説明

ポリラクチドフィルムの製造方法

工程(a)から(c)を含むポリラクチドフィルムの形成方法。工程(a)では、剥離剤コーティングを備える処理されたツール表面が提供される。この処理されたツール表面は、ポリラクチドのガラス転移温度付近又はそれ以上の所定の温度で維持される。工程(b)では、処理されたツール表面を溶融ポリラクチド組成物と接触させて、ポリラクチドフィルムをもたらす。このフィルムは少なくとも部分的に結晶質であり、所定の温度の処理されたツール表面に溶融ポリラクチド組成物を曝すことにより、ポリラクチドフィルムの結晶化度が高まる。工程(c)では、ポリラクチドフィルムを処理されたツール表面から取り外す。更に、上記方法で製造されるフィルムが提供され、このフィルムは物品又は物品の一部に形成されてよい。ある場合では、この物品はおむつなどの使い捨て衣類である。他の場合では、物品は上記フィルムで製造されるテープであってよく、ここでフィルムは、第1及び第2の主表面、並びに、主表面の少なくとも一方に接着剤層を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融ポリラクチド組成物からポリラクチドフィルムを製造するための新規方法に関する。
【背景技術】
【0002】
再生可能なポリマーは、天然材料又はバイオマス材料由来である。再生可能な分解性ポリマーは、廃棄物処理、入手可能性、及びコストなどの石油系ポリマーの使用による問題に取り組みたいという願望から、興味の対象である。任意の様々な製品での使用に好適である、再生可能な分解性ポリマーフィルムに対するニーズが長年存在する。
【0003】
市販の再生可能な分解性ポリマーは、乳酸又はラクチドの重合により生産されたものである。乳酸は、コーンスターチ又は甘ショ糖の細菌発酵により得られる。しかし、重合反応により水が生成され、その存在がポリマー鎖の構造を分解して低分子量にするため、有用な生成物へ乳酸を直接的に重合することができない。この問題を避けるため、乳酸は、通常、広範な分子量を有するポリマーへとより容易に重合する環式ラクチドモノマーに転換される。得られるポリマー材料は、典型的には「ポリ乳酸」、「ポリラクチド」、又は「PLA」と呼ばれる。
【0004】
PLAは高い表面エネルギーを有し、PLAフィルムは通常平坦で、高い輝度の表面仕上げを伴う。非晶質PLAから作製されるつや消し仕上げフィルムは、ガラス転移温度(T)を超えて加熱されるとき、その表面構造が維持されず、平坦になって、かつ光沢が出てくる。PLAの結晶化速度は低く、それが連続フィルムへの急速加工の障害である。可塑剤及び成核剤をPLA組成物に添加し、結晶化速度を上げることができる。しかしながら、PLAが65℃を超える急冷ツールロール上に押し出されるとき、得られるPLAフィルムはロールに付着する場合が多く、そのためこのようなフィルムの加工を困難にする。この処理方法では65℃以下の急冷温度を用いるPLAフィルムの製造を推奨しているが、比較的低い急冷温度がフィルム形成プロセスを早めるものの、ツールの型の構造を付与する窪み内に溶融PLAが十分に流れる時間をとれないことが多いため、この温度では所望の表面構造を有するフィルムの形成が非常に困難になる。より低い急冷温度により、PLAフィルムの十分な結晶化を妨害する場合もある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
結晶化PLAフィルムの製造における迅速で費用対効果が高い方法の必要性が依然として存在し、本発明はこの必要性に取り組むものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様では、本発明は、次の工程を含むポリラクチドフィルムの形成方法を提供する。
【0007】
(a)剥離剤コーティングを備える処理されたツール表面を提供する工程であって、この処理されたツール表面が、ポリラクチドのガラス転移温度付近又はそれ以上の所定の温度である、工程と、
(b)処理されたツール表面を溶融ポリラクチド組成物と接触させてポリラクチドフィルムを作製する工程であって、このフィルムが少なくとも部分的に結晶質であり、所定の温度で処理されたツール表面に溶融ポリラクチド組成物を曝すことにより、ポリラクチドフィルムの結晶化度が高まる、工程と、
(c)ポリラクチドフィルムを処理されたツール表面から取り外す工程。
【0008】
別の態様では、本発明は上記方法で製造されたフィルムを提供する。別の態様では、本発明は上記フィルムを含む物品を提供する。更に別の態様では、この物品はおむつなどの使い捨て衣類である。
【0009】
更に別の態様では、本発明は上記フィルムを含むテープを提供し、このフィルムは、第1及び第2の主表面、並びに、第1又は第2の主表面の少なくとも一方に存在する接着剤層を有する。
【0010】
本明細書で使用するとき、本発明の実施形態を説明するのに用いる様々な用語は、当業者が理解するような、通常の使用法に従うと解釈される。しかしながら、明確にするために、特定の用語について定義する。
【0011】
用語「含む(comprise、comprises)」及びこの変形は、これらの用語が明細書及び特許請求の範囲中に現れる場合、制限する意味を有しない。
【0012】
本明細書で使用するとき、「a」、「an」、「the」、「少なくとも1つの」及び「1つ以上の」は、同じ意味で使用される。したがって、例えば、「1つの(a)」成核剤を含む組成物は、その組成物が「1つ以上の」成核剤を含むことを意味すると解釈できる。同様に「1つの」可塑剤を含有する組成物は、「1つ以上の」可塑剤を含有する組成物を意味すると解釈できる。
【0013】
本明細書で使用するとき、用語「又は」は、その内容によって別段の明確な指示がなされていない場合は、一般に「及び/又は」を含む意味で用いられる。用語「及び/又は」は、挙げられた要素の1つ若しくは全て、又は挙げられた要素の任意の2つ以上の組み合わせを意味する。
【0014】
本明細書で使用するとき、全ての数値は、用語「約」によって修飾されるとみなされる。
【0015】
当然のことながら、本明細書において、端点による数の範囲の任意の列挙には、その列挙された範囲内に包含される全ての数(例えば、1〜5には、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、5、など)が包含される。また、特定の「最大」値を含む数値範囲は、その値を含むと理解される。
【0016】
上記の「課題を解決するための手段」は、本発明の全ての可能性がある実施形態又は実施を記載することを意図するものではない。「発明を実施するための形態」と付随する図面、非限定例及び添付される請求項など、本明細書の残りのセクションを確認することにより、当業者は本発明の理解をより深めるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
本明細書で本発明の実施形態を説明するにあたり、記載される実施形態の理解を促進するために提供される図面が参照されるが、これは必ずしも正確な縮尺ではない。記載される実施形態の構成要素及び構造が、参照番号を用いて図面中に特定され、同様の構成要素/構造が同様の番号で特定される。
