説明

ミシンの布押さえ昇降装置

【課題】ユーザの作業を軽減するとともに中間位置の高さのバラツキを抑えること。
【解決手段】布送り台2上で昇降可能に保持された布押さえ5と、布押さえを昇降させるように連結されたエアシリンダ及び3位置式の電磁弁並びにエアシリンダのエア量を制御するスピードコントローラとを有する駆動手段4と、布押さえを昇降するための操作をする操作ペダル30と、操作ペダルの操作により駆動手段を駆動制御する制御手段40と、を備えるミシンの布押さえ昇降装置1において、駆動手段による布押さえの昇降の際に、エアシリンダ及び電磁弁の駆動時間を設定する駆動時間設定手段50と、駆動時間設定手段により設定されたエアシリンダ及び電磁弁の駆動時間を記憶する記憶手段42と、制御手段は、操作ペダルが操作された場合に、記憶手段に記憶された駆動時間に基づいてエアシリンダ及び電磁弁を駆動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、布押えを上昇位置及び下降位置並びにそれらの間の中間位置とに昇降可能としたミシンの布押さえ昇降装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ミシンには、縫製の対象となる布を押さえつける布押さえ装置が設けられているものがある。この布押さえ装置は、ミシンベッド上に載置された布の上方で布押さえが布を押さえつける下降位置と布の押さえつけを解放する上昇位置との間で昇降可能とされている。
布押さえの昇降には、例えば、特許文献1に記載されているように、3位置式の電磁弁を備えたエアシリンダを駆動源として用いて、前記電磁弁の制御によりピストンを進退させることにより、布押さえを、最も上昇した位置と最も下降した位置とその上昇位置と下降位置との間の中間位置で停止するようにしていた。
ここで、布押さえの中間位置の高さは、制御装置のROMに格納されたソフトウェア上の布押さえ下降動作の設定時間とスピードコントローラによるエアシリンダのエア流量とにより決定される。すなわち設定時間内に流入或いは流出されるエア流量によってピストンの移動量が決定されるので、設定時間後の布押えの位置(中間位置)が決定される。
【特許文献1】特開2001−87584号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、布押さえの中間位置の高さを調節する際には、上述のようにROMに格納されたソフトウェアを書き換えるか、スピードコントローラによりエア流量を調節する必要がある。
しかし、ソフトウェアの書き換えはソフトウェアの設計者しかできないため、ユーザはスピードコントローラによるエア流量の調節しかすることができない。
そのため、複数のミシンを備えた縫製工場において、それぞれのミシンについて中間位置の高さを調節する際には、ユーザは、ミシン毎にスピードコントローラによる流量調節作業が必要であり、作業が煩わしかった。
また、スピードコントローラによるエア流量は、目視で把握することができないため、調節するミシン毎に中間位置の高さにバラツキが生じるという問題があった。
【0004】
そこで、本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、ユーザの作業を軽減するとともに中間位置の高さのバラツキを抑えることができるミシンの布押さえ昇降装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明は、
布送り台上で昇降可能に保持された布押さえと、
前記布押さえを昇降させるように連結されたエアシリンダ及び3位置式の電磁弁並びにエアシリンダのエア量を制御するスピードコントローラとを有する駆動手段と、
前記布押さえを昇降するための操作をする操作ペダルと、
前記操作ペダルの操作により前記駆動手段を駆動制御する制御手段と、を備えるミシンの布押さえ昇降装置において、
前記駆動手段による前記布押さえの昇降の際に、前記エアシリンダ及び前記電磁弁の駆動時間を設定する駆動時間設定手段と、
前記駆動時間設定手段により設定された前記エアシリンダ及び前記電磁弁の駆動時間を記憶する記憶手段と、
前記制御手段は、前記操作ペダルが操作された場合に、前記記憶手段に記憶された駆動時間に基づいて前記エアシリンダ及び前記電磁弁を駆動させることを特徴とする。
【0006】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のミシンの布押さえ昇降装置において、
前記駆動手段の3位置式の電磁弁は、
5ポート3位置電磁弁であり、
前記制御手段は、布押さえの昇降時に中間停止を行うように前記駆動手段を制御する二段ストローク制御手段と、前記中間停止を行わずに前記布押さえを昇降させるように前記駆動手段を制御する単一ストローク制御手段と、を備え、
前記二段ストローク制御手段による前記駆動手段の駆動制御と、前記単一ストローク制御手段による前記駆動手段の駆動制御と、を切り替える切替手段と、
を備えることを特徴とする。
【0007】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のミシンの布押さえ昇降装置において、
前記布押さえは、複数の押さえ片に分割されるとともに各押さえ片が互いに独立して駆動するように構成され、
前記切替手段は、各押さえ片毎に前記二段ストローク制御手段による前記駆動手段の駆動制御と、前記単一ストローク制御手段による前記駆動手段の駆動制御と、を切り替え可能であることを特徴とする。
【0008】
請求項4に記載の発明は、請求項2に記載のミシンの布押さえ昇降装置において、
前記電磁弁として、5ポート3位置クローズドセンタ電磁弁を用いることを特徴とする。
【0009】
請求項5に記載の発明は、請求項1に記載のミシンの布押さえ昇降装置において、
ミシンを起動させて布に縫製を行わせる起動手段と、
前記制御手段により前記布押さえを布の押さえ位置まで下降させた後、布の押さえ圧を安定させるまで前記起動手段によるミシンの起動を阻止する時間を設定する阻止時間設定手段と、
前記起動手段と前記制御手段との接続を前記阻止時間設定手段により設定された時間だけ強制的に遮断する起動阻止制御手段と、
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、駆動時間設定手段により、布押さえの昇降の際における駆動手段(エアシリンダ及び電磁弁)の駆動時間を設定すると、その駆動時間は記憶手段に記憶される。そして、制御手段は、操作ペダルが操作された場合に、記憶手段に記憶された駆動時間に基づいて駆動手段を駆動させる。
これにより、ユーザは、駆動時間設定手段により予め駆動手段の駆動時間を設定しておけば、その駆動時間に対応する中間停止位置で布押さえを停止させることができる。よって、従来のようにスピードコントローラによるエア流量の調節作業を省くことができ、ユーザの作業を軽減することができる。これに伴い、スピードコントローラも不要となるので、装置の軽量化、コストダウンを図ることができる。
