説明

マコモタケの発酵処理物

【目的】マコモタケの発酵処理物を含有する抗酸化剤及び高血圧抑制剤を提供する。
【構成】本発明はマコモタケの発酵処理物を含有することを特徴とする、抗酸化剤及び高血圧抑制剤である。本発明のマコモタケの発酵処理物はマコモタケの抽出物と比較して、優れた抗酸化作用及びアンジオテンシン変換酵素阻害効果をもち、高血圧抑制効果を示した。また、本発明のマコモタケの発酵処理物はラットに対しても優れた血圧降下作用を示した。さらに、これらを含有する食品又は医薬品は、安全で優れた高血圧抑制作用を示した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マコモタケの発酵処理物、又はその抽出物を含有する化粧品、食品、医薬品などに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、生体成分を酸化させる要因として、フリーラジカルや活性酸素がとりあげられ、その悪影響が問題となっている。フリーラジカルや活性酸素は体内で生じ、コラーゲンなどの生体組織を分解あるいは架橋し、また、油脂類を酸化して、細胞に障害を与える過酸化脂質をつくると言われている。このような障害は、肌のしわや張りの低下等の老化の原因になると考えられており、老化を防ぐ方法の一つにフリーラジカルや活性酸素を除去する方法が知られている。従来、抗酸化剤にはアスコルビン酸、トコフェロールやBHT(3,5−tert−ブチル−4−ヒドロキシトルエン)等が用いられ、活性酸素消去剤としてスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)等が用いられてきた。
【0003】
しかしながら、アスコルビン酸やSODは不安定であり、製剤化が難しく、トコフェロールも効果が充分であるとは言えない。また、合成化合物であるBHT等は安全性に問題があり、配合量に制限があることから、化学合成品ではなく、安定でかつ副作用の少ない天然原料が望まれている。
【0004】
また、高血圧の重要な要因の一つとして、血圧の上昇系を担うレニン−アンジオテンシン系があげられる。このレニン−アンジオテンシン系において、中心的な役割を果しているのがアンジオテンシン変換酵素(ACE)である。ACEは、不活性型のアンジオテンシンIを血圧上昇作用が高い、活性型のアンジオテンシンIIに変換する酵素である。そこで、ACEの活性を阻害することにより、血圧の上昇を抑制することが可能になる。最近では、ACEの活性を阻害することによって、レニン−アンジオテンシン系を調節して高血圧を抑制する試みが行われている。
【0005】
そのようなACE活性阻害を有する物質としては、合成化合物ではカプトプリル等のL−プロリン誘導体、天然物由来では蛇毒由来のブラディキニン増強因子等が知られている。このうちカプトプリルは経口降圧剤として既に実用化されているが、アレルギー症状、頭痛、めまい、ふらつき等の副作用を起こす場合がある。
【0006】
マコモタケの抽出物を利用したものとしては、化粧品が知られており(特許文献1)、また、飲食品としては破骨細胞分化増殖阻害組成物に応用されている(特許文献2)。
【特許文献1】特開平4−120009
【特許文献2】特開2006−193452
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、これらの検討では抗酸化作用及びACE阻害作用については報告されておらず、マコモタケを発酵処理することによってより優れた効果が得られることについても知られていない。
【0008】
