説明

リッドの開閉機構

【課題】スペースを広く活用しながら、容易に開放できるとともに閉鎖時はしっかりと閉鎖できるようにした、リッドの開閉機構を提供する。
【解決手段】エネルギー補給口部1の開口11を覆うリッド20と、リッド20の中間部に設けられ、リッド20を回動可能に軸支するヒンジ21と、リッド20の開閉位置を制御するリッド位置決め機構30とを備え、リッド位置決め機構30は、リッド20の開放動作時にヒンジ21の回動軸Cを中心に前記車両の内側へ移動するリッド20の一端20aに設けられた位置決めパネル31と、位置決めパネル31を押圧する押圧部材32と、押圧部材32に付勢力を与える付勢部材33とを有し、位置決めパネル31は、押圧部材32に押圧されてリッド20の閉方向に力を付与する第一接触面31aと、リッド20の前記開放動作時に押圧部材32に押圧されてリッド20の開方向に力を付与する第二接触面31bとを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に設けられる給油口や充電口のようなエネルギー補給口部のリッドの開閉機構に関する。
【背景技術】
【0002】
電気モータを駆動源とする電気自動車や、電気モータとエンジンとを組み合わせて走行するハイブリッド電気自動車には、走行用の蓄電池としてニッケル水素電池やリチウムイオンバッテリ等のバッテリユニットを搭載したものがある。これらのバッテリユニットには、車両の走行に伴う回生発電による充電だけでなく、車外からの電力供給による充電が可能なものが開発されている。
【0003】
外部電源によるバッテリユニットの充電作業は、例えば車両の充電口と車外の充電施設とを充電ケーブルで接続した状態で行われる。充電口は車体パネルの側面で車体外側に開口した凹部として形成され、この凹部内に充電用ソケットが設けられる。また、充電口の凹部の開口面は車体パネルに軸支されたリッドによって覆われ、充電時に開放されるとともに充電時以外には充電ソケットが車外に露出しないように閉鎖される。
【0004】
このような充電口の構造に関連して、車載の燃料タンクに燃料を供給するための給油口の構造が知られている。給油口は、車両を駆動するためのエネルギーを車外から補給するというその機能が充電口と共通し、充電口と同様に、例えば車体パネルの側面に車体外側に開口した凹部として設けられる。開口面には開閉自在のリッドが設けられ、開口の底部には燃料タンクから延びる燃料チューブの注入口が接続される。
【0005】
ところで、給油口のリッドの開閉動作を円滑に行うための技術が、例えば下記の特許文献1に提案されている。
特許文献1に記載のフューエルリッドの取付構造は、車体の給油口部にリンク部材を介して開閉自在に設けられたフューエルリッドの取付構造であって、そのリンク部材は、一端が給油口部側に軸支され、他端がフューエルリッド側に軸支された第一のリンク部材と、第一のリンク部材の回動を支持することによりフューエルリッドの開閉軌跡を所定の経路に規制する第二のリンク部材とを備えて構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−343367号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記の特許文献1に記載のフューエルリッドの取付構造は、フューエルリッドの回動軸側にリンク部材を設けることにより開閉動作を円滑に行うものであり、フューエルリッドの回動軸側の構造のみ開示されているため、最初にフューエルリッドをどのようにして開けるのかが不明である。おそらく、リンク部材が設けられていないフューエルリッドの端部側に指を引っ掛けるための開口や切欠きを設け、そこに指を掛けて手前に引く構成であるものと推測される。
【0008】
上記の特許文献1に記載のリッド構造は、第二のリンク部材にスプリングが配設され、このスプリングにより第二のリンク部材が閉じる方向へ付勢されることによりフューエルリッドも閉方向に付勢されている。そのため、上記のように開口や切欠きに指を掛けて手前に引く構成の場合、ある程度の大きさの力を要し、リッドの開放が容易ではない。また、指先で操作するため、思わぬ怪我を招くおそれもある。
【0009】
また、上記の特許文献1に記載のリッド構造において、リンク部材が設けられていないリッドの端部側、すなわちリッドの開放側に、例えばリッドを容易に開放するための開放装置等を設ける技術も知られている。しかし、リッドの開放側にそのような装置を設けると、リッドの開放側のスペースが狭くなり、給油や充電を行う妨げとなる場合がある。
本件はこのような課題に鑑み案出されたもので、スペースを広く活用しながら、容易にリッドを開放できるとともに、リッド閉鎖時はしっかりと閉鎖できるようにした、リッドの開閉機構を提供することを目的の一つとする。
【0010】
なお、この目的に限らず、後述する発明を実施するための形態に示す各構成により導かれる作用効果であって、従来の技術によっては得られない作用効果を奏することも本件の他の目的として位置づけることができる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)ここで開示するリッドの開閉機構は、車両に設けられるエネルギー補給口部のリッドの開閉機構であって、前記エネルギー補給口部の開口を覆うリッドと、前記リッドの中間部に設けられ、前記リッドを回動可能に軸支するヒンジと、前記リッドの開閉位置を制御するリッド位置決め機構と、を備える。
また、前記リッド位置決め機構が、前記リッドの開放動作時に前記ヒンジの回動軸を中心に前記車両の内側へ移動する前記リッドの一端に設けられた位置決めパネルと、前記位置決めパネルを押圧する押圧部材と、前記押圧部材に付勢力を与える付勢部材とを有する。
