モータ、およびモータ制御装置
【課題】
本発明は永久磁石界磁形の同期タイプのモータと、及びこのモータとインバータを備えた制御システムに関し、高効率運転が出来る特徴とする同期モータ、およびモータ制御装置を提供することにある。
【解決手段】
本発明は電機子巻線を有する複数の突極磁極と、複数の界磁磁極を備えたモータにおいて、各々の突極磁極には第1の電機子巻線又は、第2の電機子巻線が巻かれて、前記第1の電機子巻線の巻線群の突極磁極数と、前記第2の電機子巻線の巻線群の突極磁極数の組み合わせ比を2:1にしたことを特徴とするものである。
【効果】
本発明のモータによれば、開示した突極磁極数と界磁磁極数とのスロットコンビネーションにすることで、コギングトルクの低減を実現した永久磁石界磁形のモータを提供することができる。
本発明は永久磁石界磁形の同期タイプのモータと、及びこのモータとインバータを備えた制御システムに関し、高効率運転が出来る特徴とする同期モータ、およびモータ制御装置を提供することにある。
【解決手段】
本発明は電機子巻線を有する複数の突極磁極と、複数の界磁磁極を備えたモータにおいて、各々の突極磁極には第1の電機子巻線又は、第2の電機子巻線が巻かれて、前記第1の電機子巻線の巻線群の突極磁極数と、前記第2の電機子巻線の巻線群の突極磁極数の組み合わせ比を2:1にしたことを特徴とするものである。
【効果】
本発明のモータによれば、開示した突極磁極数と界磁磁極数とのスロットコンビネーションにすることで、コギングトルクの低減を実現した永久磁石界磁形のモータを提供することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は永久磁石界磁形の同期タイプのモータと、及びこのモータとインバータを備えた制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
永久磁石モータは通常インバータとコントローラなどと組み合わせたモータ制御装置で駆動する。このモータ制御装置は、PWM制御などモータを駆動制御するためのインバータ回路を備え、このインバータ回路の半導体スイッチ素子のON・OFF動作(PWM制御等)により駆動電流を制御している。
【0003】
【特許文献1】特公平8−8764号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
永久磁石モータにおいて、永久磁石は言葉通り永久に磁石の特性が変わらない素晴らしい特徴を持つが、回転数に比例して増加する誘起電圧がシステム構成において制約になる。その誘起電圧対策として、インバータによる弱め界磁制御が実施されているが、この弱め界磁制御にはモータトルクに寄与しない無効電流を多量に流すことになり、効率の低下,発熱,インバータ電流容量の増加など、問題も多い。
【0005】
本発明は回転数に比例して増加する誘起電圧が問題になる永久磁石モータ制御装置において、電機子巻線を多相構造に備えて、要求運転状態に応じて多相インバータの運転モードを替えることで広い運転領域において高効率運転が出来る特徴とする同期モータ、およびモータ制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を達成するために、本発明は電機子巻線を有する複数の突極磁極と、複数の界磁磁極を備えたモータにおいて、各々の突極磁極には第一の電機子巻線又は、第二の電機子巻線が巻かれて、前記第一の電機子巻線の巻線群の突極磁極数と、前記第二の電機子巻線の巻線群の突極磁極数の組み合わせ比を2:1にしたことを特徴とするものである。
【0007】
更に、本発明のモータは、前記界磁磁極と突極磁極を組み合わせて、リニアモータに構成したことを特徴とするものである。
【0008】
また、上記課題を達成するために、本発明は等間隔に配列されたP個の界磁磁極と、電機子巻線を有する突極磁極M個の電機子とを備えたモータにおいて、前記界磁極数Pと前記突極磁極Mの関係を以下の関係にし、P:M=9n±n:9n(但し、nは1以上の整数)前記突極磁極Mの基本ユニットは1m,2m,3m,4m,5m,6m,7m,8m,9m順の9個の突極磁極で構成され、該突極磁極は1mと2m,3m,4mと5m,6m,7mと8m,9mの組み合わせで6個の電機子相を作り、該突極磁極Mの基本ユニットを繰り返して増設されたことを特徴とするものである。
【0009】
更に、本発明のモータは、該突極磁極Mの基本ユニットは1mと2m、4mと5m、7mと8m、の組み合わせによる3相結線、3m,6m,9mによる他の3相結線として構成し、該突極磁極Mの基本ユニットを繰り返して増設することを特徴とするものである。
【0010】
更に、本発明のモータは、前記突極磁極Mの基本ユニットは1mと2m,3m,4mと5m,6m,7mと8m,9mの組み合わせで6個の電機子相として構成し、該突極磁極Mの基本ユニットを繰り返して増設する6相モータとして構成することを特徴とするものである。
【0011】
更に、本発明のモータは前記界磁磁極と突極磁極を組み合わせて、リニアモータに構成したことを特徴とするものである。
【0012】
更に、本発明は複数の電機子巻線を有する突極磁極と、複数の界磁磁極を備えたモータに対して、多重インバータにより駆動させるモータ制御装置において、要求運転状態に応じて前記多重インバータの運転モードを切り替えることを特徴とするものである。
【0013】
また、本発明のモータ制御装置は、前記モータの突極磁極は1mと2m、4mと5m、7mと8m、の組み合わせによる3相結線のインバータと3m,6m,9mによる他の3相結線のインバータとして多重インバータで構成し、要求運転状態に応じてインバータの運転モードを切り替えることを特徴とするものである。
【0014】
また、本発明のモータ制御装置は、モータ,界磁磁極の位置検出装置,多重インバータ,コントローラを組み合わせたサーボ制御システムを構成することを特徴とするものである。
【0015】
また、本発明のモータ制御装置は、前記界磁磁極は永久磁石を備えていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明のモータによれば、開示した突極磁極数と界磁磁極数とのスロットコンビネーションにすることで、コギングトルクの低減を実現した永久磁石界磁形のモータを提供することができる。
【0017】
さらに、本発明のモータ制御装置は、1つの回転子に多重の三相電機子巻線を設け、これらに三相電機子巻線に対応したそれぞれのインバータ回路を個別に接続し、これらの三相電機子巻線に通電する駆動電流を各インバータ回路で個々に制御するシステムを採用することで、モータ回転数が高速領域である弱め界磁領域で、高効率となる巻数の少ない電機子巻線のみを用いることができるため、弱め界磁領域でのモータの運転効率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施例を図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0019】
