつ、高い耐加水分解性を有するポリエステルフィルムを高い生産性で製造する方法を提供する。
【解決手段】供給口12から極限粘度IVが0.7〜0.9である原料樹脂を供給し、二軸押出機出口14側の内壁がポリエステル樹脂の融点Tm(℃)以下の冷却部となるように制御しながらバレル内で加熱溶融して出口から押出した後、10〜20分の平均滞留時間を経て式(1)を満たす条件下で(Dはスクリュ径(mm)、Nはスクリュ回転数(rpm)、Qは押出量(kg/hr))フィルム状に溶融押出しを行うことにより、原料の末端COOH量AVと溶融押出して成形されたフィルムの末端COOH量AVとの差ΔAV=AV−AVが3eq/t以下のポリエステルフィルムを製造する。
6.0×10−6×D≦Q/N≦1.1×10−5×D (1)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステルフィルムの製造方法及び太陽電池部材用ポリエステルフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、太陽電池モジュールの太陽光入射側とは反対側に配されるバックシートには、ポリエステルなどの樹脂材料が使用されるに至っている。ポリエステルには、通常はその表面にカルボキシル基や水酸基が多く存在しており、水分が存在する環境では加水分解を起こしやすく、経時で劣化する傾向がある。そのため、屋外等の常に風雨に曝されるような環境におかれる太陽電池モジュール等に用いられるポリエステルは、その加水分解性が抑えられていることが求められる。
【0003】
ポリエステル樹脂に耐加水分解性を付与するには、加水分解反応の触媒となる末端COOHを低減することが考えられる。末端COOHは溶融時の加熱で発生するため、可塑化溶融押出機で溶融製膜する場合には、溶融時の熱履歴を緩和することが重要になる。しかし、単純に押出機を低温化しただけでは、未溶融樹脂が吐出してしまい、フィルム性能が発現しなくなってしまう。
【0004】
上記の状況に関連して、押出機をタンデム配置にし、2段目の押出機で樹脂を冷却することにより熱履歴を緩和する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
また、発熱を抑えて大量生産を達成するため、バレルの内径が140mm以上のベント式二軸押出機を使用し、単位時間当たりの押出量Qとスクリュ回転数Nとの比Q/Nが一定の範囲内となる条件下で溶融押出しを行うポリエステルシートの製造方法が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−119112号公報
【特許文献2】特許第3577178号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示されているように、単軸押出機をタンデムにし、1段目で溶融、2段目で樹脂を冷却することにより熱履歴を緩和する方法では、1段目の押出機で発熱した樹脂を2段目の押出機で均一に冷却することは難しく、十分な耐加水分解性は付与できない。これは「単軸スクリュの発熱しやすさ」、「冷却しにくさ」が両立できないことを意味している。
【0007】
一方、特許文献2に開示されているように、脱水効率向上のためにスクリュ回転数を高くする方法では、特に極限粘度IVが0.7以上の原料樹脂を用いる場合、発熱が大きく、押出機出口以降の配管、フィルタでの分解反応の進行が問題となり、高い耐加水分解性を得ることは難しい。
【0008】
耐加水分解性を高めるには、溶融押出時の樹脂劣化を抑えることが有効であるが、スクリュ径が200mmを越える大型の単軸押出機では押出機内部の局所発熱が大きいのみならず、バレル冷却を行っても、バレル表面が固化し、吐出不良、温度ムラ、溶融不良が発生し、樹脂温度を下げられない。また、スクリュ径が140mmを越える二軸押出機でも、脱気効率確保のためにスクリュが高回転となってしまい、発熱が増大してしまう。
【0009】
本発明は、極限粘度が高い原料樹脂を用いても、溶融押出時の熱分解と未溶融樹脂の発生を抑えつつ、高い耐加水分解性を有するポリエステルフィルムを高い生産性で製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するため、以下の発明が提供される。
<1> 供給口及び押出機出口を有するバレルと、それぞれ140mm以上の径を有し、前記バレル内で回転する2つのスクリュと、前記バレルの周囲に配置され、該バレルの温度を制御する温度制御手段と、を備えた二軸押出機を用い、前記供給口から極限粘度IVが0.7〜0.9であるポリエステル樹脂を原料として供給し、前記温度制御手段により前記バレルの前記押出機出口側の内壁が前記ポリエステル樹脂の融点Tm(℃)以下の冷却部となるように制御しながら、前記バレル内で加熱溶融して前記押出機出口から押出した後、10分〜20分の平均滞留時間を経て、下記式(1)を満たす条件下でフィルム状に溶融押出しを行うことによりポリエステルフィルムを成形し、前記原料のポリエステル樹脂の末端COOH量をAV、前記溶融押出して成形されたポリエステルフィルムの末端COOH量をAVとしたときに、AV−AVで表されるΔAVが3eq/t以下のポリエステルフィルムを製造するポリエステルフィルムの製造方法。
6.0×10−6×D≦Q/N≦1.1×10−5×D (1)
(式(1)中、Dは二軸押出機のスクリュ径(mm)、Nはスクリュ回転数(rpm)、Qは押出量(kg/hr)をそれぞれ表す。)
<2> 前記二軸押出機内の長手方向における最大樹脂温度Tmaxが(Tm+40)℃〜(Tm+60)℃であり、かつ前記押出機出口における樹脂温度Toutが(Tm+30)℃以下である<1>に記載のポリエステルフィルムの製造方法。
<3> 前記二軸押出機が1箇所以上のベントを有し、ベント圧力が0.01Torr〜5Torrである<1>又は<2>に記載のポリエステルフィルムの製造方法。
<4> 前記冷却部に位置するスクリュのピッチが、前記スクリュ径Dに対し、0.5D〜0.8Dである<1>〜<3>のいずれかに記載のポリエステルフィルムの製造方法。
<5> 前記二軸押出機の長手方向における前記冷却部の長さが、前記スクリュ径Dに対し、4D〜11Dである<1>〜<4>のいずれかに記載のポリエステルフィルムの製造方法。
<6> 前記ポリエステル樹脂の末端COOH量が、25eq/t以下である<1>〜<5>のいずれかに記載のポリエステルフィルムの製造方法。
<7> 前記原料となる前記ポリエステル樹脂が、カルボン酸基と水酸基との合計が3以上である多官能モノマーに由来する構成成分を含む<1>〜<6>のいずれかに記載のポリエステルフィルムの製造方法。
<8> 前記多官能モノマーに由来する構成成分の含有比率が、前記ポリエステル樹脂中の全構成単位に対して、0.005モル%以上2.5モル%以下である<7>に記載のポリエステルフィルムの製造方法。
<9> 前記供給口から、前記ポリエステル樹脂とともに、オキサゾリン系化合物、カルボジイミド化合物、及びエポキシ化合物から選ばれる少なくとも1種の末端封止剤を供給する<1>〜<8>のいずれかに記載のポリエステルフィルムの製造方法。
<10> 前記末端封止剤を、前記ポリエステル樹脂に対して、0.1質量%以上5質量%以下添加する<9>に記載のポリエステルフィルムの製造方法。
<11> 下記式(2)を満たす条件下でフィルム状に溶融押出しを行う<1>〜<10>のいずれかに記載のポリエステルフィルムの製造方法。
7×10−6×D≦Q/N≦1×10−5×D (2)
<12> 前記冷却部における前記バレルの温度を(Tm−100)℃〜Tm℃に制御する<1>〜<11>のいずれかに記載のポリエステルフィルムの製造方法。
<13> 前記スクリュ径Dが、160mm〜200mmである<1>〜<12>のいずれかに記載のポリエステルフィルムの製造方法。
<14> <1>〜<13>のいずれかに記載の方法により製造された太陽電池部材用ポリエステルフィルム。
<15> カルボン酸基と水酸基との合計が3以上である多官能モノマーに由来する構成成分を含む<14>に記載の太陽電池部材用ポリエステルフィルム。
<16> 前記多官能モノマーに由来する構成成分の含有比率が、ポリエステル中の全構成単位に対して、0.005モル%以上2.5モル%以下である<15>に記載の太陽電池部材用ポリエステルフィルム。
<17> オキサゾリン系化合物、カルボジイミド化合物、及びエポキシ化合物から選ばれる少なくとも1種の末端封止剤に由来する構造部分を含む<14>〜<16>のいずれかに記載の太陽電池部材用ポリエステルフィルム。
<18> 前記末端封止剤に由来する構造部分の含有比率が、ポリエステルに対して、0.1質量%以上5質量%以下である<17>に記載の太陽電池部材用ポリエステルフィルム。
<19> 末端COOH基量が15eq/t以下であり、かつ厚み1mmに成形した場合の昇温結晶化温度Tcが140℃以上である太陽電池部材用ポリエステルフィルム。
<20> <14>〜<19>のいずれかに記載の太陽電池部材用ポリエステルフィルムを備えた太陽電池発電モジュール。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、極限粘度が高い原料樹脂を用いても、溶融押出時の熱分解と未溶融樹脂の発生を抑えつつ、高い耐加水分解性を有するポリエステルフィルムを高い生産性で製造する方法を提供することができる。また、本発明によれば、耐加水分解性に優れた太陽電池部材用ポリエステルフィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係るポリエステルフィルムの製造方法を実施するための二軸押出機の構成例を示す概略図である。
