説明

マイクロミラーデバイス

【課題】減圧封止環境下で好適に使用可能なマイクロミラーデバイスを提供する。
【解決手段】マイクロミラーデバイス100は、可動ミラー112を有するマイクロミラーチップ110と、マイクロミラーチップ110に対向して配置される電極基板130と、マイクロミラーチップ110と電極基板130との間に配置されてマイクロミラーチップ110と電極基板130とを接合するハンダバンプ150とを有している。マイクロミラーチップ110はまた4つの薄膜永久磁石124を有している。電極基板130はまたシート状永久磁石138を有している。シート状永久磁石138と薄膜永久磁石124は互いに引き合うことにより、マイクロミラーチップ110と電極基板130とハンダバンプ150が相互に密着される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可動ミラーを有するマイクロミラーデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
特開2005−316043号公報は、可動ミラーを有するマイクロミラーデバイスのひとつを開示している。このマイクロミラーデバイスは、可動ミラーを有するマイクロミラーチップと、駆動電極を有する電極基板とを有している。マイクロミラーチップはハンダバンプを使用して電極基板に実装される。具体的には、電極基板に形成したハンダバンプ上にマイクロミラーチップを載せ、ハンダバンプを溶融し硬化させることにより実装される。マイクロミラーチップと電極基板は、溶融したハンダバンプの表面張力によるセルフアライメント作用によって高精度に位置決めされる。また、可動ミラーと駆動電極の間隔は、ハンダバンプの溶融時の変形量を制御することにより調節される。
【0003】
ハンダバンプを溶融する際、マイクロミラーチップと電極基板は安定に仮固定されていることが望まれる。このため、マイクロミラーチップと電極基板は、通常、フラックスなどの粘着保持作用を持つ有機材料を使用して仮固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−316043号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
マイクロミラーデバイスは、たとえば動作特性の向上のために、減圧封止した環境下で使用されることがある。このような使用形態では、減圧封止した環境の変化はマイクロミラーデバイスの動作特性を劣化させるため、減圧封止した環境はなるべく一定に保たれることが望まれる。
【0006】
仮固定に有機材料を使用したマイクロミラーデバイスは、減圧封止した環境に配置された場合、有機材料がガスを発生させる。発生したガスは、減圧封止した環境の圧力を変化させ、マイクロミラーデバイスの動作特性を劣化させてしまう。このような理由から、仮固定に有機材料を使用したマイクロミラーデバイスは減圧封止した環境下での使用には適していない。
【0007】
また単に有機材料を使用せずにマイクロミラーチップを電極基板に実装する場合には、マイクロミラーチップと電極基板の間におけるハンダバンプと電極の密着不足により安定した仮固定が得られない。このため、実装工程中の搬送時の振動や衝撃によってマイクロミラーチップと電極基板が容易に位置ずれを起こしてしまう。また、良好な熱の伝導が得られず、ぬれ不良が発生するといった問題が生じ、結局、マイクロミラーチップを電極基板に安定して高精度に実装することが難しい。
【0008】
本発明は、このような実状を考慮して成されたものであり、その目的は、減圧封止した環境下において好適に使用可能なマイクロミラーデバイスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によるマイクロミラーデバイスは、可動ミラーを有する第1の基板と、前記第1の基板に対向して配置される第2の基板と、前記第1の基板と前記第2の基板の間に配置されて前記第1の基板と前記第2の基板とを接合するハンダバンプとを備えている。前記第1の基板は第1の磁石を有し、前記第2の基板は第2の磁石を有している。前記第1の磁石と前記第2の磁石は互いに引き合って前記第1の基板と前記第2の基板と前記ハンダバンプとを相互に密着させる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、減圧封止した環境下において好適に使用可能なマイクロミラーデバイスが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1の実施の形態のマイクロミラーデバイスの分解斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態のマイクロミラーデバイスの上面図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態の電極基板の上面図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態の仮固定時のマイクロミラーデバイスのA−A線に沿って破断した接合断面図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態の実装後のマイクロミラーデバイスのA−A線に沿って破断した接合断面図である。
