説明

メディアコンテンツを受信する可搬式デバイス

可搬式デバイス200、210は電源70、及びサービスプロバイダ100から配信チャネルを介して受け取ったメディアコンテンツを処理する処理システム15、20、25、30、35を有する。制御装置50、60は、電源70の残存容量を導出し、かつ、コンテンツ品目に対して利用可能な配信パラメータについての情報を前記サービスプロバイダ100から受け取る。制御装置は、配信パラメータ及び電源の残存容量に基づいてデバイスの動作持続時間を導出し、かつ、コンテンツの配信のための少なくとも1つの配信パラメータを指定して、サービスプロバイダ100に要求を送る。如何なるフォーマットでサービスプロバイダ100がコンテンツを配信すべきかを指定することにより、可搬式デバイスの処理段20、30及びレンダリング段25、35、並びに受信チェーンにおける電力の節約が実現可能である。配信パラメータの選択は自動的であってもよいし、ユーザの制御下に置かれてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サービスプロバイダからコンテンツ媒体を受信する可搬式デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、移動電話、携帯情報端末(PDA)、可搬式メディアプレーヤ及び可搬式コンピュータ等の可搬式デバイスの用途がますます増加している。可搬式デバイスはそのデバイスに内蔵された電池から電力を得ており、電池が放電されたときには電池を交換したり再充電したりすることが可能である。可搬式デバイスの製造者は、可搬式デバイスに実用的な動作時間をもたらすに十分な容量を有する電池を設けることと、携帯性の妨げとならないようその物理的な寸法及び重量が十分に小さい電池を設けることとの妥協案を見つけようと努力している。
【0003】
可搬式デバイスに追加機能が加えられるにつれて、デバイスの所要電力が増大してきている。無線のストリームコンテンツ(例えば、MPEG-4音声/映像コンテンツなど)の受信又は送信が可能な可搬式デバイスは、電池に対して特に厳しい要求を課す。ビデオコンテンツの符号化及び復号化はプロセッサを集中的に使用し、かつ送信/受信の連鎖をより多く要求する。第3世代(3G)携帯電話の電池寿命はビデオ通話に用いられるとき1時間そこそこに縮められる場合がある。
【0004】
電池技術の進展が電池容量を増大させてきた。しかしながら、デバイスに対して一層高まる要求は、一般に、電池技術の発展速度を上回っている。
【0005】
特許文献1に、標準的な解像度及び高解像度の双方のテレビ放送信号を受信可能なノート型コンピュータが記載されている。コンピュータは可能な視聴持続時間を計算し、それに基づいて2つの信号の一方を選択する。これには、同時に放送される複数のチャネルが必要である。
【特許文献1】米国特許出願公開第2003/0142087号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、限られた電源を使用することによる制約の一部を解決した、可搬式デバイスの制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1態様に係る可搬式デバイスの制御装置は、前記可搬式デバイスが電源、及びサービスプロバイダから配信チャネルを介して受け取ったメディアコンテンツを処理する処理システムを有し、当該制御装置が:
前記電源の残存容量を導出し;
コンテンツ品目に対して利用可能な配信パラメータについての情報を前記サービスプロバイダから受け取り;
前記配信パラメータ及び前記電源の前記残存容量に基づいて前記デバイスの動作持続時間を導出し;かつ
前記動作持続時間の導出に基づいて前記コンテンツの配信のための少なくとも1つの配信パラメータを指定して、前記サービスプロバイダに要求を送る;
ように整えられている。
【0008】
