説明

乗員の頭部位置判定装置、及び該判定装置を備えた乗員保護装置

【課題】車両内の乗員の顔面を含む画像に基づき、容易且つ迅速に乗員の頭部位置を判定し、適切に乗員を保護する。
【解決手段】車両VH内の乗員(運転者DR)の前方に配置したカメラCMによって乗員の顔面を含む画像を入力し、画像内の乗員の顔幅と、乗員の顔面における上下方向の少なくとも一つの特徴部分の画像内の位置を検出する。そして、検出結果の顔幅と画像内の特徴部分の位置に基づき、カメラCMと乗員の頭部との間の相対的な位置関係を特定し、車両内における乗員の頭部位置を判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗員の頭部位置判定装置に関し、特に、車両内の乗員の前方で顔面を含む画像を入力し、この画像に基づき、車両内における乗員の頭部位置を判定する乗員の頭部位置判定装置に係る。また、この判定装置を備えた乗員保護装置に係る。
【背景技術】
【0002】
車両内における乗員(例えば運転者)の前後方向の位置については、例えば乗員が座っているシートの位置で特定することができ、シートの位置はシート駆動手段による移動量に基づいて特定することができる。また、車両内で乗員が静止状態でいる限り車両内の幅方向の位置は略固定されている。しかし、車両内における乗員の頭部の位置は、乗員の体形、特に座高によって異なるので、予め特定の乗員について、頭部の位置を測定しない限り、車両内における乗員の頭部位置を特定することはできない。まして、大柄の乗員と小柄の乗員では、同じシートに座っても、車両内における頭部位置が異なるので、これを特定することはできない。従って、車両内の乗員の前方に配置されるステアリングハンドル等との位置関係は、一般的な体形の乗員との位置関係が基準となる。
【0003】
このような車両内の乗員の体形に着目した装置として、特許文献1には、ステアリングハンドルのハンドル径を運転者の体形に応じて変更し得るようにした車両のステアリングハンドルが提案されている。この特許文献1においては、運転者の上部前方に配置されたカメラによって撮影した運転者の体形をあらわす撮影信号を画像処理して体形検知信号を検出すると共に、シートに配置された体重測定センサにより体重検知信号を検出し、更に、運転者の複数の体形パターンをメモリに予め記憶しておき、これらの体形パターンに対し体形検知信号及び体重検知信号を比較することによって、運転者の体形を識別することとしている。
【0004】
一方、特許文献2には、目位置及び顔位置検出装置が開示されており、TVカメラによって撮影した被験者の顔画像から、エッジ画像を検出し、顔画像データとエッジ画像から顔の中心線を求め、この中心線に基づき顔領域を決定し、左目領域、右目領域と鼻領域に分割し、更に、各領域の顔画像データとエッジ画像から目の位置を検出することとしている。
【0005】
【特許文献1】特開2003−118586号公報
【特許文献2】特開2000−339476号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述のように、車両内の乗員とステアリングハンドル等との位置関係を適切に特定し得ることが望ましいが、容易ではない。例えば、前掲の特許文献1においては、運転者の複数の体形パターンをメモリに予め記憶しておき、これらの体形パターンを比較する所謂パターンマッチングによって運転者の体形を識別することとしているので、大きなメモリ容量を必要とするだけでなく、処理時間が長くなるので、迅速な判定が困難である。従って、例えば、特許文献1に記載の体形識別手段をそのまま乗員保護装置に適用することはできない。尚、特許文献2に示すように、エッジ画像を用いて顔画像から目等の特徴部分を特定することは知られているが、特に、これが車両内における乗員の頭部の位置関係を特定する手段として用いられているものではない。
【0007】
そこで、本発明は、車両内の乗員の前方で顔面を含む画像を入力し、この画像に基づき容易且つ迅速に、車両内における乗員の頭部位置を判定することができる乗員の頭部位置判定装置を提供することを課題とする。
【0008】
