説明

マイクロ揺動素子、マイクロ揺動素子アレイ、および光スイッチング装置

【課題】隣り合う素子における揺動主部について近接配置するのに適したマイクロ揺動素子、そのようなマイクロ揺動素子を含んでなるマイクロ揺動素子アレイ、および、そのようなマイクロ揺動素子を備える光スイッチング装置を提供する。
【解決手段】本発明のマイクロ揺動素子X1は、フレーム20と、揺動主部(11,11’)を有する揺動部10と、フレーム20および揺動部10を連結して揺動部10の揺動動作の軸心を規定する捩れ連結部40とを備える。フレーム20は、一対の延び部20Aを有する。一対の延び部20Aは、軸心A1の延び方向に離隔し、且つ、揺動動作の方向において空隙を介して揺動主部(11,11’)に対向して当該揺動主部に沿って延びる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微小な揺動部を有する例えばマイクロミラー素子、角速度センサ、加速度センサなどのマイクロ揺動素子、マイクロ揺動素子アレイ、および、マイクロミラー素子を含んで構成される光スイッチング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な技術分野において、マイクロマシニング技術により形成される微小構造を有する素子の応用化が図られている。そのような素子には、例えば、マイクロミラー素子や、角速度センサ、加速度センサなど、微小な揺動部を有するマイクロ揺動素子が含まれる。マイクロミラー素子は、例えば光通信技術や光ディスク技術の分野において、光反射機能を担う素子として利用される。角速度センサおよび加速度センサは、例えば、ビデオカメラやカメラ付き携帯電話の手振れ防止機能、カーナビゲーションシステム、エアバッグ開放タイミングシステム、車やロボット等の姿勢制御システムの用途で、利用される。このようなマイクロ揺動素子については、例えば下記の特許文献1〜3に記載されている。
【0003】
【特許文献1】特開2003−19700号公報
【特許文献2】特開2004−341364号公報
【特許文献3】特開2006−72252号公報
【0004】
図52から図54は、従来のマイクロ揺動素子の一例たるマイクロ揺動素子90を表す。図52は、マイクロ揺動素子90の平面図である。図53および図54は、各々、図52の線LIII−LIIIおよび線LIV−LIVに沿った断面図である。
【0005】
マイクロ揺動素子90は、揺動主部91と、これを囲むフレーム92と、これを囲むフレーム93と、揺動主部91およびフレーム92を連結する一対のトーションバー94と、フレーム92,93を連結する一対のトーションバー95とを備える。一対のトーションバー94は、揺動主部91の揺動動作の軸心B1を規定し、一対のトーションバー95は、フレーム92およびこれに伴う揺動主部91の揺動動作の軸心B2を規定し、軸心B1,B2は直交する。すなわち、マイクロ揺動素子90は、いわゆる二軸型の揺動素子である。
【0006】
このようなマイクロ揺動素子90が例えばマイクロミラー素子として構成される場合、揺動主部91上にミラー面91aが設けられ、揺動主部91が軸心B1まわりに回転変位するための駆動力を発生させる所定の第1アクチュエータ(図示略)が設けられ、また、フレーム92およびこれに伴う揺動主部91が軸心B2まわりに回転変位するための駆動力を発生させる所定の第2アクチュエータ(図示略)が設けられる。そして、両アクチュエータが適宜稼動することによって、揺動主部91が各軸心B1,B2まわりに所定程度に回転変位ないし揺動駆動される。このような揺動主部91の揺動駆動により、揺動主部91上に設けられたミラー面91aにて反射される光信号の反射方向が適宜切り換えられる。
【0007】
一方、マイクロ揺動素子90が角速度センサとして構成される場合、例えば、揺動主部91の軸心B1まわりの回転変位量に応じて静電容量が変化する、相対する一対の検出用キャパシタ電極(図示略)の各々が揺動主部91およびフレーム92に設けられ、また、フレーム92およびこれに伴う揺動主部91が軸心B2まわりに回転変位するための駆動力を発生させる所定のアクチュエータ(図示略)が設けられる。そして、アクチュエータが稼動してフレーム92およびこれに伴う揺動主部91が所定の振動数ないし周期で軸心B2まわりに揺動動作される。この振動状態において、揺動主部91に所定の角速度が作用すると、揺動主部91が軸心B1まわりに所定程度に回転変位し、検出用キャパシタ電極対間の静電容量が変化する。この静電容量変化に基づいて、揺動主部91の回転変位量が検出され、その検出結果に基づき、マイクロ揺動素子90ないし揺動主部91に作用する角速度が導出される。
【0008】
図55は、複数のマイクロ揺動素子90により構成されるマイクロ揺動素子アレイ90Aの平面図である。マイクロ揺動素子アレイ90Aでは、マイクロ揺動素子90の外側のフレーム93が共通化されたうえで、複数のマイクロ揺動素子90(一部省略)が、軸心B1の延び方向に一列に配されている。
【0009】
このようにフレーム93が共通化される場合であっても、マイクロ揺動素子アレイ90Aでは、隣り合う素子における揺動主部91どうしを充分に近接して配置することができない。マイクロ揺動素子アレイ90Aに含まれる各素子において、揺動主部91は、フレーム92から適当な距離を隔てて当該フレーム92の内郭内に収まるように配設されているからである。すなわち、軸心B1の延び方向において隣り合う素子における揺動主部91の間には、図56に示すように、二本のフレーム92どうしが機械的干渉や電気的干渉をするのを回避するために必要なスペースS1に、各フレーム92において揺動主部91に沿って延びる部分の全幅に相当するスペースS2と、各素子における揺動主部91およびフレーム92の間のスペースS3とを、和したスペースS0を、確保しなければならないからである。
【0010】
隣り合う素子における揺動主部91どうしを充分に近接配置することができないマイクロ揺動素子アレイ90Aでは、素子配列方向において充分に高い揺動主部91の占有比率を実現することができない場合があり、そのために、充分な高機能化を図ることができない場合がある。例えば、各マイクロ揺動素子90がマイクロミラー素子として構成されて、マイクロ揺動素子アレイ90Aが波長選択型光スイッチング装置に組み込まれるマイクロミラー素子アレイとして構成されている場合、素子配列方向における揺動主部91の占有比率が低いほど、マイクロ揺動素子アレイ90Aが全体として受けて各ミラー面91aにて反射する光信号について、損失が増大することが知られている。例えば、各マイクロ揺動素子90が角速度センサや加速度センサとして構成されて、マイクロ揺動素子アレイ90Aがセンシングデバイスとして構成されている場合、素子配列方向における揺動主部91の占有比率が低いほど、検出信号がノイズの影響を受けやすく、センサ感度が低下することが知られている(複数のマイクロ揺動素子90が隣り合って配置されることで、各素子にて発生するノイズが、隣り合う素子間でキャンセルし合う効果が期待されるが、素子配列方向における揺動主部91の占有比率が低いほど、当該ノイズキャンセル効果ないしノイズ低減効果が減弱する)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、以上のような事情の下で考え出されたものであって、隣り合う素子における揺動主部について近接配置するのに適したマイクロ揺動素子、そのようなマイクロ揺動素子を含んでなるマイクロ揺動素子アレイ、および、そのようなマイクロ揺動素子を備える光スイッチング装置を提供することを、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1の側面によるとマイクロ揺動素子が提供される。このマイクロ揺動素子は、フレームと、揺動主部を有する揺動部と、フレームおよび揺動部を連結して当該揺動部の揺動動作の軸心を規定する捩れ連結部とを備える。フレームは、軸心の延び方向に離隔し且つ揺動動作の方向において空隙を介して揺動主部に対向して当該揺動主部に沿って延びる、第1延び部および第2延び部を有する。本マイクロ揺動素子は、例えば、マイクロミラー素子、角速度センサ、または加速度センサとして構成することができる。本マイクロ揺動素子における揺動主部は、揺動部の一部であって、本マイクロ揺動素子がマイクロミラー素子として構成される場合、ミラーを伴う部位である。
【0013】
本マイクロ揺動素子において、揺動部の揺動動作の軸心の延び方向に離隔し且つ揺動主部に沿って延びる、フレームの二本の延び部(第1延び部,第2延び部)は、各々、揺動動作方向に揺動主部から離隔する。また、フレームの二本の延び部は、各々、軸心延び方向において少なくとも部分的に揺動主部と重なり合う(即ち、第1および第2延び部の間の離隔距離は、軸心延び方向における揺動主部の長さより小さい)。複数のこのようなマイクロ揺動素子を軸心延び方向に隣接配置する場合、隣り合う二つの素子における揺動主部間には、フレームにおける前記の延び部は位置しない。そのため、複数の本マイクロ揺動素子を軸心延び方向に隣接配置する場合、隣り合う二つの素子における揺動主部間には、各延び部の全幅に相当するスペースと、各素子における揺動主部およびフレームの前記延び部の間に必要なスペースとを、和したスペースを、確保する必要はない。したがって、複数の本マイクロ揺動素子を軸心延び方向に隣接配置する場合には、隣り合う素子における揺動主部について近接配置しやすい。このように、本マイクロ揺動素子は、隣り合う素子における揺動主部について近接配置するのに適する。
【0014】
本発明の第1の側面において、好ましくは、フレームの第1および第2延び部は、軸心の延び方向において、揺動主部の端部間以内に設けられている。このような構成は、複数の本マイクロ揺動素子を軸心延び方向に隣接配置する場合において、隣り合う素子の揺動主部を近接配置するのに資する。
【0015】
好ましくは、揺動部は、更に、第1電極部と、当該第1電極部および揺動主部を連結する梁部とを有し、捩れ連結部は、揺動部における梁部に接続し、本マイクロ揺動素子は、第1電極部と協働して揺動部の揺動動作の駆動力を発生させるための、フレームに固定された第2電極部を更に備える。第1および第2電極部は、好ましくは、複数の電極歯が並列してなる櫛歯電極構造を有する。
【0016】
好ましくは、フレームは、軸心の延び方向に離隔し且つ第1電極部に沿って延びる第3延び部および第4延び部を有し、第3および第4延び部の間の離隔距離は、軸心の延び方向における第1電極部の長さより大きい。この場合、好ましくは、フレームにおける第1および第2延び部の間の離隔距離は、第3および第4延び部の間の離隔距離より小さい。
【0017】
好ましくは、第1の側面に係るマイクロ揺動素子は、第1層と、第2層と、当該第1および第2層の間の中間層とからなる積層構造を含む材料基板に対して加工を施すことによって製造されたものであり、揺動主部は、第1層から形成された第1層由来部位を有し、当該第1層由来部位は、第1延び部に対向する第1対向部と第2延び部に対向する第2対向部とを含み、第1および第2延び部は第2層に由来し、第1対向部および第1延び部の間の離隔距離は中間層の厚さ以上であり、第2対向部および第2延び部の間の離隔距離は中間層の厚さ以上である。
【0018】
好ましい実施の形態では、揺動主部の第1および第2対向部は、各々、第1層において中間層側の面が当該中間層から退避するように部分的に薄肉とされた箇所に由来する。他の好ましい実施の形態では、第1および第2延び部は、各々、第2層において中間層側の面が当該中間層から退避するように部分的に薄肉とされた箇所に由来する。これらの構成によると、揺動主部と第1延び部の間、および、揺動主部と第2延び部の間において、充分な空隙を設けやすい。
【0019】
好ましくは、追加フレームと、当該追加フレームおよびフレームを連結して当該フレームの揺動動作の軸心を規定する追加捩れ連結部とを更に備える。本マイクロ揺動素子は、いわゆる二軸型の揺動素子として構成することが可能である。
【0020】
