説明

ロータリエンコーダの回転スリット板組付け方法および装置

【課題】 従来の方法で問題となっていた誤差および誤検出を解消し、組付け精度を向上させることができるロータリエンコーダの回転スリット板組付け方法および装置を提供する。
【解決手段】 ロータリエンコーダの回転スリット板組付け方法は、仮組みロータリエンコーダを少なくとも1周分回転させて振れおよび変位を計測するステップと、この少なくとも1周分の回転時の時間と振れ変位との関係をサンプリングするステップと、サンプリングによって得られたデータから振れの最大変位を求め、これより若干小さい値を閾値として設定するとともに、閾値を超える時間ΔTを演算するステップと、仮組みロータリエンコーダをさらに回転させ、閾値を超えた後さらに時間ΔT/2経過した位置を最大変位位置とするステップとを含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ロータリエンコーダを組み立てる際に使用される回転スリット板組付け方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ロータリエンコーダの回転スリット板組付け工程においては、回転軸の回転中心に対し回転スリット板が偏心しないように精度よく位置決めして、回転時の振れを極少に抑える必要がある。そのための方法として、従来、大別して2つの方法が知られている。
【0003】
第1の方法は、回転軸および回転スリット板の双方を静止させたまま、画像計測を行い、それぞれの形状から求めた幾何中心が一致するように位置決めするもので、第2の方法は、例えば特許文献1に記載されているように、回転軸に回転スリット板を仮置きして、実際に回転させながら回転振れが最小になるように位置調整するものである。
【0004】
上記第2の方法における回転スリット板の位置調整は、より詳細には、パルスモータによって回転スリット板が仮置きされた仮組みロータリエンコーダを回転させ(回転ステップ)、固定したCCDカメラで連続撮像される回転中の回転スリット板の真円パターン端部などを画像上で位置追跡しながら、振れおよび変位を計測し(振れ計測ステップ)、回転スリット板の振れの最大変位位置を求め(最大変位位置検出ステップ)、これを押し治具設置位置に停止させる位置とし(停止位置決定ステップ)、この最大変位位置が押し治具設置位置に来るように回転スリット板を停止させ(回転スリット板停止ステップ)、停止した回転スリット板を押し治具で振れ幅の1/2径方向に押して振れを小さくし(回転スリット板押し込みステップ)、再度、振れ幅を計測し、規格内に入っていなければ(判定ステップ)、一連の操作を繰り返すものとされている。
【特許文献1】特開2000−028397号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記第1の方法では、画像計測の精度や、回転軸形状の精度や軸自体の振れ回りなどが原因となって、求めた回転軸の中心と実際の回転中心とが一致しない場合があり、このような場合には、計測・位置決め精度を向上させても回転スリット板の振れが改善されないという問題があった。これに対し、上記第2の方法は、仮組みした状態で実際に回転スリット板を回転させ、その振れが小さくなるように位置調整するために、第1の方法より回転振れを小さくすることができる。しかしながら、第2の方法では、振れ最大変位位置を検出するために、画像上の位置計測で周回時に振れが最大変位となる位置を記録し、そこに再度到達したときを判定するものであることから、以下が原因となって精度が悪化するという問題があった。
【0006】
i)振れの最大変位付近では画像上の位置変化が小さく、最大変位到達を判定する分解能が悪くなるため、誤差が大きくなる。
【0007】
ii)前周回の最大変位値にわずかに到達しない場合があり、予め判定に適当な幅を持たせる必要があり、それによってばらつき・誤差が大きくなる。
【0008】
iii)最大変位付近で振れの推移がふらつく現象が起こり、前記i)とii)とを合わせて、ピークが本当に必要な振れ最大変位と一致しない場合があり、誤検出となる。
