ロボットのツール位置検出方法、ロボットと対象物との相対位置検出方法、及びそれらの装置
【課題】ツール位置やロボットと対象物との相対位置を簡単かつ高精度に検出する。
【解決手段】ロボット2のアーム7先端のツール取付部7eに球面部8aを有するツール8を取り付け、ツール取付部7eから球面部8aの中心までのツールベクトルの成分に未知数を設定し、球面部8aを平板16に対してツール8の姿勢を変えて少なくとも未知数の数と同じ回数当接させ、その当接時のロボット2のアーム7の関節角度に基づいて当接時のツール取付部7eの位置をそれぞれ求め、特定の座標系において、平板16のZ位置と球面部8aの曲率半径Rcとの和から得られる球面部8aの中心のZ位置が、ツール取付部7eのZ位置とツールベクトルのZ成分との和から得られる球面部8aの中心のZ位置に等しいことを意味する連立方程式を少なくとも未知数の数と同じ回数連立させ、その連立方程式を解くことでツールベクトルの成分を求める。
【解決手段】ロボット2のアーム7先端のツール取付部7eに球面部8aを有するツール8を取り付け、ツール取付部7eから球面部8aの中心までのツールベクトルの成分に未知数を設定し、球面部8aを平板16に対してツール8の姿勢を変えて少なくとも未知数の数と同じ回数当接させ、その当接時のロボット2のアーム7の関節角度に基づいて当接時のツール取付部7eの位置をそれぞれ求め、特定の座標系において、平板16のZ位置と球面部8aの曲率半径Rcとの和から得られる球面部8aの中心のZ位置が、ツール取付部7eのZ位置とツールベクトルのZ成分との和から得られる球面部8aの中心のZ位置に等しいことを意味する連立方程式を少なくとも未知数の数と同じ回数連立させ、その連立方程式を解くことでツールベクトルの成分を求める。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットのツール位置検出方法、ロボットと対象物との相対位置検出方法及びそれらの装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の関節を有するアームの先端にツール(例えば、溶接トーチやエンドミル等)を取り付け、生産現場等で使用される産業用ロボットが知られている。この産業用ロボットでは、作業者が予めティーチングペンダントを用いて作業動作をロボットに教示しておき、本作業においてロボットが当該作業動作を再生することで、作業の自動化が図られるようになっている(例えば、特許文献1等参照)。
【0003】
ロボットがツールでワークに対して作業をする際には、ツールの先端位置及び姿勢が正確に把握されている必要があるが、ツールに寸法誤差がある場合やツールが変形している場合などが考えられるため、予め作業者がツール先端位置及び姿勢を教示するようにしている。具体的には、先端が尖ったツールの場合には、針状の治具の先端に対してツールの先端を姿勢を変えて正確に点接触させ、それらの接触時の教示点からツール先端位置及び姿勢を求めるようにしている。また、その他には、三次元計測器を用いてツールの寸法等を正確に計測するという方法もある。
【0004】
さらに、ロボットがツールでワークに対して作業をする際には、ロボットとワークとの相対位置関係も正確に把握されている必要がある。そこで、予め作業者がロボットに取り付けられたツールを、ワーク上における複数の特徴点(マーキング部、尖部、角部など)に正確に接触させて、それらの接触時の教示点からロボットとワークとの相対位置関係を求めるようにしている。また、その他には、ロボットに視覚センサを取り付け、その視覚センサによりワーク上の特徴点を計測し、ロボットとワークとの相対位置関係を求めるという方法もある。
【特許文献1】特公平6−8730号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、作業者がツール先端位置及び姿勢を教示する際には、ツールの先端を治具の先端に正確に位置決めする必要があり、非常に時間が掛かる。また、非熟練作業者がその作業を行うと、ツールを治具に押し付けすぎてツールが撓んだり、ツールと治具との間に隙間が生じたりして、位置決めが正確に行われない場合があり、教示精度にバラツキが生じる。さらに、三次元計測器を用いる場合には、ツールを一度外して計測作業を行わねばならず面倒であると共に、その装置が大型であると作業現場に持っていくことが困難となる等の問題もある。
【0006】
また、作業者がワーク上の特徴点を教示する際も同様に、非常に時間が掛かると共に、非熟練作業者が行うと教示精度にバラツキが生じる。さらに、視覚センサを用いる場合には、計測精度に光などの影響を受けやすく、作業環境の悪い場所では使用できないと共に、センサが高価であるという問題もある。
【0007】
そこで本発明は、ツール位置やロボットと対象物との相対位置を簡単かつ高精度に検出できるようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は前記事情に鑑みてなされたものであり、本発明に係るロボットのツール位置検出方法は、ロボットのアーム先端のツール取付部に、球面部又は尖部からなる先端部を有するツールを取り付け、前記ツール取付部から前記先端部の中心までのツールベクトルの成分に未知数を設定し、前記先端部を平面に対して前記ツールの姿勢を変えて少なくとも前記未知数の数と同じ回数当接させ、前記当接時の前記ロボットのアームの関節角度に基づいて前記当接時の前記ツール取付部の位置をそれぞれ求め、特定の座標系において、前記平面のZ位置と前記先端部の曲率半径との和から得られる前記先端部の中心のZ位置が、前記ツール取付部のZ位置と前記ツールベクトルのZ成分との和から得られる前記先端部の中心のZ位置に等しいことを意味する連立方程式を少なくとも前記未知数の数と同じ回数連立させ、前記連立方程式を解くことで前記ツールベクトルの成分を求めることを特徴とする。
【0009】
これによれば、一方向であるZ位置のみに着目するだけでも、ツールを姿勢を変えて平面に当接させて連立方程式を解くことでツールベクトルの成分を求めることができる。そして、Z位置のみに着目することで、ツールの先端部を平面上のどの位置に当接させてもよく(前回の当接位置に対してX,Y位置がずれてもよい)、教示作業をラフに行うことが可能となる。よって、教示作業が簡単となり作業時間の短縮化が図れるとともに、検出精度を向上させることができる。なお、ツールの先端部が尖部である場合には、前記曲率半径はゼロであるとして扱うとよい。
【0010】
略法線方向に変位可能な平板と、前記平板の変位を検出可能な変位センサとを用い、前記平面は、前記平板の当接面からなり、前記平面のZ位置を前記変位センサの出力に基づいて求めてもよい。
【0011】
これによれば、ツールの先端部を平板の当接面に当接させた際、平板が変位可能であるため、その当接圧が吸収される。よって、ツールが撓まずに正確な検出が行えるとともに、治具(本発明では平板等)の変形等を防止することができる。また、前記当接は、球面部又は尖部からなる先端部と平面との間で行われるので、平板及び変位センサを1自由度の安価なものとすることができる。
【0012】
光学エリアセンサを用い、前記平面は、前記光学エリアセンサの感知面からなり、前記ツールの前記先端部が前記感知面に接触した時点で、前記ロボットのアームの関節角度を検出してもよい。
【0013】
これによれば、光学的に形成された平面(感知面)にツールの先端部が当接したことを検知すればよいため、ツールの先端部を機械的に平面に接触させずに済み、ツールやセンサに負荷が掛かるのを防止することができる。
【0014】
前記平面に前記先端部が当接していないときにおける前記平面のZ位置と、前記先端部の曲率半径とをさらに未知数とし、前記先端部を平面に対して前記ツールの姿勢を変えて少なくとも全未知数の数と同じ回数当接させ、前記連立方程式を少なくとも全未知数の数と同じ回数連立させてもよい。
【0015】
これによれば、ツールの姿勢を変えて平面に先端部を当接させる回数を増やして、連立方程式の数を増やすだけで、平面のZ位置及び先端部の曲率半径を予め知る必要がなくなり、教示作業をより簡素化することができる。
【0016】
前記ツール取付部に寸法形状が既知の基準ツールを取り付け、前記基準ツールを前記平面内で移動させて前記基準ツールを前記平面の複数箇所に当接させることで、前記平面上のX,Y位置とZ位置との相関関係を予め求め、前記基準ツールに代えて前記ツールを前記ツール取付部に取り付けて前記ツールを前記平面に当接させ、その当接箇所の平面内におけるX,Y位置を、前記検出されたツール取付部の位置および前記ツールの概略寸法形状から求め、前記相関関係により前記X,Y位置に対応するZ位置を求め、その求めたZ位置を前記連立方程式における前記平面のZ位置に代入してもよい。
【0017】
これによれば、平面上のX,Y位置とZ位置との相関関係を予め求め、ツールの先端部が当接した平面上のX,Y位置から前記相関関係を用いてZ位置を補正するため、平面の法線方向が前記特定の座標系におけるZ方向に一致していない場合であっても、正しくツールベクトルの成分を求めることができる。
【0018】
また本発明のロボットと対象物との相対位置検出方法は、ロボットのアーム先端のツール取付部に平面を有する部材を取り付け、球面部又は尖部からなる当接部を有するターゲットを対象物に取り付け、前記当接部の位置及び方向を示すターゲットベクトルの成分に未知数を設定し、前記当接部に対して前記平面を前記部材の姿勢を変えて少なくとも前記未知数の数と同じ回数当接させ、前記当接時の前記ロボットのアームの関節角度に基づいて前記当接時の前記ツール取付部の位置をそれぞれ求め、特定の座標系において、前記ターゲットベクトルのZ成分から得られる前記当接部の中心のZ位置が、前記ツール取付部のZ位置と前記平面のZ位置と前記当接部の曲率半径との和から得られる前記当接部の中心のZ位置に等しいことを意味する連立方程式を少なくとも前記未知数の数と同じ回数連立させ、前記連立方程式を解くことで前記ターゲットベクトルの成分を求めることを特徴とする。
【0019】
これによれば、一方向であるZ位置のみに着目するだけでも、部材の姿勢を変えて平面をターゲットの当接部に当接させて連立方程式を解くことでターゲットベクトルの成分を求めることができる。そして、Z位置のみに着目することで、ターゲットの当接部を平面上のどの位置に当接させてもよく(前回の当接位置に対してX,Y位置がずれてもよい)、教示作業をラフに行うことが可能となる。よって、教示作業が簡単となり作業時間の短縮化が図れるとともに、検出精度を向上させることができる。なお、ターゲットの当接部が尖部である場合には、前記曲率半径はゼロであるとして扱うとよい。
【0020】
略法線方向に変位可能な平板と、前記平板の変位を検出する変位センサとを前記ツール取付部に取り付け、前記平面は、前記平板の当接面からなり、前記平面のZ位置を前記変位センサの出力に基づいて求めてもよい。
【0021】
これによれば、平板をターゲットの当接部に当接させた際、平板が変位可能であるため、その当接圧が吸収される。よって、ターゲットが撓まずに正確な検出が行えるとともに、治具(本発明では平板等)の破壊を防止することができる。また、前記当接は、球面部又は尖部からなる先端部と平面との間で行われるので、平板及び変位センサを1自由度の安価なものとすることができる。
【0022】
光学エリアセンサを前記ツール取付部に取り付け、前記平面は、前記光学エリアセンサの感知面からなり、前記感知面が前記ターゲットに接触した時点で、前記ロボットのアームの関節角度を検出してもよい。
【0023】
これによれば、光学的に形成された平面(感知面)にターゲットの当接部が当接したことを検知すればよいため、ターゲットの当接部を機械的に平面に接触させずに済み、センサやターゲットに負荷が掛かるのを防止することができる。
【0024】
前記平面が前記ターゲットに当接していないときにおける前記平面のZ位置と、前記ターゲットの曲率半径とをさらに未知数とし、前記当接部に対して前記平面を前記部材の姿勢を変えて少なくとも全未知数の数と同じ回数当接させ、前記連立方程式を少なくとも全未知数の数と同じ回数連立させてもよい。
