説明

レーザ露光装置および方法

【課題】フォーカスアクチュエータ駆動部の質量を削減して、追従性を向上させたレーザ露光装置を提供する。
【解決手段】コリメートされたレーザ光Lを、偏光ビームスプリッタ120,1/4波長板121を経て、集光レンズ122により、光軸方向に移動可能な反射基板123上に集光させる。反射基板123からの反射光を再び集光レンズ122を通して、再度、コリメート光にした後、固定されている対物レンズ110に入射させる。フォーカスずれ情報に基づいて反射基板123を光軸方向に移動制御することによりフォーカシングを行う。このようにして、質量の大きな対物レンズ110の代わりに質量の小さな反射基板123を駆動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CD,DVDやBD(ブルーレイディスク)などの光ディスクの原盤作成用の露光装置、あるいはナノインプリント技術を用いた露光装置などに適用されるレーザ露光装置および方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光ディスクの製造においては、原盤からスタンパーを作成し、このスタンパーを使用して射出成形により複製が行われ、光ディスクが製造される。
【0003】
この原盤を作成するために用いられる光ディスク原盤作成用の露光装置は、光源から放射されたコヒーレントなビームに対して変調および偏向を施し、対物レンズを介して記録光を光ディスク原盤に照射する光学系を用いて情報を記録する構成になっている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
図9は一般的な原盤露光装置の概略構成図である。
【0005】
図9において、レーザ光源部101から発生したレーザ光Lは、ビーム変調部102,ビーム偏向部103,ビーム整形部104を通り、平行光(コリメート光)に整形される。その後、レーザ光Lは、ミラー105,ハーフミラー106で反射され、ハーフミラー108を通って、ダイクロイックミラー109からアクチュエータ110aにより駆動される対物レンズ110を経て、ガラスの原盤111に集光される。
【0006】
原盤111から反射されたレーザ光Lは、前述とは逆方向に進み、一部がハーフミラー106を透過した後、ビームモニター系107に入射する。ビームモニター系107においてレーザ光Lは、凸レンズ107aを透過し、ディテクタ107b上に集光される。
【0007】
なお、凸レンズ107aとディテクタ107bは、対物レンズ110によりレーザ光Lが対物レンズ110のフォーカス点に集光される位置関係に、あらかじめ調整されている。
【0008】
すなわち、ディテクタ107b上で集光ビームが最小になるときに、対物レンズ110を透過したレーザ光Lもジャストフォーカスとなり、このような状態を保持しながら露光を行うことにより、所望のピット幅,長さおよび連続溝幅を満足する光ディスク用原盤を得ることができる。
【0009】
ジャストフォーカス状態を保持するためには、一般的には、図9に示す補助フォーカスサーボ光学系117を用いる。この補助フォーカスサーボ光学系117を用いる場合は、補助フォーカスサーボ光学系117から出射したレーザ光はミラー116によりダイクロイックミラー109と対物レンズ110を透過した後、原盤111に入射する。原盤111の表面で反射した反射光は、再び、対物レンズ110とダイクロイックミラー109を透過し、ミラー116で反射して補助フォーカスサーボ光学系117に入射することにより、フォーカスサーボ検知が可能となる。
【0010】
近年、光ディスクに関する技術は、BD(ブルーレイディスク)のような高精度化に加えて、高品質化が要求されている。これに伴い、原盤記録装置に関しても、スピンドル,スライダーなどの構成部材の高精度化や、その制御性能を向上させることが要求され、さらにフォーカスサーボに関しても高精度化と高追従性が必要となっている。
【0011】
また原盤記録の生産性を考えると、従来のCD,DVDなどにおいて記録速度が2倍速,3倍速と進展していったように、ますます記録速度の高速化が要求されており、従来にも増して高周波数への追従性が必要である。
【0012】
これまでの原盤記録装置では、図10に示すように、対物レンズ110を極力小さなハウジング140に収め、一方では、このハウジング140を静圧で保持して上下方向のガイドとし、また他方では、このハウジング140にボイスコイルを取り付けて駆動させる方式を用いていた。つまり、対物レンズ110自体を動かす構成を採用しており、この方法で高追従性を保つために、極力、動作部分が軽くなるような構造としていた。
