説明

モータの制御装置

【課題】モータの回転数を安定して推定でき、電源の過大な電力による充放電を抑制可能なモータの制御装置を提供する。
【解決手段】通常回転数演算部151は、回転位置センサからの信号に基づいて制御周期ごとに走行用モータジェネレータの通常回転数Nnを演算する。移動平均演算部152は、制御周期ごとに与えられる通常回転数Nnについての移動平均回転数NAnを演算する。予測回転数演算部153は、移動平均回転数NAnの軌跡からモータジェネレータの回転数が上昇状態であるか否かを判定する。予測回転数演算部153は、モータジェネレータの回転数が上昇状態であると判定されると、今回および前回の制御周期における移動平均回転数に基づいて予測回転数を演算する。算出された予測回転数は、制御用回転数MRN2に設定されてモータ制御部およびトルク指令演算部156へ出力される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、モータの制御装置に関し、より特定的には、モータの回転数に基づいてモータを駆動制御するモータの制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、環境に配慮した自動車として、ハイブリッド自動車(Hybrid Vehicle)および電気自動車(Electric Vehicle)が注目されている。ハイブリッド自動車は、従来のエンジンに加え、インバータを介して直流電源により駆動されるモータを動力源とする自動車である。つまり、エンジンを駆動することにより動力源を得るとともに、直流電源からの直流電圧をインバータによって交流電圧に変換し、その変換した交流電圧によりモータを回転することによって動力源を得るものである。
【0003】
また、電気自動車は、インバータを介して直流電源によって駆動されるモータを動力源とする自動車である。
【0004】
このようなハイブリッド自動車または電気自動車においては、モータを駆動制御する制御装置として、たとえば特許文献1に、レゾルバにより検出されるロータ位置からモータの回転数を求め、求めた回転数に基づいてモータのu,v,wの各相へ出力される矩形波信号の位相を調整することによりモータの出力トルクを制御するものが提案されている。
【0005】
これによれば、所定時間ごとに繰り返し実行されるモータ制御処理ルーチンにおいて、コントローラは、最初にレゾルバにより検出されるロータの電気角を読み込み、読み込んだ電気角を用いてモータの回転数を演算する。続いて、コントローラは、演算されたモータの回転数に基づいて矩形波信号の位相を決定する処理を実行する。そして、決定された位相に従ってu,v,wの各相に対応するスイッチング素子がスイッチングされることにより、モータのトルクが制御される。
【特許文献1】特開2001−145381号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のモータの制御装置では、駆動輪がスリップしたことなどによってモータの回転数が急激に増加した場合には、読み込んだ電気角から演算したモータの回転数と、モータの出力トルク制御の実行中におけるモータの回転数との間に大きなずれが生じる可能性がある。なお、このずれは、コントローラの演算遅れやコントローラとレゾルバとの通信遅れなどによって増長される。
【0007】
すなわち、モータの回転数が急増したことによって、モータの出力トルクの設定に用いられる回転数に対して、設定された出力トルクに従って実際にモータが駆動制御されるときの回転数が大きく上回る場合が起こり得る。
【0008】
この場合、モータが力行モードで駆動していれば、モータの出力トルク設定時に想定されるモータ消費パワー(トルク×回転数)を、実際の出力トルク制御時に発生するモータ消費パワーが上回ることとなり、直流電源から過大な電力が持ち出されるおそれがある。
【0009】
また、モータは回生モードで駆動していれば、モータの出力トルク設定時に想定されるモータ発電パワーを、実際の出力トルク制御時に発生するモータ発電パワーが上回ることとなり、直流電源に過大な電力を持ち込むおそれがある。
【0010】
以上のように、モータの回転数の演算値を用いた出力トルク制御では、回転数の急激な変化に追従した制御が困難であるため、直流電源が、その入出力電力制限を越えて過充電または過放電されるという問題が発生する。
【0011】
それゆえ、この発明は、かかる問題を解決するためになされたものであり、その目的は、モータの動作状態の変動に追従した駆動制御を可能とし、電源の過大な電力による充放電を抑制可能なモータの制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明によれば、モータの制御装置は、駆動力指令値に従ってモータを駆動制御する。モータの制御装置は、モータの回転数を検出する回転数検出部と、回転数の検出値の移動平均を算出する移動平均演算部と、算出された移動平均を用いて所定の制御タイミングにおける予測回転数を推定する回転数推定部と、推定された予測回転数を制御用回転数とし、制御用回転数に基づいて所定の制御タイミングにおける駆動力指令値を設定する駆動力指令設定部と、電源から電力の供給を受けてモータの出力を駆動力指令値に追従させるようにモータを駆動制御するモータ駆動制御部とを備える。
【0013】
上記のモータの制御装置によれば、予測回転数の推定に回転数の移動平均を用いることにより、回転数の細かな変動に影響されず、安定した推定が可能となる。そして、この予測回転数を制御用回転数としてモータの駆動制御を行なうことにより、回転数の検出値から直接的に推定した予測回転数を制御用回転数に用いる従来のモータ駆動制御に対して、電源の入出力電力制限をより遵守することができる。その結果、電源を過充放電から確実に保護することができる。
【0014】
好ましくは、駆動力指令設定部は、モータの力行動作時において、制御用回転数と駆動力指令値とに対応するモータでの消費電力が電源の出力電力制限値を超えないように、駆動力指令値を設定し、かつ、モータの回生動作時において、制御用回転数と駆動力指令値とに対応するモータでの発電電力が電源の入力電力制限値を超えないように、駆動力指令値を設定する。
【0015】
上記のモータの制御装置によれば、移動平均から推定された予測回転数を制御用回転数としてモータの電力収支が求められるため、回転数の検出値から直接的に推定した予測回転数を制御用回転数として用いた従来のモータ駆動制御に対して、電源の入出力電力制限をより遵守することができる。
【0016】
好ましくは、モータの制御装置は、移動平均に基づいて回転数が上昇状態であるか、または下降状態であるかを判定する回転数変動状態判定部をさらに備える。回転数推定部は、回転数が上昇状態であると判定されたことに応じて、所定の制御周期における予測回転数を推定し、回転数が下降状態であると判定されたことに応じて、予測回転数の推定を禁止する。
【0017】
上記のモータの制御装置によれば、回転数が上昇状態のときと下降状態のときとで予測回転数の推定方法を切換えることにより、各々の状態におけるモータの電力収支の想定に適当な予測回転数の推定が可能となる。
【0018】
好ましくは、回転数推定部は、回転数が下降状態にあると判定されたことに応じて、回転数の検出値を直接的に予測回転数に設定して出力する。
【0019】
上記のモータの制御装置によれば、回転数が下降状態のときには回転数の検出値を制御用回転数として用いるため、予測回転数が実際の回転数を下回ることにより実際のモータでの電力収支が予測回転数から想定される電力収支を超えるのが抑えられる。その結果、電源の入出力制限をより遵守することができ、電源の過充放電を確実に防止することができる。
