説明

リサイクル樹脂添加ガラス繊維強化スタンパブルシートとその成形品

【課 題】 ポリウレタンを含んだインパネリサイクル材を活用した機械的強度に優れるガラス繊維強化スタンパブルシートとその成形品の提供。
【解決手段】(A)ポリウレタンを含んだ自動車インスツルメントパネルリサイクル材と、(B)熱可塑性樹脂と、(C)ガラス繊維とからなる機械的強度に優れたガラス繊維強化スタンパブルシート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リサイクル活用の難しいポリウレタンを含んだ自動車インスツルメントパネル(以下、「インパネ」と略称することもある)リサイクル材を添加しても機械的強度に優れたガラス繊維強化スタンパブルシートとその成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス繊維強化熱可塑性樹脂シートからなるスタンパブルシート(例えば、特許文献1)は、機械的強度、特に耐衝撃強度に優れており、また、射出成形に比べ金型費が安価であり、一方、FRPに比べ成形サイクルが短く、成形品形状の自由度があるため、近年、自動車部品等の成形材料として広く用いられている。
【0003】
また、自動車の製造段階で発生する成形不良のインパネや廃車、修理交換などにより発生する廃インパネは、粉砕した後、低級なシート材などとしてリサイクルが可能であるものの、貼り合わされた発泡ポリウレタンの容易な分離方法が開発されておらず、近年埋め立て処分を主としてきた。しかしながら、埋め立て地の制約などからリサイクル技術の開発が課題となり、その試みの1つとして、多層成形したインパネを単に粉砕、ペレット化し成形しただけの再生材をインパネなどの材料として再利用しようとする検討がなされた。
しかし、このような単純リサイクル材では、比較的大きな発泡ポリウレタン片(100μm以上)が基材樹脂中に分散し、異物として物性、特に耐衝撃性(衝撃強さ、脆化温度)に悪影響を及ぼし、再利用することは品質上不可能であった。
【0004】
これに対して、『発泡ポリウレタン付樹脂の連続再生処理法』(特許文献2)は、発泡ポリウレタン付樹脂の粉砕品を高温・高圧の水または特定のアルコール処理液および/または処理液蒸気と接触させると共に溶融・混練して発泡ポリウレタンを分解・微細化して溶融樹脂中に分散し、基質材とともに再利用する方法である。この方法は、物性低下の少ないリサイクル材が得られる利点があるが、装置には特別なシリンダー加熱装置、スクリュー構成、注入・排気システムを用いた2軸スクリュー型押出機が必要であり、また非常に高価な再利用方法である。
【特許文献1】特公平4−65854号公報
【特許文献2】特開平8−20023号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、リサイクル活用の難しいポリウレタンを含んだ自動車インパネリサイクル材を有効活用した機械的強度に優れるガラス繊維強化スタンパブルシートとその成形品を提供することである。また、本発明の目的は、リサイクル活用の難しいポリウレタンを含んだ自動車インパネリサイクル材の有効な活用方法となり得るガラス繊維強化スタンパブルシートの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、比較的安価であるが物性低下が大きいためにリサイクルが難しいとされてきたポリウレタンを含んだ自動車インパネリサイクル材と、熱可塑性樹脂と、ガラス繊維とを組み合わせることで、より機械的強度の優れたガラス繊維強化スタンパブルシートとその成形品を得ることができることを見出し、上記した従来の問題を一挙に解決できることを知見し、さらに検討を重ねて本発明を完成させた。
【0007】
すなわち、本発明は、
[1] (A)ポリウレタンを含んだ自動車インスツルメントパネルリサイクル材と、(B)熱可塑性樹脂と、(C)ガラス繊維とからなることを特徴とするガラス繊維強化スタンパブルシート、
[2] (A)ポリウレタンを含んだ自動車インスツルメントパネルリサイクル材1〜30重量%と、(B)熱可塑性樹脂14〜84重量%と、(C)ガラス繊維15〜70重量%とからなることを特徴とするガラス繊維強化スタンパブルシート、
