説明

レチクルケース

【課題】ケース本体と蓋体との間の隙間が弾力性のあるシール部材により全周にわたってシールされていても、衝撃等を伴うことなく蓋体をケース本体からスムーズに取り外して開放することができるレチクルケースを提供すること。
【解決手段】ケース本体1と、蓋体2と、解除自在なロック部材3(3A)と、ロック部材3(3A)が解除状態にされた時に蓋体2をケース本体1から押し上げるようにケース本体1と蓋体2との間に配置されたケース開放ばね15と、が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体の製造工程内において、ステッパーで使用されるフォトマスクであるレチクルを一枚毎に格納するためのレチクルケースに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体の製造工程内において使用されるレチクルケースは、一般に、ケース本体と、ケース本体に上方から着脱自在に被せられる蓋体と、ケース本体と蓋体との間の隙間を全周にわたってシールするシール部材と、蓋体がケース本体に被せられた状態を保持するための解除自在なロック部材とを備えている。そして、格納されているレチクルを取り出す際には、ロック部材によるロックを解除してから、ロボットハンド等で蓋体を上方に引っ張りあげてケース本体から引き剥がす(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特開2004−173273
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1に記載されたレチクルケース等においては、弾力性のある材料からなるシール部材がケース本体と蓋体との間の隙間に挟み付けられていることにより、外気に含まれる異物や化学物質等がレチクルケース内に侵入しない優れた性能を得ることができる。
【0004】
しかし、そのようなシール部材が設けられていることにより、レチクルを取り出すために蓋体が上方に引っ張りあげられた際に、弾性変形させられているシール部材の圧接力により蓋体がケース本体からスムーズに引き剥がされない場合がある。具体的には、ケース本体から蓋体が離れる際に、ケース本体が蓋体と共に一度持ち上げられてから落下する等の現象により衝撃が発生する場合がある。そして、そのような衝撃が発生すると、レチクルに傷が付くおそれがあるだけでなく、レチクルケース内で発生するゴミ等がレチクルに悪影響を及ぼすおそれがある。
【0005】
本発明は、ケース本体と蓋体との間の隙間が弾力性のあるシール部材により全周にわたってシールされていても、衝撃等を伴うことなく蓋体をケース本体からスムーズに取り外して開放することができるレチクルケースを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明のレチクルケースは、半導体の製造工程内において一枚のレチクルを格納するためのレチクルケースであって、レチクルが載置されるレチクル載置部材が配置されたケース本体と、レチクル載置部材に載置された状態のレチクルを上方から押さえるためのレチクル押さえ部材が配置されてケース本体に上方から着脱自在に被せられる蓋体と、蓋体がケース本体に被せられた状態の時にケース本体と蓋体との間の隙間を全周にわたってシールする弾力性のある材料からなるシール部材と蓋体がケース本体に被せられた状態を保持するための解除自在なロック部材と、ロック部材が解除状態にされた時に蓋体をケース本体から押し上げるようにケース本体と蓋体との間に配置されたケース開放ばねと、が設けられているものである。
【0007】
なお、ケース開放ばねが蓋体に対し固定的に取り付けられていてもよく、ケース開放ばねの固定端に、蓋体の裏面部から突出形成されたピンが圧入される固定用孔が穿設されていてもよい。また、ケース本体に、ケース開放ばねの作用端が当接するばね受け部材が立設されていてもよい。
【0008】
そして、ケース開放ばねが板ばねであって、二つのケース開放ばねが固定端を共有して一体に形成されていてもよく、その場合に、蓋体が矩形状に形成されると共に、一体に形成された二つのケース開放ばねが二組設けられて、そのうちの一組のケース開放ばねが蓋体の一辺に沿って配置され、蓋体の反対側の辺に沿って他の一組の板ばねが配置されていてもよい。なお、ケース開放ばねが、導電性を有するプラスチック材で形成されていてもよく、具体的には、導電性材料が混練された高分子材料で形成されていてもよい。
【0009】
