説明

不揮発性メモリおよびその製造方法

第1の基板(100)と、第2の基板(110)とを備え、第1の基板(100)は、マトリクス状に配置された複数のスイッチング素子(4)と、各スイッチング素子(4)に電気的に接続された複数の第1の電極(18)とを有し、第2の基板(110)は、導電膜(32)と、電気的パルスが印加されることにより抵抗値が変化する記録層(34)とを有しており、
複数の第1の電極(18)は、記録層(34)により一体的に覆われており、これによって、複数の第1の電極(18)と導電膜(32)との間に記録層(34)が挟持され、第1の基板(100)は、第2の電極(22)をさらに備え、第2の電極(22)は、導電膜(32)と電気的に接続され、記録層(34)への通電時に一定電圧に保持される不揮発性メモリである。この不揮発性メモリによれば、高集積度を低コストで実現することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、不揮発性メモリおよびその製造方法に関し、より詳しくは、通電による抵抗値の変化を制御してデータの記録(書き込み)や消去を行うことができる不揮発性メモリおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
従来の不揮発性メモリとして、強誘電体メモリが知られている。例えば、特開平8−227980号公報(特に図9)には、DRAM(Dynamic Random Access read write Memory)のキャパシタ絶縁膜に強誘電体材料を用いた構成が開示されており、キャパシタを形成した基板と、スイッチング素子を形成した基板とを貼り合わせて一体化することにより、製造される。
具体的には、本明細書に添付の図9(a)に示すように、シリコン基板61上にトランジスタTrを形成し、n型領域62に接続された窒化チタン膜63が表面に露出した第1の基板S1を形成する。
また、同じく図9(a)に示すように、単結晶NbドープSTO(SrTiO)基板64上にBSTO(Ba0.5Sr0.5TiO)膜65を形成し、このBSTO膜65上に白金膜66を形成することにより、キャパシタCを形成した第2の基板S2を形成する。
こうして得られた第1の基板S1と第2の基板S2とを貼り合わせ、所定の厚さまで薄膜化した後、図9(b)に示すように、素子分離領域67を形成して、DRAMのメモリセルを形成する。この素子分離領域67は、第1の基板S1において隣接する各トランジスタTrの間を分離する第1の素子分離領域67aと、第2の基板S2において隣接する各キャパシタCの間を分離する第2の素子分離領域67bとから構成される。
このようなメモリセルがマトリクス状に複数配置された等価回路は、図10によって表される。図10に示すように、各スイッチング素子Trのゲートは、ワード線WLに接続され、各スイッチング素子Trのドレインは、ビット線BLに接続される。また、各スイッチング素子Trのソースは、キャパシタCの一方電極が接続され、キャパシタCの他方電極がプレート線PLに接続される。各メモリセルへの書き込みは、ワード線WLがオンの状態でビット線BL又はプレート線PLに電圧を印加することにより行われ、キャパシタCへの電圧印加時に強誘電体の分極が反転するか否かを検出することにより、読み出しを行うことができる。
上述した従来の半導体メモリの製造方法によれば、スイッチング素子Trを形成した第1の基板S1と、キャパシタCを形成した第2の基板S2との貼り合わせ精度を緩和することができる。ところが、図9(a)に示すような強誘電体メモリの構成においては、スイッチング素子Trを備える第1の基板S1に第1の素子分離領域67aを形成することに加えて、強誘電体のキャパシタCを備える第2の基板S2にも第2の素子分離領域67bを形成しなければならない。このため、従来においては、図9(b)に示すように、第1の基板S1及び第2の基板S2を貼り合わせた後に素子分離領域67を形成し、第1の素子分離領域67aと第2の素子分離領域67bとを同時に形成するようにしている。ところが、このような製造方法によっても、第2の基板S2に対してフォトリソグラフィを用いた煩雑な微細加工工程が必要になる。この問題は、集積度が高まるにつれてより顕著になっていた。
また、上述した従来の半導体メモリの製造方法は、図10に示すプレート線PLからキャパシタCへの印加電圧を制御可能に構成する必要があるが、このための構成が具体的に示されておらず、製造容易の観点から更に検討の余地があった。
不揮発性メモリとしては、強誘電体メモリの他に、結晶状態によってバルクの抵抗値が変化する特性を利用したメモリ(いわゆる相変化メモリ)が知られており、例えば、特開平11−204742号公報や米国特許第6314014号公報などに開示されているが、これらの公報はいずれも上記課題に対する解決手段を示唆していない。
