説明

ロボットにおける対話相手識別方法およびロボット

【課題】安価に、かつ信頼性高く、対話相手(人またはロボット)の識別、方向判別を可能とし、対話相手に応じた対話/サービスの提供を可能とすること。
【解決手段】対話ロボット10の身体(例えば胴回り)に、複数方向に向けて配置した赤外線発受信ユニット11を設け、ユーザ(人間)20はユーザの識別信号を発信する赤外線発受信ユニット21を装着する。ロボット10は、上記赤外線発受信ユニットの、どの受信器によって相手からの赤外線が受信されたかによって、対応する相手が自分からみてどちら方向にいるかを知り、また、受信した識別信号を解読することによって、対応する相手が誰かを知る。そして、ロボット10は、その顔部(頭部)あるいは身体の向きを検出されたユーザ方向に向け、識別した相手に応じた対話/サービス内容を選択し、上記相手に対して言語・非言語に基づく対話/サービスを行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザと音声、ジェスチャ、スキンシップなどで、インタラクション、コミュニケーションを行い、ユーザに対して各種サービスを行う対話ロボットを対象とし、さらに詳細には、このようなロボットにおける対話相手の識別方法及び対話相手識別機能を備えたロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、産業用ロボットが主流であったが、最近では、人間生活に入り込む、人間共棲型のロボットの研究開発が盛んである。このようなロボットは、家庭で家族と対話したり各種サービスを行い、また、オフィスや商店街などで、ユーザと対話したりユーザに対して、各種サービスを行う。上記サービスとしては例えば家庭内においては、介護、見守り、見回りや、機器の操作、物の搬送、掃除などの各種作業が含まれ、また、オフィスなどでは、接客、案内等のサービスが含まれる。
そのようなロボットでは、意思疎通のために、ユーザとなる人間との言語的、非言語的対話が不可欠となる。ロボットがユーザと対話を行う時、ユーザが誰なのかを知ることによって、そのユーザに対して適切なサービスを提供することができる。
ロボットにおけるユーザの識別方法としては、従来から、ユーザの顔画像を画像処理して、相手を識別する方式がある。しかし、この方法は、環境の明暗、表情の多様性などによって、その識別精度は低く、場合によっては顔部分の抽出すら難しく、信頼性の低いものであった。
【0003】
そこで、ユーザにユーザIDなどの記録した赤外線LEDタグやRFIDタグを所持させ、また、ロボットに無線タグ読取装置と赤外線カメラを設け、ユーザを識別するものが提案されている。
例えば特許文献1には、組織内の複数の構成員に無線タグ及び赤外線タグを装着させ、構成員が所定の領域内に近づくと、上記無線タグ読取装置と赤外線カメラによって識別情報を取得して、所定領域における行動の履歴として記録し、これに基づき構成員間の関係を把握する関係検知システムが記載されている。
また、特許文献2には、ユーザにRFIDを所持させ、ロボットは、RFIDの情報を取得して、最近傍に存在するユーザを特定し、当該ユーザに対してコミュニケーション行動を取るようにしたコミュニケーションロボットが記載されている。
さらに、特許文献3には、ユーザのID送信装置にユーザIDを書き込み、接客ロボットは来訪者が携帯するID送信装置からの情報に基づき、来訪者を判別して、それに応じたアクションを実行するようにした接客ロボットが記載されている。
【特許文献1】特開2005−131748号公報
【特許文献2】特開2004−216513号公報
【特許文献3】特開2005−022029号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ロボットがユーザと対話を行う時、ユーザが誰なのかを知ることによって、そのユーザに対して適切なサービスを提供できる。従来、ユーザの顔画像を画像処理して、相手を識別する方式があるが、環境の明暗、表情の多様性などによって、その識別精度は低く、場合によっては顔部分の抽出すら難しい、信頼性の低いものだった。