さらに、前記位置決めパネルが、前記押圧部材に押圧されて前記リッドの閉方向に力を付与する第一接触面と、前記リッドの前記開放動作時に前記押圧部材に押圧されて前記リッドの開方向に力を付与する第二接触面とを有する。
【0012】
(2)前記位置決めパネルが、前記第一接触面と前記第二接触面との間に、前記押圧部材に押圧されて前記リッドを半開放状態に維持する係止面を有することが好ましい。
(3)また、前記押圧部材の移動を感知するセンサをさらに備え、前記押圧部材が、前記付勢部材による前記付勢力により前記位置決めパネルを押圧する方向に摺動自在に設けられていることが好ましい。
【0013】
(4)また、前記車両の側面に設けられ、前記車両側面に開口された凹部を有する筐体をさらに備えることが好ましい。この場合、前記リッドが、前記筐体の前記凹部を開閉自在に設けられ、前記ヒンジが、前記車両の上下方向に延在し、前記リッドの左右方向中間部に設けられる。また、前記リッド位置決め機構が、前記筐体の前記凹部の側面に設けられた孔部から前記押圧部材を突出させて配置される。
【発明の効果】
【0014】
開示のリッドの開閉機構によれば、リッドが閉じているときは、リッドの閉方向に力を付与するように位置決めパネルが押圧部材に押圧されるため、リッドはしっかりと閉鎖され、走行中に誤って開放されることはない。また、例えばドライバーが給油や充電をするときは、ヒンジの回動軸を中心に車両の内側に移動するリッドの端部(一端部)を押すことにより、リッドの開方向に力を付与するように位置決めパネルが押圧部材に押圧されるため、容易にリッドを開放することができる。
【0015】
さらに、リッド位置決め機構が、リッドの開放動作時に車両の内側へ移動するリッドの一端側、つまり、リッドの開放側とは逆側に設けられているため、リッドの開放側のスペースを広くすることができ、給油や充電を行う妨げとなることはない。
また、位置決めパネルが第一接触面と第二接触面との間に係止面を有する場合は、例えばドライバーがリッドを開放するときに、リッドが一度半開放状態で維持されるため、リッドが勢い良く開放することを防ぐことができる。また、リッドの一端を押して半開放状態に維持されると、リッドの開放側には隙間が生じるため、その隙間に指を入れてリッドを容易に開放することができ、操作性が向上する。
【0016】
また、押圧部材の移動を感知するセンサをさらに備えている場合、押圧部材の位置に応じてリッドの開放を検出することができ、リッドの開放状態に応じて、例えば充電の許可/禁止や、インジケータのオン/オフ等の制御をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第一実施形態にかかるリッドの開閉機構が適用された充電口の模式的な図であり、図1(a)はその正面図、図1(b)はその背面図である。
【図2】第一実施形態にかかるリッドの開閉機構の動作を説明する模式的な図であり、図2(a)はリッド閉鎖状態、図2(b)はリッド半開放状態、図2(c)はリッド半開放状態から開放状態への動作途中、図2(d)はリッド開放状態である。
【図3】第一実施形態にかかるリッドの開閉機構のリッドの開放角度と押圧部材のストロークとの関係を示すグラフである。
【図4】第一実施形態にかかるリッドの開閉機構のリッドの開放角度とリッドに作用するモーメントとの関係を示すグラフである。
【図5】第二実施形態にかかるリッドの開閉機構の動作を説明する模式的な断面図であり、図5(a)はリッド閉鎖状態、図5(b)はリッド閉鎖状態から開放状態への動作途中、図5(c)はリッド開放状態である。
【図6】他の実施形態にかかるリッドの開閉機構の動作を説明する模式的な断面図であり、図6(a)はリッド閉鎖状態、図6(b)はリッド閉鎖放状態から開放状態への動作途中、図6(c)はリッド開放状態である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面により実施の形態について説明する。なお、以下に示す実施形態はあくまでも例示に過ぎず、以下の実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。
【0019】
[1.第一実施形態]
本実施形態にかかるリッドの開閉機構は、エンジンにより走行する自動車、電気モータにより走行する電気自動車(以下、単に電気自動車という)や、電気モータとエンジンとを組み合わせて走行するハイブリッド電気自動車をはじめとして、燃料タンクに燃料を供給するための給油口を有する車両等のエネルギー補給口部に適用される。ここでは、電気自動車の充電口のリッドの開閉機構を例示する。図1(a)及び図1(b)では、本実施形態にかかるリッドの開閉機構が適用された充電口において、充電用コネクタが接続された状態を示す。充電口を車外側から見た図1(a)では、向かって右側が車両前方であり、内部側から見た図1(b)では向かって左側が車両前方である。
【0020】
この充電口(エネルギー補給口部)1は、サイドパネル(側面)10に形成されたパネル開口部(開口)11と、サイドパネル10よりも車内側に配設された収容ボックス(筐体)12と、パネル開口部11の車外側を覆うように設けられたリッド20とを備える。
パネル開口部11は、サイドパネル10の任意の位置に穿孔された開口部であり、図1(a)に示すように、車両前後方向の開口幅が車両上下方向の開口幅よりも大きい横長の矩形状に形成されている。パネル開口部11の四隅の角部は円弧状に丸められた柔和なデザインとされ、美観の向上と構造的な補強とが両立されている。
【0021】
