説明

ワークの移載装置および移載方法

【課題】温度変化による建屋架構の伸縮等によってガイドレールが位置ずれし、ガイドレールの位置ずれによってキャリヤの位置がワークをキャリヤに移載するマニピュレータに対して相対的にずれた場合でも、精度よく、かつ短時間にワークの移載をおこなうことのできるワークの移載装置および移載方法を提供する。
【解決手段】鉛直方向に延設する昇降ガイド部材1と、昇降ガイド部材1に昇降自在に装着されたロボットアーム2と、ワーク(ドアD)を支持する支持部材26と、支持部材26とキャリヤFとの離間を計測する計測装置とがロボットアーム2の先端に取付けられてなる移載装置10である。計測装置は、複数のリミットスイッチと、キャリヤまで伸長しながら該複数のリミットスイッチをそれぞれONまたはOFFさせることで離間を計測する計測部材とから構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生産ラインを収容する建屋内に配設されたガイドレールに垂下された姿勢でワークを搬送するキャリヤに、マニピュレータによって支持されたワークを該マニピュレータから移載する移載装置と移載方法に係り、特に、温度変化による建屋架構の伸縮等によってガイドレールが位置ずれし、ガイドレールの位置ずれによってキャリヤの位置がマニピュレータに対して相対的にずれた場合でも、精度よく、かつ短時間にワークの移載をおこなうことのできるワークの移載装置および移載方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両のドアは、車体フレームに仮固定された状態で車体フレームとともに塗装がおこなわれ、塗装工程を経た車体フレームはコンベア上を搬送され、所定のドア取り外しブースにてドアが車体フレームから取り外され、取り外されたドアは生産ラインを収容する建屋内に配設されたガイドレールに沿って移動する搬送キャリヤに移載され、ドアへの部品組立てブースまで搬送キャリヤにて搬送され、吊り降ろされた後にドアトリム等の部品が組み付けられ、再度、搬送キャリヤに移載され、最終組立てラインにてドアが車体フレームに組み付けられている。
【0003】
従来は、例えば一定長さの水平ガイドレールが着脱可能に構成されており、ドア取り外しブースにおいては、該水平ガイドレールと床面との間を昇降ガイド部材にて繋ぎ、この昇降ガイド部材に沿って一定長さの水平ガイドレールと搬送キャリヤ、および該搬送キャリヤに取付けられたドアを下方に降ろし、作業員が搬送キャリヤからドアを取り外して部品組付けテーブルへ載置するものであった。このような従来のドアを含むワークの搬送設備によれば、基本的に水平ガイドレールと昇降ガイド部材とが連結されているため、生産ラインの切替え変更等を要する場合には、容易にライン構成の変更をおこなうことが極めて困難であった。
【0004】
そこで、水平ガイドレールと昇降ガイド部材とを切り離した構成とし、昇降ガイド部材をより小規模化することにより、ライン変更等にも迅速かつ容易に対応することが可能となる。ところで、建屋を構成する柱や梁等の架構部材は温度変化によって材料の伸び縮みがあり、季節ごとのみならず、日単位でも昼夜の温度変化によって架構部材の伸縮が招来される。したがって、仮に水平ガイドレールと昇降ガイド部材とを切り離した構成を適用した場合には、ライン構成の変更に対しては容易に対応可能となったとしても、温度変化による建屋架構の伸縮等により、水平ガイドレールと昇降ガイド部材との位置ずれを許容せざるを得ない。水平ガイドレールと昇降ガイド部材との位置ずれが生じることによって水平ガイドレールに垂下されたキャリヤと昇降ガイド部材とが相対的に位置ずれすることとなり、搬送キャリヤへのワーク(車両のドア等)の移載が困難となり、位置ずれが大きな場合にはワークの移載が不可能な事態も生じ得る。
【0005】
例えば、特許文献1には、車両ドアの搬送装置に関する発明が開示されている。この搬送装置は、水平レールに支持案内される移動体と、この移動体に取付けられた一次ハンガーと、該一次ハンガーに上向きの支持部が設けられ、該支持部に上方から係脱自在でかつ係合によって位置決めされる二次ハンガーを設け、二次ハンガーにドアサブハンガーを設け、ドアサブハンガーにドアを載置させてなる搬送装置である。この搬送装置の構成によれば、一次ハンガーに二次ハンガーを係脱することで、この二次ハンガーとドアサブハンガーをともに移動体に積み降ろしすることができる。一次ハンガーに対する二次ハンガーの積み込みをおこなう際には、支持部に対して二次ハンガーが上方から係合されると同時に、この二次ハンガーを一次ハンガーに対して自動的に位置決めすることができる。