【0020】
好ましくは、回転数変動状態判定部は、移動平均が連続するn(nは2以上の自然数)個の制御周期において増加したことに応じて回転数が上昇状態にあると判定し、かつ、移動平均が連続するm(mは2以上の自然数)個の制御周期において減少したことに応じて回転数が下降状態にあると判定する。
【0021】
上記のモータの制御装置によれば、回転数の上昇状態/下降状態が誤って判定されるのが回避される。
【0022】
好ましくは、回転数推定部は、移動平均が減少し始めてから回転数が下降状態にあると判定されるまでの期間において、予測回転数を、移動平均に基づいて推定される予測回転数よりも高く、かつ、回転数の検出値よりも低い回転数に設定する。
【0023】
上記のモータの制御装置によれば、回転数が上昇状態から下降状態に転じた直後において、予測回転数の推定方法の切換えにより制御用回転数が急に変動するのが抑えられる。これにより、モータの駆動制御の安定性を保つことができる。
【0024】
好ましくは、回転数変動状態判定部は、制御周期間の移動平均の増加量が大きいほど、nを相対的に小さい値に設定し、制御周期間の移動平均の減少量が大きいほど、mを相対的に小さい値に設定する。
【0025】
上記のモータの制御装置によれば、回転数が急激に変動するときには直ちに予測回転数を制御用回転数としたモータの駆動制御が行なわれる。したがって、電源の入出力電力制限をより遵守して、電源を過充放電から確実に保護することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して詳しく説明する。なお、図中同一符号は同一または相当部分を示す。
【0027】
図1は、この発明の実施の形態によるモータの制御装置を搭載した自動車の構成を説明するブロック図である。
【0028】
図1を参照して、本発明によるハイブリッド自動車100は、バッテリBと、ECU(Electronic Control Unit)15と、PCU(Power Control Unit)20と、動力出力装置35と、ディファレンシャルギヤ(DG:Differential Gear)40と、前輪50L,50Rと、後輪60L,60Rと、フロントシート70L,70Rと、リアシート80とを備える。
【0029】
バッテリBは、ニッケル水素またはリチウムイオン等の二次電池から成る。他にも、バッテリBは、燃料電池またはキャパシタであっても良い。バッテリBは、直流電圧をPCU20へ供給するとともに、PCU20からの直流電圧によって充電される。バッテリBは、たとえばリアシート80の後方部に配置されて、PCU20と電気的に接続される。PCU20は、ハイブリッド自動車100内で必要となる電力変換器を総括的に示すものである。
【0030】
ECU15へは、運転状況・車両状況を示す各種センサからの各種センサ出力27が入力される。各種センサ出力27には、アクセルペダル25の踏込み量を検出するアクセルペダルポジションセンサからのアクセル開度、シフトポジションセンサからのシフトポジション、ブレーキペダルポジションセンサからのブレーキペダルポジションおよび車速センサからの車速などが含まれる。ECU15は、入力されたこれらのセンサ出力に基づき、ハイブリッド自動車100に関する種々の制御を統合的に行なう。
【0031】
動力出力装置35は、車輪駆動力源として設けられ、エンジンおよびモータジェネレータMG1,MG2を含む。DG40は、動力出力装置35からの動力を前輪50L,50Rに伝達するとともに、前輪50L,50Rの回転力を動力出力装置35へ伝達する。
【0032】
これにより、動力出力装置35は、エンジンおよび/またはモータジェネレータMG1,MG2による動力を、DG40を介して前輪50L,50Rに伝達して前輪50L,50Rを駆動する。また、動力出力装置35は、前輪50L,50Rの回転力によって発電し、その発電した電力をPCU20へ供給する。
【0033】
PCU20は、モータジェネレータMG1,MG2の力行動作時には、ECU15からの制御指示に従って、バッテリBからの直流電圧を昇圧するとともに、その昇圧した直流電圧を交流電圧に変換して、動力出力装置35に含まれるモータジェネレータMG1,MG2を駆動制御する。
【0034】
また、PCU20は、モータジェネレータMG1,MG2の回生動作時には、ECU15からの制御指示に従って、モータジェネレータMG1,MG2が発電した交流電圧を直流電圧に変換してバッテリBを充電する。
【0035】
このように、ハイブリッド自動車100では、バッテリBと、PCU20と、ECU15のうちのPCU20を制御する部分とによって、モータジェネレータMG1,MG2を駆動制御する「モータの制御装置」が構成される。
【0036】
次に、この発明によるモータの制御装置の構成について説明する。
図2は、この発明によるモータの制御装置の機能ブロック図である。
【0037】
図2を参照して、モータの制御装置は、バッテリBと、PCU20のうちのモータジェネレータMG1,MG2を駆動制御する部分(以下、当該部分についても単に「PCU20」と称する)と、ECU15のうちのPCU20を制御する部分(以下、当該部分についても単に「ECU15」と称する)とを備える。
【0038】
PCU20は、昇圧コンバータ12と、平滑コンデンサC2と、モータジェネレータMG1,MG2にそれぞれ対応するインバータ14,31と、モータ制御部30とを含む。
【0039】
ECU15へは、上述した各種センサ出力27に加えて、モータジェネレータMG1,MG2にそれぞれ配置され、対応するロータの回転位置を検出する回転位置センサR1,R2からの信号θ1,θ2が入力される。
【0040】
ECU15は、回転位置センサR1,R2からの信号θ1,θ2に基づいて図示しない回転数算出ルーチンによりモータジェネレータMG1,MG2のモータ回転数を算出する。そして、その算出したモータ回転数に基づき、後述する方法によりモータジェネレータMG1,MG2の駆動制御に用いられる制御用回転数MRN1,MRN2を生成する。
【0041】
また、ECU15は、各種センサ出力27に基づき、エンジンとの出力配分等を考慮したモータジェネレータMG1,MG2に要求される出力トルク(以下、要求トルクとも称する)を決定する。さらに、ECU15は、上述した制御用回転数MRN1,MRN2とモータジェネレータMG1,MG2の要求トルクとに基づき、後述する電力バランス制御を行なって、モータジェネレータMG1,MG2を駆動するためのトルク指令値TR1,TR2を生成する。
【0042】
そして、生成された制御用回転数MRN1,MRN2およびトルク指令値TR1,TR2は、モータ制御部30へ与えられる。
【0043】
モータ制御部30は、ECU15からのトルク指令値TR1,TR2および制御用回転数MRN1,MRN2に基づいて、後述する方法により昇圧コンバータ12の動作を制御するための信号PWMCを生成する。また、モータ制御部30は、トルク指令値TR1および回転位置センサR1からの信号θ1に基づいて、後述する方法によりインバータ14の動作を制御するための信号PWMI1を生成する。さらに、モータ制御部30は、トルク指令値TR2および回転位置センサR2からの信号θ2に基づいて、後述する方法によりインバータ31の動作を制御するための信号PWMI2を生成する。
【0044】
図3は、図2におけるPCU20の具体的構成を示す回路図である。
図3を参照して、PCU20は、昇圧コンバータ12と、コンデンサC1,C2と、インバータ14,31と、電圧センサ10,13と、電流センサ24,28と、回転位置センサR1,R2とを含む。