【図6】パッケージ内に減圧封止された本発明の第1の実施の形態のマイクロミラーデバイスの断面図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態のマイクロミラーデバイスの上面図である。
【図8】本発明の第2の実施の形態の電極基板の上面図である。
【図9】本発明の第2の実施の形態の仮固定時のマイクロミラーデバイスのB−B線に沿って破断した接合断面図である。
【図10】本発明の第2の実施の形態の実装後のマイクロミラーデバイスのB−B線に沿って破断した接合断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0013】
<第1の実施形態>
本実施形態によるマイクロミラーデバイスを図1〜図6に示す。
【0014】
(構成)
マイクロミラーデバイス100は、第1の基板であるマイクロミラーチップ110と、マイクロミラーチップ110に対向して配置される第2の基板である電極基板130と、マイクロミラーチップ110と電極基板130との間に配置されてマイクロミラーチップ110と電極基板130とを接合するハンダバンプ150とを有している。
【0015】
マイクロミラーチップ110は熱伝導性の高いSiから構成され、電極基板130はSiやガラスなどから構成されている。
【0016】
マイクロミラーチップ110は、可動ミラー112と、可動ミラー112を取り囲んでいるミラー支持部114と、可動ミラー112とミラー支持部114とを機械的・連続的に接続している一対のヒンジ部116とを有している。一対のヒンジ部116は、可動ミラー112の両側に位置し、可動ミラー112の中央を通る一本の直線上に位置している。マイクロミラーチップ110は、たとえば、10〜20μmという非常に薄い厚さに作られている。ヒンジ部116は弾性的にねじり変形可能であり、これにより可動ミラー112はミラー支持部114に対してヒンジ部116を軸にして傾斜可能である。すなわち可動ミラー112は揺動ミラーである。
【0017】
電極基板130は、マイクロミラーチップ110に対向する面に設けられた、可動ミラー112を静電駆動するための一対の駆動電極132を有している。駆動電極132は、マイクロミラーチップ110が電極基板130に対して位置決めされたときに、可動ミラー112に対向するように配置されている。駆動電極132は、配線142を介して、電極基板130の端部に設けられた外部接続パッド144と電気的に接続されている。
【0018】
マイクロミラーチップ110は、電極基板130に対向する面に設けられた4つの接合膜122を有している。接合膜122は、AlやNiなどの金属から構成される。接合膜122の最上面には酸化防止用のAu膜が設けられている。接合膜122は可動ミラー112と電気的に接続されている。接合膜122は円形形状をしている。
【0019】
ハンダバンプ150は接合膜122の中央に接合されている。ハンダバンプ150は、所望の値に制御された均一な高さを有している。ハンダバンプ150は、接合膜122と電気的に接続されている。
【0020】
マイクロミラーチップ110はまた、電極基板130に対向する面に接合膜122をそれぞれ取り囲むように設けられた4つの輪帯状の薄膜永久磁石124を有している。薄膜永久磁石124は、たとえばネオジム磁石で構成される。薄膜永久磁石124は、ハンダバンプ150の溶融温度に加熱されたときに磁力が非常に低下する(または実質的になくなる)物質で構成されている。
【0021】
マイクロミラーチップ110はさらに、電極基板130に対向する面の反対側の面に設けられた4つの加熱部材126を有している。加熱部材126は、それぞれ、ミラー支持部114を介して、接合膜122および薄膜永久磁石124に向き合っている。加熱部材126は、熱伝導性の良い物質で構成され、たとえば、Alなどの金属薄膜で構成される。加熱部材126は、ミラー支持部114に形成された貫通穴を介して薄膜永久磁石124と接触している。
【0022】
電極基板130は、ハンダバンプ150を位置決めするための位置決め部134を有している。位置決め部134は、たとえば、ハンダバンプ150が嵌まる四角錐形状のテーパー溝で構成されている。位置決め部134の形態は、これに限定されるものではなく、ハンダバンプ150を位置決めする機能を果たしさえすれば、どのような形状を有していてもよい。たとえば、位置決め部134は、他の角錐形状のテーパー溝や円錐形状のテーパー溝で構成されてもよい。さらには、位置決め部134は、テーパー溝に限らず、任意の開口形状の凹部や貫通穴で構成されてもよい。