【図2】本発明に係るポリエステルフィルムの製造方法を実施するフローの一例を示す図である。
【図3】本発明に係る二軸押出機のスクリュ径D(mm)と、押出量Q(kg/hr)/スクリュ回転数N(rpm)との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明のポリエステルフィルムの製造方法及び太陽電池部材用ポリエステルフィルムについて詳細に説明する。なお、本願明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
本発明者は、単軸押出機の問題である低い冷却効率を改善するため、二軸押出機を用い、押出機出口までの区間に設けた冷却ゾーンで効率的な冷却を行うことにより単軸押出機では困難である低温均一押出しが可能であり、ある程度脱気効率を落とした状態でも樹脂劣化を抑制できることを見出した。さらに、比較的低回転で押出すことで、発熱が低減され、大型の製造装置においても末端COOHの増加を抑え、耐加水分解性の高いフィルムを得ることが可能となることを見出した。
【0014】
本発明のポリエステルフィルムの製造方法は、供給口及び押出機出口を有するバレルと、それぞれ140mm以上の径を有し、前記バレル内で回転する2つのスクリュと、前記バレルの周囲に配置され、該バレルの温度を制御する温度制御手段と、を備えた二軸押出機を用い、前記供給口から極限粘度IVが0.7〜0.9であるポリエステル樹脂を原料として供給し、前記温度制御手段により前記バレルの前記押出機出口側の内壁の温度をポリエステル樹脂の融点Tm(℃)以下に制御して冷却部となるように制御しながら前記バレル内で加熱溶融して押出機出口から押出した後、10分〜20分の平均滞留時間を経て、下記式(1)を満たす条件下でフィルム状に溶融押出しを行うことによりポリエステルフィルムを成形し、前記原料のポリエステル樹脂の末端COOH量をAV、前記溶融押出して成形されたポリエステルフィルムの末端COOH量をAVとしたときに、AV−AVで表されるΔAVが3eq/t以下のポリエステルフィルムを製造する方法である。
6.0×10−6×D≦Q/N≦1.1×10−5×D (1)
(式(1)中、Dは二軸押出機のスクリュ径(mm)、Nはスクリュ回転数(rpm)、Qは押出量(kg/hr)をそれぞれ表す。)
【0015】
<二軸押出機>
まず、本発明で用いる二軸押出機について説明する。図1は、本発明に係るポリエステルフィルムの製造方法を実施する際に使用することができる二軸押出機の構成例を概略的に示している。図2は、本発明に係るポリエステルフィルムの製造方法を実施するフローの一例を示している。
溶融押出し法によりポリエステルフィルムを製造する場合、一般的に用いられる押出機は大別して、単軸と多軸があり、多軸としては二軸押出機(二軸スクリュ押出機)が広く使用されている。本発明では、供給口12及び押出機出口14を有するバレル10(シリンダー)と、それぞれ140mm以上の径を有し、前記バレル10内で回転する2つのスクリュ20A,20Bと、前記バレル10の周囲に配置され、該バレル10内の温度を制御する温度制御手段30と、を備えた二軸押出機100を用いる。供給口12の手前には原料供給装置46が設けられている。押出機出口14の先にはギアポンプ44と、フィルタ42と、ダイ40が設けられている。
【0016】
−バレル−
バレル10は原料樹脂を供給するための供給口12と、加熱溶融された樹脂が押し出される押出機出口14を有する。
バレル10の内壁面は、耐熱、耐磨耗性、及び腐食性に優れ、樹脂との摩擦が確保可能な素材を用いることが必要である。一般的には内面を窒化処理した窒化鋼が使用されているが、クロムモリブデン鋼、ニッケルクロムモリブデン鋼、ステンレス鋼を窒化処理して用いることもできる。特に耐摩耗性、耐食性を要求される用途では、遠心鋳造法によりニッケル、コバルト、クロム、タングステン等の耐腐食性、耐磨耗性素材合金をバレル10の内壁面にライニングさせたバイメタリックバレルを用いることや、セラミックの溶射皮膜を形成させることが有効である。
【0017】
バレル10には真空を引くためのベント16A,16Bも設けられている。ベント16A,16Bを通じて真空引きをすることでバレル10内の樹脂中の水分等の揮発成分を効率的に除去することができる。ベント16A,16Bを適正に配置することにより、未乾燥状態の原料(ペレット、パウダー、フレークなど)や製膜途中で出たフィルムの粉砕屑(フラフ)等をそのまま原料樹脂として使用することができる。
ベント16A,16Bは脱気効率との関係で、開口面積やベントの数を適正にすることが求められる。本発明で用いる二軸押出機100は、1箇所以上のベント16A,16Bを有することが望ましい。なお、ベント16A,16Bの数が多過ぎると、溶融樹脂がベントから溢れ出るおそれ、滞留劣化異物増加の懸念があるので、ベントは1箇所又は2箇所設けることが好ましい。
また、ベント付近の壁面に滞留した樹脂や析出した揮発成分が押出機100(バレル10)の内部に落下すると、製品に異物として顕在化する可能性があり、注意が必要である。滞留については、ベント蓋の形状の適正化や、上部ベント、側面ベントの適正な選定が有効であり、揮発成分の析出は、配管等の加熱で析出を防止する手法が一般的に用いられる。
【0018】
例えば、PETを押出す場合、加水分解、熱分解、酸化分解の抑制が製品(フィルム)の品質に大きな影響を及ぼす。
例えば、樹脂供給口12を真空化したり、窒素パージを行うことで酸化分解を抑えることができる。
また、ベント16A,16Bを複数箇所に設けることで、原料水分量が2000ppm程度の場合でも、50ppm以下に乾燥した樹脂を単軸で押出した場合と同様の押出しが可能である。
また、剪断発熱による樹脂分解を抑えるため、押出と脱気が両立できる範囲でニーディング等のセグメントは極力設けないことが好ましい。
また、スクリュ出口(押出機出口)14の圧力が大きいほど剪断発熱が大きくなるため、ベント16A,16Bによる脱気効率と押出の安定性が確保できる範囲内で、押出機出口14の圧力は極力低くすることが好ましい。
【0019】
−二軸スクリュ−
バレル10内には、140mm以上のスクリュ径Dを有し、モータおよびギアを含む駆動手段21によって回転する2つのスクリュ20A,20Bが設けられている。スクリュ径Dが140mm以上となる大型の二軸押出機では、大量生産が可能である一方、溶融ムラが生じ易い。しかし、本発明によれば140mm以上のスクリュ径Dを備えた大型の二軸押出機を用いる場合でも、溶融ムラが抑制されるともに、加熱による末端COOHの増加を抑制することができる。大量生産の観点から、スクリュ径Dは好ましくは150mm以上、より好ましくは160〜200mmである。
【0020】
二軸押出機は、2つのスクリュ20A,20Bの噛み合い型と非噛み合い型に大別され、噛み合い型のほうが、非噛み合い型よりも混練効果が大きい。本発明では、噛み合い型と非噛み合い型のいずれのタイプでも良いが、原料樹脂を十分混練して溶融ムラを抑制する観点から、噛み合い型を用いることが好ましい。
2つのスクリュ20A,20Bの回転方向もそれぞれ同方向と異方向に分かれる。異方向回転スクリュ20A,20Bは同方向回転型よりも混練効果が高く、同方向回転型は自己清掃効果を持っているため、押出機内の滞留防止には有効である。
さらに軸方向も平行と斜交があり、強いせん断を付与する場合に用いられるコニカルタイプの形状もある。
【0021】
本発明で用いる二軸押出機では、様々な形状のスクリュセグメントが用いられる。スクリュ20A,20Bの形状としては、例えば、等ピッチの1条のらせん状フライト22が設けられたフルフライトスクリュが用いられる。
加熱溶融部に、ニーディングディスクやローターなどの剪断を付与するセグメントを用いることで、原料樹脂をより確実に溶融することができる。また、逆スクリュやシールリングを用いることにより、樹脂をせき止め、ベント16A,16Bを引く際のメルトシールを形成することができる。例えば、図1に示すように、ベント16A,16B付近に、上記のような原料樹脂の溶融を促進する混練部24A,24Bを設けることができる。
【0022】
押出機100の後半では溶融樹脂を冷却するための温調ゾーン(冷却部)が有効である。剪断発熱よりもバレル10の伝熱効率が高い場合は、温調ゾーン(冷却部)にピッチの短いスクリュ28を設けることで、バレル10壁面の樹脂移動速度が高まり、温調効率を上げることができる。冷却効果を高める観点から、冷却部に位置するスクリュ28のピッチは、スクリュ径Dに対し、0.5D〜0.8Dであることが好ましい。
【0023】
−温度制御手段−
バレル10の周囲には、温度制御手段30が設けられている。図1に示す押出機100では、原料供給口12から押出機出口14に向けて長手方向に9つに分割された加熱/冷却装置C1〜C9が温度制御手段30を構成している。このようにバレル10の周囲に分割して配置された加熱/冷却装置C1〜C9によって、例えば加熱溶融部C1〜C7と冷却部C8,C9の各領域(ゾーン)に区画し、バレル10内を領域ごとに所望の温度に制御することができる。
【0024】
加熱は、通常バンドヒーターまたはシーズ線アルミ鋳込みヒーターが用いられるが、これらに限定されず、例えば熱媒循環加熱方法も用いることができる。一方、冷却はブロワーによる空冷が一般的であるが、バレル10の周囲に巻き付けたパイプに水または油を流す方法もある。
【0025】
−ダイ−
バレル10の押出機出口14には、押出機出口14から押出された溶融樹脂をフィルム状(帯状)に吐出するためのダイ40が設けられている。また、バレル10の押出機出口14とダイ40との間には、フィルムに未溶融樹脂や異物が混入することを防ぐためのフィルタ42が設けられている。
