説明

乗り物及びエンジン制御方法

【課題】減速から加速への移行する際のエンジン出力変動を低減するとともにエネルギー効率を向上させる。
【解決手段】本発明の自動二輪車1は、第1〜4気筒を有するエンジンEと、変速機13のギヤ位置を検出可能なギヤ位置センサ30と、ギヤ位置センサ30によりギヤ位置が所定位置よりも低速側にあることが検出されると、第4気筒の出力が第1〜3気筒の出力よりも小さくなるように第4気筒に対応して設けられたサブスロットル弁24を制御するエンジンECU14とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の気筒の出力をそれぞれ制御可能なエンジンを備えた乗り物及びエンジンの制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の自動二輪車では、メインスロットル弁とその上流に配置されたサブスロットル弁とを気筒毎に対応して設けたスロットル装置が用いられることがある(例えば、特許文献1等参照)。メインスロットル弁は運転者に操作される加速入力装置(例えば、スロットルグリップやスロットルレバー)とケーブル等を介して機械的に連結されており、サブスロットル弁はモータを用いて電子制御されるように構成されている。これによれば、運転者が急加速操作してメインスロットル弁の開度が急増した場合に、サブスロットル弁の開度を調節して吸気量の急変を緩和することにより、過度な急加速が抑制されて運転フィーリングが向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−106048号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、エンジンの吸気量が少ない状態では、燃焼エネルギーがエンジンの機械的抵抗よりも小さくなることで、エンジン出力がマイナスとなりうる。特に、コーナリング時などのように、エンジン回転数が高い状態で減速のためにスロットルが閉じられると、吸気量不足によりエンジンで燃焼が行われない不燃状態が発生しうる。そして、その減速された状態から再び加速のためにスロットルが開かれると、エンジンが不燃状態から急に燃焼状態に移行してエンジン出力が変動することとなる。
【0005】
この現象については、たとえ電子制御可能なサブスロットル弁を設けたスロットル装置を用いたとしても、減速から加速に移行する際にはエンジンの全気筒の吸気量が同時に増加するため、全気筒同時に不燃状態から燃焼状態に移行することとなる。また本発明者の知見によれば、メインスロットル弁の開度が大きくない場合にはサブスロットル弁の開度調節がエンジン出力へ影響しやすいが、メインスロットル弁の全開時にはサブスロットル弁の開度調節がエンジン出力へ影響しにくくなる。よって、上記のようなスロットル装置を用いても、減速から加速に移行する際における出力変動は大きいままである。
【0006】
また、高出力エンジンを搭載する自動二輪車では、高出力化のためにスロットル全開時を基準としてエンジンの機械的形状(例えば、吸気通路、燃焼室、吸排気バルブなどの形状)を決定するように設計される。よって、低速走行時には、エンジンの燃焼効率の良い高出力領域を使用することができず、エネルギー効率が良くないのが現状である。
【0007】
そこで本発明は、減速から加速に移行する際のエンジン出力の変動を低減し、また、エンジンのエネルギー効率を向上させることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は前記事情に鑑みてなされたものであり、本発明に係る乗り物は、複数の気筒、及び、前記複数の気筒の出力をそれぞれ制御可能な複数の出力制御要素を有するエンジンと、乗り物の走行状態が所定状態よりも低速側にあることを検出可能な走行状態検出装置と、前記走行状態検出装置により前記走行状態が低速側にあることが検出されると、前記複数の気筒のうち一部の気筒の出力が他の気筒の出力よりも小さくなるように前記出力制御要素を制御するエンジン制御装置とを備えている。なお、走行状態が所定状態よりも低速側にあるとは、実際に走行速度が低速である場合のみならず、変速機が低速ギア(減速比の高いギヤ)であることや、スロットル開度が小さい状態などを含むものである。
【0009】
前記構成によれば、走行状態が低速側にあるときに一部の気筒の出力が小さくなるので、エンジンへの吸気量が絞られて生じた不燃状態から吸気量の増加により燃焼状態に移行するようなことがあっても、その際の出力変動は主に他の気筒で生じることとなる。よって、減速から加速に移行する際の出力変動をエンジン全体として低減することができる。また、走行状態が低速側にあるときにおいて、全気筒が同じ出力である場合に比べて前記他の気筒の出力が大きくなりうるが、例えば自動二輪車のように高出力領域での燃焼効率が高くなるように構成されたエンジンの場合には、走行状態が低速側でありながらも前記他の気筒は高効率な高出力領域で動作しうる。よって、エンジン全体としてエネルギー効率を向上させることができる。また、例えば後輪駆動車のように停止状態または低速状態から急加速する場合に前輪が地面から浮くウィリーが生じる場合があるが、走行状態が低速側にある時に一部の気筒の出力が小さくなるため、ウィリー発生の防止にも寄与することができる。
