説明

モータの制御装置

【課題】コイルの誘起電圧と基準電圧が一致する時刻を検出して回転子の位置を検出するPWM駆動制御のDCセンサレスモータにおいて、回転子の位置検出の安定性を向上させることで乱調、騒音、振動を防止又は低減することができるモータの制御装置を提供する。
【解決手段】非通電相の誘起電圧が現れている期間に前記誘起電圧をサンプリングした複数の検出値に基づいて非通電相の誘起電圧の傾きを算出し、この算出された傾きに基づいて前記非通電相の誘起電圧が前記基準電圧と一致する時刻を予測して予測時刻とし、この予測時刻より前に実際の位置検出が行なわれなかったとき、前記予測時刻を位置検出時刻とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PWM(Pulse Width Modulation)制御によるセンサレスDCモータの制御装置において、回転子の位置検出の安定性を向上させ、位置検出の誤差によって生じる乱調、騒音、振動などを防止又は低減するモータの制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図4は、PWM制御によるセンサレスDCモータの駆動回路を示す回路図である。
この図4において、モータ1は、PWM駆動信号を生成するインバータ2に接続され、このインバータ2はPWM制御信号を出力するPWM信号発生器9に接続されている。
前記PWM制御信号発生器9はPWM制御信号を生成するためのキャリア信号と出力電圧指令信号を出力する制御装置4に接続され、この制御装置4には、モータ1の位置検出信号を得るためのモータ1のU相端子7U、V相端子7V、W相端子7Wの電圧Uv、Vv、Wvと基準電圧Bを比較する比較器5U、5V、5Wの出力が接続されるとともに、直流電源3のプラス側が接続されている。
【0003】
前記インバータ2は、図5に示すように直流電源3のプラス側とマイナス側の間にそれぞれ一対のスイッチング素子6Upと6Un、6Vpと6Vn、6Wpと6Wnが接続されており、それぞれのスイッチング素子6Up、6Un、6Vp、6Vn、6Wp、6Wnのゲート端子に前記PWM信号発生器9の対応する出力が接続されている。
【0004】
前記インバータ2を構成するスイッチング素子6Upと6Unの接続点がモータ1のU相端子7Uに、スイッチング素子6Vpと6Vnの接続点がモータ1のV相端子7Vに、スイッチング素子6Wpと6Wnの接続点がモータ1のW相端子7Wに接続されている。
なお、前記スイッチング素子6Up、6Un、6Vp、6Vn、6Wp、6Wnは、バイポーラトランジスタ、FET、MOS−FET、サイリスタや絶縁ゲートバイポーラトランジスタなどを含む総称であり、モータの出力や仕様によって適当なものが選択される。
【0005】
以上のような構成において、モータ1のU相端子7U、V相端子7V、W相端子7Wの電圧Vu、Vv、Vwが比較器5U、5V、5Wによって基準電圧Bと比較され、その結果が回転子の位置情報として制御装置4に入力される。
制御装置4は、比較器5U、5V、5Wからの前記位置情報に基づいて、図7に示すようなPWM制御信号を生成するための、例えば三角波からなる適当な周期Cのキャリア信号及び電圧指令信号をPWM信号発生器9に出力する。
【0006】
PWM信号発生器9は、モータ1を回転数を制御するPWM駆動信号のデューティ比を決定する各相毎の電圧指令信号Vcとキャリア信号とを比較し、キャリア信号が電圧指令信号Vc以上になると立上り、電圧指令信号Vc以下になると立下る図7に示すような矩形のPWM制御信号をインバータ2に出力する。
【0007】
インバータ2は、PWM信号発生器9からのPWM制御信号に従って、スイッチング素子6Up、6Un、6Vp、6Vn、6Wp、6Wnをオン・オフ制御して、モータ1のU相端子7U、V相端子7V、W相端子7WにPWM駆動信号を出力してモータ1を回転させる。
【0008】
以下、モータ1の回転制御について説明する。
スイッチング素子6Upのゲートには、制御装置4からPWM信号発生器9を介して、図8(a)に示す電気角0〜120度の期間にPWM制御信号が与えられ、スイッチング素子6Vpのゲートには、図8(b)に示すように、電気角120〜240度の期間にPWM制御信号が与えら、スイッチング素子6Wpのゲートには、図8(c)に示すように、電気角240〜360度の期間にPWM制御信号が与えられる。