可搬式デバイスは、当該デバイスに利用可能な電力と相性の良い手法でサービスプロバイダがコンテンツを配信することを要求することができる。大容量電池又は新たに再充電された電池を有する可搬式デバイスは高品質のメディアコンテンツを処理可能である。一方、小容量電池又は残存電荷が少ない電池を有する可搬式デバイスはより低い品質のメディアコンテンツを処理できるだけである。可搬式デバイスがその要求をサービスプロバイダに示すので、サービスプロバイダはコンテンツ配信をそのデバイスに適した形態に適合することができる。これにより、サービスプロバイダは同一コンテンツの複数バージョンを同時に送信する必要がないので、バンド幅が節約される。如何なるフォーマットでサービスプロバイダがコンテンツを配信すべきかを指定することにより、可搬式デバイスの処理段階及びレンダリング段階における電力の節約が実現可能である。節約は同時に可搬式デバイスの受信チェーンでも実現可能である。なぜなら、より低いビットレートのストリームを受信することにより、受信チェーンはより少ない電力を消費するからである。電力及び処理の節約は同時にサービスプロバイダにおいても実現される。
【0009】
本発明を利用する可搬式デバイスには、移動電話、携帯情報端末(PDA)、ポータブル音声又はビデオプレーヤ、及びポータブルコンピュータが含まれる。本発明は、例えばローカルエリアネットワーク(LAN)、広域ネットワーク(WAN)又はその他の通信ネットワーク等の、ネットワーク接続を介してサービスプロバイダからコンテンツを受信する可搬式デバイスに最も応用可能である。サービスプロバイダと可搬式デバイスとの間の配信チャネルは狭帯域でも広帯域でもよい。
【0010】
メディアコンテンツは音声、静止画、ビデオ又はこれらの任意の組み合わせを含む。
【0011】
ここで述べられる機能は、ソフトウェア、ハードウェア又はこれらの組み合わせで実施可能である。本発明は幾つかの識別可能な構成要素を有するハードウェア、及び好適にプログラムされたコンピュータによって実施可能である。本発明の他の態様に係るソフトウェアは、電源、及びサービスプロバイダから配信チャネルを介して受け取ったメディアコンテンツを処理する処理システムを有する可搬式デバイスの動作を制御するソフトウェアであって、前記可搬式デバイスのプロセッサに:
前記電源の残存容量を導出するステップ;
コンテンツ品目に対して利用可能な配信パラメータについて前記サービスプロバイダから情報を受け取るステップ;
前記配信パラメータ及び前記電源の残存容量に基づいて当該デバイスの動作持続時間を導出するステップ;及び
前記動作持続時間の導出に基づいて前記コンテンツの配信のための少なくとも1つの配信パラメータを指定して、前記サービスプロバイダに要求を送るステップ;
を実行させるように整えられている。
【0012】
このソフトウェアは可搬式デバイスにその製造時にインストールされてもよいし、機器寿命の間の如何なる時点において機能向上のためにインストールされてもよい。このソフトウェアは電子記憶装置、ハードディスク、光ディスク、又はその他の機械読み取り可能記憶媒体に保存されてもよい。このソフトウェアは機械読み取り可能担体上のコンピュータプログラム製品として届けられてもよいし、ネットワーク接続を介して可搬式デバイスに直接ダウンロードされてもよい。
【0013】
本発明のさらなる態様は、制御装置を組み込んだ可搬式デバイス、可搬式デバイスの動作方法、及び可搬式デバイスへのメディアコンテンツの配信方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1は、コンテンツが可搬式デバイス200、210に配信されるネットワークの一例を示している。コンテンツはサービスプロバイダ100に保存されている。可搬式デバイス200、210はネットワーク300、310、350にわたって為される接続を介してサービスプロバイダ100と交信可能である。無線アクセスネットワークの2つの例が示されている。ネットワーク310は交換局311及び基地局(Base Transceiver Station;BTS)312を備えるセルラーネットワーク、例えばGSM又はUMTSに基づくもの、を表している。ネットワーク350は、ゲートウェイ351を介してネットワーク300に接続する無線ローカルエリアネットワーク(LAN)又はパーソナルエリアネットワーク(PAN)を表している。無線接続355は、例えばIEEE802.11系のプロトコル又はブルートゥース等の、適したフォーマットの如何なるものでもよい。ネットワーク350は、例えば空港やその他の公共スペースにおける無線アクセスポイントを表してもよい。認識されるところであろうが、可搬式デバイス200、210をサービスプロバイダ100に接続するネットワークはその他の多くの形態を取る場合があり、その詳細は本発明にとって重要ではない。
【0015】
