説明

ロボット追従式画像検査装置、ロボット追従式画像検査方法及びロボット追従式画像検査に用いるコンピュータプログラム

【課題】設置場所における外部からの光の影響を受け難く、外部からの光の影響を避けるための調整を必要としない、画像検査装置、画像検査方法及び画像検査に用いるコンピュータプログラムを提供する。
【解決手段】画像検査装置は、ガラス140上のウレタン塗布領域に塗布されたウレタン144に赤外線を照射する赤外線照射装置120と、ウレタン144を撮影する赤外線撮影装置116とが取り付けられたロボットハンド112を備え、ロボットハンド112はウレタン塗布領域に沿って設定された経路上を移動することができる構成とされている。そして、ロボットハンド112が前記径路上を移動する際に、赤外線照射装置120によって赤外線が照射されたウレタン144を、赤外線撮影装置116により連続撮影して画像を取得し、赤外線撮影装置116により取得した画像によりウレタン144の塗布状態を検査する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ロボット追従式画像検査装置、ロボット追従式画像検査方法及びロボット追従式画像検査に用いるコンピュータプログラムに関する。具体的には、検査対象物上に帯状の検査対象領域が設定され、検査対象領域に沿って設定された経路をロボットハンドが移動する際に、ロボットハンドに取付けられた撮影装置により検査対象領域を連続撮影して画像を取得し、撮影装置によって得られた画像により検査対象領域の状態を検査する、ロボット追従式画像検査装置、ロボット追従式画像検査方法及びロボット追従式画像検査に用いるコンピュータプログラムに関する。
この発明の利用分野としては、自動車用の固定窓ガラスの周辺部に帯状に塗布されるプライマの塗布状態の検査、あるいは、プライマを塗布した上から線状に塗布される接着用のウレタンの塗布状態の検査を挙げることができる。
【背景技術】
【0002】
自動車の固定窓用の窓ガラスを自動車の開口部に取付ける際には、まず、窓ガラスの周辺部および自動車の開口部に液状のプライマを塗布して乾燥させ、窓ガラスおよび自動車の開口部の接着部位に接着剤がなじみやすい状態にする。次に、窓ガラスのプライマを塗布した部位に接着剤として例えばウレタンを塗布する。そして、窓ガラスにウレタンが塗布された部位を、自動車の開口部のプライマが塗布された部位に貼り合わせて、窓ガラスを自動車の開口部に取付け固定する。
図1にプライマ42が塗布されたガラス40の平面図を示す。プライマ42は図1に示すとおり帯状の領域に塗布される。図2にはプライマ42の上にウレタン44が塗布されたガラス40の断面と、取付け対象であるプライマ42が塗布された自動車の開口部41の断面を示す。ガラス40に塗布された状態のウレタン44の断面は、図2に示すとおり、三角形となっている。
ここで、プライマや接着剤に塗りむらが生じると、窓ガラスと自動車の開口部との間の接着不良につながり雨漏りの原因となることもあるので、プライマ及び接着剤の塗布状態を検査することが望ましい。
プライマは接着部位への下塗りに用いられるものであるため、プライマの塗布状態の検査では平面的な塗布状態の検査が必要とされる。一方、接着剤は粘りが強く窓ガラスに盛り上がった状態で塗布され、窓ガラスと自動車の開口部の間の接着部位に充填されるため、接着剤の塗布状態の検査では塗布された量の検査が必要とされる。
【0003】
先行技術として、特開2006−305426号公報(特許文献1)には、8台のデジタルカメラでプライマ塗布前およびプライマ塗布後のウインドガラスを撮影し、プライマ塗布前後の画像を情報処理装置で比較することにより、プライマの塗布状態を検査する方法が提案されている。
しかしながら、特許文献1に記載された技術では、8台のカメラでウインドガラスのプライマ塗布範囲の全体をカバーする必要があるため、一台のカメラでカバーする範囲が広く、撮影された画像の解像度が低いという問題があった。そのためにプライマの塗布状態の検査精度が十分でなかった。
また、特許文献1に記載の技術では、カメラおよび撮影のための光源がプライマの塗布の障害とならないよう、カメラと光源用の蛍光灯はプライマ塗布ステーションの上部に設置されている。そのため、カメラとウインドガラスの距離が大きく、外部からの光が撮影画像に影響を与えやすい環境にある。そして、特許文献1に記載の技術では、プライマ塗布前とプライマ塗布後の輝度の変化を利用してプライマの塗布状態の適否を判定しているため、塗布前の画像撮影時と塗布後の画像撮影時で外部からの光の影響が異なる場合には塗布状態の適否の判定に影響がでてしまう。
このように、従来技術では、撮影画像の精度が低く、検査対象領域の照明を均一に保つことが困難なことから、プライマの塗布状態の良否判定の精度が十分とはいえなかった。また、カメラを8台使用する構成であるため、検査用の設備が複雑で高価なものとなるという問題もあった。
【0004】
そこで、本願の発明者は、検査対象領域が帯状であることに注目し、検査対象領域を至近距離から照明した状態で撮影範囲を少しずつずらして至近距離から撮影し、検査対象領域全体をカバーする画像を取得すれば、精度が高く、検査対象領域の照明を均一に保った画像が得られると考えた。そして、ロボット追従式画像検査という技術思想を創作し、特許出願をした。この出願は、特開2009−36705号公報(特許文献2)として、出願公開されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−305426号公報
【特許文献2】特開2009−36705号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ロボット追従式画像検査装置は、ロボットハンドが検査対象領域に沿った径路上を移動する際に、ロボットハンドに取付けられた照明装置で照明された検査対象領域をロボットハンドに取付けられた撮影装置で連続撮影して画像を取得し、この画像により検査対象領域の検査をするものである。
本願の発明者が特許文献2に記載したロボット追従式画像検査装置は、複数の現場に導入され、画像検査の精度が従来技術と比べて格段に向上していることが確認されている。しかしながら、ロボット追従式画像検査装置が導入される現場における外部からの光の影響は、検査対象領域を至近距離から照明した状態で撮影する構成としても無視することはできなかった。そして、設置現場の環境に合わせて、ロボット追従式画像検査装置の画像処理における閾値を変更する等の調整が必要となる場合があった。
【0007】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、設置場所における外部からの光の影響を受け難く、外部からの光の影響を避けるための調整を必要としない、画像検査装置、画像検査方法及び画像検査に用いるコンピュータプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本願の発明者は、ロボット追従式画像検査の技術思想を発展させて、自然光や照明光にほとんど影響されずに検査対象領域の検査をすることができる手段を見いだした。そして、本発明に係る各発明は次の手段をとる。
まず、本発明の第1の発明は、検査対象物上に帯状に設定された検査対象領域を撮影した画像から、該検査対象領域の状態を検査する画像検査装置であって、
前記検査対象領域に赤外線を照射する赤外線照射装置と、該検査対象領域を撮影する赤外線撮影装置とが取付けられたロボットハンドを備え、該ロボットハンドは該検査対象領域に沿って設定された経路上を移動することができる構成とされており、
前記ロボットハンドが前記径路上を移動する際に、前記赤外線照射装置によって赤外線が照射された検査対象領域を、前記赤外線撮影装置により連続撮影して画像を取得し、該赤外線撮影装置により取得した画像により検査対象領域の状態を検査するロボット追従式画像検査装置である。
ここで、連続撮影とは、前後の撮影画像の撮影範囲が一部重複する時間間隔で連続して画像の撮影をすることを云う。
【0009】
この第1の発明によれば、ロボットハンドに取付けられた赤外線撮影装置により検査対象物上の検査対象領域を至近距離で撮影するので、一枚の画像がカバーする撮影範囲が狭いため、検査対象領域について高精度の画像を得ることができる。このとき赤外線撮影装置で撮影される検査対象領域は至近距離から赤外線照射装置により赤外線が照射されているため、検査対象領域の赤外線画像が得られる。そして、自然光や照明光に含まれる赤外線は非常に弱いので、外部からの光の影響を受けることがほとんど無く、赤外線の照射条件が一定した鮮明な赤外線画像を得ることができる。また、連続撮影によって得られた画像は帯状の検査対象領域を隙間無くカバーしている。そして、取得した赤外線画像により検査対象領域の状態を検査することができる。
よって、設置場所における外部からの光の影響を受け難く、外部からの光の影響を避けるための調整を必要としない画像検査装置を提供することができる。
【0010】
次に、本発明の第2の発明は、上記第1の発明に係るロボット追従式画像検査装置であって、
前記検査対象領域は接着剤の塗布領域であり、前記赤外線撮影装置は、前記接着剤の塗布領域を側方から撮影する構成とされており、前記検査対象領域の状態の検査は接着剤の塗布領域における接着剤の塗布高さの検査であることを特徴とする。
