説明

リーンバーンエンジン用排気機構

【課題】大気中へのNOx特異性反応物の排出が阻止される排気機構を提供する。
【解決手段】リーンバーン内燃機関用の排気機構10[該機構は、酸化窒素(NOx)吸収材28、NOxのNOx特異性反応物による選択的触媒還元(SCR)に触媒作用させる触媒30、NOx特異性反応物またはその前駆物質をSCR触媒30上流にある排気ガス中に導入するための第一手段18,22、およびNOx特異性反応物またはその前駆物質の、第一導入手段18,22を経由する排気ガス中への導入を制御する手段24を備えてなる]であって、SCR触媒30がNOx吸収材28の上流に、および所望によりNOx吸収材と共に配置され、制御手段24が、SCR触媒30が活性である場合にのみ、NOx特異性反応物またはその前駆物質を第一導入手段18,22を経由して排気ガス中に導入するように配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リーンバーン内燃機関用の、NOxトラップ、およびNOx特異性反応物、例えばNH、によるNOxの還元に触媒作用する触媒を備えてなる排気機構に関する。
【0002】
「NOx特異性反応物」とは、ほとんどの条件で、気体状混合物の他の成分よりも優先的にNOxを還元する還元剤を意味する。NOx特異性反応物の例には、窒素系化合物、例えば窒素水素化物、例えばアンモニア(NH)またはヒドラジン、またはNH前駆物質、が挙げられる。
【0003】
「NH前駆物質」とは、例えば加水分解により、NHを誘導することができる一種以上の化合物を意味する。これらの化合物は、水溶液または固体としての尿素(CO(NH)またはカルバミン酸アンモニウム(NHCOONH)を包含する。尿素を水溶液として使用する場合、共融混合物、例えば32.5%NH(aq)が好ましい。水溶液中には結晶化温度を下げるための添加剤を包含することができる。
【0004】
尿素は160℃を超える温度で式(1)に従って加水分解し、NH自体を放出する。また、尿素はこの温度以上で式(2)および(3)に従って熱分解し、NOxを還元する。
CO(NH+HO→2NH+CO (1)
CO(NH→.NH+CO (2)
.NH+NO→N+HO (3)
【0005】
NHは、例えば無水の形態でも、または水溶液でもよい。
【0006】
ICエンジン、特にリーンバーンICエンジン、からのNOx放出を処理するためのNHSCR技術の応用は良く知られている。NHSCR機構では、幾つかの化学反応が起こり、それらのすべてが、NOxを元素状窒素に還元する望ましい反応を代表する。支配的な反応機構は、式(4)で表される。
4NO+4NH+O→4N+6HO (4)
【0007】
競合する酸素との非選択的反応は、二次的な放出物を発生するか、またはNHを非生産的に消費することがある。そのような非選択的な反応の一つは、式(5)で表されるNHの完全な酸化である。
4NH+5O→4NO+6HO (5)
【0008】
現在、尿素が、より毒性が低く、輸送および取扱が容易であり、安価で、一般的に入手できるので、自動車用途に好ましいNH供給源である。
【0009】
排気機構におけるNHの供給源として尿素を使用する初期の方法では、尿素を排気ガス中に、所望によりイン−ライン加水分解触媒を経由して、直接注入する(ヨーロッパ特許第EP−A−0487886号明細書(ここに参考として含める)参照)。しかし、そのような配置では、特に低温では、尿素のすべてが加水分解されることはない。
【0010】
尿素の不完全加水分解は、関連する放出試験サイクルに適合させるための試験でPM放出の増加につながるが、これは、部分的に加水分解された尿素固体または滴が、PM用の法的試験に使用される濾紙に捕獲され、PM物質として計数されるためである。さらに、不完全尿素加水分解のある種の生成物、例えばシアヌル酸、の放出は、環境的に好ましくない。別の方法は、尿素が加水分解する温度より高い温度に保持された予備注入加水分解反応器(米国特許第US−A−5,968,464号明細書(ここに参考として含める)参照)の使用である。
【0011】
約100〜200℃より低い低温では、NHはNOと反応し、式(6)に従って爆発性の硝酸アンモニウム(NHNO)を形成することがある。
2NH+2NO+HO→NHNO+NHNO (6)
【0012】
疑いを避けるために、本発明は、そのような反応またはそのような反応を引き起こす条件の強化は含まない。例えば、温度が確実に約200℃未満に低下しないようにするか、またはNOxとの化学量論的反応(1対1モル比)に必要なNHの正確な量未満をガス流中に供給することにより、この反応は避けることができる。冷間始動用途には、水が触媒と接触するのを防止する対策を講じることができる。これらの対策としては、水トラップ、例えばゼオライト、を触媒の上流に配置し、触媒が十分に加熱されるまで、触媒と接触する水蒸気の量を低減させることができる。水トラップは、触媒の下流に配置し、大気中の湿った空気が排気管を上に流れるのを阻止することもできる。電気ヒーターを使用し、冷間始動の前に触媒から水を追い出すこともできる。そのような配置は、我々のヨーロッパ特許第0747581号明細書(ここに参考として含める)に記載されている。
【0013】
既存の、および将来の排気ガス規制に適合するために、一般的に自動車用の排気機構は一個以上の部品、例えば触媒、を包含する。法的に規制されている排気ガス成分の一つはNOxである。正常な運転中、例えばリーンバーン内燃機関から生じる排気ガスは、過剰の酸素および酸化性化学種を包含する。酸化性またはリーン雰囲気中でNOxをNに還元することは非常に困難である。リーン排気ガス中のNOxを処理するために、エンジンの正常なリーンバーン運転の間はNOxを吸収する部品が開発されている。この部品は、一般的にNOxトラップと呼ばれ、一般的に(i)排気ガス中のNOを酸化性雰囲気中でNOに酸化する酸化触媒(例えば白金)、(ii)NOを例えば硝酸塩として貯蔵するNOx貯蔵成分(NOx貯蔵成分は一般的にアルカリ金属またはアルカリ土類の塩基性化合物、例えば酸化バリウムである)、および(iii)還元触媒、例えばロジウムを包含する。しかし、特定の状況下では、NOx貯蔵成分のみ、またはNOx貯蔵成分と、酸化および還元触媒の一方または他方を含んでなるNOxトラップ処方物を使用することもできる。
【0014】
