説明

マルチモードイオン源を提供する方法

マルチモードイオン源を提供する技術を開示する。本発明のある例示的態様においては、例えば、第1モードがアーク放電モードであり、第2モードがRFモードであるという複数モードで動作するイオン源を含むイオン注入装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、半導体製造装置に関し、特に、マルチモードイオン源を提供する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
イオン注入は、励起したイオンを直接基板に衝突させることにより、化学種を基板に堆積させるプロセスである。半導体製造では、イオン注入装置は、主に、ターゲット材料の種類及び導電性レベルを変えるドーピングプロセスのために使用される。適切なIC性能を得るには、集積回路(IC)基板及び薄膜構造において、正確なドーピングプロファイルを得ることが重要である。所望のドーピングプロファイルを達成するには、1つ以上のイオン種を、異なるドーズ量及び異なるエネルギーレベルで注入させればよい。
【0003】
図1は、従来のイオン注入システム100を示したものである。イオン注入システム100は、イオン源102及びイオンビーム10が通過する一連の部品を備える。一連の部品には、例えば、抽出操作部104、フィルターマグネット106、加速又は減速管108、アナライザーマグネット110、回転質量スリット112、スキャナ114及び補正マグネット116を含む。光線を操作する一連の光学レンズ群のように、イオン注入装置の部品は、イオンビーム10をフィルターし、焦点を合わせた後、ビームをターゲットの(ウェハ面12に位置する)ウェハ120に向かわせることができる。ドーズ量制御ファラデーカップ118、移動ファラデーカップ124、セットアップファラデーカップ122のような複数の計測機器を使用して、イオンビーム状態を監視及び制御してもよい。
【0004】
イオン源102は、イオン注入システム100において重要な部品である。イオン源102は、様々な種類のイオン種及び様々な取り出し電圧に対応し、安定した信頼性のあるイオンビーム10を生成することを要求される。
【0005】
図2は、イオン注入システム100に使用されるイオン源200の典型的な実施形態を示したものである。イオン源200は、誘導加熱陰極(IHC)イオン源であってもよく、このようなイオン源は、多くの場合、高電流イオン注入装置で使用される。イオン源200は、導電チャンバ壁214を備えるアークチャンバ202を含む。アークチャンバ202の一方の端には、タングステンフィラメント204を有する陰極206が設けられている。タングステンフィラメント204は、大電流を供給可能な第1電源208と連結されている。大電流により、タングステンフィラメント204が熱せられ、熱電子放出が起こる。第2電源210により、タングステンフィラメント204よりも非常に高い電位へと陰極206をバイアスして、放出された電子が陰極206に向かって加速されることにより、陰極を加熱するようにしてもよい。陰極206が熱せられると、陰極206からアークチャンバ202へと熱電子が放出される。第3の電源212により、陰極206に対してチャンバ壁214をバイアスして、電子が高いエネルギーでアークチャンバに向かって加速されるようにしてもよい。ソースマグネット(図示せず)は、アークチャンバ202内に磁場Bを作り出し、エネルギー電子をそこに閉じ込め、アークチャンバ202の他方の端に設けられた反射電極216が、陰極206と同じ又は同様な電位でバイアスされて、エネルギー電子を弾くようにしてもよい。ガス源218は、注入種の前駆体(例えば、AsH、PH、BF、GeF)をアークチャンバ202に供給してもよい。エネルギー電子は、注入種の前駆体と相互作用して、プラズマ20を生成する。次いで、引き出し電極(図示せず)によりプラズマ20からイオン22を引き出し開口220を通じて抽出して、イオン注入装置100で使用するイオンを生成する。
【0006】