【0045】
エンジンENGは、ガソリンなどの燃料の燃焼エネルギーを源として駆動力を発生する。エンジンENGの発生する駆動力は、図3の太斜線で示すように、動力分割機構PSDにより、2つの経路に分割される。一方は、図示しない減速機を介して車輪を駆動する駆動軸に伝達する経路である。もう一方は、モータジェネレータMG1へ伝達する経路である。
【0046】
モータジェネレータMG1,MG2は、発電機としても電動機としても機能し得るが、以下に示すように、モータジェネレータMG1は、主として発電機として動作し、モータジェネレータMG2は、主として電動機として動作する。
【0047】
詳細には、モータジェネレータMG1は、三相交流回転機であり、加速時において、エンジンENGを始動する始動機として用いられる。このとき、モータジェネレータMG1は、バッテリBからの電力の供給を受けて電動機として駆動し、エンジンENGをクランキングして始動する。
【0048】
さらに、エンジンENGの始動後において、モータジェネレータMG1は、動力分割機構PSDを介して伝達されたエンジンENGの駆動力によって回転されて発電する。
【0049】
モータジェネレータMG1の発電した電力は、車両の運転状態やバッテリBの充電量によって使い分けられる。たとえば、通常走行時や急加速時においては、モータジェネレータMG1の発電した電力は、そのままモータジェネレータMG2を駆動させる電力となる。一方、バッテリBの充電量が所定の値よりも低いときには、モータジェネレータMG1の発電した電力は、インバータ14によって交流電力から直流電力に変換されて、バッテリBに蓄えられる。
【0050】
モータジェネレータMG2は、三相交流回転機であり、バッテリBに蓄えられた電力およびモータジェネレータMG1が発電した電力の少なくともいずれか一方によって駆動される。モータジェネレータMG2の駆動力は、減速機を介して車輪の駆動軸に伝達される。これにより、モータジェネレータMG2は、エンジンENGをアシストして車両を走行させたり、自己の駆動力のみによって車両を走行させたりする。
【0051】
また、車両の回生制動時には、モータジェネレータMG2は、減速機を介して車輪により回転されて発電機として動作する。このとき、モータジェネレータMG2により発電された回生電力は、インバータ31を介してバッテリBに充電される。
【0052】
昇圧コンバータ12は、リアクトルL1と、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)素子Q1,Q2と、ダイオードD1,D2とを含む。リアクトルL1の一方端はバッテリBの電源ラインに接続され、他方端はIGBT素子Q1とIGBT素子Q2との中間点、すなわち、IGBT素子Q1のエミッタとIGBT素子Q2のコレクタとの間に接続される。IGBT素子Q1,Q2は、電源ラインとアースラインとの間に直列に接続される。そして、IGBT素子Q1のコレクタは電源ラインに接続され、IGBT素子Q2のエミッタはアースラインに接続される。また、各IGBT素子Q1,Q2のコレクタ−エミッタ間には、エミッタ側からコレクタ側へ電流を流すダイオードD1,D2がそれぞれ接続されている。
【0053】
インバータ14は、U相アーム15と、V相アーム16と、W相アーム17とから成る。U相アーム15、V相アーム16、およびW相アーム17は、電源ラインとアースラインとの間に並列に設けられる。
【0054】
U相アーム15は、直列接続されたIGBT素子Q3,Q4から成り、V相アーム16は、直列接続されたIGBT素子Q5,Q6から成り、W相アーム17は、直列接続されたIGBT素子Q7,Q8から成る。また、各IGBT素子Q3〜Q8のコレクタ−エミッタ間には、エミッタ側からコレクタ側へ電流を流すダイオードD3〜D8がそれぞれ接続されている。
【0055】
各相アームの中間点は、モータジェネレータMG1の各相コイルの各相端に接続されている。すなわち、モータジェネレータMG1は、U,V,W相の3つのコイルの一端が中性点に共通接続されて構成され、U相コイルの他端がNPNトランジスタQ3,Q4の中間点に、V相コイルの他端がNPNトランジスタQ5,Q6の中間点に、W相コイルの他端がNPNトランジスタQ7,Q8の中間点にそれぞれ接続されている。
【0056】
インバータ31は、インバータ14と同様の構成から成る。
電圧センサ10は、バッテリBから出力される直流電圧Vbを検出し、その検出した直流電圧Vbをモータ制御部30へ出力する。
【0057】
コンデンサC1は、バッテリBから供給された直流電圧Vbを平滑化し、その平滑化した直流電圧Vbを昇圧コンバータ12へ供給する。
【0058】
昇圧コンバータ12は、コンデンサC1から供給された直流電圧Vbを昇圧してコンデンサC2へ供給する。より具体的には、昇圧コンバータ12は、モータ制御部30から信号PWMCを受けると、信号PWMCによってIGBT素子Q2がオンされた期間に応じて直流電圧Vbを昇圧してコンデンサC2に供給する。
【0059】
また、昇圧コンバータ12は、モータ制御部30から信号PWMCを受けると、コンデンサC2を介してインバータ14および/またはインバータ31から供給された直流電圧を降圧してバッテリBを充電する。
【0060】
コンデンサC2は、昇圧コンバータ12からの直流電圧を平滑化し、その平滑化した直流電圧をインバータ14,31へ供給する。電圧センサ13は、コンデンサC2の両端の電圧、すなわち、昇圧コンバータ12の出力電圧Vm(インバータ14,31への入力電圧に相当する。以下同じ。)を検出し、その検出した出力電圧Vmをモータ制御部30へ出力する。
【0061】
インバータ14は、コンデンサC2を介してバッテリBから直流電圧が供給されるとモータ制御部30からの信号PWMI1に基づいて直流電圧を交流電圧に変換してモータジェネレータMG1を駆動する。これにより、モータジェネレータMG1は、トルク指令値TR1に従ったトルクを発生するように駆動される。
【0062】
また、インバータ14は、ハイブリッド自動車100の回生制動時、モータジェネレータMG1が発電した交流電圧をモータ制御部30からの信号PWMI1に基づいて直流電圧に変換し、その変換した直流電圧をコンデンサC2を介して昇圧コンバータ12へ供給する。なお、ここで言う回生制動とは、ハイブリッド自動車を運転するドライバーによるフットブレーキ操作があった場合の回生発電を伴う制動や、フットブレーキを操作しないものの、走行中にアクセルペダル25をオフすることで回生発電をさせながら車両を減速(または加速の中止)させることを含む。
【0063】
インバータ31は、コンデンサC2を介してバッテリBから直流電圧が供給されるとモータ制御部30からの信号PWMI2に基づいて直流電圧を交流電圧に変換してモータジェネレータMG2を駆動する。これにより、モータジェネレータMG2は、トルク指令値TR2に従ったトルクを発生するように駆動される。
【0064】
また、インバータ31は、ハイブリッド自動車100の回生制動時、モータジェネレータMG2が発電した交流電圧をモータ制御部30からの信号PWMI2に基づいて直流電圧に変換し、その変換した直流電圧をコンデンサC2を介して昇圧コンバータ12へ供給する。
【0065】
電流センサ24は、モータジェネレータMG1に流れるモータ電流MCRT1を検出し、その検出したモータ電流MCRT1をモータ制御部30へ出力する。電流センサ28は、モータジェネレータMG2に流れるモータ電流MCRT2を検出し、その検出したモータ電流MCRT2をモータ制御部30へ出力する。
