乗用型田植機
【課題】 本発明の課題は、旋回時の苗植え付けなどの諸作動を自動的に行わせることができるようにすることである。
【解決手段】 機体上に設けたエンジンと、機体の進行方向に向かって左右に設けた左右前輪及び左右後輪と、該左右前輪を操向操作する操向操作具と、左右後輪のそれぞれの伝動軸に設けたエンジン駆動力を伝達・非伝達するクラッチと、操向操作具に連動して前記左右いずれかのクラッチを作動させる連動ロッド(180,180)とを備えた走行車両を設け、該走行車両には昇降用リンク装置を介して苗植付装置を装着した乗用型田植機において、操向操作具による操向角度の検出により旋回中であると判断すると、後輪の伝動軸の回転数を検出し、該回転数が第一の設定値を超えると苗植付装置を下降し、前記回転数が第二の設定値を超えると苗植付装置を作動させる制御装置を設けた。
【解決手段】 機体上に設けたエンジンと、機体の進行方向に向かって左右に設けた左右前輪及び左右後輪と、該左右前輪を操向操作する操向操作具と、左右後輪のそれぞれの伝動軸に設けたエンジン駆動力を伝達・非伝達するクラッチと、操向操作具に連動して前記左右いずれかのクラッチを作動させる連動ロッド(180,180)とを備えた走行車両を設け、該走行車両には昇降用リンク装置を介して苗植付装置を装着した乗用型田植機において、操向操作具による操向角度の検出により旋回中であると判断すると、後輪の伝動軸の回転数を検出し、該回転数が第一の設定値を超えると苗植付装置を下降し、前記回転数が第二の設定値を超えると苗植付装置を作動させる制御装置を設けた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、乗用型田植機の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
乗用型田植機などの走行車両は整地フロートにより整地作業しながら苗の植え付けを行う苗植付装置を走行車両に対して昇降可能に設け、圃場面の検出に基づいて所望の対地高さとなるよう苗植付装置を昇降制御しながら苗植付装置により苗を圃場に植え付ける農作業機である。
【0003】
この種の乗用型田植機は、直進走行状態からハンドル操作をすることにより、変速装置の左右伝動軸へエンジン駆動力を伝達・非伝達するサイドクラッチ及び左右の伝動軸を回転不能にするブレーキを備えている。
【0004】
乗用型田植機の移動速(路上を直進する走行速)と苗植付装置を使用して圃場に苗を植え付け作業しながら走行する植付速では、ハンドル操作に連動して左右の車輪伝動軸の内、旋回内側の伝動軸にエンジン動力を伝達するサイドクラッチが切れて、当該伝動軸にエンジン動力が伝達されないようにした構成が採用されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−267257号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特開2003−267257号公報記載の乗用型田植機では、サイドクラッチを操作する操作機構(連動ロッド)の連結位置を切り替えてサイドクラッチの切断タイミングを変更する構成であるので、その切断タイミングの変更に伴って操作機構ひいてはサイドクラッチの作動ストローク全体がシフトし、作動ストロークの大きいサイドクラッチを要したり、操作機構に余分な負荷が発生して操作性が悪くなるおそれがある。
【0007】
本発明の課題は、旋回時の苗植え付けなどの諸作動を自動的に行わせることができるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は次の解決手段で達成できる。
請求項1記載の発明は、機体上に設けたエンジン(12)と、機体の進行方向に向かって左右に設けた左右前輪(6,6)及び左右後輪(7,7)と、該左右前輪(6,6)を操向操作する操向操作具(16)と、左右後輪(7,7)のそれぞれの伝動軸に設けたエンジン駆動力を伝達・非伝達するクラッチ(I,I)と、操向操作具(16)に連動して前記左右いずれかのクラッチ(I,I)を作動させる連動ロッド(180,180)とを備えた走行車両(1)を設け、該走行車両(1)には昇降用リンク装置(2)を介して苗植付装置(3)を装着した乗用型田植機において、操向操作具(16)による操向角度の検出により旋回中であると判断すると、後輪(7)の伝動軸(89)の回転数を検出し、該回転数が第一の設定値を超えると苗植付装置(3)を下降し、前記回転数が第二の設定値を超えると苗植付装置(3)を作動させる制御装置(170)を設けた乗用型田植機である。
【0009】
請求項2記載の発明は、操向操作具(16)の回動操作で第一の回動中心(175a)回りに回動するピットマンアーム(175)と、該ピットマンアーム(175)の回動に連動して第二の回動中心(179c)回りに回動する従動体(179)を設け、従動体(179)の中央部に凸部を設け、両端部には左右のクラッチ(I,I)を作動させる左右の連動ロッド(180,180)を左右各々接続し、ピットマンアーム(175)に設けた回転軸を中心に回転するローラ(175d、189)を設け、該ローラ(175d、189)と従動体(179)の凸部側面を当接させて配置することで、従動体(179)の回動で左右のクラッチ(I,I)が作動する構成とし、クラッチ(I)を切った状態から、操向操作具(16)の回動で連動ロッド(180)が更に余分に作動しないよう、従動体(179)のローラ(175d)との当接面は、第一の回動中心(175a)から決められた間隔となる曲面を備えた請求項1に記載の乗用型田植機である。
【0010】
請求項3記載の発明は、ローラ(189)を偏心ローラとし、該偏心ローラ(189)の偏心位置を選択して従動体(179)と偏心ローラ(189)の間隔を設定し、該設定された従動体(179)との偏心ローラ(189)の間隔に基づき、従動体(179)の動くタイミングを変化させて対応する左右のクラッチ(I,I)の作動タイミングを変更する作動タイミング変更手段を設けた請求項2記載の乗用型田植機である。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の発明によれば、旋回時の苗植え付けなどの諸作動を自動的に行わせることができる。
請求項2記載の発明の効果は、請求項1記載の効果に加えて、操向操作具(16)の回動で左右の連動ロッド(180,180)のいずれかが対応する左右のクラッチ(I,I)を作動させる状態からさらに余分に作動しないため、その余分な作動ストロークにより対応する左右のクラッチ(I,I)に備えている付勢スプリングなどに余分な負荷が発生しないようにできると共に、連動ロッド(180)の逃げのためのスプリングや余分なロッド長などが不要であるので比較的低コストとなる。
請求項3記載の発明の効果は、請求項2記載の効果に加えて、従動体(179)と偏心ローラ(189)の間隔を変更して容易にクラッチ(I,I)の作動タイミングを変更することができ、また、クラッチ(I,I)の作動タイミング変更手段のメンテナンスも従動体(179)と偏心ローラ(189)の間隔調整だけで良いので操作性が優れている。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施例である8条植え乗用型田植機を示す全体側面図である。
【図2】図1に示す乗用型田植機の全体平面図である。
【図3】図1に示す乗用型田植機の走行車両の伝動構成を示す概略平面図である。
【図4】図1に示す乗用型田植機のミッションケースの展開断面図である。
【図5】図1に示す乗用型田植機の主クラッチ及び後輪ブレーキの操作構成を示す平面図である。
【図6】図1に示す乗用型田植機の左右前輪の操向構成を示す斜視図である。
【図7】図1に示す乗用型田植機の左右前輪の操向構成の変形例を示す図である。
【図8】図1に示す乗用型田植機の左右前輪の操向構成の変形例を示す図である。
【図9】図1に示す乗用型田植機の左右前輪の操向構成の変形例を示す図である。
【図10】図1に示す乗用型田植機の左右前輪の操向構成の変形例を示す図である。
【図11】図1に示す乗用型田植機の左右前輪の操向構成の変形例を示す図である。
【図12】図1に示す乗用型田植機の後輪用のサイドクラッチ作動用伝動部の構成図である。
【図13】図1に示す乗用型田植機の後輪用のサイドクラッチ作動用伝動部の構成図である。
【図14】図1に示す乗用型田植機の後輪用のサイドクラッチ作動用伝動部の構成図である。
【図15】図1に示す乗用型田植機の後輪用のサイドクラッチ作動用伝動部の構成図である。
【図16】図1に示す乗用型田植機の後輪用のサイドクラッチ作動用伝動部の構成図である。
【図17】図1に示す乗用型田植機の直進制御のフロー図である。
【図18】図1に示す乗用型田植機の直進制御のフロー図である。
【図19】図1に示す乗用型田植機のチェンジレバー部の斜視図である。
【図20】図1に示す乗用型田植機の苗植付け開始位置で苗植付動作を行うためのフローチャートである。
【図21】図1に示す乗用型田植機の制御系のブロック回路図である。
【図22】図1に示す乗用型田植機の旋回連動制御の考え方を示す図である。
【図23】図22の旋回連動制御のフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
この発明の一実施例である8条植え乗用型田植機を図面に基づき詳細に説明する。
図1は本発明の乗用型田植機の全体側面図、図2は全体平面図である。図3は図1の乗用型田植機の走行車両の伝動構成を示す概略平面図であり、図4はミッションケースの展開断面図である。
【0014】
図1の側面図に示すように、乗用型田植機は走行車両1には横リンク2aと縦リンク2bからなる昇降用リンク装置2で作業装置の一種である苗植付装置3を装着すると共に施肥装置4を設け、全体で乗用施肥田植機として機能するように構成されている。走行車両1は、駆動輪である左右各一対の前輪6、6および後輪7、7を有する四輪駆動車両である。
【0015】
メインフレーム10の上にミッションケース11とエンジン12が前後に配設されており、該ミッションケース11の後部上面に油圧ポンプ13が一体に組み付けられ、またミッションケース11の前部からステアリングポスト14が上方に突設されている。
【0016】
そして、ステアリングポスト14の上端部にステアリングハンドル16と操作パネル17が設けられている。機体の上部には操縦用のフロアとなるステップ19が取り付けられ、エンジン12の上方部に操縦席20が設置されている。前輪6、6は、ミッションケース11の側方に向きを変更可能に設けた前輪支持ケース22、22に軸支されている。また、後輪7、7は、ローリング杆23の左右両端部に一体に取り付けた後輪支持ケース24、24に軸支されている。ローリング杆23はメインフレーム10の後端部に突設したローリング軸25で進行方向と垂直な面内で回動自在に支持されている。
【0017】
エンジン12の回転動力は、ベルト31(図3)を介して油圧ポンプ13の駆動軸であるカウンタ軸32に伝えられ、さらに該カウンタ軸32からベルト33を介して油圧式変速装置HSTの入力軸35に伝えられ、油圧式変速装置HSTの出力軸36からベルト(図示せず)を介してミッション入力軸34に伝えられる。
【0018】
なお、ミッション入力軸34上には、メインクラッチ43が設けられており、油圧式変速装置HSTの駆動力はメインクラッチ43を介してミッション入力軸34に伝動される。メインクラッチ43は周知の多板クラッチであり、図4に示すようにメインクラッチ軸側の摩擦板44とミッション入力軸側の摩擦板45、両摩擦板を押し付けるスプリング46、切替操作用の固定部材47と摺動部材48などから構成されている。
【0019】
ミッションケース11のケーシング40の前部には、ミッション入力軸34、カウンタ軸50、走行一次軸51、走行二次軸52、植付一次軸53、植付二次軸54がそれぞれ平行に支承されている。ミッション入力軸34のギヤG1とカウンタ軸50のギヤG2、およびギヤG2と走行一次軸51のギヤG3がそれぞれ互いに噛合しており、ミッション入力軸34の回転が走行一次軸51に順方向に伝えられる。
【0020】
主変速装置Kとして、走行一次軸51に前記ギヤG3とギヤG4がそれぞれ定位置に嵌着され、走行二次軸52に互いに一体に成形されたギヤG5、G6が軸方向に摺動自在に嵌合している。シフタ56でギヤG5、G6を移動させ、ギヤG4、G5が噛合すると低速の作業速、ギヤG3とギヤG6が噛合すると高速の路上走行速になる。
【0021】
また、植付一次軸53にはギヤG4に常時噛合するギヤG7とバックギヤG8が嵌着されており、ギヤG6をバックギヤG8に噛合させると後進速になる。ギヤG5、G6がいずれのギヤとも噛合しない位置がニュートラルになる。この主変速装置Kの操作するチェンジレバー90は操作パネル17に設けられている。
【0022】
また、株間変速装置Cとして、植付一次軸53に互いに一体に成形されたギヤG9、G10が軸方向に摺動自在に嵌合しているとともに、植付二次軸54にギヤG11、G12がそれぞれ取り付けられている。シフタ57でギヤG9、G10を適宜に移動させることにより、ギヤG9とギヤG11、ギヤG10とギヤG11、およびギヤG10とギヤG12の3通りの組み合わせが得られ、3段階の株間切替を行える。植付二次軸54からベベルギヤG13、G14を介して植付部伝動軸58に伝動される。
【0023】
