説明

レジスト重合体

【課題】レジスト重合体を提供する。
【解決手段】式CF=CFCFC(X)(C(O)OZ)(CHnaCR=CHRで表される化合物の重合により形成された繰り返し単位(A)を含むレジスト重合体(ただし、Xは水素原子、シアノ基または式−C(O)OZで表される基を示し、Zは水素原子または炭素数1〜20の1価有機基を示し、naは0、1または2を示し、Rは水素原子または炭素数1〜20の1価有機基であって、2個のRは同一であってもよく異なっていてもよい。)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レジスト重合体、イマージョンリソグラフィー用レジスト重合体、イマージョンリソグラフィー用レジスト組成物、イマージョンリソグラフィー用レジスト保護膜重合体、およびイマージョンリソグラフィー用レジスト保護膜組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体等の集積回路の製造においては、露光光源の光をマスクに照射して得られたマスクのパターン像を基板上の感光性レジスト層に投影して、該パターン像を感光性レジスト層に転写するリソグラフィー法が用いられる。通常、パターン像の投影は、スキャン方式により行われる。すなわち、パターン像の投影は、感光性レジスト層上を相対的に移動する投影レンズを介して、パターン像を感光性レジスト層に投影して行われる。
【0003】
本出願人は、レジスト重合体として、官能基を有するフルオロジエンの環化重合体を提案している。たとえば、本出願人は、前記フルオロジエンとして、1,1,2−トリフルオロ−4−アルコキシカルボニル−1,6−ヘプタジエン(CF=CFCHCH(C(O)OC(CH)CHCH=CH等。)を提案している(特許文献1参照。)。
【0004】
ところで、近年、イマージョンリソグラフィー法、すなわち、投影レンズ下部と感光性レジスト層上部との間を高屈折率な液状媒体(超純水等の液状媒体。)(以下、イマージョン液ともいう。)で満たしつつ、マスクのパターン像を投影レンズを介して感光性レジスト層に投影する方法が検討されている。
イマージョンリソグラフィー法においては、投影レンズと感光性レジスト層との間がイマージョン液で満たされるため、感光性レジスト層の成分(光酸発生剤等。)がイマージョン液に溶出する、感光性レジスト層がイマージョン液により膨潤する等の問題がある。かかる問題を解決すべく、イマージョンリソグラフィー用レジスト材料が検討されている。
イマージョンリソグラフィー用感光性レジスト材料としては、下式で表される3種の化合物の共重合体とフッ素系界面活性剤とを含むレジスト組成物が知られている(特許文献2参照。)。
【0005】
【化1】

【0006】
また、イマージョンリソグラフィー法において、感光性レジスト層上にレジスト保護膜層を設け、感光性レジスト層の溶出と膨潤を抑制する試みもされている。
イマージョンリソグラフィー用レジスト保護膜材料としては、下記化合物等の極性基を有する重合性化合物の繰り返し単位を含むアルカリ溶解性重合体とフッ素系界面活性剤とを含む組成物が知られている(特許文献3参照。)。
【0007】
【化2】

【0008】
また、イマージョンリソグラフィー用レジスト保護膜重合体として、特許文献4にはCF=CFCFC(CF)(OR)CHCH=CH(bは水素原子、または、炭素数1〜15のアルキルオキシ基もしくはアルキルオキシアルキル基を、示す。)の環化重合により形成された下記繰り返し単位(p1)を含む重合体が記載され、特許文献5にはCF=CFCHCH(C(CFOH)CHCH=CHの環化重合により形成された下記繰り返し単位(p2)からなる重合体が記載されている。
【0009】
【化3】

【0010】
【特許文献1】特開2005−298707号公報
【特許文献2】特開2005−234178号公報
【特許文献3】特開2005−352384号公報
【特許文献4】特開2005−264131号公報
【特許文献5】特開2007−072336号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
官能基を有する環化重合性のフルオロジエンは、その重合体の特性を改善するために種々の構造が検討されるのが好ましい。しかし、実際にかかる検討を実施しようとしても、原料化合物の入手が困難であり、実施するのが難しかった。
カルボキシ基の類縁基を有するフルオロジエンに関しても、特許文献1に記載の1,1,2−トリフルオロ−4−アルコキシカルボニル−1,6−ヘプタジエンが知られるに過ぎず、他の化合物は知られていなかった。
【0012】
一方、イマージョンリソグラフィー用感光性レジスト材料は、感光性レジスト層上を移動する投影レンズにイマージョン液がよく追従するように、動的撥液性に優れているのが望ましい。たとえば、イマージョン液が水である場合、イマージョンリソグラフィー用感光性レジスト材料は、動的撥水性に優れているのが望ましい。しかし、かかるレジスト材料は知られていない。
たとえば、特許文献2に記載のフッ素系界面活性剤は非重合体状含フッ素化合物と非環式フルオロアルキル(メタ)アクリレートの重合体とにすぎず、特許文献2のレジスト組成物の動的撥水性は低かった。したがって、前記レジスト組成物から調製された感光性レジスト材料を用いたイマージョンリソグラフィー法において、高速移動する投影レンズにイマージョン液を追従させるのは容易ではないと考えられる。
【0013】
イマージョンリソグラフィー法において設けられるレジスト保護膜も、同様に動的撥液性に優れているのが望ましい。しかし、かかるレジスト保護膜材料は知られていない。
たとえば、特許文献3に記載のフッ素系界面活性剤は非重合体状含フッ素化合物と非環式フルオロアルキル(メタ)アクリレートの重合体とにすぎず、特許文献3のレジスト保護膜組成物の動的撥水性は低かった。
【0014】
また、特許文献4または5に記載の重合体は、動的撥水性と現像液可溶性を充分に具備していない。したがって、これらのレジスト保護膜材料を用いたイマージョンリソグラフィー法において、レジスト保護膜層上を高速移動する投影レンズにイマージョン液を追従させるのは容易ではないと考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、感光性レジスト材料またはレジスト保護膜材料としての特性と、動的撥液性(特に動的撥水性。)とに優れたレジスト材料を提供すべくなされた発明である。
【0016】
すなわち、本発明は下記発明を提供する。
<1> 下式(a)で表される化合物の重合により形成された繰り返し単位(A)を含むレジスト重合体。
CF=CFCFC(X)(C(O)OZ)(CHnaCR=CHR (a)。
式中の記号は、下記の意味を示す。
:水素原子、シアノ基または式−C(O)OZで表される基。
:水素原子または炭素数1〜20の1価有機基。
na:0、1または2。
:水素原子または炭素数1〜20の1価有機基であって、2個のRは同一であってもよく異なっていてもよい。
【0017】
<2> 式(a)で表される化合物が、下式(a1)または下式(a2)で表される化合物である<1>に記載のレジスト重合体。
CF=CFCFCH(C(O)OZA1)CHCH=CH (a1)、
CF=CFCFC(C(O)OZA1CHCH=CH (a2)。
式中の記号は、下記の意味を示す。
A1:水素原子、式−C(ZA11で表される基、式−CHOZA12で表される基、または下式で表される基。
【0018】
【化4】

【0019】
A11、ZA12およびZA13:それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜20の1価飽和炭化水素基。
A13:式中の炭素原子と共同して、2価の環式炭化水素基を形成する炭素数3〜20の基。
ただし、1価飽和炭化水素基であるZA11、ZA12またはZA13、並びにQA13中の炭素原子−炭素原子間には、式−O−で表される基、式−C(O)−で表される基または式−C(O)O−で表される基が挿入されていてもよい。また、ZA11、ZA12、ZA13またはQA13中の炭素原子には、フッ素原子、ヒドロキシ基またはカルボキシ基が結合していてもよい。
【0020】
<3> 式(a)で表される化合物の重合により形成された繰り返し単位(A)を含む、酸の作用によりアルカリ溶解性が増大するイマージョンリソグラフィー用レジスト重合体。
<4> 式(a)で表される化合物が、式(a1)または式(a2)で表される化合物である<3>に記載のイマージョンリソグラフィー用レジスト重合体。
【0021】
<5> イマージョンリソグラフィー用レジスト重合体が、さらに含フッ素環構造を有する重合性化合物(f)の重合により形成された繰り返し単位(F)を含む、<3>または<4>に記載のイマージョンリソグラフィー用レジスト重合体。
<6> 重合性化合物(f)が、下式(f1)、下式(f2)、下式(f3)、下式(f4)または下式(f5)で表される化合物である<5>に記載のイマージョンリソグラフィー用レジスト重合体。
【0022】
【化5】

【0023】
式中の記号は下記の意味を示す。
:水素原子、フッ素原子、炭素数1〜3のアルキル基または炭素数1〜3のフルオロアルキル基。
また、化合物(f1)〜(f5)中のフッ素原子は、炭素数1〜6のペルフルオロアルキル基または炭素数1〜6のペルフルオロアルコキシ基に置換されていてもよい。
【0024】
<7> イマージョンリソグラフィー用レジスト重合体が、さらに下式(b1)、下式(b2)、下式(b3)または下式(b4)で表される基を有する重合性化合物(b)の重合により形成された繰り返し単位を含む<3>〜<6>のいずれかに記載のイマージョンリソグラフィー用レジスト重合体。
【0025】
【化6】

【0026】
式中の記号は下記の意味を示す。
B1:炭素数1〜6のアルキル基。
B1:式中の炭素原子と共同して環式炭化水素基を形成する炭素数4〜20の2価の基。
B2:炭素数1〜20の1価炭化水素基であって、3個のXB2は同一であってもよく異なっていてもよい。
:それぞれ独立に、アルキル基、アルコキシアルキル基、アルコキシカルボニル基またはアルキルカルボニル基であって炭素数1〜20の基、または水素原子。
また、XB1、QB1、XB2またはZ中の炭素原子−炭素原子間には式−O−で表される基、式−C(O)O−で表される基または式−C(O)−で表される基が挿入されていてもよく、XB1、QB1、XB2またはZ中の炭素原子にはフッ素原子、ヒドロキシ基またはカルボキシ基が結合していてもよい。
【0027】
<8> 重合性化合物(b)が、下式(b1)、下式(b2)または下式(b3)で表される化合物である<7>に記載のイマージョンリソグラフィー用レジスト重合体。
【0028】
【化7】

【0029】
式中の記号は下記の意味を示す。
:水素原子、フッ素原子、炭素数1〜3のアルキル基または炭素数1〜3のフルオロアルキル基。
B1:炭素数1〜6のアルキル基。
B1:式中の炭素原子と共同して環系炭化水素基を形成する炭素数4〜20の2価の基。
B2:炭素数1〜20のアルキル基であって、3個のXB2は同一であってもよく異なっていてもよい。
B3:式−CFC(CF)(OZ)(CHnb−、または式−CHCH((CHmbC(CF(OZ))(CHnb−で表される基。
:アルキル基、アルコキシアルキル基、アルコキシカルボニル基またはアルキルカルボニル基であって炭素数1〜20の基、または水素原子。
mbおよびnb:それぞれ独立に、0、1、または2。
ただし、XB1、QB1、XB2またはZの炭素原子−炭素原子間には−O−、−C(O)O−または−C(O)−が挿入されていてもよく、また、XB1、QB1、XB2またはZの炭素原子にはフッ素原子、ヒドロキシ基またはカルボキシ基が結合していてもよい。
【0030】
<9> <3>〜<8>のいずれかに記載のイマージョンリソグラフィー用レジスト重合体、光酸発生剤、および有機溶媒を含むイマージョンリソグラフィー用レジスト形成組成物。
【0031】
<10> イマージョンリソグラフィー法によるレジストパターンの形成方法であって、<9>に記載のイマージョンリソグラフィー用レジスト形成組成物を基板上に塗布して基板上にレジスト膜を形成する工程、イマージョンリソグラフィー工程、および現像工程をこの順に行う、基板上にレジストパターンを形成するレジストパターンの形成方法。
【0032】
<11> 式(a)で表される化合物の重合により形成された繰り返し単位(A)を含む重合体(A)と、酸の作用によりアルカリ溶解性が増大する重合体(B)とを含むイマージョンリソグラフィー用レジスト組成物。
<12> 式(a)で表される化合物が、下式(a1)または下式(a2)で表される化合物である<11>に記載のイマージョンリソグラフィー用レジスト組成物。
【0033】
<13> 重合体(A)が、含フッ素環構造を有する重合性化合物(f)の重合により形成された繰り返し単位(F)とを含む重合体(AF)である<11>または<12>に記載のイマージョンリソグラフィー用レジスト組成物。
<14> 重合性化合物(f)が、式(f1)、式(f2)、式(f3)、式(f4)または式(f5)で表される化合物である<13>に記載のイマージョンリソグラフィー用レジスト組成物。
【0034】
<15> 重合体(B)が、式(b1)、式(b2)、式(b3)または式(b4)で表される基を有する重合性化合物(b)である<11>〜<14>のいずれかに記載のイマージョンリソグラフィー用レジスト組成物。
<16> 重合性化合物(b)が、式(b1)、式(b2)または式(b3)で表される化合物である<15>に記載のイマージョンリソグラフィー用レジスト組成物。
【0035】
<17> 重合体(B)に対して重合体(A)を0.1〜30質量%含む<11>〜<16>のいずれかに記載のイマージョンリソグラフィー用レジスト組成物。
【0036】
<18> <11>〜<17>のいずれかに記載のイマージョンリソグラフィー用レジスト組成物、光酸発生剤および有機溶媒を含むイマージョンリソグラフィー用レジスト形成組成物。
【0037】
<19> イマージョンリソグラフィー法によるレジストパターンの形成方法であって、<18>に記載のイマージョンリソグラフィー用レジスト形成組成物を基板上に塗布して基板上にレジスト膜を形成する工程、イマージョンリソグラフィー工程、および現像工程をこの順に行う、基板上にレジストパターンを形成するレジストパターンの形成方法。
【0038】
<20> 式(a)で表される化合物の重合により形成された繰り返し単位(A)を含む、アルカリ溶解性のイマージョンリソグラフィー用レジスト保護膜重合体。
<21> 式(a)で表される化合物が、式(a1)または式(a2)で表される化合物である請求項20に記載のイマージョンリソグラフィー用レジスト保護膜重合体。
【0039】
<22> イマージョンリソグラフィー用レジスト保護膜重合体が、さらに含フッ素環構造を有する重合性化合物(f)の重合により形成された繰り返し単位(F)とを含む、<20>または<21>に記載のイマージョンリソグラフィー用レジスト保護膜重合体。
<23> 重合性化合物(f)が、式(f1)、式(f2)、式(f3)、式(f4)または式(f5)で表される化合物である<22>に記載のイマージョンリソグラフィー用レジスト保護膜重合体。
【0040】
<24> <20>〜<23>のいずれかに記載のイマージョンリソグラフィー用レジスト保護膜重合体と有機溶媒を含むイマージョンリソグラフィー用レジスト保護膜形成組成物。
【0041】
<25> 感光性レジスト材料を基板上に塗布して基板上にレジスト膜を形成する工程、<24>に記載のイマージョンリソグラフィー用レジスト保護膜形成組成物を該レジスト膜上に塗布してレジスト膜上にレジスト保護膜を形成する工程、イマージョンリソグラフィー工程、現像工程をこの順に行う、基板上にレジストパターンを形成するレジストパターンの形成方法。
【0042】
<26> 式(a)で表される化合物の重合により形成された繰り返し単位(A)を含む重合体(A)と、含フッ素環構造を有する重合性化合物(f)の重合により形成された繰り返し単位(F)を含む重合体(F)とを含む、イマージョンリソグラフィー用レジスト保護膜組成物。
<27> 式(a)で表される化合物が、式(a1)または式(a2)で表される化合物である<26>に記載のイマージョンリソグラフィー用レジスト保護膜組成物。
【0043】
<28> 重合体(F)が、繰り返し単位(A)と繰り返し単位(F)とを含む重合体(FA)である<26>または<27>に記載のイマージョンリソグラフィー用レジスト保護膜組成物。
<29> 重合性化合物(f)が、式(f1)、式(f2)、式(f3)、式(f4)または式(f5)で表される化合物である<26>〜<28>のいずれかに記載のイマージョンリソグラフィー用レジスト保護膜組成物。
【0044】
<30> 重合体(A)に対して重合体(F)を0.1〜200質量%含む<26>〜<29>のいずれかに記載のイマージョンリソグラフィー用レジスト保護膜組成物。
【0045】
<31> <26>〜<30>のいずれかに記載のイマージョンリソグラフィー用レジスト保護膜組成物と有機溶媒を含むイマージョンリソグラフィー用レジスト保護膜形成組成物。
【0046】
<32> 感光性レジスト材料を基板上に塗布して基板上にレジスト膜を形成する工程、<31>に記載のイマージョンリソグラフィー用レジスト保護膜形成組成物を該レジスト膜上に塗布してレジスト膜上にレジスト保護膜を形成する工程、イマージョンリソグラフィー工程、現像工程をこの順に行う、基板上にレジストパターンを形成するレジストパターンの形成方法。
【発明の効果】
【0047】
本発明によれば、感光性レジスト特性(短波長光に対する透明性、エッチング耐性等。)またはレジスト保護膜特性(感光性レジストの膨潤と溶出の抑制等。)と、動的撥液性(特に動的撥水性。)とに優れたレジスト重合体が提供される。本発明のレジスト重合体を用いることにより、マスクのパターン像を高解像度に転写可能なイマージョンリソグラフィー法の安定した高速実施が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0048】
本明細書において、式(a)で表される化合物を化合物(a)とも、式−C(O)OZで表される基を−C(O)OZとも、記す。他の化合物と他の基も同様に記す。
また、基中の記号は特に記載しない限り前記と同義である。
【0049】
本発明は、下記化合物(a)の重合により形成された繰り返し単位(A)を含むレジスト重合体を提供する。
CF=CFCFC(X)(C(O)OZ)(CHnaCR=CHR (a)。
【0050】
は、水素原子または−C(O)OZが好ましい。
naは、1が好ましい。
は、水素原子が好ましい。
【0051】
は、水素原子、式−C(ZA11で表される基(以下、基(G1)ともいう。)、式−CHOZA12で表される基(以下、基(G2)ともいう。)、または下式で表される基(以下、基(G3)ともいう。)が好ましい。
【0052】
【化8】