また、パネル開口部11は、車外側から見てやや上向きに配置されており、開口面の法線が車両外方で上方へ向かって延在する。つまり、パネル開口部11の開口面は鉛直ではなく、その上方が車内側に向かってやや傾斜している。
収容ボックス12は、サイドパネル10に対して固定された升状の容器である。以下、収容ボックス12の形状を一端面が開放された箱形状と捉えて、その開放された一端面のことをボックス開口面18と呼ぶ。ボックス開口面18はパネル開口部11に対応する大きさに形成され、ボックス開口面18とパネル開口部11とが重なった状態で収容ボックス12がサイドパネル10に対して固定されている。これにより、パネル開口部11を通じて車外側から収容ボックス12の内部の空間(凹部)に対してアクセスすることが可能である。
【0022】
サイドパネル10に固定された収容ボックス12の底面は、パネル開口部11と同様に、車外側から見てやや上向きに配置される。なお、収容ボックス12の底面とボックス開口面18とは必ずしも平行でなくてもよく、充電口1の設置スペースの形状や内部に収容される装置形状,配置等に応じて適宜設定される。
パネル開口部11には、板状のリッド20が開閉自在に固定される。リッド20は、パネル開口部11を閉鎖し、収容ボックス12のボックス開口面18を塞ぐ蓋として機能する。そのため、リッド20はパネル開口部11とほぼ同一形状に形成され、ここではパネル開口部11の開口形状に対応するように、四隅の角部が円弧状に丸められた矩形状をなしている。また、リッド20の縁端部は車両内側に屈曲形成されて補強されている。
【0023】
リッド20は、閉鎖状態でサイドパネル10と同一表面をなすように配設され、ボックス開口面18を開閉自在に設けられる。後述するように、このリッド20の開閉位置は、サイドパネル10の内側に設けられたリッド位置決め機構30によって制御される。
リッド20の内側には、リッド20をサイドパネル10に対して回動可能に軸支するヒンジ21が設けられる。ヒンジ21の回動軸Cを図1(a)中に一点鎖線で示す。回動軸Cは、パネル開口部11の開口面に対してほぼ平行に配置され、本実施形態では鉛直よりもややその上方が車内側にやや傾斜した向きに延在する。また、ヒンジ21の取り付け位置は、パネル開口部11における車両前後方向の中央よりも車両前方側に設定される。
【0024】
ヒンジ21は、リッド20の一端部をパネル開口部11の内側へ回動させると同時にリッド20の他端部をパネル開口部11の外側へと回動させる、いわゆる巻き込みヒンジ型の支持部材である。以下、リッド20の回動時にパネル開口部11の内側へと移動する部位のことを一端部20aと呼び、外側へと移動する部位のことを他端部20bと呼ぶ。リッド20の一端部20aは車両の前方側の部位であり、他端部20bは車両の後方側の部位である。したがって、充電口1のパネル開口部11はその車両後方側が開放される。
【0025】
リッド20がヒンジ21によって支持される位置は、リッド20の一端部20a及び他端部20b間の位置となる。本実施形態では、リッド20の一端部20a側の寸法(車両前後方向の寸法)と他端部20b側の寸法(車両前後方向の寸法)とが相違しており、より具体的には前者が後者よりも小さくなるようにヒンジ21の位置が設定されている。言い換えると、ヒンジ21はリッド20の左右方向の中央からやや車両の前方側に偏った位置でリッド20を支持している。
【0026】
ここで前者の寸法をL1とおき、後者の寸法をL2とおくと、後者の寸法に対する前者の寸法の比(L1/L2)は1以下であることが好ましい。この比が小さいほど、開放されるパネル開口部11の面積が増大する。ただし、この比が小さすぎると一端部20aの寸法が他端部20bに対して短くなり、閉鎖状態のリッド20を開く際に要する力が増大する。したがって、好ましくはこの比の値を0.1〜1.0程度の範囲内で設定する。さらに、ユーザビリティや操作性を考慮してこの比を0.2〜0.5程度の範囲内で設定することが好ましい。
【0027】
なお、収容ボックス12内の空間には、電気自動車に搭載されるバッテリを充電するための充電用ソケット23及び収容ボックス12内を照らす照明装置26が設けられる。充電用ソケット23は、図示しない充電施設から伸びる充電ケーブル25の一端に設けられた充電用コネクタ24が着脱可能に接続される電気ソケットである。車両のドライバーは、リッド20を開けて、充電用コネクタ24を充電用ソケット23に接続することによりバッテリの充電を実施する。なお、照明装置26は、リッド20が開放されたことを後述するセンサ22が感知した場合に点灯するものである。
【0028】
本実施形態にかかるリッド20の開閉機構は、充電口1のパネル開口部11を覆うリッド20と、リッド20を回動可能に軸支するヒンジ21と、リッド20の開閉位置を制御するリッド位置決め機構30とを備えて構成される。
【0029】
図2(a)〜図2(d)はリッド20の開閉機構の動作を説明する模式的な断面図であり、図2(a)はリッド20の閉鎖状態、図2(b)はリッド20の半開放状態、図2(c)はリッド20の半開放状態から開放状態への動作途中、図2(d)はリッド20の開放状態を示す。以下、これらの図を用いてリッド20の開閉機構を詳細に説明する。
【0030】
まず、図1(a),図1(b)及び図2(a)を用いて収容ボックス12について説明する。収容ボックス12は、第一壁部13,第二壁部14,第三壁部15,第四壁部16及び第五壁部17を有し、一面が開放された箱状に形成されている。これらのうち、第一壁部13は、車長方向に延在するとともに車高方向に立設した壁部(箱状の底面をなす部位)であり、サイドパネル10とほぼ平行に延在する。この第一壁部13は、充電用ソケット23が取り付けられる部分が車内側に凹んだ凹形状に形成されている。