本発明の第1実施例を図1に基づいて説明する。本実施例のモータは、等間隔に配列されたP個の界磁磁極21と、電機子巻線11を有する突極磁極13をM個備えた電機子とを備え、前記界磁磁極の移動位置に応じて前記電機子巻線電流を制御して動くモータにおいて、前記界磁極数(P)と前記突極極数(M)の関係を、以下の式の関係にする。
【0020】
P:M=9n±n:9n(但し、nは1以上の整数) ・・・・・ 式(1)
この関係式として、突極磁極Mの基本ユニットは1m,2m,3m,4m,5m,6m,7m,8m,9m順の9個突極磁極13で構成され、該突極磁極は1mと2m,3m,4mと5m,6m,7mと8m,9mの組み合わせで6個の電機子相を作り、該突極磁極Mの基本ユニットを繰り返して増設することを特徴とするモータである(ここで、該突極磁極1mは任意に設定し得る)。
【0021】
また、図1において、永久磁石からなる界磁磁極21は8個で構成されているが、式(1)の関係から10個でも良い。永久磁石からなる該界磁磁極21はシャフト12と一体になって突極磁極13の電機子巻線11に流す電流で作られる回転磁界に同期して動く構成になっている。
【0022】
従来技術によると、3相モータの場合に該突極磁極13の磁極数は3の倍数であることが必要であり、6相モータの場合に該突極磁極13の磁極数は6の倍数であることが必要である。本発明は9個の突極磁極で6相モータとして駆動可能であることを示している。又、式(1)に示すような突極磁極13と界磁磁極21の組み合わせによるスロットコンビネーションによりコギングトルク脈動数も大きい。例えば、9個の突極磁極と8個の永久磁石による界磁磁極のスロットコンビネーションではコギングトルク脈動数は72であり、9個の突極磁極と10個の永久磁石による界磁磁極のスロットコンビネーションではコギングトルク脈動数は90である。一般的に、コギングトルク脈動数が大きいほど、コギングトルクの低減効果も大きい。
【0023】
図7に本発明の基本ユニットを複数個組み合わせた実施例を示す。
【0024】
図7において、突極磁極13が18個の場合は、永久磁石からなる界磁磁極21は16個で構成されているが、式(1)に示すように20個でも良い。同じく、突極磁極13が27個の場合は、永久磁石からなる界磁磁極21は24個、又は、30個でも良い。この場合は、突極磁極Mの基本ユニットは1m,2m,3m,4m,5m,6m,7m,8m,9m順の9個突極磁極13で構成され、該突極磁極は1mと2m,3m,4mと5m,6m,7mと8m,9mの組み合わせで6個の電機子相を作り、該突極磁極Mの基本ユニットを繰り返して増設することになる。図7は突極磁極が18個と界磁磁極が16極を示しているが、本発明の突極磁極Mの基本ユニットを2回繰り返して増設した組み合わせになっている。
【0025】
図2に本発明によるモータの電機子巻線結線図を示す。
【0026】
図2のモータの構成では、永久磁石21を備えた回転子は一つだが、該突極磁極は1mと2mがU相、4mと5mがV相、7mと8mがW相、6mはR相、9mはS相、3mはT相の組み合わせで6個の電機子相を作ることを特徴とするモータであり、(U相,V相,W相)による1組UVW3相結線と、(R相,S相,T相)による他の1組のRST3相結線からなる2組の3相結線を合わせた基本ユニットの構成である。
【0027】
図3に本発明によるモータの基本概念を示す。
【0028】
図3において、本発明のモータは6スロット8極モータとしても駆動可能であり、3スロット8極モータとしても駆動可能であることを示している。それらの二つのモータを組み合わせて、8極の回転子20を一つに共通化することで6スロットからなる3相結線と他の3スロットからなる3相結線を合わせて2Y結線にした9スロット8極モータになる概略を示す。また、図3において、U相のU1の突極磁極の電機子巻線とU2の突極磁極の電機子巻線は直列接続による構成例を示している。V相とW相においても、同相の電機子巻線はU相と同じく直列接続であることを示している。
【0029】
図4に本発明によるモータの他の電機子巻線結線図を示す。
【0030】
図4において、UVW相の同相の電機子巻線は並列接続で構成している。例えば各スロット毎の電機子巻線の巻数を同じにして、同相の電機子巻線を直列接続した場合に比べて、並列接続した場合には各相の誘起電圧が約半分になるので、電源回路を含めたシステム構成からこれらの条件に合わせて構成を選択することが可能である。又、9個からなる突極磁極の基本ユニットの各々の突極磁極の電機子巻線の巻数を同じにして、UVW相の同相の電機子巻線を並列接続することで、RST相の誘起電圧に近い値にすることができる。
【0031】
図5に本発明によるモータの他の電機子巻線結線図を示す。
【0032】
図5において、UVW相とRST相は△結線をした例であり、UVW相の同相の電機子巻線を直列接続した組み合わせである。
【0033】
図6に本発明によるモータの他の電機子巻線結線図を示す。
【0034】
図6において、UVW相は△結線をRST相はY結線をした例であり、UVW相の同相の電機子巻線を直列接続した組み合わせであるが、図4に示すように、UVW相の電機子巻線は並列接続でも良い。また、UVW相はY結線、RST相を△結線にする組み合わせも可能である。
【0035】
図8に本発明によるモータの他の電機子巻線結線図を示す。
【0036】
図8において、突極磁極13が18個、永久磁石からなる界磁磁極21は16個の構成で、UVWによる3相結線とRSTによる他の3相結線にした場合に、各相の電機子巻線は直列接続の構成になっている。
【0037】
図8において、界磁磁極21は永久磁石のイメージを示す概略であり、実際の界磁磁極の個数は式(1)に示すように個数に合わせる。他の図面においても同様である。
【0038】
図9において、突極磁極13が18個、永久磁石からなる界磁磁極21は16個の構成で、UVWによる3相結線とRSTによる他の3相結線にした場合に、各相の電機子巻線は並列接続の構成になっている。
【0039】
突極磁極の基本ユニットを複数回繰り返したモータ(図7の場合は突極磁極の基本ユニットを2回繰り返し)は、図4,図5,図6に示すように、Y結線,△結線,直列接続,並列接続の組み合わせをシステム構成の要求仕様に合わせて選択することが可能である。
【0040】
図10に本発明によるモータの他の実施例を示す。
【0041】