ケーシング40の後部には、リヤアクスル60、60とフロントアクスル61、61が支承され、前記走行二次軸52からリヤデフ装置Dを介してリヤアクスル60、60に伝動されるとともに、リヤデフ装置Dからフロントデフ装置Eを介して左右フロントアクスル61、61に伝動される。そして、左右フロントアクスル61、61により各々左右前輪6、6が駆動回転される構成となっている。
【0024】
リヤデフ装置Dは、走行二次軸52のギヤG15に噛合するギヤG16が外周部に形成された容器63を備え、該容器内の縦軸64に取り付けた一次ベベルギヤG17と左右のリヤアクスル60、60に各別に取り付けた二次ベベルギヤG18、G18とが互いに噛合する状態で収納されており、各アクスルに伝動される駆動力が適宜変動するようになっている。
【0025】
フロントデフ装置Eもリヤデフ装置Dと同様の構成で、容器65、縦軸66、リヤデフ装置側のギヤG19、フロントデフ装置側のギヤG20、縦軸66に取り付けたベベルギヤG21、フロントアクスル61に取り付けたベベルギヤG22を備えている。上記リヤデフ装置Dおよびフロントデフ装置Eにはデフ機能を停止し、左右両アクスルに駆動力が均等に伝動されるようにするデフロック装置F、Hが設けられている。このデフロック装置F(H)は、容器63(65)に形成された爪69(70)とアクスルの角棒部に嵌合するデフロック部材71(72)の爪73(74)とアクスル60(61)を互いに固定するようになっている。この後輪のデフロック装置Fを操作するデフロックレバー91は操作パネル17に設けられている。
【0026】
なお、前輪のデフロック装置Hは、ステップ19に設けたデフロックペダル91’を踏み込むとデフ機能が停止される構成となっている。このデフロックレバー91及びデフロックペダル91’(図2)は、共に機体の前部に配置されており、例えば圃場の畦を乗り越えて機体を圃場から出す時等に、操縦者は機体から降りて機体の前方に立って(自分の身体をウエイト代わりにするために機体の前端部に乗って)機体を前進若しくは後進させてこの畦越えを安全に行う。
【0027】
この時、左右前輪6、6の何れか又は左右後輪7、7の何れかが空回りした場合に即座に操縦者は機体前部にあるデフロックレバー91及びデフロックペダル91’を容易な姿勢で操作できてデフロック状態にして安全に畦越えを行うことができる。
【0028】
リヤアクスル60、60はベベルギヤG23、G24、…によってサイドクラッチ軸76、76に伝動連結され、さらに該サイドクラッチ軸76、76からリヤ出力軸77、77にサイドクラッチI、Iを介して伝動される。サイドクラッチIは多板クラッチであり、サイドクラッチ軸側の摩擦板80、リヤ出力軸側の摩擦板81を備えている。リヤ出力軸77に摺動自在に嵌合する作動筒82は、板ばね83によって両摩擦板80、81を押し付ける方向に付勢されており、常時はサイドクラッチIが入った状態となっている。シフタ85Iで作動筒82を付勢方向と逆向きに移動させると、サイドクラッチIが切れる。
【0029】
更に、リヤ出力軸77、77には後輪ブレーキ装置J、Jが設けられている。後輪ブレーキ装置Jは、リヤ出力軸77に取り付けたディスク87、…にプレッシャプレート88、…を押し付けて制動するものであり、このプレッシャプレート88、…の作動はシフタ85Jで行う。すなわち、常時はサイドクラッチIが入で、後輪ブレーキ装置Jが掛かっていない状態であり、シフタ85Iを操作して作動筒82を付勢方向と逆向きに移動させるとサイドクラッチIが切れ、シフタ85Jを操作すると後輪ブレーキ装置Jが掛かるのである。後輪ブレーキ装置Jの操作(左右シフタ85Jの操作)は、後述のステップ19上に設けたペダル140で行う。なお、左右シフタ85Iには、左右クラッチ操作アーム86I(図5)の基部が固着されており、左右シフタ85Jには、左右ブレーキ操作アーム86Jの基部が固着されている。
【0030】
リヤ出力軸77、77の後端部はケーシング40外に突出し、この突出端部に前記後輪支持ケース24、24に伝動する左右後輪伝動軸89、89が接続されている。そして、この左右後輪伝動軸89、89により各々左右後輪7、7が駆動回転される構成となっている。
【0031】
チェンジレバー90の操作位置は、後進速、ニュートラル、作業速、路上走行速位置がある。また、デフロックレバー91を前方に操作するとデフロック、後方に操作するとデフオンとなる。
【0032】
従って、圃場内で田植作業を行なう場合には、デフロックレバー91をデフロックにし、チェンジレバーを作業速にシフトし、苗植付装置3の苗載台に苗を載置し施肥装置4の肥料タンクに粒状肥料を入れて、各部を駆動させて前進すると、左右後輪7、7のデフロック装置Fはデフロックされてデフ機能が停止した状態であるので、機体の直進性が良くて良好な田植作業と施肥作業が同時に行なえる。また、路上走行の場合には、リヤデフ装置D及びフロントデフ装置E共にデフ機能が働く状態に操作すれば、安全に走行できる。
【0033】
図1及び図2には、機体前部に設けた予備苗載台200と直進走行の指標とするセンターマスコット201を示す。
また、機体本体の前方部両側には苗植付けの条合わせの目安となるサイドマーカー210を機体本体の前方部両側に設けているが、サイドマーカー210の先端に機体の前後方向に平行な棒210aを配置することで、苗植付けの条合わせを行うときに機体が隣接条に平行になっているを容易に確認できるようになる。
【0034】
苗植付装置3は、走行車両1に昇降用リンク装置2で昇降自在に装着されているが、その昇降させる構成と苗植付装置3の構成について説明する。先ず、走行車両1に基部が回動自在に設けられた一般的な油圧シリンダー160(図1)のピストン上端部を昇降用リンク装置2に連結し、走行車両1に設けた油圧ポンプ13にて電磁油圧バルブ161(図21)を介して油圧シリンダー160に圧油を供給・排出して、油圧シリンダー160のピストンを伸進・縮退させて昇降用リンク装置2に連結した苗植付装置3が上下動されるように構成されている。
【0035】
苗植付装置3は、昇降用リンク装置2の後部にローリング軸(図示せず)を介してローリング自在に装着されたフレームを兼ねる植付伝動ケース162と、該植付伝動ケース162に設けられた支持部材に支持されて機体左右方向に往復動する苗載台163と、植付伝動ケース162の後端部に装着され前記苗載台163の下端より1株分づつの苗を分割して圃場に植え付ける苗植付け具164…と、植付伝動ケース162の下部にその後部が枢支されてその前部が上下揺動自在に装着された整地体であるセンターフロート165、サイドフロート166…等にて構成されている。センターフロート165、サイドフロート166…は、圃場を整地すると共に苗植付け具164…にて苗が植付けられる圃場の前方を整地すべく設けられている。
【0036】
PTO伝動軸167は両端にユニバーサルジョイントを有し、施肥駆動ケース168の動力を苗植付装置3の植付伝動ケース162に伝達すべく設けている。センターフロートセンサー169はセンターフロート165前部の上下位置を検出するポテンショメータにより構成され、センターフロート165の前部上面とリンクにより連携されている。そして、センターフロートセンサー169のセンターフロート165前部の上下位置検出に基づいて、制御装置170(図21)の苗植付装置昇降手段により電磁油圧バルブ161を制御して油圧シリンダー160にて苗植付装置3の上下位置を制御するように構成されている。
【0037】
即ち、制御装置170はセンサフロート165前部に設けた迎い角センサ202の検出に基づいてセンターフロート165の前部が外力にて適正範囲以上に持ち上げられた時には油圧ポンプ13にてミッションケース11内から汲み出された圧油を油圧シリンダー160に送り込んでピストンを突出させ昇降用リンク装置2を上動させて苗植付装置3を所定位置まで上昇させ、また、センターフロート165の前部が適正範囲以上に下がった時には油圧シリンダー160内の圧油をミッションケース11内に戻して昇降用リンク装置2を下動させて苗植付装置3を所定位置まで下降させ、そして、センターフロート165の前部が適正範囲にあるとき(苗植付装置3が適正な所定位置にある時)には油圧シリンダー160内の圧油の出入りを止めて苗植付装置3を一定位置に保持させるべく設けられている。このように、センターフロート165を苗植付装置3の自動高さ制御のための接地センサーとして用いている。
【0038】
迎い角センサ202は、苗植付装置3の対地高さを検出するものであり、該迎い角センサ202の検出値に基づいて、制御装置170(図21)により昇降バルブ(図示せず)を制御してリフトシリンダー160にて苗植付装置3の上下位置を制御するように構成されている。
【0039】
すなわち、リフトシリンダー160で昇降用リンク装置2を、例えば上動させて苗植付装置3を所定位置まで上動させ、また、センターフロート165の前部が適正範囲以上に下がったことを迎い角センサ202により検出した時にはリフトシリンダー160内の圧油をミッションケース11内に戻して昇降用リンク装置2を下動させて苗植付装置3を所定位置まで下降させる。そして、センターフロート165の前部が適正範囲にあるとき(迎い角センサ202の検出値が適正範囲にあり、苗植付装置3が適正な対地高さである時)にはリフトシリンダー160内の圧油の出入りを止めて苗植付装置3を一定位置に保持せしめるべく設けられている。
【0040】
即ち、センターフロート165の前部が外力にて適正範囲以上に持ち上げられたことを迎い角センサ202により検出した時には油圧ポンプ13にてミッションケース11内から汲み出された圧油をリフトシリンダー160に送り込んでピストンを突出させて昇降用リンク装置2を上動させて苗植付装置3を所定位置まで上昇させ、また、センターフロート165の前部が適正範囲以上に下がったことを迎い角センサ202により検出した時にはリフトシリンダー160内の圧油をミッションケース11内に戻して昇降用リンク装置2を下動させて苗植付装置3を所定位置まで下降させる。そして、センターフロート165の前部が適正範囲にあるとき(迎い角センサ202の検出値が適正範囲にあり、苗植付装置3が適正な対地高さである時)にはリフトシリンダー160内の圧油の出入りを止めて苗植付装置3を一定位置に保持させるように設けられている。このように、センターフロート165を苗植付装置3の自動高さ制御のための接地センサーとして用いている。
【0041】
ステアリングハンドル16の下方にフィンガーレバー171(図2)が配置され、該フィンガーレバー171を上下方向に操作するとポテンショメータにより構成されるフィンガーレバースイッチ172(図21)が作動されて、制御装置170のPTOクラッチ作動手段によりPTOクラッチ作動ソレノイド173を操作して、施肥駆動ケース168内に設けられた動力を断接するPTOクラッチを操作して施肥装置4及び苗植付装置3への動力を入切り操作できるように構成されていると共に、制御装置170の苗植付装置昇降手段により、電磁油圧バルブ161を操作して手動にて苗植付装置3を上下動できるように構成されている。
【0042】
即ち、フィンガーレバー171を「上」に操作すると、PTOクラッチが切れ施肥装置4及び苗植付装置3の作動が停止し且つ電磁油圧バルブ161が強制的に苗植付装置3を上昇する側に切換えられる。
【0043】
そして、フィンガーレバー171を「上」に操作した後に、フィンガーレバー171を「下」に1回操作すると、電磁油圧バルブ161がセンターフロート165の上下動にて切換えられる自動制御状態となり、苗植付装置3が上昇された状態であればセンターフロート165が接地して適正姿勢になるまで苗植付装置3は下降する。更にもう一回、フィンガーレバー171を「下」に操作すると、電磁油圧バルブ161がセンターフロート165の上下動にて切換えられる自動制御状態のままで、PTOクラッチが入り施肥装置4及び苗植付装置3が駆動される。以降、フィンガーレバー171を「下」に操作する度に、電磁油圧バルブ161がセンターフロート165の上下動にて切換えられる自動制御状態のままで、PTOクラッチが入りと切りに交互に切り換えられる。
【0044】
ここで、ステアリングハンドル16にて前輪6、6が操向操作される部分の構成について図5と図6に基づいて説明する。
ステアリングハンドル16は、ステアリングポスト14内に設けられたステアリング軸上部に固定されており、ステアリング軸の回転はミッションケース11内に設けられたステアリング変速歯車を介して減速されて出力軸174に伝動される。そして、出力軸174の下端は、ミッションケース11底面から突出してピットマンアーム175が固定されている。該ピットマンアーム175の前部左右側と左右前輪支持ケース22、22(図1)とは左右ロッド176、176(図1)にて連結されている。
【0045】
従って、ステアリングハンドル16を回動操作すると、ステアリング軸・ステアリング変速歯車・出力軸174・ピットマンアーム175・左右ロッド176、176・左右前輪支持ケース22、22へと伝達されて、左右前輪6、6が左右操向操作される。
【0046】
一方、ピットマンアーム175の後部上面には、作動ローラ177が回転自在に設けられており、その作動ローラ177の左右両側を囲むように平面視でコ字状に切り欠かれた切欠き部178を有する従動体179がミッションケース11の底面に回動自在に支持されている。そして、従動体179の左右両側部には、前記左右クラッチ操作アーム86I、86Iに連結された左右ロッド180、180の前部が連結されている。従って、ステアリングハンドル16を所定量(機体を右旋回させる意思を持って作業者が右に回す量)以上右に回すと、ピットマンアーム175も右回動し、作動ローラ177が(ハ)方行に回動し従動体179の切欠き部178の左側面178aを押すために、従動体179を(ニ)方向に回動させ右ロッド180を引き、右クラッチ操作アーム86Iが操作されて右サイドクラッチIが切れ、旋回中心側の右後輪7が遊転状態となるので、右後輪7が耕盤を傷めることなく、また、泥土を多量に持ち上げて泥面を荒してしまうようなこともなく、右旋回がスムーズできれいにできる。
