説明

レーザー加工装置

【課題】 微細加工を高精度に実行することが可能なレーザー加工装置を提供する。
【解決手段】 X−Y−θテーブル12により支持されたウエハ1の表面に純水を供給する純水供給ノズル14と、ウエハ1の表面に供給された純水の表面に空気を供給する空気供給ノズル15と、この空気供給ノズル15の上方に配設された合成石英板16と、水滴吸引ノズル17と、ウエハ1に対してレーザービームLを照射するレーザービーム照射機構20とを備える。このとき、空気供給ノズル15における純水流側のスリットから、純水流が流れる方向に空気流を噴出することにより、純水流の膜厚を極めて小さいものとすることが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、加工対象物に対してレーザービームを照射することにより加工対象物を加工するレーザー加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、微細加工を行う場合にレーザー加工技術が注目されている。例えば、半導体ウエハをチップに分割する場合に、レーザービームを利用したレーザー加工が採用されている。しかしながら、レーザー加工時においては、一般的に、デブリと呼称される加工屑が発生し、このデブリが加工領域周辺に付着するという問題が生ずる。また、レーザービームを利用して加工対象物を加工したときには、レーザービームに起因する熱ストレスにより、加工対象物が損傷を受けるという問題も生ずる。
【0003】
このため、特許文献1には、加工対象物の表面にその垂線方向から液体を勢い良く噴出することで液体ビームを形成し、この液体ビームをレーザービームガイドとする状態で加工対象物にレーザービームを照射する加工装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3680864号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献1に記載の加工装置は、液体ビーム内部をレーザー光が全反射を繰り返すことによりレーザービームを加工対象物に誘導するものであることから、加工用のレーザービームを一定以上絞り込むことが難しく、微細加工が困難であるという問題が生ずる。
【0006】
この発明は上記課題を解決するためになされたものであり、微細加工を高精度に実行することが可能なレーザー加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、加工対象物を支持する支持部材と、前記支持部材に支持された加工対象物の表面に液体を供給する液体供給手段と、前記加工対象物の表面に供給された液体の表面に気体を供給する気体供給手段と、前記液体が供給された加工対象物に対してレーザービームを照射するレーザービーム照射手段と、前記支持部材を前記レーザービーム照射手段に対して相対的に移動させる移動手段とを備えたことを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記液体供給手段は、前記加工対象物の表面に層状の液体流を形成するものであり、前記気体供給手段は、前記液体供給手段により形成された層状の液体流と同じ方向に気体を供給することにより、液体流の層厚を小さくする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、前記気体供給手段は、レーザービームの入射側にレーザービームの入射孔が形成されるとともに、層状の液体側に液体流の流れ方向を向くスリットが形成された管状部材を備えている。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の発明において、前記気体供給手段における入射孔の上部に、レーザービームを透過させる透光性部材を配設している。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の発明において、前記液体供給手段から供給された液体に対して前記気体供給手段から供給気体を供給することで生ずる水滴を吸引する水滴吸引手段を備えている。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の発明において、前記レーザービーム照射手段から照射されるレーザービームはパルス状であって、前記レーザービームの照射スポット直径をD、前記レーザービームの繰り返し周波数をfとしたとき、前記液体の加工領域における平均流速がD×f以上である。
【0013】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の発明において、前記気体供給手段から供給された気体の平均流速が2×D×f以上である。
【0014】
請求項8に記載の発明は、請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の発明において、前記加工対象物表面の加工領域における液体流の厚さが100μm以下である。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載の発明によれば、加工対象物の表面に液体と気体を供給することによりデブリの付着や熱ストレスの損傷を防止しつつも、微細加工を高精度に実行することが可能となる。
