説明

マスクブランク用基板、マスクブランク、転写用マスク、及び半導体デバイスの製造方法

【課題】低コストで製造可能な検査装置を用いて、低メンテナンスコスト及び低検査コストで、マスクブランク用基板の内部欠陥(光学的不均一部分)を検出して、微細なパターニングに適応した基板、マスクブランク及び転写用マスクを高い歩留まりで製造する方法を提供する。
【解決手段】透光性材料からなる板状の基板2を準備する工程と、波長200nm以下の検査光を基板2に照射し、基板2内を透過した透過検査光を板状の蛍光部材8で受光して蛍光に変換し、蛍光の強度分布から基板2の内部欠陥を検出する欠陥検査を行ない、内部欠陥がない基板2を選定する基板欠陥検査工程と、を有するマスクブランク用基板の製造方法、このマスクブランク用基板2の主表面4aにパターン形成用の薄膜42を形成するマスクブランク40の製造方法、及びこのマスクブランクのパターン形成用薄膜42の表面に転写パターンを形成する転写用マスク50の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波長200nm以下の露光光によるパターニングに適応したマスクブランク用基板、このマスクブランク用基板を用いたマスクブランク、このマスクブランクを用いた転写用マスクの製造方法、及びこの転写用マスクを用いた半導体デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、フォトリソグラフィ技術を用いたパターンニングにおける更なるパターン微細化の要望が高まっており、これに対応するため、パターニングに用いる露光光の短波長化及び高出力化が進んでいる。具体的には、露光波長193nmnのArFエキシマレーザー等の波長が200nm以下のレーザー光が用いられるようになってきている。
露光光として、ArFエキシマレーザーをはじめとする波長200nm以下の高エネルギのレーザー光を用いるようになると、それまで可視光域や波長200nm超のレーザー光を用いていた場合には問題視されていなかった基板内部の光学的不均一領域の存在が無視できなくなってきた。つまり、マスクブランク用基板に内部欠陥(光学的不均一領域)が存在すると、このようなマスクブランク用基板を用いて製造された転写用マスクに露光光を照射してパターニングを行なうとき、この内部欠陥(光学的不均一領域)において、露光光の透過率が低下して転写パターンの欠陥が生じ、延いては転写精度が低下することになる。
【0003】
このようなマスクブランク用基板の内部欠陥(光学的不均一領域)を検出するため、例えば、転写用マスク上におけるナノオーダーの微細転写パターンを拡大解析する検査装置を用いることが考えられる。しかし、この検査装置は、波長193nmのArFエキシマレーザーを受光する高価なセンサを備えた非常に高価な装置であり、このセンサは、露光波長193nmのレーザー光に曝されるため寿命が短く、頻繁にセンサを交換しなければならないという問題を有する。
更に、この検査装置で一度に観察できる領域が非常に狭いため(例えば、数10μmエリア)、マスクブランク用基板内の全領域を解析するためには、非常に多くの検査工程と検査時間を要し、検査コストも高騰することが予想され、この検査装置を用いてマスクブランク用基板の内部欠陥(光学的不均一領域)を検出することは実用的ではない。
【0004】
このため、低い製造コストの検査装置を用いて、低いメンテナンスコスト及び低い検査コストで、マスクブランク用基板の内部欠陥(光学的不均一部分)を検出するため、レーザー光を入射すると蛍光(可視光)を発する領域を検出することにより、マスクブランク用基板の内部欠陥(光学的不均一部分)を検出する検査方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−86050号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の発明では、200nm以下のレーザー光(検査光)をマスクブランク用基板へ入射し、入射されたレーザー光に対して内部欠陥(光学的不均一部分)が発する蛍光を感知することにより、マスクブランク用基板の内部欠陥の有無(光学的な不均一性の有無)を検査することができる。特許文献1に記載の検査装置では、可視光を受光するセンサを用いるため、センサを含めた検査装置の製造コストを抑制でき、長期間使用してもセンサの損傷を抑えて、メンテナンスコストの低減を図ることができる。また、この装置で一度に検査できる領域も、上記の微細転写パターンの拡大解析装置に比べて大きく取ることができるので(例えば、ミリオーダー)、繰り返し行なう検査工程の数や検査時間を抑制して、検査コストを抑制することができる。
【0007】
しかし、特許文献1に記載の発明では、レーザー光(検査光)のエネルギを吸収して蛍光を発する内部欠陥(光学的不均一部分)を検知することはできるが、仮に、レーザー光(検査光)を入射しても蛍光を発しない(センサで検知できるだけの強度の蛍光を発しない)内部欠陥(光学的不均一部分)が存在する場合には、そのような内部欠陥(光学的不均一部分)を含めた高い精度の欠陥検査は実現できない。
また、ダブルパターニング技術に適用される転写用マスクにも用いるマスクブランク用基板の場合、主表面内の露光光の透過率分布に関して従来よりも高い均一性が要求されており、蛍光を発する内部欠陥を検出する欠陥検査では不十分である。
【0008】
他方、レーザー光の入射により蛍光を発する領域の中には、極めて高い変換効率でレーザー光のエネルギを吸収して蛍光を発する場合がある。このような場合では、実際に転写用マスクに露光光を照射してパターニングを行なうときに、転写パターンの欠陥を生じさせるようなレベルの透過率の低下を引き起こさない。しかし、特許文献1に記載の検査方法によれば、このような実害のない領域も内部欠陥として判定して基板を除去するため、マスクブランク用基板の製造における歩留り低下の問題が生じる。
