説明

不揮発性抵抗変化素子を含む半導体集積回路とその動作方法

【課題】出力値を変化させる不揮発性抵抗変化素子の状態を、出力動作を止めることなく変化させることができる集積回路を提供する。
【解決手段】不揮発性抵抗変化素子(10)の抵抗を変化させるための書き込み端子(11)と、該抵抗を読み出すための読み出し端子(12)とを別々に有し、電気的にカップリングしていない該書き込み端子と読み出し端子とを用いて書き込み動作と読み出し動作を同時にできる不揮発性抵抗変化素子を有する回路を含む集積回路(50)である。該回路には該不揮発性抵抗変化素子の抵抗値に応じた出力値を出力する出力端子(22)と、該抵抗値を変化させる入力端子(11)を少なくとも有する。該出力端子からの出力の一部を、該入力端子に帰還させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不揮発性抵抗変化素子を含む半導体集積回路とその動作方法に関する。
【背景技術】
【0002】
製造技術の発達による回路の集積規模が増大するに従って待機電力の増大が問題となっている。待機時に回路のクロックを止めるクロックゲーティングなどさまざまな手法が採られているが、スタンバイリークなどを根本的になくすためには、集積回路を使わない時に電源を落とし、必要になった際に電源を投入して即座に動作状態になることが最も望ましい。
【0003】
このような課題において、DRAMやSRAMなどの揮発性素子が設定データの保持に用いられている場合は、電源をオンからオフに切り返す際に設定データを一度メモリに退避させ、また、電源をオフからオンに切り替える際に、逆にメモリからデータをロードする必要がある。このような起動前後のデッドタイムを抑えるために、動作回路の近傍、もしくは、動作回路内に不揮発性素子を配置してその場にデータを留めておくことでデータの退避・ロードの時間を短縮することができる。
【0004】
以下、発振周波数可変回路を例に説明する。発振周波数可変回路は、クロック発生源として集積回路の処理速度の調整に使われるだけでなく、基準周波数発振器と差分周波数検知器を組み合わせて周波数ロック回路(FLO)を構成して非同期型シリアル通信などのタイミング調整にも使われる。図4は、不揮発メモリを外部に設置している従来技術のRC発振回路(発振周波数可変回路)(従来回路1、特許文献1)である。
【0005】
これに対して、発振周波数可変回路に負荷するバイアスライン上、もしくは、発振周波数可変回路内にある抵抗を不揮発抵抗変化素子に置き換えることで、図5に示すようなロードフリーの不揮発性周波数可変回路が提案されている(従来回路2、特許文献2)。
【0006】
また、特許文献3には、不揮発性抵抗変化素子の抵抗値を半導体装置内の節点の電位又は電流と比較し、その結果に基づいて抵抗値を変化させる半導体装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−229326号公報
【特許文献2】WO2008/081742号公報
【特許文献3】WO2008/102583号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来回路2では、抵抗を変化させる書き込み動作と、変化した抵抗を読みだす読み出し動作(この回路では発振動作に対応)を同時にはできない。このため、基準周波数との差分を検知する回路と、その情報を発振回路に戻すフィードバック回路を追加しても、連続的な動作(例えば周波数ロックなど)をさせることができない。
【0009】