以上のことから、本発明は安全性、安定性が高く、より優れた抗酸化作用及びACE阻害作用を有するマコモタケの発酵処理物を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような事情により、本発明者らは鋭意検討した結果、マコモタケに発酵処理を施すことにより、発酵処理を行わないものよりも優れた抗酸化作用(フリーラジカル捕捉除去作用)及び高血圧抑制作用(ACE阻害作用)をもつことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
よって、本発明はマコモタケの発酵処理物、及びその抽出物を含有する抗酸化剤及び高血圧抑制剤を提供する。
【0011】
本発明に用いるマコモタケとは、マコモ(学名:ZIZANIA LATIFOLIA)の茎の部分に黒穂菌の一種の糸状菌(学名:USTILAGO ESCULENTA)が寄生し、茎基部に形成する菌えいである。この菌えいは、黒穂胞子層の形成程度によってマコモズミ型とマコモタケ型がある。中国や台湾に自生又は植栽されているマコモの菌えいは、肥大が著しく「たけのこ」のようになるマコモタケ型である。この菌えいは、野菜として食用や薬用として用いられている。日本においてもマコモタケの栽培が行われており、容易に入手することができる。
【0012】
本発明に用いるマコモタケの発酵処理物とは、生のマコモタケを凍結後、融解し、菌えいであるマコモタケ自身で発酵処理を行うことを特徴とする。凍結条件としては、0℃以下で凍結できればよく、好ましくは−20℃〜0℃で凍結するのがよい。融解条件としては、氷が溶ける温度であればよく、常温であっても加温してもよい。発酵条件としては、10℃〜80℃、好ましくは20℃〜60℃の温度条件下で発酵させることが好ましい。このときの加熱時間は、10時間以上、好ましくは15時間〜48時間が良い。48時間を超えて加熱した場合、効果の増強は認められにくく不経済である。上記の発酵処理法としては、マコモタケの植物体をそのまま用いても良いし、あるいはスライスにして行っても良いし、みじん切りやミキサーにかけて細断して行っても良く、発酵効率を考慮して適宜行うことができる。さらに、本発明のマコモタケの発酵処理物は上記の発酵処理に加え、加熱乾燥を行うことが好ましい。加熱温度としては、50℃〜150℃が好ましく、60℃〜120℃が最も好ましい。また、加熱時間としては、1時間〜48時間が好ましく、6時間〜24時間が最も好ましい。
【0013】
本発明に用いるマコモタケの発酵処理物の抽出物とは、マコモタケの発酵処理物から溶媒で抽出したものである。その抽出方法は特に限定されず、例えば、加熱抽出したものであっても良いし、常温抽出したものであっても良い。
【0014】
抽出する溶媒としては、例えば、水、低級アルコール類(メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール等)、液状多価アルコール(1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン等)、アセトニトリル、エステル類(酢酸エチル、酢酸ブチル等)、炭化水素類(ヘキサン、ヘプタン、流動パラフィン等)、エーテル類(エチルエーテル、テトラヒドロフラン、プロピルエーテル等)が挙げられる。好ましくは、水、エタノール、1,3−ブチレングリコール及びプロピレングリコールが良い。これらの溶媒は一種でも二種以上を混合して用いても良い。
【0015】
上記抽出物は、抽出した溶液のまま用いても良く、必要に応じて、濃縮、希釈及び濾過処理、活性炭等による脱色、脱臭処理等をして用いても良い。更には、抽出した溶液を濃縮乾固、噴霧乾燥、凍結乾燥等の処理を行い、乾燥物として用いても良い。
【0016】