【発明の開示】
本発明は、高集積度を低コストで実現することができる不揮発性メモリ及びその製造方法の提供を目的とする。
本発明の前記目的は、第1の基板と第2の基板とを備え、前記第1の基板は、マトリクス状に配置された複数のスイッチング素子と、前記各スイッチング素子に電気的に接続された複数の第1の電極とを有し、前記第2の基板は、導電膜と、電気的パルスが印加されることにより抵抗値が変化する記録層とを有しており、複数の前記第1の電極は、前記記録層により一体的に覆われており、これによって、複数の前記第1の電極と前記導電膜との間に前記記録層が挟持され、前記第1の基板は、第2の電極をさらに備え、前記第2の電極は、前記導電膜と電気的に接続され、前記記録層への通電時に一定電圧に保持される不揮発性メモリにより達成される。
また、本発明の前記目的は、第1の基板と第2の基板とを位置合わせして接合するアライメントステップを備え、前記第1の基板は、マトリクス状に配置された複数のスイッチング素子と、前記各スイッチング素子に電気的に接続された複数の第1の電極とを有し、前記第2の基板は、導電膜と、電気的パルスが印加されることにより抵抗値が変化する記録層とを有し、前記第1の基板は、前記記録層への通電時に一定電圧に保持される第2の電極をさらに有し、前記アライメントステップでは、複数の前記第1の電極を前記記録層により一体的に覆うことにより、複数の前記第1の電極と前記導電膜との間に前記記録層を挟持する第1の電極接続ステップと、前記第2の電極を前記導電膜又は前記記録層と電気的に接続する第2の電極接続ステップとが同時に行なわれる、不揮発性メモリの製造方法により達成される。
【図面の簡単な説明】
図1(a)〜(c)は、本発明の一実施形態に係る不揮発性メモリの製造方法を説明するための工程断面図である。
図2は、GeSbTe化合物の相図である。
図3は、図1(c)に示す不揮発性メモリの変形例を示す概略断面図である。
図4は、図1(c)に示す不揮発性メモリの他の変形例を示す概略断面図である。
図5(a)及び(b)は、本発明の一実施形態に係る不揮発性メモリの回路図である。
図6は、本発明の一実施形態に係る不揮発性メモリの読み出し及び書き込み方法の一例を説明するための図である。
図7(a)及び(b)は、本発明の他の実施形態に係る不揮発性メモリの回路図である。
図8は、図1(c)に示す不揮発性メモリの変形例を示す概略断面図である。
図9(a)及び(b)は、従来の不揮発性メモリの製造方法を説明するための工程断面図である。
図10は、従来の不揮発性メモリの回路図である。
図11は、図1(c)に示す不揮発性メモリの変形例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る不揮発性メモリの製造方法を説明するための工程断面図である。
まず、図1(a)に示すように、p型の半導体基板である下側基板100内に、STI(Shallow Trench Isolation)技術などを用いて素子分離領域2を形成した後、通常のシリコン半導体製造プロセスにより、n型のトランジスタからなるスイッチング素子4を複数形成する。スイッチング素子4は、下側基板100上にゲート絶縁膜6を介して形成されたゲート電極8と、下側基板100内でゲート絶縁膜6の両側に形成された、いずれもn型拡散層からなるソース領域10a及びドレイン領域10bとを備えている。
ついで、下側基板100上に、スイッチング素子4を覆うように層間絶縁膜12aを形成し、この層間絶縁膜12aにソース領域10a及びドレイン領域10bへ延びる複数のコンタクトホールを形成した後、タングステンなどの金属材料を選択CVD(Chemical Vapor Deposition)等により各コンタクトホールに埋め込んで、プラグ14aを形成する。次に、スパッタリング法などにより層間絶縁膜12a上に金属層を堆積した後、フォトリソグラフィ工程によりパターニングを行い、プラグ14aに接続された金属配線16aを形成する。この後、層間絶縁膜12a上の全面に金属配線16aを覆うように層間絶縁膜12bを形成し、金属配線16aに延びるようにコンタクトホールを形成した後、上記と同様にして、プラグ14bおよびこれに接続された金属配線16bを形成する。このような手順を繰り返しながら、コンタクトホールの形成を選択的に行うことにより、ソース領域10a及びドレイン領域10bにそれぞれ接続された金属配線の高さ位置が異なる多層配線構造を形成する。すなわち、層間絶縁膜12b上に更に層間絶縁膜12c、プラグ14cおよび金属配線16cを形成し、層間絶縁膜12cの表面に露出する金属配線16cが、ソース電極(第1の電極)18としてスイッチング素子4のソース領域10aに接続される一方、層間絶縁膜12b上に形成された金属配線16bのうちプラグ14cと接続されないものが、ビット線20としてスイッチング素子4のドレイン領域10bに接続されるように構成する。