即ち、これまでに提案されている不揮発性抵抗変化素子を含むアナログ回路では、電源のオン・オフに対して早い立ち上がりが可能である半面、出力信号に対するフィードバックを受けたとしても一度動作を止めなければ出力値を変更できないという問題がある。また、仮に出力を止めることなしに出力値を変更できる場合でも、抵抗を変化させる書き込み動作によって出力にノイズが乗ってしまう問題が予想される。特許文献3に開示された半導体装置においては、抵抗値の読み出し端子と書き込み端子が電気的にカップリングしており、書き込み、読み出し用の電圧が他の端子に電気的影響を与える可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の視点において、本発明に係る(半導体)集積回路は、不揮発性抵抗変化素子の抵抗を変化させるための書き込み端子と、該抵抗を読み出すための読み出し端子とを別々に有し、電気的にカップリングしていない該書き込み端子と読み出し端子とを用いて書き込み動作と読み出し動作を同時にできる不揮発性抵抗変化素子を有する回路を含む。該回路には該不揮発性抵抗変化素子の抵抗値に応じた出力値を出力する出力端子と、該抵抗値を変化させる入力端子を少なくとも有する。そして該出力端子からの出力の一部を、該入力端子に帰還させることができる。
【0011】
第2の視点において、本発明に係る(半導体集積)回路の動作方法は、不揮発性抵抗変化素子の抵抗を変化させる書き込み端子と、該抵抗を読み出す端子とを別々に有し、電気的にカップリングしていない該書き込み端子と読み出し端子とを用いて書き込み動作と読み出し動作を同時にできる不揮発性抵抗変化素子を含み、該不揮発性抵抗変化素子の抵抗値に応じた出力値を出力する出力端子と、該抵抗値を変化させる入力端子を少なくとも有する回路の動作方法に関する。この方法は、出力端子からの出力の一部を入力端子に帰還させるステップを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
上記第1の視点に係る構成により、出力値を変化させる不揮発性抵抗変化素子の状態を、出力動作を止めることなく変化させることができる集積回路を提供することができる。また、書き込み用端子と読み出し用端子が独立しているため、相互に電気的影響を与えることが少ない。
【0013】
また上記第2の視点に係る方法により、出力値を変化させる不揮発性抵抗変化素子の状態を、出力動作を止めることなく変化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の1つの実施例に係る回路模式図である。
【図2】図1の構成をより具体化したRC発振回路の回路模式図である。
【図3】本発明の他の実施例に係る回路模式図である。
【図4】従来技術のRC発振回路の回路模式図である。
【図5】従来技術の不揮発性周波数可変回路である。
【図6】本発明に用いる不揮発性抵抗変化素子の構成の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る集積回路は、抵抗を変化させる書き込み端子と、抵抗を読み出す端子を別々に有する(即ち、書き込み動作と読み出し動作を同時にできる)不揮発性抵抗変化素子を用いることにより、出力を止めることなく出力値が変化するように不揮発性抵抗変化素子の抵抗値を書き換えることができる。このため出力値の一部を帰還して、随時、不揮発性抵抗変化素子の抵抗値を変える入力端子に戻すことが可能となる。従って、例えば周波数ロック回路のように発振器と積分器が絶え間なく相互に入出力を繰り返す回路の設定値も不揮発化することができる。
【0016】
抵抗値で出力を制御している回路の抵抗を不揮発性抵抗素子に変えた場合は、トランジスタのゲートを介して抵抗を変化させる場合に比べてデータをロードする必要がない。また、帰還によって状態が随時変わっているため、非同期的に電源を落とすことができる。このため、不測の事態で電源が落ちた場合も落ちる直前の状態を保持することができる。
【0017】
抵抗を変化させる書き込み端子と、抵抗を読み出す端子を別々に有する不揮発性抵抗変化素子は、フラッシュメモリのような3端子構造でもよい。しかし、素子の抵抗を変化させるための電圧印加条件(ゲートに高い電圧をかける)と、素子を適当な抵抗体(ソース・ドレイン間抵抗)として利用するときの電圧印加条件が大きく異なる。このため、書き込みと読み出しを同時にする場合は、動作範囲が極めて狭くなる。この点から、書き込み端子と抵抗読み出し端子が電気的に分離されている磁性を利用した、不揮発性磁気抵抗変化素子が望ましい。この場合は、抵抗を変化させるための電圧条件と、抵抗体として利用するときの電圧条件を別々に最適化できる。