【0013】
また、フォーカスサーボの高性能化を図るため、補助レーザ光のみならず、原盤111から反射した記録光を、直接、フォーカスサーボに用いる方法も一般的になりつつある。たとえば、原盤111からの反射光の一部を、図9に示すハーフミラー108を用いて分岐し、ミラー112を介して記録ビームフォーカスサーボ系113に入射させることにより、より精密なフォーカスサーボを実現する方法が提案されている。
【0014】
また、露光装置の小型化に関しては、図9における光源101に半導体レーザを用いることにより、ビーム変調部102とビーム整形部104を省略することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2000−48412号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
光ディスク作成において原盤に要求される精度は厳しく、特にハイビジョン用のブルーレイディスクなどにおいては、より細かく精度の高いレーザ露光が要求される。細かくかつ精度の高い露光のためには、レーザ露光装置内の各部に対して高い精度が要求される。その中でも大切なのはレーザ露光装置におけるレーザ光の特性である。
【0017】
しかしながら、一方では原盤記録の高精度化に伴い、最終的にレーザ光の特性に影響を与える対物レンズは、絞りを優先させるため大口径及び高開口数(NA)化が必要となり、重量の増加が避けられない問題となってきた。
【0018】
またそのことが、高い追従性が必要である記録速度の高速化、すなわち、高回転による露光の妨げになっている。さらに、対物レンズの小口径化、あるいは軽量の対物レンズの実現には、多大なコストがかかるという問題がある。
【0019】
また、レーザ品質の優れた青色半導体レーザの実用化により、レーザ光のパワーコントロールおよびオン/オフ変調に関しては、露光装置の光学系内部から電気光学変調素子(EO変調素子)、音響光学変調素子(AO変調素子)を省略することは実現できたが、主として記録型のメディアに採用されているウオブリング(wobbling)、すなわち、レーザ偏向素子を使用するレーザ光の光軸に対する垂直方向への角度制御に関しては、従来通り露光装置内部に偏向素子を設ける必要があり、このことも装置内部の光学系の小型化や軽量化を阻害する原因となっている。
【0020】
本発明は、前記従来の技術の課題を解消し、フォーカスアクチュエータ駆動部の質量を軽減して、追従性を向上させることを可能にしたレーザ露光装置および方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記課題を解決するために、本発明のレーザ露光装置は、レーザ光を出射するレーザ光源部と、前記レーザ光を対象物に対して集光させる対物レンズとを備えたレーザ露光装置において、前記レーザ光の光軸上に設置された反射部材と、前記レーザ光を前記反射部材上に集光させる集光レンズと、前記対象物に対するレーザ光のフォーカスずれ情報に基づいて前記反射部材を前記光軸方向へ移動させる移動手段と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、フォーカスアクチュエータ駆動部の質量を軽減して、レーザ光のフォーカスの追従性が飛躍的に向上させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施の形態1の対物レンズ部分の光学系の構成を示す斜視図
【図2】本発明の実施の形態2の対物レンズ部分の光学系の構成を示す斜視図
【図3】本発明の実施の形態3の対物レンズ部分の光学系の構成を示す斜視図
【図4】本発明の実施の形態における光ディスクマスタリング工程の概略説明図
【図5】本発明の実施の形態の装置全体の概略構成図
【図6】本発明の実施の形態における記録ビームフォーカスサーボ系の詳細を示す説明図
【図7】本発明の実施の形態において偏光ビームスプリッタを透過し反射する各状態のレーザ光を模式的に表わした説明図
【図8】本発明の実施の形態の静圧軸受を利用した基板移動手段の構成を示す断面図
【図9】従来の一般的な原盤露光装置の概略構成図
【図10】従来の原盤露光装置における対物レンズ部分の光学系の構成を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。
【0025】
(実施の形態1)
まず、本発明のレーザ露光装置における光ディスクマスタリング工程の概略について、図4のマスタリングプロセスの説明図に基づいて説明する。
【0026】