相手の識別のために、前記特許文献1−3に開示されるように、RFIDタグをユーザに持たせる方法が考えられるが、一般に近くに存在するRFIDの識別は可能なものの、自分からみてどこに存在するかという位置、方向識別については、きわめて分解能が粗い計測しかできず、ロボットとユーザが対面するような近接場面では一般に実用にならない。すなわち、RFIDタグの場合は、電波の強さなどに基づきユーザとのおおよその距離は把握できるものの、ユーザの方向を識別することは難しく、このため例えば、ユーザの方向にロボットの顔などを向けて応答するような場面に適用するのは難しい。
例えばユーザが2人で、ロボットが、それぞれの人に応じた対応をすることが必要な場合には、各ユーザの方向を識別し、各ユーザの方向に顔などを向けてそれぞれのユーザに対応しなければならないが、RFIDタグでユーザを識別する場合には、このような対応は極めて難しい。
【0005】
そのほか、ユーザの発声による音声の方向検出によって、相手の方向を識別する方法も考えられるが、その音声成分から、相手を識別することは困難である。
以上のように、従来においては、信頼性が高く、安価で、相手の識別と方向判別を同時に可能とする方法はなかった。
本発明は上記従来技術の問題点を解決するためになされたものであって、本発明は、安価に、かつ信頼性高く、対話相手(人またはロボット)の識別、方向判別が可能であり、対話相手に応じた対話/サービスの提供が可能な対話相手識別方法およびそのような機能を備えたロボットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明において、ロボットの身体(例えば胴回り)に、複数方向に向けて配置した赤外線信号受信手段を設ける。また、必要に応じてロボットが自分自身の識別信号を発信する赤外線信号発信手段を設ける。一方、ユーザ(人間)は、ユーザの識別信号を発信するために少なくとも1つの赤外線発信器を有する赤外線信号発信手段を装着する。
ロボットは、複数方向に向けて配置された赤外線信号受信手段の、どの受信器によって、赤外線発信主体となる相手(ユーザもしくは他のロボット)からの赤外線が受信されたかによって、対応する相手が自分からみてどちら方向にいるかを知り、また、受信した識別信号を解読することによって、対応する相手が誰かを知ることが可能となる。
また、ロボットは、その顔部(頭部)あるいは身体の向きを駆動する身体方向駆動手段を有し、検出されたユーザ方向に応じて、その方向に、顔あるいは身体全体を向ける。すなわち、ロボットが、自律的に、ユーザの方向を向くことが可能となる。
そして、識別した相手に応じた対話/サービス内容を選択し、上記相手に対して言語・非言語に基づく対話/サービスを行う。
また、ロボットにカメラを設けて、相手を撮像して画像処理により相手の顔を識別して、そちらの方向にロボットの顔を向けるようしてもよい。
さらに、ユーザの赤外線信号発信手段にコマンドボタンを設け、コマンドを赤外線でロボットに発信できるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0007】
本発明においては、以下の効果を得ることができる。
(1)上記のように複数方向に向けて配置された赤外線信号受信手段により受信した結果に基づき、相手がどの方向におり、また、相手が誰なのか識別しているので、安価で信頼性の高い、対話相手(人またはロボット)の識別、位置検出が可能となる。
従って、ロボット(1体または複数)とユーザ(1人または複数)の対話場面において、各ロボットが対話に参加している相手のロボットまたはユーザを識別できるので、対話中に、相手のロボットまたはユーザの名前を呼んだり、相手のロボットまたはユーザに適した話題、サービスなどの対話/サービス内容を選ぶことができる。
また、各ロボットが相手のロボットまたはユーザの場所を認識できるので、対話時に、話題を提供する相手の方向に顔、または身体を向けて対話できる。