【0009】
従って、本発明の目的は、上記の問題を解決して、低コストで製造可能な検査装置を用いて、低いメンテナンスコスト及び低い検査コストで、より幅広い要因で生じるマスクブランク用基板の内部欠陥(光学的不均一部分)を検出して、より微細なパターニングに適応したマスクブランク用基板、ダブルパターン技術に対応できるマスクブランク用基板、さらにはこれらの基板を用いたマスクブランク及び転写用マスクを高い歩留まりで製造することができる製造方法を提供することにある。また、転写用マスクを用いてウェハ上のレジスト膜に転写パターンを転写する際のパターン転写不良を低減し、動作不良欠陥のない半導体デバイスの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、本発明に係るマスクブランク用基板の製造方法の1つの手段は、透光性材料からなる板状の基板を準備する基板準備工程と、波長200nm以下の検査光を前記基板に照射し、前記基板内を透過した透過検査光を板状の蛍光部材で受光して蛍光に変換し、前記蛍光の強度分布から前記基板の内部欠陥(光学的不均一領域)を検出する欠陥検査を行ない、前記内部欠陥が検出されない前記基板を選定する基板欠陥検査工程と、を有することを特徴とする。
【0011】
本手段では、波長200nm以下のレーザー光から蛍光(可視光)に変換して、基板の内部欠陥(光学的不均一領域)を検出するので、低い製造コストの装置を用いて、低いメンテナンスコストで、安全にかつ簡易に欠陥検査を実現できる。
また、本手段で一度に検査できる領域は、微細転写パターンの拡大解析装置を用いた場合(ミクロンオーダー)に比べて大きく取ることができるので(例えば、ミリオーダー)、繰り返し行なう検査工程の数や検査時間を抑制して、検査コストを低減することができる。
また、本手段では、透過光を用いて基板の内部欠陥(光学的不均一領域)の検出を行なうことにより、レーザー光の入射に対して蛍光を発するタイプの内部欠陥(光学的不均一領域)だけでなく、レーザー光のエネルギを吸収して発熱するもの、検査光を反射、散乱、屈折させるものをはじめとする、より幅広い要因で生じる基板の内部欠陥(光学的不均一領域)を検知することができるので、より微細なパターニングに適応したマスクブランク用基板を製造することができる。また、主表面内の露光光の透過率分布により高い均一性が求められるダブルパターニング技術に適用できるマスクブランク用基板を製造することができる。更に、高い変換効率でレーザー光のエネルギを吸収して蛍光を発する領域は、実際のパターニングにおいて実害がないが、本手段では、このような領域の透過光の光量低下が少ないので、内部欠陥(光学的不均一領域)と判定することがなく、より微細なパターニングに適応したマスクブランク用基板をより高い歩留まりで製造できる。
【0012】
本発明に係るマスクブランク用基板の製造方法のその他の手段は、更に、前記基板欠陥検査工程の前に、準備された前記基板の2つの主表面に鏡面研磨を行なう鏡面研磨工程を行ない、前記基板欠陥検査工程では、前記検査光が前記基板の一方の前記主表面に入射し、前記基板の他方の前記主表面から出射した前記透過検査光が前記蛍光部材の一方の主表面に入射し、前記蛍光部材内で変換された前記蛍光が前記蛍光部材の他方の主表面から出射することを特徴とする。
【0013】
本手段では、鏡面研磨がなされた基板の主表面に検査光を照射して欠陥検査を行なうので、高い精度の欠陥検査が実現できる。
【0014】
本発明に係るマスクブランク用基板の製造方法のその他の手段は、更に、前記蛍光部材は、前記透過検査光に対して蛍光を発する材料がドープされたガラスからなることを特徴とする。
【0015】
本手段では、波長200nm以下のレーザー光の入射に対して、効率良く蛍光を発する材料を選定することにより、高い精度の欠陥検査が実現できる。
【0016】
本発明に係るマスクブランク用基板の製造方法のその他の手段は、更に、前記基板欠陥検査工程において、前記蛍光部材で変換された前記蛍光を光検出器で受光して光電変換し、制御手段により、前記光検出器から送信された電気信号に基づく画像処理を行なって、前記基板の内部欠陥を検出する制御処理を行なうことを特徴とする。
【0017】
本手段では、可視光を受光する光検出器を用いるため、光検出器を含めた検査装置の製造コストを抑制でき、長期間使用しても光検出器の損傷を抑えて、検査装置のメンテナンスコストの低減を図ることができる。また、制御手段により、人手を省いて、容易かつ正確に欠陥検査を行なうことができる。
【0018】
本発明に係るマスクブランク用基板の製造方法のその他の手段は、更に、前記基板と前記光検出器との間に、検出すべき前記内部欠陥の大きさに対応した分解能を有する光学系が配置され、前記光学系の焦点深度と前記基板の厚み寸法とに応じて、前記基板の厚み方向において1回または複数回の前記基板欠陥検査工程を行なうことを特徴とする。
【0019】
本手段では、検出すべき内部欠陥の大きさに対応して、最適な光学系の分解能を選択することにより、検査時間、検査コスト、検査精度等の観点から最適な欠陥検査を実現できる。
【0020】
本発明に係るマスクブランク用基板の製造方法のその他の手段は、更に、予め内部欠陥が存在しないことが確認されている基準基板領域を用いて前記基板欠陥検査工程を行ない、前記制御手段により、前記基準基板領域における前記光検出器からの電気信号に基づいてリファレンスデータを作成して記憶し、検査すべき前記基板の前記基板欠陥検査工程を行なうとき、前記光検出器から送信された電気信号に基づくデータと、記憶された前記リファレンスデータとの比較によって、前記基板の内部欠陥を検出するための制御処理を行なうことを特徴とする。
【0021】