【0053】
基(G1)におけるZA11が炭素数1〜20の1価飽和炭化水素基である場合、ZA11は、非環式の基であってもよく、環式の基を含む基であってもよい。非環式の基は、直鎖状の基であってもよく分岐状の基であってもよい。環式の基を含む基は、多環式の基を含む基であってもよく単環式の基を含む基であってもよい。多環式の基を含む基は、橋かけ環式の基を含む基であってもよく縮合環式の基を含む基であってもよい。
【0054】
環式の基を含む基の具体例としては、下式で表されるいずれかの基を含む基、該中の水素原子がフッ素原子に置換された基を含む基が挙げられる。
【0055】
【化9】

【0056】
環式の基を含む基中の水素原子がフッ素原子に置換された基の具体例としては、下記基が挙げられる。
【0057】
【化10】

【0058】
基(G1)における3個のZA11は、同一であってもよく、異なっていてもよい。
基(G1)における3個のZA11は、2個が炭素数1〜6の1価飽和炭化水素基であり1個が炭素数1〜12の1価環式飽和炭化水素基であるか、2個が水素原子であり1個が炭素数1〜12のポリフルオロアルキル基であるか、3個が炭素数1〜6の1価飽和炭化水素基であるのが好ましく、2個が炭素数1〜6のアルキル基(メチル基が好ましい。)であり1個が1−アダマンチル基であるか、式−CHFZで表されるポリフルオロアルキル基(ただし、RFZは炭素数1〜10のペルフルオロアルキル基を示す。)であるか、3個が炭素数1〜6のアルキル基(メチル基が好ましい。)であるのが特に好ましい。
【0059】
基(G1)の具体例としては、下式で表される基が挙げられる。
【0060】
【化11】

【0061】
基(G2)におけるZA12は、炭素数1〜12の飽和炭化水素基、炭素数1〜12の−O−を含む飽和炭化水素基、炭素数1〜12の含フッ素飽和炭化水素基、または炭素数1〜12の−O−を含む含フッ素飽和炭化水素基が好ましい。
【0062】
基(G2)の具体例としては、下式で表されるいずれかの基が挙げられる。
【0063】
【化12】

【0064】
A13は、炭素数1〜6の飽和炭化水素基または炭素数1〜6の−O−を含む飽和炭化水素基が好ましい。
A13は、炭素数4〜12の飽和炭化水素基、炭素原子−炭素原子間に−O−、−C(O)−または−C(O)O−が挿入されている炭素数4〜12の飽和炭化水素基、炭素数4〜12の含フッ素飽和炭化水素基、または炭素原子−炭素原子間に−O−、−C(O)−または−C(O)O−が挿入されている炭素数4〜12の含フッ素飽和炭化水素基が好ましい。
【0065】
基(G3)の具体例としては、下式で表されるいずれかの基が挙げられる。
【0066】
【化13】

【0067】
化合物(a)は、下記化合物(a1)または(a2)が好ましい。
CF=CFCF−CH(C(O)OZA1)CHCH=CH (a1)。
CF=CFCF−C(C(O)OZA1CHCH=CH (a2)。
【0068】
化合物(a)の具体例としては、下記化合物が挙げられる。
【0069】
【化14】

【0070】
化合物(a)は、CH=C(C(O)OZとCH=CH(CHnaBrを塩基性化合物の存在下に反応させてCH(C(O)OZ((CHnaCH=CH)を得て、つぎにCH(C(O)OZ((CHnaCH=CH)とCF=CFCFOSOFを塩基性化合物の存在下に反応させて得られたCF=CFCFC(C(O)OZ(CHnaCH=CH(以下、化合物(p1)ともいう。)を用いて製造するのが好ましい(ただし、Zは炭素数1〜20の1価有機基を示す。Zは、Zと同一であるのが好ましい。)。
たとえば、CF=CFCFC(C(O)OH)(CHnaCH=CHは、化合物(p1)を加水分解して製造するのが好ましい。
CF=CFCFCH(C(O)OH)(CHnaCH=CHは、化合物(p1)を脱炭酸して製造するのが好ましい。
【0071】
本発明のレジスト重合体の重量平均分子量は、1000〜100000が好ましく、1000〜50000が特に好ましい。
【0072】
本発明のレジスト重合体は、動的撥液性、特に動的撥水性に優れている。その理由は必ずしも明確ではないが、化合物(a)は環化重合性の化合物であり、化合物(a)の環化重合により形成される下記のいずれかの繰り返し単位(A)を含む重合体を通常は形成する。
【0073】
【化15】

【0074】
該重合体は、主鎖にかさ高い含フッ素環構造を有する繰り返し単位を含む重合体であり、従来公知の化合物(1,1,2−トリフルオロ−4−アルコキシカルボニル−1,6−ヘプタジエン。)の環化重合により形成される繰り返し単位を含む重合体に比較して、フッ素含量が高いため、動的撥液性、特に動的撥水性に優れていると考えられる。
したがって、本発明のレジスト重合体を用いることにより、イマージョン液に浸入されにくく、イマージョン液がよく滑るイマージョンリソグラフィー用材料の調製が容易となる。
【0075】
本発明は、化合物(a)の重合により形成された繰り返し単位(A)を含む、酸の作用によりアルカリ溶解性が増大するイマージョンリソグラフィー用レジスト重合体(以下、Imレジスト重合体ともいう。)を提供する。
【0076】
本発明のImレジスト重合体は、繰り返し単位(A)を含むため動的撥水性に特に優れている。Imレジスト重合体から調製された感光性レジスト材料を用いたイマージョンリソグラフィー法においては、感光性レジスト層上を高速移動する投影レンズにイマージョン液がよく追従する。
また、本発明のImレジスト重合体は酸の作用によりアルカリ溶解性が増大する重合体であり、Imレジスト重合体から調製された感光性レジスト層の露光部分はアルカリ溶液により容易に除去できる。したがって、本発明のImレジスト重合体により、マスクのパターン像を高解像度に転写可能なイマージョンリソグラフィー法を高速実施できる。
【0077】
本発明のImレジスト重合体における化合物(a)は、化合物(a1)または(a2)が好ましい。また、Imレジスト重合体における繰り返し単位(A)は、1種のみからなってもよく、2種以上からなっていてもよい。
【0078】
本発明のImレジスト重合体は、酸の作用によりアルカリ溶解性が増大する繰り返し単位を含むのが好ましい。前記繰り返し単位は、繰り返し単位(A)に由来する繰り返し単位であってもよく、酸の作用によりアルカリ溶解性が増大する他の重合性化合物の重合により形成された繰り返し単位であってもよい。
【0079】
前者の繰り返し単位としては、Zが基(G1)、基(G2)または基(G3)である化合物(a)の重合により形成された繰り返し単位が挙げられる。
後者の繰り返し単位としては、下記基(b1)、(b2)、(b3)または(b4)を有する重合性化合物(b)が好ましく、下記化合物(b1)、(b2)または(b3)が特に好ましい。
【0080】
【化16】

【0081】
B1は、炭素数1〜6のアルキル基またはエーテル性酸素原子を含む炭素数1〜6のアルキル基が好ましく、メチル基またはエチル基が特に好ましい。
【0082】
B1と式中の炭素原子により形成される2価の基は、脂肪族の基が好ましく、飽和脂肪族の基が特に好ましい。前記2価の基は、単環式炭化水素基であってもよく単環式炭化水素基であってもよい。前記2価の基は、単環式炭化水素基が好ましく、橋かけ環式炭化水素基が特に好ましい。
B1中の炭素原子−炭素原子間に−O−、−C(O)O−または−C(O)−が挿入されている場合は、−C(O)O−が挿入されているのが好ましい。QR1中の炭素原子にフッ素原子、ヒドロキシ基またはカルボキシ基が結合している場合は、ヒドロキシ基またはカルボキシ基が結合しているのが好ましい。
【0083】
B2は、3個とも炭素数1〜3のアルキル基であるか、2個が炭素数1〜3のアルキル基であり1個が炭素数4〜20の1価の環式炭化水素基(1−アダマンチル基等。)であるのが好ましい。
【0084】
は、−C(ZB11(ただし、ZB11は炭素数1〜12の1価の飽和炭化水素基を示す。以下同様。)または−CHOZB11が好ましく、−C(CH、−CHOCH、−CHOCHCH)、−CHOC(CHまたは下記のいずれかの基が特に好ましい。
【0085】
は、水素原子、フッ素原子、メチル基またはトリフルオロメチル基が好ましく、水素原子またはメチル基が特に好ましい。
【0086】
B3中のnbは、1が好ましい。
B3中のmbは、0が好ましい。
B3は、−CFC(CF)(OC(ZB11)CH−、−CFC(CF)(OCHOZB11)CH−、−CHCH(C(CF(OCHOZB11))CH−または−CHCH(C(CF(OC(ZB11))CH−が好ましい。
【0087】
【化17】

【0088】
基(b1)の具体例としては、下式で表されるいずれかの基が挙げられる。
【0089】
【化18】

【0090】
基(b2)の具体例としては、下式で表されるいずれかの基が挙げられる。
【0091】
【化19】

【0092】
化合物(b1)は、下記化合物(b11)、(b12)、(b13)、(b14)または(b15)が好ましく、化合物(b11)が特に好ましい。
【0093】
【化20】

【0094】
化合物(b2)は、下記化合物(b21)または(b22)が好ましい。
【0095】
【化21】

【0096】
化合物(b3)は、CF=CFCFC(CF)(OC(ZB11)CHCH=CH、CF=CFCFC(CF)(OCHOZB11)CHCH=CH、CF=CFCHCH(C(CF(OCHOZB11))CHCH=CH、またはCF=CFCHCH(C(CF(OC(ZB11))CHCH=CHが好ましい。
【0097】
化合物(b1)の具体例としては、下記化合物が挙げられる。
【0098】
【化22】

【0099】
化合物(b2)の具体例としては、下記化合物が挙げられる。
【0100】
【化23】

【0101】
化合物(b3)の具体例としては、下記化合物が挙げられる。
【0102】
【化24】

【0103】
本発明のIm重合体の動的撥液性をさらに向上させるために、本発明のImレジスト重合体は、さらに含フッ素環構造を有する重合性化合物(f)の重合により形成された繰り返し単位(F)を含んでいるのが好ましい。
重合性化合物(f)は、1価重合性基と1価含フッ素環式炭化水素基とを有する化合物が好ましい。
1価重合性基は、ビニル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、2−フルオロ−アクリロイルオキシ基、または2−フルオロアルキル−アクリロイルオキシ基が好ましく、(メタ)アクリロイルオキシ基が特に好ましい。ただし、(メタ)アクリロイルオキシ基とは、アクリロイルオキシ基またはメタクリロイルオキシ基を意味する(以下同様。)。
【0104】
1価含フッ素環式炭化水素基は、1価含フッ素単環式炭化水素基または1価含フッ素多環式炭化水素基が好ましい。1価含フッ素多環式炭化水素基は、1価含フッ素縮環式炭化水素基であってもよく、1価含フッ素橋かけ環式炭化水素基であってもよい。
1価含フッ素環式炭化水素基は、環式飽和炭化水素化合物の水素原子を1個除いた1価の基であって、残余の水素原子の50%以上がフッ素原子に置換された基であるのが好ましい。該残余の水素原子は、80%以上がフッ素原子に置換されているのがより好ましく、すべてがフッ素原子に置換されているのが特に好ましい。
環式飽和炭化水素化合物は、下式で表されるいずれかの化合物が好ましい。
【0105】
【化25】

【0106】
重合性化合物(f)は、下記化合物(f1)、(f2)、(f3)、(f4)または(f5)が、特に好ましい。
【0107】
【化26】

【0108】
なお、化合物(f3)または(f4)において、不斉中心の立体配置は、endoであってもよくexoであってもよい。
【0109】
は、水素原子またはメチル基が好ましい。
【0110】
化合物(f2)、化合物(f3)および化合物(f4)は、新規な化合物である。
化合物(f2)は、下記化合物(pf2)とH−CHOを塩基性化合物の存在下に反応させて下記化合物(qf2)を得て、つぎに化合物(qf2)とCH=CRC(O)Clを反応させることにより製造するのが好ましい。
【0111】
【化27】

【0112】
化合物(f3)は、下記化合物(mf3)とRf−COF(ただし、Rfは炭素数1〜20のエーテル性酸素原子を含んでいてもよいアルキル基を示す。)を反応させて下記化合物(nf3)を得て、つぎに化合物(nf3)を液相フッ素化法によってフッ素化して下記化合物(of3)を得て、つぎに化合物(of3)をKF存在下に分解反応して下記化合物(pf3)を得て、つぎに下記化合物(pf3)を還元反応して下記化合物(qf3)を得て、つぎに化合物(qf2)とCH=CRC(O)Clを反応させることにより製造するのが好ましい。
【0113】
【化28】