以上の特徴により、対話実感、親近感などの対話の質が大幅に向上したロボット対話環境の実現が安価に提供可能となる。また、そのような対話の質的、情緒的向上により、このロボットが認知症治療場面などの対話セッションに用いられた場合、治療効果の向上につながることが期待される。
(2)ロボットにカメラを搭載し、カメラにより相手の顔の位置を認識して、ロボットの顔を相手の顔方向に向けることにより、相手とのより正確なアイコンタクトが実現可能となる。
(3)ユーザの赤外線信号発信手段にコマンドボタンを設け、コマンドを赤外線でロボットに発信できるようにすることにより、ユーザとの間のよりきめ細かいコミュニケーションを実現することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図1は本発明の実施例の対話ロボットの基本構成を示す図であり、同図はロボットとユーザが1対1の場合を示している。
図1において、10は対話ロボット、20はユーザ(人間)、21はユーザ用赤外線発受信ユニットである。
対話ロボット10の身体(例えば胴回り)には、ロボット10の周囲の複数方向に向けて配置した赤外線発受信ユニット11が装着されている。
赤外線発受信ユニット11は、一対の赤外線発信器11aと赤外線受信器11bから構成され、赤外線発信器11aから自分自身の識別信号を発信し、赤外線受信器11bにより、赤外線の発信主体である人あるいは他のロボットからの発信者の識別信号を含む赤外線を受信する。
なお、図1では一対の赤外線発信器11aと赤外線受信器11bからなる複数の赤外線発信ユニット11を対話ロボット10に取り付ける場合について示したが、受信できる赤外線の入射角度が狭く、指向性分解能が高い複数の赤外線受信器を、複数方向に向けてロボット10の身体の周りに取り付け、また、発信できる赤外線の発射角度が広く指向性分解能が低い、上記赤外線受信器より少ない数の赤外線発信器を、ロボット10の身体の周りに取り付けるようにしてもよい。
また、対話ロボット10が相手に対し赤外線信号発信による識別信号の送信(返信)要求を行わなくても、相手側(相手が装着している後記赤外線発受信ユニット21)がたとえば一定間隔などで自分の識別信号を送信しつづけるような方式をとる場合などには、対話ロボット10側に必ずしも赤外線発信器を取り付ける必要はない。
以下の説明では、図1に示すようにロボットが上記のように一対の赤外線発信器と赤外線受信器からなる複数の赤外線発信ユニットを装着している場合について説明する。
【0009】
一方、ユーザ20(人間)は、ユーザの識別信号を発信するために少なくとも1つの赤外線発信器を有する赤外線発受信ユニット21を装着する。
赤外線発受信ユニット21は、赤外線発信器21aと赤外線受信器21bを取り付けた例えばペンダント形状のものであり、首からぶら下げる等によりユーザに装着される。
対話ロボット10は、複数方向に向けて配置された赤外線受信器11aの内の、どの受信器によって、ユーザ20より発信された識別信号が受信されたかによって、対応するユーザ20が自分からみてどちら方向にいるかを知り、また、受信した識別信号を解読することによって、対応するユーザ20が誰かを知ることが可能となる。
また、対話ロボット10は、その顔部(頭部)あるいは身体の向きを駆動する身体方向駆動手段(図1では頭部方向のみを駆動する例を示している)を有しており、検出されたユーザ方向に応じて、その方向に、顔あるいは身体全体を向けることができる。すなわち、対話ロボットが、自律的に、ユーザの方向を向くことが可能となる。
【0010】
図2は本発明の第1の実施例の対話ロボットの機能構成を示すブロック図である。
同図において、10aは赤外線信号発信手段であり、前記した赤外線発信器11aを有し、自分の識別信号を含む赤外線信号を外部に発信する。
10bは赤外線信号受信手段であり、前記したようにロボットの周囲に複数取り付けられた赤外線受信器11bを有し、外部で発信された赤外線を複数の受信器の内のどれかで受信する。