【0025】
これによれば、部材の姿勢を変えて平面にターゲットの当接部を当接させる回数を増やして、連立方程式の数を増やすだけで、平面のZ位置及び先端部の曲率半径を予め知る必要がなくなり、教示作業をより簡素化することができる。
【0026】
前記対象物は、ワークであってもよい。
【0027】
これによれば、ロボットとワークとの相対位置関係を求めることができ、ロボットによるワークの取り扱いを正確に行うことができる。
【0028】
また本発明のロボットのツール位置検出装置は、アーム先端のツール取付部に球面部又は尖部からなる先端部を有するツールが取り付けられるロボットと、前記ロボットを制御する制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記ツール取付部から前記先端部の中心までのツールベクトルの成分に未知数を設定し、前記先端部を平面に対して前記ツールの姿勢を変えて少なくとも前記未知数の数と同じ回数当接させるよう前記ロボットを駆動し、前記当接時の前記ロボットのアームの関節角度に基づいて前記当接時の前記ツール取付部の位置をそれぞれ求め、特定の座標系において、前記平面のZ位置と前記先端部の曲率半径との和から得られる前記先端部の中心のZ位置が、前記ツール取付部のZ位置と前記ツールベクトルのZ成分との和から得られる前記先端部の中心のZ位置に等しいことを意味する連立方程式を少なくとも前記未知数の数と同じ回数連立させ、前記連立方程式を解くことで前記ツールベクトルの成分を求めることを特徴とする。
【0029】
これによれば、前述したツール位置検出方法と同様に、一方向であるZ位置のみに着目するだけでも、ツールを姿勢を変えて平面に当接させて連立方程式を解くことでツールベクトルの成分を求めることができる。そして、Z位置のみに着目することで、ツールの先端部を平面上のどの位置に当接させてもよく(前回の当接位置に対してX,Y位置がずれてもよい)、教示作業をラフに行うことが可能となる。よって、教示作業が簡単となり作業時間の短縮化が図れるとともに、検出精度を向上させることができる。
【0030】
また本発明のロボットと対象物との相対位置検出装置は、アーム先端のツール取付部に平面を有する部材が取り付けられるロボットと、前記ロボットを制御する制御手段と、を備え、前記制御手段は、対象物に取り付けられた球面部又は尖部からなる当接部を有するターゲットの前記当接部の位置及び方向を示すターゲットベクトルの成分に未知数を設定し、前記当接部に対して前記平面を前記部材の姿勢を変えて少なくとも前記未知数の数と同じ回数当接させ、前記当接時の前記ロボットのアームの関節角度に基づいて前記当接時の前記ツール取付部の位置をそれぞれ求め、特定の座標系において、前記ターゲットベクトルのZ成分から得られる前記当接部の中心のZ位置が、前記ツール取付部のZ位置と前記平面のZ位置と前記当接部の曲率半径との和から得られる前記当接部の中心のZ位置に等しいことを意味する連立方程式を前記検出の回数分連立させ、前記連立方程式を解くことで前記ターゲットベクトルの成分を求めることを特徴とする。
【0031】
これによれば、前述した相対位置検出方法と同様に、一方向であるZ位置のみに着目するだけでも、部材の姿勢を変えて平面をターゲットの当接部に当接させて連立方程式を解くことでターゲットベクトルの成分を求めることができる。そして、Z位置のみに着目することで、ターゲットの当接部を平面上のどの位置に当接させてもよく(前回の当接位置に対してX,Y位置がずれてもよい)、教示作業をラフに行うことが可能となる。よって、教示作業が簡単となり作業時間の短縮化が図れるとともに、検出精度を向上させることができる。
【発明の効果】
【0032】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、ツール位置やロボットと対象物との相対位置を簡単かつ高精度に検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明に係る実施形態を図面を参照して説明する。
【0034】
(第1実施形態)
図1は本発明の第1実施形態に係るロボットのツール位置検出装置を示す模式図である。図1に示すように、ロボットのツール位置検出装置1は、産業用のロボット2と、ロボット2を制御する制御手段3とを備えている。制御手段3は、ロボット2に接続されたコントローラ4と、コントローラ4に接続されたコンピュータであるパソコン5とを有している。ロボット2は、地面等の設置面Gに設置される基台6と、基台6から突出するアーム7とを有し、基台6が設置された設置面Gを基準にした座標系をベース座標系と設定している。アーム7にはコントローラ4からの指令により角度変更するように駆動される複数の関節7a〜7dが設けられていると共に、その先端にはフランジ状のツール取付部7eが設けられている。
【0035】
ロボット2には、関節7a〜7dの角度を検出可能なエンコーダ(図示せず)などが組み込まれており、関節7a〜7dの角度と、アーム7を構成するリンクの寸法とにより、ツール取付部7eのベース座標系における位置及び姿勢が分かるようになっている。ツール取付部7eには、球面部又は尖部からなる先端部を有するツール8が取り付け固定されている。具体的には、ツール8には、先端に球面部を有する溶接トーチや、先端に尖部を有するエンドミルなどが使用される。本実施形態では、球面部8aからなる先端部を有するツール8を用いて説明する。なお、ツール取付部7eを基準とした座標系をツール座標系として設定している。
【0036】
ロボット2の設置面Gには、タッチセンサ10が設置されている。タッチセンサ10は、ハウジング11と、ハウジング11内に収容されたバネ受板12と、バネ受板12を上方に付勢するバネ13と、バネ受板12からハウジング11を貫通して上方に突出したロッド14と、ロッド14の上下方向の変位量を検出可能な変位センサ15とを備えている。タッチセンサ10の具体例としては、例えば、キーエンス社製の接触式デジタルセンサ(型番:GT2-H12L)などを使用することができる。タッチセンサ10のロッド14の先端には、上面を当接面とする平板16が固定されている。変位センサ15の出力は、パソコン5に入力されるように構成されている。
【0037】
なお、本実施形態では、タッチセンサ10の変位検出方向および平板16の当接面16a(上面)の法線方向が、ベース座標系のZ方向と一致するように設けられているが、必ずしも一致させる必要はない。例えば、タッチセンサの変位検出方向がベース座標系のZ方向に一致していない場合には、それを一致させるための行列を予め計測しておき、該行列を用いてタッチセンサ10の座標系をベース座標系に変換するようにパソコン5を設定しておくとよい。
【0038】
次に、ツール位置検出装置1によるツール位置検出手順について説明する。図2は図1に示す装置1によるツール位置検出方法を説明する図面である。図1及び2に示すように、まず、コントローラ4によりロボット2を操作して、ツール8の球面部8aをタッチセンサ10の平板16の当接面16aに当接させる。その当接時には、タッチセンサ10のロッド14がバネ13の弾性力により上下に変位可能であることで平板16が下方に移動するため、当接時にツール8に掛かる力が緩和される。さらに、当接は、球面部8aと平板16との間で行われるので、平板16及びタッチセンサ10を1自由度の安価なものとすることができる。
【0039】
また、図3(a)に示すように、平板16と球面部8aとの当接力は、常に平板16の法線方向であるバネ13の伸縮方向にのみ作用するため、ツール8の変形が防止されて正確な計測が行える。つまり、図3(b)の比較例のように、球同士(球面部8aと球体B)の当接の場合等には、球面部8aの中心に向かった力が発生し、当接力がバネ13の伸縮方向に作用するとは限らないため、ツールが変形してしまう場合が考えられるが、本実施形態によればそれが防止される。
【0040】
次いで、図2に戻り、ツール8の球面部8aを平板16の当接面16aに当接させた時点において、ツール取付部7dの位置及び姿勢をロボット2の関節7a〜7dの角度に基づいて計測すると共に、変位センサ15の出力も計測する。そして、そのツール取付部7dの位置及び姿勢と変位センサ15の出力とをパソコン5に記録する。次いで、ロボット2によりツール8の姿勢を変えて、ツール取付部7dの位置及び姿勢と変位センサ15の出力との計測・記録を複数回(後述する連立方程式(3)における未知数の数以上の回数)繰り返す。その際、ツール8の球面部8aが平板16の当接面16aに当接しさえすれば、各回ごとに当接面16a内における当接位置がずれていてもよい。また、球面部8aを繰り返し平板16に当接させる際の各回のツール8の姿勢は、同一軸線周りの回転にならないよう選ぶようにする(例えば、ツール8が、鉛直方向下向き、X軸周りに±45度、Y軸周りに±45度の5姿勢など)。
【0041】
次いで、繰り返し回数分得たツール取付部7dの位置及び姿勢と変位センサ15の出力のデータを用いて後述の連立方程式(3)を解くことで、ツール8の球面部8aの中心の位置、即ち、ツール取付部7dから球面部8aの中心までのツールベクトルtXtcの成分を求める。図2から分かるように、各ベクトルをベース座標系におけるZ方向の線分上に投影すると、ツール8の姿勢に関わらず、常に以下の数式1が成り立つ。
【0042】
【数1】
【0043】
ここで、数式1における記号や変数は、以下の通り定義される。
“・”:ベクトルの内積
“*”:行列とベクトルの積
Nbz :ベース座標系のZ方向に平行な単位ベクトル、即ち、(0,0,1)の転置ベクトル
bXbt:ツール取付部までのベクトル(計測データごとに既知)
Rbt :ベース座標系とツール座標系との間の座標変換行列(計測データごとに既知)
tXtc:ツールベクトル(各成分は未知数)
L0:タッチセンサの自然長(出力0のときの長さ:未知または既知のどちらでも可)
δL:タッチセンサの出力(縮む方向を正、計測データごとに既知)
Rc:球面部の曲率半径(未知または既知のどちらでも可)
この数式1は、ベース座標系において、平板16の当接面16aのZ位置と球面部8aの曲率半径Rcとの和から得られる球面部の中心のZ位置が、ツール取付部7eのZ位置とツールベクトルtXtcのZ成分との和から得られる球面部8aの中心のZ位置に等しいことを意味している。
【0044】
そして、内積は表現するベクトルを変えても同じ値であるので、後述する連立方程式(3)を後述する数式4にまとめ易くするため、数式1をツール座標系に変換した数式2に書き換える。
【0045】
【数2】
【0046】
ここで、Rtb :Rbtの逆行列(計測データごとに既知)である。
【0047】
図4は図1に示す装置1においてツール8を平板16に対して姿勢を変えて当接させることを説明する図面である。図4に示すように、ロボット2を動作させてツール8の姿勢を複数回変えて計測すると、数式2は計測回数Nと同じ数だけ連立させた以下の連立方程式(3)を得ることができる(Nは未知数の数)。
【0048】
【数3】
【0049】
そして、この連立方程式(3)は一般的に以下のように整理できる。
【0050】
【数4】
【0051】
X,A,Bは、タッチセンサ10の自然長L0(即ち、平板16の初期Z位置)と球面部8aの曲率半径Rcとを未知数として設定する場合には、以下の数式5〜7で表される。
【0052】
【数5】
【0053】
【数6】
【0054】
【数7】
【0055】
一方、タッチセンサ10の自然長L0と球面部8aの曲率半径Rcとを共に既知として設定する場合には、X,A,Bは以下の数式8〜10で表される。
【0056】
【数8】
【0057】
【数9】
【0058】
【数10】
【0059】
そして、行列Aが正則の場合(N=未知数の数)は、未知数のベクトルXは、以下の数式11で表される。
【0060】
【数11】
【0061】
一方、行列Aが非正則の場合(N>未知数の数)は、未知数のベクトルXは、以下の数式12で表される。
【0062】
【数12】
【0063】