【0047】
逆に、ステアリングハンドル16を所定量以上左に回すと、ピットマンアーム175も左回動し、作動ローラ177が反(ハ)方行に回動し、従動体179の切欠き部178の右側面178bを押すために、従動体179を反(ニ)方向に回動させ、左ロッド180を引き、左クラッチ操作アーム86Iが操作されて左サイドクラッチIが切れ、旋回中心側の左後輪7が遊転状態となるので、左後輪7が耕盤を傷めることなく、また、泥土を多量に持ち上げて泥面を荒してしまうようなこともなく、左旋回がスムーズできれいにできる。
【0048】
更に、ピットマンアーム175の前部上面には、左右センサ押片182、182が設けられており、ステアリングハンドル16を左右何れかに200度回転させると、ミッションケース11の底面に固定されたオートリフトスイッチ183がONになる(ステアリングハンドル16は左右に最大360度〜400度回転する)。
【0049】
上記した実施例では、ステアリングハンドル16の所定角以上の操作により、旋回内側の後輪7のサイドクラッチIを切る例を示したが、サイドクラッチスイッチを操作パネル17に設けておき、手動でサイドクラッチIの「切」が可能な構成にしても良い。又は、サイドクラッチペダルにより、手動でサイドクラッチIの「切」が可能な構成にしても良い。
【0050】
また、ステアリングハンドル16の所定角以上の操作により、旋回内側の後輪7のサイドクラッチIを切る例を示したが、ステアリングハンドル16の所定角以上の操作により、旋回内側の後輪7のサイドブレーキJを作動する構成にして車両を旋回させても良い。
【0051】
図5に示すサイドクラッチ切断タイミング固定式では、路上走行を考慮して切断タイミングを早めにすると深い圃場では旋回不能となり、逆に圃場を考慮してタイミングを遅くすると路上で旋回しにくくなることがある。
【0052】
そこで、図7に示すようにステアリングハンドル16から左右の連動ロッド180までの間にスペーサプレート187などの融通機構を設けて、その融通量を変更してサイドクラッチIまたはサイドブレーキJの作動タイミングを変更することができる。図7(a)はクラッチ連動機構部分の平面図であり、図7(b)はスペーサプレート187の連動機構部分を示すクラッチ連動機構部分の側面図である。
【0053】
スペーサプレート187は従動体179の中央に回動支点187aを備えているので、チェンジレバー90の操作に連動させてスペーサプレート187を回動支点187aを中心にして回動させることで、スペーサプレート187を従動体179上に着脱自在に作動することができる。スペーサプレート187が従動体179に図7(a)に示すように重ねられると、左右ロッド180に付属するバネ181の付勢力により、スペーサプレート187を従動体179に押圧する。
【0054】
上記構成からなるクラッチ連動機構においてチェンジレバー90の操作で移動速が選択されると、スペーサプレート187が従動体179に図7(a)に示すように重ねられるので、ステアリングハンドル16の回動に比較的早いタイミングでサイドクラッチIが切れる。またチェンジレバー90で植付速が選択されると、図7(b)に示すようにスペーサプレート187は従動体179から外れるので、ステアリングハンドル16の回動に比較的遅いタイミングでサイドクラッチIが切れる。こうしてサイドクラッチIの作動タイミングを変更することができる。また図示していないが、同様にサイドブレーキJの作動タイミングを変更することもできる。
【0055】
また図8に示すように移動速と植付速でそれぞれ異なる従動体179a,179bを用いてステアリングハンドル16により左右の連動ロッド180を作動させてサイドクラッチI(またはサイドブレーキJ)の作動タイミングを変更することができる。図8(a)はクラッチ連動機構部分の平面図であり、図8(b)は従動体179a,179b部分の背面図である。
【0056】
従動体179bのピットマンアーム175の当接面の湾曲部の形状を従動体179aのピットマンアーム175の当接面の湾曲部の形状に比べて大きくしておき、従動体179a,179bの回動中心を179cとしている。こうしてチェンジレバー90の移動速側への操作に連動させて、従動体179a,179bの積層部分にロックピン179dを貫通させておくと、移動速従動体179aと植付速従動体179bが固定され、移動速従動体179aが作動して、移動速の作動タイミングに合わせてサイドクラッチIが比較的早いタイミングで作動する。また、チェンジレバー90の植付速側への操作に連動させて従動体179a,179bの積層部分のロックピン179dを抜くと、植付速従動体179bのみが作動して比較的遅いタイミングでサイドクラッチIが作動する。
【0057】
こうして路上走行時の移動速と圃場での苗などの植付時の植付速において、それぞれ適切なタイミングでクラッチIを切ることができる。同様にサイドブレーキJの作動タイミングを変更することもできる。
【0058】
図5に示す構成は、ピットマンアーム175からロッド180を設けて後輪サイドクラッチIを切る機構であり、ロッド180がサイドクラッチIを切ってからもピットマンアーム175を回転させるために余分の負荷がロッド180に作用する欠点があり、ロッド180の逃げが必要であった。
【0059】
しかし、図9のクラッチ連動機構部分の平面図に示すように、従動体179として図示のような凸部を有するカム形状にすることにより、ピットマンアーム175を回転させるために余分の負荷が作用しないので、ステアリングハンドル16の回転角度は所定角度以上になるとサイドクラッチIが切れた状態となり、左右のロッド180に負荷が作用しない。
【0060】
図9に示すピットマンアーム175は回動中心175aを中心に回動するが、凸部を有する従動体179も回動中心179cを中心に回動する。二つの回動中心175a、179cは機体に固定されている。また、前記ピットマンアーム175には三角翼175bが固着しており、該三角翼175bの両方の先端には一対のコロ175d,175dが設けられている。該一対のコロ175d,175dは従動体179の凸部の側面に摺動自在に回転するように、従動体179の凸部のコロ175dとの当接面には全域に亘りピットマンアーム175の回動中心175aから適宜の決められた間隔になるように曲面が形成されている。
【0061】
上記構成により、ハンドル16の回転で連動ロッド180がサイドクラッチIを「切り」にした状態から、更に余分に作動しないため、その余分な作動ストロークによるサイドクラッチIに備えている付勢スプリングなどに余分な負荷が発生しない。
【0062】
図5に示す構成ではロッド180の逃げのためのスプリングや余分なロッド長などが必要であったが、図9に示す構成により、比較的低コストとなる。
また図9に示す構成の変形例として、図10に示すように従動体179の凸部側面に当接する偏心ローラ189をピットマンアーム175に設けることにより、サイドクラッチIの切れ角を変えることができる。これは、従動体179を押す偏心ローラ189の偏心位置を選択して、従動体179と偏心ローラ189との間隔を調整して、選択された偏心位置でローラ189をピットマンアーム175に固定することにより偏心ローラ189の回転軸189aと従動体179の凸部側面との距離を変えて従動体179の動くタイミングを変化させてサイドクラッチIの作動タイミングを変えることができる。
【0063】
図11には図10に示した偏心ローラ189の回転軸189aと従動体179の凸部側面との間隔を変えるための方法を示すが、従動体179の凸部の側面に摺動自在に回転するように設けた偏心ローラ189の回転軸189aとチェンジレバー90をケーブルで接続し、チェンジレバー90を操作することで、偏心ローラ189の偏心位置を選択して、従動体179と偏心ローラ189の回転軸189aとの間隔を調整して、選択された偏心位置でローラ189をピットマンアーム175に固定し、従動体179の動きを植付速と移動速で変化させ、植付速と移動速の旋回走行角度を変化させることができる。
【0064】
上記図8、図9、図10、図11に示す構成は同様にサイドブレーキJの作動タイミングを変更することもできる。
前記ステアリングハンドル16の旋回操作により、左右の連動ロッド180によりサイドクラッチI(またはサイドブレーキJ)を作動させている場合に、旋回内側の後輪7には駆動力が伝わらないため深い圃場では旋回不能になることが多かった。
【0065】
このように旋回内側の後輪7の回転が止まって、旋回不能になった場合に図12に示すLSD(Limited Slip Defferential)をフロント側に集中させたミッションケース11内の後輪7用のサイドクラッチIの間に設けることでエンジン駆動力を旋回内側の後輪7に伝達するようにした。
【0066】
これは、路上や標準田での旋回時は旋回内側の後輪7はサイドクラッチIが切れた状態で回転しているため動力が伝わっている。しかし旋回内側の後輪7と旋回外側車輪7との回転差が少ないためLSDは働かないが、湿田で旋回不能になった場合には内側の後輪7は回転しないため、旋回外側の後輪7との回転差が大きくなり、自動的にLSDが働き、旋回内側の後輪7に動力を伝えることができる。
【0067】
こうして、旋回内側の後輪7の回転が止まって旋回不能になった場合でもスリップ防止による旋回性能向上効果がある。
同様にステアリングハンドル16の旋回操作により、左右の連動ロッド180により後輪用のサイドクラッチI(またはサイドブレーキJ)を作動させている場合に左右後輪サイドクラッチI,Iを同一軸上に配置した構成において、湿田などで旋回不能となった場合に対応できるように図13に示すようなLSD機能により駆動力を伝速するようにした構成してもよい。
【0068】
また、図14に示すように、フロントミッションケース11内に左右後輪サイドクラッチIが平行に並んで配置されている構成において、ステアリングハンドル16の旋回操作により、左右の連動ロッド180で後輪用のサイドクラッチI(またはサイドブレーキJ)を切っても旋回不能となり、旋回内側の後輪7の回転が止まった場合においても、LSD機能により駆動力を伝速することができる。
【0069】
また、フロントミッションケース11内に左右後輪サイドクラッチIが同一軸上に配置されている場合に旋回不能となり、旋回内側の後輪7の回転が止まった場合に、図15に示すようにLSD機能により駆動力を伝速するようにした構成にフロントデフ装置Eがデフロック作動(作動制限)するように電気的に連動する構成を追加した。
【0070】
従来ステアリングハンドル16の旋回操作により、左右の連動ロッド180により後輪用のサイドクラッチI(またはサイドブレーキJ)を切った場合に、旋回内側の後輪7には駆動力が伝わらないため、深い圃場では旋回不能になることが多かった。また、旋回不能になった場合、フロンドデフロック装置H(図4参照)を操作する必要があり、湿田では旋回毎に操作が必要となっていたが、図15に示すようにLSD機能が作動すると自動的にフロントデフ装置Eが作動するようにしたので、湿田での操向操作性能を向上できる。
【0071】
またミッションケース11内に左右後輪サイドクラッチIが同一軸上に配置されている場合に旋回不能となり、旋回内側の後輪7の回転が止まった場合に、図16に示すようにLSD機能により駆動力を伝速するようにした構成にフロントデフ装置Eが作動するように電気的に連動する構成を追加してもよい。
【0072】
また、図21に示す後輪伝動軸回転数センサ205で左右の後輪伝動軸89の回転数の差検出し、制御装置100により回転数が少ない方へ向けてステアリングハンドル16のパワーアシストを電気的にする構成を採用すると、直進走行性が従来より良くなる。制御のフローを図17に示すが、直進走行性が良くなると、直進しながらの苗植付ができ、また畦超えやトラックに機体を積込む時の安全性が従来より向上する。
【0073】
また、図18のフローに示すように、旋回時以外の走行時に後輪伝動軸回転数センサ205で左右の後輪伝動軸89の回転数の差を検出し、さらに機体傾斜センサ193で機体の傾斜を検出するとデフロック装置F又はHを作動させることで、畦超えやトラックに機体を積込む時における車両の走行安全性が従来より良くなる。
【0074】
また、旋回時以外の走行時に後輪伝動軸回転数センサ205で左右の後輪伝動軸89の回転数の差を検出し、さらに機体傾斜センサ193(図21)で機体の傾斜を検出すると、HSTを中立にして、走行をストップさせて、車両の安全性を保つこともできる。
【0075】
旋回時以外の走行時に後輪伝動軸回転数センサ205で左右の後輪伝動軸89の回転数の差を検出し、さらに機体傾斜センサ193で機体の傾斜を検出すると左右後輪のブレーキ装置Jを作動させて、車両の安全性を保つこともできる。
【0076】
次に、後進時に苗植付装置3を自動的に上昇させる制御構成について説明する。先ず、図19に示すように、チェンジレバー90を後進速に操作すると、チェンジレバー90の基部に設けた接当片190が接当してONになるバックリフトスイッチ191が設けられており、制御装置170(図21)の苗植付装置上昇手段により電磁油圧バルブ161を制御して油圧シリンダー160にて苗植付装置3を最大位置まで上昇させるように構成されている。