また、層間絶縁膜12b上に金属配線16bを形成する工程において、ソース領域10a及びドレイン領域10bのいずれにも接続されない金属配線16bを形成することにより、層間絶縁膜12c上に形成された金属配線16cの1つを定電圧電極(第2の電極)22とする。この定電圧電極22は、ソース電極18と同一の層に形成されており、一定電圧に保持される。こうして、スイッチング素子4、ソース電極18及び定電圧電極22を有する下側基板100が得られる。
一方、上側基板110については、図1(b)に示すように、表面に金属薄膜からなる導電膜32をスパッタリング法などにより成膜し、フォトリソグラフィ工程によりパターニングした後、導電膜32の表面に、相変化膜からなる記録層34を同じくスパッタリング法などにより成膜し、パターニングすることにより形成される。記録層34は、全てのメモリセルを被覆する大きさであり、導電膜32は記録層34よりも大きな面積に形成されている。これによって、導電膜32の一部が、記録層34により覆われない露出部分32aとなっている。
上側基板110は、例えばポリカーボネート(PC)や、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のように耐熱性の高い有機材料を好ましく用いることができるが、適当な弾力性を有するものであれば無機材料を用いることも可能である。例えば、薄層化したシリコン基板、セラミックス基板、FRP基板などを上側基板110として用いることができる。導電膜32は、W、Pt、Pdなどのように拡散が生じにくい金属が好ましい。
記録層34の材料としては、抵抗値が異なる2以上の安定な状態を有し、各状態間で可逆的な変化が可能な相変化材料を好ましく用いることができ、本実施形態においてはGe、Sb、Teを主成分とするカルコゲナイド化合物であるGeSbTeを使用している。但し、これらとAg、In等を加えたものの組合せで構成されるカルコゲナイド系材料、例えばAgInSbTe、AgInSbGeTe、GeInSbTe等を用いることもでき、これらの元素やその比率を調整することで記録層34の融点を制御することができる。例えば、GeSbTe化合物を用いる場合、図2に示すように、相図中でSbTeとGeTeとの間に位置する化合物が望ましく、例えば、図中の(225)すなわちGeSbTe等が代表的に用いられる。
記録層34の材料としては、カルコゲナイド系材料以外に、(R1−X,A)MnO(ここでR:希土類,A:アルカリ土類,0<x<1)で表されるものを挙げることができる。希土類RとしてはPr,Gd,La、アルカリ土類AとしてはCa,Ba,Sr等を用いることができる。この中でも、特に(Pr0.7,Ca0.3)MnOや、(Gd1−X,Ba)MnO,(La1−X,Sr)MnO等を用いると、特性の良い素子が得られる。さらに、(R1−X,A)MnOにおけるMnをCoに置き換えた(R1−X,A)CoOも使用することができる。
次に、下側基板100及び上側基板110を、図1(c)に示すように、位置合わせして接合する。すなわち、複数のソース電極18が記録層34に一体的に接合されると同時に、定電圧電極22が導電膜32の露出部分32aに接合されるようにアライメントを行い、互いに貼り合わせることにより、不揮発性メモリが完成する。
下側基板100と上側基板110との貼り合わせにおいては、適当な熱処理を施すことにより、ソース電極18と記録層34との接合や、定電圧電極22と導電膜32との接合を強固にすることができる。熱処理の具体的な方法としては、電気炉やホットプレートを用いる他、ランプアニーラを短時間用いる方法を例示することができる。さらに、下側基板100の主面側(スイッチング素子4が形成された側)からミリ波やマイクロ波を照射して、反対側からの放出を遮ることにより、熱処理を行ってもよい。この方法によれば、最初にソース電極18や定電圧電極22が加熱されるので、ソース電極18と記録層34との接合部や定電圧電極22と導電膜32との接合部を選択的に加熱することができ、強固な接合を得ることができる。加熱箇所は、必ずしも上記接合部である必要はなく、例えば、ミリ波やマイクロ波を上述とは反対方向に照射したりホットプレートを用いる等して下側基板100を最初に加熱した場合でも、金属で形成されたソース電極18や定電圧電極22に効率良く伝熱されるため、やはり下側基板100と上側基板110との強固な接合を得ることができる。