また、制御手段は、記憶手段に記憶された駆動時間に基づいて中間停止位置を調節するので、記憶された駆動時間の設定を変えない限り、布押さえを常に同じ高さで停止させることができる。
よって、ユーザの作業を軽減するとともに中間位置の高さのバラツキを抑えることができる。
【0011】
請求項2に記載の発明によれば、駆動手段は、エアシリンダと5ポート3位置の電磁弁とを備えることにより、制御手段は、布押さえの上昇と下降を独立して制御することができる。
ここで、切替手段により、二段ストローク制御手段による駆動手段の駆動制御と、単一ストローク制御手段による駆動手段の駆動制御と、を切り替えることができるので、ミシンの汎用性を高めることができる。
【0012】
請求項3に記載の発明によれば、複数の押さえ片からなる布押さえであっても、それぞれの押さえ片を独立して駆動制御することができるので、布を重ねて縫製する場合のように、複数の布の位置あわせが必要な場合にも対応可能となる。
【0013】
請求項4に記載の発明によれば、5ポート3位置クローズドセンタ電磁弁を使うことにより、布押さえの中間停止位置でのエアシリンダ内のエアは全て排気されているため、布押さえの中間停止位置で布押さえ高さを手動で容易に変更することが可能となり、布押さえの中間停止位置を最下降位置(縫製物を押えた状態)と設定しても縫製物の位置出しが可能となる。
【0014】
請求項5に記載の発明によれば、従来のように、スピードコントローラを使用して中間停止高さの位置だしを行ったためエア流量が制限され最下降に時間がかかってしまうような場合も、阻止時間設定手段により、起動手段によるミシンの起動を阻止する時間を設定することができる。
これにより、布押さえが最下降する前にミシンが起動することを防止し、布押さえの押さえ圧が安定してから縫製できる為、生地がずれてしまうことを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照して、ミシンの布押さえ昇降装置の最良の実施形態について詳細に説明する。
〔第1の実施形態〕
<ミシンの布押さえ昇降装置の構成>
図1に示すように、ミシンの布押さえ昇降装置1(以下、布押さえ昇降装置1という。
)は、ミシンアームMの下方で、ミシンベッドB上に固定されている。詳細は後述するが、布押さえ装置1は、布送り台2上で昇降可能に保持された布押さえ5と、布押さえ5を昇降させる駆動手段としての布押さえシリンダ4及び電磁弁10と、布押さえ5の昇降の操作をする操作ペダル30と、布押さえシリンダ4、電磁弁10及び操作ペダル30に接続されて布押さえシリンダ4及び電磁弁10を駆動制御する制御手段としての制御装置40と、布押さえシリンダ4及び電磁弁10による布押さえ5の昇降の際に、布押さえシリンダ4及び電磁弁10の駆動時間を設定する駆動時間設定手段としての操作パネル50と、操作パネル50により設定された布押さえシリンダ4及び電磁弁10の駆動時間を記憶する記憶手段としてのメモリ42と、を備えている。
【0016】
(布押さえシリンダ)
布押さえ昇降装置1には、布送り台2がミシンベッドB上にその上面方向に移動可能に取付けられている。布送り台2は一体的に構成されたベース部2aとアーム部2bとを備えている。
布送り台2の一端には、ピン3a(シリンダ支点軸)を中心として回転可能なように布押さえシリンダ4が取付けられている。アーム部2bには、ピン3b(リンク支点軸)を介して布押さえリンク6が回転可能に取付けられている。この布押さえリンク6の一端は、ピン7を介して布押さえシリンダ4のロッド4aに連結され、他端は布押さえ5に連結されている。これにより、布押さえシリンダ4のロッド4aの自身の軸線方向への進退に伴い、布押さえ5を上下動させるように構成されている。ピン3a,3b,7、布押さえシリンダ4、布押さえリンク6は、ミシンの正面側(オペレータ側)から見て布送り台2の右側と左側へそれぞれ1つずつ設けられている。
布押さえシリンダ4は、電磁弁10に接続されている。この電磁弁10は5ポート3位置式のものであり、クローズセンタタイプ、プレッシャセンタタイプ、エキゾーストセンタタイプのものを用いることができる。なお、本実施形態においては、クローズドセンタタイプの電磁弁10を用いている。
【0017】
(電磁弁)
電磁弁10のポート10Aは、エアーチューブ12を介して布押さえシリンダ4のヘッド側のポート4Aに接続されている。電磁弁10のポート10Bは、エアーチューブ13を介して布押さえシリンダ4のボトム側のポート4Bへ接続されている。電磁弁10のポート10Pはエア供給源となるポンプ20へ接続されている。電磁弁10の排気ポート10Cは、布押さえシリンダ4において布押さえ5を上昇させる際に送気されたエアを布押さえシリンダ4の内部から排出する。電磁弁10の排気ポート10Dは、布押さえシリンダ4において布押さえ5を下降させる際に送気されたエアを布押さえシリンダ4の内部から排出する。
【0018】
電磁弁10には、布押さえ5の上昇用のソレノイド21と、布押さえ5の下降用のソレノイド22とが設けられている。ここで、本実施形態において採用した5ポート3位置クローズド電磁弁の動作による布押さえ5の昇降の機構について説明すると、ソレノイド21,22がともにOFFの場合、ポート10Aの弁を閉じ、エアーチューブ12及びシリンダ4内の上昇側空間4Uのエアを閉じ込める。また、ポート10Bの弁を閉じエアーチューブ13及びシリンダ4内の下降側空間4Dのエアを閉じ込める。これにより布押さえ5は、シリンダ4内の上昇側空間4Uのエア圧力と、シリンダ4内下降側空間4Dのエア圧力のつりあった点で停止する。
上昇用のソレノイド21がON、下降用のソレノイド22がOFFの場合、ポート10Aから布押さえシリンダ4の上昇側空間4Uにエアが供給され、布押さえシリンダ4の下降側空間4Dは、ポート10Bに接続された排気ポート10Dからエアが排気される。これにより、ロッド4aは、布押さえシリンダ4の基端側(図1における右側)に移動するので、布押さえリンク6の回転により布押さえ5が上昇する。
上昇用のソレノイド21がOFF、下降用のソレノイド22がONの場合、ポート10Bから布押さえシリンダ4の下降側空間4Dにエアが供給され、布押さえシリンダ4の上昇側空間4Uは、ポート10Aに接続された排気ポート10Cからエアが排気される。これにより、ロッド4aは、布押さえシリンダ4の先端側(図1における左側)に移動するので、布押さえリンク6の回転により布押さえ5が下降する。
ソレノイド21,22は、制御装置40のI/Oポート41に接続され、制御装置40からの駆動制御信号に基づき、各ソレノイド21,22が駆動する。
【0019】
(操作ペダル)
操作ペダル30は、3個のスイッチ31,32,33を有する三連ペダルであり、スイッチ31は、1回目の入力により布押さえ5を中間位置で停止させるとともに、2回目の入力により布押さえ5を上昇させるためのスイッチである。スイッチ32は、布押さえ5が中間位置にある場合に、その布押さえ5をさらに下降させるものである。スイッチ33は、ミシンを起動させて布に縫製を行わせる起動手段としての起動スイッチである。