本発明の第2の側面によるとマイクロ揺動素子アレイが提供される。このマイクロ揺動素子アレイは、本発明の第1の側面に係るマイクロ揺動素子を複数含んでなる。
【0021】
本発明の第3の側面によると光スイッチング装置が提供される。この光スイッチング装置は、マイクロミラー素子として構成された第1の側面に係るマイクロ揺動素子を備える。本光スイッチング装置は、例えば、空間光結合型の光スイッチング装置や波長選択型の光スイッチング装置である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
図1は、本発明の第1の実施形態に係るマイクロ揺動素子アレイY1の平面図である。マイクロ揺動素子アレイY1は、複数のマイクロ揺動素子X1(一部省略)を含んでなる。
【0023】
図2から図11は、マイクロ揺動素子アレイY1を構成するマイクロ揺動素子X1を表す。図2は、マイクロ揺動素子X1の平面図であり、図3は、マイクロ揺動素子X1の一部省略平面図である。図4から図11は、各々、図2の線IV−IV、線V−V、線VI−VI、線VII−VII、線VIII−VIII、線IX−IX、線X−X、および線XI−XIに沿った拡大断面図である。
【0024】
マイクロ揺動素子X1は、揺動部10と、フレーム20と、フレーム30と、一対の連結部40と、一対の連結部50A,50Bと、電極部60,70,80とを備え、本実施形態では例えばマイクロミラー素子として構成されている。また、マイクロ揺動素子X1は、MEMS技術などのバルクマイクロマシニング技術により、いわゆるSOI(silicon on insulator)ウエハである材料基板に対して加工を施すことによって製造されたものである。当該材料基板は、第1および第2シリコン層ならびに当該シリコン層間の絶縁層よりなる積層構造を有し、各シリコン層は、不純物のドープにより所定の導電性が付与されている。マイクロ揺動素子X1における上述の各部位は主に第1シリコン層および/または第2シリコン層に由来して形成されるところ、図の明確化の観点より、図1および図2においては、第1シリコン層に由来して絶縁層より紙面手前方向に突き出る部位について、斜線ハッチングを付して表す。また、図3に示される構造は、マイクロ揺動素子X1において第2シリコン層に由来するものである。
【0025】
揺動部10は、ランド部11と、電極部12と、梁部13と、シールド部14とを有する。
【0026】
ランド部11は、第1シリコン層に由来する部位であり、その表面には、光反射機能を有するミラー面11’が設けられている。このようなランド部11およびミラー面11’は、本発明における揺動主部を構成する。この揺動主部ないしランド部11は、図5に示すように、厚さ方向Hにおいて部分的に薄肉であってフレーム20に対向する対向部11aを有する。対向部11aは、ランド部11の縁端において、図2に示す矢印D方向に延びる。また、ランド部11について図2および図5に示す長さL1は、例えば20〜300μmである。
【0027】
電極部12は、第1シリコン層に由来する部位であり、一対のアーム12A,12B、複数の電極歯12a、および複数の電極歯12bを有する。電極歯12aは、図2および図7に示すようにアーム12Aからアーム12B側へ延出し、且つ、図2に示すようにアーム12Aの延び方向に離隔して並列する。電極歯12bは、アーム12Bからアーム12A側へ延出し、且つ、アーム12Bの延び方向に離隔して並列する。このように、電極部12は櫛歯電極構造を有する。また、電極部12は、マイクロ揺動素子X1の駆動時に所定の基準電位(例えばグラウンド電位)が付与されるための部位である。
【0028】
梁部13は、第1シリコン層に由来する部位であり、ランド部11および電極部12を連結する。
【0029】
シールド部14は、図3に示すように第2シリコン層に由来する部位であり、図6に示すように絶縁層15を介して電極部12に接合している。シールド部14および電極部12は、絶縁層15を貫通する導電ビア16を介して電気的に接続されている。
【0030】
フレーム20は、例えば図4や図8に示すように、第1シリコン層に由来する第1層部21と、第2シリコン層に由来する第2層部22と、当該第1および第2層部21,22の間の絶縁層23とからなる積層構造を有する。第1層部21は、図2に示すように、相互に離隔した部分21a,21b,21cを有する。第2層部22は、図3に示すように、相互に離隔した部分22a,22bを有する。第1層部21の部分21aは、図2に示すように揺動部10を部分的に囲む形状を有する。第2層部22の部分22aは、揺動部10を部分的に囲む形状を有するフレーム本体である。部分21a,22aは、図8に示すように、絶縁層23を貫通する導電ビア24を介して電気的に接続されている。部分21b,22bは、絶縁層23を貫通する導電ビア25を介して電気的に接続されている。部分21c,22aは、図10に示すように、絶縁層23を貫通する導電ビア26を介して電気的に接続されている。
【0031】
また、フレーム20は、揺動部10のランド部11ないし揺動主部に沿って図2に示す矢印D方向に延びる一対の延び部20A、および、揺動部10の電極部12に沿って矢印D方向に延びる一対の延び部20Bを含む。
【0032】
一対の延び部20Aは、本発明における第1および第2延び部であり、後述の軸心A1の延び方向に離隔し、且つ、図5に示すように厚さ方向Hにおいて空隙を介してランド部11ないし揺動主部の対向部11aに対向する。厚さ方向Hにおけるランド部11と延び部20Aの間の離隔距離G1は、上述の材料基板の絶縁層の厚さより大きく、例えば0.5〜20μmである。また、一対の延び部20Aの間の離隔距離G2は、ランド部11ないし揺動主部についての長さL1より小さい。
【0033】
一対の延び部20Bは、本発明における第3および第4延び部であり、後述の軸心A1の延び方向に離隔する。図7に示すように、一対の延び部20Bの間の離隔距離G3は、揺動部10の電極部12についての長さL2より大きい。また、本実施形態では、図3に示すように、離隔距離G3は、上述の離隔距離G2と等しい。
【0034】
フレーム30は、図9に示すように、第1シリコン層に由来する第1層部31と、第2シリコン層に由来する第2層部32と、当該第1および第2層部31,32の間の絶縁層33とからなる積層構造を有する。図2および図9に示すように、第1層部31は、相互に離隔する部分31a,31bを含む。図3および図9に示すように、第2層部32は、相互に離隔する部分32a,32b,32cを含む。部分31b,32bは、図9に示すように、絶縁層33を貫通する導電ビア34を介して電気的に接続されている。部分31a,32cは、図11に示すように、絶縁層33を貫通する導電ビア35を介して電気的に接続されている。
【0035】
一対の連結部40は、各々、図2に示すように二本のトーションバー41からなる。各連結部40は、第1シリコン層に由来する部位であり、揺動部10の梁部13とフレーム20の第1層部21の部分21aとに接続して、揺動部10およびフレーム20を連結する(梁部13と部分21aは連結部40を介して電気的に接続されている)。各連結部40を構成する二本のトーションバー41の間隔は、フレーム20の側から揺動部10の側にかけて漸増する。また、トーションバー41は、図4に示すように、厚さ方向Hにおいて、揺動部10よりも薄肉であり、且つ、フレーム20の第1層部21よりも薄肉である。このような一対の連結部40は、揺動部10ないし揺動主部(ランド部11,ミラー面11’)の揺動動作の軸心A1を規定する。上述の電極歯12a,12bの延出方向は、軸心A1の延び方向と平行である。フレーム20の側から揺動部10の側にかけて間隔が漸増する二本のトーションバー41を含む各連結部40は、揺動部10の揺動動作における不要な変位成分の発生を抑制するのに好適である。
【0036】
一対の連結部50A,50Bは、各々、図2に示すように二本のトーションバー51からなる。各連結部50A,50Bは、第1シリコン層に由来する部位であり、フレーム20およびフレーム30を連結する。具体的には、図2に示すように、連結部50Aは、フレーム20の第1層部21の部分21bと、フレーム30の第1層部31の部分31bとに接続して、これらを連結する(部分21b,31bは連結部50Aを介して電気的に接続されている)。連結部50Bは、フレーム20の第1層部21の部分21cと、フレーム30の第1層部31の部分31aとに接続して、これらを連結する(部分21c,31aは連結部50Bを介して電気的に接続されている)。各連結部50A,50Bを構成する二本のトーションバー51の間隔は、フレーム30の側からフレーム20の側にかけて漸増する。また、トーションバー51は、厚さ方向Hにおいて、トーションバー41と同様にフレーム20の第1層部21よりも薄肉であり、且つ、フレーム30の第1層部31よりも薄肉である。このような一対の連結部50A,50Bは、フレーム20およびこれに伴う揺動部10の揺動動作の軸心A2を規定する。本実施形態では、軸心A2は軸心A1と直交する。フレーム30の側からフレーム20の側にかけて間隔が漸増する二本のトーションバー51を含む各連結部50A,50Bは、フレーム20およびこれに伴う揺動部10の揺動動作における不要な変位成分の発生を抑制するのに好適である。
【0037】
電極部60は、第2シリコン層に由来する部位であり、図3によく表れているように、アーム61、複数の電極歯62a、および複数の電極歯62bを有する。アーム61は、フレーム20の第2層部22の部分22bから延出する。複数の電極歯62aは、電極部12のアーム12A側へアーム61から延出し、且つ、アーム61の延び方向に離隔して並列する。複数の電極歯62bは、電極部12のアーム12B側へアーム61から延出し、且つ、アーム61の延び方向に離隔して並列する。このように、電極部60は櫛歯電極構造を有する。
【0038】
電極部70は、第1シリコン層に由来する部位であり、図2に示すように複数の電極歯71からなる。複数の電極歯71は、図2および図11に示すようにフレーム20の第1層部21の部分21cから電極部80側へ延出し、且つ、軸心A2の延び方向に離隔して並列する。このように、電極部70は櫛歯電極構造を有する。
【0039】
電極部80は、第2シリコン層に由来する部位であり、図3に示すようにアーム81および複数の電極歯82からなる。アーム81は、軸心A2の延び方向に延びる。複数の電極歯82は、アーム81から電極部70側へ延出し、且つ、アーム81の延び方向に離隔して並列する。このように、電極部80は櫛歯電極構造を有する。
【0040】
マイクロ揺動素子X1において、一対の電極部12,60は、軸心A1まわりの揺動部10の揺動動作に係る駆動力を発生させるための駆動機構ないしアクチュエータを構成し得る。また、一対の電極部70,80は、フレーム20およびこれに伴う揺動部10の軸心A2まわりの揺動動作に係る駆動力を発生させるための駆動機構ないしアクチュエータを構成し得る。
【0041】
マイクロ揺動素子X1の駆動時には、揺動部10の電極部12および電極部70に所定の基準電位が付与される。電極部12に対する基準電位の付与は、フレーム30の第1層部31の部分31a、連結部50Bのトーションバー51、フレーム20の第1層部21の部分21c、導電ビア26(図10に示す)、フレーム20の第2層部22の部分22a、導電ビア24(図8に示す)、フレーム20の第1層部21の部分21a、連結部40のトーションバー41、および揺動部10の梁部13を介して、実現することができる。電極部70に対する基準電位の付与は、フレーム30の第1層部31の部分31a、連結部50Bのトーションバー51、およびフレーム20の第1層部21の部分21cを介して、実現することができる。基準電位は、例えばグラウンド電位であり、好ましくは一定に維持される。
【0042】