【0114】
化合物(f4)は、化合物(mf3)のかわりに下記化合物(mf4)を用いる以外は同様にして製造するのが好ましい。
【0115】
【化29】

【0116】
本発明のImレジスト重合体は、全繰り返し単位に対して、繰り返し単位(A)を1〜100モル%含むのが好ましい。
【0117】
また、本発明のImレジスト重合体が重合性化合物(b)の重合により形成された繰り返し単位(B)を含む場合、本発明のImレジスト重合体は、全繰り返し単位に対して、繰り返し単位(B)を10〜60モル%含むのが好ましい。
本発明のImレジスト重合体が重合性化合物(f)の重合により形成された繰り返し単位(F)を含む場合、本発明のImレジスト重合体は、全繰り返し単位に対して、繰り返し単位(B)を1〜45モル%含むのが好ましい。
【0118】
本発明のImレジスト重合体は、さらに他の単位を含んでいてもよい。
他の単位は、下記基(c1)または(c2)を有する重合性化合物(c)の重合により形成された繰り返し単位が好ましく、下記化合物(c1)または(c2)の重合により形成された繰り返し単位が特に好ましい。
【0119】
【化30】

【0120】
式中の記号は下記の意味を示す(以下同様。)。
C1:式中の炭素原子と共同して環式炭化水素基を形成する炭素数4〜20の2価の基。
C2:式中の炭素原子と共同して橋かけ環式炭化水素基を形成する炭素数4〜20の3価の基。
ただし、QC1またはQC2中の炭素原子−炭素原子間には−O−、−C(O)O−または−C(O)−が挿入されていてもよく、また、QC1またはQC2中の炭素原子にはヒドロキシ基またはカルボキシ基を含む基が結合していてもよい。
:水素原子、フッ素原子、炭素数1〜3のアルキル基または炭素数1〜3のフルオロアルキル基(Rは、水素原子またはメチル基が好ましい。)。
【0121】
基(c1)は、下式で表されるいずれかの基が好ましい。
【0122】
【化31】

【0123】
基(c2)は、下式で表されるいずれかの基が好ましい。
【0124】
【化32】

【0125】
化合物(c1)は、下記化合物のいずれかの化合物が好ましい。
【0126】
【化33】

【0127】
化合物(c2)は、下記化合物のいずれかの化合物が好ましい。
【0128】
【化34】

【0129】
本発明のImレジスト重合体の重量平均分子量は、1000〜100000が好ましく、1000〜50000が特に好ましい。
【0130】
本発明のImレジスト重合体は、イマージョンリソグラフィー法への適用において、通常は化学増幅型の感光性レジストに調製されて用いられる。本発明のImレジスト重合体には光酸発生剤が配合されるのが好ましい。また、Imレジスト重合体は、イマージョンリソグラフィー法への適用において、通常は基板上に塗布されて用いられる。Imレジスト重合体は、液状組成物に調製されるのが好ましい。
【0131】
本発明は、本発明のImレジスト重合体、光酸発生剤および有機溶媒を含むイマージョンリソグラフィー用レジスト形成組成物(以下、レジスト形成組成物(1)ともいう。)を提供する。
レジスト形成組成物(1)は、Imレジスト重合体に対して光酸発生剤を1〜10質量%含むのが好ましい。レジスト形成組成物(1)は、Imレジスト重合体に対して有機溶媒を100質量%〜10000質量%含むのが好ましい。
【0132】
光酸発生剤は、活性光線の照射により酸を発生する基を有する化合物であれば特に限定されない(活性光線とは放射線を包含する広い概念を意味する。)。前記化合物は、非重合体状化合物であっても、重合体状化合物であってもよい。また、光酸発生剤は、1種を用いてもよく2種以上を用いていてもよい。
【0133】
光酸発生剤は、オニウム塩類、ハロゲン含有化合物類、ジアゾケトン類、スルホン化合物類、スルホン酸化合物類、ジアゾジスルホン類、ジアゾケトスルホン類、イミノスルホネート類およびジスルホン類からなる群から選ばれる光酸発生剤が好ましい。
【0134】
光酸発生剤の具体例としては、ジフェニルヨードニウムトリフレート、ジフェニルヨードニウムピレンスルホネート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニルヨードニウムドデシルベンゼンスルホネート、ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムトリフレート、ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムドデシルベンゼンスルホネート、トリフェニルスルホニウムトリフレート、トリフェニルスルホニウムノナネート、トリフェニルスルホニウムパーフルオロオクタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウムナフタレンスルホネート、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナート、トリフェニルスルホニウムカンファースルホニウム、1−(ナフチルアセトメチル)チオラニウムトリフレート、シクロヘキシルメチル(2−オキソシクロヘキシル)スルホニウムトリフレート、ジシクロヘキシル(2−オキソシクロヘキシル)スルホニウムトリフレート、ジメチル(4−ヒドロキシナフチル)スルホニウムトシレート、ジメチル(4−ヒドロキシナフチル)スルホニウムドデシルベンゼンスルホネート、ジメチル(4−ヒドロキシナフチル)スルホニウムナフタレンスルホネート、トリフェニルスルホニウムカンファースルホネート、(4−ヒドロキシフェニル)ベンジルメチルスルホニウムトルエンスルホネート、(4−メトキシフェニル)フェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ビス(t−ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、フェニル−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、メトキシフェニル−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、ナフチル−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、1,1−ビス(4−クロロフェニル)−2,2,2−トリクロロエタン、4−トリスフェナシルスルホン、メシチルフェナシルスルホン、ビス(フェニルスルホニル)メタン、ベンゾイントシレート、1,8−ナフタレンジカルボン酸イミドトリフレートが挙げられる。
【0135】
有機溶媒は、Imレジスト重合体に対する相溶性の高い溶媒であれば、特に限定されない。有機溶媒は、フッ素系有機溶媒であってもよく非フッ素系有機溶媒であってもよい。
【0136】
フッ素系有機溶媒の具体例としては、CClFCH、CFCFCHCl、CClFCFCHClF等のハイドロクロロフルオロカーボン類;CFCHFCHFCFCF、CF(CFH、CF(CF、CF(CF、CF(CF等のハイドロフルオロカーボン類;1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、メタキシレンヘキサフルオライド等のハイドロフルオロベンゼン類;ハイドロフルオロケトン類;ハイドロフルオロアルキルベンゼン類;CFCFCFCFOCH、(CFCFCF(CF)CFOCH、CFCHOCFCHF等のハイドロフルオロエーテル類;CHFCFCHOH等のハイドロフルオロアルコール類が挙げられる。
【0137】
非フッ素系有機溶媒の具体例としては、メチルアルコール、エチルアルコール、ジアセトンアルコール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、2−エチルブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール等のアルコール類、アセトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、2−ヘプタノン、N−メチルピロリドン、γ−ブチロラクトン等のケトン類、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、β−メトキシイソ酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸プロピル、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸2−エトキシエチル、酢酸イソアミル、乳酸メチル、乳酸エチル等のエステル類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールモノまたはジアルキルエーテル類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどが挙げられる。
【0138】
本発明のレジスト形成組成物(1)は、イマージョンリソグラフィー法に用いられる。イマージョンリソグラフィー法としては、レジスト形成組成物(1)を基板(シリコンウェハ等。)上に塗布して基板上にレジスト膜を形成する工程、イマージョンリソグラフィー工程、現像工程、エッチング工程およびレジスト膜剥離工程をこの順に行うイマージョンリソグラフィー法が挙げられる。
【0139】
イマージョンリソグラフィー工程としては、露光光源の光をマスクに照射して得られたマスクのパターン像を、投影レンズとレジスト膜の間をイマージョン液で満たしつつ、レジスト膜上を相対的に移動する投影レンズを介してレジスト膜の所望の位置に投影する工程が挙げられる。
【0140】
露光光源は、g線(波長436nm)、i線(波長365nm)、KrFエキシマレーザー光(波長248nm)、ArFエキシマレーザー光(波長193nm)またはFエキシマレーザー光(波長157nm)が好ましく、ArFエキシマレーザー光またはFエキシマレーザー光がより好ましく、ArFエキシマレーザー光が特に好ましい。
イマージョン液は、油性液状媒体(デカリン等。)であってもよく、水性液状媒体(超純水等。)であってもよく、水を主成分とする液状媒体が好ましく、超純水が特に好ましい。
【0141】
現像工程としては、レジスト膜の露光部分をアルカリ溶液により除去する工程が挙げられる。アルカリ溶液としては、特に限定されず、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドおよびトリエチルアミンからなる群から選ばれるアルカリ化合物を含むアルカリ水溶液が挙げられる。
【0142】
本発明は、化合物(a)の重合により形成された繰り返し単位(A)を含む重合体(A)と、酸の作用によりアルカリ溶解性が増大する重合体(B)とを含むイマージョンリソグラフィー用レジスト組成物(以下、Imレジスト組成物ともいう。)を提供する。
【0143】
本発明のImレジスト組成物は、重合体(A)を含むため動的撥水性に特に優れている。Imレジスト組成物から調製された感光性レジスト材料を用いたイマージョンリソグラフィー法においては、感光性レジスト層上を高速移動する投影レンズにイマージョン液がよく追従する。
また、本発明のImレジスト組成物は酸の作用によりアルカリ溶解性が増大する重合体(B)を含み、Imレジスト組成物から調製された感光性レジスト層の露光部分はアルカリ溶液により容易に除去できる。したがって、本発明のImレジスト組成物により、マスクのパターン像を高解像度に転写可能なイマージョンリソグラフィー法を高速実施できる。
【0144】
重合体(A)における化合物(a)は、化合物(a1)または(a2)が好ましい。
重合体(A)は、繰り返し単位(A)を10モル%以上含むのが好ましく、繰り返し単位(A)のみからなるのが特に好ましい。また、繰り返し単位(A)は、1種のみからなってもよく、2種以上からなっていてもよい。
【0145】
Imレジスト組成物の動的撥液性をより向上させるために、重合体(A)は、含フッ素環構造を有する重合性化合物(f)の重合により形成された繰り返し単位(F)を含んでいてもよい。重合体(A)は、全繰り返し単位に対して、繰り返し単位(F)を1〜45モル%含むのが好ましい。重合性化合物(f)の好ましい態様は、Imレジスト重合体の記載と同じである。
【0146】
また、重合体(A)はさらに他の単位を含んでいてもよい。他の単位は、重合性化合物(c)の重合により形成された繰り返し単位が好ましく、化合物(c1)または化合物(c2)の重合により形成された繰り返し単位が特に好ましい。
【0147】
重合体(A)の重量平均分子量は、1000〜100000が好ましく、1000〜50000が特に好ましい。
【0148】
重合体(A)の好ましい態様としては、繰り返し単位(A)と繰り返し単位(F)を含む重合体(AF)が挙げられる。この場合の重合体(F)は、全繰り返し単位に対して、繰り返し単位(A)を80〜99モル%含み、繰り返し単位(F)を1〜20モル%含むのが好ましい。また、この場合の重合体(F)の重量平均分子量は、1000〜30000が好ましい。
【0149】
重合体(B)は、酸の作用によりアルカリ溶解性が増大する、化合物(a)以外の重合性化合物の重合により形成された繰り返し単位を含むのが好ましく、全繰り返し単位に対して、該繰り返し単位を25モル%以上含むのが特に好ましい。
前記重合性化合物は、重合性化合物(b)が好ましく、化合物(b1)、化合物(b2)または化合物(b3)が特に好ましい。
【0150】
重合体(B)の重量平均分子量は、1000〜100000が好ましく、1000〜50000が特に好ましい。
【0151】
本発明のImレジスト組成物は、重合体(B)の総質量に対して重合体(A)を、0.1〜30質量%含むのが好ましく、0.1〜10質量%含むのが特に好ましい。
【0152】
本発明のImレジスト組成物は、イマージョンリソグラフィー法への適用において、通常は化学増幅型の感光性レジストに調製されて用いられる。Imレジスト組成物には光酸発生剤が配合されるのが好ましい。また、本発明のImレジスト組成物は、イマージョンリソグラフィー法への適用において、通常は基板上に塗布されて用いられる。本発明のレジスト組成物は、液状組成物に調製されるのが好ましい。
【0153】
本発明は、本発明のImレジスト組成物、光酸発生剤および有機溶媒を含むイマージョンリソグラフィー用レジスト形成組成物(以下、レジスト形成組成物(2)ともいう。)を提供する。
レジスト形成組成物(2)は、重合体(B)に対して光酸発生剤を1〜10質量%含むのが好ましい。レジスト形成組成物(2)は、重合体(B)に対して有機溶媒を100質量%〜10000質量%含むのが好ましい。
光酸発生剤の具体例は、レジスト形成組成物(1)に記載した光酸発生剤と同じである。有機溶媒の具体例は、レジスト形成組成物(1)に記載した有機溶媒と同じである。
【0154】
レジスト形成組成物(2)は、イマージョンリソグラフィー法に用いられる。イマージョンリソグラフィー法の具体的な態様は、レジスト形成組成物(1)に記載した態様と同じである。
【0155】
本発明は、化合物(a)の重合により形成された繰り返し単位(A)を含むアルカリ溶解性のイマージョンリソグラフィー用レジスト保護膜重合体(以下、Im保護膜重合体ともいう。)を提供する。
本発明のIm保護膜重合体は、アルカリ溶解性の重合体であるため、アルカリ溶液により容易に除去できる。したがって、本発明のIm保護膜重合体により、マスクのパターン像を高解像度に転写可能なイマージョンリソグラフィー法の高速実施が可能となる。
【0156】
本発明のIm保護膜重合体は、アルカリ溶解性の繰り返し単位を含むのが好ましい。前記繰り返し単位は、繰り返し単位(A)に由来する繰り返し単位、またはアルカリ溶解性の他の重合性化合物の重合により形成された繰り返し単位が好ましく、繰り返し単位(A)に由来する繰り返し単位が特に好ましい。
前者の繰り返し単位は、Zが水素原子である化合物(a)の重合により形成された繰り返し単位が好ましい。
後者の繰り返し単位としては、ヒドロキシ基、カルボキシ基、スルホン酸基、スルホニルアミド基、アミノ基またはリン酸基を有する、化合物(a)以外の重合性化合物の重合により形成された繰り返し単位が挙げられる。
【0157】
化合物(a)以外の重合性化合物は、下記化合物(oa1)、(oa2)、(oa3)または(oa4)が好ましい。
【0158】
【化35】

【0159】
式中の記号は下記の意味を示す。
OA1:−CFC(CF)(OH)(CH)−または−CHCH(C(CF(OH))CH−。
OA2:水素原子、フッ素原子、炭素数1〜3のアルキル基または炭素数1〜3のフルオロアルキル基。
OA2およびQOA3:それぞれ独立に、炭素数1〜20の(ab+1)価炭化水素基。
ab:1または2。
OA4:単結合または炭素数1〜10の2価炭化水素基。
また、QOA2、QOA3またはQOA4中の炭素原子には、フッ素原子が結合していてもよい。
【0160】
化合物(a)以外の重合性化合物の具体例としては、下記化合物が挙げられる。
【0161】
【化36】

