説明

三値連想メモリ用デュアル接合式磁気ランダムアクセスメモリセルとそのメモリセルの書込み及び読出し方法

【課題】 本発明は、磁化方向が自由な軟強磁性層と第一の記録磁化を有する第一の硬強磁性層の間に配備された第一のトンネル障壁層と、軟強磁性層と第二の記録磁化を有する第二の硬強磁性層の間に配備された第二のトンネル障壁層とを備えた、第一の所定の高い閾値温度で第一の記録磁化を自由な方向に向けることができ、第二の所定の高い閾値温度で第二の記録磁化を自由な方向に向けることができ、第一の所定の高い閾値温度が第二の所定の高い閾値温度よりも高いMRAMセルに関する。
【解決手段】 本MRAMセルは、三値連想メモリ(TCAM)として使用して、三つまでの異なる状態レベルを記録することができる。本MRAMセルは、サイズが小さく、低コストで製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三値連想メモリとして使用することができるデュアル磁気トンネル接合式磁気ランダムアクセスメモリ(MRAM)セルとそのMRAMセルの書込み及び読出し方法に関する。
【背景技術】
【0002】
TCAM(三値連想メモリ)は、インターネット網用に広く使用されている重要な形式のメモリデバイスである。それらの素子は、入力データを記録されているアドレスデータと照合する機能を有する。そのような素子の一つの特徴は、それらが1,0及び「ドントケア」の三つの異なる状態を記録する必要が有ることである。そのようなデバイスの通常の実現形態は、そのような機能を可能とするために非常に多数のトランジスタを必要とし、そのために極端に大きなダイサイズとなっている。
【0003】
スタティックランダムアクセスメモリ(SRAM)式TCAMセルの典型的な実現形態は、10〜12個のトランジスタを組み合わせた二つのSRAMセルから成る三値メモリで構成される。それは、基本的に四つの追加パストランジスタを用いたXNORゲートである比較ロジックも備えている。そのため、14〜16個のトランジスタから成る非常に大きなセルサイズとなり、従って、高価なデバイスとなっている。従来のTCAMセルは、多くの場合4個以上のトランジスタが排他的論理和(EOR)機能を実現するように構成された二つの標準的なSRAMセルとして構成されている。
【0004】
単一のメモリセルを有するRAMチップと異なり、完全並列式TCAMの個々のメモリビットは、それぞれ記録しているデータビットと入力データビットの間の一致を検出するための専用の連想比較回路を有する。従って、TCAMチップの記憶容量は、通常のメモリチップよりも著しく小さい。更に、各セルからのデータワードによる照合出力を組み合わせて、完全なデータワードによる照合信号を生成することができる。この連想加算回路は、TCAMチップの物理的なサイズを一層増大させる。更に、現在実現されている(SRAM素子を用いた)CAM及びTCAMは、電力供給が停止されるとデータが失われることを意味する、本質的に揮発性である。その結果、各比較回路は、クロックサイクル毎に起動される必要が有り、電力を大きく浪費することとなる。TCAMは、高価であり、消費電力が大きく、本質的に揮発性であるために、安価な方法を用いては検索速度を達成できない特殊な用途でしか使用されていない。
【0005】
新興のメモリ技術及び高速検索が必須の用途は、大きなワードサイズの三値連想メモリを必要としているが、大きなセルキャパシタンスのために遅い検索速度に苦しめられることとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】欧州特許公開第2276034号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、三値連想メモリ用デュアル接合式磁気ランダムアクセスメモリ(MRAM)セルとそのMRAMセルの書込み及び読出し