説明

ポリマー複合樹脂材料の粉砕方法及びそのリサイクル方法

【課題】ポリマー複合樹脂材料を粉砕し、しかも、それぞれの樹脂や材質に分離分別できるポリマー複合樹脂材料の粉砕方法及びそのリサイクル方法を提供する。
【解決手段】一方のポリマー材料の伸びがもう一方のポリマー材料の伸びの70%以下であるポリマー複合樹脂材料の粉砕方法であって、前記ポリマー複合樹脂材料15を一軸せん断粉砕機10を用いて粉砕し、その一軸せん断粉砕機10の粉砕物1kg/hour処理あたりのモータ負荷(Le=モータ電圧(V)・モータ電流(A)/処理量(kg/hour))を、20VA・hour/kg以上として粉砕するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二種類以上の樹脂層からなるポリマー複合樹脂材料の粉砕方法及びそのリサイクル方法に係り、特にケーブル被覆の絶縁体と半導電層を分離して高い付加価値のリサイクル材料を得ることができるポリマー複合樹脂材料の粉砕方法及びそのリサイクル方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、さまざまな要求特性を満足させるために、互いの特性を補い合う2種類以上のポリマーを多層構造にしたプラスチック部品などの複合材料が多くの市販製品に用いられている。
【0003】
ところが、このような部品をリサイクルしようとした場合、2種類以上のポリマー同士が混ざり合って高付加価値のリサイクルを実現できないという問題が生じている。
【0004】
例えば、高電圧ケーブルの絶縁材料には、ポリエチレン(PE)が用いられているが、電界を緩和するために絶縁層と導体の境界や絶縁層の外周に半導電層が設けられており、この高電圧ケーブルの絶縁材料をリサイクル使用とした場合、半導電層が絶縁層と混ざったままのリサイクル材料となる。このため、この材料を再利用しようとしても、絶縁性が落ち、ケーブルの絶縁体やシースなどに利用できなくなるという問題がある。
【0005】
このような問題に対して、ポリマー複合樹脂材料を、それぞれの樹脂や材質に分離分別する方法として以下のような特許文献1〜4が報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−297641号公報
【特許文献2】特開平7−96208号公報
【特許文献3】特開2005−169246号公報
【特許文献4】特開2003−126783号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
すなわち、複合材料を分離する方法として、特許文献1のように有機溶剤に溶解する成分とそうでない成分に分別する方法などが提案されている。しかし、同じポリオレフィン系の材料を絶縁体と半導電層に用いている前記高電圧ケーブルの場合には、同じように溶剤に溶解するのでこの系には適用することができない。また、環境に配慮した場合、できるだけ有機溶剤を用いない方法で材料を分離するほうが好ましい。
【0008】
一方、有機溶剤を用いずに材料を分離する方法として特許文献2,特許文献3が挙げられる。しかし、これらの方法はハンマーミルで複合体を破砕するので、硬くて脆い材質には適しているが、塑性変形しやすい材料は破砕しにくく、材料の分離も不十分になると同時に粉砕物の中に糸状粉砕物が混入することによって取り扱いにくいものになるという問題がある。
【0009】
また、特許文献4のようにハンマーミルで複合体を破砕することで複合体を構成する材料同士の接着を弱めた後に、さらにカッターミルで粉砕する方法が提案されているが、工程数が多くなる問題がある上に、ハンマーによる騒音の発生やエネルギーのロスの問題が予想される。
【0010】
また、特許文献2〜4の複合材料は、パソコン等の筐体を形成するプラスチックと金属の複合体、プラスチックからなる基板とプラスチックからなる発泡層との複合体であり、これらは、粉砕により簡単に分離できるものであり、上述したように、同じポリオレフィン系の材料を絶縁体と半導電層に用いている前記高電圧ケーブル等のポリマー複合樹脂材料は、柔軟性があり、絶縁体と半導電層が密着しているため、単に粉砕しても絶縁体と半導電層とを分離することは困難である。