【0009】
また、第2の方法では、数μmの規格内に振れを抑えるためには、振れ計測〜調整を繰り返す必要があり、トータルの組付け時間が長くなりやすいという問題もあった。
【0010】
この発明の目的は、従来の方法で問題となっていた誤差および誤検出を解消し、組付け精度を向上させることができるロータリエンコーダの回転スリット板組付け方法および装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1の発明によるロータリエンコーダの回転スリット板組付け方法は、回転スリット板を回転軸に偏心しないように組み付けるに際し、回転スリット板が仮置きされた仮組みロータリエンコーダを回転させて回転スリット板の振れの最大変位位置を求め、この最大変位位置が押し治具設置位置に来るように回転スリット板を停止させ、停止した回転スリット板を押し治具で径方向に押して振れを小さくし、これを繰り返すことで回転振れを規格値以下とするロータリエンコーダの回転スリット板組付け方法において、仮組みロータリエンコーダを少なくとも1周分回転させて振れおよび変位を計測するステップと、この少なくとも1周分の回転時に振れの最大変位を求めこれより若干小さい値を閾値として設定するステップと、仮組みロータリエンコーダをさらに1周分回転させて、この間に閾値を超える時間ΔTを計測するステップと、仮組みロータリエンコーダをさらに回転させて、閾値を超えた後さらに時間ΔT/2経過した位置を最大変位位置とするステップとを含んでいることを特徴とするものである。
【0012】
ロータリエンコーダは、例えば、ハウジングに1対の転がり軸受を介して支持された回転軸と、回転軸に固定された回転スリット板と、ハウジングに固定された固定スリット板と、回転スリット板を通過した発光素子からの光を受けて電気信号に変換する受光素子と、受光素子の電気信号を処理する回路が設けられた基板とからなるものとされる。
【0013】
回転スリット板は、例えば、ガラスなどの透明な素材からなる円板に遮光部または透過部が所定ピッチで設けられたものとされる。回転スリット板の素材やスリットを形成する手段は種々変更可能である。
【0014】
押し治具による回転スリット板の押し込み量は、各1回の調整毎に、振れ幅の1/2(ちょうど1/2またはほぼ1/2)となるように変更される。
【0015】
仮組みは、例えば、回転板を回転軸に固定する手段として、紫外線硬化型の接着剤を使用することとし、接着剤の粘着力を利用して行うことができる。仮組みを行う方法は、これに限定されるものではなく、例えば、接着剤を使用せずに機械的に行うようにしてもよい。
【0016】
上述した従来の第2の方法における回転スリット板組付け方法が、回転ステップ、振れ計測ステップ、最大変位位置検出ステップ、停止位置決定ステップ、回転スリット板停止ステップ、回転スリット板押し込みステップおよび判定ステップを含んでいるのに対し、この発明による回転スリット板組付け方法は、回転ステップ、振れ計測ステップ、回転スリット板停止ステップ、回転スリット板押し込みステップおよび判定ステップが従来と同じであり、従来の最大変位位置検出ステップおよび停止位置決定ステップ(以下では、2つのステップを合わせたものを「停止位置検出ステップ」と呼ぶことがある。)に代えて、閾値設定ステップと、閾値越え時間計測ステップおよび停止位置決定ステップ(3つのステップを合わせたものが「停止位置検出ステップ」となっている。)を有している。
【0017】