【図1】構造化表面、及びツールロール上に形成されたフィルムを有する、ツールロールの一部の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
ポリラクチドは再生可能な高分子材料である。記載される本発明の実施形態は、結晶質ポリラクチドを含む、ポリラクチド含有フィルム(「PLAフィルム」)の製造方法を提供する。結晶化度が上昇したPLAフィルムは、高湿高温条件下において、一般に非晶質PLAフィルムよりもゆっくりと分解される。したがって、結晶質PLAの存在が、温度及び保存安定性、並びに構造化フィルム(例えば、構造化表面を有するフィルム)のその他所望の特性に寄与する。
【0019】
乳酸は、2つの光学異性体、(S)−乳酸としても知られるL−乳酸、及び(R)−乳酸としても知られるD−乳酸を有する。乳酸のキラル性のために、いくつかの別個の形態のポリラクチド(2つの(S)−乳酸残基を含む、L−ラクチドとしても知られるL,L−ラクチド、2つの(R)−乳酸残基を含む、D−ラクチドとしても知られるD,D−ラクチド、及び(R)−乳酸残基と(S)−乳酸残基とを1つずつ含むメソ−ラクチド)が存在する。L−ラクチドとD−ラクチドとのラセミ混合物の重合は、通常、結晶質でなく非晶質のポリ−DL−ラクチドの合成をもたらす。重合中に特定の触媒を使用すること及び/又はD鏡像異性体とL鏡像異性体との比率を制御することは、PLAの結晶化動力学に影響を及ぼすことができるが、添加剤(例えば、成核剤)及びプロセスパラメーターは、結晶化度のレベル及び結晶化の速度にも影響を及ぼす。
【0020】
本発明の特定の実施形態では、多様な用途に好適な結晶化度を有する使用可能なPLAフィルムをもたらすPLAフィルム形成方法が提供される。このような方法は、(a)所定の温度で処理されたツール表面を提供する工程と、(b)処理されたツール表面を溶融ポリラクチド組成物と接触させてポリラクチドフィルムを作製する工程であって、このフィルムが少なくとも部分的に結晶質である、工程と、(c)ポリラクチドフィルムを処理されたツール表面から取り外す工程と、を含む。様々な実施形態において、所定の温度(典型的にはポリラクチドのガラス転移温度より高い)で処理されたツール表面にポリラクチド組成物を曝すことにより、ポリラクチドフィルムの結晶化度が高まる。
【0021】
上記方法の工程を実施する際、工程(a)は処理されたツール表面を提供する工程を包含する。本明細書で使用するとき、「処理されたツール表面」は、表面が剥離剤で処理され、表面上に剥離剤コーティングが形成されているツール上のフィルム形成面(例えば、急冷ロールの表面など)を指す。したがって、処理されたツール表面を提供する工程は、最初に未処理のツール表面に剥離剤を塗布する工程を含み得る。いくつかの実施形態では、剥離剤コーティングは、ツール表面上の実質的連続単層膜の形態である。本明細書で使用するとき、「実質的連続単層膜」は、膜の個々の分子が、その分子構造が許す限り密集している膜を指す。本発明の実施形態では、このような処理されたツール表面は、典型的には、使用中に顕著に劣化したり離層したりしない。いくつかの実施形態では、ツール表面は複数のダイ窪みを備える。いくつかの実施形態では、ツール表面が、溶融材料を表面に適用するとき構造を形成するのに好適なネガティブ表面となるように、ダイ窪みは非常に小さい(例えば、直径約0.001〜約1.0mm)。本明細書に記載される表面処理を適用すると、ツール表面は処理されたネガティブ表面である。
【0022】
いくつかの実施形態では、剥離剤は、1つ以上のフッ素化学化ベンゾトリアゾール、1つ以上のフッ素化ホスホン酸、及びこれらの2つ以上の組み合わせから選択される。好適な剥離剤として、米国特許第6,376,065 B1号(Korbaら)及び同第6,824,882 B2号(Boardmanら)に開示されるものが挙げられ、この開示全体を参考として本明細書に組み込む。
【0023】
本発明の実施形態で使用するのに好適なフッ素化学化ベンゾトリアゾールとして、実質的連続単層膜を形成できるものが挙げられる。代表的なフッ素化学化ベンゾトリアゾールは、式(I)を有するものである。
【0024】
【化1】

【0025】
式中、
は、C2n+1−(CH−であり、ここでnは1〜22であり、mは0以上の整数であり、
Xは−CO−、−SO−、−CONH−、−O−、−S−、共有結合、−SONR−、又は−NR−であり、ここでRはH又はC〜Cアルキレンであり、
Yは−CH−であり、ここでzは0又は1であり、
はH、低級アルキル、又はR−X−Y−であり、
ただし、Xが−S−又は−O−、mが0、zが0のとき、nが≧7であり、Xが共有結合のとき、m又はzが少なくとも1である。
【0026】
特定の実施形態では、剥離剤は、「m」が6である上式(I)のフッ素化学化ベンゾトリアゾールである。
【0027】
式(I)のフッ素化学化ベンゾトリアゾールに加えて、本発明の実施形態で使用するのに好適なフッ素化学化ベンゾトリアゾールとして、式(II)を有するものが挙げられる。
【0028】
【化2】

【0029】
式中、
は、C2n+1−(CH−であり、nは1〜22であり、mは0以上の整数であり、
Xは−CO−、−SO−、−S−、−O−、−CONH−、共有結合、−SONR−、又は−NR−であり、ここでRはH又はC〜Cアルキレンであり、qは0又は1であり、
YはC〜Cアルキレンであり、zは0又は1であり、
はH、低級アルキル、又はR−X−Yである。
【0030】
特定の実施形態では、好適な剥離剤は、「m」が6である上式(II)のフッ素化学化ベンゾトリアゾールである。
【0031】
本発明の実施形態で使用するのに好適なフッ素化ホスホン酸として、式(III)を有するものが挙げられる。
【0032】
【化3】

【0033】
式中、
は、5〜21個の炭素原子を有する直鎖アルキレン基であり、そのメチレン部分は、メチレン鎖中の単一部位、又は複数部位において、酸素原子で置換されてよく、
は、4〜10個の炭素原子を有するペルフルオロアルキル基であり、
は、水素、アルカリ金属カチオン、又は1〜6個の炭素原子を有するアルキル基であり、
Mは水素又はアルカリ金属カチオンであり、
ただし、Rが非置換直鎖アルキレン基の場合、R及びRを合わせた炭素原子の合計は少なくとも10である。
【0034】
いくつかの実施形態では、剥離剤は、Rが約10〜約21個の炭素原子を有する直鎖アルキレン基である、式(III)のフッ素化ホスホン酸である。いくつかの実施形態では、Rは、デカン−1,10−ジイル又はヘンエイコサン−1,21−ジイルである。
【0035】
特定の実施形態では、好適なフッ素化ホスホン酸は、CF(CF(CHPO、CF(CF(CH11PO、CF(CF(CH22PO、及びこれらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択される組成物を有する。
【0036】