【0077】
このように、チェンジレバー90を後進速に操作すると、自動的に苗植付装置3を最大位置まで上昇させるように構成しておくと、圃場の畦際で機体を旋回させるため等に機体を畦に向かって後進させる時に、自動的に苗植付装置3は最大位置まで上昇しているので、苗植付装置3が畦に衝突して破損することが未然に防止でき作業性が良い。
【0078】
また、前記ステアリングハンドル16を左右何れかに200度回転させた時に図21に示すオートリフトスイッチ183がONになると、制御装置170の苗植付装置上昇手段により電磁油圧バルブ161を制御して油圧シリンダー160にて苗植付装置3を最大位置まで上昇させるように構成されている。
【0079】
このように、畦際で機体を旋回させるためにステアリングハンドル16を左右何れかに最大限まで回転させると、オートリフトスイッチ183がONになり、自動的に苗植付装置3は最大位置まで上昇するので、機体旋回時に苗植付装置3を上昇させる操作が不要となり、能率良く機体旋回が行えて作業性が良い。
【0080】
一方、操作パネル17には、苗植付装置3の自動上昇を行わせる状態と行わせない状態とに切替える自動リフト切替えスイッチ192が設けられており、即ち、自動リフト切替えスイッチ192を自動にしていると、上記のようにバックリフトスイッチ191がONになるかオートリフトスイッチ183がONになると自動的に苗植付装置3は制御装置170の苗植付装置上昇手段により自動上昇される。そして、自動リフト切替えスイッチ192をOFFにしていると、バックリフトスイッチ191がONになってもオートリフトスイッチ183がONになっても苗植付装置3は自動上昇されない。
【0081】
このように、一つの自動リフト切替えスイッチ192で、バックリフトスイッチ191がONになってもオートリフトスイッチ183がONになっても苗植付装置3は自動上昇されない状態にすることができるので、バックリフトとオートリフトの各々を入り切りするスイッチを別々に設けた構成よりも簡潔な構成となり、一つのスイッチで両者の状態切替えが行えるので、操作ミスが少なくなり作業性が良い。
【0082】
なお、自動リフト切替えスイッチ192をOFFにして、バックリフトスイッチ191がONになってもオートリフトスイッチ183がONになっても苗植付装置3が自動上昇しない状態にしておくと、機体を後進で納屋等にしまう時にチェンジレバー90を後進速に操作しても苗植付装置3が自動上昇しないので、苗植付装置3を下げたまま後進することができ、納屋の入口上部や納屋内の他の部材に苗植付装置3をぶつけてしまうような事態が回避できる。また、扇型やひょうたん型等の変形圃場で畦際に沿って周り植えをする場合に、曲がった畦に沿ってステアリングハンドル16を回しながら植付け作業を行うが、この時に、自動リフト切替えスイッチ192を自動位置にしていると、ステアリングハンドル16を左右何れかに200度以上回転すると自動的に苗植付装置3が上昇してしまい植付け作業が行えないが、自動リフト切替えスイッチ192をOFFにしていると、ステアリングハンドル16を左右何れかに200度以上回転しても苗植付装置3は上昇しないので植付け作業が行え、変形圃場でも適切に苗植付け作業が行える。
【0083】
上記構成からなる本実施例の田植機では、枕地幅に対応する田植機の走行距離を予め制御装置170内に設定しておいて、畦際から発進時にスタートボタン(スイッチ)184を押す等の操作により、設定された枕地幅になると苗の植え付けを自動的に開始できる制御モード(苗植付時のスタート位置設定モード)を制御装置170(図21)内に設定しても良い。
【0084】
図20に苗植付け開始位置で苗植付動作を行うためのフロートチャートを示し、図21に図20に示す乗用型田植機の制御系のブロック回路図を示す。
植付け状態でなくセンターフロートが接地状態である、すなわちフローティングターンで整地作業をしながら旋回して、ステップaで苗植付作業用のスタートスイッチが入ると「C=1」を入力しておき、左右ドライブシャフトの回転板(n3)により前進距離を測定する。上記ステップaで苗植付作業用のスタートスイッチが「切」であると「C=1」が入力され、設定した距離(N3)以上進むと苗植付装置3を「入」状態として、上記前進距離の測定を中止して、記憶値をクリヤにする。またステップaで苗植付作業用のスタートスイッチが「切」である「C=0」を入力し、ステップbに飛ぶ。
【0085】
ステップbで畦クラッチが「入」であると、C=1の場合、すなわち苗植付作業用のスタートスイッチが「入」である場合には、苗植付を行う。その後ハンドル16による旋回操作が行われると図23の旋回モードに入るが上記ステップbで畦クラッチが「切」であると「C=0」を入力しておく。
【0086】
また、上記枕地などの苗植付時のスタート位置設定モードにおいて、苗の植え付け開始位置が予め設定した値とはずれることがあるので、そのような場合に備えて、オペレータが、たとえばスタート位置調節ダイヤル186などで任意に枕地幅を調節し直して新たな枕地幅とすることができるようにしてもよい。
【0087】
上記苗植付時のスタート位置設定モードは、設定した苗植付時のスタート位置(畦際からの苗植付開始する位置までの距離:枕地幅)をリセットするまでは苗植付作業をする圃場が変わっても記憶するように構成したので、例えば、苗植付作業を午前中行い、昼休み後に再開する場合にもそのまま利用できる。
上記した苗植付時のスタート位置の設定を行うことにより、自動で苗の植え付け開始が可能となり、枕地植え処理をする場合あらかじめ枕地植え条数を設定しておけば、圃場での一番最初の植え始め位置を自動で設定することができ、補植、過繁茂を減らせる。
【0088】
また、上記構成からなる田植機では、本実施例の制御装置170は旋回内側の後輪7の回転数の検出に基づいて、旋回時の苗植え付けなどの諸作動を自動的に行わせる旋回連動制御ができる。特に、旋回内側の後輪7が所定角度以上操舵されているときに、前記旋回連動制御ができる。
【0089】
この制御の考え方を図22と表1に示す。
【0090】
【表1】
すなわち、ステアリングハンドル16を切り、旋回内側の後輪7のサイドクラッチIが切れた状態で、左右ドライブシャフト(伝動軸)89の回転数を検出し、旋回時の内側の後輪7の伝動軸回転数が設定値N1を超えると苗植付装置3を降下させる。その後、後輪7の伝動軸回転数が設定値N2と苗植付け具164の作動が「切り」状態に入って(=苗植付装置3が上げ状態に移って)からステアリングハンドル16の切り操作開始までの後輪の伝動軸89の回転数nの合計値以上になると植付「入」にする機構である。
【0091】
上記旋回連動制御のフローを図23に示す。
まず、左右の後輪の伝動軸89の回転数を伝動軸回転数センサ205で検出し、また基準値N1(旋回開始から機体90°旋回までの内側ドライブシャフト回転信号設定値)、N2(機体90°旋回から植付クラッチ「入り」までのドライブシャフト回転信号設定値)、θ1((直進操作時のハンドル切り設定角度の)下限値)、θ2((直進操作時のハンドル切り設定角度の)上限値)をセットする。
【0092】
次いで、圃場の硬軟や水深、耕盤深さ等の圃場条件の相違に対応するために、前記回転数N1、N2及びハンドル切り角度θ1、θ2の各設定値を調節する設定ダイヤル206〜209により、補正値n0を設定する。
【0093】
苗植付装置3の苗植付け具164が苗の植え付け状態にあるか無いかをフィンガーレバー171の操作に伴う制御装置170の状態で検出して、植付「入」から植付「切」になったとき、苗植付け具164の作動が「入り」状態に入ってから苗植付け具164の作動が「切り」状態になるまでの後輪7の伝動軸89の回転数nを伝動軸回転数センサ205で検出して、その値(n)を記憶しておく。次いで、ステアリングハンドル16の切り角度(操舵角度)θをステアリングハンドル16のシャフトに設けたハンドル切れ角センサ(ポテンショメータ)193(図21)で検出して直進時(θ1<θ<θ2)以外の時には左右のいずれかの方向に旋回中であるかどうかを検出する。
【0094】
左旋回中であると左後輪7の伝動軸89の回転数を検出して、回転数n1がn1≧N1+n0になると、旋回開始から機体が90度以上旋回したことになるので苗植付け具164を下げる。この苗植付け具164の降下で枕地が均平化される。
【0095】
引き続き、左後輪7の伝動軸89の回転数を検出して、回転数n2がn2≧N2+n+n0になると、苗植付け具164を作動させて苗の植え付けを開始させる。
右旋回の場合にも左旋回時と全く同様の制御が行われる。
【0096】
なお、前記旋回制御時には植付部「下げ」から植付「入り」までの間に苗植付装置3の油圧シリンダー160の油圧感度を鈍感(上昇側に切り替わらない)状態にすることでセンターフロート165などを前上がり状態にすることが望ましい。これはセンタフロートセンサー169の制御目標をセンターフロート165が前上がり状態になるように設定することで行え、センターフロート165を前上がり状態にすることで旋回跡を均平にすることができ、枕地処理が容易に精度よく行える。
【0097】
このようにサイドクラッチIが切れている後輪7の伝動軸(ドライブシャフト)89の回転数を検出するため、動力の伝わっている後輪7の回転数検出に比べてよりスリップなどの影響を受け難い特徴がある。また、後輪7より回転の速いドライブシャフト89の回転数を検出するため、容易にその測定精度をあげることができる。その結果、各植え付け条毎の苗の植え付け始めがほぼ一定(枕地幅(D)が一定)となる効果がある。
【0098】
また、本発明では、上記図23に示す一連の旋回制御の諸動作を行う旋回制御のスタートボタン(スイッチ)184を上記苗植付のスタート位置の設定を行うボタンとして兼用してもよい。
【0099】
このように、畦際からの発進して苗植付のスタート位置の設定を行うボタンと前記一連の旋回制御の諸動作を行う旋回制御のスタートボタン(スイッチ)184と兼用することによりボタン操作の忘れを防止できる。
【0100】
また、前記スタートボタン(スイッチ)184を押す操作により、前記図23で示す一連の旋回制御の諸動作を自動的に行う旋回制御装置を備えた田植機において、何れかの畦クラッチを「切」にすることにより旋回制御が解除状態になるように構成してもよい。
【0101】
畦クラッチは図示していないが、各苗植付装置3に設けられた苗植付具に田植機本体からの駆動力を伝達するためのものであり、植付(畦)クラッチが「切」となると、苗の植付ができない状態となる。植付(畦)クラッチを「切」にした後は枕地植えをすることが大半であるため、前記一連の旋回制御の諸動作は不要になり、逆に前記一連の旋回制御の諸動作があると、苗植付作業の邪魔になるので植付(畦)クラッチを「切」にする動作で旋回制御を解除できるため誤操作を防止できる。
【0102】
同様に「線引きマーカ(サイドマーカ210)の切」又は「後進」にする動作が選択された場合にも前記図23で示す一連の旋回制御の諸動作を自動的に解除状態にするように構成してもよい。
【0103】
なお、植付(畦 )クラッチの「入り」と「切り」は植付(畦 )クラッチレバーセンサ185で検知する。
本実施例の田植機は、前記苗植え始めの位置から自動で苗植え付けを開始するように植付スタート位置をスタートボタン(スイッチ)184、スタート位置調節ダイヤル186などで設定し、その後苗の植え付けを順次行うが、田植機が旋回すると図23で示す旋回制御モードの諸動作に従って旋回後に自動的に植付を開始する。
【0104】
このとき、スタートボタン(スイッチ)184、スタート位置調節ダイヤル186などで設定した枕地幅と図23で示す旋回制御モードの諸動作に従って旋回後に自動的に植付を開始する場合の枕地幅とはほぼ同一にしておくことで、枕地幅と各植付条で揃うことになる。
【符号の説明】
【0105】
1:走行車両、2:昇降用リンク装置、3:苗植付装置、6:前輪、7:後輪、12:エンジン、16:ステアリングハンドル、89:伝動軸、170:制御装置、175:ピットマンアーム、175a、179c:回動中心、175d:コロ、179:従動体、180:ロッド、189:偏心ローラ、I:サイドクラッチ
【技術分野】
【0001】
この発明は、乗用型田植機の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
乗用型田植機などの走行車両は整地フロートにより整地作業しながら苗の植え付けを行う苗植付装置を走行車両に対して昇降可能に設け、圃場面の検出に基づいて所望の対地高さとなるよう苗植付装置を昇降制御しながら苗植付装置により苗を圃場に植え付ける農作業機である。
【0003】
この種の乗用型田植機は、直進走行状態からハンドル操作をすることにより、変速装置の左右伝動軸へエンジン駆動力を伝達・非伝達するサイドクラッチ及び左右の伝動軸を回転不能にするブレーキを備えている。
【0004】
乗用型田植機の移動速(路上を直進する走行速)と苗植付装置を使用して圃場に苗を植え付け作業しながら走行する植付速では、ハンドル操作に連動して左右の車輪伝動軸の内、旋回内側の伝動軸にエンジン動力を伝達するサイドクラッチが切れて、当該伝動軸にエンジン動力が伝達されないようにした構成が採用されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−267257号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特開2003−267257号公報記載の乗用型田植機では、サイドクラッチを操作する操作機構(連動ロッド)の連結位置を切り替えてサイドクラッチの切断タイミングを変更する構成であるので、その切断タイミングの変更に伴って操作機構ひいてはサイドクラッチの作動ストローク全体がシフトし、作動ストロークの大きいサイドクラッチを要したり、操作機構に余分な負荷が発生して操作性が悪くなるおそれがある。