そして、基準電位よりも高い駆動電位を電極部60,80の各々に対して必要に応じて付与することにより、電極部12,60間に静電引力を発生させて図12に示すように揺動部10を軸心A1まわりに回転変位させることができ、また、電極部70,80間に静電引力を発生させてフレーム20およびこれに伴う揺動部10を軸心A2まわりに回転変位させることができる。マイクロ揺動素子X1は、いわゆる二軸型の揺動素子である。電極部60に対する駆動電位の付与は、フレーム30の第2層部32の部分32b、導電ビア34(図9に示す)、フレーム30の第1層部31の部分31b、連結部50Aのトーションバー51、フレーム20の第1層部21の部分21b、導電ビア25(図8に示す)、およびフレーム20の第2層部22の部分22bを介して、実現することができる。このような二軸型の揺動駆動により、マイクロ揺動素子X1のランド部11上に設けられたミラー面11’にて反射される光の反射方向を適宜切り換えることができる。
【0043】
マイクロ揺動素子アレイY1は、以上のようなマイクロ揺動素子X1を複数含んでなる。マイクロ揺動素子アレイY1において、複数のマイクロ揺動素子X1は、全ての軸心A2(図1では図示せず)が相互に平行となるように、軸心A1の延び方向に一列に配されている。
【0044】
マイクロ揺動素子アレイY1において、各マイクロ揺動素子X1のフレーム30は一体化されて枠体をなし、揺動部10およびフレーム20を含む全マイクロ揺動素子X1の可動部を囲む。フレーム30の第1層部31の部分31aは、全てのマイクロ揺動素子X1にわたって連続しており、従って、全てのマイクロ揺動素子X1における揺動部10の電極部12およびシールド部14、フレーム20の第1層部21の部分21a,21cおよび第2層部22の部分22a、フレーム30の第2層部32の部分32c、並びに電極部70は、電気的に接続されている。
【0045】
マイクロ揺動素子アレイY1の駆動時には、全てのマイクロ揺動素子X1における揺動部10の電極部12および電極部70に対して共通的に所定の基準電位が付与された状態で、選択されたマイクロ揺動素子X1の電極部60,80の各々に対して所定の駆動電位が付与される。これにより、各マイクロ揺動素子X1の揺動部10およびフレーム20が個別に揺動駆動され、各マイクロ揺動素子X1の揺動部10のランド部11上のミラー面11’にて反射される光の反射方向を適宜切り換えることができる。
【0046】
マイクロ揺動素子X1において、揺動部10の揺動動作の軸心A1の延び方向に離隔し且つ揺動主部ないしランド部11に沿って延びる、フレーム20の二本の延び部20Aは、各々、図5に示すように、厚さ方向Hすなわち揺動動作方向において揺動主部から離隔する。また、二本の延び部20Aは、各々、軸心A1の延び方向において部分的にランド部11と重なり合う。すなわち、自然状態(非駆動時)にあるマイクロ揺動素子アレイY1では、図13に示すように、隣り合う二つの素子におけるランド部11間に、フレーム20の延び部20Aは位置しない。そのため、マイクロ揺動素子アレイY1では、隣り合う二つの素子におけるランド部11間に、各延び部20Aの全幅に相当するスペースと、各素子におけるランド部11および延び部20Aの間に必要なスペースとを、和したスペースを、確保する必要はない。したがって、マイクロ揺動素子アレイY1では、隣り合う素子におけるランド部11ないし揺動主部を、充分に近接して配置することができる。このようなマイクロ揺動素子アレイY1では、素子配列方向において充分に高い揺動主部(ランド部11,ミラー面11’)の占有比率を実現することができる。素子配列方向におけるミラー面11’の占有比率が高いほど、マイクロ揺動素子アレイY1が全体として受けて各ミラー面11’にて反射する光信号について、損失を低減することができる。
【0047】
マイクロ揺動素子アレイY1の各マイクロ揺動素子X1では、揺動部10の電極部12と、シールド部14と、フレーム20の第2層部22の部分22aと、フレーム30の第2層部32の部分32cとは、電気的に接続されている。したがって、素子駆動時には、電極部12と共にシールド部14および部分22a,32cにも基準電位(例えばグラウンド電位)が付与される。そのため、基準電位よりも高い所定の駆動電位に起因して、素子駆動時に電極部60から例えば揺動部10のランド部11側へ発する電界は、シールド部14によって吸収されやすい(即ち、当該電界は、シールド部14を越えて例えばランド部11に至りにくい)。これとともに、素子駆動時に電極部60から発する電界は、部分22aによって吸収されやすい(即ち、当該電界は、フレーム20の第2層部22の部分22a側を越えて素子外に漏出しにくい)。これとともに、基準電位よりも高い所定の駆動電位に起因して、素子駆動時に電極部80から電極部70とは反対の側に発する電界は、部分32cによって吸収されやすい(即ち、当該電界は、部分32cを越えて素子外に漏出しにくい)。これら電界吸収効果は、マイクロ揺動素子X1における素子外への電界漏れを防止または抑制する。このような素子外への電界漏れの防止または抑制により、マイクロ揺動素子アレイY1における一のマイクロ揺動素子X1の電極部12,60によって構成される駆動機構からの漏れ電界が、隣接する他のマイクロ揺動素子X1の駆動特性に不当な影響を与えることを、回避することができる。したがって、上述の電界吸収効果は、マイクロ揺動素子X1の配列方向における高密度化、ひいては、素子配列方向における揺動主部(ランド部11,ミラー面11’)の占有比率の向上に資する。
【0048】
図14および図15は、マイクロ揺動素子X1の第1変形例を表す。図14は当該第1変形例の平面図である。図15は、図14の線XV−XVに沿った拡大断面図であり、図2に示すマイクロ揺動素子X1にとっての図5に相当する。
【0049】
マイクロ揺動素子X1においては、図14および図15に示すように、軸心A1の延び方向におけるランド部11の長さL1について、図2および図5に示すよりも長く設計してもよい。具体的には、軸心A1の延び方向において、フレーム20の二本の延び部20Aが、ランド部11ないし揺動主部の端部間以内に収まるように、ランド部11の長さL1について、図2および図5に示すよりも長く設計してもよい。このような構成は、マイクロ揺動素子アレイY1において、隣り合う素子のランド部11ないし揺動主部について近接配置するうえで好ましく、ひいては、素子配列方向における揺動主部(ランド部11,ミラー面11’)の占有比率の向上に資する。
【0050】
図16から図18は、マイクロ揺動素子X1の第2変形例を表す。図16は当該第2変形例の平面図である。図17は当該第2変形例の一部省略平面図である。図18は、図16の線XVIII−XVIIIに沿った拡大断面図であり、図2に示すマイクロ揺動素子X1にとっての図5に相当する。
【0051】
マイクロ揺動素子X1においては、図17および図18に示すように、フレーム20の延び部20A間の離隔距離G2について、図3および図5に示すよりも短く設計してもよい。具体的には、軸心A1の延び方向において、フレーム20の二本の延び部20Aが、ランド部11ないし揺動主部の端部間以内に収まるように、延び部20A間の離隔距離G2について、図3および図5に示すよりも短く設計してもよい。本変形例では、フレーム20における延び部20A間の離隔距離G2は、延び部20B間の離隔距離G3より小さい。このような構成は、マイクロ揺動素子アレイY1において、隣り合う素子のフレーム20間の電気的干渉を低減するうえで好適であり、従って、ランド部11ないし揺動主部について近接配置するうえで好ましく、ひいては、素子配列方向における揺動主部(ランド部11,ミラー面11’)の占有比率の向上に資する。
【0052】
マイクロ揺動素子X1は、角速度センサや加速度センサなどのセンシングデバイスとしても構成することができる。センシングデバイスとしてのマイクロ揺動素子X1においては、揺動部10のランド部11上のミラー面11’は必ずしも設ける必要はない。
【0053】
角速度センサとして構成されたマイクロ揺動素子X1の駆動時には、例えば、可動部(揺動部10,フレーム20,連結部40,電極部60)は、所定の振動数ないし周期で軸心A2まわりに揺動動作される。この揺動動作は、電極部70,80間に対して所定の周期で電圧印加を行うことによって実現される。本実施形態では、例えば、電極部70をグラウンド接続したうえで、電極部80への所定電位の付与を所定周期で行う。
【0054】
例えばこのようにして可動部を揺動動作ないし振動させている状態において、マイクロ揺動素子X1ないし揺動部10に所定の角速度が作用すると、揺動部10が軸心A1まわりに所定程度に回転変位して、電極部12,60の相対的配置が変化して当該電極部12,60間の静電容量が変化する。これら静電容量変化に基づいて、揺動部10の回転変位量を検出することができる。その検出結果に基づき、マイクロ揺動素子X1ないし揺動部10に作用する角速度を導出することが可能である。
【0055】
加速度センサとして構成されたマイクロ揺動素子X1の駆動時には、例えば、電極部12,60間に所定の直流電圧印加を行うことによって、フレーム20や電極部60に対して揺動部10を静止状態にさせる。この状態で、マイクロ揺動素子X1ないし揺動部10に法線方向(図2の平面図において紙面に垂直な方向)の加速度が作用すると、加速度と平行なベクトル成分の慣性力が働いて、揺動部10に対し、一対の連結部40によって規定される軸心A1まわりに回転トルクが作用し、加速度に比例した回転変位(軸心A1まわりの回転変位)が揺動部10に生じる(当該慣性力は、図2に現れる平面視において揺動部10の重心位置が軸心A1と重ならないように設計しておくことで、発生させ得る)。回転変位量は、電極部12,60間の静電容量の変化として電気的に検出することができる。その検出結果に基づき、マイクロ揺動素子X1ないし揺動部10に作用する加速度を導出することが可能である。
【0056】
図19から図21は、マイクロ揺動素子アレイY1に含まれる各マイクロ揺動素子X1の製造方法の一例を表す。この方法は、バルクマイクロマシニング技術によりマイクロ揺動素子X1を製造するための一手法である。図19から図21においては、図21(d)に示すランド部L、梁部B、フレームF1,F2,F3、連結部C1,C2、および一組の電極E1,E2の形成過程を、一の断面の変化として表す。当該一の断面は、加工が施されるウエハにおける単一のマイクロ揺動素子形成区画に含まれる複数の所定箇所の断面を、モデル化して連続断面として表したものである。ランド部Lは、ランド部11の一部に相当する。梁部Bは、梁部13に相当する。フレームF1は、フレーム20の一部に相当する。フレームF2は、フレーム20における延び部20A(第2層部22の部分22aの一部)に相当する。フレームF3は、フレーム30の一部に相当する。連結部C1は、連結部40に相当し、トーションバー41の延び方向の断面を表す。連結部C2は、連結部40,50A,50Bの各々に相当し、各トーションバー41,51の横断面を表す。電極E1は、電極部12,70の各々の一部に相当し、一組の電極歯12aおよび一組の電極歯71の各々の横断面を表す。電極E2は、電極部60,80の各々の一部に相当し、一組の電極歯61および一組の電極歯81の各々の横断面を表す。
【0057】
マイクロ揺動素子X1の製造においては、まず、図19(a)に示すようなシリコンウエハ101’を用意する。シリコンウエハ101’は、ランド部11における薄肉の対向部11aが成形される箇所に対応して延びる溝101aを有する。このようなシリコンウエハ101’の作製においては、厚さが例えば200μmの未加工のシリコンウエハに対し、溝101aに対応する開口部を有するレジストパターンをマスクとして利用して、DRIE(deep reactive ion etching)により、所定の深さ(例えば30μm)までエッチング処理を行う。DRIEでは、SF6ガスを用いて行うエッチングとC48ガスを用いて行う側壁保護とを交互に繰り返すBoschプロセスにおいて、良好な異方性エッチング加工を行うことができる。後出のDRIEについても、このようなBoschプロセスを採用することができる。また、シリコンウエハ101’は、不純物をドープすることにより導電性を付与されたシリコン材料よりなる。不純物としては、Bなどのp型不純物や、PおよびSbなどのn型不純物を採用することができる。
【0058】