従来のイオン注入装置において存在する問題として、相対的に高い注入エネルギー(例えば、数十kV)で効率的に動作するよう設計されている典型的なイオン注入装置は、低いエネルギー(例えば、数kV)では効率的に機能しない場合があることが挙げられる。例えば、低いエネルギーのドーパントビームを利用するアプリケーションとして、CMOS(相補型・金属酸化膜半導体)製造において、非常に浅い(ultra‐shallow)トランジスタ接合を形成する場合が挙げられる。特に、シリコンウェハに、p型ドーパントである低エネルギーボロンを注入する工程が重要となる。
【0007】
低いエネルギーの場合に起こる非効率性は、多くの場合、空間電荷制限に起因する。Child−Langmuir則、J〜(Z/A)1/23/2/dによれば、ビームを占める空間電荷の電流密度に制限があることが示されている。ここで、ビームの電流密度制限Jの大きさは、電荷質量比(Z/A)の平方根、及び抽出電位Vの2分の3乗に比例する。したがって、ビームのエネルギー(例えば、抽出電位V)が低い場合は、高いエネルギーで同種の抽出を行った場合と比較して、イオン電流密度が低くなる。
【0008】
例えば、低いエネルギービームにおける空間電荷は、ビームラインに沿ってイオンが進むに従い、ビームの断面積("プロファイル")を大きくする傾向がある("ビームブローアップ")。イオン注入装置の伝送光学系に設計されたプロファイルを超えるビームプロファイルとなってしまった場合、口径食によるビーム損失が生じる。例えば、500eVの輸送エネルギーでは、従来のイオン注入装置では、一般的に、効率的に商品を製造するために必要とされる適切なボロンのビーム電流を輸送することができなかった。低いイオン注入ドーズ率のために、ウェハ処理量が低く抑えられてしまっていた。
【0009】
低いエネルギービームの空間電荷制限の問題を解決する1つの方法として、必要とされるドーパントを分子の形で注入することが挙げられる。例えば、本明細書に援用によりその内容が組み込まれる米国特許出願明細書11/504,355号及び11/342,183号明細書では、分子イオン注入の方法が記載されており、特にC1012(カルボラン)から生成されたC10イオンの注入について記載されている。分子イオン注入では、高い抽出エネルギーを利用することが可能となり、低いエネルギーの原子イオン注入で得られるのと等価な注入深さを達成できる。高い分子抽出エネルギーと、等価な原子注入深さとの間の関係は、Emolecule=(分子質量/原子質量)×Eequivalentと表すことができ、ここでEmoleculeは分子イオンのエネルギー、Eequivalentは、原子イオンのみを使用した場合の所望の注入深さを達成するのに必要な注入エネルギーである。例えば、エネルギーEで原子のBイオンのイオン電流Iを注入するのに替えて、カルボニル分子イオン(C1012)を、およそ13×Eのエネルギー及び0.10×Iのイオン電流で注入させてもよい。通常、両者の方法において、得られる注入深さ及びドーパント濃度(ドーズ量)は同等となり、分子注入技術の方が潜在的な利点を有する。例えば、カルボランイオンの輸送エネルギーは、等価のドーズ量のボロンイオンのおよそ13倍であり、カルボランの電流は、ボロン電流の10分の1であることから、単原子ボロン注入の場合と比較して、空間電荷力が実質的に低減される。
【0010】
しかしながら、IHCイオン源102を使用した従来のイオン注入では、大きな分子イオンの生成は相対的に非効率なものとなっている。例えば、Bイオンを生成するために、従来のイオン源でBFガスが一般的に使用されるのに対して、カルボランイオンC10を生成するためには、カルボラン(C1014)を使用しなければならない。カルボランは、20℃で1Torrという大きな蒸気圧を有し、100℃で融解し、750℃で分解する固体の物質である。効率的にC10を生成するためには、カルボランを100℃未満で気化させなければならず、気化した分子の大部分が分解されてしまうのを防ぐため、局所環境(チャンバ壁及びチャンバ部品)が750℃未満であるイオン源において操作しなければならない。しかしながら、IHC源の動作温度は、一般的には、チャンバ本体から加熱されたボタン陰極に渡って、800℃から2300℃に達する。このような温度は、BFの熱解離及びそれに続くBイオン生成に必要となる温度であり、高い動作温度で容易に解離可能なカルボランイオンの生成に適さない。加えて、このように非常に高温な環境下では、IHCイオン源の寿命及び性能を縮めてしまう。その結果、IHCイオン源の性能低下及び短命化は、イオン注入装置の生産性を大幅に下げてしまう。