【0018】
また、さらに望ましくは書き込み動作によって発生する電流、及びそれによって発生する磁界も読み出す動作に影響を与えない不揮発性磁気抵抗変化素子を用いることである。この不揮発性抵抗変化素子は、電流で磁化状態を変えることができる磁性体と特定の方向Aの磁界を検知して抵抗が変化する抵抗体を組み合わることで実現できる。
【0019】
磁性体の磁化状態を変化させるために流す電流によって発生する磁場の方向がAとは垂直になるように抵抗体と磁性体を配置することで、抵抗値を変えるときの動作電流によって発生するノイズ耐性をあげることができる。不揮発性磁気抵抗変化素子は、書き換え可能回数が10以上と非常に多い。従って、常に設定条件を書き換えるフィードバック回路にも用いることができる。
【0020】
このような本発明に係る実施形態をいくつか整理すると、第1の視点において、前記不揮発性抵抗変化素子は、電流で磁化状態を変化させることができる磁性体と特定の方向の磁界を検知して抵抗が変化する抵抗体を組み合わせた電流誘起磁壁移動型抵抗変化素子であり、該磁性体の磁化状態を変化させるための電流により生じる磁場の方向が該抵抗体の検知する磁界の特定方向と直交するように構成した抵抗変化素子であることが好ましい。
【0021】
これにより、書き込み動作によって発生する電流、及びそれによって発生する磁界も読み出す動作にほとんど影響を与えない。したがってさらに信頼性の高い回路を形成することができる。即ち、抵抗を変化させる書き込み動作によって出力にノイズが乗ることを抑制することができる。
【0022】
また、前記不揮発性抵抗変化素子は、垂直磁気異方性を有する強磁性体から構成され、第1磁化固定領域と、第2磁化固定領域と、該第1磁化固定領域及び該第2磁化固定領域に接続する磁化自由領域と、を備える第1磁化自由層と、該第1磁化自由層の近傍に設けられた非磁性層と、強磁性体から構成され、該非磁性層上に設けられたリファレンス層と、該第1磁化固定領域の近傍に設けられた第1磁化固定層群と、該第1磁化固定層群と該第1磁化固定領域との間、又は該第1磁化固定層群内に挟まれて設けられた第1遮断層と、を具備することが好ましい。
【0023】
また、前記入力端子に帰還させる前記出力端子からの出力量を(帰還前に)調整する回路をさらに含むことが好ましい。
【0024】
また、前記不揮発性抵抗変化素子を有する回路は、前記出力端子からの出力の一部を帰還させる前記入力端子のほかに、信号を入力する第2の入力端子を含むことができる。
【0025】
また、前記出力端子からの出力は、前記不揮発性抵抗変化素子の抵抗値によって周波数が変化する信号、もしくは前記不揮発性抵抗変化素子の抵抗値によって大きさが変化する電圧値又は電流値であることが好ましい。
【0026】
また、前記不揮発性抵抗変化素子を複数有することが好ましい。
【0027】
また、前記集積回路は発振周波数可変回路又は周波数ロック回路であることが好ましい。
【0028】
第2の視点において、前記入力端子に帰還させる前記出力端子からの出力量を(帰還前に)調整するステップを含むことが好ましい。
【0029】
また、前記出力端子からの出力は、前記不揮発性抵抗変化素子の抵抗値によって周波数が変化する信号、もしくは前記不揮発性抵抗変化素子の抵抗値によって大きさが変化する電圧値又は電流値であることが好ましい。
【実施例】
【0030】
(実施例1)
図1に本発明の1つの実施例に係る回路模式図を示す。帰還回路15を有する集積回路は、書き込み動作と読み出す動作を同時にできる不揮発性抵抗変化素子を含む回路17を有する。不揮発性抵抗変化素子を含む回路17の出力(output)は不揮発性抵抗変化素子の抵抗値に応じた値を持ち、出力の一部はその抵抗値を変化させる入力(input)端子に帰還される。
【0031】
