説明

ポリ乳酸系フィルム

【課題】本発明が解決しようとする課題は、従来技術では困難であった、アルミニウムをはじめとする無機物からなる蒸着膜が剥離しにくいポリ乳酸系フィルムの表面を提供することを目的とする。
【解決手段】フィルムの少なくとも一方の表面の表面窒素濃度N/Cが、1.0×10−3以上であるポリ乳酸系フィルム(以下、表面窒素濃度N/Cが1.0×10−3以上の表面を、面Aとする。)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機物の蒸着性能に優れたポリ乳酸系フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレンに代表されるポリオレフィン系樹脂は安価かつ成形加工性に優れ、剛性などの物性バランスに優れることから、多岐にわたる用途に展開されている。特に、フィルム用途では菓子などの食品用の包装用フィルムなどで盛んに用いられている。しかし、近年、石油由来の材料は資源の枯渇や生産・焼却処分時の際の二酸化炭素の発生、廃棄後も分解しないなどといった問題点から、生分解性樹脂や植物・生物由来の材料への注目が集まっている。
【0003】
特に生分解性樹脂の中でも、乳酸単量体を主成分とするポリエステル樹脂であるポリ乳酸系樹脂は、とうもろこしなどのバイオマスを原料として、微生物を利用した発酵法により、モノマーである乳酸を安価に製造できるようになり、また、融点もおよそ170℃と高く、溶融成形可能であるため、石油などの化石原料から製造される樹脂を代替できるバイオポリマーとして期待されている。
【0004】
脂肪族ポリエステル系フィルムは、アルミニウム(以後アルミニウムは、単にアルミとも記す)などの金属または金属酸化物を蒸着させることにより、水蒸気バリア性、ガスバリア性を向上させることで、工業材料や包装材料として非常に重要な役割を担うものである。とくにポリ乳酸系フィルムは、その生分解性を利用して、使用後に生分解性を促進させて、蒸着した金属膜のみを回収できるという利点を有する(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−111783号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
蒸着層を設ける際には、あらかじめ被蒸着面にコロナ放電処理などの方法による表面処理を施しておくことが知られているが、ポリ乳酸系フィルムに関しては、コロナ放電処理などの表面処理を施しても、蒸着層が剥離しやすい問題があった。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、ポリ乳酸系フィルムへの蒸着層の密着性を向上させ、蒸着層が剥離しにくいポリ乳酸系フィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために鋭意検討した結果、以下によって前記課題を解決することを見出し、本発明に至ったものである。
【0009】
(1)フィルムの少なくとも一方の表面の炭素原子数に対する窒素原子数の比(以下、表面の炭素原子数に対する窒素原子数の比を、表面窒素濃度N/Cとする)が、1.0×10−3以上であるポリ乳酸系フィルム(以下、表面窒素濃度N/Cが1.0×10−3以上の表面を、面Aとする。)。
【0010】
(2)前記面Aを有する層を層Aとした際に、
層AのDSCの昇温測定における結晶融解熱量(ΔHm)が、30J/g以下である、前記(1)に記載のポリ乳酸系フィルム。
【0011】
(3)前記面Aの表面窒素濃度N/Cが、5.5×10−3以上である、前記(1)に記載のポリ乳酸系フィルム。
【0012】
(4)前記面Aを有する層を層Aとした際に、
層Aが、層Aの全成分100質量%において、50質量%以上100質量%以下のポリ乳酸系樹脂を含み、
該ポリ乳酸系樹脂の平均D体量が、2mol%以上98mol%以下であることを特徴とする、前記(1)〜(3)のいずれかに記載のポリ乳酸系フィルム。
【0013】
(5)前記面A上に無機物からなる蒸着層を有する、前記(1)〜(4)のいずれかに記載のポリ乳酸系フィルム。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、蒸着した金属の剥離が起こりにくいポリ乳酸系フィルムを提供することができる。そのため特に、ガスバリア性能に優れる包装材料として好適に活用できる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のポリ乳酸系フィルムは、フィルムの少なくとも一方の表面の炭素原子数に対する窒素原子数の比(以下、表面の炭素原子数に対する窒素原子数の比を、表面窒素濃度N/Cとする)が、1.0×10−3以上であるポリ乳酸系フィルム(以下、表面窒素濃度N/Cが1.0×10−3以上の表面を、面Aとする。)である。以下に、本発明を構成ごとに説明する。
(表面窒素濃度N/C)
フィルムの少なくとも一方の表面の炭素原子数に対する窒素原子数の比を表面窒素濃度といい、N/Cと表記する。