【0066】
モータ制御部30は、図示しないECU15からトルク指令値TR1,TR2、制御用回転数MRN1,MRN2を受け、電圧センサ10から直流電圧Vbを受け、電圧センサ13から昇圧コンバータ12の出力電圧Vm(すなわち、インバータ14,31への入力電圧)を受け、電流センサ24からモータ電流MCRT1を受け、電流センサ28からモータ電流MCRT2を受け、回転位置センサR1,R2から信号θ1,θ2を受ける。
【0067】
モータ制御部30は、出力電圧Vm、トルク指令値TR1およびモータ電流MCRT1に基づいて、後述する方法によりインバータ14がモータジェネレータMG1を駆動するときにインバータ14のIGBT素子Q3〜Q8をスイッチング制御するための信号PWMI1を生成し、その生成した信号PWM1をインバータ14へ出力する。
【0068】
また、モータ制御部30は、出力電圧Vm、トルク指令値TR2およびモータ電流MCRT2に基づいて、後述する方法によりインバータ31がモータジェネレータMG2を駆動するときにインバータ31のIGBT素子Q3〜Q8をスイッチング制御するための信号PWMI2を生成し、その生成した信号PWMI2をインバータ31へ出力する。
【0069】
さらに、モータ制御部30は、インバータ14(または31)がモータジェネレータMG1(またはMG2)を駆動するとき、直流電圧Vb、出力電圧Vm、トルク指令値TR1(またはTR2)、モータ回転数MRN1(またはMRN2)に基づいて、後述する方法により昇圧コンバータ12のIGBT素子Q1,Q2をスイッチング制御するための信号PWMCを生成して昇圧コンバータ12へ出力する。
【0070】
図4は、図3におけるモータ制御部30の機能ブロック図である。
図4を参照して、モータ制御部30は、モータ制御用相電圧演算部301と、インバータ用PWM信号変換部302と、インバータ入力電圧指令演算部303と、コンバータ用デューティ比演算部304と、コンバータ用PWM信号変換部305とを含む。
【0071】
モータ制御用相電圧演算部301は、昇圧コンバータ12の出力電圧Vm、すなわち、インバータ14の入力電圧を電圧センサ13から受け、モータ電流MCRT1を電流センサ24から受け、トルク指令値TR1をECU15から受ける。そして、モータ制御用相電圧演算部301は、これらの入力される信号に基づいて、モータジェネレータMG1の各相のコイルに印加する電圧を計算し、その計算した結果をインバータ用PWM信号変換部302へ出力する。
【0072】
また、モータ制御用相電圧演算部301は、昇圧コンバータ12の出力電圧Vm、すなわち、インバータ31の入力電圧を電圧センサ13から受け、モータ電流MCRT2を電流センサ28から受け、トルク指令値TR2をECU15から受ける。そして、モータ制御用相電圧演算部301は、これらの入力される信号に基づいて、モータジェネレータMG2の各相のコイルに印加する電圧を計算し、その計算した結果をインバータ用PWM信号変換部302へ出力する。
【0073】
インバータ用PWM信号変換部302は、モータ制御用相電圧演算部301から受けた計算結果に基づいて、実際にインバータ14の各IGBT素子Q3〜Q8をオン/オフする信号PWMI1を生成し、その生成した信号PWMI1をインバータ14の各IGBT素子Q3〜Q8へ出力する。
【0074】
これにより、各IGBT素子Q3〜Q8は、スイッチング制御され、モータジェネレータMG1が指令されたトルクを出力するようにモータジェネレータMG1の各相に流す電流を制御する。このようにして、モータ駆動電流が制御され、トルク指令値TR1に応じたモータトルクが出力される。
【0075】
また、インバータ用PWM信号変換部302は、モータ制御用相電圧演算部301から受けた計算結果に基づいて、実際にインバータ31の各IGBT素子Q3〜Q8をオン/オフする信号PWMI2を生成し、その生成した信号PWMI2をインバータ31の各IGBT素子Q3〜Q8へ出力する。
【0076】
これにより、各IGBT素子Q3〜Q8は、スイッチング制御され、モータジェネレータMG2が指定されたトルクを出力するようにモータジェネレータMG2の各相に流す電流を制御する。このようにして、モータ駆動電流が制御され、トルク指令値TR2に応じたモータトルクが出力される
インバータ入力電圧指令演算部303は、トルク指令値TR1,TR2および制御用回転数MRN1,MRN2に基づいてインバータ入力電圧Vmの最適値(目標値)、すなわち、電圧指令Vdc_comを演算し、その演算した電圧指令Vdc_comをコンバータ用デューティ比演算部304へ出力する。
【0077】
コンバータ用デューティ比演算部304は、電圧センサ10からのバッテリ電圧Vbに基づいて、電圧センサ13からの出力電圧Vmをインバータ入力電圧指令演算部303からの電圧指令Vdc_comに設定するためのデューティ比を演算し、その演算したデューティ比をコンバータ用PWM信号変換部305へ出力する。
【0078】
コンバータ用PWM信号変換部305は、コンバータ用デューティ比演算部304からのデューティ比に基づいて昇圧コンバータ12のIGBT素子Q1,Q2をオン/オフするための信号PWMCを生成する。そして、コンバータ用PWM信号変換部305は、その生成した信号PWMCを昇圧コンバータ12のIGBT素子Q1,Q2へ出力する。
【0079】
このように、モータ制御部30は、トルク指令値TR1,TR2と制御用回転数MRN1,MRN2とに基づいて、モータジェネレータMG1,MG2を駆動制御する。
【0080】
ここで、制御用回転数MRN1,MRN2としては、通常、回転位置センサR1,R2により入力されるロータの回転位置を示す信号θ1,θ2を演算して得られる回転数(以下、通常回転数とも称する)が用いられる。
【0081】
しかしながら、駆動軸に連結されるモータジェネレータMG2においては、ハイブリッド自動車100の駆動輪50L,50Rがスリップしたことなどに起因して、回転数が急激に増加する場合がある。そのため、図5に示すように、通常回転数を制御用回転数MRN2に設定して駆動制御が実行される制御周期において、制御用回転数MRN2に対して、その制御周期における実際のモータジェネレータMG2の回転数(以下、実回転数とも称する)が低くなるというずれが生じてしまう。
【0082】
図5を参照して、たとえば、時刻tiにおいて駆動輪50L,50Rがスリップしたことにより、モータジェネレータMG2の回転数が時刻ti以降に急増したものとする。
【0083】
このとき、ECU15は、回転位置センサR2からの信号θ2に基づいて制御周期ごとに通常回転数を演算する。一例として、図中の時刻tnのタイミングで演算される通常回転数Nn−1は、時刻tn−1から時刻tnまでの制御周期における信号θ2の変化量を制御周期長Tsで時間微分することにより求められる。求められた通常回転数Nn−1は、実質的に、時刻tn−1における実回転数N(tn−1)と、時刻tnにおける実回転数N(tn)との平均値に略等しくなる。
【0084】
そして、時刻tnにて得られた通常回転数Nn−1が制御用回転数MRN2に設定されると、時刻tnから時刻tn−1までの制御周期において、制御用回転数MRN2とモータジェネレータMG2の要求トルクとに基づいて、以下に述べる電力バランス制御を行なうことによりモータジェネレータMG2のトルク指令値TR2が生成される。
【0085】
電力バランス制御とは、モータ駆動装置全体でのパワー収支PがバッテリBの入出力制限を越えないように、各モータジェネレータの出力トルクを制御することにより、バッテリBの過大な電力による充放電を防止するものである。