赤外線信号受信手段10bで赤外線が受信されると、相手方向識別手段10cは、どの赤外線受信器11bにより赤外線を受信したかにより、赤外線の発信主体である相手の方向を識別する。相手方向識別手段10cにより、相手方向が識別されると、身体方向駆動手段10dは、ロボット10の身体方向、あるいは顔の方向を識別した相手の方向に向けける。
【0011】
また、赤外線信号受信手段10bで赤外線が受信されると、相手識別手段10eは、受信した赤外線信号に含まれる識別信号により相手を識別する。対話/サービス内容選択手段10fは、対話/サービス内容データベース10hに格納された対話/サービス内容の中から、識別した相手に対応した対話/サービス内容を選択する。対話/サービス内容再生手段10gは、スピーカ12により、ユーザに対して音声等で応答するほか、手などの操作部13により、ユーザに対してサービスを行う。図示していないが、このサービス内容はロボット自身の移動を含むサービスであっても良い。
図2に示す対話ロボットは、マイク、赤外線発受信器等のセンサ類、身体方向駆動手段、スピーカやロボットアーム、移動手段等の操作部と、コンピュータと記憶手段等からなる制御部で構成することができ、上記対話ロボットの機能は、上記コンピュータにより実行されるソフトウェアで実現することができる。
また、上記対話/サービス内容データベース10hは上記ロボット10内に内蔵されていてもよいし、あるいは、ロボット10の外部に設けられ、上記ロボット内に設けられたコンピュータとネットワークを介して接続されていてもよい。
【0012】
図3はロボットとユーザが1対1の場合を示す図、図4は本実施例のロボット10における処理を示すフローチャートであり、図1〜図4により、ロボットとユーザが1対1の場合の動作について説明する。
本実施例では、対話ロボット10側が、「自身の周りに誰がいるか?」を確認したいタイミングで、赤外線発信器11aより、IDリクエスト信号を発信する(図4のステップS1)。本実施例の対話ロボット10は、前述したように複数方向に向いた複数の赤外線受発信ユニット11を胴体のまわりに有している。これらに設置された赤外線発信器11aより、同時に、あるいは順次、IDリクエスト信号を出す。ユーザ20は、前述したように赤外線受発信ユニット21(以下ペンダントともいう)を身体に装着している。
このペンダントは、その赤外線受信部21bで、上記IDリクエスト信号を受信すると、自身のID信号を、赤外線発信器21aより発信する。
ロボット10は、この赤外線を赤外線受信器11bで受信すると、受信した赤外線を相手識別手段10eにより解読し相手を識別する(ステップS2,S3)。
また、相手方向識別手段10cにより、どの赤外線受信器により赤外線を受信したかを判定し相手方向を識別し、身体方向駆動手段10dにより、識別した相手方向に顔あるいは身体方向を向ける(ステップS4,S5)。
ついで、対話/サービス内容選択手段10fは、対話/サービス内容DBにアクセスし、識別した相手に応じた対話/サービス内容を選択する(ステップS6)。対話/サービス内容再生手段10gは、スピーカ12から音声で、あるいは、手などの操作部13により、対話内容/サービスを実行する(ステップS7)。そして、この処理を対話が終了まで繰り返す(ステップS6→S8)。
【0013】
本実施例のロボットは、以上のようなしくみであり、対話ロボット10上の赤外線受信器11bは、ユーザ用ペンダント21が、対面方向に近い方向にある場合に、ペンダント21からのID信号を受信する。すなわち、受信した方向から、ユーザの方向がわかり、受信したID信号から、ユーザが誰かを識別することができる。
この例の対話ロボットでは、首が回転自由となっており、識別したユーザの方向に、顔を向けることができる。対話中に、必要に応じて、ユーザのほうに顔を向けて対話できるので、対話の親近性を増すことができる。
また、図2のようなシステム構成を有しているので、相手が誰かという識別結果に応じて、ユーザに応じた対話、サービス内容をデータベースより選択し、再生、提供することができる。