それにより束縛されることを意図しないが、ツール表面上にコーティングされるとき、上記式(I)、(II)及び(III)の剥離剤は自己集合し、ツール表面上に単層を形成すると理論化される。得られる処理されたツール表面は剥離剤コーティングを含み、これは、上記フッ素化学化ベンゾトリアゾール又はフッ素化ホスホン酸のうちの1つの、自己集合した単層の形態である実質的連続単層膜である。フッ素化学化ベンゾトリアゾールの自己集合した単層は、層を形成すると考えられ、この層には、ツールの金属又は半金属表面の利用可能領域にトリアゾール基が結合される一方で、側枝フッ化炭素尾部が整列して、ツール表面から離れる方向に実質的に外部境界面に向かって延びている。フッ素化ホスホン酸は、ツールの金属又は半金属表面に接するホスホノ基、及びツール表面から離れる方向に実質的に外部境界面に向かって延びるペルフルオロアルキル基を有する、自己集合した単層を形成すると考えられる。
【0037】
自己集合した単層は実質的連続単層膜であり、いくつかの実施形態では、剥離剤コーティングが耐久性を有し、PLAフィルムが処理されたツール表面上に形成されて、そこから取り外す際に離層されないように、ツールの表面にしっかりと結合される。
【0038】
自己集合した実質的連続単層膜は、ツール表面全体をコーティングするのに十分な量の自己集合剥離剤(例えば、フッ素化学化ベンゾトリアゾール、フッ素化ホスホン酸)で、ツール表面に接触することにより形成されてよい。ツール表面に適用する前に、自己集合剥離剤を、ツールに適用した後に蒸発可能な好適な溶媒中に溶解してよい。本明細書の自己集合剥離剤に好適な溶媒として、例えば、エタノール、イソプロピルアルコール、エチルアセテート、水、アセトン、及びこれらの2つ以上の組み合わせが挙げられる。従来のコーティング法、例えば噴霧、拭き取り、ディップコーティング、スピンコーティングなどにより、剥離剤をツール表面に塗布してよい。様々な実施形態では、ツール表面は、剥離剤を結合して実質的連続単層膜を形成可能な金属製表面である。好適な金属表面として、例えば、アルミニウム、銅、ニッケル、クロム、チタン、亜鉛、銀、ゲルマニウム、及び合金、並びにこれらの混合物を含むものが挙げられる。
【0039】
工程(b)の実施において、処理されたツール表面を溶融ポリラクチド組成物と接触させ、少なくとも部分的に結晶質であるポリラクチドフィルムを作製する。上記自己集合剥離剤を使用すると、ポリラクチドフィルムに部分結晶化度が付与される。このような実施形態では、追加の成核剤を含まずに溶融ポリラクチド組成物を処方できる。しかしながら、他の実施形態では、従来の成核剤を溶融組成物中に任意に組み込み、得られるPLAフィルムの結晶化度をできる限り更に高めてよい。
【0040】
溶融ポリラクチド組成物の調製では、好適なポリラクチドの供給源として商業的供給源が挙げられる。押出成形又は熱成形に好適な代表的な市販のポリラクチド樹脂は、NatureWorks LLC(Minnetonka,MN)から入手できる。その他の市販のPLA樹脂として、フィルムグレード、シートグレード、不織布グレード、又は射出成形グレードの材料が挙げられる。
【0041】
本発明の溶融ポリラクチド組成物は、得られるポリラクチドフィルム中に残る1つ以上の可塑剤を含んでよい。可塑剤は、PLAのフィルム特性(例えば、可撓性、耐衝撃性、引き裂き抵抗性)を改善でき、典型的には組成物のガラス転移温度(T)の低下に用いられる。代表的な可塑剤は、ポリラクチド組成物のTを約5℃以上、いくつかの実施形態では約20℃〜約30℃低下させる。
【0042】
いくつかの実施形態では、再生可能なフィルムに使用する可塑化剤(すなわち可塑剤)は、それ自体が再生可能でありながら、樹脂に相溶性もないといけない。また、代表的な可塑剤は、比較的不揮発性であってもよい。本明細書で用いるのに好適な可塑化剤として、例えば、米国特許第6,121,410号、特開2007−130893号、及び米国特許出願公開第2007/0160782号に開示されるものが挙げられる。
【0043】
好適な可塑剤の例として、アルキル又は脂肪族エステル、エーテル、及び多官能基エステル及び/又はエーテルの一般的なクラスのものが挙げられる。これらには、アルキルリン酸エステル、ジアルキルエーテルジエステル、トリカルボン酸エステル、エポキシ化オイル及びエステル、ポリエステル、ポリグリコールジエステル、アルキルアルキルエーテルジエステル、脂肪族ジエステル、アルキルエーテルモノエステル、クエン酸エステル、ジカルボン酸エステル、植物油及びそれらの誘導体、並びにグリセリンのエステルが挙げられる。いくつかの実施形態では、好適な可塑剤は、トリカルボン酸エステル、クエン酸エステル、グリセリンのエステル、及びジカルボン酸エステルである。例えば、適切な特性を呈するのは、トリエチルシトレート、アセチルトリエチルシトレート、トリ−n−ブチルシトレート、アセチルトリ−n−ブチルシトレート、アセチルトリ−n−ヘキシルシトレート、n−ブチルトリ−n−ヘキシルシトレート、及びジオクチルアジパートである。適切な適合性を呈するのは、アセチルトリ−n−ブチルシトレート及びジオクチルアジパートである。その他の適合性の可塑剤としては、ポリラクチドと配合可能な任意の可塑剤又は可塑剤の組み合わせが挙げられ、それらはポリラクチドと混和性であるか、又は機械的に安定な配合物を生成する。
【0044】
揮発性は、可塑剤の蒸気圧によって決定される。適切な可塑剤は、フィルムの生産に必要な工程全体を通して可塑剤が実質的に樹脂製剤中に留まるように、十分に不揮発性である。過度の揮発性は、高ラクチド含有量のポリラクチドの融解加工によってフィルムを生産するときに観察される加工設備のファウリングをもたらし得る。有用な可塑剤は、170℃で約10mm Hg(1.3kPa)未満、又は200℃で約10mm Hg(1.3kPa)未満の蒸気圧を有してよい。
【0045】
ポリラクチドと結合する内部可塑剤もまた有用である。エポキシドは、内部可塑剤を導入する1つの方法を提供する。
【0046】
可塑剤は、溶融PLA組成物の総重量に基づいて少なくとも5重量%のレベルで有用である。典型的には、可塑剤は、溶融PLA組成物の総重量に基づいて少なくとも10重量%、又は少なくとも15重量%のレベルで使用される。可塑剤は、溶融PLA組成物の総重量に基づいて30重量%以下のレベルで有用である。いくつかの可塑剤は、溶融PLA組成物の総重量に基づいて20重量%以下のレベルで使用される。
【0047】
多くの場合、当該技術において、成核剤を用いて結晶化が開始可能な不均質表面を提供する。先に述べたように、本発明の様々な実施形態において成核剤を任意に用いる。実質的連続単層膜を形成するための自己集合剥離剤の使用により、PLAの結晶化が促進されることが示されている。しかしながらいくつかの実施形態では、PLA産物の結晶化度を高めるために、1つ以上の従来の成核剤を溶融PLA組成物に添加することが望ましい場合がある。溶融PLA組成物に含まれるとき、成核剤は、無機材料又は有機材料を含むものから選択される任意の様々な材料から選択されてよい。いくつかの好適な成核剤は、例えば、米国特許第6,121,410号、特開2007−130893号、及び米国特許出願公開第2007/0160782号に開示されている。様々な実施形態では、成核剤として、選択された可塑剤、超微粒子状鉱物、有機化合物、有機酸塩及びイミド塩、並びに超微粒子状結晶質ポリマーでありポリラクチドの加工温度より高い融点を有するものが挙げられる。