【0086】
すなわち、モータ駆動装置全体でのパワー収支Pは、一方のモータジェネレータ(モータジェネレータMG1,MG2のいずれか)が力行モードで駆動して消費するパワーをPm、他方のモータジェネレータが回生モードで駆動して発電するパワーをPg、およびコンデンサC2に入出力されるパワーをPcとして、式(1)で表わすことができる。
P=Pm+Pg+Lg+Lm+Pc (1)
ただし、Lg,Lmは、各モータジェネレータにおけるパワー損失分を示す。
【0087】
そして、バッテリBの過大な電力による充放電を防止するためには、バッテリBに入出力されるパワーがバッテリBの入出力制限を超えないように、すなわち、式(2)に示す関係が成立するように、パワー収支Pを調整することが必要となる。
Win<Pm+Pg+Lg+Lm+Pc<Wout (2)
ただし、WinはバッテリBの入力制限、WoutはバッテリBの出力制限を示す。
【0088】
なお、この電力バランス制御において、式(2)に用いられるモータ消費パワーPmおよびモータ発電パワーPgはともに、各モータジェネレータの要求トルクTrに制御用回転数MRN1またはMRN2を乗じることにより計算される。たとえば、モータジェネレータMG2が力行モードのときのモータ消費パワーPm、および回生モードのときのモータ発電パワーPgはそれぞれ、式(3),(4)により求められる。
Pm=K・Tr2×MRN2 (3)
Pg=K・Tr2×MRN2 (4)
ただし、Kは、駆動力を電力に変換するための変換係数である。
【0089】
そして、式(2)の関係が成立するように、モータジェネレータMG1,MG2から出力しても良い上限トルクが演算され、その演算された上限トルクが各モータジェネレータのトルク指令値TR1,TR2に設定される。
【0090】
再び図5を参照して、時刻tnから時刻tn+1までの制御周期において設定されたトルク指令値TR1,TR2は、ECU15からPCU20内のモータ制御部30へ送出される。モータ制御部30は、送出されたトルク指令値TR1,TR2に基づいて、時刻tn+1から時刻tn+2までの次回の制御周期においてモータジェネレータMG1,MG2の駆動制御を実行する。
【0091】
ここで、モータジェネレータMG2においては、駆動輪50L,50Rのスリップによって回転数が急激に増加しているため、トルク指令値TRの生成において制御用回転数MRN2として用いた通常回転数Nn−1と、実際のモータ駆動制御が行なわれる制御周期における実回転数との間に大きなずれが生じている。図5では、時刻tn+1から時刻tn+2までの制御周期における最大回転数、すなわち、時刻tn+2における実回転数N(tn+2)は、通常回転数Nn−1に対してΔNだけ大きい値となっている。
【0092】
したがって、時刻tn+1から時刻tn+2までの制御周期におけるモータジェネレータMG2のモータ消費パワーPmは、式(3)に実回転数N(tn+2)を代入して、Pm=K・TR2×N(tn+2)を最大値とする。この最大値は、式(2)のパワー収支Pに用いたモータ消費パワーPm=K・Tr2×Nn−1を大幅に上回っている。そのため、実際には、時刻tn+1から時刻tn+2までの制御周期においては、式(2)の関係が成立せず、バッテリBからは出力制限Woutを上回る電力が持ち出されることとなる。これは、電力バランス制御を破綻させ、バッテリBを過充放電させる可能性を生じさせる。
【0093】
そこで、本発明の実施の形態によるモータの制御装置は、かかる制御用回転数と実回転数とのずれを低減するために、制御用回転数として、回転位置センサ出力から演算された通常回転数ではなく、通常回転数から推定される予測回転数を用いることを特徴的な構成とする。これによれば、回転数の急激な増加に対しても、バッテリBの過大な電力による充放電を防止することができる。
【0094】
以下に、本発明の実施の形態による予測回転数の推定方法について詳細に説明する。
最初に、予測回転数としては、モータ駆動制御が行なわれる制御周期の終期となるタイミングでの実回転数を推定の対象とする。図5の例では、時刻tn+1から時刻tn+2までの制御周期の終期である時刻tn+2における実回転数N(tn+2)が推定の対象となる。これは、回転数の急増時にバッテリBを確実に保護するためには、制御周期において最も回転数が高くなると予想される終期において、式(2)の関係が成り立つことが必要であると判断されることによる。
【0095】
そこで、時刻tnにおいて演算される通常回転数Nn−1が時刻tn−1から時刻tnまでの制御周期の略中間における実回転数に相当することを考慮すれば、この通常回転数Nn−1に対して略2.5制御周期先の実回転数を推定すれば良いことが分かる。
【0096】
次に、時刻tn+2における実回転数の推定方法としては、時刻tnにて演算された通常回転数Nn−1と、時刻tn−1にて演算された通常回転数Nn−2との変化量を基に2.5制御周期先の変化量を求める、式(5)に従った方法が最も簡易であると予想される。
N(tn+2)=(Nn−1)+{(Nn−1)−(Nn−2)}×2.5 (5)
ところが、通常回転数Nn−2,Nn−1は、制御周期ごとに回転位置センサR2からの出力信号θ2に基づいて算出されるため、信号θ2に重畳されたノイズなどの影響を受けて細かな変動成分を含む場合がある。そのため、連続する制御周期の各々において算出された通常回転数Nn−2,Nn−1から直接的に予測回転数を推定する式(5)の方法では、通常回転数の細かな変動の影響を受けて安定した予測回転数の推定が困難となるという問題が起こり得る。
【0097】
詳細には、通常回転数が図6に示すような細かな増減を伴なって増加する場合、連続する2つの通常回転数Nn−2,Nn−1を式(5)に代入して得られる予測回転数N(tn+2)は、この細かな増減が増長されて大きく変動する不安定な出力波形となる。
【0098】
そして、図6のうちの予測回転数が通常回転数を大きく下回る場合では、上述した電力バランス制御において、予測回転数を制御用回転数MRN2に設定して計算されるモータ消費パワーPmの予測値に対して、実際の制御周期におけるモータ消費パワーPmが大幅に上回ることになり、バッテリBが過放電となるおそれが生じる。
【0099】
このように、通常回転数を直接的に用いた予測回転数の推定方法では、安定した予測回転数が得られないことに起因して、バッテリBの保護が不十分となるという問題がある。
【0100】
そこで、本発明の実施の形態は、予測回転数の推定を通常回転数の移動平均に基づいて行なう手法を採用する。
【0101】
移動平均とは、周知のように、予め一定期間の間隔を定め、その間隔内における出力平均を連続して計算することにより、出力の趨勢的な動向を知ろうとするものである。本発明の実施の形態では、式(6)に示すように、k個(kは2以上の自然数)の制御周期を一定期間とし、その一定期間におけるk個の通常回転数の平均値を連続的に演算することにより、通常回転数の移動平均回転数NAnを求める構成とする。
NAn={(Nn−k)+(Nn−k+1)・・・+Nn−2+Nn−1}/k (6)
なお、移動平均としては、式(6)の手法以外に、k個の通常回転数の各々に所定の係数を掛け合わせて重み付けしたものの平均値を求める加重移動平均を適用しても良い。この場合、所定の係数は、最近の通常回転数に対するものほど大きくなるように設定される。
【0102】
そして、予測回転数は、時刻tn−1での移動平均回転数NAn−1と時刻tnでの移動平均回転数NAnとの変化量に基づいて、式(7)から導出するものとする。
N(tn+2)=(Nn−1)+{(NAn)−(NAn−1)}×2.5 (7)