なお、A+は、以下の数式13に示すようにAの擬似逆行列であり、これにより最小2乗法で求めるとの同じように精度の高い解を得ることができる。
【0064】
【数13】
【0065】
そして、数式11または数式12により、ツールベクトルtXtcの各成分が求められる。
【0066】
以上によれば、一方向であるZ位置のみに着目するだけでも、ツール8を姿勢を変えて平板16に当接させて連立方程式を解くことでツールベクトルtXtcの各成分を求めることができる。そして、Z位置のみに着目することで、ツール8の球面部8aを平板16の当接面16a上の何れの位置に当接させてもよく(前回の当接位置に対してX,Y位置がずれてもよい)、教示作業をラフに行うことが可能となる。よって、教示作業が簡単となり作業時間の短縮化が図れるとともに、検出精度を向上させることができる。また、タッチセンサ10の自然長L0(即ち、平板16の初期Z位置)と球面部8aの曲率半径Rcとを未知数として設定すれば、当接回数を増やして連立方程式の数を増やすだけで、L0及びRcを予め知る必要がなくなり、教示作業をより簡素化することができる。
【0067】
なお、本実施形態では、ツール8の先端部を球面部8aとしたが、ツールの先端部が尖部であってもよい(例えば、ツールをエンドミルとした場合等)。その場合には、前記した曲率半径Rcをゼロであるとして扱えば、その他のツール位置検出手順は前記同様である。また、本実施形態では、連立方程式(3)をツール座標系で解いたが、ベース座標系で解いてもよい。
【0068】
(第2実施形態)
図5(a)(b)は本発明の第2実施形態のツールの平板への当接状態を説明する図面である。図5(a)(b)に示すように、本実施形態は、平板16の法線方向がベース座標系のZ方向に対して傾いた状態でタッチセンサ10のロッド14に固定された場合を想定している。この場合、ツール8の先端の球面部8aを高さが一定となるように動かした場合でも、平板16は上下に変位し、変位センサ15の出力値がLb分だけ変化してしまう。(センサ値として得られるδLの値が右側の(b)図ではLbだけ増加して検出される。)そこで、この影響を補正するために、基礎式である数式2を以下の数式14にように修正する。
【0069】
【数14】
【0070】
そして、ツール8の球面部8aの中心のX,Y位置を入力とし、変位センサ15の出力値の補正量Lbを出力とする補正テーブルまたは補正関数を、以下のように予め求めておく。
【0071】
まず、ロボット2のツール取付部7eに寸法形状が既知の基準ツール(図示せず)を取り付ける。次いで、ロボット2により基準ツールを平板16に当接させ、その当接時における基準ツールの先端部の位置(bXbc, bYbc, bZbc)と、変位センサ15の出力値δLとを記録する(図5(a)参照)。なお、基準ツールの先端部の位置は、基準ツールの概略寸法形状が既知であるため、以下の数式15のようにロボット2のツール取付部7eの位置及び姿勢から求めることができる。
【0072】
【数15】
【0073】
なお、tXtc0はツール取付部7eから基準ツールの先端部の中心までの基準ツールベクトルであり、基準ツールの寸法形状及びツール取付部7eの姿勢から求められる。
【0074】
そして、基準ツールの先端部のZ位置を変えないようにXY平面内(ベース座標系)で基準ツールを移動させ、基準ツールを平板16の当接面16aの複数箇所に当接させ、その当接時における基準ツールの先端部の位置(bXbc, bYbc, bZbc)と、変位センサ15の出力値δLとを記録する(図5(b)参照)。実際には、基準ツールをXY平面に平行に移動させずに、一度、基準ツールを平板から離してから平行移動させ、同じ高さまで戻すことでツールの変形を防ぐ。この操作を繰り返すことにより、数式4の未知数の数以上の回数の計測を行う。このようにして得られた計測結果を元に、平板16の傾きを補正するための、平板16上におけるX,Y位置とZ位置との間の相関関係を求める。
【0075】
具体的には、ツール先端位置とそれに対応したセンサ値は、計測した数だけ得られるので、ツール先端部のX,Y位置(bXbc, bYbc)を入力として、変位センサ15の出力値の補正量Lbを出力する線形補間テーブルを求める。または、テーブルの代わりに、数式16に示すような平面の方程式を求めてもよい。
【0076】
【数16】
【0077】
なお、A、B,Z0は係数であり、この3つの値は、計測した回数だけ得られている基準ツールの先端位置X,Yとセンサ出力値δLで求まるベクトル(X、Y,Z)=(bXbc,bYbc,δL+bZbc)を数式16に代入して得られる連立方程式を解くことで求めることができる。
【0078】
次いで、ロボット2のツール取付部7eに取り付けられた基準ツールを計測対象のツール8に交換し、第1実施形態と同様に、ツール8の球面部8aを平板16に対して少なくとも未知数の数と同じ回数当接させ、第1実施形態の数式2を数式8に置き換えた(即ち、数式2中のδLをδL−Lbに置き換えた)うえで数式4を求める。その際のLbの値については、前記線形補間テーブルまたは数式16を用いて、当接時のX,Y位置に対応するLbを求める。そして、この連立方程式を解くことで、ツールベクトルの仮の値を算出する。それ以降は、この得られたツールベクトルの値を用いて同様の計測を繰り返せば、さらにツールベクトルの算出精度を向上させることができる。なお、他の構成・手順等は前述した第1実施形態と同様であるため詳細な説明を省略する。
【0079】
(第3実施形態)
図6は本発明の第3実施形態の光学エリアセンサを示す斜視図である。図6に示すように、本実施形態では、平板16を取り付けたタッチセンサ10の代わりに、非接触の光学エリアセンサ20を用いている。詳しくは、光学エリアセンサ20は、複数の光線を平行に照射する複数の発光部を有する発光装置21と、それら光線を受光する複数の受光部を有する受光装置22とを備えた光電スイッチであり、複数の光線を含む仮想平面が感知面23となっている。そして、光線を受光しない受光部が発生することで、ツール8の球面部8aが感知面23に接触したことを検知できるようになっている。
【0080】
この光学エリアセンサ20は、その感知面23がベース座標系のXY平面と平行になるように任意の高さに設置する。次いで、ロボット2のツール取付部7eに計測対象のツール8を取り付けて、光学エリアセンサ20の上方からゆっくりとアプローチさせる。そして、ツール8の球面部8aが光線を遮ったことを受光装置22で検知した時点で、ロボット2の関節角度を検出することによりツール取付部7eの位置及び姿勢を記録する。この計測は、姿勢を変えて少なくとも3回(又はL0とRcが未知数の場合には少なくとも4回)以上行う。そして、そのツール取付部7eの位置及び姿勢情報を数式2に代入して連立方程式(4)を算出する。この際、センサ出力値δLの値はゼロとして計算する。それ以降は、第1実施形態に記載手順に従って連立方程式を解くことでツールベクトルが求まる。なお、他の構成・手順等は前述した第1実施形態と同様であるため詳細な説明を省略する。
【0081】
(第4実施形態)
図7は本発明の第4実施形態のロボット2とワークWとの相対位置検出装置30を示す模式図である。なお、第1実施形態と共通する構成については同一符号を付している。図7に示すように、相対位置検出装置30は、産業用のロボット2と、ロボット2を制御する制御手段103とを備えている。制御手段103は、ロボット2に接続されたコントローラ4と、コントローラ4に接続されたコンピュータであるパソコン105とを有している。ロボット2のツール取付部7eには、タッチセンサ10が取り付け固定されている。タッチセンサ10のロッド14の先端には、平板16が固定されている。タッチセンサ10の変位センサ15の出力は、パソコン105に入力されるように構成されている。
【0082】
なお、本実施形態では、タッチセンサ10の変位検出方向および平板16の当接面16aの法線方向が、ツール座標系のZ方向と一致するように設けられているが、必ずしも一致させる必要はない。例えば、タッチセンサ10の変位検出方向がツール座標系のZ方向に一致していない場合には、それを一致させるための行列を予め計測しておき、該行列を用いてタッチセンサ10の座標系をツール座標系に変換するようにパソコン105を設定しておくとよい。
【0083】
また、ロボット2の作業範囲内にはワークWが設けられている。ワークWには、球面部又は尖部からなる当接部を有するターゲットTが3個以上取り付けられている。具体的には、ターゲットTは、球面部Taと、その球面部Taから下方に突出する軸部Tbとを有する金属部材からなり、ワークWに形成された3個以上の基準穴Hに軸部Tbをそれぞれ差し込むことで、各ターゲットTを位置決めしている。そして、ワークWを基準としたワーク座標系に対する球面部Taの位置を三次元計測器などで予め計測しておく。
【0084】
次に、相対位置検出装置30によるロボット2とワークWとの相対位置の検出手順について説明する。図8は図7に示す装置30による相対位置検出方法を説明する図面である。図8に示すように、まず、コントローラ4によりロボット2を操作して平板16をターゲットTの球面部Taに当接させる。その当接時には、タッチセンサ10のロッド14がバネ13の弾性力により変位可能であることで平板16が法線方向に移動するため、当接による負荷が緩和される。さらに、当接は、球面部Taと平板16との間で行われるので、平板16及びタッチセンサ10を1自由度の安価なものとすることができる。
【0085】
平板16の当接面16aにターゲットTの球面部Taに当接させた時点において、ツール取付部7dの位置及び姿勢をロボット2の関節7a〜7dの角度に基づいて計測すると共に、変位センサ15の出力も計測する。そして、そのツール取付部7dの位置及び姿勢と変位センサ15の出力とをパソコン105に記録する。次いで、ロボット2によりツール8の姿勢を変えて、ツール取付部7dの位置及び姿勢と変位センサ15の出力との計測・記録を複数回(後述する連立方程式(18)における未知数の数以上の回数)繰り返す。その際、平板16の当接面16aがターゲットTの球面部Taに当接しさえすれば、各回ごとに当接面16a内における当接位置がずれていてもよい。また、平板16を繰り返し球面部Taに当接させる際の各回の平板16の姿勢は、同一軸線周りの回転にならないよう選ぶようにする。
【0086】
次いで、繰り返し回数分得たツール取付部7dの位置及び姿勢と変位センサ15の出力のデータを用いて後述の連立方程式(18)を解くことで、ターゲットTの球面部Taの中心の位置、即ち、ベース座標系における球面部Taの中心の位置及び方向を示すターゲットベクトルbXbcの成分を求める。図8から分かるように、各ベクトルをツール座標系におけるZ方向の線分上に投影すると、平板16の姿勢に関わらず、常に以下の数式17が成り立つ。
【0087】
【数17】
【0088】
ここで、数式17における記号や変数は、以下の通り定義される。
“・”:ベクトルの内積
Ntz :ツール座標系のZ方向に平行な単位ベクトル
bXbc:ターゲットベクトル(各成分は未知数)
bXbt:ツール取付部までのベクトル(計測データごとに既知)
L0:タッチセンサの自然長(出力0での長さ:未知または既知のどちらでも可)
δL:タッチセンサの出力(縮む方向を正、計測データごとに既知)
Rc:球面部の曲率半径(未知または既知のどちらでも可)
この数式17は、ツール座標系において、ターゲットベクトルbXbtのZ成分から得られる球面部Taの中心のZ位置が、ツール取付部7aのZ位置と平板16の当接面16aのZ位置と球面部Taの曲率半径Rcとの和から得られる球面部Taの中心のZ位置に等しいことを意味している。
【0089】
図9は図7に示す装置30において平板16をターゲットTに対して姿勢を変えて当接させることを説明する図面である。図9に示すように、ロボット2を動作させて平板16の姿勢を複数回変えて計測すると、数式17は計測回数Nと同じ数だけ連立させた以下の連立方程式(18)を得ることができる(Nは未知数の数)。
【0090】
【数18】
【0091】
そして、この連立方程式(18)は一般的に以下のように整理できる。