また、下側基板100と上側基板110との接合強度を高める方法として、上述した熱処理以外に、接合部に接着層を介在させるようにしてもよい。すなわち、図3に示すように、ソース電極18及び定電圧電極22の上面に接着層36を形成した後に下側基板100と上側基板110とを貼り合わせ、ソース電極18と記録層34との間、及び、定電圧電極22と導電膜32との間を、接着層36を介して接合することができる。接着層36の厚みが薄い場合(例えば、10nm以下)には、ソース電極18や定電圧電極22の上面だけでなく、下側基板100上の全面に接着層36を形成してもよい。図3において、図1(c)に示す構成と同様の構成部分には同一の符号を付している。
接着層36の材料としては、Sn、In、Pbなどの低融点金属の他、Geや導電体ポリマーなどを好ましく用いることができる。導電体ポリマーは、主面方向に高抵抗である一方、主面と垂直方向に低抵抗である抵抗異方性を有することが好ましく、この場合、下側基板100側に接着層36を形成する代わりに、記録層34の表面に接着層36を形成してもよい。或いは、接着層36として、Ge、Sb、Teなどで構成される低融点相変化材料を用いることもできる。この場合、接着層36の形成時に適当なマスクを施して、定電圧電極22の上面には接着層36が形成されないようにすることが好ましい。
また、ソース電極18と記録層34との接合面積を減少させるために、ソース電極18又は記録層34の表面に、直径が100nm以下の金属微粒子を形成したり、イオン照射などにより微細な凹凸を形成してもよい。これによって、記録層34への通電時における電流密度を高めることができ、メモリの省電力化を図ることができる。
ソース電極18と記録層34との接合面積を減少させる方法として、図4に示すように、ソース電極18の上面に絶縁層38をパターニングした後に、下側基板100と上側基板110とを貼り合わせるようにしてもよい。図4において、図1(c)に示す構成と同様の構成部分には同一の符号を付している。
この構成によれば、ソース電極18と記録層34との界面の一部(すなわち、ソース電極18の上面)に絶縁層38が介在されるため、ソース電極18は側壁のみが記録層34と接合されることになり、図1(c)に示す構成に比べて接合面積を小さくすることができる。この結果、メモリの省電力動作が可能になる。また、絶縁層38の形成に加えて、上述したように、接合部に金属微粒子を介在させたり凹凸部を形成することで、更なる省電力化を図ることができる。尚、図4においては、定電圧電極22の上面にも絶縁層38が形成されているが、これを別工程で除去するようにしてもよい。
本実施形態に係る不揮発性メモリによれば、下側基板100は、従来と同様に素子分離領域を必要とするが、通常のシリコン半導体製造プロセスにおける一般的な工程で製造可能であり、特に工程の追加を必要としない。これに対し、上側基板110については煩雑な微細加工工程が不要になるので、全体として製造の容易化を図ることができる。
すなわち、上側基板110に形成された記録層34が、各ソース電極18と接合されるように、メモリ領域の全体を覆う大きさに形成されており、一般には100μm以上のパターン幅で形成することができる。また、同じく下側基板100における導電膜32の露出部は、任意の位置に形成することができ、例えば、メモリ領域の外周部に形成して十分な領域を確保することで、下側基板100と上側基板110とのアライメントマージンを大きくすることができる。アライメントマージンは、定電圧電極22と、この定電圧電極22に隣接するソース電極18との距離M(図1(c)参照)に相当し、この距離Mは、例えば1〜50μmに設定することができる。この結果、上側基板110については、パターンレイアウトのルールが緩和される。更に、本実施形態の不揮発性メモリによれば、上述した従来の強誘電体メモリ(図9(b)参照)とは異なり、記録層34を有する上側基板110に素子分離領域を形成する必要はない。したがって、上側基板110については、下側基板100との貼り合わせ後も含めて微細加工工程が不要になる。したがって、従来の不揮発性メモリに比べて製造が容易になり、高集積度の不揮発性メモリを低コストで得ることができる。
本実施形態の不揮発性メモリは、図11に示すように、定電圧電極22に隣接する補助電極22aを、定電圧電極22と同一の層に形成してもよい。尚、図11において図1(c)と同様の構成部分に同一の符号を付している。