各スイッチ31,32,33は、オペレータによって踏まれているときだけ接点が閉じるタイプのものである。操作ペダル30は、制御装置40のI/Oポート41に接続され、ユーザによる操作ペダル30の操作に基づく指令信号が制御装置40に伝達され、この指令信号に基づいて、制御装置40は、ソレノイド21,22を駆動させる。
【0020】
(操作パネル)
操作パネル50は、ユーザに縫製に関する情報を報知するとともに、縫製条件の設定等を行う際に用いられる。操作パネル50は、液晶タッチパネル等により構成され、制御装置40の制御の下、必要な情報が表示部51に表示される。表示部51には、タッチパネル式のアイコン等が表示され、ユーザはこれらのアイコンに触れることにより縫製条件等を設定することができる。すなわち、表示部51は操作部52としても機能する。
操作パネル50は、表示や操作入力に関する処理を掌るCPU53を備えており、CPU53は、制御装置40のCPUに接続されている。
操作パネル50は、布押さえシリンダ4による布押さえ5の昇降の際に、布押さえシリンダ4の駆動時間を設定することができるように構成され、操作パネル50は駆動時間設定手段として機能する。
操作パネル50は、制御装置40により布押さえ5を布の押さえ位置まで下降させた後、布押さえ5による布の押さえ圧を安定させるまでスイッチ33によるミシンの起動を阻止する時間を設定する阻止時間設定手段としても機能する。
【0021】
(制御装置)
制御装置40は、上述のI/Oポート41と、CPU43と、このCPU43に接続されたメモリ42と、CPU43の作業エリアとなる演算部44、を備えている。
I/Oポート41の入力部にはスイッチ31,32,33が接続され、出力部には電磁弁10の上昇用のソレノイド21、下降用のソレノイド22が接続されている。メモリ42には、予め縫目模様を形成する複数の針落ち位置を表したデータが格納されている。演算部44は、操作ペダル30のスイッチ31,32,33の状態に応じて電磁弁10の動作を制御するためのものであり、例えば図示しないROM内に格納されるソフトウェアであるが、メモリ42内に格納されるソフトウェアとすることもできる。
【0022】
メモリ42は、操作パネル50(後述する)により設定された布押さえシリンダ4の駆動時間を記憶する記憶手段として機能する。
制御装置40は、操作ペダル30が操作された場合に、メモリ42に記憶された駆動時間に基づいて布押さえシリンダ4を駆動させる。
制御装置40は、布押さえ5の昇降時に中間停止を行うように布押さえシリンダ4を制御する二段ストローク制御(二段ストローク制御手段)と、中間停止を行わずに布押さえ5を昇降させるように布押さえシリンダ4を制御する単一ストローク制御(単一ストローク制御手段)と、ができるようになっており、これらの切り替えは、操作パネル50により設定する。
制御装置40は、スイッチ33と制御装置40との接続を操作パネル50により設定された時間だけ強制的に遮断する起動阻止制御手段として機能する。
【0023】
<布押さえの昇降動作>
(二段ストローク制御)
次に、布押さえ昇降装置1により、布押さえ5を二段ストローク制御に基づいて昇降させるときの動作について説明する。
図2、図3に示すように、最初、布押さえ5は最上昇位置で待機している。このとき、制御装置40は、上昇用のソレノイド21をON、下降用のソレノイド22をOFFとすることにより、布押さえ5の最上昇位置を維持する(ステップS1)。
この状態において、制御装置40は、操作ペダル30のスイッチ31がONになったか否かを判断する(ステップS2)。ここで、制御装置40が、操作ペダル30のスイッチ31がONになったと判断した場合(ステップS2:YES)、制御装置40は、上昇用のソレノイド21をOFF、下降用のソレノイド22をONとする(ステップS3)。
【0024】
これにより、ポート10Bから布押さえシリンダ4の下降側空間4Dにエアが供給され、布押さえシリンダ4の上昇側空間4Uは、ポート10Aに接続された排気ポート10Cからエアが排気される。そして、ロッド4aは、布押さえシリンダ4の先端側(図1における左側)に移動するので、布押さえリンク6はピン3bを支点として図1の紙面に対して反時計回りに回転し、布押さえ5が下降する。
下降用のソレノイド22をONとする時間は、操作パネル50により設定され、制御装置40のメモリ42に記憶されている駆動時間である。従って、制御装置40は、メモリ42に記憶された駆動時間だけ下降用のソレノイド22をONした後、下降用のソレノイド21をOFFにする(ステップS4)。これにより、布押さえ5を中間位置で停止させることができる。
【0025】
制御装置40は、布押さえ5を中間位置で停止させた後、操作ペダル30のスイッチ32がONであるか否かを判断する(ステップS5)。ここで、制御装置40が、スイッチ32がONであると判断した場合(ステップS5:YES)、制御装置40は、上昇用のソレノイド21をOFF、下降用のソレノイド22をONとする(ステップS6)。
これにより、ポート10Bから布押さえシリンダ4の下降側空間4Dにエアが供給され、布押さえシリンダ4の上昇側空間4Uは、ポート10Aに接続された排気ポート10Cからエアが排気される。そして、ロッド4aは、布押さえシリンダ4の先端側(図1における左側)に移動するので、布押さえリンク6はピン3bを支点として図1の紙面に対して反時計回りに回転し、布押さえ5が下降する。
【0026】
次いで、制御装置40は、布押さえ5が最下降位置まで下降したか否かを判断する(ステップS7)。ここで、制御装置40が、布押さえ5が最下降位置まで下降したと判断すると(ステップS7:YES)、制御装置40は、操作パネル50により設定され、制御装置40のメモリ42に記憶されているミシンの起動を阻止する時間を読み取る。そして、制御装置40は、読み取った時間だけスイッチ33からの指令信号を強制的に遮断する(ステップS8)。これは、布押さえ5が完全に最下降位置まで下降して布を押さえつける前にスイッチ33が押されて縫製が開始されるのを防止するためである。
次いで、制御装置40は、スイッチ33がONになったか否か、すなわち、ミシンによる縫製が開始されたか否かを判断する(ステップS9)。ここで、制御装置40が、スイッチ33がONになったと判断すると(ステップS9:YES)、制御装置40は、メモリ42に記憶された縫製プログラムに基づいて布の縫製を行う。
【0027】
縫製中、制御装置40は、縫製が終了したか否かを判断する(ステップS10)。そして、縫製が終了し、制御装置40が、縫製が終了したと判断すると(ステップS10:YES)、制御装置40は、上昇用のソレノイド21をON、下降用のソレノイド22をOFFとする(ステップS11)。