【0011】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、ポリマー複合樹脂材料を粉砕し、しかも、それぞれの樹脂や材質に分離分別できるポリマー複合樹脂材料の粉砕方法及びそのリサイクル方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために請求項1の発明は、一方のポリマー材料の伸びがもう一方のポリマー材料の伸びの70%以下であるポリマー複合樹脂材料の粉砕方法であって、前記ポリマー複合樹脂材料を一軸せん断粉砕機を用いて粉砕し、その一軸せん断粉砕機の粉砕物1kg/hour処理あたりのモータ負荷(Le=モータ電圧(V)・モータ電流(A)/処理量(kg/hour))を、20VA・hour/kg以上として粉砕することを特徴とするポリマー複合樹脂材料の粉砕方法である。
【0013】
請求項2の発明は、粉砕された粉砕物が、粉砕物の見かけの密度(kg/m3)/ポリマー複合体の平均比重<250を満たす請求項1記載のポリマー複合樹脂材料の粉砕方法である。
【0014】
請求項3の発明は、前記一軸せん断粉砕機の粉砕物の出口のスクリーンのメッシュサイズを15mm以下とする請求項1記載のポリマー複合樹脂材料の粉砕方法である。
【0015】
請求項4の発明は、前記モータ負荷(Le=モータ電圧(V)・モータ電流(A)/処理量(kg/hour))を、Le=200(V)・30(A)/300(kg)=20VA・hour/kgとする請求項1〜3のいずれかに記載のポリマー複合樹脂材料の粉砕方法である。なお、上記モータ電流(A)は、電力メータで測定した電力値(Wh)を、測定(積算)時間と印加電圧で割った平均値である。
【0016】
請求項5の発明は、前記ポリマー複合樹脂材料が、ケーブルの絶縁体と半導電層からなる請求項1〜4のいずれかに記載のポリマー複合樹脂材料の粉砕方法である。
【0017】
請求項6の発明は、請求項1〜5のいずれかに記載のポリマー複合樹脂材料の粉砕方法により得られた粉砕物を、水に投入し、比重分別を用いて、水比重以上の粉砕物と水比重以下の粉砕物とに分別することを特徴とするポリマー複合樹脂材料のリサイクル方法である。
【0018】
請求項7の発明は、前記比重分別に用いられる水に、界面活性剤を添加する請求項6記載のポリマー複合樹脂材料のリサイクル方法である。
【0019】
請求項8の発明は、請求項1〜5のいずれかに記載のポリマー複合樹脂材料の粉砕方法により得られた粉砕物を、静電分別を用いて分別することを特徴とするポリマー複合樹脂材料のリサイクル方法である。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、二種類以上の樹脂層からなるポリマー複合樹脂材料の分離分別方法、とくにケーブル被覆の絶縁体と半導電層を分離して高い付加価値のリサイクル材料を得ることを可能とするもので、得られた再生樹脂は純度が高いので、より付加価値の高いポリマーとしてマテリアルリサイクルが可能であり、その工業的価値は著しく高いという優れた効果を発揮するものである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明のポリマー複合樹脂材料の粉砕方法に用いる一軸せん断粉砕機の概略断面図である。
【図2】図1の回転刃と固定刃の刃の形状を示す斜視図である。
【図3】本発明において、一軸せん断粉砕機で粉砕した粉砕物から軟質層と硬質層を比重分離する例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の好適な一実施の形態を添付図面に基づいて詳述する。
【0023】
本発明は、一軸せん断粉砕機を用いてポリマー複合樹脂材料を粉砕するものであり、特に、粉砕と同時に加わるせん断力やそれにともなって発生する熱を利用してポリマー複合樹脂材料を粉砕・分離するものである。
【0024】
ポリマー複合樹脂材料の接着界面に効率よく力を加えるには、複合化されている二つの材料の機械特性が異なっている方が好ましく、特に伸びが大きいものと小さいものが組み合わされてなる複合体で、一方の材質の伸びがもう一方の材質の伸びの70%以下である場合に有効である。
【0025】
さて、図1、図2により、本発明のポリマー複合樹脂材料の粉砕方法に用いる一軸せん断粉砕機10を説明する。
【0026】
図1において、一軸せん断粉砕機10は、円筒状のケーシング11内に、周方向に複数枚の回転刃13が設けられた回転ドラム12が回転自在に設けられて構成される。ケーシング11には、ポリマー複合樹脂材料15を投入する投入ホッパー14が設けられ、ケーシング11の底部には、所定サイズに粉砕された粉砕物17を排出するためのスクリーン18が設けられる。また投入ホッパー14の回転ドラム12の回転方向下流側に位置したケーシング11には固定刃19が設けられる。
