説明

一液性エポキシ樹脂組成物

【課題】充分なリペア性を有し、配線基板のリワーク性に優れ、しかも生産性、溶剤洗浄性、接続耐久性等において従来技術に比べて性能向上効果を発揮することができるアンダーフィル封止用一液性エポキシ樹脂組成物を提供する。
【解決の手段】配線基板と、前記配線基板に電気的に接続された、半導体素子又は半導体素子を保持するキャリア基板、との間を、アンダーフィル封止するために用いられる、エポキシ樹脂、酸無水物、及び、下記一般式(1)で表されるカルボン酸を含有する一液性エポキシ樹脂組成物。
−O−CO−R−COOH (1)
(式中、Rは、炭素数1〜20の、エーテル結合若しくはエステル結合を含んでいてもよいアルキル基若しくはフッ素化アルキル基、又は、炭素数6〜20の芳香族炭化水素基を表す。Rは、炭素数1〜20の鎖状又は環状の2価の炭化水素基を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子と配線基板との間又は半導体素子を保持するキャリア基板と配線基板との間をアンダーフィル封止するためのリペア性に優れた一液性エポキシ樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子は一般にハンダボール等のソルダバンプを介して配線基板に実装される。また、LSI等の半導体素子を微細な配線を施したキャリア基板と称される小型基板に搭載したもの(これをCSPと一般に称する。)をより大きな配線基板にソルダバンプを介して実装することも行われている。半導体素子や半導体素子を搭載したキャリア基板は配線基板とソルダバンプによって電気的・機械的に接続されるが、ソルダバンプによって生じる配線基板と半導体素子又はキャリア基板との間の隙間はエポキシ樹脂等の封止樹脂によってアンダーフィル封止されるのが一般的である。
【0003】
この場合において、実装後に半導体素子の不良や配線基板との接続不良等が検査等により発見された場合、配線基板上の半導体素子や半導体素子を保持するキャリア基板を配線基板から取り外し(これをリペアと称する。)、代わりに新たな半導体素子等を取り付けて配線基板を再生する(これをリワークと称する。)ことが生産工程の歩留りやコストの観点から望まれる。このためには、封止樹脂が、硬化後においても半導体素子等を取り外すことができ、取り外した後の配線基板上に残存する樹脂残渣を配線基板に瑕疵を発生させることなしに除去できる(このような特性をリペア性を有すると称する。)ものであることが望ましい。
【0004】
リペア性を付与した封止樹脂としては、例えば、特許文献1には、含フッ素芳香族ジアミンを硬化剤として使用した有機溶剤で膨潤が起こりやすいエポキシ樹脂組成物が開示されている。しかし、含フッ素芳香族ジアミンはエポキシ樹脂との反応性が低く、硬化には長時間(例えば、150℃で4時間程度)が必要であり半導体装置の生産性に問題がある。特許文献2には、(メタ)アクリル酸エステル類、芳香族又は脂肪族エステル類のような可塑剤を配合したエポキシ樹脂組成物が開示されている。しかし、このような可塑剤の使用はブリードアウトの問題や半導体装置の特性劣化を誘発する虞がある。また、粘度上昇のため無機充填剤を充分に配合できない。特許文献3には、可塑化成分としてキシレン樹脂を使用した酸無水物硬化系エポキシ樹脂組成物が開示されている。しかしながら、この組成物はリペア性、溶剤洗浄性、接続耐久性等において性能向上効果が充分ではなく、満足のいくリワーク性を発揮しない。
【特許文献1】特開2002−60594号公報
【特許文献2】特開平10−204259号公報
【特許文献3】特開2004−210965号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明は、充分なリペア性を有し、配線基板のリワーク性に優れ、しかも生産性、溶剤洗浄性、接続耐久性等において従来技術に比べて性能向上効果を発揮することができるアンダーフィル封止用一液性エポキシ樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は鋭意検討を行った結果、特定構造のモノカルボン酸化合物を配合した酸無水物硬化系エポキシ樹脂組成物を使用することにより、上記課題を解決しうることを見いだし本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、配線基板と、前記配線基板に電気的に接続された、半導体素子又は半導体素子を保持するキャリア基板、との間を、アンダーフィル封止するために用いられる、エポキシ樹脂、酸無水物、及び、下記一般式(1)で表されるカルボン酸を含有する一液性エポキシ樹脂組成物である。
