説明

ラジカル重合によって硬化可能な粉末水性分散液、その製造法およびその使用

分散相として光子相関分光法により測定された80〜750nmの平均粒度(z平均)を有する、固体のおよび/または高粘性の、貯蔵条件および適用条件下で寸法安定性粒子(A)を含有する、ラジカル重合によって硬化可能な、揮発性有機化合物を完全にまたは実質的に含まない構造粘性の粉末水性分散液であって、その際、該粒子(A)は、−70℃〜+50℃のガラス転移温度、2〜10当量/kgのオレフィン系不飽和二重結合の含有量および0.05〜15当量/kgの酸基の含有量を有する少なくとも1つのラジカル架橋可能なバインダー(A1)を(A)に対して50〜100質量%の量で含有する、構造粘性の粉末水性分散液、その製造法およびその使用

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、ラジカル重合によって硬化可能な新規の粉末水性分散液に関する。さらに本発明は、ラジカル重合によって硬化可能な粉末水性分散液の新規の製造法に関する。さらにまた本発明は、被覆、接着層およびシールの製造のための、被覆剤、接着剤およびシーラントとしての、ラジカル重合によって硬化可能な新規の粉末水性分散液のかつ新規の方法に従って製造された、ラジカル重合によって硬化可能な粉末水性分散液の使用に関する。
【0002】
従来技術
粉末水性分散液、殊に粉末コート水性分散液は、当業者たちによって周知のように≫粉末スラリー≪とも、または短縮して≫スラリー≪と呼ばれる。
【0003】
この場所以降で、概念の≫スラリー≪は簡略のために、ラジカル重合によって硬化可能な粉末スラリーを表す。
【0004】
周知のように、ラジカル重合はオレフィン系不飽和二重結合を含有する化合物を用いて実施される。ラジカル重合は、熱的にまたは化学線により開始されえかつ維持されうる。
【0005】
この場所以降で、化学線とは、電磁線、例えば近赤外線(NIR)、可視光線、UV線、X線またはガンマ線、殊にUV線、または粒子線、例えば電子線、陽子線、ベータ線、アルファ線または中性子線、殊に電子線と理解される。
【0006】
米国特許US6,432,490B1またはそれに対応する国際特許出願WO02/064267A2から、0.1〜10当量/kgの不飽和二重結合の含有量または二重結合当量を有する、イオンにより安定化されたウレタンアクリレートを含有するスラリーが周知である。
【0007】
しかし、イオンによる安定化に関するより詳細な説明は欠けており、かつ実施例から明らかになるのは、有機溶剤および酸基不含のウレタンアクリレートをベースとする慣例のクリアコートのみである。
【0008】
周知のスラリーは、その適用に従って近赤外線により硬化されえ、かつ硬性、耐溶剤性のかつ黄変しない被覆、殊にクリア塗膜を供給する。
【0009】
ドイツ国特許出願DE19908013A1からは構造粘性スラリーが周知であり、その固体の球状粒子は、レーザー回折法により測定された0.8〜20μmの平均粒度および30μmの最大粒度を有する。
【0010】
化学線により硬化可能な周知のスラリーの構成成分は、0.05〜1当量/kgのイオン形成性基、殊にカルボキシル基の含有量および0.05〜1当量/kgの中和剤の含有量を有する。
【0011】
周知のスラリーは、1000s−1のせん断速度で50〜1000mPasの粘度を、10s−1のせん断速度で150〜8000mPasの粘度を、かつ1s−1のせん断速度で180〜12000mPasの粘度を有する。
【0012】
しかし実施例から明らかになるのは、3当量/kgの二重結合当量を有するが、しかし酸基を含有しないウレタンアクリレートのみである。それは当該スラリーの粒子中に、固体に対して41.53質量%の量で含有されている。
【0013】
周知のスラリーは、その適用に従ってUV線により硬化されえ、かつ顕著な外観(Appearance)、高い耐化学薬品性、高い硬度および滑らかな表面を有する被覆、殊にクリア塗膜を供給する。それらはまた40〜50μmの層厚においてもポッピング(Kocher)を有さず、かつ亀裂を形成(マッドクラック)しない。
【0014】
しかし、周知のスラリーの応用技術的な特性プロフィールは、市場の高まる要求を満たすために絶えずさらに開発されなければならない。殊に、周知のスラリーから製造された被覆、殊にクリア塗膜は、耐化学薬品性、耐チッピング性、引掻強さおよび耐凝縮水性に関してさらに開発されなければならない。
【0015】
課題
本発明の課題は、簡単な方法でかつ非常に良好に再現可能に(reproduzierbar)製造されうる、ラジカル重合によって硬化可能な、新規の粉末水性分散液(以下では要約して≫新規のスラリー≪と記載)を見つけ出すことである。
【0016】
新規のスラリーは、化学線の排除下でとりわけ貯蔵安定性であるべきであり、かつ沈殿および/または凝集が生じにくい。より長い時間の後にそれでも粒子の沈降および/または凝集がわずかに生じる場合には、沈降した粒子は短い攪拌によって再び速やかに分散されうるべきであり、かつ凝集した粒子は再び速やかに粉砕されうるべきである。
【0017】
新規のスラリーは、顕著な光学特性(外観)、殊に高い光沢を有する、被覆、殊にクリア塗膜を供給するべきである。それは化学薬品、凝縮水および機械的作用、殊にチッピングによる作用に対してとりわけ安定性であるべきである。さらに、それは引掻強さが高くあるべきである。加えて該塗膜は、多層塗膜の最も上の塗膜にまで凸凹を形成する、下塗りのくぼみを効果的に均等にするべきであり、かつそうしてとりわけ滑らかでかつ欠陥のない表面を有するべきである。しかし、なかでも該塗膜は80μmを上回るとりわけ高い層厚において依然としてポッピングおよびマッドクラックを含まないべきである。
【0018】
解決
それに従って、分散相として光子相関分光法により測定された80〜750nmの平均粒度(z平均)を有する、固体のおよび/または高粘性の、貯蔵条件および適用条件下で寸法安定性粒子(A)を含有する、ラジカル重合によって硬化可能な、揮発性有機化合物を完全にまたは実質的に含まない新規の構造粘性の粉末水性分散液が見つけ出され、その際、該粒子(A)は、−70℃〜+50℃のガラス転移温度、2〜10当量/kgのオレフィン系不飽和二重結合の含有量および0.05〜15当量/kgの酸基の含有量を有する少なくとも1つのラジカル架橋可能なバインダー(A1)を(A)に対して50〜100質量%の量で含有する。
【0019】
以下では、ラジカル重合によって硬化可能な、揮発性有機化合物を含まないかまたは実質的に含まない新規の構造粘性の粉末水性分散液は≫本発明によるスラリー≪と呼ばれる。
【0020】
さらに、本発明によるスラリーの新規の製造法が見つけ出され、その際、粒子(A)は水性媒体(B)中に分散され、かつそれは以下で≫本発明による方法≪と呼ばれる。
【0021】
さらに、被覆、接着層およびシールの製造のための、被覆剤、接着剤およびシーラントとしての本発明によるスラリーのかつ本発明による方法に従って製造されたスラリーの新規の使用が見つけ出された。
