説明

不揮発性半導体記憶装置

【課題】消費電力を低減させ且つ誤動作を抑制した不揮発性半導体記憶装置を提供する。
【解決手段】可変抵抗層63は、炭素C、及び元素群Aから選ばれる少なくともいずれか1種類以上の元素を含む第1化合物631と、化合物群G2から選ばれる少なくともいずれか1種類以上の第2化合物632とを含む混合体にて構成されている。可変抵抗層63中での第1化合物631の濃度は、30vol.%以上であり且つ70vol.%以下である。元素群G1は、水素、ボロン、窒素、シリコン、及びチタンを含む。化合物群G2は、酸化シリコン、酸窒化シリコン、窒化シリコン、窒化炭素、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、アルミニウム酸化物、炭化珪素を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気的に書き換え可能なメモリセルを有する揮発性半導体記憶装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、小型大容量の情報記録再生装置(記憶装置)の需要が急速に拡大してきている。その中でも、NAND型フラッシュメモリ及び小型HDD(hard disk drive)は、急速な記録密度の進化を遂げ、大きな市場を形成するに至っている。このような状況の下、記録密度の限界を大幅に超えることを目指した新規メモリのアイデアが幾つか提案されている。その中でも、低抵抗状態と高抵抗状態とを有する抵抗変化素子を用いた不揮発性半導体メモリが注目されている(例えば、非特許文献1,2参照)。
【0003】
この種のメモリにおいては、抵抗変化素子に電圧パルスを印加し、低抵抗状態と高抵抗状態とを繰り返し変化させることができ、この2つの状態を2値データ“0”及び“1”に対応させてデータを記録する。そして、多値記録を可能とし、さらに記録密度を高めることが期待されている。
【0004】
しかし、多値記憶や記録密度を高めた場合、情報の書き込み又は消去の際に誤った情報が書き込まれる確率が高くなる(誤スイッチの確率が高くなる)という問題が生じる。誤スイッチの確率を低くするため、低抵抗状態と高抵抗状態との間の抵抗比が高い抵抗変化材料が要求されている。
【0005】
こうした要求の中、抵抗変化素子の材料として様々な材料が模索されているが、その中で、炭素(C)を主成分とした抵抗変化材料が有力視されている。例えば、カーボンナノチューブ内にチタン(Ti)を内包させることにより、低抵抗状態と高抵抗状態での抵抗比を高めた抵抗変化材料を用いた不揮発性メモリも提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
しかし、炭素を主成分とした従来の抵抗変化材料においては、低抵抗状態における抵抗値が低くなり過ぎるという問題がある。低抵抗状態の抵抗値が低すぎると、セル電流が増大し、消費電力が増大するという問題が生じる。このように、消費電力の抑制と誤スイッチの虞の低減とを両立させた抵抗変化材料は、未だ提案されていない状況である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−166591号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】P. Vettiger, G. Cross, M. Despont, U. Drechsler, U. Durig, B. Gotsmann, W. Haberle, M. A. Lants, H. E. Rothuizen, R. Stutz and G. K. Binnig, IEEE Trans. Nanotechnology 1, 39(2002)
【非特許文献2】P. Vettiger, T. Albrecht, M. Despont, U. Drechsler, U. Durig, B. Gotsmann, D. Jubin, W. Haberle, M. A. Lants, H. E. Rothuizen, R. Stutz, D. Wiesmannand G. K. Binnig, P. Bachtold, G. Cherubini, C. Hagleitner, T. Loeliger, A. Pantazi, H. Pozidis and E. Eleftheriou, in Technical Digest, IEDM03 pp.763-766
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、消費電力を低減させ且つ誤動作を抑制した不揮発性半導体記憶装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様に係る不揮発性半導体記憶装置は、電気的に書き換え可能なメモリセルを備え、前記メモリセルは、印加される電圧及び通電される電流の少なくともいずれかによって電気抵抗率を変化させる可変抵抗層を備え、前記可変抵抗層は、炭素(C)、及び以下に示される元素群G1から選ばれる少なくともいずれか1種類以上の元素を含む第1化合物と、以下に示される化合物群G2から選ばれる少なくともいずれか1種類以上の第2化合物とを含む混合体にて構成され、前記可変抵抗層中での前記第1化合物の濃度は、30vol.%以上であり且つ70vol.%以下であることを特徴とする。
(元素群G1:水素(H)、ボロン(B)、窒素(N)、シリコン(Si)、及びチタン(Ti)