【0016】
本発明のポリ乳酸系フィルムは、フィルムの少なくとも一方の表面の表面窒素濃度N/Cが、1.0×10−3以上であることが重要である。これは、フィルム表面における窒素濃度(炭素原子数に対する窒素原子数)が上がることで、アルミをはじめとする無機物からなる蒸着層との密着性が向上するためである。このメカニズムは、後述するような表面処理の結果、フィルム表面に窒素を含有する官能基が生成し、その窒素を含有する官能基と無機物からなる蒸着層とが相互作用した結果であると考えられる。ここで、窒素を含有する官能基とは、アミン、アミドなどの有機系窒素、アンモニウム塩、NO、NOなどである。相互作用の強さから、アミン、アミドなどの有機系窒素が生成していることが好ましい。以下、表面窒素濃度N/Cが1.0×10−3以上の表面を、面Aとする。
【0017】
表面窒素濃度N/Cが1.0×10−3未満の面に、無機物からなる蒸着層を形成した場合、該蒸着層はフィルムとの膜密着性が悪く、簡単に剥がれてしまう問題がある。少なくとも一方の表面の表面窒素濃度N/Cを1.0×10−3以上とすることで、面Aに無機物からなる蒸着層を形成した場合に、該蒸着層の膜密着性が向上するので、少なくとも一方の表面の表面窒素濃度N/Cを1.0×10−3以上とすることが重要である。表面窒素濃度N/Cは、好ましくは5.5×10−3以上であり、より好ましくは7.5×10−3以上であり、さらに好ましくは9.5×10−3以上である。また表面窒素濃度N/Cは、大きければ大きいほど好ましいが、現実的な上限は50×10−3程度であり、また無機物からなる蒸着層の膜密着性の観点からは、上限は20×10−3以下程度で十分である。
(ポリ乳酸)
本発明のポリ乳酸系フィルムの主成分として用いられるポリ乳酸系樹脂は、L−乳酸および/またはD−乳酸ユニットを主たる構成成分とする重合体である。ここでポリ乳酸系フィルムの主成分とは、ポリ乳酸系フィルムを構成する全成分100質量%において、50質量%以上100質量%以下がポリ乳酸系樹脂であることを意味する。
【0018】
なおポリ乳酸系樹脂とは、樹脂を構成する全ての単量体ユニット100mol%において、L−乳酸ユニットおよび/またはD−乳酸ユニットを50mol%以上100mol%以下含む樹脂を意味する。ポリ乳酸系樹脂は、より好ましくは樹脂を構成する全ての単量体ユニット100mol%において、L−乳酸ユニットおよび/またはD−乳酸ユニットを70mol%以上100mol%以下含み、さらに好ましくは、L−乳酸ユニットおよび/またはD−乳酸ユニットを90mol%以上100mol%以下含む態様である。
【0019】
また本発明のポリ乳酸系フィルムは、表面窒素濃度N/Cが1.0×10−3以上の表面である面Aを有すれば、単層構成とすることも積層構成とすることも可能である。そして面Aを有する層を層Aとした際に、単層構成の場合は、層Aとはその単層のことを意味し、一方で、積層構成の場合は、面Aを有する層のみが層Aであることを意味する(つまり層Aは少なくとも一方の最外層に配置される。)。
【0020】
そして本発明のポリ乳酸系フィルムは、層Aの全成分100質量%において、ポリ乳酸系樹脂が50質量%以上100質量%以下であることが好ましい。層Aの全成分100質量%において、ポリ乳酸系樹脂を50質量%以上100質量%以下とすることで、より耐熱性を維持できるために好ましい。より好ましくは、層Aの全成分100質量%においてポリ乳酸系樹脂が80質量%以上100質量%以下であり、さらに好ましくは、ポリ乳酸系樹脂が90質量%以上98質量%以下である。
【0021】
さらに本発明のポリ乳酸系フィルムは、層Aの全成分100質量%において、ポリ乳酸系樹脂が50質量%以上100質量%以下であり、同時に該ポリ乳酸系樹脂の平均D体量が、2mol%以上98mol%以下であることが好ましい。ポリ乳酸系樹脂の平均D体量を、2mol%以上98mol%以下とすると、よりアルミ密着性が向上し、さらに透明性が向上するために好ましい。該ポリ乳酸系樹脂の平均D体量は、2mol%以上98mol%以下であることが好ましく、5mol%以上95mol%以下であることがより好ましく、10mol%以上90mol%以下であることがさらに好ましい。
【0022】
平均D体量が上記範囲の場合、ポリ乳酸系樹脂の結晶性が低下するため、アルミ密着性が向上すると考えられるが、その結晶性低下の観点からは平均D体量2mol%以上20mol%以下、および、80mol%以上98mol%以下で十分である。また、平均D体量xが50mol%以上の場合、結晶性は(100−x)mol%の場合と同じである。
【0023】
ここで平均D体量とは、各ポリ乳酸系樹脂の全ての乳酸ユニットの合計量(mol)に対する、D−乳酸ユニットの合計量(mol)を、全ポリ乳酸系樹脂について平均化した数値をいう。つまり平均D体量とは、各ポリ乳酸系樹脂について、D体量(mol%)=〔D−乳酸ユニットの合計量(mol)〕/〔全ての乳酸ユニットの合計量(mol)〕×100(mol%)、を求め、それを全てのポリ乳酸系樹脂について平均することで求めることができる。