また、本発明は、上記の頭部位置判定装置を備え、適切に乗員を保護し得るように構成した乗員保護装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を達成するため、本発明は、請求項1に記載のように、車両内における乗員の頭部位置を判定する乗員の頭部位置判定装置において、前記車両内の乗員の前方に配置し、該乗員の顔面を含む画像を入力する画像入力手段と、該画像入力手段が入力した前記画像内の前記乗員の顔幅と、前記乗員の顔面における上下方向の少なくとも一つの特徴部分の前記画像内の位置を検出する検出手段と、該検出手段が検出した前記乗員の顔幅と前記画像内の前記特徴部分の位置に基づき、少なくとも前記画像入力手段の位置と前記乗員の頭部との間の幾何学的関係を特定し、前記車両内における前記乗員の頭部位置を判定する判定手段を備えることとしたものである。
【0010】
上記請求項1に記載の乗員の頭部位置判定装置において、前記検出手段は、請求項2に記載のように、前記乗員の顔面における上下方向の少なくとも一つの特徴部分として、前記乗員の眉上及び口下の一方を選択し、前記画像入力手段が入力した前記画像の横方向と上下方向に対するエッジ検出によって、夫々前記顔幅と前記眉上及び口下の一方を検出することとしてもよい。また、前記画像入力手段は、請求項3に記載のように、前記車両のステアリングコラムに固定した撮像手段を含むものとしてもよい。
【0011】
以上のように、前記画像入力手段は前記撮像手段、ひいてはカメラを含み、前記撮像手段は、例えばステアリングコラムに固定したカメラとすることができるが、この場合における前記撮像手段の位置と前記乗員の頭部との間の幾何学的関係として、カメラと乗員の頭部との間の相対的な位置関係を特定することができ、少なくとも両者間の距離の大小を判定することができる。
【0012】
そして、乗員保護装置としては、請求項4に記載のように、車両内における乗員を保護する乗員保護手段と、前記車両内の乗員の前方に配置し、該乗員の顔面を含む画像を入力する画像入力手段と、該画像入力手段が入力した前記画像内の前記乗員の顔幅と、前記乗員の顔面における上下方向の少なくとも一つの特徴部分の前記画像内の位置を検出する検出手段と、該検出手段が検出した前記乗員の顔幅と前記画像内の前記特徴部分の位置に基づき、少なくとも前記画像入力手段の位置と前記乗員の頭部との間の幾何学的関係を特定し、前記車両内における前記乗員の頭部位置を判定する判定手段と、該判定手段が判定した前記車両内における前記乗員の頭部位置に応じて前記乗員保護手段の駆動条件を調整する駆動手段を備えたものとすることができる。
【0013】
前記検出手段は、請求項5に記載のように、前記乗員の顔面における上下方向の少なくとも一つの特徴部分として、前記乗員の眉上及び口下の一方を選択し、前記画像入力手段が入力した前記画像の横方向と上下方向に対するエッジ検出によって、夫々前記顔幅と前記眉上及び口下の一方を検出することとしてもよい。また、前記画像入力手段は、請求項6に記載のように、前記車両のステアリングコラムに固定した撮像手段を含むものとしてもよい。更に、前記乗員保護手段は、請求項7に記載のように、前記車両内に配置したエアバック装置とし、前記判定手段が判定した前記車両内における前記乗員の頭部位置に応じて、前記駆動手段が、前記エアバック装置におけるエアバック膨張条件を調整するように構成することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明は上述のように構成されているので以下の効果を奏する。即ち、請求項1乃至3に記載の乗員の頭部位置判定装置においては、車両内の乗員の前方に配置した画像入力手段によって乗員の顔面を含む画像を入力し、画像内の乗員の顔幅と、乗員の顔面における上下方向の少なくとも一つの特徴部分の画像内の位置を検出すると共に、検出結果の乗員の顔幅と画像内の特徴部分の位置に基づき、少なくとも画像入力手段の位置と乗員の頭部との間の幾何学的関係を特定し、車両内における乗員の頭部位置を判定することとしているので、例えば画像入力手段と乗員の頭部との間の距離の大小を判定することができ、容易且つ迅速に、車両内における乗員の頭部位置を判定することができる。
【0015】
特に、請求項2に記載の乗員の頭部位置判定装置によれば、乗員の顔幅に包含される一つの特徴部分、例えば眉上と口下の画像内の位置を検出し、この位置から車両内における乗員の頭部の上下位置を特定することができるので、大きな記憶容量を必要とすることなく、容易且つ迅速に、車両内における乗員の頭部位置を判定することができる。
【0016】