回転スリット板の位置調整は、振れ計測ステップ、停止位置決定ステップ、回転スリット板押し込みステップなどによって行われるが、これらのステップのうち、計測ステップおよび回転スリット板押し込みステップにおける精度向上は、画像計測の精度を上げるなどで比較的容易に実現することができる。そして、本発明によると、画像計測の精度向上では達成することが難しい停止位置検出ステップにおける精度向上を果たすことができる。すなわち、本発明では、発明が解決しようとする課題に示した従来のi)、ii)およびiii)の問題点を解決するために、振れ変位最大位置を直接的に検出せず(従来の最大変位位置検出ステップをなくし)、振れ変位がピーク対称形の正弦波状繰り返し波形になることを利用して、振れ最大変位の検出を振れ位置による判定ではなく、時間による処理で行っている。具体的には、振れ変位の繰り返し波形上で、最大変位より若干小さめで変位が比較的安定に推移する位置を閾値とし、1周期のうち閾値以上の範囲で変位する時間ΔTを計測すれば、次の周回でその範囲に到達したときからΔT/2経過したとき振れ最大位置に到達しているはずであることを利用しており、これにより、従来のi)、ii)およびiii)の問題は回避され、精度が向上し、調整の繰り返し回数を減らすことができる。
【0018】
従来の第2の方法によると、振れ最大変位の画像上の位置と振れ幅を確定させるのに回転スリット板を1回転(少なくとも1回転)させ、次の周回で最大変位位置を検出しているので、振れ計測開始から最大変位位置検出までの時間は原理上(安全率を見込まない場合)、1周回強〜2周回弱(初期の偏心位相で異なる)相当になる。
【0019】
請求項1の発明のロータリエンコーダの回転スリット板組付け方法では、有効な閾値を決定するために、最大変位と振れ幅を確定させるのに回転スリット板を1回転(少なくとも1回転)させるのは、従来と同じであるが、この後、閾値越えする時間ΔTを計測し(ここまでで、1周回強〜2周回弱が必要)、さらに、次の周回でΔT/2を用いて回転を停止させる必要があり、結局、ΔTを計測後にさらに1周分が必要となる分、振れ計測開始から最大変位位置検出までの時間は原理上、2周回強〜3周回弱(初期の偏心位相で異なる)相当になる。
【0020】
したがって、請求項1の発明のロータリエンコーダの回転スリット板組付け方法は、調整の繰り返し回数を減らすことができるものの、最大変位に到達した位置の検出(停止位置検出ステップ)に要する時間が従来と比べて長くなり、全体としての時間短縮(スループットの向上)が十分でないという問題がある。
【0021】
請求項2の発明によるロータリエンコーダの回転スリット板組付け方法は、この問題を解消することができるもので、回転スリット板を回転軸に偏心しないように組み付けるに際し、回転スリット板が仮置きされた仮組みロータリエンコーダを回転させて回転スリット板の振れの最大変位位置を求め、この最大変位位置が押し治具設置位置に来るように回転スリット板を停止させ、停止した回転スリット板を押し治具で振れ幅の1/2径方向に押して振れを小さくし、これを繰り返すことで回転振れを規格値以下とするロータリエンコーダの回転スリット板組付け方法において、仮組みロータリエンコーダを少なくとも1周分回転させて振れおよび変位を計測するステップと、この少なくとも1周分の回転時の時間と振れ変位との関係をサンプリングするステップと、サンプリングによって得られたデータから振れの最大変位を求め、これより若干小さい値を閾値として設定するとともに、閾値を超える時間ΔTを演算するステップと、仮組みロータリエンコーダをさらに回転させ、閾値を超えた後さらに時間ΔT/2経過した位置を最大変位位置とするステップとを含んでいることを特徴とするものである。
【0022】
請求項2の発明によるロータリエンコーダの回転スリット板組付け方法が第1の発明と相違している点は、振れ変位の計測中にその推移をサンプリングしていることで、これにより、閾値決定後に、直前の波形から閾値を越える時間ΔTを算出することができる。したがって、第1の発明で必要であった閾値越え時間を求めるための1周分の回転を不要とすることができる。この後、第1の発明と同様に、仮組みロータリエンコーダをさらに回転させ、閾値を超えた後さらに時間ΔT/2経過した位置を最大変位位置とすることにより、精度向上効果が得られ、調整の繰り返し回数を減らすことができる。
【0023】