図1をより具体化した例を図2に示す。図2は、本発明の一実施例に係る、書き込み動作と読み出し動作を同時にできる不揮発性抵抗変化素子10を含む集積回路(RC発振回路)50である。このRC発振回路50はインバータ回路20を含み、その出力端子22からの出力をカウンター回路5で調整して、不揮発性抵抗変化素子10の磁化状態を変化させるための入力端子11に帰還する。
【0032】
図2に示す回路で用いた不揮発性抵抗変化素子10は、抵抗を変化させる書き込み端子11(11’)と、抵抗を読み出す端子12(12’)を別々に有する磁壁移動型の抵抗変化素子を用いることが好ましい。図2からわかるように、この書き込み端子と読み出し端子は電気的にカップリングしていない。この抵抗変化素子10は抵抗体2と磁性体1からなる。抵抗体2の抵抗値は、ある特定の方向Aからの磁場によって変化する。抵抗体2と磁性体1の距離と位置は、抵抗体2に磁性体1からの磁場Aが届く範囲であればよい。従って、複数の抵抗体2を一つの磁性体1に用いてよく、複数の抵抗値を帰還回路に利用して抵抗値の読み出し精度を上げてもよい。
【0033】
また、関連技術であるWO2011/052475号公報(基礎出願:特願2009−245947号)には、抵抗を変化させる書き込み端子と、抵抗を読み出す端子とを別々に有した不揮発性抵抗変化素子が例示されている。不揮発性抵抗変化素子10は、このような、例えば図6に示す構造を有することが好ましい。図6に示す不揮発性抵抗変化素子の構造について以下に説明する。
【0034】
図6(a)に示すように、この不揮発性抵抗変化素子は、垂直磁気異方性を有する強磁性体から構成され、第1磁化固定領域60aと、第2磁化固定領域60cと、第1磁化固定領域及び第2磁化固定領域に接続する磁化自由領域60bと、を備える第1磁化自由層60と、第1磁化自由層60の近傍に設けられた非磁性層66と、強磁性体から構成され、非磁性66層上に設けられたリファレンス層67と、第1磁化固定領域60aの近傍に設けられた第1磁化固定層群62と、第1磁化固定層群62と第1磁化固定領域60aとの間、又は第1磁化固定層群内に挟まれて設けられた第1遮断層61と、を具備する。
【0035】
さらに、第2磁化固定領域60cと非磁性層66との間に設けられたコンタクト層64と第2磁化自由層65を有する。また、コンタクト層64の第1磁化自由層60を挟んだ反対側に第2磁化固定層群63を有する。
【0036】
図6(b)は“0”状態での各層の磁化の状態が矢印で示されており、図6(c)は“1”状態での磁化の状態が矢印で示されている。なお、第1磁化固定領域60a、第2磁化固定領域60c、リファレンス層67の磁化はそれぞれz軸の正方向、負方向、x軸正方向に固定されているものとして描かれているが、これらの間には任意性がある。この任意性については自明であるので省略する。
【0037】
いま、図6(b)に示されるような磁化自由領域60bが上方向に磁化した“0”状態においては第2磁化自由層65の磁化は、磁化自由領域60bの上方向の磁化によって生ずる漏れ磁束によってx軸正方向を向く。これは第2磁化自由層65が磁化自由領域60bの上側(z軸正の方向)に配置され、かつ第2磁化自由層65の重心が磁化自由領域60bに対してx軸の正の方向にずれて設けられているためである。これによって第2磁化自由層65、リファレンス層67の磁化は平行となり、この磁気トンネル接合(MTJ)は低抵抗状態となる。DWは磁壁を示す。
【0038】
一方、図6(c)に示されるような磁化自由領域60bが下方向に磁化した“1”状態においては第2磁化自由層65の磁化は、磁化自由領域60bの下方向の磁化によって生ずる漏れ磁束によってx軸負方向を向く。これによって第2磁化自由層65、リファレンス層67の磁化は反平行となり、このMTJは高抵抗状態となる。かくして磁化自由領域60bの垂直方向の磁化として記憶された情報は、面内磁化を有する第2磁化自由層65の磁化に伝達され、面内磁化から構成されるMTJによって読み出すことができる。
【0039】