また、請求項4乃至7に記載の乗員保護装置においては、車両内の乗員の前方に配置した画像入力手段によって乗員の顔面を含む画像を入力し、画像内の乗員の顔幅と、乗員の顔面における上下方向の少なくとも一つの特徴部分の画像内の位置を検出し、検出結果の乗員の顔幅と画像内の特徴部分の位置に基づき、少なくとも画像入力手段の位置と乗員の頭部との間の幾何学的関係を特定し、車両内における乗員の頭部位置を判定すると共に、この判定結果に応じて乗員保護手段の駆動条件を調整することとしているので、容易且つ迅速に、車両内における乗員の頭部位置を判定することができると共に、例えば画像入力手段と乗員の頭部との間の距離の大小に応じて適切に乗員を保護し得るように構成することができる。
【0017】
特に、請求項5に記載の乗員保護装置によれば、乗員の顔幅に包含される一つの特徴部分、例えば眉上と口下の画像内の位置を検出し、この位置から車両内における乗員の頭部の上下位置を特定することができるので、大きな記憶容量を必要とすることなく、容易且つ迅速に、車両内における乗員の頭部位置を判定することができ、適切に乗員を保護し得るように構成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
上記の構成になる本発明の乗員の頭部位置判定装置の具体的一態様について、以下に図面を参照して説明する。図1は、乗員保護手段としてエアバック装置ABを装着した車両VHを示すもので、その一部を構成する頭部位置判定装置DH(以下、判定装置DHという)の構成を示している。この判定装置DHは、車両VH内の乗員(図1では運転者DR)の前方に配置し、その顔面を含む画像を入力する画像入力手段M1と、入力した画像内の運転者DRの顔幅と、その顔面における上下方向の少なくとも一つの特徴部分の画像内の位置を検出する検出手段M2と、検出された運転者DRの顔幅と画像内の特徴部分の位置に基づき、少なくとも画像入力手段M1の位置と運転者DRの頭部との間の幾何学的関係を特定し、車両VH内における運転者DRの頭部位置を判定する判定手段M3から成る。
【0019】
画像入力手段M1としては撮像手段を含み、図1に示すように、例えばCCDカメラ(以下、単にカメラという)CMがステアリングコラムSCに固定されており、運転者DRの顔画像が連続して撮像される。尚、カメラCMは、ステアリングコラムSCに限らず、運転者DRの顔画像を連続して撮像し得る位置であればよく、例えばインスツルメントパネル(図示せず)内に配設することとしてもよい。検出手段M2においては、運転者DRの顔面における上下方向の少なくとも一つの特徴部分として、眉上及び口下の一方が選択され、入力画像の横方向と上下方向に対するエッジ検出によって、夫々運転者DRの顔幅と眉上及び口下の一方が迅速に検出される。而して、判定手段M3においては、図3乃至図6を参照して後述するように、カメラCMの位置と運転者DRの頭部との間の幾何学的関係として、例えば、両者間の相対的な位置関係を特定することができ、少なくとも両者間の距離の大小を判定することができる。
【0020】
更に、乗員保護装置を構成する手段として、判定手段M3で判定された車両VH内における運転者DRの頭部位置に応じてエアバック装置ABの駆動条件を調整する駆動手段ACが設けられており、判定結果の頭部位置に応じて、エアバック装置ABにおけるエアバック膨張条件(膨張速度等)が調整される。尚、乗員保護装置としては、シートベルトのプリローダ等のパッシブレストレイント装置(図示せず)を含み、例えばプリローダによる乗員拘束力を、車両VH内における運転者DRの頭部位置に応じて調整するように構成することもできる。
【0021】
図2は、上記各手段の具体的構成の一例を示すもので、カメラCMの映像信号は、ビデオ入力バッファ回路VB、同期分離回路SYを経てA/D変換されフレームメモリFMに格納される。このフレームメモリFMに格納された画像データは、画像処理部VCで処理される。本実施形態の画像処理部VCは、画像データ制御部VP、エッジ検出部EP及び顔幅及び眉等の特定部DPで構成されている。
【0022】
画像処理部VCにおいては、フレームメモリFM内の画像データから、画像データ制御部VPでアドレス指定されたデータが呼び出された画像に対してエッジ検出部EPにてSobelオペレータ等によりエッジ検出が行われ、顔幅及び眉等の特定部DPにて、エッジ点群に基づき顔両端(顔幅)として確からしい線分が選択されて輪郭として認識され、顔幅に関するデータが決定される。そして、この顔幅データに基づき眉上(又は口下)の探索領域が決定され、この探索領域内に横方向の連続したエッジ点が検出されたときに、眉上位置(又は口下位置)が特定される。而して、この眉上位置(又は口下位置)に基づき運転者DRの頭部上下位置が判定される。