【0022】
その他の本発明の対象は明細書から明らかになる。
【0023】
利点
従来技術に鑑みて、本発明が基づく課題が、本発明によるスラリー、本発明による方法および本発明による使用によって解決されえたことは意想外であり、かつ当業者には予測可能ではなかった。
【0024】
殊に本発明によるスラリーが、簡単な方法でかつ非常に良好に再現可能に製造されえたことは意想外であった。
【0025】
本発明によるスラリーは、化学線の排除下でとりわけ貯蔵安定性であり、かつ沈殿および/または凝集が生じにくかった。より長い時間の後にそれでも粒子(A)の沈降および/または凝集がわずかに生じる場合には、沈降した粒子(A)は短い攪拌によって再び速やかに分散されえ、かつ凝集した粒子(A)は再び速やかに粉砕されえた。
【0026】
本発明によるスラリーは、顕著な光学特性(外観)、殊に高い光沢を有する、被覆、殊に本発明によるクリア塗膜を供給した。該塗膜は、化学薬品、凝縮水および機械的作用、殊にチッピングによる作用に対してとりわけ安定性であった。さらに該塗膜は引掻強さが高かった。加えて該塗膜は、他の点で多層塗膜の最も上の塗膜にまで凸凹を形成する、下塗りのくぼみを効果的に均等にし、それゆえとりわけ滑らかでかつ欠陥のない表面を有していた。しかし、なかでも該塗膜は80μmを上回るとりわけ高い層厚において依然としてポッピングおよびマッドクラックを有していなかった。
【0027】
本発明の詳細な説明
本発明によるスラリーは、完全にまたは実質的に有機溶剤を含まない。
【0028】
≫実質的に含まない≪とは、本発明による当該スラリーが溶剤含有率<10質量%、有利にはそのつど<5質量%および殊に<2質量%を有することを意味する。
【0029】
≫完全に含まない≪とは、溶剤が、有機溶剤の通常のかつ公知の検出限界値より下にあることを意味する。
【0030】
本発明によるスラリーは構造粘性である。
【0031】
"構造粘性"と呼ばれる粘性挙動は、一方では塗布の要求と、他方では本発明によるスラリーの貯蔵安定性および沈殿安定性に関する要件を考慮に入れた状態を表す:例えば被覆装置の環状管路内で本発明によるスラリーがポンプ循環される場合や塗布される場合といった運動状態において、本発明によるスラリーは、良好な加工性を保証する低粘性状態をとる。それに反してせん断応力なしでは該粘性は上昇し、かつ被覆されるべき基材上にすでに存在する本発明によるスラリーが垂直面にて流れ出す(たるみ)傾向が軽減されるように保証する。同じように、より高い粘性だと、例えば貯蔵される場合のような非運動状態において、固体粒子(A)の沈殿が主に防止されることになるか、または貯蔵時間中に軽度にのみ沈殿されたおよび/または凝集された本発明によるスラリーの再攪拌が保証されることになる。
【0032】
有利には適した増粘剤(A2)、殊に、有利には水相(B)中に存在する非イオン性増粘剤およびイオン性増粘剤(A2)によって構造粘性の挙動が調整される。
【0033】
有利には、構造粘性の挙動に関して1000s−1のせん断速度で50〜1500mPasの粘性範囲および10s−1のせん断速度で150〜8000mPasの粘性範囲ならびに1s−1のせん断速度で180〜12000mPasの粘性範囲が調整される。
【0034】
本発明によるスラリーは、固体のおよび/または高粘性の寸法安定性粒子(A)を分散相として含有する。
【0035】
≫寸法安定性≪とは、粒子(A)が、構造粘性の粉末水性分散液の貯蔵および適用の通常のかつ公知の条件下で、仮にそうであったとしても、ほんのわずかにしか凝集せずかつ/またはより小さい粒子に分解しかせず、むしろせん断力の影響下でも大体においてまたは実質的にその最初の形状を保つことを意味する。
【0036】
粒子(A)は、光子相関分光法により測定された80〜750nm、有利には80〜600nmおよび殊に80〜400nmの平均粒度(z平均)(z-Mean)を有する。
【0037】
光子相関分光法は、粒度<1μmの分散粒子の通常のかつ公知の測定法である。例えば測定はMalvern(R)Zetasizer 1000によって実施されうる。
【0038】
粒度分布は公知の方法において調整されうる。有利には、適した湿潤剤(A2)の使用に基づき粒度分布がもたらされる。
【0039】
本発明によるスラリー中の粒子(A)の含有率は非常に幅広く変化してよく、かつ個々の場合の必要量に従う。
【0040】
有利には含有率は、本発明によるスラリーに対して5〜70質量%、有利には10〜60質量%、とりわけ有利には15〜50質量%および殊に15〜40質量%である。
【0041】
粒子(A)は、
−−70℃〜+50℃、有利には−60℃〜+20℃および殊に−60℃〜+10℃のガラス転移温度、
−2〜10当量/kg、有利には2〜8当量/kg、有利には2.1〜6当量/kg、とりわけ有利には2.2〜6当量/kg、極めて有利には2.3〜5当量/kgおよび殊に2.5〜5当量/kg バインダー(A1)のオレフィン系不飽和二重結合の含有量および
−0.05〜15当量/kg、有利には0.08〜10当量/kg、有利には0.1〜8当量/kg、とりわけ有利には0.15〜5当量/kg、極めて有利には0.18〜3当量/kgおよび殊に0.2〜2当量/kg バインダー(A1)の酸基の含有量
を有する、少なくとも1つの、殊に1つの、ラジカル架橋可能なバインダー(A1)を含有する。
【0042】
有利には、酸基の含有量はDIN EN ISO 3682に従って酸価を介して決定される。
【0043】
粒子(A)は、バインダー(A1)をそのつど(A)に対して50〜100質量%、有利には55〜100質量%、有利には60〜99質量%、とりわけ有利には70〜99質量%および殊に80〜99質量%の量で含有する。
【0044】
それゆえ粒子(A)はバインダー(A1)からなる。有利には粒子(A)は、後で記載される添加剤(A2)のなお少なくとも1つを含有する。
【0045】
バインダー(A1)のオレフィン系不飽和二重結合は、(メタ)アクリレート基、エタクリレート基、クロトネート基、シンナメート基、ビニルエーテル基、ビニルエステル基、ジシクロペンタジエニル基、ノルボルネニル基、イソプレニル基、イソプロペニル基、アリル基またはブテニル基;ジシクロペンタジエニルエーテル基、ノルボルネニルエーテル基、イソプレニルエーテル基、イソプロペニルエーテル基、アリルエーテル基またはブテニルエーテル基またはジシクロペンタジエニルエステル基、ノルボルネニルエステル基、イソプレニルエステル基、イソプロペニルエステル基、アリルエステル基またはブテニルエステル基、有利には(メタ)アクリレート基からなる群から選択された基に存在する。殊に、オレフィン系不飽和二重結合はアクリレート基に存在する。
【0046】
バインダー(A1)はオリゴマーまたはポリマーである。
【0047】
≫オリゴマー≪とは、当該バインダー(A1)が3〜12個のモノマー構造単位から構成されていることを意味する。
