説明

マッピング機構、FOUP、及びロードポート

【課題】FOUPの蓋部を開けることなくFOUP内のウェーハに対するマッピング処理を適切に行うことができるとともに、構造の簡素化及び不要なコストアップ抑制を図ることが可能なマッピング機構を提供する。
【解決手段】高さ方向へ複数段に亘ってウェーハWを載置し得るウェーハ載置部と開閉可能な蓋部12とを有するFOUP1に対してマッピングを行うマッピング機構Mを、ロードポートに設けた投光部241及び受光部242と、投光部241と受光部242との間においてFOUP1におけるウェーハ載置部の各段部に載置されたウェーハWの少なくとも一部を横切り得る光路L上に設けられ光を透過させる窓部12B、12Cとから構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、FOUPに対してマッピングを行うマッピング機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体の製造工程においては、歩留まりや品質の向上のため、クリーンルーム内でのウェーハの処理がなされている。しかしながら、素子の高集積化や回路の微細化、ウェーハの大型化が進んでいる今日では、小さな塵をクリーンルーム内の全体で管理することは、コスト的にも技術的にも困難となってきている。このため、近年では、クリーンルーム内全体の清浄度向上に代わる方法として、ウェーハの周囲の局所的な空間についてのみ清浄度をより向上させる「ミニエンバイロメント方式」を取り入れ、ウェーハの搬送その他の処理を行う手段が採用されている。ミニエンバイロメント方式では、ウェーハを高清浄な環境で搬送・保管するためのFOUP(Front-Opening Unified Pod)と呼ばれる格納用容器と、FOUP内のウェーハを半導体製造装置との間で出し入れするとともに搬送装置との間でFOUPの受け渡しを行うインターフェース部の装置であるロードポート(Load Port)が重要な装置として利用されている。すなわち、クリーンルーム内において特にFOUP内と半導体製造装置内とを高清浄度に維持しながら、ロードポートを配置した空間、換言すればFOUP外と半導体製造装置外とを比較的低清浄度とすることで、クリーンルームの建設・稼働コストを抑制するようにされている。
【0003】
ところで、FOUP内のウェーハを半導体製造装置へ移送する前に、FOUP内に複数段積みされたウェーハの数や有無、或いは収納姿勢を認識(マッピング)するマッピング処理が行われる。マッピング処理を行うマッピング機構は通常ロードポートに設けられており、FOUPの蓋部を開けた後、マッピング機構におけるセンサ部をFOUP内に挿入し、センサ部でウェーハの有無、傾き、或いは重なりを検知するようにしていた。
【0004】
しかしながら、このようなマッピング機構は、マッピング処理を行うに際してFOUPの蓋部を開ける工程が必ず要求されるため、マッピング処理に時間が掛かるという問題があった。
【0005】
そこで、FOUPの蓋部を開けることなくマッピング処理が行えるようにしたマッピング機構も考えられている。例えば、特許文献1には、FOUPの側壁にFOUP内の気密性を損なわないように構成されたウェーハ検知用扉を設け、このウェーハ検知用扉から透過型センサを高さ方向に所定ピッチで設けた櫛状の検知センサを挿入して、ウェーハ同士の隙間にそれぞれ透過型センサを挿入した状態でセンサ光が遮られるか否かによってウェーハの有無を検知する態様が開示されている。また、特許文献2には、カメラ及び放射源を有する撮像システムをFOUPの近傍に配置して、放射源により照射されウェーハで反射した光をカメラが検知するか否かによってウェーハの有無を検知する態様が開示されている。さらに、特許文献3には、ロードポートのドア部に、一対の反射型光センサを設け、ドア部の昇降時に各反射型光センサから光を照射し、ウェーハからの反射光を両方の反射型光センサが受光するか否か、或いは一方の反射型光センサのみが受光したか否かによってウェーハの有無または傾きを検知する態様が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−277590号公報
【特許文献2】特開2005−64515号公報
【特許文献3】特開2005−64055号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、特許文献1に記載された態様であれば、マッピング処理を行う度に検知センサでウェーハ検知用扉を押圧するため、押圧時の負荷等によってセンサ自体が損傷するおそれがあり、長期に亘って適切なマッピング処理機能を維持することが困難である。さらに、透過型センサを高さ方向に櫛状に設けること自体、構造の複雑化を招来するものであり、透過型センサ同士のピッチの精度が低ければ透過型センサがウェーハに接触して適切なマッピング処理を行うことができない場合が生じるという問題もあった。