この第2の発明によれば、接着剤は単位長さ当たりに所定の量が塗布される必要があるが、接着剤は粘りが強く検査対象物上に幅と厚みを有する状態で塗布されるので、赤外線が照射された接着剤の塗布領域を側方から赤外線撮影装置により撮影した画像によれば、接着剤の塗布高さを検査することにより接着剤の塗布量を簡便に把握して、接着剤の塗布状態を検査することができる。
【0011】
次に、本発明の第3の発明は、上記第2の発明に係るロボット追従式画像検査装置であって、
前記ロボットハンドには接着剤を塗布する接着剤塗布装置が取付けられており、
前記ロボットハンドが前記検査対象物上に帯状に設定された接着剤の塗布領域に沿って設定された径路上を移動する際に、前記接着剤塗布装置によって検査対象物上に接着剤が塗布されるとともに、該接着剤塗布装置によって接着剤が塗布された直後の接着剤の塗布領域を前記赤外線撮影装置により撮影することを特徴とする。
この第3の発明によれば、ロボットハンドに取付けられた接着剤塗布装置により接着剤の塗布領域に接着剤が塗布されると共に、接着剤塗布装置によって接着剤が塗布された直後の接着剤の塗布領域に赤外線を照射して側方から赤外線撮影装置により撮影する。よって、接着剤の塗布と接着剤の塗布高さの検査を同時に行うことができるため、接着剤の塗布状態の検査を効率よく行うことができる。
【0012】
次に、本発明の第4の発明は、上記第1の発明に係るロボット追従式画像検査装置であって、
前記検査対象領域は接着剤の塗布領域であり、前記赤外線撮影装置は、前記接着剤の塗布領域を側方から撮影する側方撮影装置と該接着剤の塗布領域を上方から撮影する上方撮影装置から構成されており、
前記検査対象領域の状態の検査は、側方撮影装置により取得した画像による接着剤の塗布領域における接着剤の塗布高さの検査、および、上方撮影装置により取得した画像による接着剤の塗布領域における接着剤の塗布位置および塗布幅の検査であることを特徴とする。
この第4の発明によれば、接着剤は所定の量が塗布される必要があるが、接着剤は粘りが強く検査対象物上に幅と厚みを有する状態で塗布されるので、赤外線が照射された接着剤の塗布領域を上方及び側方から赤外線撮影装置により撮影して画像を取得すれば、接着剤の塗布位置、塗布幅及び塗布高さを検査することにより、接着剤の塗布状態を精度良く検査することができる。
【0013】
次に、本発明の第5の発明は、上記第4の発明に係るロボット追従式画像検査装置であって、
前記ロボットハンドには接着剤を塗布する接着剤塗布装置が取付けられており、
前記ロボットハンドが前記検査対象物上に帯状に設定された接着剤の塗布領域に沿って設定された径路上を移動する際に、前記接着剤塗布装置によって検査対象物上に接着剤が塗布されるとともに、該接着剤塗布装置によって接着剤が塗布された直後の接着剤の塗布領域を前記側方撮影装置および前記上方撮影装置により撮影することを特徴とする。
この第5の発明によれば、ロボットハンドに取付けられた接着剤塗布装置により接着剤の塗布領域に接着剤が塗布されると共に、接着剤塗布装置によって接着剤が塗布された直後の接着剤の塗布領域に赤外線を照射して側方及び上方から赤外線撮影装置により撮影する。よって、接着剤の塗布と接着剤の塗布位置、塗布幅及び塗布高さの検査を同時に行うことができるため、接着剤の塗布状態の検査を効率良くかつ精度良く行うことができる。
【0014】
次に、本発明の第6の発明は、上記第1の発明に係るロボット追従式画像検査装置であって、
前記検査対象領域は接着剤の塗布領域であり、前記赤外線撮影装置は、前記接着剤の塗布領域を上方から撮影する構成とされており、前記検査対象領域の状態の検査は接着剤の塗布領域における接着剤の塗布位置および塗布幅の検査であることを特徴とする。
この第6の発明によれば、接着剤は単位長さ当たりに所定の量が塗布される必要があるが、接着剤は粘りが強く検査対象物上に幅と厚みを有する状態で塗布されるので、赤外線が照射された接着剤の塗布領域を上方から赤外線撮影装置により撮影した画像によれば、接着剤の塗布位置及び塗布幅を検査することにより接着剤の塗布量を簡便に把握して、接着剤の塗布状態を検査することができる。
【0015】
次に、本発明の第7の発明は、上記第6の発明に係るロボット追従式画像検査装置であって、
前記ロボットハンドには接着剤を塗布する接着剤塗布装置が取付けられており、
前記ロボットハンドが前記検査対象物上に帯状に設定された接着剤の塗布領域に沿って設定された径路上を移動する際に、前記接着剤塗布装置によって検査対象物上に接着剤が塗布されるとともに、該接着剤塗布装置によって接着剤が塗布された直後の接着剤の塗布領域を前記赤外線撮影装置により撮影することを特徴とする。
この第7の発明によれば、ロボットハンドに取付けられた接着剤塗布装置により接着剤の塗布領域に接着剤が塗布されると共に、接着剤塗布装置によって接着剤が塗布された直後の接着剤の塗布領域に赤外線を照射して上方から赤外線撮影装置により撮影する。よって、接着剤の塗布と接着剤の塗布位置及び塗布幅の検査を同時に行うことができるため、接着剤の塗布状態の検査を効率よく行うことができる。
【0016】
次に、本発明の第8の発明は、上記第2の発明〜第5の発明のいずれかの発明に係るロボット追従式画像検査装置であって、
前記接着剤塗布装置はノズルであり、前記検査対象物はガラス部材であり、前記接着剤はウレタンであることを特徴とする。
この第8の発明によれば、ガラス部材に塗布されたウレタンを少なくとも側方から赤外線撮影装置で撮影することにより、ウレタンの塗布量を簡便に把握して、ウレタンの塗布状態の検査を行うことができる。
【0017】
次に、本発明の第9の発明は、上記第2の発明〜第7の発明のいずれかの発明に係るロボット追従式画像検査装置であって、
前記接着剤塗布装置はシール塗布具であり、前記検査対象物は金属部材であり、前記接着剤はシールであることを特徴とする。
この第9の発明によれば、金属部材に塗布されたシールを少なくとも上方または側方から赤外線撮影装置で撮影する。ここで、シールは半円状に盛り上がって塗布されるので、上方から撮影して塗布幅を検査するか、側方から撮影して塗布高さを検査すれば、シールの塗布量を簡便に把握して、シールの塗布状態を検査することができる。
【0018】
次に、本発明の第10の発明は、上記第1の発明に係るロボット追従式画像検査装置であって、
前記検査対象領域はプライマの塗布領域であり、前記赤外線撮影装置は、前記プライマの塗布領域を上方から撮影する構成とされており、前記検査対象領域の状態の検査はプライマの塗布領域におけるプライマの塗布状態の検査であることを特徴とする。
この第10の発明によれば、プライマは所定の幅で検査対象物上に薄く塗布されるので、赤外線が照射されたプライマの塗布領域を上方から赤外線撮影装置により撮影した画像によれば、プライマの塗布状態の検査が容易であり、プライマの塗布状態を精度良く検査することができる。
【0019】
次に、本発明の第11の発明は、上記第10の発明に係るロボット追従式画像検査装置であって、
前記ロボットハンドにはプライマ塗布用の刷毛が取付けられており、
前記ロボットハンドが前記検査対象物上に帯状に設定されたプライマの塗布領域に沿って設定された径路上を移動する際に、前記刷毛によって検査対象物上にプライマが塗布されるとともに、該刷毛によってプライマが塗布された直後のプライマの塗布領域を前記赤外線撮影装置により撮影することを特徴とする。
この第11の発明によれば、ロボットハンドに取付けられた刷毛によりプライマ塗布領域にプライマが塗布されると共に、刷毛によってプライマが塗布された直後のプライマの塗布領域に赤外線を照射して上方から赤外線撮影装置により撮影する。よって、プライマの塗布とプライマの検査を同時に行うことができるため、プライマの塗布状態の検査を効率よく行うことができる。
【0020】
次に、本発明の第12の発明は、上記第10の発明または第11の発明に係るロボット追従式画像検査装置であって、
前記検査対象物は自動車用のガラス部材であることを特徴とする。
この第12の発明によれば、自動車用のガラス部材に帯状に塗布されたプライマの塗布状態を、精度良く検査することができる。
【0021】
次に、本発明の第13の発明は、検査対象物上に帯状に設定された検査対象領域を撮影した画像から、検査対象領域の状態を検査する画像検査方法であって、
前記検査対象領域に赤外線を照射する赤外線照射装置と、該検査対象領域を撮影する赤外線撮影装置とが取付けられたロボットハンドが、該検査対象領域に沿って設定された経路上を移動する際に、前記赤外線照射装置によって赤外線が照射された検査対象領域を、該赤外線撮影装置により連続撮影して画像を取得し、
前記赤外線撮影装置により取得した画像により検査対象領域の状態を検査するロボット追従式画像検査方法である。
ここで、連続撮影とは、上記第1の発明の場合と同様に、前後の撮影画像の撮影範囲が一部重複する時間間隔で連続して画像の撮影をすることを云う。
【0022】
この第13の発明は、上記第1の発明に係る装置に対応する方法の発明である。