【0009】
スイッチング素子6Unのゲートには、図8(d)に示すように、スイッチング素子6Upの電気角180度遅れの期間にPWM制御信号が与えられ、スイッチング素子6Vnのゲートには、図8(e)に示すように、スイッチング素子6Vpの電気角180度遅れの期間にPWM制御信号が与えられ、スイッチング素子6Wnのゲートには、図8(f)に示すように、スイッチング素子6Wpの電気角180度遅れの期間にPWM制御信号が与えられる。
【0010】
PWM制御による120度通電方式では、以上のスイッチング素子6Up、6Un、6Vp、6Vn、6Wp、6Wnに与えられるPWM制御信号は、始まりの電気角0〜30度と終わりの電気角90〜120度の期間がオン・オフを繰り返す櫛歯状波形で、中間の電気角30〜90度の期間は平坦なプラス波形となっており、以下で説明する閉回路を構成する1対のスイッチング素子の一方が櫛歯状波形に、他方が平坦なプラス波形となるように制御されている。
この櫛歯状の波形のデューティ比を変化させて印加電圧を制御して所望の回転数に制御する。
【0011】
電気角0〜60度の期間には、スイッチング素子6Upと6Vnが導通して電源3のプラス側→スイッチング素子6Up→U相コイル8U→V相コイル8V→スイッチング素子6Vn→電源3のマイナス側の閉回路が構成されて電流が流れる。
同様にして、電気角60〜120度の期間には、スイッチング素子6Upと6Wnが導通してU相コイル8UからW相コイル8Wの方向に、電気角120〜180度の期間には、スイッチング素子6Vpと6Wnが導通してV相コイル8VからW相コイル8Wの方向に、電気角180〜240度の期間には、スイッチング素子6Vpと6Unが導通してV相コイル8VからU相コイル8Uの方向に、電気角240〜300度の期間には、スイッチング素子6Wpと6Unが導通してW相コイル8WからU相コイル8Uの方向に、電気角300〜360度の期間には、スイッチング素子6Wpと6Vnが導通してW相コイル8WからV相コイル8Vの方向にそれぞれ電流が流れる。
これによって、各コイル8U、8V、8Wによる回転磁界が発生して回転子を誘導し、モータが所定の方向に回転する。
【0012】
以下、回転子の位置検出について説明する。
120度通電方式によるPWM駆動制御のセンサレスDCモータは、U相、V相、W相の固定子コイルのうちいずれか駆動信号が印加されていない固定子コイルに、図6に示すような誘起電圧Vが現れる。この誘起電圧Vを基準電圧Bと比較して基準電圧Bと一致する点(図6の点E、F)を検出することにより回転子の位置を検出し、この位置情報に基づいてPWM駆動信号を生成して所望の回転数にモータを制御するように構成されている(特許文献1)。
【0013】
以下、U相端子7Uに現れる電圧Vuの波形について、図8(g)に基づいて説明する。
U相端子7Uには、電圧が印加されていない電気角120〜180度の期間と電気角300〜360度の期間に誘起電圧Vuが現れるが、V相コイル8VとW相コイル8Wの直列回路に電圧が印加されているので、3つのコイルの中性点10に櫛歯状の電圧が印加されており、これによりU相端子7Uにも図8(g)に示すような櫛歯波形が現れる。
同様に、V相端子7Vには電気角60〜120度の期間と電気角240〜300度の期間に図8(h)に示すように変化する櫛歯波形が現れ、W相端子7Wには電気角0〜60度の期間と電気角180〜240度の期間に図8(i)に示すように変化する櫛歯波形が現れる。
【0014】
次に、回転子の位置検出について、U相端子7Uを例にとって説明する。
回転子の位置検出は、U相端子7Uに駆動電圧が印加されていないときのU相コイル8Uに現れる誘起電圧Vuによって検出することができるが、PWM制御の場合には前述のとおりU相端子7Uの電圧VuにはPWM駆動信号に影響された櫛歯状の電圧が現れる。
この櫛歯状の電圧が現れたU相端子7Uの電圧Vuと基準電圧Bを比較して、例えば、図8(g)の電気角330〜360度の期間に現れるU相端子7Uの電圧Vuが基準電圧Bと一致する点を回転子の位置として検出する。基準電圧Bは、例えば抵抗により電源3の電圧を1/2に分圧した電圧が使用される。