図2は、可搬式デバイス200、210の主な機能ブロックを示している。アンテナ10が受信チェーン12及び送信チェーン14に接続している。受信チェーン12は、受信される無線信号の送信周波数及びフォーマットに適した伝統的な同調及び復調回路を含んでいる。逆多重化機能15が、復調データストリームから音声、映像及びその他の制御データを表すデータストリームを復元する。音声データは音声処理ユニット20で処理され、さらに音声レンダリングユニット25によって再生のためにレンダリングされる。音声レンダリングユニット25は一般に、デジタル・アナログ変換段21、増幅器22及びスピーカ23を含む。映像データは映像処理ユニット30で処理され、さらに、ディスプレー32を含む映像レンダリングユニット35によって再生のためにレンダリングされる。音声及び映像処理ユニット20、30の各々は多様な手法でデータを復号することが可能である。音声を例に取ると、音声処理ユニット20は、あり得るビットレート範囲で動作されることが可能な特別な復号器を含むことができる。音声処理ユニットは別々の復号器形式、例えばセルプ(Code Excited Linear Prediction;CELP)及びエーエーシー(Advanced Audio Compression;AAC)、の範囲を提供してもよい。同様に、映像処理ユニット30は映像データビットレートの範囲に対応することができ、別々の復号器形式の範囲を提供することができる。サービスプロバイダから受信されたデータは、メディアコンテンツの配信に利用可能な別々のフォーマットを特定する。このデータは可搬式デバイス200、210とサービスプロバイダ100との間の初期の信号交換の一部として受信され得る。
【0016】
可搬式デバイスに必要な消費電力の削減のために、メディアストリームに対して広範囲の調整が可能である。例えば、固定長のストリーム(例えば、30分の映画)を受信して再生する‘単純な’場合には、映画データを受信する際、及びその後で再生のためにデータを復号しレンダリングする際に電力が消費される。消費電力に直接影響を及ぼす特性例は:
・映像の解像度 − 352×288画素の共通中間フォーマット(CIF)でのレンダリングは176×144画素のクオーター共通中間フォーマット(QCIF)でのレンダリングより多くの電力を必要とする;
・映像フレームレート − 30フレーム/秒(fps)のレンダリングは15fps又は6fpsでのレンダリングより多くの電力を必要とする;
・音声/映像圧縮 − 圧縮アルゴリズムは解凍に対して異なる処理要求を有し、解凍はそのアルゴリズム特有の設定によってさらに影響を受ける;
・品質 − より高い品質(すなわち、滑らかでブロックが生じない)はより多量なデータを必要とするので、より多量の処理を必要とする;
・音声フォーマット − チャネル当たり一定のビットレートを仮定すると、ステレオはモノラルの2倍の処理を必要とする。
【0017】
MPEG-4は音響と映像を再生するための種々のプロファイル及びレベルの範囲を規定している。‘シンプル映像プロファイル’から‘コアスタジオプロファイル’まで及ぶ19個の映像プロファイルと8個の音響プロファイルがある。各々のプロファイルはまた、それに関連する1つ以上の品質レベルを有する。サービスプロバイダ100から受信された、メディアコンテンツはどのフォーマットで利用可能かを明確にする情報は、プロファイル(及びレベル)番号セットの形態をとることができる。例えば映像プロファイル#1等の各プロファイル番号は、可搬式デバイスに理解される映像配信及び再生についてのパラメータセットを表す。インターネット・ストリーミング・メディアアライアンス(ISMA)によって構築された2つのプロファイルの例は以下である:
・ISMAプロファイル0:MPEG-4映像シンプルプロファイル;映像解像度QCIF(176×144画素)最大15fps;高品質音響プロファイル(CELP及び低複雑型AAC);最大データレート64kbps;
・ISMAプロファイル1:MPEG-4映像シンプル又はアドバンスト・シンプルプロファイル;映像解像度CIF(352×288画素)最大30fps;高品質音響プロファイル(CELP及び低複雑型AAC);最大データレート1.5Mbps。
【0018】
サービスプロバイダ100と可搬式デバイス200、210との双方がこれらの表すところを理解可能であれば、その他のプロファイルが定められてもよい。