間欠的に、例えば一個以上のシリンダー中への燃料注入時期を調節してエンジンをリッチ運転させるか、または排気ガス中に還元剤、例えば炭化水素燃料、を注入して貯蔵されたNOxを除去し、Nに還元する。これによって、吸収材は、別の貯蔵−再生サイクル用に再生される。
【0015】
ガス流からNOxを除去するもう一つの方法は、例えばNHをガスに加え、その混合物を、NOxとNHを反応させて窒素にするのに有効な触媒の上に通すことを含んでなる、選択的触媒還元(SCR)による方法である。別の方法は、我々の国際特許第WO00/21647号明細書(ここに参考として含める)に記載されており、そこではディーゼルエンジン排気ガスから来るNOxを固体の吸収材中に吸収させることにより除去する。吸収材はNOx特異性反応物の作用により再生される。
【0016】
その様な方法はどちらも、例えばNHまたはNOxの放出にそれぞれつながるNHの過剰または不足供給を避けるために注意深く制御する必要がある。NHは刺激物質であり、不快臭を有するので、NHが大気中にすり抜けるのは好ましくない。これは実際には、酸化「クリーン−アップ」触媒をSCR触媒またはNOxトラップの下流に配置し、すり抜けたNHをNOxに酸化することになる。従って、不十分な量のNHを供給することによりNOx自体がすり抜けること、あるいはNHがすり抜けることは、放出物を制限するための排気機構の全体的な効率を低下させることになろう。
【0017】
NHSCR技術に関連する問題の一つは、例えば長時間のアイドリング中または冷間始動に続く、排気ガス温度が比較的低い時に良好なNOx転化率を維持することである。NOx転化は、NHを使用し、150℃まで低い温度でもPt系触媒を使用して達成することができるが、NHの好ましい送達形態、すなわち尿素水溶液、は200℃未満ではあまり分解しない。Pt系触媒は、約225℃より上で式(5)に従って亜硝酸(NO)を発生する。
【0018】
エンジン試験サイクルの変更が現在のEuro III標準に導入されており、新車両のEuro IV型承認を管理することになる。特に、新試験サイクルは、European Stationary Cycle (ESC)、European Transient Cycle (ETC)、およびEuropean Load Response (ELR)試験による煙の不透明性の試験を包含する。これらのサイクルおよび試験は、低温における時間が非常に長い。形式承認を得るには、新車両はETCおよびESC/ELR試験の両方に合格しなければならない。
【0019】
我々の国際特許第WO00/21647号明細書には、「[NHSCR]触媒系が[NOx]吸収材と関連する、すなわち吸収剤に「触媒作用を持たせる」場合、触媒材料は、例えばNOx吸収材と共沈殿または共含浸または共堆積させるか、または吸収材層の上または中に、あるいは吸収材粒子同士の間に、一個以上のサンドイッチ層として、あるいは微小(例えば10〜500ミクロン)粒子として存在することができる」と記載されている。
【0020】
国際特許第WO00/21647号明細書の他の所で、我々は、NOx特異性反応物の注入地点は、フィルターの下流、すなわちNOx吸収材の上流でよく、「その場合、温度は典型的には150〜300℃である」と記載している。
【0021】
バリウム(NOx吸収材)をセリウムおよび鉄含有SCR触媒上に付けたところ、SCR機能が大幅に低下したが、組成物のNOx吸収および脱着能力は損なわれなかった。我々の国際特許第WO02/068099号明細書で、我々は、NOxトラップ触媒上へのNH(または尿素)注入を使用し、リーン作動条件の際に貯蔵されたNOxを還元する原理を立証している。この配置は、ディーゼル用途に特に有用である。国際特許第WO02/068099号明細書で、我々は「どの[NOx貯蔵]化合物を使用するにしても、NOx特異性反応物[NHを包含する]とニトロキシ塩の反応を促進するのに有効な一種以上の触媒試剤、例えば貴金属、も存在し得る」と記載している。そのような触媒は、SCR触媒とも呼ばれ、鉄/ゼオライトまたはV/TiOを包含することができる。NOx吸収材およびSCR触媒を関連させる場合、一実施態様では、これらは偏析している。「偏析している」とは、これらの物質が、少なくとも、個別の担体上に担持されているべきであり、従って、他の成分の上および/または下にある別の層に、または同じ層に配置できることを意味する。あるいは、これらの物質は、同じ基材「固まり」の個別区域上に、または同じ系の中に配置された個別の基材上に塗布することができる。
【0022】
ここで我々は、SCR触媒の下流に配置されたNOx吸収材を使用し、SCR触媒からすり抜けるNHまたは系全体からすり抜けるNOxおよびNHを阻止できることを見出した。また、我々は、触媒が予め決定された温度より上にある時に、制御された量のNHをSCR触媒を通して意図的にすり抜けさせることにより、我々の国際特許第WO02/068099号明細書に記載した様式でNOx吸収材を再生できることも見出した。
【0023】
第一の態様により、本発明は、リーンバーン内燃機関用の排気機構[該機構は、酸化窒素(NOx)吸収材、NOxのNOx特異性反応物による選択的触媒還元(SCR)に触媒作用させる触媒、NOx特異性反応物またはその前駆物質をSCR触媒上流にある排気ガス中に導入するための第一手段、およびNOx特異性反応物またはその前駆物質の、第一導入手段を経由する排気ガス中への導入を制御する手段を備えてなる]であって、SCR触媒がNOx吸収材の上流に、および所望によりNOx吸収材と共に配置され、制御手段が、SCR触媒が活性である場合にのみ、NOx特異性反応物またはその前駆物質を第一導入手段に導入するように配置され、それによって大気中へのNOx特異性反応物の排出が実質的に阻止される排気機構を提供する。
【0024】
一実施態様では、SCR触媒の活性が、その温度によって決定される。別の実施態様では、NOx特異性反応物またはその前駆物質が、SCR触媒が第一の予め決定された温度より上にある時に導入される。
【0025】
別の実施態様では、NOx吸収材が第一基材上に担持され、SCR触媒が第二基材上に担持される。
【0026】
別の実施態様では、制御手段が、SCR触媒がNOx特異性反応物をNOに酸化するのに十分に高温である時に、NOx特異性反応物またはその前駆物質の排気ガスへの供給を中断するようにも配置されている。