図7は、通常回転数、通常回転数を移動平均して得られる移動平均回転数、および移動平均回転数に基づいて算出された予測回転数の時間的変化を示す図である。
【0103】
図7を参照して、移動平均回転数は、通常回転数に見られる変動を含んでおらず、回転数が増加傾向にあることを示唆している。そして、移動平均回転数から求められる予測回転数は、図6のように通常回転数に対して増加と減少とを繰り返すことなく、安定して増加する波形を示している。
【0104】
これによれば、予測回転数は通常回転数を大きく下回ることがないため、上述した電力バランス制御において、予測回転数を制御用回転数MRN2に設定して計算されるモータ消費パワーPmの予測値を、実際の制御周期におけるモータ消費パワーPmが超えてしまうといった不具合が解消される。したがって、バッテリBの過大な電力による充放電を確実に防止することができる。
【0105】
以上に述べた予測回転数の推定方法は、実際には、図2のECU15において所定の制御周期ごとに繰り返し実行される。なお、所定の制御周期は、回転位置センサR1,R2の検出速度やECU15を構成するCPUの演算処理能力などに基づいて、予め所定の期間長Tsに設定されている。
【0106】
図8は、図2のECU15の機能ブロック図である。なお、図8は、ECU15のうちのモータジェネレータMG2の制御用回転数MRN2およびトルク指令値TR2の設定に関連する部分を示している。
【0107】
図8を参照して、ECU15は、通常回転数演算部151と、移動平均演算部152と、予測回転数演算部153と、カウンタ154と、要求トルク設定部155と、トルク指令演算部156とを含む。
【0108】
通常回転数演算部151は、回転位置センサR2からの出力信号θ2に基づいて制御周期ごとにモータジェネレータMG2の通常回転数Nn−1を演算する。そして、通常回転数演算部151は、その演算した通常回転数Nn−1を移動平均演算部152へ出力する。
【0109】
移動平均演算部152は、制御周期ごとに与えられる通常回転数Nnについての移動平均回転数NAnを演算して予測回転数演算部153へ出力する。すなわち、移動平均回転数NAnは、上述した式(6)に従って制御周期ごとに更新されて予測回転数演算部153に連続的に入力される。
【0110】
予測回転数演算部153は、移動平均回転数NAnを受けると、移動平均回転数NAnの軌跡からモータジェネレータMG2の回転数が上昇状態であるか否かを判定する。そして、モータジェネレータMG2の回転数が上昇状態であると判定されたことに応じて、上述した方法により移動平均回転数NAnに基づいて予測回転数N(tn+2)を演算する。
【0111】
ここで、モータジェネレータMG2の回転数が上昇状態であるか否かの判定は、制御周期ごとに更新される移動平均回転数NAnが、連続して複数回増加方向に変動したか否かにより行なうものとする。増加方向とは、前回の制御周期における移動平均回転数NAn−1に対する今回の制御周期における移動平均回転数NAnの変化量が0以上であることをいう。なお、減少方向とは、前回の制御周期における移動平均回転数NAn−1に対する今回の制御周期における移動平均回転数NAnの変化量が0未満であることをいう。
【0112】
そして、移動平均回転数NAnが連続する複数個(たとえば5個とする)の制御周期において増加方向に変動し続けた場合には、モータジェネレータMG2の回転数が上昇状態であると判定して、移動平均回転数NAnの変化量から予測回転数N(tn+2)を算出する。算出された予測回転数N(tn+2)は、制御用回転数MRN2に設定されてモータ制御部30およびトルク指令演算部156へ出力される。
【0113】
一方、移動平均回転数NAnが連続する5個の制御周期において増加方向に変動しない場合には、予測回転数演算部153は、モータジェネレータMG2の回転数が上昇状態でないと判定して、予測回転数N(tn+2)の演算を行なわず、通常回転数Nn−1を予測回転数N(tn+2)に設定する。設定された予測回転数(すなわち、通常回転数Nn−1)は、制御用回転数MRN2としてモータ制御部30およびトルク指令演算部156へ出力される。
【0114】
なお、移動平均回転数NAnが増加方向に変動した回数は、カウンタ154によりカウントされる。カウンタ154は、移動平均回転数NAnが連続して増加方向に変動したことに応じてカウント値U_CNTを+1だけインクリメントする。そして、予測回転数演算部153は、カウンタ154からのカウント値U_CNTが5回に達したことに応じて、予測回転数N(tn+2)を演算する。一方、カウンタ154は、移動平均回転数NAnが減少方向に変動したことに応じて、カウント値U_CNTを“0”にリセットする。
【0115】
以上のような構成とすることにより、モータジェネレータMG2の回転数が急激に増加した場合であっても、予測回転数が安定的に推定されるため、これを制御用回転数とした電力バランス制御を安定して行なうことができる。
【0116】
また、回転数の上昇状態の判定基準となるカウント値U_CNTを、移動平均回転数NAnの変化量が大きいほど相対的に小さい値となるように設定すれば、回転数の急激な変動に応じて直ちに予測回転数が推定されて制御用回転数として用いられるため、バッテリの保護をより厚くすることができる。
【0117】
しかしながら、駆動輪50L,50Rのスリップ発生時には、モータジェネレータMG2の回転数は、図2のように単調に増加する以外に、車両の状態によっては、増加から一旦減少に転じた後に再び増加する傾向を示す場合がある。この場合、回転数の増加/減少に関わらず、一律に移動平均回転数から予測回転数を演算することによって電力バランス制御が破綻する可能性がある。
【0118】
詳細には、回転数が単調増加しない場合の移動平均回転数NAnとしては、たとえば、図9の曲線LN1で示すように、時刻t4までは増加方向に変動するものの(移動平均回転数NA1〜NA4に対応)、時刻t4から時刻t9までの期間において減少方向に変動し(NA5〜NA9に対応)、時刻t9以降において再び増加する(NA10〜NA13に対応)波形が見られる。
【0119】
そして、この移動平均回転数NAnに基づいて算出される予測回転数は、図中の曲線LN2で示すように、時刻t6までは増加するものの(予測回転数NE1〜NE4に対応)、時刻t6から時刻t11までの期間において減少する(NE5〜NE9に対応)。そして、時刻11から再び増加する(NE10〜NE11に対応)波形となる。
【0120】
ここで、曲線LN1と曲線LN2とを比較して明らかなように、予測回転数は、時刻t9から時刻t14までの期間において移動平均回転数を下回っている。そのため、この期間においては、予測回転数NE8〜NE11を制御用回転数MRN2とした電力バランス制御により設定されたモータ消費パワーPmに対して、実回転数におけるモータ消費パワーPmがこれを上回ることとなり、バッテリBを過放電させるおそれがある。
【0121】
そこで、本発明の実施の形態においては、モータジェネレータMG2の回転数が下降状態と判定された場合には、予測回転数が実回転数に対して過小に推定されるおそれがあることを考慮して、上述した予測回転数の推定を行なわない構成とする。
【0122】
詳細には、予測回転数演算部153は、移動平均回転数NAnを受けると、移動平均回転数NAnの軌跡からモータジェネレータMG2の回転数が下降状態であるか否かを判定する。そして、モータジェネレータMG2の回転数が下降状態であると判定されたことに応じて、通常回転数Nn−1を予測回転数N(tn+2)に設定してモータ制御部30およびトルク指令演算部156へ出力する。
