ミラー部品及びミラー部品付き光導波路
【課題】露光装置等の高価な装置を使用することなく低コストで製造でき、生産性に優れた光路変換用のミラー部品を提供する。
【解決手段】光導波路の光伝送方向の端面に接合される光路変換用のミラー部品であって、内部を光が伝播する導光部と、前記導光部の内部において光を入射方向と垂直な方向に反射させる45°ミラー面とを少なくとも有し、前記導光部は、前記45°ミラー面に対向し、光導波路と接合される接合面(第1の面)と、前記45°ミラー面を形成する第2の面と、前記45°ミラー面に対向し、光を入射又は出射させる第3の面とを少なくとも有することを特徴とするミラー部品。
【解決手段】光導波路の光伝送方向の端面に接合される光路変換用のミラー部品であって、内部を光が伝播する導光部と、前記導光部の内部において光を入射方向と垂直な方向に反射させる45°ミラー面とを少なくとも有し、前記導光部は、前記45°ミラー面に対向し、光導波路と接合される接合面(第1の面)と、前記45°ミラー面を形成する第2の面と、前記45°ミラー面に対向し、光を入射又は出射させる第3の面とを少なくとも有することを特徴とするミラー部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミラー部品に関する。より詳しくは、光導波路の光伝送方向の端面に接合して用いる光路変換用のミラー部品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、大容量のデータを伝送することができる光導波路等の光伝送媒体を用いた通信技術の開発が精力的に進められている。このような状況下、光導波路により伝播される光を所望の位置に伝送するために、特に、効率的に光の光路を変換する技術が求められている。具体的には、例えば、1枚の基板上に光配線と電気配線の両方が形成された光・電気混載回路基板においては、光導波路を伝播する光(基板面に平行に伝播する光)を、電気配線に実装された受光素子に導くために、基板面に対し垂直方向に曲げる(光路を90°変換する)ことが必要とされる。
【0003】
特許文献1には、光の光路を90°変換するための反射面(以下、「45°ミラー面」と称する場合がある)が光導波路の端面に形成されたミラー付き光導波路が開示されている。このようなミラー付き光導波路は、刃先に傾斜角を有するブレードを用い、切削時に該ブレードを光導波路に対して垂直に当てて加工を行い、光導波路にマイクロミラーとなる傾斜端面を形成することによって製造される。しかしながら、上記ミラー付き光導波路の製造方法は、光導波路を直接加工する方法であるため、切削の際に配線の他の部分を傷つけたり、光導波路が複雑な配線形状を有する場合には、45°ミラー面の形成が困難であるという問題を有していた。さらに、上記製造方法により得られたミラー付き光導波路においては、加工時に発生する切り屑の影響で光損失が増大するという懸念があった。
【0004】
また、特許文献2には、光導波路と45°ミラー面とを金型を用いて成形して得られるミラー付き光導波路が開示されている。このようなミラー付き光導波路は、パターン状凹部を有する基板のパターン状凹部のみにコアを充填し、予めクラッドが塗布された別基板のクラッド面と重ねわせる工程と、前記パターン状凹部を有する基板を剥離して前記クラッド上にコアパターンを形成した後、前記コアパターンの傾斜面に金属を蒸着して金属ミラーとする工程を経て製造される。しかしながら、上記ミラー付き光導波路は、光路変換ミラーの形成を光導波路のコアパターンの形成工程と連続した工程で行う方法で製造されるため、光導波路の形状に対応する金型を必要とし、製造コストが高いという問題を有していた。
【0005】
光導波路とは別途製造されたミラー部品を用い、該ミラー部品を光導波路と接合して得られるミラー付き光導波路が開示されている(特許文献3参照)。このようなミラー付き光導波路は、基板上に光導波路のコアを形成すると共に、そのコアの両側にミラー位置決めガイド部材を形成した後、クラッド材を塗布し、反射ミラー(ミラー部品)を上記ミラー位置決めガイド部材に当接するように基板上に載置した後、クラッド材を硬化させることによって製造される。上記ミラー付き光導波路は、光導波路とは別に製造されたミラー部品を用いて製造されるため、光導波路の配線形状が複雑な場合であっても、45°ミラー面を容易に形成できるという利点を有している。しかしながら、上記ミラー付き光導波路のミラー位置決めガイド部材は、マスクを使用した露光により形成する必要があり、高価な露光装置を必要とするため、製造コストが高いという問題を有していた。また、45°ミラー面がミラー部品の外面に形成されるために、ミラー表面に異物等が付着すると光損失が増大するという問題も有していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−300961号公報
【特許文献2】特開2004−78084号公報
【特許文献3】特開2007−183467号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の目的は、露光装置等の高価な装置を使用することなく低コストで製造でき、生産性に優れた光路変換用のミラー部品を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、露光装置等の高価な装置を使用することなく低コストで製造でき、生産性に優れた光路変換用のミラー部品の製造方法を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、製造の際には光導波路の配線を傷つける等の不具合が生じることなく、複雑な配線形状を有する場合にも容易に製造でき、生産性に優れたミラー付き光導波路、及び該ミラー付き光導波路の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、特定構成のミラー部品とすることによって、該ミラー部品は露光装置等の高価な装置を使用することなく低コストで製造でき、生産性に優れることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
すなわち、本発明は、光導波路の光伝送方向の端面に接合される光路変換用のミラー部品であって、内部を光が伝播する導光部と、前記導光部の内部において光を入射方向と垂直な方向に反射させる45°ミラー面とを少なくとも有し、前記導光部は、前記45°ミラー面に対向し、光導波路と接合される接合面(第1の面)と、前記45°ミラー面を形成する第2の面と、前記45°ミラー面に対向し、光を入射又は出射させる第3の面とを少なくとも有することを特徴とするミラー部品を提供する。
【0010】
さらに、前記導光部に固定されたハンドリング部を有する前記のミラー部品を提供する。
【0011】
さらに、前記導光部が、光硬化性組成物又は熱硬化性組成物の樹脂硬化物により構成されている前記のミラー部品を提供する。
【0012】
さらに、前記45°ミラー面が、前記導光部の第2の面と空気との界面により形成されており、前記第2の面の上方の空間が樹脂層により被覆されている前記のミラー部品を提供する。
【0013】
さらに、前記45°ミラー面が、前記導光部の第2の面と該第2の面に積層された金属膜との界面により形成されており、前記金属膜の前記第2の面に対する反対側の表面が樹脂硬化物により被覆されている前記のミラー部品を提供する。
【0014】
さらに、2以上の前記導光部が、それぞれの接合面が同一平面上に位置するように間隔をおいて並列に配置されており、隣り合う導光部と導光部との間には空気層が形成されている前記のミラー部品を提供する。
【0015】
さらに、2以上の前記導光部が、それぞれの接合面が同一平面上に位置するように間隔をおいて並列に配置されており、隣り合う導光部と導光部の間には遮光性の樹脂硬化物が充填されている前記のミラー部品を提供する。
【0016】
また、本発明は、前記のミラー部品を製造する方法であって、光硬化性組成物又は熱硬化性組成物を金型に注入した後、光照射又は加熱により硬化させることで導光部を形成する工程と、前記導光部に接合面(第1の面)を形成する工程と、前記導光部に第2の面を形成する工程と、前記導光部に第3の面を形成する工程と、45°ミラー面を形成する工程とを少なくとも含むことを特徴とするミラー部品の製造方法を提供する。
【0017】
さらに、前記のミラー部品を製造する方法であって、光硬化性組成物又は熱硬化性組成物を金型に注入した後、光照射又は加熱により硬化させて第2の面及び該第2の面と空気との界面により形成された45°ミラー面を有する導光部を形成し、次いで、前記第2の面の上方の空間を樹脂層により被覆する前記のミラー部品の製造方法を提供する。
【0018】
さらに、前記のミラー部品を製造する方法であって、光硬化性組成物又は熱硬化性組成物を金型に注入した後、光照射又は加熱により硬化させて成形体を得、その後、該成形体に対し側壁が傾斜面である溝を形成することによって、前記溝の側壁からなる第2の面及び該第2の面と空気との界面により形成された45°ミラー面を有する導光部を形成し、次いで、前記溝を樹脂層により被覆する前記のミラー部品の製造方法を提供する。
【0019】
前記のミラー部品を製造する方法であって、光硬化性組成物又は熱硬化性組成物を金型に注入した後、光照射又は加熱により硬化させて第2の面を有する導光部を形成し、次いで、該導光部の少なくとも第2の面を金属膜で被覆して45°ミラー面を形成した後、前記金属膜の表面を樹脂硬化物により被覆する前記のミラー部品の製造方法を提供する。
【0020】
また、本発明は、離型性フィルムの離型面上に2以上のミラー部品が連続して配置された形状のパターンが形成されたシートを得、次いで、該シートを切り出すことによって個々のミラー部品を製造する方法であって、該ミラー部品は、前記の製造方法により製造されたミラー部品であることを特徴とするミラー部品の製造方法を提供する。
【0021】
また、本発明は、光導波路に前記のミラー部品が接合されたミラー付き光導波路であって、前記ミラー部品の導光部の屈折率と、前記光導波路のコアの屈折率との差が±0.01以内であることを特徴とするミラー付き光導波路を提供する。
【0022】
さらに、前記光導波路のコアが光硬化性組成物又は熱硬化性組成物の樹脂硬化物より構成されたコアであり、前記ミラー部品の接合面と前記光導波路の光伝送方向の端面とが、前記光導波路のコアを構成する樹脂硬化物と同一の樹脂硬化物により接合されている前記のミラー付き光導波路を提供する。
【0023】
また、本発明は、光導波路に前記のミラー部品が接合されたミラー付き光導波路の製造方法であって、前記光導波路として、コアが光硬化性組成物又は熱硬化性組成物の樹脂硬化物より構成された光導波路を用い、前記ミラー部品の接合面と前記光導波路の光伝送方向の端面とを、前記光導波路のコアを構成する樹脂硬化物と同一の樹脂硬化物により接合することを特徴とするミラー付き光導波路の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0024】
本発明のミラー部品は上記構成を有するため、露光装置等の高価な装置を使用することなく低コストで製造でき、生産性に優れる。さらに、本発明のミラー部品における45°ミラー面は、ミラー部品の内部に位置するため、取り扱いの際に45°ミラー面に汚れや傷が入り得ず、低光損失で品質の高いミラー付き光導波路を得ることができる。
また、本発明のミラー付き光導波路は、本発明のミラー部品を光導波路に接合させた構成を有するため、低コストで製造できる。また、製造の際には、光導波路の切削等を行う必要がないため配線を傷つける等の不具合が生じず、さらに、複雑な配線形状を有する光導波路の場合にも容易に製造できる。このため、本発明のミラー付き光導波路は優れた生産性を有し、低光損失で品質も高い。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は、本発明のミラー部品の実施形態の一例を示す概略図である。図1の(a)は斜視図、(b)は(a)におけるX−X断面図、(c)は正面図(接合面側から見た正面図)を表す。
【図2】図2は、本発明のミラー部品を光導波路に対し接合したミラー付き光導波路、及び光の光路が変換される態様の一例を示す概略図(断面図)である。
【図3】図3は、本発明のミラー部品の実施形態の他の一例を示す概略図である。図3の(a)は斜視図、(b)は(a)におけるY−Y断面図、(c)は正面図(接合面側から見た正面図)を表す。
【図4】図4は、本発明のミラー部品の実施形態の他の一例(複数の導光部を有する場合)を示す概略図である。図4の(a)は斜視図、(b)は正面図(接合面側から見た正面図)を表す。
【図5】図5は、本発明のミラー部品の実施形態の他の一例(複数の導光部を有する場合)を示す概略図である。図4の(a)は分解立体図、(b)は正面図(接合面側から見た正面図)を表す。
【図6】図6は、図1に示す本発明のミラー部品の製造方法の一例を示す概略図(断面図)である。
【図7】図7は、図3に示す本発明のミラー部品の製造方法の他の一例を示す概略図(断面図)である。
【図8】図8は、本発明のミラー部品の製造方法の他の一例を示す概略図(断面図)である。
【図9】図9は、離型性フィルム上に形成された、2以上のミラー部品が連続して配置された形状のパターンの一例を示す概略図である。図9の(a)は平面図、(b)は(a)におけるZ−Z断面図を表す。
【図10】図10は、本発明のミラー付き光導波路の製造方法の一例を示す概略図(断面図)である。
【図11】図11は、実施例で使用されたシリコーン樹脂製の金型(鋳型)により形成されるパターンの形状及び寸法を表す概略図(斜視図)である。
【図12】図12は、実施例1で作製されたミラー部品の形状及び寸法を表す概略図(斜視図)である。
【図13】図13は、実施例で使用されたシリコーン樹脂製の金型(鋳型)により形成されるパターンの形状及び寸法を表す概略図(斜視図)である。
【図14】図14は、実施例3で作製されたミラー部品の形状及び寸法を表す概略図(斜視図)である。
【図15】図15は、実施例5〜7で作製されたミラー付き光導波路における光導波路のコアの形状及び寸法を表す概略図(斜視図)である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
[ミラー部品]
本発明のミラー部品は、光導波路の光伝送方向の端面に接合される光路変換用のミラー部品である。本発明のミラー部品は、内部を光が伝播する導光部と、前記導光部の内部において光を入射方向と垂直な方向に反射させる45°ミラー面とを少なくとも有し、前記導光部は、前記45°ミラー面に対向し、光導波路と接合される接合面(第1の面)と、前記45°ミラー面を形成する第2の面と、前記45°ミラー面に対向し、光を入射又は出射させる第3の面とを少なくとも有することを特徴とする。以下、必要に応じて図面を参照しながら、本発明のミラー部品について説明する。
【0027】
図1は、本発明のミラー部品の実施形態の一例を示す概略図であり、(a)は斜視図、(b)は(a)におけるX−X断面図、(c)は接合面側から見た正面図である。図1の1は本発明のミラー部品を表し、2は導光部、3は接合面(第1の面)、4は45°ミラー面を表す(例えば、図1の(b)参照)。図1に示すミラー部品の45°ミラー面4は、導光部の一端面(第2の面)と、該第2の面を被覆する金属膜6との界面により形成されている。また、図1のハンドリング部5は、ミラー部品1を取り扱う際に通常把持される部分である。なお、図1の(b)の点線は、部材の輪郭を表すものではない(図3の(b)についても同様である)。
【0028】
図2は、本発明のミラー部品(図1に示すミラー部品1)を、クラッド8bによりコア8aが被覆された構成を有する光導波路8に接合したミラー付き光導波路を表す概略図(断面図)である。なお、図2の9は基板を表す。図2には、光導波路の光伝送方向(長さ方向)の両側の端面に本発明のミラー部品1が接合された例を示している。さらに、図2には、ミラー付き光導波路中を伝播する光の光路を点線(太い点線)で表している。以下、図2を参照しながら、本発明のミラー部品により光の光路が変換される態様の一例を説明する。
図2に示すミラー付き光導波路においては、光導波路8の一端(右側)に接合されたミラー部品1(右側)の下方に発光素子が、光導波路8の他端(左側)に接合されたミラー部品1(左側)の下方に受光素子が設置されている。まず、上記発光素子から発せられた光は、基板9の面に対して垂直方向上向きにミラー部品1(右側)に入射する。この光は、ミラー部品1(右側)の内部の45°ミラー面4で反射し、光路が90°変換されてミラー部品1(右側)の左端(接合面3)から出射し、基板9の面に対して平行に、光導波路8の中を他端(左側)に向かって伝播する。そして、ミラー部品1(左側)に入射した後、内部の45°ミラー面4で反射し、光路が90°変換されて、基板9の面に対して垂直方向下向きにミラー部品1(左側)から出射する。その後、この光は、ミラー部品1(左側)の下方の受光素子により受光される。
【0029】
このように、本発明のミラー部品は、該ミラー部品の内部(詳しくは、導光部内)に入射した光(入射光)を45°ミラー面により反射させて、入射光に対し光路が90°変換された光をミラー部品の内部(詳しくは、導光部内)から出射することを本質的機能とする部品(部材)である。即ち、本発明のミラー部品は、ミラー部品に対し光が入射する面(「入射面」と称する場合がある)、ミラー部品から光が出射する面(「出射面」と称する場合がある)、及び45°ミラー面を少なくとも有する。なお、本発明のミラー部品により、入射面から入射した光を45°ミラー面で反射させて出射面から出射するためには、入射面と45°ミラー面、出射面と45°ミラー面とはそれぞれ対向する位置関係をとる必要がある。また、光路を90°変換するためには、入射面から入射する光の光路と45°ミラー面とがなす角度が45°となるような位置関係をとる必要がある。なお、本明細書でいう「対向する位置関係」は、面と面とが平行に向き合っている関係のみを言うのではなく、面と面とがある角度を持って向き合っている関係を含む。
【0030】
図2のミラー部品1(左側)を参照しながら、上記位置関係についてより具体的に説明する。図2のミラー部品1(左側)においては、接合面3(ここでは、入射面)から光が入射し、45°ミラー面4にて反射した後、ミラー部品1(左側)の下面(ここでは、出射面)から出射する。入射面である接合面3と45°ミラー面4とは対向し、かつ45°ミラー面4と上記出射面とは対向する位置関係にある。さらに、接合面3(入射面)から入射する光の光路と45°ミラー面4のなす角度は45°であり、その結果、90°変換されて出射する光の光路と45°ミラー面4のなす角度も45°となる。なお、図2の例では、接合面(入射面)と出射面とが直交しているが、特にこれに限定されるものではない。
【0031】
(導光部)
本発明のミラー部品の導光部は内部を光が伝播する部分であり、接合面である端面(第1の面)、45°ミラー面を形成する端面(第2の面)、及び上述の入射面又は出射面に対応する端面(第3の面)を少なくとも有する。上記第3の面は、接合面(第1の面)が入射面となる場合には出射面となり、一方、接合面(第1の面)が出射面となる場合には入射面となる端面である。従って、上記導光部における接合面(第1の面)及び第3の面は、それぞれ45°ミラー面に対向する位置関係にある。
【0032】
上記導光部の第1の面は、光導波路に接合(結合)させるための接合面として機能する(例えば、図2参照)。なお、上記接合面は、入射面と出射面のいずれとしても機能し得る。具体的には、図2では、ミラー部品1(右側)の接合面3は出射面として機能し、一方、ミラー部品の1(左側)の接合面3は入射面として機能している。
【0033】
本発明のミラー部品の接合面と光導波路とを接合する方法は、特に限定されないが、例えば、下記[ミラー付き光導波路]の項で後述するように、上記接合面と光導波路の端面との間を熱硬化性組成物又は光硬化性組成物で充填し、該組成物を加熱又は光照射により硬化させることによって接合することができる(例えば、図10参照)。
【0034】
上記導光部の第2の面は、本発明のミラー部品の45°ミラー面を形成する端面である。上述のように、上記第2の面と第1の面(接合面)とは対向しており、特に限定されないが、例えば、両面が同一の辺を共有して対向していてもよいし(即ち、第2の面と第1の面(接合面)が交差する)、他の面を介して対向していてもよい(例えば、図1、3参照)。
【0035】
上記導光部の第2の面は、上記接合面と対向する面であればよく、特に限定されないが、例えば、図1に示すように、傾斜面となっている導光部の一端面により形成されていてもよいし、図3に示すように、ミラー部品に形成された側壁が傾斜面となっている溝の側壁により形成されていてもよい。なお、上記溝は、第2の面となる側壁(傾斜面)を有する溝であればよく、特に限定されないが、例えば、断面V字状の溝(例えば、図3参照)や、断面台形状の溝などが挙げられる。
【0036】
上記第2の面により形成される45°ミラー面は、本発明のミラー部品の内部において光を反射させる役割を担う。上記45°ミラー面は、入射面(第1の面(接合面)又は第3の面)から導光部に入射する光の光路に対して、45°の角度をなす面である。これにより、導光部に入射した光は、45°ミラー面により垂直方向に反射し、出射面(第3の面又は第1の面(接合面))より出射する。
【0037】
上記45°ミラー面は、特に限定されないが、導光部の第2の面と空気との界面により形成されていてもよいし、導光部の第2の面と該第2の面に形成された金属膜との界面により形成されていてもよい。具体的には、例えば、図3に示すミラー部品の45°ミラー面は、導光部の第2の面と空気との界面により形成されている。一方、図1に示すミラー部品の45°ミラー面は、導光部の第2の面と該第2の面の表面に形成された金属膜との界面により形成されている。
【0038】
上記金属膜を形成する金属としては、特に限定されないが、例えば、反射率の観点で、金、銀、アルミニウム等を好ましく使用することができる。また、上記導光膜の表面に金属膜を形成する方法は、特に限定されないが、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、無電解メッキ法などの公知乃至慣用の方法を利用することができる。上記金属膜の厚みも、特に限定されないが、例えば、10〜1000nmの範囲から適宜選択することができる。
【0039】
上記導光部の第3の面は、入射面又は出射面として機能する端面(即ち、光を入射又は出射させる面)であり、導光部の第1の面(接合面)とは異なる端面である。上述のように、上記第3の面と第2の面とは対向しており、特に限定されないが、例えば、両面が同一の辺を共有して対向していてもよいし(即ち、第3の面と第2の面(接合面)が交差する関係、例えば、図1、3参照)、他の面を介して対向していてもよい。
【0040】
上記導光部は、光が伝播可能な透光性の材質により構成されていればよく、特に限定されないが、例えば、ガラス、石英、透明な樹脂等の材料により構成される。中でも、上記導光部を構成する材質としては、屈折率や柔軟性の制御が容易であり、加工性が良好である点で、樹脂が好ましく、より好ましくは光硬化性組成物又は熱硬化性組成物の樹脂硬化物である。上記光硬化性組成物又は熱硬化性組成物としては、光照射又は加熱により硬化する公知乃至慣用の組成物を用いることができ、特に限定されないが、耐熱性の観点で、後述の特定構成の光硬化性樹脂組成物又は熱硬化性樹脂組成物が好ましい。即ち、本発明のミラー部品の導光部は、後述の特定構成の光硬化性樹脂組成物又は熱硬化性樹脂組成物の樹脂硬化物により構成されることが好ましい。
【0041】
上記導光部の形状は、上述の接合面(第1の面)、45°ミラー面を形成する端面(第2の面)、及び第3の面を少なくとも有していればよく、特に限定されない。また、上記導光部の大きさは、光導波路のコア径や光配線の形状等により異なり、特に限定されないが、例えば、接合時の光損失を低減するという観点で、上記接合面の面積を、光導波路のコアの断面積よりも大きくすることが好ましい。本発明のミラー部品の45°ミラー面、入射面、出射面の表面状態は特に限定されるものではないが、平滑であることが好ましい。45°ミラー面の表面が平滑であれば、光の散乱を抑制することが可能となり、光損失を低減することができる。
【0042】
(ハンドリング部)
本発明のミラー部品は、上記導光部に固定されたハンドリング部を有していることが好ましい。上記ハンドリング部は、上記導光部に対して固定されており、上記導光部及び45°ミラー面を形成する構成要素(例えば、上記金属膜など)以外の部分により構成される。従って、上記ハンドリング部は、光の伝播及び反射には関与しない。上記ハンドリング部の主たる機能は、本発明のミラー部品の取り扱い性(ハンドリング性)を向上させることである。従って、上記ハンドリング部は、上記導光部よりも大きな体積を有し、本発明のミラー部品の大部分を占めることが好ましい。本発明のミラー部品を取り扱う際には上記ハンドリング部をピンセットやエアチャック、エアピンセットなどにより把持できるため、作業性が向上する。より具体的には、例えば、図1に示すミラー部品においては、5で示す部分がハンドリング部に該当する。また、図3に示すミラー部品においても同様である。上記ハンドリング部を有しない場合(例えば、導光部のみからなるミラー部品の場合)には、取り扱いが困難となり、光導波路に対し正確に接合させにくいため、光損失が大きくなる場合がある。また、45°ミラー面を形成する導光部の第2の面が露出することになるため、該表面に汚れや傷がつくことで光損失が大きくなってしまう場合がある。
【0043】
上記ハンドリング部は、特に限定されないが、例えば、樹脂、金属、セラミック等の公知乃至慣用の材料により構成される。中でも、上記ハンドリング部を構成する材質としては、柔軟性の制御が容易であり、加工性が良好である点で、樹脂が好ましく、より好ましくは光硬化性組成物又は熱硬化性組成物の樹脂硬化物である。上記熱硬化性組成物又は光硬化性組成物としては、光照射又は加熱により硬化する公知乃至慣用の組成物を用いることができ、特に限定されないが、耐熱性の点で、後述の特定構成の光硬化性樹脂組成物又は熱硬化性樹脂組成物が好ましい。即ち、本発明のミラー部品のハンドリング部は、後述の特定構成の熱硬化性樹脂組成物又は光硬化性樹脂組成物の樹脂硬化物により構成されていることが好ましい。上記ハンドリング部の表面状態は特に限定されないが、平滑であることが好ましい。ハンドリング部をエアチャック等で取り扱う際に表面が平滑である方が、安定して取り扱うことが可能となる。
【0044】