本発明の抗酸化剤及び高血圧抑制剤は、マコモタケの発酵処理物の抽出物をそのまま使用してもよく、効果を損なわない範囲内で、希釈剤を用いることができ、希釈剤としては固体、半固体、液体のいずれでもよく、例えば次のものがあげられる。すなわち、賦形剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、表面活性剤、滑沢剤、分散剤、緩衝剤、香料、保存料、溶解補助剤、溶剤等があげられる。具体的には、乳糖、ショ糖、ソルビット、マンニット、澱粉、沈降性炭酸カルシウム、重質酸化マグネシウム、タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、セルロース又はその誘導体、アミロペクチン、ポリビニルアルコール、ゼラチン、界面活性剤、水、生理食塩水、エタノール、グリセリン、プロピレングリコール、カカオ脂、ワセリン、パラフィン、高級アルコール等があげられる。
【0017】
本発明の高血圧抑制剤は、食品又は医薬品のいずれにも用いることができる。食品の剤型としては、錠菓、カプセル剤、チョコレート、ガム、飴、飲料等の通常の食品形態を採用することができる。医薬品の剤型としては、例えば、経口用として散剤、顆粒剤、錠剤、糖衣錠剤、カプセル剤、シロップ剤、丸剤、懸濁剤、液剤、乳剤等である。非経口用としては注射液にすることができる。また、座薬とすることも出来る。一日の投与量は、体重1kg当たり、抽出物として1mg〜1000mg好ましくは10mg〜500mg投与することができ、2〜3回に分けて投与するのが望ましい。
【0018】
本発明の抗酸化剤は化粧品、食品、医薬品などの全量に対し、0.001〜10%好ましくは0.01〜1%配合することができる。
【0019】
本発明の皮膚外用剤には、マコモタケの発酵処理物の抽出物をそのまま使用しても良く、抽出物の効果を損なわない範囲内で、外用剤に用いられる成分である油脂類、ロウ類、炭化水素類、脂肪酸類、アルコール類、エステル類、界面活性剤、金属石鹸、pH調整剤、防腐剤、香料、保湿剤、粉体、紫外線吸収剤、増粘剤、色素、酸化防止剤、美白剤、キレート剤等の成分を配合することができる。
【0020】
本発明の皮膚外用剤は、化粧品、又は医薬品に用いることができ、その剤型としては、例えば、化粧水、クリーム、乳液、ゲル剤、エアゾール剤、エッセンス、パック、洗浄剤、浴用剤、ファンデーション、打粉、口紅、軟膏、パップ剤等の皮膚に適用されるものが挙げられる。
【0021】
本発明に用いる上記抽出物の配合量は、本発明の皮膚外用剤全量に対し、固形物に換算して0.001〜10%好ましくは0.01〜1%の配合が良い。0.001%未満では十分な効果は望みにくい。10%を越えて配合した場合、効果の増強は認められにくく不経済である。また、添加の方法については、予め加えておいても、製造途中で添加しても良く、作業性を考えて適宜選択すれば良い。
【0022】
また、本発明のマコモタケの発酵処理物は医薬部外品(内用、外用とも)としても利用可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
次に本発明を詳細に説明するため、実施例として本発明に用いる抽出物の製造例、本発明の処方例及び実験例を挙げるが、本発明はこれに限定されるものではない。実施例に示す配合量の部とは重量部を、%とは重量%を示す。
【実施例1】
【0024】
製造例1 マコモタケ発酵処理物の調製1
生のマコモタケ110gを−20℃で凍結した後、室温で融解して5mm程度にスライスした。その後、温度60℃の温度条件下で24時間発酵させ、次いで100℃で12時間加熱乾燥することでマコモタケの発酵処理物を4.6g得た。これを製造例4〜7に用いた。
【0025】
製造例2 マコモタケ発酵処理物の調製2
生のマコモタケ110gを−10℃で凍結した後、室温で融解して2mm程度にスライスした。その後、温度50℃の温度条件下で24時間発酵させ、次いで80℃で12時間加熱乾燥することでマコモタケの発酵処理物を4.8g得た。
【0026】
製造例3 マコモタケ発酵処理物の粉末の調製
生のマコモタケ110gを−20℃で凍結した後、室温で融解して5mm程度にスライスした。その後、温度60℃の温度条件下で24時間発酵させ、凍結乾燥し、粉砕することでマコモタケ発酵処理物の粉末を4.5g得た。これを製造例8に用いた。