請求項3の発明によるロータリエンコーダの回転スリット板組付け装置は、回転スリット板が回転軸に仮置きされた仮組みロータリエンコーダを支持する支持部材と、回転軸を回転させる回転手段と、回転スリット板を径方向に押し込むための回転スリット板押し治具と、回転スリット板押し治具を移動させる押し治具移動手段と、回転スリット板の一定範囲を撮像する撮像装置と、回転手段および押し治具移動手段を制御する制御手段と、撮像装置で得られた画像を処理して回転スリット板の振れ変位を求め、振れ変位のデータに応じて撮像装置および制御手段に必要な信号を適宜出力するCPUとを備えているロータリエンコーダの回転スリット板組み付け装置において、振れの最大変位を求めこれより若干小さい値を閾値とするとともに閾値を超える時間ΔTを求める閾値越え時間検出手段と、閾値を超えた後さらに時間ΔT/2経過した位置を停止位置とする停止位置決定手段とを備えていることを特徴とするものである。
【0024】
請求項4の発明によるロータリエンコーダの回転スリット板組付け装置は、請求項3の発明によるロータリエンコーダの回転スリット板組付け装置において、仮組みロータリエンコーダを少なくとも1周分回転させた時の時間と振れ変位との関係をサンプリングするサンプリング手段をさらに備えており、閾値決定後に直前の波形から閾値を越える時間ΔTが算出されるものである。
【0025】
閾値越え時間検出手段、停止位置決定手段およびサンプリング手段は、いずれも、一連の操作を自動的に行うプログラムの一環として、CPU(例えばパソコン)に内蔵される。
【0026】
請求項3のロータリエンコーダの回転スリット板組み付け装置によると、上記請求項1の方法を容易に行うことができ、請求項4のロータリエンコーダの回転スリット板組み付け装置によると、上記請求項2の方法を容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0027】
請求項1および請求項2の発明のロータリエンコーダの回転スリット板組付け方法によると、回転軸に回転スリット板を仮置きして、実際に回転させながら回転振れが最小になるように位置調整する方法をベースにしているので、信頼性が高いものとなっており、しかも、この方法における問題である誤差および誤検出を解消することができるので、調整繰り返し回数を減少することができ、生産性を向上させることができる。しかも、この効果を得るために特殊な装置や複雑なアルゴリズムを必要としないので、低コストで生産性向上効果を得ることができる。
【0028】
請求項1のものでは、精度向上によって振れ計測〜調整の繰り返し回数を少なくすることができるので、組付け時間を短縮することができるものの、1回の振れ計測〜調整にかかる時間は、閾値を超える時間を求める必要があることから、従来の方法に比べて増加し、これによって、組付け時間の減少量が小幅になってしまうのに対し、請求項2のものによると、1回の振れ計測〜調整にかかる時間を従来の方法と同じにすることができ、組付け時間の減少量したがって生産性の向上を大幅なものとすることができる。
【0029】
請求項3および請求項4の発明のロータリエンコーダの回転スリット板組付け装置によると、回転軸に回転スリット板を仮置きして、実際に回転させながら回転振れが最小になるように位置調整する方法をベースにしているので、信頼性が高いものとなっており、しかも、この方法における問題である誤差および誤検出を解消することができるので、調整繰り返し回数を減少することができ、生産性を向上させることができる。しかも、この効果を得るために特殊な装置や複雑なアルゴリズムを必要としないので、低コストで生産性向上効果を得ることができる。
【0030】
請求項3のものでは、精度向上によって振れ計測〜調整の繰り返し回数を少なくすることができるので、組付け時間を短縮することができるものの、1回の振れ計測〜調整にかかる時間は、閾値を超える時間を求める必要があることから、従来の方法に比べて増加し、これによって、組付け時間の減少量が小幅になってしまうのに対し、請求項4のものによると、1回の振れ計測〜調整にかかる時間を従来の方法と同じにすることができ、組付け時間の減少量したがって生産性の向上を大幅なものとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、図面を参照して、この発明の実施形態について説明する。