【0027】
回転刃13と固定刃19は、図2に示すように断面三角形状に形成され、その刃先20は、鋭角でなく鈍角乃至アール状に形成されて切れない刃先20にされ、ポリマー複合樹脂材料15を粉砕して、所定のサイズの粉砕物17とする際に、より多くのエネルギーを使って粉砕するように構成される。
【0028】
以上において、軟質層と硬質層の二種類以上の樹脂層からなるポリマー複合樹脂材料15、例えば、廃高電圧ケーブルの導体を除去した絶縁体層(軟質層)と半導電層(硬質層)とからなる絶縁材料を適宜のサイズに切断してポリマー複合樹脂材料15とし、これを投入ホッパー14に投入する。ポリマー複合樹脂材料15を粉砕して中間粉砕物16とし、この中間粉砕物16を回転ドラム12とケーシング11間で周回させながらさらに粉砕し、所定サイズ(15mm以下)となったときにスクリーン18から粉砕物17として排出することで、絶縁体(軟質層)からなる粉砕物17aと半導電層(硬質層)からなる粉砕物17bとの混ざった粉砕物17として排出することが可能となる。
【0029】
軟質層と硬質層が積層されたポリマー複合樹脂材料15として、軟質層の伸びに対して硬質層の伸びの70%以下であるポリマー複合樹脂材料15を粉砕したときに軟質層と硬質層とを粉砕しながら両層を分離して粉砕することができる。
【0030】
軟質層としては、ポリエチレン(PE)、エチレンエチルアクリレート(EEA)、エチレン・プロピレンゴム(EPゴム)、シリコーンゴム、アクリルゴム、軟質塩化ビニル樹脂(PVC)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)等、硬質層としては、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、硬質塩化ビニル樹脂(PVC)、ポリスチレン(PS)、ポリイミド(PI)、アクリル樹脂(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0031】
一軸せん断粉砕機10は、ポリマー複合樹脂材料15に対して切断と同時にせん断力を働かせることができ、その際、刃先20の切れ味が良すぎると原料であるポリマー複合樹脂材料15とその中間粉砕物16に対してせん断力が十分に働かないので、粉砕物の量に対するモータ負荷が上がらなくなって多層材料を効率よく分離することができない。
【0032】
よって、一軸せん断粉砕機10を用いてポリマー複合樹脂材料15を粉砕する際、粉砕機の粉砕物1kg/hour処理あたりのモータ負荷Leを、
Le=モータ電圧(V)・モータ電流(A)/処理量(kg/hour)
としたとき、Leが、20VA・hour/kg以上の条件で粉砕することにより、軟質層からなる粉砕物17aと硬質層からなる粉砕物17bに分離して粉砕することが可能となる。
【0033】
ここで、スクリーン18のメッシュサイズを15mm以下とし、一軸せん断粉砕機10で、Leが、20VA・hour/kg以上の条件で粉砕するには、例えば、300kg/hour処理できる一軸せん断粉砕機10であれば、モータ負荷を200(V)・30(A)=6000V・Aで粉砕運転できるようにすればよい。なお、上述の通り、モータ電流30(A)とは、電流の平均値であり、この場合、一時的に40(A)以下の範囲で変動することもある。また、10kg/hour処理できる一軸せん断粉砕機10であれば、200V・Aで粉砕運転できるようになし、2kg/hour処理できる一軸せん断粉砕機10であれば、40V・Aで粉砕運転できるようにすればよい。
【0034】
このように、一軸せん断粉砕機10の粉砕能力が違ってもモータ負荷Leを基準に粉砕条件を設定すれば軟質層からなる粉砕物17aと硬質層からなる粉砕物17bに分離して粉砕することが可能となる。
【0035】
また、スクリーン18のメッシュサイズを細かくすることにより、さらに完全に異種材料を分離することができる。ただし、細かすぎるメッシュを用いた場合には破砕に必要なエネルギーと時間がより多く必要となる。したがって、材料の組み合わせによって15mm以下で最適な値を選ぶのがよく、特に電力ケーブルの被覆材に用いられている半導電層のエチレン酢酸ビニル共重合体と絶縁層の架橋ポリエチレンを分離する際には7〜12mmのメッシュを用いるのが好ましい。
【0036】