方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、磁化を自由な方向に揃えることができる軟強磁性層と、第一の記録磁化を有する第一の硬強磁性層と、軟強磁性層と第一の硬強磁性層の間に配備された第一のトンネル障壁層と、第二の記録磁化を有する第二の硬強磁性層と、軟強磁性層と第二の硬強磁性層の間に配備された第二のトンネル障壁層とから成る磁気ランダムアクセスメモリ(MRAM)セルであって、第一の所定の高い閾値温度で第一の記録磁化を自由な方向に向けることができ、第二の所定の高い閾値温度で第二の記録磁化を自由な方向に向けることができ、第一の所定の高い閾値温度が第二の所定の高い閾値温度よりも高い磁気ランダムアクセスメモリ(MRAM)セルである。
【0009】
一つの実施形態では、本磁気素子は、第一の所定の高い閾値温度以下で第一の記録磁化をピニングする第一の反強磁性層と、第二の所定の高い閾値温度以下で第二の記録磁化をピニングする第二の反強磁性層とを更に備えることができる。
【0010】
別の実施形態では、第一の硬強磁性層は、第一の接合抵抗面積積を有し、第二の硬強磁性層は、第一の接合抵抗面積積とほぼ等しい第二の接合抵抗面積積を有することができる。
【0011】
更に別の実施形態では、第一の硬強磁性層は、NiFe/CoFeBベースの合金から構成され、第二の硬強磁性層は、CoFeB/NiFeベースの合金から構成される。
【0012】
更に別の実施形態では、第一の反強磁性層は、IrMnベースの合金から構成され、第二の反強磁性層は、FeMnベースの合金から構成される。
【0013】
更に別の実施形態では、軟強磁性層は、有利には、CoFeBベースの合金から構成される。
【0014】
本発明は、MRAMセルへの書込み方法であって、
第一の所定の高い閾値温度を上回る温度に磁気素子を加熱する工程と、
第一の方向に書込み磁界を印加して、第一の記録磁化と第二の記録磁化を書込み磁界に応じた方向に揃える工程と、
を有する方法も開示している。
【0015】
一つの実施形態では、前記の書込み磁界は、第一のデータを記録するために第一の方向に印加し、第二のデータを記録するために第二の方向に印加することができる。
【0016】
別の実施形態では、本方法は、更に、第二の所定の高い閾値温度以下に磁気素子2を冷却する工程を有することができる。
【0017】
更に別の実施形態では、前記の書込み磁界は第一の方向に印加されて、本方法は、更に、
第一の所定の高い閾値温度以下で第二の所定の高い閾値温度以上の中間の温度に磁気素子を冷却する工程と、
第一の方向と逆の第二の方向に書込み磁界を印加して、第三のデータを記録するために書込み磁界に応じた第二の方向に第二の記録磁化を揃える工程と、
第二の所定の高い閾値温度以下に磁気素子を冷却する工程と、
を有する。
【0018】
データが記録された磁気素子の初期抵抗値を測定する工程と、
第一の検索データを読出し層に供給して、第一の検索データと記録されたデータの間の一致を検出する工程と、
第二の検索データを読出し層に供給して、第二の検索データと記録されたデータの間の一致を検出する工程と、
を有するMRAMセルの読出し方法も開示されている。
【0019】
一つの実施形態では、前記の初期抵抗を測定する工程は、外部磁界が無い状態で磁気素子に読出し電流を流すことで構成される。
【0020】
別の実施形態では、読出し磁化をそれぞれ第一と第二の方向に向けるために、前記の第一の検索データを供給する工程が、第一の方向に読出し磁界を印加することで構成され、第二の検索データを供給する工程が、第二の方向に読出し磁界を印加することで構成される。
【0021】
更に別の実施形態では、前記の第一及び第二の検索データと記録されたデータの間の一致を検出する工程が、磁界をそれぞれ第一及び第二の方向に印加した状態で磁気素子に読出し電流を流すことによって、第一の読出し抵抗を測定すること、並びに第二の読出し抵抗を測定することで構成される。