【0006】
【特許文献1】特開平5−193498号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示の車両ドアの搬送装置によれば、水平レールに支持案内される移動体(キャリヤ)に対してドアを仮固定したハンガーを自動的に位置決めできるといった利点がある一方で、上記する従来の課題、すなわち、切り離された水平ガイドレールと昇降ガイド部材との間に位置ずれが生じた際に、ドアをはじめとするワークを損傷させることなく、移動体(キャリヤ)に移載することに関しての記載は一切ない。
【0008】
本発明は、上記する問題に鑑みてなされたものであり、温度変化による建屋架構の伸縮等によってガイドレールが位置ずれし、ガイドレールの位置ずれによってキャリヤの位置がマニピュレータに対して相対的にずれた場合でも、精度よく、かつ短時間にキャリヤにワークを移載することのできるワークの移載装置および移載方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成すべく、本発明によるワークの移載装置は、生産ラインを収容する建屋内に配設されたガイドレールに垂下された姿勢でワークを搬送するキャリヤに、ワークを移載する移載装置であって、鉛直方向に延設する昇降ガイド部材と、該昇降ガイド部材に昇降自在に装着されたマニピュレータと、ワークを支持する支持部材と、該支持部材とキャリヤとの離間を計測する計測装置とがマニピュレータの先端に取付けられており、該計測装置は、複数のリミットスイッチと、キャリヤまで伸長しながら該複数のリミットスイッチをそれぞれONまたはOFFさせることによって前記離間を計測する計測部材と、から構成されていることを特徴とする。
【0010】
ガイドレールは、生産ラインが構築された工場建屋の例えば天井に、所定の延設態様で設けられており、例えば車両のドアを含む適宜のワークが、キャリヤ(ハンガー)に固定され、このキャリヤがガイドレールに案内されながら所定の組付けまたは組みばらし用のブースに搬送される。このガイドレールは、水平方向に延設するほか、他の機器やその作動を回避するように適宜の箇所で折れ曲がりながら、建屋内に配設されている。一方、所定の組付けまたは組みばらしブースにはワークを上方のキャリヤに鉛直方向に搬送するための昇降ガイド部材が立設しており、昇降ガイド部材には、多軸関節を備えたロボットアームをはじめとする適宜のマニピュレータが昇降自在に取付けられている。例えば、昇降ガイド部材に取付けられたマニピュレータの端部が昇降ガイド部材を構成する送りねじ機構の移動ナットに固設され、ナットの移動に応じてマニピュレータが昇降できるような構成を適用することができる。
【0011】
上記するガイドレールと鉛直方向に延設する昇降ガイド部材は、縁切りされており、ガイドレールに沿って移動するキャリヤに対し、マニピュレータの先端に設けた支持部材にワークを支持させた姿勢で昇降ガイド部材に沿ってマニピュレータをキャリヤレベルまで上昇させ、マニピュレータからキャリヤにワークの移載をおこなう。
【0012】
ところで、建屋を構成する梁や柱等の架構部材は温度変化によって伸縮変形するため、ガイドレールと昇降ガイド部材とが縁切りされていることによって双方の位置ずれが生じることとなる。ガイドレールと昇降ガイド部材が相対的に位置ずれすることにより、ガイドレールに垂下されたキャリヤと昇降ガイド部材との相対位置もずれることとなる。このキャリヤは、例えばフレーム架構から構成されており、ガイドレールから垂下されていることから、常時左右前後に振れた状態となっている。このような状況下で、ワークに損傷を与えることなくキャリヤに該ワークを精度よく、かつ短時間に移載するために、本発明の移載装置では、例えば車両のドア等のワークを支持する支持部材とキャリヤまでの距離を計測する計測装置をマニピュレータ先端に備えた構成とする。この支持部材は、例えばフック形状の部材を使用することができる。
【0013】
この計測装置は、公知のリミットスイッチを複数備えており、各リミットスイッチをONまたはOFFさせながらキャリヤまで伸張する計測部材を備えた構成を適用することができる。複数のリミットスイッチのそれぞれのON/OFFの組み合わせに応じて、マニピュレータ先端のワーク支持部材とキャリヤまでの離間を予め設定しておくことにより、計測部材が各リミットスイッチをONまたはOFFさせながら伸張した際のリミットスイッチのON/OFFの組み合わせを特定し、シーケンサーが特定されたリミットスイッチの組み合わせに応じた距離データをマニピュレータに指示することにより、マニピュレータが所定量稼動して、ワークをキャリヤに取付けられた支持部材に移載することができる。