【0016】
請求項2に記載の発明によれば、液体流の層厚を小さくすることにより、加工時に液体中で発生した気泡を瞬時に気体中に放出することができる。このため、気泡によるレーザービームの散乱により加工領域の周辺でレーザー照射損傷が生ずることを有効に防止することが可能となる。
【0017】
請求項3に記載の発明によれば、液体の表面に供給される気体の気流の乱れを抑制することで層状の液体流の表面の乱れを低減させることができる。このため、レーザービームの流体の表面における光学散乱を防止することができ、加工精度を向上させることが可能となる。
【0018】
請求項4に記載の発明によれば、管状部材の入射孔から噴出する気体による気流の乱れを抑制することで層状の液体流の表面の乱れをさらに低減させることができる。このため、レーザービームの流体の表面における光学散乱をより高度に防止することができ、加工精度をさらに向上させることが可能となる。
【0019】
請求項5に記載の発明によれば、水滴を吸引除去することで、水滴に起因するレーザー加工形状の悪化を抑制することが可能となる。
【0020】
請求項6および請求項7に記載の発明によれば、レーザービームの照射により液体中に発生する気泡に起因して加工対象物の表面に液体が除去された領域が発生しても、次のレーザービームの照射までにこの領域を除去することが可能となる。
【0021】
請求項8に記載の発明によれば、加工時に液体中で発生した気泡を瞬時に気体中に放出することができる。このため、気泡によるレーザービームの散乱により加工領域の周辺でレーザー照射損傷が生ずることを有効に防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】この発明に係るレーザー加工装置の概要図である。
【図2】純水供給ノズル14および空気供給ノズル15と、合成石英板16およびウエハ1との配置関係を示す図である。
【図3】空気供給ノズル15の形状を示す図である。
【図4】レーザー加工時の気泡42の発生と放出の様子を模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、この発明に係るレーザー加工装置の概要図である。
【0024】
このレーザー加工装置は、加工対象物としてのシリコンウエハ(以下、単に「ウエハ」という)1に対してレーザービームLを利用して加工を行うものであり、チャンバー11内に配置されたX−Y−θテーブル12と、このX−Y−θテーブル12により支持されたウエハ1の表面に純水を供給する純水供給ノズル14と、ウエハ1の表面に供給された純水の表面に空気を供給する空気供給ノズル15と、この空気供給ノズル15の上方に配設された合成石英板16と、水滴吸引ノズル17と、レーザービーム照射機構20とを備える。
【0025】
また、レーザービーム照射機構20は、レーザービームを照射するレーザー光源21と、レーザー光源21から照射されたレーザービームを拡張するビームエキスパンダ22と、ビームエキスパンダ22により拡張されたレーザービームをウエハ1へ向けて反射するハーフミラー23と、集光レンズ24と、ハーフミラー23を介してウエハ1を撮像することにより、ウエハ1の位置決めと観察を行うCCDカメラ25とを備える。
【0026】
レーザー光源21としては、QスイッチNd:YAG第三高周波を使用する。このときの波長は例えば355nmであり、パルス幅は12nsecである。また、繰り返し周波数は15kHz〜50kHzの範囲で調整可能であり、1パルスあたりの照射エネルギー密度はウエハ1の表面で1〜10J/cm2 、レーザービームの照射スポット直径はビームエキスパンダ22により30μm〜60μmの範囲で調整可能である。なお、このレーザー光源21としては、QスイッチNd:YAG基本波、QスイッチNd:YAG第二高周波、QスイッチNd:YVO4 基本波、QスイッチNd:YVO4 第二高周波、QスイッチNd:YVO4 第三高調波等のパルス発振するその他のレーザー光源も使用可能である。
【0027】
また、集光レンズの焦点距離を選択することで、レーザービームの照射スポット直径は、10μm以下にすることも可能である。
【0028】
このレーザー加工装置においては、X−Y−θテーブル12により支持されたウエハ1と合成石英板16との間の領域に、純水供給ノズル14および空気供給ノズル15から、純水と空気が供給される。ウエハ1に供給された純水は、チャンバー11により回収され、排出管18を介して外部に排出される。また、そのときに発生する水滴は、水滴吸引ノズル17により吸引除去される。
【0029】
図2は、上述した純水供給ノズル14および空気供給ノズル15と、合成石英板16およびウエハ1との配置関係を示す図である。なお、図2(a)はその側面概要を示し、図2(b)はその縦断面概要を示している。また、図3は、空気供給ノズル15の形状を示す図である。なお、図3(a)は空気供給ノズル15を合成石英板16とともに示す平面図であり、図3(b)は空気供給ノズル15の斜視図である。