【0022】
更に別の実施形態では、前記の一致を検出する工程が、更に、測定した第一及び第二の読出し抵抗を初期抵抗値と比較することで構成される。
【0023】
ここで開示したMRAMセルは、三値連想メモリとして使用することができる。このMRAMセルは、「1」、「0」及び「X」(ドントケア)の三つの異なる状態レベルを記録することができ、そのため、セルサイズとコストを劇的に低減したTCAMセルとして実現可能なマッチング用デバイスとして使用することができる。
【0024】
本発明は、例として挙げ、図面に図示した実施形態の記載によって、より良く理解される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】第一の記録層、第二の記録層及び読出し層を備えた磁気ランダムアクセスメモリ(MRAM)セルの一つの実施形態の図
【図2】第一及び第二の記録層と読出し層の磁化の向きを図示した図
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1に図示された実施形態では、磁気ランダムアクセスメモリ(MRAM)セル1は、第一の接合抵抗面積積RA1 を有する第一のトンネル障壁層22と、第一の記録磁化230を有する第一の硬強磁性層又は第一の記録層23とを備えたデュアル磁気トンネル接合が形成された磁気素子2で構成される。この磁気素子2は、更に、第二の接合抵抗面積積RA2 を有する第二のトンネル障壁層24と、第二の記録磁化250を有する第二の硬強磁性層又は第二の記録層25とを備えている。自由な向きに揃えることができる読出し磁化210を有する軟強磁性層又は読出し層21は、第一と第二のトンネル障壁層22,24の間に配備されている。
【0027】
図1の例では、磁気素子2は、更に、第一の反強磁性層20と第二の反強磁性層26とを備えている。第一の反強磁性層20は、第一の記録層23と交換結合して、第一の高い閾値温度Tw1で第一の記録磁化230を自由な方向に向けることができ、その温度以下でピニングすることができるように構成されている。第二の反強磁性層26は、第二の記録層25と交換結合して、第二の高い閾値温度Tw2で第二の記録磁化250を自由な方向に向けることができ、その温度以下でピニングすることができるように構成されている。一つの実施形態では、第一の所定の高い閾値温度Tw1は、第二の所定の高い閾値温度Tw2よりも高い。
【0028】
図示した例では、第一の記録層23は、NiFe/CoFeBベースの合金から構成し、第一の反強磁性層20は、IrMnベースの合金から構成することができる。第二の記録層25は、CoFeB/NiFeベースの合金から構成し、第二の反強磁性層26は、FeMnベースの合金から構成することができる。読出し層21は、有利には、CoFeBベースの合金から構成される。
【0029】
一つの実施形態では、第一の接合抵抗面積積RA1 は、第二の接合抵抗面積積RA2 とほぼ等しい。そして、第一のトンネル障壁層22、第一の記録層23及び読出し層21の第一のトンネル磁気抵抗TMR1 は、第二のトンネル障壁層24、第二の記録層25及び読出し層21の第二のトンネル磁気抵抗TMR2 とほぼ同じである。第一及び第二のトンネル障壁層22,24は、有利には、MgOから構成され、その場合、第一と第二の接合抵抗面積積RA1 とRA2 は、両方ともほぼ20Ωμm2 に等しい。
【0030】
このMRAMセル1は、更に、磁気素子2の一方の端部と電気的に接続された(図示されていない)電流ラインと、磁気素子2の他方の端部と電気的に接続された(同じく図示されていない)選択用トランジスタとを備えることができる。
【0031】
一つの実施形態では、このMRAMセル1は、熱アシスト書込み操作を用いて書き込まれる。詳しくは、MRAMセル1への第一の書込みデータの供給は、