この第13の発明によれば、ロボットハンドに取付けられた赤外線撮影装置により検査対象物上の検査対象領域を至近距離で撮影するので、一枚の画像がカバーする撮影範囲が狭いため、検査対象領域について高精度の画像を得ることができる。このとき赤外線撮影装置で撮影される検査対象領域は至近距離から赤外線照射装置により赤外線が照射されているため、検査対象領域の赤外線画像が得られる。そして、自然光や照明光に含まれる赤外線は非常に弱いので、外部からの光の影響を受けることがほとんど無く、赤外線の照射条件が一定した鮮明な赤外線画像を得ることができる。また、連続撮影によって得られた画像は帯状の検査対象領域を隙間無くカバーしている。そして、取得した赤外線画像により検査対象領域の状態を検査することができる。
よって、設置場所における外部からの光の影響を受け難く、外部からの光の影響を避けるための調整を必要としない画像検査方法を提供することができる。
【0023】
次に、本発明の第14の発明は、検査対象物上に帯状に設定された検査対象領域を撮影した画像から、検査対象領域の状態を検査するコンピュータプログラムであって、
コンピュータを、赤外線照射装置と赤外線撮影装置とが取付けられたロボットハンドが検査対象領域に沿って設定された経路上を移動する際に赤外線照射装置によって赤外線が照射された検査対象領域領域を赤外線撮影装置により連続撮影した画像を取得する画像取得手段と、該画像を処理して検査対象領域の状態を検査する画像処理手段とを備えた画像処理装置として機能させるロボット追従式画像検査に用いるコンピュータプログラムである。
【0024】
この第14の発明によれば、コンピュータが取得した画像は、ロボットハンドに取付けられた赤外線撮影装置によって検査対象物上の検査対象領域を至近距離で撮影した画像であるため、一枚の画像でカバーする撮影範囲が狭く高精度である。また、赤外線撮影装置で撮影される検査対象領域は至近距離から赤外線照射装置により赤外線が照射されているため、外部からの光の影響を受けにくく赤外線の照射条件が一定しており、画像が鮮明である。また、画像は連続撮影されているため、得られた画像は、帯状の検査対象領域全体を隙間無くカバーしている。よって、この連続撮影によって得られた高精度で鮮明な画像をコンピュータに処理させ検査させることにより、検査対象領域の状態を高精度で検査をすることができる。
よって、設置場所における外部からの光の影響を受け難く、外部からの光の影響を避けるための調整を必要としない、画像検査に用いるコンピュータプログラムを提供することができる。
【発明の効果】
【0025】
上述の本発明の各発明によれば、次の効果が得られる。
まず、上述の第1の発明によれば、設置場所における外部からの光の影響を受け難く、外部からの光の影響を避けるための調整を必要としない画像検査装置を提供することができる。
次に上述の第2の発明によれば、接着剤の塗布高さを検査することにより接着剤の塗布量を簡便に把握して、接着剤の塗布状態を検査することができる。
次に上述の第3の発明によれば、接着剤の塗布と接着剤の塗布高さの検査を同時に行うことができるため、接着剤の塗布状態の検査を効率よく行うことができる。
次に上述の第4の発明によれば、接着剤の塗布位置、塗布幅及び塗布高さを検査することにより、接着剤の塗布状態を精度良く検査することができる。
次に上述の第5の発明によれば、接着剤の塗布と接着剤の塗布位置、塗布幅及び塗布高さの検査を同時に行うことができるため、接着剤の塗布状態の検査を効率良くかつ精度良く行うことができる。
次に上述の第6の発明によれば、接着剤の塗布位置及び塗布幅を検査することにより接着剤の塗布量を簡便に把握して、接着剤の塗布状態を検査することができる。
次に上述の第7の発明によれば、接着剤の塗布と接着剤の塗布位置および塗布幅の検査を同時に行うことができるため、接着剤の塗布状態の検査を効率よく行うことができる。
次に上述の第8の発明によれば、ガラス部材に塗布されたウレタンの塗布量を簡便に把握して、ウレタンの塗布状態の検査を行うことができる。
次に上述の第9の発明によれば、シールは半円状に盛り上がって塗布されるので、上方から撮影して塗布幅を検査するか、側方から撮影して塗布高さを検査すれば、シールの塗布量を簡便に把握して、シールの塗布状態を検査することができる。
次に上述の第10の発明によれば、プライマの塗布状態の検査が容易であり、プライマの塗布状態を精度良く検査することができる。
次に上述の第11の発明によれば、プライマの塗布とプライマの検査を同時に行うことができるため、プライマの塗布状態の検査を効率よく行うことができる。
次に上述の第12の発明によれば、自動車用のガラス部材に帯状に塗布されたプライマの塗布状態を、精度良く検査することができる。
次に上述の第13の発明によれば、設置場所における外部からの光の影響を受け難く、外部からの光の影響を避けるための調整を必要としない画像検査方法を提供することができる。
次に上述の第14の発明によれば、設置場所における外部からの光の影響を受け難く、外部からの光の影響を避けるための調整を必要としない、画像検査に用いるコンピュータプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】プライマが塗布されたガラスの平面図である。
【図2】プライマとウレタンが塗布されたガラスと、ガラスの取付け対象である、プライマが塗布された自動車の開口部の断面を示す図である。
【図3】実施例1におけるロボットハンドの構成を示す図である。
【図4】実施例1におけるロボット追従式画像検査装置の全体構成を示す図である。
【図5】実施例1で使用する赤外線照射装置と赤外線撮影装置の波長特性を示す図である。
【図6】波長による電磁波の区分を説明する図である。
【図7】明るい状態の室内で、ウレタンが塗布された状態のガラスを、赤外線撮影装置により撮影した画像図を示す。
【図8】実施例1において連続撮影された画像の撮影範囲を示す図である。
【図9】実施例1においてガラスに接着剤が塗布された状態の検査用画像を示す図である。
【図10】実施例1におけるロボット追従式画像検査装置の動作フローを示す図である。
【図11】直線状に塗布された接着剤の塗布状態の適否を判定する方法を説明する図である。
【図12】コーナー部に塗布された接着剤の塗布状態の適否を判定する方法を説明する図である。
【図13】接着剤の塗布状態の乱れが検出される例を示す図である。
【図14】塗布された接着剤の途切れが検出される例を示す図である。
【図15】実施例1における画像検査のフロー図である。
【図16】実施例2におけるロボットハンドの構成を示す図である。
【図17】実施例2におけるロボット追従式画像検査装置の全体構成を示す図である。
【図18】実施例2において上方撮影装置で撮影した画像により塗布状態の適否を判定する方法を説明する図である。
【図19】接着剤の塗布幅および塗布位置の適否の判定例を示す図である。
【図20】実施例2における画像検査のフロー図である。
【図21】実施例3におけるロボットハンドの構成を示す図である。
【図22】実施例3におけるロボット追従式画像検査装置の全体構成を示す図である。
【図23】実施例3において連続撮影された画像の撮影範囲を示す図である。
【図24】実施例3においてガラスにプライマが塗布された状態の検査用画像を示す図である。
【図25】実施例3においてかすれが検出される例を示す図である。
【図26】実施例4におけるロボットハンドの構成を示す図である。
【図27】実施例5におけるロボットハンドの構成を示す図である。
【図28】実施例5における撮影範囲の重複を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明を実施するための形態について実施例にしたがって説明する。
【実施例1】
【0028】
図3に本発明の実施例1におけるロボット追従式画像検査装置を構成するロボットハンド112を、図4にロボットハンド112を備えたロボット追従式画像検査装置110の全体構成を示す。このロボット追従式画像検査装置110は自動車の固定窓用のガラス140の周辺部に帯状に設定されたウレタン塗布領域に接着剤として塗布されるウレタン144の塗布状態を赤外線画像により検査するロボット追従式画像検査装置である。ガラス140が本発明の検査対象物に相当し、ウレタン塗布領域が本発明の検査対象領域に相当する。なお、図3では、ロボットハンド112とロボット本体111(図4参照)との接続部分は図示を省略している。
【0029】
[ロボットハンドの構成と動作]
まず、ロボットハンド112の構成および動作について説明する。ロボットハンド112はロボット制御盤128(図4参照)に制御されて、ティーチングによりガラス140上の帯状のウレタン塗布領域に沿って設定された径路上を、移動することができる構成とされている。
そして、ロボットハンド112の先端にはウレタン144をガラス140に塗布するためのノズル114が取付けられている。ここで、ロボットハンド112の向きはロボットハンド112の進行方向に追随する構成とされており、ノズル114の先端の一側面に形成されウレタン144をガラス140上に供給する三角形の開口部115がロボットハンド112の進行方向の後を向く構成とされている。
【0030】
そして、ノズル114の上方のロボットハンド112の進行方向の後方に赤外線照射装置120が取付けられており、ノズル114の上方のロボットハンド112の進行方向の右側後方に赤外線撮影装置116が取付けられている。