【0048】
≫ポリマー≪とは、当該バインダー(A1)が8個より多いモノマー構造単位から構成されていることを意味する。
【0049】
8〜12個のモノマー構造単位から構成されているバインダー(A1)がオリゴマーまたはポリマーとして見なされるかどうかは、第一にその数平均分子量に従う。
【0050】
バインダー(A1)の数平均分子量は非常に幅広く変化してよく、かつ個々の場合の必要量に、殊にバインダー(A1)の加工および使用のために有利な粘度に従う。そのためバインダー(A1)の粘度は通常、本発明によるスラリーの塗布および結果的に生じるウェット層の乾燥後に問題のないかつ容易な粒子(A)の皮膜形成が達成されるように調整される。
【0051】
有利には、数平均分子量は1000〜50000ダルトン、有利には1500〜40000ダルトンおよび殊に2000〜20000ダルトンである。
【0052】
その際、分子量の不均一性も同様に幅広く変化してよく、かつ有利には1〜10、殊に1.5〜8である。
【0053】
バインダー(A1)として、前で記載された特性プロフィールを有する全てのオリゴマーおよびポリマーが考慮に入れられる。
【0054】
有利にはバインダー(A1)は、オリゴマーのおよびポリマーのエポキシド(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレートおよびカーボネート(メタ)アクリレートからなる群から選択される。殊にウレタン(メタ)アクリレートが使用される。
【0055】
ウレタン(メタ)アクリレート(A1)は、
(a1)脂肪族、芳香族または脂環式のジイソシアネートおよびポリイソシアネートからなる群から選択された、少なくとも2つのイソシアネート基を含有する化合物の少なくとも1つと、
(a2)有利にはヒドロキシル基、チオール基および第一級アミノ基および第二級アミノ基、殊にヒドロキシル基からなる群から選択された、少なくとも1つの、殊に1つのイソシアネート反応性官能基、およびラジカル重合可能なオレフィン系不飽和二重結合、有利には(メタ)アクリレート基、殊にアクリレート基を含有する、前で記載された基の少なくとも1つ、殊に1つを有する少なくとも1つの化合物、
(a3)少なくとも1つの、殊に1つのイソシアネート反応性官能基および、有利にはカルボン酸基、ホスホン酸基、ホスフィン酸基、スルホン酸基、およびスルフィン酸基、有利にはカルボン酸基およびスルホン酸基、殊にカルボン酸基からなる群から選択された、少なくとも1つの、殊に1つの酸基を有する少なくとも1つの化合物、ならびに
(a4)場合により、少なくとも2つの、殊に2つのイソシアネート反応性官能基を有する少なくとも1つの化合物
との反応によって製造可能である。
【0056】
適した化合物(a1)の例は、統計学的な平均において2〜6、有利には2〜5および殊に2〜4のイソシアネート官能価を有する、通常のかつ公知のジイソシアネートおよびポリイソシアネートである。
【0057】
≫脂肪族≪とは、当該イソシアネート基が脂肪族炭素原子と結合していることを意味する。
【0058】
≫脂環式≪とは、当該イソシアネート基が脂環式炭素原子と結合していることを意味する。
【0059】
≫芳香族≪とは、当該イソシアネート基が芳香族炭素原子と結合していることを意味する。
【0060】
適した脂肪族ジイソシアネート(a1)の例は、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、オクタメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、テトラデカメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネートの誘導体、テトラメチルキシリリデンジイソシアネート、トリメチルヘキサンジイソシアネートまたは1,3−または1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンのような脂肪族ジイソシアネートである。
【0061】
適した脂環式ジイソシアネート(a1)の例は、1,4−、1,3−または1,2−ジイソシアナトシクロヘキサン、テトラメチルシクロヘキサンジイソシアネート、ビス(4'−イソシアナトシクロヘキシル)メタン、(4'−イソシアナトシクロヘキシル)−(2'−イソシアナトシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス(イソシアナトシクロヘキシル)プロパン、2,2−(4'−イソシアナトシクロヘキシル)−(2'−イソシアナトシクロヘキシル)プロパン、1−イソシアナト−3,3,5−トリメチル−5−(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート)、2,4−または2,6−ジイソシアナト−1−メチルシクロヘキサンまたはHenkel社から商品名DDI 1410で販売されており、かつ特許文献WO97/49745およびWO97/49747の中で記載される二量体脂肪酸から誘導されたジイソシアネート、例えば2−ヘプチル−3,4−ビス(9−イソシアナトノニル)−1−ペンチル−シクロヘキサンである。
【0062】
適した芳香族ジイソシアネート(a1)の例は、2,4−または2,6−トルイリデンジイソシアネートまたはそれらの異性体混合物、m−またはp−キシリレンジイソシアネート、2,4'−または4,4'−ジイソシアナトジフェニルメタンまたはそれらの異性体混合物、1,3−または1,4−フェニレンジイソシアネート、1−クロロ−2,4−フェニレンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、ジフェニレン−4,4'−ジイソシアネート、4,4'−ジイソシアナト−3,3'−ジメチルジフェニル、3−メチル−ジフェニルメタン−4,4'−ジイソシアネート、1,4−ジイソシアナトベンゼンまたは4,4'−ジイソシアナト−ジフェニルエーテルである。
【0063】
有利には、脂肪族および脂環式のジイソシアネート(a1)、殊にヘキサメチレンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、イソホロンジイソシアネートおよび/またはジ(イソシアナトシクロヘキシル)メタンが使用される。
【0064】
適したポリイソシアネート(a1)の例は、トリイソシアネート、例えばノナントリイソシアネート(NTI)ならびに、前で記載されたジイソシアネートおよびトリイソシアネート(a1)をベースとするポリイソシアネート(a1)、殊に、イソシアヌレート基、ビウレット基、アロファネート基、イミノオキサジアジンジオン基、ウレタン基、カルボジイミド基、尿素基、ウレトンイミン基および/またはウレトジオン基を含有するオリゴマーである。この種類の適したポリイソシアネート(a1)の例ならびにその製造法は、例えば特許文献および特許出願CA2,163,591A1、US4,419,513A、US4,454,317A、EP064608A1、US4,801,675A、EP0183976A1、DE4015155A1、EP0303150A1、EP0496208A1、EP0524500A1、EP0566037A1、US5,258,482A、US5,290,902A、EP0649806A1、DE4229183A1またはEP0531820A1から公知である。