−O−CO−R−COOH (1)
式中、Rは、炭素数1〜20の、エーテル結合若しくはエステル結合を含んでいてもよいアルキル基(ただし、アルキル基の水素原子の全部又は一部がフッ素原子で置換されていてもよい)、又は、炭素数6〜20の1価の芳香族炭化水素基を表す。Rは、炭素数1〜20の鎖状又は環状の2価の炭化水素基を表す。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、上述の構成により、以下の効果を発揮する。
(1)リペア性、溶剤洗浄性、接続耐久性、作業性等において従来品に比べて性能向上効果が見られる。
(2)可塑化成分のブリードアウトがなく、また、無機充填剤も充分量配合することができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の組成物におけるエポキシ樹脂としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するモノマー、オリゴマー又はポリマーであれば特に限定されない。上記エポキシ樹脂は、常温で液状でないものでもよいが、常温で液状のものが好ましい。上記エポキシ樹脂としては、具体的には、例えば、ハイドロキノン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ樹脂、イソシアヌル酸型エポキシ樹脂等を挙げることができる。
【0010】
また、上記エポキシ樹脂に加えて、1分子中に1個以上のエポキシ基を有し、常温で低粘度の化合物を反応性希釈剤として使用してもよい。このような化合物としては、例えば、t−ブチルフェニルグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、1,9−ノナンジオールジグリシジルエーテル等を挙げることができる。
【0011】
上記1分子中に1個以上のエポキシ基を有し、常温で低粘度の化合物の配合量は、上記エポキシ樹脂との合計量に対して50重量%未満であることが好ましい。より好ましくは5〜30重量%である。
【0012】
なお、上記エポキシ樹脂、及び、上記1分子中に1個以上のエポキシ基を有し、常温で低粘度の化合物としては、不純物イオン濃度の低いものが好ましい。
【0013】
本発明の組成物における酸無水物としては、エポキシ樹脂の硬化剤として用いられる酸無水物であれば特に限定されず、例えば、無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水ドデセニルコハク酸、無水ジクロルコハク酸、無水メチルナジック酸、無水ピロメリット酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルシクロヘキセンジカルボン酸無水物、エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、メチルブテニルテトラヒドロ無水フタル酸、アルキルスチレン−無水マレイン酸共重合体、テトラブロム無水フタル酸、ポリアゼライン酸無水物、無水クロレンディク酸、無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸等が挙げられる。これらの中でも、作業性や硬化後の特性等の観点から、常温で液状であるものが好ましく、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸が特に好ましい。
【0014】
酸無水物の配合量は、下記に詳述する一般式(1)で表されるカルボン酸の酸当量と合わせて、エポキシ樹脂1当量に対して、0.8〜1.2当量配合することが好ましい。さらに好ましくは0.9当量〜1.1当量である。合わせた配合量が0.8当量未満では機械的強度が充分でないことがある。また、1.2当量を超えると、組成物の粘度が低下するようになり、未硬化部分を生じやすく、機械的強度が低下することがある。
【0015】
本発明の組成物におけるカルボン酸は、下記一般式(1)で表される。
−O−CO−R−COOH (1)