先ず、ガラス板を研磨して光ディスクマスタリング用の原盤を形成する(工程a)。光ディスクマスタリング用原盤の材質としては、青板ガラス(ソーダライムガラス),石英ガラスあるいはSi基板などが用いられる。
【0027】
次に、原盤上にスピンコートにより有機系の材料からなるフォトレジストを形成するか、スパッタリング法により無機系の記録材料を形成する(工程b)。なお、フォトレジストあるいは記録材料の厚みは、CD,DVD,BDなどのフォーマットおよび/または同ディスクにおいて使用される反射膜あるいは記録材料によって異なるが、10〜300nm程度である。
【0028】
次に、原盤上に光記録装置からのレーザにより信号ピットおよび/または案内溝を描画して記録する(工程c)。その後、アルカリ現像液により露光部を現像する(工程d)ことにより、露光された部分のみが溶出し、所望のピット形状としての凹凸パターンおよび/または溝が形成される。
【0029】
続いて、スパッタリングあるいは無電解工法により前記露光された原盤表面に導電膜を形成し(工程e)、ニッケル電鋳を行う(工程f)ことにより光ディスクマスタリング用のスタンパーが製造される。
【0030】
なお、工程bにおいて原盤上にスパッタリング法により無機系の記録材料が形成された場合には、工程eの導電膜形成工程は省略される場合もある。
【0031】
上記のように製造されたマスタースタンパーのマザーリング、すなわち、スタンパーに対してニッケル電鋳を2回行う(工程gおよび工程h)ことにより、光ディスク射出成形用のスタンパーが完成する。なお、工程gおよび工程hは省略されることもある。
【0032】
図5は本発明のレーザ露光装置の実施の形態としての光ディスク原盤露光装置全体の概略構成図である。
【0033】
図5において、レーザ光源部101から出射したレーザ光Lは、ビーム変調部102を経てビーム偏向部103に対して光軸に対し垂直な左右あるいは上下方向に周波数偏向して出力される。ビーム偏向部103を出射したレーザ光Lは、ビーム整形部104において適当な大きさの平行光(コリメート光)に整形され、ミラー105,106で反射し、ハーフミラー108を透過してダイクロイックミラー109で反射した後、固定されている対物レンズ110に入射する。
【0034】
対物レンズ110に入射した光は、原盤111上に集光されて、原盤111上に形成されたレジスト層111aに照射される。このとき対物レンズ110を介して原盤111上に照射されるレーザ光Lは、原盤111上で焦点を結び、レジスト層111aが有機レジスト層の場合にはフォトリソグラフィー方式により、またレジスト層111aが無機レジスト層の場合には熱記録方式により露光が施される。
【0035】
なお、レーザ光源部101から出射される記録用のレーザ光Lとしては、その波長がフォトリソグラフィー方式の場合には有機レジスト層が感光する波長、また熱記録方式の場合には無機レジスト層に十分な熱エネルギーを与える波長、例えば375nmあるいは405nmのものが用いられる。
【0036】
この構成においてビーム偏向部103とビーム整形部104は省略されることもある。
【0037】
次に、原盤111から反射したレーザ光Lは、再び対物レンズ110を通過し、ダイクロイックミラー109で反射し、ハーフミラー108とミラー106を透過した後、ビームモニター系107に入射する。レーザ光Lは、ビームモニター系107において、凸レンズ107aを透過し、ディテクタ107b上に集光される。
【0038】
ビームモニター系107の凸レンズ107aとディテクタ107bは、対物レンズ110により、レーザ光Lが対物レンズ110のフォーカス点に集光される位置関係に、あらかじめ調整されている。
【0039】
すなわち、ディテクタ107b上で集光したレーザ光のスポットが最小になるときに、対物レンズ110を透過したレーザ光Lもジャストフォーカスとなる。このような状態を保持しながら露光を行うことにより、所望のピット幅、長さおよび/または連続溝幅を満足する光ディスク用原盤を得ることができる。
【0040】
本実施の形態では、高性能なフォーカスサーボを実現するために、原盤111からのレーザ光Lの反射光を、ダイクロイックミラー109を透過させて後述するように反射基板123へ入射させ、ハーフミラー108を用い分岐し、ミラー112を介し記録ビームフォーカスサーボ系113に入射させる光学系を用いている。
【0041】
図1は本発明の実施の形態1における光ディスク原盤露光装置の対物レンズ部分の光学系の構成を示す斜視図である。
【0042】