【0024】
なお、重合段階の原料が分かる場合には、原料として使用する乳酸やラクチドを用いて、D体量(mol%)=〔D−乳酸ユニットの合計量(mol)〕/〔全ての乳酸ユニットの合計量(mol)〕×100(mol%)、として求めることができる。例えば、L−ラクチド76質量部とDL−ラクチド24質量部を用いてポリ乳酸を得る場合、平均D体量=24/(76×2+24×2)×100=12mol%、である。
【0025】
本発明のポリ乳酸系フィルムに使用されるポリ乳酸系樹脂の質量平均分子量は、適度な製膜性、延伸適性および実用的な機械特性を満足させるため、5万〜50万であることが好ましく、より好ましくは10万〜25万である。なお、ここでいう質量平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)でクロロホルム溶媒にて測定を行い、ポリメチルメタクリレート換算法により計算した分子量をいう。
(ポリ乳酸に含まれる単量体ユニット)
本発明のポリ乳酸系フィルムに使用されるポリ乳酸系樹脂には、上述した乳酸ユニット以外にさらに以下の単量体ユニットを含んでいてもよい。他の単量体としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘプタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ノナンジオ−ル、デカンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノ−ル、ネオペンチルグリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、ビスフェノ−ルA、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールおよびポリテトラメチレングリコールなどのグリコール化合物、シュウ酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカンジオン酸、マロン酸、グルタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビス(p−カルボキシフェニル)メタン、アントラセンジカルボン酸、4,4´−ジフェニルエーテルジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、5−テトラブチルホスホニウムイソフタル酸などのジカルボン酸、グリコール酸、ヒドロキシプロピオン酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシ安息香酸などのヒドロキシカルボン酸、カプロラクトン、バレロラクトン、プロピオラクトン、ウンデカラクトン、1,5−オキセパン−2−オンなどのラクトン類を挙げることができる。上記の乳酸ユニット以外の他の単量体ユニットの共重合量は、ポリ乳酸系樹脂を構成する全ての単量体ユニット全体100mol%に対し、0〜30mol%であることが好ましく、0〜10mol%であることがより好ましい。
(結晶融解熱量(ΔHm))
本発明のポリ乳酸系フィルムは、層AのDSCの昇温測定における結晶融解熱量(ΔHm)が、30J/g以下であることが好ましい。ΔHmが30J/g以下である場合、ポリ乳酸系樹脂の結晶性が低く、アルミニウムをはじめとする無機物からなる蒸着層との密着性が向上するために好ましい。ΔHmは20J/g以下であることがより好ましく、10J/g以下であることがさらに好ましい。
【0026】
層AのΔHmを30J/g以下とするためには、層Aの構成樹脂としてポリ乳酸系樹脂のみを用いる場合には、該ポリ乳酸系樹脂の平均D体量を2mol%以上98mol%以下とすることで達成できる。また、平均D体量が2mol%未満あるいは98mol%を超えるポリ乳酸系樹脂の場合でも、層Aを構成する第2の樹脂として非晶性の樹脂を混合することで、層AのΔHmを30J/g以下とすることが可能である。この第2の樹脂として好適な非晶性樹脂としては、アクリル系樹脂や、ポリカーボネート系樹脂などが挙げられる。
【0027】
ΔHmが30J/g以下の場合、ポリ乳酸系樹脂の結晶性が低く、アルミニウムをはじめとする無機物からなる蒸着層との密着性が向上すると考えられるが、その結晶性が低くなる観点からはΔHmの下限は0J/gである。
【0028】
本発明のひとつは、被蒸着面となる面Aの表面窒素濃度N/Cを1.0×10−3以上として、同時に被蒸着面(面A)を有する層(層A)について結晶性の低いポリ乳酸系樹脂を主体とした場合、そのような本発明のポリ乳酸系フィルムと、無機物からなる蒸着層との密着性が飛躍的に向上することを見出したものである。
(透明性)
本発明のポリ乳酸系フィルムは、包装用途に使用した際に、内容物を確認するという観点から、透明性が高いことが好ましい。具体的には、全光線透過率が90%以上100%以下であることが好ましく、93%以上100%以下がさらに好ましい。なお、全光線透過率は高いほど好ましいが、包装用途における内容物の確認という観点から、95%程度であれば十分である。