【0048】
有用な成核剤の更なる例としては、例えば、タルク、酸化亜鉛、サッカリンのナトリウム塩、ケイ酸カルシウム、チタン酸カルシウム、窒化ホウ素、銅フタロシアニン、フタロシアニンなどが挙げられる。好適な無機成核剤として、少なくとも25ナノメートル又は少なくとも0.1マイクロメートルの平均粒径を有するものが挙げられる。いくつかの実施形態では、好適な無機成核剤は、10マイクロメートル以下の平均粒径を有する。
【0049】
本発明のPLA組成物中で用いる場合、成核剤は、溶融PLA組成物の総重量に基づいて少なくとも約0.1重量%のレベルで有用である。いくつかの実施形態では、成核剤は、溶融PLA組成物の総重量に基づいて少なくとも約0.5重量%、少なくとも約1.0重量%、及び少なくとも約2.0重量%のレベルである。
【0050】
本明細書の方法工程(c)に従って、溶融PLA組成物を所定の温度で処理されたツール表面に適用し、融解温度より低く、かつガラス転移温度より高い温度に組成物を冷却することにより、PLAフィルムを形成する。続いて、PLAフィルムを処理されたツール表面から取り外してよい。ポリラクチドフィルムは少なくとも部分的に結晶質であり、処理されたツール表面上のフィルム形成により、その結晶化度が高まる。
【0051】
図1を参照すると、急冷ロール10の形態の処理されたツールの部分概略図が提供され、本発明の実施形態を説明する。示される実施形態では、ロール10は、上述のように、剥離剤コーティングで予め処理された構造化表面12を備える。溶融PLA含有組成物をロール10と接触させる。フィルムに形成される前に、PLA及び可塑剤、並びに任意の成核剤を含む成分を混合することにより、溶融PLA組成物を処方する。いくつかの実施形態では、成分を適当なダイ(例えば、コートハンガーシートダイ)を備えた押出し機に加えることにより、溶融PLA組成物を混合する。溶融PLA組成物の構成成分を混合する他の手段、例えば、ブレンダー、真空ニーダー、又はその他同種のものなどは、当業者により使用され得、これらもまた本明細書で想到される。いくつかの実施形態では、複数の加熱ゾーンを備える2軸押出し機が用いられる。溶融PLA組成物の各成分を、供給ホッパーを用いて押出し機に加えてよく、又は、構成成分の1つ以上を、1つ以上のゾーンに備えられるポートを通して押出し機内に導入してよい。当然のことながら、任意の様々なゾーンの異なるポートに異なる成分を加えてよく、他のゾーンの温度とは無関係な温度に、各ゾーンを維持することができる。更に、各ゾーンの温度は他のゾーンの温度と同じであってよく、又はこれらはそれぞれ異なっていてもよい。押出し機又はその他手段のいずれかにより溶融PLA組成物が調製される正確な条件は、当業者が容易に決定できる。
【0052】
混合後、溶融PLA組成物を押し出し、フィルムダイなどを経てロール10上に付着させ、連続フィルム14を形成する。示される実施形態では、フィルム14はエンボス加工されており、構造化表面16は、構造化表面12のネガティブ圧痕形状の構造を含む。得られるフィルム14は、フィルムが不定の長さの「連続的」である。言いかえれば、フィルム14はその幅よりずっと長い(例えば、その長さは少なくとも幅の5倍、少なくとも幅の10倍、又は少なくとも幅の15倍)。本発明の様々な実施形態では、構造化表面12は、少なくとも一部はPLAの結晶化度により、最大130℃の温度でフィルムを加熱してもその構造を維持する。したがって、本発明により形成されたフィルムは、一般に保存及び輸送中安定である。
【0053】
当業者には当然のことながら、処理されたツール表面は、図1で構造化表面12として示されるが、別の形状でも提供され得る。いくつかの実施形態では、表面は比較的平坦、つまり非構造化であってよい。いくつかの実施形態では、光沢仕上げ、つや消し仕上げなどを伴うPLAフィルムの製造に好適な形状で提供されてよい。ツールロールの構造化表面の構造は、単一の連続構造又は連続模様(例えば、斜交平行模様)の形状であってもよく、複数の構造(例えば、フックステムを形成するための窪み)であってもよい。処理されたツール表面からPLAフィルムへ移転されたネガティブ圧痕の結果、構造がPLAフィルム上に形成される。処理されたツール表面は、ランダム構造、つまりより構造化した機械加工仕上げを含んでよい。所望の場合、PLAフィルムの両面に1つ以上の構造を含むようにしてもよい。
【0054】
いくつかの実施形態では、処理されたツール表面12は、所定の形状の複数の成形窪みを含み、それにより、例えばPLAフィルムの表面上に、直立したフックステム、つまりフック様突起部を形成する。このような形状を含むPLAフィルムの製造では、成形窪みを充填する条件下で、処理されたツール表面に溶融PLA組成物を適用し、かかる条件は、本明細書の教示に基づき当業者により容易に決定される。
【0055】
本発明の様々な実施形態では、PLAフィルムの結晶化度レベルは、重量基準で少なくとも約1重量パーセント(重量%)、少なくとも約2重量%、少なくとも約5重量%、少なくとも約10重量%、及び少なくとも約20重量%である。典型的には、フィルムは約40重量%以下の結晶化度を有する。
【0056】
本明細書に記載される実施形態では、処理されたツール表面は、ポリラクチド含有組成物のガラス転移温度(T)を超え、かつポリラクチドの融解温度(T)を下回る所定の温度である。典型的な市販のPLAは、約58℃のTを有し得るが、溶融ポリラクチド組成物の処方に依存して変化し得る。場合によっては、Tは約27℃〜約30℃の低さであり得る。いくつかの実施形態では、処理されたツール表面は、少なくとも約85℃、少なくとも約100℃、又は少なくとも約105℃の所定の温度である。同様に、典型的な市販のPLAの融解温度は約160℃であるが、これは溶融PLA組成物の処方に依存して変化し得る。特定の実施形態では、処理されたツール表面は約130℃以下の温度である。そのような温度はポリラクチドの結晶化速度を高め、成形窪みの充填を向上し、処理されたツール表面へのPLAフィルムの粘着を更に減らすことができ、それによって例えば加工速度を高めることができる。いくつかの実施形態では、このプロセスは、約85℃〜約130℃、約100℃〜約130℃、又は約105℃〜約130℃の範囲の温度に維持された処理されたツール表面を使用する。
【0057】
通常、処理されたツール表面に接触する領域で溶融PLA組成物に圧力を加えることにより、ニップ領域を提供する。加えられる適切な圧力の決定は、当業者により容易に決定される。そのような圧力は、表面における初期構造の形成に影響を与え得る。通常、処理されたツール表面の温度が高いほど、低い圧力が要求され得る。