また、本発明のレチクルケースにおいては、ロック部材が、水平方向にスライド可能に蓋体に取り付けられてケース本体に蓋体をロックするロック片と、ケース本体に対して蓋体をロックする方向にロック片を付勢するコイルスプリングからなるロックばねとを有していて、ロックばねが蓋体の外壁面に垂直の向きに取り付けられていてもよい。
【0010】
従来は、ロックばねが板バネで形成されてその端部が蓋体の外壁面に取り付けられていたため、ロックばねの付勢力の反力が蓋体の外壁部を歪(いびつ)に変形させて、シール部材の圧接状態が部分的に不完全になり、シール部に漏れが発生するおそれがあった。しかし、このように構成することにより、蓋体の外壁部が歪に変形せず、シール部材による気密シールが破綻をきたすことなく保持されるレチクルケースを提供することができる。なお、ロック片が、蓋体に回動可能に取り付けられたアームに取り付けられていて、ロックばねがアームを付勢していてもよい。
【0011】
また、本発明のレチクルケースにおいては、レチクル押さえ部材が複数設けられて、矩形状に形成されたレチクルの4辺のうちの3辺に対し斜め上方から当接するように蓋体に取り付けられ、レチクルの他の一辺に対し側方から当接するレチクルストッパがケース本体から上方に突出して設けられていてもよい。
【0012】
従来のレチクルケースにおいては、レチクル押さえ部材がレチクルの4辺全てに対して斜め上方から当接するように形成されていたので、レチクルケースを所定の大きさに小型化するのが困難であったが、このように構成することにより、レチクルケースの内部空間を有効に利用して、レチクルケースを所定の大きさに小型化したレチクルケースを提供することができる。なお、レチクルストッパが、非導電性のプラスチック材で形成されているとよい。
【0013】
また、本発明のレチクルケースにおいては、少なくともケース本体と蓋体とが導電性を有するプラスチック材で形成され、レチクルに接触する部材が全て非導電性のプラスチック材で形成されていてもよく、レチクル載置部材が、導電性を有するプラスチック材によりケース本体と一体成形されてケース本体から上方に突出する突起部と、非導電性のプラスチック材で形成されて突起部の少なくとも頂部に被覆されたキャップ状部材とを有していてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ロック部材が解除状態にされた時に蓋体をケース本体から押し上げるようにケース本体と蓋体との間にケース開放ばねを配置したことにより、ケース本体と蓋体との間の隙間が弾力性のあるシール部材により全周にわたってシールされていても、衝撃等を伴うことなく蓋体をケース本体からスムーズに取り外して開放することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図2は、半導体の製造工程内において、ステッパーで使用されるフォトマスクであるレチクル100を一枚毎に格納するためのレチクルケースの外観斜視図である。レチクル100は、破線で図示されているケース本体1と、そのケース本体1に対して上方から着脱自在に被せられる蓋体2とで囲まれた空間内に格納される。レチクル100は、例えば一辺が6インチ(15.24cm)の正方形状であり、その厚みは例えば1/4インチ(6.35mm)である。
【0016】
3は、蓋体2がケース本体1に被せられた状態を保持するためのロック部材であり、矢印Aで示されるようにロック部材3を外方に引き出すことにより、蓋体2とケース本体1とのロックが解除された状態になる。4は、レチクルケースの内外を連通させるように蓋体2の前面側に取り付けられた2個の呼吸弁である。ロック部材3と呼吸弁4についてのさらに詳細な説明は後述する。
【0017】
蓋体2の内壁部には、レチクル100に悪影響を及ぼす汚染ガスをレチクルケース内で吸収するための少なくとも一つのケミカルアブソーバ5が取り付けられている。ケミカルアブソーバ5は、例えば気体は通過するが固形粒子等は通過しない多孔質の膜状フィルタ(メンブレンフィルタ)により化学吸着剤が囲繞されてその内部に封止されている。
【0018】
6は、図示されていないロボットハンドを係合させるためのトップフランジであり、蓋体2の上面から上方に隙間をあけて突出した状態に、蓋体2に固定的に取り付けられている。7は、RFIDタグ(無線タグ)を取り付けるための凹部であり、蓋体2の外側面に凹んで形成されている。
【0019】