【0010】
前記エンジンに接続された変速機をさらに備え、前記走行状態検出装置は、前記走行状態として前記変速機のギヤ位置を検出可能なギヤ位置センサを含み、前記エンジン制御装置は、前記ギヤ位置センサにより前記ギヤ位置が所定位置よりも低速側にあることが検出されると、前記一部の気筒の出力が前記他の気筒の出力よりも小さくなるように前記出力制御要素を制御してもよい。
【0011】
前記構成によれば、ギヤ位置に応じて一部の気筒の出力を他の気筒の出力よりも小さくするように出力制御要素を制御するが、ギヤ位置が変更されるときには乗り物に多少のショックが生じるため、全気筒が略同一の出力となる状態から一部の気筒の出力が他の気筒の出力よりも小さくなる状態に移行する時(又はその逆の移行時)のショックが吸収され、運転フィーリングを良好に保つことができる。また、ギヤ位置が低速側にあるとき、即ち、変速機の出力トルクが大きくなるときに一部の気筒の出力を小さくするので、乗り物が車両である場合にはトラクション性能も向上する。
【0012】
運転者による加速指令が入力される加速入力装置をさらに備え、前記エンジン制御装置は、前記走行状態検出装置により前記走行状態が低速側にあることが検出されると、前記他の気筒に対応する前記出力制御要素が前記加速指令に応じて動作する状態を維持しつつ、前記一部の気筒に対応する前記出力制御要素を所定の出力抑制状態となるように制御してもよい。
【0013】
前記構成によれば、一部の気筒は出力抑制状態となっているため、減速から加速への移行時にエンジンが不燃状態から燃焼状態に移行するようなことがあっても、その際の出力変動は主に他の気筒で生じることとなる。よって、減速から加速に移行する際の出力変動をエンジン全体として低減することができる。また、一部の気筒は出力抑制状態となっているため、エンジン全体として全気筒が同じ出力である場合と同じような出力を実現しようと思えば、他の気筒の出力が大きくなる。そうすると、例えば自動二輪車のように高出力領域での燃焼効率が高くなるように構成されたエンジンの場合には、走行状態が低速側でありながらも前記他の気筒は高効率な高出力領域で動作する。よって、エンジン全体としてエネルギー効率を向上させることができる。
【0014】
前記出力制御要素は、前記気筒の吸気量を調節するためのスロットル弁を駆動する弁アクチュエータ、前記気筒に点火を行う点火装置、及び、前記気筒に燃料を供給する燃料供給装置のうち少なくとも1つを含み、前記所定の出力抑制状態は、前記一部の気筒に対応する前記スロットル弁の開度をアイドリング開度又はその近傍の開度である制限開度とした状態、前記一部の気筒の爆発行程での点火を中止させた状態、及び、前記一部の気筒への燃料供給を停止させた状態のうち少なくとも1つであるように構成されてもよい。
【0015】
前記構成によれば、一部の気筒の出力が実質的に停止するため、前述したエンジン全体としての出力変動の低減やエネルギー効率の向上を好適に実現することができる。
【0016】
前記一部の気筒の数は、前記他の気筒の数よりも少なくてもよい。
【0017】
前記構成によれば、エンジン出力が不足することを防止しながらも、前述したエンジン全体としての出力変動の低減やエネルギー効率の向上を好適に実現することができる。
【0018】
前記乗り物は、前記エンジンの出力を駆動輪に伝達する車両であり、前記複数の気筒の全体で生じる各爆発行程は、互いに等間隔となるように設定されており、前記他の気筒で生じる各爆発行程は、互いに不等間隔となるように設定されていてもよい。
【0019】
前記構成によれば、走行状態が低速側にあることが検出されると、エンジンにおける各爆発行程が不等間隔となるため、駆動輪のトルクが大きくなる傾向にある低速時にスリップが発生し難くなり、駆動輪のトラクション性能が向上する。
【0020】
前記エンジン制御装置は、前記走行状態検出装置により検出される前記走行状態が低速側であるほど前記一部の気筒の出力が小さくなるように前記出力制御要素を制御してもよい。
【0021】
前記構成によれば、一部の気筒の出力が走行状態に応じて徐々に小さくなるため、走行状態が変化したときの出力変動が抑制され、運転フィーリングをより良好にすることができる。
【0022】
前記乗り物が直立姿勢から横方向へ傾斜した角度を検出する傾斜角センサをさらに備え、前記乗り物は、自動二輪車であり、前記エンジン制御装置は、走行中に前記傾斜角センサで前記乗り物の傾斜角が所定角以上から所定角未満になったことが検出された場合に、前記複数の気筒のうち一部の気筒の出力が他の気筒の出力よりも小さくなるように前記出力制御要素を制御してもよい。
【0023】
前記構成によれば、自動二輪車がコーナーに進入してから該コーナーから脱出する際に、前述したエンジン全体としての出力変動が低減される。よって、運転者がナーバスになるコーナリング時のドライバビリティを向上させることができる。
【0024】