【0092】
【数19】
【0093】
X,A,Bは、タッチセンサ10の自然長L0(即ち、平板16の初期Z位置)と球面部Taの曲率半径Rcとを未知数として設定する場合には、以下の数式20〜22で表される。
【0094】
【数20】
【0095】
【数21】
【0096】
【数22】
【0097】
一方、タッチセンサ10の自然長L0と球面部8aの曲率半径Rcとを共に既知として設定する場合には、X,A,Bは以下の数式23〜25で表される。
【0098】
【数23】
【0099】
【数24】
【0100】
【数25】
【0101】
そして、数式19を解くことでターゲットベクトルbXbcの各成分が求められる。
【0102】
以上によれば、一方向であるZ位置のみに着目するだけでも、タッチセンサ10の姿勢を変えて平板16をターゲットTの球面部Taに当接させて連立方程式を解くことでターゲットベクトルの成分を求めることができる。そして、Z位置のみに着目することで、ターゲットTの球面部Taを平板16上のどの位置に当接させてもよく(前回の当接位置に対してX,Y位置がずれてもよい)、教示作業をラフに行うことが可能となる。よって、教示作業が簡単となり作業時間の短縮化が図れるとともに、検出精度を向上させることができる。また、タッチセンサ10の自然長L0(即ち、平板16の初期Z位置)と球面部Taの曲率半径Rcとを未知数として設定すれば、当接回数を増やして連立方程式の数を増やすだけで、L0及びRcを予め知る必要がなくなり、教示作業をより簡素化することができる。
【0103】
なお、本実施形態では、ターゲットTの当接部を球面部Taとしたが、尖部としてもよい。その場合には、前記した曲率半径Rcをゼロであるとして扱えば、その他の手順は前記同様である。また、本実施形態ではタッチセンサ10及び平板16を用いたが、その代わりに第3実施形態のような光学エリアセンサ20をツール取付部7eに取り付けて用いてもよい。
【0104】
(第5実施形態)
図10(a)〜(d)は本発明の第5実施形態の相対位置検出方法を説明する図面である。図10(a)〜(d)に示すように、本実施形態では、ワークが設置されるテーブル41を回転可能な駆動軸42で支持したポジショナ40を計測対象物としている。そして、テーブル41にターゲットTを取り付け、テーブル41を回転させてターゲットTを少なくとも3つの位置に移動させ、その3つの位置におけるターゲットベクトルa1,a2,a3の成分を求める。このようにすれば、3つの位置におけるターゲットベクトルa1,a2,a3の成分からポジショナ40の運動方向(駆動軸42の回転中心及び軸心ベクトルなど)を求めることができる。なお、他の構成は前述した第4実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0105】
(第6実施形態)
図11(a)〜(c)は本発明の第6実施形態の相対位置検出方法を説明する図面である。図11(a)〜(c)に示すように、本実施形態では、ロボット2は、床面に設置された走行レール50上を走行可能に設けられている。そして、計測対象物は、走行レール50が設置された床面としている。ロボット2を走行レール50上で少なくとも2つの位置に移動させ、その2つの位置におけるターゲットベクトルb1,b2の成分を求める。このようにすれば、2つの位置におけるターゲットベクトルb1,b2の成分からロボット2の走行軸の位置及びベクトルを求めることができる。なお、他の構成は前述した第4実施形態と同様であるため説明を省略する。
【産業上の利用可能性】
【0106】
以上のように、本発明に係るロボットのツール位置検出方法、ロボットと対象物との相対位置検出方法、及びそれらの装置は、ツール位置やロボットと対象物との相対位置を簡単かつ高精度に検出可能である優れた効果を有しており、生産現場で使用される産業用ロボット等の分野に広く適用すると有益である。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】本発明の第1実施形態に係るロボットのツール位置検出装置を示す模式図である。
【図2】図1に示す装置によるツール位置検出方法を説明する図面である。
【図3】(a)は本発明におけるツールの平板への当接状態を示し、(b)は比較例におけるツールのタッチセンサへの当接状態を示す図面である。
【図4】図1に示す装置においてツールを平板に対して姿勢を変えて当接させることを説明する図面である。
【図5】(a)(b)は本発明の第2実施形態のツールの平板への当接状態を説明する図面である。
【図6】本発明の第3実施形態の光学エリアセンサを示す斜視図である。
【図7】本発明の第4実施形態のロボットとワークとの相対位置検出装置を示す模式図である。
【図8】図7に示す装置による相対位置検出方法を説明する図面である。
【図9】図7に示す装置において平板をターゲットに対して姿勢を変えて当接させることを説明する図面である。
【図10】(a)〜(d)は本発明の第5実施形態の相対位置検出方法を説明する図面である。
【図11】(a)〜(c)は本発明の第6実施形態の相対位置検出方法を説明する図面である。
【符号の説明】
【0108】
1 ツール位置検出装置
2 ロボット
3,103 制御手段
7 アーム
7a〜7d 関節
7e ツール取付部
8 ツール
8a 球面部(先端部)
10 タッチセンサ
13 バネ
16 平板
16a 当接面
20 光学エリアセンサ
23 感知面
30 相対位置検出装置
T ターゲット
Ta 球面部(当接部)
W ワーク(対象物)
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットのツール位置検出方法、ロボットと対象物との相対位置検出方法及びそれらの装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の関節を有するアームの先端にツール(例えば、溶接トーチやエンドミル等)を取り付け、生産現場等で使用される産業用ロボットが知られている。この産業用ロボットでは、作業者が予めティーチングペンダントを用いて作業動作をロボットに教示しておき、本作業においてロボットが当該作業動作を再生することで、作業の自動化が図られるようになっている(例えば、特許文献1等参照)。
【0003】
ロボットがツールでワークに対して作業をする際には、ツールの先端位置及び姿勢が正確に把握されている必要があるが、ツールに寸法誤差がある場合やツールが変形している場合などが考えられるため、予め作業者がツール先端位置及び姿勢を教示するようにしている。具体的には、先端が尖ったツールの場合には、針状の治具の先端に対してツールの先端を姿勢を変えて正確に点接触させ、それらの接触時の教示点からツール先端位置及び姿勢を求めるようにしている。また、その他には、三次元計測器を用いてツールの寸法等を正確に計測するという方法もある。
【0004】
さらに、ロボットがツールでワークに対して作業をする際には、ロボットとワークとの相対位置関係も正確に把握されている必要がある。そこで、予め作業者がロボットに取り付けられたツールを、ワーク上における複数の特徴点(マーキング部、尖部、角部など)に正確に接触させて、それらの接触時の教示点からロボットとワークとの相対位置関係を求めるようにしている。また、その他には、ロボットに視覚センサを取り付け、その視覚センサによりワーク上の特徴点を計測し、ロボットとワークとの相対位置関係を求めるという方法もある。
【特許文献1】特公平6−8730号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、作業者がツール先端位置及び姿勢を教示する際には、ツールの先端を治具の先端に正確に位置決めする必要があり、非常に時間が掛かる。また、非熟練作業者がその作業を行うと、ツールを治具に押し付けすぎてツールが撓んだり、ツールと治具との間に隙間が生じたりして、位置決めが正確に行われない場合があり、教示精度にバラツキが生じる。さらに、三次元計測器を用いる場合には、ツールを一度外して計測作業を行わねばならず面倒であると共に、その装置が大型であると作業現場に持っていくことが困難となる等の問題もある。
【0006】
また、作業者がワーク上の特徴点を教示する際も同様に、非常に時間が掛かると共に、非熟練作業者が行うと教示精度にバラツキが生じる。さらに、視覚センサを用いる場合には、計測精度に光などの影響を受けやすく、作業環境の悪い場所では使用できないと共に、センサが高価であるという問題もある。
【0007】
そこで本発明は、ツール位置やロボットと対象物との相対位置を簡単かつ高精度に検出できるようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は前記事情に鑑みてなされたものであり、本発明に係るロボットのツール位置検出方法は、ロボットのアーム先端のツール取付部に、球面部又は尖部からなる先端部を有するツールを取り付け、前記ツール取付部から前記先端部の中心までのツールベクトルの成分に未知数を設定し、前記先端部を平面に対して前記ツールの姿勢を変えて少なくとも前記未知数の数と同じ回数当接させ、前記当接時の前記ロボットのアームの関節角度に基づいて前記当接時の前記ツール取付部の位置をそれぞれ求め、特定の座標系において、前記平面のZ位置と前記先端部の曲率半径との和から得られる前記先端部の中心のZ位置が、前記ツール取付部のZ位置と前記ツールベクトルのZ成分との和から得られる前記先端部の中心のZ位置に等しいことを意味する連立方程式を少なくとも前記未知数の数と同じ回数連立させ、前記連立方程式を解くことで前記ツールベクトルの成分を求めることを特徴とする。
【0009】
これによれば、一方向であるZ位置のみに着目するだけでも、ツールを姿勢を変えて平面に当接させて連立方程式を解くことでツールベクトルの成分を求めることができる。そして、Z位置のみに着目することで、ツールの先端部を平面上のどの位置に当接させてもよく(前回の当接位置に対してX,Y位置がずれてもよい)、教示作業をラフに行うことが可能となる。よって、教示作業が簡単となり作業時間の短縮化が図れるとともに、検出精度を向上させることができる。なお、ツールの先端部が尖部である場合には、前記曲率半径はゼロであるとして扱うとよい。
【0010】
略法線方向に変位可能な平板と、前記平板の変位を検出可能な変位センサとを用い、前記平面は、前記平板の当接面からなり、前記平面のZ位置を前記変位センサの出力に基づいて求めてもよい。
【0011】
これによれば、ツールの先端部を平板の当接面に当接させた際、平板が変位可能であるため、その当接圧が吸収される。よって、ツールが撓まずに正確な検出が行えるとともに、治具(本発明では平板等)の変形等を防止することができる。また、前記当接は、球面部又は尖部からなる先端部と平面との間で行われるので、平板及び変位センサを1自由度の安価なものとすることができる。
【0012】
光学エリアセンサを用い、前記平面は、前記光学エリアセンサの感知面からなり、前記ツールの前記先端部が前記感知面に接触した時点で、前記ロボットのアームの関節角度を検出してもよい。
【0013】
これによれば、光学的に形成された平面(感知面)にツールの先端部が当接したことを検知すればよいため、ツールの先端部を機械的に平面に接触させずに済み、ツールやセンサに負荷が掛かるのを防止することができる。
【0014】
前記平面に前記先端部が当接していないときにおける前記平面のZ位置と、前記先端部の曲率半径とをさらに未知数とし、前記先端部を平面に対して前記ツールの姿勢を変えて少なくとも全未知数の数と同じ回数当接させ、前記連立方程式を少なくとも全未知数の数と同じ回数連立させてもよい。
【0015】
これによれば、ツールの姿勢を変えて平面に先端部を当接させる回数を増やして、連立方程式の数を増やすだけで、平面のZ位置及び先端部の曲率半径を予め知る必要がなくなり、教示作業をより簡素化することができる。
【0016】