【0029】
全光線透過率を90%以上とするためには、前述のように、層Aが、層Aの全成分100質量%において、50質量%以上100質量%以下のポリ乳酸系樹脂を含み、さらに該ポリ乳酸系樹脂の平均D体量が、2%以上98%以下とする方法などにより達成することができる。
(粒子、添加剤)
本発明のポリ乳酸系フィルムは、本発明の効果を損なわない範囲であれば、必要に応じて、粒子や添加剤を適量含有することができる。粒子の種類は、目的や用途に応じて適宜選択され、無機粒子、有機粒子、架橋高分子粒子、重合系内で生成させる内部粒子などを挙げることができる。添加剤の例としては、可塑剤、難燃剤、熱安定剤、光安定剤、酸化防止剤、着色防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、結晶核剤、粘着性付与剤、脂肪酸エステル、ワックス等の有機滑剤またはポリシロキサン等の消泡剤、顔料、染料等の着色剤などが挙げられる。
(ポリ乳酸系フィルムの製膜方法)
本発明のポリ乳酸系フィルムを製造する方法を、具体的に説明する。
【0030】
本発明のポリ乳酸系フィルムは、主にポリ乳酸からなる樹脂を乾燥後、押出機に供給することで、無配向フィルムとして得ることができる。さらに二軸配向フィルムとする場合は、これを延伸することで得ることができる。無配向のポリ乳酸系フィルムを延伸する場合は、インフレーション法、チューブラー法、同時二軸延伸法、逐次二軸延伸法などの既存の延伸フィルムの製造法により行うことができるが、成形性と耐熱性を両立するフィルムの配向状態を制御しやすいこと、また、製膜速度を高速にできることから逐次二軸延伸法が好ましい。以下にテンター式逐次二軸延伸を行う場合の好ましい製膜方法を示すが、本発明のポリ乳酸系フィルムは、これに限定されるものではない。
【0031】
5torr以下の減圧下、100〜120℃で3時間以上乾燥したポリ乳酸樹脂をTダイ法によりリップ間隔1〜3mmのスリット状の口金から吐出し、金属製冷却キャスティングドラム上に、直径0.5mmのワイヤー状電極を用いて静電印加して密着させ、無配向キャストフィルムを得る。
【0032】
金属製冷却ロールの表面温度の好ましい範囲は0〜40℃であり、より好ましい範囲は3〜35℃であり、さらに好ましい範囲は5〜30℃である。金属製冷却ロールの表面温度をこの範囲に設定することで良好な透明性を発現できる。
【0033】
こうして得られた無配向フィルムを加熱ロール上で搬送することによって縦延伸を行う温度まで昇温する。昇温には赤外線ヒーターなど補助的な加熱手段を併用しても良い。延伸温度の好ましい範囲は55〜95℃であり、より好ましくは60〜90℃、さらに好ましくは65〜85℃である。このようにして昇温した無配向フィルムを、加熱ロール間の周速差を用いてフィルム長手方向に1段もしくは2段以上の多段で延伸を行う。合計の延伸倍率は2〜5倍が好ましく、より好ましくは2.5〜4倍である。
【0034】
このように一軸延伸したフィルムをいったん冷却した後、フィルムの両端部をクリップで把持してテンターに導き、幅方向の延伸を行う。延伸温度は60〜105℃が好ましく、より好ましくは65〜100℃、さらに好ましくは70〜95℃である。延伸倍率は2.5〜15倍が好ましく、より好ましくは2.7〜15倍、さらに好ましくは3〜10倍が好ましい。通常、二軸配向ポリ乳酸系フィルムの横延伸倍率は、2.5〜3.5倍で実施されるが、2.5〜15倍の高倍率延伸を実施すると、スリット性、常温保存時のロール外観、水蒸気バリア性が向上し、これらを両立させることができることから好ましい。フィルムの幅方向の性能差を低減するためには、長手方向の延伸温度よりも1〜15℃低い温度で幅方向の延伸を行うことが好ましい。
【0035】
さらに必要に応じて、再縦延伸および/または再横延伸を行ってもよい。
【0036】
次に、この延伸フィルムを緊張下または幅方向に弛緩しながら熱固定する。好ましい熱処理温度は90〜160℃であり、より好ましくは105〜155℃、さらに好ましくは120〜150℃である。フィルムの熱収縮率は低下させたい場合は、熱処理温度を高温にするとよい。熱処理時間は0.2〜30秒の範囲で行うのが好ましいが、特に限定されない。弛緩率は、幅方向の熱収縮率を低下させる観点から3〜15%であることが好ましく、より好ましくは5〜10%である。熱固定処理を行う前にいったんフィルムを冷却することがさらに好ましい。さらに、フィルムを室温まで、必要ならば、長手および幅方向に弛緩処理を施しながら、フィルムを冷やして巻き取り、目的とする二軸配向ポリ乳酸系フィルムを得ることができる。
【0037】
上記のような製造方法を採用することにより、本発明の二軸配向ポリ乳酸系フィルムを得ることができる。
(表面処理方法)