第一の所定の高い閾値温度Tw1又はそれを上回る温度に磁気素子2を加熱して、第一及び第二の記録磁化230,250を解除する工程と、
第一の方向に書込み磁界を印加して、第一の記録磁化230と第二の記録磁化250の両方を書込み磁界に応じた第一の方向に揃える工程と、
第二の所定の高い閾値温度Tw2を下回る温度に磁気素子2を冷却して、第一及び第二の反強磁性層20,26によって、それぞれ第一及び第二の記録磁化230,250を書込み状態にピニングする工程と、
で構成される。
【0032】
冷却後の書込み磁界の無い状態では、読出し層21は、平衡状態に有り、その読出し磁化210は、第一及び第二の記録磁化230,250と逆平行の方向を向いている。そのため、第一の記録データ「0」は、第一の状態レベルを有する磁気素子2に対応する。第一の記録磁化230、第二の記録磁化250及び読出し磁化210の向きは、図2の(a)〜(c)に図示されている。図2の(a)〜(c)には、第一と第二の反強磁性層20,26は図示されていない。詳しくは、図2の(a)は、第一の記録データ「0」に関する記録磁化230,250と読出し磁化210の向きを図示している。
【0033】
別の実施形態では、第二の書込みデータは、前述した加熱工程を実行することによって、磁気素子2に供給することができる。その場合、第一の方向と逆の第二の方向に書込み磁界を印加して、第一の記録磁化230と第二の記録磁化250の両方を第二の方向に揃える。第二の所定の高い閾値温度Tw2を下回る温度への冷却後の書込み磁界の無い(平衡)状態では、読出し磁化210は、第一及び第二の記録磁化230,250と逆平行の方向を向いている。そのため、第二の記録データ「1」は、第二の状態レベルを有する磁気素子2に対応する(図2(b)参照)。
【0034】
別の実施形態では、第三の書込みデータの供給は、
第一の所定の高い閾値温度Tw1又はそれを上回る温度に磁気素子2を加熱して、第一及び第二の記録磁化230,250を解除する工程と、
第一の方向に書込み磁界を印加して、第一の記録磁化230と第二の記録磁化250の両方を書込み磁界に応じた第一の方向に揃える工程と、
第一の所定の高い閾値温度Tw1以下で第二の所定の高い閾値温度Tw2以上の中間の温度に磁気素子2を冷却して、第二の記録磁化250を自由な方向に向けることができるように、第一の反強磁性層20によって第一の記録磁化230をピニングする工程と、
第二の方向に書込み磁界を印加して、第二の記録磁化250を書込み磁界に応じた第二の方向に揃える工程と、
第二の所定の高い閾値温度Tw2を下回る温度に磁気素子2を冷却して、第一及び第二の反強磁性層20,26によって、それぞれ第一及び第二の記録磁化230,250をピニングする工程と、
によって実行される。
【0035】
この後者の構成では、読出し磁化210は、第一の方向又は第二の方向に、即ち、第一と第二の記録磁化230,250に対して平行な方向又は逆平行な方向に向けることができる。そのため、第三の記録データ「X」は、第三の中間の状態レベルを有する磁気素子2に対応する(図2(c)を参照)。
【0036】
磁気素子2を加熱する工程は、電流ラインを介して、(図示されていない)加熱電流を磁気素子2に流すことによって実行することができる。中間の閾値温度に磁気素子2を冷却する工程は、加熱電流の強度を低減することによって実行でき、低い方の閾値温度に磁気素子2を冷却する工程は、加熱電流を停止することによって実行することができる。書込み磁界を印加する工程は、(図示されていない)磁界電流を電流ラインに流すことによって実行することができる。
【0037】
一つの実施形態では、書き込まれたMRAMセル1の読出し操作は、
データが記録された磁気素子2の初期抵抗値R0 を測定する工程と、
第一の検索データ「0」を読出し層21に供給して、第一の検索データと記録されたデータの間の一致を検出する工程と、