【0032】
図1は、この発明のロータリエンコーダの回転スリット板組み付け装置を示している。
【0033】
図1において、スリット(5a)付きのハウジング(5)に1対の転がり軸受(7)を介して中空回転軸(6)が支持されて形成されたスピンドルアッシー(3)に回転スリット板(4)を仮置きしたものが仮組みロータリエンコーダ(2)であり、ロータリエンコーダの回転スリット板組み付け装置(1)は、仮組みロータリエンコーダ(2)を支持するパレット(支持部材)(11)と、この仮組みロータリエンコーダ(2)の回転軸(6)を回転させるパルスモータ(回転手段)(12)と、パルスモータ(12)を駆動するモータドライバ(13)と、回転スリット板(4)を径方向に押し込むための回転スリット板押し治具(14)と、回転スリット板押し治具(14)を移動させる押し治具水平移動装置(押し治具移動手段)(15)と、押し治具水平移動装置(15)を駆動する押し治具ドライバ(16)と、パレット(11)に設けられた窓(11a)から回転スリット板(4)に臨まされて回転スリット板(4)の一定範囲(4a)を撮像するCCDカメラ(撮像装置)(17)と、モータドライバ(13)および押し治具ドライバ(16)を制御するドライバ制御手段(18)と、CCDカメラ(17)で得られた画像を処理して回転スリット板(4)の振れ変位を作成するとともに、振れ変位のデータに応じてCCDカメラ(17)およびドライバ制御手段(18)に必要な信号を適宜出力するパソコン(CPU)(19)とを備えている。
【0034】
上記において、ロータリエンコーダの回転スリット板組み付け装置(1)のハードウェア部分の構成は、従来と同じであり、その詳細な説明は省略する。
【0035】
ドライバ制御手段(18)は、PLC(プログラマブルロジックコントロール)(18a)およびパルスユニット(18b)を有しており、所定の順序で信号を供給することにより、モータドライバ(13)と押し治具ドライバ(16)とが連動するように制御している。
【0036】
パソコン(19)には、CCDカメラ(17)によって得られた画像を処理して振れの変位を求めるプログラム(画像処理手段)、画像処理で得られた振れの変位から回転スリット板(4)の停止すべき位置を求めるプログラム(停止位置検出手段)などが設けられている。
【0037】
回転スリット板(4)には、振れ計測用の真円パターン(4b)が設定されており、これと基準真円(S)を仮定した振れ幅の中心との差が振れの変位として求められる。なお、基準真円(S)の絶対位置は、ワークセッティング精度に依存し、最終的な基準真円(S)は、1周期経過後に決定される。パソコン(19)の表示装置には、CCDカメラ(17)で得られている画像すなわち現在の振れの変位d(t)と、1周分回転させたときの最大変位Dとが表示される。
【0038】
CCDカメラ(17)からのデータを画像処理することによって得られる振れの変位のカーブは、正弦波に部分的に凹凸が付加されたようになっており、部分的に拡大した場合、例えば、図2に示すような形状となる。従来は、図2(b)において、振れが最大変位となる位置が最大変位到達点とされている。そのため、上記i)からiii)までのように、誤差や誤検出が増加するという問題があった。これに対し、本願発明の方法では、図2(a)に示すように、振れ変位が閾値を越える時間がΔTである場合に、ΔT/2経過したところが最大変位到達点とされている。すなわち、従来の「最大変位位置」は、最大変位となる位置そのもの(ミクロ的な最大変位位置)としていることから、誤差が大きいものとなっているのに対し、本願発明では「最大変位位置」が振れを正弦波で近似した場合のピーク位置(マクロ的な最大変位位置)とされており、これにより、精度が向上している。
【0039】