[3] (A)ポリウレタンを含んだ自動車インスツルメントパネルリサイクル材が、自動車シュレッダーダストであることを特徴とする前記[1]または[2]に記載のガラス繊維強化スタンパブルシート、
[4] (A)自動車インスツルメントパネルリサイクル材に含まれるポリウレタンの含有量が1〜100重量%である前記[1]〜[3]のいずれかに記載のガラス繊維強化スタンパブルシート、
[5] (B)熱可塑性樹脂が、ポリプロピレン樹脂若しくはポリエチレン樹脂又はこれらをブレンドした樹脂である前記[1]〜[4]のいずれかに記載のガラス繊維強化スタンパブルシート、
[6] (C)ガラス繊維がガラス繊維マットの形態である前記[1]〜[5]のいずれかに記載のガラス繊維強化スタンパブルシート、
[7] (C)ガラス繊維が、連続スワール状ストランド及び/又はチョップドストランドのニードルパンチング不織布の形態である前記[1]〜[3]のいずれかに記載のガラス繊維強化スタンパブルシート、
[8] ポリウレタンを含んだ自動車インスツルメントパネルリサイクル材および熱可塑性樹脂からなるシート状物の両面にガラス繊維マットを積層し、さらにシート状物とガラス繊維マットとの積層体の両面に熱可塑性樹脂シートを積層してなるシート状物とガラス繊維マットと熱可塑性樹脂シートとの積層体を加熱・加圧してなることを特徴とするガラス繊維強化スタンパブルシート、
[9] 前記[1]〜[8] のいずれかに記載のガラス繊維強化スタンパブルシートからなる成形品、
[10] ポリウレタンを含んだ自動車インスツルメントパネルリサイクル材と熱可塑性樹脂とをシート状に押出し成形する工程、得られたシート状物の両面にガラス繊維マットを積層し、得られたシート状物とガラス繊維マットとの積層体の両面に熱可塑性樹脂シートをさらに積層する工程、シート状物とガラス繊維マットと熱可塑性樹脂シートとの積層体を加熱・加圧し、ついで冷却固化させてガラス繊維強化スタンパブルシートに成形する工程を含むことを特徴とするガラス繊維強化スタンパブルシートの製造方法、
[11] ポリウレタンを含んだ使用済み自動車インスツルメントパネルを単純粉砕するか、またはポリウレタン部材を有する使用済み自動車インスツルメントパネルを、機械的剥離方法でポリウレタン部材とその他の部材に分離し、ついでポリウレタン部材を回収することにより、ポリウレタンを含んだ自動車インスツルメントパネルリサイクル材を調製する工程、
ポリウレタンを含んだ自動車インスツルメントパネルリサイクル材と熱可塑性樹脂とをシート状に押出し成形する工程、
得られたシート状物の両面にガラス繊維マットを積層し、得られたシート状物とガラス繊維マットとの積層体の両面に熱可塑性樹脂シートをさらに積層する工程、
シート状物とガラス繊維マットと熱可塑性樹脂シートとの積層体を加熱・加圧し、ついで冷却固化させてガラス繊維強化スタンパブルシートに成形する工程を含むことを特徴とするガラス繊維強化スタンパブルシートの製造方法、および
[12] ガラス繊維強化スタンパブルシートの原料としてのポリウレタンを含んだ自動車インスツルメントパネルリサイクル材の使用、
に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明のガラス繊維強化スタンパブルシートは、従来からのガラス繊維強化スタンパブルシートよりも高い機械的強度を有しており、より要求性能の高い製品への製品化が可能である。また、本発明のガラス繊維強化スタンパブルシートの成形品は、高い機械的強度を有しているだけでなく、従来のガラス繊維強化スタンパブルシートに比べ、剛性が高い分、薄肉化が可能である。
【0009】
また、本発明のガラス繊維強化スタンパブルシートとその成形品は、比較的安価であるが物性低下が大きいために、従来より、リサイクル材の用途利用が難しいとされてきたポリウレタンを含んだ自動車インパネを有効に活用することができる。
【0010】
また、本発明のガラス繊維強化スタンパブルシートの製造方法は、ポリウレタンを含んだ自動車インパネリサイクル材からガラス繊維強化スタンパブルシートを工業的有利に製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明について説明する。
本発明のガラス繊維強化スタンパブルシートは、(A)ポリウレタンを含んだ自動車インパネリサイクル材と、(B)熱可塑性樹脂と、(C)ガラス繊維とからなることを特徴とする。
【0012】