化合物群G2:酸化シリコン(SiO)、酸窒化シリコン(SiON)、窒化シリコン(SiN)、窒化炭素(C)、窒化ホウ素(BN)、窒化アルミニウム(AlN)、酸化アルミニウム(Al)、炭化珪素(SiC))
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、消費電力を低減させ且つ誤動作を抑制した不揮発性半導体記憶装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態に係る不揮発性半導体記憶装置の回路図である。
【図2】実施形態に係るメモリセルアレイ10の一例を示す拡大斜視図である。
【図3】実施形態に係るメモリセルアレイ10の一例を示す拡大斜視図である。
【図4】実施形態に係るメモリセルアレイ10の一例を示す拡大斜視図である。
【図5】図2の断面図である。
【図6】可変抵抗層63を示す断面図である。
【図7】実施例に用いたメモリ層60aを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明に係る不揮発性半導体記憶装置の一実施形態について説明する。
【0014】
[実施形態]
[実施形態に係る不揮発性半導体記憶装置の回路構成]
先ず、図1を参照して、本発明の実施形態に係る不揮発性半導体記憶装置の回路構成について説明する。図1は、実施形態に係る不揮発性半導体記憶装置の回路図である。
【0015】
実施形態に係る不揮発性半導体記憶装置は、図1に示すように、メモリセルアレイ10、ワード線選択回路20a、ワード線駆動回路20b、ビット線選択回路30a、及びビット線駆動回路30bを有する。
【0016】
メモリセルアレイ10は、図1に示すように、互いに交差するワード線WL(WL1、WL2)及びビット線BL(BL1、BL2)、並びにワード線WL及びビット線BLの交差部に配置されたメモリセルMC(MC<1,1>〜MC<2,2>)を有する。ワード線WLは、Y方向に所定ピッチをもって配列され、X方向に延びるように形成されている。ビット線BLは、X方向に所定ピッチをもって配列され、Y方向に延びるように形成されている。すなわち、メモリセルMCは、X方向及びY方向にて形成される面上にマトリクス状に配置されている。
【0017】
メモリセルMCは、図1に示すように、直列接続されたダイオードDI、及び可変抵抗素子Rを有する。ダイオードDIは、記録/再生時における回り込み電流(sneak current)を防止するために配置されている。可変抵抗素子Rは、電気的に書き換え可能で抵抗値に基づいてデータを不揮発に記憶する。ダイオードDIのアノードは、ワード線WLに接続され、そのカソードは、可変抵抗素子Rの一端に接続されている。可変抵抗素子Rの他端は、ビット線BLに接続されている。
【0018】
ワード線選択回路20aは、図1に示すように、複数の選択トランジスタTra(Tra1、Tra2)を有する。選択トランジスタTraの一端は、ワード線WLの一端に接続され、その他端は、ワード線駆動回路20bに接続されている。選択トランジスタTraのゲートには、信号Sa(Sa1、Sa2)が供給される。すなわち、ワード線選択回路20aは、信号Saを制御することにより、ワード線WLを選択的にワード線駆動回路20bに接続する。
【0019】
ワード線駆動回路20bは、図1に示すように、メモリセルMCのデータ消去、メモリセルMCへのデータ書き込み、及びメモリセルMCからのデータ読み出しに必要な電圧をワード線WLへと印加する。
【0020】
ビット線選択回路30aは、図1に示すように、複数の選択トランジスタTrb(Trb1、Trb2)を有する。選択トランジスタTrbの一端は、ビット線BLの一端に接続され、その他端は、ビット線駆動回路30bに接続されている。選択トランジスタTrbのゲートには、信号Sb(Sb1、Sb2)が供給される。すなわち、ビット線選択回路30aは、信号Sbを制御することにより、ビット線BLを選択的にビット線駆動回路30bに接続する。
【0021】
ビット線駆動回路30bは、図1に示すように、メモリセルMCのデータ消去、メモリセルMCへのデータ書き込み、及びメモリセルMCからのデータ読み出しに必要な電圧をビット線BLへと印加する。また、ビット線駆動回路30bは、ビット線BLから読み出したデータを外部に出力する。
【0022】
[実施形態に係るメモリセルアレイ10の積層構造]
次に、図2〜図4を参照して、実施形態に係るメモリセルアレイ10の積層構造について説明する。図2〜図4は、実施形態に係るメモリセルアレイ10の一例を示す拡大斜視図である。メモリセルアレイ10は、いわゆる、クロスポイント型にて構成されている。
【0023】
メモリセルアレイ10は、例えば、図2に示すように、基板40の上層に、下層から上層へと、第1導電層50、メモリ層60、第2導電層70を有する。第1導電層50は、ワード線WLとして機能する。メモリ層60は、メモリセルMCとして機能する。第2導電層70は、ビット線BLとして機能する。
【0024】
第1導電層50は、図2に示すように、Y方向に所定ピッチをもって、X方向に延びるストライプ状に形成されている。第1導電層50は、金属にて構成されている。第1導電層50は、熱に強く、且つ抵抗値の低い材料が望ましく、例えば、タングステン(W)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、及びこれらの窒化物、もしくはこれらの積層構造等にて構成されている。
【0025】