【0019】
可搬式デバイスの全機能が1つ以上の電池72を有する電源70によって電力供給される。電力監視機能60は電源70の状態を監視し、任意の特定時点での電源残存容量を表す出力信号65を持続時間処理ユニット50に供給する。電力監視機能は、電池の全容量についての情報とともに放電速度についての情報を用い、予期される残存容量を得る。
【0020】
持続時間処理ユニット50はまた、メディアコンテンツを送信するために利用可能なフォーマットについてのデータをサービスプロバイダ100から受信する。持続時間処理ユニット50は、ユーザのための再生選択肢(オプション)の範囲を計算するために、利用可能フォーマット及び電源残存容量についての情報、並びにメモリ55に保存されたデータを使用する。再生選択肢はユーザインターフェイス40に送られる。ユーザインターフェイスはディスプレー32上のオーバーレイ、及びキーパッド(図示せず)を有することができる。各再生選択肢は、電源70の現在の状態が与えられた場合の、可搬式デバイスのその選択肢での動作可能時間の推定結果を含む。ユーザに提示された選択肢の少なくとも1つは、メディアコンテンツ品目の視聴時間を上回る時間にわたってデバイスを動作可能にするものであることが好ましい。この計算のため、持続時間処理ユニット50はサービスプロバイダから受信したコンテンツ品目の全視聴時間についての情報を利用する。持続時間処理ユニット50はユーザから再生選択肢の選択結果を受け取り、送信チェーン14を介してサービスプロバイダ100に要求を送る。この要求は、ユーザによって為された選択に基づいたストリーミング動作のための1つ以上の個々のパラメータ、又はパラメータセットを表すプロファイル(及びレベル)を指定することができる。
【0021】
上述の異なる音声及び映像処理状態の各々は異なる量の電力を消費する。メモリ55に記憶されたデータは持続時間処理ユニット50に異なる音声及び映像状態の範囲に対して推定される再生時間の情報を提供する。好ましくは、この情報は、可搬式デバイス及び電源の実験室試験から得られた出荷時設定データの一部としてメモリ55に記憶される。また一方、そのデータは実際のデバイス性能に基づいて更新されることが望ましい。電源70及び処理回路の製造上の許容差、電池の経時変化、及び温度等の動作環境の要因のために、実際の再生時間は予期された持続時間より短くなることがあり得るので、このことは有益である。
【0022】
図3は、2つの異なる配信/再生プロファイルに対して電池容量(mA時)と時間との関係を示すグラフの一例である。プロファイル#2が20分の推定寿命を示す一方で、プロファイル#1は30分の推定寿命を示している。グラフは、特に、電池がそれらの最低容量に到達するとき、非線形になる場合がある。また、グラフは一定の動作特性を仮定している。可搬式デバイスと使用中の無線基地局との距離の変化のため、伝送経路上で要求される送信電力が変化し、地域をあちこち移動される可搬式デバイスでは、予想より大きい(又は小さい)速度で電力が消費される場合がある。さらに、例えばバックライト付きディスプレー等のその他の特徴も追加の電力を消費することになる。電力が予想より大きい速度で消費されていることが検出された場合には、可搬式デバイスは配信プロファイルの再変更を要求することができる。
【0023】
ユーザインターフェイス40に送られる再生選択肢は大いに簡略化されることが好ましい。例えば、種々の詳細パラメータセット(ビットレート、映像品質、音声品質など)が、‘高品質’、‘中品質’、‘低品質’と題した単純な選択肢セットとして表され得る。
【0024】
メモリ55はまた、可搬式デバイスの性能についての情報を記憶する。これらの性能には、対応されている音声及び映像復号化形式、ディスプレー性能(大きさ、色の深み)、受信チェーン及び復号器が対応し得るビットレートが含まれる。この情報は初期の信号交換の際にサービスプロバイダに送られ得る。
【0025】