前記ツール取付部に寸法形状が既知の基準ツールを取り付け、前記基準ツールを前記平面内で移動させて前記基準ツールを前記平面の複数箇所に当接させることで、前記平面上のX,Y位置とZ位置との相関関係を予め求め、前記基準ツールに代えて前記ツールを前記ツール取付部に取り付けて前記ツールを前記平面に当接させ、その当接箇所の平面内におけるX,Y位置を、前記検出されたツール取付部の位置および前記ツールの概略寸法形状から求め、前記相関関係により前記X,Y位置に対応するZ位置を求め、その求めたZ位置を前記連立方程式における前記平面のZ位置に代入してもよい。
【0017】
これによれば、平面上のX,Y位置とZ位置との相関関係を予め求め、ツールの先端部が当接した平面上のX,Y位置から前記相関関係を用いてZ位置を補正するため、平面の法線方向が前記特定の座標系におけるZ方向に一致していない場合であっても、正しくツールベクトルの成分を求めることができる。
【0018】
また本発明のロボットと対象物との相対位置検出方法は、ロボットのアーム先端のツール取付部に平面を有する部材を取り付け、球面部又は尖部からなる当接部を有するターゲットを対象物に取り付け、前記当接部の位置及び方向を示すターゲットベクトルの成分に未知数を設定し、前記当接部に対して前記平面を前記部材の姿勢を変えて少なくとも前記未知数の数と同じ回数当接させ、前記当接時の前記ロボットのアームの関節角度に基づいて前記当接時の前記ツール取付部の位置をそれぞれ求め、特定の座標系において、前記ターゲットベクトルのZ成分から得られる前記当接部の中心のZ位置が、前記ツール取付部のZ位置と前記平面のZ位置と前記当接部の曲率半径との和から得られる前記当接部の中心のZ位置に等しいことを意味する連立方程式を少なくとも前記未知数の数と同じ回数連立させ、前記連立方程式を解くことで前記ターゲットベクトルの成分を求めることを特徴とする。
【0019】
これによれば、一方向であるZ位置のみに着目するだけでも、部材の姿勢を変えて平面をターゲットの当接部に当接させて連立方程式を解くことでターゲットベクトルの成分を求めることができる。そして、Z位置のみに着目することで、ターゲットの当接部を平面上のどの位置に当接させてもよく(前回の当接位置に対してX,Y位置がずれてもよい)、教示作業をラフに行うことが可能となる。よって、教示作業が簡単となり作業時間の短縮化が図れるとともに、検出精度を向上させることができる。なお、ターゲットの当接部が尖部である場合には、前記曲率半径はゼロであるとして扱うとよい。
【0020】
略法線方向に変位可能な平板と、前記平板の変位を検出する変位センサとを前記ツール取付部に取り付け、前記平面は、前記平板の当接面からなり、前記平面のZ位置を前記変位センサの出力に基づいて求めてもよい。
【0021】
これによれば、平板をターゲットの当接部に当接させた際、平板が変位可能であるため、その当接圧が吸収される。よって、ターゲットが撓まずに正確な検出が行えるとともに、治具(本発明では平板等)の破壊を防止することができる。また、前記当接は、球面部又は尖部からなる先端部と平面との間で行われるので、平板及び変位センサを1自由度の安価なものとすることができる。
【0022】
光学エリアセンサを前記ツール取付部に取り付け、前記平面は、前記光学エリアセンサの感知面からなり、前記感知面が前記ターゲットに接触した時点で、前記ロボットのアームの関節角度を検出してもよい。
【0023】
これによれば、光学的に形成された平面(感知面)にターゲットの当接部が当接したことを検知すればよいため、ターゲットの当接部を機械的に平面に接触させずに済み、センサやターゲットに負荷が掛かるのを防止することができる。
【0024】
前記平面が前記ターゲットに当接していないときにおける前記平面のZ位置と、前記ターゲットの曲率半径とをさらに未知数とし、前記当接部に対して前記平面を前記部材の姿勢を変えて少なくとも全未知数の数と同じ回数当接させ、前記連立方程式を少なくとも全未知数の数と同じ回数連立させてもよい。
【0025】
これによれば、部材の姿勢を変えて平面にターゲットの当接部を当接させる回数を増やして、連立方程式の数を増やすだけで、平面のZ位置及び先端部の曲率半径を予め知る必要がなくなり、教示作業をより簡素化することができる。
【0026】
前記対象物は、ワークであってもよい。
【0027】
これによれば、ロボットとワークとの相対位置関係を求めることができ、ロボットによるワークの取り扱いを正確に行うことができる。
【0028】
また本発明のロボットのツール位置検出装置は、アーム先端のツール取付部に球面部又は尖部からなる先端部を有するツールが取り付けられるロボットと、前記ロボットを制御する制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記ツール取付部から前記先端部の中心までのツールベクトルの成分に未知数を設定し、前記先端部を平面に対して前記ツールの姿勢を変えて少なくとも前記未知数の数と同じ回数当接させるよう前記ロボットを駆動し、前記当接時の前記ロボットのアームの関節角度に基づいて前記当接時の前記ツール取付部の位置をそれぞれ求め、特定の座標系において、前記平面のZ位置と前記先端部の曲率半径との和から得られる前記先端部の中心のZ位置が、前記ツール取付部のZ位置と前記ツールベクトルのZ成分との和から得られる前記先端部の中心のZ位置に等しいことを意味する連立方程式を少なくとも前記未知数の数と同じ回数連立させ、前記連立方程式を解くことで前記ツールベクトルの成分を求めることを特徴とする。
【0029】
これによれば、前述したツール位置検出方法と同様に、一方向であるZ位置のみに着目するだけでも、ツールを姿勢を変えて平面に当接させて連立方程式を解くことでツールベクトルの成分を求めることができる。そして、Z位置のみに着目することで、ツールの先端部を平面上のどの位置に当接させてもよく(前回の当接位置に対してX,Y位置がずれてもよい)、教示作業をラフに行うことが可能となる。よって、教示作業が簡単となり作業時間の短縮化が図れるとともに、検出精度を向上させることができる。
【0030】
また本発明のロボットと対象物との相対位置検出装置は、アーム先端のツール取付部に平面を有する部材が取り付けられるロボットと、前記ロボットを制御する制御手段と、を備え、前記制御手段は、対象物に取り付けられた球面部又は尖部からなる当接部を有するターゲットの前記当接部の位置及び方向を示すターゲットベクトルの成分に未知数を設定し、前記当接部に対して前記平面を前記部材の姿勢を変えて少なくとも前記未知数の数と同じ回数当接させ、前記当接時の前記ロボットのアームの関節角度に基づいて前記当接時の前記ツール取付部の位置をそれぞれ求め、特定の座標系において、前記ターゲットベクトルのZ成分から得られる前記当接部の中心のZ位置が、前記ツール取付部のZ位置と前記平面のZ位置と前記当接部の曲率半径との和から得られる前記当接部の中心のZ位置に等しいことを意味する連立方程式を前記検出の回数分連立させ、前記連立方程式を解くことで前記ターゲットベクトルの成分を求めることを特徴とする。
【0031】
これによれば、前述した相対位置検出方法と同様に、一方向であるZ位置のみに着目するだけでも、部材の姿勢を変えて平面をターゲットの当接部に当接させて連立方程式を解くことでターゲットベクトルの成分を求めることができる。そして、Z位置のみに着目することで、ターゲットの当接部を平面上のどの位置に当接させてもよく(前回の当接位置に対してX,Y位置がずれてもよい)、教示作業をラフに行うことが可能となる。よって、教示作業が簡単となり作業時間の短縮化が図れるとともに、検出精度を向上させることができる。
【発明の効果】
【0032】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、ツール位置やロボットと対象物との相対位置を簡単かつ高精度に検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明に係る実施形態を図面を参照して説明する。
【0034】
(第1実施形態)
図1は本発明の第1実施形態に係るロボットのツール位置検出装置を示す模式図である。図1に示すように、ロボットのツール位置検出装置1は、産業用のロボット2と、ロボット2を制御する制御手段3とを備えている。制御手段3は、ロボット2に接続されたコントローラ4と、コントローラ4に接続されたコンピュータであるパソコン5とを有している。ロボット2は、地面等の設置面Gに設置される基台6と、基台6から突出するアーム7とを有し、基台6が設置された設置面Gを基準にした座標系をベース座標系と設定している。アーム7にはコントローラ4からの指令により角度変更するように駆動される複数の関節7a〜7dが設けられていると共に、その先端にはフランジ状のツール取付部7eが設けられている。
【0035】
ロボット2には、関節7a〜7dの角度を検出可能なエンコーダ(図示せず)などが組み込まれており、関節7a〜7dの角度と、アーム7を構成するリンクの寸法とにより、ツール取付部7eのベース座標系における位置及び姿勢が分かるようになっている。ツール取付部7eには、球面部又は尖部からなる先端部を有するツール8が取り付け固定されている。具体的には、ツール8には、先端に球面部を有する溶接トーチや、先端に尖部を有するエンドミルなどが使用される。本実施形態では、球面部8aからなる先端部を有するツール8を用いて説明する。なお、ツール取付部7eを基準とした座標系をツール座標系として設定している。
【0036】
ロボット2の設置面Gには、タッチセンサ10が設置されている。タッチセンサ10は、ハウジング11と、ハウジング11内に収容されたバネ受板12と、バネ受板12を上方に付勢するバネ13と、バネ受板12からハウジング11を貫通して上方に突出したロッド14と、ロッド14の上下方向の変位量を検出可能な変位センサ15とを備えている。タッチセンサ10の具体例としては、例えば、キーエンス社製の接触式デジタルセンサ(型番:GT2-H12L)などを使用することができる。タッチセンサ10のロッド14の先端には、上面を当接面とする平板16が固定されている。変位センサ15の出力は、パソコン5に入力されるように構成されている。
【0037】
なお、本実施形態では、タッチセンサ10の変位検出方向および平板16の当接面16a(上面)の法線方向が、ベース座標系のZ方向と一致するように設けられているが、必ずしも一致させる必要はない。例えば、タッチセンサの変位検出方向がベース座標系のZ方向に一致していない場合には、それを一致させるための行列を予め計測しておき、該行列を用いてタッチセンサ10の座標系をベース座標系に変換するようにパソコン5を設定しておくとよい。
【0038】
次に、ツール位置検出装置1によるツール位置検出手順について説明する。図2は図1に示す装置1によるツール位置検出方法を説明する図面である。図1及び2に示すように、まず、コントローラ4によりロボット2を操作して、ツール8の球面部8aをタッチセンサ10の平板16の当接面16aに当接させる。その当接時には、タッチセンサ10のロッド14がバネ13の弾性力により上下に変位可能であることで平板16が下方に移動するため、当接時にツール8に掛かる力が緩和される。さらに、当接は、球面部8aと平板16との間で行われるので、平板16及びタッチセンサ10を1自由度の安価なものとすることができる。
【0039】
また、図3(a)に示すように、平板16と球面部8aとの当接力は、常に平板16の法線方向であるバネ13の伸縮方向にのみ作用するため、ツール8の変形が防止されて正確な計測が行える。つまり、図3(b)の比較例のように、球同士(球面部8aと球体B)の当接の場合等には、球面部8aの中心に向かった力が発生し、当接力がバネ13の伸縮方向に作用するとは限らないため、ツールが変形してしまう場合が考えられるが、本実施形態によればそれが防止される。
【0040】