式中、Rは、炭素数1〜20の、エーテル結合若しくはエステル結合を含んでいてもよいアルキル基(ただし、アルキル基の水素原子の全部又は一部がフッ素原子で置換されていてもよい)、又は、炭素数6〜20の1価の芳香族炭化水素基を表す。Rは、炭素数1〜20の鎖状又は環状の2価の炭化水素基[例えば、C1〜C20アルキレン(例えば、メチレン、エチレン、トリメチレン、テトラメチレン、プロピレン等)等の鎖状炭化水素基、C6〜C20の脂環式又は芳香族炭化水素基(例えば、低級アルキル置換基を有していてもよい、シクロヘキサン環、ジシクロペンタン環、シクロヘキセン環、又は、ベンゼン環構造を有する炭化水素基)等]を表す。
【0016】
上記カルボン酸としては、例えば、RがC1〜C20、好ましくはC3〜C14、より好ましくはC3〜C10のアルキル基、一つ又は複数のエーテル結合を含むアルキル基(例えば、C3〜C10のアルキル基が一つ又は複数のエーテル結合若しくはエステル結合で結合されたもの、例えば、−CHCHOCHCHOCH等)、アルキル基の水素原子の全部又は一部がフッ素原子で置換された基(例えば、C3〜C10のアルキル基の水素原子の全部又は一部がフッ素原子で置換された基、例えば、−CHCFCF、−CHCFCFCFCFCFH等)、フェニル基等であり、Rが脂環式炭化水素基又は芳香族炭化水素基、例えば低級アルキル置換基を有していてもよい、シクロヘキサン環、ジシクロペンタン環、シクロヘキセン環、ビシクロヘプタン環、ビシクロヘプテン環又は、ベンゼン環構造を有する環状の2価の炭化水素基、具体的には、例えば、メチル基やエチル基を置換基として有していてもよいシクロヘキサン環、ジシクロペンタン環、シクロヘキセン環、ビシクロヘプタン環、ビシクロヘプテン環、又は、ベンゼン環構造を有する炭化水素基等であり、RとRがこれらの基のいずれかの組合せで得られるカルボン酸はいずれも好適に使用することができる。このようなカルボン酸は、例えば、フタル酸又は水添フタル酸等の芳香族ジカルボン酸等のエステル化により得ることができる。
【0017】
上記カルボン酸の配合量としては、上述のとおり酸無水物とカルボン酸との合計量が上記の範囲であって、かつ、カルボン酸のモル数/酸無水物のモル数=0.1〜0.5、より好ましくは0.2〜0.4となる割合であることが好ましい。
【0018】
本発明の組成物には、必要に応じて反応促進剤を使用することができる。反応促進剤としては、一液性の観点から潜在性促進剤が好ましく、このようなものとしては、例えば、アダクト系化合物を挙げることができ、具体的には、例えば、アミキュアPN−23(商品名)、アミキュアMY−24(商品名)、フジキュアFX−1000(商品名)などが挙げられる。その使用量は、エポキシ樹脂100重量部あたり1〜10重量部程度である。
【0019】
本発明の組成物には、無機充填剤を配合することができる。無機充填剤は、平均粒径が0.1〜10μmが好ましく、より好ましくは0.3〜4μmである。平均粒径が0.1μm未満であると組成物の粘度が増大してチキソトロピーが発生し、浸入速度が低下する。平均粒径が10μmを超えると、アンダーフィル時に半導体素子と基板との間の隙間が目詰まりする虞がある。
【0020】
また、無機充填剤の比表面積は0.5〜10m/gであることが好ましく、1〜8m/gがより好ましい。比表面積が0.5m/g未満であると、浸入速度は速くなるものの、充填材と液状成分との分離が発生し、硬化物の機械強度の向上、発生応力の低減効果が安定に発揮できない。比表面積が10m/gを超えると、チキソトロピーが発生し、浸入速度が低下する虞がある。
【0021】
上記無機充填剤としては、具体的には、例えば、溶融シリカ、結晶シリカ、合成シリカ(例えば、気相法、ゾルゲル法、ナトリウムシリケート法等の方法によるもの。)、アルミナ、窒化珪素、窒化アルミ等を挙げることができる。これらのうち、合成シリカが純度の点で好ましく、さらに、球状のものが、添加時の粘度が低いので、優れた隙間への浸入性を得る観点から、好ましい。
【0022】
本発明の組成物中、上記無機充填剤の添加量は、組成物中、30〜80重量%であることが好ましい。30重量%未満であると熱膨張係数が大きくなり、半導体素子やバンプとアンダーフィル樹脂との界面での応力が大きくなって、剥離、クラックのおそれが増す。80重量%を超えると組成物の粘度が増加し、浸入速度が低下するおそれがある。より好ましくは50〜65重量%である。
【0023】
本発明の組成物には、本発明の目的を阻害しないかぎり、必要に応じてその他の添加物を使用することができる。上記その他の添加物としては、例えば、シランカップリング剤、カーボンブラック(着色剤)、消泡剤、レベリング剤、アクリル樹脂、キシレン樹脂、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体等を挙げることができる。