【0015】
図9(a)(b)に電気角330〜360度の期間におけるU相端子7Uの電圧Vuの部分拡大図を示す。
U相端子7Uに現れる電圧Vuは、徐々に上昇する櫛歯状の電圧波形となる。
これを利用して回転子の位置を検出するために、U相端子7Uに現れる電圧Vuと基準電圧Bとを比較器5Uで比較し、U相端子7Uに現れる電圧Vuが基準電圧Bと一致した点を検出する。
また、U相端子7Uに現れる電圧Vuには、150〜180度の期間にも330〜360度のときとは極性が反対の電圧が現れており、電圧Vuと基準電圧Bとを比較器5Uで比較し、U相端子7Uに現れる電圧Vuが基準電圧Bと一致した点を検出する。
V相端子7V及びW相端子7Wについても、同様の電圧が電気角で120度ずつずれて発生し、同様の方法で位置検出が行なわれ、電気角の360度の間に位置検出が6回行なわれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開昭59−139883号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
以上のPWM駆動制御のセンサレスDCモータでは、図8(g)(h)(i)に示すように、電圧が印加されていない端子にもPWM駆動信号の影響を受けた櫛歯状の波形が現れており、図9(a)に示すように、U相端子7Uの櫛歯状の電圧VuがU相コイル8Uに現れている期間に基準電圧Bと一致したときは正しく位置検出信号を得ることができる。
【0018】
ところが、U相端子7Uの櫛歯状の電圧VuがPWM駆動信号の影響を受けて現れていない期間には、図9(b)に破線で示すU相コイル8Uの誘起電圧Vuが基準電圧Bに一致したとき、U相端子7Uの電圧Vuは0であり、その点を検出することができない。
この場合は、次にPWM制御信号がオンとなった立上りのタイミングでU相端子7Uの電圧Vuが基準電圧Bを超えるので、その超えた点をもって比較器が検出信号を出力する。
このため、U相端子7Uの電圧Vuが基準電圧Bを超える点がPWM駆動信号の影響を受けて現れない期間にあたる場合には、回転子の位置検出に誤差が生じてしまい、乱調、騒音、振動などの原因となるという問題点があった。
【0019】
本発明は、上述のような問題点に鑑みなされたもので、モータ固定子の各相の端子の電圧Vが基準電圧Bを超える点がPWM制御信号のオフの期間にあたるような場合にも、その点を予測することにより誤差を低減した回転子の位置検出を行ない、乱調、騒音、振動を防止又は低減することができるモータ制御装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の請求項1は、回転子と複数相のコイルからなる固定子とを有し、前記固定子にPWM制御による制御電圧を各相のコイルに順次印加して、前記制御電圧が印加されていない非通電相のコイルに誘起される誘起電圧と基準電圧とを比較して一致した時刻を回転子の位置検出時刻とし、この回転子の位置検出時刻に基づいて回転制御を行なうモータの制御装置において、前記非通電相の誘起電圧が現れている期間に前記誘起電圧をサンプリングした複数の検出値に基づいて非通電相の誘起電圧の傾きを算出し、この算出された傾きに基づいて前記非通電相の誘起電圧が前記基準電圧と一致する時刻を予測して予測時刻とし、この予測時刻より前に実際の位置検出が行なわれなかったとき、前記予測時刻を位置検出時刻とすることを特徴とするモータの制御装置である。
【0021】
本発明の請求項2は、請求項1記載のモータの制御装置において、前記誘起電圧がに現れている期間にサンプリングした複数の検出値を時間的に前半と後半に分け、前半と後半それぞれにおいて前記検出値の平均値を算出し、この2つの平均値に基づいて誘起電圧の傾きを算出するものである。
【0022】
本発明の請求項3は、請求項1又は2記載のモータの制御装置において、予測時刻に達する時間を予測時間のカウントタイマに設定し、この予測時間のカウントタイマが設定値に達する前に実際の位置検出が行なわれなかったとき、予測時間のカウントタイマが設定値に達した時刻を位置検出時刻とするものである。