これにより、ポート10Aから布押さえシリンダ4の上昇側空間4Uにエアが供給され、布押さえシリンダ4の下降側空間4Dは、ポート10Bに接続された排気ポート10Dからエアが排気される。そして、ロッド4aは、布押さえシリンダ4の基端側(図1における右側)に移動するので、布押さえリンク6はピン3bを支点として図1の紙面に対して時計回りに回転し、布押さえ5が最上昇位置まで上昇する。布押さえ5が最上昇位置まで移動すると、制御装置40は、再度ステップS1の処理に戻る。
【0028】
一方、ステップS5において、制御装置40が、スイッチ32がOFFであると判断した場合(ステップS5:YES)、制御装置40は、スイッチ31がONであるか否かを判断する(ステップS12)。ここで、制御装置40が、スイッチ31がONであると判断した場合(ステップS12:YES)、制御装置40は、上昇用のソレノイド21をON、下降用のソレノイド22をOFFとする(ステップS13)。
これにより、ポート10Aから布押さえシリンダ4の上昇側空間4Uにエアが供給され、布押さえシリンダ4の下降側空間4Dは、ポート10Bに接続された排気ポート10Dからエアが排気される。そして、ロッド4aは、布押さえシリンダ4の基端側(図1における右側)に移動するので、布押さえリンク6はピン3bを支点として図1の紙面に対して時計回りに回転し、布押さえ5が最上昇位置まで上昇する。布押さえ5が最上昇位置まで移動すると、制御装置40は、再度ステップS1の処理に戻る。
【0029】
(単一ストローク制御)
次に、布押さえ昇降装置1により、布押さえ5を中間位置で停止させない単一ストローク制御に基づいて昇降させるときの動作について説明する。
最初に、布押さえ5の昇降の制御が二段ストローク制御になっている場合には、操作パネル50からの設定により、制御モードを単一ストローク制御にしておく。
図4、図5に示すように、最初、布押さえ5は最上昇位置で待機している。このとき、制御装置40は、上昇用のソレノイド21をON、下降用のソレノイド22をOFFとすることにより、布押さえ5の最上昇位置を維持する(ステップS21)。
この状態において、制御装置40は、操作ペダル30のスイッチ31がONになったか否かを判断する(ステップS22)。ここで、制御装置40が、操作ペダル30のスイッチ31がONになったと判断した場合(ステップS22:YES)、制御装置40は、上昇用のソレノイド21をOFF、下降用のソレノイド22をONとする(ステップS23)。
【0030】
これにより、ポート10Bから布押さえシリンダ4の下降側空間4Dにエアが供給され、布押さえシリンダ4の上昇側空間4Uは、ポート10Aに接続された排気ポート10Cからエアが排気される。そして、ロッド4aは、布押さえシリンダ4の先端側(図1における左側)に移動するので、布押さえリンク6はピン3bを支点として図1の紙面に対して反時計回りに回転し、布押さえ5が下降する。
【0031】
次いで、制御装置40は、布押さえ5が最下降位置まで下降したか否かを判断する(ステップS24)。ここで、制御装置40が、布押さえ5が最下降位置まで下降したと判断すると(ステップS24:YES)、制御装置40は、操作パネル50により設定され、制御装置40のメモリ42に記憶されているミシンの起動を阻止する時間を読み取る。そして、制御装置40は、読み取った時間だけスイッチ33からの指令信号を強制的に遮断する(ステップS25)。これは、布押さえ5が完全に最下降位置まで下降して布を押さえつける前にスイッチ33が押されて縫製が開始されるのを防止するためである。
次いで、制御装置40は、スイッチ33がONになったか否か、すなわち、ミシンによる縫製が開始されたか否かを判断する(ステップS26)。ここで、制御装置40が、スイッチ33がONになったと判断すると(ステップS26:YES)、制御装置40は、メモリ42に記憶された縫製プログラムに基づいて布の縫製を行う。
【0032】
縫製中、制御装置40は、縫製が終了したか否かを判断する(ステップS27)。そして、縫製が終了し、制御装置40が、縫製が終了したと判断すると(ステップS27:YES)、制御装置40は、上昇用のソレノイド21をON、下降用のソレノイド22をOFFとする(ステップS28)。
これにより、ポート10Aから布押さえシリンダ4の上昇側空間4Uにエアが供給され、布押さえシリンダ4の下降側空間4Dは、ポート10Bに接続された排気ポート10Dからエアが排気される。そして、ロッド4aは、布押さえシリンダ4の基端側(図1における右側)に移動するので、布押さえリンク6はピン3bを支点として図1の紙面に対して時計回りに回転し、布押さえ5が最上昇位置まで上昇する。布押さえ5が最上昇位置まで移動すると、制御装置40は、再度ステップS1の処理に戻る。
【0033】
一方、ステップS26において、制御装置40が、スイッチ33がOFFであると判断した場合(ステップS26:NO)、制御装置40は、スイッチ31がONであるか否かを判断する(ステップS29)。ここで、制御装置40が、スイッチ31がONであると判断した場合(ステップS29:YES)、制御装置40は、上昇用のソレノイド21をON、下降用のソレノイド22をOFFとする(ステップS30)。
これにより、ポート10Aから布押さえシリンダ4の上昇側空間4Uにエアが供給され、布押さえシリンダ4の下降側空間4Dは、ポート10Bに接続された排気ポート10Dからエアが排気される。そして、ロッド4aは、布押さえシリンダ4の基端側(図1における右側)に移動するので、布押さえリンク6はピン3bを支点として図1の紙面に対して時計回りに回転し、布押さえ5が最上昇位置まで上昇する。布押さえ5が最上昇位置まで移動すると、制御装置40は、再度ステップS1の処理に戻る。
【0034】
<作用・効果>
このように、ミシンの布押さえ昇降装置1によれば、操作パネル50により、布押さえ5の昇降の際における布押さえシリンダ4の駆動時間を設定すると、その駆動時間はメモリ42に記憶される。そして、制御装置40は、操作ペダル30が操作された場合に、メモリ42に記憶された駆動時間に基づいて布押さえシリンダ4を駆動させる。
これにより、ユーザは、操作パネル50により予め布押さえシリンダ4の駆動時間を設定しておけば、その駆動時間に対応する中間停止位置で布押さえ5を停止させることができる。よって、従来のようにスピードコントローラによるエア流量の調節作業を省くことができ、ユーザの作業を軽減することができる。これに伴い、スピードコントローラも不要となるので、装置の軽量化、コストダウンを図ることができる。
また、制御装置40は、メモリ42に記憶された駆動時間に基づいて中間停止位置を調節するので、記憶された駆動時間の設定を変えない限り、布押さえ5を常に同じ高さで停止させることができる。
よって、ユーザの作業を軽減するとともに中間位置の高さのバラツキを抑えることができる。
【0035】