メモリ層60は、図2に示すように、第1導電層50上に設けられ、X方向及びY方向にマトリクス状に配列されている。
【0026】
第2導電層70は、図2に示すように、X方向に所定ピッチをもって、Y方向に延びるストライプ状に形成されている。第2導電層70は、メモリ層60の上面に接するように形成されている。第2導電層70は、熱に強く、且つ抵抗値の低い材料が望ましく、例えばタングステン(W)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、及びこれらの窒化物、もしくはこれらの積層構造等にて構成されている。
【0027】
また、メモリセルアレイ10は、例えば、図3に示すように、図2の構成に加えて、さらに上層に絶縁層を介して第1導電層50、メモリ層60、及び第2導電層70を積層させた構成であってもよい。
【0028】
また、メモリセルアレイ10は、例えば、図4に示すように、図2の第2導電層70の上面に形成されたメモリ層60、及びメモリ層60の上面に形成された第1導電層50を有する構成であってもよい。すなわち、メモリセルアレイ10は、図4に示すように、第2導電層70にて上下のメモリ層60を共有する構成であってもよい。
【0029】
次に、図5を参照して、詳細にメモリ層60の積層構造について説明する。図5は、図2の断面図である。
【0030】
メモリ層60は、図5に示すように、下層から上層へと、ダイオード層61、第1電極層62、可変抵抗層63、第2電極層64を有する。
【0031】
ダイオード層61は、第1導電層50の上面に形成されている。ダイオード層61は、ダイオードDIとして機能する。ダイオード層61は、例えば、MIM(Metal-Insulator-Metal)構造、PIN構造(P+poly-Silicon - Intrinsic - N+poly-Silicon)等にて構成されている。
【0032】
第1電極層62は、ダイオード層61の上面に形成されている。第1電極層62は、以下に示す化合物群g1の少なくとも1種類以上から選択される窒化物、炭化物、酸化物の何れかにて構成されている。或いは、第1電極層62は、以下に示す化合物群g1の少なくとも1種類以上から選択される窒化物と酸化物との混合体、窒化物と炭化物との混合体、酸化物と炭化物との混合体、窒化物と酸化物と炭化物との混合体の何れかにて構成されている。
【0033】
化合物群g1:Ti−N、Ti−Si−N、Ta−N、Ta−Si−N、Si−N、Ti−C、Ta−C、Si−C、W−N
【0034】
また、第1電極層62は、以下に示す元素群g2の少なくとも1種類と、以下に示す元素群g3の少なくとも1種類とから構成された積層膜であってもよい。
【0035】
元素群g2:水素(H)、ボロン(B)、窒素(N)、シリコン(Si)、チタン(Ti)
元素群g3:タングステン(W)、タンタル(Ta)、シリコン(Si)、イリジウム(Ir)、ルビジウム(Ru)、金(Au)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、モリブデン(Mo)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、コバルト(Co)
【0036】
可変抵抗層63は、第1電極層62の上面に形成されている。可変抵抗層63は、可変抵抗素子Rとして機能する。可変抵抗層63は、印加される電圧及び通電される電流の少なくともいずれかによって電気抵抗率を変化させる。可変抵抗層63の膜厚は、5nm以上70nm以下である。
【0037】
第2電極層64は、可変抵抗層63の上面と第2導電層70の下面との間に形成されている。ここで、第2電極層64は、上記第1電極層62と同様の材料にて構成されている。
【0038】
次に、図6を参照して、可変抵抗層63の構成についてさらに詳しく説明する。図6は、可変抵抗層63を示す断面図である。
【0039】
可変抵抗層63は、図6に示すように、第1化合物631、及び第2化合物632を含む混合体にて構成されている。第1化合物631は、炭素(C)に加え、以下に示す元素群G1から選ばれる少なくともいずれか1種類以上の元素を含む化合物である。第2化合物632は、以下に示す化合物群G2から選ばれる少なくともいずれか1種類以上の化合物である。
【0040】
元素群G1:水素(H)、ボロン(B)、窒素(N)、シリコン(Si)、チタン(Ti)
化合物群G2:酸化シリコン(SiO)、酸窒化シリコン(SiON)、窒化シリコン(SiN)、窒化炭素(C)、窒化ホウ素(BN)、窒化アルミニウム(AlN)、アルミニウム酸化物(Al)、炭化珪素(SiC)
【0041】
可変抵抗層63中の第1化合物631の濃度は、30vol.%以上であり且つ70vol.%以下である。元素群G1から選ばれる元素が水素(H)以外の元素(ボロン(B)、窒素(N)、シリコン(Ti)、チタン(Ti))である場合、第1化合物631内での当該元素の濃度は、0.01〜20at.%とするのが好適である。また、元素群G1から選ばれる元素が水素(H)である場合、第1化合物631内での水素(H)の濃度は、10〜65at.%とするのが好適である。より好ましくは、水素(H)の濃度は、15〜55at.%とするのがよい。
【0042】
第1化合物631に含まれる炭素(C)は、微小な結晶粒径を有するグラファイト成分と、長距離秩序を持たない結晶構造が乱れた、いわゆる無定形炭素、若しくはアモルファス・カーボンの混合体である。元素群G1に含まれる1種類以上の元素は、上記のような炭素(C)の中に分散され、或いは炭素(C)の結晶構造の格子間、若しくはグラファイトの層間に形成されている。