図4は、サービスプロバイダ100における機器の第1実施形態の主要部を示している。メディアコンテンツはサーバ130に保存されている。典型的に、サーバ130は記憶装置の配列を有する。サーバ130からのコンテンツ配信は制御器110によって制御される。選択されたコンテンツが処理ユニット150に届けられる。処理ユニット150は音声符号化器151及び映像符号化器152を有する。符号化器ユニット151、152は選択されたコンテンツのデータを制御器110によって指定されたフォーマット要求に従って符号化する。得られたデータストリームはネットワーク300での送信に適した形態に多重化及び変換される。メディアコンテンツは要求に応じて選択できるようにサーバ130に保存され得るが、代わりに生の入力から受け取られ得る。生の入力は、例えば、生のラジオ又はビデオ放送等のことである。使用時、制御器110は、可搬式デバイス200、210から受け取った要求に応じて、同一のコンテンツ品目について異なる配信フォーマットを選択するように処理機能150に命令することができる。新しい配信フォーマットへの変更は可能な限り途切れがないことが好ましい。第1のフォーマットから第2のフォーマットへの制御された移行は、コンテンツ品目内の第2のフォーマットでの配信が開始される箇所と同一箇所で第1のフォーマットでのコンテンツ配信を終了させることによって提供され得る。
【0026】
図5は、サービスプロバイダにおける機器の他の実施形態を示している。データは複数の異なるフォーマットでサーバ130に保存されている。フォーマット群は異なる配信ビットレートに相当する。先と同様に、特定フォーマットのコンテンツの選択は制御器110によって制御される。使用時、制御器110は、可搬式デバイスから受け取った要求に応じて、異なるフォーマットの同一コンテンツ品目を選択可能であり、サーバ130に新しいフォーマットでコンテンツを配信するように命令することができる。2つのバージョンのコンテンツ品目の対応箇所、例えばフレーム番号等、の間の移行を調整することによって、フォーマットの変更は可能な限り途切れがなくされることが好ましい。
【0027】
図6は、可搬式デバイス200、210とサービスプロバイダ100との間の信号伝送を示している。図示されていないが、可搬式デバイスは最初に、選択して利用可能なコンテンツのディレクトリを受け取る。ステップ501にて、可搬式デバイスは特定の映画クリップ(映画クリップ#1)を要求する。可搬式デバイスはまた、その性能についての情報を送信し、クリップ配信に可能な選択肢を要求する。ステップ502にて、サービスプロバイダは利用可能なプロファイルの選択肢を返信する。好ましくは、サービスプロバイダは可搬式デバイスの性能に適合するプロファイル選択肢のみを送信する。ステップ503にて、可搬式デバイスの持続時間処理ユニットが、サービスプロバイダから受信したプロファイル情報を、利用可能な電源についての情報及び記憶データと共に用いて、ユーザに示す再生選択肢セットを得る。ユーザが特定の再生選択肢を選択した時点で、その選択肢が特定のプロファイル(この場合、プロファイル#2)に変換され、ステップ504にて要求プロファイルがサービスプロバイダに要請される。ステップ505にて、サービスプロバイダが選択されたコンテンツを選択されたフォーマットでストリーミングを開始する。選択されたコンテンツの配信及び再生中、可搬式デバイスの持続時間処理ユニット50が利用可能な電源を監視し続ける。利用可能な電源が先に予想されたよりも早く減少する場合には、可能な再生選択肢のさらなる選択がユーザに提示される(ステップ506)、あるいは可搬式デバイスが自動的に最適な選択肢を選択する。この過程は、ストリーム品質及び電池寿命のトレードオフを最適化するために、ストリーミング過程中に多数回繰り返され得る。映画クリップが30分残っているが現在の消費速度での利用可能電力が20分しかない例を考えると、ユーザがクリップ全体を視られることを確実にするため、ストリーミングに調整が為され得る。画面サイズがCIFからQCIFに縮小されることが可能であり、それによって受信及び処理されるデータ量が大幅に減少される。あるいは、映画のフレームレート及びサイズは維持しながら、映画の品質を低下させたり、音声の品質のみを低下させたりすることが可能である。上述のように、電力を削減するための多くの可能性が存在する。
【0028】
ステップ507にて、可搬式デバイスはフォーマット変更、この例ではプロファイル#1への変更、を要求する。ステップ508にて、フォーマット変更の要求を受信して、サービスプロバイダは配信フォーマットを変更するのに適した箇所を特定する。ステップ509にて、サービスプロバイダは新フォーマットでのコンテンツ配信を開始する。ステップ510にて、可搬式デバイスの持続時間処理ユニット50は選択されたフォーマットについて利用可能な再生時間を再計算する。ステップ511にて、ストリーミングが終了する。