【0058】
本発明の連続フィルムを調製するための設備設定は、当業者には周知である。いくつかの代表的な設備設定は、本明細書の非限定例に記載されている。例えば、典型的なツールロールはスチール製であるが、他のツールロール材料としては、ニッケルメッキスチール又はクロムメッキスチールが挙げられる。
【0059】
典型的には、本発明のプロセスは、処理されたツール表面を備える主要ツールロールを1つ用いる。他のロール(例えば、ニップ又はバックアップゴムロール又はスチールロール)を使用してもよいが、典型的な方法は、組成物又はフィルムの温度を冷やしてから再加熱する順序の2つのロールを必要としない。したがって、本発明のプロセスの実施形態を提供し、1工程、例えば1回の主構造形成工程でフィルムを形成する。
【0060】
様々な実施形態では、本発明は、その一方又は両方の主表面上に任意の様々な構造を有するPLAフィルムの製造プロセスを提供する。実施例には、例えば、米国特許第6,132,660号、同第6,039,911号、同第5,679,302号、及び同第6,635,212号に記載されるような、フック式ファスナー(頭付きステム機械的ファスナーとも呼ばれる)の製造に使用できるステム化ウェブを含む。他の実施形態では、つや消し仕上げフィルムが提供され得る。代表的なつや消し仕上げフィルム表面上の構造は、少なくとも1.25マイクロメートルの平均粗さ(Ra)を有してよい。
【0061】
更に他の実施形態では、溶融PLA組成物を処方し、PLA、及び任意にPLAに相溶する他のポリマーを含有させてよい。典型的には、ポリラクチドは5重量%未満のd−ラクチド又は2重量%未満のd−ラクチドを含む。
【0062】
本発明の実施形態により製造されるPLAフィルムは、様々な製品において使用できる。例えば、それらは、おむつ又は病院用ガウンのような使い捨て衣類の閉鎖機構のフック・アンド・ループ式ファスナーとして、おむつのバックシートとして、テープ(おむつテープなど)、テープフラッグ、リント除去テープ(例えば、リントローラー)、及び不織布及び紙のような他の基材へのフィルムのラミネートに、使用することができる。例えば、つや消し仕上げのPLA含有フィルムは、おむつ(例えば、バックシート又はテープ支持体として)、テープ、テープフラッグ、及びリント除去テープのような日用品用途に使用することができる。つや消し仕上げ表面は、所望により、つや消し仕上げPLAフィルムの片面にあってもよく、両面にあってもよい。支持体として本発明のつや消し仕上げフィルムを使用するテープの接着剤は、つや消し仕上げされた表面に配置されてもよく、又は反対側の(典型的には平滑な)表面に配置されてもよい。
【0063】
そのような使い捨て衣類は、フック・アンド・ループ式ファスナーシステムの代わりに接着締結式のタブ(例えば、おむつテープ)を含んでもよい。そのようなテープは、接着剤層を有する表面を備えるつや消し仕上げフィルムのようなPLAフィルムを含んでもよい。本発明に従って製造され、テープフラッグ、又はリント除去シーツ若しくはローラーで用いられるテープなどの様々なその他用途で使用するのに好適なPLAフィルム支持体を用いて、他のテープを製造できる。例えば、A−B型ブロックコポリマーなどの形態の粘着付与エラストマーなど、様々な接着剤を用いてよい。
【0064】
本発明の様々な実施形態を更に説明するために、当然のことながら、ポリラクチドフィルムを形成する第1の方法が提供される。第1の方法は、以下を包含する工程(a)〜(c)を含む。
【0065】
(a)剥離剤コーティングを備える処理されたツール表面を提供する工程であって、この処理されたツール表面がポリラクチドのガラス転移温度付近又はそれ以上の所定の温度である、工程と、
(b)処理されたツール表面を溶融ポリラクチド組成物と接触させてポリラクチドフィルムを作製する工程であって、このフィルムが少なくとも部分的に結晶質であり、所定の温度で処理されたツール表面に溶融ポリラクチド組成物を曝すことにより、ポリラクチドフィルムの結晶化度が高まる、工程と、
(c)ポリラクチドフィルムを処理されたツール表面から取り外す工程。
【0066】
第1の方法の変法であってよい第2の方法が提供される。第2の方法では、処理されたツール表面を提供する工程(a)は、剥離剤コーティングを未処理ツールの表面に塗布する工程も含む。
【0067】
第1又は第2の方法の変法であってよい第3の方法が提供される。第3の方法では、処理されたツール表面の所定の温度は、約85℃〜約130℃の範囲内である。
【0068】
第1〜第3の方法のうちのいずれの変法であってよい第4の方法が提供される。第3の方法では、処理されたツール表面は急冷ロールの表面を含む。
【0069】
第1〜第4の方法のうちのいずれの変法であってよい第5の方法が提供される。第5の方法では、剥離剤コーティングは実質的連続単層膜である。
【0070】
第1〜第5の方法のうちのいずれの変法であってよい第6の方法が提供される。第6の方法では、処理されたツール表面は処理されたネガティブ表面である。
【0071】
第6の方法の変法であってよい第7の方法が提供される。第7の方法では、処理されたツール表面を溶融ポリラクチド組成物と接触させると構造化表面を有するポリラクチドフィルムが形成される。
【0072】
第1〜第7の方法のうちのいずれの変法であってよい第8の方法が提供される。第8の方法では、剥離剤コーティングは、フッ素化学化ベンゾトリアゾール、フッ素化ホスホン酸、及びこれらの組み合わせから選択される。
【0073】
第1〜第8の方法のうちのいずれの変法であってよい第9の方法が提供される。第9の方法では、フッ素化学化ベンゾトリアゾールは次式を有する。
【0074】
【化4】

【0075】
式中、
は、C2n+1−(CH−であり、ここでnは1〜22であり、mは0以上の整数であり、
Xは−CO−、−SO−、−CONH−、−O−、−S−、共有結合、−SONR−、又は−NR−であり、ここでRはH又はC〜Cアルキレンであり、
Yは−CH−であり、ここでzは0又は1であり、
はH、低級アルキル、又はR−X−Y−であり、
ただし、Xが−S−又は−O−、mが0、zが0のとき、nが≧7であり、Xが共有結合のとき、m又はzが少なくとも1である。
【0076】
第9の方法の変法であってよい第10の方法が提供される。第10の方法では、「m」は6である。
【0077】
第1〜第8の方法のうちのいずれの変法であってよい第11の方法が提供される。第11の方法では、フッ素化学化ベンゾトリアゾールは次式を有する。
【0078】
【化5】

【0079】
式中、
は、C2n+1−(CH−であり、nは1〜22であり、mは0以上の整数であり、
Xは−CO−、−SO−、−S−、−O−、−CONH−、共有結合、−SONR−、又は−NR−であり、ここでRはH又はC〜Cアルキレンであり、qは0又は1であり、
YはC〜Cアルキレンであり、zは0又は1であり、
はH、低級アルキル、又はR−X−Yである。
【0080】
第11の方法の変法であってよい第12の方法が提供される。第12の方法では、「m」は6である。