また、電磁弁10として5ポート3位置クローズドセンタ電磁弁を使うことにより、布押さえ5の中間停止位置での布押さえシリンダ4内のエアは全て排気されているため、布押さえ5の中間停止位置で布押さえ高さを手動で容易に変更することが可能となり、布押さえ5の中間停止位置を最下降位置(縫製物を押えた状態)と設定しても縫製物の位置出しが可能となる。
【0036】
また、従来のように、スピードコントローラを使用して中間停止高さの位置だしを行ったためエア流量が制限され最下降に時間がかかってしまうような場合も、操作パネル50により、スイッチ33によるミシンの起動を阻止する時間を設定することができる。
これにより、布押さえ5が最下降する前にミシンが起動することを防止し、布押さえ5の押さえ圧が安定してから縫製できる為、生地がずれてしまうことを防止できる。
【0037】
また、布押さえ5を昇降させる駆動手段は、布押さえシリンダ4と5ポート3位置の電磁弁10とを備えることにより、制御装置40は、布押さえ5の上昇と下降を独立して制御することができる。
ここで、操作パネル50により、二段ストローク制御による布押さえシリンダ4及び電磁弁10の駆動制御と、単一ストローク制御による布押さえシリンダ4及び電磁弁10の駆動制御と、を切り替えることができるので、ミシンの汎用性を高めることができる。
【0038】
〔第2の実施形態〕
次に、第2の実施形態について説明する。
第2の実施形態は、図6に示すように、布押さえ105が、複数の押さえ片105L,105Rに分割されるとともに各押さえ片105L,105Rが互いに独立して駆動するように構成されている場合における布押さえ105の昇降動作に関する実施形態である。
布押さえ昇降装置101のブロック図である図7においては、布押さえ昇降装置101の側面から見ているため、右側の布押さえ片105R、布押さえシリンダ104Rが示されているが、左側の布押さえ片105L及び該布押さえ片105Lのための布押さえシリンダ104Lは、右側の布押さえ片105R及び該布押さえ片105Rのための布押さえシリンダ104Rの奥に存在している。図の便宜上、左側の布押さえ片105Lの昇降に関する構成要素は、右側の布押さえ片105Rの昇降に関する構成要素と同じであるため、符号をかっこ書きで示すこととする。
また、布押さえシリンダ104L,104Rは、ともに同じ構造であり、第2の実施形態において異なる部分は、各押さえ片105L,105Rの昇降制御であるため、昇降制御について説明し、同じ構造の構成要素については同一符号を付して説明を省略する。
【0039】
<ミシンの布押さえ昇降装置の構成>
図7に示すように、布押さえ昇降装置101は、ミシンアームMの下方で、ミシンベッドB上に固定されている。詳細は後述するが、布押さえ装置101は、布送り台2上で昇降可能に保持された左右の押さえ片105L,105Rを有する布押さえ105と、左右の押さえ片105L,105Rをそれぞれ昇降させる駆動手段としての左右の布押さえシリンダ104L,104R及び電磁弁110L,110Rと、布押さえ105の昇降の操作をする操作ペダル130と、両布押さえシリンダ104L,104R、両電磁弁110L,110R及び操作ペダル130に接続されて両布押さえシリンダ104L,104R及び両電磁弁110L,110Rを駆動制御する制御手段としての制御装置140と、左右の布押さえ105の昇降の際に、各布押さえシリンダ104L,104R及び各電磁弁110L,110Rの駆動時間を設定する駆動時間設定手段としての操作パネル50と、操作パネル50により設定された左右の布押さえシリンダ104L,104R及び左右の電磁弁110L,110Rの駆動時間を記憶する記憶手段としてのメモリ142と、を備えている。
【0040】
(布押さえシリンダ)
布押さえ昇降装置101には、布送り台2がミシンベッドB上にその上面方向に移動可能に取付けられている。布送り台2は一体的に構成されたベース部2aとアーム部2bとを備えている。
布送り台2の一端には、左右のピン3a,3a(シリンダ支点軸)を中心として回転可能なように左右の布押さえシリンダ104L,104Rが取付けられている。アーム部2bには、左右のピン3b,3b(リンク支点軸)を介して左右の布押さえリンク6,6が回転可能に取付けられている。左右の布押さえリンク6,6の一端は、左右のピン7,7を介して左右の布押さえシリンダ104L,104Rの各ロッド4a,4aに連結され、他端は左右の布押さえ片105L,105Rに連結されている。これにより、左右の布押さえシリンダ104L,104Rの各ロッド4a,4aの自身の軸線方向への進退に伴い、左右の布押さえ片105L,105Rを上下動させるように構成されている。
左右の布押さえシリンダ104L,104Rは、左側の布押さえシリンダ104Lが電磁弁110Lに接続されている。また、右側の布押さえシリンダ104Rが電磁弁110Rに接続されている。この電磁弁110L,110Rは5ポート3位置式のものであり、クローズセンタタイプ、プレッシャセンタタイプ、エキゾーストセンタタイプのものを用いることができる。なお、本実施形態においては、クローズドセンタタイプの電磁弁110L,110Rを用いている。
【0041】
(電磁弁)
電磁弁110Lのポート111Lは、エアーチューブ12Lを介して布押さえシリンダ104Lのヘッド側のポート121Lに接続されている。電磁弁110Rのポート111Rは、エアーチューブ12Rを介して布押さえシリンダ104Rのヘッド側のポート121Rに接続されている。
電磁弁110Lのポート112Lは、エアーチューブ13Lを介して布押さえシリンダ104Lのボトム側のポート122Lへ接続されている。電磁弁110Rのポート112Rは、エアーチューブ13Rを介して布押さえシリンダ104Rのボトム側のポート122Rへ接続されている。
電磁弁110Lのポート115Lはエア供給源となるポンプ20へ接続されている。電磁弁110Rのポート115Rはエア供給源となるポンプ20へ接続されている。
電磁弁110Lの排気ポート113Lは、布押さえシリンダ104Lにおいて布押さえ105Lを上昇させる際に送気されたエアを布押さえシリンダ104Lの内部から排出する。電磁弁110Rの排気ポート113Rは、布押さえシリンダ104Rにおいて布押さえ105Rを上昇させる際に送気されたエアを布押さえシリンダ104Rの内部から排出する。
電磁弁110Lの排気ポート114Lは、布押さえシリンダ104Lにおいて布押さえ105Lを下降させる際に送気されたエアを布押さえシリンダ104Lの内部から排出する。電磁弁110Rの排気ポート114Rは、布押さえシリンダ104Rにおいて布押さえ105Rを下降させる際に送気されたエアを布押さえシリンダ104Rの内部から排出する。
【0042】
電磁弁110Lには、布押さえ片105Lの上昇用のソレノイド21Lと、布押さえ片105Lの下降用のソレノイド22Lとが設けられている。電磁弁110Rには、布押さえ片105Rの上昇用のソレノイド21Rと、布押さえ片105Rの下降用のソレノイド22Rとが設けられている。