さらに、得られた粉砕物17の見かけの密度を目安に粉砕による多層材料の分離条件を調整することも可能である。せん断を加えて材料が伸びるなど変形した場合に密度が小さくなる。ポリマー複合樹脂材料15が変形するような力をくわえると多層材料を分離することができる。また、ポリマー複合樹脂材料15を細かく粉砕するほど見かけの密度は小さくなる。
【0037】
これらの理由から、見かけの密度で条件を決めてもよい。その際、見かけの密度は小さい方がより完全に多層材料を分離できるが、密度が小さすぎる場合に破砕の後工程で粉砕物を利用する際の運搬効率が落ちたり、粉砕物を次の装置に供給する効率が落ちるといった問題が生じる。
【0038】
よって、粉砕物17の見かけの密度ρv(kg/m3),ポリマー複合樹脂材料15の比重ρpとしたとき、50<ρv/ρp<250となるような粉砕物17とすることで粉砕・分離が可能となる。
【0039】
次に、一軸せん断粉砕機10で粉砕した粉砕物17を図3に示すように水槽22内に投入して撹拌することで、硬質層からなる粉砕物17bは水23に沈み、軟質層からなる粉砕物17aは水23に浮くため、両者を簡単に比重分離することができる。
【0040】
この際、水23に界面活性剤を加えることで、粉砕物17と水23との濡れ性がよくなり比重分離を確実に行える。
【0041】
特に電線の絶縁層と半導電層を分離する場合に、比重分離の際に加える界面活性剤は、非イオン界面活性剤のほうが好ましい。たとえば、グリセリン、ソルビトール、ショ糖などのヒドロキシル基を脂肪酸とエステル結合させたもの、または高級アルコールやアルキルフェノールなど水酸基をもつ原料に、酸化エチレン(エチレンオキシド)などを付加重合したものが挙げられる。
【0042】
界面活性剤を加えることにより、材料への気泡の付着を抑え、気泡の付着により本来沈むはずのものが浮いてしまうことを防止する。
【0043】
また、水による比重の他にも静電分別を用いて分離することも可能である。これは、摩擦による帯電の種類が正か負によって分離するものである。例えばポリエチレンとEVAが混在する場合、PEは正に帯電し、EVAは負に帯電することにより、これらを分別することができる。
【実施例】
【0044】
以下、本発明の実施例と比較例を説明する。
【0045】
実施例1
半導電層を絶縁層の内層と外層に備えた送電用のCVケーブルの廃棄物を原料として用いた。一般にCVケーブルの絶縁層にはポリエチレンが用いられており500%〜700%伸びる材質が用いられている。一方、半導電層はエチレン酢酸ビニル共重合体やエチレンエチルアクリレート100質量部に対して60から80質量部のカーボンを加えたもので、150%〜300%伸びる材質である。
【0046】
本発明に用いる低密度PEの伸びは600%であり、カーボンブラックを含むEVAの伸びは200%である。なお、伸びの測定は、シートを作製し、JIS3号ダンベルに打ち抜き。200mm/分で引っ張ることにより測定する。
【0047】
はじめにシースと絶縁体を縦裂きにして半導電層付きの絶縁層を取り出し、一軸せん断粉砕機を用いて破砕した。
【0048】
一軸せん断粉砕機として、株式会社ホーライ製UO−480(15kw,20HP)を用いた。その際、8mmのスクリーンを使用し、処理速度300kg/1時間で破砕作業を行った。このとき、200V電源を用いた粉砕機のモータ負荷は33Aであった。すなわちモータ負荷Le=22VA・hour/kgであった。
【0049】
得られた破砕物の見かけの比重を測定した結果、224kg/m3であった。
【0050】
また、粉砕物の絶縁体の原料は、低密度ポリエチレンなので原料の比重の平均値を0.920と仮定すると、ρv/ρp=243であった。表面積と体積の関係は、(3/L)×3であった。
【0051】
500mlのビーカに水を満たして、得られた粉砕物50gを加えてガラス棒で10分間撹拌した。この結果、黒色の半導電層は沈み、透明な絶縁層は水面に浮かんだ。これは、破砕工程において絶縁層に接着していた半導電層が絶縁層から剥れたためと考えられる。半導電層にはカーボンのフィラーが充填されているので比重が重くなるので水の下に沈んだと考えられる。
【0052】
分離したものをそれぞれ取り出して調べたところ絶縁層に用いられているポリエチレンの濃度を95%以上にできることがわかった。
【0053】
実施例2
ビーカに水を満たして比重で分離する際に、水500mlに対し0.4mlの界面活性剤を加えたものを用いた。界面活性剤としてはアルキルエーテル硫酸エステルナトリウム、アルキルアミンオキシド、ポリオキシエチレンアルキルエーテルを40%含む市販の洗剤を用いた。その結果、実施例1における撹拌時間を1分に短縮することができた。