【0065】
有利には、ヘキメチレンジイソシアネートのおよびイソホロンジイソシアネートのオリゴマー(a1)が使用される。
【0066】
適した化合物(a2)の例は、
(a21)有利には炭素原子2〜20個および少なくとも2つのヒドロキシル基を分子中に含有するジオールおよびポリオール、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,1−ジメチル−1,2−エタンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、2−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−エチル−1,4−ブタンジオール、1,4−ジメチルロールシクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、ジペンタエリトリトール、ジトリメチロールプロパン、エリトリトール、ソルビトール、162〜2000の平均分子量を有するポリテトラヒドロフラン、134〜400の平均分子量を有するポリー1,3−プロパンジオールまたは150から500の間の分子量を有するポリエチレングリコール、殊にエチレングリコール:と
(a22)α,β−不飽和カルボン酸、例えばアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、アクリルアミドグリコール酸、メタクリルアミドグリコール酸、殊にアクリル酸
とのモノエステルである。
【0067】
適した化合物(a2)のさらに他の例は、前で記載されたジオールおよびポリオール(a21)のモノビニルエーテルである。
【0068】
適した化合物(a2)のさらに他の例は、前で記載されたα,β−不飽和カルボン酸(a22)と
(a23)アミノアルコール、例えば2−アミノエタノール、2−(メチルアミノ)エタノール、3−アミノ−1−プロパノール、1−アミノ−2−プロパノールまたは2−(2−アミノエトキシ)エタノール、
(a24)チオアルコール、例えば2−メルカプトエタノール、または
(a25)ポリアミン、例えばエチレンジアミンまたはジエチレントリアミン
とのモノエステルまたはモノアミドである。
【0069】
殊に、2−ヒドロキシエチルアクリレートが使用される。
【0070】
適した化合物(a3)の例は、
(a31)ヒドロキシカルボン酸、例えばヒドロキシ酢酸(グリコール酸)、2−または3−ヒドロキシプロピオン酸、3−または4−ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシピバリン酸、6−ヒドロキシカプロン酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、2,3−ジヒドロキシプロピオン酸(グリセリン酸)、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロール酪酸、トリメチロール酢酸、サリチル酸、3−または4−ヒドロキシ安息香酸または2−、3−または4−ヒドロキシケイ皮酸、
(a32)アミノ酸、例えば6−アミノカプロン酸、アミノ酢酸(グリシン)、2−アミノプロピオン酸(アラニン)、3−アミノプロピオン酸(β−アラニン)またはさらに他の必須アミノ酸;N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−グリシン、N−[ビス(ヒドロキシメチル)−メチル]−グリシンまたはイミド二酢酸、
(a33)糖酸、例えばグルコン酸、グルカル酸、グルクロン酸、ガラクツロン酸または粘液酸(ガラクタル酸)、
(a34)チオールカルボン酸、例えばメルカプト酢酸、または
(a35)スルホン酸、例えばアミノエタンスルホン酸(タウリン)、アミノメタンスルホン酸、3−アミノプロパンスルホン酸、
2−[4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジニル]−エタンスルホン酸、
3−[4−(2−ヒドロキシエチル)−ピペラジニル]−プロパンスルホン酸、
N−[トリス(ヒドロキシメチル)−メチル]−2−アミノエタンスルホン酸、
N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸、5−スルホサリチル酸、
8−ヒドロキシキノリン−5−スルホン酸、フェノール−4−スルホン酸またはスルファニル酸
である。
【0071】
殊に、ヒドロキシ酢酸(グリコール酸)(a31)が使用される。酸基はイオン化されていてもよい。
【0072】
適した対イオンの例は、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、ルビジウムイオン、セシウムイオン、マグネシウムイオン、ストロンチウムイオン、バリウムイオンまたはアンモニウムイオンならびに、通常のかつ公知の有機アミンから誘導される、第一級、第二級、第三級または第四級アンモニウムイオンである。
【0073】
適した化合物(a4)の例は、前で記載された化合物のジオールおよびポリオール(a21)、アミノアルコール(a23)、チオアルコール(a24)またはポリアミン(a25)である。
【0074】
有利には、ウレタン(メタ)アクリレート(A1)の製造のために、化合物(a1)、(a2)および(a3)ならびに場合により(a4)は、化合物(a1)からの3当量のイソシアネート基に対して
−化合物(a2)からのイソシアネート反応性官能基が0.5〜3、有利には0.8〜2.5、とりわけ有利には1.0〜2.2および殊に1.4〜1.8当量となりかつ
−化合物(a3)からのイソシアネート反応性官能基が0.001〜1.5、有利には0.005〜1.0、とりわけ有利には0.01〜0.8および殊に0.1〜0.5当量、ならびに場合により
−化合物(a4)からのイソシアネート反応性官能基が0〜2、有利には0.1〜1.8、とりわけ有利には0.5〜1.5および殊に0.8〜1.3当量
となるようなモル比で互いに反応させられる。
【0075】
方法論的に見て、ウレタン(メタ)アクリレート(A1)の製造は特殊性を有するのではなく、ポリイソシアネートの反応の通常のかつ公知の条件下で水の排除下で5〜100℃の温度で行われる。オレフィン系不飽和二重結合の重合を抑制するために、有利には酸素含有ガス下で、殊に空気または空気−窒素−混合物下で作業される。
【0076】
本発明によるスラリーは、少なくとも1つの分散相(A)と連続的な水相(B)からなる。最も単純な場合、分散相(A)はバインダー(A1)と連続的な水からの相(B)からなる。しかし有利には、本発明によるスラリーはなお少なくとも1つの通常のかつ公知の添加剤(A2)を通常のかつ公知の量で含有する。