【0023】
電極基板130はさらに、位置決め部134に設けられた接合膜136を有している。接合膜136は、AlやNiなどの金属から構成される。接合膜136の最上面には酸化防止用のAu膜が設けられている。接合膜136は、配線146を介して、電極基板130の端部に設けられた外部接続パッド148と電気的に接続されている。
【0024】
本実施形態では、位置決め部134がテーパー溝で構成され、接合膜136は位置決め部134(すなわちテーパー溝)を覆うように設けられている。しかし、接合膜136は、必ずしもこのように設けられている必要はない。位置決め部134が凹部や貫通穴で構成される場合には、接合膜136は位置決め部134(凹部や貫通穴)の周囲に設けられてもよい。
【0025】
電極基板130はまた、マイクロミラーチップ110に対向する面の反対側の面に接合されたシート状永久磁石138を有している。シート状永久磁石138は、ネオジム磁石などから構成される。シート状永久磁石138と薄膜永久磁石124は互いに引き合うように配置されている。シート状永久磁石138と薄膜永久磁石124は互いに対向して配置されている。
【0026】
図2に示すように、接合膜122は、それらの中心が可動ミラー112を囲む円Cの周上に位置するように配置されている。接合膜136もまた、図3に示すように、それらの中心が円Cの周上に位置するように配置されている。さらに、接合膜122と接合膜136は、マイクロミラーチップ110と電極基板130が互いに対向して配置されたときに、互いに対向するように配置されている。
【0027】
(作用)
マイクロミラーデバイス100は、たとえば100パスカル程度に減圧された酸素の少ない雰囲気中で組み立てられる。
【0028】
マイクロミラーチップ110に接合されたハンダバンプ150を、電極基板130の位置決め部134に嵌め合わせる。これにより、マイクロミラーチップ110と電極基板130は、図4に示すように、可動ミラー112と駆動電極132とが互いに対向するように位置決めされて仮固定される。ハンダバンプ150が均一な高さを有しているため、マイクロミラーチップ110と電極基板130の間隔は所望値となる。また、マイクロミラーチップ110に設けられた薄膜永久磁石124と電極基板130に設けられたシート状永久磁石138とが互いに引き合うことにより、ハンダバンプ150は接合膜136に常に密着される。つまり、マイクロミラーチップ110と電極基板130とハンダバンプ150が相互に密着される。
【0029】
加熱部材126に(図示しない)ヒーターヘッドを微小加重で接触させて加熱する。マイクロミラーチップ110が熱伝導性の高いSiから構成されているため、加熱部材126に供給された熱は良好に薄膜永久磁石124およびハンダバンプ150に伝わる。薄膜永久磁石124は加熱により磁力が低下していく。また、ハンダバンプ150が接合膜136に常に密着しているため、ヒーターヘッドの熱はハンダバンプ150を介して接合膜136にも良好に伝わる。ハンダバンプ150はハンダの融点以上の温度になると溶融して接合膜136と濡れる。
【0030】
薄膜永久磁石124は加熱されたことにより磁力が非常に低下する。また、マイクロミラーチップ110と電極基板130は、溶融したハンダバンプ150の表面張力によるセルフアライメント作用によって高精度に位置決めされる。
【0031】
ヒーターヘッドを加熱部材126から離してハンダバンプ150を冷却する。ハンダバンプ150はハンダの融点以下になると硬化する。その結果、図5に示すように、マイクロミラーチップ110と電極基板130とが十分な機械的強度をもって互いに接合される。
【0032】
マイクロミラーチップ110と電極基板130の間隔、したがって可動ミラー112と駆動電極132の間隔は、マイクロミラーチップ110の自重とハンダバンプ150の表面張力の釣り合う位置で正確に決まる。可動ミラー112と駆動電極132の間隔は、駆動電圧や可動ミラー112に要求される傾斜角度などの諸条件から決まる。言い換えれば、可動ミラー112と駆動電極132の間隔が最終的に所望値となるように、ハンダバンプ150の高さが決められる。
【0033】
マイクロミラーデバイス100は、動作速度の向上や動作安定性の向上などの動作特性の向上のために、たとえば図6に示すように、パッケージ170に収容されて封止される。パッケージ170は、セラミックス基板172と、封止蓋174とを有している。封止蓋174は光学窓176を備えている。マイクロミラーデバイス100はセラミックス基板172に固定される。マイクロミラーデバイス100の外部接続パッド144,148は、たとえばボンディングワイヤー182を介して、セラミックス基板172から突出している端子184と電気的に接続される。封止蓋174は、封止材178によってセラミックス基板172に固定される。これにより、パッケージ170の内部空間は減圧環境に保たれる。