【0008】
また、特許文献2に記載された態様では、撮像システムを必須とするため、コストが増加するとともに、放射源から照射されウェーハで反射した光をカメラによって検知するため、ウェーハの種類によって反射率が異なればその影響を受けやすく、マッピング処理の精度・信頼性が低下するという問題があった。さらに、特許文献3に記載された一対の反射型センサを用いる態様であっても、やはりウェーハの種類等が変わって反射率も変われば、マッピング処理を常に高精度で行うことが困難であった。
【0009】
本発明は、このような問題に着目してなされたものであって、主たる目的は、FOUPの蓋部を開けることなくマッピング処理を適切に行うことができるとともに、構造の簡素化及び不要なコストアップの抑制を図ることが可能なマッピング機構を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち本発明のマッピング機構は、高さ方向へ複数段に亘ってウェーハを載置し得るウェーハ載置部と開閉可能な蓋部とを有するFOUPに対してマッピングを行うものであって、FOUP外に設けられる投光部及び受光部と、投光部と受光部との間においてウェーハ載置部の各段部に載置されたウェーハの少なくとも一部を横切り得る光路上に設けられた光を透過させる窓部とを備え、FOUPにおけるウェーハ載置部の全段部に亘って光を通過させることによってFOUPに対するマッピングを行うものであることを特徴とする。ただし、本発明においてFOUPに設けられる窓部は、光を透過するもののFOUP内の内部空間を開放し得るものではない。
【0011】
ここで、「高さ方向へ複数段に亘ってウェーハを載置するウェーハ載置部」とは、換言すれば、ウェーハ載置部が、高さ方向に複数の段部を有し、各段部にそれぞれウェーハを載置することが可能なものである、ということである。
このようなマッピング機構であれば、FOUP外に設けた投光部から照射される光がFOUPに設けた窓部を通過してFOUP外に設けた受光部で検知され得るため、マッピング処理を行う際に、FOUPの蓋部を開ける必要がないため、作業効率及び作業スピードが向上する。また本発明では、検知センサでウェーハ検知用扉を押圧する必要がないため、投光部及び受光部が押圧時の負荷によって損傷するという事態が起こり得ず、長期に亘って適切なマッピング処理機能を維持することができる。しかも、センサ自体を投光部及び受光部によって構成しているため、上述したウェーハで反射される光を検知する態様と比較して、ウェーハ毎に異なり得る反射率の影響を受けることなく、マッピング処理を高精度で行うことができ、信頼性の高いマッピング処理結果を得ることができる。
【0012】
また、本発明のマッピング機構は、投光部及び受光部との間で投光部から出力される光を受光部に入力され得るように反射させる反射手段と、窓部とを、FOUPの蓋部に設けることができる。このような構成とすることにより、蓋部を開放してウェーハをFOUPに対して出し入れする際にウェーハが反射手段に干渉することを確実に回避することができ、FOUPに対するウェーハの出し入れ時にウェーハが不意に損傷することを防止できる。
【0013】
特に、本発明のマッピング機構では、投光部及び受光部を、FOUPを載置しFOUP内に収容されているウェーハを所定の半導体製造装置内とFOUP内との間で出し入れするロードポートのうち、FOUPの蓋部と対面して昇降動作により当該蓋部を開閉するドア部に設けることができる。このような態様であれば、受光部及び投光部とウェーハとの距離を可及的に短くすることができ、マッピング処理の精度を高めることができる。この場合、投光部及び受光部を高さ方向に移動可能なドア部に一体的に設け、ドア部の昇降移動に伴って投光部及び受光部を昇降動作させるようにすれば、投光部及び受光部だけを昇降させる専用の機構が不要であり、構造の簡素化をも有効に図ることができる。
【0014】
また、本発明のFOUPは、上述したマッピング機構を構成する際に好適に用いられるものである。具体的には、高さ方向へ複数段に亘ってウェーハを載置し得るウェーハ載置部と開閉可能な蓋部とを有するFOUPであって、このFOUP外に設けられた投光部と受光部との間の光路を、蓋部を通ってウェーハ載置部の各段部に載置されたウェーハの少なくとも一部を横切り得る位置に設定し、蓋部のうち光路上に光を透過させる窓部を設けていることを特徴とする。このようなFOUPであれば、上述したマッピング機構と同様又は略同様の作用効果、すなわち、マッピング処理を行う際に、蓋部を開ける必要がないため、作業効率及び作業スピードが向上するとともに、長期に亘って適切なマッピング処理機能を維持することができるという作用効果を奏する。