フィルムの少なくとも一方の表面の表面窒素濃度N/Cを、1.0×10−3以上とするための方法は、特に限定されないが、EC処理によるコロナ放電処理や、ガス処理、プラズマ処理、アルカリ処理、電子線放射処理、真空紫外線処理などでは通常達成困難である。フィルムの少なくとも一方の表面の表面窒素濃度N/Cを、1.0×10−3以上とするための具体的な方法は、NE処理によるコロナ放電処理またはCE処理によるコロナ放電処理を行う方法を挙げることができる。より好ましくはNE処理によるコロナ放電処理である。なお、EC処理によるコロナ放電処理を用いた場合でも、後述する特別な処理強度とすることで、表面窒素濃度N/Cを1.0×10−3以上にできる場合がある。
【0038】
CE処理よりもNE処理が好ましい理由は、CE処理よりもNE処理の方が、より窒素濃度の高い雰囲気下で放電を行うため、窒素がポリ乳酸系フィルムの表面と反応し、N/Cがより高くなるためと考えられる。
【0039】
尚、CE処理とは、炭酸ガスおよび窒素混合ガスの雰囲気下でコロナ放電処理を行う表面処理のことである。好ましいガス組成は、体積比CO/N=1/1〜20、より好ましくは体積比CO/N=1/8〜12、さらに好ましくは体積比CO/N=1/9〜10である。
【0040】
NE処理とは、窒素濃度が100%の雰囲気下でコロナ放電処理を行う表面処理のことである。
【0041】
また、EC処理とは、通常の空気雰囲気下でコロナ放電処理を行う表面処理のことである。
【0042】
フィルムの少なくとも一方の表面の表面窒素濃度N/Cを、1.0×10−3以上とするためには、NE処理によるコロナ放電処理またはCE処理によるコロナ放電処理、EC処理によるコロナ放電処理などを施す際の処理強度を、1〜100W・min/mとすることが好ましく、5〜50W・min/mとすることがより好ましく、さらに好ましくは10〜45W・min/mである。
【0043】
フィルムの少なくとも一方の表面の表面窒素濃度N/Cを、1.0×10−3以上とするためには、上述の特定のコロナ放電処理に加えて、さらに、ガス処理、プラズマ処理、アルカリ処理、電子線放射処理、真空紫外線処理などの表面処理を必要に応じて施してもよい。
【0044】
またフィルムの少なくとも一方の表面の表面窒素濃度N/Cを、5.5×10−3以上とするためには、NE処理で、かつ、コロナ放電処理強度を、5W・min/m以上とする方法が好ましい。
【0045】
なお、表面窒素濃度N/Cの測定は、XPS法による元素分析で行うことができる。XPS測定装置は、VG社製ESCALAB220iXLなどを用いることができる。詳細は後述する。
(濡れ張力)
本発明のポリ乳酸系フィルムは、面Aの濡れ張力が30mN/m以上であることが好ましい。濡れ張力が30mN/m以上である場合、アルミニウムをはじめとする無機物からなる蒸着層との密着性が向上するために好ましい。濡れ張力は35mN/m以上であることがより好ましく、40mN/m以上であることがさらに好ましい。濡れ張力は大きければ大きいほど好ましいが、無機物からなる蒸着層の膜密着性の観点からは、上限は100mN/m以下程度で十分である。濡れ張力は、例えばコロナ放電処理等の表面処理によって制御できる。濡れ張力を30mN/m以上とするには、コロナ放電処理強度を5W・min/m以上とすることが好ましい。
(無機物からなる蒸着層)
本発明のポリ乳酸系フィルムは、面A(表面窒素濃度N/Cが、1.0×10−3以上の面)上に無機物からなる蒸着層を有することが好ましい。面Aに無機物からなる蒸着層を設けることで、バリア性に優れ、さらに蒸着層の密着性にも優れるので、ガスバリア包装材などに好適に使用することができる。
【0046】
蒸着層に用いられる無機物としては、金属または金属酸化物を挙げることができる。そしてこのような金属または金属酸化物としては、アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化セリウム、酸化カルシウム、ダイアモンド状炭素膜、あるいはそれらの混合物のいずれかからなることが好ましい。特にアルミニウムの蒸着層は、経済性、バリア性能に優れていることから、より好ましい。
【0047】
また、無機物からなる蒸着層の作製方法としては、真空蒸着法、EB蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などの物理的蒸着法、プラズマCVDなど各種化学蒸着法などを用いることができるが、生産性の観点からは真空蒸着法が特に好ましく用いられる。
【0048】
本発明のポリ乳酸系フィルムは、包装用フィルムに使用するという観点から、5μm以上50μm以下であることが好ましい。ポリ乳酸系フィルムが単層構成の場合は、層A自体の厚みが上述の厚み範囲であることが好ましい。層Aを有する積層構成の場合は、積層構成のポリ乳酸系フィルム自体が上述の厚み範囲であることが好ましい。そして積層構成の場合、層A自体の厚みは0.5μm以上30μm以下、好ましくは1μm以上10μm以下であることが好ましい。
【実施例】
【0049】
各種特性の測定・評価法を以下に記す。
(表面窒素濃度N/Cの測定)
表面窒素濃度N/Cの測定は、X線光電子分光法(XPS法)による元素分析において、炭素原子と窒素原子のピーク面積比を用いて定量した。