図10において、回転子20は外転型であり、電機子巻線11の組み合わせは図1に示す突極磁極の基本ユニットと原理的に同じである。電機子の外周に電機子巻線11を巻回した突極磁極13を備える。電機子10の外周には、等間隔にN,Sに着磁した永久磁石21と磁気回路の磁路として磁束を通すヨークを含めた回転子20が空隙を介して回転可能に支持されている。
【0042】
また、電機子巻線の多重結線においては、Y結線,△結線,直列接続,並列接続の組み合わせをシステム構成の要求仕様に合わせて選択することが可能である。
【0043】
図11に本発明によるモータの他の実施例を示す。
【0044】
図11において、電機子10を一次側、永久磁石からなる部分を二次側として、一定のエアギャップを保つように支持機構(図示せず)で支持され、相対的に移動可能なリニアモータ構造を示す。また、推力むらを低減する目的で電機子の両短部には補助磁極14を備える。
【0045】
また、突極磁極13に巻かれている各電機子巻線11の組み合わせの例として、図11(a)と(b)を示す。図11(b)のように電機子巻線を結線することで、RST相の突極磁極13の磁気回路の左右のバランスが取れて、より安定した走行が可能である。
【0046】
ここで、式(1)で示す突極磁極13と界磁磁極21の相対的な間隔を保つようにして、走行ストロークに合わせて永久磁石の数を増やした構成にすればよい。
【0047】
図12に本発明によるモータの他の実施例を示す。
【0048】
図12において、図11に示したリニアモータの電機子基本ユニット二組を合わせた突極磁極13が18個の構成で、電機子の両短部には補助磁極14を備える。電機子基本ユニットを追加することで推力が増加する。また、円筒型リニアモータにも適用可能である。
【0049】
また、電機子巻線の多重結線においては、回転機と同じくY結線,△結線,直列接続,並列接続の組み合わせをシステム構成の要求仕様に合わせて自由に選択することが可能である。
【0050】
次に、図13に本発明の制御回路システムの基本構成を示す。
【0051】
図13において、電源回路3には第一インバータ1と第二インバータ2が接続され、各インバータにはそれぞれの電機子巻線に接続されている。エンコーダー7は永久磁石の位置(磁極検出)と回転子の回転情報を検出し、ドライブコントローラ5とゲート回路コントローラ6にモータの磁極情報と回転情報を与える。ドライブコントローラ5の指示に従って、ゲート回路コントローラ6より第一インバータ1と第二インバータ2内部のパワー素子をオンオフ制御して、電源回路3から電機子巻線に電流が出入りするようになっている。インバータと電機子巻線の間には電流センサー9を備えて、実負荷電流値をゲート回路コントローラ6にフィードバックして指令電流との差分を制御するようになっている。勿論、ここに述べた駆動回路システムは一例であり、電流センサーレス制御,磁極位置検出センサーレス制御などを適用すれば、電流センサー9,エンコーダー7等は用途によっては省いた構成も採用することが可能である。
【0052】
図14に本発明の制御回路システムの基本構成の一例を示す。
【0053】
図14において、電源回路3には平滑コンデンサ4が接続されて、第一インバータ1と第二インバータ2が接続され、各インバータはそれぞれの電機子巻線に接続されている。図14の例では電圧形インバータの基本構成を示すが、電流形インバータによる制御回路システム構成でも良い。
【0054】
図14において、ブリッジインバータの出力電圧は、直流電圧をEとすれば、±Eの2レベルを出力する基本的なインバータ方式であるが、マルチレベルインバータ方式を用いても良い。マルチレベルインバータ方式とは、直流電圧を複数に分割して、インバータの出力電圧は、その中の一つを選択することで、多レベル値を得ることができる仕組みであり、本発明モータのように多重結線の場合は、要求運転状態に応じて多重インバータの運転モードを切り替える場合に有効である。
【0055】
エンコーダー7は永久磁石の位置(磁極検出)と回転子の回転情報を検出し、ドライブコントローラ5とゲート回路コントローラ6にモータの磁極情報と回転情報を与える。また、本発明のモータをリニアモータに適用した場合は、可動子の位置情報,速度情報の検出手段として、リニアエンコーダーを用いても良い。
【0056】
そして、ドライブコントローラ5の指示に従って、ゲート回路コントローラ6より第一インバータ1と第二インバータ2内部のパワー素子をオンオフ制御して、電源回路3から電機子巻線に電流が出入りするようになっている。また、ドライブコントローラ5は本発明のモータ以外の外部情報を受送信しながら制御回路システム全体の制御も行う。
【0057】
インバータと電機子巻線の間には電流センサー9を備えて、実負荷電流値をゲート回路コントローラ6にピードバックして指令電流との差分を制御するようになっている。勿論、ここに述べた駆動回路システムは一例であり、片方の電流センサーのみの情報量で他方電機子巻線の電流量を換算して制御することも可能である。
【0058】
応用の構成によっては、電流センサーレス制御,磁極位置検出センサーレス制御などを適用すれば、電流センサー9,エンコーダー7等は省いた構成も採用することが可能である。
【0059】
本発明は、1つの回転子に多重の電機子巻線を設け、これらに多相電機子巻線に対応したそれぞれのインバータ回路を個別に接続し、モータの要求運転状態に基づいてこれらの多相電機子巻線に通電する駆動電流を各インバータ回路で個々に制御するシステムである。
【0060】
前記要求運転状態による多重インバータの運転モードの切り替えは、モータトルクとモータ回転数とモータの制御領域らに基づいて行われる。
【0061】
図15に本発明のモータによる駆動パターンの一例を示す。
【0062】
例えば、図1に示す本発明のモータにおいて、9個の突極磁極13に巻かれている電機子巻線11が同じ巻数で巻かれたとすれば、UVW相の誘起電圧はRST相の誘起電圧より約2倍大きい。モータ回転数が低速領域で大トルクを要求する場合は、UVW相のインバータ1とRST相のインバータ2の両方がお互いの最適位相差を保ちながら通電電流を制御して最大トルクを得て、高速領域時は相当たりの巻数が少ないRST相をメインに駆動するように運転モードを設定する。また、中速領域時はUVW相をメインにして駆動しても良い。減速時には、UVW相のインバータ1とRST相のインバータ2の両方がお互いの最適位相差を保ちながら駆動すれば良い。
【0063】
勿論、UVW相の電機子巻線とRST相の電機子巻線の力行制御,回生制御の組み合わせは運転モードに応じて組み合わせれば良い。
【0064】
言い換えれば、モータ回転数が高速回転の時に電機子巻数の少ない結線のみを用いることができるため高効率となり、弱め界磁領域でのモータの運転効率を向上させることができる効果が得られる。