図3はレチクルケースの分解斜視図であり、レチクル100の図示は省略されている。図4は、レチクルケース内における各部材の配置状態を略示する平面図であり、ケース本体1に設けられている部材は太い破線で図示され、蓋体2に設けられている部材は細い破線で図示されている。図5と図6は各々、図4に示されるV−V断面図であり、図5はレチクルケースが閉じた状態、図6はレチクルケースが開いた状態を示している。ケース本体1と蓋体2とはヒンジ等によって連結されておらず、蓋体2はレチクル100の面に対して垂直方向に着脱される。
【0020】
図4に示されるように、ケース本体1と蓋体2は各々、導電性のあるプラスチック材により正方形に近い矩形状に形成されている。具体的には、例えばPC(ポリカーボネート)、PBT(ポリブチレテレフタレート)又はPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)等のような熱可塑性高分子材料にカーボンファイバ等のような導電性フィラー又はカーボンナノチューブ等のような導電性ナノチューブが混練された材料で形成されている。
【0021】
そして、蓋体2がケース本体1に被せられた状態の時にケース本体1と蓋体2との間の隙間を全周にわたってシールするための例えばポリオレフィンエラストマー等のような弾力性のある材料からなるシール部材8が、ケース本体1と蓋体2との隙間に沿って継ぎ目なくに配置されている。
【0022】
図5に示されるように、シール部材8はケース本体1の外縁部の全周に形成された取り付け溝内に嵌め込まれている。そして、側方に向けて突出する状態にシール部材8に形成されたリップ状部分の先端が、蓋体2の開口部の内周面に圧接して弾性変形した状態になることで、ケース本体1と蓋体2との間の隙間が気密にシールされて、レチクルケース内へのゴミや汚染ガス等の侵入が阻止される。シール部材8が圧接される蓋体2の開口部の内周面は、開口端側へ次第に広がる斜面状に形成されている。したがって、ケース本体1に対する蓋体2の被さり具合が浅くなるにしたがって、シール部材8の圧接力(シール力)が弱まる。
【0023】
ロック部材3は、図4に示されるように蓋体2の前面(図4において右側の面)と後面(図4において左側の面)の各外壁部の内側に各々二組ずつ配置されている。各ロック部材3は、図7に示されるように、ケース本体1の底面に形成されたロック片係合凹部11に出入りするように水平方向にスライド可能に設けられたロック片3Aを備えている。ロック片3Aには、図示されていない外部のロック解除アームを係合させるための孔が形成されている。
【0024】
ロック片3Aは、支軸3Dを中心に回動自在に蓋体2に取り付けられたアーム3Bの先端に設けられている。また、ロック片3Aをロック片係合凹部11内に押し込む状態に常に付勢するための圧縮コイルスプリングからなるロックばね3Cが、蓋体2の外壁の内面とアーム3Bとの間に圧縮された状態に配置されて、アーム3Bを付勢している。
【0025】
ロックばね3Cは蓋体2の外壁面に垂直の向きに取り付けられて、アーム3Bを蓋体2の外壁面に対して垂直方向に付勢している。その結果、ロックばね3Cから蓋体2に加わる力が蓋体2の外壁面に対して垂直方向に作用するので、蓋体2が歪(いびつ)に変形せず、シール部材8による気密シールが破綻をきたすことなく保持される。
【0026】
ロック片係合凹部11は、ケース本体1の底面に形成されていて、図7に示されるようにロック片3Aがロック片係合凹部11内に係合していると、図5にも明示されるように、蓋体2をケース本体1から外すことができないロック状態になる。そして、図8に示されるように、外部のロック解除アームで、ロック片3Aをロックばね3Cの付勢力に抗して矢印Aで示されるように外方に引っ張ってロック片係合凹部11内から引き出された状態にすると、ロック状態が解除されて、蓋体2をケース本体1から外してレチクルケースを開放状態にすることができる。
【0027】
図3と図4に戻って、12は、レチクル100が載置される4個のレチクル載置部材であり、レチクル100の四隅の内側部分が載せられる位置に配置されている。なお、レチクル載置部材12はできるだけ小さな面積でレチクル100を支持するように構成するのが望ましい。
【0028】
各レチクル載置部材12は、図9に拡大図示されるように、導電性を有するプラスチック材によりケース本体1と一体成形されてケース本体1から上方に突出する突起部12Aに、例えばPEE(ポリエチレンエラストマー)等のような弾力性を有する非導電性の高分子材料製のキャップ状部材12Bが被せられた構成になっている。なお、キャップ状部材12Bは、少なくともレチクル100と接触するレチクル載置部材12の頂部に被覆されていればよい。
【0029】