【0027】
製造例4 マコモタケ発酵処理物の熱水抽出物の調製1
マコモタケ発酵処理物(製造例1)の乾燥物20gに精製水400mLを加え、95〜100℃で2時間抽出した後、濾過し、その濾液を濃縮し、凍結乾燥してマコモタケ発酵処理物の熱水抽出物を7.8g得た。
【0028】
製造例5 マコモタケ発酵処理物の50%エタノール抽出物の調製
マコモタケ発酵処理物(製造例1)の乾燥物20gに精製水200mL及びエタノール200mLを加え、常温で7日間抽出した後、濾過し、その濾液を濃縮乾固して、マコモタケ発酵処理物の50%エタノール抽出物を6.3g得た。
【0029】
製造例6 マコモタケ発酵処理物のエタノール抽出物の調製
マコモタケ発酵処理物(製造例1)の乾燥物20gにエタノール400mLを加え、常温で7日間抽出した後、濾過し、その濾液を濃縮乾固して、マコモタケ発酵処理物の50%エタノール抽出物を1.1g得た。
【0030】
製造例7 マコモタケ発酵処理物の50%1,3−ブチレングリコール抽出物の調製
マコモタケ発酵処理物(製造例1)の乾燥物20gに精製水200mL及び1,3−ブチレングリコール200mLを加え、常温で7日間抽出した後、濾過し、その濾液を濃縮乾固して、マコモタケ発酵処理物の50%1,3−ブチレングリコール抽出物を3.9g得た。
【0031】
製造例8 マコモタケ発酵処理物の熱水抽出物の調製2
マコモタケ発酵処理物の粉末(製造例3)を用いて製造例4と同様に抽出し、マコモタケの発酵処理物の熱水抽出物を8.1g得た。
【0032】
比較製造例1 マコモタケの熱水抽出物の調製
生のマコモタケ60gを−20℃で凍結した後、室温で融解して5mm程度にスライスした。その後、精製水500mLを加え、95〜100℃で2時間抽出した後、濾過し、その濾液を濃縮し、凍結乾燥してマコモタケの熱水抽出物を3.7g得た。
【0033】
比較製造例2 マコモタケの50%エタノール抽出物の調製
生のマコモタケ60gを−20℃で凍結した後、室温で融解して5mm程度にスライスした。その後、精製水250mL及びエタノール250mLを加え、常温で7日間抽出した後、濾過し、その濾液を濃縮乾固して、マコモタケの50%エタノール抽出物を3.4g得た。
【0034】
比較製造例3 マコモタケのエタノール抽出物の調製
生のマコモタケ60gを−20℃で凍結した後、室温で融解して5mm程度にスライスした。その後、エタノール500mLを加え、常温で7日間抽出した後、濾過し、その濾液を濃縮乾固して、マコモタケのエタノール抽出物を0.4g得た。
【実施例2】
【0035】
処方例1 化粧水
処方 配合量
1.マコモタケ発酵処理物の熱水抽出物(製造例4) 0.1部
2.1,3−ブチレングリコール 8.0
3.グリセリン 2.0
4.キサンタンガム 0.02
5.クエン酸 0.01
6.クエン酸ナトリウム 0.1
7.エタノール 5.0
8.パラオキシ安息香酸メチル 0.1
9.ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(40E.O.) 0.1
10.香料 適量
11.精製水にて全量を100とする
[製造方法]成分1〜6及び11と、成分7〜10をそれぞれ均一に溶解し、両者を混合し濾過して製品とする。
【0036】
比較例1 従来の化粧品
処方例1において、マコモタケ発酵処理物の熱水抽出物をマコモタケの熱水抽出物(比較製造例1)に置き換えたものを従来の化粧水とした。
【0037】
処方例2 クリーム
処方 配合量
1.マコモタケ発酵処理物の50%エタノール抽出物(製造例5) 0.05部
2.スクワラン 5.5
3.オリーブ油 3.0
4.ステアリン酸 2.0
5.ミツロウ 2.0
6.ミリスチン酸オクチルドデシル 3.5