【0030】
図2(a)に示すように、X−Y−θテーブル12により支持されたウエハ1の表面と近接する位置には、ウエハ1の表面に対して斜め上方から小さい角度をもって純水を供給するための、上述した純水供給ノズル14が配設されている。この純水供給ノズル14からウエハ1の表面に小さい角度をもって供給された純水は、ウエハ1の表面に層状の純水流31を形成する。一方、純水供給ノズル14の上方には、上述した空気供給ノズル15が配設されている。この空気供給ノズル15は、ウエハ1の表面に供給された層状の純水流31の表面に対して、この純水流31の方向と同じ方向に空気を供給することにより、純水流31の層厚を薄くするためのものである。
【0031】
この空気供給ノズル15は、図2(b)および図3に示すように、レーザービームLの入射側にレーザービームLの入射孔としてのスリット32が形成されるとともに、純水流31側にスリット33が形成された、その断面が略楕円状の管状部材から構成される。スリット32、33は、その長手方向が純水流31の流れ方向となっている。そして、空気供給ノズル15におけるレーザービームLの入射側のスリット32は、合成石英板16と当接している。
【0032】
次に、このような構成を有するレーザー加工装置によりウエハ1をレーザー加工する加工動作について説明する。
【0033】
最初に、ウエハ1をX−Y−θテーブル12により支持させる。このX−Y−θテーブル12は、そこに支持したウエハ1を、X方向、Y方向およびθ方向に移動させることが可能となっている。この状態において、純水供給ノズル14より純水を噴出させるとともに、空気供給ノズル15から高圧の空気を噴出させる。このときには、純水供給ノズル14から噴出する純水の平均流速は、例えば、1m/secであり、空気供給ノズル15から噴出する空気の平均流速は、例えば、15m/secである。
【0034】
純水供給ノズル14から噴出された純水はウエハ1の表面で層状の純水流31となる。そして、この純水流31の上部に、空気供給ノズル15内を通過する空気流41が純水流31と同方向に向けて形成される。この空気流41は、純水流31を薄くする作用を奏し、この空気流41の作用により純水流31の層厚が小さくなる。特に、この実施形態においては、空気供給ノズル15における純水流31側のスリット33から、純水流31が流れる方向に空気流41が噴出されることから、純水流31の膜厚を極めて小さいものとすることが可能となる。
【0035】
例えば、空気供給ノズル15から噴出される空気の平均流速が15m/secであり、空気供給ノズル15の高さが100μm〜500μm、空気供給ノズル15における純水流31側のスリット33の幅を500μmとした場合、空気供給ノズル15から生ずる空気流41の作用により、純水流31の層厚を100μm以下とすることができる。
【0036】
そして、空気流41が純水流31の表面を純水流31と平行に流れ、かつ、空気流41の流速が純水流31の流速より大幅に速いことから、純水流31の速度向上が達成され、レーザービームLによる加工領域においては、純水流31の流速は、6〜8m/sec程度となる。すなわち、レーザービームLによるウエハ1の加工領域においては、純水流31の流速は空気流41の流速の約1/2倍となることになる。
【0037】
この状態において、レーザービームLを、合成石英板16および空気供給ノズル15のスリット32、33を介してウエハ1の表面に照射する。このときには、レーザービームLの絞り限界は、純水によっては殆ど制限を受けないことから、数μm程度までの微細加工が可能となる。そして、レーザー加工時に生ずるデブリが加工領域周辺に付着するという問題と、レーザービームLに起因する熱ストレスの問題を、純水流31の作用により解消することが可能となる。
【0038】
ところで、このようにウエハ1に対して純水を供給しながらレーザービームLを照射してレーザー加工を実行したときには、レーザービームLの照射直後に、純水中に気泡が発生することを本発明者は見いだした。パルス状のレーザービームLを照射してこのような気泡が発生し、この気泡42が次のパルス状のレーザービームLが照射される前に純水中から除去されなかった場合には、この気泡による光学散乱の影響で、加工領域周辺で散乱したレーザービームに起因するレーザー照射損傷が形成されることになる。しかしながら、この発明に係るレーザー加工装置においては、純水流31の厚さを小さく制御することで、気泡の影響を防止している。
【0039】
図4は、レーザー加工時の気泡42の発生と放出の様子を模式的に示す説明図である。
【0040】
図4(a)に示すように、ウエハ1にパルス状のレーザービームLを照射したときには、ウエハ1が加工されるときに気泡42が発生する。このままの状態で、次のパルス状のレーザービームLが照射された場合には、この気泡42により光学散乱が生ずる。しかしながら、この発明においては、純水流31の層厚が十分小さいことから、図4(b)に示すように、この気泡42は純水流31を突き破って外部に放出される。従って、散乱レーザービームに起因するレーザー照射損傷を有効に防止することが可能となる。