次に、図19(b)に示すように、シリコンウエハ101’上に絶縁膜101bを形成する。絶縁膜101bは、例えば、シリコンウエハ101’の表面を熱酸化法によって酸化することによって形成することができる。絶縁膜101bの厚さは例えば500nmである。本工程の後、上述の導電ビア16,24〜26,34,35の各々の一部をなすこととなる複数の導電部(図示せず)を、絶縁膜101bに埋め込み形成する。具体的には、絶縁膜101bの所定の箇所に開口部を形成し、当該開口部に導電材料を充填する。導電材料としては、例えばタングステンやポリシリコンを採用することができる。
【0059】
次に、図19(c)に示すような、表面に絶縁膜102aを伴うシリコンウエハ102’を用意する。シリコンウエハ102’は、不純物をドープすることにより導電性を付与されたシリコン材料よりなる。不純物としては、Bなどのp型不純物や、PおよびSbなどのn型不純物を採用することができる。シリコンウエハ102’の厚さは例えば200μmである。絶縁膜102aの厚さは例えば500nmである。絶縁膜102aは、例えば、シリコンウエハ102’の表面を熱酸化法によって酸化することによって形成することができる。また、絶縁膜102aには、上述の導電ビア16,24〜26,34,35の各々の一部をなすこととなる複数の導電部(図示せず)が、埋め込み形成されている。このような導電部は、絶縁膜102aの所定の箇所に開口部を形成し、当該開口部に導電材料を充填することによって、形成することができる。導電材料としては、例えばタングステンやポリシリコンを採用することができる。
【0060】
次に、図19(d)に示すように、シリコンウエハ101’,102’を位置合わせしたうえで接合する(これにより、絶縁膜101bに埋め込み形成されている上述の導電部と、絶縁膜102aに埋め込み形成されている上述の導電部とから、導電ビア16,24〜26,34,35が形成されることとなる)。シリコンウエハ101’,102’を接合するには、例えば、シリコンウエハ101’,102’を、アンモニア水溶液で洗浄し、清浄な環境にて貼り合わせ、窒素雰囲気下において例えば1200℃の高温でアニールする。
【0061】
次に、シリコンウエハ101’,102’の各々に対して研磨処理を施すことにより、図20(a)に示すようにシリコンウエハ101’,102’を所望の厚さにまで薄くする。これにより、溝101aを伴うシリコン層101と、シリコン層102と、当該シリコン層101,102間の絶縁層103とからなる積層構造を有するSOIウエハたる材料基板100が得られる。材料基板100の絶縁層103には、図外の所定の箇所において、上述の導電ビア16,24〜26,34,35が埋め込み形成されている。シリコン層101の厚さは例えば20〜200μmであり、シリコン層102の厚さは例えば20〜200μmであり、絶縁層103の厚さは例えば0.3〜2μmである。
【0062】
次に、図20(b)に示すように、シリコン層101上にミラー面11’を形成する。ミラー面11’の形成においては、まず、スパッタリング法により、シリコン層101上に例えばCr(50nm)およびこれに続いてAu(200nm)を成膜する。次に、所定のマスクを介してこれら金属膜に対してエッチング処理を順次行うことにより、ミラー面11’をパターン形成する。Auに対するエッチング液としては、例えば、ヨウ化カリウム−ヨウ素水溶液を使用することができる。Crに対するエッチング液としては、例えば硝酸第二セリウムアンモニウム水溶液を使用することができる。
【0063】
次に、図20(c)に示すように、シリコン層101上に酸化膜パターン110およびレジストパターン111を形成し、シリコン層102上に酸化膜パターン112を形成する。酸化膜パターン110は、シリコン層101において成形されるべき揺動部10の一部(ランド部11、電極部12、梁部13を含む)、フレーム20の第1層部21、フレーム30の第1層部31、および電極部70に対応する図22に示すパターン形状を有する。酸化膜パターン110の形成においては、例えば、スパッタリング法またはCVD法によって材料基板100のシリコン層101側に酸化物材料を成膜した後、当該酸化物膜をパターニングする。レジストパターン111は、連結部40,50A,50Bに対応するパターン形状を有する。レジストパターン111の形成においては、例えば、スピンコーティング法によって材料基板100のシリコン層101側にレジスト材料を成膜した後、当該レジスト膜をパターニングする。酸化膜パターン112は、シリコン層102において成形されるべき揺動部10のシールド部14、フレーム20の第2層部22、フレーム30の第2層部32、および電極部60,80に対応する図23に示すパターン形状を有する。酸化膜パターン112の形成においては、例えば、スパッタリング法またはCVD法によって材料基板100のシリコン層102側に酸化物材料を成膜した後、当該酸化物膜をパターニングする。
【0064】
次に、図20(d)に示すように、酸化膜パターン110およびレジストパターン111をマスクとして利用して、DRIEにより、シリコン層101に対して所定の深さまでエッチング処理を行う。所定の深さとは、連結部C1,C2の厚さに相当する深さであり、例えば5μmである。
【0065】
次に、図21(a)に示すようにレジストパターン111を除去する。例えば、所定の剥離液を作用させることにより、レジストパターン111を剥離することができる。
【0066】
次に、図21(b)に示すように、酸化膜パターン110をマスクとして利用して、DRIEにより、連結部C1,C2を残存形成しつつシリコン層101に対してエッチング処理を行う。本工程にて、ランド部L、梁部B、電極E1、フレームF1の一部(フレーム20の第1層部21)、フレームF3の一部(フレーム30の第1層部31)、および各連結部C1,C2が、成形される。
【0067】
次に、図21(c)に示すように、酸化膜パターン112をマスクとして利用して、DRIEによりシリコン層102に対してエッチング処理を行う。本工程にて、フレームF1の一部(フレーム20の第2層部22)、フレームF2(フレーム20の第2層部22の一部たる延び部20A)、フレームF3の一部(フレーム30の第2層部32)、および電極E2が、成形される。
【0068】
次に、図21(d)に示すように、絶縁層103において露出している箇所、および酸化膜パターン110,112を、エッチング除去する。エッチング手法としては、ドライエッチングまたはウエットエッチングを採用することができる。ドライエッチングを採用する場合、エッチングガスとしては、例えば、CF4やCHF3などを採用することができる。ウエットエッチングを採用する場合、エッチング液としては、例えば、フッ酸とフッ化アンモニウムからなるバッファードフッ酸(BHF)を使用することができる。
【0069】
以上の一連の工程を経ることにより、ランド部L、梁部B、フレームF1,F2,F3、連結部C1,C2、および一組の電極E1,E2を成形するなどしてマイクロ揺動素子X1を製造することができる。
【0070】
本方法によって製造されるマイクロ揺動素子X1の揺動部10のランド部11(ないし揺動主部)における対向部11aは、各々、用いた材料基板100のシリコン層101において絶縁層103側の面が当該絶縁層103から退避するように部分的に薄肉とされた箇所に由来する。そして、マイクロ揺動素子X1の揺動部10のランド部11における対向部11aとフレーム20の第2層部22における延び部20Aとの間の離隔距離G1は、用いた材料基板100の絶縁層103(中間層)の厚さより大きい。このような本実施形態では、ランド部11と延び部20Aの間において、充分な離隔距離G1を確保しやすい。
【0071】
図24は、本発明の第2の実施形態に係るマイクロ揺動素子アレイY2の平面図である。マイクロ揺動素子アレイY2は、複数のマイクロ揺動素子X2(一部省略)を含んでなる。
【0072】
図25から図27は、マイクロ揺動素子アレイY2を構成するマイクロ揺動素子X2を表す。図25は、マイクロ揺動素子X2の平面図であり、図26は、マイクロ揺動素子X2の一部省略平面図である。図27は、図25の線XXVII−XXVIIに沿った拡大断面図である。
【0073】
マイクロ揺動素子X2は、揺動部10と、フレーム20と、フレーム30と、一対の連結部40と、一対の連結部50A,50Bと、電極部60,70,80とを備え、本実施形態では例えばマイクロミラー素子として構成されている。また、マイクロ揺動素子X2は、MEMS技術などのバルクマイクロマシニング技術により、材料基板に対して加工を施すことによって製造されたものである。当該材料基板は、第1および第2シリコン層ならびに当該シリコン層間の絶縁層よりなる積層構造を有し、各シリコン層は、不純物のドープにより所定の導電性が付与されている。マイクロ揺動素子X2における上述の各部位は主に第1シリコン層および/または第2シリコン層に由来して形成されるところ、図の明確化の観点より、図24および図25においては、第1シリコン層に由来して絶縁層より紙面手前方向に突き出る部位について、斜線ハッチングを付して表す。また、図26に示される構造は、マイクロ揺動素子X2において第2シリコン層に由来するものである。
【0074】
マイクロ揺動素子X2は、揺動部10の一部の構造およびフレーム20の一部の構造において、第1の実施形態におけるマイクロ揺動素子X1と異なる。マイクロ揺動素子X2の他の構造については、マイクロ揺動X1と同様である。
【0075】
本実施形態における揺動部10が第1の実施形態における揺動部10と異なる点は、ランド部11においてフレーム20に対向する箇所(対向部11a)が、厚さ方向Hにおいて薄肉とされていない点である。この相違点の他は、本実施形態における揺動部10は第1の実施形態における揺動部10と同一の構成を備える。
【0076】
本実施形態におけるフレーム20が第1の実施形態におけるフレーム20と異なる点は、揺動部10のランド部11に沿って延びる延び部20A(第2層部22の一部)が、厚さ方向Hにおいて、第2層部22の他の部位よりも薄肉とされている点である。図26では、フレーム20の第2層部22において部分的に薄肉とされている箇所(即ち、部分的に凹んでいる箇所)について、斜線ハッチングを付して表す。この相違点の他は、本実施形態におけるフレーム20は第1の実施形態におけるフレーム20と同一の構成を備える。
【0077】
マイクロ揺動素子X2の駆動時には、揺動部10の電極部12および電極部70に所定の基準電位が付与される。電極部12,70に対する基準電位の付与は、第1の実施形態において上述したのと同様に、実現することができる。基準電位は、例えばグラウンド電位であり、好ましくは一定に維持される。
【0078】
そして、基準電位よりも高い駆動電位を電極部60,80の各々に対して必要に応じて付与することにより、電極部12,60間に静電引力を発生させて揺動部10を軸心A1まわりに回転変位させることができ、また、電極部70,80間に静電引力を発生させてフレーム20およびこれに伴う揺動部10を軸心A2まわりに回転変位させることができる。マイクロ揺動素子X2は、いわゆる二軸型の揺動素子である。電極部60,80に対する駆動電位の付与は、第1の実施形態において上述したのと同様に、実現することができる。このような二軸型の揺動駆動により、マイクロ揺動素子X2のランド部11上に設けられたミラー面11’にて反射される光の反射方向を適宜切り換えることができる。
【0079】
マイクロ揺動素子アレイY2は、以上のようなマイクロ揺動素子X2を複数含んでなる。マイクロ揺動素子アレイY2において、複数のマイクロ揺動素子X2は、全ての軸心A2(図24では図示せず)が相互に平行となるように、軸心A1の延び方向に一列に配されている。
【0080】
マイクロ揺動素子アレイY2において、各マイクロ揺動素子X2のフレーム30は一体化されて枠体をなし、揺動部10およびフレーム20を含む全マイクロ揺動素子X2の可動部を囲む。フレーム30の第1層部31の部分31aは、全てのマイクロ揺動素子X2にわたって連続しており、従って、全てのマイクロ揺動素子X2における揺動部10の電極部12およびシールド部14、フレーム20の第1層部21の部分21a,21cおよび第2層部22の部分22a、フレーム30の第2層部32の部分32c、並びに電極部70は、電気的に接続されている。