7.ポリオキシエチレンセチルエーテル(20E.O.) 3.0
8.ベヘニルアルコール 1.5
9.モノステアリン酸グリセリン 2.5
10.香料 0.1
11.パラオキシ安息香酸メチル 0.2
12.パラオキシ安息香酸エチル 0.05
13.1,3−ブチレングリコール 8.5
14.精製水にて全量を100とする
[製造方法]成分2〜9を加熱溶解して混合し、70℃に保ち油相とする。成分1及び11〜14を加熱溶解して混合し、75℃に保ち水相とする。油相に水相を加えて乳化して、かき混ぜながら冷却し、45℃で成分10を加え、更に30℃まで冷却して製品とする。
【0038】
比較例2 従来のクリーム
処方例2において、マコモタケ発酵処理物の50%エタノール抽出物をマコモタケの50%エタノール抽出物(比較製造例2)に置き換えたものを従来のクリームとした。
【0039】
処方例3 乳液
処方 配合量
1.マコモタケ発酵処理物の熱水抽出物(製造例4) 0.001部
2.スクワラン 5.0
3.オリーブ油 5.0
4.ホホバ油 5.0
5.セタノール 1.5
6.モノステアリン酸グリセリン 2.0
7.ポリオキシエチレンセチルエーテル(20E.O.) 3.0
8.ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート(20E.O.) 2.0
9.香料 0.1
10.プロピレングリコール 1.0
11.グリセリン 2.0
12.パラオキシ安息香酸メチル 0.2
13.精製水にて全量を100とする
[製造方法]成分2〜8を加熱溶解して混合し、70℃に保ち油相とする。成分1及び10〜13を加熱溶解して混合し、75℃に保ち水相とする。油相に水相を加えて乳化して、かき混ぜながら冷却し、45℃で成分9を加え、更に30℃まで冷却して製品とする。
【0040】
処方例4 ゲル剤
処方 配合量
1.マコモタケ発酵処理物の熱水抽出物(製造例8) 1.0部
2.エタノール 5.0
3.パラオキシ安息香酸メチル 0.1
4.ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(60E.O.) 0.1
5.香料 適量
6.1,3−ブチレングリコール 5.0
7.グリセリン 5.0
8.キサンタンガム 0.1
9.カルボキシビニルポリマー 0.2
10.水酸化カリウム 0.2
11.精製水にて全量を100とする
[製造方法]成分2〜5と、成分1及び6〜11をそれぞれ均一に溶解し、両者を混合して製品とする。
【0041】
処方例5 パック
処方 配合量
1.マコモタケ発酵処理物の熱水抽出物(製造例4) 0.1部
2.マコモタケ発酵処理物の50%エタノール抽出物(製造例5) 0.1
3.ポリビニルアルコール 12.0
4.エタノール 5.0
5.1,3−ブチレングリコール 8.0
6.パラオキシ安息香酸メチル 0.2
7.ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(20E.O.) 0.5
8.クエン酸 0.1
9.クエン酸ナトリウム 0.3
10.香料 適量
11.精製水にて全量を100とする
[製造方法]成分1〜11を均一に溶解し製品とする。
【0042】
処方例6 ファンデーション
処方 配合量
1.マコモタケ発酵処理物の50%エタノール抽出物(製造例5) 1.0部
2.ステアリン酸 2.4
3.ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート(20E.O.) 1.0
4.ポリオキシエチレンセチルエーテル(20E.O.) 2.0
5.セタノール 1.0
6.液状ラノリン 2.0
7.流動パラフィン 3.0
8.ミリスチン酸イソプロピル 6.5
9.カルボキシメチルセルロースナトリウム 0.1
10.ベントナイト 0.5
11.プロピレングリコール 4.0