【0043】
第1化合物631は、図6に示すように、第1電極層62から第2電極層64に連続体を形成する。これは、可変抵抗層63中での第1化合物631の濃度は、30vol.%以上であり且つ70vol.%以下であるためである。なお、可変抵抗層63中での第1化合物631の濃度が30vol.%未満であれば、連続体は形成されず、その抵抗は高くなり、可変抵抗素子Rとしての特性は損なわれる。一方、可変抵抗層63中での第1化合物631の濃度が70vol.%より大きければ、電流量が増大し、消費電力が大きくなる。
【0044】
上述したように、元素群G1から選ばれる元素が水素(H)以外の元素(ボロン(B)、窒素(N)、シリコン(Ti)、チタン(Ti))である場合、第1化合物631内での当該元素の濃度は、0.01〜20at.%とするのが好適である。これらの元素が、第1化合物631内に上記のような数値範囲の濃度で存在することにより、当該元素が第1化合物631から析出されることが防止されるとともに、適切な大きさの抵抗変化量(抵抗比)を得ることができる。元素群G1の元素が第1化合物631から析出すると、リーク電流が増大し、可変抵抗層63の機能が損なわれる。上記のような割合で元素群G1の元素が第1化合物631内に存在することにより、可変抵抗層63は、印加電圧又は流れる電流により、その抵抗を大きく変化させることができる。すなわち、高抵抗状態と低抵抗状態との間の抵抗比は、多値記憶のメモリを構成するのに十分な値とすることができる。また、元素群G1の元素の析出も防止されるので、可変抵抗層63の安定性を高めることができる。
【0045】
元素群G1の元素の濃度が上記のような数値範囲よりも小さくなると、第1化合物631の抵抗変化は困難となる。一方、元素群G1の元素の濃度が上記のような数値範囲よりも大きくなると、これら元素が析出すること等によりリーク電流が増大して、第1化合物631の抵抗変化は困難となる。
【0046】
上述したように、第1化合物631中に含まれる元素群G1から選択される元素が水素(H)である場合において、第1化合物631中の水素(H)の濃度は、10〜65at.%であるのが好適である。なお、元素群G1は水素(H)とそれ以外の元素では好適な濃度が異なるが、水素(H)とそれ以外の元素が同時に存在してもよい。その場合、水素(H)の濃度は、10〜65at.%であり、それ以外の元素の濃度は、0.01〜20at.%とするのが望ましい。
【0047】
ここで、炭素(C)を主成分とする材料系は、金属に近いグラファイトから理想的な電気の絶縁体であるダイヤモンドまで、様々な状態を呈する。グラファイトは、sp2混成軌道成分、もしくはパイ電子の成分が寄与することにより、低い電気抵抗率を有する。一方、ダイヤモンドは、sp3混成軌道成分が寄与することにより、電気伝導に寄与するキャリア(電子、または正孔(ホール))が生成されず、高い電気抵抗率を有する。なお、キャリアを形成するドーパントとしていくつかの元素が知られているが、母体となるダイヤモンドの結晶性を非常に高めなければ、その効果を発揮させることはできない。特に、混合体を形成するような場合には、母体となるダイヤモンドの結晶性を高めることは非常に困難である。
【0048】
本実施形態においては、水素(H)の濃度が10at.%未満であれば、炭素(C)中のsp2軌道成分が多くなり過ぎ、第1化合物631は、高抵抗状態を取りにくくなり、その抵抗変化は困難となる。一方、水素(H)の濃度が、第1化合物631に対して65at.%より大であれば、炭素(C)中のsp3軌道成分が多くなり過ぎ、第1化合物631は、低抵抗状態を取りにくくなり、その抵抗変化は困難となる。また、元素群G1に含まれる水素(H)の濃度は、第1化合物631に対して15〜55at.%であれば、第1化合物631は、さらに容易にその抵抗を変化させることができる。
【0049】
第2化合物632は、典型的な電気的絶縁体である化合物群G2にて構成されており、その電気抵抗率は、10Ω・cm以上である。
【0050】
[実施形態の書き込み/消去/読み出し動作]
次に、再び図1を参照して、実施形態の書き込み/消去/読み出し動作について説明する。以下の説明においては、図1のメモリセルMC<1,1>を選択して、そのメモリセルMC<1,1>を対象に、各種動作を実行するものとする。
【0051】
[書込み動作]
先ず、書込み動作(セット動作)について説明する。書込み動作において、選択したワード線WL1の電位は、選択したビット線BL1の電位よりも相対的に高く設定される。例えば、ビット線BL1を接地電位とするのであれば、ワード線WL1に正の電位を与えればよい。
【0052】
上記工程により、選択されたメモリセルMC<1,1>に所定電圧が印加され、そのメモリセルMC<1,1>内に電位勾配が生じ、電流パルスが流れる。この電流パルスによって、可変抵抗素子Rは、高抵抗状態から低抵抗状態に変化する。
【0053】
また、この書込み動作時にワード線WL1に与える電圧のパルス幅は、消去動作時に与える電圧のパルス幅よりも長い。すなわち、書込み動作時には、消去動作時よりも長時間に亘ってワード線WL1に電圧が印加される。
【0054】
また、書込み動作時には、非選択のワード線WL2、及び非選択のビット線BL2は、全て同電位にバイアスしておくことが望ましい。また、書込み動作前のスタンバイ時には、全てのワード線WL1、WL2、及び全てのビット線BL1、BL2をプリチャージしておくことが望ましい。
【0055】
[消去動作]