この構成によれば、下側基板100と上側基板110とのアライメントがずれて、図11に示すように、記録層34が定電圧電極22を覆うことにより定電圧電極22が記録層34に接合された場合でも、定電圧電極22と補助電極22aとの間に通電することにより、記録層34における通電領域を結晶状態にして低抵抗化することができるので、定電圧電極22を図1(c)に示す構成と同様に機能させることができる。したがって、下側基板100と上側基板110とのアライメントをより容易化することができると共に、アライメントマージン(図1(c)の距離M)を小さくして小型化を図ることができる。図11に示す構成は、補助電極22aは記録層34に覆われていないが、定電圧電極22及び補助電極22aの双方が記録層34により覆われていても(後述する図8参照)、特に問題はない。
このような構成においては、記録層34における通電領域が後にレーザ光が照射される等して高抵抗化すると、定電圧電極22の機能が阻害されるおそれがある。したがって、上側基板110に透明度の低い材料を用いるなどにより、記録層34の通電領域の上方を遮光することが好ましい。
図5は、図1(c)に示す不揮発性メモリの等価回路図であり、図5(a)が単一のセルを示し、図5(b)がマトリクス状に配置された状態を示している。1つのセルは、スイッチング素子4と、記録層34とを備えている。スイッチング素子4のゲート電極8はワード線となっており、ドレイン部10bはビット線20に接続されている。また、スイッチング素子4のソース部10aは、記録層34の一方側に接続され、記録層34の他方側が定電圧電極22に接続される。定電圧電極22は、通常は接地線であるが、記録層34への通電時において一定電圧に保持されれば、必ずしも接地の必要はない。この定電圧電極22は、上述した従来の強誘電体メモリにおけるプレート線PL(図10参照)のように読み出し時や書き込み時に電圧が印加されるものではなく、プレート線PLとは作用が異なる。
本実施形態における記録層34の材料であるカルコゲナイド化合物は、結晶状態で電気抵抗が低い一方、非結晶状態では電気抵抗が高くなり、その変化は1〜3桁程度である。したがって、相変化材料を用いた従来の不揮発性メモリと同様に、結晶状態と非結晶状態とをそれぞれ「0」,「1」(又は「1」,「0」)のデータに割り当てることにより、データの書き込み、読み出しを行うことができる。
データを読み出す場合には、図5(b)において、ビット線20とゲート電極(ワード線)8とに所定の電圧を印加することにより、ビット線20からスイッチング素子4及び記録層34を介して定電圧電極22に電流が流れる。この電流の大きさは、記録層34の抵抗値によって変化するため、電流値に基づいて記録層34のメモリ内容を読み出すことができる。
一方、データを書き込む場合には、記録層34の結晶状態が変化するように、ビット線20とゲート電極(ワード線)8とに適当な電圧を印加する。結晶状態(低抵抗状態)から非結晶状態(高抵抗状態)に変化させる場合には、記録層34の一部が結晶化温度(例えば600℃)よりも高くなるような電流を記録層34に流した後、通電を急に遮断する。これに対し、非結晶状態(高抵抗状態)から結晶状態(低抵抗状態)に変化させる場合には、記録層34の結晶化温度を超えない程度の電流を記録層34に流し、結晶化する。記録層34は、一般に200℃以下の温度範囲では抵抗状態が変化しないので、不揮発性メモリとして機能する。
記録層34を構成する相変化材料は、一般に、結晶状態から非結晶状態に変化することにより体積が数%〜10%程度大きくなるが、本実施形態の構成によれば、適度な弾力性を有する上側基板110によって相変化材料の膨張及び収縮を緩和することができるので、下側基板100と上側基板110との接合部における断線を防止することができる。
本実施形態の不揮発性メモリは、上述したように、データの読み出し及び書き込みを電気的に行う以外に、レーザ光などを用いて光学的に行うこともできる。データを読み出す場合には、図6に示すように、所望のメモリセルに対応する記録層34に入射レーザ光Ibを照射し、反射レーザ光Rbの強度又は偏光度を測定する。記録層34は、結晶状態か非結晶状態かで偏光度が異なるため、この偏光度の差に基づいて、メモリ内容を読み出すことができる。入射レーザ光Ibを効率良く透過させるためには、上側基板110の材料に透明度の高いものを使用すると共に、導電膜32の厚みを薄くすることが好ましく、具体的には、導電膜32の厚みを3〜10nmにすることが好ましい。このように、各メモリセルの重み係数などを光学的に読み取り可能に構成することで、電気的な読み取りに比べて回路規模を抑制することができ、例えばニューラルネットワークの構築に有効である。尚、これとは逆にデータの光学的な読み取り及び書き込みを防止する必要がある場合には、上側基板110の透明度を低くしたり、導電膜32の厚みを10nmより大きくすることが好ましい。