【0041】
このときの純水流31の層厚は、例えば、100μm以下であることが好ましい。すなわち、この純水流31の層厚を、純水中で発生する気泡42の大きさより小さくすれば、この気泡42を速やかに外部に放出することが可能となる。ここで、レーザービームLの照射スポット直径をレーザー加工に最適な30μm〜60μm程度に設定した場合には、気泡42の大きさが100μm以上となる。このため、純水流31の層厚を100μm以下とすることにより、純水中で発生する気泡42を速やかに外部に放出することが可能となる。
【0042】
このように、本願発明においては、空気流41の作用により純水流31の層厚を小さくすることで、気泡42を速やかに放出させて光学散乱の影響を防止している。しかしながら、図4(b)に示すように、気泡42が放出された直後に次のパルス状のレーザービームLが照射された場合には、純水流31が存在しないウエハ1の表面にレーザービームLが照射されることになり、従来のレーザー加工の場合と同様、デブリの発生や熱によるストレスの問題が生ずる。
【0043】
パルス状のレーザービームLを使用したときに、レーザービームLが照射されることにより発生した気泡42により純水が除去された領域が、次のパルス状のレーザービームLが照射される前に加工領域から除去されるためには、純水流31の流速をFW、ウエハ1に照射されるレーザービームの照射スポット直径をD、レーザービームLの繰り返し周波数をfとしたときに、純水流31の加工領域における平均流速FWを、D×f以上とする必要がある。純水流31の流速FWとレーザービームの照射スポット直径DとレーザービームLの繰り返し周波数fとの関係をこのように設定することにより、レーザービームLの照射で発生した気泡42により純水が除去された領域が、次のパルス状のレーザービームLが照射される前に加工領域から退出することになる。
【0044】
なお、上述したように、レーザービームLによるウエハ1の加工領域においては、空気流41の流速は純水流31の流速の約2倍となることが判明している。このため、空気流41の流速をFGとしたときには、空気流41の加工領域における平均流速FGを、2×D×f以上とすることが好ましい。空気流41の流速FGとレーザービームの照射スポット直径DとレーザービームLの繰り返し周波数fとの関係をこのように設定した場合においても、レーザービームLの照射で発生した気泡42による純水が除去された領域を、次のパルス状のレーザービームLが照射される前に加工領域から退出させることができる。
【0045】
本発明者の実験によると、レーザービームLの照射スポット直径Dを60μmとし、レーザービームLの繰り返し周波数fを30kHzとしたときに、空気流41の加工領域における平均流速FGを、上記の条件から外れる3.5m/sec以下とすると、デブリによる汚染の発生が確認される。このときの純水流31の平均流速は1.75m/secであり、純水流31の層厚は100μmであった。なお、このときには、加工領域周辺においてレーザー照射損傷は観測されていないことから、レーザービームLの照射により発生する気泡42の問題は解消されていることが確認できる。
【0046】
この発明に係るレーザー加工装置においては、レーザービームLの入射側に入射孔としてのスリット32が形成されるとともに、純水流31側にスリット33が形成された、その断面が略楕円状の管状部材からなる空気供給ノズル15を使用して、純水流31の表面に空気流41を供給している。このため、空気供給ノズル15におけるスリット33から噴出される空気流41における気流の乱れが抑制される。これにより、純水流31の表面の乱れを低減することができ、純水流31の表面におけるレーザービームLの光散乱が抑制されることから、微細加工を行うことができ、加工精度を向上させることが可能となる。
【0047】
また、このとき、空気供給ノズル15におけるレーザービームLの入射側のスリット32と当接する位置に、合成石英板16が配設されている。このため、スリット32から空気が噴出されることにより生ずる空気流41の気流の乱れが抑制される。これにより、気体供給ノズル15内で発生する空気流41の気流の乱れを低減することができ、純水流31の表面におけるレーザービームLの光散乱が抑制されることから、微細加工を行うことができ、加工精度を向上させることが可能となる。
【0048】
ただし、空気供給ノズル15におけるレーザービームLの入射側のスリット32にかえて、十分小さなレーザービーム通過孔を使用することにより、この合成石英板16を省略することも可能である。すなわち、このスリット32にかわるレーザービームLの通過孔として、例えば、その直径が1mm程度の円形の孔を使用した場合には、空気供給ノズル15内の空気の流速を保ったまま、気体供給ノズル15内で発生する空気流41の気流の乱れを低減することができ、純水流31の表面におけるレーザービームLの光散乱を抑制して、加工精度を向上させることが可能となる。