本発明のエンジン制御方法は、複数の気筒のうち一部のグループと他のグループとで個別に制御可能な複数の出力制御要素を有するエンジンの制御方法であって、前記エンジンを搭載した乗り物の走行状態が加速する可能性が高い加速準備状態であると推定する走行状態推定工程と、前記走行状態が加速準備状態であることが推定されると、前記一部のグループの気筒の出力が前記他のグループの気筒の出力よりも小さくなるように出力制御要素を制御する出力制御工程とを備えている。
【0025】
前記方法によれば、エンジンへの吸気量が絞られて生じた不燃状態から吸気量の増加により燃焼状態に移行するようなことがあっても、その際の出力変動は主に前記他の気筒で生じることとなる。よって、減速から加速に移行する際の出力変動をエンジン全体として低減することができる。また、走行状態が加速準備状態であるときにおいて、全気筒が同じ出力である場合に比べて前記他の気筒の出力が大きくなりうるが、例えば自動二輪車のように高出力領域での燃焼効率が高くなるように構成されたエンジンの場合には、走行状態が加速準備状態でありながらも前記他の気筒は高効率な高出力領域で動作しうる。よって、エンジン全体としてエネルギー効率を向上させることができる。また、例えば後輪駆動車のように停止状態または低速状態から急加速する場合に前輪が地面から浮くウィリーが生じる場合があるが、走行状態が加速準備状態である時に一部の気筒の出力が小さくなるため、ウィリー発生の防止にも寄与することができる。
【0026】
なお、加速準備状態とは、高速走行時の加速に比べて加速度が大きくなる傾向にある低速走行時の加速が行われる前の状態を意味する。その状態を例示すると、旋回終了時、乗り物が横方向に傾倒してから直立姿勢に戻される時、スロットル弁が閉じた状態から開け始める時、低速走行時、変速機の低速ギヤ使用時、発進時、低回転時、ブレーキ解除時、減速度が徐々に小さくなった時などが挙げられる。
【発明の効果】
【0027】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、減速から加速に移行する際の出力変動をエンジン全体として低減することができ、また、エネルギー効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の第1実施形態に係る自動二輪車の右側面図である。
【図2】図1に示す自動二輪車の制御系を説明するブロック図である。
【図3】図1に示す自動二輪車のスロットル装置の概略断面図である。
【図4】図1に示す自動二輪車のエンジンにおける爆発行程のタイミングを説明する図面である。
【図5】図4に示すサブスロットル弁の開度と変速機のギヤ位置との関係を示すマップである。
【図6】図2に示す自動二輪車の出力制御を説明する第1フローチャートである。
【図7】図2に示す自動二輪車の出力制御を説明する第2フローチャートである。
【図8】本発明の第2実施形態に係る自動二輪車のエンジンの爆発行程と変速機のギヤ位置との関係を示すマップである。
【図9】本発明の第2実施形態に係る自動二輪車の出力制御を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明に係る実施形態を図面を参照して説明する。なお、以下の説明で用いる方向の概念は、車両に乗車した運転者から見た方向を基準とする。また、本実施形態においては、本発明を自動二輪車に適用した例について説明するが、本発明はエンジンによる動力で走行する乗り物である限り適用可能である。例えば、四輪の自動車や、運転者がシートに跨がった状態で運転する鞍乗型乗り物のいずれにも適用可能である。鞍乗型乗り物には、自動二輪車、ATV(All Terrain Vehicle)、小型滑走艇(Personal Water Craft)が含まれる。
【0030】
(第1実施形態)
図1は本発明の第1実施形態に係る自動二輪車1の右側面図である。図1に示すように、自動二輪車1は、従動輪からなる前輪2と、駆動輪からなる後輪3とを備えている。前輪2は略上下方向に延びるフロントフォーク4の下端部にて回転自在に支持されており、フロントフォーク4は、ブラケット(図示せず)を介してステアリングシャフト(図示せず)に支持されている。ステアリングシャフト(図示せず)は、ヘッドパイプ5によって回転自在に支持されている。前記ブラケットには、左右へ延びるバー型のハンドル6が取り付けられている。ハンドル6の運転者の右手により把持される部分に設けられたスロットルグリップ7(加速入力装置)は、運転者から加速指令が入力されるものであり、手首のひねりにより回転させることで後述するスロットル装置22(図2参照)が操作される。
【0031】
ヘッドパイプ5からは左右一対のメインフレーム8が下方に傾斜しながら後方へ延びており、メインフレーム8の後部に左右一対のピボットフレーム9が接続されている。ピボットフレーム9には、略前後方向に延びるスイングアーム10の前端部が軸支されており、スイングアーム10の後端部に後輪3が回転自在に軸支されている。ハンドル6の後方には燃料タンク11が設けられており、燃料タンク11の後方に運転者騎乗用のシート12が設けられている。
【0032】