【0034】
パッケージ170の端子184は(図示しない)駆動回路と電気的に接続される。これにより、駆動回路は、外部接続パッド144と配線142を介して駆動電極132と電気的に接続されるとともに、外部接続パッド148と配線146、接合膜136、ハンダバンプ150、接合膜122を介して可動ミラー112と電気的に接続される。
【0035】
可動ミラー112を駆動するために、駆動電極132に駆動電圧が印加される。可動ミラー112は、接合膜122と電気的に接続されおり、接合膜122とハンダバンプ150と第三の接合膜136と配線146と外部接続パッド148を介して接地電位に維持される。一方の駆動電極132に駆動電圧が印加されると、その駆動電極132と可動ミラー112との間に静電引力が発生する。この静電引力によって可動ミラー112はヒンジ部116を軸として傾斜する。可動ミラー112の傾斜角は駆動電圧の大きさを調整することによって調整される。また、駆動電圧を印加する駆動電極132を交互に切り換えると、可動ミラー112は、ヒンジ部116を軸に揺動される。
【0036】
(効果)
本実施形態では、マイクロミラーチップ110が電極基板130に位置決めされたとき、磁力によりハンダバンプ150が接合膜136に密着される。このため、フラックスなどの有機材料を使用せずとも、マイクロミラーチップ110と電極基板130が安定に仮固定することができ、ハンダバンプ150を介し接合膜136に熱が良好に伝わることから、ハンダバンプ150が接合膜136に濡れひろがり、マイクロミラーチップ110と電極基板130とを高精度に実装可能となる。したがって、本実施形態のマイクロミラーデバイス100は、減圧封止された環境下において好適に使用することが可能である。
【0037】
<第2の実施形態>
本実施形態によるマイクロミラーデバイスを図7〜図10に示す。図7〜図10において、図1〜図5に示した部材と同一の参照符号を付した部材は同様の部材であり、その詳しい説明は省略する。
【0038】
(構成)
マイクロミラーデバイス200は、第1の基板であるマイクロミラーチップ210と、マイクロミラーチップ210に対向して配置される電極基板230と、マイクロミラーチップ210と電極基板230との間に配置されてマイクロミラーチップ210と電極基板230とを接合するハンダバンプ150とを有している。
【0039】
マイクロミラーチップ210は、第1の実施の形態のマイクロミラーチップ110から加熱部材126を省いた構成と実質的に同じである。
【0040】
ハンダバンプ150は、マイクロミラーチップ210の接合膜122の中央に接合されている。
【0041】
電極基板230は、第1の実施の形態の電極基板130と同様に、Siやガラスなどから構成されている。
【0042】
電極基板230は、マイクロミラーチップ210と対向する面に設けられた、可動ミラー112を静電駆動するための一対の駆動電極132を有している。駆動電極132の詳細は、第1の実施形態で説明した通りである。
【0043】
電極基板230はまた、マイクロミラーチップ210と対向する面に設けられた4つの接合膜232を有している。接合膜232は、マイクロミラーチップ210が電極基板230に対して位置決めされたときに、接合膜122に対向するように配置されている。接合膜232の最上面には酸化防止用のAu膜が設けられている。接合膜232は、それぞれ、配線242を介して、電極基板230の端部に設けられた外部接続パッド244と電気的に接続されている。
【0044】
電極基板230はさらに、マイクロミラーチップ210と対向する面に設けられた4つの電磁コイル234とを有している。電磁コイル234は電磁石を構成している。電磁コイル234は、マイクロミラーチップ210が電極基板230に対して位置決めされたときに、薄膜永久磁石124に対向するように配置されている。接合膜232の周囲をほぼ一周している。電磁コイル234の両端は互いに離間していて配線242が通るすき間を与えている。電磁コイル234の両端は、それぞれ、配線246を介して、電極基板230の端部に設けられた外部接続パッド248と電気的に接続されている。
【0045】
電極基板230はまたさらに、接合膜232の四隅に設けられた、間隔位置決め部材236を有している。間隔位置決め部材236は、ハンダバンプ150の高さ以下の所望の高さを有している。
【0046】
図7に示すように、接合膜122は、それらの中心が可動ミラー112を囲む円Cの周上に位置するように配置されている。接合膜232もまた、図8に示すように、それらの中心が円Cの周上に位置するように配置されている。さらに、接合膜122と接合膜232は、マイクロミラーチップ210と電極基板230が互いに対向して配置されたときに、互いに対向するように配置されている。
【0047】
(作用)