【0031】
第二壁部(側面)14は、上面視で第一壁部13の一端部13aからサイドパネル10の方向(車外方向)に向かって斜めに延在するとともに、車高方向に立設した壁部である。ここでいう第一壁部13の一端部13aは、車両の前方側の部位である。この第二壁部14には、後述するリッド位置決め機構30の押圧部材32が貫通する孔部19が形成される。収容ボックス12内の第二壁部14側は、リッド20の開放動作時に、リッド20の一端部20aが収容ボックス12内へ移動し進入してくる側(以下、リッド進入側という)となる。
【0032】
第三壁部15は、上面視で第一壁部13の他端部13bからサイドパネル10の方向(車外方向)に向かって斜めに延在するとともに、車高方向に立設した壁部である。ここでいう第一壁部13の他端部13bは、車両の後方側の部位である。第三壁部15は第二壁部14との対向面である。前述の充電用ソケット23は、第一壁部13における第三壁部15寄りの位置に設けられる。収容ボックス12内の第三壁部15側は、リッド20の開放動作時に、リッド20の他端部20bがサイドパネル10から離れて移動する側(以下、リッド開放側という)となる。図2(a)に示すように、第三壁部15の近傍には他の部品や装置等が設けられず、十分な作業スペースが確保される。
【0033】
なお、図1(b)に示すように、第四壁部16は、第一壁部13,第二壁部14及び第三壁部15の各上側端部に接続されほぼ水平に延在する壁部であって、収容ボックス12の上端を形成するものである。第五壁部17は、第一壁部13,第二壁部14及び第三壁部15の各下側端部に接続されほぼ水平に延在する壁部であって、収容ボックス12の下端を形成するものである。前述の照明装置26は、例えば第四壁部16におけるサイドパネル10寄りの位置に設けられる。
【0034】
次に、図2(a)〜図2(d)を用いて、リッド位置決め機構30について説明する。リッド位置決め機構30は、リッド20の車両内側の面であって、リッド進入側に設けられた位置決めパネル31と、位置決めパネル31を押圧する押圧部材32と、押圧部材32に付勢力を与えるスプリング(付勢部材)33と、押圧部材32及びスプリング33を収容するケーシング34とを備える。
【0035】
位置決めパネル31は、リッド進入側であるリッド20の一端部20aに固定されたパネル部材であり、リッド20の開閉時の動作を調節する機能を持つ。押圧部材32は、位置決めパネル31を押圧する棒状の部材である。また、スプリング33は、押圧部材32に付勢力を与えるための付勢部材である。リッド20の開閉操作に要する力の大きさや動作方向はこれらのリッド位置決め機構30によって調整される。
【0036】
本実施形態の位置決めパネル31は一枚の板状の部材を屈曲して形成され、支持面31d,第一接触面31a,第二接触面31b及び係止面31cを有する。
支持面31dは、リッド20の一端部20aの屈曲形成された先端部に固定された面であり、ここでは、上面視でリッド20の表面とほぼ平行に設けられている。この支持面31dは、リッド20の一端部20aに固定されて位置決めパネル31を支持するものである。なお、支持面31dは、位置決めパネル31をリッド20に支持できればよいため、形状は任意であり、例えば図2(a)に示すような形状に限られず、リッド20の裏面に固定できるように、屈曲形成されていてもよい。
【0037】
第一接触面31aは、図2(a)に示すように、位置決めパネル31において支持面31dとは逆側の端部に設けられた面であり、リッド20が閉鎖状態のときに押圧部材32の先端部と接触する面である。第一接触面31aは、リッド20の閉鎖状態のときの第一接触面31aの法線が、リッド20の一端部20a側を通ってヒンジ21よりも車外側(図中の上方)に位置するように、その形状が規定される。言い換えると、第一接触面31aは、上面視において第一接触面31aに対する垂直線がヒンジ21よりもリッド進入側に位置するような面勾配となる形状に加工されている。
【0038】
つまり、第一接触面31aは、押圧部材32に押圧されることにより、リッド20に対して図2(a)中に矢印で示す方向に力を付与するように機能する。この力により、ヒンジ21の回動軸Cを中心として上面視で右回りのモーメントが発生し、リッド20を閉鎖する方向に力が働き、リッド20の閉鎖状態が維持される。
【0039】
第二接触面31bは、図2(c)に示すように、支持面31dから連続して設けられた(支持面31dに隣接する)面であり、リッド20の開放動作初期時に押圧部材32の先端部と接触する面である。ここで、リッド20の開放動作初期時とは、後述するリッド20の半開放状態から、リッド20がさらに開放されるときの初期の段階をいう。第二接触面31bは、押圧部材32の先端部と接触している状態での第二接触面31bの法線がリッド20の他端部20b側を通ってヒンジ21よりも車内側(図中の下方)に位置するように、その形状が規定される。言い換えると、第二接触面31bは、上面視においてリッド20の開放動作初期状態のときの第二接触面31bに対する垂直線がヒンジ21よりもリッド開放側に位置するような面勾配となる形状に加工されている。
【0040】
つまり、第二接触面31bは、押圧部材32に押圧されることにより、リッド20に対して図2(c)中に矢印で示す方向に力を付与するように機能する。この力により、ヒンジ21の回動軸Cを中心として上面視で左回りのモーメントが発生し、リッド20を開放する方向に力が働き、リッド20の開放動作がサポートされる。