【0077】
その物理化学的特性に従って、添加剤(A2)は分散相(A)中、すなわち寸法安定性粒子(A)中に存在しえ;しかし、それは例えば顔料のように分離した分散相(A2)も形成しうる。さらに、それはもっぱら例えば水溶性塩のように水相(B)中に存在しうるか、または例えば湿潤剤のように水相(B)と分散相(A)との境界面に集まる。特に添加剤(A2)は、例えば分子分散溶解した有機染料のように分散相(A)と水相(B)との間で分散しうる。従って当業者は、添加剤(A2)が本発明によるスラリー中でいかに挙動するかを簡単に予測することができる。
【0078】
有利には添加剤(A2)は、残留物不含でまたは実質的に残留物不含で熱分解可能な塩;バインダー(B)とは異なる、物理的、熱的および/または化学線により硬化可能なバインダー;中和剤;熱硬化可能な反応性希釈剤;化学線により硬化可能な反応性希釈剤;不透明なおよび透明な、着色付与および/または効果付与する顔料;分子分散可溶性染料;不透明なおよび透明な充填剤;ナノ粒子;光安定剤;酸化防止剤;脱気剤;湿潤剤;乳化剤;スリップ剤;重合抑制剤;ラジカル重合の開始剤、殊に光開始剤;熱不安定性ラジカル開始剤;接着促進剤、流展剤;皮膜形成助剤;レオロジー助剤、例えば増粘剤および構造粘性垂れ調整剤(strukturviskose Sag control agents, SCAs);難燃剤;腐食抑制剤;流動助剤;ろう剤;乾燥促進剤;殺生剤および艶消し剤;からなる群から選択される。有利には本発明によるスラリーは、残留物不含でまたは実質的に残留物不含で熱分解可能な塩、光安定剤、湿潤剤、乳化剤、流展剤、光開始剤およびレオロジー助剤を添加剤(A2)として含有する。
【0079】
有利には本発明によるスラリーは、それがクリアコートのスラリーとして使用されるべき場合には、不透明な構成成分、殊に不透明な顔料および充填剤を含有しない。
【0080】
適した添加剤(A2)の例は、ドイツ国特許出願
−DE10126649A1、第16頁、第[0145]段落〜第18頁、第[0189]段落、
−DE10027270A1、第11頁、第[0106]段落および第[0107]段落または
−DE10135997A1、第3頁、第[0022]段落〜第4頁、第[0033]段落、および第4頁、第[0039]段落および第[0040]段落、第10頁、第[0092]段落〜第[0101]段落
から公知である。
【0081】
本発明によるスラリーが熱硬化可能な構成成分を含有する場合、有利にはそれらは寸法安定性粒子(A)中に<40質量%、有利には<30質量%および殊に<20質量%の量で含有されている。
【0082】
有利には本発明によるスラリーは、ドイツ国特許出願DE19908013A1、ドイツ国特許DE19841842C2またはドイツ国特許出願DE10055464A1から公知の二次分散法(Sekundaerdispersionsverfahren)によって製造される。
【0083】
この方法の場合、イオンにより安定化可能なバインダー(A1)ならびに場合により添加剤(A2)は、有機溶剤中に、殊に易揮発性の水混和性溶剤中に溶解される。結果的に生じる溶液は、中和剤(A2)によって水中に分散される。それから攪拌下で水により希釈される。まず油中水型エマルジョンが形成され、それはさらなる希釈に際して水中油型エマルジョンに変わる。この点は一般的に、エマルジョンに対して<50質量%の固体含有率の場合に達成され、かつ希釈中の粘度のより強い低下から外見上識別可能である。
【0084】
水中油型エマルジョンはまた、バインダー(A1)ならびに場合により添加剤(A2)の水中での溶融乳化によって直接的に製造されうる。
【0085】
その際、湿潤剤(A2)が有機溶液および/または水に、乳化前または乳化中に添加される場合に有利である。有利には、それは有機溶液に添加される。
【0086】
そのようにして得られた、なお溶剤を含有するエマルジョンから、引き続き共沸蒸留によって溶剤が除去される。
【0087】
本発明により有利なのは、取り除かれるべき溶剤が、70℃を下回る、有利には50℃を下回るおよび殊に40℃を下回る蒸留温度で留去される場合である。場合により蒸留圧力はこの際、比較的高沸点の溶剤の場合にこの温度範囲が保たれるように選択される。
【0088】
最も単純な場合、共沸蒸留は、エマルジョンを室温にて開いた容器中で数日間のあいだ攪拌することによって実施されうる。有利な場合、溶剤を含有するエマルジョンから真空蒸留によって溶剤が除去される。
【0089】
蒸発または蒸留により除去された水および溶剤の量は、高い粘度を回避するために水で補われる。水の添加は、あらかじめ、後から、または蒸発または蒸留の間にも少量ずつ添加することによって行ってよい。
【0090】
溶剤の減量後、分散した寸法安定性粒子のガラス転移温度は上昇し、かつ従来の溶剤含有エマルジョンに代わって構造粘性の水性分散液(B)、すなわち本発明によるスラリー(A)が形成される。
【0091】
場合により寸法安定性粒子は湿った状態で機械的に粉砕されるが、これは湿式粉砕とも呼ばれる。有利には、この際、粉砕物の温度が70℃を、有利には60℃をかつ殊に50℃を超えない条件が適用される。有利には、粉砕処理中の比エネルギー導入量は10〜1000、有利には15〜750および殊に20〜500Wh/gである。
【0092】
湿式粉砕のために、高せん断場または低せん断場を生み出すきわめて様々の装置を使用してよい。
【0093】
低せん断場を生み出す、適した装置の例は、通常のかつ公知の攪拌釜、ギャップ式ホモジナイザー(Spalthomogenisatoren)、マイクロフルイダイザーまたはディゾルバーである。
【0094】
高せん断場を生み出す、適した装置の例は、通常のかつ公知の攪拌ミルまたはインラインディゾルバー(Inline-Dissolver)である。
【0095】
とりわけ有利には、高せん断場を生み出す装置が適用される。これらについて攪拌ミルが本発明に従ってとりわけ有利であり、かつそれゆえ極めて有利には使用される。
【0096】
一般に、湿式粉砕に際して本発明によるスラリーは、適した装置、例えばポンプ、殊に歯車ポンプ、前で記載された装置によって供給され、かつ所望された粒度に達するまでこれによって循環させられる。
【0097】
有利には、本発明によるスラリーはその使用前に濾過される。このために、通常のかつ公知のフィルター装置およびフィルターが使用される。フィルターのメッシュ幅は幅広く変化してよく、かつ第一に粒子の粒度および粒度分布に従う。従って当業者は、適したフィルターをこの物理的パラメータを手がかりにして突きとめることができる。適したフィルターの例は、モノフィラメント−フラットフィルタまたは−バッグフィルターである。これらはPong(R)またはCuno(R)商標にて市販されている。
【0098】