次いで、図2に戻り、ツール8の球面部8aを平板16の当接面16aに当接させた時点において、ツール取付部7dの位置及び姿勢をロボット2の関節7a〜7dの角度に基づいて計測すると共に、変位センサ15の出力も計測する。そして、そのツール取付部7dの位置及び姿勢と変位センサ15の出力とをパソコン5に記録する。次いで、ロボット2によりツール8の姿勢を変えて、ツール取付部7dの位置及び姿勢と変位センサ15の出力との計測・記録を複数回(後述する連立方程式(3)における未知数の数以上の回数)繰り返す。その際、ツール8の球面部8aが平板16の当接面16aに当接しさえすれば、各回ごとに当接面16a内における当接位置がずれていてもよい。また、球面部8aを繰り返し平板16に当接させる際の各回のツール8の姿勢は、同一軸線周りの回転にならないよう選ぶようにする(例えば、ツール8が、鉛直方向下向き、X軸周りに±45度、Y軸周りに±45度の5姿勢など)。
【0041】
次いで、繰り返し回数分得たツール取付部7dの位置及び姿勢と変位センサ15の出力のデータを用いて後述の連立方程式(3)を解くことで、ツール8の球面部8aの中心の位置、即ち、ツール取付部7dから球面部8aの中心までのツールベクトルtXtcの成分を求める。図2から分かるように、各ベクトルをベース座標系におけるZ方向の線分上に投影すると、ツール8の姿勢に関わらず、常に以下の数式1が成り立つ。
【0042】
【数1】
【0043】
ここで、数式1における記号や変数は、以下の通り定義される。
“・”:ベクトルの内積
“*”:行列とベクトルの積
Nbz :ベース座標系のZ方向に平行な単位ベクトル、即ち、(0,0,1)の転置ベクトル
bXbt:ツール取付部までのベクトル(計測データごとに既知)
Rbt :ベース座標系とツール座標系との間の座標変換行列(計測データごとに既知)
tXtc:ツールベクトル(各成分は未知数)
L0:タッチセンサの自然長(出力0のときの長さ:未知または既知のどちらでも可)
δL:タッチセンサの出力(縮む方向を正、計測データごとに既知)
Rc:球面部の曲率半径(未知または既知のどちらでも可)
この数式1は、ベース座標系において、平板16の当接面16aのZ位置と球面部8aの曲率半径Rcとの和から得られる球面部の中心のZ位置が、ツール取付部7eのZ位置とツールベクトルtXtcのZ成分との和から得られる球面部8aの中心のZ位置に等しいことを意味している。
【0044】
そして、内積は表現するベクトルを変えても同じ値であるので、後述する連立方程式(3)を後述する数式4にまとめ易くするため、数式1をツール座標系に変換した数式2に書き換える。
【0045】
【数2】
【0046】
ここで、Rtb :Rbtの逆行列(計測データごとに既知)である。
【0047】
図4は図1に示す装置1においてツール8を平板16に対して姿勢を変えて当接させることを説明する図面である。図4に示すように、ロボット2を動作させてツール8の姿勢を複数回変えて計測すると、数式2は計測回数Nと同じ数だけ連立させた以下の連立方程式(3)を得ることができる(Nは未知数の数)。
【0048】
【数3】
【0049】
そして、この連立方程式(3)は一般的に以下のように整理できる。
【0050】
【数4】
【0051】
X,A,Bは、タッチセンサ10の自然長L0(即ち、平板16の初期Z位置)と球面部8aの曲率半径Rcとを未知数として設定する場合には、以下の数式5〜7で表される。
【0052】
【数5】
【0053】
【数6】
【0054】
【数7】
【0055】
一方、タッチセンサ10の自然長L0と球面部8aの曲率半径Rcとを共に既知として設定する場合には、X,A,Bは以下の数式8〜10で表される。
【0056】
【数8】
【0057】
【数9】
【0058】
【数10】
【0059】
そして、行列Aが正則の場合(N=未知数の数)は、未知数のベクトルXは、以下の数式11で表される。
【0060】
【数11】
【0061】
一方、行列Aが非正則の場合(N>未知数の数)は、未知数のベクトルXは、以下の数式12で表される。
【0062】
【数12】
【0063】
なお、A+は、以下の数式13に示すようにAの擬似逆行列であり、これにより最小2乗法で求めるとの同じように精度の高い解を得ることができる。
【0064】
【数13】
【0065】
そして、数式11または数式12により、ツールベクトルtXtcの各成分が求められる。
【0066】
以上によれば、一方向であるZ位置のみに着目するだけでも、ツール8を姿勢を変えて平板16に当接させて連立方程式を解くことでツールベクトルtXtcの各成分を求めることができる。そして、Z位置のみに着目することで、ツール8の球面部8aを平板16の当接面16a上の何れの位置に当接させてもよく(前回の当接位置に対してX,Y位置がずれてもよい)、教示作業をラフに行うことが可能となる。よって、教示作業が簡単となり作業時間の短縮化が図れるとともに、検出精度を向上させることができる。また、タッチセンサ10の自然長L0(即ち、平板16の初期Z位置)と球面部8aの曲率半径Rcとを未知数として設定すれば、当接回数を増やして連立方程式の数を増やすだけで、L0及びRcを予め知る必要がなくなり、教示作業をより簡素化することができる。
【0067】
なお、本実施形態では、ツール8の先端部を球面部8aとしたが、ツールの先端部が尖部であってもよい(例えば、ツールをエンドミルとした場合等)。その場合には、前記した曲率半径Rcをゼロであるとして扱えば、その他のツール位置検出手順は前記同様である。また、本実施形態では、連立方程式(3)をツール座標系で解いたが、ベース座標系で解いてもよい。
【0068】
(第2実施形態)
図5(a)(b)は本発明の第2実施形態のツールの平板への当接状態を説明する図面である。図5(a)(b)に示すように、本実施形態は、平板16の法線方向がベース座標系のZ方向に対して傾いた状態でタッチセンサ10のロッド14に固定された場合を想定している。この場合、ツール8の先端の球面部8aを高さが一定となるように動かした場合でも、平板16は上下に変位し、変位センサ15の出力値がLb分だけ変化してしまう。(センサ値として得られるδLの値が右側の(b)図ではLbだけ増加して検出される。)そこで、この影響を補正するために、基礎式である数式2を以下の数式14にように修正する。
【0069】
【数14】
【0070】
そして、ツール8の球面部8aの中心のX,Y位置を入力とし、変位センサ15の出力値の補正量Lbを出力とする補正テーブルまたは補正関数を、以下のように予め求めておく。
【0071】
まず、ロボット2のツール取付部7eに寸法形状が既知の基準ツール(図示せず)を取り付ける。次いで、ロボット2により基準ツールを平板16に当接させ、その当接時における基準ツールの先端部の位置(bXbc, bYbc, bZbc)と、変位センサ15の出力値δLとを記録する(図5(a)参照)。なお、基準ツールの先端部の位置は、基準ツールの概略寸法形状が既知であるため、以下の数式15のようにロボット2のツール取付部7eの位置及び姿勢から求めることができる。
【0072】
【数15】
【0073】
なお、tXtc0はツール取付部7eから基準ツールの先端部の中心までの基準ツールベクトルであり、基準ツールの寸法形状及びツール取付部7eの姿勢から求められる。
【0074】
そして、基準ツールの先端部のZ位置を変えないようにXY平面内(ベース座標系)で基準ツールを移動させ、基準ツールを平板16の当接面16aの複数箇所に当接させ、その当接時における基準ツールの先端部の位置(bXbc, bYbc, bZbc)と、変位センサ15の出力値δLとを記録する(図5(b)参照)。実際には、基準ツールをXY平面に平行に移動させずに、一度、基準ツールを平板から離してから平行移動させ、同じ高さまで戻すことでツールの変形を防ぐ。この操作を繰り返すことにより、数式4の未知数の数以上の回数の計測を行う。このようにして得られた計測結果を元に、平板16の傾きを補正するための、平板16上におけるX,Y位置とZ位置との間の相関関係を求める。
【0075】
具体的には、ツール先端位置とそれに対応したセンサ値は、計測した数だけ得られるので、ツール先端部のX,Y位置(bXbc, bYbc)を入力として、変位センサ15の出力値の補正量Lbを出力する線形補間テーブルを求める。または、テーブルの代わりに、数式16に示すような平面の方程式を求めてもよい。
【0076】
【数16】
【0077】
なお、A、B,Z0は係数であり、この3つの値は、計測した回数だけ得られている基準ツールの先端位置X,Yとセンサ出力値δLで求まるベクトル(X、Y,Z)=(bXbc,bYbc,δL+bZbc)を数式16に代入して得られる連立方程式を解くことで求めることができる。
【0078】
次いで、ロボット2のツール取付部7eに取り付けられた基準ツールを計測対象のツール8に交換し、第1実施形態と同様に、ツール8の球面部8aを平板16に対して少なくとも未知数の数と同じ回数当接させ、第1実施形態の数式2を数式8に置き換えた(即ち、数式2中のδLをδL−Lbに置き換えた)うえで数式4を求める。その際のLbの値については、前記線形補間テーブルまたは数式16を用いて、当接時のX,Y位置に対応するLbを求める。そして、この連立方程式を解くことで、ツールベクトルの仮の値を算出する。それ以降は、この得られたツールベクトルの値を用いて同様の計測を繰り返せば、さらにツールベクトルの算出精度を向上させることができる。なお、他の構成・手順等は前述した第1実施形態と同様であるため詳細な説明を省略する。
【0079】
(第3実施形態)
図6は本発明の第3実施形態の光学エリアセンサを示す斜視図である。図6に示すように、本実施形態では、平板16を取り付けたタッチセンサ10の代わりに、非接触の光学エリアセンサ20を用いている。詳しくは、光学エリアセンサ20は、複数の光線を平行に照射する複数の発光部を有する発光装置21と、それら光線を受光する複数の受光部を有する受光装置22とを備えた光電スイッチであり、複数の光線を含む仮想平面が感知面23となっている。そして、光線を受光しない受光部が発生することで、ツール8の球面部8aが感知面23に接触したことを検知できるようになっている。
【0080】
この光学エリアセンサ20は、その感知面23がベース座標系のXY平面と平行になるように任意の高さに設置する。次いで、ロボット2のツール取付部7eに計測対象のツール8を取り付けて、光学エリアセンサ20の上方からゆっくりとアプローチさせる。そして、ツール8の球面部8aが光線を遮ったことを受光装置22で検知した時点で、ロボット2の関節角度を検出することによりツール取付部7eの位置及び姿勢を記録する。この計測は、姿勢を変えて少なくとも3回(又はL0とRcが未知数の場合には少なくとも4回)以上行う。そして、そのツール取付部7eの位置及び姿勢情報を数式2に代入して連立方程式(4)を算出する。この際、センサ出力値δLの値はゼロとして計算する。それ以降は、第1実施形態に記載手順に従って連立方程式を解くことでツールベクトルが求まる。なお、他の構成・手順等は前述した第1実施形態と同様であるため詳細な説明を省略する。
【0081】
(第4実施形態)
図7は本発明の第4実施形態のロボット2とワークWとの相対位置検出装置30を示す模式図である。なお、第1実施形態と共通する構成については同一符号を付している。図7に示すように、相対位置検出装置30は、産業用のロボット2と、ロボット2を制御する制御手段103とを備えている。制御手段103は、ロボット2に接続されたコントローラ4と、コントローラ4に接続されたコンピュータであるパソコン105とを有している。ロボット2のツール取付部7eには、タッチセンサ10が取り付け固定されている。タッチセンサ10のロッド14の先端には、平板16が固定されている。タッチセンサ10の変位センサ15の出力は、パソコン105に入力されるように構成されている。
【0082】
なお、本実施形態では、タッチセンサ10の変位検出方向および平板16の当接面16aの法線方向が、ツール座標系のZ方向と一致するように設けられているが、必ずしも一致させる必要はない。例えば、タッチセンサ10の変位検出方向がツール座標系のZ方向に一致していない場合には、それを一致させるための行列を予め計測しておき、該行列を用いてタッチセンサ10の座標系をツール座標系に変換するようにパソコン105を設定しておくとよい。
【0083】