【0015】
また、本発明のロードポートは、上述したマッピング機構を構成する際に好適に用いられるものである。具体的には、高さ方向へ複数段に亘ってウェーハを載置し得るウェーハ載置部を有するFOUPが載置可能であって、且つ載置された前記FOUP内に収容されているウェーハを所定の半導体製造装置内と当該FOUP内との間で出し入れするロードポートであって、FOUPに設けられた光を透過させる窓部を通過してウェーハ載置部の各段部に載置されたウェーハの少なくとも一部を横切り得る光路を形成する投光部及び受光部を備えたものであることを特徴とする。このようなロードポートであれば、上述したマッピング機構と同様又は略同様の作用効果を奏し、FOUPに対するマッピング処理を迅速且つ正確に行うことができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、FOUPの蓋部を開けることなくFOUPに対するマッピング処理を迅速且つ正確に行うことができるとともに、構造の簡素化及び不要なコストアップ抑制を図ることが可能なマッピング機構を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施形態において、クリーンルームにおけるロードポートと半導体製造装置との相対位置関係を模式的に示す平面図。
【図2】同実施形態に係るマッピング機構を適用したロードポート及びFOUPの模式的な側面図。
【図3】同実施形態におけるロードポートの模式的な正面図。
【図4】同実施形態に係るマッピング機構の作動原理を模式的に示す図。
【図5】本発明の第2実施形態に係るマッピング機構を適用したロードポート及びFOUPの模式的な側面図。
【図6】同実施形態に係るマッピング機構の作動原理を模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
〈第1実施形態〉第1実施形態に係るマッピング機構Mは、FOUP1に対してマッピングを行うものであり、ロードポート2に設けた投光部241及び受光部242と、FOUP1のうち投光部241と受光部242との間の光路L上に設けた窓部(第1窓部12B、第2窓部12C)とを備えたものである(図4参照)。
【0019】
ロードポート2は、半導体の製造工程において用いられ、図1乃至図3に示すように、共通のクリーンルームA内において半導体製造装置Bに隣接して配置されるものであり、FOUP1の蓋部12を密着させて開閉し、ウェーハWをFOUP1内と半導体製造装置B内との間で出し入れするものである。ここで、図1はロードポート2とその周辺を上から見た平面図として、クリーンルームAにおけるロードポート2と半導体製造装置Bとの相対位置関係を模式的に示している。ロードポート2は、FOUP1内に収容されたウェーハWを半導体製造装置B内に払い出すとともに、半導体製造装置Bで処理されたウェーハWをFOUP1内に収容する機能を有するものである。このような構成により、クリーンルームAにおいて、半導体製造装置B内及びFOUP1内は高清浄度に維持される一方、ロードポート2を配置した空間、換言すれば半導体製造装置B外及びFOUP1外は比較的低清浄度とすることができる。
【0020】
ロードポート2は、ほぼ矩形板状をなし略鉛直姿勢で配置されるフレーム21と、このフレーム21の高さ方向中央部からやや上方寄りの位置に略水平姿勢で設けた載置板22と、フレーム21のうち載置板22とほぼ同じ高さ位置に開口下縁を設定し半導体製造装置B内に連通し得る開口部23と、この開口部23を開閉するドア部24とを備えたものである。載置板22はフレーム21の前面から前方に延びる支持台25に支持されている。載置板22には、上向きに突出させた3つの突起22aを形成している。これら3つの突起22aは、これら3つの突起22aをFOUP1の底面に形成された穴(図示省略)に係合させることで、載置板22上におけるFOUP1の位置決めを図っている。
【0021】