本発明によるスラリーは、液体の被覆剤の塗布の通常のかつ公知の方法、例えば吹き付け塗布、噴霧塗布、ドクターブレート塗布、刷毛塗布、流し込み塗布、浸漬塗布、滴下塗布またはローラー塗布によって顕著に設けられうる。有利には、吹き付け塗布法が適用される。その際、有利には化学線は排除される。
【0099】
その塗布後、本発明によりスラリーは問題なく乾燥し、かつ加工温度で、一般に室温で皮膜形成を示す。すなわち、ウェット層として塗布された本発明によるスラリーは、室温またはわずかに高められた温度で水を放出しながら乾燥し、その際、その中に含有された粒子はその最初の形状を変え、融合しかつ均一な皮膜(A)を形成する。塗布された本発明によるスラリーは、しかし粉末状でも乾燥しうる。
【0100】
乾燥は、ガス状の、液体のおよび/または固体の高温媒体、例えば高温空気、加熱油または加熱ローラーの使用によって、またはマイクロ波放射線、赤外光および/または近赤外光(NIR)によって促進されうる。有利には、ウェット層は循環空気炉内で23〜150℃、有利には30〜120℃および殊に50〜100℃で乾燥される。
【0101】
引き続き、乾燥した本発明による層(A)はラジカル重合によって硬化される。
【0102】
ラジカル重合は、熱的に開始されえかつ維持されうる。その際、有利には、前で記載された装置および方法が使用される。少なからぬ場合において、多段加熱プログラムまたはいわゆる加熱ランプを運転させることによって、フロープロセスおよび硬化反応または架橋反応を一時的なオフセット(zeitlicher Versatz)により行うことも有利でありうる。有利には、架橋温度は120℃〜160℃である。相応する焼成時間は10分〜60分である。
【0103】
有利には、ラジカル重合は化学線、有利には電子線またはUV線、有利にはUV線、殊にUV−A線により開始されかつ維持される。
【0104】
方法論的に見て、化学線による硬化は特殊性を有するのではなく、例えばドイツ特許出願DE19818735A1、第10欄、第31行目〜第61行目、ドイツ国特許出願DE10202565A1、第9頁、第[0092]段落〜第10頁、第[0106]段落、ドイツ国特許出願DE10316890A1、第17頁、第[0128]段落〜第[0130]段落の中に、国際特許出願WO94/11123、第2頁、第35行目〜第3頁、第6行目、第3頁、第10行目〜第15行目、および第8頁、第1行目〜第14行目、または米国特許US6,743,466B2、第6欄、第53行目〜第7欄、第14行目の中で記載されるような、通常のかつ公知の装置および方法によって実施されうる。
【0105】
有利には、化学線による硬化は熱硬化と組み合わせられる。
【0106】
本発明によるスラリーおよび該スラリーから製造された硬化された本発明による材料の有利な特性に基づき、本発明によるスラリーおよび本発明による材料はきわめて幅広く適用されうる。有利には、それらは本発明による被覆、接着層およびシールの製造のための、被覆剤、接着剤およびシーラントとして使用される。
【0107】
本発明による被覆、接着層およびシールは、非常に様々の被覆されたおよび被覆されなかった基材の被覆、接着および封止に利用されうる。
【0108】
有利には基材は、金属、プラスチック、木材、セラミック、石、織物、繊維複合材料、革、ガラス、ガラス繊維、ガラス綿および岩綿、鉱物複合建築材料および樹脂複合建築材料、例えばプラスターボードおよびセメントボードまたは屋根板、ならびにこれらの材料の複合物からなる。
【0109】
有利には、基材は以下のものである:
−筋力、熱気または風で駆動される、陸路、水路または空路での移動手段、例えば自転車、軌道車、漕艇、帆艇、熱気球、気球またはグライダー、ならびにこの部材、
−エンジンの動力で駆動される、陸路、水路または空路での移動手段、例えばオートバイ、有用車両または自動車両、殊に乗用車、水上船舶または水中艦艇または航空機、ならびにこの部材、
−固定浮体、例えば浮標または港湾施設の一部、
−屋内領域および屋外領域における建築物、
−ドア、窓および家具および
−ガラス中空体、
−工業用小部品、例えばボルト、ナット、ハブキャップまたはリム、
−容器、例えばコイル、コンテナまたはパッケージ、
−電気部品、例えば電子巻線、例えばコイル、
−光学部品、
−機械部品および
−白物製品、例えば家庭用器具、暖房用ボイラーおよび放熱器。
【0110】
殊に、基材は自動車ボディおよびこの部材である。
【0111】
有利には、本発明によるスラリーは本発明による被覆の製造のために使用される。
【0112】
その際、特別な利点を有する本発明によるスラリーは、単層または多層のプライマー塗膜、耐食層、耐チッピング性下塗り層、サーフェーサー塗膜、ベース塗膜、ソリッドカラー塗膜およびクリア塗膜の製造のために、プライマー、下塗り層、サーフェーサー、ベースコート、ソリッドカラーコートおよびクリアコートとして使用されうる。
【0113】
際立った利点により、本発明によるスラリーは着色付与および/または効果付与する多層塗膜の範囲におけるクリア塗膜の製造のために使用され、それは殊に、通常のかつ公知のウェット・オン・ウェット法に従って(ドイツ国特許出願DE10027291A1、第13頁、第[0019]段落〜第14頁、第[0118]段落を参照のこと)ベースコートおよび本発明によるスラリーから製造される。
【0114】
その特別な利点に基づき、本発明によるスラリーおよび該スラリーから製造された本発明によるクリア塗膜は、乗用車(OEM)の初期塗膜にかつ乗用車の塗膜の、殊に高級車の塗膜の補修に顕著に適している。その際、補修は小面積で、例えばスポット補修としてか、または大面積で、例えばエンド・オブ・ライン補修(End-of-Line-Repair)として自動車メーカにおけるラインでも、また同様に塗装工場でも行われうる。
【0115】
補修前に、補修されるべき箇所の範囲の損傷表面を前処理してもよい。これは例えば表面を有機溶剤で溶解し、スムージングし、サンダー仕上げし、コロナ処理しまたはフレーム処理することによって行われうる。本発明によるスラリーの特別な一利点は、多くの場合そのような前処理を省くことができる点にある。
【0116】
少なくとも1つの本発明によるクリア塗膜を包含する本発明による着色付与および/または効果付与する多層塗膜は、自動車塗膜に課される全ての要求を満たし(ヨーロッパ特許EP0352298B1、第15頁、第42行目〜第17頁、第40行目を参照のこと)、かつその外見(外観)に関してクラスA表面に完全に相当する。殊に該塗膜はとりわけ滑らかであり、高い層厚でもコートの欠陥、例えばクレーターまたは亀裂を含まず、耐候性、耐化学薬品性、耐凝縮水性、耐チッピング性であり、かつ引掻に強い。
【0117】
実施例
製造例1
バインダー(A1)の製造