また、ロボット2の作業範囲内にはワークWが設けられている。ワークWには、球面部又は尖部からなる当接部を有するターゲットTが3個以上取り付けられている。具体的には、ターゲットTは、球面部Taと、その球面部Taから下方に突出する軸部Tbとを有する金属部材からなり、ワークWに形成された3個以上の基準穴Hに軸部Tbをそれぞれ差し込むことで、各ターゲットTを位置決めしている。そして、ワークWを基準としたワーク座標系に対する球面部Taの位置を三次元計測器などで予め計測しておく。
【0084】
次に、相対位置検出装置30によるロボット2とワークWとの相対位置の検出手順について説明する。図8は図7に示す装置30による相対位置検出方法を説明する図面である。図8に示すように、まず、コントローラ4によりロボット2を操作して平板16をターゲットTの球面部Taに当接させる。その当接時には、タッチセンサ10のロッド14がバネ13の弾性力により変位可能であることで平板16が法線方向に移動するため、当接による負荷が緩和される。さらに、当接は、球面部Taと平板16との間で行われるので、平板16及びタッチセンサ10を1自由度の安価なものとすることができる。
【0085】
平板16の当接面16aにターゲットTの球面部Taに当接させた時点において、ツール取付部7dの位置及び姿勢をロボット2の関節7a〜7dの角度に基づいて計測すると共に、変位センサ15の出力も計測する。そして、そのツール取付部7dの位置及び姿勢と変位センサ15の出力とをパソコン105に記録する。次いで、ロボット2によりツール8の姿勢を変えて、ツール取付部7dの位置及び姿勢と変位センサ15の出力との計測・記録を複数回(後述する連立方程式(18)における未知数の数以上の回数)繰り返す。その際、平板16の当接面16aがターゲットTの球面部Taに当接しさえすれば、各回ごとに当接面16a内における当接位置がずれていてもよい。また、平板16を繰り返し球面部Taに当接させる際の各回の平板16の姿勢は、同一軸線周りの回転にならないよう選ぶようにする。
【0086】
次いで、繰り返し回数分得たツール取付部7dの位置及び姿勢と変位センサ15の出力のデータを用いて後述の連立方程式(18)を解くことで、ターゲットTの球面部Taの中心の位置、即ち、ベース座標系における球面部Taの中心の位置及び方向を示すターゲットベクトルbXbcの成分を求める。図8から分かるように、各ベクトルをツール座標系におけるZ方向の線分上に投影すると、平板16の姿勢に関わらず、常に以下の数式17が成り立つ。
【0087】
【数17】
【0088】
ここで、数式17における記号や変数は、以下の通り定義される。
“・”:ベクトルの内積
Ntz :ツール座標系のZ方向に平行な単位ベクトル
bXbc:ターゲットベクトル(各成分は未知数)
bXbt:ツール取付部までのベクトル(計測データごとに既知)
L0:タッチセンサの自然長(出力0での長さ:未知または既知のどちらでも可)
δL:タッチセンサの出力(縮む方向を正、計測データごとに既知)
Rc:球面部の曲率半径(未知または既知のどちらでも可)
この数式17は、ツール座標系において、ターゲットベクトルbXbtのZ成分から得られる球面部Taの中心のZ位置が、ツール取付部7aのZ位置と平板16の当接面16aのZ位置と球面部Taの曲率半径Rcとの和から得られる球面部Taの中心のZ位置に等しいことを意味している。
【0089】
図9は図7に示す装置30において平板16をターゲットTに対して姿勢を変えて当接させることを説明する図面である。図9に示すように、ロボット2を動作させて平板16の姿勢を複数回変えて計測すると、数式17は計測回数Nと同じ数だけ連立させた以下の連立方程式(18)を得ることができる(Nは未知数の数)。
【0090】
【数18】
【0091】
そして、この連立方程式(18)は一般的に以下のように整理できる。
【0092】
【数19】
【0093】
X,A,Bは、タッチセンサ10の自然長L0(即ち、平板16の初期Z位置)と球面部Taの曲率半径Rcとを未知数として設定する場合には、以下の数式20〜22で表される。
【0094】
【数20】
【0095】
【数21】
【0096】
【数22】
【0097】
一方、タッチセンサ10の自然長L0と球面部8aの曲率半径Rcとを共に既知として設定する場合には、X,A,Bは以下の数式23〜25で表される。
【0098】
【数23】
【0099】
【数24】
【0100】
【数25】
【0101】
そして、数式19を解くことでターゲットベクトルbXbcの各成分が求められる。
【0102】
以上によれば、一方向であるZ位置のみに着目するだけでも、タッチセンサ10の姿勢を変えて平板16をターゲットTの球面部Taに当接させて連立方程式を解くことでターゲットベクトルの成分を求めることができる。そして、Z位置のみに着目することで、ターゲットTの球面部Taを平板16上のどの位置に当接させてもよく(前回の当接位置に対してX,Y位置がずれてもよい)、教示作業をラフに行うことが可能となる。よって、教示作業が簡単となり作業時間の短縮化が図れるとともに、検出精度を向上させることができる。また、タッチセンサ10の自然長L0(即ち、平板16の初期Z位置)と球面部Taの曲率半径Rcとを未知数として設定すれば、当接回数を増やして連立方程式の数を増やすだけで、L0及びRcを予め知る必要がなくなり、教示作業をより簡素化することができる。
【0103】
なお、本実施形態では、ターゲットTの当接部を球面部Taとしたが、尖部としてもよい。その場合には、前記した曲率半径Rcをゼロであるとして扱えば、その他の手順は前記同様である。また、本実施形態ではタッチセンサ10及び平板16を用いたが、その代わりに第3実施形態のような光学エリアセンサ20をツール取付部7eに取り付けて用いてもよい。
【0104】
(第5実施形態)
図10(a)〜(d)は本発明の第5実施形態の相対位置検出方法を説明する図面である。図10(a)〜(d)に示すように、本実施形態では、ワークが設置されるテーブル41を回転可能な駆動軸42で支持したポジショナ40を計測対象物としている。そして、テーブル41にターゲットTを取り付け、テーブル41を回転させてターゲットTを少なくとも3つの位置に移動させ、その3つの位置におけるターゲットベクトルa1,a2,a3の成分を求める。このようにすれば、3つの位置におけるターゲットベクトルa1,a2,a3の成分からポジショナ40の運動方向(駆動軸42の回転中心及び軸心ベクトルなど)を求めることができる。なお、他の構成は前述した第4実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0105】
(第6実施形態)
図11(a)〜(c)は本発明の第6実施形態の相対位置検出方法を説明する図面である。図11(a)〜(c)に示すように、本実施形態では、ロボット2は、床面に設置された走行レール50上を走行可能に設けられている。そして、計測対象物は、走行レール50が設置された床面としている。ロボット2を走行レール50上で少なくとも2つの位置に移動させ、その2つの位置におけるターゲットベクトルb1,b2の成分を求める。このようにすれば、2つの位置におけるターゲットベクトルb1,b2の成分からロボット2の走行軸の位置及びベクトルを求めることができる。なお、他の構成は前述した第4実施形態と同様であるため説明を省略する。
【産業上の利用可能性】
【0106】
以上のように、本発明に係るロボットのツール位置検出方法、ロボットと対象物との相対位置検出方法、及びそれらの装置は、ツール位置やロボットと対象物との相対位置を簡単かつ高精度に検出可能である優れた効果を有しており、生産現場で使用される産業用ロボット等の分野に広く適用すると有益である。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】本発明の第1実施形態に係るロボットのツール位置検出装置を示す模式図である。
【図2】図1に示す装置によるツール位置検出方法を説明する図面である。
【図3】(a)は本発明におけるツールの平板への当接状態を示し、(b)は比較例におけるツールのタッチセンサへの当接状態を示す図面である。
【図4】図1に示す装置においてツールを平板に対して姿勢を変えて当接させることを説明する図面である。
【図5】(a)(b)は本発明の第2実施形態のツールの平板への当接状態を説明する図面である。
【図6】本発明の第3実施形態の光学エリアセンサを示す斜視図である。
【図7】本発明の第4実施形態のロボットとワークとの相対位置検出装置を示す模式図である。
【図8】図7に示す装置による相対位置検出方法を説明する図面である。
【図9】図7に示す装置において平板をターゲットに対して姿勢を変えて当接させることを説明する図面である。
【図10】(a)〜(d)は本発明の第5実施形態の相対位置検出方法を説明する図面である。
【図11】(a)〜(c)は本発明の第6実施形態の相対位置検出方法を説明する図面である。
【符号の説明】
【0108】
1 ツール位置検出装置
2 ロボット
3,103 制御手段
7 アーム
7a〜7d 関節
7e ツール取付部
8 ツール
8a 球面部(先端部)
10 タッチセンサ
13 バネ
16 平板
16a 当接面
20 光学エリアセンサ
23 感知面
30 相対位置検出装置
T ターゲット
Ta 球面部(当接部)
W ワーク(対象物)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットのアーム先端のツール取付部に、球面部又は尖部からなる先端部を有するツールを取り付け、
前記ツール取付部から前記先端部の中心までのツールベクトルの成分に未知数を設定し、
前記先端部を平面に対して前記ツールの姿勢を変えて少なくとも前記未知数の数と同じ回数当接させ、
前記当接時の前記ロボットのアームの関節角度に基づいて前記当接時の前記ツール取付部の位置をそれぞれ求め、
特定の座標系において、前記平面のZ位置と前記先端部の曲率半径との和から得られる前記先端部の中心のZ位置が、前記ツール取付部のZ位置と前記ツールベクトルのZ成分との和から得られる前記先端部の中心のZ位置に等しいことを意味する連立方程式を少なくとも前記未知数の数と同じ回数連立させ、
前記連立方程式を解くことで前記ツールベクトルの成分を求めることを特徴とするロボットのツール位置検出方法。
【請求項2】
略法線方向に変位可能な平板と、前記平板の変位を検出可能な変位センサとを用い、
前記平面は、前記平板の当接面からなり、
前記平面のZ位置を前記変位センサの出力に基づいて求めることを特徴とする請求項1に記載のロボットのツール位置検出方法。
【請求項3】
光学エリアセンサを用い、
前記平面は、前記光学エリアセンサの感知面からなり、
前記ツールの前記先端部が前記感知面に接触した時点で、前記ロボットのアームの関節角度を検出することを特徴とする請求項1に記載のロボットのツール位置検出方法。
【請求項4】
前記平面に前記先端部が当接していないときにおける前記平面のZ位置と、前記先端部の曲率半径とをさらに未知数とし、
前記先端部を平面に対して前記ツールの姿勢を変えて少なくとも全未知数の数と同じ回数当接させ、前記連立方程式を少なくとも全未知数の数と同じ回数連立させることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のロボットのツール位置検出方法。
【請求項5】
前記ツール取付部に寸法形状が既知の基準ツールを取り付け、前記基準ツールを前記平面内で移動させて前記基準ツールを前記平面の複数箇所に当接させることで、前記平面上のX,Y位置とZ位置との相関関係を予め求め、
前記基準ツールに代えて前記ツールを前記ツール取付部に取り付けて前記ツールを前記平面に当接させ、その当接箇所の平面内におけるX,Y位置を、前記検出されたツール取付部の位置および前記ツールの概略寸法形状から求め、
前記相関関係により前記X,Y位置に対応するZ位置を求め、その求めたZ位置を前記連立方程式における前記平面のZ位置に代入することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のロボットのツール位置検出方法。