【0065】
また、応用製品によってはUVW相のインバータ1とRST相のインバータ2らに接続する電機子巻線の間に開閉機(図に示せず)を備えて、休止モードの電機子巻線は該開閉機でオンオフすることも可能である。
【0066】
図16に本発明の駆動回路システムの他の実施例を示す。
【0067】
図16は本発明の基本制御回路システムの多重インバータ部分を2組以上拡大した組み合わせであり、ドライブコントローラ5の指示に従って、各々のインバータUVW−Y1,UVW−Y2,RST−Y1,RST−Y2らを統括制御するシステム構成である。このシステムは突極磁極数が多い大型大容量モータの場合に、大型大容量のインバータを用いなくても、複数の小型インバータらを並列に組み合わせることで動作させることを実現している。
【0068】
図17に本発明の回転子断面構造の一例を示す。
【0069】
図17において、(a)は表面磁石型を(b)は埋込磁石型を示し、永久磁石の数は下記に示す界磁極数Pと突極磁極Mの関係を保ちながら構成されている。
【0070】
P:M=9n±n:9n (但し、nは1以上の整数)
図18に本発明の回転子形状のいろいろな構成例を示す。
【0071】
図18はシャフト12に接続された回転子が回る仕組みを示しており、(a)内転型,(b)外転型,(c)アキシャルギャップ型,(d)中空型を示す。例えば、(c)アキシャルギャップ型においては、2組の回転子で電機子10を両側から挟んだ両側式アキシャルギャップ型も可能である。勿論、他の方式も電機子を複数個組み合わせた構成も可能である。
【0072】
以上に説明した本発明の実施例によれば、9個の突極磁極と8個(または10個)の界磁磁極とのスロットコンビネーションにすることで、コギングトルクを低減した効果を有する永久磁石界磁形のモータを提供することができる。
【0073】
さらに、本発明は、1つの回転子に6個の突極磁極と3個の突極磁極で多重の三相電機子巻線を設け、これらに三相電機子巻線に対応したそれぞれのインバータ回路を接続し、モータの要求運転状態に基づいてこれらの三相電機子巻線に通電する駆動電流を各インバータ回路で個々に制御するシステムを提供できる。これにより、モータ回転数が高速領域である弱め界磁領域で、モータ回転数が高速回転の時に高効率となる巻数の少ない電機子巻線のみを用いることができるため、弱め界磁領域でのモータの運転効率を向上させることができる効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明のモータ、およびモータ制御装置によれば、従来使用されてきた永久磁石界磁形の同期タイプのモータ、およびそれらを駆動するモータ制御装置全般に適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明によるモータの基本構成を示す。
【図2】本発明によるモータの電機子巻線結線図を示す。
【図3】本発明によるモータの基本概念を示す。
【図4】本発明によるモータの電機子巻線結線の一例を示す。
【図5】本発明によるモータの電機子巻線結線の一例を示す。
【図6】本発明によるモータの電機子巻線結線の一例を示す。
【図7】本発明の基本ユニットを複数個組み合わせた実施例を示す。
【図8】本発明の基本ユニットを複数個組み合わせた電機子巻線結線図を示す。
【図9】本発明によるモータの電機子巻線結線の一例を示す。
【図10】本発明によるモータの他の実施例(外転型)を示す。
【図11】本発明によるモータの他の実施例(リニアモータ)を示す。
【図12】本発明によるモータの他の実施例(リニアモータ)を示す。
【図13】本発明の制御回路システムの実施例を示す。
【図14】本発明の制御回路システムの他の実施例を示す。
【図15】本発明のモータ駆動パターンの一例を示す。
【図16】本発明の制御回路システムの他の実施例を示す。
【図17】本発明のモータの回転子断面構造の一例を示す。
【図18】本発明のモータの回転子形状の自由度の一例を示す。
【符号の説明】
【0076】
1,2 インバータ
3 電源回路
4 平滑コンデンサ
5 ドライブコントローラ
6 ゲート回路コントローラ
7 エンコーダー
8 負荷
9 電流センサー
10 電機子
11 電機子巻線
12 シャフト
13 突極磁極
14 補助磁極
20 回転子
21 界磁磁極
【技術分野】
【0001】
本発明は永久磁石界磁形の同期タイプのモータと、及びこのモータとインバータを備えた制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
永久磁石モータは通常インバータとコントローラなどと組み合わせたモータ制御装置で駆動する。このモータ制御装置は、PWM制御などモータを駆動制御するためのインバータ回路を備え、このインバータ回路の半導体スイッチ素子のON・OFF動作(PWM制御等)により駆動電流を制御している。
【0003】
【特許文献1】特公平8−8764号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
永久磁石モータにおいて、永久磁石は言葉通り永久に磁石の特性が変わらない素晴らしい特徴を持つが、回転数に比例して増加する誘起電圧がシステム構成において制約になる。その誘起電圧対策として、インバータによる弱め界磁制御が実施されているが、この弱め界磁制御にはモータトルクに寄与しない無効電流を多量に流すことになり、効率の低下,発熱,インバータ電流容量の増加など、問題も多い。
【0005】
本発明は回転数に比例して増加する誘起電圧が問題になる永久磁石モータ制御装置において、電機子巻線を多相構造に備えて、要求運転状態に応じて多相インバータの運転モードを替えることで広い運転領域において高効率運転が出来る特徴とする同期モータ、およびモータ制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を達成するために、本発明は電機子巻線を有する複数の突極磁極と、複数の界磁磁極を備えたモータにおいて、各々の突極磁極には第一の電機子巻線又は、第二の電機子巻線が巻かれて、前記第一の電機子巻線の巻線群の突極磁極数と、前記第二の電機子巻線の巻線群の突極磁極数の組み合わせ比を2:1にしたことを特徴とするものである。
【0007】
更に、本発明のモータは、前記界磁磁極と突極磁極を組み合わせて、リニアモータに構成したことを特徴とするものである。
【0008】