高い精度の欠陥検査を実現するには、光源が一様な強度の検査光を出力し、光学系が光学的に一様であり、蛍光部材が光学的に一様でかつ一様な蛍光変換特性を有し、光検出器が一様な光電変換特性を有することが重要であるが、現実には完全な均一性を期待することはできない。そこで本手段の制御処理により、各構成部材に含まれる不近均一性をキャンセルすることができるので、精度の高い欠陥検査を実現できる。
【0022】
本発明に係るマスクブランクの製造方法の1つの手段は、上記何れかの手段により製造されたマスクブランク用基板の前記主表面にパターン形成用の薄膜を形成してマスクブランクを形成する工程を有することを特徴とする。
【0023】
上記手段の基板欠陥検査工程により、転写精度に問題が生じる恐れのないマスクブランク用基板のみが選定されるので、本手段によって、より微細なパターニングに適応した高品質のマスクブランクを提供することができる。
【0024】
本発明に係る転写用マスクの製造方法の1つの手段は、上記の手段により製造されたマスクブランクの前記パターン形成用薄膜の表面に転写パターンを形成して転写用マスクを形成する工程を有することを特徴とする。
【0025】
上記手段の基板欠陥検査工程により、転写精度に問題が生じる恐れのないマスクブランク用基板のみが選定されるので、本手段によって、より微細なパターニングに適応した高品質の転写用マスクを提供することができる。
【0026】
本発明に係る半導体デバイスの製造方法の1つの手段は、上記の手段により製造された転写用マスクを用い、フォトリソグラフィ法により前記転写用マスクの転写パターンをウェハ上のレジスト膜に露光転写する工程を有することを特徴とする。
【0027】
上記手段の基板欠陥検査工程により、転写精度に問題が生じる恐れのないマスクブランク用基板のみが選定され、その基板を用いて作製された転写用マスクによって、ウェハ上のレジスト膜に転写パターンを転写するので、動作不良欠陥のない高品質の半導体デバイスを提供することができる。
【発明の効果】
【0028】
以上のように、本発明においては、低い製造コストの検査装置を用いて、低いメンテナンスコストで、安全かつ簡易に欠陥検査を実現できる。
また、繰り返し行なう検査工程の数や検査時間を抑制して、検査コストを低減することができる。
また、レーザー光の入射に対して蛍光を発するタイプの内部欠陥だけでなく、より幅広い要因で生じる基板の内部欠陥(光学的不均一領域)を検知することができるので、より微細なパターニングに適応したマスクブランク用基板、マスクブランク及び転写用マスクを製造することができる。
また、主表面内の露光光の透過率分布により高い均一性が求められるダブルパターニング技術に適用できるマスクブランク用基板、マスクブランク及び転写用マスクを製造することができる。
また、実際のパターニングにおいて実害がない領域を内部欠陥と判定しないので、より微細なパターニングに適応したマスクブランク用基板、マスクブランク及び転写用マスクをより高い歩留まりで製造できる。
さらに、これらの転写用マスクを用いてウェハ上のレジスト膜に転写パターンを転写することにより、動作不良欠陥のない高品質の半導体デバイスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係るマスクブランク用基板、マスクブランク、及び転写用マスクの製造方法の一実施形態を模式的に示す図である。
【図2】本発明に係る基板欠陥検査装置及び基板欠陥検査方法の一実施形態を模式的に示す図である。
【図3】制御装置により生成された蛍光の強度分布画像の一例を示す図である。
【図4】制御装置により生成されたマスクブランク用基板の内部欠陥マップの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明に係るマスクブランク用基板の製造方法、このマスクブランク用基板を用いたマスクブランク、このマスクブランクを用いた転写用マスクの製造方法、及びこの転写用マスクを用いた半導体デバイスの製造方法の具体的な実施形態について、以下に図面を用いながら詳細に説明する。
【0031】
(マスクブランク用基板、マスクブランク及び転写用マスクの製造方法の説明)
はじめに、図1を参照しながら、本発明に係るマスクブランク用基板、マスクブランク及び転写用マスクの製造方法の一実施形態の概要を説明する。
図1では、基板準備工程及び鏡面研磨工程を経て主表面4a、4bに鏡面研磨が行われた基板(透光性基板)2に対して内部欠陥(光学的不均一領域)を検出する欠陥検査を行ない、内部欠陥が検出されなかったマスクブランク用基板を選定する基板欠陥検査工程を図1(a)に示し、図1(a)で選定されたマスクブランク用基板2の主表面にパターン形成用の薄膜42を形成して、マスクブランク40を形成するマスクブランク形成工程を図1(b)に示し、図1(b)で形成されたマスクブランク40のパターン形成用薄膜42に転写パターンを形成して転写用マスク50を形成する転写用マスク形成工程を図1(c1)〜(c4)に示す。
次に、図1(a)〜(c4)の流れに沿って、各工程の内容を詳細に説明する。
【0032】
(基板準備工程の説明)
まず、図1(a)を参照して基板準備工程の説明を行なう。本実施形態で準備される透光性材料からなる板状の基板2は、四塩化珪素等を元原料とする合成石英インゴットから切り出されて面取り加工がなされた合成石英製板材である。この基板2の寸法としては、縦:約152mm×横:約152mm×厚さ:約6.5mmの寸法や、縦:約152.4mm×横:約152.4mm×厚さ:約6.85mmを例示することができる。ただし、基板2の透光性材料は合成石英に限られるものではなく、用途に応じてその他の任意の材料を用いることができ、寸法についても、用途に応じてその他の任意の寸法を採用することができる。
【0033】
(鏡面研磨工程の説明)