(自動車インスツルメントパネルリサイクル材)
本発明においては、原料(A)として、ポリウレタンを含んだ自動車インスツルメントパネルリサイクル材を用いる。
ここで、ポリウレタンを含んだ自動車インパネリサイクル材としては、多層成形した自動車インパネを単に粉砕した単純リサイクル材でもよく、また、ポリウレタン樹脂を構成成分とするポリウレタン部材を有する使用済み自動車インパネを、機械的剥離方法でポリウレタン部材とその他の部材に分離し、ついでポリウレタン部材を回収したリサイクル材でもよい。
また、ポリウレタンを含んだ自動車インパネリサイクル材は、使用済み自動車インパネからなる自動車シュレッダーダストであるのが好ましい。
【0013】
(熱可塑性樹脂)
また、本発明においては、原料(B)として、熱可塑性樹脂を用いる。
ここで、熱可塑性樹脂としては、特に制限はなく、様々なものが挙げられる。より具体的には、例えば、ポリプロピレン樹脂やポリエチレン樹脂などのポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂(例えばポリエチレンテレフタレート樹脂)、ポリアミド樹脂、またはこれらのブレンド樹脂等が挙げられる。これらの中でもポリプロピレン樹脂もしくはポリエチレン樹脂またはそのブレンドした樹脂が好ましく、特にポリプロピレン樹脂が好ましい。
また、原料(B)である熱可塑性樹脂は、シート状物のマトリックス樹脂として原料(A)とともに用いられたり、ガラス繊維の含浸樹脂として用いられたりするのがよい。
【0014】
また、本発明においては、原料(C)として、ガラス繊維を用いる。
ここで、ガラス繊維はガラス繊維マットの形態であるのがよく、該ガラス繊維マットは、連続スワール状ストランド及び/またはチョップドストランドから、常法に従いニードルパンチ処理して得られるニードルパンチ不織布であるのが好ましい。
このガラス繊維マットは、通常、目付200g/m〜2000g/mのものであるのがよく、好ましくは、目付300g/m〜1600g/mである。目付2000g/mを越えるとニードルパンチ機への負荷が大きくなるため、好ましくない。また、目付200g/m未満であるとガラス繊維の分布が不均一になり、好ましくない。
また、ニードルパンチ処理時のパンチ密度は、通常20本/cm〜60本/cmであり、好ましくは27本/cm〜54本/cmである。60本/cmを越えるガラス繊維マットを用いたガラス繊維強化スタンパブルシートではガラス繊維の損傷が大きいため、物性の低下が著しくなる。20本/cm以下であるとガラス繊維の開繊切断が不十分になり、ガラス繊維の分散性、流動性が好ましくない。
【0015】
なお、ガラス繊維マットのガラス繊維の繊維径は、通常9〜25μm、好ましくは10〜23μmである。ガラス繊維が25μmを超えると、ガラス繊維強化スタンパブルシートの引張強度が低下するので好ましくない。
原料(C)としてガラス繊維をガラス繊維マットの形態で用いることにより、本発明のガラス繊維強化スタンパブルシートの強度、剛性、耐久性などが非常に優れたものとなる。また、ガラス繊維マットは、複合マットでもよく、ガラス繊維を主とする層の他に、熱可塑性樹脂からなる繊維を主とする層を有していてもよい。
このようなガラス繊維の材質については特別な制限はなく、無アルカリガラス、低アルカリガラス、含アルカリガラスのいずれでもよく、従来からのガラス繊維として使用されている各種の組成のものを使用することができる。
【0016】
上記各成分の配合割合は、特に限定されないが、次のようにするのが好ましい。まず、(A)ポリウレタンを含んだ自動車インパネリサイクル材は、多層成形したインパネを単に粉砕したものを用いる場合は、ガラス繊維強化スタンパブルシート全体に対して、通常1〜30重量%、好ましくは1〜28重量%である。配合割合が30重量%を超えると物性、外観性が著しく低下する可能性があるため、好ましくない。また、使用済み自動車インパネから機械的剥離方法で分離されたポリウレタン部材を用いる場合は、ガラス繊維強化スタンパブルシート全体に対して、通常1〜15重量%、好ましくは1〜10重量%である。配合割合が15重量%を超えると物性、外観性が著しく低下する可能性があるため、好ましくない。
【0017】