【0081】
マイクロ揺動素子アレイY2の駆動時には、全てのマイクロ揺動素子X2における揺動部10の電極部12および電極部70に対して共通的に所定の基準電位が付与された状態で、選択されたマイクロ揺動素子X2の電極部60,80の各々に対して所定の駆動電位が付与される。これにより、各マイクロ揺動素子X2の揺動部10およびフレーム20が個別に揺動駆動され、各マイクロ揺動素子X2の揺動部10のランド部11上のミラー面11’にて反射される光の反射方向を適宜切り換えることができる。
【0082】
マイクロ揺動素子X2において、揺動部10の揺動動作の軸心A1の延び方向に離隔し且つ揺動主部ないしランド部11に沿って延びる、フレーム20の二本の延び部20Aは、各々、図27に示すように、厚さ方向Hすなわち揺動動作方向において揺動主部から離隔する。また、二本の延び部20Aは、各々、軸心A1の延び方向において部分的にランド部11と重なり合う。すなわち、自然状態(非駆動時)にあるマイクロ揺動素子アレイY2では、図28に示すように、隣り合う二つの素子におけるランド部11間に、フレーム20の延び部20Aは位置しない。そのため、マイクロ揺動素子アレイY2では、隣り合う二つの素子におけるランド部11間に、各延び部20Aの全幅に相当するスペースと、各素子におけるランド部11および延び部20Aの間に必要なスペースとを、和したスペースを、確保する必要はない。したがって、マイクロ揺動素子アレイY2では、隣り合う素子におけるランド部11ないし揺動主部を、充分に近接して配置することができる。このようなマイクロ揺動素子アレイY2では、素子配列方向において充分に高い揺動主部(ランド部11,ミラー面11’)の占有比率を実現することができる。素子配列方向におけるミラー面11’の占有比率が高いほど、マイクロ揺動素子アレイY2が全体として受けて各ミラー面11’にて反射する光信号について、損失を低減することができる。
【0083】
マイクロ揺動素子アレイY2の各マイクロ揺動素子X2では、第1の実施形態において上述したのと同様に、シールド部14、フレーム20の第2層部22の部分22a、およびフレーム30の第2層部32の部分32cが、電界吸収効果を発揮し得る。この電界吸収効果は、マイクロ揺動素子X2における素子外への電界漏れを防止または抑制する。このような素子外への電界漏れの防止または抑制により、マイクロ揺動素子アレイY2における一のマイクロ揺動素子X2の電極部12,60によって構成される駆動機構からの漏れ電界が、隣接する他のマイクロ揺動素子X2の駆動特性に不当な影響を与えることを、回避することができる。したがって、当該電界吸収効果は、マイクロ揺動素子X2の配列方向における高密度化、ひいては、素子配列方向における揺動主部(ランド部11,ミラー面11’)の占有比率の向上に資する。
【0084】
図29および図30は、マイクロ揺動素子X2の第1変形例を表す。図29は当該第1変形例の平面図である。図30は、図29の線XXX−XXXに沿った拡大断面図であり、図25に示すマイクロ揺動素子X2にとっての図27に相当する。
【0085】
マイクロ揺動素子X2においては、図29および図30に示すように、軸心A1の延び方向におけるランド部11の長さL1について、図25および図27に示すよりも長く設計してもよい。具体的には、軸心A1の延び方向において、フレーム20の二本の延び部20Aが、ランド部11ないし揺動主部の端部間以内に収まるように、ランド部11の長さL1について、図25および図27に示すよりも長く設計してもよい。このような構成は、マイクロ揺動素子アレイY2において、隣り合う素子のランド部11ないし揺動主部について近接配置するうえで好ましく、ひいては、素子配列方向における揺動主部(ランド部11,ミラー面11’)の占有比率の向上に資する。
【0086】
図31から図33は、マイクロ揺動素子X2の第2変形例を表す。図31は当該第2変形例の平面図である。図32は当該第2変形例の一部省略平面図である。図33は、図31の線XXXIII−XXXIIIに沿った拡大断面図であり、図25に示すマイクロ揺動素子X2にとっての図27に相当する。
【0087】
マイクロ揺動素子X2においては、図32および図33に示すように、フレーム20の延び部20A間の離隔距離G2について、図26および図27に示すよりも短く設計してもよい。具体的には、軸心A1の延び方向において、フレーム20の二本の延び部20Aが、ランド部11ないし揺動主部の端部間以内に収まるように、延び部20A間の離隔距離G2について、図26および図27に示すよりも短く設計してもよい。本変形例では、フレーム20における延び部20A間の離隔距離G2は、延び部20B間の離隔距離G3より小さい。このような構成は、マイクロ揺動素子アレイY2において、隣り合う素子のフレーム20間の電気的干渉を低減するうえで好適であり、従って、ランド部11ないし揺動主部について近接配置するうえで好ましく、ひいては、素子配列方向における揺動主部(ランド部11,ミラー面11’)の占有比率の向上に資する。
【0088】
マイクロ揺動素子X2は、角速度センサや加速度センサなどのセンシングデバイスとしても構成することができる。センシングデバイスとしてのマイクロ揺動素子X2においては、揺動部10のランド部11上のミラー面11’は必ずしも設ける必要はない。角速度センサとして構成された場合のマイクロ揺動素子X2による角速度検出方法は、例えば、角速度センサとして構成された場合の上述のマイクロ揺動素子X1による角速度検出方法と同様である。加速度センサとして構成された場合のマイクロ揺動素子X2による加速度検出方法は、例えば、加速度センサとして構成された場合の上述のマイクロ揺動素子X1による加速度検出方法と同様である。
【0089】
図34から図36は、マイクロ揺動素子アレイY2に含まれる各マイクロ揺動素子X2の製造方法の一例を表す。この方法は、バルクマイクロマシニング技術によりマイクロ揺動素子X2を製造するための一手法である。図34から図36においては、図36(d)に示すランド部L、梁部B、フレームF1,F2,F3、連結部C1,C2、および一組の電極E1,E2の形成過程を、一の断面の変化として表す。当該一の断面は、加工が施されるウエハにおける単一のマイクロ揺動素子形成区画に含まれる複数の所定箇所の断面を、モデル化して連続断面として表したものである。ランド部Lは、ランド部11の一部に相当する。梁部Bは、梁部13に相当する。フレームF1は、フレーム20の一部に相当する。フレームF2は、フレーム20における延び部20A(第2層部22の部分22aの一部)に相当する。フレームF3は、フレーム30の一部に相当する。連結部C1は、連結部40に相当し、トーションバー41の延び方向の断面を表す。連結部C2は、連結部40,50A,50Bの各々に相当し、各トーションバー41,51の横断面を表す。電極E1は、電極部12,70の各々の一部に相当し、一組の電極歯12aおよび一組の電極歯71の各々の横断面を表す。電極E2は、電極部60,80の各々の一部に相当し、一組の電極歯61および一組の電極歯81の各々の横断面を表す。
【0090】
マイクロ揺動素子X2の製造においては、まず、図34(a)に示すようなシリコンウエハ202’を用意する。シリコンウエハ202’は、フレーム20における薄肉の延び部20Aが成形される箇所に対応して延びる溝202aを有する。このようなシリコンウエハ202’の作製においては、厚さが例えば200μmの未加工のシリコンウエハに対し、溝202aに対応する開口部を有するレジストパターンをマスクとして利用して、DRIEにより、所定の深さ(例えば30μm)までエッチング処理を行う。また、シリコンウエハ202’は、不純物をドープすることにより導電性を付与されたシリコン材料よりなる。不純物としては、Bなどのp型不純物や、PおよびSbなどのn型不純物を採用することができる。
【0091】
次に、図34(b)に示すように、シリコンウエハ202’上に絶縁膜202bを形成する。絶縁膜202bは、例えば、シリコンウエハ202’の表面を熱酸化法によって酸化することによって形成することができる。絶縁膜202bの厚さは例えば500nmである。本工程の後、マイクロ揺動素子X2の具備する導電ビア16,24〜26,34,35の各々の一部をなすこととなる複数の導電部(図示せず)を、絶縁膜202bに埋め込み形成する。具体的には、絶縁膜202bの所定の箇所に開口部を形成し、当該開口部に導電材料を充填する。導電材料としては、例えばタングステンやポリシリコンを採用することができる。
【0092】
次に、図34(c)に示すような、表面に絶縁膜201aを伴うシリコンウエハ201’を用意する。シリコンウエハ201’は、不純物をドープすることにより導電性を付与されたシリコン材料よりなる。不純物としては、Bなどのp型不純物や、PおよびSbなどのn型不純物を採用することができる。シリコンウエハ201’の厚さは例えば200μmである。絶縁膜201aの厚さは例えば500nmである。絶縁膜201aは、例えば、シリコンウエハ201’の表面を熱酸化法によって酸化することによって形成することができる。また、絶縁膜201aには、マイクロ揺動素子X2の具備する導電ビア16,24〜26,34,35の各々の一部をなすこととなる複数の導電部(図示せず)が、埋め込み形成されている。このような導電部は、絶縁膜201aの所定の箇所に開口部を形成し、当該開口部に導電材料を充填することによって、形成することができる。導電材料としては、例えばタングステンやポリシリコンを採用することができる。
【0093】
次に、図34(d)に示すように、シリコンウエハ201’,202’を位置合わせしたうえで接合する(これにより、絶縁膜201aに埋め込み形成されている上述の導電部と、絶縁膜202bに埋め込み形成されている上述の導電部とから、導電ビア16,24〜26,34,35が形成されることとなる)。シリコンウエハ201’,202’を接合するには、例えば、シリコンウエハ201’,202’を、アンモニア水溶液で洗浄し、清浄な環境にて貼り合わせ、窒素雰囲気下において例えば1200℃の高温でアニールする。
【0094】
次に、シリコンウエハ201’,202’の各々に対して研磨処理を施すことにより、図35(a)に示すようにシリコンウエハ201’,202’を所望の厚さにまで薄くする。これにより、シリコン層201と、溝202aを伴うシリコン層202と、当該シリコン層201,202間の絶縁層203とからなる積層構造を有するSOIウエハたる材料基板200が得られる。材料基板200の絶縁層203には、図外の所定の箇所において、上述の導電ビア16,24〜26,34,35が埋め込み形成されている。シリコン層201の厚さは例えば20〜200μmであり、シリコン層202の厚さは例えば20〜200μmであり、絶縁層203の厚さは例えば0.3〜2μmである。
【0095】
次に、図35(b)に示すように、シリコン層201上にミラー面11’を形成する。ミラー面11’の形成手法については、第1の実施形態に関して図20(b)を参照して上述したのと同様である。
【0096】
次に、図35(c)に示すように、シリコン層201上に酸化膜パターン110およびレジストパターン111を形成し、シリコン層202上に酸化膜パターン112を形成する。酸化膜パターン110,112およびレジストパターン111のパターン形状および形成手法については、第1の実施形態に関して図20(c)を参照して上述したのと同様である。
【0097】
次に、図35(d)に示すように、酸化膜パターン110およびレジストパターン111をマスクとして利用して、DRIEにより、シリコン層201に対して所定の深さまでエッチング処理を行う。所定の深さとは、連結部C1,C2の厚さに相当する深さであり、例えば5μmである。
【0098】
次に、図36(a)に示すようにレジストパターン111を除去する。例えば、所定の剥離液を作用させることにより、レジストパターン111を剥離することができる。
【0099】