本発明のミラー部品は、例えば、45°ミラー面の光の反射効率を低下させない目的で、上記導光部の第2の面や上記金属膜を保護するための、後述の樹脂層や樹脂硬化物を有することが好ましい。より詳しくは、上記45°ミラー面が導光部と空気との界面により形成されている場合には、導光部の第2の面を保護することを目的として、上記第2の面の上方の空間を被覆する、クラッド層や樹脂フィルムなどの樹脂層を有することが好ましい(例えば、図3、図5参照)。また、上記45°ミラー面が導光部と金属膜との界面により形成されている場合には、上記金属膜を保護することを目的として、上記金属膜を被覆する樹脂硬化物を有することが好ましい(例えば、図1、図4参照)。上記樹脂層や樹脂硬化物は、通常、上記ハンドリング部を構成する。
【0045】
また、本発明のミラー部品は、複数の光導波路が並んだ光配線に対して接合できる、2以上の導光部が配列したミラー部品(ミラーアレイ)であってもよい。上記ミラー部品(ミラーアレイ)における隣り合う導光部と導光部の間隔は、光導波路のピッチに応じて適宜設定可能であり、特に限定されない。さらに、上記ミラー部品(ミラーアレイ)は、クロストークを抑制する観点で、一の導光部を伝播する光が隣り合う導光部に漏れ出すことを抑制する構成を有していることが好ましい。このような構成としては、特に限定されないが、例えば、隣り合う導光部と導光部との間に空気層が形成された構成や、隣り合う導光部と導光部との間に遮光性の樹脂硬化物が充填されている構成などが挙げられる。上記ミラー部品(ミラーアレイ)としては、具体的には、例えば、図4、図5に示すように、2以上の導光部が、それぞれの接合面が同一平面上に位置するように間隔をおいて並列に配列されたミラー部品(ミラーアレイ)などが挙げられる。
【0046】
本発明のミラー部品は、光導波路とは別の部品(部材)として製造され用いられるものであるため、光導波路により形成される光配線の形状が複雑な場合であっても、容易に接合することができる。従って、広範な形状の光配線に対して使用することができ、汎用性が高い。また、光導波路とは別の部品として製造されるものであるため、高い生産性を有する。
【0047】
さらに、本発明のミラー部品においては、45°ミラー面がミラー部品の内側に位置するため、汚れが付着したり、傷が入ってしまうことがない。このため、取り扱いが容易であり、このような汚れや傷に起因する光損失を低減することができる。これに対して、従来のミラー部品は、45°ミラー面がミラー部品の外側の表面(外面)に位置するものであったため汚れや傷が入り易く、取り扱いが困難であった。
【0048】
以下、図面を参照しながら、本発明のミラー部品の具体的態様の一例について説明する。但し、本発明のミラー部品はこれらの具体的態様に限定されるものではない。
【0049】
[本発明のミラー部品の第1の具体的態様]
本発明のミラー部品の第1の具体的態様は、45°ミラー面が上記導光部の第2の面と空気との界面により形成されており、上記第2の面の上方の空間が樹脂層により被覆されているミラー部品である。
【0050】
図3は、本発明のミラー部品の第1の具体的態様の一例を表す概略図であり、(a)は斜視図、(b)は(a)におけるY−Y断面図、(c)は接合面側から見た正面図である。図3の1はミラー部品を表す。図3の2は導光部、3は接合面、4は45°ミラー面を表す。また、図3の10はクラッド層、11は樹脂フィルムを表す。図3の本発明のミラー部品における45°ミラー面4は、導光部2の接合面3に対向する端面(第2の面)と、空気との界面により形成されている。また、上記第2の面の上方の空間は、クラッド層10及び樹脂フィルム11からなる樹脂層により被覆されている。なお、上記第2の面は、ミラー部品に形成された側壁が傾斜面となっている溝(断面V字状の溝)の側壁からなり、樹脂層(クラッド層10)とは接触していない。また、図3の例では、上記溝の側面は被覆されていないが(例えば、図3の(b)参照)、45°ミラー面の保護の観点からは、上記溝の側面も樹脂層により被覆されていることが好ましい。
【0051】
上記樹脂層としては、公知乃至慣用の樹脂により構成された層状物(クラッド層や樹脂フィルム等)を使用することができ、特に限定されないが、例えば、熱硬化性組成物又は光硬化性組成物の樹脂硬化物からなるクラッド層や、ポリイミドフィルムなどを使用できる。また、上記樹脂層は、特に限定されないが、例えば、クラッド層又は樹脂フィルムのみから形成された単層構成であってもよいし、図3に示すような2層構成や、3層以上の複層構成であってもよい。
【0052】
本発明のミラー部品の第1の具体的態様には、図3に示すように、1つのみの導光部を有するもののほか、複数の導光部が配列したもの(ミラーアレイ)も含まれる。具体的には、例えば、2以上の導光部が、それぞれの接合面が同一平面上に位置するように間隔をおいて並列に配置されており、隣り合う導光部と導光部との間には空気層が形成されているミラー部品も含まれる(図5参照)。
【0053】
特に、複数の光導波路が配列された光配線において、隣り合う光導波路の間隔(ピッチ)が狭い場合には、ミラー部品と光導波路との接合部分においてクロストーク(ある光導波路を伝播する光が他の光導波路へと漏れ出す現象)が発生しやすくなる。このような場合であっても、図5に示すようなミラー部品(ミラーアレイ)においては、隣り合う導光部と導光部との間に空気層が形成されていることにより、例えば、光導波路から導光部に入射した光が側面から漏れ出しにくく、その結果、クロストークの発生が抑制される。
【0054】
[本発明のミラー部品の第2の具体的態様]
本発明のミラー部品の第2の具体的態様は、45°ミラー面が上記導光部の第2の面と、該第2の面に積層された金属膜との界面により形成されており、上記金属膜の上記第2の面に対する反対側の表面が樹脂硬化物により被覆されているミラー部品である。
【0055】
図1は、本発明のミラー部品の第2の具体的態様の一例を表す概略図であり、(a)は斜視図、(b)は(a)におけるX−X断面図、(c)は接合面側から見た正面図である。上述のように、図1の本発明のミラー部品における45°ミラー面4は、導光部2の接合面3に対向する端面(第2の面)と、該第2の面に積層された金属膜6との界面により形成されている。また、金属膜6の表面(第2の面に対する反対側の表面)は、樹脂硬化物7により被覆されている。
【0056】
本発明のミラー部品の第2の具体的態様には、図1に示すような1つのみの導光部を有するもののほか、複数の導光部が配列したもの(ミラーアレイ)も含まれる。具体的には、2以上の導光部が、それぞれの接合面が同一平面上に位置するように間隔をおいて並列に配置されており、隣り合う導光部と導光部との間には遮光性の樹脂硬化物が充填されているミラー部品も含まれる(図4参照)。
【0057】
図4に示すようなミラー部品(ミラーアレイ)は、隣り合う導光部と導光部との間に遮光性の樹脂硬化物が充填されていることにより、クロストークが抑制される。上記遮光性の樹脂硬化物としては、特に限定されないが、例えば、熱硬化性組成物又は光硬化性組成物に対して、カーボンブラック、グラファイトなどの添加剤を混合し、硬化させた樹脂硬化物(例えば、カーボンブラック及び/又はグラファイトを含有する樹脂硬化物)などが挙げられる。なお、上記ミラー部品(ミラーアレイ)においては、金属膜を被覆する樹脂硬化物として上記遮光性の樹脂硬化物を使用してもよい。
【0058】
[本発明のミラー部品の製造方法]
本発明のミラー部品は、公知乃至慣用の方法により製造することができ、特に限定されないが、例えば、インプリント法等の鋳型を用いて転写する方法、ダイサー等を用いて切削により形成する方法等を利用して製造することができる。
【0059】
本発明のミラー部品は、特に、上記導光部が熱硬化性組成物又は光硬化性組成物の樹脂硬化物から構成される場合には、少なくとも上記導光部については金型を用いて成形することが好ましい。即ち、本発明のミラー部品の製造方法は、光硬化性組成物又は熱硬化性組成物を金型に注入した後、光照射又は加熱により硬化させることで導光部を形成する工程(金型成形工程)と、上記導光部に接合面(第1の面)を形成する工程と、上記導光部に第2の面を形成する工程と、上記導光部に第3の面を形成する工程と、45°ミラー面を形成する工程とを少なくとも含むことが好ましい。上記製造方法によると、本発明のミラー部品を一度に大量に製造することができるため、製造コストが安くなる。
【0060】
なお、上述の導光部を形成する工程、上記導光部に接合面(第1の面)を形成する工程、上記導光部に第2の面を形成する工程、上記導光部に第3の面を形成する工程、及び45°ミラー部品を形成する工程は、それぞれ異なる工程として実施してもよいし、2以上の工程を同時に(一体として)実施してもよい。具体的には、例えば、光硬化性組成物又は熱硬化性組成物を金型に注入した後、光照射又は加熱により硬化させることにより得られた導光部は、既に第2の面により形成された45°ミラー面が形成されたものであってもよい(即ち、上記導光部を形成する工程、第2の面を形成する工程、及び45°ミラー面を形成する工程を一体として実施した例である)。また、光硬化性組成物又は熱硬化性組成物を金型に注入した後、光照射又は加熱により硬化させることにより得られた第2の面を有する導光部に対し、さらに、上記第2の面に金属膜を蒸着することによって45°ミラー面を形成してもよい(即ち、上記導光部を形成する工程(第2の面を形成する工程)と45°ミラー面を形成する工程とを異なる工程として実施した例である)。
【0061】
上記の導光部の成形の際に用いる金型(鋳型)は、特に限定されないが、例えば、金属、石英、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等により構成された金型を用いることができる。導光部の形成の際に熱で硬化させる場合は耐熱性の高い金型を、光で硬化させる場合は硬化に使用する光の透過性を有する材質の金型を用いることが好ましい。中でも、安価で、成形体からの取り外しが容易である点で、樹脂製の金型が好ましく、より好ましくはポリエステル樹脂、フッ素樹脂(特に、テフロン(登録商標))、シリコーン樹脂製の金型である。
【0062】
上述のように、本発明のミラー部品における接合面(第1の面)、第2の面、第3の面は、上述の金型成形工程にて導光部と同時に形成してもよいし、導光部を成形した後、切り出して端面を生じさせることによって形成してもよい(例えば、図6〜8参照)。
【0063】
同様に、本発明のミラー部品における45°ミラー面は、上述の金型成形工程にて導光部と同時に形成してもよいし(例えば、図7参照)、導光部を成形した後に所定の加工を施す工程を設けることによって形成してもよい(例えば、図6、図8参照)。
【0064】
以下、図面を参照しながら、本発明のミラー部品の製造方法の具体的態様について説明する。
【0065】
本発明のミラー部品の45°ミラー面が、導光部の第2の面と該第2の面を被覆した金属膜の界面により形成されている場合、当該本発明のミラー部品は、光硬化性組成物又は熱硬化性組成物を金型に注入した後、光照射又は加熱により硬化させて第2の面を有する導光部を形成し、次いで、該導光部の少なくとも第2の面を金属膜で被覆して45°ミラー面を形成した後、上記金属膜の表面を樹脂硬化物により被覆する方法により製造できる。以下、図6を参照しながら上記方法をより具体的に説明する。
【0066】
図6は、本発明のミラー部品の製造方法の一例を示す概略図(断面図)である。上記製造方法により、上述の本発明のミラー部品の第2の具体的態様として例示したミラー部品が得られる。図6の手順(1)〜(6)に従い、説明する。
まず、(1)金型13に導光部を形成するための光硬化性組成物又は熱硬化性組成物14を注入し、(2)離型性フィルム15に転写した後、光照射又は加熱により硬化させ、(3)離型性フィルム15上に導光部2を形成する。この場合、上記導光部2の傾斜面が上述の第2の面となる。次に、(4)形成した導光部2の表面を金属膜6で被覆して45°ミラー面4を形成した後、(5)金属膜6の表面を樹脂硬化物7によって被覆(封止)する。最後に、(6)所定の位置で切り出すことによって、本発明のミラー部品1を製造できる。
【0067】
本発明のミラー部品の45°ミラー面が導光部と空気との界面により形成されている場合、当該本発明のミラー部品は、光硬化性組成物又は熱硬化性組成物を金型に注入した後、光照射又は加熱により硬化させて第2の面及び該第2の面と空気との界面により形成された45°ミラー面を有する導光部を形成し、次いで、上記第2の面の上方の空間を樹脂層により被覆する方法により製造できる。以下、図7を参照しながら上記方法をより具体的に説明する。
【0068】
図7は、本発明のミラー部品の製造方法の一例を示す概略図(断面図)である。上記製造方法により、上述の第1の具体的態様として例示したミラー部品が得られる。図7の手順(1)〜(5)に従い、説明する。
まず、(1)金型13に導光部を形成するための光硬化性組成物又は熱硬化性組成物14を注入し、(2)離型性フィルム15に転写した後、光照射又は加熱により硬化させ、(3)離型性フィルム15上に第2の面及び該第2の面と空気との界面により形成された45°ミラー面4を有する導光部を含む成形体を形成する。この場合、断面V字状の溝の傾斜面となっている側壁が第2の面となる。次に、(4)形成した成形体の表面を、クラッド層10と樹脂フィルム11の積層体である樹脂層で覆って上記第2の面の上方の空間を被覆し、最後に、(5)所定の位置で切り出すことによって、本発明のミラー部品1を製造できる。
【0069】
本発明のミラー部品の45°ミラー面が導光部と空気との界面により形成されている場合、当該本発明のミラー部品は、上記方法の他に、光硬化性組成物又は熱硬化性組成物を金型に注入した後、光照射又は加熱により硬化させて成形体を得、その後、該成形体に対し側壁が傾斜面である溝を形成することによって、上記溝の側壁からなる第2の面と空気との界面により形成された45°ミラー面を有する導光部を形成し、次いで、上記溝を樹脂層により被覆する方法によっても製造できる。以下、図8を参照しながら上記方法をより具体的に説明する。
【0070】
図8は、本発明のミラー部品の製造方法の一例を示す概略図(断面図)である。上記製造方法により、上述の第1の具体的態様として例示したミラー部品と類似のミラー部品が得られる。図8の手順(1)〜(7)に従い、説明する。
まず、(1)金型13に導光部を形成するための光硬化性組成物又は熱硬化性組成物14を注入し、(2)表面にクラッド層10が形成された離型性フィルム15に転写した後、光照射又は加熱により硬化させ、(3)クラッド層10上に樹脂硬化物からなる成形体を形成する。次に、(4)形成した成形体の表面にクラッド層10を形成し、(5)ダイシングソーを用いて側壁が傾斜面である溝(断面V字状の溝)をつくり、該溝の側壁からなる第2の面と空気との界面により形成された45°ミラー面4を形成する。さらに、(6)上記成形体を樹脂フィルム11からなる樹脂層で被覆し、最後に、(7)所定の位置で切り出すことによって、本発明のミラー部品1を製造できる。なお、図8の方法により製造されるミラー部品は、上述の第1の具体的態様として例示したミラー部品とは、導光部の下にクラッド層(下部クラッド層)を有する点でのみ異なるものである。
【0071】
本発明のミラー部品は、離型性フィルムの離型面上に2以上のミラー部品が連続して配置された形状のパターンが形成されたシートを得、次いで、該シートを切り出すことによって個々のミラー部品を製造する方法によっても製造することができる。該ミラー部品(個々のミラー部品)は、上述の製造方法により製造されたミラー部品であることが好ましい。このような方法により、一度に大量のミラー部品を製造することが容易となる。図9は、離型性フィルム15上に形成した、2以上のミラー部品が連続して配置された形状のパターンの一例を示す概略図であり、(a)は平面図、(b)は(a)におけるZ−Z断面図を表す。図9における点線は、上記パターンを切り出す位置を示す。図9に示す点線位置で切り出すことにより、図1に示す本発明のミラー部品を大量に得ることができる。なお、上記離型性フィルムは、特に限定されず、公知乃至慣用の剥離ライナー(セパレータ)などを使用することができる。
【0072】
[ミラー付き光導波路]
本発明のミラー部品を光導波路に接合することによって、本発明のミラー付き光導波路が得られる。即ち、本発明のミラー付き光導波路は、本発明のミラー部品の接合面と光導波路の光伝送方向の端面とを接合したミラー付き光導波路である。本発明のミラー付き光導波路においては、本発明のミラー部品の導光部の屈折率と、光導波路のコアの屈折率との差が±0.01以内(好ましくは、±0.005以内)である必要がある。本発明のミラー部品の導光部の屈折率と光導波路のコアの屈折率との差(屈折率差)は、下記式により算出することができる。
〔屈折率差〕 = 〔導光部の屈折率〕 − 〔コアの屈折率〕
【0073】
本発明のミラー付き光導波路における光導波路は、軽量でかつ柔軟性の高い光導波路が得られる点で、コアが樹脂により構成されていることが好ましく、コア及びクラッドが共に樹脂により構成されていることが特に好ましい。上記光導波路を構成する樹脂としては、特に限定されないが、耐熱性の観点で、熱硬化性組成物又は光硬化性組成物の樹脂硬化物が好ましく、より好ましくは後述の特定構成の熱硬化性樹脂組成物又は光硬化性樹脂組成物の樹脂硬化物である。
【0074】
本発明のミラー付き光導波路においては、本発明のミラー部品と光導波路のコアとを接合させる方法は、特に限定されないが、例えば、本発明のミラー部品の接合面と光導波路のコアの端面との間を隙間なく埋めることができるような接合材を用いる方法が利用される。上記接合材としては、特に限定されないが、公知乃至慣用の接着剤などを用いることができる。中でも、耐熱性並びに作業性の観点で、光硬化性樹脂又は熱硬化性樹脂の樹脂硬化物を上記接合材として用いることが好ましい。上記光硬化性樹脂又は熱硬化性樹脂としては、耐熱性並びに作業性の観点で、特に、後述の特定構成の光硬化性樹脂組成物又は熱硬化性樹脂組成物が好ましい。上記接合材として光硬化性樹脂又は熱硬化性樹脂の樹脂硬化物を用いることにより、本発明のミラー部品の外側に位置する接合面に傷がある場合でも、このような傷が光硬化性組成物又は熱硬化性組成物により充填されるため、低光損失のミラー付き光導波路が得られる。
【0075】
特に、本発明のミラー付き光導波路においては、光導波路のコアと上記接合材とが、同一の光硬化性組成物又は熱硬化性組成物の樹脂硬化物により構成されていることが好ましい。これにより、ミラー付き光導波路を低光損失とすることができる。
【0076】
また、本発明のミラー付き光導波路において、本発明のミラー部品の接合面と光導波路のコアの端面との距離(例えば、接着剤にて埋められる間隔)は、光損失を低減する観点で、できるだけ狭くすることが好ましい。
【0077】
本発明のミラー付き光導波路の製造方法は、特に限定されないが、コアが光硬化性組成物又は熱硬化性組成物の樹脂硬化物より構成された光導波路を用いる場合には、本発明のミラー部品の接合面と上記光導波路の光伝送方向の端面とを、上記光導波路のコアを構成する樹脂硬化物と同一の樹脂硬化物により接合する方法が好ましい。当該方法によりミラー付き光導波路を製造することにより、より光損失が小さく高性能な光配線を得ることができる。
【0078】
図10は、本発明のミラー付き光導波路の製造方法の一例を示す概略図(断面図)である。図10の(1)〜(3)は、光導波路のコアを形成する手順を表す。まず、(1)金型13にコアを形成するための光硬化性組成物又は熱硬化性組成物16を注入し、(2)表面にクラッド8bが形成された基板9に転写した後、光照射又は加熱により硬化させ、(3)クラッド8b上にコア8aを形成する。図10の(4)〜(6)は、光導波路に本発明のミラー部品を接合する手順を表す。(4)コアの光伝送方向の両端面にミラー部品1を設置し、(5)ミラー部品1の接合面とコアの端面の間に光硬化性組成物又は熱硬化性組成物を充填し、光照射又は加熱により硬化させて接合させた後(接合材17にて接合する)、最後に、(6)コア、ミラー部品をクラッド8bにより被覆することによって、本発明のミラー付き光導波路が製造される。
【0079】
本発明のミラー部品、ミラー付き光導波路は、特に限定されないが、光通信用途や装飾用途等において利用できる。より具体的には、例えば、携帯機器、FA機器、OA機器、オーディオ機器、車両、LAN等における通信用途、家庭用や工業用の内視鏡等におけるイメージ伝送用途、センサ用途、検査・測定用の照明、美術品等の照明等における光伝送用途、看板、サイン、景観照明等における装飾用途などにおいて用いられる機器・装置の光配線回路や光・電気混載回路等に対して特に好ましく利用できる。
【0080】
[特定構成の光硬化性樹脂組成物又は熱硬化性樹脂組成物]
本発明のミラー部品の導光部並びにハンドリング部、及び光導波路(特に、光導波路のコア)は、上述のように、光硬化性組成物又は熱硬化性組成物の樹脂硬化物により構成されていることが好ましい。上記光硬化性組成物又は熱硬化性組成物は、特に、耐熱性の点で、下記式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物を単独で、若しくはラジカル重合性を有する他の化合物と共にラジカル重合して得られるカチオン重合性樹脂(「カチオン重合性樹脂[i]」と称する場合がある)、又は、下記式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物を単独で、若しくはカチオン重合性を有する他の化合物と共にカチオン重合して得られるラジカル重合性樹脂、又は、下記式(5a)〜(5f)で表される構造(繰り返し単位)のうち少なくとも1つを含有するカチオン重合性樹脂(「カチオン重合性樹脂[ii]」と称する場合がある)を、必須成分として含むことが好ましい。
【0081】
特に、低粘度であり加工性に優れる点で、上記光硬化性組成物又は熱硬化性組成物は、下記式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物を単独で、又はラジカル重合性を有する他の化合物と共にラジカル重合して得られるカチオン重合性樹脂[i]、又は、下記式(5a)〜(5f)で表される構造(繰り返し単位)のうち少なくとも1つを含有するカチオン重合性樹脂[ii]を必須成分として含む光硬化性樹脂組成物又は熱硬化性樹脂組成物(カチオン重合性樹脂組成物)であることが好ましい。なお、上記カチオン重合性樹脂[i]とカチオン重合性樹脂[ii]とは、構造上重複し得るが、少なくとも下記式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物由来の構成単位を有する場合には、カチオン重合性樹脂[i]であるとする。
【0082】
(オキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物)
上記オキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物は、下記式(1)で表される。
【化1】
式(1)中、R1、R2は同一又は異なって水素原子又はアルキル基を示し、Aは炭素数2〜20の直鎖状アルキレン基を示す。
【0083】
式(1)中、R1、R2におけるアルキル基としては、炭素数1〜6のアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基などの直鎖状のC1-6(好ましくはC1-3)アルキル基;イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、s−ペンチル基、t−ペンチル基、イソヘキシル基、s−ヘキシル基、t−ヘキシル基などの分岐鎖状のC1-6(好ましくはC1-3)アルキル基などが挙げられる。上記R1としては、水素原子又はメチル基が好ましく、上記R2としては、メチル基又はエチル基が好ましい。
【0084】
式(1)中、Aは炭素数2〜20の直鎖状アルキレン基を示す。式(1)中のAが炭素数2〜20の直鎖状アルキレン基であることにより、優れた耐熱性と柔軟性とを兼ね備えた硬化物を形成することができる。上記炭素数2〜20の直鎖状アルキレン基は、下記式(a1)で表される。
【化2】
【0085】
式(a1)中のn1は2以上の整数(2〜20の整数)であり、特に好ましくは2〜10の整数である。
【0086】
式(1)で表されるオキセタン含有(メタ)アクリル酸エステル化合物の代表的な例としては、以下の化合物を挙げることができる。
【化3】
【0087】
式(1)で表されるオキセタン含有(メタ)アクリル酸エステル化合物は、例えば、下記式(2)
【化4】
(式(2)中、R2は前記に同じ。Xは脱離基を表す)
で表される化合物と、下記式(3)
【化5】
(式(3)中、Aは前記に同じ)
で表される化合物を、塩基性物質存在下、液相一相系で反応させて下記式(4)
【化6】
(式(4)、R2、Aは前記に同じ)
で表されるオキセタン環含有アルコールを得、得られたオキセタン環含有アルコールを(メタ)アクリル化することにより合成することができる。
【0088】
式(2)中、Xは脱離性基を示し、例えば、塩素、臭素、ヨウ素などのハロゲン原子(中でも、臭素原子、ヨウ素原子が好ましい);p−トルエンスルホニルオキシ基、メタンスルホニルオキシ基、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基等のスルホニルオキシ基;アセチルオキシ基などのカルボニルオキシ基などの脱離性の高い基を挙げることができる。
【0089】
上記塩基性物質としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物;水素化ナトリウム、水素化マグネシウム、水素化カルシウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水素化物;炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属の炭酸塩;有機リチウム試薬(例えば、メチルリチウム、エチルリチウム、n−ブチルリチウム、s−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム等)、有機マグネシウム試薬(グリニャール試薬:例えば、MeMgBr、EtMgBr等)等の有機金属化合物等を挙げることができる。これらは単独で、又は2種以上を混合して使用することができる。
【0090】
上記「液相一相系」とは、液相が2相以上あるものではなく1相のみの場合を意味し、液相が一相であれば固体を含んでいてもよい。上記溶媒としては、式(2)で表される化合物と、式(3)で表される化合物の両方を溶解することができればよく、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素;THF(テトラヒドロフラン)、IPE(イソプロピルエーテル)などのエーテル;DMSO(ジメチルスルホキシド)等の含硫黄系溶媒;DMF(ジメチルホルムアミド)等の含窒素系溶媒等を挙げることができる。
【0091】
(カチオン重合性樹脂[i])