また、データを書き込む場合には、公知のDVDディスクメディアに対する書き込みと同様の方法で行うことができる。すなわち、図6に示すように、所望のメモリセルに対応する記録層34に高強度のレーザ光Lbを照射した後、急に照射を停止することにより、記録層34を非結晶状態にすることができる一方、記録層34が融解しない程度の強度が比較的低いレーザ光Lbを照射することにより、記録層34を結晶状態にすることができる。この場合も、導電膜32の厚みを3〜10nmに設定することで、レーザ光Lbを効率よく透過させることができると共に、導電膜32を介した伝熱を抑制して隣接したメモリセルへの熱的干渉を防止することができる。レーザ光Lbの波長は、メモリセルのサイズが小さいほど短波長であることが好ましい。例えば、レーザ光Lbの波長が600〜700nm程度の場合、ソース電極18のサイズは、0.2μm角程度まで微細化可能である。このように、光学的に書き込み可能に構成することで、電気的な書き込み回路が不要になり、重み係数を後から変更して最適化することが可能なニューラルネットワークを、容易、低コストに製造することができる。
本実施形態の不揮発性メモリは、スイッチング素子4として、nチャネル型のMOSFETを使用しているが、下側基板100にnウェル領域を形成する等して、pチャネル型のMOSFETを使用してもよい。或いは、その他のFETや、バイポーラ素子、HEMT(High Electron Mobility Transistor)などの3端子以上を有するトランジスタをスイッチング素子4として用いることができる。
また、メモリセルの構成についても本実施形態のものに限定されず、例えば、図7(a)に示すように、第1のn型スイッチング素子41、第2のn型スイッチング素子42、第1のp型スイッチング素子43、第2のp型スイッチング素子44、第3のn型スイッチング素子45、第3のn型スイッチング素子46を備えた6トランジスタのフリップフロップ回路により構成されたSRAM(Static Random Access Memory)に、本発明を適用することができる。図7(a)において、符号8及び20は、それぞれワード線及びビット線である。
この場合、下側基板100に第1の記録層47及び第2の記録層48を設け、第1の記録層47及び第2の記録層48の一方端を、それぞれ第1のn型スイッチング素子41及び第2のn型スイッチング素子42のソース部に接続し、第1の記録層47及び第2の記録層48の他方端を定電圧電極22に接続することにより、本実施形態と同様の方法で製造することができる。この構成においては、電源線49への電源投入時に生じる第1の記録層47及び第2の記録層48の抵抗差によって、ノードA及びノードBの電圧が決定されるので、これに基づいてメモリ内容を読み出すことができる。第1の記録層47及び第2の記録層48の一方端は、図7(b)に示すように、第1のp型トランジスタ43及び第2のp型トランジスタ44のソース部に接続してもよい。なお、図7においては、各スイッチング素子41〜44がマトリクス状に配置された複数のスイッチング素子を形成している。
また、本実施形態においては、上側基板110における導電膜32の露出部32aを形成し、この露出部32aに下側基板100の定電圧電極22を接合するようにしているが、図8に示すように、導電膜32の全面に記録層34を形成し、導電膜32が露出しない構成にすることもできる。この場合、下側基板110には、定電圧電極22に隣接する補助電極22aを、定電圧電極22と同一の層に形成することにより、下側基板100と上側基板110とを貼り合わせた際に、定電圧電極22及び補助電極22aが記録層34に接合される。尚、図8において図1(c)と同様の構成部分に同一の符号を付している。
このように構成された不揮発性メモリは、予め定電圧電極22と補助電極22aとの間に通電し、記録層34における通電領域を結晶状態にして低抵抗化することにより、定電圧電極22を図1(c)に示す構成と同様に機能させることができる。このように不揮発性メモリを構成することで、アライメントマージンが不要になり、更なる小型化が図れると共に、製造が容易であるという利点を有する。この構成においても、図11に示す構成と同様に、記録層34の通電領域の上方を遮光することが好ましい。
【産業上の利用可能性】
以上のように、本発明によれば、高集積度を低コストで実現することができる不揮発性メモリ及びその製造方法を提供することができる。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の基板と第2の基板とを備え、
前記第1の基板は、マトリクス状に配置された複数のスイッチング素子と、前記各スイッチング素子に電気的に接続された複数の第1の電極とを有し、
前記第2の基板は、導電膜と、電気的パルスが印加されることにより抵抗値が変化する記録層とを有しており、