次に、消去動作(リセット動作)について説明する。消去動作において、選択したワード線WL1の電位は、選択したビット線BL1の電位よりも相対的に高く設定される。例えば、ビット線BL1を接地電位とするのであれば、ワード線WL1に正の電位を与えればよい。
【0056】
上記工程により、選択されたメモリセルMC<1,1>に、大電流パルスが流れ、それにより生じるジュール熱、及び残留熱によって、消去動作が実行される。或いは、上記大電流パルスによる印加電圧、若しくは電流エネルギーそのものにより、消去動作が実行される。消去動作においては、可変抵抗素子Rは、低抵抗状態から高抵抗状態に変化する。
【0057】
また、上述したように、この消去動作時にワード線WL1に与える電圧のパルス幅は、書込動作時に与える電圧のパルス幅よりも短い。すなわち、消去動作時には、書込み動作時よりも短時間でワード線WL1に電圧が印加される。以上のように、消去動作時のパルス幅と、書込み動作時のパルス幅とを使い分けることにより、消去動作と書込み動作とを区別して実行することができる。
【0058】
[読出動作]
次に、読出動作について説明する。読出動作において、電流パルス(読出電流)が、選択したビット線BL1から選択したメモリセルMC<1,1>に与えられる。そして、ビット線駆動回路30bにて、ビット線BL1からの電流を読み出し、メモリセルMC<1,1>の抵抗値を測定することにより、読出動作は実行される。ただし、メモリセルMC<1,1>に与える電流パルスは、メモリセルMC<1,1>を構成する材料が抵抗変化を起こさない程度の微小な値とする必要がある。
【0059】
[製造方法]
次に、実施形態に係る不揮発性半導体記憶装置の可変抵抗層63の製造方法について説明する。
【0060】
可変抵抗層63の成膜には、CVD法やスパッタ法などを用いる。CVD法では、炭化水素(CH)系のガスを反応ガスとして用いる。この場合、成膜の条件により、炭素を主成分とする膜中に水素(H)を含有させることができる。
【0061】
また、可変抵抗層63の成膜の際、添加する元素を含むガスを反応ガスに混合することにより、膜中に所望の元素を添加することができる。
【0062】
例えば、炭化水素(CH)系に加えて、シラン(SiH)系、SiH+N、B+N等のガスを所望の材料系を含むガスに酸化シリコン、窒化シリコン、窒化炭素、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム、炭化珪素を混合させることにより、可変抵抗層63は成膜される。
【0063】
例えば、1〜1.6g/cm程度の比較的密度の低い炭素と水素からなる膜を成膜し、その後に酸化シリコン、窒化シリコン、窒化炭素、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム、炭化珪素を成膜し、拡散により混合させることにより、可変抵抗層63は成膜される。ここで、この密度が1g/cmより大きく下回ると、膜として安定に存在することができない。一方、この密度が1.6g/cmより大きく上回ると、膜形成後にシリコン酸化物等の絶縁体を混合することが困難となる。
【0064】
また、可変抵抗層63の成膜の際、炭素(C)を主成分とする膜にシリコン酸化物を含ませることができる。これは、例えば、ALD(原子層堆積:Atomic Layer Deposition)法、若しくは原子半径の小さいプリカーサーを用いたCVD法等で可能である。
【0065】
また、可変抵抗層63の成膜の際、炭素、水素にて構成された膜に窒素をドーピングすることにより窒化炭素を形成することができる。ドーピングする方法としては、熱拡散、イオン注入等を用いることができる。窒化炭素において、窒素の濃度は、10at.%以上が好適であり、濃度は高ければ高い程絶縁性が増す。
【0066】
なお、可変抵抗層63の成膜にCVD法を用いる場合、反応ガスは、アセチレン(C)、プロピレン(C)等の炭化水素系、もしくは常温で液体のプリカーサーを気化して得られる炭化水素等が用いられる。そして、水素、窒素、酸素などを用いて一部反応させて、膜中に添加、もしくは酸化物、もしくは窒化物との混合体が形成可能である。また、キャリアガスであるヘリウム(He)、アルゴン(Ar)、窒素(N)等と所望の元素を含むガスを混合して用いても添加元素の導入が可能である。CVD法には幾つかの方法があるが、プラズマCVD(PECVD)法が比較的低温で成膜することができるため、好適である。プラズマの周波数は、通常商用に用いられる周波数帯(13.56MHz)の他に、さらに低周波数の帯域も可能である。なお、原料に液体のものを用いて、これを気化した後、前述のCVDと同様の方法にて成膜することもできる。この場合には液体の状態で、成膜する成分を混合したり、気化後に他のガスと混合したり、種々バリエーションが取れ、成膜の自由度を高めることも可能である。
【0067】
CVD法により形成された薄膜の電気抵抗率は、成膜条件により、10−3[Ω・cm]のオーダーからそれ以上になる。特に成膜温度には敏感で、成膜温度が低い場合には、成膜温度が高い場合と比較して、高抵抗な膜が得られる。炭素のみでは薄膜形成後のアニール等により、膜の電気抵抗率を下げることは実質的には難しい。もし行うとすれば少なくとも1000℃以上の加熱が必要であり、素子の他の部分へのダメージとなる恐れが非常に高い。一方、本実施形態の炭素(C)に前記のような元素を添加した場合には、成膜時の膜の電気抵抗率を下げ易く、またアニールによる低抵抗化も可能になる。CVD法を用いれば、カーボン・ナノ・チューブ(CNT)も生成でき、もちろん各種添加物を加えることも容易である。CNTについては、塗布法を用いることもできる。