図1において、偏光ビームスプリッタ120に平行(コリメート)なレーザ光Lが入射して横偏光される。そしてレーザ光Lは、偏光ビームスプリッタ120で反射して1/4波長板121を透過し、さらに集光レンズ122を透過して集光される。この集光位置に光軸方向に移動可能な反射部材である反射基板123を設置する。ここれ、集光レンズ122の開口数が対物レンズ110の開口数と同じであると、制御条件が簡単になり、制御が容易になる。
【0043】
反射基板123上に集光レンズ122の焦点を設けることにより、集光されたレーザ光Lは、反射基板123で反射されて前記と同じ光軸上を逆に進み、再び集光レンズ122を透過することによって平行光になり、1/4波長板121を透過する。ここで、1/4波長板121を2回通ることにより、レーザ光Lは横偏光から縦偏光に変わる。このため、偏光ビームスプリッタ120に再入射したレーザ光Lは、偏光ビームスプリッタ120を透過して、固定された対物レンズ110の方向へと進み、対物レンズ110を透過して対物レンズ110の焦点に集光される。
【0044】
対物レンズ110の焦点位置は、原盤111の表面に位置するように、あらかじめフォーカス設定しておく。すなわち、平行なレーザ光Lを入射したときに、反射基板123の面上と原盤111の面上とに、光学上共に焦点を結ぶようにフォーカスサーボを構成する。
【0045】
ここで仮に、原盤111の表面に凹凸があり、対物レンズ110によって集光される点が、原盤111の回転などによって、原盤111よりも対物レンズ110側に変位したとする。このとき、原盤111からのレーザ光Lの反射光は、再度、対物レンズ110を通っても平行光にはならずに集束光となって、偏光ビームスプリッタ120に入射される。この入射光は、戻り光としてこれまでの光路とは反対方向に進み、集光レンズ122によって反射基板123の表面よりも集光レンズ122側に焦点を結ぶ。
【0046】
さらに、反射基板123により反射された光は、再度、集光レンズ122を通って集束光となった上で、1/4波長板121を2回通ることにより、今度は、偏光ビームスプリッタ120を透過する。すなわち、このレーザ光Lは集束光となったままで入射された光路を逆に進む。
【0047】
図1において、原盤111から反射されて戻ってくるレーザ光Lは、偏光ビームスプリッタ120を透過した光の一部が図5のハーフミラー108により反射され、記録ビームフォーカスサーボ系113に入射する。
【0048】
図6は図5における記録ビームフォーカスサーボ系113の詳細を示す説明図である。
【0049】
図5,図6において、記録ビームフォーカスサーボ系113に入射したレーザ光Lは、非点収差光学系を構成する集光レンズ113a,シリンドリカルレンズ113b,4分割ディテクタ113cへと導かれる。
【0050】
本実施の形態では、以下のように設定しておく。記録ビームフォーカスサーボ系113へ入射するレーザ光Lがコリメート光の場合は、図6(b)の113c−1に示すように、4分割ディテクタ113c上に円形のスポットが形成されるように設定する。また、記録ビームフォーカスサーボ系113へ入射するレーザ光Lが発散光の場合は、図6(b)の113c−2に示すように、4分割ディテクタ113c上にシリンドリカルレンズ113bの軸方向に長いスポットが形成されるように設定する。また、記録ビームフォーカスサーボ系113へ入射するレーザ光Lが集束光の場合は、図6(b)の113c−3に示すように、4分割ディテクタ113c上にシリンドリカルレンズ113bの軸に対して垂直な方向に長いスポットが形成されるように設定する。
【0051】
本実施の形態では、図6(a)に示すように、4分割ディテクタ113cの各受光部分a,b,c,cに受光される光量をa,b,c,dとして、 S={(a+c)−(b−d)}/(a+b+c+d) のSの値に応じて、図1における反射基板123の位置を制御するようなフィードバック制御機構114を設けている。
【0052】
図7は偏光ビームスプリッタを透過し反射する各状態におけるレーザ光を模式的に表わした説明図であって、図7(a)は偏光ビームスプリッタ部分におけるレーザ光の光軸を示し、図7(b)は記録ビームフォーカスサーボ系における水平方向のレーザ光の光軸を示し、図7(c)は記録ビームフォーカスサーボ系における垂直方向のレーザ光の光軸を示している。
【0053】
図7において、レーザ光Lが、コリメート光である場合をL1、集束光である場合をL2、発散光である場合をL3として示している。
【0054】
例えば、レーザ光Lが集束光L2である場合には、図7(b),(c)の113c−3の位置で、集光レンズ113aとシリンドリカルレンズ113bとが焦点を結んでしまうため、4分割ディテクタ113c上のレーザビーム形状は、図6(b)に示すように、シリンドリカルレンズ113bの軸と垂直な方向の長いスポットとなる。