ここで、ロボットハンド112の向きは進行方向に追随する構成とされているので、赤外線照射装置120は常にロボットハンド112の進行方向後方に位置し、赤外線撮影装置116は常にロボットハンド112の進行方向でノズル114の右側に位置する。そして、赤外線撮影装置116による撮影範囲はノズル114の後方のウレタン144の塗布領域を側方から見た領域とされており、当該領域は赤外線照射装置120により上方から赤外線が照射される構成とされている。赤外線照射装置120は赤外用LEDにより赤外線を照射する構成である。
【0031】
そして、ロボットハンド112がロボット制御盤128(図4参照)に制御されて、ガラス140上のウレタン塗布領域に沿って設定された径路上を移動すると、これに合わせて図示しないウレタン供給装置からウレタン144がパイプ113を経由してノズル114に供給される。そして、ノズル114の開口部115からウレタン144がガラス140上に供給されて、ウレタン144がガラス140上に設定された塗布領域に塗布されていく。そして、ウレタン144が塗布された直後の領域が、赤外線照射装置120により赤外線が照射された状態で赤外線撮影装置116の撮影視野に入るので、赤外線撮影装置116により塗布された直後のウレタン144を側方から赤外線により撮影することができる。
そして、ロボットハンド112がウレタン144の塗布領域に沿って設定された径路上を移動するのに合わせて、赤外線撮影装置116によりウレタン144の塗布領域を撮影範囲が重複する時間間隔で連続撮影することにより、ノズル114により塗布されたウレタン144の全体をカバーし、ウレタン144の塗布状態の検査に使用できる赤外線画像を得ることができる。
そして、ウレタン144の塗布とウレタン144の撮影を同時に実施するため、検査の効率がよい。なお、赤外線撮影装置116により得られる画像はグレースケールの画像で、赤外線の反射が強いところが明るく、赤外線の反射が弱いところが暗い画像となる。
【0032】
[実施例1で使用する赤外線について]
ここで、本発明の実施例1で使用する赤外線について説明する。図5に、実施例1で使用する赤外線撮影装置116及び赤外線照射装置120の波長特性を示す。縦軸が透過率を、横軸が波長を表す。図5に示すとおり、赤外線撮影装置116は、近赤外線の波長域では透過率は約90%と高いため、近赤外線に対して感度が高い。そして、可視光の波長域では、近赤外線に近い波長域でわずかに可視光を透過するのみであり、赤外線撮影装置116は可視光をほとんど受け付けない。そして、赤外線照射装置120は、図5に示すとおり、可視光の波長域の光は照射せず、赤外線撮影装置116で透過率が高い波長域の近赤外線を照射する構成である。
【0033】
図6に電磁波の区分を呼称と対応する波長で示す。本実施例で使用する赤外線は、撮影対象物の外形を把握することができる、波長が700nm〜2.5μmの近赤外線が好ましい。そして、近赤外線で撮影すると、通常の白黒写真のように明暗により対象物の外形の把握が可能な画像を得ることができる。
図7に、明るい状態の室内で、ウレタン144が塗布された状態のガラス140を、赤外線撮影装置116により撮影した画像図を示す。図7(a)は、赤外線照射装置120の赤外用LEDが消灯した状態で取得した画像図であり、図7(b)は、赤外線照射装置120の赤外用LEDが点灯した状態で取得した画像図である。自然光や照明光が明るい状態であっても近赤外線は弱いので、図7(a)では、ガラス140及びウレタン144は真っ黒で識別できず、ノズル114がかすかに識別できる程度である。一方、図7(b)では、赤外線を反射するノズル114とウレタン144を識別することができ、赤外線をほとんど反射しないガラス140は真っ黒となる。
【0034】
実施例1によれば、ウレタン144の塗布領域に赤外線照射装置120で赤外線を照射した状態で至近距離からガラス140上に塗布されたウレタン144を赤外線撮影装置116により撮影するので、赤外線を反射する箇所だけに感光する画像を得ることができる。そして、赤外線撮影装置116は可視光の波長にはほとんど感度がないため、ウレタン塗布領域に当たる窓から入る自然光や室内灯などの可視光の状態が変化しても、可視光の状態の変化をほとんど受けない状態で、ウレタン144の塗布領域の画像を取得することができる。
【0035】
[ロボット追従式画像検査装置の全体制御]
次に、図4に戻って、ロボット追従式画像検査装置110の全体的な制御について説明する。
ライン制御盤130はロボット追従式画像検査装置110の全体制御を行う。そして、ロボット制御盤128は、ロボット本体111に対して、ロボットハンド112がティーチングによりガラス140上にウレタンの塗布領域に沿って設定された径路上を移動するように指令を出す。そして、ロボット本体111はロボットハンド112が所定の経路上を移動する動きを作り出す。
画像処理装置122は、ロボットハンド112に取付けられた赤外線撮影装置116により撮影された画像を中継ボックス126経由で取込み、即時に画像データからウレタン144の塗布状態を検査して塗布状態の適否を判定し、その結果をライン制御盤130に報告する。ここで、中継ボックス126は画像データの中継の他に、赤外線照射装置120の電源を兼ねており、ライン制御盤130からの赤外線照射装置120の制御情報を画像処理装置122経由で受け取って、赤外線照射装置120の赤外用LEDの点灯・消灯を制御する。なお、赤外線照射装置120からは、前述の通り、近赤外線が照射される。
【0036】
表示装置124には、赤外線撮影装置116により撮影された画像やウレタン144の塗布状態の検査結果等が表示される。
録画装置125は赤外線撮影装置116により撮影された画像を画像処理装置122経由でビデオデータとして受け取り、ウレタン144の塗布状態が連続撮影された画像を動画データとして保存する。これにより、ウレタン144の塗布検査時の検査用データをコンパクト化して履歴データとして残すことが可能となり、検査結果のトレーサビリティが向上する。なお、録画装置125を省略した構成とすることもできる。
【0037】
[ウレタンの塗布状態の検査用画像]
次に、ウレタン144の塗布状態の検査用画像ついて説明する。図8は赤外線撮影装置116により連続撮影される画像の連続する駒の撮影範囲146を示す。図8に示すとおり、前後の駒で撮影範囲146が重複するため、赤外線撮影装置116によりウレタン144が塗布された全域を隙間無くカバーした画像を得ることができる。
図9は赤外線撮影装置116により撮影した撮影範囲146の画像を検査用画像148に変換したものである。ここで、赤外線撮影装置116による撮影範囲146は図9に示すように、ノズル114が写る位置範囲とされている。そして、ウレタン144およびその周囲は赤外線照射装置120により近赤外線が照射されているが、前述の通り赤外線を反射するノズル114とウレタン144が明るく写り、赤外線をほとんど反射しないガラス140が暗く写る。そこで、画像の明暗を反転して2値化して、ガラス140が白、ノズル114とウレタン144が黒となるように変換し、検査用画像148としている。
【0038】
[ロボット追従式画像検査装置における制御とデータの流れ]
図10はライン制御盤130、ロボット制御盤128および画像処理装置122の間での、制御およびデータの流れを時間の流れに沿って示したものである。
ライン制御盤130に検査開始の指示を与えると、ライン制御盤130からロボット制御盤128にスタート指令が送られる。スタート指令を受けたロボット制御盤128はロボット本体111を起動して、ティーチングによりガラス140上のウレタンの塗布領域沿いに設定された径路上の始点である塗布開始位置へロボットハンド112を移動させる。そして、ロボット制御盤128はロボットハンド112が塗布開始位置に到着するとその旨をライン制御盤130に通知する。そして、ロボット制御盤128は、ロボットハンド112をガラス140上でウレタンの塗布予定域に沿った径路上を移動させながら、ロボットハンド112に取付けられたノズル114によりガラス140上へのウレタン144の塗布を開始する。
【0039】
そして、ライン制御盤130は、ロボット制御盤128からロボットハンド112が塗布開始位置へ到着した通知を受け取ると、画像処理装置122にスタート指令を送る。スタート指令を受けた画像処理装置122は、中継ボックス126を経由して赤外線照射装置120の赤外用LEDを点灯させ、録画装置125を録画可能状態に設定する。そして、赤外線撮影装置116により一定時間間隔で、ノズル114により塗布されたウレタン144の撮影を開始する。
なお、赤外線撮影装置116による撮影時間の間隔は40ミリ秒に設定されており、連続する撮影画像において撮影範囲は70%程度が重複している。
【0040】
赤外線撮影装置116による撮影が開始されると、画像処理装置122は撮影された画像を中継ボックス126を経由して取込み、元の画像をビデオ形式にして録画装置125に送り出すと共に、取込んだ画像を前述の検査用画像148の形式に変換して表示装置124に表示する。そして、画像処理装置122は検査用画像148を画像処理してウレタン144の塗布状態を検査し、塗布状態の適否を判定して、その結果を表示装置124に表示すると共に、判定結果をライン制御盤130に通知する。ここで、画像処理装置122が赤外線撮影装置116による撮影画像を取込んでからウレタン144の塗布状態の適否を判定するまでに要する時間は赤外線撮影装置116による撮影時間間隔以下であり、ウレタン144の塗布状態の適否の判定はリアルタイムで行われる。