また、(B)熱可塑性樹脂は、ガラス繊維強化スタンパブルシート全体に対して、通常14〜84重量%、好ましくは49〜79重量%の割合で用いられる。ここで、熱可塑性樹脂の配合割合が、14重量%未満であると、外観、流動性が悪くなり、一方、84重量%を超えると高い機械的強度の発現ができないため、いずれも好ましくない。
【0018】
また、(C)ガラス繊維は、ガラス繊維強化スタンパブルシート全体に対して、通常15〜70重量%、好ましくは20〜50重量%の割合で用いられる。ここで、ガラス繊維の配合割合が、15重量%未満であると製品の機械的強度を充分に向上させることができず、一方、ガラス繊維の配合割合が50重量%を超えると、製品の外観を著しく損なうため、いずれも好ましくない。
【0019】
本発明のガラス繊維強化スタンパブルシートは、基本的に上記の成分からなるものがあるが、本発明の目的を損なわない限り、必要に応じて、他の無機充填材、有機充填材、酸化防止剤、紫外線吸収剤など各種添加剤を適宜用いることができる。
また、本発明のガラス繊維強化スタンパブルシートのより具体的な形態としては、ポリウレタンを含んだ自動車インスツルメントパネルリサイクル材および熱可塑性樹脂からなるシート状物の両面にガラス繊維マットを積層し、さらにシート状物とガラス繊維マットとの積層体の両面に熱可塑性樹脂シートを積層してなるシート状物とガラス繊維マットと熱可塑性樹脂シートとの積層体を加熱・加圧してなるものが好適に挙げられる。本品は、自動車インパネリサイクル材が分散された熱可塑性樹脂層とガラス繊維マットとが熱可塑性樹脂を用いるラミネート法により一体化したものである。
【0020】
(ガラス繊維強化スタンパブルシートの製造方法)
本発明のガラス繊維強化スタンパブルシートの製造方法は、(A)ポリウレタンを含んだ自動車インスツルメントパネルリサイクル材、(B)熱可塑性樹脂および(C)ガラス繊維からガラス繊維強化スタンパブルシートを製造できさえすれば特に限定されないが、好ましくは、ポリウレタンを含んだ自動車インスツルメントパネルリサイクル材と熱可塑性樹脂とをシート状に押出し成形するシート状物調製工程、得られたシート状物の両面にガラス繊維マットを積層し、得られたシート状物とガラス繊維マットとの積層体の両面に熱可塑性樹脂シートをさらに積層する積層工程、シート状物とガラス繊維マットと熱可塑性樹脂シートとの積層体を加熱・加圧し、ついで冷却固化させてガラス繊維強化スタンパブルシートに成形するガラス繊維強化スタンパブルシート成形工程を含む製造方法である。
以下、図1を用いて、本発明の好ましいガラス繊維強化スタンパブルシートの製造方法につき説明する。
【0021】
(シート状物調製工程)
押出機(6)に、ポリウレタンを含んだ自動車インパネリサイクル材、熱可塑性樹脂、及び所望により他の添加剤を入れて、熱可塑性樹脂の融点以上に加熱し、ついでシート状に押出すことによりシート状物(3)とする。このシート状物(3)は、ポリウレタンを含んだ自動車インパネリサイクル材が分散された熱可塑性樹脂層である。
【0022】
(積層工程)
前工程で得られたシート状物(3)の両面に、ガラス繊維マット(2a、2b)を1枚ずつ供給して積層し、さらに、ガラス繊維マット(2a、2b)とシート状物(3)との積層体の両面に、熱可塑性樹脂シート(1a、1b)を1枚ずつ供給して積層する。
【0023】
(シート成形工程)
ローラー(加熱加圧装置)(5a、5b)を用いて、ガラス繊維マット(2a、2b)とシート状物(3)と熱可塑性樹脂シート(1a、1b)との積層体を加熱及び加圧し、ついで冷却固化させることで、シート状のガラス繊維強化スタンパブルシートを得ることができる。加熱温度は、用いる熱可塑性樹脂の種類によっても異なるが、例えば、熱可塑性樹脂シート(1a、1b)の熱可塑性樹脂としてポリプロピレン樹脂を用いる場合、加熱温度としては170〜250℃であることが好ましい。さらに加圧圧力としては0.1〜1MPaであることが好ましい。また、冷却時の温度としては熱可塑性樹脂の凝固点以下であれば特に制限されないが、室温〜80℃であることが好ましい。
【0024】
本発明のガラス繊維強化スタンパブルシートの厚みは、通常1〜10mm、好ましくは2〜5mmである。このシートの厚みが1mm未満であると、シートの製造が困難となり、一方、このシートの厚みが10mmを超えると、スタンピング成形時の予備加熱が困難となるため、いずれも好ましくない。
【0025】