【0081】
第1〜第8の方法のうちのいずれの変法であってよい第13の方法が提供される。第13の方法では、フッ素化ホスホン酸は次式を有する。
【0082】
【化6】

【0083】
式中、
は、5〜21個の炭素原子を有する直鎖アルキレン基であり、そのメチレン部分は、メチレン鎖中の単一部位、又は複数部位において、酸素原子で置換されてよく、
は、4〜10個の炭素原子を有するペルフルオロアルキル基であり、
は、水素、アルカリ金属カチオン、又は1〜6個の炭素原子を有するアルキル基であり、
Mは、水素又はアルカリ金属カチオンであり、
ただし、Rが非置換直鎖アルキレン基の場合、R及びRを合わせた炭素原子の合計は少なくとも10である。
【0084】
第13の方法の変法であってよい第14の方法が提供される。第14の方法では、Rは約10〜約21個の炭素原子を有する直鎖アルキレン基である。
【0085】
第13又は第14の方法の変法であってよい第15の方法が提供される。第15の方法では、Rは、デカン−1,10−ジイル又はヘンエイコサン−1,21−ジイルである。
【0086】
第1〜第8の方法のうちのいずれの変法であってよい第16の方法が提供される。第16の方法では、フッ素化ホスホン酸は、CF(CF(CHPO、CF(CF(CH11PO、CF(CF(CH22POの基から選択される。
【0087】
第1〜第16の方法の変法であってよい第17の方法が提供される。第17の方法では、溶融ポリラクチド組成物は成核剤を含まない。
【0088】
第1〜第16の方法の変法であってよい第18の方法が提供される。第18の方法では、溶融ポリラクチド組成物は、少なくとも1つの成核剤を含む。
【0089】
第18の方法の変法であってよい第19の方法が提供される。第19の方法では、少なくとも1つの成核剤は、タルク、酸化亜鉛、サッカリンのナトリウム塩、ケイ酸カルシウム、安息香酸ナトリウム、チタン酸カルシウム、窒化ホウ素、銅フタロシアニン、フタロシアニン、及びこれらの2つ以上の組み合わせから選択される。
【0090】
第1〜第19の方法の変法であってよい第20の方法が提供される。第20の方法では、溶融ポリラクチド組成物は、アルキルリン酸エステル、ジアルキルエーテルジエステル、トリカルボン酸エステル、エポキシ化オイル及びエステル、ポリエステル、ポリグリコールジエステル、アルキルアルキルエーテルジエステル、脂肪族ジエステル、アルキルエーテルモノエステル、クエン酸エステル、ジカルボン酸エステル、植物油及びそれらの誘導体、グリセリンのエステル、並びにこれらの2つ以上の組み合わせから選択される少なくとも1つの可塑剤を含む。
【0091】
第1〜第20の方法の変法であってよい第21の方法が提供される。第21の方法では、方法は、工程(b)である処理されたツール表面を溶融ポリラクチド組成物と接触させる工程が、ダイを通して溶融ポリラクチド組成物を処理されたツール表面上に押出し、ポリラクチドフィルムを作製する工程を含むように、押出し機中で溶融ポリラクチド組成物を調製する工程を更に含んでよい。
【0092】
第1〜第21の方法の変法であってよい第22の方法が提供される。第22の方法では、ポリラクチドフィルムは、少なくとも1重量%の結晶化度を有するポリラクチドを含む。
【0093】
第1〜第22の方法の変法であってよい第23の方法が提供される。第23の方法では、ポリラクチドフィルムは、40重量%以下の結晶化度を有するポリラクチドを含む。
【0094】
第1〜第23の方法のうちのいずれの変法であってよい第24の方法が提供される。第24の方法では、処理されたツール表面はテキスチャ化され、処理されたツール表面のテキスチャをポリラクチドフィルムに移転できる条件下で、溶融ポリラクチド組成物を処理されたツール表面に適用し、フィルムの少なくとも片面上につや消し仕上げを提供する。
【0095】
第24の方法の変法であってよい第25の方法が提供される。第25の方法では、ポリラクチドフィルムの表面上の構造は、少なくとも1.25マイクロメートルのRaを有する。
【0096】
第1のフィルムが、第1〜第25の方法のいずれかの産物である第1のフィルムが提供される。
【0097】
第1のフィルムを含む第1の物品が提供される。第1の物品は使い捨て衣類であってよく、使い捨て衣類はおむつであってよい。
【0098】
第1のフィルムを含む第1のテープが提供され、この第1のフィルムは第1及び第2の主表面、並びに、主表面の少なくとも一方に接着剤層を備える。
【0099】
本発明の追加の実施形態は、次の非限定例にて説明される。
【実施例】
【0100】
次の実施例を示し、本発明の更なる特徴及び実施形態を説明する。全ての部は、特に指定のない限り重量によるものである。
【0101】
(実施例1)
半結晶質ポリ乳酸フィルムを、ポリ乳酸(PLA)ポリマー(Natureworks LLC(Minnetonka,MN)の4032Dと指定されるもの)及び以下の手順を用いて調製した。40mm、10ゾーンの2軸押出し機を使用して、PLAポリマーと、可塑剤と、成核剤とを溶解し、容積流量定量ポンプへ、次いで、25センチメートル(25cm)幅の従来のコートハンガーフィルムダイへと、押し出した。PLAポリマーは、水分を全て除去するために60℃で最低12時間乾燥し、次いで、ロス・イン・ウェイトフィーダーを毎時9.1キログラム(kg/時)の供給速度で使用して、押出し機の第1ゾーンに供給した。第1ゾーンは約25℃で水冷した。押出し機の第2ゾーンは210℃に設定し、残りの8つのゾーンは180℃に設定した。ダイの温度は180℃に維持した。押出し機の速度は毎分200回転(RPM)に設定した。アセチルトリ−n−ブチルシトレート可塑剤(Vertellus Performance Materials,Greensboro,NCから入手したCITROFLEX A−4)は、最終押出し組成物に基づいて14.6重量%の供給速度でグリッドメルター(gridmelter)(Dynatec,Hendersonville,TN)を使用して押出し機のゾーン3に供給した。押出し機からの押出し品は、片側にある温度制御下の直径48cmのつや消し仕上げ処理されたスチールツールロール(103℃)と、その反対側にある直径20cmの冷硬(冷却)ロールとで構成されるニップ内に、縦に下向きに配置した。線1cm当たり60Nのニップ力を使用した。
【0102】
処理されたツールロールを以下の手順に従って調製した。イソプロピルアルコール中、0.1%の濃度のフッ素化学化−ペンタデシルホスホン酸(C1524P)溶液を調製した。ツールロールをエチルアセテート溶媒で十分に清浄し、続いてフラッドコーティングにより、約0.3リットルのフッ素化学化溶液を用いて、フッ素化学化溶液をツールロールの外側表面に適用した。ロールを一晩風乾させた。
【0103】