【0023】
更に、必要に応じて車両VH内のシートSTの位置等の検出結果(図2に車両信号として示す)と共に、顔幅及び眉等の特定部DPの出力がシステム制御部SC(コンピュータ)に供給され、出力インターフェース回路OUを介して図1の駆動手段ACに出力される。尚、図2におけるCL、PW、INは夫々クロック回路、電源回路及び入力インターフェース回路である。
【0024】
上記の画像処理部VCにおける処理の具体例として、例えば、図3に示すように、実線で示す小柄の(座高が低い)運転者DR1と、破線で示す大柄の(座高が高い)運転者DR2が、車両VH内の所定位置のシートSTに着座した状態のカメラCMの画像を同時に簡略して表すと、図5に示すようになる。即ち、カメラCMはステアリングコラムSCに固定されているので、運転者DR1及びDR2の顔幅(w1)とは無関係に、その中で特定される眉上の位置は運転者DR1及びDR2の座高の相違に応じて、画像下端からの距離が夫々h1及びh2となり、運転者DR1及びDR2の頭部の上下位置を特定することができる。この頭部の上下位置に加え、運転者DR1及びDR2の頭部の車室内の幅方向の位置(例えば所定値に設定)と、車室内におけるシートSTの前後位置を用いることとすれば、カメラCMと運転者DR1及びDR2の頭部との間の相対的な位置関係を特定することができ、更には両者間の距離も演算することができる。尚、車室内におけるシートSTの前後位置は、一般的なシート駆動手段(図示せず)に装着される移動量検出手段(図示せず)によって検出することができる。
【0025】
しかし、上記のような演算を行なうことなく、運転者DRの顔幅の変化に基づき、少なくとも両者間の距離の大小を判定することができる。例えば、図4及び図6は、前方運転位置にあるときの運転者DR1を実線で示し、同じ運転者が後方運転位置にあるときの状態の運転者DR3を破線で示しているが、運転者DR3の顔幅(w3)は運転者DR1の顔幅(w1)より小となり、画像下端からの距離も前者(h3)が後者(h1)より小となるので、運転者DR1及びDR3の頭部の上下位置の相対関係を特定することができる。そして、この相対関係に基づき、少なくとも両者間の距離の大小を判定することができる。尚、図3に示す小柄の運転者DR1と大柄の運転者DR2との間でも、顔幅の個人差による影響が生じない程度の大きさの画像上の顔幅の差を基準とすれば、両者間の距離の大小を判定することができ、これについては図10を参照して後述する。
【0026】
図7は、上記の構成に成る乗員保護装置のメインルーチンを示すもので、先ず、ステップ101において初期化され、ステップ102にてカメラCMによって運転者DR(上記のDR1、DR2及びDR3を代表する)の顔画像が入力されたか否かが判定される。顔画像が入力されておれば、ステップ103にて画像中のエッジ点が検出され、顔両端及び少なくとも眉上位置(又は口下位置)が検出され、ステップ104にて学習処理が行われた後、ステップ105にて運転者DRの頭部上下位置が判定される。尚、これらステップ103乃至105の具体的処理内容については図8乃至図10を参照して後述する。
【0027】
上記ステップ105の判定結果に基づき、ステップ106において、運転者DRの運転位置(ドライビングポジション)に対する変更要求の有無が判定される。運転位置変更要求が有の場合にはステップ107に進み、運転者DRの頭部上下位置が所定値(Hs)と比較され、これより低い場合にはステップ108に進み、適正運転位置が「前方運転位置」に設定されて車内LAN(図示せず)に出力される。而して、車内LANを介して導入される信号に応じて、例えばシート駆動手段(図示せず)が駆動され、シートSTは前方運転位置に移動する。逆に、ステップ107にて運転者DRの頭部上下位置が所定値(Hs)以上と判定されると、ステップ109に進み、更に運転者DRの頭部位置が所定値(Hb)と比較され、これより高いと判定された場合にはステップ110に進み、適正運転位置が「後方運転位置」に設定されて車内LANに出力される。ステップ110において所定値(Hb)以下と判定されたときには、運転者DRの頭部上下位置が所定値(Hs)以上、且つ所定値(Hb)以下であるので、図3に実線で示した運転者DR1と破線で示した運転者DR2の中間の体形であり、この場合にはステップ111に進み、適正運転位置が「中間運転位置」に設定されて車内LANに出力される。このように、運転者DRに対する適正運転位置が3段階に設定されるが、これに限らず更に多くの段階に区分することとしてもよい。