ここで、本実施形態において採用した5ポート3位置クローズド電磁弁の動作による布押さえ片105Lの昇降の機構について説明すると、ソレノイド21L,22LがともにOFFの場合、ポート111Lの弁を閉じ、エアーチューブ12L及びシリンダ104L内の上昇側空間124Lのエアを閉じ込める。また、ポート112Lの弁を閉じ、エアーチューブ13L及びシリンダ104L内の下降側空間123Lのエアを閉じ込める。これにより布押さえ105Lは、シリンダ104L内の上昇側空間124Lのエア圧力と、シリンダ104L内下降側空間123Lのエア圧力のつりあった点で停止する。
上昇用のソレノイド21LがON、下降用のソレノイド22LがOFFの場合、ポート111Lから布押さえシリンダ104Lの上昇側空間124Lにエアが供給され、布押さえシリンダ104Lの下降側空間123Lは、ポート112Lに接続された排気ポート114Lからエアが排気される。これにより、ロッド4aは、布押さえシリンダ104Lの基端側(図7における右側)に移動するので、布押さえリンク6の回転により布押さえ片105Lが上昇する。
上昇用のソレノイド21LがOFF、下降用のソレノイド22LがONの場合、ポート112Lから布押さえシリンダ104Lの下降側空間123Lにエアが供給され、布押さえシリンダ104Lの上昇側空間124Lは、ポート111Lに接続された排気ポート113Lからエアが排気される。これにより、ロッド4aは、布押さえシリンダ104Lの先端側(図7における左側)に移動するので、布押さえリンク6の回転により布押さえ片105Lが下降する。
ソレノイド21L,22Lは、制御装置140のI/Oポート141に接続され、制御装置140からの駆動制御信号に基づき、各ソレノイド21L,22Lが駆動する。
なお、布押さえ片105Rの昇降の機構に関しても、布押さえシリンダ104R、電磁弁110R、ソレノイド21R,22Rの動作は同様であるため、説明は省略する。
【0043】
(操作ペダル)
操作ペダル130は、4個のスイッチ131,132,133,134を有する四連ペダルであり、スイッチ131は、1回目の入力により右側の押さえ片105Rを最下降させるとともに、2回目の入力により右側の押さえ片105Rを上昇させるためのスイッチである。スイッチ132は、左側の押さえ片105Lを中間停止位置まで下降させるスイッチである。スイッチ133は、左側の押さえ片105Lが中間位置にある場合に、その押さえ片105Lをさらに下降させるものである。スイッチ134は、ミシンを起動させて布に縫製を行わせる起動手段としての起動スイッチである。
各スイッチ131,132,133は、オペレータによって踏まれているときだけ接点が閉じるタイプのものである。操作ペダル130は、制御装置140のI/Oポート141に接続され、ユーザによる操作ペダル130の操作に基づく指令信号が制御装置140に伝達され、この指令信号に基づいて、制御装置140は、ソレノイド21L,21R,22L,22Rを駆動させる。
【0044】
(操作パネル)
操作パネル50は、ユーザに縫製に関する情報を報知するとともに、縫製条件の設定等を行う際に用いられる。操作パネル50は、液晶タッチパネル等により構成され、制御装置140の制御の下、必要な情報が表示部51に表示される。表示部51には、タッチパネル式のアイコン等が表示され、ユーザはこれらのアイコンに触れることにより縫製条件等を設定することができる。すなわち、表示部51は操作部52としても機能する。
操作パネル50は、表示や操作入力に関する処理を掌るCPU53を備えており、CPU53は、制御装置140のCPU143に接続されている。
操作パネル50は、布押さえシリンダ104L,104Rによる布押さえ片105L,105Rの昇降の際に、布押さえシリンダ104L,104Rの駆動時間を設定することができるように構成され、操作パネル50は駆動時間設定手段として機能する。
操作パネル50は、制御装置140により布押さえ片105L,105Rを布の押さえ位置まで下降させた後、布押さえ片105L,105Rによる布の押さえ圧を安定させるまでスイッチ134によるミシンの起動を阻止する時間を設定する阻止時間設定手段としても機能する。
【0045】
(制御装置)
制御装置140は、上述のI/Oポート141と、CPU143と、このCPU143に接続されたメモリ142と、CPU143の作業エリアとなる演算部144、を備えている。
I/Oポート141の入力部にはスイッチ131,132,133,134が接続され、出力部には電磁弁110Lの上昇用のソレノイド21L、下降用のソレノイド22Lが接続されている。また、出力部には電磁弁110Rの上昇用のソレノイド21R、下降用のソレノイド22Rが接続されている。
メモリ142には、予め縫目模様を形成する複数の針落ち位置を表したデータが格納されている。演算部144は、操作ペダル130のスイッチ131,132,133,134の状態に応じて電磁弁110L,110Rの動作を制御するためのものであり、例えば図示しないROM内に格納されるソフトウェアであるが、メモリ142内に格納されるソフトウェアとすることもできる。
【0046】
メモリ142は、操作パネル50(後述する)により設定された布押さえシリンダ104L,104Rの駆動時間を記憶する記憶手段として機能する。
制御装置140は、操作ペダル130が操作された場合に、メモリ142に記憶された駆動時間に基づいて布押さえシリンダ104L,104Rを駆動させる。
制御装置140は、布押さえ片105L,105Rの昇降時に中間停止を行うように布押さえシリンダ104L,104Rを制御する二段ストローク制御(二段ストローク制御手段)と、中間停止を行わずに布押さえ片105L,105Rを昇降させるように布押さえシリンダ104L,104Rを制御する単一ストローク制御(単一ストローク制御手段)と、ができるようになっており、これらの切り替えは、制御装置140に接続された切替手段としての操作パネル50により行われる。この操作パネル50は、左右の押さえ片を独立して制御できるよう、それぞれの布押さえシリンダ104L,104Rに対応可能に設けられている。
制御装置140は、スイッチ134と制御装置140との接続を操作パネル50により設定された時間だけ強制的に遮断する起動阻止制御手段として機能する。
【0047】
<布押さえの昇降動作>
次に、布押さえ昇降装置1により、布押さえ片105L,105Rを昇降させるときの動作について説明する。なお、以下の説明においては、制御装置140は、右側の布押さえ片105Rを単一ストローク制御により昇降させ、左側の布押さえ片105Lを二段ストローク制御で昇降させる例について説明する。
図8、図9に示すように、最初、布押さえ片105L,105Rは最上昇位置で待機している。このとき、制御装置140は、左右の上昇用のソレノイド21L,21RをON、左右の下降用のソレノイド22L,22RをOFFとすることにより、布押さえ片105L,105Rの最上昇位置を維持する(ステップS41)。