また、上記課題を達成するために、本発明は等間隔に配列されたP個の界磁磁極と、電機子巻線を有する突極磁極M個の電機子とを備えたモータにおいて、前記界磁極数Pと前記突極磁極Mの関係を以下の関係にし、P:M=9n±n:9n(但し、nは1以上の整数)前記突極磁極Mの基本ユニットは1m,2m,3m,4m,5m,6m,7m,8m,9m順の9個の突極磁極で構成され、該突極磁極は1mと2m,3m,4mと5m,6m,7mと8m,9mの組み合わせで6個の電機子相を作り、該突極磁極Mの基本ユニットを繰り返して増設されたことを特徴とするものである。
【0009】
更に、本発明のモータは、該突極磁極Mの基本ユニットは1mと2m、4mと5m、7mと8m、の組み合わせによる3相結線、3m,6m,9mによる他の3相結線として構成し、該突極磁極Mの基本ユニットを繰り返して増設することを特徴とするものである。
【0010】
更に、本発明のモータは、前記突極磁極Mの基本ユニットは1mと2m,3m,4mと5m,6m,7mと8m,9mの組み合わせで6個の電機子相として構成し、該突極磁極Mの基本ユニットを繰り返して増設する6相モータとして構成することを特徴とするものである。
【0011】
更に、本発明のモータは前記界磁磁極と突極磁極を組み合わせて、リニアモータに構成したことを特徴とするものである。
【0012】
更に、本発明は複数の電機子巻線を有する突極磁極と、複数の界磁磁極を備えたモータに対して、多重インバータにより駆動させるモータ制御装置において、要求運転状態に応じて前記多重インバータの運転モードを切り替えることを特徴とするものである。
【0013】
また、本発明のモータ制御装置は、前記モータの突極磁極は1mと2m、4mと5m、7mと8m、の組み合わせによる3相結線のインバータと3m,6m,9mによる他の3相結線のインバータとして多重インバータで構成し、要求運転状態に応じてインバータの運転モードを切り替えることを特徴とするものである。
【0014】
また、本発明のモータ制御装置は、モータ,界磁磁極の位置検出装置,多重インバータ,コントローラを組み合わせたサーボ制御システムを構成することを特徴とするものである。
【0015】
また、本発明のモータ制御装置は、前記界磁磁極は永久磁石を備えていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明のモータによれば、開示した突極磁極数と界磁磁極数とのスロットコンビネーションにすることで、コギングトルクの低減を実現した永久磁石界磁形のモータを提供することができる。
【0017】
さらに、本発明のモータ制御装置は、1つの回転子に多重の三相電機子巻線を設け、これらに三相電機子巻線に対応したそれぞれのインバータ回路を個別に接続し、これらの三相電機子巻線に通電する駆動電流を各インバータ回路で個々に制御するシステムを採用することで、モータ回転数が高速領域である弱め界磁領域で、高効率となる巻数の少ない電機子巻線のみを用いることができるため、弱め界磁領域でのモータの運転効率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施例を図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0019】
本発明の第1実施例を図1に基づいて説明する。本実施例のモータは、等間隔に配列されたP個の界磁磁極21と、電機子巻線11を有する突極磁極13をM個備えた電機子とを備え、前記界磁磁極の移動位置に応じて前記電機子巻線電流を制御して動くモータにおいて、前記界磁極数(P)と前記突極極数(M)の関係を、以下の式の関係にする。
【0020】
P:M=9n±n:9n(但し、nは1以上の整数) ・・・・・ 式(1)
この関係式として、突極磁極Mの基本ユニットは1m,2m,3m,4m,5m,6m,7m,8m,9m順の9個突極磁極13で構成され、該突極磁極は1mと2m,3m,4mと5m,6m,7mと8m,9mの組み合わせで6個の電機子相を作り、該突極磁極Mの基本ユニットを繰り返して増設することを特徴とするモータである(ここで、該突極磁極1mは任意に設定し得る)。
【0021】
また、図1において、永久磁石からなる界磁磁極21は8個で構成されているが、式(1)の関係から10個でも良い。永久磁石からなる該界磁磁極21はシャフト12と一体になって突極磁極13の電機子巻線11に流す電流で作られる回転磁界に同期して動く構成になっている。
【0022】
従来技術によると、3相モータの場合に該突極磁極13の磁極数は3の倍数であることが必要であり、6相モータの場合に該突極磁極13の磁極数は6の倍数であることが必要である。本発明は9個の突極磁極で6相モータとして駆動可能であることを示している。又、式(1)に示すような突極磁極13と界磁磁極21の組み合わせによるスロットコンビネーションによりコギングトルク脈動数も大きい。例えば、9個の突極磁極と8個の永久磁石による界磁磁極のスロットコンビネーションではコギングトルク脈動数は72であり、9個の突極磁極と10個の永久磁石による界磁磁極のスロットコンビネーションではコギングトルク脈動数は90である。一般的に、コギングトルク脈動数が大きいほど、コギングトルクの低減効果も大きい。
【0023】
図7に本発明の基本ユニットを複数個組み合わせた実施例を示す。
【0024】
図7において、突極磁極13が18個の場合は、永久磁石からなる界磁磁極21は16個で構成されているが、式(1)に示すように20個でも良い。同じく、突極磁極13が27個の場合は、永久磁石からなる界磁磁極21は24個、又は、30個でも良い。この場合は、突極磁極Mの基本ユニットは1m,2m,3m,4m,5m,6m,7m,8m,9m順の9個突極磁極13で構成され、該突極磁極は1mと2m,3m,4mと5m,6m,7mと8m,9mの組み合わせで6個の電機子相を作り、該突極磁極Mの基本ユニットを繰り返して増設することになる。図7は突極磁極が18個と界磁磁極が16極を示しているが、本発明の突極磁極Mの基本ユニットを2回繰り返して増設した組み合わせになっている。
【0025】
図2に本発明によるモータの電機子巻線結線図を示す。
【0026】
図2のモータの構成では、永久磁石21を備えた回転子は一つだが、該突極磁極は1mと2mがU相、4mと5mがV相、7mと8mがW相、6mはR相、9mはS相、3mはT相の組み合わせで6個の電機子相を作ることを特徴とするモータであり、(U相,V相,W相)による1組UVW3相結線と、(R相,S相,T相)による他の1組のRST3相結線からなる2組の3相結線を合わせた基本ユニットの構成である。
【0027】
図3に本発明によるモータの基本概念を示す。
【0028】