【0026】
−ギアポンプ−
厚み精度を向上させるためには、押出量の変動を極力減少させることが重要である。押出量の変動を極力減少させるために押出機100とダイ40との間にギアポンプ44を設けてもよい。ギアポンプ44から一定量の樹脂を供給することにより、厚み精度を向上させることができる。特に、二軸スクリュ押出機を用いる場合には、押出機自身の昇圧能力が低いため、ギアポンプ44による押出安定化を図ることが好ましい。
【0027】
ギアポンプ44を用いることにより、ギアポンプ44の2次側の圧力変動を1次側の1/5以下にすることも可能であり、樹脂圧力変動幅を±1%以内にできる。その他のメリットとしては、スクリュ先端部の圧力を上げることなしにフィルタによる濾過が可能なことから、樹脂温度の上昇の防止、輸送効率の向上、及び押出機内での滞留時間の短縮が期待できる。また、フィルタの濾圧上昇が原因で、スクリュから供給される樹脂量が経時変動することも防止できる。ただし、ギアポンプ44を設置すると、設備の選定方法によっては設備の長さが長くなり、樹脂の滞留時間が長くなることと、ギアポンプ部のせん断応力によって分子鎖の切断を引き起こすことがあり注意が必要である。
【0028】
ギアポンプ44は1次圧力(入圧)と2次圧力(出圧)の差を大きくし過ぎると、ギアポンプ44の負荷が大きくなり、せん断発熱が大きくなる。そのため、運転時の差圧は20MPa以内、好ましくは15MPa、更に好ましくは10MPa以内とする。また、フィルム厚みの均一化のために、ギアポンプ44の一次圧力を一定にするために、押出機のスクリュ回転を制御したり、圧力調節弁を用いたりすることも有効である。
【0029】
<押出し工程>
次に、上記のような構成を有する二軸押出機を用いてポリエステルフィルムを製造する方法について具体的に説明する。
【0030】
‐原料‐
本発明では、原料樹脂として、極限粘度IVが0.7〜0.9であるポリエステル樹脂を用いる。IVが高いほど混練によって発熱し易く、末端COOHが増加し易いが、本発明の方法によれば、二軸押出機を使用するため、加熱溶融部において原料樹脂を十分混練して溶融させることができるとともに、冷却部において過剰な加熱を抑制し、末端COOHの増加を抑制することができる。なお、原料樹脂の極限粘度IVが0.7未満では、原料の末端COOHを少なくすることができずにフィルム品質が低下し、0.9を超えると、二軸押出機を用いても末端COOHの増加が顕著になり、フィルム品質が低下する。原料樹脂のIVは好ましくは0.70〜0.85、さらに好ましくは0.70〜0.80である。
原料樹脂のIVは、重合方式および重合条件によって調整することができ、液相重合の後に固相重合を行うことによって原料となる極限粘度IVが0.7〜0.9のポリエステル樹脂を得ることができる。
【0031】
また、原料樹脂は、末端COOH量(AV)が25eq/t(当量/トン)以下であることが好ましく、15eq/t以下がより好ましい。本発明の方法により原料樹脂を溶融押出ししてフィルムを製造する際、末端COOH量の増加は3eq/t以下に抑制されるため、末端COOH量が25eq/t以下の原料樹脂を用いれば、末端COOH量が少なく、高い耐加水分解性を有するポリエステルフィルムが得られる。ただし、例えば被着物との間の密着性が得られる観点から、原料樹脂の末端COOH量は2eq/t以上であることが望ましい。なお、本明細書中において、「eq/t」、「当量/トン」は、1トンあたりのモル当量を表す。
【0032】
末端COOH量は、以下の方法により測定される値である。すなわち、原料樹脂0.1gをベンジルアルコール10mlに溶解後、さらにクロロホルムを加えて混合溶液を得、これにフェノールレッド指示薬を滴下する。この溶液を、基準液(0.01N KOH−ベンジルアルコール混合溶液)で滴定し、滴下量から末端カルボキシル基量を求める。
【0033】
なお、複数の種類の樹脂を混合して用いる場合は、前記原料樹脂の末端COOH量は、混合状態での量を表す。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)として、そのペレットの1種又は2種以上やPETフィルムの粉砕屑であるチップ材などを混合する場合、ペレットの末端COOH量の総量、又はペレットの末端COOH量とチップの末端COOH量との合計量である。
【0034】
また、原料樹脂の融点Tmは、250℃〜260℃の範囲であることが好ましい。前記融点Tmは示差走査熱量測定により求められる値である。複数の樹脂の混合であるときは融点の平均値が上記範囲内にあることが好ましい。
【0035】
原料樹脂の嵩比重としては、0.6〜0.8の範囲が好ましい。この嵩比重が0.6以上であると、押出しをより安定的に行なうことができる。嵩比重が0.8以下であると、局所的な発熱を効果的に抑制することができる。
原料樹脂の嵩比重とは、粉末を一定容積の容器の中に一定状態で入れる等して、所定形状にした粉末の質量を、そのときの体積で除算して求められる比重(単位体積あたりの質量)をいい、嵩比重が小さいほど嵩張る。
上記の中でも、押出時の発熱の抑制により末端COOHの増加をより抑える点で、原料樹脂の嵩比重は0.7〜0.75の範囲が特に好ましい。
【0036】
原料樹脂を構成するポリエステル樹脂としては、ジカルボン酸又はそのエステル誘導体と、ジオール化合物とを公知の方法でエステル化反応及び/又はエステル交換反応させることによって得ることができる。
前記ジカルボン酸又はそのエステル誘導体としては、例えば、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、ダイマー酸、エイコサンジオン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、メチルマロン酸、エチルマロン酸等の脂肪族ジカルボン酸類、アダマンタンジカルボン酸、ノルボルネンジカルボン酸、イソソルビド、シクロヘキサンジカルボン酸、デカリンジカルボン酸、などの脂環族ジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、フェニルエンダンジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、フェナントレンジカルボン、9,9’−ビス(4−カルボキシフェニル)フルオレン酸等の芳香族ジカルボン酸などのジカルボン酸又はそのエステル誘導体が挙げられる。
【0037】
前記ジオール化合物としては、例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール等の脂肪族ジオール類、シクロヘキサンジメタノール、スピログリコール、イソソルビドなどの脂環式ジオール類、ビスフェノールA、1,3―ベンゼンジメタノール,1,4−ベンセンジメタノール、9,9’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、などの芳香族ジオール類等が挙げられる。
【0038】
エステル化反応及び/又はエステル交換反応には、従来から公知の反応触媒を用いることができる。反応触媒としては、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、亜鉛化合物、鉛化合物、マンガン化合物、コバルト化合物、アルミニウム化合物、アンチモン化合物、チタン化合物、リン化合物などが挙げられる。通常は、ポリエステルの製造方法が完結する以前の任意の段階において、重合触媒としてアンチモン化合物、ゲルマニウム化合物、チタン化合物を添加することが好ましい。このような方法としては、例えば、ゲルマニウム化合物を例に挙げると、ゲルマニウム化合物粉体をそのまま添加することが好ましい。
【0039】
好ましいポリエステルは、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン−2,6−ナフタレート(PEN)であり、より好ましくはPETである。PETは、ゲルマニウム(Ge)系触媒、アンチモン(Sb)系触媒、アルミニウム(Al)系触媒、及びチタン(Ti)系触媒から選ばれる1種又は2種以上を用いて重合されるものが好ましく、より好ましくはTi系触媒である。
【0040】
前記Ti系触媒は、反応活性が高く、重合温度を低くすることができる。そのため、特に重合反応中にPETが熱分解し、COOHが発生するのを抑制することが可能である。本発明においては、ポリエステルフィルムの末端COOH量を30eq/トン以下の範囲に調整するのに好適である。
【0041】
Ti系触媒を用いた重合により得たTi触媒系PETの製造には、例えば、特開2005−340616号公報、特開2005−239940号公報、特開2004−319444号公報、特許3436268号公報、特許3979866号公報、特許3780137号、特開2007−204538号公報等に記載の重合方法を用いることができる。
【0042】
チタン(Ti)系化合物を、1ppm以上30ppm以下、より好ましくは2ppm以上20ppm以下、さらに好ましくは3ppm以上15ppm以下の範囲で用いて重合を行なうことが好ましい。この場合、本発明の方法によって製造されるポリエステルフィルムには、1ppm以上30ppm以下のチタンが含まれる。
Ti系触媒の量は、1ppm以上であると好ましいIVが得られ、30ppm以下であると、末端COOHを低く抑えることができ、耐加水分解性の向上に有利である。
【0043】
また、本発明では、原料樹脂として、ジカルボン酸とジオールのほかに、カルボン酸基と水酸基との合計が3以上である多官能モノマー(以下、「3官能以上の多官能モノマー」又は「多官能モノマー」と記す場合がある。)を添加して重縮合反応させたポリエステルを用いることができる。