【0029】
上述のように、可搬式デバイスはユーザにメディアコンテンツの可能な再生選択肢の範囲を提示する。電池寿命を改善する大抵の手段はメディアコンテンツの再生品質を低下させるものであり、そのため、このトレードオフはユーザの制御下に置かれることが好ましい。また一方で、可搬式デバイスは再生フォーマットを自動的に選択するように整えられてもよい。再生選択肢を自動的に選択する基準は以下とされ得る:
(i)電源が切れる前に、ユーザがコンテンツ品目の全体を視ることを可能とするフォーマットであること。これを実現するため、持続時間処理ユニットはサービスプロバイダから受け取ったコンテンツ品目の全視聴時間についての情報を利用する。可搬式デバイスはユーザがコンテンツ品目全体を視ることを可能にする最適な利用可能フォーマットを選択してもよい;
(ii)最少量の電力を使用し、それにより可搬式デバイスが最大の時間にわたって使用されることを可能にするフォーマットであること。一般的に、これは最低ビットレートを有するフォーマットとなる。
【0030】
フォーマットの自動選択は、プロンプトでユーザの気を散らすこと、これは一部のユーザがうっとうしいと感じることである、を回避することができる。自動選択のためのパラメータは可搬式デバイスのユーザプリファランスの一部としてユーザによって指定されるようにすることができる。ユーザが所定時間内、例えば15秒以内、にユーザインターフェイスで利用可能な選択肢の1つを選択しないとき、デバイスが自動選択に復帰することも可能である。
【0031】
可搬式デバイスの性能がどのようにメモリ55に記憶されるか、及び、例えば最初のやり取り等において、どのようにサービスプロバイダに送信され得るかについて述べる。信号伝送による情報交換、故にバンド幅を低減するため、可搬式デバイスはそれらを完全にリストアップするのではなく、単純に、性能に対応するコードを用意してもよい。あるいは、可搬式デバイスは、例えばURL等のサービスプロバイダが詳細を入手可能な場所をサービスプロバイダに照会させてもよい。可搬式デバイスがその性能についての詳細をサービスプロバイダに与える必要は必ずしもないが、そうすることにより、サービスプロバイダが可搬式デバイスの性能と相性の良い配信選択肢に対応することが可能になる。
【0032】
サービスプロバイダ100は上述では単一の構成要素として示されている。しかしながら、実際には、サービスプロバイダの機能は2以上の場所に分布されていてもよい。特に、最初のやり取りは可搬式デバイス200、210とインターネットストアのフロント又はサービスゲートウェイとの間で行われ、インターネットストアのフロント又はサービスゲートウェイが、その後、コンテンツを配信可能な適当なストリーミングサーバを可搬式デバイスに照会させることが可能である。一般にサーバは負荷を共有するようにして地理的に分布されている。
【0033】
上述の実施形態は本発明を限定するものではなく例示するものである。そして、多くの代わりの実施形態が、請求項の範囲を逸脱することなく、当業者によって設計され得るところである。請求項において、“有する”という用語は請求項に挙げられたもの以外の構成要素又はステップの存在を排除するものではない。幾つかの手段を列挙するシステム、デバイス、又は装置に関する請求項では、これら手段の幾つかは1つ且つ同一のハードウェア品目で統合され得るものである。
【0034】
図面を参照した上述の記載では、電源70、及びサービスプロバイダ100から配信チャネルを介して受け取ったメディアコンテンツを処理する処理システム15、20、25、30、35を有する可搬式デバイスが記載されている。制御装置50、60は電源70の残存容量を導出するとともに、サービスプロバイダ100からコンテンツ品目に対して利用可能な配信パラメータについての情報を受け取る。制御装置はデバイスの動作持続時間を配信パラメータ及び電源残存容量に基づいて導出し、コンテンツ配信のための少なくとも1つの配信パラメータを指定する要求をサービスプロバイダ100に送る。如何なるフォーマットでサービスプロバイダ100がコンテンツを配信すべきかを指定することにより、可搬式デバイスの処理段20、30及びレンダリング段25、35、並びに受信チェーンにおける電力の節約が実現可能である。配信パラメータの選択は自動的であってもよいし、ユーザの制御下に置かれてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明が用いられ得るネットワークを示す図である。