【0123】
このとき、モータジェネレータMG2の回転数が下降状態であるか否かの判定は、制御周期ごとに更新される移動平均回転数NAnが、連続して複数回減少方向に変動したか否かにより行なわれる。判定基準を連続して複数回と設定したのは、予測回転数演算部153において頻繁に推定方法が切換えられることにより、モータ駆動制御の安定性が損なわれるのを回避するためである。
【0124】
そして、移動平均回転数NAnが連続する複数(たとえば3個とする)の制御周期において減少方向に変動し続けた場合には、予測回転数演算部153は、モータジェネレータMG2の回転数が下降状態であると判定して、予測回転数N(tn+2)の演算を行なわず、通常回転数Nn−1を直接的に予測回転数N(tn+2)に設定する。これにより、通常回転数Nn−1は、制御用回転数MRN2としてモータ制御部30およびトルク指令演算部156へ出力される。
【0125】
なお、移動平均回転数NAnが減少方向に変動した回数は、カウンタ154によりカウントされる。カウンタ154は、移動平均回転数NAnが連続して減少方向に変動したことに応じてカウント値D_CNTを+1だけインクリメントする。そして、予測回転数演算部153は、カウンタ154からのカウント値D_CNTが3回に達したことに応じて、通常回転数Nn−1を直接的に予測回転数N(tn+2)に設定する。一方、カウンタ154は、移動平均回転数NAnの変動が増加方向に転じたことに応じて、カウント値D_CNTを“0”にリセットする。
【0126】
さらに、本発明の実施の形態では、モータジェネレータMG2の回転数の上昇状態と下降状態とで予測回転数の推定方法を切換えたことに応じて、移動平均回転数の変動が増加方向から減少方向に転じてから連続的に減少方向に変動したことに応じて下降状態と判定されるまでの移行期間においては、予測回転数の変化量を制限する構成とする。予測回転数の推定方法を切換えた直後において、急激に制御用回転数MRN2が変化するのを防止するためである。
【0127】
具体的には、図9の曲線LN1を参照して、移動平均回転数は、時刻t5以降において連続して減少方向に変動している。予測回転数演算部153は、時刻t5からカウント値D_CNTのインクリメントを開始する。そして、時刻t7においてカウント値D_CNTが3回に達したことに応じてモータジェネレータMG2の回転数が下降状態と判定し、予測回転数の推定を行なわず、通常回転数Nn−1を予測回転数N(tn+2)に設定する。
【0128】
さらに、予測回転数演算部153は、カウント値D_CNTのインクリメントを開始した時刻t5からカウント値D_CNTが3回に達するまでの時刻t7までの期間においては、次式により予測回転数N(tn+2)を算出する。
【0129】
N(tn+2)=N(tn+1)−{N(tn+1)−Nn−1}×1/a (8)
ただし、N(tn+1)は前回の制御周期における予測回転数、aは2以上の自然数である。
【0130】
これによれば、時刻t5およびt6においてそれぞれ算出される予測回転数は、図中の曲線LN3上の点NEd5,NEd6で表わされる回転数となる。そして、回転数が下降状態と判断される時刻t7から時刻t9までの期間においては、予測回転数は、時刻t7〜t9における通常回転数Nn−1に等しく、曲線LN3上の点NEd7,NEd8,NEd9で表わされる回転数となる。さらに、移動平均回転数が再び増加方向に転じる時刻t10以降においては、予測回転数は、移動平均回転数を上記の式(5)に代入して得られる回転数(曲線LN3上の点NE10,NE11に相当)に設定される。
【0131】
以上のように回転数の上昇状態と下降状態とで予測回転数の推定方法を切換えることによって、予測回転数は、曲線LN3で示す波形となる。曲線LN3と曲線LN2とを比較して明らかなように、回転数の増加/減少に関わらず、一律に移動平均回転数から予測回転数を演算した場合に対して、予測回転数が移動平均回転数よりも過小に推定されるのが軽減されているのが分かる。これにより、実回転数におけるモータ消費パワーPmが、予測回転数を制御用回転数MRN2とした電力バランス制御により設定されたモータ消費パワーPmを上回るのが抑えられる。したがって、バッテリBの過大な電力による充放電を抑制することができる。
【0132】
図10は、本発明の実施の形態による予測回転数の推定方法を説明するためのフローチャートである。
【0133】
図10を参照して、最初に、ECU15の通常回転数演算部151は、回転位置センサR2からの信号θ2が入力されると(ステップS01)、この入力信号θ2に基づいて制御周期ごとにモータジェネレータMG2の通常回転数Nn−1を演算する(ステップS02)。そして、通常回転数演算部151は、その演算した通常回転数Nn−1を移動平均演算部152へ出力する。
【0134】
移動平均演算部152は、制御周期ごとに与えられる通常回転数Nnについての移動平均回転数NAnを演算して予測回転数演算部153へ出力する(ステップS03)。
【0135】
予測回転数演算部153は、移動平均回転数NAnを受けると、移動平均回転数NAnの変化量が0以上であるか否か、すなわち、移動平均回転数NAnが増加方向に変動したか否かを判定する(ステップS04)。
【0136】
ステップS04において、移動平均回転数NAnの変化量が0以上と判定されると、予測回転数演算部153は、カウンタ154におけるカウント値U_CNTを+1だけインクリメントする(ステップS05)。さらに、予測回転数演算部153は、カウント値D_CNTを“0”にリセットする(ステップS06)。
【0137】
そして、予測回転数演算部153は、カウント値U_CNTがX(Xは2以上の自然数)以上であるか否かを判定する(ステップS07)。ステップS07においてカウント値U_CNTがX以上であると判定されたこと、すなわち、移動平均回転数NAnが連続してX回増加方向に変動し続けたと判定されたことに応じて、予測回転数演算部153は、モータジェネレータMG2の回転数が上昇状態であると判定する。そして、予測回転数演算部153は、上述した方法により移動平均回転数NAnの変化量から予測回転数N(tn+2)を算出する(ステップS09)。
【0138】
一方、ステップS07においてカウント値U_CNTがXより小さいと判定されたときには、予測回転数演算部153は、モータジェネレータMG2の回転数が上昇状態でないと判定する。この場合、予測回転数演算部153は、予測回転数N(tn+2)の演算を行なわず、通常回転数Nn−1を予測回転数N(tn+2)に設定する(ステップS08)。
【0139】
一方、再びステップS04に戻って、移動平均回転数NAnの変化量が0未満と判定された場合には、移動平均回転数NAnが減少方向に変動したと判定して、予測回転数演算部153は、カウンタ154におけるカウント値D_CNTを+1だけインクリメントする(ステップS10)。
【0140】
そして、予測回転数演算部153は、カウント値D_CNTがY(Yは2以上の自然数)以上であるか否かを判定する(ステップS12)。ステップS12においてカウント値D_CNTがYより小さいと判定されたことに応じて、予測回転数演算部153は、移動平均回転数NAnが、増加方向から減少方向への変動に転じてから連続してY回減少方向に変動するまでの移行期間にあると判断する。この場合、予測回転数演算部153は、上述した方法により前回の制御周期における予測回転数N(tn+1)と今回の制御周期における通常回転数とに基づいて、予測回転数N(tn+2)を算出する(ステップS13)。
【0141】