【0027】
一実施態様では、SCR触媒が第二の予め決定された温度より上にある時、NOx特異性反応物またはその前駆物質の供給が中断される。
【0028】
特別な実施態様では、排気機構は、NOx特異性反応物またはその前駆物質を導入する第二の手段を備えてなり、この第二の手段は、NOx吸収材の上流で、SCR触媒の下流に配置される。好ましくは、制御手段は、NOx吸収材が、NOx再生が有効である温度より上にある時にのみ、NOx特異性反応物またはその前駆物質を排気ガスにも供給し、所望により、NOx吸収材が、NOx貯蔵効果が制限される温度より上にある時、NOx特異性反応物またはその前駆物質の排気ガスへの供給を中断するように配置される。
【0029】
一実施態様では、NOx再生が有効である温度が、第三の予め決定された温度である。ここで「NOx再生が有効である」とは、排気ガスのマス流量および排気ガスのラムダ組成のような条件に応じて、NOx吸収材の温度が、実際的なNOx吸収材再生戦略を採用できる温度より上にあることを意味する。例えば、実際に、特定の温度で、NOx吸収材容量を回復するために、第一の再生が行われてから10秒間後に第二の発生を行う必要がある場合、そのような戦略は、燃料効率が悪くなり、走行性の問題が生じるために、効果的ではなくなるであろう。
【0030】
別の実施態様では、NOx貯蔵が効果の上で熱的に制限される温度は第四の予め決定された温度である。ここで「効果の上で熱的に制限される」とは、NOx吸収材を使用するNOx転化率が実際的な用途には低すぎる温度になることを意味する。これは、NOx吸収材の硝酸塩が熱的に不安定になり、NOx吸収材上のNOx貯蔵が低下するためである。
【0031】
我々は、NOx特異性反応物をSCR触媒の上流にある排気ガス中に導入する時、ある種の反応物、例えばNH、がSCR触媒に吸着され得ることを観察している。好適な制御方法により、これを許容することができ、特定の配置では、この吸着現象は、例えば低レベルのNOx特異性反応物をSCR触媒に、SCR触媒の低温活性温度未満で供給し、NOx転化を行うのに有用である場合がある。しかし、吸着により、NOx特異性反応物を下流のNOx吸収材に供給し、我々の国際特許第WO02/068099号明細書に記載した方法を行うことが複雑になる。従って、一実施態様では、第二の、別のNOx特異性反応物導入手段をSCR触媒の下流に備え、SCR触媒がその低温活性温度より下にある時に、NOx特異性反応物またはその前駆物質をこの第二の導入手段だけを経由して導入する。(「低温活性」は、ある特定の反応の50%転化が達成される温度である)
【0032】
第一および第二の予め決定された温度は、SCR触媒の性質(下記参照)、および他のファクター、例えば処理すべき排気ガスの組成および温度、によって異なる。しかし、一般的に、第一の予め決定された温度は100〜600℃、好ましくは150〜500℃、最も好ましくは200〜450℃であり、第二の予め決定された温度は450〜900℃、好ましくは550〜800℃、最も好ましくは650〜700℃である。
【0033】
SCR触媒と同様に、第三および第四の予め決定された温度は、NOx吸収材の性質(下記参照)、および他のファクター、例えば処理すべき排気ガスの組成および温度、によって異なる。しかし、一般的に、第三の予め決定された温度は75〜200℃、好ましくは100〜175℃、最も好ましくは125〜600℃であり、第四の予め決定された温度は350〜600℃、好ましくは400〜550℃、最も好ましくは450〜500℃である。
【0034】
別の実施態様では、第一の予め決定された温度は第三の予め決定された温度と等しくてよい。
【0035】
別の実施態様では、排気機構が、NOx吸収材の下流に配置された第二のSCR触媒を備えてなる。
【0036】
特別な実施態様では、排気機構が、排気ガス中のNOをNOに酸化するための触媒、および排気ガス中の粒子状物質を集め、NO中で400℃までで燃焼させるためのフィルターを備えてなる。そのような配置は、我々のヨーロッパ特許第0341832号明細書または米国特許第US−A−4,902,487号明細書(それらの内容全体をここに参考として含める)に記載されており、Johnson Matthey plcからCRT(商品名)として販売されている。
【0037】
図1に示す、そのような一実施態様では、SCR触媒はフィルターの下流にある。別の実施態様では、SCR触媒はフィルターにより支持されている。別の実施態様では、SCR触媒とNOx吸収材の両方がフィルター上に配置されている。
【0038】
CRT(商品名)を備えた実施態様では、NOx特異性反応物をSCR触媒の上流、例えば図1に示すようにフィルターの下流で、CRT(商品名)酸化触媒とフィルターの間、またはCRT(商品名)酸化触媒のさらに上流、に注入することができる。
【0039】
この最後の配置は、その内容全体をここに参考として含める我々の国際特許第WO00/74823号明細書に記載されているように、排気ガス中のNOxを増加させ、粒子状物質をフィルター上で燃焼させるのに有用である。
【0040】
機構の制御は制御手段により行う。好ましい実施態様では、制御手段が、排気機構中の適切な地点に配置されたセンサーからの入力を受け、機構中の特定条件を検出する。これらの入力は、NOx吸収材および/またはSCR触媒の温度、および排気ガスのNOx組成を包含することができる。機構を制御し、NOx特異性反応物のすり抜けを阻止するために、好適なセンサーを使用することができる。これらのセンサーは、SCR触媒の下流および/またはNOx吸収材の下流に配置することができる。これに加えて、またはこれとは別に、制御手段は、エンジン速度/負荷マップの予め決定された設定に応答して、あるいは排気ガス温度に応答して、機構を制御することができる。
【0041】
NOx特異性反応物の供給は、連続的、半連続的、または定期的でよい。いずれの場合も、制御手段は、NOx特異性反応物またはその前駆物質を間欠的に、例えばNOx吸収材の再生方法で使用できる「スパイク」濃度で供給するように配置することができる。NOx特異性反応物またはその前駆物質の供給が定期的である場合、供給と供給の間のそのような期間は、それぞれ1秒間〜10分間から選択することができる。
【0042】