【0023】
本発明の請求項4は、請求項1、2又は3記載のモータの制御装置において、誘起電圧が現れている期間のサンプリングは、電圧の立上り又は立下り直後のリンギングを回避するために、予め設定された時間待機してからサンプリングを開始するものである。
【発明の効果】
【0024】
請求項1の発明によれば、PWM制御信号の位置検出ができない誘起電圧が現れていない期間に検出すべき時刻が経過してしまう場合に、その検出すべき時刻の直近で誘起電圧が現れている期間の電圧の傾きに基づいて位置検出時刻を予測して位置検出信号とするので、位置検出の誤差を極めて小さくして検出を行うことができ、乱調、騒音、振動などを防止又は低減することができるという効果を有する。
【0025】
請求項2の発明によれば、サンプリングしたデータを前半と後半に分けて2つの平均を算出し、これら2つの点に基づいて基準電圧を超える時刻を予測するので、サンプリングに誤差が生じていても平均化して誤差を小さくすることができるという効果を有する。
【0026】
請求項3の発明によれば、予測時刻をタイマに設定して計時するようにしたので、予測時刻と現在時刻を常に比較する必要がなく、制御装置への負担を軽減することができるという効果を有する。
【0027】
請求項4の発明によれば、櫛歯状の電圧の立上り又は立下り直後のリンギングにより安定しない電圧を回避して誘起電圧のサンプリングを行なうので、安定した電圧を検出することができ、より正確な位置検出時刻の予測を行うことができるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明のPWM制御によるDCセンサレスモータの制御回路を示す回路図である。
【図2(a)】位置検出の手順を示すフローチャート図である。
【図2(b)】位置検出の予測時間を算出する手順を示すフローチャート図である。
【図3】サンプリングしたデータの処理方法を示す説明図で、(a)は前半部分と後半部分を分けることを説明する図、(b)は前半部分と後半部分でそれぞれ平均を計算することを説明する図、(c)は計算された2点から検出位置を予測することを説明する図である。
【図4】従来のPWM制御によるセンサレスDCモータの制御回路を示す回路図である。
【図5】図4のインバータの詳細を示す回路図である。
【図6】従来の回転子の位置検出において、回転子の位置と誘起電圧の関係を示す図である。
【図7】制御装置4からPWM信号発生器9へ出力されるキャリア波形を示す波形図である。
【図8】PWM制御信号と各相の端子に現れる電圧を示す波形図であり、(a)はスイッチング素子6Upの駆動信号、(b)はスイッチング素子6Vpの駆動信号、(c)はスイッチング素子6Wpの駆動信号、(d)はスイッチング素子6Unの駆動信号、(e)はスイッチング素子6Vnの駆動信号、(f)はスイッチング素子6Wnの駆動信号、(g)はU相の電圧Vu、(h)はV相の電圧Vv、(i)はW相の電圧Vwのそれぞれの波形図である。
【図9】従来の方法により回転子の位置検出を行なう期間の端子に現れる電圧波形の拡大図で、(a)は位置検出が正常な場合の波形図、(b)は位置検出が異常な場合の波形図ある。
【発明を実施するための形態】
【0029】
回転子と複数相のコイルからなる固定子とを有するセンサレスDCモータは、回転子の位置に基づいて前記固定子にPWM制御による制御電圧を複数相に順次印加して回転制御を行なう。回転子の位置は、制御電圧が印加されていない非通電相のコイルに誘起される誘起電圧と基準電圧とを比較して一致した時刻を回転子の位置検出時刻とし、この回転子の位置検出時刻を制御装置に帰還して前記回転制御を行なう。
PWM制御によるモータの場合、PWM制御信号の影響により前記誘起電圧にも櫛歯状の影響が現れており、各相の端子に現れる電圧において誘起電圧が現れている期間と正常な誘起電圧が現れていない期間がある。
本発明のモータの制御装置は、前記非通電相の誘起電圧が現れている期間にサンプリングによる誘起電圧の検出を複数回行ない、このサンプリングした複数の検出値に基づいて非通電相の誘起電圧の傾きを算出し、この算出された傾きに基づいて前記非通電相の誘起電圧が基準電圧と一致する時刻を予測して予測時刻とし、この予測時刻より前に実際の位置検出が行なわれなかったときに、前記予測時刻を位置検出時刻として駆動制御する。