つまりXPS法による元素分析においては、ピーク面積は原子の数を示すので、炭素原子と窒素原子のピーク面積の比によって、炭素原子数に対する窒素原子数の比を求めることができる。
【0050】
XPS測定装置は、VG社製ESCALAB220iXLを用いた。測定条件は、励起X線にmonochromatic Al Kα1,2 線(1486.6 eV)を用い、X 線径は1mm、試料表面に対する検出器の傾き(光電子脱出角度という)は90 °とした。
【0051】
上記の装置、測定条件で、超高真空中においた試料表面にX線を照射し、表面から放出される光電子をアナライザーで検出する。光電子が物質中を進むことができる長さ(平均自由行程)が数nm であることから、本分析手法における検出深さは数nm となる。物質中の束縛電子の結合エネルギー値から表面の元素情報が得られ、また各ピークのエネルギーシフトから価数や結合状態に関する情報が得られる。さらにピーク面積比を用いて定量することができる。データ処理はスムージングを行い、横軸補正はC1sメインピークを284.6eVとした。Nは窒素のピーク面積を意味し、Cは炭素のピーク面積を意味し、炭素を1とした時の窒素の原子数比をN/Cとした。
(剥離試験)
蒸着フィルムの蒸着面上に、ポリウレタン系接着剤を用いて無延伸プロピレンフィルム(CPP)(東レ合成フィルム(株)製T3931、60μm)を貼り合わせ、40℃で48時間エージング後1インチ幅に切断して、“テンシロン”を用いてCPPと蒸着無機薄膜の180゜剥離を剥離速度100mm/分で行った。ドライ(25℃、50%RH雰囲気下)での剥離強度を測定した。3回測定の平均を剥離強度(g/in)とした。
(質量平均分子量)
ここでいう質量平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)でクロロホルム溶媒にて測定を行い、ポリメチルメタクリレート換算法により計算した分子量をいう。
(全光線透過率)
全光線透過率の測定は、直読式ヘイズメーター HGM−2DP(スガ試験機器製作所)を用いてJIS K7105 A法(1981)に従って、測定した。測定は1回のみ行なった。
(光学濃度)
光学濃度計(グレタグマクベス社製TR927)を用い、次式より算出した。試料に入射する投射光の強度Iと、その試料を通過した透過光の強度Iの比、透過率の逆数の常用対数で表わす。
【0052】
光学濃度(OD)=log(I/I)
本実施例で用いたポリ乳酸系樹脂、結晶性樹脂は次のとおりにして得られた。
(結晶融解熱量(ΔHm))
示差走査熱量計としてセイコーインスツルメンツ社製DSC(RDC220)、データ解析装置として同社製ディスクステーション(SSC/5200)を用いた。試料5mgをアルミニウム製受皿にセットし、25℃から昇温速度20℃/分で240℃まで昇温し、当該再昇温過程において測定される結晶融解ピークの面積から求めた。
(濡れ張力)
JIS K6768(1999)に準じて、25℃、65%RHの条件下で測定した。
(平均D体量1mol%のポリ乳酸系樹脂の重合法)
L−ラクチド98重量部およびDL−ラクチド2重量部に対しオクチル酸錫を0.1重量部、ラウリルアルコールを0.1重量部混合し、攪拌装置付きの反応容器中で、窒素雰囲気中190℃で3時間重合し、さらに二軸混練押出し機にてチップ化して平均D体量1mol%のポリ乳酸系樹脂を得た。PMMA換算の質量平均分子量は19万であった。
(平均D体量2mol%のポリ乳酸系樹脂の重合法)
L−ラクチド96重量部およびDL−ラクチド4重量部に対しオクチル酸錫を0.1重量部、ラウリルアルコールを0.1重量部混合し、攪拌装置付きの反応容器中で、窒素雰囲気中190℃で3時間重合し、さらに二軸混練押出し機にてチップ化して平均D体量2mol%のポリ乳酸系樹脂を得た。PMMA換算の質量平均分子量は19万であった。
(平均D体量6mol%のポリ乳酸系樹脂の重合法)
L−ラクチド88重量部およびDL−ラクチド12重量部に対しオクチル酸錫を0.1重量部、ラウリルアルコールを0.1重量部混合し、攪拌装置付きの反応容器中で、窒素雰囲気中190℃で3時間重合し、さらに二軸混練押出し機にてチップ化して平均D体量6mol%のポリ乳酸系樹脂を得た。PMMA換算の質量平均分子量は19万であった。
(平均D体量12mol%のポリ乳酸系樹脂の重合法)
L−ラクチド76重量部およびDL−ラクチド24重量部に対しオクチル酸錫を0.1重量部、ラウリルアルコールを0.1重量部混合し、攪拌装置付きの反応容器中で、窒素雰囲気中190℃で3時間重合し、さらに二軸混練押出し機にてチップ化して平均D体量12mol%のポリ乳酸系樹脂を得た。PMMA換算の質量平均分子量は19万であった。
[実施例1]
平均D体量12mol%のポリ乳酸系樹脂を、50℃、24時間、5torrの真空下で減圧乾燥した後、押出機に供給し、Tダイ口金温度200℃でフィルム状に押し出し、10℃に冷却したドラム上にキャストして無配向フィルムを作製した。
【0053】