本実施形態の第二接触面31bは、支持面31dと第二接触面31bとでなす角が鈍角になるような面勾配に屈曲形成されている。このような形状により、図2(c)に示すリッド20の開放動作初期時において、リッド20の開放動作をサポートする方向、すなわち、リッド20の開方向に力を付与するように機能する。
【0041】
なお、第二接触面31bの面勾配はこれに限られず、リッド20の開放動作初期時にリッド20の開方向に力を付与するように機能すればよいため、例えば、支持面31dに対してほぼ直角となるような面勾配に形成されていてもよい。また、支持面31dと第二接触面31bとでなす角が、本実施形態にかかるものよりもさらに大きな鈍角となるような面勾配であってもよい。
【0042】
係止面31cは、図2(b)に示すように、位置決めパネル31において第一接触面31aと第二接触面31bとの間に形成された面であり、押圧部材32の先端部の形状に対応した凹形状に形成されている。係止面31cは、リッド20がわずかに開放された状態のときに、押圧部材32の先端部が係止面31cの凹状部分に引っ掛かり、凹状部分を押圧することにより、リッド20の開放動作を一時的に停止させる。この状態をリッド20の半開放状態といい、係止面31cは凹状部分によりリッド20を半開放状態に維持するように機能する。
【0043】
係止面31cは、図2(b)に示すように、押圧部材32の先端部との接触点における係止面31cの法線がヒンジ21の回動軸Cを通るようにその形状が規定される。たとえ係止面31cの形状と押圧部材32の先端部の形状とが完全に一致していなくても、リッド20はモーメントがゼロになる位置まで回動しようとするため、最終的には力のつり合い状態となり、押圧部材32及びリッド20の位置が図2(b)に示す位置で安定する。
【0044】
なお、係止面31cの形状はこれに限られず、凹状部分を小さく、すなわち、へこみを浅く形成してもよい。この場合、リッド20の開放動作に要する力が小さくなる。あるいは、凹状部分を大きく、すなわち、へこみを深く形成してもよい。この場合は、押圧部材32の先端部が凹状部分に引っ掛かりやすくなるため、力の方向がヒンジ21の回動軸Cから多少ずれていてもリッド20を半開放状態に維持することができる。ただし、係止面31cの凹状部分をあまり深く形成しすぎるとリッド20の開放動作の妨げとなり得るため、適度な深さに形成することが好ましい。
【0045】
位置決めパネル31を押圧する押圧部材32は、棒状の部材であり、押圧部材32の位置決めパネル31と接する側(押圧部材32の一端側)の先端部は曲面に形成され丸みを持っている。また、押圧部材32の軸方向中間部には、鍔部32aが形成されている。鍔部32aは、押圧部材32の軸方向に垂直な方向(拡径方向)に形成された円盤状の部位である。さらに、押圧部材32の外周にはスプリング33が設けられ、鍔部32a及びスプリング33が円筒形状のケーシング34内に収容されている。
【0046】
押圧部材32は、スプリング33から与えられる付勢力により位置決めパネル31を押圧する方向、すなわち、押圧部材32の軸方向に摺動自在に設けられている。押圧部材32は、その両端部がケーシング34の両底面から軸方向に貫通しており、一端側の先端部は収容ボックス12の第二壁部14に設けられた孔部19に挿通され、収容ボックス12内に突出して配設されている。また、押圧部材32の他端側には、後述するセンサ22が設けられている。
【0047】
スプリング33は、押圧部材32の鍔部32aとケーシング34の底面との間に設けられ、押圧部材32に付勢力を与えている。なお、スプリング33の代わりにゴムや渦巻きばねといった弾性部材,付勢部材を用いてもよい。
ケーシング34は、収容ボックス12の第二壁部14の車両内側の面、すなわち、収容ボックス12の外側に固定されており、押圧部材32が貫通する孔部(符号略)が底面にそれぞれ1つずつ形成されている。
【0048】
押圧部材32の他端側に設けられるセンサ22は、押圧部材32の移動を感知するセンサであり、例えば、接触式センサや近接センサ等を適用することができる。センサ22は図示しないコントローラ(ECU,Engine (electronic) Control Unit)に接続され、センサ22がリッド20の開放を検知すると、リッド開放信号がコントローラに送信される。
【0049】
リッド開放信号を受信したコントローラは、収容ボックス12に設けられた照明装置26を点灯させ、あるいは充電の許可/禁止や、車両の発進の許可/禁止,インジケータのオン/オフ等の制御を行う。なお、本実施形態では、リッド開放信号はリッド20が半開放状態〔図2(b)〕では送信されず、位置決めパネル31が押圧部材32と接触しない位置まで移動したとき状態〔図2(d)〕で送信されるようになっている。
【0050】
本実施形態にかかるリッド20の開閉機構は上述のように構成されているため、リッド20は以下のように動作する。なお、図2(a)〜図2(d)に加え、図3及び図4も用いて説明する。ここで、図3は、リッド20の開放角度と押圧部材32のストロークとの関係を示すグラフであり、図4は、リッド20の開放角度とリッド20に作用するモーメントとの関係を示すグラフである。
【0051】
図3及び図4中に示す点(a)〜(d)はそれぞれ、図2(a)〜図2(d)に示す四種類のリッド20の状態に対応している。また、図3におけるストロークは、リッド20の閉鎖状態〔図2(a)〕での押圧部材32の位置を基準とし、押圧部材32が収容ボックス12内へ進入する方向をプラス(+)とする。また、図4におけるモーメントは、上面視で右回りをプラス(+),左回りをマイナス(−)とする。
【0052】