図3及び図4に示される13は、4個のレチクル載置部材12に載置された状態のレチクル100を上方から押さえるための6個のレチクル押さえ部材であり、ばね性を有する例えばPEE等のような非導電性のプラスチック材(高分子材料)により形成されている。レチクル押さえ部材13は、図4に示されるように、レチクル100の前縁と左右両縁の各々に当接する位置に2個ずつ互いの間隔をあけて配置されている。
【0030】
各レチクル押さえ部材13は、図5に示されるように、蓋体2の内面に凹んで形成された孔に両端が嵌め込み固定されていて、側方から見て略45°の角度に形成された斜面部分が、レチクル100の縁部に斜め外方(斜め上方)から板ばね状に弾力的に当接する状態に取り付けられている。それによって、レチクルケース内におけるレチクル100の位置が背面側を除いて規制されている。
【0031】
再び、図3と図4に戻って、14は、レチクル100の4辺のうちレチクル押さえ部材13が当接しない辺に対して側方から当接してレチクル100の位置決めをする(言い換えると、4個のレチクル載置部材12に載置された状態のレチクル100の後面側の辺に対し後方から当接する)レチクルストッパであり、非導電性のプラスチック材(高分子材料)により形成されて、ケース本体1から上方に突出する状態にケース本体1にねじ止め固定されている。なお、レチクル100に対するレチクルストッパ14の当接状態は図5等にも明示されている。
【0032】
このようにして、蓋体2に取り付けられた弾力性のあるレチクル押さえ部材13をレチクル100の3辺に斜め外方から当接させ、ケース本体1から立設されたレチクルストッパ14をレチクル100の他の一辺に当接させる構成を採ることで、レチクル100をレチクルケース内に所定位置に安定した状態に固定することができ、レチクルケースの内部空間を有効に用いてレチクルケースを所定の大きさに小型化することができる。
【0033】
15は、ロック部材3が図8に示されるロック解除状態にされた時に、蓋体2をケース本体1から押し上げるようにケース本体1と蓋体2との間に配置されたケース開放ばねである。
【0034】
ケース開放ばね15は、導電性を有するプラスチック材で形成されている。具体的には、例えばPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)等のようなばね性を有する高分子材料に導電性フィラー又は導電性フィラー等のような導電性材料を混練して形成されている。ただし、他の材料で形成してもよい。
【0035】
この実施の形態のケース開放ばね15は板ばねであり、図10に拡大図示されるように、二つのケース開放ばね15がその境界部分で固定端を共有する状態に一体成形されて、その固定端部分に2個の固定用孔15Aが穿設されている。各ケース開放ばね15の他端側は作用端であり、後述するばね受け部材17のばね受け面17Aに当接する当接面15Bが作用端部分に形成されている。当接面15Bは、ばね受け面17Aに面する向きの平板状に形成されている。
【0036】
ばね受け部材17は、図3及び図4に示されるように、ケース本体1の左右両辺(図4における上側の辺と下側の辺)の内側位置に互いの間隔を均等に離して2個ずつ合計4個がケース本体1の上面に立設されている。そのようなばね受け部材17はケース本体1にねじ止め固定されていて、その頂面が、ケース開放ばね15の当接面15Bと当接するほぼ平らなばね受け面17Aになっている。
【0037】
また、ケース開放ばね15は、前述のように2個ずつ一体に形成されたものが二組(合計4個)設けられて、そのうちの一組のケース開放ばね15が蓋体2の右辺に沿って配置され、蓋体2の左辺に沿って他の一組のケース開放ばね15が配置されている。その結果、ケース開放ばね15とばね受け部材17を、レチクルケース内のレチクル100と干渉しない空間を有効に利用して配置し、ケース本体1と蓋体2との間に開放力を均等に作用させることができる。
【0038】
図5に示されるように、ケース開放ばね15は、蓋体2の裏面部から突出形成されたピンが固定用孔15Aにきつく圧入されることにより蓋体2に固定されている。ばね受け部材17のばね受け面17Aはレチクル100の表面(上面)より上方に位置している。そして、ケース本体1と蓋体2とがロック部材3でロックされた状態では、各ケース開放ばね15の当接面15Bが各々ばね受け部材17のばね受け面17Aに当接してケース開放ばね15が弾性変形し、それによってケース開放ばね15から発生する付勢力が、蓋体2をケース本体1から押し上げて開く状態に作用している。その付勢力は、全体で例えば0.2〜1.2kg程度の範囲であるとよい。