次に、図36(b)に示すように、酸化膜パターン110をマスクとして利用して、DRIEにより、連結部C1,C2を残存形成しつつシリコン層201に対してエッチング処理を行う。本工程にて、ランド部L、梁部B、電極E1、フレームF1の一部(フレーム20の第1層部21)、フレームF3の一部(フレーム30の第1層部31)、および各連結部C1,C2が、成形される。
【0100】
次に、図36(c)に示すように、酸化膜パターン112をマスクとして利用して、DRIEによりシリコン層202に対してエッチング処理を行う。本工程にて、フレームF1の一部(フレーム20の第2層部22)、フレームF2(フレーム20の第2層部22の一部たる延び部20A)、フレームF3の一部(フレーム30の第2層部32)、および電極E2が、成形される。
【0101】
次に、図36(d)に示すように、絶縁層203において露出している箇所、および酸化膜パターン110,112を、エッチング除去する。エッチング手法については、第1の実施形態に関して図21(d)を参照して上述したのと同様である。
【0102】
以上の一連の工程を経ることにより、ランド部L、梁部B、フレームF1,F2,F3、連結部C1,C2、および一組の電極E1,E2を成形するなどしてマイクロ揺動素子X2を製造することができる。
【0103】
本方法によって製造されるマイクロ揺動素子X2のフレーム20における延び部20Aは、各々、用いた材料基板200のシリコン層202において絶縁層203側の面が当該絶縁層203から退避するように部分的に薄肉とされた箇所に由来する。そして、マイクロ揺動素子X2の揺動部10のランド部11における対向部11aとフレーム20の第2層部22における延び部20Aとの間の離隔距離G1は、用いた材料基板200の絶縁層203(中間層)の厚さより大きい。このような本実施形態では、ランド部11と延び部20Aの間において、充分な離隔距離G1を確保しやすい。
【0104】
図37は、本発明の第3の実施形態に係るマイクロ揺動素子アレイY3の平面図である。マイクロ揺動素子アレイY3は、複数のマイクロ揺動素子X3(一部省略)を含んでなる。
【0105】
図38から図40は、マイクロ揺動素子アレイY3を構成するマイクロ揺動素子X3を表す。図38は、マイクロ揺動素子X3の平面図であり、図39は、マイクロ揺動素子X3の一部省略平面図である。図40は、図38の線XL−XLに沿った拡大断面図である。
【0106】
マイクロ揺動素子X3は、揺動部10と、フレーム20と、フレーム30と、一対の連結部40と、一対の連結部50A,50Bと、電極部60,70,80とを備え、本実施形態では例えばマイクロミラー素子として構成されている。また、マイクロ揺動素子X3は、MEMS技術などのバルクマイクロマシニング技術により、材料基板に対して加工を施すことによって製造されたものである。当該材料基板は、第1および第2シリコン層ならびに当該シリコン層間の絶縁層よりなる積層構造を有し、各シリコン層は、不純物のドープにより所定の導電性が付与されている。マイクロ揺動素子X3における上述の各部位は主に第1シリコン層および/または第2シリコン層に由来して形成されるところ、図の明確化の観点より、図37および図38においては、第1シリコン層に由来して絶縁層より紙面手前方向に突き出る部位について、斜線ハッチングを付して表す。また、図39に示される構造は、マイクロ揺動素子X3において第2シリコン層に由来するものである。
【0107】
マイクロ揺動素子X3は、揺動部10の一部の構造において、第1の実施形態におけるマイクロ揺動素子X1と異なる。マイクロ揺動素子X3の他の構造については、マイクロ揺動X1と同様である。
【0108】
本実施形態における揺動部10が第1の実施形態における揺動部10と異なる点は、ランド部11においてフレーム20に対向する箇所(対向部11a)が、厚さ方向Hにおいて薄肉とされていない点である。この相違点の他は、本実施形態における揺動部10は第1の実施形態における揺動部10と同一の構成を備える。
【0109】
マイクロ揺動素子X3の駆動時には、揺動部10の電極部12および電極部70に所定の基準電位が付与される。電極部12,70に対する基準電位の付与は、第1の実施形態において上述したのと同様に、実現することができる。基準電位は、例えばグラウンド電位であり、好ましくは一定に維持される。
【0110】
そして、基準電位よりも高い駆動電位を電極部60,80の各々に対して必要に応じて付与することにより、電極部12,60間に静電引力を発生させて揺動部10を軸心A1まわりに回転変位させることができ、また、電極部70,80間に静電引力を発生させてフレーム20およびこれに伴う揺動部10を軸心A2まわりに回転変位させることができる。マイクロ揺動素子X3は、いわゆる二軸型の揺動素子である。電極部60,80に対する駆動電位の付与は、第1の実施形態において上述したのと同様に、実現することができる。このような二軸型の揺動駆動により、マイクロ揺動素子X3のランド部11上に設けられたミラー面11’にて反射される光の反射方向を適宜切り換えることができる。
【0111】
マイクロ揺動素子アレイY3は、以上のようなマイクロ揺動素子X3を複数含んでなる。マイクロ揺動素子アレイY3において、複数のマイクロ揺動素子X3は、全ての軸心A2(図37では図示せず)が相互に平行となるように、軸心A1の延び方向に一列に配されている。
【0112】
マイクロ揺動素子アレイY3において、各マイクロ揺動素子X3のフレーム30は一体化されて枠体をなし、揺動部10およびフレーム20を含む全マイクロ揺動素子X3の可動部を囲む。フレーム30の第1層部31の部分31aは、全てのマイクロ揺動素子X3にわたって連続しており、従って、全てのマイクロ揺動素子X3における揺動部10の電極部12およびシールド部14、フレーム20の第1層部21の部分21a,21cおよび第2層部22の部分22a、フレーム30の第2層部32の部分32c、並びに電極部70は、電気的に接続されている。
【0113】
マイクロ揺動素子アレイY3の駆動時には、全てのマイクロ揺動素子X3における揺動部10の電極部12および電極部70に対して共通的に所定の基準電位が付与された状態で、選択されたマイクロ揺動素子X3の電極部60,80の各々に対して所定の駆動電位が付与される。これにより、各マイクロ揺動素子X3の揺動部10およびフレーム20が個別に揺動駆動され、各マイクロ揺動素子X3の揺動部10のランド部11上のミラー面11’にて反射される光の反射方向を適宜切り換えることができる。
【0114】
マイクロ揺動素子X3において、揺動部10の揺動動作の軸心A1の延び方向に離隔し且つ揺動主部ないしランド部11に沿って延びる、フレーム20の二本の延び部20Aは、各々、図40に示すように、厚さ方向Hないし揺動動作方向に揺動主部から離隔する。また、二本の延び部20Aは、各々、軸心A1の延び方向において部分的にランド部11と重なり合う。すなわち、自然状態(非駆動時)にあるマイクロ揺動素子アレイY3では、図41に示すように、隣り合う二つの素子におけるランド部11間に、フレーム20の延び部20Aは位置しない。そのため、マイクロ揺動素子アレイY3では、隣り合う二つの素子におけるランド部11間に、各延び部20Aの全幅に相当するスペースと、各素子におけるランド部11および延び部20Aの間に必要なスペースとを、和したスペースを、確保する必要はない。したがって、マイクロ揺動素子アレイY3では、隣り合う素子におけるランド部11ないし揺動主部を、充分に近接して配置することができる。このようなマイクロ揺動素子アレイY3では、素子配列方向において充分に高い揺動主部(ランド部11,ミラー面11’)の占有比率を実現することができる。素子配列方向におけるミラー面11’の占有比率が高いほど、マイクロ揺動素子アレイY3が全体として受けて各ミラー面11’にて反射する光信号について、損失を低減することができる。
【0115】
マイクロ揺動素子アレイY3の各マイクロ揺動素子X3では、第1の実施形態において上述したのと同様に、シールド部14、フレーム20の第2層部22の部分22a、およびフレーム30の第2層部32の部分32cが、電界吸収効果を発揮し得る。この電界吸収効果は、マイクロ揺動素子X3における素子外への電界漏れを防止または抑制する。このような素子外への電界漏れの防止または抑制により、マイクロ揺動素子アレイY3における一のマイクロ揺動素子X3の電極部12,60によって構成される駆動機構からの漏れ電界が、隣接する他のマイクロ揺動素子X3の駆動特性に不当な影響を与えることを、回避することができる。したがって、当該電界吸収効果は、マイクロ揺動素子X3の配列方向における高密度化、ひいては、素子配列方向における揺動主部(ランド部11,ミラー面11’)の占有比率の向上に資する。
【0116】
図42および図43は、マイクロ揺動素子X3の第1変形例を表す。図42は当該第1変形例の平面図である。図43は、図42の線XLIII−XLIIIに沿った拡大断面図であり、図38に示すマイクロ揺動素子X3にとっての図40に相当する。
【0117】
マイクロ揺動素子X3においては、図42および図43に示すように、軸心A1の延び方向におけるランド部11の長さL1について、図38および図40に示すよりも長く設計してもよい。具体的には、軸心A1の延び方向において、フレーム20の二本の延び部20Aが、ランド部11ないし揺動主部の端部間以内に収まるように、ランド部11の長さL1について、図38および図40に示すよりも長く設計してもよい。このような構成は、マイクロ揺動素子アレイY3において、隣り合う素子のランド部11ないし揺動主部について近接配置するうえで好ましく、ひいては、素子配列方向における揺動主部(ランド部11,ミラー面11’)の占有比率の向上に資する。
【0118】
図44から図46は、マイクロ揺動素子X3の第2変形例を表す。図44は当該第2変形例の平面図である。図45は当該第2変形例の一部省略平面図である。図46は、図44の線XLVI−XLVIに沿った拡大断面図であり、図38に示すマイクロ揺動素子X3にとっての図40に相当する。
【0119】
マイクロ揺動素子X3においては、図45および図46に示すように、フレーム20の延び部20A間の離隔距離G2について、図39および図40に示すよりも短く設計してもよい。具体的には、軸心A1の延び方向において、フレーム20の二本の延び部20Aが、ランド部11ないし揺動主部の端部間以内に収まるように、延び部20A間の離隔距離G2について、図39および図40に示すよりも短く設計してもよい。本変形例では、フレーム20における延び部20A間の離隔距離G2は、延び部20B間の離隔距離G3より小さい。このような構成は、マイクロ揺動素子アレイY3において、隣り合う素子のフレーム20間の電気的干渉を低減するうえで好適であり、従って、ランド部11ないし揺動主部について近接配置するうえで好ましく、ひいては、素子配列方向における揺動主部(ランド部11,ミラー面11’)の占有比率の向上に資する。
【0120】
マイクロ揺動素子X3は、角速度センサや加速度センサなどのセンシングデバイスとしても構成することができる。センシングデバイスとしてのマイクロ揺動素子X3においては、揺動部10のランド部11上のミラー面11’は必ずしも設ける必要はない。角速度センサとして構成された場合のマイクロ揺動素子X3による角速度検出方法は、例えば、角速度センサとして構成された場合の上述のマイクロ揺動素子X1による角速度検出方法と同様である。加速度センサとして構成された場合のマイクロ揺動素子X3による加速度検出方法は、例えば、加速度センサとして構成された場合の上述のマイクロ揺動素子X1による加速度検出方法と同様である。
【0121】