【0049】
なお、上述したレーザー加工装置によりレーザー加工を継続して実行した場合においては、純水流31に対して空気供給ノズル15から空気流41を供給したときに、純水による極めて小さな水滴が発生する。この水滴が合成石英板16や集光レンズ24に付着した場合には、この水滴によりレーザービームLが散乱し、レーザービームLによる加工形状が悪化するという問題を生ずる。
【0050】
このため、このレーザー加工装置においては、上述したように、純水流31から発生する水滴を、水滴吸引ノズル17により吸引除去する構成を採用している。この水滴吸引ノズル17は、純水流31の下流側に配設された円錐状の形状を有する。そして、この水滴吸引ノズル17は、その吸引力が例えば300l/secのロータリポンプと接続されている。このため、この水滴吸引ノズル17により、純水流31から発生する水滴を有効に吸引除去することが可能となる。
【0051】
上述した実施形態においては、液体として純水を使用しているが、この液体としてはレーザービームLに対して透明な液体であれば、純水以外を使用してもよい。例えば、この液体としてエタノールやメタノールを使用し、レーザー光源21としてQスイッチNd:YAG第二高周波を使用してSiウエハを加工した場合には、加工領域周辺での酸化を抑止する効果を期待することができる。
【0052】
また、上述した実施形態においては、気体として空気を使用しているが、窒素、酸素、アルゴン、ヘリウム等の他の気体を使用してもよい。
【符号の説明】
【0053】
1 シリコンウエハ
11 チャンバー
12 X−Y−θテーブル
14 純水供給ノズル
15 空気供給ノズル
16 合成石英板
17 水滴吸引ノズル
20 レーザービーム照射機構
21 レーザー光源
22 ビームエキスパンダ
23 ハーフミラー
24 集光レンズ
25 CCDカメラ
31 純水流
32 スリット
33 スリット
41 空気流


【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工対象物を支持する支持部材と、
前記支持部材に支持された加工対象物の表面に液体を供給する液体供給手段と、
前記加工対象物の表面に供給された液体の表面に気体を供給する気体供給手段と、
前記液体が供給された加工対象物に対してレーザービームを照射するレーザービーム照射手段と、
前記支持部材を前記レーザービーム照射手段に対して相対的に移動させる移動手段と、
を備えたことを特徴とするレーザー加工装置。
【請求項2】
請求項1に記載のレーザー加工装置において、
前記液体供給手段は、前記加工対象物の表面に層状の液体流を形成するものであり、
前記気体供給手段は、前記液体供給手段により形成された層状の液体流と同じ方向に気体を供給することにより、液体流の層厚を小さくするレーザー加工装置。
【請求項3】
請求項2に記載のレーザー加工装置において、
前記気体供給手段は、レーザービームの入射側にレーザービームの入射孔が形成されるとともに、層状の液体側に液体流の流れ方向を向くスリットが形成された管状部材を備えるレーザー加工装置。
【請求項4】
請求項3に記載のレーザー加工装置において、
前記気体供給手段における入射孔の上部に、レーザービームを透過させる透光性部材を配設したレーザー加工装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のレーザー加工装置において、
前記液体供給手段から供給された液体に対して前記気体供給手段から供給気体を供給することで生ずる水滴を吸引する水滴吸引手段を備えたレーザー加工装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のレーザー加工装置において、
前記レーザービーム照射手段から照射されるレーザービームはパルス状であって、
前記レーザービームの照射スポット径をD、前記レーザービームの繰り返し周波数をfとしたとき、前記液体の加工領域における平均流速がD×f以上であるレーザー加工装置。
【請求項7】
請求項6に記載のレーザー加工装置において、
前記気体供給手段から供給された気体の平均流速が2×D×f以上であるレーザー加工装置。
【請求項8】
請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のレーザー加工装置において、
前記加工対象物表面の加工領域における液体流の厚さが100μm以下であるレーザー加工装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−253521(P2010−253521A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−108073(P2009−108073)
【出願日】平成21年4月27日(2009.4.27)
【出願人】(504237050)独立行政法人国立高等専門学校機構 (656)
【出願人】(390000608)三星ダイヤモンド工業株式会社 (383)
【Fターム(参考)】