【0162】
Im保護膜重合体における化合物(a)は、化合物(a1)または(a2)が好ましい。Im保護膜重合体における繰り返し単位(A)は、1種のみからなってもよく、2種以上からなっていてもよい。
本発明のIm保護膜重合体は、全繰り返し単位に対して、繰り返し単位(A)を50〜99モル%含むのが好ましい。
【0163】
本発明のIm保護膜重合体は、動的撥液性をさらに向上させるために、含フッ素環構造を有する重合性化合物(f)の重合により形成された繰り返し単位(F)を含むのが好ましい。重合性化合物(f)の好ましい態様は、Imレジスト重合体の記載と同じである。
本発明のIm保護膜重合体が重合性化合物(f)の重合により形成された繰り返し単位(F)を含む場合、本発明のIm保護膜重合体は、全繰り返し単位に対して、繰り返し単位(F)を1〜50モル%含むのが好ましい。
【0164】
本発明のIm保護膜重合体の重量平均分子量は、1000〜100000が好ましく、1000〜50000が特に好ましい。
【0165】
本発明のIm保護膜重合体は、イマージョンリソグラフィー法への適用において、通常、基板上に形成された感光性レジスト膜の表面に塗布されて用いられるため、液状組成物に調製されるのが好ましい。
本発明は、本発明のIm保護膜重合体と有機溶媒を含むイマージョンリソグラフィー用レジスト保護膜形成組成物(以下、保護膜形成組成物(1)ともいう。)を提供する。
保護膜形成組成物(1)は、本発明のIm保護膜重合体の総質量に対して、有機溶媒を100質量%〜10000質量%含むのが好ましい。
【0166】
有機溶媒としては、本発明のIm保護膜重合体に対する相溶性の高い溶媒であれば特に限定されない。有機溶媒の具体例としては、レジスト形成組成物(1)に記載した有機溶媒と同じ溶媒が挙げられ、なかでも、アルコール類、ケトン類、エステル類(特にモノアルキルエーテルエステル類。)、フルオロエーテル類(特にペルフルオロエーテル類。)、フルオロアルコール類、フルオロベンゼン類(特にハイドロフルオロベンゼン類。)、またはフルオロケトンが好ましい。
また、保護膜形成組成物(1)は、通常は感光性レジスト層上にスピンコート法などによって塗布されて用いられる。有機溶媒は、感光性レジスト層を溶解しない溶媒がより好ましく、アルコール類、フルオロエーテル類、フルオロアルコール類、フルオロケトン、またはフルオロベンゼン類が特に好ましい。
【0167】
アルコール類は、イソプロピルアルコール、1−ブチルアルコール、1−ヘキサノール、2−メチル−1−プロパノール、4−メチル−2−ペンタノール、または2−オクタノールが好ましく、2−メチル−1−プロパノール、4−メチル−2−ペンタノールが特に好ましい。
フルオロアルコール類は、CCHOHまたはCCHCHOHが好ましい。
フルオロベンゼン類は、1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼンが好ましい。
【0168】
保護膜形成組成物(1)は、本発明のIm保護膜重合体と有機溶媒以外の成分を含んでいてもよい。該成分の具体例としては、可塑剤、安定剤、着色剤、ハレーション防止剤が挙げられる。
【0169】
保護膜形成組成物(1)は、イマージョンリソグラフィー法における感光性レジスト層の保護膜材料に用いられる。イマージョンリソグラフィー法としては、基板上に感光性レジスト材料を塗布して基板上に感光性レジスト膜を形成する工程、保護膜形成組成物(1)を感光性レジスト膜の表面に塗布して感光性レジスト膜表面にレジスト保護膜を形成する工程、イマージョンリソグラフィー工程、および現像工程をこの順に行う、基板上にレジストパターンを形成する方法が挙げられる。
【0170】
感光性レジスト材料は、酸の作用によりアルカリ可溶性が増大する重合体と、光酸発生剤とを含む組成物であれば、特に限定されない。感光性レジスト材料の具体例としては、特開2005−234178号公報等に記載の感光性レジスト材料が挙げられる。より具体的には、光酸発生剤としてトリフェニルスルホニウムトリフレートを含み、かつ前記重合体として下記3種の化合物の共重合体を含む組成物が挙げられる。
【0171】
【化37】

【0172】
イマージョンリソグラフィー法の具体的な態様は、レジスト形成組成物(1)に記載した態様と同じである。
【0173】
本発明は、化合物(a)の重合により形成された繰り返し単位(A)を含む重合体(A)と、含フッ素環構造を有する重合性化合物(f)の重合により形成された繰り返し単位(F)を含む重合体(F)とを含む、アルカリ溶解性のイマージョンリソグラフィー用レジスト保護膜組成物(以下、Im保護膜組成物ともいう。)を提供する。
【0174】
本発明のIm保護膜組成物は、重合体(F)を含むため動的撥水性に特に優れている。Im保護膜組成物から調製されたレジスト保護膜を設けたイマージョンリソグラフィー法においては、レジスト保護膜上を高速移動する投影レンズにイマージョン液がよく追従する。また、本発明のIm保護膜組成物は、アルカリ溶解性の重合体であるため、前記レジスト保護膜はアルカリ溶液により容易に除去できる。したがって、本発明のIm保護膜重合体により、マスクのパターン像を高解像度に転写可能なイマージョンリソグラフィー法の高速実施が可能となる。
【0175】
Im保護膜組成物における重合体(A)は、アルカリ溶解性の繰り返し単位を含むのが好ましい。前記繰り返し単位は、繰り返し単位(A)に由来する繰り返し単位、またはアルカリ溶解性の他の重合性化合物の重合により形成された繰り返し単位が好ましく、繰り返し単位(A)に由来する繰り返し単位が特に好ましい。
【0176】
前者の繰り返し単位は、Zが水素原子である化合物(a)の重合により形成された繰り返し単位が好ましい。
後者の繰り返し単位としては、ヒドロキシ基、カルボキシ基、スルホン酸基、スルホニルアミド基、アミノ基またはリン酸基を有する、化合物(a)以外の重合性化合物の重合により形成された繰り返し単位が挙げられる。
化合物(a)以外の重合性化合物の好ましい態様および具体例は、Im保護膜重合体に記載した態様および具体例と同じである。
【0177】
重合体(A)における化合物(a)は、化合物(a1)または(a2)が好ましい。重合体(A)における繰り返し単位(A)は、1種のみからなってもよく、2種以上からなっていてもよい。
重合体(A)は、全繰り返し単位に対して、繰り返し単位(A)を50〜100モル%含むのが好ましい。
重合体(A)の重量平均分子量は、1000〜100000が好ましく、1000〜50000が特に好ましい。
【0178】
重合体(A)の好ましい態様としては、繰り返し単位(A)のみからなる重量平均分子量1000〜30000の重合体が挙げられる。
【0179】
Im保護膜組成物における重合体(F)の重合性化合物(f)の好ましい態様は、Im保護膜重合体と同じである。
重合体(F)は、全繰り返し単位に対して、繰り返し単位(F)を1〜100モル%含むのが好ましい。
重合体(F)の重量平均分子量は、1000〜100000が好ましく、1000〜50000が特に好ましい。
【0180】
重合体(F)の好ましい態様としては、繰り返し単位(A)と繰り返し単位(F)を含む重合体(FA)が挙げられる。この場合の重合体(F)は、全繰り返し単位に対して、繰り返し単位(A)を80〜99モル%含み、繰り返し単位(F)を1〜20モル%含むのが好ましい。また、この場合の重合体(F)の重量平均分子量は、1000〜30000が好ましい。
【0181】
本発明のIm保護膜組成物は、重合体(A)の総質量に対して重合体(F)を、0.1〜200質量%含むのが好ましい。特に重合体(F)が重合体(FA)である場合には、重合体(A)の総質量に対して重合体(F)を、25〜200質量%含むのが好ましい。
【0182】
本発明のIm保護膜組成物は、イマージョンリソグラフィー法への適用において、通常、基板上に形成された感光性レジスト膜の表面に塗布されて用いられるため、液状組成物に調製されるのが好ましい。本発明は、本発明の保護膜組成物と有機溶媒を含むイマージョンリソグラフィー用レジスト保護膜形成組成物(以下、保護膜形成組成物(2)ともいう。)を提供する。
【0183】
保護膜形成組成物(2)は、本発明のIm保護膜組成物の総質量に対して、有機溶媒を100質量%〜10000質量%含むのが好ましい。
【0184】
有機溶媒としては、本発明のIm保護膜組成物に対する相溶性の高い溶媒であれば特に限定されない。有機溶媒の具体例としては、レジスト形成組成物(1)に記載した有機溶媒と同じ溶媒が挙げられ、なかでも、アルコール類、ケトン類、エステル類(特にモノアルキルエーテルエステル類。)、フルオロエーテル類(特にペルフルオロエーテル類。)、フルオロアルコール類、フルオロベンゼン類(特にハイドロフルオロベンゼン類。)、またはフルオロケトンが好ましい。
また、保護膜形成組成物(2)は、通常は感光性レジスト層上にスピンコート法などによって塗布されて用いられる。有機溶媒は、感光性レジスト層を溶解しない溶媒がより好ましく、アルコール類、フルオロエーテル類、フルオロアルコール類、フルオロケトン、またはフルオロベンゼン類が特に好ましい。
【0185】
アルコール類は、イソプロピルアルコール、1−ブチルアルコール、1−ヘキサノール、2−メチル−1−プロパノール、4−メチル−2−ペンタノール、または2−オクタノールが好ましく、2−メチル−1−プロパノール、4−メチル−2−ペンタノールが特に好ましい。
フルオロアルコール類は、CCHOHまたはCCHCHOHが好ましい。
フルオロベンゼン類は、1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼンが好ましい。
【0186】
保護膜形成組成物(2)は、本発明のIm保護膜組成物と有機溶媒以外の成分を含んでいてもよい。該成分の具体例としては、可塑剤、安定剤、着色剤、ハレーション防止剤が挙げられる。
【0187】
保護膜形成組成物(2)は、イマージョンリソグラフィー法における感光性レジスト層の保護膜材料に用いられる。イマージョンリソグラフィー法と感光性レジスト材料の態様は、保護膜形成組成物(1)と同じである。
【実施例】
【0188】
つぎに、本発明の実施例について具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
実施例において、テトラヒドロフランをTHFと、1,1,2−トリクロロ−1,2,2−トリフルオロエタンをR113と、ジクロロペンタフルオロプロパンをR225と、ジイソプロピルパーオキシジカーボネートをIPPと、イソプロピルアルコールをIPAと、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートをPGMEAと、重量平均分子量をMwと、数平均分子量をMnと、ガラス転移点温度をTgと、記す。重合体のMwとMnとは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(展開溶媒:THF、内部標準:ポリスチレン。以下同様。)にて測定した。
【0189】
[例1]化合物(a)の製造例
[例1−1]CF=CFCFC(C(O)OC(CHCHCH=CH(以下、化合物(a2)ともいう。)の製造例
反応器内に、純度60%のNaH(2.1g)およびTHF(100mL)を加え混合撹拌しながら、つぎに25℃にてCH(C(O)OC(CH(11g)を20分かけて滴下した。滴下終了後、25℃にて、そのまま100分間、反応器内を撹拌した。さらに、反応器にCH=CHCHBr(6.0g)を10分間かけて加え、65℃にて5時間、反応器内を撹拌した。つぎに、反応器に水(100mL)を加えて反応をクエンチした後に反応器内容液を50mLのt−ブチルメチルエーテルで3回抽出した。抽出液を塩水で洗浄した後に硫酸ナトリウムで乾燥した。さらに抽出液を濃縮した後に減圧蒸留して、NMR純度90%のCH=CHCHCH(C(O)OC(CH(9.4g)を得た。
【0190】
反応器に、純度60%のNaH(1.8g)とTHF(80mL)とを入れた後に混合撹拌した。つぎに、反応器に、CH(C(O)OC(CH(CHCH=CH)(9.4g)を15分かけて滴下した。滴下に際しては、反応器内温を20℃以下に保持した。そのまま25℃にて、反応器内を75分間撹拌した。
つぎに反応器内温0℃にて、反応器に、CF=CFCFOSOF(8.5g)を25分かけて加えると、反応器内容液は黄変し固体(FSONa)が析出した。そのまま反応器内を20時間撹拌した後に、反応器に水(150mL)を加えてクエンチした。
【0191】
反応器内溶液をt−ブチルメチルエーテル(50mL)で3回抽出した。抽出液を、塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した後に濃縮して粗生成物を得た。粗生成物をカラム精製して、化合物(a2)(5.3g)を得た。
【0192】
化合物(a2)のNMRデータを以下に示す。
H−NMR(300.4MHz,溶媒:CDCl,基準:TMS)δ(ppm):1.47(18H),2.85(2H),5.11(1H),5.18(1H),5.90(1H)。
19F−NMR(282.7MHz;CDCl,CFCl)δ(ppm):−95.2(1F),−103.2(2F),−106.2(1F),−181.32(1F)。
【0193】
[例1−2]CF=CFCFC(C(O)OH)CHCH=CH(以下、化合物(a2)ともいう。)の製造例
氷冷撹拌しながら、トリフルオロ酢酸(60mL)に化合物(a2)(6.4g)を5分かけて滴下し、滴下終了後、そのまま2時間撹拌した。つぎに25℃にて、トリフルオロ酢酸を減圧溜去して、化合物(a2)(4.6g)を得た。
【0194】
化合物(a2)のNMRデータを以下に示す。
H−NMR(300.4MHz,溶媒:CDCl,基準:TMS)δ(ppm):2.97(2H),5.20(1H),5.26(1H),5.89(1H),11.29(2H)。
19F−NMR(282.7MHz,溶媒:CDCl,基準:CFCl)δ(ppm):−92.4(1F),−102.6(2F),−105.1(1F),−183.0(1F)。
【0195】
[例1−3]CF=CFCFCH(C(O)OH)CHCH=CH(以下、化合物(a1)ともいう。)の製造例
化合物(a2)(2.6g)をトルエン(15mL)と混合し、そのままトルエンを留去した後に、引き続き112〜139℃にて1時間加熱した。さらに、減圧乾燥して化合物(a1)(1.8g)を得た。
【0196】
化合物(a1)のNMRデータを以下に示す。
【0197】
H−NMR(300.4MHz,溶媒:CDCl,基準:TMS)δ(ppm):2.55(1H),2.67(1H),3.28(1H),5.15(1H),5.20(1H)5.79(1H),11.72(1H)。
19F−NMR(282.7MHz,溶媒:CDCl,基準:CFCl)δ(ppm):−93.6(1F),−105.4(2F),−108.0(1F),−186.7(1F)。
【0198】
[例1−4]CF=CFCFCH(C(O)OC(CH)CHCH=CH(以下、化合物(a1)ともいう。)の製造例
反応器に、化合物(a1)(1.77g)をジクロロメタン(10mL)を溶解させ、さらに硫酸3滴(約0.04g)を加えた。25℃にて反応器内を撹拌、バブリングさせながら、反応器にCH=C(CH(0.51g)を加えた。そのまま反応器内を5.5時間撹拌して反応を行った後に、反応器に5%炭酸水素ナトリウム水溶液(20mL)を加えてクエンチした。反応器内溶液をt−ブチルメチルエーテル(50mL)で4回抽出し、得られた抽出液を塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した後に濃縮した。得られた濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィ法(展開溶媒はヘキサンと酢酸エチルの混合溶媒(混合比10:1)を用いた。)で精製して、化合物(a1)(1.31g)を得た。
【0199】
化合物(a1)のNMRデータを、以下に示す。
H−NMR(300.4MHz,溶媒:CDCl,基準:TMS)δ(ppm):1.45(9H),2.47(1H),2.62(1H),3.11(1H),5.10(1H),5.16(1H)5.76(1H)。
19F−NMR(282.7MHz,溶媒:CDCl,基準:CFCl)δ(ppm):−95.0(1F),−104.1(1F),−107.7(1F),−108.9(1F),−186.0(1F)。
【0200】
[例1−5]CF=CFCFCH(C(O)OCHOCH)CHCH=CH(以下、化合物(a1)ともいう。)の製造例
反応器に、化合物(a1)(2.30g)をt−ブチルメチルエーテル(20mL)を溶解させた後に、ジイソプロピルエチルアミン(1.29g)をゆっくり加えた。さらに、クロロメチルメチルエーテル(0.79g,10mmol)を加え、そのまま反応器内を2時間撹拌して反応を行った。つぎに、反応器に水(30mL)を加え反応をクエンチし有機層を分離した。水層をt−ブチルメチルエーテル(10mL)で2回抽出し、抽出液を硫酸ナトリウムで乾燥した後に濃縮して得られた濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィ(展開溶媒はヘキサンと酢酸エチルの混合溶媒(混合比5:1)を用いた。)で精製して、化合物(a1)(1.97g)を得た。
【0201】
化合物(a1)のNMRデータを、以下に示す。
H−NMR(300.4MHz,溶媒:CDCl,基準:TMS)δ(ppm):2.53(1H),2.69(1H),3.28(1H),3.47(3H),5.13(1H),5.19(1H),5.28(1H),5.31(1H),5.77(1H)。
19F−NMR(282.7MHz,溶媒:CDCl,基準:CFCl)δ(ppm):−93.8(1F),−104.9(1F),−106.0(1F),−108.2(1F),−186.6(1F)。
【0202】
[例1−6]化合物(a1)の製造例
化合物(a1)(2.05g)とtert−ブチルメチルエーテル(20mL)を含む溶液に、氷冷下にて、ジイソプロピルエチルアミン(1.15g)をゆっくり滴下し、さらに下記化合物(w)(1.91g)を滴下した。そのまま溶液を5時間撹拌して、反応を行った。つぎに溶液に水を加えて反応をクエンチし、有機層を回収した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した後に濃縮して、粗生成物を得た。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィ法(展開溶媒 ヘキサン:酢酸エチル=10:1)で精製して、下記化合物(a1)(2.1g)を得た。
【0203】
【化38】