【0055】
ここで、フィードバック制御機構114により、前記Sの値に応じて図1における反射基板123の位置を基板移動手段(後述する)により制御する。この場合、Sが負であるので、反射基板123を集光レンズ110に近づく方向に移動させる。
【0056】
反射基板123が集光レンズ110の方向に移動すると、偏光ビームスプリッタ120に入射する光は、平行光から発散光へと変化して偏光ビームスプリッタ120を反射し、対物レンズ110に入射するレーザ光Lも平行光から発散光へと変化する。したがって、回転する原盤111の表面における凹凸の影響により、対物レンズ110側にもともとずれていた焦点は、原盤111の方向に移動することになる。
【0057】
一方、原盤111の凹凸の影響により、原盤111よりも遠い位置に焦点があるような場合では、原盤111から反射され対物レンズ110を透過したレーザ光Lは発散光L3となり、偏光ビームスプリッタ120および集光レンズ122へと導かれて、反射基板123よりもさらに遠くの位置に焦点を結ぶように絞られる。反射基板123からの反射光が集光レンズ122を透過した後は、これも同様に発散光となる。すなわち、原盤111からの反射光は最終的に発散光となって、ハーフミラー108で反射される。
【0058】
この場合、4分割ディテクタ113c上に形成されるスポットは、図6(b)に示す113c−2の4分割ディテクタ113c上にシリンドリカルレンズ113bの軸と平行な方向に長いスポットが形成される。
【0059】
図7において、113c−2の位置で集光レンズ113aとシリンドリカルレンズ113bが焦点を結んでしまうため、4分割ディテクタ113c上のスポット形状は、シリンドリカルレンズ113bの軸と平行な方向の長いスポットとなる。
【0060】
このとき、前述と同様に S={(a+c)−(b−d)}/(a+b+c+d) を算出すると、Sの値は正となる。よって、この場合には、図1における反射基板123の位置を制御すると、反射基板123は、前記とは逆に集光レンズ110から遠ざかる方向に移動することになる。
【0061】
反射基板123が集光レンズ110から遠ざかると、反射基板123からの反射光が、集光レンズ122を再度透過したときには、これまでの平行光から集束光へと変化し、偏光ビームスプリッタ120で反射して、対物レンズ110に入射するレーザ光Lも平行光から集束光へと変化する。したがって、原盤111の表面よりも遠いところにあった焦点は、対物レンズ110の方向に移動することになる。
【0062】
このように、前記Sの値を用いて反射基板123を位置決めすることにより、対物レンズ110を固定したままでも、原盤111に常に焦点を形成することが可能となる。
【0063】
反射基板123を駆動させる基板移動手段としては、静圧軸受を利用したもの、あるいは圧電素子を用いたもの、あるいは、これらを組み合わせたものが考えられる。
【0064】
図8は本実施の形態における静圧軸受を利用した基板移動手段の構成を示す断面図である。
【0065】
図8において、基板移動手段130において、反射基板123はシャフト131に精度良く固定されており、静圧型軸受132とシャフト131とが直動方向のガイドを構成している。さらに、シャフト131に巻回されたコイル133に電流を流すことによって、シャフト131に磁力を与え、永久磁石134に対して作用を生起することにより、シャフト131を上下駆動させる。これにより反射基板123を光軸方向に移動させることができる。
【0066】
ここで、従来の露光装置では、対物レンズ(旧トロペル社(現コーニング社)製、スーパーレンズ)の仕様が約直径16.4mm×25mm、重量が20gであり、このレンズを収納するハウジングの質量が25g、またボイスコイルおよびレンズ固定部材が5gであったため、最小合計50gが限界であった。しかし、本実施の形態における駆動部分では、具体的には平面ミラーが直径4mm×3mm、シャフトが直径3mm×12mmとすることができ、可動部分の重量は少なくとも2g以下とすることが可能である。そのため、従来に比べて1/25の重量が達成し、周波数特性としては、従来の5倍の周波数領域まで追従性を上げることが可能となる。
【0067】
また、集光レンズ122のレンズの絞り、すなわち、NA値を対物レンズ110と同様にした場合、対物レンズ110と集光レンズ122との焦点深度が等しくなり、両者の焦点深度に起因する焦点位置偏差をキャンセルすることができる。
【0068】
(実施の形態2)