【実施例1】
【0030】
次に、本発明の実施例を、図面に基づいて説明する。
図1は、三相DCセンサレスモータを駆動する本発明の制御装置の回路図である。この回路の基本的な構成については、図4に示す従来の回路と共通であるので共通部分については説明を省略する。
従来の回路と相違するのは、次のとおりである。
各相端子7U、7V、7Wの電圧Vu、Vv、Vwが制御装置4に帰還され、また、制御装置4には、サンプリングウェイトタイマ10、予測時間のカウントタイマ11、記憶手段12が備えられている。
【0031】
以下、検出すべき時刻がPWM制御信号のオフ期間に到達する場合に検出すべき時刻を予測する工程について、電気角330〜360度の期間のU相端子7Uの誘起電圧を例として、図2(a)(b)のフローチャートに基づいて説明する。なお、Sはステップを表し、これに続く数字はステップの番号を表している。
【0032】
(S0)位置検出相において、PWM信号がオンするタイミングで、位置検出時刻の予測処理を開始する。
(S1)制御装置4は、位置検出する電気角330〜360度の期間においてPWM制御信号がオンするとサンプリングウェイトタイマ10をスタートする。
(S2)サンプリングウェイトタイマ10をスタートした後、予め設定されたカウント値に達するまで、PWM制御信号の立上り直後のリンギングで安定しない電圧を取得してしまうことを回避するために待機する。
【0033】
(S3)サンプリングウェイトタイマ10のカウント値が設定値に達すると、制御装置4はサンプリングウェイトタイマ10をリセットするとともに、PWM信号がオフするまでの間、予め定められたサンプリング周期で電圧値を取得する。サンプリング結果は、サンプリング数を示すカウンタ値、電圧値及び時刻が一組とされ制御装置4内の記憶手段12に記憶される。
【0034】
(S4)PWM信号のオフを検出する。
(S5)制御装置4によってカウンタ値が2以上か否かを判定する。カウンタ値が1又は0の場合(No)には、平均値の算出ができないので位置検出予測時刻の算出処理を終了(S11)する。
(S6)カウンタ値が2以上の場合(Yes)には、比較器5Uから制御装置4へ位置検出信号が入力されると予測される位置検出の予測時刻の算出が実行される。
【0035】
この工程S6のさらに詳細な工程は、図2(b)に示すとおりである。
(S61)カウンタ値に基づいてサンプリングデータを前半と後半に2等分する。カウンタ値が奇数であった場合は、前半か後半のいずれかに残りの1つを振り分ける。
(S62)カウンタ値と電圧値に基づいて、前半と後半のそれぞれの平均の電圧値を算出する。
(S63)カウンタ値と時刻に基づいて、前半と後半のそれぞれの平均の時刻を算出する。
(S64)前半の平均電圧値、後半の平均電圧値、前半の平均の時刻及び後半の平均の時刻を用いて、傾き=(後半の平均電圧−前半の平均電圧)/(後半の平均時刻−前半の平均時刻)を算出する。
(S65)ここまでで算出した値を用いて、制御装置4は、位置検出の予測時刻=後半の平均時刻+((基準電圧−後半の平均電圧)/傾き)を算出して終了する。
【0036】
(S7)位置検出の予測時刻を算出すると、制御装置4は、電圧検出信号がPWM信号のオフの時刻から算出された位置検出の予測時刻までの予測時間を、位置検出の予測時刻−PWM信号のオフの時刻により算出する。
(S8)予測時間のカウントタイマ11を停止し、前回の予測処理によって設定されていた予測時間をクリアする。
(S9)予測時間のカウントタイマ11にS7で算出した予測時間を設定する。
(S10)制御装置4はこの予測時間カウントタイマ11をスタートさせて、予測処理を終了(S11)する。
【0037】
予測時間カウントタイマ11の動作中に新たに位相検出相でPWM制御信号がオンした場合には、再び上述の位置検出予測時刻の算出処理が開始され、前回の予測処理でスタートした予測時間のカウントタイマ11は、PWM制御信号がオンして再度予測処理が開始された後も動作しており、PWM制御信号がオフして前記工程S8で停止してクリアするまで有効となる。