【0068】
可変抵抗層63の成膜にスパッタ法を用いる場合、通常、グラファイト等からなるスパッタリング・ターゲットを不活性ガスによりスパッタする。スパッタガスには通常、アルゴン(Ar)等の不活性ガスが用いられるため、膜中に水素は添加されない。水素を添加する場合には、反応ガスとして、水素若しくは水素を含むガス、例えば上述した炭化水素系のガスを反応ガスに混合するなどして実施される。なお、ターゲットに添加したい元素を混合することが可能であり、これらを用いて膜中に添加することができる。スパッタ法も幾つかの方法があるが、マグネトロン・スパッタが量産性に優れる。グラファイトを主成分とするスパッタリング・ターゲットを用いれば、DCスパッタ法、RFスパッタ法のいずれでも成膜が可能である。添加元素やその量により、電気抵抗が高い材料になることもあるが、このような場合にはRFスパッタ法を用いることができる。スパッタ法により形成された薄膜の電気抵抗率は、成膜条件により、10-1〜10-2[Ω・cm]のオーダーからそれ以上になる。スパッタ法は成膜温度には敏感で、成膜温度が低い場合には比較的高抵抗な膜が得られる。混合体を得るためには、所望の膜の混合体のスパッタリング・ターゲットを用いたり、複数のターゲットを用いたりする、いわゆるコスパッタ法を用いることができる。CVD法では反応してしまう系でも、スパッタ法ならば反応することなく混合体膜が得られる場合もある。通常のスパッタリング法に加えて、イオンアシストやグロー放電する方法等を用いれば、グラファイト、無定形炭素、ダイヤモンド・ライク・カーボン(DLC)、CNT等の状態、もしくはこれらの混合状態を得ることができる。
【0069】
[実施例]
次に、スイッチング特性を評価するために行なった実施例について説明する。実施例に用いるサンプルとして、図7に示す積層構造を有するメモリ層60aを作製した。
【0070】
メモリ層60aは、図7に示すように、基板40a上に、第1電極層62a、可変抵抗層63a、第2電極層64a、導電層65a、及び絶縁層(SiO)66aを有する。
【0071】
第1電極層62aは、基板40a上に形成されている。可変抵抗層63aは、第1電極層62a上から積層方向に延びる柱状に形成されている。絶縁層66aは、第1導電層62aの上に、可変抵抗層63aの側面を取り囲むように形成されている。第2電極層64aは、可変抵抗層63a及び絶縁層66a上に形成されている。導電層65aは、第2電極層64aの上に形成されている。
【0072】
また、第1電極層62a、及び第2電極層64aは、配線(W,Al)66a、67aにより測定パッド68a、69aに接続されている。測定パッド68a、69aは、100μmφ程度の径を有する。
【0073】
スイッチング特性を評価は、プローブ対を用いて行なった。プローブ対の先端は、10nm以下に先鋭化されている。先ず、プローブ対を各実施例の測定パッド68a、69aに接触させて、書込み/消去に用いられる電圧を印加した。書込みは、例えば、10nsec〜100msec幅で、1〜15Vの電圧パルスを印加することにより行なった。消去は、例えば、10nsec〜100msec幅で、0.2〜15Vの電圧パルスを印加することにより行なった。なお、測定を行うサンプルの材料及び構造により、上記範囲内で、書込み及び消去のパルス幅の最適値は異なる。また、書込み及び消去のパルス幅は、スイッチング回数により若干異なる場合もあり、測定される特性としては、最適化された条件が用いられる。半導体パラメータアナライザーのようにDC的な評価も可能である。
【0074】
スイッチング特性を評価は、上記の書込み又は消去の後に、読み出しを行なうことにより実行した。読み出しは、プローブ対にて10〜1000nsec幅、0.1〜0.5V程度の電圧パルスを印加し、メモリ層60aの抵抗値、電流、電圧等を測定するものである。なお、スイッチング特性の評価の際、必要に応じて保護抵抗などの付随する回路を用いることも可能である。
【0075】
[第1実施例]
第1実施例に係るメモリ層60aにおいて、可変抵抗層63aは、炭素(C)及び水素(H)からなる化合物S1と、絶縁体であるシリコン窒化物との混合体にて構成されている。
【0076】
可変抵抗層63aの径φは、0.25μmであり、その高さHは、50nmである。
【0077】
化合物S1中の水素の濃度は、50at.%である。混合体における化合物S1の濃度は、34vol.%である。これら濃度の測定は、例えば透過型電子顕微鏡(TEM)を用いた断面観察等により行われる。
【0078】
第1電極層62a、及び第2電極層64aは、TiNにて構成されている。
【0079】
第1実施例において、スイッチング特性を評価した。その結果、リセット状態(高抵抗状態)の抵抗値は、10Ω台、セット状態(低抵抗状態)の抵抗値は、10Ω台であった。これは、誤スイッチ確率を低く抑え、且つ低消費電力であることを意味する。また、サイクル寿命は、1万サイクル以上を実現できる。また、セット状態(低抵抗状態)の抵抗値は、10Ω台であり、セル電流は適正な範囲に抑えられ、消費電力も抑えられる。
【0080】
[第2実施例]
第2実施例に係るメモリ層60aにおいて、可変抵抗層63aは、炭素(C)及び水素(H)からなる化合物S1と、絶縁体であるシリコン窒化物との混合体にて構成されている。
【0081】
可変抵抗層63aの径φは、0.15μmであり、その高さHは、20nmである。