【0014】
ここで、リミットスイッチのON/OFFの組み合わせを予め設定しておくことにより、極めて短時間に離間を特定することが可能となる。なお、計測装置の構成は、特に限定するものではないが、例えばプッシュプランジャ式ないしはローラプランジャ式の複数のリミットスイッチの間を、ばね付勢によってスライド可能な棒状の計測部材が移動するように構成することができる。計測部材の左右に2基ないしは3基づつのリミットスイッチを設けておくことで、各リミットスイッチと計測部材が接触した場合にリミットスイッチがONされ、接触しない場合にはOFFのままであることにより、リミットスイッチの数に応じたON/OFFの組み合わせのバリエーションに応じた離間値を設定することができる。より具体的には、棒状の計測部材に適宜の形状に成形されたドグを取付けておき、計測部材がキャリヤまで伸張した際に、このドグが各リミットスイッチをONまたはOFFすることにより、そのON/OFFの組み合わせに応じた離間長を特定することができる。この実施形態においては、リミットスイッチに接触する部分のドグの形状と、各リミットスイッチの基数や配設形態の設定により、離間長の特定をおこなうことができる。なお、任意のリミットスイッチの組み合わせに対して、離間を特定の値(例えば5mm)に設定しておくこともできるし、誤差を加味した一定範囲の離間範囲(3mm±2mm)等に設定しておくこともできる。
【0015】
本発明のワークの移載装置によれば、ワークを支持するマニピュレータが昇降する昇降ガイド部材に対してガイドレールに垂下されたキャリヤが相対的に位置ずれした場合であっても、精度よく、短時間にワークをキャリヤに移載することが可能となる。
【0016】
また、本発明によるワークの移載装置の他の実施形態において、前記離間はキャリヤの下端と支持部材との間の距離に設定されており、前記ワークの移載装置は、ワークに設けられた係合部がキャリヤに設けられた被係合部に係合された際に計測された前記離間を、キャリヤの下端から被係合部までの距離と被係合部からキャリヤの上端までの比率に応じて補正する補正手段と、前記離間が補正されてなる補正量をマニピュレータの稼動量として該マニピュレータに稼動量指令信号を送信する制御手段とをさらに備えていることを特徴とする。
【0017】
ワークをキャリヤへ移載した際のワークの支持態様は特に限定するものではないが、少なくともワークをその下端とその側面にて支持固定するのが安定性の面から好ましい。例えばキャリヤの下端にワーク載置用の支持部材を取付けておき、キャリヤを構成する架構フレーム内の被係合部にワークを係合させるための被係合部材を取付けた構成とすることができる。ワークの係合部には、前記係合部材に係合するフックや落とし込みピンなどを予め取付けておき、まず双方を係合させることによってキャリヤの振れ止めをおこなうことができる。
【0018】
なお、下方からワークを支持する支持部材には、ウレタンをはじめとする適宜の樹脂緩衝材をワークと当接する部位に設けておくのが望ましい。この緩衝材がワークと当接する面の形状はワーク下端の形状と適合する形状に成形されているのが望ましい。かかる干渉材を設けることでワークを支持する際にワークに損傷を与える危険性が低減され、さらには、双方が適合した形状とされることでワークを安定した姿勢で支持することができる。
【0019】
既述するキャリヤと昇降ガイド部材(およびマニピュレータ)との間には、相対的な位置ずれが生じている。この状態でフレーム架構からなるキャリヤの被係合部にワークの係合部を係合させることにより、係合部を支点としてキャリヤは傾斜した姿勢となる。ここで、計測装置にて計測されたキャリヤの下端とマニピュレータの支持部材との間の離間をL1とすると、上記支点に対して、キャリヤの上端(キャリヤがガイドレールに垂下された箇所)はL1と点対称のL2の位置となる。ここで、L1とL2の長さの関係は、キャリヤの下端から被係合部までの距離と被係合部からキャリヤの上端までの距離の比率に応じた関係となる。
【0020】
