説明

レーザ装置

【課題】従来のレーザ装置では、レーザ導波管や、プローブの光学的不具合のために生じる、レーザ光出力の低下を検知するための手段を、検知容易で、かつ安価に構成することが困難であった。
【解決手段】装置本体操作部にロール状の感熱紙を収納する感熱紙収納部を備える。これにより、操作者は感熱紙にプローブ先端より出力されるレーザ光を試し出射し、感熱紙に黒く生じるレーザ照射痕の色具合により、プローブ先端より出力されるレーザ光のレベルが概略正常かどうかを即座に判断可能となる手段を、極めて安価に提供可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ光を患部に照射し、生体患部の切開、凝固、蒸散に供するレーザ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、レーザ装置はあらゆる分野で技術活用され発展しているが、特に、医療の分野でも日進月歩で応用化されその真価を発揮しつつある。
【0003】
従来の医療用レーザ装置の一例としては特許文献1で示すようにプローブ先端でのレーザ光出力を確認するために本体にパワーメータを備えたレーザ装置の技術が示されている。
【特許文献1】特開平5−212051号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来のレーザ装置では、本体に構成されるレーザ発振器、患者の患部にレーザ光を導光するレーザ導波管や、レーザ導波管の先端に設けられるプローブにおける光学的不具合のために生じる、レーザ光出力の低下を検知するための検知手段を提供する場合、本体装置に、プローブ先端におけるレーザ光出力を検知するための光パワーメータを設ける構成が一般的である。しかしながら、光パワーメータは、センサ部、プローブ先端をセンサ部に照射するためのガイド部、及び検知結果を表示する表示部等が必要であり、高価な備えとなる。一方、一般に、より頻繁に故障する箇所は、本体装置に内蔵されるレーザ発振器よりも、現場で交換可能なレーザ導波管や、プローブであり、繁忙な現場の操作者(医師)にとっては、治療に際し、「今」治療に供しているプローブ先端の出力が、ほぼ「正常レベルで出力されているか」どうかのみがわかり、治療の継続や、或いは、レーザ導波管や、プローブの交換が必要であるのかが、おおまかに即座に判断出来れば良く、装置が、その分高価となってまでも、正確な出力表示までは不要であるという実態があった。
【0005】
本発明は、従来の問題を解決するためになされたもので、操作者(医師)にプローブ先端のレーザ出力が「ほぼ正常レベルで出力されているか」を即座に、容易に確認する手段を、安全かつ、安価に提供することが可能なレーザ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記に記載される課題を解決するために本発明におけるレーザ装置は、レーザ発振器と、前記レーザ発振器から出力するレーザ光の出力を制御するレーザ制御部と、前記レーザ制御部によって制御されて出力するレーザ光を被検体の照射対象部位に導光するレーザ導波管とを有するレーザ装置であって、前記レーザ光を試射して前記レーザ光の出力状態を確認するための感熱紙を収納する感熱紙収納部を備えている。
【0007】
これにより、操作者は感熱紙にプローブ先端より出力されるレーザ光を試し出射(以下試射ともいう。)し、感熱紙に黒く生じるレーザ照射痕の色具合により、プローブ先端より出力されるレーザ光のレベルが概略正常かどうかを即座に判断可能となる。
【0008】
また、本発明におけるレーザ装置は、前記感熱紙収納部を操作盤面上でかつ操作者側に設置している。
【0009】
この構成により、操作者(医師)が治療中の状態であっても、容易に操作者の手元で試し出射が可能となる。
【0010】
また、本発明におけるレーザ装置は、前記感熱紙収納部の少なくとも前記レーザ光の試射領域において前記感熱紙装着位置の下部にレーザ貫通受け板を設けたことを特徴とする。
【0011】
この構成により、レーザ貫通受け板は、感熱(記録)紙に照射したレーザ光が、感熱(記録)紙を貫通した場合、本体操作部に傷害を与えないよう設置され、耐熱性のある素材で構成されている。
【0012】
また、本発明におけるレーザ装置は、前記感熱紙を前記試射領域にガイドする感熱紙ガイド部を設けた請求項1ないし3記載のレーザ装置。
【0013】
この構成により、操作者は、容易に感熱紙の未使用部位を、レーザ貫通受け板上の試射領域に配置できる。
【0014】
また、本発明におけるレーザ装置は、前記試射領域のレーザ貫通受け板に反射防止膜を施した請求項2ないし4に記載のレーザ装置。
【0015】
この構成により、試射されたレーザ光の反射を防止することで、レーザ光が反射し、装置周囲の操作者等が暴露することを防止することができる。
【0016】
また、本発明におけるレーザ装置は、前記レーザ貫通受け板に温度検出部を設け、前記レーザ制御部は前記温度検出部で検出した温度が規定値を超えた場合レーザ光出力を停止する請求項1から5のいずれかに記載のレーザ装置。
【0017】
この構成により、万一、レーザ貫通部の温度上昇が大きくなった場合にはレーザ制御部によりレーザ発振を停止する。これにより、レーザ貫通部の温度上昇による本体装置への障害や、レーザ光の不適切な連続照射を防止できる。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本発明は、本体操作部に、感熱紙収納部、レーザ貫通部、温度検出部、及び感熱紙ガイド部を備えることにより、操作者(医師)にプローブ先端のレーザ出力が「ほぼ正常レベルで出力されているか」を即座に、容易に確認する手段を、安全かつ、安価に提供することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図1から図3を用いて説明する。
【0020】
(実施の形態1)
本発明のレーザ装置の実施の形態1における全体図を図1に示す。
【0021】