ドア部24は、高さ方向に昇降動作可能なものであり、FOUP1を載置板22に載置した状態においてFOUP1の背面に設けた蓋部12に密着した状態で昇降動作することにより蓋部12を開閉することができる一方で、FOUP1を載置板22に載置した状態においてFOUP1の蓋部12に近接した状態で単独で昇降動作可能なものでもある。また、このドア部24には、蓋部12に設けたラッチ部12Aの係合孔12bに係合可能な係合爪24aと、蓋部12をドア部24に吸い付け得る吸着パッド24bとを設けている。なお、ロードポート2には、ドア部24を開閉するためのドア開閉機構26を設けている(図2参照)。
【0022】
そして、本実施形態では、図4に示すように、ドア部24に、投光部241と受光部242(光電センサ)とを設けている。投光部241及び受光部242は、同じ高さ位置に設けられ、ドア部24の幅方向中央位置から各側縁に向かって等距離離間させた位置にそれぞれ設けている。本実施形態では、投光部241及び受光部242を、係合爪24aよりも側縁に寄った位置に設けている。さらに、投光部241の先端及び受光部242の先端がドア部24の前向面24fと面一またはほぼ面一となるようにドア部24に一体的に取り付けている。また、投光部241からの照射光がドア部24の幅方向と直交或いはほぼ直交する方向に進むように投光部241の向きを設定するとともに、後述する反射ミラー(第1反射ミラー12D、第2反射ミラー12E)によってドア部24の幅方向と直交またはほぼ直交する方向に反射する光を感知するように受光部242の向きを設定している。本実施形態では、これら投光部241及び受光部242を、閉めた状態にあるドア部24の上端部近傍箇所、具体的には、載置板22に載せたFOUP1内に収容されるウェーハWのうち最上段のウェーハWを検知可能な高さ位置に配している。そして、これら投光部241及び受光部242は、ドア部24の下降動作に伴って下方に移動することにより、FOUP1内に収納された最上段のウェーハWから最下段のウェーハWまで全てのウェーハWを順次検知可能なものとなる。
【0023】
一方、FOUP1は、後方にのみ開口した概略箱型のFOUP本体11と、FOUP本体11の後方を蓋封し得る蓋部12とを備えたものである。FOUP本体11は、前壁111、左右一対の側壁112、上壁113及び底壁114を一体に有し、これら各壁によって囲まれる内部空間にウェーハWを複数段所定ピッチで載せることが可能な棚部(本発明における「ウェーハ載置部」に相当、図示省略)を備えたものである。つまり、棚部は、高さ方向に複数の段部を有し、各段部にそれぞれウェーハを載置することが可能なものである。この棚部は、前方及び後方に開口する概略筒状をなし、各側壁にウェーハWのエッジ部分を支持し得るスリットを所定ピッチで設け、スリットにウェーハWのエッジを載せることによって、高さ方向へ複数段に亘ってウェーハを載置することができるようにしている。FOUP本体11を構成する各壁111、112、113、114同士の境界部分は緩やかな湾曲形状をなす。また、上壁113における上向面の中央部には、搬送装置(OHT:Over Head Transport)に把持されるフランジ部115を設けている。
【0024】
蓋部12は、ロードポート2のドア部24と対面し得るものであり、概略板状をなす。蓋部12には、この蓋部12をFOUP本体11にロックするラッチ部12Aを設けている。ラッチ部12Aは、水平軸回りに回動可能な回転板12aと、回転板12aの中央に形成された係合孔12bと、回転板12aの回動に伴ってFOUP本体11の上壁113、底壁114に設けた図示しないラッチ孔に係合可能なロック位置とラッチ孔との係合状態を解除するアンロック位置との間で移動可能なラッチ本体12cとを備えた既知のものである。本実施形態では、左右一対のラッチ部12Aを蓋部12のうち幅方向中央位置から側縁に向かって等距離離間させた位置にそれぞれ設けている。
【0025】
そして、この蓋部12のうち、ラッチ部12Aを避けた位置に窓部(第1窓部12B、第2窓部12C)を設けている。具体的には、ラッチ部12Aよりも側縁に寄った位置であって且つFOUP本体11の側壁112の内向面よりも幅方向中央側に寄った位置に第1窓部12B、第2窓部12Cを設けている。これら第1窓部12B及び第2窓部12Cは、蓋部12のうちロードポート2の載置板22にFOUP1を載せた状態において前述した投光部241及び受光部242とそれぞれ対面し得る位置に配されている。窓部(第1窓部12B、第2窓部12C)は、例えばポリカーボネート(Polycarbonate)等の透過性のある素材から形成され、それぞれ蓋部12の高さ方向に沿って直線上に延び当該蓋部12に一体的に取り付けられている。なお、窓部(第1窓部12B、第2窓部12C)を蓋部12に対して着脱可能に取り付けておき、破損や経年変化等によって所期の透過性を発揮し得なくなった場合に新たな窓部と交換できるようにすることもできる。