このようにして得られる本発明のガラス繊維強化スタンパブルシートを、常法に従いスタンピング成形により、所望の形状に成形することによりガラス繊維強化スタンパブルシートからなる成形品を得ることができる。
ここで、スタンピング成形時の成形温度は、通常150〜380℃の範囲であるが、熱可塑性樹脂がポリプロピレン樹脂である場合には、通常170℃〜250℃の範囲である。成形温度が150℃未満であると、樹脂の溶融状態が悪く、好適なスタンピング成形ができなくなる恐れがある。一方、成形温度が380℃を超えると、樹脂劣化の原因となる恐れがある。
また、成形圧力は、通常5MPa以上、好ましくは10〜30MPaの範囲である。成形圧力が5MPa未満であると、未充填成形物(ショートショット)が生じる恐れがある。
このようにして従来のガラス繊維スタンパブルシート(例えば特公平4−65854号公報記載のもの)と同等以上の高強度、高剛性の成形品を得ることができる。
【実施例】
【0026】
以下、本発明を実施例により詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されることはない。
実施例1〜3及び比較例1
押出機に、(A)成分であるポリウレタンを含んだ自動車インスツルメントパネルリサイクル材、および(B)成分であるポリプロピレンホモポリマー(比重:0.91、MFR:10g/10分、出光石油化学社製)とポリプロピレンランダムコポリマー(比重:0.91、MFR:10g/10分、出光石油化学社製)とを1:1の重量割合でブレンドしたもの(b1という)を押出機に入れてポリプロピレン樹脂を溶融したのち、シート状に押出し成形するとともに、押出されたシート状物の両面に、(C)成分としてのガラス繊維のマット(目付620g/m、繊維径23μm)を表裏1枚ずつ供給して積層し、さらにこれらガラス繊維マットとシート状物との積層体の両面に、別の(B)成分として、上記(B)成分と同様の組成のポリプロピレンホモポリマー(比重:0.91、MFR:10g/10分、出光石油化学社製)とポリプロピレンランダムコポリマー(比重:0.91、MFR:10g/10分、出光石油化学社製)とを1:1の重量割合でブレンドしたものからなる熱可塑性樹脂シート(b2という)を表裏1枚ずつ供給して積層した後、ラミネーターを用いて0.3MPa、230℃、4分間、加熱及び加圧し、ポリプロピレン樹脂をガラス繊維マット層に含浸させ、次いで冷却固化させることで、ガラス繊維強化スタンパブルシートを得た。
なお、各成分の種類及び配合割合は、表1に示した通りである。
【0027】
さらに、得られたそれぞれのガラス繊維強化スタンパブルシートを、同一条件でスタンピング成形して、図2に示す形状の成形品を製造した。得られた成形品について、その底部から引張、曲げ、アイゾッド(Izod)衝撃試験片を切出し、引張試験はASTM D638、曲げ試験はASTM D790、Izod衝撃試験はASTM D256に準拠して測定した。これらの物性の測定結果を表1に示す。
【0028】
【表1】

【0029】
表1から、次のようなことが分かる。
本発明のガラス繊維強化スタンパブルシートから得られた成形品(実施例1〜3)は、従来のガラス繊維強化スタンパブルシートから得られる成形品に相当する比較例1の成形品と比べて、曲げ強度、曲げ弾性率、Izod衝撃強度に優れていることが分かる。また、一般的に言われているインパネリサイクル品を添加すると物性が低下する現象は実施例1〜3では見られない。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明のガラス繊維強化スタンパブルシートは、例えば自動車部品等の成形材料として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明のガラス繊維強化スタンパブルシートの製造方法を示す模式図である。
【図2】実施例及び比較例で得られた成形品を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0032】
1 熱可塑性樹脂シート(1a、1b)
2 ガラス繊維マット(2a、2b)
3 シート状物
4 ガラス繊維強化スタンパブルシート
5 ローラー(加熱加圧装置)(5a、5b)