別の態様により、本発明は、先行する請求項のいずれかに記載の排気機構を包含するリーンバーン内燃機関を提供する。一実施態様では、リーンバーンエンジンは、ディーゼルエンジンまたはガソリンエンジンである。硫黄分10ppm未満の燃料で作動できるエンジンが特に好ましい。
【0043】
別の態様では、本発明は、酸化窒素(NOx)吸収材、およびNOx特異性反応物によるNOxの選択的触媒還元(SCR)に触媒作用させる触媒を備えてなる排気機構を包含するリーンバーン内燃機関から出る排気ガス中のNOxを処理する方法であって、SCR触媒がNOx吸収材の上流に、および所望によりNOx吸収材と共に配置され、SCR触媒が不活性である時、NOx吸収材を、NOx吸収材上に貯蔵されている総NOxを完全に還元するには不十分なNOx特異性反応物と接触させ、それによってNOx吸収材を再生させ、SCR触媒が活性である時、SCR触媒を十分なNOx特異性反応物と接触させ、排気ガス中のNOxをNに還元し、それによって大気中へのNOx特異性反応物の排出を実質的に阻止する、方法を提供する。
【0044】
一実施態様では、SCR触媒の活性は、第一の予め決定された温度に対するSCR触媒の温度によって決定する。
【0045】
別の実施態様では、SCR触媒が活性である時にNOx吸収材と接触させるためのNOx特異性反応物は、上に説明したようなNOx特異性反応物のSCR触媒への吸着に関連する理由から、該触媒とは接触しない。すなわち、NOx特異性反応物は、SCR触媒の下流にある地点で、排気ガス中に導入することができる。
【0046】
別の実施態様では、該SCR触媒が活性である時、十分なNOx特異性反応物がSCR触媒と接触し、排気ガス中のNOxをNに還元し、SCR触媒をすり抜け、NOx吸収材と接触し、それによって貯蔵されているNOxを還元するが、この工程は、すり抜けるNOx特異性反応物が貯蔵されている総NOxを完全に還元するには不十分であるように制御される。この実施態様では、NOx特異性反応物を、SCR触媒の上流で、および所望によりSCR触媒の下流でも、排気ガス中に導入することができる。
【0047】
本発明の方法では、第一の予め決定された温度は例えば100〜600℃、好ましくは150〜500℃、最も好ましくは200〜450℃でよい。
【0048】
NOx吸収材再生を制御するための方法は、我々の国際特許第WO02/068099号明細書に記載されている方法と同様でよく、再生の後、NOx吸収材が、再生開始時に存在するNOx含有量の5〜50%を含むこと、吸収材がNOx含有量の5〜50%を含み、NOxのすり抜けが起こる時に、再生が開始すること、下記の時点、すなわちNOx特異性反応物が、NOx吸収材を支持している基材の長さに沿った途中の地点で検出される時、固体吸収材を直列に支持している2個の基材を有する系において、NOx特異性反応物がそれらの基材の間の地点で検出される時、エンジン速度/負荷マップ中で予め決定されたデータに基づいて規定されるNOx含有量のレベルに達した時、NOx特異性反応物のすり抜けの初期観察から反復的に確立されたNOx含有量のレベルに達した時、の一つで停止するように再生が制御されること、およびNOx特異性反応物がその前駆物質からその場で形成され、その際、NOx特異性反応物が前駆物質から触媒反応により放出され得ることを特徴とすることができる。
【0049】
NOx吸収材およびどの触媒も、セラミックまたは金属ハニカムまたはフォーム基材上に担持するのが好適であり、セラミックは、アルミナ、シリカ、チタニア、コージーライト、セリア、ジルコニア、ゼオライト、または他の、一般的に酸化物系の材料または混合物、またはそれらのいずれか2種類以上の酸化物の混合物を含んでなる。炭化ケイ素はもう一つの可能な基材材料である。ハニカムまたはフォーム基材は、ウォッシュコートおよび、その上に1層以上で、活性の吸収性および/または触媒材料を支持するのが好ましい。ハニカムは、典型的には1平方インチあたり少なくとも50、例えば50〜400セル(cpsi)(7.8〜62.0セルcm−2)、場合により800cpsi(124セルcm−2)まで、または構造的に金属で構成される場合には1200cpsi(186セルcm−2)まで、を有する。一般的に、ニトロキシ塩または吸収材およびいずれかの触媒を含んでなる基材には、200〜800(cpsi)(31〜124セルcm−2)の範囲が好ましい。
【0050】
NOx吸収材は、吸収条件で十分な安定性を有するニトロキシ塩(硝酸塩および/または亜硝酸塩)を形成し、再生条件でNOx特異性反応物と反応し得る、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、例えばランタニド、および遷移金属から選択することができる。これらの「条件」は、ガスの温度およびその、例えばラムダにより表されるレドックス状態、および/または吸着材料、例えばゼオライト、炭素および高面積酸化物を包含する。
【0051】
NOx吸収材として使用するのに好適なアルカリ金属は、カリウムまたはセシウムの少なくとも一種でよく、アルカリ土類金属は、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウムおよびバリウムの少なくとも一種でよく、ランタニドは、ランタン、プラセオジム、ネオジムおよびセリウムの少なくとも一種でよい。
【0052】
吸収材化合物は、(NOx吸収の前は)例えばアルカリ土類金属および銅の複合材料酸化物、例えばBa−Cu−OまたはMnO−BaCuOとして、場合によりCe酸化物を加えて、あるいはY−Ba−Cu−OおよびY−Sr−Co−O、として存在することができる。(簡単にするために酸化物を挙げているが、実際には、温度およびガス組成に応じて、水酸化物、炭酸塩およびカルボン酸塩、例えば酢酸塩、が存在する)。
【0053】
NOx吸収材は、その上にNOxを貯蔵する、または放出されたNOxをNに還元する工程に有用な特定の反応を行うために、一種以上の白金族金属(PGM)と関連させることができる。そのようなPGMは、白金、パラジウムおよびロジウムでよい。一実施態様では、NOxトラップPGMは、白金単独からなる(還元機能はすべて下流で行うことができるので)のに対し、別の実施態様では、白金とロジウムの両方を包含することができる。
【0054】
本発明で使用するSCR触媒は、当業者に公知のどれでもよく、上記のように、SCR触媒の選択は、触媒を働かせる必要がある条件によって異なる。