【0011】
さらに、イオン源気化器は、通常、カルボランに必要とされる低い温度では、気化器が受けるイオン源からの放射加熱により、安定して動作することができない。例えば、カルボランの蒸気が気化器の加熱された表面と作用して、分解された蒸気から堆積物が発生し、この堆積物により気化器のフィードラインが容易に詰まってしまうということがある。このように、従来のイオン源は、カルボランイオン注入には適さなかった。
【0012】
上述のように、現在のイオン源技術に関連して、解決すべき問題が存在している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
マルチモードイオン源を提供する技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明のある例示的態様においては、例えば、第1モードがアーク放電モードであり、第2モードがRFモードであるという複数モードで動作するイオン源を含むイオン注入装置を提供する。
【0015】
この例示的態様の他の側面によれば、装置は、複数のモードを切り替えるスイッチをさらに含んでもよい。この例示的態様の他の側面によれば、装置は、RFモードにおいてイオン源を動作させるためのRF電源及びRF整合回路をさらに含んでもよい。
【0016】
この例示的態様の他の側面によれば、イオン源は、ジボラン、ペンタボラン、カルボラン、オクタボラン、デカボラン、ボロン、ヒ素、リン、インジウム、ゲルマニウム及び炭素のうちの少なくとも1つをベースとしてプラズマを生成してもよい。
【0017】
この例示的態様の他の側面によれば、装置は、陰極、反射電極及びさらなる電極面積を提供するための第1付加電極をさらに含んでもよい。
【0018】
この例示的態様のさらなる側面によれば、装置は、陰極、反射電極、さらなる電極面積を提供するための第1付加電極及び第2付加電極をさらに含んでもよい。
【0019】
本発明の別の例示的態様においては、例えば、第1の動作モードがアーク放電モードであり、第2の動作モードがRFモードであるといった複数の動作モードをサポートするチャンバを含むマルチモードイオン源を提供する。
【0020】
この例示的態様の他の側面によれば、マルチモードイオン源は、複数のモードを切り替えるスイッチをさらに含んでもよい。
【0021】
この例示的態様の他の側面によれば、マルチモードイオン源は、RFモードにおいてイオン源を動作させるためのRF電源及びRF整合回路をさらに含んでもよい。
【0022】
この例示的態様の他の側面によれば、マルチモードイオン源は、ジボラン、ペンタボラン、カルボラン、オクタボラン、デカボラン、ボロン、ヒ素、リン、インジウム、ゲルマニウム及び炭素のうちの少なくとも1つをベースとしてプラズマを生成してもよい。
【0023】
この例示的態様の他の側面によれば、マルチモードイオン源は、陰極、反射電極及びさらなる電極面積を提供するための第1付加電極をさらに含んでもよい。
【0024】
この例示的態様のさらなる側面によれば、マルチモードイオン源は、陰極、反射電極、さらなる電極面積を提供するための第1付加電極及び第2付加電極をさらに含んでもよい。
【0025】
本発明の別の例示的態様においては、アーク放電モードに基づくイオン源の第1動作モードを提供する段階と、RFモードに基づくイオン源の第2動作モードを提供する段階と、第1動作モードと第2動作モードとを少なくとも1つのスイッチを使用して切り替える段階とを備える複数モードにおけるイオン注入方法を提供する。
【0026】
この例示的態様の他の側面によれば、イオン源は、複数のモードを切り替えるスイッチを含んでもよい。
【0027】
この例示的態様の他の側面によれば、イオン源は、RFモードにおいてイオン源を動作させるためのRF電源及びRF整合回路をさらに含んでもよい。
【0028】
この例示的態様の他の側面によれば、イオン源は、ジボラン、ペンタボラン、カルボラン、オクタボラン、デカボラン、ボロン、ヒ素、リン、インジウム、ゲルマニウム及び炭素のうちの少なくとも1つをベースとしてプラズマを生成してもよい。
【0029】
この例示的態様の他の側面によれば、イオン源は、陰極、反射電極及びさらなる電極面積を提供するための第1付加電極をさらに含んでもよい。
【0030】