本実施の形態におけるレーザ装置は、歯科診療所などに置かれる例を示し、歯科診療所では様々な機材を置く必要があることから占有面積を極力小さくすることが求められる。そこで本実施の形態におけるレーザ装置は、占有面積を小さくし、本体部3は胴長の形状をし、操作パネル部4は操作者が操作しやすい位置になるように胴長形状の本体の上部に覆うように設けられている。レーザ導波管5はレーザ制御部2で制御されて出力するレーザを被検体照射対象部位(患者患部)にまで導く。なおレーザ導波管5の先端に設けられたプローブ6で患者患部の部位や患部の状態治療目的等により取替え可能なようになっており、多種類のものが用意されている。
【0022】
また本体部3を支える底部7には床面との間にキャスタ8を備え、容易に床面を移動できるようにしている。
【0023】
また、製品の安全上フットスイッチ10が操作者により踏み込まれてオンになっている時のみレーザが出力される。
【0024】
さらに図2は本発明によるレーザ装置の実施の形態1における操作パネル部4を模式的に示す図で図2(a)は上方から見た平面図であり、図2(b)は図2(a)における破線Aにおける断面図であり、図2(c)は図2(b)においてロール状の感熱紙を収納した状態を同じく断面で示す図である。なお図2において、図1で示す本実施の形態と同一構成物については同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0025】
図2において感熱紙の収納部12は、ロール状の感熱紙15を収納する収納部であり、半円筒状に構成される。レーザ貫通受け板13は感熱紙16のレーザ光照射範囲に指定される箇所に構成される。レーザ貫通受け板13は、感熱紙15をレーザ光が貫通してしまった場合、レーザ光の想定外の他の部位の損傷、特に操作パネル部4への障害、及び反射防止のため、耐熱性のある金属製あるいはセラミック製の板などで構成され、かつ表面は熱を吸収、拡散しやすいように黒化処理がなされている。
【0026】
感熱紙ガイド部14は感熱紙16を、レーザ貫通受け板13に配置するためのガイドであり、図2(c)に示すように、ロール状の感熱紙16の一端が、感熱紙ガイド部14により、レーザ貫通受け板13の上を通過しつつ、操作パネル部4の外部に引き出される。
【0027】
図2(c)において、プローブ6の先端より出力されるレーザ光を操作者により、矢印で示す方向より、レーザ光照射範囲の感熱紙16に照射することにより、その感熱紙の色の変化(レーザ照射部は黒く変色する。また、強度の強い箇所程、黒く変色する)により、レーザ出力がほぼ適切であるかどうかを操作者は判断が可能となる。
【0028】
温度検出部15は、レーザ貫通受け板13に照射されたレーザ光によりレーザ貫通受け部13の温度が、規定値より上昇した場合は、レーザ発振を停止し、レーザ貫通受け部13の温度上昇による操作パネル部4の障害や、レーザ貫通受け板13に長時間レーザを照射する等、不適切な照射を防止する。
【0029】
なお、図2(b)で感熱紙ガイド14は、レーザ貫通受け板と平行な構成としたが、感熱紙のロール側を持ちあけ゛、傾斜した構成として、感熱紙の先頭をセットする場合、作業性をよくすることができる。また、感熱紙ガイド部14は、レーザ貫通受け板の前後2箇所に設置してもよい。こうすることで、感熱紙16がレーザ貫通受け板13から浮き上がるのを防止することができる。また、外形寸法的にレーザ貫通受け板13と同様として、中央に大きく窓を開け、周辺を数ミリ残した窓枠状としてもよい。このようにすることで、試射領域がより明確になる。
【0030】
さらに、感熱紙ガイド部14の先頭側の先端は、試射によって黒化した使用済みの感熱紙を切り取るために、エッジ部を設けてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明のレーザ装置は、プローブ先端のレーザ出力を容易に確認する手段を、安価に提供することができ、特に、医科、歯科用のレーザ装置などに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明のレーザ装置による実施の形態1における全体図
【図2】(a)本発明のレーザ装置による実施の形態1における操作パネル部4の平面図、(b)本発明のレーザ装置による実施の形態1における操作パネル部4(a)における破線A部の断面図、(c)(b)において感熱紙を収納した状態を示す断面図
【符号の説明】
【0033】
1 レーザ発振装置
2 レーザ制御部
3 本体部
4 操作パネル部
5 レーザ導波管
6 プローブ
7 底部
8 キャスタ
9 電池
10 フットスイッチ
11 取っ手
12 感熱紙収納部
13 レーザ貫通部
14 感熱紙ガイド部
15 温度検出部
16 感熱紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ発振器と、前記レーザ発振器から出力するレーザ光の出力を制御するレーザ制御部と、前記レーザ制御部によって制御されて出力するレーザ光を被検体の照射対象部位に導光するレーザ導波管とを有するレーザ装置であって、前記レーザ光を試射して前記レーザ光の出力状態を確認するための感熱紙を収納する感熱紙収納部を有することを特徴とするレーザ装置。
【請求項2】
前記感熱紙収納部を操作盤面上に設置した請求項1記載のレーザ装置。
【請求項3】
前記感熱紙収納部の少なくとも前記レーザ光の試射領域において前記感熱紙装着位置の下部にレーザ貫通受け板を設けたことを特徴とする請求項1記載のレーザ装置。
【請求項4】
前記感熱紙を前記試射領域にガイドする感熱紙ガイド部を設けた請求項1ないし3記載のレーザ装置。
【請求項5】
前記レーザ貫通受け板が反射防止膜を有することを特徴とする請求項2ないし4に記載のレーザ装置。
【請求項6】
前記レーザ貫通受け板に温度検出部を設け、前記レーザ制御部は前記温度検出部で検出した温度が規定値を超えた場合レーザ光出力を停止する請求項1から5のいずれかに記載のレーザ装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2007−103563(P2007−103563A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−289806(P2005−289806)
【出願日】平成17年10月3日(2005.10.3)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】