【0204】
化合物(a1)のNMRデータとIRデータを、以下に示す。
H−NMR(300.4MHz,溶媒:重アセトン,基準:TMS)δ(ppm):1.51−1.97(15H),2.48−2.73(2H),3.22(2H),3.27(1H)5.13(2H),5.32(2H),5.76(1H)。
19F−NMR(282.7MHz,溶媒:重アセトン,基準:CFCl)δ(ppm):−94.1(1F),−105.3(2F),−108.2(1F),−186.4(1F)。
【0205】
[例1−7]化合物(a1)の製造例
化合物(a1)(2.35g)とトルエン(3mL)を含む溶液に、硫酸の2滴を加えた。つぎに、氷冷下にて、溶液に、下記化合物(w)(2.04g)を含むトルエン溶液(3mL)を滴下して反応を行った。そのまま溶液を12時間撹拌した後に、溶液に炭酸水素ナトリウム水溶液を加えて反応をクエンチし、有機層を回収した。有機層を水洗し、硫酸ナトリウムで乾燥した後に濃縮して粗生成物を得た。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィ法(展開溶媒 ヘキサン)で精製して、下記化合物(a1)(2.11g)を得た。
【0206】
【化39】

【0207】
化合物(a1)のNMRデータとIRデータを、以下に示す。
H−NMR(300.4MHz,溶媒:CDCl,基準:TMS)δ(ppm):1.57(2H),1.59(3H),1.69−1.92(8H),2.02(2H),2.29(2H),2.49(1H),2.66(1H),3.19(1H),5.11(1H),5.18(1H),5.79(1H)。
19F−NMR(282.7MHz,溶媒:CDCl,基準:CFCl)δ(ppm):−94.6(1F),−104.4(1F),−106.2(1F),−108.6(1F),−185.9(1F)。
【0208】
[例1−8]化合物(a1)の製造例
化合物(a1)(2.0g)とtert−ブチルメチルエーテル(20mL)を含む溶液に、氷冷下にて、ジイソプロピルエチルアミン(1.12g)をゆっくり滴下し、さらに下記化合物(w)(1.83g)を滴下した。そのまま溶液を5時間撹拌して、反応を行った。つぎに溶液に水を加えて反応をクエンチし、有機層を回収した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した後に濃縮して、粗生成物を得た。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィ法(展開溶媒 ヘキサン:酢酸エチル=10:1)で精製して、下記化合物(a1)(2.7g)を得た。
【0209】
【化40】

【0210】
化合物(a1)のNMRデータを、以下に示す。
H−NMR(300.4MHz,溶媒:重アセトン,基準:TMS)δ(ppm):1.48−2.05(15H),2.47−2.73(2H),3.17−3.32(1H),5.08−5.21(2H),5.43(2H),5.69−5.83(1H)。
19F−NMR(282.7MHz,溶媒:重アセトン,基準:CFCl)δ(ppm):−94.1(1F),−105.9(2F),−108.3(1F),−186.4(1F)。
【0211】
[例1−9]化合物(a1)の製造例
反応器に、化合物(a1)(5.0g)、化合物(W)(9.9g)、ジメチルアミノピリジン(0.2g)およびジクロロメタン(30g)を入れ、0℃に冷却した。つぎにジシクロヘキシルカルボジイミド(4.7g)をジクロロメタン(15g)に溶解させた溶液を、反応器にゆっくり滴下した。そのまま反応器内溶液を1時間撹拌して反応を行った後、さらに25℃にて1時間撹拌して反応を行った。反応器内溶液をろ過し、ろ液を濃縮して粗生成物を得た。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィ法(展開溶媒 ヘキサン:酢酸エチル=20:1)で精製して、下記化合物(a1)(10.5g)を得た。
【0212】
【化41】

【0213】
化合物(a1)のNMRデータを、以下に示す。
H−NMR(300.4MHz,溶媒:重アセトン,基準:TMS)δ(ppm):2.64〜2.70(2H),3.44〜3.48(1H),5.16〜5.21(2H)、5.68〜−5.80(2H)。
19F−NMR(282.7MHz,溶媒:重アセトン,基準:CFCl)δ(ppm):−92.3(1F),−105.2 (2F),−107.2(1F),−123.6(6F),−132.6(2F),−187.3(1F),−214.7(m,1F),−223.0(1F)。
【0214】
なお、化合物(w)は、下記の合成スキームにしたがって合成した(ただし、Rf1−はF(CFOCF(CF)CFOCF(CF)−を示す。)。
【0215】
【化42】

【0216】
すなわち、窒素ガス雰囲気下のフラスコに、化合物(aw)(15g)とクロロホルム(100g)およびNaF(7.02g)を入れ、フラスコ内を氷冷撹拌しながらRf1−COF(79g)を滴下し、さらにフラスコ内を撹拌した。フラスコ内容物の不溶固形物を加圧ろ過により除去した後に、フラスコに飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(103g)を入れ、有機層を回収濃縮して化合物(bw)(74g)を得た。
【0217】
ガス出口にNaFペレット充填層を設置したオートクレーブにR113(313g)を加え、25℃にてオートクレーブ内を撹拌しながら、オートクレーブに窒素ガスを1時間吹き込んだ後に、窒素ガスで20%体積に希釈したフッ素ガスを吹き込んだ。そのまま該20%フッ素ガスを吹き込みつつ、0.1MPaの圧力下にて、オートクレーブに化合物(bw)(67g)をR113(299g)に溶解させた溶液を導入した。導入終了後、オートクレーブ内容物を回収濃縮して化合物(cw)を得た。
【0218】
窒素ガス雰囲気下のフラスコに、化合物(cw)(80g)と粉末状KF(0.7g)を入れ、フラスコ内を6時間加熱した後に、フラスコ内容物を精製して化合物(dw)(38g)を得た。
【0219】
窒素ガス雰囲気下の丸底フラスコに、NaBH(1.1g)とTHF(30g)を入れた。フラスコを氷冷撹拌しながら、フラスコに化合物(dw)を22質量%含むR225溶液(48g)を滴下した。滴下終了後、フラスコ内をさらに撹拌した後に、フラスコ内容液を塩酸水溶液(150mL)で中和して得られた溶液を、水洗してから蒸留精製することにより化合物(w)を得た。
【0220】
化合物(w)のNMRデータを以下に示す。
H−NMR(300.4MHz、溶媒:CDCl、基準:TMS)δ(ppm):4.89〜4.57(2H)。
19F−NMR(282.7MHz、溶媒:CDCl、基準:CFCl)δ(ppm):−105.0(1F),−119.7(1F),−124.0(1F),−124.3(1F),−125.7(1F),−126.8(1F),−133.2(2F),−216.6(1F),−223.5(1F)。
【0221】
[例1−10]CF=CFCFCH(C(O)OCHCFCF)CHCH=CH(以下、化合物(a1)ともいう。)の製造例
反応器に、化合物(a1)(5.0g)、CFCFCHOH(3.6g)、ジメチルアミノピリジン(0.23g)およびジクロロメタン(15mL)を入れ、0℃に冷却した。つぎにジシクロヘキシルカルボジイミド(4.9g)をジクロロメタン(35mL)に溶解させた溶液を、反応器にゆっくり滴下した。そのまま反応器内溶液を1時間撹拌して反応を行った後、さらに25℃にて1時間撹拌して反応を行った。
【0222】
つぎに反応器に水を加えて反応をクエンチし、有機層を回収した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した後に濃縮して、粗生成物を得た。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィ法(展開溶媒 ヘキサン:酢酸エチル=10:1)で精製して、化合物(a1)(4.0g)を得た。
【0223】
化合物(a1)のNMRデータを、以下に示す。
H−NMR(300.4MHz,溶媒:重アセトン,基準:TMS)δ(ppm):2.51〜2.73(2H),3.30〜3.44(1H),4.50〜4.69(2H)、5.07−5.23(2H),5.66〜5.84(1H)。
19F−NMR(282.7MHz,溶媒:重アセトン,基準:CFCl)δ(ppm):−84.4(3F)、−94.2(1F),−105.3(2F),−107.8(1F),−124.0(2F)、−187.0(1F)。
【0224】
[例1−11]化合物(a1)の製造例
化合物(a1)(7.6g)とトルエン(30mL)を含む溶液に、硫酸の3滴を加えた。つぎに、氷冷下にて、溶液に、下記化合物(w)(4.1g)を滴下して反応を行った。25℃に昇温後、そのまま溶液を7時間撹拌した後に、溶液に炭酸水素ナトリウム水溶液を加えて反応をクエンチし、有機層を回収した。有機層を水洗し、硫酸ナトリウムで乾燥した後に濃縮して粗生成物を得た。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィ法(展開溶媒 ヘキサン)で精製して、下記化合物(a1)(1.78g)を得た。
【0225】
【化43】

【0226】
化合物(a1)のNMRデータを、以下に示す。
H−NMR(300.4MHz,溶媒:CDCl,基準:TMS)δ(ppm):1.57(2H),1.59(3H),1.69−1.92(8H),2.02(2H),2.29(2H),2.49(1H),2.66(1H),3.19(1H),5.11(1H),5.18(1H),5.79(1H)。
19F−NMR(282.7MHz,溶媒:CDCl,基準:CFCl)δ(ppm):−94.6(1F),−104.4(1F),−106.2(1F),−108.6(1F),−185.9(1F)。
【0227】
[例2]重合体の製造例
[例2−1]重合体(A)の製造例
耐圧反応器(内容積30mL、ガラス製。)に、化合物(a2)(1.51g)と、酢酸エチル(3.41g)とを仕込んだ。つぎに、IPPを50質量%含有するR225溶液(0.20g)を重合開始剤として耐圧反応器に添加した。反応器内を凍結脱気した後に、反応器を40℃に保持して、18時間重合を行った。反応器内溶液をメタノールに滴下し、生成した固形物を回収して80℃にて20時間真空乾燥した結果、25℃にて白色粉末状の重合体(A)(0.84g)を得た。
【0228】
重合体(A)のMwは6300であり、Mnは4600であった。
19F−NMRとH−NMRにより重合体(A)を分析した結果、重合体(A)は、下式(U1−A2)、下式(U2−A2)および下式(U3−A2)で表される繰り返し単位からなる群から選ばれる1種以上の繰り返し単位(A2)を含むことを確認した。
【0229】
【化44】

【0230】
重合体(A)は、アセトン、THF、酢酸エチル、メタノール、2−パーフルオロヘキシルエタノールには可溶であり、R225、ペルフルオロ(2−ブチルテトラヒドロフラン)、ペルフルオロ−n−オクタンには不溶であった。
【0231】
[例2−2]重合体(A)の製造例
耐圧反応器(内容積30mL、ガラス製。)に、化合物(a2)(1.51g)と、R225(8.56g)とを仕込んだ。つぎに、IPPを50質量%含有するR225溶液(0.20g)を重合開始剤として耐圧反応器に添加した。反応器内を凍結脱気した後に、反応器を40℃に保持して、18時間重合を行った。反応器内溶液をメタノールに滴下し、生成した固形物を回収して80℃にて20時間真空乾燥した結果、25℃にて白色粉末状の重合体(A)(0.81g)を得た。
【0232】
重合体(A)のMwは30000であり、Mnは18000であった。また、重合体(A)は繰り返し単位(A2)を含むことを確認した。
【0233】
[例2−3]重合体(A)の製造例
耐圧反応器(内容積20mL、ガラス製。)に、化合物(a2)(1.00g)と、R225(5.41g)およびIPP(0.10g)を仕込んだ。つぎに、IPPを50質量%含有するR225溶液(0.28g)を重合開始剤として耐圧反応器に添加した。反応器内を凍結脱気した後に、反応器を40℃に保持して、18時間重合を行った。反応器内溶媒をTHFに変換後、ヘキサンに滴下し、生成した固形物を回収して80℃にて20時間真空乾燥した結果、25℃にて白色粉末状の重合体(A)(0.82g)を得た。
【0234】
重合体(A)のMwは22100であり、Mnは8700であった。
19F−NMRとH−NMRにより重合体(A)を分析した結果、重合体(A2)は、下式(U1−A2)、下式(U2−A2)および下式(U3−A2)で表される繰り返し単位からなる群から選ばれる1種以上の繰り返し単位(A2)を含むことを確認した。
【0235】
【化45】

【0236】
[例2−4]重合体(A)の製造例
R225と2−プロパノール溶媒中にて、重合開始剤(50質量%のIPPを含むR−225溶液。)の存在下に、化合物(a2)と化合物(f)を重合させる。反応溶液ごとヘキサン中に滴下して得られた固形物を回収し、100℃にて24時間真空乾燥すると、繰り返し単位(U−A2)と化合物(f)の重合により形成された繰り返し単位(F)とを含む重合体(A)が得られる。
【0237】
[例2−5]重合体(A)の製造例
反応器(内容積200mL、ガラス製。)に、化合物(a1)(16.0g)と酢酸エチル(129.8g)を仕込み、さらに重合開始剤として50質量%R225溶液としてIPP(5.95g)を添加した。反応器内を減圧脱気した後に、反応器内温40℃にて、18時間、重合反応を行った。反応器内溶液をヘキサン中に滴下して得られた固形分を回収し、120℃にて40時間真空乾燥した。その結果、25℃にて白色粉末状の重合体(A)(15.5g)を得た。
【0238】
重合体(A)のMwは9700であり、Mnは4600であり、示差走査熱分析法により測定した重合体(A)のTgは178℃であった。
19F−NMRとH−NMRにより重合体(A)を分析した結果、重合体(A)は、下式(U1−A1)、下式(U2−A1)および下式(U3−A1)で表される繰り返し単位からなる群から選ばれる1種以上の繰り返し単位(A1)を含むことを確認した。
【0239】
【化46】