【0007】
本発明の課題は、旋回時の苗植え付けなどの諸作動を自動的に行わせることができるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は次の解決手段で達成できる。
請求項1記載の発明は、機体上に設けたエンジン(12)と、機体の進行方向に向かって左右に設けた左右前輪(6,6)及び左右後輪(7,7)と、該左右前輪(6,6)を操向操作する操向操作具(16)と、左右後輪(7,7)のそれぞれの伝動軸に設けたエンジン駆動力を伝達・非伝達するクラッチ(I,I)と、操向操作具(16)に連動して前記左右いずれかのクラッチ(I,I)を作動させる連動ロッド(180,180)とを備えた走行車両(1)を設け、該走行車両(1)には昇降用リンク装置(2)を介して苗植付装置(3)を装着した乗用型田植機において、操向操作具(16)による操向角度の検出により旋回中であると判断すると、後輪(7)の伝動軸(89)の回転数を検出し、該回転数が第一の設定値を超えると苗植付装置(3)を下降し、前記回転数が第二の設定値を超えると苗植付装置(3)を作動させる制御装置(170)を設けた乗用型田植機である。
【0009】
請求項2記載の発明は、操向操作具(16)の回動操作で第一の回動中心(175a)回りに回動するピットマンアーム(175)と、該ピットマンアーム(175)の回動に連動して第二の回動中心(179c)回りに回動する従動体(179)を設け、従動体(179)の中央部に凸部を設け、両端部には左右のクラッチ(I,I)を作動させる左右の連動ロッド(180,180)を左右各々接続し、ピットマンアーム(175)に設けた回転軸を中心に回転するローラ(175d、189)を設け、該ローラ(175d、189)と従動体(179)の凸部側面を当接させて配置することで、従動体(179)の回動で左右のクラッチ(I,I)が作動する構成とし、クラッチ(I)を切った状態から、操向操作具(16)の回動で連動ロッド(180)が更に余分に作動しないよう、従動体(179)のローラ(175d)との当接面は、第一の回動中心(175a)から決められた間隔となる曲面を備えた請求項1に記載の乗用型田植機である。
【0010】
請求項3記載の発明は、ローラ(189)を偏心ローラとし、該偏心ローラ(189)の偏心位置を選択して従動体(179)と偏心ローラ(189)の間隔を設定し、該設定された従動体(179)との偏心ローラ(189)の間隔に基づき、従動体(179)の動くタイミングを変化させて対応する左右のクラッチ(I,I)の作動タイミングを変更する作動タイミング変更手段を設けた請求項2記載の乗用型田植機である。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の発明によれば、旋回時の苗植え付けなどの諸作動を自動的に行わせることができる。
請求項2記載の発明の効果は、請求項1記載の効果に加えて、操向操作具(16)の回動で左右の連動ロッド(180,180)のいずれかが対応する左右のクラッチ(I,I)を作動させる状態からさらに余分に作動しないため、その余分な作動ストロークにより対応する左右のクラッチ(I,I)に備えている付勢スプリングなどに余分な負荷が発生しないようにできると共に、連動ロッド(180)の逃げのためのスプリングや余分なロッド長などが不要であるので比較的低コストとなる。
請求項3記載の発明の効果は、請求項2記載の効果に加えて、従動体(179)と偏心ローラ(189)の間隔を変更して容易にクラッチ(I,I)の作動タイミングを変更することができ、また、クラッチ(I,I)の作動タイミング変更手段のメンテナンスも従動体(179)と偏心ローラ(189)の間隔調整だけで良いので操作性が優れている。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施例である8条植え乗用型田植機を示す全体側面図である。
【図2】図1に示す乗用型田植機の全体平面図である。
【図3】図1に示す乗用型田植機の走行車両の伝動構成を示す概略平面図である。
【図4】図1に示す乗用型田植機のミッションケースの展開断面図である。
【図5】図1に示す乗用型田植機の主クラッチ及び後輪ブレーキの操作構成を示す平面図である。
【図6】図1に示す乗用型田植機の左右前輪の操向構成を示す斜視図である。
【図7】図1に示す乗用型田植機の左右前輪の操向構成の変形例を示す図である。
【図8】図1に示す乗用型田植機の左右前輪の操向構成の変形例を示す図である。
【図9】図1に示す乗用型田植機の左右前輪の操向構成の変形例を示す図である。
【図10】図1に示す乗用型田植機の左右前輪の操向構成の変形例を示す図である。
【図11】図1に示す乗用型田植機の左右前輪の操向構成の変形例を示す図である。
【図12】図1に示す乗用型田植機の後輪用のサイドクラッチ作動用伝動部の構成図である。
【図13】図1に示す乗用型田植機の後輪用のサイドクラッチ作動用伝動部の構成図である。
【図14】図1に示す乗用型田植機の後輪用のサイドクラッチ作動用伝動部の構成図である。
【図15】図1に示す乗用型田植機の後輪用のサイドクラッチ作動用伝動部の構成図である。
【図16】図1に示す乗用型田植機の後輪用のサイドクラッチ作動用伝動部の構成図である。
【図17】図1に示す乗用型田植機の直進制御のフロー図である。
【図18】図1に示す乗用型田植機の直進制御のフロー図である。
【図19】図1に示す乗用型田植機のチェンジレバー部の斜視図である。
【図20】図1に示す乗用型田植機の苗植付け開始位置で苗植付動作を行うためのフローチャートである。
【図21】図1に示す乗用型田植機の制御系のブロック回路図である。
【図22】図1に示す乗用型田植機の旋回連動制御の考え方を示す図である。
【図23】図22の旋回連動制御のフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
この発明の一実施例である8条植え乗用型田植機を図面に基づき詳細に説明する。
図1は本発明の乗用型田植機の全体側面図、図2は全体平面図である。図3は図1の乗用型田植機の走行車両の伝動構成を示す概略平面図であり、図4はミッションケースの展開断面図である。
【0014】
図1の側面図に示すように、乗用型田植機は走行車両1には横リンク2aと縦リンク2bからなる昇降用リンク装置2で作業装置の一種である苗植付装置3を装着すると共に施肥装置4を設け、全体で乗用施肥田植機として機能するように構成されている。走行車両1は、駆動輪である左右各一対の前輪6、6および後輪7、7を有する四輪駆動車両である。
【0015】
メインフレーム10の上にミッションケース11とエンジン12が前後に配設されており、該ミッションケース11の後部上面に油圧ポンプ13が一体に組み付けられ、またミッションケース11の前部からステアリングポスト14が上方に突設されている。
【0016】
そして、ステアリングポスト14の上端部にステアリングハンドル16と操作パネル17が設けられている。機体の上部には操縦用のフロアとなるステップ19が取り付けられ、エンジン12の上方部に操縦席20が設置されている。前輪6、6は、ミッションケース11の側方に向きを変更可能に設けた前輪支持ケース22、22に軸支されている。また、後輪7、7は、ローリング杆23の左右両端部に一体に取り付けた後輪支持ケース24、24に軸支されている。ローリング杆23はメインフレーム10の後端部に突設したローリング軸25で進行方向と垂直な面内で回動自在に支持されている。
【0017】
エンジン12の回転動力は、ベルト31(図3)を介して油圧ポンプ13の駆動軸であるカウンタ軸32に伝えられ、さらに該カウンタ軸32からベルト33を介して油圧式変速装置HSTの入力軸35に伝えられ、油圧式変速装置HSTの出力軸36からベルト(図示せず)を介してミッション入力軸34に伝えられる。
【0018】
なお、ミッション入力軸34上には、メインクラッチ43が設けられており、油圧式変速装置HSTの駆動力はメインクラッチ43を介してミッション入力軸34に伝動される。メインクラッチ43は周知の多板クラッチであり、図4に示すようにメインクラッチ軸側の摩擦板44とミッション入力軸側の摩擦板45、両摩擦板を押し付けるスプリング46、切替操作用の固定部材47と摺動部材48などから構成されている。
【0019】
ミッションケース11のケーシング40の前部には、ミッション入力軸34、カウンタ軸50、走行一次軸51、走行二次軸52、植付一次軸53、植付二次軸54がそれぞれ平行に支承されている。ミッション入力軸34のギヤG1とカウンタ軸50のギヤG2、およびギヤG2と走行一次軸51のギヤG3がそれぞれ互いに噛合しており、ミッション入力軸34の回転が走行一次軸51に順方向に伝えられる。
【0020】
主変速装置Kとして、走行一次軸51に前記ギヤG3とギヤG4がそれぞれ定位置に嵌着され、走行二次軸52に互いに一体に成形されたギヤG5、G6が軸方向に摺動自在に嵌合している。シフタ56でギヤG5、G6を移動させ、ギヤG4、G5が噛合すると低速の作業速、ギヤG3とギヤG6が噛合すると高速の路上走行速になる。
【0021】
また、植付一次軸53にはギヤG4に常時噛合するギヤG7とバックギヤG8が嵌着されており、ギヤG6をバックギヤG8に噛合させると後進速になる。ギヤG5、G6がいずれのギヤとも噛合しない位置がニュートラルになる。この主変速装置Kの操作するチェンジレバー90は操作パネル17に設けられている。
【0022】
また、株間変速装置Cとして、植付一次軸53に互いに一体に成形されたギヤG9、G10が軸方向に摺動自在に嵌合しているとともに、植付二次軸54にギヤG11、G12がそれぞれ取り付けられている。シフタ57でギヤG9、G10を適宜に移動させることにより、ギヤG9とギヤG11、ギヤG10とギヤG11、およびギヤG10とギヤG12の3通りの組み合わせが得られ、3段階の株間切替を行える。植付二次軸54からベベルギヤG13、G14を介して植付部伝動軸58に伝動される。
【0023】
ケーシング40の後部には、リヤアクスル60、60とフロントアクスル61、61が支承され、前記走行二次軸52からリヤデフ装置Dを介してリヤアクスル60、60に伝動されるとともに、リヤデフ装置Dからフロントデフ装置Eを介して左右フロントアクスル61、61に伝動される。そして、左右フロントアクスル61、61により各々左右前輪6、6が駆動回転される構成となっている。
【0024】
リヤデフ装置Dは、走行二次軸52のギヤG15に噛合するギヤG16が外周部に形成された容器63を備え、該容器内の縦軸64に取り付けた一次ベベルギヤG17と左右のリヤアクスル60、60に各別に取り付けた二次ベベルギヤG18、G18とが互いに噛合する状態で収納されており、各アクスルに伝動される駆動力が適宜変動するようになっている。
【0025】
フロントデフ装置Eもリヤデフ装置Dと同様の構成で、容器65、縦軸66、リヤデフ装置側のギヤG19、フロントデフ装置側のギヤG20、縦軸66に取り付けたベベルギヤG21、フロントアクスル61に取り付けたベベルギヤG22を備えている。上記リヤデフ装置Dおよびフロントデフ装置Eにはデフ機能を停止し、左右両アクスルに駆動力が均等に伝動されるようにするデフロック装置F、Hが設けられている。このデフロック装置F(H)は、容器63(65)に形成された爪69(70)とアクスルの角棒部に嵌合するデフロック部材71(72)の爪73(74)とアクスル60(61)を互いに固定するようになっている。この後輪のデフロック装置Fを操作するデフロックレバー91は操作パネル17に設けられている。
【0026】
なお、前輪のデフロック装置Hは、ステップ19に設けたデフロックペダル91’を踏み込むとデフ機能が停止される構成となっている。このデフロックレバー91及びデフロックペダル91’(図2)は、共に機体の前部に配置されており、例えば圃場の畦を乗り越えて機体を圃場から出す時等に、操縦者は機体から降りて機体の前方に立って(自分の身体をウエイト代わりにするために機体の前端部に乗って)機体を前進若しくは後進させてこの畦越えを安全に行う。
【0027】
この時、左右前輪6、6の何れか又は左右後輪7、7の何れかが空回りした場合に即座に操縦者は機体前部にあるデフロックレバー91及びデフロックペダル91’を容易な姿勢で操作できてデフロック状態にして安全に畦越えを行うことができる。
【0028】
リヤアクスル60、60はベベルギヤG23、G24、…によってサイドクラッチ軸76、76に伝動連結され、さらに該サイドクラッチ軸76、76からリヤ出力軸77、77にサイドクラッチI、Iを介して伝動される。サイドクラッチIは多板クラッチであり、サイドクラッチ軸側の摩擦板80、リヤ出力軸側の摩擦板81を備えている。リヤ出力軸77に摺動自在に嵌合する作動筒82は、板ばね83によって両摩擦板80、81を押し付ける方向に付勢されており、常時はサイドクラッチIが入った状態となっている。シフタ85Iで作動筒82を付勢方向と逆向きに移動させると、サイドクラッチIが切れる。
【0029】