まず、図2(a)に示すように、リッド20が閉鎖状態のときは、位置決めパネル31の第一接触面31aと押圧部材32の先端部とが接触し、第一接触面31aが押圧部材32に押圧される。このとき、第一接触面31aと押圧部材32の先端部との接点から延ばした法線方向に力が作用し、図中の矢印で示すように、リッド20に対してリッド進入側に力が作用する。そのため、リッド20が閉鎖状態のときは、ヒンジ21の回動軸Cを中心として上面視で右回りのモーメントが発生し(図4参照)、リッド20の閉方向に力が作用するため、リッド20の閉鎖状態が維持される。
【0053】
次に、図2(b)に二点鎖線で示すように、ドライバーによってリッド20の一端側20a(リッド進入側)が車外側から押されると、この外部からの力により、押圧部材32の先端部が第一接触面31aに接触しながらスプリング33の付勢力に抗するようにスライドするため、押圧部材32のストロークはマイナスとなる。ある角度までリッド20が開放されると、押圧部材32の先端部は、第一接触面31aから係止面31cへ移動し、係止面31cの凹状部分に引っ掛かり、ストロークはプラスへと変化する。
【0054】
このとき、係止面31cは押圧部材32から押圧され、その力は係止面31cと押圧部材32の先端部との接点から延ばした法線方向に作用し、図中の矢印で示すように、ヒンジ21の回動軸C周辺に力が作用する。そのため、リッド20に作用する回動軸Cを中心としたモーメントはゼロとなり(図4参照)、リッド20は釣り合った状態で安定する。この状態がリッド20の半開放状態である。
【0055】
図2(b)に示すようにリッド20が半開放状態となると、リッド開放側に隙間が生じるため、図2(c)に二点鎖線で示すように、ドライバーはこの隙間に指を掛けてリッド20を車外側に引くことが可能となる。この外部からの力により、押圧部材32の先端部は、係止面31cの凹状部分に接触しながらスプリング33の付勢力に抗するようにスライドするため、押圧部材32のストロークは再び減少する。ある角度までリッド20が開放されると、押圧部材32の先端部は、係止面31cから第二接触面31bへ移動し、ストロークは増加する。
【0056】
このとき、第二接触面31bは押圧部材32から押圧され、その力は第二接触面31bと押圧部材32の先端部との接点から延ばした法線方向に作用し、図中の矢印で示すように、リッド20に対してリッド開放側に力が作用する。リッド20には回動軸Cを中心として上面視で左回りのモーメントが発生し(図4参照)、リッド20の開方向に力が作用するため、リッド20の開放(ポップアップ動作)がサポートされる。
【0057】
そして、図2(d)に示すように、リッド20が完全に開放されると、押圧部材32は最大ストロークのまま維持され、リッド20に作用するモーメントはゼロとなる。なお、ヒンジ21の回動軸Cが車内側にやや傾斜した向きとなっているため、リッド20が閉鎖状態から直角以上の角度まで開放されると、リッド20はその自重によってさらに開放方向へ移動しようとする。つまり、パネル開口部11の開放状態が維持される。
【0058】
したがって、本実施形態にかかるリッド20の開閉機構によれば、リッド20が閉鎖状態のときは、リッド20の閉方向にモーメントが作用するように位置決めパネル31の第一接触面31aが押圧部材32に押圧されるため、リッド20はしっかりと閉鎖され、走行中に誤って開放されることはない。
また、ドライバーがバッテリに充電をするときは、まずリッド20のリッド進入側を押してリッド20を半開放状態にし、リッド開放側に生じた隙間に指を掛けて開放することができるため、リッド20を片手で容易に開放することができ、操作性が向上する。また、一度リッド20が半開放状態に維持されるため、リッド20が勢い良く開放することを防ぐことができ、安全性も高まる。
【0059】
また、リッド位置決め機構30がリッド進入側に設けられているため、リッド開放側のスペースを広く確保することができ、充電時の妨げとなることはない。
また、リッド位置決め機構30による上記のような付勢力の調整機能について、リッド20が巻き込みヒンジ型のヒンジ21によって支持されているため、リッド20の一端部20a側に位置決めパネル31を設けるためのスペースが確保しやすく、付勢力の調整が容易であるというメリットもある。
【0060】
また、押圧部材32の移動を感知するセンサ22によって、押圧部材32の位置に応じてリッド20の開放を検出することができ、リッド20の開放状態に応じて、例えば収容ボックス12内の照明装置26の点灯/消灯や、充電の許可/禁止、インジケータのオン/オフ等の制御をすることができる。
【0061】
[2.第二実施形態]
次に、第二実施形態にかかるリッド20の開閉機構について、図5を用いて説明する。本実施形態のリッド20の開閉機構は、リッド位置決め機構40における位置決めパネル41の形状を除いて第一実施形態のものと同様に構成されているため、第一実施形態のものと対応する要素については、第一実施形態の説明と同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0062】
図5(a)に示すように、位置決めパネル41は、第一実施形態と同様、リッド進入側であるリッド20の一端部20aに固定されたパネル部材であり、リッド20の開閉時の動作を調節する機能を持つ。本実施形態の位置決めパネル41は、一枚の板状の部材を屈曲して形成され、支持面41d,第一接触面41a及び第二接触面41bを有する。
支持面41dは、第一実施形態の支持面31dと同様、リッド20の一端部20aに固定されて位置決めパネル41を支持するものであり、例えば図5(a)に示す形状に限られず、リッド20の裏面に固定できるように、屈曲形成されていてもよい。
【0063】