複数の前記第1の電極は、前記記録層により一体的に覆われており、これによって、複数の前記第1の電極と前記導電膜との間に前記記録層が挟持され、
前記第1の基板は、第2の電極をさらに備え、
前記第2の電極は、前記導電膜と電気的に接続され、前記記録層への通電時に一定電圧に保持される不揮発性メモリ。
【請求項2】
前記第1の電極及び第2の電極は、前記第1の基板上における同一の層に形成されている請求項1に記載の不揮発性メモリ。
【請求項3】
前記記録層が素子分離領域を有しない、請求項1に記載の不揮発メモリ。
【請求項4】
前記導電膜は、前記記録層に覆われない露出部を有しており、
前記第2の電極は、前記露出部に接合されている請求項1に記載の不揮発性メモリ。
【請求項5】
前記第2の電極と、該第2の電極に隣接する前記第1の電極との距離が、1μm以上50μm以下である請求項4に記載の不揮発性メモリ。
【請求項6】
前記導電膜は、前記記録層に覆われない露出部を有しており、
前記第1の基板は、前記第2の電極に隣接して配置された補助電極を更に備え、
前記第2の電極が、前記記録層により覆われている請求項1に記載の不揮発性メモリ。
【請求項7】
前記第1の電極、第2の電極、及び補助電極は、前記第1の基板上における同一の層に形成されている請求項6に記載の不揮発性メモリ。
【請求項8】
前記第2の電極と補助電極との間を通電することにより、前記第2の電極と補助電極との間の部分の前記記録層が低抵抗化されている請求項6に記載の不揮発性メモリ。
【請求項9】
前記補助電極が、前記記録層により覆われている請求項8に記載の不揮発性メモリ。
【請求項10】
前記第2の電極と補助電極との間の部分の前記記録層の上方が遮光されている請求項8に記載の不揮発性メモリ。
【請求項11】
前記第1の基板は、前記第2の電極に隣接して配置された補助電極を更に備え、
前記導電膜の全面に前記記録層が形成されており、
前記第2の電極は、前記記録層により覆われている請求項1に記載の不揮発性メモリ。
【請求項12】
前記第1の電極、第2の電極、及び補助電極は、前記第1の基板上における同一の層に形成されている請求項11に記載の不揮発性メモリ。
【請求項13】
前記第2の電極と補助電極との間を通電することにより、前記第2の電極と補助電極との間の部分の前記記録層が低抵抗化されている請求項11に記載の不揮発性メモリ。
【請求項14】
前記第2の電極と補助電極との間の部分の前記記録層が遮光されている請求項13に記載の不揮発性メモリ。
【請求項15】
前記スイッチング素子は、前記第1の基板内に形成されたソース領域及びドレイン領域と、前記第1の基板上に形成されたゲート電極とを備えており、
前記第1の電極は、前記ソース領域に接続されている請求項1に記載の不揮発性メモリ。
【請求項16】
前記第1の基板は、p型半導体基板であり、
前記ソース領域及びドレイン領域は、n型拡散層であり、
前記第2の電極は、接地用の電極である請求項15に記載の不揮発性メモリ。
【請求項17】
前記ゲート電極は、前記第1の基板上にゲート絶縁膜を介して形成されている請求項15に記載の不揮発性メモリ。
【請求項18】
少なくとも前記第1の電極と前記記録層との間に接着層が介在されている請求項1に記載の不揮発性メモリ。
【請求項19】
前記第1の電極と前記記録層との界面の一部に、絶縁層が介在されている請求項1に記載の不揮発性メモリ。
【請求項20】
前記記録層は、抵抗値が異なる2以上の安定な状態を有し、各状態間で可逆的な変化が可能な相変化材料からなる請求項1に記載の不揮発性メモリ。
【請求項21】
前記相変化材料は、カルコゲナイド系材料を含む請求項20に記載の不揮発性メモリ。
【請求項22】
前記導電膜の厚みは、3nm以上10nm以下である請求項1に記載の不揮発性メモリ。
【請求項23】
第1の基板と第2の基板とを位置合わせして接合するアライメントステップを備え、
前記第1の基板は、マトリクス状に配置された複数のスイッチング素子と、前記各スイッチング素子に電気的に接続された複数の第1の電極とを有し、
前記第2の基板は、導電膜と、電気的パルスが印加されることにより抵抗値が変化する記録層とを有し、
前記第1の基板は、前記記録層への通電時に一定電圧に保持される第2の電極をさらに有し、
前記アライメントステップでは、複数の前記第1の電極を前記記録層により一体的に覆うことにより、複数の前記第1の電極と前記導電膜との間に前記記録層を挟持する第1の電極接続ステップと、前記第2の電極を前記導電膜又は前記記録層と電気的に接続する第2の電極接続ステップとが同時に行なわれる、不揮発性メモリの製造方法。
【請求項24】