【0240】
重合体(A)は、アセトン、THF、酢酸エチル、メタノール、PGMEAには可溶であり、R225、ペルフルオロ(2−ブチルテトラヒドロフラン)、ペルフルオロ−n−オクタンには不溶であった。
【0241】
[例2−6]重合体(A)の製造例
反応器(内容積30mL、ガラス製。)に、化合物(a1)(0.8g)、R225(8.0g)およびIPA(0.06g)を仕込み、さらに重合開始剤として50質量%R225溶液としてIPP(1.0g)を添加した。反応器内を減圧脱気した後に、反応器内温40℃にて、18時間、重合反応を行った。反応器内溶液をヘキサン(90g)中に滴下して得られた固形分を回収し、90℃にて40時間真空乾燥した。その結果、25℃にて白色粉末状の重合体(A)(0.56g)を得た。
【0242】
重合体(A)のMwは16000であり、Mnは11000であり、示差走査熱分析法により測定した重合体(A)のTgは118℃であった。

NMR分析より、重合体(A)は、下式(U1−A1)、下式(U2−A1)および下式(U3−A1)で表される繰り返し単位からなる群から選ばれる1種以上の繰り返し単位(A1)を含むことを確認した。
【0243】
【化47】

【0244】
重合体(A)は、アセトン、THF、酢酸エチル、PGMEAには可溶であり、R225、ペルフルオロ(2−ブチルテトラヒドロフラン)、ペルフルオロ−n−オクタンには不溶であった。
【0245】
[例2−7]重合体(A)の製造例
反応器(内容積30mL、ガラス製。)に、化合物(a1)(0.8g)、R225(4.3g)およびIPA(0.07g)をを仕込み、さらに重合開始剤として50質量%R225溶液としてIPP(0.53g)を添加した。反応器内を減圧脱気した後に、反応器内温40℃にて、18時間、重合反応を行った。反応器内溶液をヘキサン(60g)中に滴下して得られた固形分を回収し、90℃にて40時間真空乾燥した。その結果、25℃にて白色粉末状の重合体(A)(0.6g)を得た。
【0246】
重合体(A)のMwは15800であり、Mnは8900であった。
NMR分析より、重合体(A)は、下式(U1−A1)、下式(U2−A1)および下式(U3−A1)で表される繰り返し単位からなる群から選ばれる1種以上の繰り返し単位(A1)を含むことを確認した。
【0247】
【化48】

【0248】
重合体(A)は、アセトン、THF、酢酸エチル、PGMEAには可溶であり、R225、ペルフルオロ(2−ブチルテトラヒドロフラン)、ペルフルオロ−n−オクタンには不溶であった。
【0249】
[例2−8]重合体(A)の製造例
反応器(内容積30mL、ガラス製)に、化合物(a1)(2.0g)と酢酸エチル(15.8g)を仕込み、50質量%のR225溶液としてIPP(0.73g)を仕込み、40℃にて18時間重合反応を行った。反応器内溶液をヘキサン中に滴下して得られた固形物を回収し、90℃にて24時間真空乾燥して重合体(A)(1.40g)を得た。
【0250】
重合体(A)のMwは12600であり、Mnは6100であり、示差走査熱分析法により測定した重合体(A)のTgは90℃であった。
NMR分析より、重合体(A)は、下式(U1−A1)、下式(U2−A1)および下式(U3−A1)で表される繰り返し単位からなる群から選ばれる1種以上の繰り返し単位(A1)を含む重合体であることを確認した。
【0251】
【化49】

【0252】
重合体(A)は、25℃にて白色粉末状であり、アセトン、テトラヒドロフラン、酢酸エチルに、それぞれ可溶であった。
【0253】
[例2−9]重合体(A)の製造例
反応器(内容積30mL)に、化合物(a1)(2.0g)および酢酸エチル(11.0g)を仕込み、50質量%のR225溶液としてIPP(0.53g)を仕込み、40℃にて18時間重合反応を行った。反応器内溶液をヘキサン中に滴下して得られた固形物を回収し、110℃にて24時間真空乾燥して重合体(A)(1.90g)を得た。
【0254】
重合体(A)のMwは23500であり、Mnは9600であり、示差走査熱分析法により測定した重合体(A)のTgは107℃であった。
NMR分析より、重合体(A)は、下式(U1−A1)、下式(U2−A1)および下式(U3−A1)で表される繰り返し単位からなる群から選ばれる1種以上の繰り返し単位(A1)を含む重合体であることを確認した。
【0255】
【化50】

【0256】
重合体(A)は、25℃にて白色粉末状であり、テトラヒドロフラン、酢酸エチルにそれぞれ可溶であった。
【0257】
[例2−10]重合体(A10)の製造例
反応器(内容積30mL)に、化合物(a1)(1.0g)および酢酸エチル(8.8g)を仕込み、50質量%のR225溶液としてIPP(0.40g)を仕込み、40℃にて18時間重合反応を行った。反応器内溶液をメタノール中に滴下して得られた固形物を回収し、90℃にて24時間真空乾燥して重合体(A10)(0.62g)を得た。
【0258】
重合体(A10)のMnは6100であり、Mwは10200であり、示差走査熱分析法により測定した重合体(A10)のTgは107℃であった。
NMR分析より、重合体(A10)は、下式(U1−A1)、下式(U2−A1)および下式(U3−A1)で表される繰り返し単位からなる群から選ばれる1種以上の繰り返し単位(A1)を含むことを確認した。
【0259】
【化51】

【0260】
[例2−11]重合体(A11)の製造例
反応器(内容積30mL)に、化合物(a1)(0.5g)およびR225(1.93g)を仕込み、50質量%のR225溶液としてIPP(0.15g)を仕込み、40℃にて18時間重合反応を行った。反応器内溶液をヘキサン中に滴下して得られた固形物を回収し、100℃にて24時間真空乾燥して重合体(A11)(0.42g)を得た。
【0261】
重合体(A11)のMnは9900であり、Mwは15100であった。
NMR分析より、重合体(A11)は下式(U1−A1)、下式(U2−A1)および下式(U3−A1)で表される繰り返し単位からなる群から選ばれる1種以上の繰り返し単位(A1)を含むことを確認した。
【0262】
【化52】

【0263】
重合体(A11)は、25℃にて白色粉末状であり、アセトン、THF、酢酸エチル、メタノール、R225に、それぞれ可溶であった。
【0264】
[例2−12]重合体(A12)の製造例
反応器(内容積30mL)に、化合物(a1)(0.81g)およびR225(7.2g)を仕込み、50質量%のR225溶液としてIPP(0.81g)を仕込み、40℃にて18時間重合反応を行った。反応器内溶液をヘキサン中に滴下して得られた固形物を回収し、90℃にて24時間真空乾燥して重合体(A12)(0.66g)を得た。
【0265】
重合体(A12)のMnは4300であり、Mwは6000であった。
NMR分析より、重合体(A12)は下式(U1−A1)、下式(U2−A1)および下式(U3−A1)で表される繰り返し単位からなる群から選ばれる1種以上の繰り返し単位(A1)を含むことを確認した。
【0266】
【化53】

【0267】
[例2−13]重合体(A13)の製造例
反応器(内容積30mL)に、化合物(a1)(0.89g)および酢酸エチル(7.8g)を仕込み、50質量%のR225溶液としてIPP(0.35g)を仕込み、40℃にて18時間重合反応を行った。反応器内溶液をヘキサン中に滴下して得られた固形物を回収し、100℃にて24時間真空乾燥して重合体(A13)(0.80g)を得た。
【0268】
重合体(A13)のMnは7500であり、Mwは16000であった。
NMR分析より、重合体(A13)は、下式(U1−A1)、下式(U2−A1)および下式(U3−A1)で表される繰り返し単位からなる群から選ばれる1種以上の繰り返し単位(A1)を含むことを確認した。
【0269】
【化54】

【0270】
重合体(A13)は、25℃にて白色粉末状であり、テトラヒドロフラン、酢酸エチルにそれぞれ可溶であった。
【0271】
[例2−14]重合体(A14)の製造例
反応器(内容積30mL、ガラス製。)に、化合物(a1)(0.07g)、化合物(a1)(0.75g)および酢酸エチル(1.85g)を仕込み、さらに重合開始剤として50質量%R225溶液としてIPP(0.11g)を添加した。反応器内を減圧脱気した後に、反応器内温40℃にて、18時間、重合反応を行った。反応器内溶液をヘキサン中に滴下して得られた固形分を回収し、90℃にて24時間真空乾燥して、重合体(A14)(0.67g)を得た。
【0272】
重合体(A14)のMwは28000でありMnは14500であった。
NMR分析より、重合体(A14)は、繰り返し単位(A1)と繰り返し単位(A1)を含む重合体であり、全繰り返し単位に対して、繰り返し単位(A1)を12モル%含み、繰り返し単位(A1)を88モル%含む重合体であることを確認した。
【0273】
[例2−15]重合体(A15)の製造例
反応器(内容積30mL、ガラス製。)に、化合物(a1)(0.75g)、化合物(a1)(0.18g)および酢酸エチル(6.7g)を仕込み、さらに重合開始剤として50質量%R225溶液としてIPP(0.31g)を添加した。反応器内を減圧脱気した後に、反応器内温40℃にて、18時間、重合反応を行った。反応器内溶液をヘキサン中に滴下して得られた固形分を回収し、90℃にて24時間真空乾燥して重合体(A15)(0.61g)を得た。
【0274】
重合体(A15)のMwは18900でありMnは10600であった。
NMR分析より、重合体(A15)は、繰り返し単位(A1)と繰り返し単位(A1)を含む重合体であり、全繰り返し単位に対して、繰り返し単位(A1)を77モル%含み、繰り返し単位(A1)を23モル%含む重合体であることを確認した。
【0275】
[例2−16]重合体(A16)の製造例
反応器(内容積30mL、ガラス製。)に、化合物(a1)(0.02g)、化合物(a1)(0.41g)および酢酸エチル(3.8g)を仕込み、さらに重合開始剤として50質量%R225溶液としてIPP(0.17g)を添加した。反応器内を減圧脱気した後に、反応器内温40℃にて、18時間、重合反応を行った。反応器内溶液をヘキサン中に滴下して得られた固形分を回収し、100℃にて24時間真空乾燥して重合体(A16)(0.29g)を得た。
【0276】
重合体(A16)のMwは8700でありMnは6300であった。
NMR分析より、重合体(A16)は、繰り返し単位(A1)と繰り返し単位(A1)を含む重合体であり、全繰り返し単位に対して、繰り返し単位(A1)を10モル%含み、繰り返し単位(A1)を90モル%含む重合体であることを確認した。また、重合体(A16)はアセトン、THF、酢酸エチル、メタノールのそれぞれに可溶であった。
【0277】
[例2−17]重合体(A17)の製造例
反応器(内容積30mL、ガラス製。)に、CF=CFCHCH(C(CF(OH))CHCH=CHの0.5g、化合物(a1)(0.15g)、およびR225(2.5g)を仕込み、さらに重合開始剤として50質量%R225溶液としてIPP(0.10g)を添加した。反応器内を減圧脱気した後に、反応器内温40℃にて、18時間、重合反応を行った。反応器内溶液をヘキサン中に滴下して得られた固形分を回収し、90℃にて24時間真空乾燥して重合体(A17)(0.57g)を得た。
【0278】
重合体(A17)のMnは9200でありMwは14200であった。
NMR分析より重合体(A17)を分析した結果、重合体(A17)は、CF=CFCH(C(CFOH)CHCH=CHの重合により形成された下記繰り返し単位(OA)と繰り返し単位(A1)を含む重合体であり、全繰り返し単位に対して、繰り返し単位(OA)を87モル%含み、繰り返し単位(A1)を13モル%含む重合体であることを確認した。また、重合体(A17)はアセトン、THF、酢酸エチル、メタノールのそれぞれに可溶であった。
【0279】
【化55】

【0280】
以下、例2で製造した重合体(A)の諸物性をまとめて表1に示す。なお、表1中の「繰り返し単位の種類」欄におけるカッコ内の数値は、該繰り返し単位の、全繰り返し単位にしめる割合(モル%)を示す。
【0281】
【表1】

【0282】
[例3]他の重合体の製造例
[例3−1]重合体(B)の製造例
反応器(内容積200mL、ガラス製)に、下記化合物(b)(10.4g)、下記化合物(c2)(8.0g)、下記化合物(c1)(3.7g)およびメチルエチルケトン(76.5g)を入れ、さらに連鎖移動剤としてイソプロパノール(6.3g)と重合開始剤としてIPPを50質量%含むR225溶液(11.0g)を入れた。耐圧反応器内を減圧脱気した後、反応器内温40℃にて18時間重合反応を行った。
【0283】
【化56】

【0284】
つぎに、反応器内溶液をヘキサン中に滴下して生成した固形分を回収し、該固形分を90℃にて24時間真空乾燥して、25℃にて白色粉末状の重合体(B)(15.9g)を得た。重合体(B)のMnは2870であり、Mwは6600であった。
【0285】
13C−NMR法分析によると、重合体(B)は、全繰り返し単位に対して、化合物(b)の繰り返し単位を40モル%、化合物(c2)の繰り返し単位を40モル%、および化合物(c1)の繰り返し単位を20モル%含む重合体であった。また、重合体(B)は、THF、PGMEAおよびシクロペンタノンにそれぞれ可溶であった。
【0286】
[例4]組成物の製造例
[例4−1]組成物(1)の製造例
重合体(A)(0.3g)をPGMEA(3.74g)に溶解させ、均一な溶液を得た。該溶液をフィルター濾過して、重合体(A)を含む組成物(1)を得た。
[例4−2]組成物(2)の製造例
重合体(A)(0.3g)をPGMEA(3.74g)に溶解させ、均一な溶液を得た。該溶液をフィルター濾過して、重合体(A)を含む組成物(2)を得た。
【0287】
[例4−3]組成物(3)の製造例
重合体(B)をPGMEA(90質量%)とシクロペンタノン(10質量%)の混合溶媒に溶解させ、重合体(B)を7.63質量%含む溶液(4.46g)を調製した。該溶液に重合体(A)(0.017g)を添加して溶解させ均一な溶液を得た。該溶液をフィルター濾過して、重合体(B)と重合体(A)を含む組成物(3)を得た。
[例4−4]組成物(4)の製造例
重合体(A)のかわりに重合体(A)を用いる以外は例4−3と同様にして、重合体(B)と重合体(A)を含む組成物(4)を得た。
【0288】
[例4−5]組成物(5)の製造例
重合体(A)を2−メチル−1−プロパノールに溶解させて得られた均一な溶液を、フィルター濾過して、重合体(A)を含む組成物(5)が得た。
[例4−6]組成物(6)の製造例
重合体(A)を2−メチル−1−プロパノールに溶解させて得られた均一な溶液を、フィルター濾過すると、重合体(A)を含む組成物(6)が得られる。
【0289】
[例4−7]組成物(7)の製造例
重合体(A)と重合体(A)を4−メチルー2−ペンタノールに溶解させて得られた均一な溶液を、フィルター濾過すると、重合体(A)の総質量に対して重合体(A)を50質量%含む組成物(7)が得られる。
【0290】
[例4−8]組成物(C)の製造例
重合体(B)(0.3g)をPGMEA(3.74g)に溶解させ、均一な溶液を得た。該溶液をフィルター濾過して、組成物(C)を得た。
【0291】
以下同様にして、例2または3で製造した重合体と溶媒とを適宜選択し、組成物を調製した。調製したそれぞれの組成物、その組成を表2にまとめて示す。なお、表2中のカッコ内の数値は、複数の重合体を含む場合の重合体の混合比(質量比)を示す。
【0292】
【表2】