この発明のロータリエンコーダの回転スリット板組付け方法における第1実施形態において、その停止位置検出ステップは、1周分の回転時に振れの最大変位を求めこれより若干小さい値を閾値として設定するステップ(閾値演算ステップ)と、仮組みロータリエンコーダ(2)をさらに1周分回転させて、この間に閾値を超える時間ΔTを計測するステップ(閾値越え時間演算ステップ)と、仮組みロータリエンコーダ(2)をさらに回転させて、閾値を超えた後さらに時間ΔT/2経過した位置を停止位置(最大変位相当位置)とするステップ(停止位置決定ステップ)とを含んでいる。
【0040】
すなわち、図3を参照して、まず、仮組みロータリエンコーダ(2)を1周分回転させ、この1周分の回転時に振れの最大変位を求めこれより若干小さい値を閾値として設定する(この段階では、ΔTは求まっていない。)。次いで、仮組みロータリエンコーダ(2)をさらに1周分回転させて、この間に閾値を超える時間ΔTを計測する。そして、仮組みロータリエンコーダ(2)をさらに回転させて、閾値を超えた後さらに時間ΔT/2経過した位置を最大変位位置として押し治具設置位置に停止させる。この後、押し治具(14)を振れの最大変位の1/2径方向に押し込むことにより、1回分の振れ調整作業が終了する。この後、最初のステップに戻り、振れの最大変位が規格値以下になっていなければ、次の振れ調整作業が行われる。最初のステップにおいて、最大変位が規格値以下になっている場合、調整作業完了と判定され、回転スリット板(4)が回転軸(6)に固定される。こうして、一連の振れ調整作業が自動的に行われて、回転スリット板(4)の組付け作業が終了する。
【0041】
この発明のロータリエンコーダの回転スリット板組付け方法における第2の実施形態において、その停止位置演算ステップは、1周分の回転時の時間と振れ変位との関係をサンプリングするステップ(サンプリングステップ)と、サンプリングによって得られたデータから振れの最大変位を求め、これより若干小さい値を閾値として設定するとともに、閾値を超える時間ΔTを演算するステップ(閾値越え時間算出ステップ)と、仮組みロータリエンコーダ(2)をさらに回転させ、閾値を超えた後さらに時間ΔT/2経過した位置を停止位置(最大変位相当位置)とするステップ(停止位置決定ステップ)とを含んでいる。
【0042】
すなわち、図4を参照して、まず、仮組みロータリエンコーダ(2)を1周分回転させ、この1周分の回転時に振れの最大変位を求めこれより若干小さい値を閾値として設定する。ここで、第1実施形態と相違している点は、振れ変位の計測中にその推移をサンプリングしていることで、これにより、閾値決定後に、直前の波形から閾値を越える時間ΔTを算出することができる。したがって、第1実施形態で必要であった閾値越え時間を求めるための1周分の回転を不要とすることができる。この後は、第1実施形態と同様にすればよく、仮組みロータリエンコーダをさらに回転させて、閾値を超えた後さらに時間ΔT/2経過した位置を最大変位位置として押し治具設置位置に停止させ、この後、押し治具(14)を振れの最大変位の1/2径方向に押し込むことにより、1回分の振れ調整作業が終了する。そして、振れ調整作業を繰り返して、最大変位が規格値以下になった場合、調整作業完了と判定され、回転スリット板(4)が回転軸(6)に固定される。こうして、一連の振れ調整作業が自動的に行われて、回転スリット板(4)の組付け作業が終了する。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】図1は、この発明によるロータリエンコーダの回転スリット板組み付け装置を示すブロック図である。
【図2】図2は、この発明によるロータリエンコーダの回転スリット板組付け方法と従来の方法との相違点を説明する図である。
【図3】図3は、請求項1の発明によるロータリエンコーダの回転スリット板組付け方法における1回分の振れ補正時間を示す図である。
【図4】図4は、請求項2の発明によるロータリエンコーダの回転スリット板組付け方法における1回分の振れ補正時間を示す図である。
【符号の説明】
【0044】
(2) 仮組みロータリエンコーダ
(4) 回転スリット板
(6) 回転軸
(11) パレット(支持部材)
(12) パルスモータ(回転手段)
(14) 回転スリット板押し治具
(15) 押し治具水平移動装置(押し治具移動手段)