【0014】
図5は、ロボットとユーザが1対2の場合を示す。この場合の動作は次のようになる。 前記したように、対話ロボット10側が、「自身の周りに誰がいるか?」を確認したいタイミングで、赤外線発信器11aより、IDリクエスト信号を発信する。
前記したように対話ロボット10は、複数方向に向いた複数の赤外線受発信ユニット11を胴体のまわりに有しており、これらに設置された赤外線発信器11aより、同時に、あるいは順次、IDリクエスト信号を出す。ユーザ20−1,20−2は、それぞれ赤外線受発信ユニット21(ペンダント)を身体に装着している。このペンダント21は、その赤外線受信器21bより、IDリクエスト信号を受信すると、自身のID信号を、赤外線発信器21aより発信する。
対話ロボット10上の赤外線受信器11bは、ペンダント21からのID信号を受信する。そして受信した方向から、ユーザの方向がわかり、受信したID信号から、ユーザが誰かを識別する。
【0015】
この例の対話ロボットは、前記したように首が回転自由となっており、識別したユーザの方向に、顔を向け、対話/サービスを行なう。なお、2人のユーザを同時に識別した場合、どちらのユーザに先に顔を向けるかは、例えば、赤外線の受信強度から対面方向に近いユーザを選択し、そちらに先に顔を向けたり、予め設定された優先順位に基づき、優先順位の高いユーザを選択して顔を向ける等、種々の方法を採ることができる。
そして、対話/サービスの内容等に基づき、必要に応じて他のユーザの方に顔を向けて、対話/サービスを行なう。
このように話中に、必要に応じて、ユーザのほうに顔を向けて対話できるので、対話の親近性を増すことができる。
また、前記したように、相手が誰かという識別結果に応じて、ユーザに応じた対話、サービス内容をデータベースより選択し、再生、提供することができる。
【0016】
図5のように、対話ロボット1体に対し、ユーザが複数いる場合でも、それぞれが誰で、どちらの方向にいるかを識別できる。したがって、時と場合に応じて、適したユーザの方を向きながら、そのユーザに適した話題、あるいは複数ユーザに共通の話題を提供することが可能である。
図5のような実施形態は、例えば、認知症老人(図中ユーザ20−1)を対象として、セラピスト(図中ユーザ20−2)が、対話ロボットをツールとして使用して行う3者のセッションがある。このような場合に、そのセッションのセラピーあるいはアクティビティとしての目的にそったプログラムに応じて、対話ロボットが、老人を見たり、セラピストを見たり、交互に見たりしながら、対話を行うことが可能になり、対話実感が豊富になるとともに、それが、治療効果にもつながる。
【0017】
図6はロボットとユーザが2対1の場合を示す。この場合の動作は次のようになる。
この場合も、対話ロボットとしては、前述した図2の構成のものを用いて実現することができる。
対話ロボット10−1,10−2には、それぞれ、前記したように相手のIDリクエスト信号に答えて、自身のID信号を発信するための機構を設けておけば、相手の対話ロボットが誰であるかを識別可能であり、また、相手の対話ロボットの位置も検出可能である。もちろん、ユーザ20が誰か、また、その位置も、それぞれのロボットが識別可能である。
したがって、例えば対話ロボット10−1,10−2間で役割分担などを決めておけば対話ロボット10−1,10−2が協調して、ユーザ20に対して対話/サービスを提供することができる。
このような実施例では、例えば対話ロボット10−1は、対話ロボット10−2の方を向いたり、ユーザ20の方を向いたりしながら、対話をすることが可能になる。対話ロボット10−2も同様の動作が可能となり、ロボットの間の掛け合い対話が可能となる。
また、例えば、患者(ユーザ)に対して、2体のロボット10−1,10−2が対応する場合、2体それぞれの役割を割り振って治療効果を高めることが可能である。例えば、1体はしっかりした指導的なもの、もう一体はたよりのないものとすると、たよりのないものを保護したいという意識がはたらく。これを利用して治療効果を高めるなどの利用が考えられる。