前輪2と後輪3との間には、エンジンEがメインフレーム8及びピボットフレーム9に支持された状態で搭載されている。エンジンEとしては4ストローク並列四気筒エンジンが例示されており、このエンジンEは、高出力領域での燃焼効率が高くなるようにスロットル全開時を基準としてエンジン等の機械的形状(例えば、吸気通路、燃焼室、吸排気バルブ機構など)が決定されている。エンジンEの出力軸には変速機13が接続されており、この変速機13から出力される駆動力が動力伝達部材(例えば、チェーン等)を介して後輪3に伝達される。エンジンEの吸気ポート(図示せず)には、燃料タンク11の下方でメインフレーム8の内側に配置されたスロットル装置22(図2参照)が接続されている。スロットル装置22の上流側には、燃料タンク11の下方に配置されたエアクリーナ21(図2参照)が接続されており、前方からの走行風圧を利用して外気を取り込む構成となっている。また、シート11の下方の内部空間には、エンジンECU14(エンジン制御装置)が収容されている。
【0033】
図2は図1に示す自動二輪車1の制御系20を説明するブロック図である。図3は図1に示す自動二輪車1のスロットル装置22の概略断面図である。図2に示すように、エアクリーナ21は、スロットル装置22を介してエンジンEの吸気ポート(図示せず)に接続されている。スロットル装置22は、エンジンEの4つの気筒に夫々対応して設けられ、スロットルグリップ7に機械的に連動するメインスロットル弁23と、1つの気筒にのみ対応して設けられたサブスロットル弁24とを備えている。メインスロットル弁23には、メインスロットル弁23の開度を検出するスロットルポジションセンサ25が設けられている。なお、メインスロットル弁23がスロットルグリップ7に機械的に連動しているため、スロットルポジションセンサ25は、スロットルグリップ7の開度(加速指令)を間接的に検出可能な加速指令値検出装置の役目を果たしうる。
【0034】
図3に示すように、スロットル装置22は、4つの独立した第1〜4吸気通路41A〜41Dが形成されたボディ40を備えている。第1〜4吸気通路41A〜41Dは、それぞれエンジンEの第1〜4気筒に個別に接続されている。第1〜4吸気通路41A〜41Dには、吸気量を調節するための第1〜4メインスロットル弁23A〜23Dが配置されている。第1〜4メインスロットル弁23a〜23Dは、スロットルグリップ7(図2参照)とケーブル等を介して機械的に連結されている。第4吸気通路41Dには、更にメインスロットル弁23Dの上流側にサブスロットル弁24が配置されている(即ち、図2に図示された吸気通路は第4吸気通路41Dを示している)。サブスロットル弁24は、モータからなる弁アクチュエータ26(エンジン制御要素)に接続されており、電子制御される弁アクチュエータ26によって開閉される。なお、第1〜3吸気通路41A〜Cには、サブスロットル弁は設けられていない。
【0035】
図2に戻り、スロットル装置22には、第1〜4吸気通路41A〜41D(図3参照)に個別に燃料を噴射する燃料供給装置であるインジェクタ27(エンジン制御要素)が設けられている。エンジンEには、第1〜4気筒内の混合気に個別に点火を行う点火装置28(エンジン制御要素)が設けられている。エンジンEのクランクシャフト(図示せず)には、クランクシャフトのクランク角を検出することでエンジン回転数を検出可能なクランク角センサ29が設けられている。エンジンEには、エンジンEの動力を変速して後輪3に伝達する変速機13が接続されている。変速機13には、その変速ギヤ位置を検出するためのギヤポジションセンサ30(走行状態検出装置)が設けられている。
【0036】
エンジンECU14は、マイコン等の演算装置や各種のメモリ等より構成され、スロットルポジションセンサ25、クランク角センサ29、ギヤポジションセンサ30、車速センサ35及び傾斜角センサ36に接続されている。車速センサ35は、前輪2(図1参照)の回転数を検出することで、自動二輪車1の走行速度を検出可能なセンサである。傾斜角センサ36は、自動二輪車1が直立姿勢から横方向へ傾斜した角度を検出するセンサである。即ち、傾斜角センサ36で検出される傾斜角は、自動二輪車1が直立した状態をゼロとし、左方向又は右方向に傾倒した状態を正値としている。
【0037】
エンジンECU14は、メイン制御部31、スロットル制御部32、燃料制御部33及び点火制御部34を有している。メイン制御部31は、各センサ25,29,30,35,36から入力される信号に基づいてエンジン制御に関する演算等を行う。スロットル制御部32は、メイン制御部31における演算結果に基づいて弁アクチュエータ26を制御し、第4吸気通路41D(図3参照)にあるサブスロットル弁24の開度を変更する。燃料制御部33は、メイン制御部31における演算結果に基づいてインジェクタ27を制御する。点火制御部34は、メイン制御部31における演算結果に基づいて点火装置28を制御する。
【0038】