【0055】
例えば、Pt系SCR触媒は、約175℃〜約250℃でのNHによるNOxの還元に触媒作用することができる。250℃より上では、NHのNOへの酸化が支配的となり、従って、その選択性を失う。中温度のバナジウム系触媒、例えばV/TiO、は約260℃〜約450℃の温度範囲で作用する。やはり、これより高い温度では、選択性が失われ、NOが形成される。V/TiO触媒の露出温度が一定のレベルを超えると、TiOの高表面積アナターゼ相が、表面積10m/g未満のルチルに不可逆的に転化する。通常、この転化は約550℃より上で起こるが、触媒は、それらの熱的耐久性を強化するために安定剤を包含することができる。ある種のV/TiO触媒は約700℃まで熱的に安定していることが報告されている。特定の状況下では、タングステンおよびモリブデンの少なくとも一種を卑金属含有SCR触媒に包含するのが好ましい場合がある。
【0056】
ゼオライトは、約350℃〜約600℃の温度範囲で作用できる。本発明の触媒に好適なゼオライトには、ZSM−5、モルデナイト、ガンマ−ゼオライトまたはベータ−ゼオライトが挙げられる。ゼオライトは、少なくとも一種の金属を含んでなるか、または少なくとも一種の金属で金属処理することができ、その金属は、Cu、Ce、FeまたはPtの一種以上から選択することができ、イオン交換または含浸させることができる。
【0057】
ゼオライトは、それらの結晶構造およびSiO:Al比により特徴付けられる。例えば、一般的なモルデナイトは、約10の比を有する。排気ガス中にNOxが存在すると、ゼオライト系SCR触媒は、NHをNOに酸化しない。従って、PtまたはV触媒と異なり、それらのNOx転化に対する選択性は、温度と共に増加する。しかし、ゼオライト系触媒は、水蒸気の存在下で高温に露出されると、安定性の問題を生じることがある。含水量が高い処理流中で600℃を超える温度に露出すると、ゼオライトは、脱アルミニウム化により失活する傾向があり、それによってSiO−Al骨格中のAl3+イオンが構造外に移行する。これは永久失活につながり、極端な場合、結晶構造が潰れる。
【0058】
無論、触媒上にNHを吸着させる必要がある場合には、ゼオライトは好ましい(国際特許第WO99/55446号明細書参照)。
【0059】
金属系SCR触媒用の非ゼオライト担体は、アルミナ、チタニア、シリカ、シリカ−アルミナ、セリア、ジルコニア、またはそれらの2種類以上の混合物または混合酸化物の少なくとも一種を包含することができる。
【0060】
本明細書で定義する「固体吸収材」、「吸収材」および「吸収性材料」、「貯蔵成分」は互換的に使用され、「NOx吸収材」は、所望により担持されたアルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、または遷移金属自体(すなわち他の触媒金属を含まない)を意味し、「NOxトラップ」は、NOx吸収材および他の触媒材料、例えばPGM、を含んでなる基材を意味する。
【0061】
本発明の排気機構は、ICエンジン、特にリーンバーンICエンジン用である。これらのエンジンは、ガソリンリーンバーンエンジン、例えばガソリン直噴(GDI)エンジン、を包含することができる。これらのエンジンは、ディーゼルエンジンも包含することができる。特に、ディーゼルエンジンは、重負荷ディーゼルエンジン(ヨーロッパでEuropean Directives 88/77/EEC and 1999/96/ECにより規定されるような)を包含することができる。米国では、重負荷車両は、総車両重量等級(GVWR)により米国連邦管轄権内では8,500 lbs、カリフォルニア(1995年式以降)では14,000 lbsを超えると規定されている。重負荷ディーゼル区分は、軽重負荷ディーゼルエンジン<8,500 lbs<LHDDE<19,500 lbs(カリフォルニアでは1995以降14,000 lbs<LHDDE<19,500 lbs)、中重負荷ディーゼルエンジン<19,500 lbs<MHDDE<33,000 lbs、および重重負荷ディーゼルエンジン(都市バスを包含する)HHDDE>33,000 lbsに小分類されている。ディーゼルエンジンは、ヨーロッパでEuropean Directives 70/220/EEC、改訂93/59/ECおよび98/69/ECにより規定されるような軽負荷ディーゼルエンジンでもよい。米国では、乗用車、軽負荷トラック(LLDT)、6000 lbs未満のGVWR、および軽負荷トラック(HLDT)、6000 lbsを超える、が軽負荷ディーゼル区分に入る。
【0062】
本発明をより深く理解できるようにするために、以下に添付の図面を参照しながら下記の実施態様および例を例示のためにのみ記載する。
【0063】
図1に関して、例示する機構は、単一の「缶」10からなり、この缶は12で、硫黄含有量10ppm未満のディーゼル油を燃料とするディーゼル(図には示していない)から来る排気に接続されている。缶10の入口末端には触媒14があり、この触媒は、400セル/in(62.0セルcm−2)のセラミックハニカムモノリス上に担持された低温活性酸化触媒である。触媒14は、エンジンおよび車両用のCOおよびHCに関連する放出物規制に適合し得るように設計され、400℃までの温度で始動ガス中のNOをNOに70%以上の効率で転化する。
【0064】
触媒14を離れるガスは、セラミックウォール−フロ−型であり、50nmを超えるPMを収集する煤フィルター16中を通過する。ガス中のNOおよび余剰の酸素がヨーロッパ特許第EP−A−0341832号明細書に記載されているように煤を温度約250℃で酸化する。フィルター16を離れるガスは、散布スプレー注入装置18の上を通過し、その注入装置から、コンピュータ24により制御される高圧ポンプ22からライン20を経由して供給されるNHまたはNH前駆物質を受け取る。注入装置18を離れるガスは、V/TiOを含んでなるSCR触媒30中にはいる。コンピュータ24は、エンジン作動時間および使用した燃料に関する、入口ガス温度および組成に関する、およびセンサー26から、すり抜けたNOxまたはNHに関するデータを受け取る。コンピュータは、NOxトラップ28を離れるガス中でNHが検出された場合、NHを短期間および/または低速度で供給する時間を再計算するように特にプログラム化されている。