イソプロペニリデンジシクロヘキサノールを、60℃で攪拌しながらヒドロキシエチルアクリレート中に粗分散させた。この懸濁液に、ポリイソシアネート、ペンタエリトリトール−トリ/テトラ−アクリレート、ヒドロキノンモノメチルエーテル、1,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾールおよびメチルエチルケトンを添加した。ジブチルスズジラウレートの添加後、反応混合物は発熱した。それを、遊離イソシアネート基の含有量が一定になるまで75℃で数時間にわたって攪拌した。引き続き、グリコール酸およびメタノールを添加し、遊離イソシアネート基がもはや検出可能でなくなるまで攪拌した。
【0118】
ヒドロキシル基含有化合物およびポリイソシアネートを、以下で記載された当量比がもたらされる量で使用した:
イソプロペニリデンジシクロヘキサノール 33.7当量 OH
2−ヒドロキシエチルアクリレート 24.7当量 OH
ペンタエリトリトール−トリ/テトラ−アクリレート(平均OH価:100〜111mg KOH/g) 24.7当量 OH
BASF AG社のBasonat(R)HI 100 56.25当量 NCO
国際特許出願WO00/39183に記載のヘキサメチレンジイソシアネートおよび2−ヒドロキシエチルアクリレートからのアロファネート 18.75当量 NCO
Bayer AG社のDesmodur(R)W 25当量 NCO
ヒドロキノンモノメチルエーテル 固体に対して0.05質量%
1,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール 固体に対して0.1質量%
メチルエチルケトン 70質量%の固体含有率に相当する
ジブチルスズジラウレート 固体に対して0.02質量%
グリコール酸 6.8当量 OH
メタノール 10.1当量 OH
結果的に生じるバインダー(A1)は、2.5℃のガラス転移温度、2.0Pasの23℃での粘度、3.12当量/kg 固体 のオレフィン系不飽和二重結合の含有量および11.41mg KOH/g 固体 の酸価を有していた。それはクリアコートのスラリーの製造のために顕著に適していた。
【0119】
例1
クリアコートのスラリーの製造
製造例1に従うバインダー(A1)の溶液738.165質量部、メチルエチルケトン中のTinuvin(R)CGL 052(トリアジン基および2つの環状の立体障害されたアミノエーテル基を含有する、Ciba Specialty Chemicals社の光安定剤)の50パーセントの溶液10.438質量部、Tinuvin(R)400(Ciba Specialty Chemicals社の光安定剤)の9.185質量部、Lutensol(R)AT 50(BASF AG社の湿潤剤)7.228質量部、トリメチルアミン8.246質量部、Ciba Specialty Chemicals社の光開始剤 Irgacure(R)184およびBASF AG社のLucirin(R)TPO(質量比5:1)の混合物の20.876質量部を互いに混合した。結果的に生じる混合物を、1.004質量部の脱イオン水中に分散させた。この分散液に酢酸アンモニウム0.117質量部を添加した。バインダー(B1)の中和度は75%であった。引き続き分散液を、1μm−Cuno(R)ホワイトフィルター(Filter 1μm-Cuno(R)weiss)によって濾過した。
【0120】
濾過した分散液を開いた容器中で24時間のあいだ室温で攪拌した結果、メチルエチルケトンが蒸発した。
【0121】
溶剤不含の分散液を、Baysilone(R)Al 3468(Borchers社の流展剤)0.788質量部およびAcrysol(R)RM−8W(Rohm&Haas社の非イオン性会合性増粘剤)15.776質量部で補完した。
【0122】
結果的に生じるクリアコートのスラリーの平均粒度 (z平均)を、光子相関分光法(Malvern Zetasizer(R)1000)によって測定した;それは140nmであった。
【0123】
クリアコートのスラリーは36.2質量%の固体含有率を有していた。それは乗用車のための着色付与および/または効果付与する多層塗膜の製造のために顕著に適していた。
【0124】
例2
着色付与する多層塗膜の製造
着色付与する多層塗膜の製造のために、試験パネルとして、通常のかつ公知の、カソードに析出されたかつ焼成された電着塗膜で被覆された鋼パネルを使用した。電着塗膜上に、そのつど、通常のかつ公知のBASF Coating AGの水ベースのサーフェーサーからの一層と、通常のかつ公知のBASF Coating AG社の黒色の水性ベースコートからの一層をウェット・オン・ウェット法により塗布した。それらの塗布後、層をそのつど80℃で10分間、前乾燥した。
【0125】
引き続き、乾燥したベースコート層上に例1のクリアコートのスラリーをくさび形で塗布し、そうして、結果的に生じるクリアコート層の乾燥およびサーフェーサー層、ベースコート層およびクリアコート層の同時硬化後に10〜100μmの層厚のくさび形のクリア塗膜が結果的に生じた。硬化自体は、熱的に155℃で15分間、かつ酸素減損雰囲気(酸素1体積%)下で1.5J/cmの線量のUV線(IST社の鉄でドープされた水銀ランプ)により行った。クリア塗膜は、層厚>80μmの場合ですらクレーター、マッドクラックおよび微小欠陥(星空)を含んでいなかった。
【0126】
さらに、乾燥したベースコート層上に例1のクリアコートのスラリーを均一な層厚で塗布し、そうして、結果的に生じるクリアコート層の乾燥およびサーフェーサー層、ベースコート層およびクリアコート層の同時硬化後に40μmの層厚のクリア塗膜が結果的に生じた。硬化自体は、ここでも熱的に空気循環炉内で155℃にて15分間、かつ酸素減損雰囲気(酸素1体積%)下で1.5J/cmの線量のUV線(IST社の鉄でドープされた水銀ランプ)により行った。
【0127】
結果的に生じる黒色の多層塗膜は、とりわけ高い程度において明るく、光沢を持ち、耐化学薬品性、耐チッピング性で、硬性、柔軟性で、引掻に強くかつ耐凝縮水性であり、このことは以下の試験結果を手がかりにして根拠づけることができた。
【0128】
耐化学薬品性:
ダイムラークライスラー−勾配炉−試験(DaimlerChrysler-Gradientenofen-Test)
試験物質 以下からの目に見える損傷
硫酸:44℃
NaOH:48℃
樹脂:>75℃
脱イオン水:>75℃
凝縮水:
一定雰囲気−試験(CC 240 h)
ブリスタリングの度合い(Blasengrad Menge):0
サイズ:0
備考:わずかな膨張、軽度のかぶり
クロスカット試験
テープ剥離:GT−1
硬度:
フィッシャースコープ−貫入硬度:
ユニバーサル硬度:25.6mNで137.4N/mm
平均貫入深さ:2.66μm
相対的な弾性ひずみエネルギー:64.5%
25.6mNでのクリープ挙動:10.74%
0.4mNでのクリープ挙動:33.64%
チッピング:
VDA:
特性値:1.5
さび度:0.5
球衝撃:正常
耐引掻性:
Amtec−Kistlerの実験室用洗浄装置
初期光沢(20゜):89単位
洗浄なしでの残留光沢:65単位
洗浄後の残留光沢:71単位