ここで、カルボン酸基の数(a)と水酸基の数(b)との合計(a+b)が3以上である多官能モノマーとしては、カルボン酸基の数(a)が3以上のカルボン酸並びにこれらのエステル誘導体や酸無水物等、水酸基数(b)が3以上の多官能モノマー、並びに「一分子中に水酸基とカルボン酸基の両方を有し、カルボン酸基の数(a)と水酸基の数(b)との合計(a+b)が3以上であるオキシ酸類」などを挙げることができる。
【0044】
カルボン酸基数(a)が3以上のカルボン酸の例としては、三官能の芳香族カルボン酸として、トリメシン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレントリカルボン酸、アントラセントリカルボン酸等が、三官能の脂肪族カルボン酸として、メタントリカルボン酸、エタントリカルボン酸、プロパントリカルボン酸、ブタントリカルボン酸等が、四官能の芳香族カルボン酸としてベンゼンテトラカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ナフタレンテトラカルボン酸、アントラセンテトラカルボン酸、ペリレンテトラカルボン酸等が、四官能の脂肪族カルボン酸として、エタンテトラカルボン酸、エチレンテトラカルボン酸、ブタンテトラカルボン酸、シクロペンタンテトラカルボン酸、シクロヘキサンテトラカルボン酸、アダマンタンテトラカルボン酸等が、五官能以上の芳香族カルボン酸として、ベンゼンペンタカルボン酸、ベンゼンヘキサカルボン酸、ナフタレンペンタカルボン酸、ナフタレンヘキサカルボン酸、ナフタレンヘプタカルボン酸、ナフタレンオクタカルボン酸、アントラセンペンタカルボン酸、アントラセンヘキサカルボン酸、アントラセンヘプタカルボン酸、アントラセンオクタカルボン酸等が、五官能以上の脂肪族カルボン酸として、エタンペンタカルボン酸、エタンヘプタカルボン酸、ブタンペンタカルボン酸、ブタンヘプタカルボン酸、シクロペンタンペンタカルボン酸、シクロヘキサンペンタカルボン酸、シクロヘキサンヘキサカルボン酸、アダマンタンペンタカルボン酸、アダマンタンヘキサカルボン酸等が挙げられ、並びにこれらのエステル誘導体や酸無水物等が例として挙げられるがこれらに限定されない。
【0045】
また、上述のカルボン酸のカルボキシ末端に、l−ラクチド、d−ラクチド、ヒドロキシ安息香酸などのオキシ酸類、およびその誘導体、そのオキシ酸類が複数個連なったもの等を付加させたものも好適に用いられる。また、これらは単独で用いても、必要に応じて、複数種類用いても構わない。
【0046】
また、水酸基数(b)が3以上の多官能モノマーの例としては、三官能の芳香族として、トリヒドロキシベンゼン、トリヒドロキシナフタレン、トリヒドロキシアントラセン、トリヒドロキシカルコン、トリヒドロキシフラボン、トリヒドロキシクマリン、三官能の脂肪族アルコールとして、グリセリン、トリメチロールプロパン、プロパントリオール、四官能の脂肪族アルコールとして、ペンタエリスリトール等の化合物が上げられる。また、上述の化合物の水酸基末端にジオール類を付加させた化合物も好ましく用いられる。これらは単独で用いても、必要に応じて、複数種類用いても構わない。
【0047】
また、上記以外の他の多官能モノマーとして、一分子中に水酸基とカルボン酸基の両方を有し、かつカルボン酸基数(a)と水酸基数(b)との合計(a+b)が3以上であるオキシ酸類が挙げられる。このようなオキシ酸類の例としては、ヒドロキシイソフタル酸、ヒドロキシテレフタル酸、ジヒドロキシテレフタル酸、トリヒドロキシテレフタル酸などを挙げることができる。
また、上述の多官能モノマーのカルボキシ末端に、l-ラクチド、d−ラクチド、ヒドロキシ安息香酸などのオキシ酸類及びその誘導体、そのオキシ酸類が複数個連なったもの等を付加させたものも好適に用いられる。また、これらは単独で用いても、必要に応じて、複数種類併用しても構わない。
【0048】
前記多官能モノマーの含有比率は、ポリエステル中の全構成単位に対して、0.005モル%以上2.5モル%以下であることが好ましく、より好ましくは0.020モル%以上1モル%以下、更に好ましくは0.025モル%以上1モル%以下、更に好ましくは0.035モル%以上0.5モル%以下、更に好ましくは0.05モル%以上0.5モル%以下、特に好ましくは0.1モル%以上0.25モル%以下である。
【0049】
また、原料樹脂は、樹脂フィルムの粉砕片を混合して調製されるのが好ましい。樹脂フィルムとしては、ポリエステルフィルムが好適であり、原料樹脂中のポリエステル樹脂と同種のポリエステルのフィルムが好ましい。樹脂フィルムの粉砕片は、例えば不要となったフィルムを粉砕して小片(いわゆるチップ)や屑片等にした粉砕物であり、嵩高さを与え、嵩比重を例えばペレットのみの場合よりも低下させることができる。
【0050】
この粉砕片のサイズとしては、嵩変化が与えられる範囲であれば制限はないが、厚みが20〜5000μmであるものが好ましい。中でも、嵩比重が大きくなり過ぎて充満率が低下しすぎないようにし、溶融不足を回避する観点から、100〜1000μmの範囲、更には100〜500μmの範囲がより好ましい。
【0051】
また、製膜されるポリエステルフィルムの末端COOH量をより低減する点で、粉砕片のサイズのばらつきは小さい方が好ましく、例えば粉砕片の厚みでは、ばらつきは±100%以内であるのが好ましく、より好ましくは±50%以内であり、更には±10%以内である。粉砕片を用いる場合、厚みなどサイズばらつきを小さく抑えることで、得られるポリエステルフィルムの末端COOH量の変動を低く抑えることができる。
【0052】
粉砕片の原料樹脂中における質量比率としては、原料樹脂の全質量に対して50%以下であるのが好ましく、その質量比率の下限値は、10%が望ましい。粉砕片の割合を50質量%以下にすることで、得られるポリエステルフィルムの末端COOH量の変動幅をより低く抑えることができる。中でも、同様の理由から、粉砕片の質量比率は10〜30%がより好ましく、20〜30%が特に好ましい。
【0053】
粉砕片の嵩比重としては、原料樹脂の嵩比重が前記範囲を満たす範囲において、0.3〜0.7の範囲であることが好ましい。嵩比重は、既述の原料樹脂の嵩比重と同義であり、既述の方法と同様にして測定される。
【0054】
‐加熱溶融‐
上記のような極限粘度IVが0.7〜0.9のポリエステル樹脂の原料(原料樹脂)を用意し、温度制御手段30によりバレル10を加熱するとともにスクリュを回転させ、供給口12から原料樹脂を供給する。なお、供給口12は、原料樹脂のペレット等が加熱されて融着しないようにすることと、モータなどのスクリュ駆動設備を保護するため、伝熱防止として冷却することが好ましい。
【0055】
バレル内に供給された原料樹脂は、温度制御手段30による加熱のほか、スクリュ20A,20Bの回転に伴う樹脂同士の摩擦、樹脂とスクリュ20A,20Bやバレル10との摩擦などによる発熱によって溶融されるとともに、スクリュの回転に伴って押出機出口14に向けて徐々に移動する。
バレル内に供給された原料樹脂は融点Tm(℃)以上の温度に加熱されるが、樹脂温度が低過ぎると溶融押出時の溶融が不足し、ダイ40からの吐出が困難になるおそれがあり、樹脂温度が高過ぎると熱分解によって末端COOHが著しく増加して耐加水分解性の低下を招くおそれがある。これらの観点から、温度制御手段30による加熱温度及びスクリュ20A,20Bの回転数を調整することにより、二軸押出機内の長手方向における最大樹脂温度Tmaxを(Tm+40)℃〜(Tm+60)℃にすることが好ましく、(Tm+40)℃〜(Tm+55)℃とすることがより好ましく、(Tm+45)℃〜(Tm+50)℃とすることがさらに好ましい。
【0056】
二軸押出機内の長手方向における最大樹脂温度Tmaxは、二軸押出機100のスクリュ20A,20Bが配設されたバレル内で加熱されている原料樹脂の温度であり、剪断発熱があるときはその発熱による局所的高温部を含む温度である。Tmaxはバレル内の樹脂温度の測定により得られる。上記のTm及びTmaxの関係式において、Tmax[℃]は、末端COOHの増加を抑える観点から、290℃以下が好ましく、280℃以下がより好ましい。また、Tmaxの下限温度は、樹脂の溶融不足を防止する観点から260℃とすることが好ましい。
【0057】
‐ベント圧力‐
ベント16A,16Bを通じて真空引きをすることでバレル内の樹脂中の水分等の揮発成分を効率的に除去することができる。ベント圧力が低過ぎると溶融樹脂がバレル10の外に溢れ出るおそれがあり、ベント圧力が高過ぎると揮発成分の除去が不十分となり、得られたフィルムの加水分解が生じ易くなるおそれがある。溶融樹脂がベント16A,16Bから溢れ出ることを防ぐとともに揮発成分を選択的に除去する観点から、ベント圧力は0.01Torr〜5Torr(1.333Pa〜666.5Pa)とすることが好ましく、0.01Torr〜4Torr(1.333Pa〜533.2Pa)とすることがより好ましい。
【0058】
‐平均滞留時間‐
バレル内で原料樹脂を加熱溶融し、押出機出口14を出た後、ダイ40からフィルム状に押出されるまでの平均滞留時間を10分〜20分とする。原料樹脂を加熱溶融して、押出機100の押出機出口14を出てからダイ40から押出されるまでの平均滞留時間が10分未満では未溶融樹脂が残留し易く、一方、20分を超えると、熱分解によって末端COOH量が増加して耐加水分解性が低下する。このような観点から、原料樹脂を加熱溶融して押出機出口14から押出された後の上記平均滞留時間は、10分〜20分が好ましく、10分〜15分がより好ましい。