【請求項6】
ロボットのアーム先端のツール取付部に平面を有する部材を取り付け、
球面部又は尖部からなる当接部を有するターゲットを対象物に取り付け、
前記当接部の位置及び方向を示すターゲットベクトルの成分に未知数を設定し、
前記当接部に対して前記平面を前記部材の姿勢を変えて少なくとも前記未知数の数と同じ回数当接させ、
前記当接時の前記ロボットのアームの関節角度に基づいて前記当接時の前記ツール取付部の位置をそれぞれ求め、
特定の座標系において、前記ターゲットベクトルのZ成分から得られる前記当接部の中心のZ位置が、前記ツール取付部のZ位置と前記平面のZ位置と前記当接部の曲率半径との和から得られる前記当接部の中心のZ位置に等しいことを意味する連立方程式を少なくとも前記未知数の数と同じ回数連立させ、
前記連立方程式を解くことで前記ターゲットベクトルの成分を求めることを特徴とするロボットと対象物との相対位置検出方法。
【請求項7】
略法線方向に変位可能な平板と、前記平板の変位を検出する変位センサとを前記ツール取付部に取り付け、
前記平面は、前記平板の当接面からなり、
前記平面のZ位置を前記変位センサの出力に基づいて求めることを特徴とする請求項6に記載のロボットと対象物との相対位置検出方法。
【請求項8】
光学エリアセンサを前記ツール取付部に取り付け、
前記平面は、前記光学エリアセンサの感知面からなり、
前記感知面が前記ターゲットに接触した時点で、前記ロボットのアームの関節角度を検出することを特徴とする請求項6に記載のロボットと対象物との相対位置検出方法。
【請求項9】
前記平面が前記ターゲットに当接していないときにおける前記平面のZ位置と、前記ターゲットの曲率半径とをさらに未知数とし、
前記当接部に対して前記平面を前記部材の姿勢を変えて少なくとも全未知数の数と同じ回数当接させ、前記連立方程式を少なくとも全未知数の数と同じ回数連立させることを特徴とする請求項6乃至8のいずれかに記載のロボットと対象物との相対位置検出方法。
【請求項10】
前記対象物は、ワークであることを特徴とする請求項6乃至9に記載のロボットと対象物との相対位置検出方法。
【請求項11】
アーム先端のツール取付部に球面部又は尖部からなる先端部を有するツールが取り付けられるロボットと、
前記ロボットを制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、
前記ツール取付部から前記先端部の中心までのツールベクトルの成分に未知数を設定し、
前記先端部を平面に対して前記ツールの姿勢を変えて少なくとも前記未知数の数と同じ回数当接させるよう前記ロボットを駆動し、
前記当接時の前記ロボットのアームの関節角度に基づいて前記当接時の前記ツール取付部の位置をそれぞれ求め、
特定の座標系において、前記平面のZ位置と前記先端部の曲率半径との和から得られる前記先端部の中心のZ位置が、前記ツール取付部のZ位置と前記ツールベクトルのZ成分との和から得られる前記先端部の中心のZ位置に等しいことを意味する連立方程式を少なくとも前記未知数の数と同じ回数連立させ、
前記連立方程式を解くことで前記ツールベクトルの成分を求めることを特徴とするロボットのツール位置検出装置。
【請求項12】
アーム先端のツール取付部に平面を有する部材が取り付けられるロボットと、
前記ロボットを制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、
対象物に取り付けられた球面部又は尖部からなる当接部を有するターゲットの前記当接部の位置及び方向を示すターゲットベクトルの成分に未知数を設定し、
前記当接部に対して前記平面を前記部材の姿勢を変えて少なくとも前記未知数の数と同じ回数当接させ、
前記当接時の前記ロボットのアームの関節角度に基づいて前記当接時の前記ツール取付部の位置をそれぞれ求め、
特定の座標系において、前記ターゲットベクトルのZ成分から得られる前記当接部の中心のZ位置が、前記ツール取付部のZ位置と前記平面のZ位置と前記当接部の曲率半径との和から得られる前記当接部の中心のZ位置に等しいことを意味する連立方程式を前記検出の回数分連立させ、
前記連立方程式を解くことで前記ターゲットベクトルの成分を求めることを特徴とするロボットと対象物との相対位置検出装置。
【請求項1】
ロボットのアーム先端のツール取付部に、球面部又は尖部からなる先端部を有するツールを取り付け、
前記ツール取付部から前記先端部の中心までのツールベクトルの成分に未知数を設定し、
前記先端部を平面に対して前記ツールの姿勢を変えて少なくとも前記未知数の数と同じ回数当接させ、
前記当接時の前記ロボットのアームの関節角度に基づいて前記当接時の前記ツール取付部の位置をそれぞれ求め、
特定の座標系において、前記平面のZ位置と前記先端部の曲率半径との和から得られる前記先端部の中心のZ位置が、前記ツール取付部のZ位置と前記ツールベクトルのZ成分との和から得られる前記先端部の中心のZ位置に等しいことを意味する連立方程式を少なくとも前記未知数の数と同じ回数連立させ、
前記連立方程式を解くことで前記ツールベクトルの成分を求めることを特徴とするロボットのツール位置検出方法。
【請求項2】
略法線方向に変位可能な平板と、前記平板の変位を検出可能な変位センサとを用い、
前記平面は、前記平板の当接面からなり、
前記平面のZ位置を前記変位センサの出力に基づいて求めることを特徴とする請求項1に記載のロボットのツール位置検出方法。
【請求項3】
光学エリアセンサを用い、
前記平面は、前記光学エリアセンサの感知面からなり、
前記ツールの前記先端部が前記感知面に接触した時点で、前記ロボットのアームの関節角度を検出することを特徴とする請求項1に記載のロボットのツール位置検出方法。
【請求項4】
前記平面に前記先端部が当接していないときにおける前記平面のZ位置と、前記先端部の曲率半径とをさらに未知数とし、
前記先端部を平面に対して前記ツールの姿勢を変えて少なくとも全未知数の数と同じ回数当接させ、前記連立方程式を少なくとも全未知数の数と同じ回数連立させることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のロボットのツール位置検出方法。
【請求項5】
前記ツール取付部に寸法形状が既知の基準ツールを取り付け、前記基準ツールを前記平面内で移動させて前記基準ツールを前記平面の複数箇所に当接させることで、前記平面上のX,Y位置とZ位置との相関関係を予め求め、
前記基準ツールに代えて前記ツールを前記ツール取付部に取り付けて前記ツールを前記平面に当接させ、その当接箇所の平面内におけるX,Y位置を、前記検出されたツール取付部の位置および前記ツールの概略寸法形状から求め、
前記相関関係により前記X,Y位置に対応するZ位置を求め、その求めたZ位置を前記連立方程式における前記平面のZ位置に代入することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のロボットのツール位置検出方法。
【請求項6】
ロボットのアーム先端のツール取付部に平面を有する部材を取り付け、
球面部又は尖部からなる当接部を有するターゲットを対象物に取り付け、
前記当接部の位置及び方向を示すターゲットベクトルの成分に未知数を設定し、
前記当接部に対して前記平面を前記部材の姿勢を変えて少なくとも前記未知数の数と同じ回数当接させ、
前記当接時の前記ロボットのアームの関節角度に基づいて前記当接時の前記ツール取付部の位置をそれぞれ求め、
特定の座標系において、前記ターゲットベクトルのZ成分から得られる前記当接部の中心のZ位置が、前記ツール取付部のZ位置と前記平面のZ位置と前記当接部の曲率半径との和から得られる前記当接部の中心のZ位置に等しいことを意味する連立方程式を少なくとも前記未知数の数と同じ回数連立させ、
前記連立方程式を解くことで前記ターゲットベクトルの成分を求めることを特徴とするロボットと対象物との相対位置検出方法。
【請求項7】
略法線方向に変位可能な平板と、前記平板の変位を検出する変位センサとを前記ツール取付部に取り付け、
前記平面は、前記平板の当接面からなり、
前記平面のZ位置を前記変位センサの出力に基づいて求めることを特徴とする請求項6に記載のロボットと対象物との相対位置検出方法。
【請求項8】
光学エリアセンサを前記ツール取付部に取り付け、
前記平面は、前記光学エリアセンサの感知面からなり、
前記感知面が前記ターゲットに接触した時点で、前記ロボットのアームの関節角度を検出することを特徴とする請求項6に記載のロボットと対象物との相対位置検出方法。
【請求項9】
前記平面が前記ターゲットに当接していないときにおける前記平面のZ位置と、前記ターゲットの曲率半径とをさらに未知数とし、
前記当接部に対して前記平面を前記部材の姿勢を変えて少なくとも全未知数の数と同じ回数当接させ、前記連立方程式を少なくとも全未知数の数と同じ回数連立させることを特徴とする請求項6乃至8のいずれかに記載のロボットと対象物との相対位置検出方法。
【請求項10】
前記対象物は、ワークであることを特徴とする請求項6乃至9に記載のロボットと対象物との相対位置検出方法。
【請求項11】
アーム先端のツール取付部に球面部又は尖部からなる先端部を有するツールが取り付けられるロボットと、
前記ロボットを制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、
前記ツール取付部から前記先端部の中心までのツールベクトルの成分に未知数を設定し、
前記先端部を平面に対して前記ツールの姿勢を変えて少なくとも前記未知数の数と同じ回数当接させるよう前記ロボットを駆動し、
前記当接時の前記ロボットのアームの関節角度に基づいて前記当接時の前記ツール取付部の位置をそれぞれ求め、
特定の座標系において、前記平面のZ位置と前記先端部の曲率半径との和から得られる前記先端部の中心のZ位置が、前記ツール取付部のZ位置と前記ツールベクトルのZ成分との和から得られる前記先端部の中心のZ位置に等しいことを意味する連立方程式を少なくとも前記未知数の数と同じ回数連立させ、
前記連立方程式を解くことで前記ツールベクトルの成分を求めることを特徴とするロボットのツール位置検出装置。
【請求項12】
アーム先端のツール取付部に平面を有する部材が取り付けられるロボットと、
前記ロボットを制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、
対象物に取り付けられた球面部又は尖部からなる当接部を有するターゲットの前記当接部の位置及び方向を示すターゲットベクトルの成分に未知数を設定し、
前記当接部に対して前記平面を前記部材の姿勢を変えて少なくとも前記未知数の数と同じ回数当接させ、
前記当接時の前記ロボットのアームの関節角度に基づいて前記当接時の前記ツール取付部の位置をそれぞれ求め、
特定の座標系において、前記ターゲットベクトルのZ成分から得られる前記当接部の中心のZ位置が、前記ツール取付部のZ位置と前記平面のZ位置と前記当接部の曲率半径との和から得られる前記当接部の中心のZ位置に等しいことを意味する連立方程式を前記検出の回数分連立させ、
前記連立方程式を解くことで前記ターゲットベクトルの成分を求めることを特徴とするロボットと対象物との相対位置検出装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−151766(P2010−151766A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−333175(P2008−333175)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(000000974)川崎重工業株式会社 (1,710)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(000000974)川崎重工業株式会社 (1,710)
【Fターム(参考)】
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