図4は図1に示す自動二輪車1のエンジンEにおける爆発行程のタイミングを説明する図面である。図4に示すように、このエンジンEでは、第1〜4気筒の全体で生じる各爆発行程のタイミングは、クランク角に対して互いに等間隔(180°)となるように設定されている。そして、仮に第4気筒の爆発行程における出力が第1〜3気筒の爆発行程における出力に比べて抑制された場合には、第1〜3気筒の各爆発行程の出力が主にエンジン出力として寄与することになる。そうすると、第1〜3気筒の各爆発行程のタイミングは、クランク角に対して互いに不等間隔(360°と180°とが混在)であるため、第4気筒が出力抑制状態となることで不等間隔爆発エンジンのような特性が生じ得る。
【0039】
図5は図4に示すサブスロットル弁24の開度と変速機13のギヤ位置との関係を示すマップ50である。図5に示すように、エンジンECU14(図2参照)は、マップ50で定義された関係を予め記憶している。マップ50は、変速機13のギヤ位置が所定位置(例えば、3速)よりも低速側(減速比が大きい側)にある場合に、サブスロットル弁24が所定開度以下の制限開度となるように決められている。つまり、ギヤ位置が低速側にある場合には、自動二輪車1の走行状態が加速する可能性が高い加速準備状態であると推定され、第4気筒の出力が運転者による加速指令とは無関係に抑制される。具体的には、変速機13のギヤ位置が1速の場合には、サブスロットル弁24がアイドリング開度(又はその近傍の開度)である第1制限開度となるように決められている。また、変速機13のギヤ位置が2速の場合には、サブスロットル弁24が中間開度である第2制限開度となるように決められている。中間開度は、第1制限開度よりも大きく最大開度よりも小さい開度である。例えば、サブスロットル弁24がアイドリング開度である状態を0%とし、全開である状態を100%としたときに、中間開度は20%以上60%以下の範囲内の値に設定される。なお、本実施形態では2速の場合に、サブスロットル弁24が中間開度となるように制御するが、当該中間開度を上限開度としてサブスロットル弁24の開度を可変にしてもよい。また、変速機13のギヤ位置が高速側の3〜6速である場合には、サブスロットル弁24の開度は全開となるように決められている。
【0040】
図6は図2に示す自動二輪車1の出力制御を説明する第1フローチャートである。以下は、図2乃至5を適宜参照しながら主に図6に基づいて出力制御について説明する。まず、エンジンECU14は、エンジンEが始動されるとギヤポジションセンサ30で検出されるギヤ位置が1速であるか否かを判定する(ステップS1)。ステップS1でYesの場合には、自動二輪車1の走行状態が加速する可能性が高い加速準備状態であると推定し、第4気筒の出力を抑制する。具体的には、エンジンECU14は、図5のマップ50に基づいてサブスロットル弁24がアイドリング開度になるように弁アクチュエータ26を制御する(ステップS2)。これにより、第4気筒は吸気量が抑制された出力抑制状態となり、第4気筒の出力は第1〜3気筒の出力よりも小さくなる。言い換えると、第1〜3気筒は運転者によりスロットルグリップ7に入力される加速指令に応じて動作する状態が維持され、第4気筒のみが出力抑制状態となる。
【0041】
そうすれば、エンジン回転数が高いときにメインスロットル弁23が閉じられてエンジンEで不燃状態が発生した状態から再びメインスロットル弁23が開かれて、エンジンEが不燃状態から急に燃焼状態に移行した場合でも、その不燃状態から燃焼状態への移行は、第1〜3気筒で優先して発生し、第4気筒では発生しにくくなる。よって、エンジンEが減速から加速に移行する際における出力変動がエンジン全体として低減される。
【0042】
また、変速機13のギヤ位置が1速の状態で加速する際に所望のエンジン出力を得るためには、従来のような全気筒が同じ出力である場合に比べて、第4気筒の出力が抑制されている分、第1〜3気筒が高出力領域で動作することになる。そうすると、第1〜3気筒について高効率な高出力領域を利用することができ、エンジン全体として当該加速時のエネルギー効率が向上する。また、変速機13のギヤ位置が1速の状態でエンジンEから後輪3に伝達されるトルクは大きくなるため、ギヤ位置が1速の状態で急加速する際に前輪が地面から浮くウィリーが生じる可能性があるが、第4気筒の出力が抑制されるため、ウィリー発生も抑制される。
【0043】
また、第4気筒の爆発行程における出力が第1〜3気筒の爆発行程における出力に比べて大幅に抑制されるため、第1〜3気筒の各爆発行程の出力が主にエンジン出力として寄与することになる。そうすると、第1〜3気筒の各爆発行程のタイミングは、クランク角に対して互いに不等間隔(360°と180°とが混在)であるため、第4気筒が出力抑制状態となることで不等間隔爆発エンジンのような特性が生じ得る(図4参照)。その結果、変速機13のギヤ位置が1速で後輪3のトルクが大きくなるときに、スリップ発生が抑制されて駆動輪のトラクション性能が向上する。
【0044】
ステップS1でNoの場合又はステップS2の後に、エンジンECU14は、ギヤポジションセンサ30で検出されるギヤ位置が2速であるか否かを判定する(ステップS3)。ステップS3でYesの場合には、エンジンECU14は、図5のマップ50に基づいてサブスロットル弁24が中間開度になるように弁アクチュエータ26を制御する(ステップS4)。このように、ギヤ位置が2速のときのサブスロットル弁24の開度を通常よりも小さくしながらも1速よりは大きくすることで、1速から3速にかけてギヤ位置が変更された場合に、出力の急変が抑制される。