更に、リヤ出力軸77、77には後輪ブレーキ装置J、Jが設けられている。後輪ブレーキ装置Jは、リヤ出力軸77に取り付けたディスク87、…にプレッシャプレート88、…を押し付けて制動するものであり、このプレッシャプレート88、…の作動はシフタ85Jで行う。すなわち、常時はサイドクラッチIが入で、後輪ブレーキ装置Jが掛かっていない状態であり、シフタ85Iを操作して作動筒82を付勢方向と逆向きに移動させるとサイドクラッチIが切れ、シフタ85Jを操作すると後輪ブレーキ装置Jが掛かるのである。後輪ブレーキ装置Jの操作(左右シフタ85Jの操作)は、後述のステップ19上に設けたペダル140で行う。なお、左右シフタ85Iには、左右クラッチ操作アーム86I(図5)の基部が固着されており、左右シフタ85Jには、左右ブレーキ操作アーム86Jの基部が固着されている。
【0030】
リヤ出力軸77、77の後端部はケーシング40外に突出し、この突出端部に前記後輪支持ケース24、24に伝動する左右後輪伝動軸89、89が接続されている。そして、この左右後輪伝動軸89、89により各々左右後輪7、7が駆動回転される構成となっている。
【0031】
チェンジレバー90の操作位置は、後進速、ニュートラル、作業速、路上走行速位置がある。また、デフロックレバー91を前方に操作するとデフロック、後方に操作するとデフオンとなる。
【0032】
従って、圃場内で田植作業を行なう場合には、デフロックレバー91をデフロックにし、チェンジレバーを作業速にシフトし、苗植付装置3の苗載台に苗を載置し施肥装置4の肥料タンクに粒状肥料を入れて、各部を駆動させて前進すると、左右後輪7、7のデフロック装置Fはデフロックされてデフ機能が停止した状態であるので、機体の直進性が良くて良好な田植作業と施肥作業が同時に行なえる。また、路上走行の場合には、リヤデフ装置D及びフロントデフ装置E共にデフ機能が働く状態に操作すれば、安全に走行できる。
【0033】
図1及び図2には、機体前部に設けた予備苗載台200と直進走行の指標とするセンターマスコット201を示す。
また、機体本体の前方部両側には苗植付けの条合わせの目安となるサイドマーカー210を機体本体の前方部両側に設けているが、サイドマーカー210の先端に機体の前後方向に平行な棒210aを配置することで、苗植付けの条合わせを行うときに機体が隣接条に平行になっているを容易に確認できるようになる。
【0034】
苗植付装置3は、走行車両1に昇降用リンク装置2で昇降自在に装着されているが、その昇降させる構成と苗植付装置3の構成について説明する。先ず、走行車両1に基部が回動自在に設けられた一般的な油圧シリンダー160(図1)のピストン上端部を昇降用リンク装置2に連結し、走行車両1に設けた油圧ポンプ13にて電磁油圧バルブ161(図21)を介して油圧シリンダー160に圧油を供給・排出して、油圧シリンダー160のピストンを伸進・縮退させて昇降用リンク装置2に連結した苗植付装置3が上下動されるように構成されている。
【0035】
苗植付装置3は、昇降用リンク装置2の後部にローリング軸(図示せず)を介してローリング自在に装着されたフレームを兼ねる植付伝動ケース162と、該植付伝動ケース162に設けられた支持部材に支持されて機体左右方向に往復動する苗載台163と、植付伝動ケース162の後端部に装着され前記苗載台163の下端より1株分づつの苗を分割して圃場に植え付ける苗植付け具164…と、植付伝動ケース162の下部にその後部が枢支されてその前部が上下揺動自在に装着された整地体であるセンターフロート165、サイドフロート166…等にて構成されている。センターフロート165、サイドフロート166…は、圃場を整地すると共に苗植付け具164…にて苗が植付けられる圃場の前方を整地すべく設けられている。
【0036】
PTO伝動軸167は両端にユニバーサルジョイントを有し、施肥駆動ケース168の動力を苗植付装置3の植付伝動ケース162に伝達すべく設けている。センターフロートセンサー169はセンターフロート165前部の上下位置を検出するポテンショメータにより構成され、センターフロート165の前部上面とリンクにより連携されている。そして、センターフロートセンサー169のセンターフロート165前部の上下位置検出に基づいて、制御装置170(図21)の苗植付装置昇降手段により電磁油圧バルブ161を制御して油圧シリンダー160にて苗植付装置3の上下位置を制御するように構成されている。
【0037】
即ち、制御装置170はセンサフロート165前部に設けた迎い角センサ202の検出に基づいてセンターフロート165の前部が外力にて適正範囲以上に持ち上げられた時には油圧ポンプ13にてミッションケース11内から汲み出された圧油を油圧シリンダー160に送り込んでピストンを突出させ昇降用リンク装置2を上動させて苗植付装置3を所定位置まで上昇させ、また、センターフロート165の前部が適正範囲以上に下がった時には油圧シリンダー160内の圧油をミッションケース11内に戻して昇降用リンク装置2を下動させて苗植付装置3を所定位置まで下降させ、そして、センターフロート165の前部が適正範囲にあるとき(苗植付装置3が適正な所定位置にある時)には油圧シリンダー160内の圧油の出入りを止めて苗植付装置3を一定位置に保持させるべく設けられている。このように、センターフロート165を苗植付装置3の自動高さ制御のための接地センサーとして用いている。
【0038】
迎い角センサ202は、苗植付装置3の対地高さを検出するものであり、該迎い角センサ202の検出値に基づいて、制御装置170(図21)により昇降バルブ(図示せず)を制御してリフトシリンダー160にて苗植付装置3の上下位置を制御するように構成されている。
【0039】
すなわち、リフトシリンダー160で昇降用リンク装置2を、例えば上動させて苗植付装置3を所定位置まで上動させ、また、センターフロート165の前部が適正範囲以上に下がったことを迎い角センサ202により検出した時にはリフトシリンダー160内の圧油をミッションケース11内に戻して昇降用リンク装置2を下動させて苗植付装置3を所定位置まで下降させる。そして、センターフロート165の前部が適正範囲にあるとき(迎い角センサ202の検出値が適正範囲にあり、苗植付装置3が適正な対地高さである時)にはリフトシリンダー160内の圧油の出入りを止めて苗植付装置3を一定位置に保持せしめるべく設けられている。
【0040】
即ち、センターフロート165の前部が外力にて適正範囲以上に持ち上げられたことを迎い角センサ202により検出した時には油圧ポンプ13にてミッションケース11内から汲み出された圧油をリフトシリンダー160に送り込んでピストンを突出させて昇降用リンク装置2を上動させて苗植付装置3を所定位置まで上昇させ、また、センターフロート165の前部が適正範囲以上に下がったことを迎い角センサ202により検出した時にはリフトシリンダー160内の圧油をミッションケース11内に戻して昇降用リンク装置2を下動させて苗植付装置3を所定位置まで下降させる。そして、センターフロート165の前部が適正範囲にあるとき(迎い角センサ202の検出値が適正範囲にあり、苗植付装置3が適正な対地高さである時)にはリフトシリンダー160内の圧油の出入りを止めて苗植付装置3を一定位置に保持させるように設けられている。このように、センターフロート165を苗植付装置3の自動高さ制御のための接地センサーとして用いている。
【0041】
ステアリングハンドル16の下方にフィンガーレバー171(図2)が配置され、該フィンガーレバー171を上下方向に操作するとポテンショメータにより構成されるフィンガーレバースイッチ172(図21)が作動されて、制御装置170のPTOクラッチ作動手段によりPTOクラッチ作動ソレノイド173を操作して、施肥駆動ケース168内に設けられた動力を断接するPTOクラッチを操作して施肥装置4及び苗植付装置3への動力を入切り操作できるように構成されていると共に、制御装置170の苗植付装置昇降手段により、電磁油圧バルブ161を操作して手動にて苗植付装置3を上下動できるように構成されている。
【0042】
即ち、フィンガーレバー171を「上」に操作すると、PTOクラッチが切れ施肥装置4及び苗植付装置3の作動が停止し且つ電磁油圧バルブ161が強制的に苗植付装置3を上昇する側に切換えられる。
【0043】
そして、フィンガーレバー171を「上」に操作した後に、フィンガーレバー171を「下」に1回操作すると、電磁油圧バルブ161がセンターフロート165の上下動にて切換えられる自動制御状態となり、苗植付装置3が上昇された状態であればセンターフロート165が接地して適正姿勢になるまで苗植付装置3は下降する。更にもう一回、フィンガーレバー171を「下」に操作すると、電磁油圧バルブ161がセンターフロート165の上下動にて切換えられる自動制御状態のままで、PTOクラッチが入り施肥装置4及び苗植付装置3が駆動される。以降、フィンガーレバー171を「下」に操作する度に、電磁油圧バルブ161がセンターフロート165の上下動にて切換えられる自動制御状態のままで、PTOクラッチが入りと切りに交互に切り換えられる。
【0044】
ここで、ステアリングハンドル16にて前輪6、6が操向操作される部分の構成について図5と図6に基づいて説明する。
ステアリングハンドル16は、ステアリングポスト14内に設けられたステアリング軸上部に固定されており、ステアリング軸の回転はミッションケース11内に設けられたステアリング変速歯車を介して減速されて出力軸174に伝動される。そして、出力軸174の下端は、ミッションケース11底面から突出してピットマンアーム175が固定されている。該ピットマンアーム175の前部左右側と左右前輪支持ケース22、22(図1)とは左右ロッド176、176(図1)にて連結されている。
【0045】
従って、ステアリングハンドル16を回動操作すると、ステアリング軸・ステアリング変速歯車・出力軸174・ピットマンアーム175・左右ロッド176、176・左右前輪支持ケース22、22へと伝達されて、左右前輪6、6が左右操向操作される。
【0046】
一方、ピットマンアーム175の後部上面には、作動ローラ177が回転自在に設けられており、その作動ローラ177の左右両側を囲むように平面視でコ字状に切り欠かれた切欠き部178を有する従動体179がミッションケース11の底面に回動自在に支持されている。そして、従動体179の左右両側部には、前記左右クラッチ操作アーム86I、86Iに連結された左右ロッド180、180の前部が連結されている。従って、ステアリングハンドル16を所定量(機体を右旋回させる意思を持って作業者が右に回す量)以上右に回すと、ピットマンアーム175も右回動し、作動ローラ177が(ハ)方行に回動し従動体179の切欠き部178の左側面178aを押すために、従動体179を(ニ)方向に回動させ右ロッド180を引き、右クラッチ操作アーム86Iが操作されて右サイドクラッチIが切れ、旋回中心側の右後輪7が遊転状態となるので、右後輪7が耕盤を傷めることなく、また、泥土を多量に持ち上げて泥面を荒してしまうようなこともなく、右旋回がスムーズできれいにできる。
【0047】
逆に、ステアリングハンドル16を所定量以上左に回すと、ピットマンアーム175も左回動し、作動ローラ177が反(ハ)方行に回動し、従動体179の切欠き部178の右側面178bを押すために、従動体179を反(ニ)方向に回動させ、左ロッド180を引き、左クラッチ操作アーム86Iが操作されて左サイドクラッチIが切れ、旋回中心側の左後輪7が遊転状態となるので、左後輪7が耕盤を傷めることなく、また、泥土を多量に持ち上げて泥面を荒してしまうようなこともなく、左旋回がスムーズできれいにできる。
【0048】
更に、ピットマンアーム175の前部上面には、左右センサ押片182、182が設けられており、ステアリングハンドル16を左右何れかに200度回転させると、ミッションケース11の底面に固定されたオートリフトスイッチ183がONになる(ステアリングハンドル16は左右に最大360度〜400度回転する)。
【0049】
上記した実施例では、ステアリングハンドル16の所定角以上の操作により、旋回内側の後輪7のサイドクラッチIを切る例を示したが、サイドクラッチスイッチを操作パネル17に設けておき、手動でサイドクラッチIの「切」が可能な構成にしても良い。又は、サイドクラッチペダルにより、手動でサイドクラッチIの「切」が可能な構成にしても良い。
【0050】
また、ステアリングハンドル16の所定角以上の操作により、旋回内側の後輪7のサイドクラッチIを切る例を示したが、ステアリングハンドル16の所定角以上の操作により、旋回内側の後輪7のサイドブレーキJを作動する構成にして車両を旋回させても良い。
【0051】
図5に示すサイドクラッチ切断タイミング固定式では、路上走行を考慮して切断タイミングを早めにすると深い圃場では旋回不能となり、逆に圃場を考慮してタイミングを遅くすると路上で旋回しにくくなることがある。
【0052】
そこで、図7に示すようにステアリングハンドル16から左右の連動ロッド180までの間にスペーサプレート187などの融通機構を設けて、その融通量を変更してサイドクラッチIまたはサイドブレーキJの作動タイミングを変更することができる。図7(a)はクラッチ連動機構部分の平面図であり、図7(b)はスペーサプレート187の連動機構部分を示すクラッチ連動機構部分の側面図である。
【0053】