上記カチオン重合性樹脂[i]は、式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物を単独で、又はラジカル重合性を有する他の化合物と共にラジカル重合して得られる。なお、上記「ラジカル重合性を有する他の化合物」とは、ラジカル重合性を有し、上記式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物とは異なる化合物であり、以下、「他のラジカル重合性化合物」と称する場合がある。
【0092】
上記式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物は、1分子内にカチオン重合部位であるオキセタン環と、ラジカル重合部位である(メタ)アクリロイル基を有するため、単独でラジカル重合、又は他のラジカル重合性化合物と共にラジカル共重合することにより、下記式で表されるカチオン重合性樹脂[i]を合成することができる。なお、ラジカル共重合には、ブロック共重合、ランダム共重合等が含まれる。
【化7】
(式中、R1、R2、Aは前記に同じ)
【0093】
上記カチオン重合性樹脂[i]としては、中でも、より柔軟性に優れた硬化物を形成できる点で、上記式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物と他のラジカル重合性化合物をラジカル重合することにより得られる樹脂が好ましく、カチオン重合性樹脂[i]を構成する全モノマーのうち、上記式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物由来のモノマーの占める割合が0.1重量%以上100重量%未満(より好ましくは1〜99重量%、さらに好ましくは10〜80重量%、特に好ましくは10〜50重量%)となる割合で、ラジカル共重合して得られるカチオン重合性樹脂が好ましい。
【0094】
他のラジカル重合性化合物としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリロイルアミノ基、ビニルエーテル基、ビニルアリール基、ビニルオキシカルボニル基等のラジカル重合性基を1分子内に1つ以上有する化合物等を挙げることができる。
【0095】
(メタ)アクリロイル基を1分子内に1つ以上有する化合物としては、例えば、1−ブテン−3−オン、1−ペンテン−3−オン、1−ヘキセン−3−オン、4−フェニル−1−ブテン−3−オン、5−フェニル−1−ペンテン−3−オン等、及びこれらの誘導体等を挙げることができる。
【0096】
(メタ)アクリロイルオキシ基を1分子内に1つ以上有する化合物としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチルメタクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n−ラウリル(メタ)アクリレート、n−ステアリル(メタ)アクリレート、n−ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、2―ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、メタクリル酸、2−メタクリロイロキシエチルコハク酸、2−メタクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−メタクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2−メタクリロイロキシエチルアシッドフォスフェート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、デカンジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピル(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、トリフロロエチル(メタ)アクリレート、パーフロロオクチルエチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、1,1−ビス(アクリロイルオキシ)エチルイソシアネート、2−(2−メタクリロイルオキシエチルオキシ)エチルイソシアネート、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン等、及びこれらの誘導体等を挙げることができる。
【0097】
(メタ)アクリロイルアミノ基を1分子内に1つ以上有する化合物としては、例えば、アクリル酸モルホリン−4−イル、アクリロイルモルホリン、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−プロピルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−ブチルアクリルアミド、N−n−ブトキシメチルアクリルアミド、N−ヘキシルアクリルアミド、N−オクチルアクリルアミド等、及びこれらの誘導体等を挙げることができる。
【0098】
ビニルエーテル基を1分子内に1個以上有する化合物としては、例えば、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、3−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2−ヒドロキシイソプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、3−ヒドロキシブチルビニルエーテル、2−ヒドロキシブチルビニルエーテル、3−ヒドロキシイソブチルビニルエーテル、2−ヒドロキシイソブチルビニルエーテル、1−メチル−3−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、1−メチル−2−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、1−ヒドロキシメチルプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシシクロヘキシルビニルエーテル、1,6−ヘキサンジオールモノビニルエーテル、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、1,3−シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、1,2−シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、p−キシレングリコールモノビニルエーテル、m−キシレングリコールモノビニルエーテル、o−キシレングリコールモノビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、トリエチレングリコールモノビニルエーテル、テトラエチレングリコールモノビニルエーテル、ペンタエチレングリコールモノビニルエーテル、オリゴエチレングリコールモノビニルエーテル、ポリエチレングリコールモノビニルエーテル、ジプロピレングリコールモノビニルエーテル、トリプロピレングリコールモノビニルエーテル、テトラプロピレングリコールモノビニルエーテル、ペンタプロピレングリコールモノビニルエーテル、オリゴプロピレングリコールモノビニルエーテル、ポリプロピレングリコールモノビニルエーテル等、及びこれらの誘導体等を挙げることができる。
【0099】
ビニルアリール基を1分子内に1個以上有する化合物としては、例えば、スチレン、ジビニルベンゼン、メトキシスチレン、エトキシスチレン、ヒドロキシスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、酢酸4−ビニルフェニル、(4−ビニルフェニル)ジヒドロキシボラン、(4−ビニルフェニル)ボラン酸、(4−ビニルフェニル)ボロン酸、4−エテニルフェニルボロン酸、4−ビニルフェニルボラン酸、4−ビニルフェニルボロン酸、p−ビニルフェニルホウ酸、p−ビニルフェニルボロン酸、N−(4−ビニルフェニル)マレインイミド、N−(p−ビニルフェニル)マレイミド、N−(p−ビニルフェニル)マレインイミド等、及びこれらの誘導体等を挙げることができる。
【0100】
ビニルオキシカルボニル基を1分子内に1つ以上有する化合物としては、例えば、ギ酸イソプロペニル、酢酸イソプロペニル、プロピオン酸イソプロペニル、酪酸イソプロペニル、イソ酪酸イソプロペニル、カプロン酸イソプロペニル、吉草酸イソプロペニル、イソ吉草酸イソプロペニル、乳酸イソプロペニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ミリスチン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、シクロヘキサンカルボン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、オクチル酸ビニル、モノクロロ酢酸ビニル、アジピン酸ジビニル、メタクリル酸ビニル、クロトン酸ビニル、ソルビン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニル等、及びこれらの誘導体等を挙げることができる。
【0101】
上記他のラジカル重合性化合物としては、中でも、柔軟性及び耐熱性に優れた硬化物を形成することができる点で、1分子内に(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリロイルアミノ基、ビニルアリール基、ビニルエーテル基、ビニルオキシカルボニル基から選ばれる官能基を1個のみ有する化合物が好ましく、特に、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチルメタクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリロイルオキシ基を1分子内に1個のみ有する化合物が好ましい。これらは単独で、又は2種以上を混合して使用することができる。
【0102】
ラジカル重合反応は、加熱処理及び/又は光照射を行うことにより促進することができる。加熱処理を行う場合、その温度としては、反応に供する成分や触媒の種類などに応じて適宜調製することができ、例えば、20〜200℃が好ましく、より好ましくは50〜150℃、さらに好ましくは70〜120℃程度である。光照射を行う場合、その光源としては、例えば、水銀ランプ、キセノンランプ、カーボンアークランプ、メタルハライドランプ、太陽光、電子線、レーザー光等を使用することができる。また、光照射の後、例えば、50〜180℃程度の温度で加熱処理を施してラジカル重合反応を進行させてもよい。
【0103】
ラジカル重合反応は、通常、溶媒の存在下で行われる。溶媒としては、例えば、1−メトキシ−2−アセトキシプロパン(PGMEA)、ベンゼン、トルエン等を挙げることができる。
【0104】
また、ラジカル重合反応には重合開始剤を使用してもよい。上記重合開始剤としては、公知慣用の熱重合開始剤、光ラジカル重合開始剤などのラジカル重合を起こし得るものを特に限定されることなく使用することができ、例えば、過酸化ベンゾイル、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、2,2'−アゾビス(イソ酪酸)ジメチル等を挙げることができる。
【0105】
ラジカル重合反応における重合開始剤の使用量としては、特に限定されないが、ラジカル重合性化合物(式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物と他のラジカル重合性化合物の総重量)(100重量部)に対して、例えば、0.01〜50重量部が好ましく、より好ましくは0.1〜20重量部である。
【0106】
上記カチオン重合性樹脂[i]の重量平均分子量は、特に限定されないが、500以上(例えば、500〜100万)が好ましく、より好ましくは3000〜50万である。カチオン重合性樹脂[i]の重量平均分子量が上記範囲を外れると、カチオン重合性樹脂組成物を硬化して得られた硬化物の柔軟性が得られにくくなる傾向がある。
【0107】
上記カチオン重合性樹脂[i]の数平均分子量は、特に限定されないが、100以上(例えば、100〜50万)が好ましく、より好ましくは300〜25万である。カチオン重合性樹脂[i]の数平均分子量が上記範囲を外れると、カチオン重合性樹脂組成物[i]を硬化して得られた硬化物の柔軟性が得られにくくなる傾向がある。なお、上記カチオン重合性樹脂[i]の重量平均分子量及び数平均分子量は、例えば、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法により、標準ポリスチレン換算の値として測定することができる。
【0108】
(カチオン重合性樹脂[ii])
上記カチオン重合性樹脂[ii]は、下記式(5a)〜(5f)で表される構造(繰り返し単位)のうち少なくとも1つを含有するカチオン重合性樹脂である。
【化8】
式(5a)〜(5f)において、R3は水素原子又はメチル基を表し、R4〜R6はそれぞれ独立に炭素数1〜5の炭化水素基を示す。また、R7はアルキル基を除く炭素数1〜5の炭化水素基を示す。n2は0〜5の整数であり、n3は1又は2である。
【0109】
R4〜R6における炭素数1〜5の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基などの炭素数1〜5のアルキル基;ビニル基、アリル基、1−ブテニル基などの炭素数2〜5のアルケニル基;エチニル基、プロピニル基などの炭素数2〜5のアルキニル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基などの3〜5員のシクロアルキル基などが挙げられる。上記炭素数1〜5の炭化水素基は、置換基を有していてもよい。
【0110】
R7におけるアルキル基を除く炭素数1〜5の炭化水素基としては、例えば、ビニル基、アリル基、1−ブテニル基などの炭素数2〜5のアルケニル基;エチニル基、プロピニル基などの炭素数2〜5のアルキニル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基などの3〜5員のシクロアルキル基などが挙げられる。上記アルキル基を除く炭素数1〜5の炭化水素基は、置換基を有していてもよい。
【0111】
上記カチオン重合性樹脂[ii]は、特に限定されないが、0℃において液体であることが好ましい。カチオン重合性樹脂[ii]が0℃において液体であると、取扱性に優れるとともに、樹脂硬化物の柔軟性、熱処理後の屈曲性に優れる。
【0112】
上記カチオン重合性樹脂[ii]の重量平均分子量は、特に限定されないが、500〜100万が好ましく、より好ましくは3000〜50万である。また、上記カチオン重合性樹脂[ii]の数平均分子量は、特に限定されないが、100〜50万が好ましく、より好ましくは300〜25万である。重量平均分子量が500以上であると、樹脂硬化物の柔軟性がより向上する。重量平均分子量が500を下回ると、樹脂硬化物の柔軟性が得られにくくなる傾向がある。なお、上記カチオン重合性樹脂[ii]の重量平均分子量及び数平均分子量は、例えば、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法により、標準ポリスチレン換算の値として測定することができる。
【0113】
上記カチオン重合性樹脂[ii]は、上記式(5a)〜(5f)で表される構造のうち、少なくとも1つを有するため、後述の他のカチオン重合性化合物とカチオン重合が可能であり、これにより耐熱性に優れた樹脂硬化物が得られる。
【0114】
上記カチオン重合性樹脂[ii]は、上記式(5a)〜(5f)で表される構造のうち少なくとも1つと、さらに下記式(6)で表される構造(繰り返し単位)を含有していてもよい。式(6)で表される構造を含有すると、樹脂硬化物の柔軟性、熱処理後の屈曲性が向上する場合が多い。式(6)で表される構造は、該構造に対応するモノマー(例えば、上述の(メタ)アクリロイルオキシ基を1分子内に1つ以上有する化合物など)を、式(5a)〜(5f)で表される構造(繰り返し単位)に対応するモノマーと共重合させることにより、カチオン重合性樹脂[ii]中に導入できる。
【化9】
式(6)中、R8は水素原子又はメチル基を示し、R9は置換基を有していてもよい炭素数4以上の炭化水素基を示す。R9における炭素数4以上の炭化水素基としては、例えば、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、これらが2以上結合した基等が挙げられる。
【0115】
脂肪族炭化水素基としては、例えば、ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソオクチル基、2−エチルヘキシル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基等の炭素数4〜20(好ましくは4〜12)のアルキル基;1−ブテニル基、2−ブテニル基、1−ヘキセニル基などの炭素数4〜20(好ましくは4〜12)のアルケニル基;ブチニル基などの炭素数4〜20(好ましくは4〜12)のアルキニル基などが挙げられる。脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基などの4〜20員(好ましくは4〜15員、さらに好ましくは5〜8員)程度のシクロアルキル基;パーヒドロナフタレン−1−イル基、ノルボルニル基、アダマンチル基、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン−3−イル基などの橋かけ環式炭化水素基などが挙げられる。芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ナフチル基などの炭素数6〜14(好ましくは6〜10)程度の芳香族炭化水素基が挙げられる。脂肪族炭化水素基と脂環式炭化水素基とが結合した炭化水素基には、シクロペンチルメチル基、シクロヘキシルメチル基、2−シクロヘキシル基などのシクロアルキル−アルキル基(例えば、C3-20シクロアルキル−C1-4アルキル基など)などが含まれる。また、脂肪族炭化水素基と芳香族炭化水素基とが結合した炭化水素基には、ベンジル基等のアラルキル基(例えば、C7-18アラルキル基など);トリル基などのアルキル置換アリール基(例えば、1〜4個程度のC1-14アルキル基が置換したフェニル基又はナフチル基など)などが含まれる。これらの中でも、特に、炭素数4〜20(好ましくは4〜12)のアルキル基、4〜20員(好ましくは4〜15員)の脂環式炭化水素基、又は上記シクロアルキル−アルキル基、アラルキル基などが好ましい。
【0116】
(カチオン重合性樹脂組成物)
上記カチオン重合性樹脂組成物は、上記カチオン重合性樹脂(カチオン重合性樹脂[i]、カチオン重合性樹脂[ii])を必須成分として含む。以下、上述のカチオン重合性樹脂[i]、カチオン重合性樹脂[ii]を総称して「カチオン重合性樹脂」と称する。上記カチオン重合性樹脂組成物における上記カチオン重合性樹脂の割合(含有量)は、特に限定されないが、5重量%以上が好ましく、実質的にカチオン重合性樹脂組成物が上記カチオン重合性樹脂のみにより構成されていてもよい。中でも、より柔軟性に優れる硬化物を形成できる点で、上記カチオン重合性樹脂の割合は、10〜95重量%が好ましく、より好ましくは40〜95重量%である。上記カチオン重合性樹脂の割合が5重量%を下回ると、カチオン重合により硬化して得られる硬化物の柔軟性が低下する傾向にある。
【0117】
上記カチオン重合性樹脂組成物には、上記カチオン重合性樹脂の他に、カチオン重合性を有する化合物であって、上記式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物とは異なる化合物(以後、「他のカチオン重合性化合物」と称する場合がある)を含有していてもよい。
【0118】
他のカチオン重合性化合物としては、例えば、オキセタン環、エポキシ環、ビニルエーテル基、ビニルアリール基等のカチオン重合性基を1分子内に1個以上有する化合物等を挙げることができる。
【0119】
オキセタン環を1分子内に1個以上有する化合物としては、例えば、3,3−ビス(ビニルオキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−エチル−3−(2−エチルヘキシルオキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−(ヒドロキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−[(フェノキシ)メチル]オキセタン、3−エチル−3−(ヘキシロキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−(クロロメチル)オキセタン、3,3‐ビス(クロルメチル)オキセタン、1,4−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、ビス{[1−エチル(3−オキセタニル)]メチル}エーテル、4,4’−ビス[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシメチル]ビシクロヘキシル、1,4−ビス[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシメチル]シクロヘキサン、1,4−ビス{〔(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ〕メチル}ベンゼン、3−エチル−3{〔(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]メチル}オキセタン等を挙げることができる。
【0120】
エポキシ環を1分子内に1個以上有する化合物としては、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールFジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールSジグリシジルエーテル、エポキシノボラック樹脂、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールFジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールSジグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシルレート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサン−メタ−ジオキサン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシル−3’,4’−エポキシ−6’−メチルシクロヘキサンカルボキシルレート、メチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサン)、ジシクロペンタジエンジエポキサイド、エチレングリコールのジ(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、エチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシルレート)、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジオクチル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ−2−エチルヘキシル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル類;エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の脂肪族多価アルコールに1種または2種以上のアルキレンオキサイドを付加することにより得られるポリエーテルポリオールのポリグリシジルエーテル類;脂肪族長鎖二塩基酸のジグリシジルエステル類;脂肪族高級アルコールのモノグリシジルエーテル類;フェノール、クレゾール、ブチルフェノールまたはこれらにアルキレンオキサイドを付加して得られるポリエーテルアルコールのモノグリシジルエーテル類;高級脂肪酸のグリシジルエステル類等を挙げることができる。
【0121】
ビニルエーテル基を1分子内に1つ以上有する化合物、ビニルアリール基を1分子内に1つ以上有する化合物としては、上記他のラジカル重合性化合物において挙げられた例と同様の例を挙げることができる。
【0122】
上記他のカチオン重合性化合物としては、中でも、光照射により速やかに硬化する点で、3−エチル−3−(2−エチルヘキシルオキシメチル)オキセタン、3,3−ビス(ビニルオキシメチル)オキセタン、1,4−ビス{〔(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ〕メチル}ベンゼン、3−エチル−3{[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]メチル}オキセタン等のオキセタン環を1分子内に1つ以上有する化合物が好ましい。これらは単独で、又は2種以上を混合して使用することができる。
【0123】
上記カチオン重合性樹脂組成物は、より柔軟性に優れる硬化物を形成することができる点で、上記カチオン重合性樹脂と共に他のカチオン重合性化合物を含むことが好ましい。カチオン重合性樹脂と他のカチオン重合性化合物の配合比(前者/後者:重量比)としては、特に限定されないが、95/5〜10/90が好ましく、より好ましくは95/5〜20/80、さらに好ましくは95/5〜45/55である。カチオン重合性樹脂の配合割合が上記範囲を下回ると、得られる硬化物の柔軟性が低下する傾向がある。
【0124】
また、上記カチオン重合性樹脂組成物は、必要に応じて重合開始剤を含有していてもよい。重合開始剤としては、公知慣用のカチオン重合開始剤(熱カチオン重合開始剤、光カチオン重合開始剤)、酸発生剤(熱酸発生剤、光酸発生剤)等のカチオン重合を起こし得るものを特に限定されることなく使用することができる。一般に、上記重合開始剤として、熱カチオン重合開始剤や熱酸発生剤を用いた場合には、上記カチオン重合性樹脂組成物は加熱により硬化する熱硬化性組成物(熱硬化性樹脂組成物)として使用でき、光カチオン重合開始剤や光酸発生剤を用いた場合には、上記カチオン重合性樹脂組成物は光の照射により硬化する光硬化性組成物(光硬化性樹脂組成物)として使用できる。
【0125】