次に、鏡面研磨工程において、準備された基板2の2つの主表面4a、4bに鏡面研磨を行なう。このとき、基板2の寸法としては、たとえば約152mm×約152mm×約6.35mmを例示することができる。鏡面研磨後の表面粗さとしては、表面粗さRa(算術平均粗さ)=約0.5nm程度を例示することができるが、これに限られるものではなく、その他の任意の粗さを適用することができる。また、基板2の4つの側面については鏡面仕上げとすることが望ましく、例えば、表面粗さRaを約0.03μm以下程度にすることが考えられる。
【0034】
(基板欠陥検査工程の説明)
次に、図1(a)に示す基板欠陥検査工程の説明を行なう。本実施形態では、図1(a)の矢印に示すように、鏡面研磨が行なわれた基板2の一方の主表面4aに、ArFエキシマレーザー照射装置である光源6から、波長193nmの検査光(実線の矢印で示す)を照射する。照射された検査光は、基板2の中をその厚み方向に進んで、マスクブランク用基板2の他方の主表面4bから透過検査光として出射される。
この場合、基板2の内部に、内部欠陥(光学的不均一領域)が存在する場合には、その部分の検査光の透過率が低下するので、基板2の他方の主表面4bから出射された透過検査光では、その領域の光量が低下する。なお、以下においては、「内部欠陥(光学的不均一領域)」を、略して「内部欠陥」と記載する。
【0035】
従来の露光技術(シングル)が適用される転写用マスクに用いられるマスクブランク用基板の場合では、ArFエキシマレーザー等の波長200nm以下の露光光が照射されたときの(マスクブランク用基板内を透過した)透過光の透過前の露光光に対する光量低下が3%以内であれば、ウェハ上のレジスト膜への露光転写に与える影響は小さく問題とはならない。一方、ダブルパターニング技術に適用される転写用マスクに用いられるマスクブランク用基板の場合では、ArFエキシマレーザー等の波長200nm以下の露光光が照射されたときの(マスクブランク用基板内を透過した)透過光の透過前の露光光に対する光量低下が0.5%以内とする必要があり、内部欠陥に対する条件が格段に厳しくなる。よって、この基板欠陥検査工程は、ダブルパターニング技術が適用される転写用マスクに用いられるマスクブランク用基板を選定する場合に特に有効に機能する。
【0036】
ここで、基板2に存在する内部欠陥としては、検査光のエネルギを吸収して蛍光を発する領域だけでなく、検査光のエネルギを吸収して熱を発生する領域、検査光を反射する領域、検査光を散乱させる領域、検査光を屈折させる領域等が考えられ、基板2にそのような内部欠陥が存在する場合に、露光光の透過率が低下して転写パターンの欠陥が顕在化し、延いては転写精度が低下する問題が生じる。
【0037】
図1の説明に戻り、基板2の他方の主表面4bから出射された透過検査光は、板状の蛍光部材8の一方の主表面10aに入射し、蛍光部材8内で入射された透過検査光が蛍光に変換され、変換された蛍光が蛍光部材8の他方の主表面10bから出射される。なお、図1(a)及び後述する図2では、波長193nmの光を実線の矢印で示し、可視光域の波長を有する蛍光を破線の矢印で示してある。
【0038】
出射された蛍光は目視可能なので、光学系で像を拡大して、目視で蛍光の強度分布検査(目視によりダークポイント検出する検査)を行なって、基板2に存在する内部欠陥を検出する欠陥検査を行なうことができる。
更に、後述するように、蛍光部材8の他方の主表面10bから出射された蛍光を、光検出器(光変換器)22で受光して電気信号に変換(光電変換)し、電気的に処理して蛍光の強度分布検査を行なうこともできる。
【0039】
(基板欠陥検査装置及び基板欠陥検査方法の詳細な説明)
次に、図1(a)の基板欠陥検査工程に対応する本発明に係る基板欠陥検査装置20及び基板欠陥検査方法の一実施形態について、図2を参照しながら更に詳細な説明を行なう。
図2には、一例として、光源6と、検査を行なう基板2を保持可能な可動ステージ28と、板状の蛍光部材8と、蛍光を受光する光検出器22と、光検出器22からの電気信号に基づいて所定の制御処理を行なう制御装置30とを備えた基板欠陥検査装置20が示されている。また、この基板欠陥検査装置20では、基板2の他方の主表面4b(出射面)と蛍光部材8の一方の主表面10a(入射面)との間に、第1の光学系24が配置され、蛍光部材8の他方の主表面10b(出射面)と光検出器22の受光面22aとの間に、第2の光学系26が配置されている。
なお、図2は、基板欠陥検査装置20の各構成機器を模式的に示しており、形状、大きさは実際と異なる。
【0040】
以上のような構成の基板欠陥検査装置20を用いて基板2の内部欠陥を検出する基板欠陥検査方法を以下に説明する。
まず、検査すべき基板2を可動ステージ28にセットし、光源6から波長193nmの検査光を基板2へ照射する。なお、基板2を可動ステージ28にセットする際、基板2の主表面4a、4bが検査光の出射方向に対して垂直になるようにセットする必要がある。
【0041】
基板2に照射された検査光は基板2内を進んで、基板2を透過した透過検査光が、第1の光学系24を介して、蛍光部材8へ入射する。蛍光部材8へ入射した透過検査光は、蛍光部材8内で可視光である蛍光に変換されて、第2の光学系26を介して、蛍光部材8から光検出器22へ入射する。光検出器22では、受光面22aで受光した蛍光の強度が電荷の量に光電変換される。そして、光検出器22から送信された電気信号に基づいて、制御装置30により所定の画像処理を行なって、基板2の内部欠陥16を検出するための制御処理を行なう。
【0042】
検査した基板2に、もし、内部欠陥16が存在する場合には、基板2を透過した透過検査光において、内部欠陥16が存在する領域における透過検査光の透過率が低下するため、その領域の光量が下がる。蛍光部材8では、一様に波長193nmの光を蛍光に変換するので、蛍光部材8から光検出器22へ入射した蛍光においても、同様の光強度分布を示す。光検出器22では、一様に光電変換するので、制御装置30は、基板2の他方の主表面4b(出射面)から出射された波長193nmの透過検査光の光強度分布を正確に再現することができる。よって、制御装置30によって、正確に基板2の内部欠陥16の有無の判定処理を行なうことができる。なお、基板欠陥検査装置20の各構成機器が有する光学的不均性に対する対処法については後述する。