この状態において、制御装置140は、操作ペダル130のスイッチ131がONになったか否かを判断する(ステップS42)。ここで、制御装置140が、操作ペダル130のスイッチ131がONになったと判断した場合(ステップS42:YES)、制御装置140は、右側の布押さえシリンダ104Rの上昇用のソレノイド21RをOFF、下降用のソレノイド22RをONとする(ステップS43)。左側の布押さえシリンダ104Lの上昇用のソレノイド21LはステップS41の状態を維持する。
【0048】
これにより、ポート112Rから布押さえシリンダ104Rの下降側空間123Rにエアが供給され、布押さえシリンダ104Rの上昇側空間124Rは、ポート111Rに接続された排気ポート113Rからエアが排気される。そして、ロッド4aは、布押さえシリンダ104Rの先端側(図7における左側)に移動するので、布押さえリンク6はピン3bを支点として図7の紙面に対して反時計回りに回転し、布押さえ片105Rが下降する。
【0049】
制御装置140は、布押さえ片105Rを最下降位置まで下降させた後、操作ペダル130のスイッチ132がONであるか否かを判断する(ステップS44)。ここで、制御装置140が、スイッチ132がONであると判断した場合(ステップS44:YES)、制御装置140は、左側の布押さえシリンダ104Lの上昇用のソレノイド21LをOFF、下降用のソレノイド22LをONとする(ステップS45)。
これにより、ポート112Lから布押さえシリンダ104Lの下降側空間123Lにエアが供給され、布押さえシリンダ104Lの上昇側空間124Lは、ポート111Lに接続された排気ポート113Lからエアが排気される。そして、ロッド4aは、布押さえシリンダ104Lの先端側(図7における左側)に移動するので、布押さえリンク6はピン3bを支点として図7の紙面に対して反時計回りに回転し、布押さえ105Lが下降する。
左側の下降用のソレノイド22LをONとする時間は、操作パネル50により設定され、制御装置140のメモリ142に記憶されている駆動時間である。従って、制御装置140は、メモリ142に記憶された駆動時間だけ左側の下降用のソレノイド22LをONした後、左側の上昇用及び下降用のソレノイド21L、22LをOFFにする(ステップS46)。これにより、布押さえ片105Lを中間位置で停止させることができる。
【0050】
次いで、制御装置140は、操作ペダル130のスイッチ133がONであるか否かを判断する(ステップS47)。ここで、制御装置140が、スイッチ133がONであると判断した場合(ステップS47:YES)、制御装置140は、左側の布押さえシリンダ104Lの上昇用のソレノイド21LをOFF、左側の布押さえシリンダ104Lの下降用のソレノイド22LをONとする(ステップS48)。
これにより、ポート112Lから布押さえシリンダ104Lの下降側空間122Lにエアが供給され、布押さえシリンダ104Lの上昇側空間124Lは、ポート111Lに接続された排気ポート113Lからエアが排気される。そして、ロッド4aは、布押さえシリンダ104Lの先端側(図7における左側)に移動するので、布押さえリンク6はピン3bを支点として図7の紙面に対して反時計回りに回転し、布押さえ105Lが下降する。
【0051】
次いで、制御装置140は、左側の布押さえ片105Lが最下降位置まで下降したか否かを判断する(ステップS49)。ここで、制御装置140が、左側の布押さえ105Lが最下降位置まで下降したと判断すると(ステップS49:YES)、制御装置140は、操作パネル50により設定され、制御装置140のメモリ142に記憶されているミシンの起動を阻止する時間を読み取る。そして、制御装置140は、読み取った時間だけスイッチ134からの指令信号を強制的に遮断する(ステップS50)。
次いで、制御装置140は、スイッチ134がONになったか否か、すなわち、ミシンによる縫製が開始されたか否かを判断する(ステップS51)。ここで、制御装置140が、スイッチ134がONになったと判断すると(ステップS51:YES)、制御装置140は、メモリ142に記憶された縫製プログラムに基づいて布の縫製を行う。
【0052】
縫製中、制御装置140は、縫製が終了したか否かを判断する(ステップS52)。そして、縫製が終了し、制御装置140が、縫製が終了したと判断すると(ステップS52:YES)、制御装置140は、左右の布押さえシリンダ104L,104Rの電磁弁110L,110Rにおける上昇用のソレノイド21L,21RをON、下降用のソレノイド22L,22RをOFFとする(ステップS53)。
これにより、ポート111Lから左側の布押さえシリンダ104Lの上昇側空間124Lにエアが供給され、布押さえシリンダ104Lの下降側空間123Lは、ポート112Lに接続された排気ポート114Lからエアが排気される。そして、ロッド4aは、布押さえシリンダ104Lの基端側(図7における右側)に移動するので、布押さえリンク6はピン3bを支点として図7の紙面に対して時計回りに回転し、布押さえ105Lが最上昇位置まで上昇する。
また、右側も同様に、ポート111Rから右側の布押さえシリンダ104Rの上昇側空間124Rにエアが供給され、布押さえシリンダ104Rの下降側空間123Rは、ポート112Rに接続された排気ポート114Rからエアが排気される。そして、ロッド4aは、布押さえシリンダ104Rの基端側(図7における右側)に移動するので、布押さえリンク6はピン3bを支点として図7の紙面に対して時計回りに回転し、布押さえ105Rが最上昇位置まで上昇する。
このように、布押さえ105L,105Rが最上昇位置まで移動すると、制御装置140は、再度ステップS41の処理に戻る。
【0053】
一方、ステップS44において、制御装置140が、スイッチ132がOFFであると判断した場合(ステップS44:NO)、制御装置140は、スイッチ131がONであるか否かを判断する(ステップS54)。ここで、制御装置140が、スイッチ131がONであると判断した場合(ステップS54:YES)、制御装置140は、左右の布押さえシリンダ104L,104Rの電磁弁110L,110Rにおける上昇用のソレノイド21L,21RをON、下降用のソレノイド22L,22RをOFFとする(ステップS55)。
これにより、ポート111Lから左側の布押さえシリンダ104Lの上昇側空間124Lにエアが供給され、布押さえシリンダ104Lの下降側空間123Lは、ポート112Lに接続された排気ポート114Lからエアが排気される。そして、ロッド4aは、布押さえシリンダ104Lの基端側(図7における右側)に移動するので、布押さえリンク6はピン3bを支点として図7の紙面に対して時計回りに回転し、布押さえ105Lが最上昇位置まで上昇する。
また、右側も同様に、ポート111Rから左側の布押さえシリンダ104Rの上昇側空間124Rにエアが供給され、布押さえシリンダ104Rの下降側空間123Rは、ポート112Rに接続された排気ポート114Rからエアが排気される。そして、ロッド4aは、布押さえシリンダ104Rの基端側(図7における右側)に移動するので、布押さえリンク6はピン3bを支点として図7の紙面に対して時計回りに回転し、布押さえ105Rが最上昇位置まで上昇する。