【0065】
NOxトラップ28を交換し易くするために、缶の、NOxトラップ28を収容する部分は、缶10の主要上側および下側部分にフランジ(図には示していない)により接合することができる。SOx吸収用の設備を施す場合、床28は、上下に重なった2個の部分に分け、上流部分をSOx吸収材にすることができる。SOx吸収部分を交換することになった場合、新しいSOx吸収材で置き換え、交換しなかったNOxトラップを上流位置にして缶部分を再挿入することができる。
【0066】
本機構の操作では、2つの工程が交互に起こる。吸収工程では、ガスはNHを含まず、NOxが吸収材と反応し、固体のニトロキシ塩を形成するにつれて、吸収材のNOx含有量が徐々に増加する。吸収工程は、SCR触媒がその、NHとNOxの反応に触媒作用する低温活性温度より下にある時に起こるか、またはSCR触媒が該低温活性温度より上にあり、SCR触媒上で転化されなかったNOxが、SCR触媒を離れる排気ガス中に存在する時に起こることができる。この工程の後、再生工程が起こり、その際、ニトロキシ塩の一部、好適には50〜90%、場合により5〜50%、が反応するまで、NHが注入される。再生の間、この機構により、NHはNOxトラップ28の下流に実質的にすり抜けない。
【0067】
再生工程は、SCR触媒がその、NHとNOxの反応に触媒作用する低温活性温度より下または上にある時に起こることができる。SCR触媒の低温活性温度より下にある時、NHまたはNH前駆物質は、NOxに対して化学量論的量を超えるNHがSCR触媒上で存在し、NOxトラップの再生に十分なNHがSCR触媒をすり抜けるように計量供給される。SCR触媒を通過するNHのすり抜けが停止すると、再生工程は終了するので、吸収工程が、残留NOxの吸収を再生工程で得た最終レベルから再び開始する。あるいは、意図的なNHのすり抜けを行わずに、SCR触媒からすり抜けたNHにより、NOxトラップを「受動的に」再生する。再生工程を長期に、例えばニトロシル塩の分解が完了するまで続行すると、吸収装置28を離れるガスのNH含有量は、再生開始における水準に上昇し、従来の連続式SCRにおけるようにクリーン−アップ触媒を装備しない限り、NHを大気中に放出することになる。
【0068】

コージーライトモノリス(直径5.66インチ(14.4cm)、長さ6インチ(15.24cm)、400セル/1平方インチ(62.0セルcm−2)、壁厚千分の6インチ(0.15mm)を、十分な固体を脱イオン水中にスラリー化し、固体含有量45%にしたガンマアルミナ(表面積120m−1)からなるウォッシュコートで被覆した。スラリーを面上に注ぎ、セラミックモノリスの通路を下方に流した。過剰のスラリーは圧縮空気により通路から除去した。次いで、高温の空気流(150℃)中でウォッシュコートを乾燥させることにより水分を除去した。次いで、乾燥被覆モノリスを500℃で1時間か焼した。被覆したモノリス上の総ウォッシュコート装填量は2.5gインチ−3(152.6gl−1)であった。次いで、被覆したモノリスを白金テトラ−アミン溶液中に5分間浸漬し、取り出し、吸引により過剰の溶液を除去した。次いで、モノリスを熱風流(150℃)中で乾燥させ、500℃で1時間か焼した。溶液の濃度は、モノリス上の白金装填量が100gft−3(3.53gl−1)になる様に選択した。次いで、モノリスを酢酸バリウムの水溶液で含浸させた。モノリスを溶液中に5分間浸漬し、取り出し、吸引により過剰の溶液を除去した。次いで、モノリスを熱風流(150℃)中で乾燥させ、500℃で1時間か焼した。溶液の濃度は、モノリス上の最終的なバリウム装填量が800gft−3(28.24gl−1)になる様に選択した。
【0069】
類似の方法を使用し、Johnson Matthey plcから市販のV/TiO触媒であるSCR触媒(直径5.66インチ(14.4cm)、長さ6インチ(15.24cm)、400セル/1平方インチ(62.0セルcm−2)、壁厚千分の6インチ(0.15mm)を製造した。
【0070】
完成したモノリスを標準的な手順を使用してステンレス鋼製の缶中に設置し、2.2リットル、4シリンダーのターボチャージ式ディーゼルエンジンの排気ガス機構に取り付けた。エンジンは通常の様式でダイナモメーターに接続した。エンジンおよびダイナモメーターはコンピュータ制御し、ある範囲の異なったエンジン作動条件を選択できる様にした。触媒前後のHC、CO、NOx、OおよびCOの排気放出物を市販のガス分析装置で通常の方法で測定した。NHは調整した赤外レーザー(AltOptronic)を使用して測定し、NOはUnor(独国)計器で測定した。
【0071】
エンジンは1200rpm、ダイナモメーター負荷44Nmで作動させ、これによって触媒入口排気ガス温度は210℃になった。触媒入口NOx濃度は120ppmであり、エンジンはこの条件で定常的に作動させた。NHガスを触媒上流の排気中に10分間の長いパルスで注入してから、10分間停止した。この繰り返しを5回連続して行った。注入期間中のNHガスレベルは120ppmであった。
【0072】
実験は、2個のSCR触媒単独で、排気中の基線として行い、2個のSCR触媒の後にNOxトラップ処方物を配置して繰り返した。
【0073】
基線試験
この温度/流量/NH注入レベルでは、SCR触媒から大量のNHがすり抜けることができる。これは、NHをNOxトラップ触媒(存在する場合)に到達させ、国際特許第WO02/068099号明細書(ここにその内容全体を参考として含める)に記載されている方法を実行するために望ましいことであった。
【0074】
注入の間にNHのすり抜けが徐々に増加したが、これは、SCR触媒中にNHが貯蔵されるためであると考えられる。10分間の注入後、NH53ppmのすり抜けが起こった(典型的な10分間注入サイクルに関して図1に示す)。NH注入が10分間を超えると、73ppmの定常的なNHすり抜けに達するまで、より多くのNHすり抜けが起こった。SCR反応によるNOx転化率はこれらの操作条件で20%であった。
【0075】
SCRとNOxトラップ触媒の組合せ試験
排気中にNOxトラップ触媒が存在すると、NHのすり抜けが大幅に低下し(図2参照)、10分間のNH注入後、最大20ppmのNHすり抜けが起こる。これは、SCR機構におけるNHすり抜けの阻止にNOxトラップ触媒を使用できることを示している。