第一接触面41aは、第一実施形態の第一接触面41aと同様、図5(a)に示すように、位置決めパネル41において支持面41dとは逆側の端部に設けられた面であり、リッド20が閉鎖状態のときに押圧部材32の先端部と接触する面である。また、第一接触面41aの面勾配は、第一実施形態で詳述したものと同様に構成され、第一接触面41aは、押圧部材32に押圧されることにより、図5(a)中に矢印で示す方向に向かってリッド20に対して力を付与するように機能する。この力により、ヒンジ21の回動軸Cを中心として上面視で右回りのモーメントが発生し、リッド20を閉鎖するに力が働き、リッド20の閉鎖状態が維持される。
【0064】
第二接触面41bは、図5(b)に示すように、第一接触面41aと支持面41dとの間に設けられた面であり、リッド20の開放動作時に押圧部材32の先端部と接触する面である。また、第二接触面41bの面勾配は、第一実施形態で詳述したものと同様に構成され、第二接触面41bは、押圧部材32に押圧されることにより、図5(b)中に矢印で示す方向に向かってリッド20に対して力を付与するように機能する。この力により、ヒンジ21の回動軸Cを中心として上面視で左回りのモーメントが発生し、リッド20を開放する方向に力が働き、リッド20の開放動作がサポートされる。
【0065】
本実施形態にかかるリッド20の開閉機構は上述のように構成されているため、リッド20は以下のように動作する。
まず、図5(a)に示すように、リッド20が閉鎖状態のときは、第一実施形態と同様、位置決めパネル41の第一接触面41aと押圧部材32の先端部とが接触し、第一接触面41aが押圧部材32に押圧される。このとき、第一接触面41aと押圧部材32の先端部との接点から延ばした法線方向に力が作用し、図中の矢印で示すように、リッド20に対してリッド進入側に力が作用する。そのため、リッド20が閉鎖状態のときは、ヒンジ21の回動軸Cを中心として上面視で右回りのモーメントが発生し、リッド20の閉方向に力が作用するため、リッド20の閉鎖状態が維持される。
【0066】
次に、図5(b)に二点鎖線で示すように、ドライバーによってリッド20の一端側20a(リッド進入側)が押されると〔図中(1)〕、この外部からの力により、押圧部材32の先端部が第一接触面41aに接触しながらスプリング33の付勢力に抗するようにスライドする。ある角度までリッド20が開放されると、押圧部材32の先端部は、第一接触面41aから第二接触面41bへ移動する。
【0067】
このとき、第二接触面41bは押圧部材32から押圧され、その力は第二接触面41bと押圧部材32の先端部との接点から延ばした法線方向に作用し、図中の矢印で示すように、リッド20に対してリッド開放側に力が作用する。リッド20には回動軸Cを中心として上面視で左回りのモーメントが発生し、リッド20の開方向に力が作用するため、リッド20の開放(ポップアップ動作)がサポートされる。そして、図5(b)中に二点鎖線で示すように、ドライバーはリッド開放側に生じる隙間に指を掛けてリッド20を引くことが可能となる〔図中(2)〕。
【0068】
図5(c)に示すように、リッド20が完全に開放されると、押圧部材32は最大ストロークのまま維持され、リッド20に作用するモーメントはゼロとなる。
したがって、本実施形態にかかるリッド20の開閉機構によれば、リッド20が閉鎖状態のときは、リッド20の閉方向にモーメントが作用するように位置決めパネル41の第一接触面41aが押圧部材32に押圧されるため、リッド20はしっかりと閉鎖され、走行中に誤って開放されることはない。
【0069】
また、ドライバーがリッド20を開放するときは、リッド20のリッド進入側を押すことにより、押圧部材32が第一接触面41aから第二接触面41bに移動し、リッド20の開方向にモーメントが作用するため、リッド20の開放がサポートされ、リッド20を片手で容易に開放することができる。
また、第一実施形態と同様、リッド位置決め機構40がリッド進入側に設けられているため、リッド開放側のスペースを広く確保することができ、充電時の妨げとなることはない。また、押圧部材32の移動を感知するセンサ22によって、押圧部材32の位置に応じてリッド20の開放を検出することができ、リッド20の開放状態に応じて、例えば収容ボックス12内の照明装置26の点灯/消灯や、充電の許可/禁止、インジケータのオン/オフ等の制御をすることができる。
【0070】
[3.その他]
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形することが可能である。
例えば、図6に示すような位置決めパネルの形状であってもよい。図6に示すリッド位置決め機構40´は、位置決めパネル41´の形状及びケーシング34の固定位置を除いて第一及び第二実施形態のものと同様に構成されているため、第一及び第二実施形態のものと対応する要素については、第一及び第二実施形態の説明と同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0071】
図6(a)に示すように、位置決めパネル41´は、リッド進入側のヒンジ21に近接した位置であってリッド20の車両内側の面に固定されたパネル部材である。ここで説明する位置決めパネル41´は、第二実施形態と同様、一枚の板状の部材を屈曲して形成され、支持面41d´,第一接触面41a及び第二接触面41bを有し、支持面41d´を除いて第二実施形態の位置決めパネル41と同様に構成されている。
【0072】