図2は本発明の実施の形態2における光ディスク原盤露光装置の対物レンズ部分の光学系の構成を示す斜視図である。なお、以下の説明において、前述の実施の形態1にて説明した部材に対応する部材には同一符号を付して詳しい説明は省略する。
【0069】
図2において、偏光ビームスプリッタ120に入射した平行なレーザ光Lは、横偏光される。そしてレーザ光Lは、偏光ビームスプリッタ120で反射して1/4波長板121を透過し、さらに集光レンズ122を透過して集光される。この集光位置に光軸方向に移動可能な反射部材である反射基板123を設置する。
【0070】
反射基板123上に集光レンズ122の焦点を設定することにより、集光されたレーザ光Lは、反射基板123で反射されて前記と同じ光軸上を逆に進み、再び集光レンズ122を透過することによって平行光になり、1/4波長板121を透過する。ここで、1/4波長板121を2回通ることにより、レーザ光Lは横偏光から縦偏光に変わる。このため偏光ビームスプリッタ120に再入射したレーザ光Lは、偏光ビームスプリッタ120を透過して、固定された対物レンズ110の方向へと進み、1/4波長板(第2の1/4波長板)124および対物レンズ110を透過して対物レンズ110の焦点に集光される。
【0071】
光学系は、対物レンズ110の焦点位置が原盤111の表面に位置するように、あらかじめフォーカス設定しておく。すなわち、平行なレーザ光Lを入射したときに、反射基板123の面上と原盤111の面上とに、光学上共に焦点を結ぶようにフォーカスサーボを構成する。
【0072】
実施の形態2では、原盤111から反射されて戻るレーザ光Lは、再び対物レンズ110を通り、さらに1/4波長板124を通る。すなわち、本実施の形態2では、1/4波長板124を2回通過する構成になっている。1/4波長板124を2回通ることにより、レーザ光Lは、再び縦偏向から横偏向に変わり、偏向ビームスプリッタ120に再入射して反射し、フォーカスサーボ光学系125に入射する。このフォーカスサーボ光学系125の内部には、図5〜図7にて説明した記録ビームフォーカスサーボ系113と同様な構成の光学系が設けられており、前記と同様にフォーカス制御が行われる。
【0073】
(実施の形態3)
図3は本発明の実施の形態3における光ディスク原盤露光装置の対物レンズ部分の光学系の構成を示す斜視図である。
【0074】
図3において、偏光ビームスプリッタ120に入射した平行なレーザ光Lは、横偏光される。そしてレーザ光Lは、偏光ビームスプリッタ120で反射して1/4波長板121を透過し、さらに集光レンズ122を透過して集光される。この集光位置に光軸方向に移動可能な反射部材である反射基板123を設置する。
【0075】
実施の形態3では、集光レンズ122と反射基板123との間に角度調整手段であるレーザビーム角度調整デバイス126を配設し、デバイスコントローラ127によりレーザビーム角度調整デバイス126を駆動して光軸の角度を調整している。集光レンズ122を通過したレーザ光Lは、レーザビーム角度調整デバイス126を通過した後に集光され、反射基板123で反射され、これまでと同じ光軸上を逆に進み、再びレーザビーム角度調整デバイス126、集光レンズ122を通ることによって平行光になる。
【0076】
レーザビーム角度調整デバイス126を2回通過することにより、集光レンズ122を出射した後のレーザ光Lは、集光レンズ122に入射して光軸に対して角度を有したまま、さらに1/4波長板121を透過することになる。
【0077】
1/4波長板121を2回通ることにより、レーザ光Lは、横偏光から縦偏光に変わり、偏光ビームスプリッタ120に再入射して透過し、固定された対物レンズ110を通って対物レンズ110の焦点に集光される。ここで対物レンズ110の原盤111の表面に対するフォーカシングは、前記と同様に反射基板123を光軸方向に変位させることにより制御する。
【0078】
実施の形態3において、対物レンズ110に入射するレーザ光Lは、光軸に対して角度を有している。よって、レーザ光Lは、対物レンズ110を通過した後も角度を持って原盤111の表面上を照射するため、露光の位置が微小変化する。この角度変位の方向を原盤面の半径方向にすることにより、原盤111の表面の半径方向における露光位置を変化させることが可能となるため、ウオブリングなどの変調を行うことができる。
【0079】
レーザビーム角度調整デバイス126として、薄膜型の電気光学偏向素子(EO偏向素子)を用い、該レーザビーム角度調整デバイス126にレーザ光Lを2回通過させることにより、偏向角度量を増大させることが可能となる。
【0080】