上記重合開始剤としては、例えば、トリアリルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、トリアリールスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート等のスルホニウム塩;ジアリールヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ヨードニウム[4−(4−メチルフェニル−2−メチルプロピル)フェニル]ヘキサフルオロホスフェート等のヨードニウム塩;テトラフルオロホスホニウムヘキサフルオロホスフェート等のホスホニウム塩;ピリジウム塩等を挙げることができる。
【0126】
本発明においては、例えば、商品名「CPI−100P」(光酸発生剤、サンアプロ(株)製)などの市販品を使用することもできる。
【0127】
カチオン重合反応における重合開始剤の使用量としては、カチオン重合性化合物(カチオン重合性樹脂と他のカチオン重合性化合物の総重量)(100重量部)に対して、0.01〜50重量部が好ましく、より好ましくは0.1〜20重量部である。
【0128】
さらに、上記カチオン重合性樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲内で、必要に応じて他の添加物を添加してもよい。他の添加物としては、例えば、硬化膨張性モノマー、光増感剤(アントラセン系増感剤等)、樹脂、密着性向上剤、補強剤、軟化剤、可塑剤、粘度調整剤、溶剤、無機又は有機粒子(ナノスケール粒子等)、フルオロシラン等の公知慣用の各種添加剤を挙げることができる。
【0129】
上記カチオン重合性樹脂組成物としては、例えば、特開2010−280844号公報に記載のカチオン重合性樹脂組成物を使用することもできる。
【0130】
上記光硬化性組成物又は熱硬化性組成物としては、上記カチオン重合性樹脂組成物の他、上述のように、式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物を単独で、又はカチオン重合性を有する他の化合物(他のカチオン重合性化合物)と共にカチオン重合して得られるラジカル重合性樹脂を必須成分として含む光硬化性樹脂組成物又は熱硬化性樹脂組成物(ラジカル重合性樹脂組成物)を用いることもできる。
【0131】
(ラジカル重合性樹脂)
上記ラジカル重合性樹脂は、式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物を単独で、又はカチオン重合性を有する他の化合物(他のカチオン重合性化合物)と共にカチオン重合して得られる。
【0132】
上記式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物は、1分子内にカチオン重合部位であるオキセタン環と、ラジカル重合部位である(メタ)アクリロイル基を有するため、単独でカチオン重合、又は他のカチオン重合性化合物と共にカチオン共重合することにより、下記式で表されるラジカル重合性樹脂を合成することができる。なお、カチオン共重合には、ブロック共重合、ランダム共重合等が含まれる。
【化10】
(式中、R1、R2、Aは上記に同じ)
【0133】
上記ラジカル重合性樹脂としては、中でも、より柔軟性に優れた硬化物を形成できる点で、上記式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物と他のカチオン重合性化合物をカチオン共重合することにより得られるラジカル重合性樹脂が好ましい。特に、ラジカル重合性樹脂を構成する全モノマーのうち、式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物由来のモノマーの占める割合が0.1重量%以上(好ましくは1〜99重量%、特に好ましくは10〜80重量%)となる割合で、カチオン共重合して得られる樹脂が好ましい。
【0134】
他のカチオン重合性化合物としては、例えば、上記カチオン重合性樹脂組成物の項で例示した、オキセタン環、エポキシ環、ビニルエーテル基、ビニルアリール基等のカチオン重合性基を1分子内に1個以上有する化合物等を挙げることができる。
【0135】
上記他のカチオン重合性化合物としては、中でも、柔軟性及び耐熱性に優れた硬化物を形成することができる点で、1分子内にオキセタン環、エポキシ環、ビニルエーテル基、ビニルアリール基から選ばれる官能基を1個のみ有する化合物が好ましく、特に、トリメチレンオキシド、3−エチル−3−(2−エチルヘキシルオキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−[(フェノキシ)メチル]オキセタン、3−エチル−3−(ヘキシロキシメチル)オキセタン等のオキセタン環を1分子内に1個のみ有する化合物、グリシジルメチルエーテル、酪酸(R)−グリシジル等のエポキシ基を1分子内に1個のみ有する化合物等が好ましい。これらは単独で、又は2種以上を混合して使用することができる。
【0136】
カチオン重合反応は、一般に溶媒の存在下で行われる。溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等を挙げることができる。
【0137】
また、カチオン重合反応には重合開始剤を使用してもよい。重合開始剤としては、例えば、カチオン重合性樹脂組成物の項で例示したカチオン重合開始剤、酸発生剤等を用いることができる。
【0138】
カチオン重合反応における重合開始剤の使用量としては、例えば、カチオン重合性化合物(式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物と他のカチオン重合性化合物の総重量)(100重量部)に対して、例えば、0.01〜50重量部が好ましく、より好ましくは0.1〜20重量部である。
【0139】
また、カチオン重合反応は重合禁止剤の存在下で行ってもよい。重合禁止剤としては、例えば、4−メトキシフェノール、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、ジメチルハイドロキノン、トリメチルハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノン、p−t−ブチルカテコール、モノ−t−ブチルハイドロキノン、p−ベンゾキノン、ナフトキノン、2,5−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、α−ナフトール、ニトロフェノール等のキノン・フェノール系禁止剤、チオエーテル系禁止剤、亜リン酸エステル系禁止剤等を挙げることができる。
【0140】
上記ラジカル重合性樹脂の重量平均分子量は、特に限定されないが、500以上(例えば、500〜100万程度)が好ましく、より好ましくは3000〜50万である。ラジカル重合性樹脂の重量平均分子量が上記範囲を下回ると、ラジカル重合して得られる硬化物の柔軟性が低下する傾向がある。なお、上記ラジカル重合性樹脂の重量平均分子量は、例えば、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法により、標準ポリスチレン換算の値として測定することができる。
【0141】
[ラジカル重合性樹脂組成物]
上記ラジカル重合性樹脂組成物は、上記ラジカル重合性樹脂を必須成分として含む。上記ラジカル重合性樹脂組成物における上記ラジカル重合性樹脂の割合(含有量)は、特に限定されないが、5重量%以上が好ましく、実質的にラジカル重合性樹脂組成物が上記ラジカル重合性樹脂のみにより構成されていてもよい。中でも、より柔軟性に優れる硬化物を形成できる点で、上記ラジカル重合性樹脂の割合は、10重量%以上が好ましく、より好ましくは60〜90重量%である。上記ラジカル重合性樹脂の割合が5重量%を下回ると、カチオン重合により硬化して得られる硬化物の柔軟性が低下する傾向にある。
【0142】
上記ラジカル重合性樹脂組成物には、上記ラジカル重合性樹脂の他に、ラジカル重合性を有する化合物であって、上記式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物とは異なる化合物(他のラジカル重合性化合物)を含有していてもよい。
【0143】
他のラジカル重合性化合物としては、例えば、上記カチオン重合性樹脂の項で例示した、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリロイルアミノ基、ビニルアリール基、ビニルエーテル基、ビニルオキシカルボニル基等のラジカル重合性基を1分子内に1つ以上有する化合物等を挙げることができる。
【0144】
上記他のラジカル重合性化合物としては、中でも、より優れた耐熱性を有する硬化物を形成することができる点で、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、デカンジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリロイルオキシ基を2つ以上(特に2つ)有する化合物が好ましい。これらの化合物は単独で、又は2種以上を混合して使用することができる。
【0145】
上記ラジカル重合性樹脂組成物としては、より優れた耐熱性を有する硬化物を形成できる点で、上記ラジカル重合性樹脂と共に他のラジカル重合性化合物を含むことが好ましい。上記ラジカル重合性樹脂と他のラジカル重合性化合物の配合比(前者/後者:重量比)としては、例えば、95/5〜5/95が好ましく、より好ましくは95/5〜20/80、さらに好ましくは95/5〜60/40である。ラジカル重合性樹脂の配合割合が上記範囲を外れると、得られる硬化物の柔軟性が低下する傾向がある。
【0146】
また、上記ラジカル重合性樹脂組成物には重合開始剤を添加してもよいし、添加しなくてもよい。重合開始剤としては、公知慣用の熱ラジカル重合開始剤や光ラジカル重合開始剤などのラジカル重合を起こし得る化合物を特に限定されることなく使用することができる。一般に、上記重合開始剤として、熱ラジカル重合開始剤を用いた場合には、上記ラジカル重合性樹脂組成物は加熱により硬化する熱硬化性組成物(熱硬化性樹脂組成物)として使用でき、光ラジカル重合開始剤を用いた場合には、上記ラジカル重合性樹脂組成物は光の照射により硬化する光硬化性組成物(光硬化性樹脂組成物)として使用できる。
【0147】
上記熱ラジカル重合開始剤としては、例えば、過酸化ベンゾイル、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、2,2'−アゾビス(イソ酪酸)ジメチル等を挙げることができる。熱ラジカル重合開始剤は単独で、又は2種以上を混合して使用することもできる。
【0148】
上記光ラジカル重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、アセトフェノンベンジル、ベンジルジメチルケトン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ジメトキシアセトフェノン、ジメトキシフェニルアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、ジフェニルジサルファイト等を挙げることができる。光ラジカル重合開始剤は単独で、又は2種以上を混合して使用することができる。
【0149】
重合開始剤として光ラジカル重合開始剤を使用する場合、光吸収エネルギーの重合開始遊離基への転換を強めるための相乗剤を添加してもよい。相乗剤としては、例えば、トリエチルアミン、ジエチルアミン、ジエタノールアミン、エタノールアミン、ジメチルアミノ安息香酸、ジメチルアミノ安息香酸メチル等のアミン;チオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、アセチルアセトン等のケトン等を挙げることができる。
【0150】
上記ラジカル重合性樹脂組成物に重合開始剤を添加する場合、その添加量としては、ラジカル重合性樹脂組成物中のラジカル重合性化合物(ラジカル重合性樹脂と他のラジカル重合性化合物の総重量)(100重量部)に対して、0.01〜50重量部が好ましく、より好ましくは0.1〜20重量部である。
【0151】
さらに、上記ラジカル重合性樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲内で、必要に応じて他の添加物を添加してもよい。他の添加物としては、例えば、硬化膨張性モノマー、光増感剤(アントラセン系増感剤等)、樹脂、密着性向上剤、補強剤、軟化剤、可塑剤、粘度調整剤、溶剤、無機又は有機粒子(ナノスケール粒子等)、フルオロシラン等の公知慣用の各種添加剤を挙げることができる。
【実施例】
【0152】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0153】
[光硬化性組成物Aの製造例]
モノマー滴下ライン、開始剤滴下ライン、温度計、還流管、及び攪拌翼を装着した5口フラスコに、1−メトキシ−2−アセトキシプロパン(PGMEA)166.60g、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート(ダイセル化学工業(株)製、「サイクロマーM100」)53.9g(0.27mol)、n−ブチルアクリレート(BA)215.6g(1.68mol)、及びスチレン115.5g(1.11mol)の混合液(モノマー混合液)のうち25%を仕込み、85±1℃に加熱した。次いで、パーブチルPV0.7gとPGMEA7.0gの混合液を投入し、攪拌均一化した後、攪拌しながらモノマー混合液の残り75%と、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)2.50gとPGMEA70.00gの混合液(開始剤溶液1)を送液ポンプで同時に5時間かけて滴下した。滴下終了後ただちに、AIBN1.5gとPGMEA14.00gの混合液(開始剤溶液2)のうち50%を投入し、1時間後に開始剤溶液2の残り50%を投入した。さらに2時間保持した後、40℃以下に冷却することで樹脂組成物を得た。これをPGMEAで2倍に希釈した後、8倍量の60重量%メタノール水溶液で再沈精製を行い、真空乾燥機中(40℃、フルバキューム)で20時間保持することで、無色透明の液状樹脂(1)[3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート−ブチルアクリレート−スチレン共重合体]を得た。
上記液状樹脂(1)のGPCにより測定した分子量は、Mwが45800、Mnが11800であった。また、この液状樹脂(1)は、0℃においても液状のままであった。
液状樹脂(1)60重量部、3,3−ビス(ビニルオキシメチル)オキセタン25重量部、3−エチル−3−(2−エチルヘキシルオキシメチル)オキセタン15重量部、及び「CPI−100P」(サンアプロ(株)製、光重合開始剤)3重量部を混合し、光硬化性組成物Aを得た。
【0154】
[光硬化性組成物Bの製造例]
「EHPE 3150」(ダイセル化学工業(株)製)30重量部、「セロキサイド 2021P」(ダイセル化学工業(株)製)70重量部、及び「CPI−100P」(サンアプロ(株)製、光重合開始剤)3重量部を混合し、光硬化性組成物Bを得た。
【0155】
[光硬化性組成物Cの製造例]
モノマー滴下ライン、開始剤滴下ライン、温度計、還流管、及び攪拌翼を装着した5口フラスコに、PGMEA166.60g、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート(ダイセル化学工業(株)製、「サイクロマーM100」)90.23g(0.46mol)、及びBA294.77g(2.30mol)の混合液(モノマー混合液)のうち25%を仕込み、85±1℃に加熱した。次いで、パーブチルPV0.7gとPGMEA7.0gの混合液を投入し、攪拌均一化した後、攪拌しながらモノマー混合液の残り75%と、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)4.90gとPGMEA70.00gの混合液(開始剤溶液3)を送液ポンプで同時に5時間かけて滴下した。滴下終了後ただちに、AIBN2.8gとPGMEA14.00gの混合液(開始剤溶液4)のうち50%を投入し、1時間後に開始剤溶液4の残り50%を投入した。さらに2時間保持した後、40℃以下に冷却することで樹脂組成物を得た。これをPGMEAで2倍に希釈した後、8倍量の60重量%メタノール水溶液で再沈精製を行い、真空乾燥機中(40℃、フルバキューム)で20時間保持することで、無色透明の液状樹脂(2)[3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート−ブチルアクリレート共重合体]を得た。
上記液状樹脂(2)のGPCにより測定した分子量は、Mnが19800、Mwが55800であった。また、この液状樹脂(2)は、0℃においても液状のままであった。
液状樹脂(2)60重量部、3,3−ビス(ビニルオキシメチル)オキセタン25重量部、3−エチル−3−(2−エチルヘキシルオキシメチル)オキセタン15重量部、及び「CPI−100P」(サンアプロ(株)製、光重合開始剤)3重量部を混合し、光硬化性組成物Cを得た。
【0156】
実施例1
図11に示すパターンが形成できるシリコーン樹脂製の金型(鋳型)に、光硬化性組成物Aを流しこみ、PETフィルムに反転した状態で静置した。この状態で、ベルトコンベアー式紫外線照射装置(商品名「UVC−02516S1AA02」、ウシオ電機(株)製)を用いて紫外線(照射エネルギー:約2J、波長:320〜390nm)を照射し、光硬化性組成物Aを硬化させた後、金型を取り外し、PETフィルム上に導光部パターンを形成した(図11参照)。得られた導光部パターン上に、40μm厚のポリイミドフィルムを載せた後、切り出すことにより、図12に示す構成のミラー部品を作製した。
【0157】
実施例2
光硬化性組成物Aを光硬化性組成物Bに変更した以外は、実施例1と同様にして、図12に示す構成のミラー部品を作製した。
【0158】
実施例3
図13に示すパターンが形成できるシリコーン樹脂製の金型(鋳型)を用いて、光硬化性組成物Aを実施例1と同様の方法で硬化させ、PETフィルム上に導光部パターンを形成した(図13参照)。得られた導光部パターンの表面に、真空蒸着装置(商品名「VPC−410」、(株)アルバック製)を用いて、約100nm厚のアルミニウム膜を蒸着形成した。その後、アルミニウム膜を形成した導光部パターンの上に、アルミニウム膜表面からの厚みが約40μmとなるように光硬化性組成物Cを流しこみ、実施例1と同様の条件で紫外線を照射して、導光部パターン上に保護膜(樹脂硬化物)を形成した。その後、切り出すことにより、図14に示す構成のミラー部品を作製した。
【0159】
実施例4(図8参照)
幅200mm×長さ200mmのサイズのポリイミドフィルム上に、バーコーターを用いて、40μmの厚みとなるように光硬化性組成物Cを塗布した。次いで、実施例1と同様の条件で紫外線を照射することにより、ポリイミドフィルム上に厚み40μmのクラッド層が形成されたクラッドフィルムを得た。次に、図8に示すパターンが形成された型に光硬化性組成物Aを流しこみ、反転させて、先に形成したクラッド層上に静置し、実施例1と同様の条件で紫外線を照射することにより硬化させ、クラッド層上に導光部パターンを形成した。さらに、上記導光部パターンの上に、光硬化性組成物Cを流しこみ、紫外線を照射して、導光部がクラッド層により被覆されたフィルムを作製した。続いて、45°ミラー面を作製したい部分をダイサーで削り、導光部の端面に45°の傾斜を設けた。その後、保護フィルムを貼り付け、切り出すことにより、図8の(7)の1に示す構成のミラー部品を作製した。
【0160】
実施例5(図10、図15参照)
100μm厚みのPETフィルム上に、バーコーターを用いて40μm厚みとなるように光硬化性組成物Cを塗布した。ここに、実施例1と同様の条件で紫外線を照射することにより、PETフィルム上にクラッドが形成されたクラッドフィルムを得た。さらに、上記クラッドの上に、型内の形状が幅40μm×長さ100mm×高さ40μmの矩形であるシリコーン樹脂製の型を用いて、光硬化性組成物Aを硬化させたコアパターンを1本作製した(図15参照)。なお、コアパターン形成時の紫外線の照射条件は、実施例1と同様とした。
次に、上記で作製したコアパターンの両端(光伝送方向の両端)に、実施例1で作製したミラー部品を設置した。コアパターンとミラー部品の隙間に光硬化性組成物Aを流しこみ、紫外線を照射して硬化させた。さらに、PETフィルム上のコアパターンとミラー部品を被覆するように、光硬化性組成物Cをコアパターン上の厚みが約40μmとなるように塗布し、紫外線を照射して硬化させることにより、図10の(6)に示す構成のミラー付き光導波路を作製した。
上記で得たミラー付き光導波路のコアに、波長850nmの光信号を入射させて、ミラー部品の45°ミラー面で反射させ、反対側の45°ミラー面により反射させて出射した光信号を受光した(光路は図2参照)。この時の光損失を測定した。
【0161】
実施例6
実施例1で作製したミラー部品に代えて、実施例2で作製したミラー部品を使用した以外は、実施例5と同様にしてミラー付き光導波路を作製し、同様の方法で光損失を測定した。
【0162】
実施例7
実施例1で作製したミラー部品に代えて、実施例3で作製したミラー部品を使用した以外は、実施例5と同様にしてミラー付き光導波路を作製し、同様の方法で光損失を測定した。
【0163】
【表1】
【符号の説明】
【0164】
1 ミラー部品
2 導光部
3 接合面
4 45°ミラー面
5 ハンドリング部
6 金属膜
7 樹脂硬化物
8 光導波路
8a コア
8b クラッド
9 基板
10 クラッド層
11 樹脂フィルム
12 空気層
13 金型(鋳型)
14 光硬化性組成物又は熱硬化性組成物
15 基材フィルム又は離型フィルム
16 光硬化性組成物又は熱硬化性組成物
17 接合材
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミラー部品に関する。より詳しくは、光導波路の光伝送方向の端面に接合して用いる光路変換用のミラー部品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、大容量のデータを伝送することができる光導波路等の光伝送媒体を用いた通信技術の開発が精力的に進められている。このような状況下、光導波路により伝播される光を所望の位置に伝送するために、特に、効率的に光の光路を変換する技術が求められている。具体的には、例えば、1枚の基板上に光配線と電気配線の両方が形成された光・電気混載回路基板においては、光導波路を伝播する光(基板面に平行に伝播する光)を、電気配線に実装された受光素子に導くために、基板面に対し垂直方向に曲げる(光路を90°変換する)ことが必要とされる。
【0003】
特許文献1には、光の光路を90°変換するための反射面(以下、「45°ミラー面」と称する場合がある)が光導波路の端面に形成されたミラー付き光導波路が開示されている。このようなミラー付き光導波路は、刃先に傾斜角を有するブレードを用い、切削時に該ブレードを光導波路に対して垂直に当てて加工を行い、光導波路にマイクロミラーとなる傾斜端面を形成することによって製造される。しかしながら、上記ミラー付き光導波路の製造方法は、光導波路を直接加工する方法であるため、切削の際に配線の他の部分を傷つけたり、光導波路が複雑な配線形状を有する場合には、45°ミラー面の形成が困難であるという問題を有していた。さらに、上記製造方法により得られたミラー付き光導波路においては、加工時に発生する切り屑の影響で光損失が増大するという懸念があった。
【0004】
また、特許文献2には、光導波路と45°ミラー面とを金型を用いて成形して得られるミラー付き光導波路が開示されている。このようなミラー付き光導波路は、パターン状凹部を有する基板のパターン状凹部のみにコアを充填し、予めクラッドが塗布された別基板のクラッド面と重ねわせる工程と、前記パターン状凹部を有する基板を剥離して前記クラッド上にコアパターンを形成した後、前記コアパターンの傾斜面に金属を蒸着して金属ミラーとする工程を経て製造される。しかしながら、上記ミラー付き光導波路は、光路変換ミラーの形成を光導波路のコアパターンの形成工程と連続した工程で行う方法で製造されるため、光導波路の形状に対応する金型を必要とし、製造コストが高いという問題を有していた。
【0005】
光導波路とは別途製造されたミラー部品を用い、該ミラー部品を光導波路と接合して得られるミラー付き光導波路が開示されている(特許文献3参照)。このようなミラー付き光導波路は、基板上に光導波路のコアを形成すると共に、そのコアの両側にミラー位置決めガイド部材を形成した後、クラッド材を塗布し、反射ミラー(ミラー部品)を上記ミラー位置決めガイド部材に当接するように基板上に載置した後、クラッド材を硬化させることによって製造される。上記ミラー付き光導波路は、光導波路とは別に製造されたミラー部品を用いて製造されるため、光導波路の配線形状が複雑な場合であっても、45°ミラー面を容易に形成できるという利点を有している。しかしながら、上記ミラー付き光導波路のミラー位置決めガイド部材は、マスクを使用した露光により形成する必要があり、高価な露光装置を必要とするため、製造コストが高いという問題を有していた。また、45°ミラー面がミラー部品の外面に形成されるために、ミラー表面に異物等が付着すると光損失が増大するという問題も有していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−300961号公報
【特許文献2】特開2004−78084号公報
【特許文献3】特開2007−183467号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の目的は、露光装置等の高価な装置を使用することなく低コストで製造でき、生産性に優れた光路変換用のミラー部品を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、露光装置等の高価な装置を使用することなく低コストで製造でき、生産性に優れた光路変換用のミラー部品の製造方法を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、製造の際には光導波路の配線を傷つける等の不具合が生じることなく、複雑な配線形状を有する場合にも容易に製造でき、生産性に優れたミラー付き光導波路、及び該ミラー付き光導波路の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、特定構成のミラー部品とすることによって、該ミラー部品は露光装置等の高価な装置を使用することなく低コストで製造でき、生産性に優れることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