【0054】
比較例1
半導電層を絶縁層の内層と外層に備えた送電用のCVケーブルの廃棄物を原料として用いた。
【0055】
実施例1と同様にシースと絶縁体を縦裂きにして半導電層付きの絶縁層を取り出し、一軸せん断粉砕機を用いて破砕した。一軸せん断粉砕機として、株式会社ホーライ製UO−480(15kw,20HP)を用いた。その際、20mmのスクリーンを使用し、処理速度300kg/1時間で破砕作業を行った。このとき、200V電源を用いた粉砕機のモータ負荷は18Aであった。すなわちLe=7.2VA・hour/kgであった。
【0056】
得られた破砕物の見かけの比重を測定した結果、420kg/m3であった。絶縁体の原料は低密度ポリエチレンなので原料の比重の平均値を0.920と仮定すると、ρv/ρp=450であった。
【0057】
500mlのビーカに水を満たして、得られた粉砕物50gを加えてガラス棒で10分間撹拌した。この結果、ほとんどのものが水面に浮かんで二種類のポリマーを分離することができなかった。半導電層が破砕工程で絶縁層と分離できなかったために分離できなかったと考えられる。
【0058】
以上、本発明は、従来リサイクルが難しく大量に埋立てまたは焼却処分されていた複合ポリマー、特に半導電層をもつケーブル絶縁体からの半導電分離を簡単な手段で可能とするもので、得られた再生樹脂は絶縁体または半導電ポリマーとしてマテリアルリサイクルが可能であり、その工業的価値は著しく高い。
【符号の説明】
【0059】
10 一軸せん断粉砕機
11 ケーシング
12 回転ドラム
13 回転刃
15 ポリマー複合樹脂材料
16 中間粉砕物
17 粉砕物
18 スクリーン
19 固定刃

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方のポリマー材料の伸びがもう一方のポリマー材料の伸びの70%以下であるポリマー複合樹脂材料の粉砕方法であって、前記ポリマー複合樹脂材料を一軸せん断粉砕機を用いて粉砕し、その一軸せん断粉砕機の粉砕物1kg/hour処理あたりのモータ負荷(Le=モータ電圧(V)・モータ電流(A)/処理量(kg/hour))を、20VA・hour/kg以上として粉砕することを特徴とするポリマー複合樹脂材料の粉砕方法。
【請求項2】
粉砕された粉砕物が、粉砕物の見かけの密度(kg/m3)/ポリマー複合体の平均比重<250を満たす請求項1記載のポリマー複合樹脂材料の粉砕方法。
【請求項3】
前記一軸せん断粉砕機の粉砕物の出口のスクリーンのメッシュサイズを15mm以下とする請求項1記載のポリマー複合樹脂材料の粉砕方法。
【請求項4】
前記モータ負荷(Le=モータ電圧(V)・モータ電流(A)/処理量(kg/hour))を、Le=200(V)・30(A)/300(kg)=20VA・hour/kgとする請求項1〜3のいずれかに記載のポリマー複合樹脂材料の粉砕方法。
【請求項5】
前記ポリマー複合樹脂材料が、ケーブルの絶縁体と半導電層からなる請求項1〜4のいずれかに記載のポリマー複合樹脂材料の粉砕方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のポリマー複合樹脂材料の粉砕方法により得られた粉砕物を、水に投入し、比重分別を用いて、水比重以上の粉砕物と水比重以下の粉砕物とに分別することを特徴とするポリマー複合樹脂材料のリサイクル方法。
【請求項7】
前記比重分別に用いられる水に、界面活性剤を添加する請求項6記載のポリマー複合樹脂材料のリサイクル方法。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれかに記載のポリマー複合樹脂材料の粉砕方法により得られた粉砕物を、静電分別を用いて分別することを特徴とするポリマー複合樹脂材料のリサイクル方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2010−280153(P2010−280153A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−135963(P2009−135963)
【出願日】平成21年6月5日(2009.6.5)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【出願人】(501304803)株式会社ジェイ・パワーシステムズ (89)
【Fターム(参考)】