【0028】
次に、ステップ112に進み、今回の顔幅学習値が前回までの顔幅学習値と比較され、その差が大であるときには、運転者DRが同じであれば、前回の運転位置に対し、前方又は後方に移動していることを意味する。従って、ステップ108、110及び111において運転者DRの運転位置が変更されているときには、今回の顔幅学習値と前回までの顔幅学習値との間に差が生ずる。例えば、図4に破線で示すように、運転者DRがシートSTを後方に移動したときには、図6に破線で示すように画像上の顔幅(w1)が顔幅(w3)と小さくなり、逆に、シートSTを前方に移動したときには画像上の顔幅が大きくなる。従って、例えば、画像上の顔幅の変動による影響、更には実際の顔幅の個人差による影響が生じない程度(例えば50%以上)の差が生じた場合には、ステップ113において、エアバック装置ABにおける例えばエアバックの膨張速度が調整される。そして、ステップ114にてその他の処理が行なわれて、ステップ102に戻る。
【0029】
図8は、ステップ103で実行される顔両端及び眉等の検出処理を示すもので、先ず、ステップ201において運転者DRの入力画像に対し微分処理が行われ、ステップ202にて、入力画像から上下(縦)方向の連続したエッジ点が検出されたときにはステップ203に進み、顔幅に関するデータが決定される。続いて、この顔幅データに基づき、ステップ204にて眉上の探索領域が決定され、この探索領域内に横方向の連続したエッジ点が検出されたときにはステップ206に進み、眉上位置と判定される。
【0030】
本実施形態では、更に、ステップ207において、上記の顔幅データに基づき、ステップ204にて口下の探索領域が決定され、この探索領域内に横方向の連続したエッジ点が検出されたときにはステップ209にて、口下位置と判定される。そして、ステップ210にて、顔幅、眉上位置及び口下位置のデータが記憶され、図7のメインルーチンに戻る。尚、ステップ202、205及び208において、連続したエッジ点が検出されなかったときには、そのままステップ210にジャンプする。上記のように、本実施形態では、眉上位置及び口下位置の両者が検出されるので、両者を用いて運転者DRの頭部上下位置を判定することができるが、何れか一方を検出することとしてもよい。
【0031】
図9は、ステップ104で実行される学習処理を示すもので、先ず、ステップ301において学習値の更新タイミング(例えば16演算サイクル経過)か否かが判定され、更新タイミングであれば、ステップ302にて、それまでの(旧)顔幅学習値に対し、今回の顔幅データが重み付けされて加算され、今回の顔幅学習値とされる。同様に、ステップ303にて、それまでの(旧)眉上位置学習値に対し、今回の眉上位置のデータが重み付けされて加算され、今回の眉上位置学習値とされる。そして、ステップ304にて、それまでの(旧)口下位置学習値に対し、今回の口下位置のデータが重み付けされて加算され、今回の口下位置学習値とされる。
【0032】
ステップ105で実行される運転者DRの頭部上下位置の判定に関しては、運転者DRがシートSTに着座したときに、眉上位置及び口下位置の何れか一方に基づき運転者DRの頭部上下位置が判定される。これに対し、シートSTの移動調整後に、運転者DRの頭部上下位置の判定を行なう場合には、図10に示すように、顔幅(学習値)の変化と例えば眉上位置(学習値)の変化を組み合わせて、判定するように構成することができる。即ち、ステップ401において、顔幅(学習値)が小で眉上位置(学習値)が高い(上方)と判定されたときには、ステップ402にて大柄の(座高が高い)運転者DR3が「後方運転位置」に居ると判定され、ステップ403において、顔幅(学習値)が大で眉上位置(学習値)が低い(下方)と判定されたときには、ステップ404にて小柄の(座高が低い)運転者DR1が「前方運転位置」に居ると判定され、それ以外の場合は、ステップ405にて中間の運転者が「中間運転位置」に居ると判定され、そのときの頭部上下位置の判定が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の乗員保護装置の一実施形態の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態における画像処理手段の主要構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の一実施形態において、小柄の運転者と大柄の運転者の着座状態を示す説明図である。