面内磁化によって構成されるMTJでは一般的に高い磁気抵抗効果比(MR比)を得ることができる。これによって大きな読み出し信号を得ることができる。なお、第2磁化自由層65、リファレンス層67は面内方向の磁気異方性を有する材料により構成される。具体的にはCo−Fe−Bなどが例示される。また非磁性層66は非磁性体により構成されることが好ましい。具体的にはMg−Oなどが例示される。
【0040】
図2に戻って、抵抗体2の抵抗を変化させる書き込み動作の影響を少なくするために、磁性体1(磁化状態は上向き)の磁化状態を変化させるために流す書き込み電流(current)によって発生する磁場の方向がAとは垂直になるように抵抗体2と磁性体1を配置することがより望ましい。このように配置することで、磁性体1の磁化状態を変えるためにパルス状の電流を印加しても、抵抗体2の読み出し電流には容量とインダクタンスのカップリングからくるノイズが入りにくくなる。
【0041】
磁性体1の磁化状態は、下部の2端子の流す方向、および、電流量によって変化する。磁性体1の磁化状態は、磁性体全体で一度に変化するのではなく、磁区を形成し、書き込み動作によって磁区状態が連続的に変化する。このため磁性体1からの磁界で抵抗が変化する抵抗体2の抵抗値も2値ではなくその間の値でアナログ的により細かい精度で設定でき、帰還形のアナログ回路にも利用することができる。
【0042】
磁性体1の磁化状態、および、抵抗体2の抵抗値は電源を切った後も保持される。従って、回路をあらたに動作させる場合に、外部のメモリからデータをロードせずに、記憶された抵抗値を反映した出力値を素早く出すことができる。抵抗体2の抵抗値に反映した出力値の一部は帰還回路を経て回路の入力端子に戻される。入力端子から入った信号によって、不揮発性抵抗変化素子10の抵抗値は再度変化する。
【0043】
不揮発性抵抗変化素子10は、抵抗を変化する書き込み端子と抵抗を読み出す端子を別々に有しているため、回路内で不揮発性抵抗変化素子10に対する結線を変えるような動作はなく、出力を止めなくてもよい。また、状態の書き換えが常に行われているため、不慮の事態で電源が落ちた場合でもすぐに停電前の状態に復旧することができる。
【0044】
抵抗値を反映する出力の形態は特に限定するものではなく、その電圧および電流の絶対値でもよく、周波数成分でもよい。出力、および、出力に対する帰還は随時行っている必要はない。出力が所望の値になった場合に、出力、および、出力に対する帰還を止めてもよい。出力の一部を入力に戻す帰還回路の形態は特に限定するものではなく、アナログ・デジタル変換を含んでいてもよい。
【0045】
本実施例では抵抗体2は、複数段のインバータ3を奇数個直列接続したインバータ回路20の入力端子21と出力端子22に接続する。また、インバータ回路20の入力端子、もしくは、出力端子には、キャパシタンス4の一方の端子を接続する。キャパシタンス4のさらに片側は接地電位に落とす。インバータ回路20の出力側がhigh(奇数段のため入力側はlow)になったとき、入力側をlowからhighにするまでの時間は、並列接続したキャパシタンス4の充電にかかる時間で支配される。充電時間は、抵抗体2の抵抗が大きくなれば流れる電流が減るため長くなり、また、逆に抵抗が大きくなれば短くなる。インバータ回路20の出力側がlow(奇数段のため入力側はhigh)になったとき、入力側をhighからlowにするまでの放電時間も同様に抵抗値によって変化する。このようにインバータ回路20と抵抗体2を直列、かつ、リング状にした回路は発振器として機能し、その発振周波数は、抵抗体2の抵抗を変えることで変化する。
【0046】
発振の出力先をカウンター回路5に入力し、そのカウンター値に応じて磁性体1への書き込み電流値(current)を変化させる。書き込み電流値の変化によって磁性体1の磁化状態は変化し、抵抗体2における磁性体1からの磁場が変化し、抵抗体2の磁気抵抗効果によって抵抗が変化する。この一連の動作によって、RC発振回路50の出力端子51にはフィードバックが常にかかるようになっている。
【0047】