押出しプロセスを支援するために、連続シリコーンゴムベルトを冷却ロールの周囲に巻いた(約180度の巻き)。ベルトの内面(押出し品と接触していない表面)は、設定点20℃で2つのスチールロールで冷却した。押出し品は、最初の押出し品の付着点から測定されるツールロール周囲のほぼ180度にかけてベルト及びツールロールと接触するように維持した。次いで、冷却された押出しフィルムをベルトから分離し、追加的に約60度の巻きにかけてツールロールと接触したまま維持してから、連続ロールに巻いた。フィルムは、ツールロールの速度に対してわずかに過速された、駆動された剥離ゴム被覆ロールを用いて、9.1メートル/分(m/分)でツールロールから引いた。クロムメッキスチールロールをサンドブラストすることによりツールロールを調製し、5.9マイクロメートルの平均Ra粗さを達成した。フィルム巻き取り速度を調整し、約65マイクロメートルのフィルム厚さを達成した。
【0104】
TA Instruments Q200 Differential Scanning Colorimeterを用いて、フィルムの結晶化度を測定した。約10mgの量のサンプルを、0℃〜220℃まで、10℃/分で加熱した。代表的な初期結晶質エンタルピーは、低温結晶化エンタルピーと融解エンタルピーとの間の差として得た。100%結晶質PLAの指標として100ジュール/グラムを用いて、結晶化の程度を算出した。試験結果を以下の表1に示す。
【0105】
(実施例2)
タルク(Specialty Minerals(Bethlehem,PA)から入手したUltraTalc 609タルク)を成核剤として添加してフィルムの結晶化度を高めた以外は、実施例1の方法で半結晶質ポリ乳酸フィルムを調製した。タルクは、最終押出し組成物に基づいて2.5重量%のタルクを達成する速度でロス・イン・ウェイトフィーダーを使用して、押出し機の供給口に供給した。PLAの供給速度は9.3キログラム/時(kg/hr)とした。フィルムの結晶化度を上記実施例1のように測定し、その結果を以下の表1に示す。
【0106】
比較例C1
つや消し仕上げスチールツールロールをフッ素化学化溶液で予め処理しなかった以外は、実施例1の方法で半結晶質ポリ乳酸フィルムを調製した。フィルムの結晶化度を上記実施例1のように測定し、その結果を以下の表1に示す。実施例1及び2のフィルムと比較して、このフィルムは非常に低いレベルの結晶化度を有していた。
【0107】
比較例C2
つや消し仕上げスチールツールロールをフッ素化学化溶液で予め処理しなかった以外は、実施例2の方法で半結晶質ポリ乳酸フィルムを調製した。フィルムの結晶化度を上記実施例1のように測定し、その結果を以下の表1に示す。このフィルムは成核されたにも関わらず、実施例1及び2のフィルムより低いレベルの結晶化度を有していた。
【0108】
(実施例3)
イソプロピルアルコール中0.1%溶液の式(I)のフッ素化学化ベンゾトリアゾール(C1716)で、実施例1と同じ手順を用いてツールロールを処理した以外は、実施例1の方法で半結晶質ポリ乳酸フィルムを調製した。押出し機の第2ゾーンは200℃に設定し、残りの8つのゾーンは200℃に設定した。ダイの温度は220℃に維持した。押出し機の速度は毎分200回転(RPM)に設定した。ベルトの内面は、設定点15℃で冷却した。フィルムの結晶化度を上記実施例1のように測定し、その結果を以下の表1に示す。
【0109】
(実施例4)
成核剤(Specialty Minerals(Bethlehem,PA)から入手したUltraTalc 609タルク)を用いてフィルムの結晶化度を高めた以外は、実施例3の方法で半結晶質ポリ乳酸フィルムを調製した。タルクは、最終押出し組成物に基づいて2.5重量%のタルクを達成する速度でロス・イン・ウェイトフィーダーを使用して、押出し機の供給口に供給した。PLAの供給速度は9.1キログラム/時(kg/hr)とした。フィルムの結晶化度を上記実施例1のように測定し、その結果を以下の表1に示す。
【0110】
比較例C3
つや消し仕上げスチールツールロールを式(I)のフッ素化学化ベンゾトリアゾール(C1716)で予め処理しなかった以外は、実施例3の方法で半結晶質ポリ乳酸フィルムを調製した。フィルムの結晶化度を上記実施例1のように測定し、その結果を以下の表1に示す。実施例1〜4のフィルムと比較して、このフィルムは非常に低いレベルの結晶化度を有していた。
【0111】
比較例C4
つや消し仕上げスチールツールロールを式(I)のフッ素化学化ベンゾトリアゾール(C1716)で予め処理しなかった以外は、実施例4の方法で半結晶質ポリ乳酸フィルムを調製した。フィルムの結晶化度を上記実施例1のように測定し、その結果を以下の表1に示す。このフィルムは成核されたにも関わらず、実施例3及び4のフィルムより低いレベルの結晶化度を有していた。
【0112】
【表1】

【0113】
様々な実施形態の特徴について詳細に述べてきたが、本発明は、本明細書に示される記載の実施形態及び実施例によって必要以上に限定されるものではないと理解されるであろう。記載の実施形態に対する様々な修正及び変更は、本発明の範囲及び趣旨から逸脱することなく当業者に明らかとなるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリラクチドフィルムの形成方法であって、
(a)剥離剤コーティングを備える処理されたツール表面を提供する工程であって、前記処理されたツール表面が、ポリラクチドのガラス転移温度付近又はそれ以上の所定の温度である、工程と、
(b)前記処理されたツール表面を溶融ポリラクチド組成物と接触させてポリラクチドフィルムを作製する工程であって、前記フィルムが少なくとも部分的に結晶質であり、前記所定の温度で前記処理されたツール表面に前記溶融ポリラクチド組成物を曝すことにより、前記ポリラクチドフィルムの結晶化度が高まる、工程と、
(c)前記ポリラクチドフィルムを前記処理されたツール表面から取り外す工程と、を含む、方法。
【請求項2】
処理されたツール表面を提供する工程が、前記剥離剤コーティングを未処理ツールの表面に塗布する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記処理されたツール表面の前記所定の温度が、約85℃〜約130℃の範囲内である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記処理されたツール表面が、急冷ロールの表面を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記剥離剤コーティングが、実質的連続単層膜を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記処理されたツール表面が、処理されたネガティブ表面を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記処理されたツール表面を溶融ポリラクチド組成物と接触させるとポリラクチドフィルムが形成され、前記ポリラクチドフィルムが構造化表面を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記剥離剤コーティングが、フッ素化学化ベンゾトリアゾール、フッ素化ホスホン酸、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記フッ素化学化ベンゾトリアゾールが次式を有し、