【0018】
図7は本発明の第2の実施例のロボットの機能構成を示すブロック図である。
本実施例では、前記図2に示したものにおいて、顔を認識するためのカメラ14を搭載するとともに、ユーザが装着するペンダント21から赤外線信号で送られてくるコマンドを解釈するためのコマンド解釈手段10iを設けたものであり、その他の構成は、前記図2に示したものと同じである。この実施例では、例えば図8に示すようにカメラ14をロボット10の鼻部に搭載している。
前述のように、前記赤外線受信器11bにより受信した方向に基づき、おおよその相手の顔位置方向にロボット自身の顔を向けることができる。しかし、必ずしもロボット10とユーザ20の顔の高さなどが一致しているわけではなく、これだけでは、相手とのより正確なアイコンタクトを実現することはできない。
本実施例では、ロボット10の顔の方向を相手の方向に向けた後、カメラで相手を撮像する。そして、このカメラ視野内で、画像処理により相手の人(ロボット)の顔部分の検出ができたら、検出された顔の方向に、ロボット自身の顔を向ける。
これにより、ロボットの顔と相手の顔を正対させることができ、相手とのより正確なアイコンタクトが実現可能となる。
また、前記赤外線システムにより相手が誰かがわかるので、予め顔検出用の顔テンプレートを用意しておき、赤外線により相手を認識できたら、これに基づき上記顔テンプレートを特定することで、顔認識精度もより向上することが可能となる。
【0019】
図9は、ユーザが装着する赤外線発受信器を備えたペンダント21にコマンド発信ボタンを設けた場合の例を示す図である。
本実施例において、同図に示すようにペンダント21にはコマンド発信用ボタン21c,21dが設けられており、押されたボタンに応じて、ロボット10向けにコマンド信号が赤外線により送信される。
例えば、ユーザによる音声指示では認識信頼性が確保できない場合などに、ボタン操作によりコマンド指示が可能になる。
図の例では、Yes(○)、No(×)のボタンを装備することにより、Closedな質問(Yes,Noで答えられる質問)に答えることができ、対話の中で幅広く、活用することができる。
また、ペンダントから、ユーザIDを同時に送出出来るので、「誰が」、「何を」指示したかが特定可能となり、それに応じた対話、サービス内容の提供が可能となる。すなわち、小型で安価な、ユーザを特定できる、コマンダが実現可能である。
【0020】
図10は本発明の第2の実施例におけるロボットの処理を示すフローチャートであり、同図により、本実施例の動作について説明する。
対話ロボット10側が、前記したように確認したいタイミングで、赤外線発信器11aより、IDリクエスト信号を発信する(図10のステップS1)。ユーザ20は、前述したように赤外線受発信ユニット21(以下ペンダントともいう)を身体に装着しており、その赤外線受信部21bで、上記IDリクエスト信号を受信すると、自身のID信号を、赤外線発信器21aより発信する。
ロボット10は、この赤外線を赤外線受信器11bで受信すると、受信した赤外線を相手識別手段10eにより解読し相手を識別する(ステップS2,S3)。
また、相手方向識別手段10cにより、どの赤外線受信器により赤外線を受信したかを判定し相手方向を識別し、身体方向駆動手段10dにより、識別した相手方向に顔あるいは身体方向を向ける(ステップS4,S5)。さらに、カメラ14により相手を撮像し、その顔を判別し、身体方向駆動手段10dにより、相手の顔の方向にロボット10の顔を向ける(ステップS6,S7)。
【0021】
ついで、対話/サービス内容選択手段10fは、対話/サービス内容DBにアクセスし、識別した相手に応じた対話/サービス内容を選択する(ステップS8)。対話/サービス内容再生手段10gは、スピーカ12から音声で、あるいは、手などの操作部13により、対話内容/サービスを実行する(ステップS9)。
ついで、コマンドが受信されたかを調べ、コマンドが受信されるとコマンド解釈手段10iでコマンドを解釈し、コマンドに応じた対話/サービス内容を選択し、ステップS9に戻る(ステップS10,S11,S12)。