書き込みをするために、抵抗体2の入出力端子を切り替える必要はないため、発振を止めずに、発振周波数を変えることができる。また、書き込みによる出力端子への電流・磁場の影響は、小さく、インダクタンスのカップリングからくるノイズが入りにくい。入力へのノイズは、出力の発振周波数を一時的に変化させるため、フィードバック回路を通して、さらに入力へのノイズが大きくなる。従って、入出力ノイズが抑えられることで、不要な発振が抑えられ、回路全体が安定するのも早くなる。
【0048】
カウンター値は、基準周波数をもつ発振器の周波数カウンターと比較させた場合、これらの回路は周波数ロック回路として機能させることができる。また、抵抗体2の抵抗は、磁性体1と同様不揮発である。このため、電源を切り、再度立ち上げた後も、電源を切る前と同じ周波数から発振させることができる。従って、発振回路を使わないときは、こまめに電源を切ることができるため、待機電力を抑えることができる。
【0049】
(実施例2)
図2で示したRC発振回路50のうち、不揮発性抵抗変化素子を含む回路(カウンター回路5とその出力端子51を除く部分)は発振回路であって自ら出力値を出すことのできる能動素子であったが、例えば図1に示す不揮発性抵抗変化素子を含む回路17は、不揮発性抵抗変化素子とキャパシタンスからなるRCフィルタなどの受動回路であってもよい。すなわち、信号源自体は回路17が含む必要はない。従って、図1に示すように回路17の入力端子は必ずしも1つに限る必要はなく、帰還回路15からの出力以外に信号を入力する第2の入力端子を持っていてよい。例えば、図3に示すように受信回路19からの出力をRCフィルタ回路17の第2の入力端子に入力し(input 2)、回路17のフィルタ機能を通して帰還回路15に出力し、回路15内での信号の一部を帰還して回路17の第1の入力端子から入力する(input 1)形態をとってもよい。
【0050】
(実施例3)
図2に示すように構成、配置された不揮発性抵抗変化素子10をさらにアレイ状に並べてメモリセルとして利用する(図示せず)。磁性体1に状態を書き込む際に同時に、抵抗体2の抵抗をモニターすることで、書き込みたいデータが実際に磁性体1に書き込まれたかどうか(ベリファイ動作)をオンタイムで確認できる。抵抗体2の読み出し電流には容量とインダクタンスのカップリングからくるノイズが入りにくくなる。このため、抵抗のモニター値を読み間違えることがないため正確なベリファイが可能である。
【0051】
また、正常な書き込み動作を確認後に、書き込み動作を止める回路を追加することで、無駄な書き込み時間を低減できる。従って、ベリファイ動作を含むメモリセル全体の書き込み処理を高速化できる。また、無駄な書き込み時間が減ることで、書き込み動作によるセルへの負荷が最小限に抑えられるため、セルの信頼性も向上する。
【0052】
以上、本発明を上記実施形態に即して説明したが、本発明の全開示(請求の範囲及び図面を含む)の枠内において、さらにその基本的技術思想に基づいて、実施例ないし実施例の変更・調整が可能である。また、本発明の請求の範囲の枠内において種々の開示要素の多様な組み合わせないし選択が可能である。すなわち、本発明は、請求の範囲及び図面を含む全開示、技術的思想にしたがって当業者であればなし得るであろう各種変形、修正を含むことは勿論である。
【符号の説明】
【0053】
1 磁性体
2 抵抗体
3 インバータ
4 キャパシタンス
5 カウンター回路
10 不揮発性抵抗変化素子
11 入力端子
15 帰還回路
17 不揮発性抵抗変化素子を含む回路
19 受信回路
20 インバータ回路
50 RC発振回路
51 出力端子
60 第1磁化自由層
60a 第1磁化固定領域
60b 磁化自由領域
60c 第2磁化固定領域
61 第1遮断層
62 第1磁化固定層群
63 第2磁化固定層群
64 コンタクト層
65 第2磁化自由層
66 非磁性層