この無配向フィルムをロール式延伸機にて長手方向に、温度70℃で3.0倍延伸した。この一軸配向フィルムをいったん冷却ロール上で冷却した後、両端をクリップで把持してテンター内に導き、幅方向に温度90℃で8.0倍延伸した。続いて定長下、温度120℃で10秒間熱処理後、幅方向に10%の弛緩処理を施し、厚さ20μmの二軸配向ポリ乳酸系フィルムを得た。全光線透過率は95%であった。
【0054】
得られたフィルムを窒素雰囲気下、表面処理強度30W・分/mで片面にコロナ放電処理(NE処理)を施して巻き取った。
【0055】
フィルム走行装置を具備した真空蒸着装置内にフィルムロールをセット、1.00×10−2Paの高減圧状態にした後に、20℃の冷却金属ドラムを介して走行させ、アルミニウム金属を加熱蒸発させ蒸着薄膜層を形成し、光学濃度(以下ODとする)は2.5となるよう制御した。
【0056】
このようにして得られたアルミ蒸着層を有するポリ乳酸系フィルムのアルミ膜剥離試験を行った。
【0057】
また、アルミ蒸着層を形成する前であり、且つコロナ放電処理後の処理表面のXPS測定結果はN/C=10.0×10−3であった。蒸着したアルミが強固にフィルムに密着していた。
[実施例2]
平均D体量6mol%のポリ乳酸系樹脂を使用した以外は、実施例1と同様にしてフィルムを得た。ODは2.7であり、全光線透過率は92%であった。
【0058】
処理表面のXPS測定結果はN/C=10.5×10−3であった。剥離試験の結果は355g/inで、蒸着したアルミが強固にフィルムに密着していた。
[実施例3]
平均D体量2mol%のポリ乳酸系樹脂を使用した以外は、実施例1と同様にしてフィルムを得た。ODは2.3であり、全光線透過率は90%であった。
【0059】
処理表面のXPS測定結果はN/C=10.3×10−3であった。剥離試験の結果は350g/inで、蒸着したアルミが強固にフィルムに密着していた。
[実施例4]
表面処理強度9W・分/mで処理した以外は、実施例1と同様にしてフィルムを得た。ODは2.7であり、全光線透過率は95%であった。
【0060】
処理表面のXPS測定結果はN/C=5.8×10−3であった。剥離試験の結果は210g/inで、蒸着したアルミが強固にフィルムに密着していた。
[実施例5]
表面処理強度50W・分/mで処理した以外は、実施例1と同様にしてフィルムを得た。ODは2.6であり、全光線透過率は95%であった。
【0061】
処理表面のXPS測定結果はN/C=19.0×10−3であった。剥離試験の結果は388g/inで、蒸着したアルミが強固にフィルムに密着していた。
[実施例6]
平均D体量1mol%のポリ乳酸系樹脂を、100℃、5時間、5torrの真空下で減圧乾燥した後、押出機に供給し、Tダイ口金温度200℃でフィルム状に押し出し、10℃に冷却したドラム上にキャストして無配向フィルムを作製した。
【0062】
この無配向フィルムをロール式延伸機にて長手方向に、温度85℃で3.0倍延伸した。この一軸配向フィルムをいったん冷却ロール上で冷却した後、両端をクリップで把持してテンター内に導き、幅方向に温度80℃で3.0倍延伸した。続いて定長下、温度140℃で10秒間熱処理後、幅方向に10%の弛緩処理を施し、厚さ20μmの二軸配向ポリ乳酸系フィルムを得た。全光線透過率は89%であった。
【0063】
得られたフィルムを窒素雰囲気下、表面処理強度30W・分/mで片面にコロナ放電処理(NE処理)を施して巻き取った。
【0064】
フィルム走行装置を具備した真空蒸着装置内にフィルムロールをセット、1.00×10−2Paの高真空状態にした後に、20℃の冷却金属ドラムを介して走行させ、アルミニウム金属を加熱蒸発させ蒸着薄膜層を形成し、光学濃度(以下ODとする)は2.5となるよう制御した。
【0065】
このようにして得られたアルミニウム蒸着層を有するポリ乳酸系フィルムのアルミニウム膜剥離試験を行った。
【0066】
また、アルミニウム蒸着層を形成する前であり、且つコロナ放電処理後の処理表面のXPS測定結果はN/C=9.8×10−3であった。蒸着したアルミニウムはフィルムに密着していた。
[実施例7]
平均D体量12mol%のポリ乳酸系樹脂を、50℃、24時間、5torrの真空下で減圧乾燥した後、押出機に供給し、Tダイ口金温度200℃でフィルム状に押し出し、10℃に冷却したドラム上にキャストして無配向フィルムを作製した。
【0067】
この無配向フィルムをロール式延伸機にて長手方向に、温度85℃で3.0倍延伸した。この一軸配向フィルムをいったん冷却ロール上で冷却した後、両端をクリップで把持してテンター内に導き、幅方向に温度80℃で3.0倍延伸した。続いて定長下、温度140℃で10秒間熱処理後、幅方向に10%の弛緩処理を施し、厚さ20μmの二軸配向ポリ乳酸系フィルムを得た。全光線透過率は89%であった。
【0068】
得られたフィルムをCO/N=1/4の組成である炭酸ガスおよび窒素混合ガスの雰囲気下、表面処理強度30W・分/mで片面にコロナ放電処理(CE処理)を施して巻き取った。
【0069】