スペーサプレート187は従動体179の中央に回動支点187aを備えているので、チェンジレバー90の操作に連動させてスペーサプレート187を回動支点187aを中心にして回動させることで、スペーサプレート187を従動体179上に着脱自在に作動することができる。スペーサプレート187が従動体179に図7(a)に示すように重ねられると、左右ロッド180に付属するバネ181の付勢力により、スペーサプレート187を従動体179に押圧する。
【0054】
上記構成からなるクラッチ連動機構においてチェンジレバー90の操作で移動速が選択されると、スペーサプレート187が従動体179に図7(a)に示すように重ねられるので、ステアリングハンドル16の回動に比較的早いタイミングでサイドクラッチIが切れる。またチェンジレバー90で植付速が選択されると、図7(b)に示すようにスペーサプレート187は従動体179から外れるので、ステアリングハンドル16の回動に比較的遅いタイミングでサイドクラッチIが切れる。こうしてサイドクラッチIの作動タイミングを変更することができる。また図示していないが、同様にサイドブレーキJの作動タイミングを変更することもできる。
【0055】
また図8に示すように移動速と植付速でそれぞれ異なる従動体179a,179bを用いてステアリングハンドル16により左右の連動ロッド180を作動させてサイドクラッチI(またはサイドブレーキJ)の作動タイミングを変更することができる。図8(a)はクラッチ連動機構部分の平面図であり、図8(b)は従動体179a,179b部分の背面図である。
【0056】
従動体179bのピットマンアーム175の当接面の湾曲部の形状を従動体179aのピットマンアーム175の当接面の湾曲部の形状に比べて大きくしておき、従動体179a,179bの回動中心を179cとしている。こうしてチェンジレバー90の移動速側への操作に連動させて、従動体179a,179bの積層部分にロックピン179dを貫通させておくと、移動速従動体179aと植付速従動体179bが固定され、移動速従動体179aが作動して、移動速の作動タイミングに合わせてサイドクラッチIが比較的早いタイミングで作動する。また、チェンジレバー90の植付速側への操作に連動させて従動体179a,179bの積層部分のロックピン179dを抜くと、植付速従動体179bのみが作動して比較的遅いタイミングでサイドクラッチIが作動する。
【0057】
こうして路上走行時の移動速と圃場での苗などの植付時の植付速において、それぞれ適切なタイミングでクラッチIを切ることができる。同様にサイドブレーキJの作動タイミングを変更することもできる。
【0058】
図5に示す構成は、ピットマンアーム175からロッド180を設けて後輪サイドクラッチIを切る機構であり、ロッド180がサイドクラッチIを切ってからもピットマンアーム175を回転させるために余分の負荷がロッド180に作用する欠点があり、ロッド180の逃げが必要であった。
【0059】
しかし、図9のクラッチ連動機構部分の平面図に示すように、従動体179として図示のような凸部を有するカム形状にすることにより、ピットマンアーム175を回転させるために余分の負荷が作用しないので、ステアリングハンドル16の回転角度は所定角度以上になるとサイドクラッチIが切れた状態となり、左右のロッド180に負荷が作用しない。
【0060】
図9に示すピットマンアーム175は回動中心175aを中心に回動するが、凸部を有する従動体179も回動中心179cを中心に回動する。二つの回動中心175a、179cは機体に固定されている。また、前記ピットマンアーム175には三角翼175bが固着しており、該三角翼175bの両方の先端には一対のコロ175d,175dが設けられている。該一対のコロ175d,175dは従動体179の凸部の側面に摺動自在に回転するように、従動体179の凸部のコロ175dとの当接面には全域に亘りピットマンアーム175の回動中心175aから適宜の決められた間隔になるように曲面が形成されている。
【0061】
上記構成により、ハンドル16の回転で連動ロッド180がサイドクラッチIを「切り」にした状態から、更に余分に作動しないため、その余分な作動ストロークによるサイドクラッチIに備えている付勢スプリングなどに余分な負荷が発生しない。
【0062】
図5に示す構成ではロッド180の逃げのためのスプリングや余分なロッド長などが必要であったが、図9に示す構成により、比較的低コストとなる。
また図9に示す構成の変形例として、図10に示すように従動体179の凸部側面に当接する偏心ローラ189をピットマンアーム175に設けることにより、サイドクラッチIの切れ角を変えることができる。これは、従動体179を押す偏心ローラ189の偏心位置を選択して、従動体179と偏心ローラ189との間隔を調整して、選択された偏心位置でローラ189をピットマンアーム175に固定することにより偏心ローラ189の回転軸189aと従動体179の凸部側面との距離を変えて従動体179の動くタイミングを変化させてサイドクラッチIの作動タイミングを変えることができる。
【0063】
図11には図10に示した偏心ローラ189の回転軸189aと従動体179の凸部側面との間隔を変えるための方法を示すが、従動体179の凸部の側面に摺動自在に回転するように設けた偏心ローラ189の回転軸189aとチェンジレバー90をケーブルで接続し、チェンジレバー90を操作することで、偏心ローラ189の偏心位置を選択して、従動体179と偏心ローラ189の回転軸189aとの間隔を調整して、選択された偏心位置でローラ189をピットマンアーム175に固定し、従動体179の動きを植付速と移動速で変化させ、植付速と移動速の旋回走行角度を変化させることができる。
【0064】
上記図8、図9、図10、図11に示す構成は同様にサイドブレーキJの作動タイミングを変更することもできる。
前記ステアリングハンドル16の旋回操作により、左右の連動ロッド180によりサイドクラッチI(またはサイドブレーキJ)を作動させている場合に、旋回内側の後輪7には駆動力が伝わらないため深い圃場では旋回不能になることが多かった。
【0065】
このように旋回内側の後輪7の回転が止まって、旋回不能になった場合に図12に示すLSD(Limited Slip Defferential)をフロント側に集中させたミッションケース11内の後輪7用のサイドクラッチIの間に設けることでエンジン駆動力を旋回内側の後輪7に伝達するようにした。
【0066】
これは、路上や標準田での旋回時は旋回内側の後輪7はサイドクラッチIが切れた状態で回転しているため動力が伝わっている。しかし旋回内側の後輪7と旋回外側車輪7との回転差が少ないためLSDは働かないが、湿田で旋回不能になった場合には内側の後輪7は回転しないため、旋回外側の後輪7との回転差が大きくなり、自動的にLSDが働き、旋回内側の後輪7に動力を伝えることができる。
【0067】
こうして、旋回内側の後輪7の回転が止まって旋回不能になった場合でもスリップ防止による旋回性能向上効果がある。
同様にステアリングハンドル16の旋回操作により、左右の連動ロッド180により後輪用のサイドクラッチI(またはサイドブレーキJ)を作動させている場合に左右後輪サイドクラッチI,Iを同一軸上に配置した構成において、湿田などで旋回不能となった場合に対応できるように図13に示すようなLSD機能により駆動力を伝速するようにした構成してもよい。
【0068】
また、図14に示すように、フロントミッションケース11内に左右後輪サイドクラッチIが平行に並んで配置されている構成において、ステアリングハンドル16の旋回操作により、左右の連動ロッド180で後輪用のサイドクラッチI(またはサイドブレーキJ)を切っても旋回不能となり、旋回内側の後輪7の回転が止まった場合においても、LSD機能により駆動力を伝速することができる。
【0069】
また、フロントミッションケース11内に左右後輪サイドクラッチIが同一軸上に配置されている場合に旋回不能となり、旋回内側の後輪7の回転が止まった場合に、図15に示すようにLSD機能により駆動力を伝速するようにした構成にフロントデフ装置Eがデフロック作動(作動制限)するように電気的に連動する構成を追加した。
【0070】
従来ステアリングハンドル16の旋回操作により、左右の連動ロッド180により後輪用のサイドクラッチI(またはサイドブレーキJ)を切った場合に、旋回内側の後輪7には駆動力が伝わらないため、深い圃場では旋回不能になることが多かった。また、旋回不能になった場合、フロンドデフロック装置H(図4参照)を操作する必要があり、湿田では旋回毎に操作が必要となっていたが、図15に示すようにLSD機能が作動すると自動的にフロントデフ装置Eが作動するようにしたので、湿田での操向操作性能を向上できる。
【0071】
またミッションケース11内に左右後輪サイドクラッチIが同一軸上に配置されている場合に旋回不能となり、旋回内側の後輪7の回転が止まった場合に、図16に示すようにLSD機能により駆動力を伝速するようにした構成にフロントデフ装置Eが作動するように電気的に連動する構成を追加してもよい。
【0072】
また、図21に示す後輪伝動軸回転数センサ205で左右の後輪伝動軸89の回転数の差検出し、制御装置100により回転数が少ない方へ向けてステアリングハンドル16のパワーアシストを電気的にする構成を採用すると、直進走行性が従来より良くなる。制御のフローを図17に示すが、直進走行性が良くなると、直進しながらの苗植付ができ、また畦超えやトラックに機体を積込む時の安全性が従来より向上する。
【0073】
また、図18のフローに示すように、旋回時以外の走行時に後輪伝動軸回転数センサ205で左右の後輪伝動軸89の回転数の差を検出し、さらに機体傾斜センサ193で機体の傾斜を検出するとデフロック装置F又はHを作動させることで、畦超えやトラックに機体を積込む時における車両の走行安全性が従来より良くなる。
【0074】
また、旋回時以外の走行時に後輪伝動軸回転数センサ205で左右の後輪伝動軸89の回転数の差を検出し、さらに機体傾斜センサ193(図21)で機体の傾斜を検出すると、HSTを中立にして、走行をストップさせて、車両の安全性を保つこともできる。
【0075】
旋回時以外の走行時に後輪伝動軸回転数センサ205で左右の後輪伝動軸89の回転数の差を検出し、さらに機体傾斜センサ193で機体の傾斜を検出すると左右後輪のブレーキ装置Jを作動させて、車両の安全性を保つこともできる。
【0076】
次に、後進時に苗植付装置3を自動的に上昇させる制御構成について説明する。先ず、図19に示すように、チェンジレバー90を後進速に操作すると、チェンジレバー90の基部に設けた接当片190が接当してONになるバックリフトスイッチ191が設けられており、制御装置170(図21)の苗植付装置上昇手段により電磁油圧バルブ161を制御して油圧シリンダー160にて苗植付装置3を最大位置まで上昇させるように構成されている。
【0077】
このように、チェンジレバー90を後進速に操作すると、自動的に苗植付装置3を最大位置まで上昇させるように構成しておくと、圃場の畦際で機体を旋回させるため等に機体を畦に向かって後進させる時に、自動的に苗植付装置3は最大位置まで上昇しているので、苗植付装置3が畦に衝突して破損することが未然に防止でき作業性が良い。
【0078】
また、前記ステアリングハンドル16を左右何れかに200度回転させた時に図21に示すオートリフトスイッチ183がONになると、制御装置170の苗植付装置上昇手段により電磁油圧バルブ161を制御して油圧シリンダー160にて苗植付装置3を最大位置まで上昇させるように構成されている。
【0079】
このように、畦際で機体を旋回させるためにステアリングハンドル16を左右何れかに最大限まで回転させると、オートリフトスイッチ183がONになり、自動的に苗植付装置3は最大位置まで上昇するので、機体旋回時に苗植付装置3を上昇させる操作が不要となり、能率良く機体旋回が行えて作業性が良い。
【0080】
一方、操作パネル17には、苗植付装置3の自動上昇を行わせる状態と行わせない状態とに切替える自動リフト切替えスイッチ192が設けられており、即ち、自動リフト切替えスイッチ192を自動にしていると、上記のようにバックリフトスイッチ191がONになるかオートリフトスイッチ183がONになると自動的に苗植付装置3は制御装置170の苗植付装置上昇手段により自動上昇される。そして、自動リフト切替えスイッチ192をOFFにしていると、バックリフトスイッチ191がONになってもオートリフトスイッチ183がONになっても苗植付装置3は自動上昇されない。
【0081】
このように、一つの自動リフト切替えスイッチ192で、バックリフトスイッチ191がONになってもオートリフトスイッチ183がONになっても苗植付装置3は自動上昇されない状態にすることができるので、バックリフトとオートリフトの各々を入り切りするスイッチを別々に設けた構成よりも簡潔な構成となり、一つのスイッチで両者の状態切替えが行えるので、操作ミスが少なくなり作業性が良い。
【0082】
なお、自動リフト切替えスイッチ192をOFFにして、バックリフトスイッチ191がONになってもオートリフトスイッチ183がONになっても苗植付装置3が自動上昇しない状態にしておくと、機体を後進で納屋等にしまう時にチェンジレバー90を後進速に操作しても苗植付装置3が自動上昇しないので、苗植付装置3を下げたまま後進することができ、納屋の入口上部や納屋内の他の部材に苗植付装置3をぶつけてしまうような事態が回避できる。また、扇型やひょうたん型等の変形圃場で畦際に沿って周り植えをする場合に、曲がった畦に沿ってステアリングハンドル16を回しながら植付け作業を行うが、この時に、自動リフト切替えスイッチ192を自動位置にしていると、ステアリングハンドル16を左右何れかに200度以上回転すると自動的に苗植付装置3が上昇してしまい植付け作業が行えないが、自動リフト切替えスイッチ192をOFFにしていると、ステアリングハンドル16を左右何れかに200度以上回転しても苗植付装置3は上昇しないので植付け作業が行え、変形圃場でも適切に苗植付け作業が行える。