残留光沢:81%
砂試験(ドイツ国特許出願DE19839453A1、第9頁、第1行目〜第63行目):
残留光沢:84%

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分散相として光子相関分光法により測定された80〜750nmの平均粒度(z平均)を有する、固体のおよび/または高粘性の、貯蔵条件および適用条件下で寸法安定性粒子(A)を含有する、ラジカル重合によって硬化可能な、揮発性有機化合物を完全にまたは実質的に含まない構造粘性の粉末水性分散液であって、その際、該粒子(A)は、−70℃〜+50℃のガラス転移温度、2〜10当量/kgのオレフィン系不飽和二重結合の含有量および0.05〜15当量/kgの酸基の含有量を有する少なくとも1つのラジカル架橋可能なバインダー(A1)を(A)に対して50〜100質量%の量で含有する、ラジカル重合によって硬化可能な、揮発性有機化合物を完全にまたは実質的に含まない構造粘性の粉末水性分散液。
【請求項2】
バインダー(A1)が1000〜50000ダルトンの数平均分子量を有することを特徴とする、請求項1記載の粉末分散液。
【請求項3】
オレフィン系不飽和二重結合が、(メタ)アクリレート基、エタクリレート基、クロトネート基、シンナメート基、ビニルエーテル基、ビニルエステル基、ジシクロペンタジエニル基、ノルボルネニル基、イソプレニル基、イソプロペニル基、アリル基またはブテニル基;ジシクロペンタジエニルエーテル基、ノルボルネニルエーテル基、イソプレニルエーテル基、イソプロペニルエーテル基、アリルエーテル基またはブテニルエーテル基またはジシクロペンタジエニルエステル基、ノルボルネニルエステル基、イソプレニルエステル基、イソプロペニルエステル基、アリルエステル基またはブテニルエステル基からなる群から選択された基に存在することを特徴とする、請求項1または2記載の粉末分散液。
【請求項4】
オレフィン系不飽和二重結合が(メタ)アクリレート基に存在することを特徴とする、請求項3記載の粉末分散液。
【請求項5】
バインダー(A1)が、オリゴマーのおよびポリマーのエポキシド(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレートおよびカーボネート(メタ)アクリレートからなる群から選択されることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の粉末分散液。
【請求項6】
バインダー(A1)がオリゴマーのまたはポリマーのウレタン(メタ)アクリレートであることを特徴とする、請求項5記載の粉末分散液。
【請求項7】
寸法安定性粒子(A)が、光子相関分光法により測定された80〜400nmの平均粒度(z平均)を有することを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の粉末分散液。
【請求項8】
粉末分散液が、残留物不含でまたは実質的に残留物不含で熱分解可能な塩;バインダー(B)とは異なる、物理的、熱的および/または化学線により硬化可能なバインダー;中和剤;熱硬化可能な反応性希釈剤;化学線により硬化可能な反応性希釈剤;不透明なおよび透明な、着色付与および/または効果付与する顔料;分子分散可溶性染料;不透明なおよび透明な充填剤;ナノ粒子;光安定剤;酸化防止剤;脱気剤;湿潤剤;乳化剤;スリップ剤;重合抑制剤、ラジカル重合の開始剤、殊に光開始剤;熱不安定性ラジカル開始剤;接着促進剤;流展剤;皮膜形成助剤;レオロジー助剤、例えば増粘剤および構造粘性垂れ調整剤,SCA;難燃剤;腐食抑制剤;流動助剤;ろう剤;乾燥促進剤;殺生剤および艶消し剤;からなる群から選択された、なお少なくとも1つの添加剤(B2)を含有することを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の粉末分散液。
【請求項9】
請求項1から8までのいずれか1項記載の、ラジカル重合によって硬化可能な、揮発性有機化合物を完全にまたは実質的に含まない構造粘性の粉末水性分散液の製造法において、粒子(A)を水性媒体(B)中に分散させることを特徴とする、粉末分散液の製造法。
【請求項10】
粒子(A)を水性媒体(B)中に二次分散法によって分散させ、
その際、
−イオンにより安定化可能なバインダー(A1)ならびに場合により添加剤(A2)を有機溶剤中に溶解し、
−結果的に生じる溶液を中和剤(A2)によって水中に分散させ、
−結果的に生じる分散液を水により希釈し、それによってまず油中水型エマルジョンが形成され、それはさらなる希釈に際して水中油型エマルジョンに変わり、かつ
−有機溶剤を水中油型エマルジョンから除去する
ことを特徴とする、請求項10記載の方法。
【請求項11】
被覆、接着層およびシールを製造するための、被覆剤、接着剤およびシーラントとしての請求項1から8までのいずれか1項記載の、ラジカル重合によって硬化可能な、揮発性有機化合物を完全にまたは実質的に含まない構造粘性の粉末水性分散液のおよび請求項9または10記載の方法に従って製造された、ラジカル重合によって硬化可能な、揮発性有機化合物を完全にまたは実質的に含まない構造粘性の粉末水性分散液の使用。
【請求項12】
被覆剤が、単層または多層のプライマー塗膜、耐食層、耐チッピング性下塗り層、サーフェーサー塗膜、ベース塗膜、ソリッドカラー塗膜およびクリア塗膜の製造のために、プライマー、下塗り層、サーフェーサー、ベースコート、ソリッドカラーコートおよびクリアコートとして使用されることを特徴とする、請求項11記載の使用。
【請求項13】
クリアコートが、着色付与および/または効果付与する多層塗膜の範囲における単層または多層のクリア塗膜の製造に用いられることを特徴とする、請求項12記載の使用。
【請求項14】
着色付与および/または効果付与する多層塗膜が、ウェット・オン・ウェット法によって製造されることを特徴とする、請求項13記載の使用。
【請求項15】
ラジカル重合が熱的におよび/または化学線により開始されかつ維持されることを特徴とする、請求項11から14までのいずれか1項記載の使用。

【公表番号】特表2009−515018(P2009−515018A)
【公表日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−539330(P2008−539330)
【出願日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際出願番号】PCT/EP2006/010718
【国際公開番号】WO2007/054289
【国際公開日】平成19年5月18日(2007.5.18)
【出願人】(390008981)ビーエーエスエフ コーティングス アクチェンゲゼルシャフト (155)
【氏名又は名称原語表記】BASF Coatings AG
【住所又は居所原語表記】Glasuritstrasse 1, D−48165 Muenster,Germany
【Fターム(参考)】