【0045】
ステップS3でNoの場合又はステップS4の後に、エンジンECU14は、ギヤポジションセンサ30で検出されるギヤ位置が3〜6速のうち何れかであるか否かを判定する(ステップS5)。ステップS5でYesの場合には、エンジンECU14は、図5のマップ50に基づいてサブスロットル弁24が全開になるように弁アクチュエータ26を制御し(ステップS6)、ステップS1に戻る。
【0046】
上記したように、サブスロットル弁24の開度がアイドリング開度と中間開度と全開との間で変更されるタイミングは、変速機13のギヤ位置の変更が検出された時となっている。そうすると、ギヤ位置が変更されるときには車体に多少のショックが生じるため、サブスロットル弁24の開度が変更される時のショックが吸収され、第4気筒の出力変化にかかわらず運転フィーリングを良好に保つことができる。
【0047】
図7は図2に示す自動二輪車1の出力制御を説明する第2フローチャートである。この第2フローチャートは、図6の第1フローチャートと並行して実施される。図7に示すように、まず、エンジンECU14は、傾斜角センサ36で検出される車体の傾斜角が所定値以上(即ち、車体が横方向にバンクした状態)か否かを判定する(ステップS11)。ステップS11でNoの場合には、ステップS11が繰り返される。ステップS11でYesの場合には、エンジンECU14は、傾斜角センサ36で検出される車体の傾斜角が所定値未満(即ち、車体が直立姿勢又はそれに近い姿勢)か否かを判定する(ステップS12)。ステップS12でNoの場合には、ステップS12が繰り返される。
【0048】
ステップS11及びS12でYesの場合は、コーナー走行時のように車体を一旦横方向に傾斜させてから直立姿勢に向けて戻す動作が行われたときであると判断することができる。そこで、ステップS12でYesの場合には、エンジンECU14は、サブスロットル弁24がアイドリング開度になるように弁アクチュエータ26を制御する(ステップS13)。これにより、自動二輪車1がコーナーに進入してから該コーナーから脱出する際に、第4気筒の出力が抑制され、エンジン全体としての出力変動が低減される。よって、運転者がナーバスになるコーナリング時のドライバビリティが向上することとなる。
【0049】
ステップS13の後に、エンジンECU14は、ギヤポジションセンサ30で検出されるギヤ位置が3〜6速の範囲内で変更されたか否かを判定する(ステップS14)。ステップS14でYesの場合には、エンジンECU14は、サブスロットル弁24が全開となるように弁アクチュエータ26を制御する(ステップS15)。このように、サブスロットル弁24の開度をアイドリング開度から全開に変更するタイミングが、変速機13のギヤ位置の変更が検出された時となっているので、サブスロットル弁24の開度が変更される時の出力変動が変速ショックにより吸収され、第4気筒の出力変化にかかわらず運転フィーリングを良好に保つことができる。
【0050】
なお、本実施形態では、変速位置が1,2速の状態と3〜6速の状態とで出力制御を異ならせたが、これに限定されず、減速比が大きくなるにつれて出力抑制量を大きくすればよい。例えば、1速と2速との間で出力制御を同じにしてもよく、また例えば、3〜6速について出力抑制量を段階的に抑制してもよい。
【0051】
(第2実施形態)
図8は本発明の第2実施形態に係る自動二輪車1のエンジンEの爆発行程と変速機13のギヤ位置との関係を示すマップ60である。第2実施形態の第1実施形態との主な相違点は、第4気筒の出力抑制を吸気量制御により実施する代わりに、点火制御及び/又は燃料制御により実施する点である。なお、本実施形態では、気筒ごとに点火制御及び/又は燃料制御が可能な構成であればよく、吸気量を電子制御しない構成(例えば、メインスロットル弁23A〜23Dのみが存在してサブスロットル弁24が存在しない構成)でもよい。また、以下の説明で第1実施形態と共通する構成については同一符号を付して説明を省略する。
【0052】
図8に示すように、エンジンECU14は、マップ60で定義された関係を予め記憶している。マップ60は、変速機13のギヤ位置が所定位置(例えば、3速)よりも低速側(減速比が大きい側)にある場合に、第4気筒の点火時期及び燃料供給量のうち少なくとも1つが出力抑制状態となるように決められている。具体的には、変速機13のギヤ位置が1速の場合には、第4気筒の爆発行程における点火が中止されること及び第4気筒への燃料供給が停止されることのうち少なくとも1つが実行されるように決められている。また、変速機13のギヤ位置が2速の場合には、第4気筒の爆発行程における点火時期が遅角されるように決められている。なお、変速機13のギヤ位置が高速側の3〜6速である場合には、第4気筒の爆発行程は通常通り(即ち、点火時期及び燃料供給量が通常通り)実施され、また、第1〜3気筒は全てのギヤ位置で通常通りの爆発行程が実施される。
【0053】