【0024】
上記その他の添加物の配合量は、添加物の種類にもよるが、概ね、本発明の組成物中、0.5〜10重量%が好ましい。
【0025】
本発明の組成物は、上述の各成分を、所定量、例えば、エポキシ樹脂100重量部に対して、酸無水物40〜110重量部、及び、一般式(1)で表されるカルボン酸10〜50重量部、必要により無機充填剤を、混合機で充分混合することにより好適に製造することができる。上記混合機としては、例えば、3本ロールミル、2軸ミキサー、回転式混合機、ポットミル、プラネタリーミキサー等を挙げることができる。
【0026】
本発明の組成物は、半導体素子又は半導体素子を保持するキャリア基板と配線基板との接続部であるバンプを保護するために、半導体素子やキャリア基板と配線基板との隙間に充填して封止することにより、フリップチップを使用した半導体装置、ハンダボールをグリッド状に並べたICのパッケージであるBGAやCSPの実装等において、バンプ接続強度の補強のためのアンダーフィル樹脂として使用して半導体装置を製造することができる。このような半導体装置としては、例えば、モバイル機器、車載機器等に使用される各種半導体装置が挙げられる。本発明の組成物は、常温で液状とすることができるので、ディスペンサーを使用して常温(25℃程度)で充填を行うことができるが、一般には、樹脂の充填は、常温〜120℃程度で行うことができる。この際、チップの周囲の側部がスカート状に広がり、いわゆるフィレットが形成されることが好ましい。硬化条件としては、例えば、120〜170℃、1〜10時間が適用できるが、1〜2時間程度の短時間硬化が好ましい。
【0027】
本発明の組成物を使用した半導体装置をリペアする際には、一般的には、つぎのようにする。すなわち、熱盤等を用いて半導体素子又はキャリア基板又は配線基板のリペアすべき箇所を、はんだの融点以上すなわち220〜260℃程度になるように加熱することにより、配線基板から半導体素子又はキャリア基板を容易に引き剥がすことが可能となる。この際、本発明の組成物は1官能のカルボン酸を含んでいるので、硬化物の架橋度を適度に抑えることができるので、配線基板からの引き剥がしが容易である。その後、配線基板上のエポキシ樹脂残渣を、好ましくは70〜150℃程度の温度で有機溶剤(例えば、N−メチルピロリドン等)に30分〜2時間程度浸漬し、膨潤させ、除去することにより、配線基板を再生することができる。この際、本発明の組成物は、上記カルボン酸を含んでいるので、可塑化効果により容易に樹脂残渣を除去することができる。また、取り外した半導体素子も、必要に応じて、有機溶剤により残ったエポキシ樹脂を除去すれば再使用可能となる。
【実施例】
【0028】
以下に実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0029】
実施例1〜11、比較例1〜2
表1の配合により各成分を全量仕込み、室温にてプラネタリーミキサーを用いて約2時間混合した。その後、3本ロールにて更に固形物を均一に分散させ、一液性エポキシ樹脂組成物を調製した。表1における成分は以下のとおり。
エポキシ樹脂:高純度ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量185g/eq、粘度10Pas、加水分解性塩素含有量20ppm
酸無水物:4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、酸無水物当量170g/eq、粘度70mPas
キシレン樹脂:フドー社製ニカノールLLL
反応促進剤:アミキュアMY24(味の素ファインテクノ社製)
無機充填剤:球状合成シリカ、平均粒径0.5μm、比表面積5.5m/g
カルボン酸化合物1〜10:下記の化合物(1)(酸当量242g/eq)、化合物(2)(酸当量270g/eq)、化合物(3)(酸当量298g/eq)、化合物(4)(酸当量276g/eq)、化合物(5)(酸当量288g/eq)、化合物(6)(酸当量313g/eq)、化合物(7)(酸当量392g/eq)、化合物(8)(酸当量268g/eq)、化合物(9)(酸当量282g/eq)、化合物(10)(酸当量336g/eq)。ただし、化合物(10)中、Ra+Rb+Rc=C12である。
【0030】
【化1】

【0031】
評価方法
得られたエポキシ樹脂組成物を以下の方法で評価した。結果を表1に示した。