この例示的態様のさらなる側面によれば、マルチモードイオン源は、陰極、反射電極、さらなる電極面積を提供するための第1付加電極及び第2付加電極をさらに含んでもよい。
【0031】
添付の図面に示される例示的実施形態を参照して、本発明の開示をより詳細に記載する。本開示が、例示的実施形態を参照して以下に記載されるが、本開示はこれらに限定されない。また、本明細書の教示に基づいて、追加の実装形態、改良及び実施形態、若しくは他の分野での利用が考え得ることは当業者にとって明らかである。また、これらについても、本明細書に記載される本発明の開示の範囲に含まれ、有効であることは明らかである。
【0032】
本開示のより詳細な理解を助けるために、添付の図面を参照するが、図面において同様な要素には、同一の参照を付している。これら添付の図面は、例示することのみを目的としており、本開示を限定することを意図していない。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】従来のイオン注入システムを示した図である。
【図2】従来のイオン源を示した図である。
【図3】本開示の実施形態に係るマルチモードイオン源を示した図である。
【図4A】本開示の別の実施形態に係るマルチモードイオン源を示した図である。
【図4B】本開示の別の実施形態に係るマルチモードイオン源を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本開示の実施形態は、従来のイオン源の技術と比較してより大きな分子イオン注入、改善されたイオン源性能及び寿命を提供可能なマルチモードイオン源を提供することにより、上述の技術を改良したものである。また、本開示の実施形態では、様々な例示的なイオン源構成を提供する。
【0035】
図3は、本開示の実施形態に係るマルチモードイオン源300を示している。例えば、ある実施形態では、マルチマルチモードイオン源300は、複数の動作モードを有していてもよい。複数の動作モードには、少なくとも、アーク放電モード(例えば、誘導加熱陰極(IHC)モード)及び非アーク放電モード(例えば、高周波数(RF)モード)が含まれていてもよい。間接モードの動作及び高周波数モード等他の様々な動作モードが含まれていてもよい。図2に示したイオン源200と同様、図3のマルチモードイオン源300は、導電チャンバ壁214を有するチャンバ202を含んでもよい。アークチャンバ202の一方の端には、タングステンフィラメント204を有する陰極206が設けられている。タングステンフィラメント204は、大電流を供給可能な第1電源208と連結されている。大電流により、タングステンフィラメント204が熱せられ、熱電子放出が起こる。第2電源210により、タングステンフィラメント204よりも非常に高い電位へと陰極206をバイアスして、放出された電子が陰極206に向かって加速され、陰極を加熱するようにしてもよい。陰極206が熱せられると、陰極206からアークチャンバ202へと熱電子が放出される。第3の電源212により、陰極206に対してチャンバ壁214をバイアスして、電子が高いエネルギーでアークチャンバに向かって加速されるようにしもよい。ソースマグネット(図示せず)は、アークチャンバ202内に磁場Bを作り出し、エネルギー電子をそこに閉じ込め、また、アークチャンバ202の他方の端に設けられた反射電極216が、陰極206と同じ電位又は同様な電位でバイアスされて、エネルギー電子を弾くようにしてもよい。ガス源218は、注入種の前駆体(例えば、AsH、PH、BF、カルボラン(C1012))をアークチャンバ202に供給してもよい。エネルギー電子は、注入種の前駆体と相互作用して、プラズマ20を生成する。次いで、引き出し電極(図示せず)によりプラズマ20からイオン22を引き出し開口220を通じて抽出して、イオン注入装置100で使用するイオンを生成する。
【0036】