【0041】
ロボットハンド112がウレタン144の塗布領域の終点に達すると、ロボット制御盤128はライン制御盤130に塗布終了を通知し、ウレタン144の塗布を終了させる。ライン制御盤130は塗布終了の通知を受けると、画像処理装置122に画像処理終了指令を送る。画像処理装置122は画像処理終了指令を受けると、赤外線撮影装置116による撮影を終了し、中継ボックス126を経由して赤外線照射装置120の赤外用LEDを消灯し、録画装置125に録画終了の指令を送る。
そして、ロボット制御盤128はロボットハンド112をガラス140から離れた待機位置に移動させた後に、ライン制御盤130に待機位置到着を通知する。そこで、ライン制御盤130はロボット制御盤128に停止命令を送り、ロボット制御盤128によりロボット本体111が停止させられる。
【0042】
[画像処理によるウレタンの塗布状態の検査]
次に、図11〜図14を用いて、ウレタン144の塗布状態を検査して、塗布状態の適否の判定をする方法について説明する。ウレタン144は上述の通り、断面が三角形となる状態で塗布されるので、ウレタン144が予定の高さを有する状態で塗布されていれば、ウレタン144の塗布量は適切であると考えて良い。そこで、ウレタン144の塗布高さを検査して、塗布状態の適否を判断する。
具体的には、まず、撮影範囲146でウレタン144が直線状に塗布されているか非直線状に塗布されているかを検査用画像148から判定する。図11は撮影範囲が直線状と判断された例であり、図12〜図14は撮影範囲が非直線状と判断された例である。
図11〜図14に示すとおり、撮影範囲146にはノズル114が写り込むように設定されている。そこで、ノズル114の開口部115の位置からウレタン144の上端の位置を推定し、ウレタン144の上端に白色と黒色の境界となる直線が検出できればウレタン144の塗布は直線状と判定し、直線が検出できなければウレタン144の塗布は非直線状と判定する。
【0043】
境界となる直線の検出は、例えば検査用画像148の幅方向の数カ所で上方が白色となり下方が黒色となる場所をウレタン144の上端としてサンプリングし、ウレタン144の上端が直線に乗るか否かを判断することにより行う。サンプリング点が直線に乗る時は塗布は直線状であると判定し、その線を上端想定ライン150とする。そして、ウレタン144の上端を検査用画像148の幅方向で細かくサンプリングして白色から黒色に変化する点を求めウレタン144の上端を検出する。図11中の細かな縦線はサンプリング位置を示す。そして、ウレタン144の上端想定ライン150とウレタン144の上端との誤差が許容値以内であれば塗布状態は適切であると判断し、誤差が許容値を超えている場合は塗布状態が不適切であると判断する。
【0044】
ウレタン144の塗布が非直線状と判定された時は、図12に示すように、検査用画像148の幅方向に細かな矩形の調査ブロック154を定め、調査ブロック154ごとに細かなサンプリングでウレタン144の上端ライン152を抽出する。そして、隣接する調査ブロック154の上端ライン152に乱れが認められる場合、例えば上端ライン152に段差が生じる場合は塗布状態が不適切であると判定する。そして、上端ライン152に乱れがなければ塗布状態は適切であると判定する。図12に示した例ではコーナー部で上端ライン152に乱れが無く塗布状態は適切であると判定される。図13に示した例ではコーナー部で上端ライン152に段差が生じ塗布状態が不適切と判定される。
【0045】
図14にウレタン144の塗布に途切れが生じた例を示す。図14に示した例では、ウレタン144の上端のサンプリングで塗布は非直線状であると判定され、調査ブロック154ごとの上端ライン152の検出において、ウレタン144の上端となる白色から黒色に変化する点が検出できず、塗布切れと判定される。なお、塗布状態が直線状か否かを判定するサンプリング時にウレタン144の上端が検出できなければ、その時点で塗布切れが生じていると判定できる。
【0046】
図15に画像処理装置122で実行されるコンピュータプログラムによる画像検査の処理フローを示す。ライン制御盤130(図10参照)から画像処理装置122にスタート指令が送られると、画像検査が開始される。画像検査が開始されると、S100により、赤外線撮影装置116により撮影された画像を画像処理装置122を通じて取得し、S102により撮影画像を検査用画像148に変換する。
次に、S110により、撮影範囲146内でウレタン144が直線状であるか否かを判断する。直線状と判断した場合は、S112により、上端想定ライン150と細かくサンプリングしたウレタン144の上端との誤差を評価して、ウレタン144の塗布状態の適否を判定する(図11参照)。そして、ウレタン144が直線状でないと判断した時は、S114により調査ブロック154ごとの上端ライン152を検出する。そして、S116により、隣接する調査ブロック154の上端ライン152が整合するか検査してウレタン144の塗布状態の適否を判定する(図12参照)。そして、S120により判定結果を画像処理装置122に報告する。
次に、S130で画像処理装置122がライン制御盤130から画像処理終了指令を受けているか否かを検査し、終了指令を受けていれば画像検査を終了する。終了指令を受けていなければS100に戻って次の撮影画像の処理を行う。そして、終了指令が来るまでS100以降の処理を繰り返す。
なお、図15のフローでは、ウレタン144の上端が検出できない時の処理は記載を省略しているが、この場合は、塗布されたウレタン144に途切れが生じていると判断できるので塗布状態が不適切と判定して、S120にジャンプして判定結果の報告を行う。
【0047】
[実施例1の効果]
実施例1によれば、ロボットハンド112に取付けられた赤外線撮影装置116により、赤外線照射装置120により赤外線が照射された状態のガラス140上に塗布されたウレタン144を、至近距離から連続撮影するので、ウレタン144の塗布状態を示す高精度な赤外線画像を得られる。そして、連続撮影によって得られた画像は帯状のウレタンの塗布領域を隙間無くカバーしているので、ウレタン144の塗布状態をもれなく検査することができる。そして、赤外線画像は自然光や照明光の影響をほとんど受けないので、画像処理の閾値等を使用環境に応じて調整する必要が無く、ウレタンの塗布状態を精度良く安定して検査することができる。
よって、設置場所における外部からの光の影響を受け難く、外部からの光の影響を避けるための調整を必要としない画像検査装置を提供することができる。
【0048】
そして、実施例1によれば、赤外線撮影装置116は側方からウレタン144を撮影するので、画像処理によりウレタン144の塗布高さを検査することで、ウレタン144の塗布量を簡便に把握できる。
そして、ウレタン144の塗布時にウレタン144の撮影を行い、リアルタイムでウレタン144の塗布状態の検査を行うので、ウレタン144の塗布状態の検査を効率よく行うことができる。
【実施例2】
【0049】
[実施例2の概要]
次に本発明の実施例2について説明する。図16に実施例2におけるロボット追従式画像検査装置110A(図17参照)を構成するロボットハンド112Aを示す。ロボットハンド112Aと実施例1のロボットハンド112との違いは、ウレタンの塗布領域を側方から赤外線で撮影する側方撮影装置117とウレタンの塗布領域を上方から赤外線で撮影する上方撮影装置118の2台の赤外線撮影装置を備えている点にある。そして、側方撮影装置117および上方撮影装置118の赤外線特性は実施例1の赤外線撮影装置116と同様である。他の構成はロボットハンド112と同様であるので同じ符号を付して説明は省略する。
側方撮影装置117はロボットハンド112Aの進行方向に対して右側のやや後方に、上方撮影装置118はロボットハンド112Aの進行方向後方に取付けられている。そして、上方撮影装置118による撮影範囲の幅方向の中央がウレタンの塗布領域の幅方向の中央となるように設定されている。そして、ノズル114によりガラス140に塗布された直後のウレタン144に赤外線照射装置120により赤外線が照射された状態で、側方撮影装置117および上方撮影装置118により連続撮影する。なお、側方撮影装置117による撮影範囲と上方撮影装置118による撮影範囲はロボットハンド112Aの進行方向でほぼ重なっており、撮影は同期して行われる。
そして、側方撮影装置117により撮影された画像を実施例1と同様の検査方法により検査して、側方から見た場合のウレタン144の塗布状態の適否を判定する。さらに、上方撮影装置118により撮影された画像を後述する検査方法により検査し、上方から見た場合のウレタン144の塗布状態の適否を判定する。そして、側方から見た場合も上方から見た場合もいずれも塗布状態が適切と判定された時にウレタン144の塗布状態が適切であると判定する。
【0050】