【図2】本発明の実施形態に係る可搬式デバイスを示す図である。
【図3】異なる配信フォーマットについての電力と時間の関係を示すグラフである。
【図4】サービスプロバイダの第1実施形態を示す図である。
【図5】サービスプロバイダの第2実施形態を示す図である。
【図6】可搬式デバイスとサービスプロバイダとの間の信号送信を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可搬式デバイスの制御装置であって、前記可搬式デバイスが電源、及びサービスプロバイダから配信チャネルを介して受け取ったメディアコンテンツを処理する処理システムを有し、当該制御装置が:
前記電源の残存容量を導出し;
コンテンツ品目に対して利用可能な配信パラメータについての情報を前記サービスプロバイダから受け取り;
前記配信パラメータ及び前記電源の前記残存容量に基づいて前記デバイスの動作持続時間を導出し;かつ
前記動作持続時間の導出に基づいて前記コンテンツの配信のための少なくとも1つの配信パラメータを指定して、前記サービスプロバイダに要求を送る;
ように整えられているところの制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の制御装置であって、前記サービスプロバイダから受け取った前記情報が前記メディアコンテンツ品目の継続時間を含み、かつ前記サービスプロバイダに要求を送るステップが、前記可搬式デバイスが前記メディアコンテンツ品目の前記継続時間以上の時間にわたって動作することを可能にするパラメータを送ることを有するところの制御装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の制御装置であって、前記サービスプロバイダから受け取った前記情報が同一のコンテンツ品目に対して複数の選択的配信パラメータを表し、かつ当該制御装置が前記選択的配信パラメータの各々について動作持続時間を導出するように整えられているところの制御装置。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れかに記載の制御装置であって、予期される持続時間についての記憶情報を利用することによって動作持続時間を導出するように整えられている制御装置。
【請求項5】
請求項4に記載の制御装置であって、前記可搬式デバイスの実際の性能に基づいて前記記憶情報を更新するようにさらに整えられている制御装置。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れかに記載の制御装置であって、前記メディアコンテンツの配信に利用可能な選択肢についての情報を前記可搬式デバイスのユーザインターフェイスに送るようにさらに整えられている制御装置。
【請求項7】
請求項6に記載の制御装置であって、当該制御装置が前記ユーザインターフェイスから利用可能な選択肢の選択結果を受け取るようにさらに整えられ、かつ前記サービスプロバイダに要求を送るステップが前記ユーザインターフェイスから受け取った前記選択結果に基づくところの制御装置。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れかに記載の制御装置であって、前記可搬式デバイスの性能についての情報を前記サービスプロバイダに送るようにさらに整えられている制御装置。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れかに記載の制御装置であって、前記配信パラメータが配信データレート、映像品質、映像フォーマット、映像解像度、フレームレート、色の深み及び音声品質の内の少なくとも1つを含むところの制御装置。
【請求項10】
請求項1乃至9の何れかに記載の制御装置であって、前記メディアコンテンツがストリーミング動作によって前記可搬式デバイスに配信されるところの制御装置。
【請求項11】
請求項1乃至10の何れかに記載の制御装置であって、記憶されたユーザプリファランスに基づいて自動的に前記サービスプロバイダに要求を送るように整えられている制御装置。
【請求項12】
請求項1乃至11の何れかに記載の制御装置であって、前記メディアコンテンツの配信中に、前記動作持続時間を導出し、かつ前記サービスプロバイダに要求を送るように整えられている制御装置。