しかしながら、図2に示される例とは異なり、イオン源300は、もう1つの電源322及び整合回路324を含む。ある実施形態では、このもう1つの付加電源322は、イオン源回路内に設置された高周波数(RF)電源であってもよい。例えば、RF電源322は、IHCアークチャンバの電源212と並列に設けられていてもよい。また、RF電源322は、IHC電源と同じ電源ラック(図示せず)に設けられていてもよい。整合回路324は、RF電源322と連結されたRF整合回路であってもよい。ある実施形態では、RF整合回路324は、マルチモードイオン源300の反射電極216(又はフランジ)に相対的に近い位置に配置されてもよい。RF電源322及び整合回路324は、さらにIHC電源208、210及び212と連結されて、スイッチ326により、2つのイオン源モードの間で"押しボタン"方式の変換が可能となるようにしてもよい。
【0037】
IHCモードのオペレーションでは、例えば、スイッチ326が閉じられて、電源208、210及び212を有効状態としてもよい。このようにすることで、マルチモードイオン源300は、IHCフィラメント204、バイアス(電線/回路)、並びに電源208、210及び212を使用したアークモードイオン源として機能し、典型的なイオン注入を提供することができる。IHC電源208、210及び212からのDC電流は、整合回路234の高域同調コンデンサによって効率的にブロックされることから、整合回路234を、IHC電源208、210及び212並びに回路に接続したままでよいことは明らかである。
【0038】
RFモードの動作では、例えば、マルチモードイオン源300は、容量結合プラズマ(CCP)源として動作してもよい。この例では、電源208、210及び212は、マルチモードイオン源300から切り離される。ある実施形態では、切り離された電源208、210及び212は、エネルギー中継を通じて離れた場所で実現されていてもよい。別の実施形態では、このような切り離しは、1つ以上の局所スイッチ326によって実現される。あるいは、他のブロッキング技術を採用してもよい。IHC部品が効率的にブロックされ(又は、切り離され)、スイッチ326が"開放"状態となると、もう1つの電源322が、陰極206及び反射電極216の双方に接続され、マルチモードイオン源300は、高度分子イオン注入のCCP源として機能する。
【0039】
プラズマパラメータは、ガス源218におけるガス流、印加される磁場(図示せず)、印加されるRF電力及び周波数、並びにその他の要素を変更することにより調整可能であることは明らかである。また、パッシェン最小値は、アークチャンバ202内が高圧であるときに生じ、その他の場所では、望ましくない"空電"プラズマの生成はマルチモードイオン源300においてほとんど起こらない。
【0040】
RFモードで動作するマルチモードイオン源300から発生するプラズマ密度の範囲は、1e10から1e11cm−3である。例えば、〜1e11cm−3といった高い密度では、対応するイオン束は、120amuで0.75mA/cmとなる。C10Hxのイオン部分が50%であると仮定すると、55mm×5mmの引き出し開口220から1mAのC10Hxイオン電流が発生すると考えられる。
【0041】
RF CCPモードで動作するマルチモードイオン源300の特定の性質として、プラズマ密度が、印加周波数の2乗に比例する、すなわちn〜ωであることが挙げられる。したがって、高い周波数で動作するほど、大きなイオン束が得られることになる。実装状態では、およそ40MHz以上で動作するRF電源322で、およそ1e11cm−3の高いプラズマ密度を達成可能であると考えられる。また、ソースマグネット(図示せず)を使用することにより、より高いプラズマ密度を達成可能であると考えられる。本開示の少なくとも1つの実施形態において、潜在的には、マルチモードイオン源300は、様々な種及び堆積物を減らした最小限の量のソースを使用して、およそ1mAの分子ビーム電流を生成可能である。
【0042】
図3に示したマルチモードイオン源300の構成に以外にも、様々な構成が考えられる。例えば、さらなるRF電極を設けてもよい。
【0043】
図4Aは、本開示の別の実施形態に係るマルチモードイオン源400Aを示した図である。この例において、マルチモードイオン源400Aは、第1の付加電極402を含んでもよい。陰極206及び反射電極216と同様、第1の付加電極402は、付加電源322(例えば、RF電源)と連結されていてもよい。
【0044】
図4Bは、本開示の別の実施形態に係るマルチモードイオン源400Bを示した図である。この例において、マルチモードイオン源400Bは、第1の付加電極402及び第2の付加電極404を含んでもよい。陰極206及び反射電極216と同様、第1の付加電極402及び第2の付加電極404は、付加電源322(例えば、RF電源)と連結されていてもよい。