第二の検索データ「1」を読出し層21に供給して、第二の検索データと記録されたデータの間の一致を検出する工程と、
で構成される。
【0038】
初期抵抗値R0 を測定する工程は、外部磁界が無い状態(零磁界)で磁気素子2に読出し電流を流すことによって実行される。第一と第二の検索データ「0」,[1]を供給する工程は、それぞれ第一と第二の方向に読出し磁界を印加して、読出し磁化210を読出し磁界に応じた方向に向けることで構成される。第一及び第二の検索データと記録されたデータの間の一致を検出する工程は、磁界をそれぞれ第一と第二の方向に印加している状態で読出し電流を磁気素子2に流すことによって、第一の読出し抵抗R1 と第二の読出し抵抗R2 を測定することで構成される。
【0039】
ここに開示した読出し操作は、第一と第二の検索データ「0」,「1」に対する磁気素子2の抵抗(第一と第二の読出し抵抗)を測定して、参照セルを使用する必要が無いという意味での自己参照に基づく読出し操作である。そのような自己参照に基づく読出し操作は、本出願人による特許文献1にも開示されている。更に、そこに開示されている読出し操作は、従来の読出し操作での記録された値「0」又は「1」を単純に読み出す代わりに、第一及び第二の検索データと記録されたデータの間の一致を検出することで構成される。
【0040】
第一の記録されたデータ「0」の場合、初期抵抗値R0 は、読出し磁化210と第一の記録磁化230が逆平行な方向であることによる第一の高い方の抵抗(Rmax1)と、読出し磁化210と第二の記録磁化250が逆平行な方向であることによる第二の高い方の抵抗(Rmax2)とによって決まる高い値(Rmax1+Rmax2)を有する(表I参照)。第一の検索データ「0」を供給する工程は、読出し磁化210を第一及び第二の記録磁化230,250と逆平行な方向に向けるために、第一の読出し抵抗R1 の測定値は高くなる(Rmax1+Rmax2)。第二の検索データ「1」を供給する工程は、読出し磁化210を第一及び第二の記録磁化230,250と平行な方向に向けるために、第二の読出し抵抗R2 の測定値は低くなり(Rmin1+Rmin2)、この場合、Rmin1は、読出し磁化210と第一の記録磁化230が平行な向きであることによる第一の低い方の抵抗であり、Rmin2は、読出し磁化210と第二の記録磁化250が平行な向きであることによる第二の低い方の抵抗である。ここで、R1 とR2 の間の差は、ΔR=(Rmax1+Rmax2)−(Rmin1+Rmin2)に等しい。
【0041】
第二の記録されたデータ「1」の場合、初期抵抗値R0 は、高い方の値(Rmax1+Rmax2)を有する。第一の検索データ「0」を供給する工程は、読出し磁化210を第一及び第二の記録磁化230,250と平行な方向に向けるために、第一の読出し抵抗R1 の測定値は低くなる(Rmin1+Rmin2)。第二の検索データ「1」を供給する工程は、読出し磁化210を第一及び第二の記録磁化230,250と逆平行な方向に向けるために、第二の読出し抵抗R2 の測定値は高くなる(Rmax1+Rmax2)。
【0042】
第三の記録されたデータ「X」の場合、初期抵抗値R0 は、中間の値((Rmin1+Rmax2)を有する。第一の検索データ「0」を供給する工程は、読出し磁化210を第一の記録磁化230と平行な方向で第二の記録磁化250と逆平行な方向に向ける。第二の検索データ「1」を供給する工程は、読出し磁化210を第一の記録磁化230と逆平行な方向で第二の記録磁化250と平行な方向に向ける。第一と第二の読出し抵抗R1 ,R2 の両方の測定値は中間の値(Rmin1+Rmax2)と等しい。出力(読出し抵抗)が入力状態(検索データ)に応じて変化しないので、二つの検索データ「0」と「1」に関する第一と第二の読出し抵抗R1 ,R2 の同じ値は、MRAMセル1の「ドントケア」状態レベルに対応する。表1は、初期抵抗値R0 と第一及び第二の読出し抵抗R1 ,R2 に関して測定した異なる抵抗値を示している。