【化1】

式中、Rは、C2n+1−(CH−であり、ここでnは1〜22であり、mは0以上の整数であり、
Xは−CO−、−SO−、−CONH−、−O−、−S−、共有結合、−SONR−、又は−NR−であり、ここでRはH又はC〜Cアルキレンであり、
Yは−CH−であり、ここでzは0又は1であり、
はH、低級アルキル、又はR−X−Y−であり、
ただし、Xが−S−又は−O−、mが0、zが0のとき、nが≧7であり、Xが共有結合のとき、m又はzが少なくとも1である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
「m」が6である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記フッ素化学化ベンゾトリアゾールが次式を有し、
【化2】

式中、Rは、C2n+1−(CH−であり、nは1〜22であり、mは0以上の整数であり、
Xは−CO−、−SO−、−S−、−O−、−CONH−、共有結合、−SONR−、又は−NR−であり、ここでRはH又はC〜Cアルキレンであり、qは0又は1であり、
YはC〜Cアルキレンであり、zは0又は1であり、
はH、低級アルキル、又はR−X−Yである、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
「m」が6である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記フッ素化ホスホン酸が次式を有し、
【化3】

式中、
は、5〜21個の炭素原子を有する直鎖アルキレン基であり、そのメチレン部分は、前記メチレン鎖中の単一部位、又は複数部位において、酸素原子で置換されてよく、
は、4〜10個の炭素原子を有するペルフルオロアルキル基であり、
は、水素、アルカリ金属カチオン、又は1〜6個の炭素原子を有するアルキル基であり、
Mは、水素又はアルカリ金属カチオンであり、
ただし、Rが非置換直鎖アルキレン基の場合、R及びRを合わせた炭素原子の合計は少なくとも10である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
が、約10〜約21個の炭素原子を有する直鎖アルキレン基である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
が、デカン−1,10−ジイル又はヘンエイコサン−1,21−ジイルである、請求項13又は14に記載の方法。
【請求項16】
前記フッ素化ホスホン酸が、CF(CF(CHPO、CF(CF(CH11PO、CF(CF(CH22POからなる群から選択される、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記溶融ポリラクチド組成物が、成核剤を含まない、請求項1〜16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記溶融ポリラクチド組成物が、少なくとも1つの成核剤を含む、請求項1〜16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記少なくとも1つの成核剤が、タルク、酸化亜鉛、サッカリンのナトリウム塩、ケイ酸カルシウム、安息香酸ナトリウム、チタン酸カルシウム、窒化ホウ素、銅フタロシアニン、フタロシアニン、及びこれらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記溶融ポリラクチド組成物が、アルキルリン酸エステル、ジアルキルエーテルジエステル、トリカルボン酸エステル、エポキシ化オイル及びエステル、ポリエステル、ポリグリコールジエステル、アルキルアルキルエーテルジエステル、脂肪族ジエステル、アルキルエーテルモノエステル、クエン酸エステル、ジカルボン酸エステル、植物油及びそれらの誘導体、グリセリンのエステル、並びにこれらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの可塑剤を含む、請求項1〜19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
押出し機中で前記溶融ポリラクチド組成物を調製する工程を更に含み、工程(b)である前記処理されたツール表面を前記溶融ポリラクチド組成物と接触させる工程が、ダイを通して前記溶融ポリラクチド組成物を前記処理されたツール表面上に押出し、前記ポリラクチドフィルムをもたらす工程を含む、請求項1〜20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記ポリラクチドフィルムが、少なくとも1重量%の結晶化度を有するポリラクチドを含む、請求項1〜21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記ポリラクチドフィルムが、40重量%以下の結晶化度を有するポリラクチドを含む、請求項1〜22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記処理されたツール表面がテキスチャ化され、前記処理されたツール表面のテキスチャを前記ポリラクチドフィルムに移転できる条件下で、前記溶融ポリラクチド組成物を前記処理されたツール表面に適用し、前記フィルムの少なくとも片面上につや消し仕上げを提供する、請求項1〜23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記ポリラクチドフィルムの表面上の構造が、少なくとも1.25マイクロメートルのRaを有する、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
請求項1〜25のいずれか一項に記載の方法により製造されるフィルム。
【請求項27】
請求項26に記載のフィルムを含む物品。
【請求項28】
前記物品が使い捨て衣類である、請求項27に記載の物品。
【請求項29】
おむつの形態である、請求項28に記載の使い捨て衣類。
【請求項30】
前記フィルムが第1及び第2の主表面、並びに、第1又は第2の主表面の少なくとも一方に接着剤層を有する、請求項26に記載のフィルムを含むテープ。

【図1】
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【公表番号】特表2013−510734(P2013−510734A)
【公表日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−538095(P2012−538095)
【出願日】平成22年11月10日(2010.11.10)
【国際出願番号】PCT/US2010/056115
【国際公開番号】WO2011/060001
【国際公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】