すなわち、本発明は、光導波路の光伝送方向の端面に接合される光路変換用のミラー部品であって、内部を光が伝播する導光部と、前記導光部の内部において光を入射方向と垂直な方向に反射させる45°ミラー面とを少なくとも有し、前記導光部は、前記45°ミラー面に対向し、光導波路と接合される接合面(第1の面)と、前記45°ミラー面を形成する第2の面と、前記45°ミラー面に対向し、光を入射又は出射させる第3の面とを少なくとも有することを特徴とするミラー部品を提供する。
【0010】
さらに、前記導光部に固定されたハンドリング部を有する前記のミラー部品を提供する。
【0011】
さらに、前記導光部が、光硬化性組成物又は熱硬化性組成物の樹脂硬化物により構成されている前記のミラー部品を提供する。
【0012】
さらに、前記45°ミラー面が、前記導光部の第2の面と空気との界面により形成されており、前記第2の面の上方の空間が樹脂層により被覆されている前記のミラー部品を提供する。
【0013】
さらに、前記45°ミラー面が、前記導光部の第2の面と該第2の面に積層された金属膜との界面により形成されており、前記金属膜の前記第2の面に対する反対側の表面が樹脂硬化物により被覆されている前記のミラー部品を提供する。
【0014】
さらに、2以上の前記導光部が、それぞれの接合面が同一平面上に位置するように間隔をおいて並列に配置されており、隣り合う導光部と導光部との間には空気層が形成されている前記のミラー部品を提供する。
【0015】
さらに、2以上の前記導光部が、それぞれの接合面が同一平面上に位置するように間隔をおいて並列に配置されており、隣り合う導光部と導光部の間には遮光性の樹脂硬化物が充填されている前記のミラー部品を提供する。
【0016】
また、本発明は、前記のミラー部品を製造する方法であって、光硬化性組成物又は熱硬化性組成物を金型に注入した後、光照射又は加熱により硬化させることで導光部を形成する工程と、前記導光部に接合面(第1の面)を形成する工程と、前記導光部に第2の面を形成する工程と、前記導光部に第3の面を形成する工程と、45°ミラー面を形成する工程とを少なくとも含むことを特徴とするミラー部品の製造方法を提供する。
【0017】
さらに、前記のミラー部品を製造する方法であって、光硬化性組成物又は熱硬化性組成物を金型に注入した後、光照射又は加熱により硬化させて第2の面及び該第2の面と空気との界面により形成された45°ミラー面を有する導光部を形成し、次いで、前記第2の面の上方の空間を樹脂層により被覆する前記のミラー部品の製造方法を提供する。
【0018】
さらに、前記のミラー部品を製造する方法であって、光硬化性組成物又は熱硬化性組成物を金型に注入した後、光照射又は加熱により硬化させて成形体を得、その後、該成形体に対し側壁が傾斜面である溝を形成することによって、前記溝の側壁からなる第2の面及び該第2の面と空気との界面により形成された45°ミラー面を有する導光部を形成し、次いで、前記溝を樹脂層により被覆する前記のミラー部品の製造方法を提供する。
【0019】
前記のミラー部品を製造する方法であって、光硬化性組成物又は熱硬化性組成物を金型に注入した後、光照射又は加熱により硬化させて第2の面を有する導光部を形成し、次いで、該導光部の少なくとも第2の面を金属膜で被覆して45°ミラー面を形成した後、前記金属膜の表面を樹脂硬化物により被覆する前記のミラー部品の製造方法を提供する。
【0020】
また、本発明は、離型性フィルムの離型面上に2以上のミラー部品が連続して配置された形状のパターンが形成されたシートを得、次いで、該シートを切り出すことによって個々のミラー部品を製造する方法であって、該ミラー部品は、前記の製造方法により製造されたミラー部品であることを特徴とするミラー部品の製造方法を提供する。
【0021】
また、本発明は、光導波路に前記のミラー部品が接合されたミラー付き光導波路であって、前記ミラー部品の導光部の屈折率と、前記光導波路のコアの屈折率との差が±0.01以内であることを特徴とするミラー付き光導波路を提供する。
【0022】
さらに、前記光導波路のコアが光硬化性組成物又は熱硬化性組成物の樹脂硬化物より構成されたコアであり、前記ミラー部品の接合面と前記光導波路の光伝送方向の端面とが、前記光導波路のコアを構成する樹脂硬化物と同一の樹脂硬化物により接合されている前記のミラー付き光導波路を提供する。
【0023】
また、本発明は、光導波路に前記のミラー部品が接合されたミラー付き光導波路の製造方法であって、前記光導波路として、コアが光硬化性組成物又は熱硬化性組成物の樹脂硬化物より構成された光導波路を用い、前記ミラー部品の接合面と前記光導波路の光伝送方向の端面とを、前記光導波路のコアを構成する樹脂硬化物と同一の樹脂硬化物により接合することを特徴とするミラー付き光導波路の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0024】
本発明のミラー部品は上記構成を有するため、露光装置等の高価な装置を使用することなく低コストで製造でき、生産性に優れる。さらに、本発明のミラー部品における45°ミラー面は、ミラー部品の内部に位置するため、取り扱いの際に45°ミラー面に汚れや傷が入り得ず、低光損失で品質の高いミラー付き光導波路を得ることができる。
また、本発明のミラー付き光導波路は、本発明のミラー部品を光導波路に接合させた構成を有するため、低コストで製造できる。また、製造の際には、光導波路の切削等を行う必要がないため配線を傷つける等の不具合が生じず、さらに、複雑な配線形状を有する光導波路の場合にも容易に製造できる。このため、本発明のミラー付き光導波路は優れた生産性を有し、低光損失で品質も高い。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は、本発明のミラー部品の実施形態の一例を示す概略図である。図1の(a)は斜視図、(b)は(a)におけるX−X断面図、(c)は正面図(接合面側から見た正面図)を表す。
【図2】図2は、本発明のミラー部品を光導波路に対し接合したミラー付き光導波路、及び光の光路が変換される態様の一例を示す概略図(断面図)である。
【図3】図3は、本発明のミラー部品の実施形態の他の一例を示す概略図である。図3の(a)は斜視図、(b)は(a)におけるY−Y断面図、(c)は正面図(接合面側から見た正面図)を表す。
【図4】図4は、本発明のミラー部品の実施形態の他の一例(複数の導光部を有する場合)を示す概略図である。図4の(a)は斜視図、(b)は正面図(接合面側から見た正面図)を表す。
【図5】図5は、本発明のミラー部品の実施形態の他の一例(複数の導光部を有する場合)を示す概略図である。図4の(a)は分解立体図、(b)は正面図(接合面側から見た正面図)を表す。
【図6】図6は、図1に示す本発明のミラー部品の製造方法の一例を示す概略図(断面図)である。
【図7】図7は、図3に示す本発明のミラー部品の製造方法の他の一例を示す概略図(断面図)である。
【図8】図8は、本発明のミラー部品の製造方法の他の一例を示す概略図(断面図)である。
【図9】図9は、離型性フィルム上に形成された、2以上のミラー部品が連続して配置された形状のパターンの一例を示す概略図である。図9の(a)は平面図、(b)は(a)におけるZ−Z断面図を表す。
【図10】図10は、本発明のミラー付き光導波路の製造方法の一例を示す概略図(断面図)である。
【図11】図11は、実施例で使用されたシリコーン樹脂製の金型(鋳型)により形成されるパターンの形状及び寸法を表す概略図(斜視図)である。
【図12】図12は、実施例1で作製されたミラー部品の形状及び寸法を表す概略図(斜視図)である。
【図13】図13は、実施例で使用されたシリコーン樹脂製の金型(鋳型)により形成されるパターンの形状及び寸法を表す概略図(斜視図)である。
【図14】図14は、実施例3で作製されたミラー部品の形状及び寸法を表す概略図(斜視図)である。
【図15】図15は、実施例5〜7で作製されたミラー付き光導波路における光導波路のコアの形状及び寸法を表す概略図(斜視図)である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
[ミラー部品]
本発明のミラー部品は、光導波路の光伝送方向の端面に接合される光路変換用のミラー部品である。本発明のミラー部品は、内部を光が伝播する導光部と、前記導光部の内部において光を入射方向と垂直な方向に反射させる45°ミラー面とを少なくとも有し、前記導光部は、前記45°ミラー面に対向し、光導波路と接合される接合面(第1の面)と、前記45°ミラー面を形成する第2の面と、前記45°ミラー面に対向し、光を入射又は出射させる第3の面とを少なくとも有することを特徴とする。以下、必要に応じて図面を参照しながら、本発明のミラー部品について説明する。
【0027】
図1は、本発明のミラー部品の実施形態の一例を示す概略図であり、(a)は斜視図、(b)は(a)におけるX−X断面図、(c)は接合面側から見た正面図である。図1の1は本発明のミラー部品を表し、2は導光部、3は接合面(第1の面)、4は45°ミラー面を表す(例えば、図1の(b)参照)。図1に示すミラー部品の45°ミラー面4は、導光部の一端面(第2の面)と、該第2の面を被覆する金属膜6との界面により形成されている。また、図1のハンドリング部5は、ミラー部品1を取り扱う際に通常把持される部分である。なお、図1の(b)の点線は、部材の輪郭を表すものではない(図3の(b)についても同様である)。
【0028】
図2は、本発明のミラー部品(図1に示すミラー部品1)を、クラッド8bによりコア8aが被覆された構成を有する光導波路8に接合したミラー付き光導波路を表す概略図(断面図)である。なお、図2の9は基板を表す。図2には、光導波路の光伝送方向(長さ方向)の両側の端面に本発明のミラー部品1が接合された例を示している。さらに、図2には、ミラー付き光導波路中を伝播する光の光路を点線(太い点線)で表している。以下、図2を参照しながら、本発明のミラー部品により光の光路が変換される態様の一例を説明する。
図2に示すミラー付き光導波路においては、光導波路8の一端(右側)に接合されたミラー部品1(右側)の下方に発光素子が、光導波路8の他端(左側)に接合されたミラー部品1(左側)の下方に受光素子が設置されている。まず、上記発光素子から発せられた光は、基板9の面に対して垂直方向上向きにミラー部品1(右側)に入射する。この光は、ミラー部品1(右側)の内部の45°ミラー面4で反射し、光路が90°変換されてミラー部品1(右側)の左端(接合面3)から出射し、基板9の面に対して平行に、光導波路8の中を他端(左側)に向かって伝播する。そして、ミラー部品1(左側)に入射した後、内部の45°ミラー面4で反射し、光路が90°変換されて、基板9の面に対して垂直方向下向きにミラー部品1(左側)から出射する。その後、この光は、ミラー部品1(左側)の下方の受光素子により受光される。
【0029】
このように、本発明のミラー部品は、該ミラー部品の内部(詳しくは、導光部内)に入射した光(入射光)を45°ミラー面により反射させて、入射光に対し光路が90°変換された光をミラー部品の内部(詳しくは、導光部内)から出射することを本質的機能とする部品(部材)である。即ち、本発明のミラー部品は、ミラー部品に対し光が入射する面(「入射面」と称する場合がある)、ミラー部品から光が出射する面(「出射面」と称する場合がある)、及び45°ミラー面を少なくとも有する。なお、本発明のミラー部品により、入射面から入射した光を45°ミラー面で反射させて出射面から出射するためには、入射面と45°ミラー面、出射面と45°ミラー面とはそれぞれ対向する位置関係をとる必要がある。また、光路を90°変換するためには、入射面から入射する光の光路と45°ミラー面とがなす角度が45°となるような位置関係をとる必要がある。なお、本明細書でいう「対向する位置関係」は、面と面とが平行に向き合っている関係のみを言うのではなく、面と面とがある角度を持って向き合っている関係を含む。
【0030】
図2のミラー部品1(左側)を参照しながら、上記位置関係についてより具体的に説明する。図2のミラー部品1(左側)においては、接合面3(ここでは、入射面)から光が入射し、45°ミラー面4にて反射した後、ミラー部品1(左側)の下面(ここでは、出射面)から出射する。入射面である接合面3と45°ミラー面4とは対向し、かつ45°ミラー面4と上記出射面とは対向する位置関係にある。さらに、接合面3(入射面)から入射する光の光路と45°ミラー面4のなす角度は45°であり、その結果、90°変換されて出射する光の光路と45°ミラー面4のなす角度も45°となる。なお、図2の例では、接合面(入射面)と出射面とが直交しているが、特にこれに限定されるものではない。
【0031】
(導光部)
本発明のミラー部品の導光部は内部を光が伝播する部分であり、接合面である端面(第1の面)、45°ミラー面を形成する端面(第2の面)、及び上述の入射面又は出射面に対応する端面(第3の面)を少なくとも有する。上記第3の面は、接合面(第1の面)が入射面となる場合には出射面となり、一方、接合面(第1の面)が出射面となる場合には入射面となる端面である。従って、上記導光部における接合面(第1の面)及び第3の面は、それぞれ45°ミラー面に対向する位置関係にある。
【0032】
上記導光部の第1の面は、光導波路に接合(結合)させるための接合面として機能する(例えば、図2参照)。なお、上記接合面は、入射面と出射面のいずれとしても機能し得る。具体的には、図2では、ミラー部品1(右側)の接合面3は出射面として機能し、一方、ミラー部品の1(左側)の接合面3は入射面として機能している。
【0033】
本発明のミラー部品の接合面と光導波路とを接合する方法は、特に限定されないが、例えば、下記[ミラー付き光導波路]の項で後述するように、上記接合面と光導波路の端面との間を熱硬化性組成物又は光硬化性組成物で充填し、該組成物を加熱又は光照射により硬化させることによって接合することができる(例えば、図10参照)。
【0034】
上記導光部の第2の面は、本発明のミラー部品の45°ミラー面を形成する端面である。上述のように、上記第2の面と第1の面(接合面)とは対向しており、特に限定されないが、例えば、両面が同一の辺を共有して対向していてもよいし(即ち、第2の面と第1の面(接合面)が交差する)、他の面を介して対向していてもよい(例えば、図1、3参照)。
【0035】
上記導光部の第2の面は、上記接合面と対向する面であればよく、特に限定されないが、例えば、図1に示すように、傾斜面となっている導光部の一端面により形成されていてもよいし、図3に示すように、ミラー部品に形成された側壁が傾斜面となっている溝の側壁により形成されていてもよい。なお、上記溝は、第2の面となる側壁(傾斜面)を有する溝であればよく、特に限定されないが、例えば、断面V字状の溝(例えば、図3参照)や、断面台形状の溝などが挙げられる。
【0036】
上記第2の面により形成される45°ミラー面は、本発明のミラー部品の内部において光を反射させる役割を担う。上記45°ミラー面は、入射面(第1の面(接合面)又は第3の面)から導光部に入射する光の光路に対して、45°の角度をなす面である。これにより、導光部に入射した光は、45°ミラー面により垂直方向に反射し、出射面(第3の面又は第1の面(接合面))より出射する。
【0037】
上記45°ミラー面は、特に限定されないが、導光部の第2の面と空気との界面により形成されていてもよいし、導光部の第2の面と該第2の面に形成された金属膜との界面により形成されていてもよい。具体的には、例えば、図3に示すミラー部品の45°ミラー面は、導光部の第2の面と空気との界面により形成されている。一方、図1に示すミラー部品の45°ミラー面は、導光部の第2の面と該第2の面の表面に形成された金属膜との界面により形成されている。
【0038】
上記金属膜を形成する金属としては、特に限定されないが、例えば、反射率の観点で、金、銀、アルミニウム等を好ましく使用することができる。また、上記導光膜の表面に金属膜を形成する方法は、特に限定されないが、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、無電解メッキ法などの公知乃至慣用の方法を利用することができる。上記金属膜の厚みも、特に限定されないが、例えば、10〜1000nmの範囲から適宜選択することができる。
【0039】
上記導光部の第3の面は、入射面又は出射面として機能する端面(即ち、光を入射又は出射させる面)であり、導光部の第1の面(接合面)とは異なる端面である。上述のように、上記第3の面と第2の面とは対向しており、特に限定されないが、例えば、両面が同一の辺を共有して対向していてもよいし(即ち、第3の面と第2の面(接合面)が交差する関係、例えば、図1、3参照)、他の面を介して対向していてもよい。
【0040】
上記導光部は、光が伝播可能な透光性の材質により構成されていればよく、特に限定されないが、例えば、ガラス、石英、透明な樹脂等の材料により構成される。中でも、上記導光部を構成する材質としては、屈折率や柔軟性の制御が容易であり、加工性が良好である点で、樹脂が好ましく、より好ましくは光硬化性組成物又は熱硬化性組成物の樹脂硬化物である。上記光硬化性組成物又は熱硬化性組成物としては、光照射又は加熱により硬化する公知乃至慣用の組成物を用いることができ、特に限定されないが、耐熱性の観点で、後述の特定構成の光硬化性樹脂組成物又は熱硬化性樹脂組成物が好ましい。即ち、本発明のミラー部品の導光部は、後述の特定構成の光硬化性樹脂組成物又は熱硬化性樹脂組成物の樹脂硬化物により構成されることが好ましい。
【0041】
上記導光部の形状は、上述の接合面(第1の面)、45°ミラー面を形成する端面(第2の面)、及び第3の面を少なくとも有していればよく、特に限定されない。また、上記導光部の大きさは、光導波路のコア径や光配線の形状等により異なり、特に限定されないが、例えば、接合時の光損失を低減するという観点で、上記接合面の面積を、光導波路のコアの断面積よりも大きくすることが好ましい。本発明のミラー部品の45°ミラー面、入射面、出射面の表面状態は特に限定されるものではないが、平滑であることが好ましい。45°ミラー面の表面が平滑であれば、光の散乱を抑制することが可能となり、光損失を低減することができる。
【0042】
(ハンドリング部)
本発明のミラー部品は、上記導光部に固定されたハンドリング部を有していることが好ましい。上記ハンドリング部は、上記導光部に対して固定されており、上記導光部及び45°ミラー面を形成する構成要素(例えば、上記金属膜など)以外の部分により構成される。従って、上記ハンドリング部は、光の伝播及び反射には関与しない。上記ハンドリング部の主たる機能は、本発明のミラー部品の取り扱い性(ハンドリング性)を向上させることである。従って、上記ハンドリング部は、上記導光部よりも大きな体積を有し、本発明のミラー部品の大部分を占めることが好ましい。本発明のミラー部品を取り扱う際には上記ハンドリング部をピンセットやエアチャック、エアピンセットなどにより把持できるため、作業性が向上する。より具体的には、例えば、図1に示すミラー部品においては、5で示す部分がハンドリング部に該当する。また、図3に示すミラー部品においても同様である。上記ハンドリング部を有しない場合(例えば、導光部のみからなるミラー部品の場合)には、取り扱いが困難となり、光導波路に対し正確に接合させにくいため、光損失が大きくなる場合がある。また、45°ミラー面を形成する導光部の第2の面が露出することになるため、該表面に汚れや傷がつくことで光損失が大きくなってしまう場合がある。
【0043】
上記ハンドリング部は、特に限定されないが、例えば、樹脂、金属、セラミック等の公知乃至慣用の材料により構成される。中でも、上記ハンドリング部を構成する材質としては、柔軟性の制御が容易であり、加工性が良好である点で、樹脂が好ましく、より好ましくは光硬化性組成物又は熱硬化性組成物の樹脂硬化物である。上記熱硬化性組成物又は光硬化性組成物としては、光照射又は加熱により硬化する公知乃至慣用の組成物を用いることができ、特に限定されないが、耐熱性の点で、後述の特定構成の光硬化性樹脂組成物又は熱硬化性樹脂組成物が好ましい。即ち、本発明のミラー部品のハンドリング部は、後述の特定構成の熱硬化性樹脂組成物又は光硬化性樹脂組成物の樹脂硬化物により構成されていることが好ましい。上記ハンドリング部の表面状態は特に限定されないが、平滑であることが好ましい。ハンドリング部をエアチャック等で取り扱う際に表面が平滑である方が、安定して取り扱うことが可能となる。
【0044】
本発明のミラー部品は、例えば、45°ミラー面の光の反射効率を低下させない目的で、上記導光部の第2の面や上記金属膜を保護するための、後述の樹脂層や樹脂硬化物を有することが好ましい。より詳しくは、上記45°ミラー面が導光部と空気との界面により形成されている場合には、導光部の第2の面を保護することを目的として、上記第2の面の上方の空間を被覆する、クラッド層や樹脂フィルムなどの樹脂層を有することが好ましい(例えば、図3、図5参照)。また、上記45°ミラー面が導光部と金属膜との界面により形成されている場合には、上記金属膜を保護することを目的として、上記金属膜を被覆する樹脂硬化物を有することが好ましい(例えば、図1、図4参照)。上記樹脂層や樹脂硬化物は、通常、上記ハンドリング部を構成する。
【0045】
また、本発明のミラー部品は、複数の光導波路が並んだ光配線に対して接合できる、2以上の導光部が配列したミラー部品(ミラーアレイ)であってもよい。上記ミラー部品(ミラーアレイ)における隣り合う導光部と導光部の間隔は、光導波路のピッチに応じて適宜設定可能であり、特に限定されない。さらに、上記ミラー部品(ミラーアレイ)は、クロストークを抑制する観点で、一の導光部を伝播する光が隣り合う導光部に漏れ出すことを抑制する構成を有していることが好ましい。このような構成としては、特に限定されないが、例えば、隣り合う導光部と導光部との間に空気層が形成された構成や、隣り合う導光部と導光部との間に遮光性の樹脂硬化物が充填されている構成などが挙げられる。上記ミラー部品(ミラーアレイ)としては、具体的には、例えば、図4、図5に示すように、2以上の導光部が、それぞれの接合面が同一平面上に位置するように間隔をおいて並列に配列されたミラー部品(ミラーアレイ)などが挙げられる。
【0046】
本発明のミラー部品は、光導波路とは別の部品(部材)として製造され用いられるものであるため、光導波路により形成される光配線の形状が複雑な場合であっても、容易に接合することができる。従って、広範な形状の光配線に対して使用することができ、汎用性が高い。また、光導波路とは別の部品として製造されるものであるため、高い生産性を有する。
【0047】
さらに、本発明のミラー部品においては、45°ミラー面がミラー部品の内側に位置するため、汚れが付着したり、傷が入ってしまうことがない。このため、取り扱いが容易であり、このような汚れや傷に起因する光損失を低減することができる。これに対して、従来のミラー部品は、45°ミラー面がミラー部品の外側の表面(外面)に位置するものであったため汚れや傷が入り易く、取り扱いが困難であった。
【0048】
以下、図面を参照しながら、本発明のミラー部品の具体的態様の一例について説明する。但し、本発明のミラー部品はこれらの具体的態様に限定されるものではない。
【0049】
[本発明のミラー部品の第1の具体的態様]
本発明のミラー部品の第1の具体的態様は、45°ミラー面が上記導光部の第2の面と空気との界面により形成されており、上記第2の面の上方の空間が樹脂層により被覆されているミラー部品である。
【0050】
図3は、本発明のミラー部品の第1の具体的態様の一例を表す概略図であり、(a)は斜視図、(b)は(a)におけるY−Y断面図、(c)は接合面側から見た正面図である。図3の1はミラー部品を表す。図3の2は導光部、3は接合面、4は45°ミラー面を表す。また、図3の10はクラッド層、11は樹脂フィルムを表す。図3の本発明のミラー部品における45°ミラー面4は、導光部2の接合面3に対向する端面(第2の面)と、空気との界面により形成されている。また、上記第2の面の上方の空間は、クラッド層10及び樹脂フィルム11からなる樹脂層により被覆されている。なお、上記第2の面は、ミラー部品に形成された側壁が傾斜面となっている溝(断面V字状の溝)の側壁からなり、樹脂層(クラッド層10)とは接触していない。また、図3の例では、上記溝の側面は被覆されていないが(例えば、図3の(b)参照)、45°ミラー面の保護の観点からは、上記溝の側面も樹脂層により被覆されていることが好ましい。
【0051】
上記樹脂層としては、公知乃至慣用の樹脂により構成された層状物(クラッド層や樹脂フィルム等)を使用することができ、特に限定されないが、例えば、熱硬化性組成物又は光硬化性組成物の樹脂硬化物からなるクラッド層や、ポリイミドフィルムなどを使用できる。また、上記樹脂層は、特に限定されないが、例えば、クラッド層又は樹脂フィルムのみから形成された単層構成であってもよいし、図3に示すような2層構成や、3層以上の複層構成であってもよい。
【0052】
本発明のミラー部品の第1の具体的態様には、図3に示すように、1つのみの導光部を有するもののほか、複数の導光部が配列したもの(ミラーアレイ)も含まれる。具体的には、例えば、2以上の導光部が、それぞれの接合面が同一平面上に位置するように間隔をおいて並列に配置されており、隣り合う導光部と導光部との間には空気層が形成されているミラー部品も含まれる(図5参照)。
【0053】
特に、複数の光導波路が配列された光配線において、隣り合う光導波路の間隔(ピッチ)が狭い場合には、ミラー部品と光導波路との接合部分においてクロストーク(ある光導波路を伝播する光が他の光導波路へと漏れ出す現象)が発生しやすくなる。このような場合であっても、図5に示すようなミラー部品(ミラーアレイ)においては、隣り合う導光部と導光部との間に空気層が形成されていることにより、例えば、光導波路から導光部に入射した光が側面から漏れ出しにくく、その結果、クロストークの発生が抑制される。
【0054】
[本発明のミラー部品の第2の具体的態様]
本発明のミラー部品の第2の具体的態様は、45°ミラー面が上記導光部の第2の面と、該第2の面に積層された金属膜との界面により形成されており、上記金属膜の上記第2の面に対する反対側の表面が樹脂硬化物により被覆されているミラー部品である。
【0055】
図1は、本発明のミラー部品の第2の具体的態様の一例を表す概略図であり、(a)は斜視図、(b)は(a)におけるX−X断面図、(c)は接合面側から見た正面図である。上述のように、図1の本発明のミラー部品における45°ミラー面4は、導光部2の接合面3に対向する端面(第2の面)と、該第2の面に積層された金属膜6との界面により形成されている。また、金属膜6の表面(第2の面に対する反対側の表面)は、樹脂硬化物7により被覆されている。
【0056】