【0293】
[例5]レジスト形成組成物の製造例
[例5−1]レジスト形成組成物(1)の製造例
組成物(1)に、光酸発生剤のトリフェニルスルホニウムトリフレート(0.013g)を溶解させて得られた透明均一な溶液をフィルター濾過して、レジスト形成組成物(1)を得た。
【0294】
[例5−2]レジスト形成組成物(2)の製造例
組成物(2)に、トリフェニルスルホニウムトリフレート(0.014g)を溶解させて得られた透明均一な溶液をフィルター濾過して、レジスト形成組成物(2)を得た。
【0295】
[例5−3]レジスト形成組成物(3)の製造例
組成物(3)に、トリフェニルスルホニウムトリフレート(0.014g)を溶解させて得られた透明均一な溶液をフィルター濾過して、レジスト形成組成物(3)を得た。
【0296】
[例5−4]レジスト形成組成物(4)の製造例
組成物(3)に、光酸発生剤のトリフェニルスルホニウムノナフルオロブタンスルホネート(0.014g)を溶解させて得られた透明均一な溶液をフィルター濾過して、レジスト形成組成物(4)を得た。
【0297】
[例5−5]レジスト形成組成物(5)の製造例
組成物(4)に、トリフェニルスルホニウムノナフルオロブタンスルホネート(0.014g)を溶解させて得られた透明均一な溶液をフィルター濾過して、レジスト形成組成物(5)を得た。
【0298】
[例5−7(比較例)]レジスト形成組成物(C)の製造例
重合体(B)(0.3g)とトリフェニルスルホニウムトリフレート(0.014g)をPGMEA(3.74g)に溶解させ、均一な溶液を得た。該溶液をフィルター濾過して、レジスト形成組成物(C)を得た。
【0299】
[例5−8(比較例)]レジスト形成組成物(D)の製造例
重合体(B)(0.3g)とトリフェニルスルホニウムノナフルオロブタンスルホネート(0.014g)をPGMEA(3.74g)に溶解させ、均一な溶液を得た。該溶液をフィルター濾過して、レジスト形成組成物(D)を得た。
【0300】
以下、同様にして、例4で製造した組成物と光酸発生剤とを適宜選択し、レジスト形成組成物を調製した。調製したそれぞれのレジスト形成組成物に含まれる成分を表3にまとめて示す。なお、光酸発生剤のトリフェニルスルホニウムトリフレートをTPSと、トリフェニルスルホニウムノナフルオロブタンスルホネートをTPSFと、記す。
【0301】
【表3】

【0302】
[例6]組成物またはレジスト形成組成物の撥水性評価例
表面に反射防止膜(ROHM AHD HAAS Electronic Materials社製 商品名AR26。以下同様。)が形成されたシリコン基板上に、組成物(2)を回転塗布した。つぎに、シリコン基板を100℃にて90秒間加熱処理して、重合体(A)からなる樹脂薄膜(膜厚50nm)をシリコン基板上に形成した。つづいて、該樹脂薄膜の水に対する、静的接触角、転落角、前進角、後退角をそれぞれ測定した(滑落法により測定した、転落角を転落角と、前進接触角を前進角と、後退接触角を後退角と、記す。)。静的接触角、転落角、前進角および後退角の単位は、それぞれ角度(°)である(以下同様。))。
【0303】
組成物(2)のかわりに、例4で製造した組成物、例5で製造したレジスト形成組成物を用いる以外は同様にして、シリコン基板上に樹脂薄膜を形成し、水に対する静的接触角、転落角、前進角および後退角を測定した。結果をまとめて表3に示す。
【0304】
【表4】

【0305】
以上の結果からも明らかであるように、繰り返し単位(a)を含む重合体は、撥水性、特に動的撥水性に優れていることがわかる。よって、イマージョンリソグラフィー法において、本発明のレジスト重合体を含む層上を高速移動する投影レンズに、イマージョン液は容易に追従できる。
【0306】
[例7]レジスト形成組成物の現像液に対する撥液性評価例
表面に反射防止膜が形成されたシリコン基板上に、レジスト形成組成物(1)を回転塗布した。つぎに、シリコン基板を100℃にて90秒間加熱処理して、重合体(A)からなる薄膜(膜厚50nm)をシリコン基板上に形成した。つぎに、シリコンウエハにArFエキシマレーザー(強度50mJ/cm)で照射して、シリコンウエハを露光した。さらにホットプレートにてシリコンウエハを130℃にて60秒間加熱処理した。
薄膜形成後、露光後、加熱処理後のそれぞれにおけるシリコンウエハーの薄膜の、水性アルカリ現像液(多摩化学製。商品名AD−10)に対する静的接触角を測定した。
【0307】
さらに、例5で製造した他のレジスト形成組成物に関しても同様に測定を行った。結果をまとめて表5に示す。
【0308】
【表5】

【0309】
以上の結果からも明らかであるように、繰り返し単位(a)を含むレジスト重合体は、リソグラフィー工程後にはアルカリ水溶液に対する親和性が増す材料である。
【0310】
[例8]レジスト形成組成物のPAG溶出量評価例
表面に反射防止膜が形成されたシリコン基板上に、レジスト形成組成物(4)を回転塗布した。つぎに、シリコン基板を100℃にて90秒間加熱処理して、重合体(A)と重合体(B)からなる樹脂薄膜(膜厚150nm)をシリコン基板上に形成した。ついで、当該シリコン基板をArFレーザー光(波長193nm)を光源とする二光束干渉露光装置にセットし、カバーガラス(合成石英製)とシリコン基板間に超純水(450μL)封入した後に、60秒間放置した。なお、シリコン基板上の樹脂薄膜と超純水の接液面積は、7cmである。
【0311】
つぎに、超純水を回収し、LC/MS/MS(Quattro micro API、Waters社製。)法(検出限界:7.0×10−15mol/cm)を用いて、超純水に含まれるレジスト形成組成物(4)から溶出した光酸発生剤(PAG)由来物である、カチオン(トリフェニルスルホニウムカチオン)溶出量とアニオン(ノナフルオロブタンスルホネートアニオン)溶出量とを測定した(溶出量の単位:mol/cm/60秒。)。他のレジスト形成組成物に関しても同様にして測定した。結果をまとめて表6に示す。
【0312】
【表6】

【0313】
[例9]レジスト形成組成物の感光感度評価例
表面に反射防止膜が形成されたシリコン基板上に、レジスト形成組成物(3)を回転塗布した。つぎに、シリコン基板を100℃にて90秒間加熱処理して、重合体(A)と重合体(B)からなる樹脂薄膜(膜厚200nm)をシリコン基板上に形成した。該シリコン基板にArFエキシマレーザーで照射してシリコン基板を露光した。ArFエキシマレーザーの照射に際しては、照射回数をコントロールし、露光量を変化させた。つづいて、ホットプレートにてシリコン基板を130℃にて60秒間加熱処理し、さらに現像処理して、樹脂薄膜の膜厚(単位:nm)を測定した。露光量別の膜厚をまとめて図1に示す。
【0314】
また、レジスト形成組成物(3)のかわりにレジスト形成組成物(6)〜(9)を用いた場合の樹脂薄膜に関しても同様に測定した。露光量別の膜厚をまとめて図2に示す。
【0315】
[例10]レジスト形成組成物を用いたレジストパターンの形成例
表面に反射防止膜が形成されたシリコン基板上に、レジスト形成組成物(1)を回転塗布した。シリコン基板を、100℃にて90秒間加熱処理して、レジスト形成組成物(1)から形成された樹脂薄膜(膜厚150nm)が形成されたシリコン基板を得た。
【0316】
ArFレーザー光を光源とする二光束干渉露光装置を用い、前記シリコン基板の90nmL/Sの露光試験を、超純水を液浸媒体とする液浸露光法とDry法とで行った。いずれの場合においても、シリコン基板上の樹脂薄膜に良好なパターンが形成されていることがSEM画像にて確認できた。
また、レジスト形成組成物(1)のかわりに、レジスト形成組成物(6)を用いた場合においても、シリコン基板上の樹脂薄膜に良好なパターンが形成されていることがSEM画像にて確認できた。
【0317】
[例11]組成物のアルカリ溶解性評価例
組成物(5)を水晶振動子上に回転塗布した後に、130℃にて90秒間加熱処理して、水晶振動子上に重合体(A)からなる薄膜を形成した。つぎに、該水晶振動子をテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(以下、TMAHと記す。)を2.38質量%含む水溶液に浸漬し、水晶振動子マイクロバランス(QCM)法を用いて、該薄膜のTMAH水溶液中での減膜速度(単位:nm/s)を、該薄膜の現像速度(単位:nm/s)として測定した。また、組成物(18)を用いて同様にして測定を行った。結果をまとめて表4に示す。なお、組成物(18)から形成された樹脂薄膜の屈折率は、1.575であった。
【0318】
【表7】

【0319】
[例12]組成物のレジスト保護膜特性評価例(その1)
表面に反射防止膜が形成されたシリコン基板上に、レジスト形成組成物(C)を回転塗布する。つぎに、シリコン基板を100℃にて90秒間加熱処理すると、重合体(B)を含むレジスト膜が形成されたシリコン基板(A)が得られる。ついで、シリコン基板(A)のレジスト膜上に組成物(7)を回転塗布し、シリコン基板を100℃にて90秒間加熱処理すると、前記レジスト膜上に重合体(A)と重合体(A)からなる樹脂薄膜が形成されたシリコン基板(B)が得られる。
【0320】
シリコン基板(A)と(B)を、それぞれ、ArFレーザー光を光源とする二光束干渉露光装置にセットし、カバーガラス(合成石英製)とシリコン基板間に超純水(450μL)封入した後に60秒間放置する。なお、シリコン基板上の樹脂薄膜と超純水の接液面積は、7cmである。
【0321】
つぎに、超純水を回収し、例7と同様にして、超純水に含まれるレジスト形成組成物(C)から溶出した光酸発生剤由来物の溶出量を測定すると、シリコン基板(A)に比較してシリコン基板(B)は、光酸発生剤由来物の溶出が抑制されていることがわかる。
【0322】
[例13]組成物の感光性評価例
ArFレーザー光を光源とする二光束干渉露光装置を用い、シリコン基板(B)の90nmL/Sの露光試験を、超純水を液浸媒体とする液浸露光法とDry法とで行うと、シリコン基板(B)上の樹脂薄膜に良好なパターンが形成されていることがSEM画像にて確認できる。
【0323】
[例14]組成物のレジスト保護膜特性評価例(その2)
表面に反射防止膜が形成されたシリコン基板上に、レジスト形成組成物(C)を回転塗布した。つぎに、シリコン基板を100℃にて90秒間加熱処理して、重合体(B)を含むレジスト膜が形成されたシリコン基板(A)を得た。ついで、シリコン基板(A)のレジスト膜上に組成物(24)を回転塗布し、シリコン基板を100℃にて90秒間加熱処理して、前記レジスト膜上に重合体(A)と重合体(A16)からなる樹脂薄膜(膜厚 100nm)が形成されたシリコン基板(C)を得た。
つぎに、ArFレーザー光(波長193nm)を光源とする二光束干渉露光装置を用いて、シリコン基板(C)の90nmL/Sのイマージョン露光試験(イマージョン液:超純水,現像液:テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液。)を行った結果、シリコン基板(C)上のレジスト膜に良好なパターンが形成されていることがSEM画像にて確認できた。
【0324】
以上の結果からも明らかであるように、重合体(A)は、イマージョンリソグラフィー法に用いられる、酸の作用によりアルカリ溶解性が増大する重合体、またはイマージョンリソグラフィー法に用いられる、アルカリ溶解性のレジスト保護膜重合体として適している。したがって、重合体(A)を用いることにより、イマージョンリソグラフィー法の安定した高速実施が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0325】
本発明によれば、レジスト特性(短波長光に対する透明性、エッチング耐性等。)またはイマージョンリソグラフィー用レジスト保護膜特性(イマージョン液の侵入による感光性レジストの膨潤抑制、感光性レジスト成分のイマージョン液中への溶出抑制等。)と、動的撥液性(特に動的撥水性。)とに優れた、イマージョン液によく滑るレジスト材料が提供される。本発明のレジスト材料を用いることにより、マスクのパターン像を高解像度に転写可能なイマージョンリソグラフィー法の安定した高速実施が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0326】
【図1】現像処理後の樹脂薄膜の膜厚(単位:nm)を露光量別に示したグラフ。
【図2】レジスト形成組成物(3)のかわりにレジスト形成組成物(6)〜(9)を用いたレジスト形成組成物の感光感度評価結果。縦軸はそれぞれのレジスト形成組成物から形成される樹脂薄膜の膜厚を示し、横軸は露光量を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下式(a)で表される化合物の重合により形成された繰り返し単位(A)を含むレジスト重合体。
CF=CFCFC(X)(C(O)OZ)(CHnaCR=CHR (a)。
式中の記号は、下記の意味を示す。
:水素原子、シアノ基または式−C(O)OZで表される基。
:水素原子または炭素数1〜20の1価有機基。
na:0、1または2。
:水素原子または炭素数1〜20の1価有機基であって、2個のRは同一であってもよく異なっていてもよい。
【請求項2】
式(a)で表される化合物が、下式(a1)または下式(a2)で表される化合物である請求項1に記載のレジスト重合体。
CF=CFCFCH(C(O)OZA1)CHCH=CH (a1)、
CF=CFCFC(C(O)OZA1CHCH=CH (a2)。
式中の記号は、下記の意味を示す。
A1:水素原子、式−C(ZA11で表される基、式−CHOZA12で表される基、または下式で表される基。
【化1】

A11、ZA12およびZA13:それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜20の1価飽和炭化水素基。
A13:式中の炭素原子と共同して、2価の環式炭化水素基を形成する炭素数3〜20の基。
ただし、1価飽和炭化水素基であるZA11、ZA12またはZA13、並びにQA13中の炭素原子−炭素原子間には、式−O−で表される基、式−C(O)−で表される基または式−C(O)O−で表される基が挿入されていてもよい。また、ZA11、ZA12、ZA13またはQA13中の炭素原子には、フッ素原子、ヒドロキシ基またはカルボキシ基が結合していてもよい。
【請求項3】
下式(a)で表される化合物の重合により形成された繰り返し単位(A)を含む、酸の作用によりアルカリ溶解性が増大するイマージョンリソグラフィー用レジスト重合体。
CF=CFCFC(X)(C(O)OZ)(CHnaCR=CHR (a)。
式中の記号は、下記の意味を示す。
:水素原子、シアノ基または式−C(O)OZで表される基。
:水素原子または炭素数1〜20の1価有機基。
na:0、1または2。
:水素原子または炭素数1〜20の1価有機基であって、2個のRは同一であってもよく異なっていてもよい。
【請求項4】
式(a)で表される化合物が、下式(a1)または下式(a2)で表される化合物である請求項3に記載のイマージョンリソグラフィー用レジスト重合体。
CF=CFCFCH(C(O)OZA1)CHCH=CH (a1)、
CF=CFCFC(C(O)OZA1CHCH=CH (a2)。
式中の記号は、下記の意味を示す。
A1:水素原子、式−C(ZA11で表される基、式−CHOZA12で表される基、または下式で表される基。
【化2】

A11、ZA12およびZA13:それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜20の1価飽和炭化水素基。
A13:式中の炭素原子と共同して、2価の環式炭化水素基を形成する炭素数3〜20の基。
ただし、1価飽和炭化水素基であるZA11、ZA12またはZA13、並びにQA13中の炭素原子−炭素原子間には、式−O−で表される基、式−C(O)−で表される基または式−C(O)O−で表される基が挿入されていてもよい。また、ZA11、ZA12、ZA13またはQA13中の炭素原子には、フッ素原子、ヒドロキシ基またはカルボキシ基が結合していてもよい。
【請求項5】
イマージョンリソグラフィー用レジスト重合体が、さらに含フッ素環構造を有する重合性化合物(f)の重合により形成された繰り返し単位(F)を含む、請求項3または4に記載のイマージョンリソグラフィー用レジスト重合体。
【請求項6】
重合性化合物(f)が、下式(f1)、下式(f2)、下式(f3)、下式(f4)または下式(f5)で表される化合物である請求項5に記載のイマージョンリソグラフィー用レジスト重合体。
【化3】