【図4】本発明の一実施形態において、一般的な運転者の前方運転位置と後方運転位置を示す説明図である。
【図5】本発明の一実施形態において、小柄の運転者と大柄の運転者の着座状態における顔画像を含む画面の正面図である。
【図6】本発明の一実施形態において、運転者の前方運転位置と後方運転位置の着座状態における顔画像を含む画面の正面図である。
【図7】本発明の乗員保護装置の一実施形態におけるメインルーチンを示すフローチャートである。
【図8】本発明の一実施形態における顔両端及び眉等の検出処理を示すフローチャートである。
【図9】本発明の一実施形態における学習処理を示すフローチャートである。
【図10】本発明の一実施形態における運転者の頭部上下位置の判定例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0034】
VH 車両
CM カメラ
DR,DR1,DR2,DR3 運転者
DH 頭部位置判定装置
M1 画像入力手段
M2 検出手段
M3 判定手段
VC 画像処理部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両内における乗員の頭部位置を判定する乗員の頭部位置判定装置において、前記車両内の乗員の前方に配置し、該乗員の顔面を含む画像を入力する画像入力手段と、該画像入力手段が入力した前記画像内の前記乗員の顔幅と、前記乗員の顔面における上下方向の少なくとも一つの特徴部分の前記画像内の位置を検出する検出手段と、該検出手段が検出した前記乗員の顔幅と前記画像内の前記特徴部分の位置に基づき、少なくとも前記画像入力手段の位置と前記乗員の頭部との間の幾何学的関係を特定し、前記車両内における前記乗員の頭部位置を判定する判定手段を備えたことを特徴とする乗員の頭部位置判定装置。
【請求項2】
前記検出手段は、前記乗員の顔面における上下方向の少なくとも一つの特徴部分として、前記乗員の眉上及び口下の一方を選択し、前記画像入力手段が入力した前記画像の横方向と上下方向に対するエッジ検出によって、夫々前記顔幅と前記眉上及び口下の一方を検出することを特徴とする請求項1記載の乗員の頭部位置判定装置。
【請求項3】
前記画像入力手段は、前記車両のステアリングコラムに固定した撮像手段を含むことを特徴とする請求項1又は2記載の乗員の頭部位置判定装置。
【請求項4】
車両内における乗員を保護する乗員保護手段と、前記車両内の乗員の前方に配置し、該乗員の顔面を含む画像を入力する画像入力手段と、該画像入力手段が入力した前記画像内の前記乗員の顔幅と、前記乗員の顔面における上下方向の少なくとも一つの特徴部分の前記画像内の位置を検出する検出手段と、該検出手段が検出した前記乗員の顔幅と前記画像内の前記特徴部分の位置に基づき、少なくとも前記画像入力手段の位置と前記乗員の頭部との間の幾何学的関係を特定し、前記車両内における前記乗員の頭部位置を判定する判定手段と、該判定手段が判定した前記車両内における前記乗員の頭部位置に応じて前記乗員保護手段の駆動条件を調整する駆動手段を備えたことを特徴とする乗員保護装置。
【請求項5】
前記検出手段は、前記乗員の顔面における上下方向の少なくとも一つの特徴部分として、前記乗員の眉上及び口下の一方を選択し、前記画像入力手段が入力した前記画像の横方向と上下方向に対するエッジ検出によって、夫々前記顔幅と前記眉上及び口下の一方を検出することを特徴とする請求項4記載の乗員保護装置。
【請求項6】
前記画像入力手段は、前記車両のステアリングコラムに固定した撮像手段を含むことを特徴とする請求項4又は5記載の乗員保護装置。
【請求項7】
前記乗員保護手段は、前記車両内に配置したエアバック装置であって、前記判定手段が判定した前記車両内における前記乗員の頭部位置に応じて、前記駆動手段が、前記エアバック装置におけるエアバック膨張条件を調整することを特徴とする請求項6記載の乗員保護装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−205844(P2006−205844A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−19020(P2005−19020)
【出願日】平成17年1月27日(2005.1.27)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】