前記第1の電極及び第2の電極は、前記第1の基板上における同一の層に形成されている請求項23に記載の不揮発性メモリの製造方法。
【請求項25】
前記記録層に素子分離領域を形成する工程を有しない、請求項23に記載の不揮発メモリの製造方法。
【請求項26】
前記導電膜は、前記記録層に覆われない露出部を有しており、
前記第2の電極接続ステップでは、前記第2の電極を前記露出部に接合する請求項23に記載の不揮発性メモリの製造方法。
【請求項27】
前記第2の電極と、該第2の電極に隣接する前記第1の電極との距離が、1μm以上50μm以下である請求項26に記載の不揮発性メモリの製造方法。
【請求項28】
前記第1の基板は、前記第2の電極に隣接して配置された補助電極を更に備え、
前記導電膜は、前記記録層に覆われない露出部を有しており、
前記第2の電極接続ステップは、前記第2の電極を、前記露出部又は前記記録層に接合する請求項23に記載の不揮発性メモリの製造方法。
【請求項29】
前記第1の電極、第2の電極、及び補助電極は、前記第1の基板上における同一の層に形成されている請求項28に記載の不揮発性メモリの製造方法。
【請求項30】
前記第2の電極接続ステップの後、前記第2の電極と補助電極との間を通電する通電ステップを備えることにより、前記第2の電極が前記記録層に接合されている場合に、前記第2の電極と補助電極との間の部分の前記記録層を低抵抗化する請求項28に記載の不揮発性メモリの製造方法。
【請求項31】
前記第2の電極と補助電極との間の部分の前記記録層の上方が遮光されている請求項30に記載の不揮発性メモリの製造方法。
【請求項32】
前記第1の基板は、前記第2の電極に隣接して配置された補助電極を更に備え、
前記第2の電極接続ステップでは、前記第2の電極を前記記録層に接合する請求項23に記載の不揮発性メモリの製造方法。
【請求項33】
前記第1の電極、第2の電極、及び補助電極は、前記第1の基板上における同一の層に形成されている請求項32に記載の不揮発性メモリの製造方法。
【請求項34】
前記第2の電極接続ステップの後、前記第2の電極と補助電極との間を通電する通電ステップを備えることにより、前記第2の電極と補助電極との間の部分の前記記録層を低抵抗化する請求項32に記載の不揮発性メモリの製造方法。
【請求項35】
前記第2の電極と補助電極との間の部分の前記記録層の上方が遮光されている請求項34に記載の不揮発性メモリの製造方法。
【請求項36】
前記スイッチング素子は、前記第1の基板内に形成されたソース領域及びドレイン領域と、前記第1の基板上に形成されたゲート電極とを備えており、
前記第1の電極は、前記ソース領域に接続されている請求項23に記載の不揮発性メモリの製造方法。
【請求項37】
前記第1の基板は、p型半導体基板であり、
前記ソース領域及びドレイン領域は、n型拡散層であり、
前記第2の電極は、接地用の電極である請求項36に記載の不揮発性メモリの製造方法。
【請求項38】
前記ゲート電極は、前記第1の基板上にゲート絶縁膜を介して形成されている請求項36に記載の不揮発性メモリの製造方法。
【請求項39】
前記アライメントステップの前に、前記第1の電極と前記記録層との間に接着層を介在させるステップを含む請求項23に記載の不揮発性メモリの製造方法。
【請求項40】
前記アライメントステップの前に、前記第1の電極と前記記録層との界面の一部に絶縁層を介在させるステップを含む請求項23に記載の不揮発性メモリの製造方法。
【請求項41】
前記記録層は、抵抗値が異なる2以上の安定な状態を有し、各状態間で可逆的な変化が可能な相変化材料からなる請求項23に記載の不揮発性メモリの製造方法。
【請求項42】
前記相変化材料は、カルコゲナイド系材料を含む請求項41に記載の不揮発性メモリの製造方法。
【請求項43】
前記導電膜の厚みは、3nm以上10nm以下である請求項23に記載の不揮発性メモリの製造方法。
【請求項44】
前記アライメントステップは、少なくとも前記第1の電極と記録層との接続部を加熱するステップを含む請求項23に記載の不揮発性メモリの製造方法。

【国際公開番号】WO2004/100266
【国際公開日】平成16年11月18日(2004.11.18)
【発行日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−504482(P2005−504482)
【国際出願番号】PCT/JP2004/006485
【国際出願日】平成16年5月7日(2004.5.7)
【特許番号】特許第3743891号(P3743891)
【特許公報発行日】平成18年2月8日(2006.2.8)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】