本発明の移載装置では、計測装置によって計測された離間(上記するL1)を、上記の比率に応じて補正する補正手段がマニピュレータを作動させるコンピュータ内に内蔵されており、この補正手段にて上記離間が補正されてなる補正量(上記するL2)をマニピュレータの稼動量とし、コンピュータ内に内蔵された制御手段により、マニピュレータに稼動量指令信号を送信するものである。マニピュレータを稼動量だけ稼動させる(水平移動させる)ことにより、傾斜姿勢のキャリヤを鉛直姿勢に修正させることができ、この段階でキャリヤの下端の支持部材にワークを載置することにより、例えばワークの下端形状に適合した形状に成形された支持部材に精度よくワークを移載することが可能となる。
【0021】
本発明のワークの移載装置によれば、水平ガイドレールとワークを固定した姿勢で水平ガイドレールに垂下されたキャリヤまで搬送するマニピュレータを昇降させる昇降ガイド部材とが縁切りされ、双方の離間が建屋構成部材の温度変化によって変化した場合であっても、ワークに損傷を与えることなく、可及的に迅速でかつ高精度に、ワークをキャリヤに移載することができる。
【0022】
また、本発明によるワークの移載方法は、生産ラインを収容する建屋内に配設されたガイドレールに垂下された姿勢でワークを搬送するキャリヤに、ワークを移載する移載方法であって、前記ワークの移載方法は、鉛直方向に延設する昇降ガイド部材に沿ってワークを支持したマニピュレータを上昇させ、ワークに設けられた係合部とキャリヤに設けられた被係合部を係合させ、マニピュレータのワーク支持部とキャリヤの下端までの離間をマニピュレータに装着された計測装置によって計測し、キャリヤの下端から被係合部までの距離と被係合部からキャリヤの上端までの比率に応じて前記離間を補正することによってマニピュレータの稼動量を決定し、マニピュレータを該稼動量だけ稼動させてキャリヤの垂下姿勢を修正し、キャリヤの下端に設けられた支持部材にワークを移載することを特徴とする。
【0023】
本発明のワークの移載方法は、上記する昇降ガイド部材と、該昇降ガイド部材に沿って昇降するマニピュレータと、このマニピュレータ先端に取付けられた計測装置から大略構成される移載装置を使用して、適宜のワークを搬送キャリヤに移載する方法である。これは、例えば、生産ラインを流れてきた車両からドア(ワーク)を取り外し、ドアをマニピュレータに固定し、マニピュレータからキャリヤに移載し、キャリヤに固定された状態でガイドレールに沿って所定の組付けブースにワークを搬送させる場合の、マニピュレータからキャリヤに移載する方法に関するものである。
【0024】
フレーム架構からなるキャリヤへワークが移載された際の支持態様は、既述するように、キャリヤの下端とそれ以外の任意の箇所にてワークを支持させるものである。昇降ガイド部材(およびマニピュレータ)に対してキャリヤが相対的に位置ずれした場合においても、キャリヤの任意の箇所に設定された被係合部にワークの係合部を係合させ、キャリヤの下端とマニピュレータのワーク支持部との離間を計測装置にて計測し、計測された離間に対して既述する補正をおこなうことによってマニピュレータの稼動量を決定し、この稼動量に基づいてマニピュレータを稼動させることで、キャリヤの姿勢を傾斜姿勢から鉛直姿勢に修正することができる。キャリヤの姿勢を修正することにより、ワークを精度よくキャリヤの支持部材に移載させることができる。
【0025】
さらに、本発明によるワークの移載方法の他の実施形態において、前記計測装置には、複数のリミットスイッチと、キャリヤまで伸長しながら該複数のリミットスイッチをそれぞれONまたはOFFすることによって前記離間を計測する計測部材が取付けられており、複数のリミットスイッチのそれぞれのON/OFFの組み合わせに応じて離間が予め設定されていることを特徴とする。
【0026】
本発明の移載方法によれば、マニピュレータからキャリヤへのワークの正確な移載は勿論のこと、移載時間を短縮することも可能となる。
【発明の効果】
【0027】
以上の説明から理解できるように、本発明のワークの移載装置および移載方法によれば、温度変化による建屋架構の伸縮等によってガイドレールが位置ずれし、ガイドレールの位置ずれによってキャリヤの位置がマニピュレータに対して相対的にずれた場合でも、マニピュレータに装着した計測装置によって双方の離間を計測し、計測値が適宜に補正された稼動量に基づいてマニピュレータが稼動することにより、キャリヤの姿勢を適宜に修正することができるため、高精度かつ短時間にワークをマニピュレータからキャリヤに移載することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明の移載装置の正面図であって、車両のドアをキャリヤに移載している状況を説明した図を、図2は、図1の側面図を、図3は、図1のIII部の拡大図を、図4は、図3のIV−IV矢視図をそれぞれ示している。