【0076】
さらに、国際特許第WO02/068099号明細書で立証されているように、このNOxトラップ処方物は、NOxを210℃で貯蔵し、NHに露出した時に再生することができる。この例では、SCR触媒がこれらの条件下でSCR反応に十分に活性ではないので、エンジンから出るNOxの80%がSCR触媒をすり抜けている。このNOxの一部はNOxトラップ触媒上に貯蔵することができ、このNOxをNHすり抜けで再生することができる。
【0077】
図3は、NH注入後のNOx転化率を示す。明らかに、NHを停止すると、我々が国際特許第WO03/054364号明細書(ここに参考として含める)で記載したように、NOx貯蔵と、我々が考える貯蔵されたNHとSCRの反応との組合せにより、NOx転化率が徐々にに低下する。この効果は多数回繰り返された。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】図1は、リーンバーン内燃機関用の排気処理機構を図式的に示す断面図である。
【図2】図2は、SCR触媒を単独で備えてなる排気機構中のNHすり抜けを、SCRとNOxトラップ触媒を備えてなる排気機構中のNHすり抜けと比較するグラフである。
【図3】図3は、SCRとNOxトラップ触媒を備えてなる排気機構でNHを停止した後、NOx転化率が次第に下がる様子を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リーンバーン内燃機関用の排気機構であって、
前記機構が、酸化窒素(NOx)吸収材と、
NOx特異性反応物によるNOxの選択的触媒還元(SCR)を触媒作用させる触媒と、
前記SCR触媒上流に、NOx特異性反応物またはその前駆物質を排気ガス中に導入するための第一手段と、および
前記第一導入手段により、前記NOx特異性反応物またはその前駆物質を前記排気ガス中に導入することを制御する手段とを備えてなり、
前記SCR触媒が、前記NOx吸収材の上流に、および所望により前記NOx吸収材と共に配置されてなり、
前記制御手段が、前記SCR触媒が活性である場合にのみ、前記第一導入手段により、前記NOx特異性反応物またはその前駆物質を排気ガスに導入するように設計されてなり、それによって大気中へのNOx特異性反応物の排出が実質的に阻止されてなる、排気機構。
【請求項2】
前記SCR触媒の活性が、その温度によって決定される、請求項1に記載の排気機構。
【請求項3】
前記SCR触媒が第一の予め決定された温度より高い時に、前記制御手段が前記NOx特異性反応物またはその前駆物質を導入するものである、請求項2に記載の排気機構。
【請求項4】
前記SCR触媒がNOx特異性反応物をNOに酸化するのに十分に高温である時に、前記制御手段が前記NOx特異性反応物またはその前駆物質の前記排気ガスへ供給することを中断するように設計されてなる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の排気機構。
【請求項5】
前記SCR触媒が第二の予め決定された温度より高い時に、前記NOx特異性反応物またはその前駆物質の供給が中断されてなる、請求項1に記載の排気機構。
【請求項6】
前記NOx特異性反応物またはその前駆物質を導入する第二手段を備えてなり、
前記第二導入手段が、前記NOx吸収材の上流であり、かつ、前記SCR触媒の下流に配置されてなる、請求項1〜5のいずれか一項に記載の排気機構。
【請求項7】
前記NOx吸収材がNOx再生が有効である温度より高い時にのみ、前記制御手段が、前記NOx特異性反応物またはその前駆物質を前記排気ガスに供給するように設計されてなる、請求項6に記載の排気機構。
【請求項8】
前記NOx再生が有効である温度が、第三の予め決定された温度である、請求項7に記載の排気機構。
【請求項9】
前記NOx吸収材がNOx貯蔵効果が熱的に制限される温度より高い時に、前記制御手段が、前記NOx特異性反応物またはその前駆物質の前記排気ガスへの供給を中断するように設計されてなる、請求項7または8に記載の排気機構。
【請求項10】
前記NOx貯蔵が効果的に熱的に制限される温度が、第四の予め決定された温度である、請求項9に記載の排気機構。
【請求項11】
前記第一の予め決定された温度が100〜600℃、好ましくは150〜500℃、最も好ましくは200〜450℃である、請求項3に記載の排気機構。
【請求項12】
前記第二の予め決定された温度が450〜900℃、好ましくは550〜800℃、最も好ましくは650〜700℃である、請求項5に記載の排気機構。
【請求項13】
前記第三の予め決定された温度が75〜200℃、好ましくは100〜175℃、最も好ましくは125〜600℃である、請求項8または11に記載の排気機構。
【請求項14】
前記第一の予め決定された温度が前記第三の予め決定された温度と等しい、請求項13に記載の排気機構。
【請求項15】
前記第四の予め決定された温度が350〜600℃、好ましくは400〜550℃、最も好ましくは450〜500℃である、請求項10に記載の排気機構。
【請求項16】
前記排気ガス中のNOをNOに酸化するための触媒と、および
NO中で400℃までで燃焼させるための、前記排気ガス中の粒子状物質を集めるフィルターとを備えてなる、請求項1〜15のいずれか一項に記載の排気機構。
【請求項17】
前記フィルターが、前記SCR触媒の上流にある、請求項16に記載の排気機構。
【請求項18】
前記SCR触媒が前記フィルター上に配置されてなる、請求項16に記載の排気機構。
【請求項19】
前記NOx吸収材が前記フィルター上に配置されてなる、請求項16または18に記載の排気機構。
【請求項20】
前記NOx吸収材の下流に配置された第二のSCR触媒をさらに備えてなる、請求項1〜19のいずれか一項に記載の排気機構。
【請求項21】
前記SCR触媒の下流に配置された、前記排気ガス中の前記NOx特異性反応物またはその前駆物質の濃度を検出するための少なくとも一個のセンサーを包含してなる、請求項1〜20のいずれか一項に記載の排気機構。
【請求項22】
前記排気ガス中の前記NOx特異性反応物またはその前駆物質の濃度を検出するための、前記NOx吸収材の下流に配置された少なくとも一個のセンサーを包含する、請求項1〜21のいずれか一項に記載の排気機構。
【請求項23】