このように、布押さえ105L,105Rが最上昇位置まで移動すると、制御装置140は、再度ステップS1の処理に戻る。
【0054】
また、ステップS47において、制御装置140が、スイッチ133がOFFであると判断した場合(ステップS47:NO)、制御装置140は、スイッチ132がONであるか否かを判断する(ステップS56)。ここで、制御装置140が、スイッチ132がONであると判断すると(ステップS56:YES)、制御装置140は、左側の布押さえシリンダ104Lの電磁弁110Lの上昇用のソレノイド21LをON、下降用のソレノイド22LをOFFとする(ステップS57)。
これにより、ポート111Lから布押さえシリンダ104Lの上昇側空間124Lにエアが供給され、布押さえシリンダ104Lの下降側空間123Lは、ポート112Lに接続された排気ポート114Lからエアが排気される。そして、ロッド4aは、布押さえシリンダ104Lの基端側(図7における右側)に移動するので、布押さえリンク6はピン3bを支点として図7の紙面に対して時計回りに回転し、左側の布押さえ片105Lが最上昇位置まで上昇する。左側の布押さえ片105Lが最上昇位置まで移動すると、制御装置140は、ステップS54の処理を行う。
【0055】
<作用・効果>
このように、ミシンの布押さえ昇降装置11によれば、第1の実施形態と同様の作用・効果を奏するほか、布押さえ105が複数の押さえ片105L,105Rからなる布押さえであっても、それぞれの押さえ片105L,105Rを独立して駆動制御することができるので、布を重ねて縫製する場合のように、複数の布の位置あわせが必要な場合にも対応可能となる。
【0056】
<その他>
なお、本発明は、上記実施形態に限られるものではない。例えば、第2の実施形態において、双方の押さえ片105L,105Rを二段ストローク制御により昇降させてもよいし、単一ストローク制御により昇降させてもよい。
また、押さえ片は、二つに限らず、制御装置により制御可能であれば、三つ以上に増やしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】第1の実施形態におけるミシンの布押さえ昇降装置の構成を示すブロック図。
【図2】第1の実施形態における二段ストローク制御による布押さえの昇降の流れを示すフローチャート。
【図3】第1の実施形態における二段ストローク制御による布押さえの昇降の流れを示すタイムチャート。
【図4】第1の実施形態における単一ストローク制御による布押さえの昇降の流れを示すフローチャート。
【図5】第1の実施形態における単一ストローク制御による布押さえの昇降の流れを示すタイムチャート。
【図6】第2の実施形態における布押さえを示す図。
【図7】第2の実施形態におけるミシンの布押さえ昇降装置の構成を示すブロック図。
【図8】第2の実施形態における布押さえの昇降の流れを示すフローチャート。
【図9】第2の実施形態における布押さえの昇降の流れを示すタイムチャート。
【符号の説明】
【0058】
1 ミシンの布押さえ昇降装置
2 布送り台
4 布押さえシリンダ(駆動手段)
5 布押さえ
10 電磁弁(駆動手段)
30 操作ペダル
40 制御装置(制御手段、二段ストローク制御手段、単一ストローク制御手段、起動阻止制御手段)
42 メモリ(記憶手段)
50 操作パネル(駆動時間設定手段、阻止時間設定手段、切替手段)
62 起動スイッチ(起動手段)
104L 布押さえシリンダ(駆動手段)
104R 布押さえシリンダ(駆動手段)
105L 布押さえ
105R 布押さえ
110L 電磁弁(駆動手段)
110R 電磁弁(駆動手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
布送り台上で昇降可能に保持された布押さえと、
前記布押さえを昇降させるように連結されたエアシリンダ及び3位置式の電磁弁並びにエアシリンダのエア量を制御するスピードコントローラとを有する駆動手段と、
前記布押さえを昇降するための操作をする操作ペダルと、
前記操作ペダルの操作により前記駆動手段を駆動制御する制御手段と、を備えるミシンの布押さえ昇降装置において、
前記駆動手段による前記布押さえの昇降の際に、前記エアシリンダ及び前記電磁弁の駆動時間を設定する駆動時間設定手段と、
前記駆動時間設定手段により設定された前記エアシリンダ及び前記電磁弁の駆動時間を記憶する記憶手段と、
前記制御手段は、前記操作ペダルが操作された場合に、前記記憶手段に記憶された駆動時間に基づいて前記エアシリンダ及び前記電磁弁を駆動させることを特徴とするミシンの布押さえ昇降装置。
【請求項2】
前記駆動手段の3位置式の電磁弁は、
5ポート3位置電磁弁であり、
前記制御手段は、布押さえの昇降時に中間停止を行うように前記駆動手段を制御する二段ストローク制御手段と、前記中間停止を行わずに前記布押さえを昇降させるように前記駆動手段を制御する単一ストローク制御手段と、を備え、
前記二段ストローク制御手段による前記駆動手段の駆動制御と、前記単一ストローク制御手段による前記駆動手段の駆動制御と、を切り替える切替手段と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載のミシンの布押さえ昇降装置。
【請求項3】
前記布押さえは、複数の押さえ片に分割されるとともに各押さえ片が互いに独立して駆動するように構成され、
前記切替手段は、各押さえ片毎に前記二段ストローク制御手段による前記駆動手段の駆動制御と、前記単一ストローク制御手段による前記駆動手段の駆動制御と、を切り替え可能であることを特徴とする請求項2に記載のミシンの布押さえ昇降装置。
【請求項4】
前記電磁弁として、5ポート3位置クローズドセンタ電磁弁を用いることを特徴とする請求項2に記載のミシンの布押さえ昇降装置。
【請求項5】
ミシンを起動させて布に縫製を行わせる起動手段と、
前記制御手段により前記布押さえを布の押さえ位置まで下降させた後、布の押さえ圧を安定させるまで前記起動手段によるミシンの起動を阻止する時間を設定する阻止時間設定手段と、
前記起動手段と前記制御手段との接続を前記阻止時間設定手段により設定された時間だけ強制的に遮断する起動阻止制御手段と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載のミシンの布押さえ昇降装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−28532(P2009−28532A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−173435(P2008−173435)
【出願日】平成20年7月2日(2008.7.2)
【出願人】(000003399)JUKI株式会社 (1,557)
【Fターム(参考)】