ここで、平均滞留時間は、下記式で定義される。
平均滞留時間(秒)=押出機下流配管容積(cm)×溶融体密度(g/cm)×3600/1000÷押出量(kg/h)
【0059】
‐冷却‐
上記のように原料樹脂をバレル内で加熱溶融する一方、温度制御手段30によりバレル10の押出機出口14側の内壁がポリエステル樹脂(原料樹脂)の融点Tm(℃)以下の冷却部となるように制御する。バレル10の押出機出口14側の内壁を冷却部として原料樹脂の融点Tm(℃)以下に制御すれば、樹脂が過剰に加熱されて末端COOH量が増加することを抑制することができる。末端COOH量の増加を確実に抑制する観点から、かかる冷却部における温度は、(Tm−100)℃〜Tm℃の範囲内が好ましく、(Tm−50)℃〜(Tm−10)℃の範囲内がより好ましい。
【0060】
冷却部の長さは、スクリュ径Dに対し、4D〜11Dにすることが好ましい。冷却部の長さが4D以上であれば、溶融加熱された樹脂を効果的に冷却して末端COOHの増加を抑制する。一方、冷却部の長さが11D以下であれば、樹脂を冷却し過ぎて固化することを防ぎ、溶融押出しを円滑に行うことができる。
なお、押出機出口14における樹脂温度ToutがTm+30℃以下となるようにすることが好ましい。ただし、押出機出口14における樹脂温度Toutが低過ぎると溶融樹脂の一部が固化するおそれもあるため、押出機出口14における樹脂温度ToutはTm〜(Tm+25)℃以下とすることがより好ましく、(Tm+10)℃〜(Tm+20)℃とすることがさらに好ましい。
【0061】
また、本発明では、ポリエステル樹脂に末端封止剤を添加して溶融押出しを行なうことが好ましい。末端封止剤とは、ポリエステルの末端のカルボキシル基と反応し、ポリエステルのカルボキシル末端量を減少させる添加剤である。
【0062】
好ましい末端封止剤として、オキサゾリン化合物、カルボジイミド化合物、エポキシ化合物を挙げることができる。これらは単独で用いてもよく、組合せて用いても良い。末端封止剤を添加し、特に5%以上50%以下の結晶化度分布を持つポリエステルフィルムを製造することで、相乗効果が得られる。即ち、上記範囲の結晶化度分布を持つポリエステルフィルム中に前記末端封止剤が含有されていると、相乗効果により、塗布層との密着性が促進される。即ち、ポリエステルフィルムの結晶化度の低い部分に塗布液が浸透し、相互貫入し密着を向上させるが、その時、ポリエステルフィルムの末端が上記封止剤と反応し嵩高くなることで、塗布液成分から引き抜き難くなる(アンカー効果)。この結果相互作用力が高まり密着が強くなると考えられる。
【0063】
これらの末端封止剤は、ポリエステル樹脂に対して0.1質量%以上5質量%以下添加することが好ましく、より好ましくは0.3質量%以上4質量%以下、さらに好ましくは0.5質量%以上2質量%以下である。ポリエステル樹脂に対する末端封止剤の添加量が0.1質量%以上であれば、上記アンカー効果が発現し易くなり、密着力がさらに向上し易い。一方、5質量%以下であれば嵩張った末端のためにポリエステル分子が配列し難くなることが抑制され、結晶を形成し易くなる。この結果、高結晶領域が増加し、結晶化度の分布を形成し易くなり密着力が向上する。
【0064】
カルボジイミド基を有するカルボジイミド化合物は、一官能性カルボジイミドと多官能性カルボジイミドがあり、一官能性カルボジイミドとしては、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド、ジメチルカルボジイミド、ジイソブチルカルボジイミド、ジオクチルカルボジイミド、t−ブチルイソプロピルカルボジイミド、ジフェニルカルボジイミド、ジ−t−ブチルカルボジイミドおよびジ−β−ナフチルカルボジイミドなどが挙げられる。特に好ましくは、ジシクロヘキシルカルボジイミドやジイソプロピルカルボジイミドである。
【0065】
また、多官能性カルボジイミドとしては、重合度3〜15のポリカルボジイミドが好ましく用いられる。ポリカルボジイミドは、一般に、「−R−N=C=N−」等で表される繰り返し単位を有し、前記Rは、アルキレン、アリーレン等の2価の連結基を表す。このような繰り返し単位としては、例えば、1,5−ナフタレンカルボジイミド、4,4’−ジフェニルメタンカルボジイミド、4,4’−ジフェニルジメチルメタンカルボジイミド、1,3−フェニレンカルボジイミド、2,4−トリレンカルボジイミド、2,6−トリレンカルボジイミド、2,4−トリレンカルボジイミドと2,6−トリレンカルボジイミドの混合物、ヘキサメチレンカルボジイミド、シクロヘキサン−1,4−カルボジイミド、キシリレンカルボジイミド、イソホロンカルボジイミド、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−カルボジイミド、メチルシクロヘキサンカルボジイミド、テトラメチルキシリレンカルボジイミド、2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミドおよび1,3,5−トリイソプロピルベンゼン−2,4−カルボジイミドなどを例示することができる。
【0066】
カルボジイミド化合物は、熱分解によるイソシアネート系ガスの発生が抑えられる点で、耐熱性の高いカルボジイミド化合物が好ましい。耐熱性を高めるためには、分子量(重合度)が高いほど好ましく、より好ましくはカルボジイミド化合物の末端を耐熱性の高い構造にすることが好ましい。また、ポリエステル原料樹脂を溶融押出する温度を下げることで、カルボジイミド化合物による耐候性の向上効果及び熱収縮の低減効果がより効果的に得られる。
【0067】
カルボジイミド化合物を添加した本発明のポリエステルフィルムは、300℃の温度で30分間保持した際のイソシアネート系ガスの発生量が0〜0.02質量%であることが好ましい。イソシアネート系ガスとはイソシアネート基をもつガスであり、例えば、ジイソプロピルフェニルイソシアネート、1,3,5−トリイソプロピルフェニルジイソシアネート、2−アミノ−1,3,5−トリイソプロピルフェニル−6−イソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートおよびシクロヘキシルイソシアネートなどが挙げられる。イソシアネート系ガスが0.02質量%以下であると、ポリエステルフィルム中に気泡(ボイド)が生成され難く、応力集中する部位が形成されにくいため、ポリエステルフィルム内に生じやすい破壊や剥離を防ぐことができる。これにより、隣接する材料との間の密着が良好になる。
【0068】
また、エポキシ化合物の好ましい例としては、グリシジルエステル化合物やグリシジルエーテル化合物などが挙げられる。
グリシジルエステル化合物の具体例としては、安息香酸グリシジルエステル、t−Bu−安息香酸グリシジルエステル、P−トルイル酸グリシジルエステル、シクロヘキサンカルボン酸グリシジルエステル、ペラルゴン酸グリシジルエステル、ステアリン酸グリシジルエステル、ラウリン酸グリシジルエステル、パルミチン酸グリシジルエステル、ベヘン酸グリシジルエステル、バーサティク酸グリシジルエステル、オレイン酸グリシジルエステル、リノール酸グリシジルエステル、リノレイン酸グリシジルエステル、ベヘノール酸グリシジルエステル、ステアロール酸グリシジルエステル、テレフタル酸ジグリシジルエステル、イソフタル酸ジグリシジルエステル、フタル酸ジグリシジルエステル、ナフタレンジカルボン酸ジグリシジルエステル、メチルテレフタル酸ジグリシジルエステル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、シクロヘキサンジカルボン酸ジグリシジルエステル、アジピン酸ジグリシジルエステル、コハク酸ジグリシジルエステル、セバシン酸ジグリシジルエステル、ドデカンジオン酸ジグリシジルエステル、オクタデカンジカルボン酸ジグリシジルエステル、トリメリット酸トリグリシジルエステルおよびピロメリット酸テトラグリシジルエステルなどを挙げられ、これらは1種または2種以上を用いることができる。
【0069】
また、オキサゾリン化合物としては、オキサゾリン基を有する化合物の中から適宜選択して用いることができるが、その中ではビスオキサゾリン化合物が好ましい。具体的には、2,2’−ビス(2−オキサゾリン)、2,2’−ビス(4−メチル−2−オキサゾリン)、2,2’−ビス(4,4−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2’−ビス(4−エチル−2−オキサゾリン)、2,2’−ビス(4,4’−ジエチル−2−オキサゾリン)、2,2’−ビス(4−プロピル−2−オキサゾリン)、2,2’−ビス(4−ブチル−2−オキサゾリン)、2,2’−ビス(4−ヘキシル−2−オキサゾリン)、2,2’−ビス(4−フェニル−2−オキサゾリン)、2,2’−ビス(4−シクロヘキシル−2−オキサゾリン)、2,2’−ビス(4−ベンジル−2−オキサゾリン)、2,2’−p−フェニレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−m−フェニレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−o−フェニレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−p−フェニレンビス(4−メチル−2−オキサゾリン)、2,2’−p−フェニレンビス(4,4−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2’−m−フェニレンビス(4−メチル−2−オキサゾリン)、2,2’−m−フェニレンビス(4,4−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2’−エチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−テトラメチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−ヘキサメチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−オクタメチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−デカメチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−エチレンビス(4−メチル−2−オキサゾリン)、2,2’−テトラメチレンビス(4,4−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2’−9,9’−ジフェノキシエタンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−シクロヘキシレンビス(2−オキサゾリン)および2,2’−ジフェニレンビス(2−オキサゾリン)等を例示することができる。