マイクロミラーデバイス200は、たとえば100パスカル程度に減圧された酸素の少ない雰囲気中で組み立てられる。
【0048】
マイクロミラーチップ210の接合膜122に接合されたハンダバンプ150を、それぞれ、電極基板230の接合膜232の四隅に設けられた間隔位置決め部材236の間に嵌め合わせる。これにより、マイクロミラーチップ210と電極基板230は、図9に示すように、可動ミラー112と駆動電極132とが互いに対向するように位置決めされて仮固定される。
【0049】
マイクロミラーチップ210の薄膜永久磁石124との間に引力が生じるように、外部接続パッド248と配線246を介して電磁コイル234に電流を供給する。これにより、電磁コイル234に電流を供給している間、ハンダバンプ150が接合膜232に常に密着される。つまり、マイクロミラーチップ210と電極基板230とハンダバンプ150が相互に密着される。
【0050】
たとえばミラー支持部114に(図示しない)ヒーターヘッドを微小加重で接触させて加熱する。マイクロミラーチップ210が熱伝導性の高いSiから構成されているため、ミラー支持部114に供給された熱は良好に薄膜永久磁石124およびハンダバンプ150に伝わる。薄膜永久磁石124は加熱により磁力が低下していく。また、ハンダバンプ150が接合膜232に常に密着しているため、ヒーターヘッドの熱はハンダバンプ150を介して接合膜232にも良好に伝わる。ハンダバンプ150はハンダの融点以上の温度になると溶融して接合膜232と濡れる。
【0051】
薄膜永久磁石124は加熱されたことにより磁力が非常に低下する。電磁コイル234への電流の供給を停止する。ミラー支持部114は、溶融したハンダバンプ150の表面張力によるセルフアライメント作用によって間隔位置決め部材236に対して高精度に位置決めされる。またマイクロミラーチップ210が沈み込み、その沈み込みは、図10に示すように、間隔位置決め部材236と接触して止まる。これにより、マイクロミラーチップ210と電極基板230の間隔、したがって可動ミラー112と駆動電極132の間隔が定まる。
【0052】
ヒーターヘッドをミラー支持部114から離してハンダバンプ150を冷却する。ハンダバンプ150はハンダの融点以下になると硬化する。その結果、マイクロミラーチップ210と電極基板230とが十分な機械的強度をもって互いに接合される。
【0053】
ここでは、ヒーターヘッドをミラー支持部114に接触させて加熱する例を述べたが、電極基板230が熱伝導性の良いSiで構成されている場合には、ミラー支持部114の代わりに電極基板230にヒーターヘッドを接触させて加熱してもよい。
【0054】
マイクロミラーデバイス200は、たとえば、第1の実施の形態のマイクロミラーデバイス100と同様に、図5に示したようなパッケージ170に収容されて減圧封止される。マイクロミラーデバイス200の外部接続パッド144,244は、たとえばボンディングワイヤー182を介して端子184と電気的に接続される。
【0055】
パッケージ170の端子184は(図示しない)駆動回路と電気的に接続される。これにより、駆動回路は、外部接続パッド144と配線142を介して駆動電極132と電気的に接続されるとともに、外部接続パッド244と配線242、接合膜232、ハンダバンプ150、接合膜122を介して可動ミラー112と電気的に接続される。
【0056】
マイクロミラーデバイス200の駆動の詳細は、第1の実施形態のマイクロミラーデバイス100の駆動と同様である。
【0057】
(効果)
本実施形態では、マイクロミラーチップ210が電極基板230に位置決めされたとき、電磁力によりハンダバンプ150が接合膜232に密着される。このため、フラックスなどの有機材料を使用せずとも、マイクロミラーチップ210と電極基板230を安定に仮固定することができ、ハンダバンプ150を介し接合膜232に熱が良好に伝わることから、ハンダバンプ150が接合膜232に濡れひろがり、マイクロミラーチップ210と電極基板230とを高精度に実装可能となる。したがって、本実施形態のマイクロミラーデバイス200は、減圧封止された環境下において好適に使用することが可能である。また、仮固定に電磁力を利用しているので、薄膜永久磁石124の材質に関わらず、マイクロミラーチップ210と電極基板230にかかる力を細かく制御することが可能である。さらに、可動ミラー112と駆動電極132の間隔が、マイクロミラーチップ210と間隔位置決め部材236の接触によって決まるので、高い精度で制御される。
【0058】
これまで、図面を参照しながら本発明の実施形態を述べたが、本発明は、これらの実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において様々な変形や変更が施されてもよい。
【0059】