図17にロボット追従式画像検査装置110Aの全体的な構成を示す。ロボットハンド112Aには、側方撮影装置117と上方撮影装置118の2台の赤外線撮影装置が取付けられている。画像処理装置122Aは側方撮影装置117および上方撮影装置118で撮影された画像を処理する。中継ボックス126Aは側方撮影装置117および上方撮影装置118で撮影された画像を中継し、録画装置125Aは、側方撮影装置117および上方撮影装置118で撮影された画像をそれぞれビデオ録画する。表示装置124Aには、側方撮影装置117および上方撮影装置118で撮影された画像やウレタン144の塗布状態の検査結果等が表示される。他の構成物の構成および機能はロボット追従式画像検査装置110と同様であるので同一符号を付して説明は省略する。
【0051】
[上方撮影装置により撮影された画像によるウレタンの塗布状態の検査の概要]
上方撮影装置118により撮影された画像による、ウレタン144の塗布状態の適否の検査方法について説明する。まず、撮影された画像の明暗を反転して2値化して、ガラス140が白色、ウレタン144が黒色となるように変換して、検査用画像148Aとする。そして、検査用画像148Aにより、ウレタン144の塗布幅および塗布位置の適否の検査を行う。なお、ガラス140にプライマが塗布されているとプライマは赤外線を反射して灰色に写るが、プライマはウレタン144よりも暗く写るので、2値化の閾値をプライマの明るさとウレタン144の明るさの間に設定することで、検査用画像148Aでは、プライマはガラス140と同じ黒色となるように処理している。
図18に、上方撮影装置118の撮影範囲146Aによる検査用画像148Aを示す。図18の下方の矢印はロボットハンド112Aの進行方向を示す。そして、図18の高さ方向の中央となる画像中央線160が、ウレタン144の塗布領域の幅方向の中央となる。なお、撮影範囲146Aにはガラス140の端のガラス端161とその外側の背景162が含まれるが、ガラス140も背景162も赤外線画像では黒く写り、反転して2値化するといずれも白くなるので、検査用画像148Aでは、ガラス端161の識別は困難である。
【0052】
そこで、画像中央線160を利用してウレタン144の塗布位置および塗布幅の検査を行う。まず、図18に示すように、画像中央線160を中心としウレタンの塗布予定幅の約2倍の長さを有する矩形の検査ブロック164を設定する。すると、検査ブロック164内で、図18の下側からみて、最初に白から黒に変化する位置がウレタン144の塗布位置の外側の端であり、次に黒から白に変化する位置がウレタン144の塗布位置の内側の端である。そこで、検査ブロック164内で画像中央線160の方向に細かくサンプリングして、画像中央線160から両側へのウレタン144の塗布幅を求めて、その平均を検査ブロック164における塗布幅とする。
【0053】
図19にウレタン144の塗布幅および塗布位置の適否の判定例を示す。図の下側がガラス140の外側となる。図19(a)の検査ブロック164Aは、中心から外側端までの幅(外側幅)および中心から内側端までの幅(内側幅)が共に適切であるため、塗布位置および塗布幅は共に適切と判断される。図19(b)の検査ブロック164Bは、外側幅および内側幅が共に不足しており、塗布幅が不適切と判断される。図19(c)の検査ブロック164Cは、外側幅は適切であるが内側幅が不足しており、塗布幅が不適切と判断される。そして、図19(d)の検査ブロック164Dは、外側幅が不足し、内側幅が過剰であり、外側幅と内側幅の合計は適切であるため、塗布位置が不適切と判断される。
【0054】
図20に画像処理装置122Aで実行されるコンピュータプログラムによる画像検査の処理フローを示す。ライン制御盤130(図17参照)から画像処理装置122Aにスタート指令が送られると、画像検査が開始される。そして、S210より側方撮影装置117により撮影された画像を画像処理装置122Aを通じて取得し、S212により検査用画像148に変換する。そして、S214により実施例1で述べた赤外線撮影装置116で撮影した画像による塗布状態の適否を判定する手順と同様の手順で、ウレタン144を側方から撮影した画像についてウレタン144の塗布状態の適否を判定する。そして、S216で判定結果を評価し、塗布状態が適切な場合はS220へ進み、塗布状態が不適切な場合はS230へ進む。
S220では、S210で取得した画像と同じタイミングで上方撮影装置118により撮影された画像を画像処理装置122Aを経由して取得し、S222により撮影画像を検査用画像148Aに変換する。次に、S224により検査用画像148A上で画像中央線160を設定し、検査ブロック164ごとに、S226により塗布範囲(外側幅および内側幅)を抽出し、S227により塗布幅の適否の判定、S228により塗布位置の適否の判定を行う。そして塗布状態が不適切と判定された時はS230に進む。全ての検査ブロック164で塗布幅および塗布位置が適切な場合はブロック処理を終了してS230へ進む。
そして、S230で判定結果を画像処理装置122Aに報告する。次にS232で終了判定を行う。終了判定は、画像処理装置122Aがライン制御盤130から画像処理終了指令を受けているか否かを検査することにより行う。終了指令を受けていれば画像検査を終了する。終了指令を受けていなければS210に戻り、次の撮影画像の処理を行う。そして、終了指令が来るまでS210以降の処理を繰り返す。
【0055】
[実施例2の効果]
この実施例2によれば、ガラス140に塗布されたウレタン144の塗布状態を塗布高さの他に、塗布幅、塗布位置についても検査するので、塗布状態の検査の精度を向上させることができる。また、ウレタン144の塗布とウレタン144の塗布状態についての2種類の検査を同時に行うことができるため、ウレタンの塗布状態の検査を効率よくかつ精度良く行うことができる。
【実施例3】
【0056】
次に、本発明の実施例3について説明する。図21に実施例3におけるロボット追従式画像検査装置を構成するロボットハンド212を、図22にロボットハンド212を備えたロボット追従式画像検査装置210の構成を示す。このロボット追従式画像検査装置210は自動車の固定窓用のガラス240の周辺部に設定されたプライマ塗布領域に塗布されるプライマ242の塗布のかすれを赤外線画像により検査するロボット追従式画像検査装置である。ガラス240が本発明の検査対象物に相当し、プライマ塗布領域が本発明の検査対象領域に相当する。なお、図21ではロボットハンド212とロボット本体211(図22参照)との接続部分は図示を省略している。
【0057】
[ロボットハンドの構成と動作]
図21に示すとおり、ロボットハンド212の先端にはプライマ塗布用の刷毛214が取付けられており、刷毛214の上部後方には赤外線撮影装置216と赤外線照射装置220が取付けられている。そして、ロボットハンド212の向きはロボットハンド212の進行方向に追随する構成とされているため、赤外線撮影装置216および赤外線照射装置220は常にロボットハンド212の進行方向後方に位置する。そして、赤外線撮影装置216の撮影領域は刷毛214の後方のプライマ塗布領域とされており、当該領域は赤外線照射装置220により上方から赤外線が照射される構成とされている。赤外線照射装置120は赤外用LEDにより赤外線を照射する構成である。
【0058】
そして、ロボットハンド212がロボット制御盤228(図22参照)に制御されて、ティーチングによりガラス240上のプライマ塗布領域に沿って設定された経路上を、移動する。そして、これに合わせて図示しないプライマ供給装置からプライマ242がパイプ213を経由して刷毛214に供給され、プライマ242がガラス240上に設定された塗布領域に塗布されていく。そして、プライマ242が塗布された直後の領域が赤外線照射装置220により照射されると共に赤外線撮影装置216の撮影視野に入る。そこで、赤外線撮影装置216により塗布された直後のプライマ塗布領域を撮影範囲が重複する時間間隔で上方から連続撮影することにより、プライマ塗布領域全体をカバーしプライマ242の塗布状態の検査に使用できる赤外線画像を得ることができる。
そして、プライマ242の塗布とプライマ242の撮影を同時に実施するため、効率よくプライマ242の塗布状態に関する検査用の画像を得ることができる。
【0059】
実施例3で使用する赤外線撮影装置216および赤外線照射装置220の波長特性は実施例1の赤外線撮影装置116および赤外線照射装置120と同じである。そして、赤外線撮影装置216により得られる画像はグレースケールの画像であり、赤外線の反射が強いところが明るく、赤外線の反射が弱いところが暗い画像となる。そして、ガラス240は赤外線をほとんど反射せず、プライマ242は赤外線を反射する。また、実施例1で述べたとおり、自然光や照明光が明るい状態であっても赤外線は弱い。
よって、実施例3によれば、プライマ塗布領域に当たる窓からの日差しや室内灯などの可視光の状態が変化しても、可視光の状態の変化をほとんど受けない状態で、プライマ242の塗布領域の画像を取得することができる。
【0060】
[ロボット追従式画像検査装置の全体制御]