支持面41d´は、リッド20の車両内側の面(裏面)に固定された面(第一支持面)41da´と、第一支持面41da´から車両内側に向けて延設された面(第二支持面)41db´とを有する。ここでは、第一支持面41da´は、上面視でリッド20の表面と平行に設けられた面である。また、第二支持面41db´は、第一支持面41da´から連続して設けられた(第一支持面41d´に隣接する)面であり、第一支持面41da´から押圧部材32の先端に向かって車両内側に屈曲して形成された面である。この支持面41d´は、リッド20に固定されて位置決めパネル41´を支持する。
【0073】
また、第一接触面41aは、支持面41d´から連続して(第二支持面41db´に隣接して)設けられ、第二接触面41bは、位置決めパネル41´において第一支持面41da´とは逆側の端部に設けられており、それぞれの面勾配は、上述した実施形態におけるものと同様である。
このように構成されたリッド20の開閉機構によれば、図6(a)〜図6(c)に示すように、リッド20は第二実施形態におけるものと同様の動作をするため、第二実施形態におけるものと同様の作用効果を奏する。
【0074】
さらに、上記した位置決めパネル41´は、支持面41d´が第一支持面41da´及び第二支持面41db´の二面に屈曲形成され、リッド20の裏面に直接固定できる構成のため、第一接触面41a及び第二接触面41bを第一及び第二実施形態よりもサイドパネル10に近接した位置に配設することができる。そのため、ケーシング34を第一接触面41a及び第二接触面41bに対応してサイドパネル10に近接した位置に配設することができ、第一及び第二実施形態よりも車内スペースを確保することができる。
【0075】
なお、第一実施形態で説明した位置決めパネル31の支持面31dを第一支持面と第二支持面とから構成してもよい。この場合、位置決めパネルは、固定側から順に、第一支持面,第二支持面,第一接触面,係止面及び第二接触面の五面に屈曲して形成され、第一支持面がリッド20の裏面に固定されることにより、上記した第一実施形態の効果に加え、車内スペースの確保という効果をさらに得ることができる。
【0076】
また、上述の実施形態においては、車両の右側に設けられたサイドパネル10にパネル開口部11が形成された場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、車両の左側に設けられたサイドパネルにパネル開口部を形成してもよい。
また、上述の実施形態にかかるリッド20の開閉機構は、電気自動車の充電口に適用したものを例として説明したが、充電口に限られず、エンジンを駆動源とする自動車の給油口のリッドにも当然適用可能である。
【符号の説明】
【0077】
1 充電口(エネルギー補給口部)
10 サイドパネル(車両の側面)
11 パネル開口部(開口)
12 収容ボックス(筐体)
18 ボックス開口面
19 孔部
20 リッド
21 ヒンジ
22 センサ
23 充電用ソケット
24 充電用コネクタ
25 充電ケーブル
26 照明装置
30,40,40´ リッド位置決め機構
31,41,41´ 位置決めパネル
31a,41a 第一接触面
31b,41b 第二接触面
31c 係止面
31d,41d,41d´ 支持面
32 押圧部材
33 スプリング(付勢部材)
C 回動軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に設けられるエネルギー補給口部のリッドの開閉機構であって、
前記エネルギー補給口部の開口を覆うリッドと、
前記リッドの中間部に設けられ、前記リッドを回動可能に軸支するヒンジと、
前記リッドの開閉位置を制御するリッド位置決め機構と、を備え、
前記リッド位置決め機構が、前記リッドの開放動作時に前記ヒンジの回動軸を中心として前記車両の内側へと移動する側の前記リッドの一端側に設けられた位置決めパネルと、前記位置決めパネルを押圧する押圧部材と、前記押圧部材に付勢力を与える付勢部材とを有し、
前記位置決めパネルが、前記押圧部材に押圧されて前記リッドの閉方向に力を付与する第一接触面と、前記リッドの前記開放動作時に前記押圧部材に押圧されて前記リッドの開方向に力を付与する第二接触面とを有する
ことを特徴とする、リッドの開閉機構。
【請求項2】
前記位置決めパネルが、前記第一接触面と前記第二接触面との間に、前記押圧部材に押圧されて前記リッドを半開放状態に維持する係止面を有する
ことを特徴とする、請求項1記載のリッドの開閉機構。
【請求項3】
前記押圧部材の移動を感知するセンサをさらに備え、
前記押圧部材が、前記付勢部材による前記付勢力により前記位置決めパネルを押圧する方向に摺動自在に設けられている
ことを特徴とする、請求項1又は2記載のリッドの開閉機構。
【請求項4】
前記車両の側面に設けられ、前記車両側面に開口された凹部を有する筐体をさらに備え、
前記リッドが、前記筐体の前記凹部を開閉自在に設けられ、
前記ヒンジが、前記車両の上下方向に延在し、前記リッドの左右方向中間部に設けられ、
前記リッド位置決め機構が、前記筐体の前記凹部の側面に設けられた孔部から前記押圧部材を突出させて配置されている
ことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載のリッドの開閉機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−56327(P2012−56327A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−198179(P2010−198179)
【出願日】平成22年9月3日(2010.9.3)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【Fターム(参考)】