12.トリエタノールアミン 1.1
13.パラオキシ安息香酸メチル 0.2
14.二酸化チタン 8.0
15.タルク 4.0
16.ベンガラ 1.0
17.黄酸化鉄 2.0
18.香料 適量
19.精製水にて全量を100とする
[製造方法]成分2〜8を加熱溶解し、80℃に保ち油相とする。成分19に成分9をよく膨潤させ、続いて、成分1及び10〜13を加えて均一に混合する。これに粉砕機で粉砕混合した成分14〜17を加え、ホモミキサーで撹拌し75℃に保ち水相とする。この水相に油相をかき混ぜながら加え、冷却し、45℃で成分18を加え、かき混ぜながら30℃まで冷却して製品とする。
【0043】
処方例7 浴用剤
処方 配合量
1.マコモタケ発酵処理物の熱水抽出物(製造例4) 5.0部
2.炭酸水素ナトリウム 50.0
3.黄色202号(1) 適量
4.香料 適量
5.硫酸ナトリウムにて全量を100とする
[製造方法]成分1〜5を均一に混合し製品とする。
【0044】
処方例8 軟膏
処方 配合量
1.マコモタケ発酵処理物の熱水抽出物(製造例4) 0.01部
2.マコモタケ発酵処理物の50%1,3−ブチレングリコール抽出物
(製造例7) 0.5
3.ポリオキシエチレンセチルエーテル(30E.O.) 2.0
4.モノステアリン酸グリセリン 10.0
5.流動パラフィン 5.0
6.セタノール 6.0
7.パラオキシ安息香酸メチル 0.1
8.プロピレングリコール 10.0
9.精製水にて全量を100とする
[製造方法]成分3〜6を加熱溶解して混合し、70℃に保ち油相とする。成分1、2及び7〜9を加熱溶解して混合し、75℃に保ち水相とする。油相に水相を加えて乳化して、かき混ぜながら30℃まで冷却して製品とする。
【0045】
処方例9 散剤
処方 配合量
1.マコモタケ発酵処理物の熱水抽出物(製造例4) 20.0部
2.乾燥コーンスターチ 30.0
3.微結晶セルロース 50.0
[製造方法]成分1〜3を混合し、散剤とする。
【0046】
処方例10 錠剤
処方 配合量
1.マコモタケ発酵処理物のエタノール抽出物(製造例6) 1.0部
2.乾燥コーンスターチ 29.0
3.カルボキシメチルセルロースカルシウム 20.0
4.微結晶セルロース 40.0
5.ポリビニルピロリドン 7.0
6.タルク 3.0
[製造方法]成分1〜4を混合し、次いで成分5の水溶液を結合剤として加えて顆粒成形する。成形した顆粒に成分6を加えて打錠する。1錠0.52gとする。
【0047】
処方例11 錠菓
処方 配合量
1.マコモタケ発酵処理物の熱水抽出物(製造例4) 1.0部
2.乾燥コーンスターチ 50.0
3.エリスリトール 40.0
4.クエン酸 5.0
5.ショ糖脂肪酸エステル 3.0
6.香料 適量
7.精製水にて全量を100とする
[製造方法]成分1〜4及び7を混合し、顆粒成形する。成形した顆粒に成分5及び6を加えて打錠する。1粒1.0gとする。
【0048】
処方例12 飲料1
処方 配合量
1.マコモタケ発酵処理物の熱水抽出物(製造例4) 20.0部
2.果糖ブドウ糖液糖 12.5
3.クエン酸 0.1
4.香料 0.05
5.精製水にて全量を100とする
[製造方法]成分1〜8を混合し、飲料1とする。
【0049】
処方例13 粉末飲料
処方 配合量
1.マコモタケ発酵処理物の粉末(製造例3) 45.0部
2.粉糖 30.0
3.粉末ピーチ果汁 15.0
4.L−アスコルビン酸 8.0
5.結晶クエン酸 1.2
6.クエン酸ナトリウム 0.75
7.アスパルテーム 0.02
8.粉末ピーチ香料 0.03
[製造方法]成分1〜8を混合し、粉末飲料とする。
【0050】
処方例14 飲料2
処方 配合量
1.マコモタケ発酵処理物の粉末(製造例3) 20.0部
2.果糖ブドウ糖液糖 12.5
3.クエン酸 0.1
4.香料 0.05
5.精製水にて全量を100とする