【0043】
本実施形態の基板欠陥検査装置20では、波長193nmの光を蛍光に変換した後、光検出器22に入射させるので、高価な光センサを必要とせず、センサを含めた検査装置の製造コストを抑制できる。また、光検出器22は、波長193nmのレーザー光に曝されることがないので、長期間使用しても光検出器22の損傷を抑えることができ、メンテナンスコストの低減を図ることができる。
【0044】
また、本実施形態の基板欠陥検査方法で検出する内部欠陥16の大きさは、検査光に対して蛍光を発する内部欠陥の大きさから推定して、100μm程度であると考えられる。よって、光学系が10μmオーダーの分解能を有すれば、実用上十分と考えられ、かなりの安全を見越しても、1μmオーダーの分解能を有すれば十分であると考えられる。
よって、ナノオーダーの検出を要する上記の微細転写パターンの拡大解析装置を用いた場合に比べ、一度の検査でより広い領域の検査を行なうことができるので、繰り返し行なう検査工程の数や検査時間を抑制して、検査コストを抑制することができる。
【0045】
更に、基板2の厚み方向の検査領域についても、上記の微細転写パターンの拡大解析装置では極めて狭い領域しか検出できないが(実際には基板表面のみを検査)、本実施形態の基板欠陥検査方法では、一度の検査でより深い領域の検査を行なうことができるので、繰り返し行なう検査工程の数や検査時間を抑制して、検査コストを抑制することができる。
【0046】
本実施形態の基板欠陥検査方法では、検査光に対して蛍光を発する内部欠陥だけでなく、検査光のエネルギを吸収して熱を発生するもの、検査光を反射、散乱、屈折させるものをはじめとする、より幅広い要因で生じる内部欠陥を検知することができる。
今後、転写パターンの更なる微細化が要求され、それに対応していくためには、更なる露光光の高出力化が予想される。その場合、レーザー光に対して蛍光を発する内部欠陥だけでなく、より幅広い要因により生じる内部欠陥の有無を検知する要望が高まると考えられるが、本実施形態の基板欠陥検査方法は、この要望に適確に対応することができる。
【0047】
また、検査光に対して高い変換効率で蛍光を発する実際のパターニングで実害のない領域が存在する場合には、上記の引用文献1に記載の検査方法では、その領域を内部欠陥と判定して基板は除去されてしまう恐れがあるが、本実施形態の基板欠陥検査方法では、そのような実害のない領域の透過率の低下は小さいので、内部欠陥と判定せず、これによって基板が廃棄される恐れもない。よって、引用文献1に記載の発明に比べて、より高い歩留まりでマスクブランク用基板2を製造することができる。
次に、基板欠陥検査装置20の各構成機器について、更に詳細な説明を行なう。
【0048】
<光源6>
本実施形態における波長200nm以下の検査光を出力する光源6は、波長193nmのレーザー光を出力するArFエキシマレーザー照射装置である。出力するレーザー光の形状としては、6.0mm×3.0mmの矩形のビーム形状や、6.0mm×6.0mmの正方形のビーム形状を例示することができるが、これに限られるものではなく、用途に応じて、任意のビーム形状、ビームサイズのレーザー光を用いることができる。また、レーザー光の単位面積当たりのエネルギ(1パルス当たり)は、1mJ/cm以上で50mJ/cm以下が好ましく、10mJ/cm以上で30mJ/cm以下が更に好ましく、15mJ/cm以上で20mJ/cm以下が最も好ましい。内部欠陥を適確に捕らえて検査精度を高めるためには、周波数30Hz以上が好ましく、100Hz以上が更に好ましく、200Hz以上が最も好ましい。
【0049】
なお、波長200nm以下の検査光としては、ArFエキシマレーザーに限られるものではなく、入射されたレーザー光の波長に応じた適切な蛍光部材を選択することにより、波長157nmのF2エキシマレーザーも使用可能である。
【0050】
<可動ステージ>
検査を行なう基板2を載せる可動ステージ28は、図2の矢印に示されるように、基板2をその主表面4a、4bと平行なX、Y方向に移動させて、走査により基板2全体の欠陥検査を行なうことができるようになっている。上記のように、基板2の主表面4a、4bの寸法を152mm×152mmとして面取り面を含む主表面4a、4bの全体を走査する場合、検査光のビーム形状を6.0mm×3.0mmとすれば、26×51回の走査を行なうことにより、主表面4a、4b全体の欠陥検査を実現することができる。
【0051】
なお、検査光によって走査すべき基板2の主表面4a、4bの領域としては、マスクブランク用基板から転写用マスクを作製したときに転写パターンを形成する領域を最低限カバーする必要がある。例えば、基板2の中心から132mm×132mmの内側領域である。また、露光光の漏れ光や迷光に起因して、転写パターンを形成する領域の外側に露光光が照射され、これにより転写用マスクの転写性能に影響を与えることを考慮する場合には、走査すべき領域は、例えば、基板2の中心から142mm×142mmの内側領域、さらには146mm×146mmの内側領域となる。
【0052】
また、検出すべき内部欠陥16の大きさに応じた光学系の分解能によって焦点深度が変わるが、それに対応するため、可動ステージ28は、基板2の厚み方向であるZ方向にも移動可能になっている。
光学系において、開口数NAはレンズの分解能を示す指数であり、NAが大きいほどレンズの分解能は高くなる。ここで、光の波長をλとし、分解能(識別可能な最小長さ)をσとし、焦点深度をdとし、開口数をNAとすると、下式のような関係がある。
σ=0.61λ/NA
d=λ/NA
【0053】