模擬半導体チップ及び配線基板として以下のものを使用した。
模擬半導体チップ:ポリイミドパッシベーション膜付き、15×15×0.4mm
バンプ:Ag/Sn鉛フリー半田バンプ、直径400μm、800μmピッチ、バンプ数256
配線基板:20×20×0.8mm、ガラスエポキンFR4、ソルダーレジストはタムラ社製DSR2200SPM103Nを使用
評価項目
ギャップ浸入性:80℃の熱板上にて、樹脂がギャップに浸入完了するまでの時間を測定した。60秒以内に浸入完了するものを○、60秒以上かかるものを×として評価した。
粘度変化率:25℃、24時間放置後の組成物粘度を初期粘度で割った値を粘度変化率とする。粘度は25℃において、HBT型回転粘度計にて測定した。なお、粘度変化率が2.0以下であれば一液性エポキシ樹脂として使用可能である。
リペア性:浸入させた樹脂を150℃、1時間で硬化させた後、260℃の熱板上で15秒加熱後にすばやくチップと基板間にペーパーナイフを差込みチップを剥離させた。基板上にアンダーフィル樹脂の残留が殆どなく、かつ基板上のソルダーレジストを引き剥がさないものを◎、基板上にアンダーフィル樹脂の残留がチップ面積の30%以下で、かつ基板上のソルダーレジストを引き剥がさないものを○、基板上にアンダーフィル樹脂の残留がチップ面積の30%以上であるか又は基板上のソルダーレジストを引き剥がすものを×とした。
溶剤洗浄性:リペア試験後にアンダーフィル樹脂が付着残留したチップをN−メチルピロリドンに浸漬し、120℃、1時間後のはく離性を観察した。樹脂がチップ接着面全面できれいにチップから剥離したものを◎、樹脂がチップ接着面の面積の90%以上でチップから剥離し、残留分も綿棒で軽く擦ることにより除去できるものを○、樹脂がチップ接着面の面積の10%以上、50%未満でチップに残留したものを△、樹脂がチップ接着面の面積の50%以上でチップに残留したものを×とした。
接続耐久性:樹脂を浸入させ150℃、1時間にて硬化させた試料にて熱サイクル試験(−55℃15分/125℃15分を1000サイクル)を実施した。熱サイクル試験後に超音波探傷検査機(SAT)及び断面のSEM観察にて界面剥離及び樹脂とハンダバンプのクラック等を観察した。剥離及びクラックがないものを○とし、そうでないものを×とした。
【0032】
【表1】

【0033】
実施例1〜11はいずれも、従来技術に相当する比較例1、比較例2に比べてリペア性、溶剤洗浄性、接続耐久性等において、性能向上効果があった。なお、比較例2はキシレン樹脂を含有しており、比較例1よりもリペア性等において性能が優れているが、本発明の組成物はこれらの性能において明瞭に一層の性能向上効果が見られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配線基板と、前記配線基板に電気的に接続された、半導体素子又は半導体素子を保持するキャリア基板、との間を、アンダーフィル封止するために用いられる、エポキシ樹脂、酸無水物、及び、下記一般式(1)で表されるカルボン酸を含有する一液性エポキシ樹脂組成物。
−O−CO−R−COOH (1)
(式中、Rは、炭素数1〜20の、エーテル結合若しくはエステル結合を含んでいてもよいアルキル基(ただし、アルキル基の水素原子の全部又は一部がフッ素原子で置換されていてもよい)、又は、炭素数6〜20の1価の芳香族炭化水素基を表す。Rは、炭素数1〜20の鎖状又は環状の2価の炭化水素基を表す。)
【請求項2】
は、脂環式炭化水素基又は芳香族炭化水素基である請求項1記載の組成物。
【請求項3】
は、低級アルキル置換基を有していてもよい、シクロヘキサン環、ジシクロペンタン環、シクロヘキセン環、又は、ベンゼン環構造を有する環状の2価の炭化水素基である請求項2記載の組成物。
【請求項4】
エポキシ樹脂100重量部に対して、酸無水物40〜110重量部、及び、一般式(1)で表されるカルボン酸10〜50重量部を含有する請求項1〜3のいずれか記載の組成物。
【請求項5】
さらに、無機充填剤を30〜80重量%含有する請求項1〜4のいずれか記載の組成物。


【公開番号】特開2008−214381(P2008−214381A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−49630(P2007−49630)
【出願日】平成19年2月28日(2007.2.28)
【出願人】(000214250)ナガセケムテックス株式会社 (173)
【Fターム(参考)】