【0082】
化合物S1中の水素の濃度は、15at.%である。混合体における化合物S1の濃度は、40vol.%である。
【0083】
第1電極層62aは、TiSiにて構成されている。第2電極層64aは、TiNにて構成されている。
【0084】
第2実施例において、スイッチング特性を評価した。その結果、リセット状態の抵抗値は、10Ω台、セット状態の抵抗値は、10Ω台であった。これは、誤スイッチ確率を低く抑え、且つ低消費電力であることを意味する。また、セット状態(低抵抗状態)の抵抗値は、10Ω台であり、セル電流は適正な範囲に抑えられ、消費電力も抑えられる。
【0085】
[第3実施例]
第3実施例に係るメモリ層60aにおいて、可変抵抗層63aは、炭素(C)及び水素(H)からなる化合物S1と、絶縁体であるシリコン窒化物との混合体にて構成されている。
【0086】
可変抵抗層63aの径φは、0.25μmであり、その高さHは、10nmである。
【0087】
化合物S1中の水素の濃度は、10at.%、15at.%、55at.%、65at.%のいずれかである。混合体における化合物S1の濃度は、30vol.%、50vol.%、70vol.%のいずれかである。
【0088】
第1電極層62aは、TiNにて構成されている。第2電極層64aは、Wにて構成されている。
【0089】
第3実施例において、スイッチング特性を評価した。その結果、リセット状態の抵抗値は、10Ω台、セット状態の抵抗値は、10Ω台であった。これは、誤スイッチ確率を低く抑え、且つ低消費電力であることを意味する。また、セット状態(低抵抗状態)の抵抗値は、10Ω台であり、セル電流は適正な範囲に抑えられ、消費電力も抑えられる。
【0090】
なお、化合物S1中の水素の濃度を、10at.%未満、65at.%以上とする比較例、混合体における化合物S1とシリコン窒化物との濃度を、30vol.%未満、70vol.%以上とする比較例について、スイッチング特性を評価した。しかしながら、これらの比較例においては、第3実施例のような良好な結果を得ることはできなかった。また、化合物S1中の水素の濃度を10at.%、又は65at.%とした場合よりも、化合物S1中の水素の濃度を15at.%、又は55at.%とした方が、スイッチし易く、且つより低電圧、低電流で動作した。よって、化合物S1中の水素濃度は、15at.%から55at.%までの範囲がより好適である。
【0091】
[第4実施例]
第4実施例に係るメモリ層60aにおいて、可変抵抗層63aは、炭素(C)及び水素(H)からなる化合物S1と、絶縁体であるシリコン窒化物との混合体にて構成されている。
【0092】
可変抵抗層63aの径φは、0.15μmであり、その高さHは、50nmである。
【0093】
化合物S1中の水素の濃度は、15at.%である。混合体における化合物S1の濃度は、55vol.%である。
【0094】
第1電極層62aは、以下に示す材料A1のいずれかにて構成され、第2電極層64aは、以下に示す材料A2のいずれかにて構成されている。
【0095】
(材料A1、材料A2)=(TiN、W)、(TiN、WN)、(TiSi、W)、(TiSi、WN)、(TiSi、TiN)、(W、TiSi)、(W、WN)、(WN、W)、(WN、TiSi)、(WN、TiN)
【0096】
第4実施例において、スイッチング特性を評価した。その結果、リセット状態の抵抗値は、10Ω台、セット状態の抵抗値は、10Ω台であった。これは、誤スイッチ確率を低く抑え、且つ低消費電力であることを意味する。また、セット状態(低抵抗状態)の抵抗値は、10Ω台であり、セル電流は適正な範囲に抑えられ、消費電力も抑えられる。
【0097】
[第5実施例]
第5実施例に係るメモリ層60aにおいて、可変抵抗層63aは、炭素(C)及び水素(H)からなる化合物S1と、窒化炭素、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、アルミニウム酸化物とのそれぞれの混合体にて構成されている。
【0098】
可変抵抗層63aの径φは、0.25μmであり、その高さHは、10nmである。
【0099】
化合物S1中の水素の濃度は、50at.%である。混合体における化合物S1の濃度は、50vol.%である。
【0100】
第1電極層62aは、TiNにて構成されている。第2電極層64aは、Wにて構成されている。
【0101】
第5実施例において、スイッチング特性を評価した。その結果、リセット状態の抵抗値は、10Ω台、セット状態の抵抗値は、10Ω台であった。これは、誤スイッチ確率を低く抑え、且つ低消費電力であることを意味する。また、セット状態(低抵抗状態)の抵抗値は、10Ω台であり、セル電流は適正な範囲に抑えられ、消費電力も抑えられる。
【0102】
[第6実施例]
第6実施例に係るメモリ層60aにおいて、可変抵抗層63aは、炭素(C)及び水素(H)からなる化合物S1と、炭化珪素(炭化シリコン、遊離炭素を含む)、又は炭化窒化シリコンとのそれぞれの混合体にて構成されている。遊離炭素を含む炭化珪素の組成としては、Si:C=1:1〜2が好適である。Cが1以下の場合には、Siの量が多くなるため抵抗が低下し、Cが2以上の場合には、遊離炭素の組織のコントロールが難しく、膜全体としての制御が難しい。また、炭化窒化シリコンの組成としては、SiC:N=1:0.1〜0.5が好適である。Nが0.1以下の場合にはSiCと同等になり、Nが0.5以上では窒化シリコンと同様になる。炭化窒化シリコンは、炭化珪素と窒化シリコンとの混合体もしくは化合物と表現することもできる。混合体全体中の水素は、化合物S1のみに帰属すると限定されるものではなく、例えば、炭化珪素や炭化窒化シリコンや帰属しても良い。