図3において、本発明のモータは6スロット8極モータとしても駆動可能であり、3スロット8極モータとしても駆動可能であることを示している。それらの二つのモータを組み合わせて、8極の回転子20を一つに共通化することで6スロットからなる3相結線と他の3スロットからなる3相結線を合わせて2Y結線にした9スロット8極モータになる概略を示す。また、図3において、U相のU1の突極磁極の電機子巻線とU2の突極磁極の電機子巻線は直列接続による構成例を示している。V相とW相においても、同相の電機子巻線はU相と同じく直列接続であることを示している。
【0029】
図4に本発明によるモータの他の電機子巻線結線図を示す。
【0030】
図4において、UVW相の同相の電機子巻線は並列接続で構成している。例えば各スロット毎の電機子巻線の巻数を同じにして、同相の電機子巻線を直列接続した場合に比べて、並列接続した場合には各相の誘起電圧が約半分になるので、電源回路を含めたシステム構成からこれらの条件に合わせて構成を選択することが可能である。又、9個からなる突極磁極の基本ユニットの各々の突極磁極の電機子巻線の巻数を同じにして、UVW相の同相の電機子巻線を並列接続することで、RST相の誘起電圧に近い値にすることができる。
【0031】
図5に本発明によるモータの他の電機子巻線結線図を示す。
【0032】
図5において、UVW相とRST相は△結線をした例であり、UVW相の同相の電機子巻線を直列接続した組み合わせである。
【0033】
図6に本発明によるモータの他の電機子巻線結線図を示す。
【0034】
図6において、UVW相は△結線をRST相はY結線をした例であり、UVW相の同相の電機子巻線を直列接続した組み合わせであるが、図4に示すように、UVW相の電機子巻線は並列接続でも良い。また、UVW相はY結線、RST相を△結線にする組み合わせも可能である。
【0035】
図8に本発明によるモータの他の電機子巻線結線図を示す。
【0036】
図8において、突極磁極13が18個、永久磁石からなる界磁磁極21は16個の構成で、UVWによる3相結線とRSTによる他の3相結線にした場合に、各相の電機子巻線は直列接続の構成になっている。
【0037】
図8において、界磁磁極21は永久磁石のイメージを示す概略であり、実際の界磁磁極の個数は式(1)に示すように個数に合わせる。他の図面においても同様である。
【0038】
図9において、突極磁極13が18個、永久磁石からなる界磁磁極21は16個の構成で、UVWによる3相結線とRSTによる他の3相結線にした場合に、各相の電機子巻線は並列接続の構成になっている。
【0039】
突極磁極の基本ユニットを複数回繰り返したモータ(図7の場合は突極磁極の基本ユニットを2回繰り返し)は、図4,図5,図6に示すように、Y結線,△結線,直列接続,並列接続の組み合わせをシステム構成の要求仕様に合わせて選択することが可能である。
【0040】
図10に本発明によるモータの他の実施例を示す。
【0041】
図10において、回転子20は外転型であり、電機子巻線11の組み合わせは図1に示す突極磁極の基本ユニットと原理的に同じである。電機子の外周に電機子巻線11を巻回した突極磁極13を備える。電機子10の外周には、等間隔にN,Sに着磁した永久磁石21と磁気回路の磁路として磁束を通すヨークを含めた回転子20が空隙を介して回転可能に支持されている。
【0042】
また、電機子巻線の多重結線においては、Y結線,△結線,直列接続,並列接続の組み合わせをシステム構成の要求仕様に合わせて選択することが可能である。
【0043】
図11に本発明によるモータの他の実施例を示す。
【0044】
図11において、電機子10を一次側、永久磁石からなる部分を二次側として、一定のエアギャップを保つように支持機構(図示せず)で支持され、相対的に移動可能なリニアモータ構造を示す。また、推力むらを低減する目的で電機子の両短部には補助磁極14を備える。
【0045】
また、突極磁極13に巻かれている各電機子巻線11の組み合わせの例として、図11(a)と(b)を示す。図11(b)のように電機子巻線を結線することで、RST相の突極磁極13の磁気回路の左右のバランスが取れて、より安定した走行が可能である。
【0046】
ここで、式(1)で示す突極磁極13と界磁磁極21の相対的な間隔を保つようにして、走行ストロークに合わせて永久磁石の数を増やした構成にすればよい。
【0047】
図12に本発明によるモータの他の実施例を示す。
【0048】
図12において、図11に示したリニアモータの電機子基本ユニット二組を合わせた突極磁極13が18個の構成で、電機子の両短部には補助磁極14を備える。電機子基本ユニットを追加することで推力が増加する。また、円筒型リニアモータにも適用可能である。
【0049】
また、電機子巻線の多重結線においては、回転機と同じくY結線,△結線,直列接続,並列接続の組み合わせをシステム構成の要求仕様に合わせて自由に選択することが可能である。
【0050】
次に、図13に本発明の制御回路システムの基本構成を示す。
【0051】
図13において、電源回路3には第一インバータ1と第二インバータ2が接続され、各インバータにはそれぞれの電機子巻線に接続されている。エンコーダー7は永久磁石の位置(磁極検出)と回転子の回転情報を検出し、ドライブコントローラ5とゲート回路コントローラ6にモータの磁極情報と回転情報を与える。ドライブコントローラ5の指示に従って、ゲート回路コントローラ6より第一インバータ1と第二インバータ2内部のパワー素子をオンオフ制御して、電源回路3から電機子巻線に電流が出入りするようになっている。インバータと電機子巻線の間には電流センサー9を備えて、実負荷電流値をゲート回路コントローラ6にフィードバックして指令電流との差分を制御するようになっている。勿論、ここに述べた駆動回路システムは一例であり、電流センサーレス制御,磁極位置検出センサーレス制御などを適用すれば、電流センサー9,エンコーダー7等は用途によっては省いた構成も採用することが可能である。
【0052】
図14に本発明の制御回路システムの基本構成の一例を示す。
【0053】
図14において、電源回路3には平滑コンデンサ4が接続されて、第一インバータ1と第二インバータ2が接続され、各インバータはそれぞれの電機子巻線に接続されている。図14の例では電圧形インバータの基本構成を示すが、電流形インバータによる制御回路システム構成でも良い。
【0054】
図14において、ブリッジインバータの出力電圧は、直流電圧をEとすれば、±Eの2レベルを出力する基本的なインバータ方式であるが、マルチレベルインバータ方式を用いても良い。マルチレベルインバータ方式とは、直流電圧を複数に分割して、インバータの出力電圧は、その中の一つを選択することで、多レベル値を得ることができる仕組みであり、本発明モータのように多重結線の場合は、要求運転状態に応じて多重インバータの運転モードを切り替える場合に有効である。
【0055】