図47から図49は、マイクロ揺動素子アレイY3に含まれる各マイクロ揺動素子X3の製造方法の一例を表す。この方法は、バルクマイクロマシニング技術によりマイクロ揺動素子X3を製造するための一手法である。図47から図49においては、図49(c)に示すランド部L、梁部B、フレームF1,F2,F3、連結部C1,C2、および一組の電極E1,E2の形成過程を、一の断面の変化として表す。当該一の断面は、加工が施される材料基板(多層構造を有するウエハ)における単一のマイクロ揺動素子形成区画に含まれる複数の所定箇所の断面を、モデル化して連続断面として表したものである。ランド部Lは、ランド部11の一部に相当する。梁部Bは、梁部13に相当する。フレームF1は、フレーム20の一部に相当する。フレームF2は、フレーム20における延び部20A(第2層部22の部分22aの一部)に相当する。フレームF3は、フレーム30の一部に相当する。連結部C1は、連結部40に相当し、トーションバー41の延び方向の断面を表す。連結部C2は、連結部40,50A,50Bの各々に相当し、各トーションバー41,51の横断面を表す。電極E1は、電極部12,70の各々の一部に相当し、一組の電極歯12aおよび一組の電極歯71の各々の横断面を表す。電極E2は、電極部60,80の各々の一部に相当し、一組の電極歯61および一組の電極歯81の各々の横断面を表す。
【0122】
マイクロ揺動素子X3の製造においては、まず、図47(a)に示すような材料基板300を用意する。材料基板300は、シリコン層301,302と、当該シリコン層301,302間の絶縁層303とからなる積層構造を有するSOIウエハであり、図外において上述の導電ビア16,24〜26,34,35を構成することとなる導電ビアが所定の箇所に予め埋め込み形成されたものである。シリコン層301,302は、不純物をドープすることにより導電性を付与されたシリコン材料よりなる。不純物としては、Bなどのp型不純物や、PおよびSbなどのn型不純物を採用することができる。絶縁層303は例えば酸化シリコンよりなる。シリコン層301の厚さは例えば20〜200μmであり、シリコン層302の厚さは例えば20〜200μmであり、絶縁層303の厚さは例えば0.3〜2μmである。
【0123】
次に、図47(b)に示すように、シリコン層301上にミラー面11’を形成する。ミラー面11’の形成手法については、第1の実施形態に関して図20(b)を参照して上述したのと同様である。
【0124】
次に、図47(c)に示すように、シリコン層301上に酸化膜パターン110およびレジストパターン111を形成し、シリコン層302上に酸化膜パターン112を形成する。酸化膜パターン110,112およびレジストパターン111のパターン形状および形成手法については、第1の実施形態に関して図20(c)を参照して上述したのと同様である。
【0125】
次に、図47(d)に示すように、酸化膜パターン110およびレジストパターン111をマスクとして利用して、DRIEにより、シリコン層301に対して所定の深さまでエッチング処理を行う。所定の深さとは、連結部C1,C2の厚さに相当する深さであり、例えば5μmである。
【0126】
次に、図48(a)に示すようにレジストパターン111を除去する。例えば、所定の剥離液を作用させることにより、レジストパターン111を剥離することができる。
【0127】
次に、図48(b)に示すように、酸化膜パターン110をマスクとして利用して、DRIEにより、連結部C1,C2を残存形成しつつシリコン層201に対してエッチング処理を行う。本工程にて、ランド部L、梁部B、電極E1、フレームF1の一部(フレーム20の第1層部21)、フレームF3の一部(フレーム30の第1層部31)、および各連結部C1,C2が、成形される。
【0128】
次に、図48(c)に示すように、材料基板301のシリコン層301側にレジストパターン310を形成する。レジストパターン310は、ランド部L(ランド部11)においてフレームF2(フレーム20の延び部20A)に対向することとなる縁端部に沿って延びる開口部310aを有する。このようなレジストパターン310は、例えば、フィルム状のレジスト材料を材料基板301のシリコン層301に貼り合わせた後、当該レジスト膜をパターニングすることによって、形成することができる。
【0129】
次に、図48(d)に示すように、レジストパターン310をマスクとして利用して、絶縁層303に対してエッチング処理を行う。エッチング手法としては、ドライエッチングまたはウエットエッチングを採用することができる。ドライエッチングを採用する場合、エッチングガスとしては、例えば、CF4やCHF3などを採用することができる。ウエットエッチングを採用する場合、エッチング液としては、例えば、フッ酸とフッ化アンモニウムからなるバッファードフッ酸(BHF)を使用することができる。
【0130】
次に、図49(a)に示すように、レジストパターン310を除去する。例えば、所定の剥離液を作用させることにより、レジストパターン310を剥離することができる。
【0131】
次に、図49(b)に示すように、酸化膜パターン112をマスクとして利用して、DRIEによりシリコン層302に対してエッチング処理を行う。本工程にて、フレームF1の一部(フレーム20の第2層部22)、フレームF2(フレーム20の第2層部22の一部たる延び部20A)、フレームF3の一部(フレーム30の第2層部32)、および電極E2が、成形される。
【0132】
次に、図49(c)に示すように、絶縁層303において露出している箇所、および酸化膜パターン110,112を、エッチング除去する。エッチング手法については、第1の実施形態に関して図21(d)を参照して上述したのと同様である。
【0133】
以上の一連の工程を経ることにより、ランド部L、梁部B、フレームF1,F2,F3、連結部C1,C2、および一組の電極E1,E2を成形するなどしてマイクロ揺動素子X3を製造することができる。
【0134】
本方法によって製造されるマイクロ揺動素子X3の揺動部10のランド部11における対向部11aとフレーム20の第2層部22における延び部20Aとの間の離隔距離G1は、用いた材料基板300の絶縁層303(中間層)の厚さと等しい。このような本実施形態では、離隔距離G1について、高精度に設定しやすい。
【0135】
上述のマイクロ揺動素子アレイY1〜Y3を構成するマイクロ揺動素子X1〜X3については、いわゆる一軸型の揺動素子として構成してもよい。マイクロ揺動素子X1〜X3を一軸型の揺動素子として構成する場合、電極部70,80を設けず、且つ、フレーム20をフレーム30に対して固定する構造を採用する。
【0136】
上述のマイクロ揺動素子X1〜X3は、光スイッチング装置を構成するためのマイクロミラー素子として採用することができる。
【0137】
図50は、第4の実施形態に係る空間光結合型の光スイッチング装置400の概略構成を表す。光スイッチング装置400は、一対のマイクロミラーアレイユニット401,402と、入力ファイバアレイ403と、出力ファイバアレイ404と、複数のマイクロレンズ405,406とを備える。入力ファイバアレイ403は所定数の入力ファイバ403aからなり、マイクロミラーアレイユニット401には、各入力ファイバ403aに対応するマイクロミラー素子401aが複数配設されている。出力ファイバアレイ404は所定数の出力ファイバ404aからなり、マイクロミラーアレイユニット402には、各出力ファイバ404aに対応するマイクロミラー素子402aが複数配設されている。マイクロミラー素子401a,402aは、各々、光を反射するためのミラー面を有して当該ミラー面の向きを制御できるように構成されており、上述のマイクロ揺動素子X1〜X3のいずれかによって構成される。マイクロミラーアレイユニット401,402は、マイクロ揺動素子アレイY1〜Y3のいずれかによって構成してもよい。複数のマイクロレンズ405は、各々、入力ファイバ403aの端部に対向するように配置されている。また、複数のマイクロレンズ406は、各々、出力ファイバ405aの端部に対向するように配置されている。
【0138】
光スイッチング装置400において、入力ファイバ403aから出射される光L1は、対応するマイクロレンズ405を通過することによって、相互に平行光とされ、マイクロミラーアレイユニット401へ向かう。光L1は、対応するマイクロミラー素子401aで反射し、マイクロミラーアレイユニット402へと偏向される。このとき、マイクロミラー素子401aのミラー面は、光L1を所望のマイクロミラー素子402aに入射させるように、予め所定の方向を向いている。次に、光L1は、マイクロミラー素子402aで反射し、出力ファイバアレイ404へと偏向される。このとき、マイクロミラー素子402aのミラー面は、所望の出力ファイバ404aに光L1を入射させるように、予め所定の方向を向いている。
【0139】
このように、光スイッチング装置400によると、各入力ファイバ403aから出射した光Lは、マイクロミラーアレイユニット401,402における偏向によって、所望の出力ファイバ404aに到達する。すなわち、入力ファイバ403aと出力ファイバ404aは一対一で接続される。そして、マイクロミラー素子401a,402aにおける偏向角度を適宜変更することによって、光L1が到達する出力ファイバ404aが切換えられる。
【0140】
光ファイバを媒体として伝送された光信号の伝送経路を或るファイバから他のファイバへと切換えるための光スイッチング装置に求められる特性としては、切換え動作における、大容量性、高速性、高信頼性などが挙げられる。これらの観点より、光スイッチング装置に組み込まれるスイッチング素子としては、マイクロマシニング技術によって作製されるマイクロミラー素子が好ましい。マイクロミラー素子によると、光スイッチング装置における入力側の光伝送路と出力側の光伝送路との間で、光信号を電気信号に変換せずに光信号のままでスイッチング処理を行うことができ、上述の特性を得るうえで好適だからである。
【0141】
図51は、第5の実施形態に係る波長選択型の光スイッチング装置500の概略構成を表す。光スイッチング装置500は、マイクロミラーアレイユニット501と、一本の入力ファイバ502と、三本の出力ファイバ503と、複数のマイクロレンズ504a,504bと、分光器505と、集光レンズ506とを備える。マイクロミラーアレイユニット501は、複数のマイクロミラー素子501aを有し、当該複数のマイクロミラー素子501aは、マイクロミラーアレイユニット501において例えば一列に配設されている。各マイクロミラー素子501aは、光を反射するためのミラー面を有して当該ミラー面の向きを制御できるように構成されており、上述のマイクロ揺動素子X1〜X3のいずれかによって構成される。マイクロミラーアレイユニット501は、上述のマイクロ揺動素子アレイY1〜Y3のいずれかによって構成してもよい。マイクロレンズ504aは、入力ファイバ502の端部に対向するように配置されている。マイクロレンズ504bは、出力ファイバ503の端部に対向するように配置されている。分光器505は、波長によって反射光の回折の程度が異なる反射型回折格子である。
【0142】
光スイッチング装置500において、入力ファイバ502から出射される光L2(複数の波長が混在している)は、マイクロレンズ504aを通過することによって、平行光とされる。この光L2は、分光器505にて反射する(このとき、波長ごとに異なる角度で反射する)。当該反射光は、集光レンズ506を通過する。その際、波長ごとに、マイクロミラーアレイユニット501において対応するマイクロミラー素子501aへ集光される。各波長の光は、対応するマイクロミラー素子501aで所定方向に反射される。このとき、マイクロミラー素子501aのミラー面は、対応する波長の光を所望の出力ファイバ503に到達させるように、予め所定の方向を向いている。マイクロミラー素子501aにて反射した光は、その後、集光レンズ506、分光器505、およびマイクロレンズ504bを経由して、選択された所定の出力ファイバ503に入射する。このようにして、光スイッチング装置500によると、光L2から所望の波長の光を選択することができる。
【0143】
以上のまとめとして、本発明の構成およびそのバリエーションを以下に付記として列挙する。
【0144】
(付記1)フレームと、
揺動主部を有する揺動部と、
前記フレームおよび前記揺動部を連結して当該揺動部の揺動動作の軸心を規定する捩れ連結部と、を備え、