これらの中では、ポリエステルとの反応性が良好で耐候性の向上効果が高い観点から、2,2’−ビス(2−オキサゾリン)が最も好ましく用いられる。さらに、上記で挙げたビスオキサゾリン化合物は、本発明の効果を損なわない限り、一種を単独で用いても、二種以上を併用してもどちらでも良い。
【0070】
‐溶融押出し‐
原料樹脂をバレル内で加熱溶融して押出機出口14から押出された後、10分〜20分の平均滞留時間を経て、スクリュ径Dを考慮してスクリュ回転数N(rpm)と押出量Q(kg/hr)を制御することで下記式(1)を満たす条件下でフィルム状に溶融押出しを行う。
6.0×10−6×D≦Q/N≦1.1×10−5×D (1)
IVが0.7以上の原料樹脂を溶融する場合、IVが0.7未満の原料樹脂を押出す場合の押出量Qとスクリュ回転数Nの関係をそのまま適用すると、発熱により樹脂温度の上昇が特に顕著になってしまう問題があった。このような問題に対し、本発明者は、Nを低下させることで溶融と脱気、樹脂冷却を同時に満たすことが可能であることを見出した。さらに、スケールアップに関しては、流路体積Vはスクリュ径Dの3乗(溝深さ、溝幅、溝長さ)に比例することと、樹脂に与える平均せん断速度が一定という前提の下、実験を重ねたところ、末端COOH量の増加は、主に、スクリュ径D、スクリュ回転数N(rpm)、及び押出量Q(kg/hr)に関係していることを見出し、上記式(1)式を満たす条件下で溶融押出しを行うことで、末端COOH量の増加を効果的に抑制することができることを見出した。この際、押出機出口14での樹脂温度を特に290℃以下に制御することで、特にその下流の配管滞留での末端COOHの増加抑制に大きな効果がある。
Q/Nが6.0×10−6×D未満では、スクリュ20A,20Bの高回転によって樹脂が高温に発熱し、押出機出口14における樹脂温度を290℃以下にすることが困難となり、ΔAVが3eq/tを超えてしまう。また、Q/Nが1.1×10−5×Dを超えると、ベント直下の樹脂充填率が増加し、ベント16A,16Bから溶融樹脂が溢れ易くなるほか、ベント圧が低下するため、押出機内部での樹脂の加水分解が進行し、末端COOHが増加してしまう。さらに、未溶融樹脂がフィルムに混入し易くなり、フィルムの強度が低下することで延伸工程におけるフィルム破断の原因となる。
一方、上記(1)式を満たす条件下(図3に示す2つの曲線の間の領域)で溶融押出しを行う場合、ベント16A,16Bから樹脂が溢れ出ることが防止されるとともに、スクリュ回転数Nが比較的遅くなり、押出機出口14の手前の冷却部によって過剰な加熱が抑制されるとともに、樹脂とスクリュやバレルとの接触による発熱が抑制され、熱分解による末端COOH基の発生を抑制することができる。
上記観点から下記式(2)を満たす条件下で溶融押出しを行うことが好ましく、下記式(3)を満たす条件下で溶融押出しを行うことがより好ましい。
7×10−6×D≦Q/N≦1×10−5×D (2)
8×10−6×D≦Q/N≦9×10−6×D (3)
【0071】
なお、スクリュ回転数Nが低過ぎると、温度制御手段30によって温度ムラが生じて未溶融樹脂が生じ易く、スクリュ回転数Nが高過ぎると、過度に発熱して末端COOH量の増加につながるため、スクリュ回転数Nは1.9×10×D−0.5rpm〜8.4×10×D−0.5rpmが好ましく、6.3×10×D−0.5rpm〜7.9×10×D−0.5rpmがより好ましい。
また、押出量Qが少な過ぎると過度に加熱され易くなり、多過ぎると未溶融樹脂が生じ易くなるため、押出量Qは1.1×10−3×D2.5kg/hr〜7.6×10−3×D2.5kg/hrが好ましく、3.8×10−3×D2.5kg/hr〜7.1×10−3×D2.5kg/hrがより好ましい。
【0072】
バレル10の押出機出口14から押し出された樹脂をフィルタ42に通してダイ40から(例えば冷却ロールに)押し出してフィルム状に成形する。
ダイ40からメルト(溶融樹脂)を押出した後、冷却ロールに接触させるまでの間(エアギャップ)は、湿度を5%RH〜60%RHに調整することが好ましく、15%RH〜50%RHに調整することがより好ましい。エアギャップでの湿度を上記範囲にすることで、フィルム表面のCOOH量やOH量を調節することが可能であり、低湿度に調節することで、フィルム表面のカルボン酸量を減少させることができる。
【0073】
また、本発明の方法によれば、樹脂温度を一度上げてから冷却部で下げることで、末端COOH量の増加を抑制するとともに、未溶融異物の発生を抑制することができるほか、フィルムのヘイズ上昇を抑制する効果が得られる。特に厚手製膜をする際は冷却速度不足より、ヘイズ上昇しやすいが、その対策方法として用いることが可能である。
なお、フィルム厚は、2mm〜8mmが好ましく、より好ましくは2.5mm〜7mmであり、さらに好ましくは3mm〜6mmである。厚みを厚くすることで、押出されたメルトがガラス転移温度(Tg)以下に冷却するまでの所要時間を長くすることができる。この間に、フィルム表面のCOOH基はポリエステル内部に拡散され、表面COOH量を低減することができる。
【0074】
上記工程により、原料の末端COOH量AV、と溶融押出しされたフィルムの末端COOH量AVとの差、AV−AV=ΔAVが3eq/t以下のポリエステルフィルムを製造することができ、例えば、末端COOH量が25eq/t(トン)以下であるポリエステルフィルムが得られる。末端COOH量が25eq/トン以下であると、耐加水分解性に優れており、長期耐久性が得られる。末端COOH量は、耐加水分解の点では低いことが望ましいが、フィルムを被着物に密着させる場合の密着性向上の点から、2eq/トン以上が好ましい。中でも、10〜20eq/トンの範囲がより好ましい。
末端COOH量の測定は、既述の方法と同様にして行なうことができる。
【0075】
本発明の方法により製造されるポリエステルフィルムは、光安定化剤、酸化防止剤などの添加剤を更に含有することができる。
【0076】
光安定化剤を含有すると、紫外線劣化を防ぐことができる。光安定化剤とは、紫外線などの光線を吸収して熱エネルギーに変換する化合物、樹脂が光吸収して分解して発生したラジカルを捕捉し、分解連鎖反応を抑制する材料などが挙げられる。光安定化剤として好ましくは、紫外線などの光線を吸収して熱エネルギーに変換する化合物である。このような光安定化剤を含有することで、長期間継続的に紫外線の照射を受けても、部分放電電圧の向上効果を長期間高く保つことが可能になったり、樹脂中の紫外線による色調変化、強度劣化等が防止される。
【0077】
例えば紫外線吸収剤は、ポリエステルの他の特性が損なわれない範囲であれば、有機系紫外線吸収剤、無機系紫外線吸収剤、及びこれらの併用のいずれも、特に限定されることなく好適に用いることができる。一方、紫外線吸収剤は、耐湿熱性に優れ、樹脂中に均一分散できることが望まれる。
【0078】
紫外線吸収剤の例としては、有機系の紫外線吸収剤として、サリチル酸系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系等の紫外線吸収剤及びヒンダードアミン系等の紫外線安定剤などが挙げられる。具体的には、例えば、サリチル酸系のp−t−ブチルフェニルサリシレート、p−オクチルフェニルサリシレート、ベンゾフェノン系の2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、ビス(2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイルフェニル)メタン、ベンゾトリアゾール系の2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2Hベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]、シアノアクリレート系のエチル−2−シアノ−3,3’−ジフェニルアクリレート)、トリアジン系として2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノール、ヒンダードアミン系のビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、コハク酸ジメチル・1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン重縮合物、そのほかに、ニッケルビス(オクチルフェニル)サルファイド、及び2,4−ジ・t−ブチルフェニル−3’,5’−ジ・t−ブチル−4’−ヒドロキシベンゾエート、などが挙げられる。