また、コマンドが受信されない場合は、対話終了かを判断し(ステップS13)、対話終了でなければステップS8に戻り、識別した相手に応じた対話コンテンツを選択する。そして、上記処理を対話が終了まで繰り返す(ステップS8→S13)。
なお、上記第2の実施例の説明では、カメラを設けるとともに、ユーザのペンダントにコマンドボタンを設ける場合について説明したが、両方の手段を設けず、カメラのみを設けるか、あるいは、コマンドボタンのみを設けるなど、いずれか一方の手段を採用してもよい。
【0022】
(付記1)
ロボットに、複数方向に向けた複数の赤外線信号の受信器を取り付け、該受信器により受信した赤外線信号を解読して赤外線の発信主体である相手を識別するとともに、受信した赤外線信号が、複数の受信器のうちのどの受信器で受信されたかに基づいて、上記相手の方向を識別し、
上記相手の方向に自ロボットの顔部あるいは身体を向け、識別した相手に応じた対話/サービス内容を選択し、上記相手に対して言語・非言語に基づく対話/サービスを行う
ことを特徴とするロボットにおける対話相手識別方法。(1)
(付記2)
言語・非言語に基づく対話/サービスを行うロボットであって、
上記ロボットは、赤外線信号の受信器を複数、複数方向に向けて配置した赤外線信号受信手段と、
少なくとも一つの赤外線発信器を装着した赤外線の発信主体である相手を、受信した赤外線信号を解読して識別する相手識別手段と、
受信した赤外線信号がどの受信器により受信されたかの情報に基づいて上記相手の方向を識別する相手方向識別手段と、
識別した上記相手方向に応じて自ロボットの顔部あるいは身体の向きを駆動する身体方向駆動手段と、
上記相手の識別結果に応じて、相手に応じた対話/サービス内容を選択する対話/サービス内容選択手段を有する
ことを特徴とするロボット。(2)
(付記3)
上記ロボットは、赤外線信号受信手段に加え、自分の識別信号を赤外線で発信する発信器から構成される赤外線信号発信手段を備えている
ことを特徴とする付記2記載のロボット。(3)
(付記4)
付記3記載の赤外線信号発信手段の赤外線発信器と、赤外線信号受信手段の受信器は指向性分解能を異としている
ことを特徴とする対話相手識別機能を備えたロボット。(4)
(付記5) 上記赤外線信号受信手段と赤外線信号発信手段を実現するためのデバイスとして、赤外線発信器と赤外線受信器を1対にした赤外線受発信ユニットを使用した
ことを特徴とする付記3記載のロボット。
(付記6)
上記ロボットは、認識した赤外線の発信主体の顔を認識するための顔認識用のカメラを備えた
ことを特徴とする付記2,3,4または付記5記載の対話相手識別機能を備えたロボット。
(付記7)
赤外線の発信主体である相手が有する赤外線信号発信手段は、操作されたボタンに対応したコマンドを赤外線信号として発信するコマンド指示用ボタンを有し、
上記ロボットは、赤外線信号受信手段で受信したコマンドを解釈するコマンド解釈手段を備え、上記相手に応じた対話/サービス内容選択手段は、上記コマンド解釈手段により解釈したコマンドに基づき対話/サービス内容を選択する
ことを特徴とする付記2,3,4,5または付記6記載のロボット。(5)
(付記8)
個々のユーザあるいはロボットの識別IDと関連づけられた対話、ジェスチャ、あるいはサービス内容などの対話/サービス内容を格納したデータベース手段を有し、
前記対話/サービス内容選択手段は、上記データベース手段にアクセスして、相手識別手段により識別した相手に対する対話/サービス内容を取得する
ことを特徴とする付記2,3,4,5,6または付記7記載のロボット。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施例のロボットの基本構成を示す図である。
【図2】本発明の第1の実施例のロボットの機能構成を示すブロック図である。
【図3】ロボットとユーザが1対1の場合を説明する図である。