【0045】
第1の付加電極402及び第2の付加電極404はそれぞれ、既存の電極(陰極206及び反射電極216)と同様なものであってもよい。しかしながら、ある実施形態では、第1の付加電極402及び第2の付加電極404は、より大きな面積を有していてもよい。その他、様々な幾何的な形状及びサイズを有していてもよい。
【0046】
マルチモードイオン源400A、400Bがこれらの付加電極(例えば、第1の付加電極402及び/又は第2の付加電極404)を有することにより、RFモードで動作する場合に、より広い電極面積がプラズマに暴露することとなる。このように電極面積を大きくすることにより、ソースの体積に対してより大きな印加電力密度を提供でき、また大きな分子ビーム電流を提供可能となる。加えて、引き出し開口220の長さ全体に渡って、より均一なプラズマが形成されることとなる。
【0047】
図4Bで示したように、4つのRF電極(例えば、陰極206、反射電極216、第1の付加電極402及び第2の付加電極404)の閉じ込め効果により、マルチモードイオン源400Bが、中空陰極放電モードで動作可能となる。
【0048】
第1の付加電極402及び/又は第2の付加電極404のような容量結合された電極が、負の自己DCバイアスを得てもよい。この負のバイアスにより、プラズマ電子が、放電体積中に閉じ込められ、実質的にイオン化率及びプラズマ密度を高めることができる。
【0049】
図4A及び図4Bのマルチモードイオン源がRFモード又は他の高周波数モードで動作しない場合は、第1の付加電極402及び/又は第2の付加電極404を接地してもよいことは明らかである。
【0050】
また、本開示の実施形態は、誘導加熱陰極(IHC)モード及び高周波数(RF)モードで動作するマルチモードイオン源を中心に説明されたが、他の様々な動作モードについても提供可能であることは明らかである。動作モードとしては、他のアーク放電、及び非アーク放電動作モードが含まれ、例えば、中空陰極放電モード、マイクロ波プラズマモード、コールドプラズマ陰極モード等が挙げられる。
【0051】
カルボランを使用した例を説明したが、本開示の実施形態は、他の注入種についても適用可能である。例えば、ジボラン、ペンタボラン、デカボラン、オクタボラン等のガスを使用して、分子イオンビームを生成してもよい。これに加えて、ヒ素、リン、気化ハロゲン化インジウム、ハロゲン化ゲルマニウム(例えば、GeF)、及びハロゲン化ボロン(例えば、BF、BCl)のようなガスを使用して、原子及び/又は分子イオンを生成してもよい。
【0052】
ここに開示した実施形態は、幾つかの動作モードを提供するだけでなく、これらの様々なモードが、付加的なイオン注入のカスタマイズも提供することは明らかである。例えば、1つのマルチモードイオン源を、特定のシーケンス(例えば、特定の注入レシピ)において様々なモードで動作するよう設定してもよい。様々な分子イオン及び/又は原子イオンの使用に加えて、様々な動作モードを利用することにより、特定のユーザーの注入要求に合わせてカスタマイズされたイオン注入シーケンスを提供可能である。その他、様々な実施形態が提供可能である。
【0053】
本開示の技術範囲は、本明細書に記載された特定の実施形態に限定されない。本明細書に記載したものに加えて、本開示に対して、明細書の記載及び添付の図面から様々な実施形態及び改良が可能であることは、当業者にとって明らかである。したがって、他の実施形態及び改良についても、本開示の範囲に含まれる。また、本開示が、特定の目的のための特定の環境における特定の実装形態を参照して記載されたが、本開示の教示するところは、これらに限定されず、様々な目的のための複数の環境において有効に実装可能であることは、当業者にとって明らかである。以下に記す特許請求の範囲は、本明細書に記載した本発明の開示の全容及び精神に基づき、解釈されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のモードがアーク放電モードであり、第2のモードがRFモードである複数のモードで動作するイオン源を備えるイオン注入装置。
【請求項2】