これらの紫外線吸収剤のうち、繰り返し紫外線吸収に対する耐性が高いという点で、トリアジン系紫外線吸収剤がより好ましい。なお、これらの紫外線吸収剤は、上述の紫外線吸収剤単体でフィルムに添加してもよいし、有機系導電性材料や、非水溶性樹脂に紫外線吸収剤能を有するモノマーを共重合させた形態で導入してもよい。
【0079】
光安定化剤のポリエステルフィルム中における含有量は、ポリエステルフィルムの全質量に対して、0.1質量%以上10質量%以下が好ましく、より好ましくは0.3質量%以上7質量%以下であり、さらに好ましくは0.7質量%以上4質量%以下である。これにより、長期経時での光劣化によるポリエステルの分子量低下を抑止でき、その結果発生するフィルム内の凝集破壊に起因する密着力低下を抑止できる。
【0080】
更に、本発明のポリエステルフィルムは、前記光安定化剤の他にも、例えば、易滑剤(微粒子)、紫外線吸収剤、着色剤、核剤(結晶化剤)、難燃化剤、末端封止剤などを添加剤として含有することができる。
【0081】
特に、前記したように、原料樹脂として、カルボン酸基と水酸基との合計が3以上である多官能モノマーを添加して重縮合したポリエステル樹脂を用い、好ましくは該多官能モノマーに由来する構成成分の含有比率が、ポリエステル中の全構成単位に対して、0.005モル%以上2.5モル%以下であるポリエステルフィルム、あるいは、原料樹脂としてポリエステル樹脂のほかに、オキサゾリン系化合物、カルボジイミド化合物、及びエポキシ化合物から選ばれる少なくとも1種の末端封止剤を添加して溶融押しを行うことにより、好ましくは末端封止剤に由来する構造部分の含有比率が、ポリエステルに対して、0.1質量%以上5質量%以下であるポリエステルフィルムを製膜すれば、原料樹脂よりもAVが低減するほか、塗布層との密着性が向上したポリエステルフィルムを得ることもできる。
特に、本発明によれば、6.0×10−6×D≦Q/N≦1.1×10−5×Dかつ押出機出口側のバレル内壁温度を樹脂融点Tm以下に設定することで、樹脂を十分に溶融させ、かつ下流での樹脂劣化を効果的に抑えることができる。これにより、末端COOH基量が15eq/t以下であり、かつ厚み1mmに成形した場合の昇温結晶化温度Tcが140℃以上であるポリエステルフィルムを製造することも可能である。
【0082】
<太陽電池部材用ポリエステルフィルム>
本発明の方法により製造されるポリエステルフィルムは、太陽電池部材用ポリエステルフィルム、具体的には、太陽電池発電モジュールの太陽光入射側とは反対側の裏面に配置される裏面保護シート(いわゆるバックシート)、バリアフィルム基材等の用途に好適である。
【0083】
太陽電池発電モジュールの用途では、電気を取り出すリード配線で接続された発電素子(太陽電池素子)をエチレン・酢酸ビニル共重合体系(EVA系)樹脂等の封止剤で封止し、これを、ガラス等の透明基板と、本発明のポリエステルフィルム(バックシート)との間に挟んで互いに張り合わせることによって構成される態様が挙げられる。 太陽電池素子の例としては、単結晶シリコン、多結晶シリコン、アモルファスシリコンなどのシリコン系、銅−インジウム−ガリウム−セレン、銅−インジウム−セレン、カドミウム−テルル、ガリウム−砒素などのIII−V族やII−VI族化合物半導体系など、各種公知の太陽電池素子を適用することができる。
【実施例】
【0084】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0085】
(実施例1)
‐二軸押出機‐
押出機として、図1に示すように2箇所にベントが設けられたバレル内に下記構成のスクリュを備え、バレルの周囲には長手方向に9つのゾーンに分割して温度制御を行うことができるヒータ(温度制御手段)を備えたダブルベント式同方向回転噛合型の二軸押出機を準備した。
スクリュ径D:180mm
長さL[mm]/スクリュ径D[mm]:31.5(1ゾーンの幅:3.5D)
スクリュ形状:第1ベント直前に可塑化混練部、第2ベント直前に脱気促進混練部
【0086】
二軸押出機の押出機出口以降には、図2に示すように、下記構成のギアポンプ、金属繊維フィルタおよびダイを接続し、ダイを加熱するヒータの設定温度は280℃とし、平均滞留時間は10分とした。
ギアポンプ:2ギアタイプ
フィルタ:金属繊維焼結フィルタ(孔径20μm)
ダイ:リップ間隔4mm
【0087】
‐原料‐
原料樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(融点Tm:257℃、極限粘度IV:0.78、末端COOH量:11eq/t、ヘンシェルミキサーにて160℃で結晶化)のペレットを用いた。PETペレットには、平均長径:4.5mm、平均短径:1.8mm、平均長さ:4.0mmのサイズのものを用いた。
【0088】
‐溶融押出し‐
供給口12側の1番目のゾーン(C1)は70℃に、2〜8番目のゾーン(C2〜C8)は270℃に、9番目のゾーン(C9)は250℃にそれぞれ温度設定を行った。
スクリュの回転数を60rpmに設定し、供給口12から原料樹脂を供給して加熱溶融し、押出量を3000kg/hに設定して溶融押出を行った。
【0089】
押出機出口から押出された溶融体(メルト)をギアポンプ、金属繊維フィルタ(孔径20μm)を通した後、ダイから冷却(チル)ロールに押出した。押出されたメルトは、静電印加法を用いて冷却ロールに密着させた。冷却ロールは、中空のチルロールを用い、この中に熱媒として水を通して温調できるようになっている。
なお、ダイ出口から冷却ロールまでの搬送域(エアギャップ)は、この搬送域を囲い、この中に調湿空気を導入することにより、湿度を30%RHに調節してある。押出機の押出量及びダイのスリット幅の調整により、メルト厚みを3000μmとした。
以上のようにして、PETフィルムを得た。
【0090】
−末端COOH量の測定−
原料ペレットと得られたPETフィルムについては、0.1gの試料をベンジルアルコール10mlに溶解後、さらにクロロホルムを加えて混合溶液を得、これにフェノールレッド指示薬を滴下した。この溶液を、基準液(0.01N KOH−ベンジルアルコール混合溶液)で滴定し、滴下量から末端カルボキシル基量を求めた。原料樹脂とフィルムについてそれぞれ求めたAVの差ΔAVを求めた。結果を下記表1に示す。
【0091】
‐破断伸度の測定‐
冷却ロールにより冷却されたPETフィルムを二軸延伸(3.4×3.8倍)して、二軸延伸後のフィルムの湿熱条件下(85℃×85RH%)での破断伸度が半減する時間で判定する。85時間以上で良好な耐候性(耐加水分解性)を示すものと判定する。結果を下記表1に示す。
【0092】
‐未溶融異物の残留評価‐
延伸前フィルム(厚み3000μm)のヘイズを指標とした。2.0%以下であれば延伸性が良好であると評価することができる。結果を下記表1に示す。
【0093】
‐密着評価‐
二軸延伸後フィルムにアクリル系の塗布液を塗布した。その後、下記方法で塗布層の密着性を評価した。
(1)サンプルフィルムを85℃80%rhで100時間サーモ経時する。
(2)サーモ経時後のサンプルを取り出し、3mm間隔にカッターナイフで縦横10本ずつの切れ込みを入れ、100個の升目を作る。
(3)これを50℃の温水に1時間浸漬した後、25℃60%rhの室内に取り出し、表面の水分を布で拭き取った後、粘着テープ(日東電工社製ポリエステル粘着テープ(No.31B))を貼り付け、これを一気に180度方向に引き剥がす。なお、浸漬から取り出した後から引き剥がしまでの時間は5分以内で実施し、塗布層が湿潤状態での密着性を評価している。
(4)目視観察で塗布層が剥離した升目の数を数え、これを「剥離率」として記載した。
【0094】
‐昇温結晶化温度測定‐
所定の条件で溶融した樹脂を厚み1mmになるように製膜したフィルムの昇温結晶化温度Tcを測定した。
測定器:DSC(島津製作所社製)
条件:昇温速度5℃/min N雰囲気
Tcは樹脂の結晶化速度の指標であり、Tcが低いと結晶化しやすい。すなわち、厚みの厚いフィルムを製膜した際にヘイズが高くなる。
Tc≧140℃で、3mm製膜したフィルムのヘイズが2%以下となる。
【0095】
(実施例2〜18)
実施例1に対し、スクリュ径、バレル温度、スクリュ回転数などの条件を表1に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にしてフィルムを製造し、実施例1と同様に評価を行った。結果を下記表1に示す。
【0096】
(実施例19)
実施例1に対し、原料樹脂をPEN(末端COOH量:18eq/t)に変更し、バレル温度、ベント圧力などの条件を表1に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にしてフィルムを製造し、実施例1と同様に評価を行った。結果を下記表1に示す。
【0097】
(比較例1〜9)
実施例1に対し、押出機、バレル温度、スクリュ回転数などの条件を表1に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にしてフィルムを製造し、実施例1と同様に評価を行った。結果を下記表1に示す。
【0098】
(実施例20〜27)