前記フレームは、前記軸心の延び方向に離隔し且つ前記揺動動作の方向において空隙を介して前記揺動主部に対向して当該揺動主部に沿って延びる、第1延び部および第2延び部を有する、マイクロ揺動素子。
(付記2)前記第1および第2延び部の間の離隔距離は、前記軸心の延び方向における前記揺動主部の長さより小さい、付記1に記載のマイクロ揺動素子。
(付記3)前記第1および第2延び部は、前記軸心の延び方向において、前記揺動主部の端部間以内に設けられている、付記1に記載のマイクロ揺動素子。
(付記4)前記揺動部は、更に、第1電極部と、当該第1電極部および前記揺動主部を連結する梁部とを有し、
前記捩れ連結部は、前記揺動部における前記梁部に接続し、
前記第1電極部と協働して前記揺動部の前記揺動動作の駆動力を発生させるための、前記フレームに固定された第2電極部を更に備える、付記1から3のいずれか一つに記載のマイクロ揺動素子。
(付記5)前記第1および第2電極部は、複数の電極歯が並列してなる櫛歯電極構造を有する、付記4に記載のマイクロ揺動素子。
(付記6)前記フレームは、前記軸心の延び方向に離隔し且つ前記第1電極部に沿って延びる第3延び部および第4延び部を有し、前記第3および第4延び部の間の離隔距離は、前記軸心の延び方向における前記第1電極部の長さより大きい、付記4または5に記載のマイクロ揺動素子。
(付記7)前記フレームにおける前記第1および第2延び部の間の離隔距離は、前記第3および第4延び部の間の離隔距離より小さい、付記6に記載のマイクロ揺動素子。
(付記8)第1層と、第2層と、当該第1および第2層の間の中間層とからなる積層構造を含む材料基板に対して加工を施すことによって製造されたものであり、
前記揺動主部は、前記第1層から形成された第1層由来部位を有し、当該第1層由来部位は、前記第1延び部に対向する第1対向部と前記第2延び部に対向する第2対向部とを含み、
前記第1および第2延び部は前記第2層に由来し、
前記第1対向部および前記第1延び部の間の離隔距離は前記中間層の厚さ以上であり、
前記第2対向部および前記第2延び部の間の離隔距離は前記中間層の厚さ以上である、付記1から7のいずれか一つに記載のマイクロ揺動素子。
(付記9)前記揺動主部の前記第1および第2対向部は、各々、前記第1層において前記中間層側の面が当該中間層から退避するように部分的に薄肉とされた箇所に由来する、付記8に記載のマイクロ揺動素子。
(付記10)前記第1および第2延び部は、各々、前記第2層において前記中間層側の面が当該中間層から退避するように部分的に薄肉とされた箇所に由来する、付記8に記載のマイクロ揺動素子。
(付記11)追加フレームと、当該追加フレームおよび前記フレームを連結して当該フレームの揺動動作の軸心を規定する追加捩れ連結部とを更に備える、付記1から10のいずれか一つに記載のマイクロ揺動素子。
(付記12)マイクロミラー素子、角速度センサ、または加速度センサとして構成されている、付記1から11のいずれか一つに記載のマイクロ揺動素子。
(付記13)付記1から12のいずれか一つに記載のマイクロ揺動素子を複数含む、マイクロ揺動素子アレイ。
(付記14)マイクロミラー素子として構成された付記1から11のいずれか一つに記載のマイクロ揺動素子を備える、光スイッチング装置。
【図面の簡単な説明】
【0145】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るマイクロ揺動素子アレイの平面図である。
【図2】図1に示すマイクロ揺動素子アレイに含まれるマイクロ揺動素子の平面図である。
【図3】図2に示すマイクロ揺動素子の一部省略平面図である。
【図4】図2の線IV−IVに沿った拡大断面図である。
【図5】図2の線V−Vに沿った拡大断面図である。
【図6】図2の線VI−VIに沿った拡大断面図である。
【図7】図2の線VII−VIIに沿った拡大断面図である。
【図8】図2の線VIII−VIIIに沿った拡大断面図である。
【図9】図2の線IX−IXに沿った拡大断面図である。
【図10】図2の線X−Xに沿った拡大断面図である。
【図11】図2の線XI−XIに沿った拡大断面図である。
【図12】駆動時における図2の線IV−IVに沿った拡大断面図である。
【図13】図1の線XIII−XIIIに沿った拡大断面図である。
【図14】第1の実施形態におけるマイクロ揺動素子の第1変形例の平面図である。
【図15】図14の線XV−XVに沿った拡大断面図である。
【図16】第1の実施形態におけるマイクロ揺動素子の第2変形例の平面図である。
【図17】図16に示すマイクロ揺動素子の一部省略平面図である。
【図18】図16の線XVIII−XVIIIに沿った拡大断面図である。
【図19】図2に示すマイクロ揺動素子の製造方法における一部の工程を表す。
【図20】図19の後に続く工程を表す。
【図21】図20の後に続く工程を表す。
【図22】マスクパターンの平面図である。
【図23】他のマスクパターンの平面図である。
【図24】本発明の第2の実施形態に係るマイクロ揺動素子アレイの平面図である。
【図25】図24に示すマイクロ揺動素子アレイに含まれるマイクロ揺動素子の平面図である。
【図26】図25に示すマイクロ揺動素子の一部省略平面図である。
【図27】図25の線XXVII−XXVIIに沿った拡大断面図である。
【図28】図24の線XXVIII−XXVIIIに沿った拡大断面図である。
【図29】第2の実施形態におけるマイクロ揺動素子の第1変形例の平面図である。
【図30】図29の線XXX−XXXに沿った拡大断面図である。
【図31】第2の実施形態におけるマイクロ揺動素子の第2変形例の平面図である。
【図32】図31に示すマイクロ揺動素子の一部省略平面図である。
【図33】図31の線XXXIII−XXXIIIに沿った拡大断面図である。
【図34】図25に示すマイクロ揺動素子の製造方法における一部の工程を表す。
【図35】図34の後に続く工程を表す。
【図36】図35の後に続く工程を表す。
【図37】本発明の第3の実施形態に係るマイクロ揺動素子アレイの平面図である。
【図38】図37に示すマイクロ揺動素子アレイに含まれるマイクロ揺動素子の平面図である。
【図39】図38に示すマイクロ揺動素子の一部省略平面図である。
【図40】図38の線XL−XLに沿った拡大断面図である。
【図41】図37の線XLI−XLIに沿った拡大断面図である。
【図42】第3の実施形態におけるマイクロ揺動素子の第1変形例の平面図である。
【図43】図42の線XLIII−XLIIIに沿った拡大断面図である。
【図44】第3の実施形態におけるマイクロ揺動素子の第2変形例の平面図である。
【図45】図44に示すマイクロ揺動素子の一部省略平面図である。
【図46】図44の線XLVI−XLVIに沿った拡大断面図である。
【図47】図38に示すマイクロ揺動素子の製造方法における一部の工程を表す。
【図48】図47の後に続く工程を表す。
【図49】図48の後に続く工程を表す。
【図50】第4の実施形態に係る光スイッチング装置の概略構成を表す。
【図51】第5の実施形態に係る光スイッチング装置の概略構成を表す。
【図52】従来のマイクロ揺動素子の平面図である。
【図53】図52の線LIII−LIIIに沿った断面図である。
【図54】図52の線LIV−LIVに沿った断面図である。
【図55】従来のマイクロ揺動素子アレイを表す。
【図56】図55の線LVI−LVIに沿った断面図である。
【符号の説明】
【0146】
X1,X2,X3,90 マイクロ揺動素子
Y1,Y2,Y3,90A マイクロ揺動素子アレイ
10 揺動部
11 ランド部
11’ ミラー面
11a 対向部
12,60,70,80 電極部
12a,12b,62a,62b,71,81 電極歯
13 梁部
14 シールド部
20,30,92,93 フレーム
20A,20B 延び部
21,31 第1層部
22,32 第2層部
23,33 絶縁層
40,50A,50B 連結部
41,51,94,95 トーションバー
A1,A2,B1,B2 軸心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレームと、
揺動主部を有する揺動部と、
前記フレームおよび前記揺動部を連結して当該揺動部の揺動動作の軸心を規定する捩れ連結部と、を備え、
前記フレームは、前記軸心の延び方向に離隔し且つ前記揺動動作の方向において空隙を介して前記揺動主部に対向して当該揺動主部に沿って延びる、第1延び部および第2延び部を有する、マイクロ揺動素子。
【請求項2】
前記第1および第2延び部は、前記軸心の延び方向において、前記揺動主部の端部間以内に設けられている、請求項1に記載のマイクロ揺動素子。
【請求項3】
前記揺動部は、更に、第1電極部と、当該第1電極部および前記揺動主部を連結する梁部とを有し、
前記捩れ連結部は、前記揺動部における前記梁部に接続し、
前記第1電極部と協働して前記揺動部の前記揺動動作の駆動力を発生させるための、前記フレームに固定された第2電極部を更に備える、請求項1または2に記載のマイクロ揺動素子。
【請求項4】
前記フレームは、前記軸心の延び方向に離隔し且つ前記第1電極部に沿って延びる第3延び部および第4延び部を有し、前記第3および第4延び部の間の離隔距離は、前記軸心の延び方向における前記第1電極部の長さより大きい、請求項3に記載のマイクロ揺動素子。
【請求項5】
第1層と、第2層と、当該第1および第2層の間の中間層とからなる積層構造を含む材料基板に対して加工を施すことによって製造されたものであり、
前記揺動主部は、前記第1層から形成された第1層由来部位を有し、当該第1層由来部位は、前記第1延び部に対向する第1対向部と前記第2延び部に対向する第2対向部とを含み、
前記第1および第2延び部は前記第2層に由来し、
前記第1対向部および前記第1延び部の間の離隔距離は前記中間層の厚さ以上であり、
前記第2対向部および前記第2延び部の間の離隔距離は前記中間層の厚さ以上である、請求項1から4のいずれか一つに記載のマイクロ揺動素子。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一つに記載のマイクロ揺動素子を複数含む、マイクロ揺動素子アレイ。
【請求項7】
マイクロミラー素子として構成された請求項1から5のいずれか一つに記載のマイクロ揺動素子を備える、光スイッチング装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate

【図27】
image rotate

【図28】
image rotate

【図29】
image rotate

【図30】
image rotate

【図31】
image rotate

【図32】
image rotate

【図33】
image rotate

【図34】
image rotate

【図35】
image rotate

【図36】
image rotate

【図37】
image rotate

【図38】
image rotate

【図39】
image rotate

【図40】
image rotate

【図41】
image rotate

【図42】
image rotate

【図43】
image rotate

【図44】
image rotate

【図45】
image rotate

【図46】
image rotate

【図47】
image rotate

【図48】
image rotate

【図49】
image rotate

【図50】
image rotate

【図51】
image rotate

【図52】
image rotate

【図53】
image rotate

【図54】
image rotate

【図55】
image rotate

【図56】
image rotate


【公開番号】特開2010−72346(P2010−72346A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−239709(P2008−239709)
【出願日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】