[製造方法]成分1〜8を混合し、飲料2とする。
【0051】
次に、本発明の効果を詳細に説明するため、実験例を挙げる。
【実施例3】
【0052】
実験例1 フリーラジカル捕捉除去作用
フリーラジカル捕捉除去作用の評価を行った。陽性対照としてはアスコルビン酸を用いた。フリーラジカルのモデルとしては、安定なフリーラジカルであるα,α−ジフェニル−β−ピクリルヒドラジル(以下DPPHとする)を用い、試料と一定の割合で一定時間反応させ、減少するラジカルの量を波長517nmの吸光度の減少量から測定した。
【0053】
試料は、製造例4,5,6,8及び比較製造例1,2,3を用いた。
【0054】
フリーラジカル捕捉除去作用の測定方法
各試料を、最終濃度0.5mg/mlとなるように加えた0.1M酢酸緩衝液(pH5.5)2mlに無水エタノール2ml及び0.5mM DPPH無水エタノール溶液1mlを加えて反応液とした。また、油溶性の試料の場合は無水エタノール2mlに試料を加えて反応液とした。その後、37℃で30分間反応させ、水を対照として波長517nmの吸光度(A)を測定した。また、ブランクとして試料の代わりに精製水を用いて吸光度(B)を測定した。フリーラジカル捕捉除去率は、以下に示す式より算出した。
フリーラジカル捕捉除去率(%)=(1−A/B)×100
【0055】
これらの試験結果を表1に示した。マコモタケ発酵処理物の抽出物は、優れたフリーラジカル捕捉除去作用を有していることが認められた。
【0056】
【表1】

【0057】
実験例2 ヒト皮膚繊維芽細胞NB1RGBを用いた過酸化脂質生成抑制作用
紫外線による繊維芽細胞の過酸化脂質生成抑制効果をTBA法にて測定した。
【0058】
試料は製造例4及び製造例5を用いた。
【0059】
対数増殖期にある繊維芽細胞をφ60mmdishに3×10細胞播種し、Eagles’MEM(10%FBSを含む)を加え、37℃、5%CO条件下にて培養した。培養6日後に最終濃度1.0mg/mLになるように試料を加えたPBSを添加し、37℃、5%CO条件下にて30分培養後、UVA(6.5J/cm)を照射した。照射後、細胞をdishから剥離し、細胞を超音波破砕した後、細胞破砕液0.2mLに、8.1%SDS0.2mL、20%酢酸(pH3.5)1.5mL、0.8%チオバルビツール酸ナトリウム1.5mL、蒸留水0.6mLを加え、よく攪拌した。さらに400mM BHT0.01mLを加え、100℃で1時間反応させた。冷却後、反応液2mLに6.25%ピリジン含有n−ブチルアルコール溶液2mLを加え、よく攪拌した後、遠心分離し、n−ブチルアルコール層の蛍光強度(励起波長515nm、蛍光波長553nm)を測定し、過酸化脂質量とした。さらに、紫外線を照射しないものを作成し、紫外線照射したものとの差を過酸化脂質生成量とした。過酸化脂質生成抑制率は、試料の代わりに溶媒のみを添加した場合の過酸化脂質生成量を100とし、試料添加時の過酸化脂質生成量との割合から算出した。
【0060】
これらの結果を表2に示した。マコモタケの発酵処理物は優れた過酸化脂質生成抑制作用を有していることが認められた。
【0061】
【表2】

【0062】
実験例3 ACE阻害活性作用
高血圧抑制効果は、ACE阻害活性を指標に測定した。ACE阻害活性が強いもの程、血圧降下作用が強いとされている。ACE阻害活性の測定方法は、ツツミらの改良Cushman法(J.Wood Science,44,463,1998)に準じた。
【0063】
試料は製造例4,5,6,8及び比較製造例1,2,3を用いた。
【0064】