図9は本発明の第2実施形態に係る自動二輪車1の制御を説明するフローチャートである。図9に示すように、まず、エンジンECU14は、エンジンEが始動されるとギヤポジションセンサ30で検出されるギヤ位置が1速であるか否かを判定する(ステップS21)。ステップS21でYesの場合には、自動二輪車1の走行状態が加速する可能性が高い加速準備状態であると推定し、第4気筒の出力を抑制する。具体的には、エンジンECU14は、図8のマップ60に基づいて第4気筒の爆発行程における点火を中止すること及び第4気筒への燃料供給を停止することのうち少なくとも1つが実行されるように点火装置28及び/又はインジェクタ27を制御する(ステップS22)。これにより、第4気筒で出力が発生しない出力抑制状態となる。言い換えると、第1〜3気筒は、ギヤ位置が高速側(例えば、3〜6速)と同様に運転者によりスロットルグリップ7に入力される加速指令に応じて出力が発生する状態が維持され、第4気筒のみが出力が発生しない状態となる。これにより、第1実施形態と同様にして、減速から加速に移行する際における出力変動がエンジン全体として低減され、低速加速時におけるエネルギー効率がエンジン全体として向上し、ウィリー発生が抑制され、駆動輪のトラクション性能が向上する。
【0054】
ステップS21でNoの場合又はステップS22の後に、エンジンECU14は、ギヤポジションセンサ30で検出されるギヤ位置が2速であるか否かを判定する(ステップS23)。ステップS23でYesの場合には、エンジンECU14は、図8のマップ60に基づいて第4気筒の爆発行程における点火時期が遅角されるように点火装置28を制御する(ステップS24)。このように、ギヤ位置が2速のときの第4気筒の点火時期のみを遅角することで、第4気筒の出力を通常よりも小さくしながらもギヤ位置が1速のときよりは大きくすることで、1速から3速にかけてギヤ位置が変更された場合に、出力の急変が抑制される。
【0055】
ステップS23でNoの場合又はステップS24の後に、エンジンECU14は、ギヤポジションセンサ30で検出されるギヤ位置が3〜6速のうち何れかであるか否かを判定する(ステップS25)。ステップS25でYesの場合には、エンジンECU14は、図8のマップ60に基づいて第4気筒の爆発行程が通常通りになるように点火装置28及びインジェクタ27を制御し(ステップS26)、ステップS21に戻る。なお、他の構成は前述した第1実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0056】
(他の実施形態)
本発明は前述した各実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲でその構成を変更、追加、又は削除することができる。例えば、前記各実施形態では、乗り物の走行状態が所定状態よりも高速側にあるか低速側にあるかを検出可能な走行状態検出装置として、ギヤポジションセンサ30を利用しているが、車速センサ35やスロットルポジションセンサ25を利用してもよい。つまり、車速センサ35で検出される走行速度や加速度が所定値よりも低い場合には、走行状態が低速側にあると判断し、走行状態が加速する可能性が高い加速準備状態である推定してもよい。また、スロットルポジションセンサ25で検出されるスロットル開度が所定開度よりも小さい場合、又はスロットル開度が所定開度よりも小さく且つスロットル開度が増加し始めた場合には、走行状態が低速側にあると判断し、走行状態が加速する可能性が高い加速準備状態である推定してもよい。また、ブレーキ圧センサやブレーキレバー位置検出センサを用いて、ブレーキ解除時を判断して、低速側状態として判断してもよい。また、加速度センサまたは車速センサを用いて、減速度がゼロまたはゼロに近づいたときに、低速側状態として判断してもよい。また、ジャイロセンサを用いて、旋回終了時やコーナー脱出時を判断して、低速側状態として判断してもよい。
【0057】
また、前記各実施形態では、出力制御要素としての弁アクチュエータ26、インジェクタ27及び点火装置28が、1つの気筒に対して独立して設けられているが、複数の気筒グループごとに(例えば、2気筒ずつ)独立して制御可能に構成されていてもよい。また、第1実施形態では第4気筒の吸気量を制限するためにサブスロットル弁24を設けたが、サブスロットル弁を設けずにメインスロットル弁23を電子制御可能に構成し(いわゆる電子制御スロットル)、そのスロットル弁の開度を制限することで第4気筒の吸気量を制限するようにしてもよい。また、吸気量抑制(図5参照)と点火制御(図8参照)との両方で出力抑制制御を行ってもよい。また、気筒は複数であればよく、4気筒以外のエンジンを用いてもよい。
【0058】
また、走行状態検出装置で検出される走行状態が所定状態よりも低速側にあるときは、第4気筒の出力は、前記走行状態が高速側にあるときに比べて第1〜3気筒の出力よりも小さくなるようにすればよい。つまり、走行状態検出装置で検出される走行状態が高速側にあるときも第4気筒と第1〜3気筒との間の出力に差があってもよい。また、エンジンEの運転モードとして、出力を重視したノーマルモードと、燃費を重視したエコノミーモードとを設け、ユーザがエコノミーモードを選択した場合に、本制御(第4気筒の出力を第1〜3気筒に比べて抑制する制御)を実施するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0059】