【0103】
可変抵抗層63aの径φは、0.25μmであり、その高さHは、10nmである。
【0104】
化合物S1中の水素の濃度は、50at.%である。混合体における化合物S1の濃度は、50vol.%である。
【0105】
第1電極層62aは、TiNにて構成されている。第2電極層64aは、Wにて構成されている。
【0106】
第6実施例において、スイッチング特性を評価した。その結果、リセット状態の抵抗値は、10Ω台、セット状態の抵抗値は、10Ω台であった。これは、誤スイッチ確率を低く抑え、且つ低消費電力であることを意味する。また、セット状態(低抵抗状態)の抵抗値は、10Ω台であり、セル電流は適正な範囲に抑えられ、消費電力も抑えられる。
【0107】
[実施形態に係る不揮発性半導体記憶装置の効果]
実施形態に係る不揮発性半導体記憶装置において、可変抵抗層63中での第1化合物G1の濃度は、30vol.%以上であり且つ70vol.%以下である。これにより、不揮発性半導体記憶装置は、従来と比較して低電圧で書込み又は消去可能とされている。また、上記構成により、書込み/消去状態の抵抗値の差は、10以上を確保することができる。すなわち、不揮発性半導体記憶装置は、消費電力を低減させ且つ誤動作を抑制したものである。
【0108】
なお、実施形態に係る不揮発性半導体記憶装置は、図2〜図4に示すクロスポイント型の構造を有している。これにより、各々のメモリセルMCは、個別にMOSトランジスタを必要としないため、不揮発性半導体記憶装置は、高集積化可能である。
【0109】
[その他実施形態]
以上、不揮発性半導体記憶装置の一実施形態を説明してきたが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲内において種々の変更、追加、置換等が可能である。
【0110】
例えば、本実施形態に係る不揮発性半導体記憶装置は、パーソナルコンピュータにて読み込み可能な記録媒体として利用可能である。本実施形態を記録媒体として利用すれば、既存のハードディスクやフラッシュメモリよりも高記録密度及び低消費電極を実現することができる。
【0111】
例えば、本実施形態において、メモリ層60は、ダイオード層61を有する。しかしながら、可変抵抗層63が、電圧の印加方向によって電気的抵抗を変化させる構成であれば、ダイオード層61を省略してもよい。
【0112】
また、本実施形態において、メモリ層60は、可変抵抗層63の上面に第2電極層64を有する。しかしながら、可変抵抗層63が、ジュール熱でその抵抗を変化させる構成であれば、可変抵抗層63と第2電極層64の間にヒータ層を設けても良い。ヒータ層は、印加電圧により発熱する層である。
【符号の説明】
【0113】
10…メモリセルアレイ、 20a…ワード線選択回路、 20b…ワード線駆動回路、 30a…ビット線選択回路、 30b…ビット線駆動回路、40…基板、 50…第1導電層、 60…メモリ層、 70…第2導電層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気的に書き換え可能なメモリセルを備え、
前記メモリセルは、
印加される電圧及び通電される電流の少なくともいずれかによって電気抵抗率を変化させる可変抵抗層を備え、
前記可変抵抗層は、
炭素(C)、及び以下に示される元素群G1から選ばれる少なくともいずれか1種類以上の元素を含む第1化合物と、
以下に示される化合物群G2から選ばれる少なくともいずれか1種類以上の第2化合物と
を含む混合体にて構成され、
前記可変抵抗層中での前記第1化合物の濃度は、30vol.%以上であり且つ70vol.%以下である
ことを特徴とする不揮発性半導体記憶装置。
(元素群G1:水素(H)、ボロン(B)、窒素(N)、シリコン(Si)、及びチタン(Ti)
化合物群G2:酸化シリコン(SiO)、酸窒化シリコン(SiON)、窒化シリコン(SiN)、窒化炭素(C)、窒化ホウ素(BN)、窒化アルミニウム(AlN)、酸化アルミニウム(Al)、炭化珪素(SiC))
【請求項2】
前記元素群G1から選ばれる元素が、
(1)ボロン(B)、窒素(N)、シリコン(Si)、及びチタン(Ti)の場合は、前記第1化合物中での前記元素群G1の濃度が、0.01〜20at.%であり、
(2)水素(H)の場合は、前記第1化合物中での前記元素群G1の濃度が、10〜65at.%である
ことを特徴とする請求項1記載の不揮発性半導体記憶装置。
【請求項3】
前記第1化合物中での前記水素(H)の濃度が15〜55at.%である
ことを特徴とする請求項2記載の不揮発性半導体記憶装置。
【請求項4】
前記第2化合物の電気抵抗率は、10Ω・cm以上である
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の不揮発性半導体記憶装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−14640(P2011−14640A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−155863(P2009−155863)
【出願日】平成21年6月30日(2009.6.30)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】