(17) CCDカメラ(撮像装置)
(18) ドライバ制御手段(制御手段)
(19) パソコン(CPU)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転スリット板を回転軸に偏心しないように組み付けるに際し、回転スリット板が仮置きされた仮組みロータリエンコーダを回転させて回転スリット板の振れの最大変位位置を求め、この最大変位位置が押し治具設置位置に来るように回転スリット板を停止させ、停止した回転スリット板を押し治具で径方向に押して振れを小さくし、これを繰り返すことで回転振れを規格値以下とするロータリエンコーダの回転スリット板組付け方法において、
仮組みロータリエンコーダを少なくとも1周分回転させて振れおよび変位を計測するステップと、この少なくとも1周分の回転時に振れの最大変位を求めこれより若干小さい値を閾値として設定するステップと、仮組みロータリエンコーダをさらに1周分回転させて、この間に閾値を超える時間ΔTを計測するステップと、仮組みロータリエンコーダをさらに回転させて、閾値を超えた後さらに時間ΔT/2経過した位置を最大変位位置とするステップとを含んでいることを特徴とするロータリエンコーダの回転スリット板組付け方法。
【請求項2】
回転スリット板を回転軸に偏心しないように組み付けるに際し、回転スリット板が仮置きされた仮組みロータリエンコーダを回転させて回転スリット板の振れの最大変位位置を求め、この最大変位位置が押し治具設置位置に来るように回転スリット板を停止させ、停止した回転スリット板を押し治具で径方向に押して振れを小さくし、これを繰り返すことで回転振れを規格値以下とするロータリエンコーダの回転スリット板組付け方法において、
仮組みロータリエンコーダを少なくとも1周分回転させて振れおよび変位を計測するステップと、この少なくとも1周分の回転時の時間と振れ変位との関係をサンプリングするステップと、サンプリングによって得られたデータから振れの最大変位を求め、これより若干小さい値を閾値として設定するとともに、閾値を超える時間ΔTを演算するステップと、仮組みロータリエンコーダをさらに回転させ、閾値を超えた後さらに時間ΔT/2経過した位置を最大変位位置とするステップとを含んでいることを特徴とするロータリエンコーダの回転スリット板組付け方法。
【請求項3】
回転スリット板が回転軸に仮置きされた仮組みロータリエンコーダを支持する支持部材と、回転軸を回転させる回転手段と、回転スリット板を径方向に押し込むための回転スリット板押し治具と、回転スリット板押し治具を移動させる押し治具移動手段と、回転スリット板の一定範囲を撮像する撮像装置と、回転手段および押し治具移動手段を制御する制御手段と、撮像装置で得られた画像を処理して回転スリット板の振れ変位を求め、振れ変位のデータに応じて撮像装置および制御手段に必要な信号を適宜出力するCPUとを備えているロータリエンコーダの回転スリット板組み付け装置において、
振れの最大変位を求めこれより若干小さい値を閾値とするとともに閾値を超える時間ΔTを求める閾値越え時間検出手段と、閾値を超えた後さらに時間ΔT/2経過した位置を停止位置とする停止位置決定手段とを備えていることを特徴とするロータリエンコーダの回転スリット板組み付け装置。
【請求項4】
仮組みロータリエンコーダを少なくとも1周分回転させた時の時間と振れ変位との関係をサンプリングするサンプリング手段をさらに備えており、閾値決定後に直前の波形から閾値を越える時間ΔTが算出される請求項3のロータリエンコーダの回転スリット板組付け装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−171106(P2007−171106A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−372260(P2005−372260)
【出願日】平成17年12月26日(2005.12.26)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】