エンコーダー7は永久磁石の位置(磁極検出)と回転子の回転情報を検出し、ドライブコントローラ5とゲート回路コントローラ6にモータの磁極情報と回転情報を与える。また、本発明のモータをリニアモータに適用した場合は、可動子の位置情報,速度情報の検出手段として、リニアエンコーダーを用いても良い。
【0056】
そして、ドライブコントローラ5の指示に従って、ゲート回路コントローラ6より第一インバータ1と第二インバータ2内部のパワー素子をオンオフ制御して、電源回路3から電機子巻線に電流が出入りするようになっている。また、ドライブコントローラ5は本発明のモータ以外の外部情報を受送信しながら制御回路システム全体の制御も行う。
【0057】
インバータと電機子巻線の間には電流センサー9を備えて、実負荷電流値をゲート回路コントローラ6にピードバックして指令電流との差分を制御するようになっている。勿論、ここに述べた駆動回路システムは一例であり、片方の電流センサーのみの情報量で他方電機子巻線の電流量を換算して制御することも可能である。
【0058】
応用の構成によっては、電流センサーレス制御,磁極位置検出センサーレス制御などを適用すれば、電流センサー9,エンコーダー7等は省いた構成も採用することが可能である。
【0059】
本発明は、1つの回転子に多重の電機子巻線を設け、これらに多相電機子巻線に対応したそれぞれのインバータ回路を個別に接続し、モータの要求運転状態に基づいてこれらの多相電機子巻線に通電する駆動電流を各インバータ回路で個々に制御するシステムである。
【0060】
前記要求運転状態による多重インバータの運転モードの切り替えは、モータトルクとモータ回転数とモータの制御領域らに基づいて行われる。
【0061】
図15に本発明のモータによる駆動パターンの一例を示す。
【0062】
例えば、図1に示す本発明のモータにおいて、9個の突極磁極13に巻かれている電機子巻線11が同じ巻数で巻かれたとすれば、UVW相の誘起電圧はRST相の誘起電圧より約2倍大きい。モータ回転数が低速領域で大トルクを要求する場合は、UVW相のインバータ1とRST相のインバータ2の両方がお互いの最適位相差を保ちながら通電電流を制御して最大トルクを得て、高速領域時は相当たりの巻数が少ないRST相をメインに駆動するように運転モードを設定する。また、中速領域時はUVW相をメインにして駆動しても良い。減速時には、UVW相のインバータ1とRST相のインバータ2の両方がお互いの最適位相差を保ちながら駆動すれば良い。
【0063】
勿論、UVW相の電機子巻線とRST相の電機子巻線の力行制御,回生制御の組み合わせは運転モードに応じて組み合わせれば良い。
【0064】
言い換えれば、モータ回転数が高速回転の時に電機子巻数の少ない結線のみを用いることができるため高効率となり、弱め界磁領域でのモータの運転効率を向上させることができる効果が得られる。
【0065】
また、応用製品によってはUVW相のインバータ1とRST相のインバータ2らに接続する電機子巻線の間に開閉機(図に示せず)を備えて、休止モードの電機子巻線は該開閉機でオンオフすることも可能である。
【0066】
図16に本発明の駆動回路システムの他の実施例を示す。
【0067】
図16は本発明の基本制御回路システムの多重インバータ部分を2組以上拡大した組み合わせであり、ドライブコントローラ5の指示に従って、各々のインバータUVW−Y1,UVW−Y2,RST−Y1,RST−Y2らを統括制御するシステム構成である。このシステムは突極磁極数が多い大型大容量モータの場合に、大型大容量のインバータを用いなくても、複数の小型インバータらを並列に組み合わせることで動作させることを実現している。
【0068】
図17に本発明の回転子断面構造の一例を示す。
【0069】
図17において、(a)は表面磁石型を(b)は埋込磁石型を示し、永久磁石の数は下記に示す界磁極数Pと突極磁極Mの関係を保ちながら構成されている。
【0070】
P:M=9n±n:9n (但し、nは1以上の整数)
図18に本発明の回転子形状のいろいろな構成例を示す。
【0071】
図18はシャフト12に接続された回転子が回る仕組みを示しており、(a)内転型,(b)外転型,(c)アキシャルギャップ型,(d)中空型を示す。例えば、(c)アキシャルギャップ型においては、2組の回転子で電機子10を両側から挟んだ両側式アキシャルギャップ型も可能である。勿論、他の方式も電機子を複数個組み合わせた構成も可能である。
【0072】
以上に説明した本発明の実施例によれば、9個の突極磁極と8個(または10個)の界磁磁極とのスロットコンビネーションにすることで、コギングトルクを低減した効果を有する永久磁石界磁形のモータを提供することができる。
【0073】
さらに、本発明は、1つの回転子に6個の突極磁極と3個の突極磁極で多重の三相電機子巻線を設け、これらに三相電機子巻線に対応したそれぞれのインバータ回路を接続し、モータの要求運転状態に基づいてこれらの三相電機子巻線に通電する駆動電流を各インバータ回路で個々に制御するシステムを提供できる。これにより、モータ回転数が高速領域である弱め界磁領域で、モータ回転数が高速回転の時に高効率となる巻数の少ない電機子巻線のみを用いることができるため、弱め界磁領域でのモータの運転効率を向上させることができる効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明のモータ、およびモータ制御装置によれば、従来使用されてきた永久磁石界磁形の同期タイプのモータ、およびそれらを駆動するモータ制御装置全般に適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明によるモータの基本構成を示す。
【図2】本発明によるモータの電機子巻線結線図を示す。
【図3】本発明によるモータの基本概念を示す。
【図4】本発明によるモータの電機子巻線結線の一例を示す。
【図5】本発明によるモータの電機子巻線結線の一例を示す。
【図6】本発明によるモータの電機子巻線結線の一例を示す。
【図7】本発明の基本ユニットを複数個組み合わせた実施例を示す。
【図8】本発明の基本ユニットを複数個組み合わせた電機子巻線結線図を示す。
【図9】本発明によるモータの電機子巻線結線の一例を示す。
【図10】本発明によるモータの他の実施例(外転型)を示す。
【図11】本発明によるモータの他の実施例(リニアモータ)を示す。
【図12】本発明によるモータの他の実施例(リニアモータ)を示す。
【図13】本発明の制御回路システムの実施例を示す。
【図14】本発明の制御回路システムの他の実施例を示す。
【図15】本発明のモータ駆動パターンの一例を示す。
【図16】本発明の制御回路システムの他の実施例を示す。
【図17】本発明のモータの回転子断面構造の一例を示す。