上式から明らかなように、光学系の分解能σを高めようとすると、NAを大きくする必要があり、この場合には、焦点深度dが浅くなり、基板2の限られた厚み領域しか検査できないことになる。よって、この場合には、可動ステージ28をZ方向に移動させて、基板2の厚み方向で複数回、繰り返し基板欠陥検査を行なう必要がある。
従って、検出すべき内部欠陥の大きさに対応して、最適な光学系の分解能を選択することにより、検査時間、検査コスト、検査精度等の観点から最適な欠陥検査を実現することが好ましい。
【0054】
基板2を可動ステージ28に固定する手段については、本実施形態では、基板2の対向する端面を挟み込むクランプ装置(図示せず)により固定を行なっている。なお、図1(a)及び図2では、基板2を垂直方向に立て、基板欠陥検査装置20の各構成機器を水平方向に配置しているが、これに限られるものではなく、例えば、基板2を水平方向に載置し、基板欠陥検査装置20の各構成機器を垂直方向に配置することもできる。この場合においても、基板2の対向する側面を挟み込むことによって、基板2を可動ステージに固定することができる。
【0055】
<光学系24、26>
第1の光学系24は、マスクブランク用基板2の検査位置の像を、蛍光部材8の蛍光位置に結像させるように配置されている。また、第2の光学系26は、蛍光部材8の蛍光位置の像(蛍光に変換された像)を、光検出器22の受光面22aに結像させるように配置されている。本実施形態では、必要な分解能に応じて光学系を交換可能になっており、これに応じて、マスクブランク用基板2、蛍光部材8、及び光検出器22の間の距離を変更可能になっている。
本実施形態では、検出すべき内部欠陥の大きさに対応して、最適な光学系の分解能を選択することにより、検査時間、検査コスト、検査精度等の観点から最適な欠陥検査を実現することができる。
【0056】
<蛍光部材8>
蛍光部材8は板状の形状を有し、その主表面10a、10bは、第1の光学系24により等倍で投影される場合、少なくとも光源6から出力される検査光のビーム形状(例えば6.0mm×3.0mm)よりも大きな寸法を有する必要がある。また、蛍光部材8の厚みとしては、光学系24の焦点深度よりも小さな厚み寸法を有する必要がある。
本実施形態では、蛍光部材8の材料としてチタンドープガラスを用いている。チタンドープガラスでは、波長193nmの透過検査光が入射されると、ドープされているチタンにより可視光域の波長(例えば、波長約420nm)の蛍光に効率良く変換される。なお、基板欠陥検査の精度を高めるためには、蛍光部材8の光学的均一性及び均一な蛍光変換特性が重要である。チタンドープガラスの中でも、EUV反射型マスクの基板などに使用されているSiO−TiO低熱膨張ガラスは光学的均一性及び均一な蛍光変換特性の点で非常に優れている。
【0057】
ただし、蛍光部材8の材料としては、チタンドープガラスに限られるものではなく、波長200nm以下の光を入射したときに蛍光を発するその他の任意の蛍光材料を用いることができる。蛍光の色としては、紫(波長400〜435nm)、青(波長435〜480nm)、緑青(波長480〜490nm)、青緑(波長490〜500nm)、緑(波長500〜560nm)、黄緑(波長560〜580nm)、黄(波長580〜595nm)、橙(波長595〜610nm)、赤(波長610〜750nm)を例示することができる。また、200nm以下の光の入射により、青、緑、赤等の蛍光を発する市販の蛍光ガラス材料を用いることもできる。
【0058】
<光検出器22>
本実施形態の光検出器22として、CCDイメージセンサ (Charge Coupled Device Image Sensor)が用いられている。光検出器22では、第2の光学系26により、受光面22aに結像させた像の蛍光の明暗を電荷の量に光電変換し、それを順次読み出して電気信号に変換し、制御装置30へ送信する。なお、本発明に係る光検出器22は、CCDイメージセンサに限られるものではなく、フォトレジスタ(photoresistor)をはじめとするその他の任意の光センサを用いることができる。
【0059】
<制御装置30>
制御装置30では、光検出器22から送信された電気信号に基づいて、所定の画像処理を行なって、蛍光の強度分布画像データを生成し、所定の閾値との比較により基板2の内部欠陥16の有無の判定を行なうことができる。図3には、その一例を示す。図3の横軸は、X方向(図2参照)の座標を示し、縦軸に光強度を示す。図3において、光強度が閾値のラインを下回るX座標の領域に、内部欠陥16が存在すると判定される。
また、このような判定データに基づいて、図4に示すような基板2の内部欠陥マップを生成することもできる。
以上のような制御処理により、人手をかけずに、低い検査コストでかつ高い精度で、基板2内の内部欠陥の検出を実現できる。
【0060】
精度の高い基板欠陥検査を実現するためには、基板欠陥検査装置20の各構成機器について、下記が重要となる。
− 光源6が強度一様な検査光を出力すること
− 第1、第2の光学系24、26が光学的に一様なこと。
− 蛍光部材8が光学的に一様であり、かつ一様な蛍光変換特性を有すること
− 光検出器22が、一様な光電変換特性を有すること
【0061】
しかし、実際に各構成機器の光学的不均一性等をゼロにすることはできず、更に、各機器の光学的不均一性等が重ね合わされる恐れもある。よって、これに対処するため、本実施形態では、予め内部欠陥が存在しないことが確認されている基準基板領域を用いて、基板欠陥検査を行ない、光検出器22から送信された電気信号に基づいて、制御装置30により、リファレンスデータを作成してRAMに記憶する。そして、実際に検査すべき基板2の基板欠陥検査を行なうときには、実際に光検出器22から送信された電気信号に基づくデータと、RAMに記憶されたリファレンスデータとの比較によって(偏差を求めて)、基板内の内部欠陥を検出するための制御処理を行なう。
以上のような制御処理により、基板欠陥検査装置20の各構成機器に含まれる不均一性をキャンセルすることができ、精度の高い基板内の内部欠陥の検出を実現できる。