図5は、傾斜姿勢のキャリヤとロボットアームの支持部材との離間を計測し、計測結果からガイドレールにおけるずれを求め、ガイドレールのずれ量だけロボットアームを稼動させてキャリヤを鉛直姿勢にしている状況を説明した図である。図6は、リミットスイッチのON/OFFの組み合わせごとの、キャリヤ下端(計測部)の離間およびガイドレールのずれ量の一実施形態を示したテーブルを、図7は、計測部のずれ量を許容誤差を勘案した補正量とし、該補正量からロボットアームの稼動量が算定されることを説明した図をそれぞれ示している。なお、計測装置を構成するリミットスイッチの基数やドグの形状が図示する実施形態に限定されるものでないこと、およびマニピュレータが図示する2軸関節のロボットアームに限定されるものでないことは勿論のことである。
【0029】
図1は、本発明の移載装置の一実施形態の正面図であり、ドアDが取付けられた状態の車両VがコンベヤCで搬送され、車両Vから取り外されたドアDを移載装置10に支持させ、ガイドレールGに垂下されたキャリヤFに移載装置10からドアDを移載している状況を示している。また、図2は、その側面図を示している。
【0030】
移載装置10は、床面にボルトBにて固定されたプレートPと一体となっている昇降ガイド部材1と、この昇降ガイド部材1に取付けられたロボットアーム2とから大略構成されている。昇降ガイド部材1は、鉛直方向に立設するガイド部材11と、その一側に設けられた送りねじ機構12から構成されている。送りねじ機構12は、図2に示すように、サーボモータ12aと、その出力軸に設けられたギヤ12a1と、該ギヤ12a1に噛み合うギヤ12b1が装着されたねじ軸12bと、ねじ軸12bの回転によって昇降するナット部材12cとから構成されている。
【0031】
図1に戻り、2軸関節のロボットアーム2は、ナット部材12cに取付けられたサーボモータ21によって回転するアーム22と、該アーム22の先端に取付けられたサーボモータ23によって回転するアーム24から構成されており、このアーム24に水平方向に延設する水平部材25が取付けられている。水平部材25の上面には、ドアDの下端が嵌り込んだ状態で該ドアDを支持する支持部材26が装着されている。
【0032】
車両Vから取り外されたドアDは、作業員Hによって支持部材26上に載置され、送りねじ機構12によってロボットアーム2が上方に移動することにより(Y方向)、ガイドレールGから垂下されたキャリヤFレベルまで搬送される。
【0033】
ガイドレールGは、図1に示すように、工場建屋の架構部材の温度変化による伸縮によってずれが生じており(X方向)、床面上に固定された昇降ガイド部材1に対して、キャリヤFの相対的な位置は、季節単位はもとより、日単位でずれてしまう。
【0034】
図2に戻り、ロボットアーム2のアーム24に取付けられた水平部材25上には、上記する支持部材26,26のほかに、この支持部材26とキャリヤFの下端との離間を計測する計測装置3が取付けられている。
【0035】
図1のIII部の拡大図であり、計測装置3をより詳細に示したものが図3である。また、その平面図を図4に示している。
【0036】
計測装置3は、フレーム部材31と、該フレーム部材31をスライド可能に貫通する計測部材32とフレーム部材31の内部に先端を向けたローラプランジャ式の4つのリミットスイッチ37a,37b,37c,37dとから構成されている。計測部材32は、その一端にばね34が固設されており、その他端にはキャリヤFの下端と接触する接触子33が装着されており、ばね34の付勢によって(図4のX方向)キャリヤFまで計測部材32がスライドすることにより、支持部材26とキャリヤFとの離間(図4のL)が計測される。
【0037】
計測部材32の側面には2種類の形状のドグ35、36が装着されており、ドグ35にはリミットスイッチ37a,37bが、ドグ36にはリミットスイッチ37c,37dがそれぞれ接触可能に配設されている。各ドグ35、36のリミットスイッチ先端と接触する面の形状は、離間長に応じてスライドする計測部材32の位置によって各リミットスイッチ37a,37b,37c,37dが接触した場合はONに、非接触の場合はOFFとなるような適宜の形状に成形されている。この各リミットスイッチのON/OFFの組合せによって予め離間Lが設定されていることで、計測時間を極めて短くすることができる。なお、この各リミットスイッチのON/OFFの組合せと離間との関係に関する詳細は後述する。