図22に示したロボット追従式画像検査装置210の全体的な構成は、赤外線撮影装置216の位置がロボットハンド212の後部上方である点およびロボットハンド212にノズル114の代わりに刷毛214が取付けられている点を除いて、実施例1のロボット追従式画像検査装置110と同じである。そして、ロボット追従式画像検査装置210の全体的な制御は、実施例1のロボット追従式画像検査装置110と同様である。
【0061】
[プライマの塗布状態の検査の概要]
次に、プライマ242の塗布状態の適否の検査方法について説明する。プライマ242は刷毛214により塗布されるが、刷毛214に付着したプライマの乾燥による固化や刷毛214の抜け等により、刷毛214とガラス240との接触を均一に維持することが難しくなり、塗りむらによるかすれが生じることがある。そこで、プライマ242の塗布状態の検査では、プライマ242のかすれの検査を行う。
図23は赤外線撮影装置216により連続撮影される画像の連続する駒の撮影範囲246を示す。図23に示すとおり前後の駒で撮影範囲246が重複するため、赤外線撮影装置216によりプライマ242が塗布される全域を隙間無くカバーした画像を得ることができる。そして、撮影された画像の明暗を反転して2値化し、ガラス240が白色、プライマ242が黒色となるように変換して、検査用画像248とする。
図24に赤外線撮影装置216により撮影した撮影範囲246の画像を検査用画像248に変換したものを示す。図24に示した矢印はロボットハンド212の進行方向を示す。そして、図24の中央の画像中央線260がプライマ242の塗布領域の幅方向の中央となる。なお、撮影範囲246にはガラス240の端のガラス端261やその外側の背景262が含まれるが、ガラス240と背景262は赤外線画像では黒く写り、反転して2値化するといずれも白くなるので、検査用画像248上ではガラス端261の識別は困難である。
【0062】
そこで、図24に示すように、画像中央線260を中心として、プライマ242の塗布領域にプライマ242の塗布予定幅の矩形の検査ブロック264を設定する。次に、図25に示すように、検査ブロック264をプライマ242の塗布予定幅の方向で10等分した細分エリア266を求め、各細分エリア266におけるプライマ242の塗布面積の割合を求める。検査用画像248では、プライマ242が塗布されている部分は黒色であり、プライマ242がかすれて地のガラス240が出ている部分は白色となっている。
かすれ検査では、細分エリア266内でのプライマ242の塗布面積が80%以下のエリアが3個以上の場合は塗布方向のかすれが生じていると判定する。そして、細分エリア266内でプライマ242の塗布面積95%以下のエリアが3個以上連続する場合は塗布方向に交差する方向でかすれが生じていると判定する。図25に細分エリア266におけるかすれの判定例を示す。図25(a)は塗布方向のかすれを検出して塗布状態が不適と判定した例、図25(b)は塗布方向に交差する方向のかすれ検出して塗布状態が不適と判定した例を示す。なお、上述の面積およびエリアの個数の基準値は1例であって、これに限定されるものではない。
【0063】
[実施例3の効果]
実施例3によれば、ロボットハンド212に取付けられた赤外線撮影装置216により、赤外線照射装置220により赤外線が照射された状態のガラス240上に塗布されたプライマ242を、至近距離から連続撮影するので、プライマ242の塗布状態を示す高精度な赤外線画像を得られる。そして、連続撮影によって得られた画像は帯状のプライマの塗布領域を隙間無くカバーしているので、プライマ242の塗布状態をもれなく検査することができる。そして、赤外線画像は自然光や照明光の影響をほとんど受けないので、画像処理の閾値等を調整する必要が無く、プライマの塗布状態を精度良く安定して検査することができる。
よって、設置場所における外部からの光の影響を受け難く、外部からの光の影響を避けるための調整を必要としない画像検査装置を提供することができる。
そして、実施例3によれば、赤外線撮影装置216は上方からプライマ242を撮影するので、画像処理によりプライマ242のかすれを検査することで、プライマ242の塗布状態の適否を判定することがきる。
そして、プライマ242の塗布時にプライマ242の撮影を行い、塗布状態を検査するので、プライマ242の塗布状態の検査を効率よく行うことができる。
【実施例4】
【0064】
次に、本発明の実施例4について説明する。図26に本発明の実施例4におけるロボット追従式画像検査装置を構成するロボットハンド312を示す。実施例4のロボット追従式画像検査装置は、自動車の金属部材340上に帯状に設定されたシール塗布領域に塗布されるシール342の塗布状態を赤外線画像により検査するロボット追従式画像検査装置である。金属部材340が本発明の検査対象物に相当し、シール塗布領域が本発明の検査対象領域に相当する。シール342は半円状に盛り上がって塗布されるので、上方から撮影して塗布幅と塗布位置を検査するか、側方から撮影して塗布高さを検査すれば、シールの塗布量を簡便に把握して、シールの塗布状態を検査することができる。なお、図26では、ロボットハンド312とロボット本体との接続部分の図示は省略している。なお、実施例4のロボット追従式画像検査装置の全体的な構成および制御は実施例1のロボット追従式画像検査装置110と同様である。
【0065】
[ロボットハンド312の構成と動作]
ロボットハンド312の先端にはシール342を金属部材340に塗布するためのシール塗布具314が取付けられており、シール塗布具314の上部後方には赤外線撮影装置316と赤外線照射装置320が取付けられている。そして、ロボットハンド312の向きはロボットハンド312の進行方向に追随する構成であり、赤外線撮影装置316と赤外線照射装置320は常にロボットハンド312の進行方向後方に位置する。そして、赤外線撮影装置316の撮影領域はシール塗布具314の後方のシール塗布領域とされており、当該領域は赤外線照射装置320により上方から赤外線が照射される構成とされている。そして、ロボットハンド312は図示しないロボット制御盤に制御されて、ティーチングにより金属部材340上の帯状のシール塗布領域に沿って設定された径路上を移動することができる構成とされている。
よって、赤外線撮影装置316によりシール342が塗布された直後のシール塗布領域を撮影範囲が重複する時間間隔で上方から連続撮影することにより、シール塗布領域全体をカバーしシール342の塗布状態の検査に使用する赤外線画像を得ることができる。そして、シール342の塗布とシール342の撮影を同時に実施するため、効率よくシール342の塗布状態に関する検査用の画像を得ることができる。
【0066】
[シールの塗布状態の検査の概要]
赤外線撮影装置316および赤外線照射装置320の波長特性は、実施例1の赤外線撮影装置116および赤外線照射装置120と同じである。そして、赤外線撮影装置316により得られる画像はグレースケールの画像であり、シール342および背景は暗く写り、金属部材340およびシール塗布具314は明るく写る。
そこで、シール342と金属部材340が区別できるように閾値を設定して撮影画像を白黒2値の検査用画像に変換し、実施例2でウレタンの塗布幅と塗布位置を検査した方法と同様の方法で、シール342の塗布幅と塗布位置の検査を行うことができる。
【0067】
[実施例4の効果]
よって、実施例4によれば、設置場所における外部からの光の影響を受け難く、外部からの光の影響を避けるための調整を必要としない画像検査装置を提供することができる。また、シール342の塗布時にシール342の撮影を行い、シール342の塗布状態の検査を行うので、シール342の塗布状態の検査を効率よく行うことができる。
【実施例5】
【0068】
上述の実施例4では、ロボットハンドの向きがロボットハンドの進行方向に追随して変化し、赤外線撮影装置は常に塗布された直後のシールを後方から撮影することができる。しかし、シール塗布用のロボットハンドには、ロボットハンドの向きが固定されているものがある。そして、ロボットハンドの向きが固定されていると、赤外線撮影装置が取付けられている方向へロボットハンドが進行すると、赤外線撮影装置の撮影領域がシール塗布前の領域となってしまう。
そこで、実施例5では、図27に示すように2台の赤外線撮影装置416A、416Bがロボットハンド412のシール塗布具414を挟んで反対側に配置された構成とする。そして、図28に示すように、赤外線撮影装置416Aの撮影範囲446Aと赤外線撮影装置416Bの撮影範囲446Bとが重複する構成とする。この構成によれば、ロボットハンド412がいずれの方向に進行する場合であっても、赤外線撮影装置416A、416Bのいずれかの撮影領域にシールが塗布された領域が入るため、シール塗布領域の全体について、赤外線画像を得ることができる。そして、ロボットハンド412の進行方向の側方または後方となる撮影領域に対応する赤外線画像を選択して、シールの塗布状態を検査することにより、シールの塗布状態の適否を判定することができる。
【0069】
[変形例]
上述の各実施例では、ウレタンやプライマ等の塗布と検査を同時に実施しているが、塗布と検査を別々に実施しても良い。ウレタンやプライマ等を塗布済みの検査対象物を検査する構成とすれば、ロボット追従式画像検査装置の構成を簡単にすることができる。