【0043】
【表1】

【0044】
以上の通り、ここで開示したMRAMセル1は、三値連想メモリとして使用することができる。MRAMセル1は、三つの異なる状態レベル「1」、「0」及び「X」(ドントケア)を記録することができ、そのため、セルサイズとコストを劇的に低減したTCAMセルとして実現可能なマッチング用デバイスとして使用することができる。表2は、第一及び第二の検索データと記録されているデータの間の一致状況を示す。詳しくは、一致を検出する工程は、更に、測定した第一及び第二の読出し抵抗(R1 ,R2 )を初期抵抗値(R0 )と比較することで構成される。一致することは、初期抵抗値R0 と第一及び第二の読出し抵抗値R1 ,R2 の間に変化が無いことに対応する。
【0045】
【表2】

【0046】
本MRAMセル1の更なる利点は、書込み操作の間に、第一と第二のトンネル障壁層22,24の両方が第一と第二の所定の高い閾値温度Tw1,Tw2に磁気素子2を加熱する工程に寄与することである。その結果、磁気素子2を加熱するための加熱電流を流す際に必要な電力は、単一のトンネル障壁層から成る従来の磁気トンネル接合で必要な電力と比較して、約
【0047】
【数1】

【0048】
分の1に低減することができる。その結果、書込み操作の間に繰り返される電圧に対するMRAMセル1の耐久性が向上される。
【0049】
更に、ここに開示したMRAMセル1によって、「ドントケア」検索データの比較が可能となる。それは、零磁界での第二の読出しによって処理することができる。そのことは、明らかに抵抗を変化させず、そのため、書き込まれた状態と関係なく一致することとなる(検索データ「X」)。
【符号の説明】
【0050】
1 MRAMセル
2 磁気素子
20 第一の反強磁性層
21 読出し層
22 第一のトンネル障壁層
23 第一の記録層
24 第二のトンネル障壁層
25 第二の記録層
26 第二の反強磁性層
210 読出し磁化
230 第一の記録磁化
250 第二の記録磁化
ΔR R1 とR2 の間の差
RA1 第一の接合抵抗面積積
RA2 第二の接合抵抗面積積
max1 第一の高い方の抵抗値
max2 第二の高い方の抵抗値
min1 第一の低い方の抵抗値
min2 第二の低い方の抵抗値
0 初期抵抗
1 第一の読出し抵抗
2 第二の読出し抵抗
TMR1 第一のトンネル磁気抵抗
TMR2 第二のトンネル磁気抵抗
Tw1 第一の所定の高い閾値温度
Tw2 第二の所定の高い閾値温度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁化を自由な方向に向けることができる軟強磁性層と、第一の記録磁化を有する第一の硬強磁性層と、軟強磁性層と第一の硬強磁性層の間に配備された第一のトンネル障壁層と、第二の記録磁化を有する第二の硬強磁性層と、軟強磁性層と第二の硬強磁性層の間に配備された第二のトンネル障壁層とを備えた磁気素子で構成される、三値連想メモリとして使用される磁気ランダムアクセスメモリ(MRAM)セルであって、
第一の所定の高い閾値温度で第一の記録磁化を自由な方向に向けることができ、第二の所定の高い閾値温度で第二の記録磁化を自由な方向に向けることができ、第一の所定の高い閾値温度が第二の所定の高い閾値温度よりも高い磁気ランダムアクセスメモリセル。
【請求項2】
当該の磁気素子が、第一の所定の高い閾値温度以下で第一の記録磁化をピニングする第一の反強磁性層と、第二の所定の高い閾値温度以下で第二の記録磁化をピニングする第二の反強磁性層とを更に備えている請求項1に記載の磁気ランダムアクセスメモリセル。
【請求項3】
当該の第一の硬強磁性層が、第一の接合抵抗面積積を有し、当該の第二の硬強磁性層が、第一の接合抵抗面積積とほぼ等しい第二の接合抵抗面積積を有する請求項1に記載の磁気ランダムアクセスメモリセル。