本発明のミラー部品の第2の具体的態様には、図1に示すような1つのみの導光部を有するもののほか、複数の導光部が配列したもの(ミラーアレイ)も含まれる。具体的には、2以上の導光部が、それぞれの接合面が同一平面上に位置するように間隔をおいて並列に配置されており、隣り合う導光部と導光部との間には遮光性の樹脂硬化物が充填されているミラー部品も含まれる(図4参照)。
【0057】
図4に示すようなミラー部品(ミラーアレイ)は、隣り合う導光部と導光部との間に遮光性の樹脂硬化物が充填されていることにより、クロストークが抑制される。上記遮光性の樹脂硬化物としては、特に限定されないが、例えば、熱硬化性組成物又は光硬化性組成物に対して、カーボンブラック、グラファイトなどの添加剤を混合し、硬化させた樹脂硬化物(例えば、カーボンブラック及び/又はグラファイトを含有する樹脂硬化物)などが挙げられる。なお、上記ミラー部品(ミラーアレイ)においては、金属膜を被覆する樹脂硬化物として上記遮光性の樹脂硬化物を使用してもよい。
【0058】
[本発明のミラー部品の製造方法]
本発明のミラー部品は、公知乃至慣用の方法により製造することができ、特に限定されないが、例えば、インプリント法等の鋳型を用いて転写する方法、ダイサー等を用いて切削により形成する方法等を利用して製造することができる。
【0059】
本発明のミラー部品は、特に、上記導光部が熱硬化性組成物又は光硬化性組成物の樹脂硬化物から構成される場合には、少なくとも上記導光部については金型を用いて成形することが好ましい。即ち、本発明のミラー部品の製造方法は、光硬化性組成物又は熱硬化性組成物を金型に注入した後、光照射又は加熱により硬化させることで導光部を形成する工程(金型成形工程)と、上記導光部に接合面(第1の面)を形成する工程と、上記導光部に第2の面を形成する工程と、上記導光部に第3の面を形成する工程と、45°ミラー面を形成する工程とを少なくとも含むことが好ましい。上記製造方法によると、本発明のミラー部品を一度に大量に製造することができるため、製造コストが安くなる。
【0060】
なお、上述の導光部を形成する工程、上記導光部に接合面(第1の面)を形成する工程、上記導光部に第2の面を形成する工程、上記導光部に第3の面を形成する工程、及び45°ミラー部品を形成する工程は、それぞれ異なる工程として実施してもよいし、2以上の工程を同時に(一体として)実施してもよい。具体的には、例えば、光硬化性組成物又は熱硬化性組成物を金型に注入した後、光照射又は加熱により硬化させることにより得られた導光部は、既に第2の面により形成された45°ミラー面が形成されたものであってもよい(即ち、上記導光部を形成する工程、第2の面を形成する工程、及び45°ミラー面を形成する工程を一体として実施した例である)。また、光硬化性組成物又は熱硬化性組成物を金型に注入した後、光照射又は加熱により硬化させることにより得られた第2の面を有する導光部に対し、さらに、上記第2の面に金属膜を蒸着することによって45°ミラー面を形成してもよい(即ち、上記導光部を形成する工程(第2の面を形成する工程)と45°ミラー面を形成する工程とを異なる工程として実施した例である)。
【0061】
上記の導光部の成形の際に用いる金型(鋳型)は、特に限定されないが、例えば、金属、石英、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等により構成された金型を用いることができる。導光部の形成の際に熱で硬化させる場合は耐熱性の高い金型を、光で硬化させる場合は硬化に使用する光の透過性を有する材質の金型を用いることが好ましい。中でも、安価で、成形体からの取り外しが容易である点で、樹脂製の金型が好ましく、より好ましくはポリエステル樹脂、フッ素樹脂(特に、テフロン(登録商標))、シリコーン樹脂製の金型である。
【0062】
上述のように、本発明のミラー部品における接合面(第1の面)、第2の面、第3の面は、上述の金型成形工程にて導光部と同時に形成してもよいし、導光部を成形した後、切り出して端面を生じさせることによって形成してもよい(例えば、図6〜8参照)。
【0063】
同様に、本発明のミラー部品における45°ミラー面は、上述の金型成形工程にて導光部と同時に形成してもよいし(例えば、図7参照)、導光部を成形した後に所定の加工を施す工程を設けることによって形成してもよい(例えば、図6、図8参照)。
【0064】
以下、図面を参照しながら、本発明のミラー部品の製造方法の具体的態様について説明する。
【0065】
本発明のミラー部品の45°ミラー面が、導光部の第2の面と該第2の面を被覆した金属膜の界面により形成されている場合、当該本発明のミラー部品は、光硬化性組成物又は熱硬化性組成物を金型に注入した後、光照射又は加熱により硬化させて第2の面を有する導光部を形成し、次いで、該導光部の少なくとも第2の面を金属膜で被覆して45°ミラー面を形成した後、上記金属膜の表面を樹脂硬化物により被覆する方法により製造できる。以下、図6を参照しながら上記方法をより具体的に説明する。
【0066】
図6は、本発明のミラー部品の製造方法の一例を示す概略図(断面図)である。上記製造方法により、上述の本発明のミラー部品の第2の具体的態様として例示したミラー部品が得られる。図6の手順(1)〜(6)に従い、説明する。
まず、(1)金型13に導光部を形成するための光硬化性組成物又は熱硬化性組成物14を注入し、(2)離型性フィルム15に転写した後、光照射又は加熱により硬化させ、(3)離型性フィルム15上に導光部2を形成する。この場合、上記導光部2の傾斜面が上述の第2の面となる。次に、(4)形成した導光部2の表面を金属膜6で被覆して45°ミラー面4を形成した後、(5)金属膜6の表面を樹脂硬化物7によって被覆(封止)する。最後に、(6)所定の位置で切り出すことによって、本発明のミラー部品1を製造できる。
【0067】
本発明のミラー部品の45°ミラー面が導光部と空気との界面により形成されている場合、当該本発明のミラー部品は、光硬化性組成物又は熱硬化性組成物を金型に注入した後、光照射又は加熱により硬化させて第2の面及び該第2の面と空気との界面により形成された45°ミラー面を有する導光部を形成し、次いで、上記第2の面の上方の空間を樹脂層により被覆する方法により製造できる。以下、図7を参照しながら上記方法をより具体的に説明する。
【0068】
図7は、本発明のミラー部品の製造方法の一例を示す概略図(断面図)である。上記製造方法により、上述の第1の具体的態様として例示したミラー部品が得られる。図7の手順(1)〜(5)に従い、説明する。
まず、(1)金型13に導光部を形成するための光硬化性組成物又は熱硬化性組成物14を注入し、(2)離型性フィルム15に転写した後、光照射又は加熱により硬化させ、(3)離型性フィルム15上に第2の面及び該第2の面と空気との界面により形成された45°ミラー面4を有する導光部を含む成形体を形成する。この場合、断面V字状の溝の傾斜面となっている側壁が第2の面となる。次に、(4)形成した成形体の表面を、クラッド層10と樹脂フィルム11の積層体である樹脂層で覆って上記第2の面の上方の空間を被覆し、最後に、(5)所定の位置で切り出すことによって、本発明のミラー部品1を製造できる。
【0069】
本発明のミラー部品の45°ミラー面が導光部と空気との界面により形成されている場合、当該本発明のミラー部品は、上記方法の他に、光硬化性組成物又は熱硬化性組成物を金型に注入した後、光照射又は加熱により硬化させて成形体を得、その後、該成形体に対し側壁が傾斜面である溝を形成することによって、上記溝の側壁からなる第2の面と空気との界面により形成された45°ミラー面を有する導光部を形成し、次いで、上記溝を樹脂層により被覆する方法によっても製造できる。以下、図8を参照しながら上記方法をより具体的に説明する。
【0070】
図8は、本発明のミラー部品の製造方法の一例を示す概略図(断面図)である。上記製造方法により、上述の第1の具体的態様として例示したミラー部品と類似のミラー部品が得られる。図8の手順(1)〜(7)に従い、説明する。
まず、(1)金型13に導光部を形成するための光硬化性組成物又は熱硬化性組成物14を注入し、(2)表面にクラッド層10が形成された離型性フィルム15に転写した後、光照射又は加熱により硬化させ、(3)クラッド層10上に樹脂硬化物からなる成形体を形成する。次に、(4)形成した成形体の表面にクラッド層10を形成し、(5)ダイシングソーを用いて側壁が傾斜面である溝(断面V字状の溝)をつくり、該溝の側壁からなる第2の面と空気との界面により形成された45°ミラー面4を形成する。さらに、(6)上記成形体を樹脂フィルム11からなる樹脂層で被覆し、最後に、(7)所定の位置で切り出すことによって、本発明のミラー部品1を製造できる。なお、図8の方法により製造されるミラー部品は、上述の第1の具体的態様として例示したミラー部品とは、導光部の下にクラッド層(下部クラッド層)を有する点でのみ異なるものである。
【0071】
本発明のミラー部品は、離型性フィルムの離型面上に2以上のミラー部品が連続して配置された形状のパターンが形成されたシートを得、次いで、該シートを切り出すことによって個々のミラー部品を製造する方法によっても製造することができる。該ミラー部品(個々のミラー部品)は、上述の製造方法により製造されたミラー部品であることが好ましい。このような方法により、一度に大量のミラー部品を製造することが容易となる。図9は、離型性フィルム15上に形成した、2以上のミラー部品が連続して配置された形状のパターンの一例を示す概略図であり、(a)は平面図、(b)は(a)におけるZ−Z断面図を表す。図9における点線は、上記パターンを切り出す位置を示す。図9に示す点線位置で切り出すことにより、図1に示す本発明のミラー部品を大量に得ることができる。なお、上記離型性フィルムは、特に限定されず、公知乃至慣用の剥離ライナー(セパレータ)などを使用することができる。
【0072】
[ミラー付き光導波路]
本発明のミラー部品を光導波路に接合することによって、本発明のミラー付き光導波路が得られる。即ち、本発明のミラー付き光導波路は、本発明のミラー部品の接合面と光導波路の光伝送方向の端面とを接合したミラー付き光導波路である。本発明のミラー付き光導波路においては、本発明のミラー部品の導光部の屈折率と、光導波路のコアの屈折率との差が±0.01以内(好ましくは、±0.005以内)である必要がある。本発明のミラー部品の導光部の屈折率と光導波路のコアの屈折率との差(屈折率差)は、下記式により算出することができる。
〔屈折率差〕 = 〔導光部の屈折率〕 − 〔コアの屈折率〕
【0073】
本発明のミラー付き光導波路における光導波路は、軽量でかつ柔軟性の高い光導波路が得られる点で、コアが樹脂により構成されていることが好ましく、コア及びクラッドが共に樹脂により構成されていることが特に好ましい。上記光導波路を構成する樹脂としては、特に限定されないが、耐熱性の観点で、熱硬化性組成物又は光硬化性組成物の樹脂硬化物が好ましく、より好ましくは後述の特定構成の熱硬化性樹脂組成物又は光硬化性樹脂組成物の樹脂硬化物である。
【0074】
本発明のミラー付き光導波路においては、本発明のミラー部品と光導波路のコアとを接合させる方法は、特に限定されないが、例えば、本発明のミラー部品の接合面と光導波路のコアの端面との間を隙間なく埋めることができるような接合材を用いる方法が利用される。上記接合材としては、特に限定されないが、公知乃至慣用の接着剤などを用いることができる。中でも、耐熱性並びに作業性の観点で、光硬化性樹脂又は熱硬化性樹脂の樹脂硬化物を上記接合材として用いることが好ましい。上記光硬化性樹脂又は熱硬化性樹脂としては、耐熱性並びに作業性の観点で、特に、後述の特定構成の光硬化性樹脂組成物又は熱硬化性樹脂組成物が好ましい。上記接合材として光硬化性樹脂又は熱硬化性樹脂の樹脂硬化物を用いることにより、本発明のミラー部品の外側に位置する接合面に傷がある場合でも、このような傷が光硬化性組成物又は熱硬化性組成物により充填されるため、低光損失のミラー付き光導波路が得られる。
【0075】
特に、本発明のミラー付き光導波路においては、光導波路のコアと上記接合材とが、同一の光硬化性組成物又は熱硬化性組成物の樹脂硬化物により構成されていることが好ましい。これにより、ミラー付き光導波路を低光損失とすることができる。
【0076】
また、本発明のミラー付き光導波路において、本発明のミラー部品の接合面と光導波路のコアの端面との距離(例えば、接着剤にて埋められる間隔)は、光損失を低減する観点で、できるだけ狭くすることが好ましい。
【0077】
本発明のミラー付き光導波路の製造方法は、特に限定されないが、コアが光硬化性組成物又は熱硬化性組成物の樹脂硬化物より構成された光導波路を用いる場合には、本発明のミラー部品の接合面と上記光導波路の光伝送方向の端面とを、上記光導波路のコアを構成する樹脂硬化物と同一の樹脂硬化物により接合する方法が好ましい。当該方法によりミラー付き光導波路を製造することにより、より光損失が小さく高性能な光配線を得ることができる。
【0078】
図10は、本発明のミラー付き光導波路の製造方法の一例を示す概略図(断面図)である。図10の(1)〜(3)は、光導波路のコアを形成する手順を表す。まず、(1)金型13にコアを形成するための光硬化性組成物又は熱硬化性組成物16を注入し、(2)表面にクラッド8bが形成された基板9に転写した後、光照射又は加熱により硬化させ、(3)クラッド8b上にコア8aを形成する。図10の(4)〜(6)は、光導波路に本発明のミラー部品を接合する手順を表す。(4)コアの光伝送方向の両端面にミラー部品1を設置し、(5)ミラー部品1の接合面とコアの端面の間に光硬化性組成物又は熱硬化性組成物を充填し、光照射又は加熱により硬化させて接合させた後(接合材17にて接合する)、最後に、(6)コア、ミラー部品をクラッド8bにより被覆することによって、本発明のミラー付き光導波路が製造される。
【0079】
本発明のミラー部品、ミラー付き光導波路は、特に限定されないが、光通信用途や装飾用途等において利用できる。より具体的には、例えば、携帯機器、FA機器、OA機器、オーディオ機器、車両、LAN等における通信用途、家庭用や工業用の内視鏡等におけるイメージ伝送用途、センサ用途、検査・測定用の照明、美術品等の照明等における光伝送用途、看板、サイン、景観照明等における装飾用途などにおいて用いられる機器・装置の光配線回路や光・電気混載回路等に対して特に好ましく利用できる。
【0080】
[特定構成の光硬化性樹脂組成物又は熱硬化性樹脂組成物]
本発明のミラー部品の導光部並びにハンドリング部、及び光導波路(特に、光導波路のコア)は、上述のように、光硬化性組成物又は熱硬化性組成物の樹脂硬化物により構成されていることが好ましい。上記光硬化性組成物又は熱硬化性組成物は、特に、耐熱性の点で、下記式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物を単独で、若しくはラジカル重合性を有する他の化合物と共にラジカル重合して得られるカチオン重合性樹脂(「カチオン重合性樹脂[i]」と称する場合がある)、又は、下記式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物を単独で、若しくはカチオン重合性を有する他の化合物と共にカチオン重合して得られるラジカル重合性樹脂、又は、下記式(5a)〜(5f)で表される構造(繰り返し単位)のうち少なくとも1つを含有するカチオン重合性樹脂(「カチオン重合性樹脂[ii]」と称する場合がある)を、必須成分として含むことが好ましい。
【0081】
特に、低粘度であり加工性に優れる点で、上記光硬化性組成物又は熱硬化性組成物は、下記式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物を単独で、又はラジカル重合性を有する他の化合物と共にラジカル重合して得られるカチオン重合性樹脂[i]、又は、下記式(5a)〜(5f)で表される構造(繰り返し単位)のうち少なくとも1つを含有するカチオン重合性樹脂[ii]を必須成分として含む光硬化性樹脂組成物又は熱硬化性樹脂組成物(カチオン重合性樹脂組成物)であることが好ましい。なお、上記カチオン重合性樹脂[i]とカチオン重合性樹脂[ii]とは、構造上重複し得るが、少なくとも下記式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物由来の構成単位を有する場合には、カチオン重合性樹脂[i]であるとする。
【0082】
(オキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物)
上記オキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物は、下記式(1)で表される。
【化1】
式(1)中、R1、R2は同一又は異なって水素原子又はアルキル基を示し、Aは炭素数2〜20の直鎖状アルキレン基を示す。
【0083】
式(1)中、R1、R2におけるアルキル基としては、炭素数1〜6のアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基などの直鎖状のC1-6(好ましくはC1-3)アルキル基;イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、s−ペンチル基、t−ペンチル基、イソヘキシル基、s−ヘキシル基、t−ヘキシル基などの分岐鎖状のC1-6(好ましくはC1-3)アルキル基などが挙げられる。上記R1としては、水素原子又はメチル基が好ましく、上記R2としては、メチル基又はエチル基が好ましい。
【0084】
式(1)中、Aは炭素数2〜20の直鎖状アルキレン基を示す。式(1)中のAが炭素数2〜20の直鎖状アルキレン基であることにより、優れた耐熱性と柔軟性とを兼ね備えた硬化物を形成することができる。上記炭素数2〜20の直鎖状アルキレン基は、下記式(a1)で表される。
【化2】
【0085】
式(a1)中のn1は2以上の整数(2〜20の整数)であり、特に好ましくは2〜10の整数である。
【0086】
式(1)で表されるオキセタン含有(メタ)アクリル酸エステル化合物の代表的な例としては、以下の化合物を挙げることができる。
【化3】
【0087】
式(1)で表されるオキセタン含有(メタ)アクリル酸エステル化合物は、例えば、下記式(2)
【化4】
(式(2)中、R2は前記に同じ。Xは脱離基を表す)
で表される化合物と、下記式(3)
【化5】
(式(3)中、Aは前記に同じ)
で表される化合物を、塩基性物質存在下、液相一相系で反応させて下記式(4)
【化6】
(式(4)、R2、Aは前記に同じ)
で表されるオキセタン環含有アルコールを得、得られたオキセタン環含有アルコールを(メタ)アクリル化することにより合成することができる。
【0088】
式(2)中、Xは脱離性基を示し、例えば、塩素、臭素、ヨウ素などのハロゲン原子(中でも、臭素原子、ヨウ素原子が好ましい);p−トルエンスルホニルオキシ基、メタンスルホニルオキシ基、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基等のスルホニルオキシ基;アセチルオキシ基などのカルボニルオキシ基などの脱離性の高い基を挙げることができる。
【0089】
上記塩基性物質としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物;水素化ナトリウム、水素化マグネシウム、水素化カルシウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水素化物;炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属の炭酸塩;有機リチウム試薬(例えば、メチルリチウム、エチルリチウム、n−ブチルリチウム、s−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム等)、有機マグネシウム試薬(グリニャール試薬:例えば、MeMgBr、EtMgBr等)等の有機金属化合物等を挙げることができる。これらは単独で、又は2種以上を混合して使用することができる。
【0090】
上記「液相一相系」とは、液相が2相以上あるものではなく1相のみの場合を意味し、液相が一相であれば固体を含んでいてもよい。上記溶媒としては、式(2)で表される化合物と、式(3)で表される化合物の両方を溶解することができればよく、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素;THF(テトラヒドロフラン)、IPE(イソプロピルエーテル)などのエーテル;DMSO(ジメチルスルホキシド)等の含硫黄系溶媒;DMF(ジメチルホルムアミド)等の含窒素系溶媒等を挙げることができる。
【0091】
(カチオン重合性樹脂[i])
上記カチオン重合性樹脂[i]は、式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物を単独で、又はラジカル重合性を有する他の化合物と共にラジカル重合して得られる。なお、上記「ラジカル重合性を有する他の化合物」とは、ラジカル重合性を有し、上記式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物とは異なる化合物であり、以下、「他のラジカル重合性化合物」と称する場合がある。
【0092】
上記式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物は、1分子内にカチオン重合部位であるオキセタン環と、ラジカル重合部位である(メタ)アクリロイル基を有するため、単独でラジカル重合、又は他のラジカル重合性化合物と共にラジカル共重合することにより、下記式で表されるカチオン重合性樹脂[i]を合成することができる。なお、ラジカル共重合には、ブロック共重合、ランダム共重合等が含まれる。
【化7】
(式中、R1、R2、Aは前記に同じ)
【0093】
上記カチオン重合性樹脂[i]としては、中でも、より柔軟性に優れた硬化物を形成できる点で、上記式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物と他のラジカル重合性化合物をラジカル重合することにより得られる樹脂が好ましく、カチオン重合性樹脂[i]を構成する全モノマーのうち、上記式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物由来のモノマーの占める割合が0.1重量%以上100重量%未満(より好ましくは1〜99重量%、さらに好ましくは10〜80重量%、特に好ましくは10〜50重量%)となる割合で、ラジカル共重合して得られるカチオン重合性樹脂が好ましい。
【0094】
他のラジカル重合性化合物としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリロイルアミノ基、ビニルエーテル基、ビニルアリール基、ビニルオキシカルボニル基等のラジカル重合性基を1分子内に1つ以上有する化合物等を挙げることができる。
【0095】
(メタ)アクリロイル基を1分子内に1つ以上有する化合物としては、例えば、1−ブテン−3−オン、1−ペンテン−3−オン、1−ヘキセン−3−オン、4−フェニル−1−ブテン−3−オン、5−フェニル−1−ペンテン−3−オン等、及びこれらの誘導体等を挙げることができる。
【0096】
(メタ)アクリロイルオキシ基を1分子内に1つ以上有する化合物としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチルメタクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n−ラウリル(メタ)アクリレート、n−ステアリル(メタ)アクリレート、n−ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、2―ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、メタクリル酸、2−メタクリロイロキシエチルコハク酸、2−メタクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−メタクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2−メタクリロイロキシエチルアシッドフォスフェート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、デカンジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピル(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、トリフロロエチル(メタ)アクリレート、パーフロロオクチルエチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、1,1−ビス(アクリロイルオキシ)エチルイソシアネート、2−(2−メタクリロイルオキシエチルオキシ)エチルイソシアネート、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン等、及びこれらの誘導体等を挙げることができる。
【0097】
(メタ)アクリロイルアミノ基を1分子内に1つ以上有する化合物としては、例えば、アクリル酸モルホリン−4−イル、アクリロイルモルホリン、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−プロピルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−ブチルアクリルアミド、N−n−ブトキシメチルアクリルアミド、N−ヘキシルアクリルアミド、N−オクチルアクリルアミド等、及びこれらの誘導体等を挙げることができる。
【0098】