以上のように、本発明に係る乗り物及びエンジン制御方法は、減速から加速に移行する際の出力変動をエンジン全体として低減することができ、また、エネルギー効率を向上させることができる優れた効果を有し、この効果の意義を発揮できる自動二輪車、ATV、小型滑走艇等の乗り物に広く適用すると有益である。
【符号の説明】
【0060】
1 自動二輪車
7 スロットルグリップ(加速入力装置)
13 変速機
14 エンジンECU(エンジン制御装置)
24 サブスロットル弁
26 弁アクチュエータ(出力制御要素)
27 インジェクタ(出力制御要素)
28 点火装置(出力制御要素)
30 ギヤポジションセンサ
36 傾斜角センサ
E エンジン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の気筒、及び、前記複数の気筒の出力をそれぞれ制御可能な複数の出力制御要素を有するエンジンと、
乗り物の走行状態が所定状態よりも高速側にあるか低速側にあるかを検出可能な走行状態検出装置と、
前記走行状態検出装置により前記走行状態が低速側にあることが検出されると、前記複数の気筒のうち一部の気筒の出力が他の気筒の出力よりも小さくなるように前記出力制御要素を制御するエンジン制御装置とを備えている、乗り物。
【請求項2】
前記エンジンに接続された変速機をさらに備え、
前記走行状態検出装置は、前記走行状態として前記変速機のギヤ位置を検出可能なギヤ位置センサを含み、
前記エンジン制御装置は、前記ギヤ位置センサにより前記ギヤ位置が所定位置よりも低速側にあることが検出されると、前記一部の気筒の出力が前記他の気筒の出力よりも小さくなるように前記出力制御要素を制御する、請求項1に記載の乗り物。
【請求項3】
運転者による加速指令が入力される加速入力装置をさらに備え、
前記エンジン制御装置は、前記走行状態検出装置により前記走行状態が低速側にあることが検出されると、前記他の気筒に対応する前記出力制御要素が前記加速指令に応じて動作する状態を維持しつつ、前記一部の気筒に対応する前記出力制御要素を所定の出力抑制状態となるように制御する、請求項1又は2に記載の乗り物。
【請求項4】
前記出力制御要素は、前記気筒の吸気量を調節するためのスロットル弁を駆動する弁アクチュエータ、前記気筒に点火を行う点火装置、及び、前記気筒に燃料を供給する燃料供給装置のうち少なくとも1つを含み、
前記所定の出力抑制状態は、前記一部の気筒に対応する前記スロットル弁の開度をアイドリング開度又はその近傍の開度である制限開度とした状態、前記一部の気筒の爆発行程での点火を中止させた状態、及び、前記一部の気筒への燃料供給を停止させた状態のうち少なくとも1つである、請求項3に記載の乗り物。
【請求項5】
前記一部の気筒の数は、前記他の気筒の数よりも少ない、請求項1乃至4のいずれかに記載の乗り物。
【請求項6】
前記乗り物は、前記エンジンの出力を駆動輪に伝達する車両であり、
前記複数の気筒の全体で生じる各爆発行程は、互いに等間隔となるように設定されており、
前記他の気筒で生じる各爆発行程は、互いに不等間隔となるように設定されている、請求項1乃至5のいずれかに記載の乗り物。
【請求項7】
前記エンジン制御装置は、前記走行状態検出装置により検出される前記走行状態が低速側であるほど前記一部の気筒の出力が小さくなるように前記出力制御要素を制御する、請求項1乃至6のいずれかに記載の乗り物。
【請求項8】
前記乗り物が直立姿勢から横方向へ傾斜した角度を検出する傾斜角センサをさらに備え、
前記乗り物は、自動二輪車であり、
前記エンジン制御装置は、走行中に前記傾斜角センサで前記乗り物の傾斜角が所定角以上から所定角未満になったことが検出された場合に、前記複数の気筒のうち一部の気筒の出力が他の気筒の出力よりも小さくなるように前記出力制御要素を制御する、請求項1乃至7のいずれかに記載の乗り物。
【請求項9】
複数の気筒のうち一部のグループと他のグループとで個別に制御可能な複数の出力制御要素を有するエンジンの制御方法であって、
前記エンジンを搭載した乗り物の走行状態が加速する可能性が高い加速準備状態であると推定する走行状態推定工程と、
前記走行状態が加速準備状態であることが推定されると、前記一部のグループの気筒の出力が前記他のグループの気筒の出力よりも小さくなるように出力制御要素を制御する出力制御工程とを備えている、エンジン制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−137425(P2011−137425A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−299022(P2009−299022)
【出願日】平成21年12月29日(2009.12.29)
【出願人】(000000974)川崎重工業株式会社 (1,710)
【Fターム(参考)】