そして、ステップS12においてカウント値D_CNTがY以上となったことに応じて、すなわち、移動平均回転数NAnが連続してY回増加方向に変動し続けたことに応じて、予測回転数演算部153は、モータジェネレータMG2の回転数が下降状態であると判定する。この場合、予測回転数演算部153は、予測回転数N(tn+2)の演算を行なわず、通常回転数Nn−1を予測回転数N(tn+2)に設定する(ステップS08)。
【0142】
以上のステップS08,S09,S13の各々で設定された予測回転数N(tn+2)は、制御用回転数MRN2に設定されてモータ制御部30およびトルク指令演算部156へ出力される。
【0143】
トルク指令演算部156は、制御用回転数MRN2とモータジェネレータMG2の要求トルクとに基づいて上述した電力バランス制御を行ない、モータジェネレータMG2のトルク指令値TR2を生成してモータ制御部30へ出力する。モータ制御部30は、制御用回転数MRN2とトルク指令値TR2を受けると、モータジェネレータMG2が指定されたトルクを出力するようにモータジェネレータMG2の各相に流す電流を制御する(ステップS14)。このようにして、モータ駆動電流が制御され、トルク指令値TR2に応じたモータトルクが出力される。
【0144】
以上のように、この発明の実施の形態によれば、モータジェネレータの回転数が急激に増加した場合であっても、予測回転数が安定的に推定されるため、これを制御用回転数とした電力バランス制御を安定して行なうことができる。その結果、バッテリの過大な電力による充放電を抑制することができる。
【0145】
また、モータジェネレータの回転数の上昇状態と下降状態とで予測回転数の推定方法を切換えることにより、予測回転数が実回転数よりも過小に推定されるのを軽減できるため、電力バランス制御の破綻を回避してバッテリを確実に保護することができる。
【0146】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0147】
この発明は、モータを駆動力源とする車両に搭載されるモータの制御装置に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0148】
【図1】この発明の実施の形態によるモータの制御装置を搭載した自動車の構成を説明するブロック図である。
【図2】この発明によるモータの制御装置の機能ブロック図である。
【図3】図2におけるPCUの具体的構成を示す回路図である。
【図4】図3におけるモータ制御部の機能ブロック図である。
【図5】通常回転数の時間的変化を示す図である。
【図6】通常回転数および通常回転数に基づいて算出された予測回転数の時間的変化を示す図である。
【図7】通常回転数、通常回転数を移動平均して得られる移動平均回転数、および移動平均回転数に基づいて算出された予測回転数の時間的変化を示す図である。
【図8】図2のECUの機能ブロック図である。
【図9】移動平均回転数、および移動平均回転数に基づいて算出された予測回転数の時間的変化を示す図である。
【図10】本発明の実施の形態による予測回転数の推定方法を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0149】
10,13 電圧センサ、12 昇圧コンバータ、14,31 インバータ、15 U相アーム、16 V相アーム、17 W相アーム、24,28 電流センサ、25 アクセルペダル、30 モータ制御部、35 動力出力装置、40 ディファレンシャルギヤ、50L,50R 前輪、60L,60R 後輪、70L,70R フロントシート、80 リアシート、100 ハイブリッド自動車、151 通常回転数演算部、152 移動平均演算部、153 予測回転数演算部、154 カウンタ、155 要求トルク設定部、156 トルク指令演算部、301 モータ制御用相電圧演算部、302 インバータ用PWM信号変換部、303 インバータ入力電圧指令演算部、304 コンバータ用デューティ比演算部、305 コンバータ用PWM信号変換部、B バッテリ、C1,C2 コンデンサ、D1〜D8 ダイオード、ENG エンジン、Q1〜Q8 IGBT素子、MG1,MG2 モータジェネレータ、PSD 動力分割機構、R1,R2 回転位置センサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動力指令値に従ってモータを駆動制御するモータの制御装置であって、
前記モータの回転数を検出する回転数検出部と、
前記回転数の検出値の移動平均を算出する移動平均演算部と、
算出された前記移動平均を用いて所定の制御タイミングにおける予測回転数を推定する回転数推定部と、
推定された前記予測回転数を制御用回転数とし、前記制御用回転数に基づいて前記所定の制御タイミングにおける前記駆動力指令値を設定する駆動力指令設定部と、
電源から電力の供給を受けて前記モータの出力を前記駆動力指令値に追従させるように前記モータを駆動制御するモータ駆動制御部とを備える、モータの制御装置。
【請求項2】
前記駆動力指令設定部は、前記モータの力行動作時において、前記制御用回転数と前記駆動力指令値とに対応する前記モータでの消費電力が前記電源の出力電力制限値を超えないように、前記駆動力指令値を設定し、かつ、前記モータの回生動作時において、前記制御用回転数と前記駆動力指令値とに対応する前記モータでの発電電力が前記電源の入力電力制限値を超えないように、前記駆動力指令値を設定する、請求項1に記載のモータの制御装置。
【請求項3】
前記移動平均に基づいて前記回転数が上昇状態であるか、または下降状態であるかを判定する回転数変動状態判定部をさらに備え、
前記回転数推定部は、前記回転数が前記上昇状態であると判定されたことに応じて、前記所定の制御タイミングにおける前記予測回転数を推定し、前記回転数が前記下降状態であると判定されたことに応じて、前記予測回転数の推定を禁止する、請求項1または請求項2に記載のモータの制御装置。
【請求項4】
前記回転数推定部は、前記回転数が前記下降状態にあると判定されたことに応じて、前記回転数の検出値を直接的に前記予測回転数に設定して出力する、請求項3に記載のモータの制御装置。
【請求項5】
前記回転数変動状態判定部は、前記移動平均が連続するn(nは2以上の自然数)個の制御周期において増加したことに応じて前記回転数が前記上昇状態にあると判定し、かつ、前記移動平均が連続するm(mは2以上の自然数)個の前記制御周期において減少したことに応じて前記回転数が前記下降状態にあると判定する、請求項4に記載のモータの制御装置。
【請求項6】
前記回転数推定部は、前記移動平均が減少し始めてから前記回転数が前記下降状態にあると判定されるまでの期間において、前記予測回転数を、前記移動平均に基づいて推定される前記予測回転数よりも高く、かつ、前記回転数の検出値よりも低い回転数に設定する、請求項5に記載のモータの制御装置。
【請求項7】
前記回転数変動状態判定部は、前記制御周期間の前記移動平均の増加量が大きいほど、前記nを相対的に小さい値に設定し、前記制御周期間の前記移動平均の減少量が大きいほど、前記mを相対的に小さい値に設定する、請求項5に記載のモータ制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−185071(P2007−185071A)
【公開日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−2572(P2006−2572)
【出願日】平成18年1月10日(2006.1.10)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】