第1の実施形態の各要素と第2の実施形態の各要素とが適宜組み合わされてもよい。たとえば、第1の実施形態の位置決め部134に代えて第2の実施形態の間隔位置決め部材236が設けられたり、第2の実施形態の間隔位置決め部材236に代えて第2の実施形態の位置決め部134が設けられたりしてもよい。また、第1の実施形態のシート状永久磁石138に代えて第2の実施形態の電磁コイル234が設けられたり、第2の実施形態の電磁コイル234に代えて第2の実施形態のシート状永久磁石138が設けられたりしてもよい。さらに、薄膜永久磁石124に代えて電磁コイル224が設けられてもよい。なお本発明は、有機材料を使用せずに実装するものであり、フラックス残渣除去する洗滌が行えない脆弱性を有するデバイスの実装において有効である。
【符号の説明】
【0060】
100…マイクロミラーデバイス、110…マイクロミラーチップ、112…可動ミラー、114…ミラー支持部、116…ヒンジ部、122…接合膜、124…薄膜永久磁石、126…加熱部材、130…電極基板、132…駆動電極、134…位置決め部、136…接合膜、138…シート状永久磁石、142…配線、144…外部接続パッド、146…配線、148…外部接続パッド、150…ハンダバンプ、170…パッケージ、172…セラミックス基板、174…封止蓋、176…光学窓、178…封止材、182…ボンディングワイヤー、184…端子、200…マイクロミラーデバイス、210…マイクロミラーチップ、224…電磁コイル、230…電極基板、232…接合膜、234…電磁コイル、236…間隔位置決め部材、242…配線、244…外部接続パッド、246…配線、248…外部接続パッド。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動ミラーを有する第1の基板と、
前記第1の基板に対向して配置される第2の基板と、
前記第1の基板と前記第2の基板の間に配置されて前記第1の基板と前記第2の基板とを接合するハンダバンプとを備え、
前記第1の基板は第1の磁石を有し、前記第2の基板は第2の磁石を有し、前記第1の磁石と前記第2の磁石は互いに引き合って前記第1の基板と前記第2の基板と前記ハンダバンプとを相互に密着させるマイクロミラーデバイス。
【請求項2】
前記第1の基板は、外部から供給される熱を前記第1の磁石に伝達する熱伝達部材をさらに有している請求項1に記載のマイクロミラーデバイス。
【請求項3】
前記第2の磁石は、電磁石で構成されている請求項1に記載のマイクロミラーデバイス。
【請求項4】
前記第2の磁石は、前記第1の磁石に対向して配置されている請求項1に記載のマイクロミラーデバイス。
【請求項5】
前記熱伝達部材は、熱伝導性の良い物質で構成され、前記第1の磁石に接触している請求項2に記載のマイクロミラーデバイス。
【請求項6】
前記電磁石は、前記第1の基板に対向する面に設けられた電磁コイルを有する請求項3に記載のマイクロミラーデバイス。
【請求項7】
前記ハンダバンプは前記第1の基板に接合され、前記第2の基板は前記ハンダバンプが嵌まるテーパー溝を有している請求項1〜請求項6のいずれかひとつに記載のマイクロミラーデバイス。
【請求項8】
前記ハンダバンプは前記第1の基板に接合され、前記第2の基板は、前記ハンダバンプが嵌まる互いに離間した複数の間隔位置決め部材を有している請求項1〜請求項6のいずれかひとつに記載のマイクロミラーデバイス。
【請求項9】
前記間隔位置決め部材は、高さが前記ハンダバンプの高さよりも低く、前記第1の基板と接触して前記第1の基板と前記第2の基板の間隔を定める請求項8に記載のマイクロミラーデバイス。
【請求項10】
前記第1の磁石は、ハンダバンプの融点温度に加熱されたときに磁力が低下する請求項1〜請求項6のいずれかひとつに記載のマイクロミラーデバイス。
【請求項11】
前記第1の基板と前記第2の基板は、それぞれ、前記ハンダバンプと接合する部分に、その表面にAu膜が設けられた接合膜を有している請求項1〜請求項6のいずれかひとつに記載のマイクロミラーデバイス。
【請求項12】
可動ミラーと第1の磁石とを備えた第1の基板と第2の磁石を備えた第2の基板とをハンダバンプを介在させて磁力によって互いに対向させて仮固定する工程と、
前記ハンダバンプと少なくとも前記第1の磁石とを加熱して前記ハンダバンプを溶融させるとともに少なくとも前記第1の磁石の磁力を低下させる工程と、
溶融した前記ハンダバンプを冷却して硬化させて前記第1の基板と前記第2の基板とを接合する工程とを有する製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−17791(P2011−17791A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−160980(P2009−160980)
【出願日】平成21年7月7日(2009.7.7)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】