67 リファレンス層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不揮発性抵抗変化素子の抵抗を変化させるための書き込み端子と、該抵抗を読み出すための読み出し端子とを別々に有し、電気的にカップリングしていない該書き込み端子と読み出し端子とを用いて書き込み動作と読み出し動作を同時にできる不揮発性抵抗変化素子を有する回路を含み、該回路には該不揮発性抵抗変化素子の抵抗値に応じた出力値を出力する出力端子と、該抵抗値を変化させる入力端子を少なくとも有し、該出力端子からの出力の一部を該入力端子に帰還させることができることを特徴とする集積回路。
【請求項2】
前記不揮発性抵抗変化素子は、電流で磁化状態を変化させることができる磁性体と特定の方向の磁界を検知して抵抗が変化する抵抗体を組み合わせた電流誘起磁壁移動型抵抗変化素子であり、該磁性体の磁化状態を変化させるための電流により生じる磁場の方向が該抵抗体の検知する磁界の特定方向と直交するように構成した抵抗変化素子であることを特徴とする、請求項1に記載の集積回路。
【請求項3】
前記不揮発性抵抗変化素子は、
垂直磁気異方性を有する強磁性体から構成され、第1磁化固定領域と、第2磁化固定領域と、該第1磁化固定領域及び該第2磁化固定領域に接続する磁化自由領域と、を備える第1磁化自由層と、
該第1磁化自由層の近傍に設けられた非磁性層と、
強磁性体から構成され、該非磁性層上に設けられたリファレンス層と、
該第1磁化固定領域の近傍に設けられた第1磁化固定層群と、
該第1磁化固定層群と該第1磁化固定領域との間、又は該第1磁化固定層群内に挟まれて設けられた第1遮断層と
を具備することを特徴とする、請求項2に記載の集積回路。
【請求項4】
前記入力端子に帰還させる前記出力端子からの出力量を調整する回路をさらに含むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一に記載の集積回路。
【請求項5】
前記不揮発性抵抗変化素子を有する回路は、前記出力端子からの出力の一部を帰還させる前記入力端子のほかに、信号を入力する第2の入力端子を含むことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一に記載の集積回路。
【請求項6】
前記出力端子からの出力は、前記不揮発性抵抗変化素子の抵抗値によって周波数が変化する信号、もしくは前記不揮発性抵抗変化素子の抵抗値によって大きさが変化する電圧値又は電流値であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一に記載の集積回路。
【請求項7】
前記不揮発性抵抗変化素子を複数有することを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一に記載の集積回路。
【請求項8】
前記集積回路は発振周波数可変回路又は周波数ロック回路であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一に記載の集積回路。
【請求項9】
不揮発性抵抗変化素子の抵抗を変化させる書き込み端子と、該抵抗を読み出す端子とを別々に有し、電気的にカップリングしていない該書き込み端子と読み出し端子とを用いて書き込み動作と読み出し動作を同時にできる不揮発性抵抗変化素子を含み、該不揮発性抵抗変化素子の抵抗値に応じた出力値を出力する出力端子と、該抵抗値を変化させる入力端子を少なくとも有する回路の動作方法であって、
出力端子からの出力の一部を入力端子に帰還させるステップを含むことを特徴とする、回路の動作方法。
【請求項10】
前記入力端子に帰還させる前記出力端子からの出力量を調整するステップをさらに含むことを特徴とする、請求項9に記載の動作方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−69368(P2013−69368A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−206464(P2011−206464)
【出願日】平成23年9月21日(2011.9.21)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】