ビニルエーテル基を1分子内に1個以上有する化合物としては、例えば、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、3−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2−ヒドロキシイソプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、3−ヒドロキシブチルビニルエーテル、2−ヒドロキシブチルビニルエーテル、3−ヒドロキシイソブチルビニルエーテル、2−ヒドロキシイソブチルビニルエーテル、1−メチル−3−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、1−メチル−2−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、1−ヒドロキシメチルプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシシクロヘキシルビニルエーテル、1,6−ヘキサンジオールモノビニルエーテル、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、1,3−シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、1,2−シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、p−キシレングリコールモノビニルエーテル、m−キシレングリコールモノビニルエーテル、o−キシレングリコールモノビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、トリエチレングリコールモノビニルエーテル、テトラエチレングリコールモノビニルエーテル、ペンタエチレングリコールモノビニルエーテル、オリゴエチレングリコールモノビニルエーテル、ポリエチレングリコールモノビニルエーテル、ジプロピレングリコールモノビニルエーテル、トリプロピレングリコールモノビニルエーテル、テトラプロピレングリコールモノビニルエーテル、ペンタプロピレングリコールモノビニルエーテル、オリゴプロピレングリコールモノビニルエーテル、ポリプロピレングリコールモノビニルエーテル等、及びこれらの誘導体等を挙げることができる。
【0099】
ビニルアリール基を1分子内に1個以上有する化合物としては、例えば、スチレン、ジビニルベンゼン、メトキシスチレン、エトキシスチレン、ヒドロキシスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、酢酸4−ビニルフェニル、(4−ビニルフェニル)ジヒドロキシボラン、(4−ビニルフェニル)ボラン酸、(4−ビニルフェニル)ボロン酸、4−エテニルフェニルボロン酸、4−ビニルフェニルボラン酸、4−ビニルフェニルボロン酸、p−ビニルフェニルホウ酸、p−ビニルフェニルボロン酸、N−(4−ビニルフェニル)マレインイミド、N−(p−ビニルフェニル)マレイミド、N−(p−ビニルフェニル)マレインイミド等、及びこれらの誘導体等を挙げることができる。
【0100】
ビニルオキシカルボニル基を1分子内に1つ以上有する化合物としては、例えば、ギ酸イソプロペニル、酢酸イソプロペニル、プロピオン酸イソプロペニル、酪酸イソプロペニル、イソ酪酸イソプロペニル、カプロン酸イソプロペニル、吉草酸イソプロペニル、イソ吉草酸イソプロペニル、乳酸イソプロペニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ミリスチン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、シクロヘキサンカルボン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、オクチル酸ビニル、モノクロロ酢酸ビニル、アジピン酸ジビニル、メタクリル酸ビニル、クロトン酸ビニル、ソルビン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニル等、及びこれらの誘導体等を挙げることができる。
【0101】
上記他のラジカル重合性化合物としては、中でも、柔軟性及び耐熱性に優れた硬化物を形成することができる点で、1分子内に(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリロイルアミノ基、ビニルアリール基、ビニルエーテル基、ビニルオキシカルボニル基から選ばれる官能基を1個のみ有する化合物が好ましく、特に、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチルメタクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリロイルオキシ基を1分子内に1個のみ有する化合物が好ましい。これらは単独で、又は2種以上を混合して使用することができる。
【0102】
ラジカル重合反応は、加熱処理及び/又は光照射を行うことにより促進することができる。加熱処理を行う場合、その温度としては、反応に供する成分や触媒の種類などに応じて適宜調製することができ、例えば、20〜200℃が好ましく、より好ましくは50〜150℃、さらに好ましくは70〜120℃程度である。光照射を行う場合、その光源としては、例えば、水銀ランプ、キセノンランプ、カーボンアークランプ、メタルハライドランプ、太陽光、電子線、レーザー光等を使用することができる。また、光照射の後、例えば、50〜180℃程度の温度で加熱処理を施してラジカル重合反応を進行させてもよい。
【0103】
ラジカル重合反応は、通常、溶媒の存在下で行われる。溶媒としては、例えば、1−メトキシ−2−アセトキシプロパン(PGMEA)、ベンゼン、トルエン等を挙げることができる。
【0104】
また、ラジカル重合反応には重合開始剤を使用してもよい。上記重合開始剤としては、公知慣用の熱重合開始剤、光ラジカル重合開始剤などのラジカル重合を起こし得るものを特に限定されることなく使用することができ、例えば、過酸化ベンゾイル、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、2,2'−アゾビス(イソ酪酸)ジメチル等を挙げることができる。
【0105】
ラジカル重合反応における重合開始剤の使用量としては、特に限定されないが、ラジカル重合性化合物(式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物と他のラジカル重合性化合物の総重量)(100重量部)に対して、例えば、0.01〜50重量部が好ましく、より好ましくは0.1〜20重量部である。
【0106】
上記カチオン重合性樹脂[i]の重量平均分子量は、特に限定されないが、500以上(例えば、500〜100万)が好ましく、より好ましくは3000〜50万である。カチオン重合性樹脂[i]の重量平均分子量が上記範囲を外れると、カチオン重合性樹脂組成物を硬化して得られた硬化物の柔軟性が得られにくくなる傾向がある。
【0107】
上記カチオン重合性樹脂[i]の数平均分子量は、特に限定されないが、100以上(例えば、100〜50万)が好ましく、より好ましくは300〜25万である。カチオン重合性樹脂[i]の数平均分子量が上記範囲を外れると、カチオン重合性樹脂組成物[i]を硬化して得られた硬化物の柔軟性が得られにくくなる傾向がある。なお、上記カチオン重合性樹脂[i]の重量平均分子量及び数平均分子量は、例えば、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法により、標準ポリスチレン換算の値として測定することができる。
【0108】
(カチオン重合性樹脂[ii])
上記カチオン重合性樹脂[ii]は、下記式(5a)〜(5f)で表される構造(繰り返し単位)のうち少なくとも1つを含有するカチオン重合性樹脂である。
【化8】
式(5a)〜(5f)において、R3は水素原子又はメチル基を表し、R4〜R6はそれぞれ独立に炭素数1〜5の炭化水素基を示す。また、R7はアルキル基を除く炭素数1〜5の炭化水素基を示す。n2は0〜5の整数であり、n3は1又は2である。
【0109】
R4〜R6における炭素数1〜5の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基などの炭素数1〜5のアルキル基;ビニル基、アリル基、1−ブテニル基などの炭素数2〜5のアルケニル基;エチニル基、プロピニル基などの炭素数2〜5のアルキニル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基などの3〜5員のシクロアルキル基などが挙げられる。上記炭素数1〜5の炭化水素基は、置換基を有していてもよい。
【0110】
R7におけるアルキル基を除く炭素数1〜5の炭化水素基としては、例えば、ビニル基、アリル基、1−ブテニル基などの炭素数2〜5のアルケニル基;エチニル基、プロピニル基などの炭素数2〜5のアルキニル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基などの3〜5員のシクロアルキル基などが挙げられる。上記アルキル基を除く炭素数1〜5の炭化水素基は、置換基を有していてもよい。
【0111】
上記カチオン重合性樹脂[ii]は、特に限定されないが、0℃において液体であることが好ましい。カチオン重合性樹脂[ii]が0℃において液体であると、取扱性に優れるとともに、樹脂硬化物の柔軟性、熱処理後の屈曲性に優れる。
【0112】
上記カチオン重合性樹脂[ii]の重量平均分子量は、特に限定されないが、500〜100万が好ましく、より好ましくは3000〜50万である。また、上記カチオン重合性樹脂[ii]の数平均分子量は、特に限定されないが、100〜50万が好ましく、より好ましくは300〜25万である。重量平均分子量が500以上であると、樹脂硬化物の柔軟性がより向上する。重量平均分子量が500を下回ると、樹脂硬化物の柔軟性が得られにくくなる傾向がある。なお、上記カチオン重合性樹脂[ii]の重量平均分子量及び数平均分子量は、例えば、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法により、標準ポリスチレン換算の値として測定することができる。
【0113】
上記カチオン重合性樹脂[ii]は、上記式(5a)〜(5f)で表される構造のうち、少なくとも1つを有するため、後述の他のカチオン重合性化合物とカチオン重合が可能であり、これにより耐熱性に優れた樹脂硬化物が得られる。
【0114】
上記カチオン重合性樹脂[ii]は、上記式(5a)〜(5f)で表される構造のうち少なくとも1つと、さらに下記式(6)で表される構造(繰り返し単位)を含有していてもよい。式(6)で表される構造を含有すると、樹脂硬化物の柔軟性、熱処理後の屈曲性が向上する場合が多い。式(6)で表される構造は、該構造に対応するモノマー(例えば、上述の(メタ)アクリロイルオキシ基を1分子内に1つ以上有する化合物など)を、式(5a)〜(5f)で表される構造(繰り返し単位)に対応するモノマーと共重合させることにより、カチオン重合性樹脂[ii]中に導入できる。
【化9】
式(6)中、R8は水素原子又はメチル基を示し、R9は置換基を有していてもよい炭素数4以上の炭化水素基を示す。R9における炭素数4以上の炭化水素基としては、例えば、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、これらが2以上結合した基等が挙げられる。
【0115】
脂肪族炭化水素基としては、例えば、ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソオクチル基、2−エチルヘキシル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基等の炭素数4〜20(好ましくは4〜12)のアルキル基;1−ブテニル基、2−ブテニル基、1−ヘキセニル基などの炭素数4〜20(好ましくは4〜12)のアルケニル基;ブチニル基などの炭素数4〜20(好ましくは4〜12)のアルキニル基などが挙げられる。脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基などの4〜20員(好ましくは4〜15員、さらに好ましくは5〜8員)程度のシクロアルキル基;パーヒドロナフタレン−1−イル基、ノルボルニル基、アダマンチル基、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン−3−イル基などの橋かけ環式炭化水素基などが挙げられる。芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ナフチル基などの炭素数6〜14(好ましくは6〜10)程度の芳香族炭化水素基が挙げられる。脂肪族炭化水素基と脂環式炭化水素基とが結合した炭化水素基には、シクロペンチルメチル基、シクロヘキシルメチル基、2−シクロヘキシル基などのシクロアルキル−アルキル基(例えば、C3-20シクロアルキル−C1-4アルキル基など)などが含まれる。また、脂肪族炭化水素基と芳香族炭化水素基とが結合した炭化水素基には、ベンジル基等のアラルキル基(例えば、C7-18アラルキル基など);トリル基などのアルキル置換アリール基(例えば、1〜4個程度のC1-14アルキル基が置換したフェニル基又はナフチル基など)などが含まれる。これらの中でも、特に、炭素数4〜20(好ましくは4〜12)のアルキル基、4〜20員(好ましくは4〜15員)の脂環式炭化水素基、又は上記シクロアルキル−アルキル基、アラルキル基などが好ましい。
【0116】
(カチオン重合性樹脂組成物)
上記カチオン重合性樹脂組成物は、上記カチオン重合性樹脂(カチオン重合性樹脂[i]、カチオン重合性樹脂[ii])を必須成分として含む。以下、上述のカチオン重合性樹脂[i]、カチオン重合性樹脂[ii]を総称して「カチオン重合性樹脂」と称する。上記カチオン重合性樹脂組成物における上記カチオン重合性樹脂の割合(含有量)は、特に限定されないが、5重量%以上が好ましく、実質的にカチオン重合性樹脂組成物が上記カチオン重合性樹脂のみにより構成されていてもよい。中でも、より柔軟性に優れる硬化物を形成できる点で、上記カチオン重合性樹脂の割合は、10〜95重量%が好ましく、より好ましくは40〜95重量%である。上記カチオン重合性樹脂の割合が5重量%を下回ると、カチオン重合により硬化して得られる硬化物の柔軟性が低下する傾向にある。
【0117】
上記カチオン重合性樹脂組成物には、上記カチオン重合性樹脂の他に、カチオン重合性を有する化合物であって、上記式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物とは異なる化合物(以後、「他のカチオン重合性化合物」と称する場合がある)を含有していてもよい。
【0118】
他のカチオン重合性化合物としては、例えば、オキセタン環、エポキシ環、ビニルエーテル基、ビニルアリール基等のカチオン重合性基を1分子内に1個以上有する化合物等を挙げることができる。
【0119】
オキセタン環を1分子内に1個以上有する化合物としては、例えば、3,3−ビス(ビニルオキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−エチル−3−(2−エチルヘキシルオキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−(ヒドロキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−[(フェノキシ)メチル]オキセタン、3−エチル−3−(ヘキシロキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−(クロロメチル)オキセタン、3,3‐ビス(クロルメチル)オキセタン、1,4−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、ビス{[1−エチル(3−オキセタニル)]メチル}エーテル、4,4’−ビス[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシメチル]ビシクロヘキシル、1,4−ビス[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシメチル]シクロヘキサン、1,4−ビス{〔(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ〕メチル}ベンゼン、3−エチル−3{〔(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]メチル}オキセタン等を挙げることができる。
【0120】
エポキシ環を1分子内に1個以上有する化合物としては、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールFジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールSジグリシジルエーテル、エポキシノボラック樹脂、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールFジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールSジグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシルレート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサン−メタ−ジオキサン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシル−3’,4’−エポキシ−6’−メチルシクロヘキサンカルボキシルレート、メチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサン)、ジシクロペンタジエンジエポキサイド、エチレングリコールのジ(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、エチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシルレート)、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジオクチル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ−2−エチルヘキシル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル類;エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の脂肪族多価アルコールに1種または2種以上のアルキレンオキサイドを付加することにより得られるポリエーテルポリオールのポリグリシジルエーテル類;脂肪族長鎖二塩基酸のジグリシジルエステル類;脂肪族高級アルコールのモノグリシジルエーテル類;フェノール、クレゾール、ブチルフェノールまたはこれらにアルキレンオキサイドを付加して得られるポリエーテルアルコールのモノグリシジルエーテル類;高級脂肪酸のグリシジルエステル類等を挙げることができる。
【0121】
ビニルエーテル基を1分子内に1つ以上有する化合物、ビニルアリール基を1分子内に1つ以上有する化合物としては、上記他のラジカル重合性化合物において挙げられた例と同様の例を挙げることができる。
【0122】
上記他のカチオン重合性化合物としては、中でも、光照射により速やかに硬化する点で、3−エチル−3−(2−エチルヘキシルオキシメチル)オキセタン、3,3−ビス(ビニルオキシメチル)オキセタン、1,4−ビス{〔(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ〕メチル}ベンゼン、3−エチル−3{[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]メチル}オキセタン等のオキセタン環を1分子内に1つ以上有する化合物が好ましい。これらは単独で、又は2種以上を混合して使用することができる。
【0123】
上記カチオン重合性樹脂組成物は、より柔軟性に優れる硬化物を形成することができる点で、上記カチオン重合性樹脂と共に他のカチオン重合性化合物を含むことが好ましい。カチオン重合性樹脂と他のカチオン重合性化合物の配合比(前者/後者:重量比)としては、特に限定されないが、95/5〜10/90が好ましく、より好ましくは95/5〜20/80、さらに好ましくは95/5〜45/55である。カチオン重合性樹脂の配合割合が上記範囲を下回ると、得られる硬化物の柔軟性が低下する傾向がある。
【0124】
また、上記カチオン重合性樹脂組成物は、必要に応じて重合開始剤を含有していてもよい。重合開始剤としては、公知慣用のカチオン重合開始剤(熱カチオン重合開始剤、光カチオン重合開始剤)、酸発生剤(熱酸発生剤、光酸発生剤)等のカチオン重合を起こし得るものを特に限定されることなく使用することができる。一般に、上記重合開始剤として、熱カチオン重合開始剤や熱酸発生剤を用いた場合には、上記カチオン重合性樹脂組成物は加熱により硬化する熱硬化性組成物(熱硬化性樹脂組成物)として使用でき、光カチオン重合開始剤や光酸発生剤を用いた場合には、上記カチオン重合性樹脂組成物は光の照射により硬化する光硬化性組成物(光硬化性樹脂組成物)として使用できる。
【0125】
上記重合開始剤としては、例えば、トリアリルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、トリアリールスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート等のスルホニウム塩;ジアリールヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ヨードニウム[4−(4−メチルフェニル−2−メチルプロピル)フェニル]ヘキサフルオロホスフェート等のヨードニウム塩;テトラフルオロホスホニウムヘキサフルオロホスフェート等のホスホニウム塩;ピリジウム塩等を挙げることができる。
【0126】
本発明においては、例えば、商品名「CPI−100P」(光酸発生剤、サンアプロ(株)製)などの市販品を使用することもできる。
【0127】
カチオン重合反応における重合開始剤の使用量としては、カチオン重合性化合物(カチオン重合性樹脂と他のカチオン重合性化合物の総重量)(100重量部)に対して、0.01〜50重量部が好ましく、より好ましくは0.1〜20重量部である。
【0128】
さらに、上記カチオン重合性樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲内で、必要に応じて他の添加物を添加してもよい。他の添加物としては、例えば、硬化膨張性モノマー、光増感剤(アントラセン系増感剤等)、樹脂、密着性向上剤、補強剤、軟化剤、可塑剤、粘度調整剤、溶剤、無機又は有機粒子(ナノスケール粒子等)、フルオロシラン等の公知慣用の各種添加剤を挙げることができる。
【0129】
上記カチオン重合性樹脂組成物としては、例えば、特開2010−280844号公報に記載のカチオン重合性樹脂組成物を使用することもできる。
【0130】
上記光硬化性組成物又は熱硬化性組成物としては、上記カチオン重合性樹脂組成物の他、上述のように、式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物を単独で、又はカチオン重合性を有する他の化合物(他のカチオン重合性化合物)と共にカチオン重合して得られるラジカル重合性樹脂を必須成分として含む光硬化性樹脂組成物又は熱硬化性樹脂組成物(ラジカル重合性樹脂組成物)を用いることもできる。
【0131】
(ラジカル重合性樹脂)
上記ラジカル重合性樹脂は、式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物を単独で、又はカチオン重合性を有する他の化合物(他のカチオン重合性化合物)と共にカチオン重合して得られる。
【0132】
上記式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物は、1分子内にカチオン重合部位であるオキセタン環と、ラジカル重合部位である(メタ)アクリロイル基を有するため、単独でカチオン重合、又は他のカチオン重合性化合物と共にカチオン共重合することにより、下記式で表されるラジカル重合性樹脂を合成することができる。なお、カチオン共重合には、ブロック共重合、ランダム共重合等が含まれる。
【化10】
(式中、R1、R2、Aは上記に同じ)
【0133】
上記ラジカル重合性樹脂としては、中でも、より柔軟性に優れた硬化物を形成できる点で、上記式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物と他のカチオン重合性化合物をカチオン共重合することにより得られるラジカル重合性樹脂が好ましい。特に、ラジカル重合性樹脂を構成する全モノマーのうち、式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物由来のモノマーの占める割合が0.1重量%以上(好ましくは1〜99重量%、特に好ましくは10〜80重量%)となる割合で、カチオン共重合して得られる樹脂が好ましい。
【0134】
他のカチオン重合性化合物としては、例えば、上記カチオン重合性樹脂組成物の項で例示した、オキセタン環、エポキシ環、ビニルエーテル基、ビニルアリール基等のカチオン重合性基を1分子内に1個以上有する化合物等を挙げることができる。
【0135】
上記他のカチオン重合性化合物としては、中でも、柔軟性及び耐熱性に優れた硬化物を形成することができる点で、1分子内にオキセタン環、エポキシ環、ビニルエーテル基、ビニルアリール基から選ばれる官能基を1個のみ有する化合物が好ましく、特に、トリメチレンオキシド、3−エチル−3−(2−エチルヘキシルオキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−[(フェノキシ)メチル]オキセタン、3−エチル−3−(ヘキシロキシメチル)オキセタン等のオキセタン環を1分子内に1個のみ有する化合物、グリシジルメチルエーテル、酪酸(R)−グリシジル等のエポキシ基を1分子内に1個のみ有する化合物等が好ましい。これらは単独で、又は2種以上を混合して使用することができる。
【0136】
カチオン重合反応は、一般に溶媒の存在下で行われる。溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等を挙げることができる。
【0137】
また、カチオン重合反応には重合開始剤を使用してもよい。重合開始剤としては、例えば、カチオン重合性樹脂組成物の項で例示したカチオン重合開始剤、酸発生剤等を用いることができる。
【0138】
カチオン重合反応における重合開始剤の使用量としては、例えば、カチオン重合性化合物(式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物と他のカチオン重合性化合物の総重量)(100重量部)に対して、例えば、0.01〜50重量部が好ましく、より好ましくは0.1〜20重量部である。
【0139】