【0039】
そして、図6に示されるように、蓋体2がケース本体1から離れた状態では、ケース開放ばね15の当接面15Bがばね受け部材17のばね受け面17Aから離れて、ケース開放ばね15が弾性変形していない元の形状に戻っている。なお、この状態においては、全てのレチクル押さえ部材13がレチクル100から離れる。
【0040】
このように構成されたレチクルケースにおいては、図5に示されるようにケース本体1と蓋体2とがロック部材3のロック片3Aでロックされた状態から、図1に示されるように、ロック片3Aがロック片係合凹部11内から矢印Aで示されるように外方に引き出されてロックが解除されると、ケース本体1と蓋体2との間に作用しているケース開放ばね15の付勢力により、蓋体2がケース本体1に対して持ち上げられ、その結果、ケース本体1と蓋体2との間の隙間がシール部材8でシールされない状態になる。又は、シール部材8のシール力が非常に弱い状態になる。
【0041】
このようにして、ケース本体1と蓋体2との間の隙間が弾力性のあるシール部材8により全周にわたってシールされた構成を採っていても、衝撃等を伴うことなく蓋体2をケース本体1からスムーズに取り外して開くことができ、レチクル100に悪影響を及ぼすことなくレチクルケースを開放状態にすることができる。
【0042】
レチクルケースの内外を連通させる呼吸弁4には、図1や図5等に示されるように、気体は通過するが例えば0.1μm以上の大きさの固形粒子は通過しないメンブレンフィルタ4Aが内蔵されていて、蓋体2内においてレチクル100の表面に沿う方向に開口している。その結果、ケース本体1に蓋体2がロックされた状態において、呼吸弁4を介して清浄な外気がレチクル100の表面に与えられる。
【0043】
なお、この実施の形態のレチクルケースにおいては、レチクル100と接触するキャップ状部材12B、レチクル押さえ部材13及びばね受け部材17は非導電性のプラスチック材により形成されて、レチクル100と接触しないものは、ケース本体1及び蓋体2を初め主要な部品が導電性を有するプラスチック材で形成されている。それによって、ケース本体1と蓋体2等が帯電し難くなるので、外部環境からの不純物粒子等を引き付けなくなってレチクル100が汚染され難くなり、また、レチクルケースの表面積の大部分が導電性を有することにより、万一非導電部分に電荷が付与された場合でも速やかなリークにより実質的に帯電しない等の効果を得ることができる。そして、レチクル100はケース本体1や蓋体2等と電気的に絶縁されているので、外部から電気的な悪影響を受け難い。
【0044】
なお、ケース本体1及び蓋体2等を構成するプラスチック材として、導電性カーボン入りのPC(ポリカーボネート)を用いると、透明性は得られないが、汚染ガスの発生が非常に少なくなる効果がある。
【0045】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、例えばケース開放ばね15の形状及び配置等は本明細書に記載していない各種の態様を含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明に係る実施の形態におけるレチクルケースの、ロックが解除された瞬間の状態を示す側面断面図である。
【図2】本発明に係る実施の形態におけるレチクルケースの外観斜視図である。
【図3】本発明に係る実施の形態におけるレチクルケースの分解斜視図である。
【図4】本発明に係る実施の形態におけるレチクルケースの各部材の配置関係を示す平面略示図である。
【図5】本発明に係る実施の形態におけるレチクルケースの、ケース本体に蓋体がロックされた状態の側面断面図(図4におけるV−V断面図)である。
【図6】本発明に係る実施の形態におけるレチクルケースの、ケース本体から蓋体が外された状態の側面断面図である。
【図7】本発明に係る実施の形態におけるロック部材の背面断面図である。
【図8】本発明に係る実施の形態におけるロック部材のロックが解除された状態の背面断面図である。
【図9】本発明に係る実施の形態におけるレチクル載置部材単体の側面断面図である。
【図10】本発明に係る実施の形態におけるケース開放ばねの単体斜視図である。
【符号の説明】
【0047】
1 ケース本体
2 蓋体
3 ロック部材
3A ロック片
3B アーム
3C ロックばね
8 シール部材
11 ロック片係合凹部
12 レチクル載置部材
12A 突起部
12B キャップ状部材
13 レチクル押さえ部材