【0062】
なお、内部欠陥が存在すると判定された基板2はマスクブランク用基板として選定しないのが原則であるが、内部欠陥が存在すると判定された基板2を排除せずに、内部欠陥の存在する位置(座標)を記憶して、後の工程にトレースして、例えば、内部欠陥の存在する位置にパターンの遮光部分がくるように配置することで利用することも考えられる。これにより、基板2の製造歩留まりを向上することができる。
【0063】
(マスクブランク形成工程の説明)
次に、図1の説明に戻り、図1(b)に示すマスクブランク形成工程の説明を行なう。図1(a)に示す基板欠陥検査工程で、内部欠陥がないと判定された基板(マスクブランク用基板)2について、その1つの主表面(4aでも4bでもよい)にパターン形成用の薄膜42を形成する。本実施形態では、スパッタリング(DCスパッタ、RFスパッタ、イオンビームスパッタ等)により、薄膜(遮光膜)42を形成して、マスクブランク(バイナリ型マスクブランク)40を形成する。
【0064】
このバイナリ型マスクブランク40の遮光膜42の材料としては、クロムを主成分とする材料、遷移金属シリサイドを主成分とする材料、タンタルを主成分とする材料などが挙げられる。遷移金属シリサイド中の遷移金属としては、モリブデン、タングステン、ハフニウム、ジルコニウム、ニオブ、バナジウム、ニッケル、チタン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、タンタル、クロムなどが適用できる。遮光膜42を露光光に対する遮光性能(光学濃度)の高い遮光層と露光光の反射防止機能を有する表面反射防止膜との2層積層構造とすると良い。また、遮光膜42は、マスクブランク用基板2と遮光層との間にさらに裏面反射防止層を設けた3層積層構造としても良い。表面反射防止層や裏面反射防止層は、遮光層の材料を酸化や窒化した材料が好ましい。
【0065】
また、別の実施形態として、マスクブランク用基板2の1つの主表面に位相シフト効果を生じさせるハーフトーン型位相シフト膜をパターン形成用の薄膜42として形成してマスクブランク40(ハーフトーン型位相シフトマスクブランク)を形成しても良い。また、位相シフト効果はあまりないが所定の透過率で露光光を透過させる半透過膜をパターン形成用の薄膜42として形成してマスクブランク40(エンハンサマスク作製用マスクブランク)を形成しても良い。ハーフトーン型位相シフト膜や半透過膜に用いる材料としては、前記の遮光膜に適用可能な材料を酸化、窒化等して位相シフト量や透過率を調整した材料が好ましい。また、ハーフトーン型位相シフト膜や半透過膜の上に遮光帯形成用の遮光膜を積層しても良い。
【0066】
なお、上記のスパッタリングによるバイナリ型マスクブランクの形成は、あくまで一例であり、その他の任意のタイプのマスクブランクを任意の製造方法で製造することができる。
上記のように、本発明に係る基板欠陥検査工程により、転写精度に問題が生じる恐れのないマスクブランク用基板2のみが選定されるので、同様に転写精度に問題が生じる恐れのない高品質のマスクブランクを提供することができる。
【0067】
(転写用マスク形成工程の説明)
次に、図1(c1)〜(c4)に示す転写用マスク(バイナリ型マスク)形成工程の説明を行なう。
まず、図1(c1)に示すように、図1(b)に示すマスクブランク形成工程で形成されたバイナリ型マスクブランク40のパターン形成用の薄膜42の表面に、フォトレジスト液をスピン塗布した後、乾燥処理してレジスト膜44を形成する。次に、図(c2)に示すように、形成されたレジスト膜44に所定のパターンの電子線描画・露光・現像処理を行なって、レジストパターンを形成する。そして、図(c3)に示すように、形成されたレジストパターンのレジスト44が残存している部分をマスクにしてドライエッチングを行ない、マスク44で覆われていない領域の薄膜42を除去する。最後に、図(c4)に示すように、上部のレジスト44を除去して、マスクブランク用基板2上に薄膜(遮光膜)42によるパターンが形成された転写用マスク(バイナリ型マスク)50を形成する。
【0068】
なお、上記の工程においては、ドライエッチングを行なっているが、ウエットエッチングを採用することができる。また、フォトレジスト液については、ネガ型を用いることも、ポジ型を用いることもできるが、化学増幅型であることが望ましい。
また、前記のハーフトーン型位相シフトマスクブランクやエンハンサマスク作製用マスクブランクを用い、所定のマスク作製プロセスで、転写用マスクとしてハーフトーン型位相シフトマスクやエンハンサマスクを作製しても良い。
【0069】
以上のように、本発明に係る基板欠陥検査工程により、転写精度に問題が生じる恐れのない基板2のみがマスクブランク用基板として選定されるので、波長200nm以下の露光光を用いたパターニングにおいて優れた性能を有する転写用マスクを提供することができる。
【0070】
(半導体デバイスの製造工程の説明)
次に、作製された図1(c4)に示す転写用マスク(バイナリ型マスク)をスキャナー等の露光装置のマスクステージに載置し、ウェハ上のレジスト膜に対してArFエキシマレーザーを露光光とした露光転写を行った。そして、露光されたレジスト膜を所定の露光後ベーク処理、現像処理、洗浄処理等を行い、レジストパターンを形成した。このようにマスクと使用するためのレジストパターンを順次形成し、ウェハへのイオン注入や薄膜のドライエッチングなどの処理を行い、所定の手順で半導体デバイスを製造した。
【0071】
以上のように、本発明に係る基板欠陥検査工程により、転写精度に問題が生じる恐れのない基板2のみからマスクブランク用基板を選定し、それを用いて作製した転写用マスクでウェハ上のレジスト膜に転写パターンの露光転写を行うので、動作不良欠陥のない高品質の半導体デバイスを製造することができる。
【0072】
(その他の実施形態の説明)