以上のように、本実施の形態によれば、平行にされたレーザ光Lを、一旦、集光レンズ122で光軸方向に可動な反射基板123上に絞り、反射されたレーザ光Lを、再度、集光レンズ122に通して再び平行光にした後、固定された対物レンズ110に入射させる構成にしている。これにより、質量の大きい対物レンズ110の代わりに、質量の小さい反射基板123のみを光軸方向に移動させるため高追従性が可能となる。また、対物レンズ110の質量を考慮する必要がなくなる。
【0081】
また、集光レンズ122と対物レンズ110の間にフォーカスサーボ系を構成することにより、露光装置内部に同光学系を設けることなく、精密なフォーカスサーボが可能となる。
【0082】
さらに、反射基板123あるいはその一部に、レーザ光Lの光軸と垂直方向の角度を調整する機構であるレーザビーム角度調整デバイス126を設けることにより、露光装置の光学系内部に偏向素子を用いることなく、レーザ光Lの角度制御が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明は、フォーカスアクチュエータ駆動部の質量を削減でき、このために追従性を大幅に向上させることができる。また、フォーカスサーボ系および偏向素子を、アクチュエータヘッド部分に集約することができて、露光装置光学系内部から省略することができる。よって、装置を小型化することができることから、光ディスクマスタリングやナノレーザ加工などの用途にも適用可能である。
【符号の説明】
【0084】
101 レーザ光源部
102 ビーム変調部
103 ビーム偏向部
104 ビーム整形部
107 ビームモニター系
107a 凸レンズ
107b ディテクタ
108 ハーフミラー
109 ダイクロイックミラー
110 対物レンズ
111 原盤
112 ミラー
111a レジスト層
113 記録ビームフォーカスサーボ系
113a 集光レンズ
113b シリンドリカルレンズ
113c 4分割ディテクタ
114 フィードバック制御機構
120 偏光ビームスプリッタ
121 1/4波長板
122 集光レンズ
123 反射基板
124 1/4波長板
125 フォーカスサーボ光学系
126 レーザビーム角度調整デバイス
127 デバイスコントローラ
130 基板移動手段
131 シャフト
132 静圧型軸受
133 コイル
134 永久磁石
L レーザ光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を出射するレーザ光源部と、前記レーザ光を対象物に対して集光させる対物レンズとを備えたレーザ露光装置において、
前記レーザ光の光軸上に設置された反射部材と、
前記レーザ光を前記反射部材上に集光させる集光レンズと、
前記対象物に対するレーザ光のフォーカスずれ情報に基づいて前記反射部材を前記光軸方向へ移動させる移動手段と、を備えたこと
を特徴とするレーザ露光装置。
【請求項2】
前記集光レンズと前記対物レンズとの開口数が同じであること
を特徴とする請求項1に記載のレーザ露光装置。
【請求項3】
前記レーザ光源部からのレーザ光の光軸上に配置された偏光ビームスプリッタと、
前記光軸上において、前記偏光ビームスプリッタと前記集光レンズとの間に配置された1/4波長板と、を備えたこと
を特徴とする請求項1または2に記載のレーザ露光装置。
【請求項4】
前記レーザ光の光軸上において、前記偏向ビームスプリッタと前記対物レンズとの間に配置された第2の1/4波長板を備えたこと
を特徴とする請求項3に記載のレーザ露光装置。
【請求項5】
前記レーザ光の光軸上において、前記反射部材と前記集光レンズ間に配置され、前記レーザ光の光軸の角度を調整する角度調整手段と、を備えたこと
を特徴とする請求項3に記載のレーザ露光装置。
【請求項6】
前記角度調整手段として電気光学偏向素子を設置したこと
を特徴とする請求項5に記載のレーザ露光装置。
【請求項7】
前記対象物がディスク原盤であること
を特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載のレーザ露光装置。
【請求項8】
前記請求項1から7のいずれか1項に記載のレーザ露光装置を用いて、前記対象物の露光を行うこと
を特徴とするレーザ露光方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−3815(P2012−3815A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−139180(P2010−139180)
【出願日】平成22年6月18日(2010.6.18)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】