【0026】
本実施形態のFOUP1は、さらに、ウェーハWのエッジのうち蓋部12側に寄った部分を横切る仮想直線上であって当該ウェーハWのエッジに干渉しない位置に、投光部241及び受光部242との間で投光部241から出力される光を受光部242に入力され得るように反射させる反射手段(第1反射ミラー12D、第2反射ミラー12E)を設けている。本実施形態では、FOUP1のうち蓋部12に反射手段(第1反射ミラー12D、第2反射ミラー12E)を設けている。具体的には、蓋部12のうちFOUPの前壁111と対面する側の面から前壁111側に突出させて設けたアーム12Hによって反射手段(第1反射ミラー12D、第2反射ミラー12E)を支持している。そして、本実施形態のマッピング機構Mは、投光部241から出力される光が第1窓部12Bを通ってFOUP1内に進入し、第1反射ミラー12Dの反射面12Daに反射してウェーハWのエッジを平面視において横切り、第2反射ミラー12Eの反射面12Eaに反射して第2窓部12Cを通ってFOUP1外へ進み受光部242に入力され得るように、第1反射ミラー12D及び第2反射ミラー12Eの配置角度を設定している。なお、蓋部12に対する各反射ミラー(第1反射ミラー12D、第2反射ミラー12E)の反射面の角度を調整可能とすべく、反射ミラー(第1反射ミラー12D、第2反射ミラー12E)を鉛直軸回りに回動可能に構成したり、或いは反射ミラー(第1反射ミラー12D、第2反射ミラー12E)自体を水平面方向に移動自在に構成してもよい。各反射ミラー(第1反射ミラー12D、第2反射ミラー12E)は、FOUP1内において高さ方向に延び、少なくとも上端をFOUP1内において最上段の段部に載せたウェーハWよりも高い位置に設定するとともに下端を最下段の段部に載せたウェーハWよりも低い位置に設定している。また、蓋部12を開けた状態でウェーハWをFOUP1外へ払い出す時やFOUP1内に戻す時にウェーハWが反射ミラー(第1反射ミラー12D、第2反射ミラー12E)に干渉しないように反射ミラー(第1反射ミラー12D、第2反射ミラー12E)の設置箇所を設定している。
【0027】
次に、このようなマッピング機構Mによるマッピング処理を行う手順及び作用について説明する。
【0028】
先ず、搬送装置によってFOUP1をロードポート2の載置板22に載置する。この際、FOUP1の底面に形成された穴(図示省略)を載置板22に設けた各突起22aに係合させることによりFOUP1が載置板22に対して位置決めされた状態で載置される。この状態で、または載置板22に設けた図示しないスライド機構によってFOUP1をドア部24に対して近付ける方向に移動させた状態で、マッピング機構Mは投光部241から信号光を出力(発射)する。この信号光は、前述した光路Lを辿るため、具体的にはFOUP1の蓋部12に形成した第1窓部12Bを通過し、第1反射ミラー12Dの反射面12Daに反射して、ウェーハWのエッジを平面視において横切り得る光路Lを辿る。その結果、ウェーハWがFOUP1内において棚部の段部(スリット)に正常な姿勢で収納(載置)されている場合には、投光部241から信号光がウェーハWのエッジに干渉し、第2反射ミラー12Eの反射面12Eaに反射して、FOUP1の蓋部12に形成した第2窓部12Cを通過した後に受光部242で検出され得る光量は出力時の光量よりも低い又はゼロとなる一方、FOUP1内にウェーハWが存在しない場合には、投光部241からの信号光がウェーハWのエッジに干渉することはなく平面視においてウェーハWのエッジを横切る光路Lを辿り、さらに第2反射ミラー12Eの反射面12Eaに反射して、第2窓部12Cを通過した後に受光部242で検出され得る光量は出力時の光量と同じ又はほぼ同じである。したがって、投光部241から信号光を出力(発射)しながら、ドア部24を下方へ移動させて、投光部241及び受光部242もFOUP1に対して下方へ移動させることにより、FOUP1における棚部の全段部に亘って光路Lに沿って光を通過させることができ、これによってFOUP1に対するマッピングを行うことができる。具体的には、マッピング機構Mは、FOUP1における棚部の全段部に亘って光路Lに沿って光を通過させることによって、受光部242で受ける光量の変化及び光を受ける時間の変化に基づいてFOUP1内の棚部に設けた各段部にそれぞれウェーハWが載置されているか否か、ウェーハWが傾いていないか否か、及び複数のウェーハWが重なっていないか否かを検出することができる。
【0029】