また、カチオン重合反応は重合禁止剤の存在下で行ってもよい。重合禁止剤としては、例えば、4−メトキシフェノール、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、ジメチルハイドロキノン、トリメチルハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノン、p−t−ブチルカテコール、モノ−t−ブチルハイドロキノン、p−ベンゾキノン、ナフトキノン、2,5−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、α−ナフトール、ニトロフェノール等のキノン・フェノール系禁止剤、チオエーテル系禁止剤、亜リン酸エステル系禁止剤等を挙げることができる。
【0140】
上記ラジカル重合性樹脂の重量平均分子量は、特に限定されないが、500以上(例えば、500〜100万程度)が好ましく、より好ましくは3000〜50万である。ラジカル重合性樹脂の重量平均分子量が上記範囲を下回ると、ラジカル重合して得られる硬化物の柔軟性が低下する傾向がある。なお、上記ラジカル重合性樹脂の重量平均分子量は、例えば、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法により、標準ポリスチレン換算の値として測定することができる。
【0141】
[ラジカル重合性樹脂組成物]
上記ラジカル重合性樹脂組成物は、上記ラジカル重合性樹脂を必須成分として含む。上記ラジカル重合性樹脂組成物における上記ラジカル重合性樹脂の割合(含有量)は、特に限定されないが、5重量%以上が好ましく、実質的にラジカル重合性樹脂組成物が上記ラジカル重合性樹脂のみにより構成されていてもよい。中でも、より柔軟性に優れる硬化物を形成できる点で、上記ラジカル重合性樹脂の割合は、10重量%以上が好ましく、より好ましくは60〜90重量%である。上記ラジカル重合性樹脂の割合が5重量%を下回ると、カチオン重合により硬化して得られる硬化物の柔軟性が低下する傾向にある。
【0142】
上記ラジカル重合性樹脂組成物には、上記ラジカル重合性樹脂の他に、ラジカル重合性を有する化合物であって、上記式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物とは異なる化合物(他のラジカル重合性化合物)を含有していてもよい。
【0143】
他のラジカル重合性化合物としては、例えば、上記カチオン重合性樹脂の項で例示した、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリロイルアミノ基、ビニルアリール基、ビニルエーテル基、ビニルオキシカルボニル基等のラジカル重合性基を1分子内に1つ以上有する化合物等を挙げることができる。
【0144】
上記他のラジカル重合性化合物としては、中でも、より優れた耐熱性を有する硬化物を形成することができる点で、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、デカンジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリロイルオキシ基を2つ以上(特に2つ)有する化合物が好ましい。これらの化合物は単独で、又は2種以上を混合して使用することができる。
【0145】
上記ラジカル重合性樹脂組成物としては、より優れた耐熱性を有する硬化物を形成できる点で、上記ラジカル重合性樹脂と共に他のラジカル重合性化合物を含むことが好ましい。上記ラジカル重合性樹脂と他のラジカル重合性化合物の配合比(前者/後者:重量比)としては、例えば、95/5〜5/95が好ましく、より好ましくは95/5〜20/80、さらに好ましくは95/5〜60/40である。ラジカル重合性樹脂の配合割合が上記範囲を外れると、得られる硬化物の柔軟性が低下する傾向がある。
【0146】
また、上記ラジカル重合性樹脂組成物には重合開始剤を添加してもよいし、添加しなくてもよい。重合開始剤としては、公知慣用の熱ラジカル重合開始剤や光ラジカル重合開始剤などのラジカル重合を起こし得る化合物を特に限定されることなく使用することができる。一般に、上記重合開始剤として、熱ラジカル重合開始剤を用いた場合には、上記ラジカル重合性樹脂組成物は加熱により硬化する熱硬化性組成物(熱硬化性樹脂組成物)として使用でき、光ラジカル重合開始剤を用いた場合には、上記ラジカル重合性樹脂組成物は光の照射により硬化する光硬化性組成物(光硬化性樹脂組成物)として使用できる。
【0147】
上記熱ラジカル重合開始剤としては、例えば、過酸化ベンゾイル、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、2,2'−アゾビス(イソ酪酸)ジメチル等を挙げることができる。熱ラジカル重合開始剤は単独で、又は2種以上を混合して使用することもできる。
【0148】
上記光ラジカル重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、アセトフェノンベンジル、ベンジルジメチルケトン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ジメトキシアセトフェノン、ジメトキシフェニルアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、ジフェニルジサルファイト等を挙げることができる。光ラジカル重合開始剤は単独で、又は2種以上を混合して使用することができる。
【0149】
重合開始剤として光ラジカル重合開始剤を使用する場合、光吸収エネルギーの重合開始遊離基への転換を強めるための相乗剤を添加してもよい。相乗剤としては、例えば、トリエチルアミン、ジエチルアミン、ジエタノールアミン、エタノールアミン、ジメチルアミノ安息香酸、ジメチルアミノ安息香酸メチル等のアミン;チオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、アセチルアセトン等のケトン等を挙げることができる。
【0150】
上記ラジカル重合性樹脂組成物に重合開始剤を添加する場合、その添加量としては、ラジカル重合性樹脂組成物中のラジカル重合性化合物(ラジカル重合性樹脂と他のラジカル重合性化合物の総重量)(100重量部)に対して、0.01〜50重量部が好ましく、より好ましくは0.1〜20重量部である。
【0151】
さらに、上記ラジカル重合性樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲内で、必要に応じて他の添加物を添加してもよい。他の添加物としては、例えば、硬化膨張性モノマー、光増感剤(アントラセン系増感剤等)、樹脂、密着性向上剤、補強剤、軟化剤、可塑剤、粘度調整剤、溶剤、無機又は有機粒子(ナノスケール粒子等)、フルオロシラン等の公知慣用の各種添加剤を挙げることができる。
【実施例】
【0152】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0153】
[光硬化性組成物Aの製造例]
モノマー滴下ライン、開始剤滴下ライン、温度計、還流管、及び攪拌翼を装着した5口フラスコに、1−メトキシ−2−アセトキシプロパン(PGMEA)166.60g、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート(ダイセル化学工業(株)製、「サイクロマーM100」)53.9g(0.27mol)、n−ブチルアクリレート(BA)215.6g(1.68mol)、及びスチレン115.5g(1.11mol)の混合液(モノマー混合液)のうち25%を仕込み、85±1℃に加熱した。次いで、パーブチルPV0.7gとPGMEA7.0gの混合液を投入し、攪拌均一化した後、攪拌しながらモノマー混合液の残り75%と、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)2.50gとPGMEA70.00gの混合液(開始剤溶液1)を送液ポンプで同時に5時間かけて滴下した。滴下終了後ただちに、AIBN1.5gとPGMEA14.00gの混合液(開始剤溶液2)のうち50%を投入し、1時間後に開始剤溶液2の残り50%を投入した。さらに2時間保持した後、40℃以下に冷却することで樹脂組成物を得た。これをPGMEAで2倍に希釈した後、8倍量の60重量%メタノール水溶液で再沈精製を行い、真空乾燥機中(40℃、フルバキューム)で20時間保持することで、無色透明の液状樹脂(1)[3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート−ブチルアクリレート−スチレン共重合体]を得た。
上記液状樹脂(1)のGPCにより測定した分子量は、Mwが45800、Mnが11800であった。また、この液状樹脂(1)は、0℃においても液状のままであった。
液状樹脂(1)60重量部、3,3−ビス(ビニルオキシメチル)オキセタン25重量部、3−エチル−3−(2−エチルヘキシルオキシメチル)オキセタン15重量部、及び「CPI−100P」(サンアプロ(株)製、光重合開始剤)3重量部を混合し、光硬化性組成物Aを得た。
【0154】
[光硬化性組成物Bの製造例]
「EHPE 3150」(ダイセル化学工業(株)製)30重量部、「セロキサイド 2021P」(ダイセル化学工業(株)製)70重量部、及び「CPI−100P」(サンアプロ(株)製、光重合開始剤)3重量部を混合し、光硬化性組成物Bを得た。
【0155】
[光硬化性組成物Cの製造例]
モノマー滴下ライン、開始剤滴下ライン、温度計、還流管、及び攪拌翼を装着した5口フラスコに、PGMEA166.60g、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート(ダイセル化学工業(株)製、「サイクロマーM100」)90.23g(0.46mol)、及びBA294.77g(2.30mol)の混合液(モノマー混合液)のうち25%を仕込み、85±1℃に加熱した。次いで、パーブチルPV0.7gとPGMEA7.0gの混合液を投入し、攪拌均一化した後、攪拌しながらモノマー混合液の残り75%と、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)4.90gとPGMEA70.00gの混合液(開始剤溶液3)を送液ポンプで同時に5時間かけて滴下した。滴下終了後ただちに、AIBN2.8gとPGMEA14.00gの混合液(開始剤溶液4)のうち50%を投入し、1時間後に開始剤溶液4の残り50%を投入した。さらに2時間保持した後、40℃以下に冷却することで樹脂組成物を得た。これをPGMEAで2倍に希釈した後、8倍量の60重量%メタノール水溶液で再沈精製を行い、真空乾燥機中(40℃、フルバキューム)で20時間保持することで、無色透明の液状樹脂(2)[3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート−ブチルアクリレート共重合体]を得た。
上記液状樹脂(2)のGPCにより測定した分子量は、Mnが19800、Mwが55800であった。また、この液状樹脂(2)は、0℃においても液状のままであった。
液状樹脂(2)60重量部、3,3−ビス(ビニルオキシメチル)オキセタン25重量部、3−エチル−3−(2−エチルヘキシルオキシメチル)オキセタン15重量部、及び「CPI−100P」(サンアプロ(株)製、光重合開始剤)3重量部を混合し、光硬化性組成物Cを得た。
【0156】
実施例1
図11に示すパターンが形成できるシリコーン樹脂製の金型(鋳型)に、光硬化性組成物Aを流しこみ、PETフィルムに反転した状態で静置した。この状態で、ベルトコンベアー式紫外線照射装置(商品名「UVC−02516S1AA02」、ウシオ電機(株)製)を用いて紫外線(照射エネルギー:約2J、波長:320〜390nm)を照射し、光硬化性組成物Aを硬化させた後、金型を取り外し、PETフィルム上に導光部パターンを形成した(図11参照)。得られた導光部パターン上に、40μm厚のポリイミドフィルムを載せた後、切り出すことにより、図12に示す構成のミラー部品を作製した。
【0157】
実施例2
光硬化性組成物Aを光硬化性組成物Bに変更した以外は、実施例1と同様にして、図12に示す構成のミラー部品を作製した。
【0158】
実施例3
図13に示すパターンが形成できるシリコーン樹脂製の金型(鋳型)を用いて、光硬化性組成物Aを実施例1と同様の方法で硬化させ、PETフィルム上に導光部パターンを形成した(図13参照)。得られた導光部パターンの表面に、真空蒸着装置(商品名「VPC−410」、(株)アルバック製)を用いて、約100nm厚のアルミニウム膜を蒸着形成した。その後、アルミニウム膜を形成した導光部パターンの上に、アルミニウム膜表面からの厚みが約40μmとなるように光硬化性組成物Cを流しこみ、実施例1と同様の条件で紫外線を照射して、導光部パターン上に保護膜(樹脂硬化物)を形成した。その後、切り出すことにより、図14に示す構成のミラー部品を作製した。
【0159】
実施例4(図8参照)
幅200mm×長さ200mmのサイズのポリイミドフィルム上に、バーコーターを用いて、40μmの厚みとなるように光硬化性組成物Cを塗布した。次いで、実施例1と同様の条件で紫外線を照射することにより、ポリイミドフィルム上に厚み40μmのクラッド層が形成されたクラッドフィルムを得た。次に、図8に示すパターンが形成された型に光硬化性組成物Aを流しこみ、反転させて、先に形成したクラッド層上に静置し、実施例1と同様の条件で紫外線を照射することにより硬化させ、クラッド層上に導光部パターンを形成した。さらに、上記導光部パターンの上に、光硬化性組成物Cを流しこみ、紫外線を照射して、導光部がクラッド層により被覆されたフィルムを作製した。続いて、45°ミラー面を作製したい部分をダイサーで削り、導光部の端面に45°の傾斜を設けた。その後、保護フィルムを貼り付け、切り出すことにより、図8の(7)の1に示す構成のミラー部品を作製した。
【0160】
実施例5(図10、図15参照)
100μm厚みのPETフィルム上に、バーコーターを用いて40μm厚みとなるように光硬化性組成物Cを塗布した。ここに、実施例1と同様の条件で紫外線を照射することにより、PETフィルム上にクラッドが形成されたクラッドフィルムを得た。さらに、上記クラッドの上に、型内の形状が幅40μm×長さ100mm×高さ40μmの矩形であるシリコーン樹脂製の型を用いて、光硬化性組成物Aを硬化させたコアパターンを1本作製した(図15参照)。なお、コアパターン形成時の紫外線の照射条件は、実施例1と同様とした。
次に、上記で作製したコアパターンの両端(光伝送方向の両端)に、実施例1で作製したミラー部品を設置した。コアパターンとミラー部品の隙間に光硬化性組成物Aを流しこみ、紫外線を照射して硬化させた。さらに、PETフィルム上のコアパターンとミラー部品を被覆するように、光硬化性組成物Cをコアパターン上の厚みが約40μmとなるように塗布し、紫外線を照射して硬化させることにより、図10の(6)に示す構成のミラー付き光導波路を作製した。
上記で得たミラー付き光導波路のコアに、波長850nmの光信号を入射させて、ミラー部品の45°ミラー面で反射させ、反対側の45°ミラー面により反射させて出射した光信号を受光した(光路は図2参照)。この時の光損失を測定した。
【0161】
実施例6
実施例1で作製したミラー部品に代えて、実施例2で作製したミラー部品を使用した以外は、実施例5と同様にしてミラー付き光導波路を作製し、同様の方法で光損失を測定した。
【0162】
実施例7
実施例1で作製したミラー部品に代えて、実施例3で作製したミラー部品を使用した以外は、実施例5と同様にしてミラー付き光導波路を作製し、同様の方法で光損失を測定した。
【0163】
【表1】
【符号の説明】
【0164】
1 ミラー部品
2 導光部
3 接合面
4 45°ミラー面
5 ハンドリング部
6 金属膜
7 樹脂硬化物
8 光導波路
8a コア
8b クラッド
9 基板
10 クラッド層
11 樹脂フィルム
12 空気層
13 金型(鋳型)
14 光硬化性組成物又は熱硬化性組成物
15 基材フィルム又は離型フィルム
16 光硬化性組成物又は熱硬化性組成物
17 接合材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光導波路の光伝送方向の端面に接合される光路変換用のミラー部品であって、
内部を光が伝播する導光部と、
前記導光部の内部において光を入射方向と垂直な方向に反射させる45°ミラー面とを少なくとも有し、前記導光部は、
前記45°ミラー面に対向し、光導波路と接合される接合面(第1の面)と、
前記45°ミラー面を形成する第2の面と、
前記45°ミラー面に対向し、光を入射又は出射させる第3の面と
を少なくとも有することを特徴とするミラー部品。
【請求項2】
さらに、前記導光部に固定されたハンドリング部を有する請求項1に記載のミラー部品。
【請求項3】
前記導光部が、光硬化性組成物又は熱硬化性組成物の樹脂硬化物により構成されている請求項1又は2に記載のミラー部品。
【請求項4】
前記45°ミラー面が、前記導光部の第2の面と空気との界面により形成されており、
前記第2の面の上方の空間が樹脂層により被覆されている請求項1〜3のいずれかの項に記載のミラー部品。
【請求項5】
前記45°ミラー面が、前記導光部の第2の面と該第2の面に積層された金属膜との界面により形成されており、
前記金属膜の前記第2の面に対する反対側の表面が樹脂硬化物により被覆されている請求項1〜3のいずれかの項に記載のミラー部品。
【請求項6】
2以上の前記導光部が、それぞれの接合面が同一平面上に位置するように間隔をおいて並列に配置されており、隣り合う導光部と導光部との間には空気層が形成されている請求項4に記載のミラー部品。
【請求項7】
2以上の前記導光部が、それぞれの接合面が同一平面上に位置するように間隔をおいて並列に配置されており、隣り合う導光部と導光部の間には遮光性の樹脂硬化物が充填されている請求項5に記載のミラー部品。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかの項に記載のミラー部品を製造する方法であって、
光硬化性組成物又は熱硬化性組成物を金型に注入した後、光照射又は加熱により硬化させることで導光部を形成する工程と、前記導光部に接合面(第1の面)を形成する工程と、前記導光部に第2の面を形成する工程と、前記導光部に第3の面を形成する工程と、45°ミラー面を形成する工程とを少なくとも含むことを特徴とするミラー部品の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜4、6のいずれかの項に記載のミラー部品を製造する方法であって、
光硬化性組成物又は熱硬化性組成物を金型に注入した後、光照射又は加熱により硬化させて第2の面及び該第2の面と空気との界面により形成された45°ミラー面を有する導光部を形成し、次いで、前記第2の面の上方の空間を樹脂層により被覆する請求項8に記載のミラー部品の製造方法。
【請求項10】
請求項1〜4、6のいずれかの項に記載のミラー部品を製造する方法であって、
光硬化性組成物又は熱硬化性組成物を金型に注入した後、光照射又は加熱により硬化させて成形体を得、その後、該成形体に対し側壁が傾斜面である溝を形成することによって、前記溝の側壁からなる第2の面及び該第2の面と空気との界面により形成された45°ミラー面を有する導光部を形成し、次いで、前記溝を樹脂層により被覆する請求項8に記載のミラー部品の製造方法。
【請求項11】
請求項1〜3、5、7のいずれかの項に記載のミラー部品を製造する方法であって、
光硬化性組成物又は熱硬化性組成物を金型に注入した後、光照射又は加熱により硬化させて第2の面を有する導光部を形成し、次いで、該導光部の少なくとも第2の面を金属膜で被覆して45°ミラー面を形成した後、前記金属膜の表面を樹脂硬化物により被覆する請求項8に記載のミラー部品の製造方法。
【請求項12】
離型性フィルムの離型面上に2以上のミラー部品が連続して配置された形状のパターンが形成されたシートを得、次いで、該シートを切り出すことによって個々のミラー部品を製造する方法であって、
該ミラー部品は、請求項8〜11のいずれかの項に記載の製造方法により製造されたミラー部品であることを特徴とするミラー部品の製造方法。
【請求項13】
光導波路に請求項1〜7のいずれかの項に記載のミラー部品が接合されたミラー付き光導波路であって、
前記ミラー部品の導光部の屈折率と、前記光導波路のコアの屈折率との差が±0.01以内であることを特徴とするミラー付き光導波路。
【請求項14】
前記光導波路のコアが光硬化性組成物又は熱硬化性組成物の樹脂硬化物より構成されたコアであり、前記ミラー部品の接合面と前記光導波路の光伝送方向の端面とが、前記光導波路のコアを構成する樹脂硬化物と同一の樹脂硬化物により接合されている請求項13に記載のミラー付き光導波路。
【請求項15】
光導波路に請求項1〜7のいずれかの項に記載のミラー部品が接合されたミラー付き光導波路の製造方法であって、
前記光導波路として、コアが光硬化性組成物又は熱硬化性組成物の樹脂硬化物より構成された光導波路を用い、
前記ミラー部品の接合面と前記光導波路の光伝送方向の端面とを、前記光導波路のコアを構成する樹脂硬化物と同一の樹脂硬化物により接合することを特徴とするミラー付き光導波路の製造方法。
【請求項1】
光導波路の光伝送方向の端面に接合される光路変換用のミラー部品であって、
内部を光が伝播する導光部と、
前記導光部の内部において光を入射方向と垂直な方向に反射させる45°ミラー面とを少なくとも有し、前記導光部は、
前記45°ミラー面に対向し、光導波路と接合される接合面(第1の面)と、
前記45°ミラー面を形成する第2の面と、
前記45°ミラー面に対向し、光を入射又は出射させる第3の面と
を少なくとも有することを特徴とするミラー部品。
【請求項2】
さらに、前記導光部に固定されたハンドリング部を有する請求項1に記載のミラー部品。
【請求項3】
前記導光部が、光硬化性組成物又は熱硬化性組成物の樹脂硬化物により構成されている請求項1又は2に記載のミラー部品。
【請求項4】
前記45°ミラー面が、前記導光部の第2の面と空気との界面により形成されており、
前記第2の面の上方の空間が樹脂層により被覆されている請求項1〜3のいずれかの項に記載のミラー部品。
【請求項5】
前記45°ミラー面が、前記導光部の第2の面と該第2の面に積層された金属膜との界面により形成されており、
前記金属膜の前記第2の面に対する反対側の表面が樹脂硬化物により被覆されている請求項1〜3のいずれかの項に記載のミラー部品。
【請求項6】
2以上の前記導光部が、それぞれの接合面が同一平面上に位置するように間隔をおいて並列に配置されており、隣り合う導光部と導光部との間には空気層が形成されている請求項4に記載のミラー部品。
【請求項7】
2以上の前記導光部が、それぞれの接合面が同一平面上に位置するように間隔をおいて並列に配置されており、隣り合う導光部と導光部の間には遮光性の樹脂硬化物が充填されている請求項5に記載のミラー部品。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかの項に記載のミラー部品を製造する方法であって、
光硬化性組成物又は熱硬化性組成物を金型に注入した後、光照射又は加熱により硬化させることで導光部を形成する工程と、前記導光部に接合面(第1の面)を形成する工程と、前記導光部に第2の面を形成する工程と、前記導光部に第3の面を形成する工程と、45°ミラー面を形成する工程とを少なくとも含むことを特徴とするミラー部品の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜4、6のいずれかの項に記載のミラー部品を製造する方法であって、
光硬化性組成物又は熱硬化性組成物を金型に注入した後、光照射又は加熱により硬化させて第2の面及び該第2の面と空気との界面により形成された45°ミラー面を有する導光部を形成し、次いで、前記第2の面の上方の空間を樹脂層により被覆する請求項8に記載のミラー部品の製造方法。
【請求項10】
請求項1〜4、6のいずれかの項に記載のミラー部品を製造する方法であって、
光硬化性組成物又は熱硬化性組成物を金型に注入した後、光照射又は加熱により硬化させて成形体を得、その後、該成形体に対し側壁が傾斜面である溝を形成することによって、前記溝の側壁からなる第2の面及び該第2の面と空気との界面により形成された45°ミラー面を有する導光部を形成し、次いで、前記溝を樹脂層により被覆する請求項8に記載のミラー部品の製造方法。
【請求項11】
請求項1〜3、5、7のいずれかの項に記載のミラー部品を製造する方法であって、
光硬化性組成物又は熱硬化性組成物を金型に注入した後、光照射又は加熱により硬化させて第2の面を有する導光部を形成し、次いで、該導光部の少なくとも第2の面を金属膜で被覆して45°ミラー面を形成した後、前記金属膜の表面を樹脂硬化物により被覆する請求項8に記載のミラー部品の製造方法。
【請求項12】
離型性フィルムの離型面上に2以上のミラー部品が連続して配置された形状のパターンが形成されたシートを得、次いで、該シートを切り出すことによって個々のミラー部品を製造する方法であって、
該ミラー部品は、請求項8〜11のいずれかの項に記載の製造方法により製造されたミラー部品であることを特徴とするミラー部品の製造方法。
【請求項13】
光導波路に請求項1〜7のいずれかの項に記載のミラー部品が接合されたミラー付き光導波路であって、
前記ミラー部品の導光部の屈折率と、前記光導波路のコアの屈折率との差が±0.01以内であることを特徴とするミラー付き光導波路。
【請求項14】
前記光導波路のコアが光硬化性組成物又は熱硬化性組成物の樹脂硬化物より構成されたコアであり、前記ミラー部品の接合面と前記光導波路の光伝送方向の端面とが、前記光導波路のコアを構成する樹脂硬化物と同一の樹脂硬化物により接合されている請求項13に記載のミラー付き光導波路。
【請求項15】
光導波路に請求項1〜7のいずれかの項に記載のミラー部品が接合されたミラー付き光導波路の製造方法であって、
前記光導波路として、コアが光硬化性組成物又は熱硬化性組成物の樹脂硬化物より構成された光導波路を用い、
前記ミラー部品の接合面と前記光導波路の光伝送方向の端面とを、前記光導波路のコアを構成する樹脂硬化物と同一の樹脂硬化物により接合することを特徴とするミラー付き光導波路の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2012−163713(P2012−163713A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−23240(P2011−23240)
【出願日】平成23年2月4日(2011.2.4)
【出願人】(000002901)株式会社ダイセル (1,236)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月4日(2011.2.4)
【出願人】(000002901)株式会社ダイセル (1,236)
【Fターム(参考)】
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