【図4】第1の実施例のロボットの処理を示すフローチャートである。
【図5】ロボットとユーザが1対2の場合を説明する図である。
【図6】ロボットとユーザが2対1の場合を説明する図である。
【図7】本発明の第2の実施例のロボットの機能構成を示すブロック図である。
【図8】カメラの搭載例を示す図である。
【図9】コマンドボタンを有するペンダントの一例を示す図である。
【図10】第2の実施例のロボットの処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0024】
10 ロボット
10a 赤外線信号発信手段
10b 赤外線信号受信手段
10c 相手方向識別手段
10d 身体方向駆動手段
10e 相手識別手段
10f 対話/サービス内容選択手段
10g 対話/サービス内容再生手段
10h 対話/サービス内容データベース
10i コマンド解釈手段
11 赤外線発受信ユニット
11a 赤外線発信器
11b 赤外線受信器
12 スピーカ
13 操作部
14 カメラ
20 ユーザ
21 ユーザ用赤外線発受信ユニット
21a 赤外線発信器
21b 赤外線受信器
21c コマンド発信用ボタン
21d コマンド発信用ボタン


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットに、複数方向に向けた複数の赤外線信号の受信器を取り付け、該受信器により受信した赤外線信号を解読して赤外線の発信主体である相手を識別するとともに、受信した赤外線信号が、複数の受信器のうちのどの受信器で受信されたかに基づいて、上記相手の方向を識別し、
上記相手の方向に自ロボットの顔部あるいは身体を向け、識別した相手に応じた対話/サービス内容を選択し、上記相手に対して言語・非言語に基づく対話/サービスを行う
ことを特徴とするロボットにおける対話相手識別方法。
【請求項2】
言語・非言語に基づく対話/サービスを行うロボットであって、
上記ロボットは、赤外線信号の受信器を複数、複数方向に向けて配置した赤外線信号受信手段と、
少なくとも一つの赤外線発信器を装着した赤外線の発信主体である相手を、受信した赤外線信号を解読して識別する相手識別手段と、
受信した赤外線信号がどの受信器により受信されたかの情報に基づいて上記相手の方向を識別する相手方向識別手段と、
識別した上記相手方向に応じて自ロボットの顔部あるいは身体の向きを駆動する身体方向駆動手段と、
上記相手の識別結果に応じて、相手に応じた対話/サービス内容を選択する対話/サービス内容選択手段を有する
ことを特徴とするロボット。
【請求項3】
上記ロボットは、赤外線信号受信手段に加え、自分の識別信号を赤外線で発信する発信器から構成される赤外線信号発信手段を備えている
ことを特徴とする請求項2記載のロボット。
【請求項4】
請求項3記載の赤外線信号発信手段の赤外線発信器と、赤外線信号受信手段の受信器は指向性分解能を異としている
ことを特徴とする対話相手識別機能を備えたロボット。
【請求項5】
赤外線の発信主体である相手が有する赤外線信号発信手段は、操作されたボタンに対応したコマンドを赤外線信号として発信するコマンド指示用ボタンを有し、
上記ロボットは、赤外線信号受信手段で受信したコマンドを解釈するコマンド解釈手段を備え、上記相手に応じた対話/サービス内容選択手段は、上記コマンド解釈手段により解釈したコマンドに基づき対話/サービス内容を選択する
ことを特徴とする請求項2,3または請求項4記載のロボット。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−160473(P2007−160473A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−361433(P2005−361433)
【出願日】平成17年12月15日(2005.12.15)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【出願人】(505464224)
【Fターム(参考)】