以上の手順によりマッピング処理を終えた後、載置板22に設けた図示しないスライド機構によってFOUP1をドア部24に対してさらに近付ける方向に移動させて、ドア部24の吸着パッド24bにより蓋部12を吸着する。この時点でドア部24の係合爪24aが蓋部12の係合孔12bに係合し、係合爪24aを回動させることによって回転板12aも回動し、ラッチ本体12cがロック位置からアンロック位置に移動する。その結果、蓋部12がFOUP本体11から取り外し可能な状態となり、この蓋部12を後方(ロードポート2側)へ移動させて、さらに下方へ移動させることにより、ロードポート2の開口部23が開放される。この状態で、FOUP1内のウェーハWのうちマッピング処理工程において異常が検出されなかったウェーハWは、半導体製造装置内に設けた図示しないウェーハW移送装置(移送ロボット)によって半導体製造処理装置内へ順次移送され、半導体製造処理工程を終えた後FOUP1内に再度収容される。
【0030】
このように、本実施形態に係るマッピング機構Mは、FOUP1外に設けた投光部241及び受光部242と、FOUP1のうち棚部の各段部に載置されたウェーハWの少なくとも一部を横切る投光部241と受光部242との間の光路L上に設けられ光を透過させる第1窓部12B、第2窓部12Cとを備えたものであるため、FOUP1の蓋部12を閉じたままマッピング処理を行うことができ、マッピング処理を行う際に蓋部12を開けることが要求される態様と比較して、マッピング処理自体に要する時間及びマッピング処理を開始するまでに要する時間を短縮することができる。また、撮像システムを用いる従前の態様と比較して構造の簡素化及び低コスト化を有効に図ることができ、さらに一対の反射型センサを用いる態様と比較すれば、ウェーハWにより異なる反射率に影響を受けることなく、FOUP1に設けた窓部12B、12Cを透過して受光部242で検出する光量の変化に基づいて適切なマッピング処理を行うことができる。
【0031】
特に、投光部241及び受光部242をロードポート2に設けているため、マッピング処理を終えた後、ウェーハWを半導体製造装置内へ払い出す処理をスムーズに行うことができる。しかも、投光部241及び受光部242を、ロードポート2のうちFOUP1の蓋部12と対向するドア部24に設けているため、受光部242及び投光部241とウェーハWとの離間距離を可及的に短くすることができ、マッピング処理の精度を高めることができるとともに、ドア部24の昇降移動に伴って投光部241及び受光部242も昇降移動するため、投光部241及び受光部242だけを昇降させる専用の機構が不要であり、構造の簡素化をも有効に図ることができる。
【0032】
さらに、本実施形態のマッピング機構Mは、窓部12B、12CをFOUP1のうち平坦な蓋部12に形成し、窓部12B、12Cのフラットな起立面に対して平面視直交またはほぼ直交する方向に投光部241及び受光部242を配しているため、窓部12B、12Cを透過する際に光が大きく屈折する事態を回避することができ、正確なマッピング処理を行うことができる。さらに、本実施形態に係るマッピング機構Mは、投光部241及び受光部242との間で投光部241から出力される光を受光部242に入力され得るように反射させる反射手段(反射ミラー12D、12E)もFOUP1の蓋部12に設けているため、蓋部12を開放してウェーハWをFOUP1に対して出し入れする際にウェーハWが反射手段(反射ミラー12D、12E)に干渉することを確実に回避することができ、FOUP1に対するウェーハWの出し入れ時にウェーハWが不意に損傷することを防止できる。
【0033】
〈第2実施形態〉第2実施形態に係るマッピング機構XMは、図5及び図6に示すように、投光部X241及び受光部X242をロードポートX2のドア部X24に設けるという点は第1実施形態に係るマッピング機構Mと同様であるが、投光部X241及び受光部X242をドア部X24の前向面よりも前方、すなわちFOUP1側に突出させている点、及びFOUPX1の蓋部X12にこれら突出させた投光部X241及び受光部X242が挿入可能な凹部(第1凹部X12F、第2凹部X12G)を形成して、これら凹部(第1凹部X12F、第2凹部X12G)のうち少なくとも他方の凹部(第2凹部X12G、第1凹部X12F)に対面する部分に窓部(第1窓部X12B、第2窓部X12C)を形成している点が異なる。なお、以下の説明及び図5、図6では、第1実施形態と対応する要素や部分には符号の先頭に「X」を付すとともに、詳細な説明は省略する。
【0034】