式中の記号は下記の意味を示す。
:水素原子、フッ素原子、炭素数1〜3のアルキル基または炭素数1〜3のフルオロアルキル基
また、化合物(f1)〜(f5)中のフッ素原子は、炭素数1〜6のペルフルオロアルキル基または炭素数1〜6のペルフルオロアルコキシ基に置換されていてもよい。
【請求項7】
イマージョンリソグラフィー用レジスト重合体が、さらに下式(b1)、下式(b2)、下式(b3)または下式(b4)で表される基を有する重合性化合物(b)の重合により形成された繰り返し単位を含む請求項3〜6のいずれかに記載のイマージョンリソグラフィー用レジスト重合体。
【化4】

式中の記号は下記の意味を示す。
B1:炭素数1〜6のアルキル基。
B1:式中の炭素原子と共同して環式炭化水素基を形成する炭素数4〜20の2価の基。
B2:炭素数1〜20の1価炭化水素基であって、3個のXB2は同一であってもよく異なっていてもよい。
:それぞれ独立に、アルキル基、アルコキシアルキル基、アルコキシカルボニル基またはアルキルカルボニル基であって、炭素数1〜20の基。
また、XB1、QB1、XB2またはZ中の炭素原子−炭素原子間には式−O−で表される基、式−C(O)O−で表される基または式−C(O)−で表される基が挿入されていてもよく、XB1、QB1、XB2またはZ中の炭素原子にはフッ素原子、ヒドロキシ基またはカルボキシ基が結合していてもよい。
【請求項8】
重合性化合物(b)が、下式(b1)、下式(b2)または下式(b3)で表される化合物である請求項7に記載のイマージョンリソグラフィー用レジスト重合体。
【化5】

式中の記号は下記の意味を示す。
:水素原子、フッ素原子、炭素数1〜3のアルキル基または炭素数1〜3のフルオロアルキル基。
B1:炭素数1〜6のアルキル基。
B1:式中の炭素原子と共同して環系炭化水素基を形成する炭素数4〜20の2価の基。
B2:炭素数1〜20のアルキル基であって、3個のXB2は同一であってもよく異なっていてもよい。
B3:式−CFC(CF)(OZ)(CHnb−、または式−CHCH((CHmbC(CF(OZ))(CHnb−で表される基。
:アルキル基、アルコキシアルキル基、アルコキシカルボニル基またはアルキルカルボニル基であって炭素数1〜20の基、または水素原子。
mbおよびnb:それぞれ独立に、0、1、または2。
ただし、XB1、QB1、XB2またはZの炭素原子−炭素原子間には−O−、−C(O)O−または−C(O)−が挿入されていてもよく、また、XB1、QB1、XB2またはZの炭素原子にはフッ素原子、ヒドロキシ基またはカルボキシ基が結合していてもよい。
【請求項9】
請求項3〜8のいずれかに記載のイマージョンリソグラフィー用レジスト重合体、光酸発生剤、および有機溶媒を含むイマージョンリソグラフィー用レジスト形成組成物。
【請求項10】
イマージョンリソグラフィー法によるレジストパターンの形成方法であって、請求項9に記載のイマージョンリソグラフィー用レジスト形成組成物を基板上に塗布して基板上にレジスト膜を形成する工程、イマージョンリソグラフィー工程、および現像工程をこの順に行う、基板上にレジストパターンを形成するレジストパターンの形成方法。
【請求項11】
下式(a)で表される化合物の重合により形成された繰り返し単位(A)を含む重合体(A)と、酸の作用によりアルカリ溶解性が増大する重合体(B)とを含むイマージョンリソグラフィー用レジスト組成物。
CF=CFCFC(X)(C(O)OZ)(CHnaCR=CHR (a)。
式中の記号は、下記の意味を示す。
:水素原子、シアノ基または式−C(O)OZで表される基。
:水素原子または炭素数1〜20の1価有機基。
na:0、1または2。
:水素原子または炭素数1〜20の1価有機基であって、2個のRは同一であってもよく異なっていてもよい。
【請求項12】
式(a)で表される化合物が、下式(a1)または下式(a2)で表される化合物である請求項11に記載のイマージョンリソグラフィー用レジスト組成物。
CF=CFCFCH(C(O)OZA1)CHCH=CH (a1)、
CF=CFCFC(C(O)OZA1CHCH=CH (a2)。
式中の記号は、下記の意味を示す。
A1:水素原子、式−C(ZA11で表される基、式−CHOZA12で表される基、または下式で表される基。
【化6】

A11、ZA12およびZA13:それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜20の1価飽和炭化水素基。
A13:式中の炭素原子と共同して、2価の環式炭化水素基を形成する炭素数3〜20の基。
ただし、1価飽和炭化水素基であるZA11、ZA12またはZA13、並びにQA13中の炭素原子−炭素原子間には、式−O−で表される基、式−C(O)−で表される基または式−C(O)O−で表される基が挿入されていてもよい。また、ZA11、ZA12、ZA13またはQA13中の炭素原子には、フッ素原子、ヒドロキシ基またはカルボキシ基が結合していてもよい。
【請求項13】
重合体(A)が、含フッ素環構造を有する重合性化合物(f)の重合により形成された繰り返し単位(F)とを含む重合体(AF)である請求項11または12に記載のイマージョンリソグラフィー用レジスト組成物。
【請求項14】
重合性化合物(f)が、下式(f1)、下式(f2)、下式(f3)、下式(f4)または下式(f5)で表される化合物である請求項13に記載のイマージョンリソグラフィー用レジスト組成物。
【化7】

式中の記号は下記の意味を示す。
:水素原子、フッ素原子、炭素数1〜3のアルキル基または炭素数1〜3のフルオロアルキル基。
また、化合物(f1)〜(f5)中のフッ素原子は、炭素数1〜6のペルフルオロアルキル基または炭素数1〜6のペルフルオロアルコキシ基に置換されていてもよい。
【請求項15】
重合体(B)が、下式(b1)、下式(b2)、下式(b3)または下式(b4)で表される基を有する重合性化合物(b)である請求項11〜14のいずれかに記載のイマージョンリソグラフィー用レジスト組成物。
【化8】

式中の記号は下記の意味を示す。
B1:炭素数1〜6のアルキル基。
B1:式中の炭素原子と共同して環式炭化水素基を形成する炭素数4〜20の2価の基。
B2:炭素数1〜20の1価炭化水素基であって、3個のXB2は同一であってもよく異なっていてもよい。
:それぞれ独立に、アルキル基、アルコキシアルキル基、アルコキシカルボニル基またはアルキルカルボニル基であって炭素数1〜20の基、または水素原子。
また、XB1、QB1、XB2またはZ中の炭素原子−炭素原子間には式−O−で表される基、式−C(O)O−で表される基または式−C(O)−で表される基が挿入されていてもよく、XB1、QB1、XB2またはZ中の炭素原子にはフッ素原子、ヒドロキシ基またはカルボキシ基が結合していてもよい。
【請求項16】
重合性化合物(b)が、下式(b1)、下式(b2)または下式(b3)で表される化合物である請求項15に記載のイマージョンリソグラフィー用レジスト組成物。
【化9】

式中の記号は下記の意味を示す。
:水素原子、フッ素原子、炭素数1〜3のアルキル基または炭素数1〜3のフルオロアルキル基。
B1:炭素数1〜6のアルキル基。
B1:式中の炭素原子と共同して環系炭化水素基を形成する炭素数4〜20の2価の基。
B2:炭素数1〜20のアルキル基であって、3個のXB2は同一であってもよく異なっていてもよい。
B3:式−CFC(CF)(OZ)(CHnb−、または式−CHCH((CHmbC(CF(OZ))(CHnb−で表される基。
:アルキル基、アルコキシアルキル基、アルコキシカルボニル基またはアルキルカルボニル基であって炭素数1〜20の基、または水素原子。
mbおよびnb:それぞれ独立に、0、1、または2。
ただし、XB1、QB1、XB2またはZの炭素原子−炭素原子間には−O−、−C(O)O−または−C(O)−が挿入されていてもよく、また、XB1、QB1、XB2またはZの炭素原子にはフッ素原子、ヒドロキシ基またはカルボキシ基が結合していてもよい。
【請求項17】
重合体(B)に対して重合体(A)を0.1〜30質量%含む請求項11〜16のいずれかに記載のイマージョンリソグラフィー用レジスト組成物。
【請求項18】
請求項11〜17のいずれかに記載のイマージョンリソグラフィー用レジスト組成物、光酸発生剤および有機溶媒を含むイマージョンリソグラフィー用レジスト形成組成物。
【請求項19】
イマージョンリソグラフィー法によるレジストパターンの形成方法であって、請求項18に記載のイマージョンリソグラフィー用レジスト形成組成物を基板上に塗布して基板上にレジスト膜を形成する工程、イマージョンリソグラフィー工程、および現像工程をこの順に行う、基板上にレジストパターンを形成するレジストパターンの形成方法。
【請求項20】
下式(a)で表される化合物の重合により形成された繰り返し単位(A)を含む、アルカリ溶解性のイマージョンリソグラフィー用レジスト保護膜重合体。
CF=CFCFC(X)(C(O)OZ)(CHnaCR=CHR (a)。
式中の記号は、下記の意味を示す。
:水素原子、シアノ基または式−C(O)OZで表される基。
:水素原子または炭素数1〜20の1価有機基。
na:0、1または2。
:水素原子または炭素数1〜20の1価有機基であって、2個のRは同一であってもよく異なっていてもよい。
【請求項21】
式(a)で表される化合物が、下式(a1)または下式(a2)で表される化合物である請求項20に記載のイマージョンリソグラフィー用レジスト保護膜重合体。
CF=CFCFCH(C(O)OZA1)CHCH=CH (a1)、
CF=CFCFC(C(O)OZA1CHCH=CH (a2)。
式中の記号は、下記の意味を示す。
A1:水素原子、式−C(ZA11で表される基、式−CHOZA12で表される基、または下式で表される基。
【化10】

A11、ZA12およびZA13:それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜20の1価飽和炭化水素基。
A13:式中の炭素原子と共同して、2価の環式炭化水素基を形成する炭素数3〜20の基。
ただし、1価飽和炭化水素基であるZA11、ZA12またはZA13、並びにQA13中の炭素原子−炭素原子間には、式−O−で表される基、式−C(O)−で表される基または式−C(O)O−で表される基が挿入されていてもよい。また、ZA11、ZA12、ZA13またはQA13中の炭素原子には、フッ素原子、ヒドロキシ基またはカルボキシ基が結合していてもよい。
【請求項22】
イマージョンリソグラフィー用レジスト保護膜重合体が、さらに含フッ素環構造を有する重合性化合物(f)の重合により形成された繰り返し単位(F)とを含む、請求項20または21に記載のイマージョンリソグラフィー用レジスト保護膜重合体。
【請求項23】
重合性化合物(f)が、下式(f1)、下式(f2)、下式(f3)、下式(f4)または下式(f5)で表される化合物である請求項22に記載のイマージョンリソグラフィー用レジスト保護膜重合体。
【化11】

式中の記号は下記の意味を示す。
:水素原子、フッ素原子、炭素数1〜3のアルキル基または炭素数1〜3のフルオロアルキル基
また、化合物(f1)〜(f5)中のフッ素原子は、炭素数1〜6のペルフルオロアルキル基または炭素数1〜6のペルフルオロアルコキシ基に置換されていてもよい。
【請求項24】
請求項20〜23のいずれかに記載のイマージョンリソグラフィー用レジスト保護膜重合体と有機溶媒を含むイマージョンリソグラフィー用レジスト保護膜形成組成物。
【請求項25】
感光性レジスト材料を基板上に塗布して基板上にレジスト膜を形成する工程、請求項24に記載のイマージョンリソグラフィー用レジスト保護膜形成組成物を該レジスト膜上に塗布してレジスト膜上にレジスト保護膜を形成する工程、イマージョンリソグラフィー工程、現像工程をこの順に行う、基板上にレジストパターンを形成するレジストパターンの形成方法。
【請求項26】
下式(a)で表される化合物の重合により形成された繰り返し単位(A)を含む重合体(A)と、含フッ素環構造を有する重合性化合物(f)の重合により形成された繰り返し単位(F)を含む重合体(F)とを含む、イマージョンリソグラフィー用レジスト保護膜組成物。
CF=CFCFC(X)(C(O)OZ)(CHnaCR=CHR (a)。
式中の記号は、下記の意味を示す。
:水素原子、シアノ基または式−C(O)OZで表される基。
:水素原子または炭素数1〜20の1価有機基。
na:0、1または2。
:水素原子または炭素数1〜20の1価有機基であって、2個のRは同一であってもよく異なっていてもよい。
【請求項27】
式(a)で表される化合物が、下式(a1)または下式(a2)で表される化合物である請求項26に記載のイマージョンリソグラフィー用レジスト保護膜組成物。
CF=CFCFCH(C(O)OZA1)CHCH=CH (a1)、
CF=CFCFC(C(O)OZA1CHCH=CH (a2)。
式中の記号は、下記の意味を示す。
A1:水素原子、式−C(ZA11で表される基、式−CHOZA12で表される基、または下式で表される基。
【化12】

A11、ZA12およびZA13:それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜20の1価飽和炭化水素基。
A13:式中の炭素原子と共同して、2価の環式炭化水素基を形成する炭素数3〜20の基。
ただし、1価飽和炭化水素基であるZA11、ZA12またはZA13、並びにQA13中の炭素原子−炭素原子間には、式−O−で表される基、式−C(O)−で表される基または式−C(O)O−で表される基が挿入されていてもよい。また、ZA11、ZA12、ZA13またはQA13中の炭素原子には、フッ素原子、ヒドロキシ基またはカルボキシ基が結合していてもよい。
【請求項28】
重合体(F)が、繰り返し単位(A)と繰り返し単位(F)とを含む重合体(FA)である請求項26または27に記載のイマージョンリソグラフィー用レジスト保護膜組成物。
【請求項29】
重合性化合物(f)が、下式(f1)、下式(f2)、下式(f3)、下式(f4)または下式(f5)で表される化合物である請求項26〜28のいずれかに記載のイマージョンリソグラフィー用レジスト保護膜組成物。
【化13】

式中の記号は下記の意味を示す。
:水素原子、フッ素原子、炭素数1〜3のアルキル基または炭素数1〜3のフルオロアルキル基
また、化合物(f1)〜(f5)中のフッ素原子は、炭素数1〜6のペルフルオロアルキル基または炭素数1〜6のペルフルオロアルコキシ基に置換されていてもよい。
【請求項30】
重合体(A)に対して重合体(F)を0.1〜200質量%含む請求項26〜29のいずれかに記載のイマージョンリソグラフィー用レジスト保護膜組成物。
【請求項31】
請求項26〜30のいずれかに記載のイマージョンリソグラフィー用レジスト保護膜組成物と有機溶媒を含むイマージョンリソグラフィー用レジスト保護膜形成組成物。
【請求項32】
感光性レジスト材料を基板上に塗布して基板上にレジスト膜を形成する工程、請求項31に記載のイマージョンリソグラフィー用レジスト保護膜形成組成物を該レジスト膜上に塗布してレジスト膜上にレジスト保護膜を形成する工程、イマージョンリソグラフィー工程、現像工程をこの順に行う、基板上にレジストパターンを形成するレジストパターンの形成方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−139518(P2010−139518A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−261186(P2007−261186)
【出願日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】