【0038】
図5は、計測された離間と、ガイドレールGの実際のずれ量との関係を示したものであり、ガイドレールのずれ量だけロボットアームを稼動させてキャリヤを鉛直姿勢にしている状況を説明した図である。ここで、ガイドレールGは、既に建屋架構の温度変化による伸縮等によって所定の位置からずれた状態となっている。この所定の位置とは、位置ずれが生じない昇降ガイド部材(およびロボットアーム)との相対的な関係において、位置ずれが生じる前の初期の昇降ガイド部材に対する相対的な位置のことを意味している。ここで、ロボットアームからキャリヤへドアを移載する方法について説明する。
【0039】
ドアDを安定した姿勢でキャリヤFに支持させるために、ドアDは、キャリヤFに対してフレーム架構からなるキャリヤFの中間の適宜の位置Pと、その下端に設けられた支持部材F6で支持させる。キャリヤFの適宜の位置Pにはピン受け部材F5を設けておき、ドアDに予め取付けられている落とし込みピンD1を落とし込む等することによって双方を係合させる。かかるキャリヤFとドアDの係合により、ガイドレールGから垂下され、左右前後に振れた状態のキャリヤFを静止させることもできる。
【0040】
キャリヤFのP点でドアDとキャリヤFを係合させ、キャリヤFの振れを静止させた後、計測装置3により、ドアDを支持しているロボットアーム側の支持部材26とキャリヤFの下端との離間を計測する。図では、この離間をL1としている。ここで、ガイドレールGが昇降ガイド部材に対して相対的にずれているため、振れ止めされた際のキャリヤFの姿勢は傾斜姿勢となっている。
【0041】
離間L1が計測された後、ドアDの下端をキャリヤFの支持部材F6に載置するために、ロボットアームを所定量稼動させて、キャリヤFの傾斜姿勢を鉛直姿勢に修正させる。キャリヤFの姿勢を鉛直姿勢に修正するのは、ドアDの下端形状に適合する形状に成形されたキャリヤFの支持部材F6にドアDを精度よく収容させるためである。
【0042】
ロボットアームの稼動量は、実際にガイドレールGのずれ量となるため、キャリヤFの下端で計測された計測値をガイドレールGの地点でのずれ量に補正する必要がある。この補正は、係止点Pを中心として、キャリヤFの下端からP点までの距離L3と、P点からキャリヤFの上端までの距離L4との比率に応じて決定される。ロボットアームを制御する図示しないコンピュータ内に、この比率に応じて離間L1をL2に補正する補正手段が内蔵されており、補正量であるL2を稼動量としてロボットアームに稼動指令信号を送信する。指令信号に応じてロボットアームが稼動することにより、キャリヤFを鉛直姿勢とすることができる。
【0043】
キャリヤFを鉛直姿勢に修正した後、ドアDを下方に降ろすことにより、ドアDの下端を支持部材F6に載置することができる。
【0044】
図6は、既述する4つのリミットスイッチのそれぞれのON/OFFの組み合わせと、各組み合わせに応じて予め設定された計測部のずれ(キャリヤFの下端と支持部材26とのずれ)と、計測部のずれが補正されてなるガイドレールのずれをテーブル表示したものである。
【0045】
このテーブルの実施形態は、図5に示すL3とL4の比率が1:2.5の場合であり、計測部のずれを2.5倍することによってガイドレールのずれを算定し、このガイドレールずれをロボットアームの稼動量とするものである。なお、上記する比率は任意であり、比率に応じてロボットアームの稼動量が変更されることは勿論のことである。
【0046】
図7は、計測部のずれから、上記比率に応じてガイドレールのずれを算定する前に、計測部の計測値を適宜に補正した後に、補正後のずれ量を比率に応じてガイドレールのずれとすることを説明した図である。
【0047】
計測部による計測値を精度よくガイドレールのずれ量に補正するまでもなく、多少の許容誤差量を計測値に反映させた値をガイドレールのずれ量に補正しても、十分にキャリヤの姿勢制御をおこなうことができる場合も往々にしてあるため、このような場合には、図示するような適宜の許容誤差を反映したロボットアームの稼動量を設定するのが好ましい。
【0048】
以上、本発明の実施の形態を図面を用いて詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計変更等があっても、それらは本発明に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の移載装置の正面図であって、車両のドアをキャリヤに移載している状況を説明した図。