詳述すると、投光部X241及び受光部X242は、少なくともマッピングする際にFOUPX1の凹部(第1凹部X12F、第2凹部X12G)内に先端部を位置付けることができるものである。投光部X241及び受光部X242は、ドア部X24に対して先端部を接離させる方向に進退動作または折り畳み動作、或いは伸縮動作可能なものであってもよい。本実施形態のマッピング機構XMでは、投光部X241が蓋部X12の幅方向と平行な方向に光を照射する。
【0035】
一方、FOUPX1の蓋部X12に設けた凹部(第1凹部X12F、第2凹部X12G)は、FOUPX1の前壁X111側に凹み、FOUPX1の高さ方向に連続して形成されたものである。そして、各凹部X12F、X12Gのうち、他方の凹部X12G、X12Fと向き合う起立壁X12Fa、X12Gaにそれぞれ窓部(第1窓部X12B、第2窓部X12C)を設けている。第1窓部X12B及び第2窓部X12Cは、例えばポリカーボネート等の透過性のある素材から形成され、それぞれ凹部X12G、X12Fの高さ方向全域に亘って設けられている。なお、窓部X12B、X12Cを蓋部12に対して着脱可能に取り付けておき、破損や経年変化等によって所期の透過性を発揮し得なくなった場合に新たな窓部と交換できるようにすることもできる。本実施形態では、ウェーハWのエッジのうち蓋部X12側に寄った部分を横切る仮想直線上であって当該ウェーハWのエッジ及び前述の段部に干渉しない位置に第1窓部X12B、第2窓部X12Cを設けている。このような構成を採用する第2実施形態では、第1実施形態で述べた反射手段(第1反射ミラー12D、第2反射ミラー12E)が不要となる。そして、本実施形態のマッピング機構XMは、投光部X241から出力される光が第1窓部X12Bを通ってFOUPX1内に進入して、棚部の段部に載置され得るウェーハWのエッジを横切り、第2窓部X12Cを通ってFOUPX1外へ進み受光部X242に入力され得るように設定している。つまり、図6からも明らかなように、投光部X241と受光部X242との間に形成される光路XLは、蓋部X12の幅方向に平行又はほぼ平行な直線上を辿るものとなる。
【0036】
次に、このようなマッピング機構XMによるマッピング処理を行う手順及び作用について説明する。
【0037】
先ず、搬送装置によってロードポートX2の載置板X22上に搬送されたFOUPX1は、底面に形成された穴(図示省略)を載置板X22に設けた各突起X22aに係合させることにより載置板X22に対して位置決めされた状態となる。この時点で、図6に示すように、または載置板X22に設けた図示しないスライド機構によってFOUPX1をドア部X24に対して近付ける方向に移動させた時点で、マッピング機構XMは、投光部X241及び受光部X242の先端部をそれぞれ第1凹部X12F、第2凹部X12Gに挿入した状態となり、投光部X241から信号光を出力する。この信号光は、FOUPX1の第1凹部X12Fに設けた第1窓部X12Bを通過し、棚部の段部に載置されたウェーハWのエッジを横切り得る光路XLを辿る。その結果、ウェーハWがFOUPX1内に正常な姿勢で収納されている場合には、投光部X241からの信号光がウェーハWのエッジに干渉し、第2凹部X12Gに設けた第2窓部X12Cを通過して受光部X242で検出される光量は出力時の光量よりも低い又はゼロとなる一方、FOUP1内にウェーハWが存在しない場合には、投光部X241からの信号光がウェーハWのエッジに干渉することなく平面視においてウェーハWのエッジを横切る光路XLを辿り、第2窓部X12Cを通過して受光部X242で検出される光量は出力時の光量と同じ又はほぼ同じである。したがって、投光部X241から信号光を出力しながら、ドア部X24を下方へ移動させて、投光部X241及び受光部X242もFOUPX1に対して下方へ移動させることにより、マッピング機構XMは受光部X242で受ける光量の変化及び光を受ける時間の変化に基づいてFOUPX1内に設けた各段部にそれぞれウェーハWが載置されているか否か、ウェーハWが傾いていないか否か、及び複数のウェーハWが重なっていないか否かを検出することができる。
【0038】
このように、本実施形態に係るマッピング機構XMであっても上述した第1実施形態に係るマッピング機構Mと同様またはほぼ同様の効果を奏するとともに、投光部X241と受光部X242との間に形成される光路XLがウェーハWのエッジを横切る単純な直線上を辿るものであるため、マッピング精度をさらに高めることができる。さらに、蓋部に反射手段(反射ミラー)を設ける必要もないため、構造の単純化をも図ることができる。