【請求項13】
請求項12に記載の制御装置であって、前記メディアコンテンツの配信中に複数回、前記動作持続時間を導出するように整えられている制御装置。
【請求項14】
電源、サービスプロバイダから配信チャネルを介して受け取ったメディアコンテンツを処理する処理システム、及び請求項1乃至13の何れかに記載の制御装置、を有する可搬式デバイス。
【請求項15】
電源、及びサービスプロバイダから配信チャネルを介して受け取ったメディアコンテンツを処理する処理システムを有する可搬式デバイスの動作方法であって:
前記電源の残存容量を導出するステップ;
コンテンツ品目に対して利用可能な配信パラメータについて前記サービスプロバイダから情報を受け取るステップ;
前記配信パラメータ及び前記電源の残存容量に基づいて前記デバイスの動作持続時間を導出するステップ;及び
前記動作持続時間の導出に基づいて前記コンテンツの配信のための少なくとも1つの配信パラメータを指定して、前記サービスプロバイダに要求を送るステップ;
を有する方法。
【請求項16】
電源、及びサービスプロバイダから配信チャネルを介して受け取ったメディアコンテンツを処理する処理システムを有する可搬式デバイスの動作を制御するソフトウェアであって、前記可搬式デバイスのプロセッサに:
前記電源の残存容量を導出するステップ;
コンテンツ品目に対して利用可能な配信パラメータについて前記サービスプロバイダから情報を受け取るステップ;
前記配信パラメータ及び前記電源の残存容量に基づいて当該デバイスの動作持続時間を導出するステップ;及び
前記動作持続時間の導出に基づいて前記コンテンツの配信のための少なくとも1つの配信パラメータを指定して、前記サービスプロバイダに要求を送るステップ;
を実行させるように整えられているソフトウェア。
【請求項17】
サービスプロバイダから可搬式デバイスにメディアコンテンツを配信する方法であって:
メディアコンテンツ品目に対して利用可能な配信パラメータについて前記可搬式デバイスに情報を送るステップ;
前記コンテンツの配信のための少なくとも1つの配信パラメータを指定した要求を前記可搬式デバイスから受け取るステップであり、前記パラメータが前記配信パラメータ、及び電源の残存容量に基づく前記デバイスの動作持続時間の導出結果に応じて前記可搬式デバイスによって選択されているところの受け取るステップ;及び
要求された前記パラメータを用いて前記可搬式デバイスに前記メディアコンテンツ品目を配信するステップ;
を有する方法。
【請求項18】
請求項17に記載の方法であって、前記可搬式デバイスの性能についての情報を受け取るステップ、及び前記可搬式デバイスの前記性能に適合する配信パラメータについて前記可搬式デバイスに情報を送るステップをさらに有する方法。
【請求項19】
請求項18に記載の方法であって、前記メディアコンテンツの配信中に前記要求が受け取られ、かつ前記サービスプロバイダが前記品目の前記配信パラメータを前記品目の配信中に途中で変更するところの方法。
【請求項20】
請求項19に記載の方法であって、前記メディアコンテンツの配信において要求された前記パラメータを変更する箇所を選定するステップをさらに有する方法。
【請求項21】
請求項20に記載の方法であって、前記箇所が前記メディアコンテンツの配信の乱れが最小になるように選定されるところの方法。
【請求項22】
請求項17乃至21の何れかに記載の方法であって、前記メディアコンテンツ品目を配信するステップがストリーミング動作であるところの方法。
【請求項23】
請求項17乃至22の何れかに記載の方法を実行する装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2007−527660(P2007−527660A)
【公表日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−548543(P2006−548543)
【出願日】平成17年1月11日(2005.1.11)
【国際出願番号】PCT/IB2005/050118
【国際公開番号】WO2005/069108
【国際公開日】平成17年7月28日(2005.7.28)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】