【図2】図1の側面図。
【図3】図1のIII部の拡大図。
【図4】図3のIV−IV矢視図。
【図5】傾斜姿勢のキャリヤとロボットアームの支持部材との離間を計測し、計測結果からガイドレールにおけるずれを求め、ガイドレールのずれ量だけロボットアームを稼動させてキャリヤを鉛直姿勢にしている状況を説明した図。
【図6】リミットスイッチのON/OFFの組み合わせごとの、キャリヤ下端(計測部)の離間およびガイドレールのずれ量の一実施形態を示したテーブル。
【図7】計測部のずれ量を許容誤差を勘案した補正量とし、該補正量からロボットアームの稼動量が算定されることを説明した図。
【符号の説明】
【0050】
1…昇降ガイド部材、11…ガイド部材、12…送りねじ機構、12a…サーボモータ、12b…ねじ軸、12c…ナット部材、2…ロボットアーム(マニピュレータ)、21,23…サーボモータ、22,24…アーム、25…水平部材、26…支持部材、27…ピン部材(係合部)3…計測装置、31…フレーム部材、32…計測部材、33…接触子、34…ばね、35,36…ドグ、37a,37b,37c,37d…リミットスイッチ、10…移載装置、G…ガイドレール、F…キャリヤ、F1…上弦材、F2…縦材、F3…中間材、F4…下弦材、F5…ピン受け部材(被係合部)、F6…支持部材、D…ドア、D1…落とし込みピン(係合部)、V…車両、C…コンベヤ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生産ラインを収容する建屋内に配設されたガイドレールに垂下された姿勢でワークを搬送するキャリヤに、ワークを移載する移載装置であって、
鉛直方向に延設する昇降ガイド部材と、該昇降ガイド部材に昇降自在に装着されたマニピュレータと、ワークを支持する支持部材と、該支持部材とキャリヤとの離間を計測する計測装置とがマニピュレータの先端に取付けられており、該計測装置は、複数のリミットスイッチと、キャリヤまで伸長しながら該複数のリミットスイッチをそれぞれONまたはOFFさせることによって前記離間を計測する計測部材と、から構成されていることを特徴とするワークの移載装置。
【請求項2】
前記離間はキャリヤの下端と支持部材との間の距離に設定されており、前記ワークの移載装置は、ワークに設けられた係合部がキャリヤに設けられた被係合部に係合された際に計測された前記離間を、キャリヤの下端から被係合部までの距離と被係合部からキャリヤの上端までの比率に応じて補正する補正手段と、前記離間が補正されてなる補正量をマニピュレータの稼動量として該マニピュレータに稼動量指令信号を送信する制御手段とをさらに備えていることを特徴とする請求項1に記載のワークの移載装置。
【請求項3】
生産ラインを収容する建屋内に配設されたガイドレールに垂下された姿勢でワークを搬送するキャリヤに、ワークを移載する移載方法であって、
前記ワークの移載方法は、鉛直方向に延設する昇降ガイド部材に沿ってワークを支持したマニピュレータを上昇させ、ワークに設けられた係合部とキャリヤに設けられた被係合部を係合させ、マニピュレータのワーク支持部とキャリヤの下端までの離間をマニピュレータに装着された計測装置によって計測し、キャリヤの下端から被係合部までの距離と被係合部からキャリヤの上端までの比率に応じて前記離間を補正することによってマニピュレータの稼動量を決定し、マニピュレータを該稼動量だけ稼動させてキャリヤの垂下姿勢を修正し、キャリヤの下端に設けられた支持部材にワークを移載することを特徴とするワークの移載方法。
【請求項4】
前記計測装置には、複数のリミットスイッチと、キャリヤまで伸長しながら該複数のリミットスイッチをそれぞれONまたはOFFすることによって前記離間を計測する計測部材が取付けられており、複数のリミットスイッチのそれぞれのON/OFFの組み合わせに応じて離間が予め設定されていることを特徴とする請求項3に記載のワークの移載方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−145561(P2007−145561A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−345144(P2005−345144)
【出願日】平成17年11月30日(2005.11.30)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】