【0039】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。例えば、窓部は、FOUPのうち丸みを帯びた面(湾曲面)以外、すなわちフラットな面に形成されていることが好ましく、窓部が投光部から出力される光の進行方向或いは受光部に入力される光の進行方向に対して直交またはほぼ直交しないフラットな面、すなわち光の進行方向に対して平面視傾斜したフラットな面に窓部を設けた態様であってもよい。
【0040】
また、窓部が、ポリカーボネート(Polycarbonate)以外の素材、例えばアクリル樹脂、強化ガラス等の素材からなるものであっても勿論構わない。また、反射手段をFOUPのうち蓋部以外の部分(例えばFOUP本体等)にアーム等の支持部材を介して取り付ける態様や支持部材を介さず直接FOUP内部(FOUP本体等)に取り付ける態様を採用してもよい。反射手段を備えたマッピング機構を採用する場合、ロードポートに投光部及び受光部を同じ位置に設け(例えば図4における投光部241を設けた位置に受光部も設け)るとともに、蓋部に1つの窓部を設け、投光部から出力される光が窓部を通過してウェーハ載置部の段部に載置されたウェーハの少なくとも一部を横切り、その光が反射手段(例えば1枚の反射ミラー)で反射して同じ光路を辿って窓部を通過し、受光部に入力され得るように構成してもよい。この場合、投光部及び受光部と反射手段との間における光路はFOUPの奥行き方向(前後方向)と平行又は略平行なものとなることが好ましい。
【0041】
その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0042】
1、X1…FOUP
12、X12…蓋部
12B、X12B…第1窓部
12C、X12C…第2窓部
12D、12E…反射手段(第1反射ミラー、第2反射ミラー)
2、X2…ロードポート
24、X24…ドア部
241、X241…投光部
242、X242…受光部
L、XL…光路
M、XM…マッピング機構
W…ウェーハ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高さ方向へ複数段に亘ってウェーハを載置し得るウェーハ載置部と開閉可能な蓋部とを有するFOUPに対してマッピングを行うマッピング機構であって、
前記FOUP外に設けられる投光部及び受光部と、
前記FOUPのうち前記投光部と前記受光部との間において前記ウェーハ載置部の各段部に載置された前記ウェーハの少なくとも一部を横切り得る光路上に設けられて光を透過させる窓部とを備え、
前記FOUPにおける前記ウェーハ載置部の全段部に亘って前記光を通過させることによって前記FOUPに対するマッピングを行うものであることを特徴とするマッピング機構。
【請求項2】
前記窓部と、前記投光部及び前記受光部との間で前記投光部から出力される光を前記受光部に入力され得るように反射させる反射手段とを、前記FOUPの前記蓋部に設けている請求項1に記載のマッピング機構。
【請求項3】
前記投光部及び前記受光部を、前記FOUPを載置し当該FOUP内に収容されているウェーハを所定の半導体製造装置内と当該FOUP内との間で出し入れするロードポートのうち、前記FOUPの前記蓋部と対面して昇降動作により当該蓋部を開閉するドア部に設けている請求項1又は2の何れかに記載のマッピング機構。
【請求項4】
高さ方向へ複数段に亘ってウェーハを載置し得るウェーハ載置部と開閉可能な蓋部とを有するFOUPであって、
当該FOUP外に設けられた投光部と受光部との間の光路を、前記蓋部を通って前記ウェーハ載置部の各段部に載置した前記ウェーハの少なくとも一部を横切り得る位置に設定しており、
前記蓋部のうち前記光路上に光を透過させる窓部を設けていることを特徴とするFOUP。
【請求項5】
高さ方向へ複数段に亘ってウェーハを載置し得るウェーハ載置部を有するFOUPが載置可能であって、且つ載置された前記FOUP内に収容されているウェーハを所定の半導体製造装置内と当該FOUP内との間で出し入れするロードポートであって、
前記FOUPに設けられた光を透過させる窓部を通過して前記ウェーハ載置部の各段部に載置された前記ウェーハの少なくとも一部を横切り得る光路を形成する投光部及び受光部を備えたものであることを特徴とするロードポート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−232560(P2010−232560A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−80614(P2009−80614)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(000002059)シンフォニアテクノロジー株式会社 (1,111)
【Fターム(参考)】