また、検査対象物はガラスや金属部材に限定されず、検査対象領域はウレタン、プライマ、シール等の塗布領域に限定されない。赤外線画像上で検査対象物と検査対象物上の検査対象領域に明暗差が生ずるものであれば、本発明を適用することができる。
その他、本発明に係るロボット追従式画像検査装置、ロボット追従式画像検査方法及びロボット追従式画像検査に用いるコンピュータプログラムはその発明の思想の範囲で、各種の形態で実施できるものである。
【符号の説明】
【0070】
110、110A ロボット追従式画像検査装置
111 ロボット本体
112、112A ロボットハンド
113 パイプ
114 ノズル
115 開口部
116 赤外線撮影装置
117 側方撮影装置
118 上方撮影装置
120 赤外線照射装置
122、122A 画像処理装置
124、124A 表示装置
125、125A 録画装置
126、126A 中継ボックス
128 ロボット制御盤
130 ライン制御盤
140 ガラス
142 プライマ
144 ウレタン
146、146A 撮影範囲
148、148A 検査用画像
150 上端想定ライン
152 上端ライン
154 調査ブロック
160 画像中央線
161 ガラス端
162 背景
164、164A、164B、164C、164D 検査ブロック
210 ロボット追従式画像検査装置
211 ロボット本体
212 ロボットハンド
213 パイプ
214 刷毛
216 赤外線撮影装置
220 赤外線照射装置
222 画像処理装置
224 表示装置
225 録画装置
226 中継ボックス
228 ロボット制御盤
230 ライン制御盤
240 ガラス
242 プライマ
246 撮影範囲
248 検査用画像
260 画像中央線
261 ガラス端
262 背景
264 検査ブロック
266 細分エリア
312 ロボットハンド
313 パイプ
314 シール塗布具
316 赤外線撮影装置
320 赤外線照射装置
340 金属部材
342 シール
412 ロボットハンド
414 シール塗布具
416A、416B 赤外線撮影装置
420 赤外線照射装置
440 金属部材
446A、446B 撮影範囲


【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象物上に帯状に設定された検査対象領域を撮影した画像から、該検査対象領域の状態を検査する画像検査装置であって、
前記検査対象領域に赤外線を照射する赤外線照射装置と、該検査対象領域を撮影する赤外線撮影装置とが取付けられたロボットハンドを備え、該ロボットハンドは該検査対象領域に沿って設定された経路上を移動することができる構成とされており、
前記ロボットハンドが前記径路上を移動する際に、前記赤外線照射装置によって赤外線が照射された検査対象領域を、前記赤外線撮影装置により連続撮影して画像を取得し、該赤外線撮影装置により取得した画像により検査対象領域の状態を検査するロボット追従式画像検査装置。
【請求項2】
請求項1に記載のロボット追従式画像検査装置であって、
前記検査対象領域は接着剤の塗布領域であり、前記赤外線撮影装置は、前記接着剤の塗布領域を側方から撮影する構成とされており、前記検査対象領域の状態の検査は接着剤の塗布領域における接着剤の塗布高さの検査であることを特徴とするロボット追従式画像検査装置。
【請求項3】
請求項2に記載のロボット追従式画像検査装置であって、
前記ロボットハンドには接着剤を塗布する接着剤塗布装置が取付けられており、
前記ロボットハンドが前記検査対象物上に帯状に設定された接着剤の塗布領域に沿って設定された径路上を移動する際に、前記接着剤塗布装置によって検査対象物上に接着剤が塗布されるとともに、該接着剤塗布装置によって接着剤が塗布された直後の接着剤の塗布領域を前記赤外線撮影装置により撮影することを特徴とするロボット追従式画像検査装置。
【請求項4】
請求項1に記載のロボット追従式画像検査装置であって、
前記検査対象領域は接着剤の塗布領域であり、前記赤外線撮影装置は、前記接着剤の塗布領域を側方から撮影する側方撮影装置と該接着剤の塗布領域を上方から撮影する上方撮影装置から構成されており、
前記検査対象領域の状態の検査は、側方撮影装置により取得した画像による接着剤の塗布領域における接着剤の塗布高さの検査、および、上方撮影装置により取得した画像による接着剤の塗布領域における接着剤の塗布位置および塗布幅の検査であることを特徴とするロボット追従式画像検査装置。
【請求項5】
請求項4に記載のロボット追従式画像検査装置であって、
前記ロボットハンドには接着剤を塗布する接着剤塗布装置が取付けられており、
前記ロボットハンドが前記検査対象物上に帯状に設定された接着剤の塗布領域に沿って設定された径路上を移動する際に、前記接着剤塗布装置によって検査対象物上に接着剤が塗布されるとともに、該接着剤塗布装置によって接着剤が塗布された直後の接着剤の塗布領域を前記側方撮影装置および前記上方撮影装置により撮影することを特徴とするロボット追従式画像検査装置。
【請求項6】
請求項1に記載のロボット追従式画像検査装置であって、
前記検査対象領域は接着剤の塗布領域であり、前記赤外線撮影装置は、前記接着剤の塗布領域を上方から撮影する構成とされており、前記検査対象領域の状態の検査は接着剤の塗布領域における接着剤の塗布位置および塗布幅の検査であることを特徴とするロボット追従式画像検査装置。
【請求項7】
請求項6に記載のロボット追従式画像検査装置であって、
前記ロボットハンドには接着剤を塗布する接着剤塗布装置が取付けられており、
前記ロボットハンドが前記検査対象物上に帯状に設定された接着剤の塗布領域に沿って設定された径路上を移動する際に、前記接着剤塗布装置によって検査対象物上に接着剤が塗布されるとともに、該接着剤塗布装置によって接着剤が塗布された直後の接着剤の塗布領域を前記赤外線撮影装置により撮影することを特徴とするロボット追従式画像検査装置。
【請求項8】
請求項2〜請求項5のいずれかの請求項に記載のロボット追従式画像検査装置であって、
前記接着剤塗布装置はノズルであり、前記検査対象物はガラス部材であり、前記接着剤はウレタンであることを特徴とするロボット追従式画像検査装置。
【請求項9】
請求項2〜請求項7のいずれかに記載のロボット追従式画像検査装置であって、
前記接着剤塗布装置はシール塗布具であり、前記検査対象物は金属部材であり、前記接着剤はシールであることを特徴とするロボット追従式画像検査装置。
【請求項10】
請求項1に記載のロボット追従式画像検査装置であって、
前記検査対象領域はプライマの塗布領域であり、前記赤外線撮影装置は、前記プライマの塗布領域を上方から撮影する構成とされており、前記検査対象領域の状態の検査はプライマの塗布領域におけるプライマの塗布状態の検査であることを特徴とするロボット追従式画像検査装置。
【請求項11】
請求項10に記載のロボット追従式画像検査装置であって、
前記ロボットハンドにはプライマ塗布用の刷毛が取り付けられており、
前記ロボットハンドが前記検査対象物上に帯状に設定されたプライマの塗布領域に沿って設定された径路上を移動する際に、前記刷毛によって検査対象物上にプライマが塗布されるとともに、該刷毛によってプライマが塗布された直後のプライマの塗布領域を前記赤外線撮影装置により撮影することを特徴とするロボット追従式画像検査装置。
【請求項12】
請求項10又は請求項11に記載のロボット追従式画像検査装置であって、
前記検査対象物は自動車用のガラス部材であることを特徴とするロボット追従式画像検査装置。
【請求項13】
検査対象物上に帯状に設定された検査対象領域を撮影した画像から、検査対象領域の状態を検査する画像検査方法であって、
前記検査対象領域に赤外線を照射する赤外線照射装置と、該検査対象領域を撮影する赤外線撮影装置とが取付けられたロボットハンドが、該検査対象領域に沿って設定された経路上を移動する際に、前記赤外線照射装置によって赤外線が照射された検査対象領域を、該赤外線撮影装置により連続撮影して画像を取得し、
前記赤外線撮影装置により取得した画像により検査対象領域の状態を検査するロボット追従式画像検査方法。
【請求項14】
検査対象物上に帯状に設定された検査対象領域を撮影した画像から、検査対象領域の状態を検査するコンピュータプログラムであって、
コンピュータを、赤外線照射装置と赤外線撮影装置とが取付けられたロボットハンドが検査対象領域に沿って設定された経路上を移動する際に赤外線照射装置によって赤外線が照射された検査対象領域領域を赤外線撮影装置により連続撮影した画像を取得する画像取得手段と、該画像を処理して検査対象領域の状態を検査する画像処理手段とを備えた画像処理装置として機能させる、ロボット追従式画像検査に用いるコンピュータプログラム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【公開番号】特開2011−38773(P2011−38773A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−183345(P2009−183345)
【出願日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【出願人】(000177058)三友工業株式会社 (27)
【Fターム(参考)】