各試料を500μg/mLとなるように水に溶解し、試料溶液とする。試料溶液0.5mLに3.0mU/mLのACE溶液0.25mLを加え、37℃、3分間保持した後、5mMのヒプリルヒスチジルロイシンを含む100mM HEPES緩衝液(pH8.3)溶液0.25mLを加えた。このとき、試料濃度は250μg/mLである。これを37℃、30分間反応を行った後、0.1M NaOH2.0mLを加えて反応を停止した。次に0.2%オルトフタルアルデヒドメタノール溶液0.1mLを加え、0℃で15分間遮光放置した。これに、1.5M リン酸溶液0.4mLを加えて被験液とし、蛍光強度(励起波長360nm、蛍光波長480nm)を測定した。ACE阻害活性(%)は、被験液の蛍光強度を(C)、試料の代わりに水を加えたときの値を(A)、(C)の酵素ブランク(酵素の代わりに水を加えたもの)の値を(D)、(A)の酵素ブランクの値を(B)として、次式から算出した。
ACE阻害率(%)={1−(C−D)/(A−B)}×100
【0065】
これらの実験結果を表3に示した。その結果、マコモタケ発酵処理物の抽出物は、マコモタケの抽出物と比較して優れたACE阻害活性作用を示した。
【0066】
【表3】

【0067】
実験例4 高血圧抑制作用
試料は、製造例4,6及び比較製造例1,3を用いた。
雄性高血圧自然発症ラット(SHR)を生後10週齢から12週齢まで市販の固形飼料と水道水で飼育し、上記試料を1群8匹、体重1kg当たり、1gの試料を水に分散させて経口投与し、投与前と投与2時間後の血圧を測定した。血圧は、非観血式尾動脈血圧測定装置により、尾動脈で測定し、その最高血圧の平均値を血圧の値とした。対照群には水を投与した。
【0068】
これらの実験結果を、表4に示した。その結果、マコモタケ発酵処理物の抽出物は、マコモタケの抽出物と比較して優れた高血圧抑制作用を示した。
【0069】
【表4】

【0070】
実験例5 使用試験
処方例1の化粧水、処方例2のクリーム、比較例1の従来の化粧品及び比較例2の従来のクリームを用いて、女性30人(21〜46才)を対象に1ヶ月間の使用試験を行った。使用後、肌のシワ、タルミの改善効果をアンケートにより判定した。
【0071】
これらの試験結果を表5に示した。その結果、マコモタケ発酵処理物の抽出物を含有する皮膚外用剤は優れたシワ、タルミの改善作用を示した。なお、試験期間中、皮膚トラブルは一人もなく、安全性においても問題なかった。また、処方成分の劣化についても問題なかった。
【0072】
【表5】

【0073】
処方例3〜8についても同様に使用試験を行ったところ、優れたシワ、タルミ等の改善作用を示した。
【産業上の利用可能性】
【0074】
以上のことから、本発明のマコモタケの発酵処理物は、マコモタケの抽出物と比較してフリーラジカル捕捉除去作用及びACE阻害活性作用に優れており、化粧品、食品、医薬品などに利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生のマコモタケを凍結後、融解し、さらに発酵処理を行うことを特徴とするマコモタケの発酵処理物、又はその抽出物。

【請求項2】
生のマコモタケを凍結後、融解し、発酵処理を行った後、加熱乾燥することを特徴とするマコモタケの発酵処理物、又はその抽出物。

【請求項3】
請求項1又は2に記載の発酵処理物、又はその抽出物を含有することを特徴とする抗酸化剤。

【請求項4】
請求項1又は2に記載の発酵処理物、又はその抽出物を含有することを特徴とする高血圧抑制剤。

【請求項5】
請求項1又は2に記載の発酵処理物、又はその抽出物を含有することを特徴とする皮膚外用剤。

【請求項6】
請求項1又は2に記載の発酵処理物、又はその抽出物を含有することを特徴とする食品又は医薬品。

【公開番号】特開2009−91286(P2009−91286A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−262200(P2007−262200)
【出願日】平成19年10月5日(2007.10.5)
【出願人】(592262543)日本メナード化粧品株式会社 (223)
【Fターム(参考)】