図1に示すマスクブランク用基板、マスクブランク及び転写用マスクの製造工程においては、マスクブランク形成工程の前に基板欠陥検査工程を行なって、予め、転写精度に問題が生じる恐れのない基板のみを選定して、その後の工程を行なっているが、これに限られるのではない。
例えば、基板欠陥検査工程を、転写用マスク形成工程の後に行なうことも可能である。この場合には、基板欠陥検査装置20の光学系の分解能を適切に設定することによって、転写用マスクのパターンの検査と、内部欠陥の有無の検査とを併用して実施することができる。この場合、転写用マスクのパターンの検査精度に重点を置く場合には、高い分解能を要するため、検査時間は長くなる。一方、内部欠陥の有無の検査に重点を置く場合には、検査時間は短くなるが、パターンの像がぼやけるので、パターンの詳細な検査ではなく、パターンの全体的な検査に適する。よって、用途に応じて、最適な分解能を選択することが好ましい。
なお、パターンの遮光部分が形成された領域については、内部欠陥の有無の検査ができないが、元々パターンの遮光部分によって露光光が透過しない領域なので、仮に内部欠陥が存在していたとしても問題は生じない。
【0073】
本発明に係るマスクブランク用基板の製造方法、マスクブランクの製造方法及び転写用マスクの製造方法の実施形態は、上記の実施形態に限られるものではなく、その他の様々な実施形態が本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0074】
2 基板
4 基板の主表面
4a 一方の主表面(入射面)
4b 他方の主表面(出射面)
6 光源
8 蛍光部材
10 蛍光部材の主表面
10a 一方の主表面(入射面)
10b 他方の主表面(出射面)
16 内部欠陥
20 基板欠陥検査装置
22 光センサ
24 第1の光学系
26 第2の光学系
28 可動ステージ
30 制御装置
40 マスクブランク
42 薄膜
44 レジスト膜
50 転写用マスク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性材料からなる板状の基板を準備する基板準備工程と、
波長200nm以下の検査光を前記基板に照射し、前記基板内を透過した透過検査光を板状の蛍光部材で受光して蛍光に変換し、前記蛍光の強度分布から前記基板の内部欠陥を検出する欠陥検査を行ない、前記内部欠陥が検出されない前記基板を選定する基板欠陥検査工程と、
を有することを特徴とするマスクブランク用基板の製造方法。
【請求項2】
前記基板欠陥検査工程の前に、準備された前記基板の2つの主表面に鏡面研磨を行なう鏡面研磨工程を行ない、
前記基板欠陥検査工程では、前記検査光が前記基板の一方の前記主表面に入射し、前記基板の他方の前記主表面から出射した前記透過検査光が前記蛍光部材の一方の主表面に入射し、前記蛍光部材内で変換された前記蛍光が前記蛍光部材の他方の主表面から出射する
ことを特徴とする請求項1に記載のマスクブランク用基板の製造方法。
【請求項3】
前記蛍光部材は、前記透過検査光に対して蛍光を発する材料がドープされたガラスからなることを特徴とする請求項1または2に記載のマスクブランク用基板の製造方法。
【請求項4】
前記基板欠陥検査工程において、前記蛍光部材で変換された前記蛍光を光検出器で受光して光電変換し、制御手段により、前記光検出器から送信された電気信号に基づく画像処理を行なって、前記基板の内部欠陥を検出する制御処理を行なうことを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載のマスクブランク用基板の製造方法。
【請求項5】
前記基板と前記光検出器との間に、検出すべき前記内部欠陥の大きさに対応した分解能を有する光学系が配置され、前記光学系の焦点深度と前記基板の厚み寸法とに応じて、前記基板の厚み方向において1回または複数回の前記基板欠陥検査工程を行なうことを特徴とする請求項4に記載のマスクブランク用基板の製造方法。
【請求項6】
予め内部欠陥が存在しないことが確認されている基準基板領域を用いて前記基板欠陥検査工程を行ない、前記制御手段により、前記基準基板領域における前記光検出器からの電気信号に基づいてリファレンスデータを作成して記憶し、
検査すべき前記基板の前記基板欠陥検査工程を行なうとき、前記光検出器から送信された電気信号に基づくデータと、記憶された前記リファレンスデータとの比較によって、前記基板の内部欠陥を検出するための制御処理を行なうことを特徴とする請求項4または5に記載のマスクブランク用基板の製造方法。
【請求項7】
請求項1から6の何れか1項に記載のマスクブランク用基板の製造方法によって製造されたマスクブランク用基板の前記主表面にパターン形成用の薄膜を形成してマスクブランクを形成する工程を有することを特徴とするマスクブランクの製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載のマスクブランクの製造方法によって製造されたマスクブランクの前記パターン形成用薄膜の表面に転写パターンを形成して転写用マスクを形成する工程を有することを特徴とする転写用マスクの製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載の転写用マスクの製造方法によって製造された転写用マスクを用い、フォトリソグラフィ法により前記転写用マスクの転写パターンをウェハ上のレジスト膜に露光転写する工程を有することを特徴とする半導体デバイスの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−158545(P2011−158545A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−18057(P2010−18057)
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】