フィルム走行装置を具備した真空蒸着装置内にフィルムロールをセット、1.00×10−2Paの高真空状態にした後に、20℃の冷却金属ドラムを介して走行させ、アルミニウム金属を加熱蒸発させ蒸着薄膜層を形成し、光学濃度(以下ODとする)は2.5となるよう制御した。
【0070】
このようにして得られたアルミニウム蒸着層を有するポリ乳酸系フィルムのアルミニウム膜剥離試験を行った。
【0071】
また、アルミニウム蒸着層を形成する前であり、且つコロナ放電処理後の処理表面のXPS測定結果はN/C=6.9×10−3であった。蒸着したアルミニウムはフィルムに強固に密着していた。
[実施例8]
フィルムの表面処理を、空気雰囲気下、表面処理強度30W・分/mで片面にコロナ放電処理(EC処理)を施して行った以外は、実施例7と同様にしてフィルムを得た。
【0072】
処理表面のXPS測定結果はN/C=1.3×10−3であった。剥離試験の結果は45g/inで、蒸着したアルミニウムはフィルムに密着していた。
[実施例9]
平均D体量1mol%のポリ乳酸系樹脂と、平均D体量12mol%のポリ乳酸系樹脂を質量比50/50となるように混合し、50℃、24時間、5torrの真空下で減圧乾燥したものを用いた以外は、実施例6と同様にしてフィルムを得た。
【0073】
処理表面のXPS測定結果はN/C=10.8×10−3であった。剥離試験の結果は360g/inで、蒸着したアルミニウムはフィルムに強固に密着していた。
[実施例10]
平均D体量6mol%のポリ乳酸系樹脂と、平均D体量12mol%のポリ乳酸系樹脂を質量比50/50となるように混合し、50℃、24時間、5torrの真空下で減圧乾燥したものを用いた以外は、実施例6と同様にしてフィルムを得た。
【0074】
処理表面のXPS測定結果はN/C=11×10−3であった。剥離試験の結果は371g/inで、蒸着したアルミニウムはフィルムに強固に密着していた。
【0075】
[比較例1]
表面処理を施さなかった以外は、実施例1と同様にしてフィルムを得た。ODは2.5であり、全光線透過率は95%であった。
【0076】
処理表面のXPS測定結果は表面処理を施さなかったため、表面の窒素成分は観測されなかった。剥離試験の結果は27g/inで、蒸着したアルミは容易にフィルムから剥離した。
[実施例11]
表面処理強度2W・分/mで処理した以外は、実施例1と同様にしてフィルムを得た。ODは2.0であり、全光線透過率は95%であった。
【0077】
処理表面のXPS測定結果はN/C=5.1×10−3であった。剥離試験の結果は53g/inで、蒸着したアルミはフィルムに密着していた。
[実施例12]
平均D体量12mol%のポリ乳酸系樹脂を使用し、さらに、表面処理強度60W・分/mでEC処理した以外は、実施例1と同様にしてフィルムを得た。ODは3.3であり、全光線透過率は94%であった。
【0078】
処理表面のXPS測定結果はN/C=3.3×10−3であった。剥離試験の結果は46g/inで、蒸着したアルミはフィルムに密着していた。
[比較例2]
フィルムの表面処理を、空気雰囲気下、表面処理強度9W・分/mで片面にコロナ放電処理(EC処理)を施して行った以外は、実施例7と同様にしてフィルムを得た。
【0079】
処理表面のXPS測定結果はN/C=0.7×10−3であった。剥離試験の結果は29g/inで、蒸着したアルミは容易にフィルムから剥離した。
【0080】
【表1−1】

【0081】
【表1−2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルムの少なくとも一方の表面の炭素原子数に対する窒素原子数の比(以下、表面の炭素原子数に対する窒素原子数の比を表面窒素濃度N/Cとする)が、1.0×10−3以上であるポリ乳酸系フィルム(以下、表面窒素濃度N/Cが1.0×10−3以上の表面を、面Aとする。)。
【請求項2】
前記面Aを有する層を層Aとした際に、
層AのDSCの昇温測定における結晶融解熱量(ΔHm)が、30J/g以下である、請求項1に記載のポリ乳酸系フィルム。
【請求項3】
前記面Aの表面窒素濃度N/Cが、5.5×10−3以上である、請求項1に記載のポリ乳酸系フィルム。
【請求項4】
前記面Aを有する層を層Aとした際に、
層Aが、層Aの全成分100質量%において、50質量%以上100質量%以下のポリ乳酸系樹脂を含み、
該ポリ乳酸系樹脂の平均D体量が、2mol%以上98mol%以下であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のポリ乳酸系フィルム。
【請求項5】
前記面A上に無機物からなる蒸着層を有する、請求項1〜4のいずれかに記載のポリ乳酸系フィルム。

【公開番号】特開2010−248490(P2010−248490A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−63667(P2010−63667)
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】