14 レチクルストッパ
15 ケース開放ばね
15A 固定用孔
15B 当接面
17 ばね受け部材
17A ばね受け面
100 レチクル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体の製造工程内において一枚のレチクルを格納するためのレチクルケースであって、
上記レチクルが載置されるレチクル載置部材が配置されたケース本体と、
上記レチクル載置部材に載置された状態の上記レチクルを上方から押さえるためのレチクル押さえ部材が配置されて上記ケース本体に上方から着脱自在に被せられる蓋体と、
上記蓋体が上記ケース本体に被せられた状態の時に上記ケース本体と上記蓋体との間の隙間を全周にわたってシールする弾力性のある材料からなるシール部材と
上記蓋体が上記ケース本体に被せられた状態を保持するための解除自在なロック部材と、
上記ロック部材が解除状態にされた時に上記蓋体を上記ケース本体から押し上げるように上記ケース本体と上記蓋体との間に配置されたケース開放ばねと、
が設けられていることを特徴とするレチクルケース。
【請求項2】
上記ケース開放ばねが上記蓋体に対し固定的に取り付けられている請求項1記載のレチクルケース。
【請求項3】
上記ケース開放ばねの固定端に、上記蓋体の裏面部から突出形成されたピンが圧入される固定用孔が穿設されている請求項2記載のレチクルケース。
【請求項4】
上記ケース本体に、上記ケース開放ばねの作用端が当接するばね受け部材が立設されている請求項2記載のレチクルケース。
【請求項5】
上記ケース開放ばねが板ばねであって、二つのケース開放ばねが固定端を共有して一体に形成されている請求項1ないし4のいずれかの項に記載のレチクルケース。
【請求項6】
上記蓋体が矩形状に形成されると共に、上記の一体に形成された二つのケース開放ばねが二組設けられて、そのうちの一組のケース開放ばねが上記蓋体の一辺に沿って配置され、上記蓋体の反対側の辺に沿って他の一組の板ばねが配置されている請求項5記載のレチクルケース。
【請求項7】
上記ケース開放ばねが、導電性を有するプラスチック材で形成されている請求項1ないし6のいずれかの項に記載のレチクルケース。
【請求項8】
上記ケース開放ばねが、導電性材料が混練された高分子材料で形成されている請求項7記載のレチクルケース。
【請求項9】
上記ロック部材が、水平方向にスライド可能に上記蓋体に取り付けられて上記ケース本体に対して上記蓋体をロックするロック片と、上記ケース本体に上記蓋体をロックする方向に上記ロック片を付勢するコイルスプリングからなるロックばねとを有していて、上記ロックばねが上記蓋体の外壁面に垂直の向きに取り付けられている請求項1記載のレチクルケース。
【請求項10】
上記ロック片が、上記蓋体に回動可能に取り付けられたアームに取り付けられていて、上記ロックばねが上記アームを付勢している請求項9記載のレチクルケース。
【請求項11】
上記レチクル押さえ部材が複数設けられて、矩形状に形成された上記レチクルの4辺のうちの3辺に対し斜め上方から当接するように上記蓋体に取り付けられ、上記レチクルの他の一辺に対し側方から当接するレチクルストッパが上記ケース本体から上方に突出して設けられている請求項1記載のレチクルケース。
【請求項12】
上記レチクルストッパが、非導電性のプラスチック材で形成されている請求項11記載のレチクルケース。
【請求項13】
少なくとも上記ケース本体と上記蓋体とが導電性を有するプラスチック材で形成され、上記レチクルに接触する部材が全て非導電性のプラスチック材で形成されている請求項1ないし12のいずれかの項に記載のレチクルケース。
【請求項14】
上記レチクル載置部材が、導電性を有するプラスチック材により上記ケース本体と一体成形されて上記ケース本体から上方に突出する突起部と、非導電性のプラスチック材で形成されて上記突起部の少なくとも頂部に被覆されたキャップ状部材とを有している請求項13記載のレチクルケース。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−265761(P2008−265761A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−106690(P2007−106690)
【出願日】平成19年4月16日(2007.4.16)
【出願人】(000140890)ミライアル株式会社 (74)
【出願人】(000234166)伯東株式会社 (135)
【出願人】(506224218)アドハンド株式会社 (6)
【Fターム(参考)】