前記複数のモードを切り替えるスイッチをさらに備える請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記イオン源を前記RFモードで動作させるためのRF電源と、RF整合回路とをさらに備える請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記イオン源は、ジボラン、ペンタボラン、カルボラン、オクタデカボラン、デカボラン、ボロン、ヒ素、リン、インジウム、ゲルマニウム及び炭素のうちの少なくとも1つをベースとしてプラズマを生成する請求項1に記載の装置。
【請求項5】
陰極と、
反射電極と、
より大きな電極面積を提供するための第1付加電極とをさらに備える請求項1に記載の装置。
【請求項6】
陰極と、
反射電極と、
より大きな電極面積を提供するための第1付加電極及び第2付加電極とをさらに備える請求項1に記載の装置。
【請求項7】
第1の動作モードがアーク放電モードであり、第2の動作モードがRFモードである複数の動作モードをサポートするチャンバを備えるマルチモードイオン源。
【請求項8】
前記複数の動作モードを切り替えるスイッチをさらに備える請求項7に記載のマルチモードイオン源。
【請求項9】
前記マルチモードイオン源を前記RFモードで動作させるためのRF電源及びRF整合回路をさらに備える請求項7に記載のマルチモードイオン源。
【請求項10】
ジボラン、ペンタボラン、カルボラン、オクタボラン、デカボラン、ボロン、ヒ素、リン、インジウム、ゲルマニウム及び炭素のうちの少なくとも1つをベースとしてプラズマを生成する請求項7に記載のマルチモードイオン源。
【請求項11】
陰極と、
反射電極と、
より大きな電極面積を提供するための第1付加電極とをさらに備える請求項7に記載のマルチモードイオン源。
【請求項12】
陰極と、
反射電極と、
より大きな電極面積を提供するための第1付加電極及び第2付加電極とをさらに備える請求項7に記載のマルチモードイオン源。
【請求項13】
複数の動作モードを有するイオン注入方法であって、
アーク放電モードに基づくイオン源の第1動作モードを提供する段階と、
RFモードに基づく前記イオン源の第2動作モードを提供する段階と、
前記第1動作モードと前記第2動作モードとを少なくとも1つのスイッチを使用して切り替える段階と
を備えるイオン注入方法。
【請求項14】
前記イオン源は、前記複数の動作モードを切り替えるスイッチを有する請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記イオン源は、前記イオン源を前記RFモードで動作させるためのRF電源及びRF整合回路を有する請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記イオン源は、ジボラン、ペンタボラン、カルボラン、オクタデカボラン、デカボラン、ボロン、ヒ素、リン、インジウム、ゲルマニウム及び炭素のうちの少なくとも1つをベースとしてプラズマを生成する請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記イオン源は、
陰極と、
反射電極と、
より大きな電極面積を提供するための第1付加電極とを有する請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記イオン源は、
陰極と、
反射電極と、
より大きな電極面積を提供するための第1付加電極及び第2付加電極とを有する請求項13に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【公表番号】特表2011−525036(P2011−525036A)
【公表日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−513624(P2011−513624)
【出願日】平成21年6月9日(2009.6.9)
【国際出願番号】PCT/US2009/046701
【国際公開番号】WO2009/152127
【国際公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【出願人】(500324750)バリアン・セミコンダクター・エクイップメント・アソシエイツ・インコーポレイテッド (88)
【Fターム(参考)】