【図18】本発明のモータの回転子形状の自由度の一例を示す。
【符号の説明】
【0076】
1,2 インバータ
3 電源回路
4 平滑コンデンサ
5 ドライブコントローラ
6 ゲート回路コントローラ
7 エンコーダー
8 負荷
9 電流センサー
10 電機子
11 電機子巻線
12 シャフト
13 突極磁極
14 補助磁極
20 回転子
21 界磁磁極
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電機子巻線を有する複数の突極磁極と、
複数の界磁磁極を備えたモータにおいて、
各々の突極磁極には第一の電機子巻線又は、
第二の電機子巻線が巻かれて、
前記第一の電機子巻線の巻線群の突極磁極数と、前記第二の電機子巻線の巻線群の突極磁極数の組み合わせ比を2:1にしたことを特徴とするモータ。
【請求項2】
請求項1において、
前記界磁磁極と突極磁極を組み合わせて、リニアモータに構成したことを特徴とするモータ。
【請求項3】
等間隔に配列されたP個の界磁磁極と、
電機子巻線を有する突極磁極M個の電機子とを備えたモータにおいて、
前記界磁極数Pと前記突極磁極Mの関係を以下の関係にし、
P:M=9n±n:9n (但し、nは1以上の整数)
前記突極磁極Mの基本ユニットは1m,2m,3m,4m,5m,6m,7m,8m,9m順の9個の突極磁極で構成され、該突極磁極は1mと2m,3m,4mと5m,6m,7mと8m,9mの組み合わせで6個の電機子相を作り、該突極磁極Mの基本ユニットを繰り返して増設されたことを特徴とするモータ。
【請求項4】
請求項3において、
該突極磁極Mの基本ユニットは1mと2m、4mと5m、7mと8m、の組み合わせによる3相結線、3m,6m,9mによる他の3相結線として構成し、該突極磁極Mの基本ユニットを繰り返して増設することを特徴とするモータ。
【請求項5】
請求項3において、
該突極磁極Mの基本ユニットは1mと2m,3m,4mと5m,6m,7mと8m,9mの組み合わせで6個の電機子相として構成し、該突極磁極Mの基本ユニットを繰り返して増設する6相モータとして構成することを特徴とするモータ。
【請求項6】
請求項3において、
前記界磁磁極と突極磁極を組み合わせて、リニアモータに構成したことを特徴とするモータ。
【請求項7】
複数の電機子巻線を有する突極磁極と、複数の界磁磁極を備えたモータに対して、多重インバータにより駆動させるモータ制御装置において、
要求運転状態に応じて前記多重インバータの運転モードを切り替えることを特徴とするモータ制御装置。
【請求項8】
請求項7において、前記モータの突極磁極は1mと2m、4mと5m、7mと8m、の組み合わせによる3相結線のインバータと3m,6m,9mによる他の3相結線のインバータとして多重インバータで構成し、要求運転状態に応じてインバータの運転モードを切り替えることを特徴とするモータ制御装置。
【請求項9】
請求項7において、モータ,界磁磁極の位置検出装置,多重インバータ,コントローラを組み合わせたサーボ制御システムを構成することを特徴とするモータ制御装置。
【請求項10】
請求項7において、
前記界磁磁極は永久磁石を備えていることを特徴とするモータ制御装置。
【請求項1】
電機子巻線を有する複数の突極磁極と、
複数の界磁磁極を備えたモータにおいて、
各々の突極磁極には第一の電機子巻線又は、
第二の電機子巻線が巻かれて、
前記第一の電機子巻線の巻線群の突極磁極数と、前記第二の電機子巻線の巻線群の突極磁極数の組み合わせ比を2:1にしたことを特徴とするモータ。
【請求項2】
請求項1において、
前記界磁磁極と突極磁極を組み合わせて、リニアモータに構成したことを特徴とするモータ。
【請求項3】
等間隔に配列されたP個の界磁磁極と、
電機子巻線を有する突極磁極M個の電機子とを備えたモータにおいて、
前記界磁極数Pと前記突極磁極Mの関係を以下の関係にし、
P:M=9n±n:9n (但し、nは1以上の整数)
前記突極磁極Mの基本ユニットは1m,2m,3m,4m,5m,6m,7m,8m,9m順の9個の突極磁極で構成され、該突極磁極は1mと2m,3m,4mと5m,6m,7mと8m,9mの組み合わせで6個の電機子相を作り、該突極磁極Mの基本ユニットを繰り返して増設されたことを特徴とするモータ。
【請求項4】
請求項3において、
該突極磁極Mの基本ユニットは1mと2m、4mと5m、7mと8m、の組み合わせによる3相結線、3m,6m,9mによる他の3相結線として構成し、該突極磁極Mの基本ユニットを繰り返して増設することを特徴とするモータ。
【請求項5】
請求項3において、
該突極磁極Mの基本ユニットは1mと2m,3m,4mと5m,6m,7mと8m,9mの組み合わせで6個の電機子相として構成し、該突極磁極Mの基本ユニットを繰り返して増設する6相モータとして構成することを特徴とするモータ。
【請求項6】
請求項3において、
前記界磁磁極と突極磁極を組み合わせて、リニアモータに構成したことを特徴とするモータ。
【請求項7】
複数の電機子巻線を有する突極磁極と、複数の界磁磁極を備えたモータに対して、多重インバータにより駆動させるモータ制御装置において、
要求運転状態に応じて前記多重インバータの運転モードを切り替えることを特徴とするモータ制御装置。
【請求項8】
請求項7において、前記モータの突極磁極は1mと2m、4mと5m、7mと8m、の組み合わせによる3相結線のインバータと3m,6m,9mによる他の3相結線のインバータとして多重インバータで構成し、要求運転状態に応じてインバータの運転モードを切り替えることを特徴とするモータ制御装置。
【請求項9】
請求項7において、モータ,界磁磁極の位置検出装置,多重インバータ,コントローラを組み合わせたサーボ制御システムを構成することを特徴とするモータ制御装置。
【請求項10】
請求項7において、
前記界磁磁極は永久磁石を備えていることを特徴とするモータ制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2010−115068(P2010−115068A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−287267(P2008−287267)
【出願日】平成20年11月10日(2008.11.10)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年11月10日(2008.11.10)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
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