6 押出機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリウレタンを含んだ自動車インスツルメントパネルリサイクル材と、(B)熱可塑性樹脂と、(C)ガラス繊維とからなることを特徴とするガラス繊維強化スタンパブルシート。
【請求項2】
(A)ポリウレタンを含んだ自動車インスツルメントパネルリサイクル材1〜30重量%と、(B)熱可塑性樹脂14〜84重量%と、(C)ガラス繊維15〜70重量%とからなることを特徴とするガラス繊維強化スタンパブルシート。
【請求項3】
(A)ポリウレタンを含んだ自動車インスツルメントパネルリサイクル材が、自動車シュレッダーダストであることを特徴とする請求項1または2に記載のガラス繊維強化スタンパブルシート。
【請求項4】
(A)自動車インスツルメントパネルリサイクル材に含まれるポリウレタンの含有量が1〜100重量%である請求項1〜3のいずれかに記載のガラス繊維強化スタンパブルシート。
【請求項5】
(B)熱可塑性樹脂が、ポリプロピレン樹脂若しくはポリエチレン樹脂又はこれらをブレンドした樹脂である請求項1〜4のいずれかに記載のガラス繊維強化スタンパブルシート。
【請求項6】
(C)ガラス繊維がガラス繊維マットの形態である請求項1〜5のいずれかに記載のガラス繊維強化スタンパブルシート。
【請求項7】
(C)ガラス繊維が、連続スワール状ストランド及び/又はチョップドストランドのニードルパンチング不織布の形態である請求項1〜3のいずれかに記載のガラス繊維強化スタンパブルシート。
【請求項8】
ポリウレタンを含んだ自動車インスツルメントパネルリサイクル材および熱可塑性樹脂からなるシート状物の両面にガラス繊維マットを積層し、さらにシート状物とガラス繊維マットとの積層体の両面に熱可塑性樹脂シートを積層してなるシート状物とガラス繊維マットと熱可塑性樹脂シートとの積層体を加熱・加圧してなることを特徴とするガラス繊維強化スタンパブルシート。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載のガラス繊維強化スタンパブルシートからなる成形品。
【請求項10】
ポリウレタンを含んだ自動車インスツルメントパネルリサイクル材と熱可塑性樹脂とをシート状に押出し成形する工程、得られたシート状物の両面にガラス繊維マットを積層し、得られたシート状物とガラス繊維マットとの積層体の両面に熱可塑性樹脂シートをさらに積層する工程、シート状物とガラス繊維マットと熱可塑性樹脂シートとの積層体を加熱・加圧し、ついで冷却固化させてガラス繊維強化スタンパブルシートに成形する工程を含むことを特徴とするガラス繊維強化スタンパブルシートの製造方法。
【請求項11】
ポリウレタンを含んだ使用済み自動車インスツルメントパネルを単純粉砕するか、またはポリウレタン部材を有する使用済み自動車インスツルメントパネルを、機械的剥離方法でポリウレタン部材とその他の部材に分離し、ついでポリウレタン部材を回収することにより、ポリウレタンを含んだ自動車インスツルメントパネルリサイクル材を調製する工程、
ポリウレタンを含んだ自動車インスツルメントパネルリサイクル材と熱可塑性樹脂とをシート状に押出し成形する工程、
得られたシート状物の両面にガラス繊維マットを積層し、得られたシート状物とガラス繊維マットとの積層体の両面に熱可塑性樹脂シートをさらに積層する工程、
シート状物とガラス繊維マットと熱可塑性樹脂シートとの積層体を加熱・加圧し、ついで冷却固化させてガラス繊維強化スタンパブルシートに成形する工程を含むことを特徴とするガラス繊維強化スタンパブルシートの製造方法。
【請求項12】
ガラス繊維強化スタンパブルシートの原料としてのポリウレタンを含んだ自動車インスツルメントパネルリサイクル材の使用。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−290921(P2006−290921A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−109254(P2005−109254)
【出願日】平成17年4月5日(2005.4.5)
【出願人】(500003453)クオドラント・プラスチック・コンポジット・ジャパン 株式会社 (5)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】