予測時間のカウントタイマ11の動作中であって、カウント値が設定された予測時間を経過する前に、比較器5Uから実際の位置検出信号が入力されると、その位置検出信号を用いてモータの回転制御が行なわれ位置検出処理が終了する。
【0038】
実際の位置検出信号が比較器5Uから制御装置4に入力されず、且つ、新たにPWM制御信号がオンしないまま、予測時間のカウントタイマ11のカウント値が設定値と一致した場合に、その一致した時刻を位置検出が行なわれた時刻としてモータの回転制御が行なわれて位置検出処理が終了する。
【0039】
以上、電気角330〜360度の期間のU相端子7Uの誘起電圧から位置検出時刻を予測する例について説明したが、電気角150〜180度の期間のU相端子7Uの誘起電圧からも位置検出時刻を予測する。この場合、図8(g)に示すように、U相端子7Uの電圧波形の極性が反対になるので、PWM制御信号のオンとオフの関係も反対になる。
さらに、V相端子8Vの電気角90〜120度、270〜300度とW相端子8Wの電機角210〜240度、30〜60度の期間についても同様に位置検出時刻の予測が行なわれ、電気角360度の間に6回位置検出時刻の予測が行なわれる。
これにより正しく検出された位置信号に従って、センサレスDCモータが駆動制御され、乱調、騒音、振動を防止又は低減する。
【符号の説明】
【0040】
1…モータ、2…インバータ、3…直流電源、4…制御装置、5U、5V、5W…比較器、6Up、6Un、6Vp、6Vn、6Wp、6Wn…スイッチング素子、7U…U相端子、7V…V相端子、7W…W相端子、8U…U相コイル、8U…V相コイル、8W…W相コイル、10…サンプリングウェイトタイマ、11…予測時間のカウントタイマ、12…記憶装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転子と複数相のコイルからなる固定子とを有し、前記固定子にPWM制御による制御電圧を各相のコイルに順次印加して、前記制御電圧が印加されていない非通電相のコイルに誘起される誘起電圧と基準電圧とを比較して一致した時刻を回転子の位置検出時刻とし、この回転子の位置検出時刻に基づいて回転制御を行なうモータの制御装置において、
前記非通電相の誘起電圧が現れている期間に前記誘起電圧をサンプリングした複数の検出値に基づいて非通電相の誘起電圧の傾きを算出し、
この算出された傾きに基づいて前記非通電相の誘起電圧が前記基準電圧と一致する時刻を予測して予測時刻とし、
この予測時刻より前に実際の位置検出が行なわれなかったとき、前記予測時刻を位置検出時刻とすることを特徴とするモータの制御装置。
【請求項2】
前記誘起電圧がに現れている期間にサンプリングした複数の検出値を時間的に前半と後半に分け、前半と後半それぞれにおいて前記検出値の平均値を算出し、この2つの平均値に基づいて誘起電圧の傾きを算出することを特徴とする請求項1記載のモータの制御装置。
【請求項3】
予測時刻に達する時間を予測時間のカウントタイマに設定し、この予測時間のカウントタイマが設定値に達する前に実際の位置検出が行なわれなかったとき、予測時間のカウントタイマが設定値に達した時刻を位置検出時刻とすることを特徴とする請求項1又は2記載のモータの制御装置。
【請求項4】
誘起電圧が現れている期間のサンプリングは、電圧の立上り又は立下り直後のリンギングを回避するために、予め設定された時間待機してからサンプリングを開始することを特徴とする請求項1、2又は3記載のモータの制御装置。

【図1】
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【図2(a)】
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【図2(b)】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−191728(P2012−191728A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−52198(P2011−52198)
【出願日】平成23年3月9日(2011.3.9)
【出願人】(000006611)株式会社富士通ゼネラル (1,266)
【Fターム(参考)】