前記制御手段が、前記排気ガス中の前記NOx特異性反応物またはその前駆物質の検出された濃度に応答して、前記NOx特異性反応物またはその前駆物質の供給を調整し、それによって前記NOx特異性反応物またはその前駆物質のすり抜けを低減させる、請求項21または22に記載の排気機構。
【請求項24】
前記制御手段が、排気ガス温度に応答して、前記NOx特異性反応物またはその前駆物質の供給を調整する、請求項1〜23のいずれか一項に記載の排気機構。
【請求項25】
前記制御手段が、エンジン速度/負荷マップにおける予め決定された設定に応答して、前記NOx特異性反応物またはその前駆物質の供給を調整してなる、請求項1〜24のいずれか一項に記載の排気機構。
【請求項26】
前記制御手段が、前記NOx特異性反応物またはその前駆物質を間欠的に、かつ、「スパイク」濃度で供給するように設計されてなる、請求項1〜25のいずれか一項に記載の排気機構。
【請求項27】
前記NOx特異性反応物またはその前駆物質の供給の期間が、1秒間〜10分間の範囲から選択されるものである、請求項26に記載の排気機構。
【請求項28】
請求項1〜27のいずれか一項に記載の排気機構を包含する、リーンバーン内燃機関。
【請求項29】
前記リーンバーン内燃機関が、ディーゼルエンジンまたはガソリンエンジンである、請求項28に記載の機関。
【請求項30】
リーンバーン内燃機関から出る排気ガス中のNOxを処理する方法であって、
前記内燃機関が、酸化窒素(NOx)吸収材と、およびNOx特異性反応物によるNOxの選択的触媒還元(SCR)を触媒作用させる触媒とを備えてなる排気機構を包含してなり、
前記SCR触媒が、前記NOx吸収材の上流に、および所望により前記NOx吸収材と共に配置されてなり、
前記SCR触媒が不活性である時に、前記NOx吸収材を不十分なNOx特異性反応物と接触させ、前記NOx吸収材上に貯蔵された総NOxを完全に還元し、それによって前記NOx吸収材を再生させ、および
前記SCR触媒が活性である時に、前記SCR触媒を十分なNOx特異性反応物と接触させ、前記排気ガス中のNOxをNに還元し、それによって大気中へのNOx特異性反応物の排出を実質的に阻止することを含んでなる、方法。
【請求項31】
前記SCR触媒の活性が、第一の予め決定された温度に対する前記SCR触媒の温度によって決定される、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記SCR触媒が不活性である時に、前記NOx吸収材と接触させる前記NOx特異性反応物が前記触媒と接触しない、請求項30または31に記載の方法。
【請求項33】
前記SCR触媒が活性である時、十分なNOx特異性反応物が前記SCR触媒と接触し、前記排気ガス中のNOxをNに還元し、かつ、前記SCR触媒をすり抜けて前記NOx吸収材と接触し、それによって貯蔵されているNOxを還元し、
前記工程が、すり抜けるNOx特異性反応物が貯蔵された総NOxを完全に還元するには不十分であるように制御されてなる、請求項30〜32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記第一の予め決定された温度が100〜600℃、好ましくは150〜500℃、最も好ましくは200〜450℃である、請求項31に記載の排気機構。
【請求項35】
再生の後、前記NOx吸収材が、再生開始時に存在するNOx含有量の5〜50%で含有されてなる、請求項30〜34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記吸収材がNOxのすり抜けが起こる前記NOx含有量の5〜50%を含有する時に、再生が開始する、請求項30〜35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
再生が、下記:
NOx特異性反応物が、前記NOx吸収材を担持している基材の長さに沿った途中の地点で検出された時、
固体吸収材を直列に担持されている2個の基材を有する機構において、NOx特異性反応物が前記基材同士の間の地点で検出された時、
エンジン速度/負荷マップ中で予め決定されたデータに基づいて規定されたNOx含有量のレベルに達した時、
NOx特異性反応物のすり抜けの初期観察から反復的に確立されたNOx含有量のレベルに達した時、
の一つの時点で停止するように制御されてなる、請求項30〜36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
吸収および/または再生の期間が1秒間〜10分間の範囲内にある、請求項30〜37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記NOx吸収材が第一基材上に支持され、前記SCR触媒が第二基材上に支持されてなる、請求項30〜38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記NOx特異性反応物がその前駆物質からその場で形成されてなる、請求項30〜39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記NOx特異性反応物の前駆物質を触媒作用により反応させ、NOx特異性反応物を形成する、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
出発ガスがリーンバーン、特にディーゼル内燃機関の排気である、請求項30〜41のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−236554(P2010−236554A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−106241(P2010−106241)
【出願日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【分割の表示】特願2004−533631(P2004−533631)の分割
【原出願日】平成15年9月3日(2003.9.3)
【出願人】(590004718)ジョンソン、マッセイ、パブリック、リミテッド、カンパニー (152)
【氏名又は名称原語表記】JOHNSON MATTHEY PUBLIC LIMITED COMPANY
【Fターム(参考)】