【請求項4】
第一の反強磁性層が、IrMnベースの合金から構成され、第二の反強磁性層が、FeMnベースの合金から構成される請求項1に記載の磁気ランダムアクセスメモリセル。
【請求項5】
磁化を自由な方向に向けることができる軟強磁性層と、第一の記録磁化を有する第一の硬強磁性層と、軟強磁性層と第一の硬強磁性層の間に配備された第一のトンネル障壁層と、第二の記録磁化を有する第二の硬強磁性層と、軟強磁性層と第二の硬強磁性層の間に配備された第二のトンネル障壁層とを備えた、第一の所定の高い閾値温度で第一の記録磁化を自由な方向に向けることができ、第二の所定の高い閾値温度で第二の記録磁化を自由な方向に向けることができ、第一の所定の高い閾値温度が第二の所定の高い閾値温度よりも高い磁気素子で構成される磁気ランダムアクセスメモリ(MRAM)セルに三つまでの異なる書込みデータを書き込む方法であって、
第一の所定の高い閾値温度を上回る温度に磁気素子を加熱する工程と、
書込み磁界を印加して、第一の記録磁化と第二の記録磁化を書込み磁界に応じた方向に揃える工程と、
を有する方法。
【請求項6】
当該の書込み磁界が、第一のデータを記録するために第一の方向に印加され、或いは第二のデータを記録するために第二の方向に印加される請求項5に記載の方法。
【請求項7】
本方法が、第二の所定の高い閾値温度以下に磁気素子を冷却する工程を更に有する請求項6に記載の方法。
【請求項8】
当該の書込み磁界が、第一の方向に印加されて、本方法が、
第一の所定の高い閾値温度以下で第二の所定の高い閾値温度以上の中間の温度に磁気素子を冷却する工程と、
第一の方向と逆の第二の方向に書込み磁界を印加して、第三のデータを記録するために書込み磁界に応じた第二の方向に第二の記録磁化を揃える工程と、
第二の所定の高い閾値温度以下に磁気素子を冷却する工程と、
を更に有する請求項5に記載の方法。
【請求項9】
磁化を自由な方向に向けることができる軟強磁性層と、第一の記録磁化を有する第一の硬強磁性層と、軟強磁性層と第一の硬強磁性層の間に配備された第一のトンネル障壁層と、第二の記録磁化を有する第二の硬強磁性層と、軟強磁性層と第二の硬強磁性層の間に配備された第二のトンネル障壁層とを備えた、第一の所定の高い閾値温度で第一の記録磁化を自由な方向に向けることができ、第二の所定の高い閾値温度で第二の記録磁化を自由な方向に向けることができ、第一の所定の高い閾値温度が第二の所定の高い閾値温度よりも高い磁気素子で構成される磁気ランダムアクセスメモリ(MRAM)セルの読出し方法であって、
データが記録された磁気素子の初期抵抗値を測定する工程と、
第一の検索データを読出し層に供給して、第一の検索データと記録されたデータの間の一致を検出する工程と、
第二の検索データを読出し層に供給して、第二の検索データと記録されたデータの間の一致を検出する工程と、
を有する方法。
【請求項10】
当該の初期抵抗を測定する工程が、外部磁界が無い状態で読出し電流を磁気素子に流すことで構成される請求項9に記載の方法。
【請求項11】
読出し磁化をそれぞれ第一と第二の方向に向けるために、当該の第一の検索データを供給する工程が、読出し磁界を第一の方向に印加することで構成され、当該の第二の検索データを供給する工程が、読出し磁界を第二の方向に印加することで構成される請求項9に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−209556(P2012−209556A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−70549(P2012−70549)
【出願日】平成24年3月27日(2012.3.27)
【出願人】(509096201)クロッカス・テクノロジー・ソシエテ・アノニム (33)
【Fターム(参考)】