実施例1の溶融押出しにおいて、下記の末端封止剤から選定して下記表1に記載の量を添加し、製膜条件を表1に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様の条件により、フィルムを製造した。末端封止剤は、融点以上に加熱したタンクよりポンプで送液し、押出機のシリンダより注入した。ここでいう添加量とはポリエステル樹脂に対する質量%を指す。
(a)カルボジイミド系化合物:ラインケミー社製スタバクゾールP100(表中に「CI」と記載)
(b)エポキシ系化合物:Hexion Speciality Cnemicals社製「カージュラE10P」(表中に「EP」と記載)
(c)オキサゾリン系化合物:日本触媒社製「エポクロスRPS−1005」(表中にOXと記載)
製膜したポリエステルフィルムについて、実施例1と同様に評価を行った。結果を下記表1に示す。
【0099】
(実施例28〜39)
原料樹脂として、下記から選定した多官能モノマーを下記表2に記載の量だけ添加して重縮合したポリエステル樹脂を用い、製膜条件を表2に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にしてポリエステルフィルムを製膜した。なお、ここでいう多官能モノマーの添加量とは、テレフタル酸成分とエチレングリコール成分の和に対するモル%で示した。
3官能カルボン酸型:トリメリット酸(表2にTMAと記載)
4官能カルボン酸型:ベンゼンテトラカルボン酸(表2にBTCと記載)
5官能カルボン酸型:エタンペンタカルボン酸(表2にEPCと記載)
6官能カルボン酸型:シクロヘキサンヘキサカルボン酸(表2にCHCと記載)
3官能水酸基型:トリヒドロキシベンゼン(表2にTHBと記載)
4官能水酸基型:ペンタエリスリトール(表2にPEと記載)
製膜したポリエステルフィルムについて、実施例1と同様に評価を行った。結果を下記表2に示す。
【0100】
(実施例40)
原料樹脂として、多官能モノマーを下記表2に記載の量だけ添加して重縮合したポリエステル樹脂を用い、また、溶融押出しにおいてCIを1wt%添加し、製膜条件を表2に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にしてポリエステルフィルムを製膜した
【0101】
【表1】

【0102】
【表2】

【0103】
表1に示すように、実施例1〜19では、原料の末端COOH量と溶融押出しされたフィルムの末端COOH量との差ΔAVがいずれも3eq/t以下であり、加熱溶融による末端COOHの増加が抑制されて、耐加水分解性に優れたポリエステルフィルムを得ることができた。
特に、原料としてポリエステル樹脂のほか、末端封止剤を添加した実施例20〜27では、ΔAVがマイナス、すなわち、フィルムの末端COOH量は原料の末端COOH量よりも減少し、塗布層の密着性が向上した。
また、原料樹脂として、多官能モノマーを添加して製造したポリエステル樹脂を用いた実施例28〜39でも、末端COOH量の増加が抑制されたほか、塗布層の密着性が向上した。
また、多官能モノマーと末端封止剤を併用した実施例40では、フィルムの末端COOH量は原料の末端COOH量よりも大幅に減少したほか、塗布層との密着性が顕著に向上した。
一方、比較例1〜7では、原料の末端COOH量と溶融押出しされたフィルムの末端COOH量との差ΔAVがいずれも3eq/tを超えていた。加熱溶融によって末端COOHが大きく増加することで耐加水分解性が低下し、耐久性が不足していた。
また、比較例8では未溶融異物が発生して延伸不良となり、比較例9では生産量不足であった。
【符号の説明】
【0104】
10 バレル
12 供給口
14 押出機出口
16A,16B ベント
20A,20B スクリュ
22 フライト
30 温度制御手段
40 ダイ
42 フィルタ
44 ギアポンプ
46 原料供給装置
100 二軸押出機
C1〜C9 加熱/冷却装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給口及び押出機出口を有するバレルと、それぞれ140mm以上の径を有し、前記バレル内で回転する2つのスクリュと、前記バレルの周囲に配置され、該バレルの温度を制御する温度制御手段と、を備えた二軸押出機を用い、前記供給口から極限粘度IVが0.7〜0.9であるポリエステル樹脂を原料として供給し、前記温度制御手段により前記バレルの前記押出機出口側の内壁が前記ポリエステル樹脂の融点Tm(℃)以下の冷却部となるように制御しながら、前記バレル内で加熱溶融して前記押出機出口から押出した後、10分〜20分の平均滞留時間を経て、下記式(1)を満たす条件下でフィルム状に溶融押出しを行うことによりポリエステルフィルムを成形し、前記原料のポリエステル樹脂の末端COOH量をAV、前記溶融押出して成形されたポリエステルフィルムの末端COOH量をAVとしたときに、AV−AVで表されるΔAVが3eq/t以下のポリエステルフィルムを製造するポリエステルフィルムの製造方法。
6.0×10−6×D≦Q/N≦1.1×10−5×D (1)
(式(1)中、Dは二軸押出機のスクリュ径(mm)、Nはスクリュ回転数(rpm)、Qは押出量(kg/hr)をそれぞれ表す。)
【請求項2】
前記二軸押出機内の長手方向における最大樹脂温度Tmaxが(Tm+40)℃〜(Tm+60)℃であり、かつ前記押出機出口における樹脂温度Toutが(Tm+30)℃以下である請求項1に記載のポリエステルフィルムの製造方法。
【請求項3】
前記二軸押出機が1箇所以上のベントを有し、ベント圧力が0.01Torr〜5Torrである請求項1又は請求項2に記載のポリエステルフィルムの製造方法。
【請求項4】
前記冷却部に位置するスクリュのピッチが、前記スクリュ径Dに対し、0.5D〜0.8Dである請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載のポリエステルフィルムの製造方法。
【請求項5】
前記二軸押出機の長手方向における前記冷却部の長さが、前記スクリュ径Dに対し、4D〜11Dである請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載のポリエステルフィルムの製造方法。
【請求項6】
前記ポリエステル樹脂の末端COOH量が、25eq/t以下である請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載のポリエステルフィルムの製造方法。
【請求項7】
前記原料となる前記ポリエステル樹脂が、カルボン酸基と水酸基との合計が3以上である多官能モノマーに由来する構成成分を含む請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載のポリエステルフィルムの製造方法。
【請求項8】
前記多官能モノマーに由来する構成成分の含有比率が、前記ポリエステル樹脂中の全構成単位に対して、0.005モル%以上2.5モル%以下である請求項7に記載のポリエステルフィルムの製造方法。
【請求項9】
前記供給口から、前記ポリエステル樹脂とともに、オキサゾリン系化合物、カルボジイミド化合物、及びエポキシ化合物から選ばれる少なくとも1種の末端封止剤を供給する請求項1〜請求項8のいずれか一項に記載のポリエステルフィルムの製造方法。
【請求項10】
前記末端封止剤を、前記ポリエステル樹脂に対して、0.1質量%以上5質量%以下添加する請求項9に記載のポリエステルフィルムの製造方法。
【請求項11】
下記式(2)を満たす条件下でフィルム状に溶融押出しを行う請求項1〜請求項10のいずれか一項に記載のポリエステルフィルムの製造方法。
7×10−6×D≦Q/N≦1×10−5×D (2)
【請求項12】
前記冷却部における前記バレルの温度を(Tm−100)℃〜Tm℃に制御する請求項1〜請求項11のいずれか一項に記載のポリエステルフィルムの製造方法。
【請求項13】
前記スクリュ径Dが、160mm〜200mmである請求項1〜請求項12のいずれか一項に記載のポリエステルフィルムの製造方法。
【請求項14】
請求項1〜請求項13のいずれか一項に記載の方法により製造された太陽電池部材用ポリエステルフィルム。
【請求項15】
カルボン酸基と水酸基との合計が3以上である多官能モノマーに由来する構成成分を含む請求項14に記載の太陽電池部材用ポリエステルフィルム。
【請求項16】
前記多官能モノマーに由来する構成成分の含有比率が、ポリエステル中の全構成単位に対して、0.005モル%以上2.5モル%以下である請求項15に記載の太陽電池部材用ポリエステルフィルム。
【請求項17】
オキサゾリン系化合物、カルボジイミド化合物、及びエポキシ化合物から選ばれる少なくとも1種の末端封止剤に由来する構造部分を含む請求項14〜請求項16のいずれか一項に記載の太陽電池部材用ポリエステルフィルム。
【請求項18】
前記末端封止剤に由来する構造部分の含有比率が、ポリエステルに対して、0.1質量%以上5質量%以下である請求項17に記載の太陽電池部材用ポリエステルフィルム。
【請求項19】
末端COOH基量が15eq/t以下であり、かつ厚み1mmに成形した場合の昇温結晶化温度Tcが140℃以上である太陽電池部材用ポリエステルフィルム
【請求項20】
請求項14〜請求項19のいずれか一項に記載の太陽電池部材用ポリエステルフィルムを備えた太陽電池発電モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−91494(P2012−91494A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−176337(P2011−176337)
【出願日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】