【0083】
上記構成からなる本実施例の田植機では、枕地幅に対応する田植機の走行距離を予め制御装置170内に設定しておいて、畦際から発進時にスタートボタン(スイッチ)184を押す等の操作により、設定された枕地幅になると苗の植え付けを自動的に開始できる制御モード(苗植付時のスタート位置設定モード)を制御装置170(図21)内に設定しても良い。
【0084】
図20に苗植付け開始位置で苗植付動作を行うためのフロートチャートを示し、図21に図20に示す乗用型田植機の制御系のブロック回路図を示す。
植付け状態でなくセンターフロートが接地状態である、すなわちフローティングターンで整地作業をしながら旋回して、ステップaで苗植付作業用のスタートスイッチが入ると「C=1」を入力しておき、左右ドライブシャフトの回転板(n3)により前進距離を測定する。上記ステップaで苗植付作業用のスタートスイッチが「切」であると「C=1」が入力され、設定した距離(N3)以上進むと苗植付装置3を「入」状態として、上記前進距離の測定を中止して、記憶値をクリヤにする。またステップaで苗植付作業用のスタートスイッチが「切」である「C=0」を入力し、ステップbに飛ぶ。
【0085】
ステップbで畦クラッチが「入」であると、C=1の場合、すなわち苗植付作業用のスタートスイッチが「入」である場合には、苗植付を行う。その後ハンドル16による旋回操作が行われると図23の旋回モードに入るが上記ステップbで畦クラッチが「切」であると「C=0」を入力しておく。
【0086】
また、上記枕地などの苗植付時のスタート位置設定モードにおいて、苗の植え付け開始位置が予め設定した値とはずれることがあるので、そのような場合に備えて、オペレータが、たとえばスタート位置調節ダイヤル186などで任意に枕地幅を調節し直して新たな枕地幅とすることができるようにしてもよい。
【0087】
上記苗植付時のスタート位置設定モードは、設定した苗植付時のスタート位置(畦際からの苗植付開始する位置までの距離:枕地幅)をリセットするまでは苗植付作業をする圃場が変わっても記憶するように構成したので、例えば、苗植付作業を午前中行い、昼休み後に再開する場合にもそのまま利用できる。
上記した苗植付時のスタート位置の設定を行うことにより、自動で苗の植え付け開始が可能となり、枕地植え処理をする場合あらかじめ枕地植え条数を設定しておけば、圃場での一番最初の植え始め位置を自動で設定することができ、補植、過繁茂を減らせる。
【0088】
また、上記構成からなる田植機では、本実施例の制御装置170は旋回内側の後輪7の回転数の検出に基づいて、旋回時の苗植え付けなどの諸作動を自動的に行わせる旋回連動制御ができる。特に、旋回内側の後輪7が所定角度以上操舵されているときに、前記旋回連動制御ができる。
【0089】
この制御の考え方を図22と表1に示す。
【0090】
【表1】
すなわち、ステアリングハンドル16を切り、旋回内側の後輪7のサイドクラッチIが切れた状態で、左右ドライブシャフト(伝動軸)89の回転数を検出し、旋回時の内側の後輪7の伝動軸回転数が設定値N1を超えると苗植付装置3を降下させる。その後、後輪7の伝動軸回転数が設定値N2と苗植付け具164の作動が「切り」状態に入って(=苗植付装置3が上げ状態に移って)からステアリングハンドル16の切り操作開始までの後輪の伝動軸89の回転数nの合計値以上になると植付「入」にする機構である。
【0091】
上記旋回連動制御のフローを図23に示す。
まず、左右の後輪の伝動軸89の回転数を伝動軸回転数センサ205で検出し、また基準値N1(旋回開始から機体90°旋回までの内側ドライブシャフト回転信号設定値)、N2(機体90°旋回から植付クラッチ「入り」までのドライブシャフト回転信号設定値)、θ1((直進操作時のハンドル切り設定角度の)下限値)、θ2((直進操作時のハンドル切り設定角度の)上限値)をセットする。
【0092】
次いで、圃場の硬軟や水深、耕盤深さ等の圃場条件の相違に対応するために、前記回転数N1、N2及びハンドル切り角度θ1、θ2の各設定値を調節する設定ダイヤル206〜209により、補正値n0を設定する。
【0093】
苗植付装置3の苗植付け具164が苗の植え付け状態にあるか無いかをフィンガーレバー171の操作に伴う制御装置170の状態で検出して、植付「入」から植付「切」になったとき、苗植付け具164の作動が「入り」状態に入ってから苗植付け具164の作動が「切り」状態になるまでの後輪7の伝動軸89の回転数nを伝動軸回転数センサ205で検出して、その値(n)を記憶しておく。次いで、ステアリングハンドル16の切り角度(操舵角度)θをステアリングハンドル16のシャフトに設けたハンドル切れ角センサ(ポテンショメータ)193(図21)で検出して直進時(θ1<θ<θ2)以外の時には左右のいずれかの方向に旋回中であるかどうかを検出する。
【0094】
左旋回中であると左後輪7の伝動軸89の回転数を検出して、回転数n1がn1≧N1+n0になると、旋回開始から機体が90度以上旋回したことになるので苗植付け具164を下げる。この苗植付け具164の降下で枕地が均平化される。
【0095】
引き続き、左後輪7の伝動軸89の回転数を検出して、回転数n2がn2≧N2+n+n0になると、苗植付け具164を作動させて苗の植え付けを開始させる。
右旋回の場合にも左旋回時と全く同様の制御が行われる。
【0096】
なお、前記旋回制御時には植付部「下げ」から植付「入り」までの間に苗植付装置3の油圧シリンダー160の油圧感度を鈍感(上昇側に切り替わらない)状態にすることでセンターフロート165などを前上がり状態にすることが望ましい。これはセンタフロートセンサー169の制御目標をセンターフロート165が前上がり状態になるように設定することで行え、センターフロート165を前上がり状態にすることで旋回跡を均平にすることができ、枕地処理が容易に精度よく行える。
【0097】
このようにサイドクラッチIが切れている後輪7の伝動軸(ドライブシャフト)89の回転数を検出するため、動力の伝わっている後輪7の回転数検出に比べてよりスリップなどの影響を受け難い特徴がある。また、後輪7より回転の速いドライブシャフト89の回転数を検出するため、容易にその測定精度をあげることができる。その結果、各植え付け条毎の苗の植え付け始めがほぼ一定(枕地幅(D)が一定)となる効果がある。
【0098】
また、本発明では、上記図23に示す一連の旋回制御の諸動作を行う旋回制御のスタートボタン(スイッチ)184を上記苗植付のスタート位置の設定を行うボタンとして兼用してもよい。
【0099】
このように、畦際からの発進して苗植付のスタート位置の設定を行うボタンと前記一連の旋回制御の諸動作を行う旋回制御のスタートボタン(スイッチ)184と兼用することによりボタン操作の忘れを防止できる。
【0100】
また、前記スタートボタン(スイッチ)184を押す操作により、前記図23で示す一連の旋回制御の諸動作を自動的に行う旋回制御装置を備えた田植機において、何れかの畦クラッチを「切」にすることにより旋回制御が解除状態になるように構成してもよい。
【0101】
畦クラッチは図示していないが、各苗植付装置3に設けられた苗植付具に田植機本体からの駆動力を伝達するためのものであり、植付(畦)クラッチが「切」となると、苗の植付ができない状態となる。植付(畦)クラッチを「切」にした後は枕地植えをすることが大半であるため、前記一連の旋回制御の諸動作は不要になり、逆に前記一連の旋回制御の諸動作があると、苗植付作業の邪魔になるので植付(畦)クラッチを「切」にする動作で旋回制御を解除できるため誤操作を防止できる。
【0102】
同様に「線引きマーカ(サイドマーカ210)の切」又は「後進」にする動作が選択された場合にも前記図23で示す一連の旋回制御の諸動作を自動的に解除状態にするように構成してもよい。
【0103】
なお、植付(畦 )クラッチの「入り」と「切り」は植付(畦 )クラッチレバーセンサ185で検知する。
本実施例の田植機は、前記苗植え始めの位置から自動で苗植え付けを開始するように植付スタート位置をスタートボタン(スイッチ)184、スタート位置調節ダイヤル186などで設定し、その後苗の植え付けを順次行うが、田植機が旋回すると図23で示す旋回制御モードの諸動作に従って旋回後に自動的に植付を開始する。
【0104】
このとき、スタートボタン(スイッチ)184、スタート位置調節ダイヤル186などで設定した枕地幅と図23で示す旋回制御モードの諸動作に従って旋回後に自動的に植付を開始する場合の枕地幅とはほぼ同一にしておくことで、枕地幅と各植付条で揃うことになる。
【符号の説明】
【0105】
1:走行車両、2:昇降用リンク装置、3:苗植付装置、6:前輪、7:後輪、12:エンジン、16:ステアリングハンドル、89:伝動軸、170:制御装置、175:ピットマンアーム、175a、179c:回動中心、175d:コロ、179:従動体、180:ロッド、189:偏心ローラ、I:サイドクラッチ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体上に設けたエンジン(12)と、機体の進行方向に向かって左右に設けた左右前輪(6,6)及び左右後輪(7,7)と、該左右前輪(6,6)を操向操作する操向操作具(16)と、左右後輪(7,7)のそれぞれの伝動軸に設けたエンジン駆動力を伝達・非伝達するクラッチ(I,I)と、操向操作具(16)に連動して前記左右いずれかのクラッチ(I,I)を作動させる連動ロッド(180,180)とを備えた走行車両(1)を設け、該走行車両(1)には昇降用リンク装置(2)を介して苗植付装置(3)を装着した乗用型田植機において、操向操作具(16)による操向角度の検出により旋回中であると判断すると、後輪(7)の伝動軸(89)の回転数を検出し、該回転数が第一の設定値を超えると苗植付装置(3)を下降し、前記回転数が第二の設定値を超えると苗植付装置(3)を作動させる制御装置(170)を設けた乗用型田植機。
【請求項2】
操向操作具(16)の回動操作で第一の回動中心(175a)回りに回動するピットマンアーム(175)と、該ピットマンアーム(175)の回動に連動して第二の回動中心(179c)回りに回動する従動体(179)を設け、従動体(179)の中央部に凸部を設け、両端部には左右のクラッチ(I,I)を作動させる左右の連動ロッド(180,180)を左右各々接続し、ピットマンアーム(175)に設けた回転軸を中心に回転するローラ(175d、189)を設け、該ローラ(175d、189)と従動体(179)の凸部側面を当接させて配置することで、従動体(179)の回動で左右のクラッチ(I,I)が作動する構成とし、クラッチ(I)を切った状態から、操向操作具(16)の回動で連動ロッド(180)が更に余分に作動しないよう、従動体(179)のローラ(175d)との当接面は、第一の回動中心(175a)から決められた間隔となる曲面を備えた請求項1に記載の乗用型田植機。
【請求項3】
ローラ(189)を偏心ローラとし、該偏心ローラ(189)の偏心位置を選択して従動体(179)と偏心ローラ(189)の間隔を設定し、該設定された従動体(179)との偏心ローラ(189)の間隔に基づき、従動体(179)の動くタイミングを変化させて対応する左右のクラッチ(I,I)の作動タイミングを変更する作動タイミング変更手段を設けた請求項2記載の乗用型田植機。
【請求項1】
機体上に設けたエンジン(12)と、機体の進行方向に向かって左右に設けた左右前輪(6,6)及び左右後輪(7,7)と、該左右前輪(6,6)を操向操作する操向操作具(16)と、左右後輪(7,7)のそれぞれの伝動軸に設けたエンジン駆動力を伝達・非伝達するクラッチ(I,I)と、操向操作具(16)に連動して前記左右いずれかのクラッチ(I,I)を作動させる連動ロッド(180,180)とを備えた走行車両(1)を設け、該走行車両(1)には昇降用リンク装置(2)を介して苗植付装置(3)を装着した乗用型田植機において、操向操作具(16)による操向角度の検出により旋回中であると判断すると、後輪(7)の伝動軸(89)の回転数を検出し、該回転数が第一の設定値を超えると苗植付装置(3)を下降し、前記回転数が第二の設定値を超えると苗植付装置(3)を作動させる制御装置(170)を設けた乗用型田植機。
【請求項2】
操向操作具(16)の回動操作で第一の回動中心(175a)回りに回動するピットマンアーム(175)と、該ピットマンアーム(175)の回動に連動して第二の回動中心(179c)回りに回動する従動体(179)を設け、従動体(179)の中央部に凸部を設け、両端部には左右のクラッチ(I,I)を作動させる左右の連動ロッド(180,180)を左右各々接続し、ピットマンアーム(175)に設けた回転軸を中心に回転するローラ(175d、189)を設け、該ローラ(175d、189)と従動体(179)の凸部側面を当接させて配置することで、従動体(179)の回動で左右のクラッチ(I,I)が作動する構成とし、クラッチ(I)を切った状態から、操向操作具(16)の回動で連動ロッド(180)が更に余分に作動しないよう、従動体(179)のローラ(175d)との当接面は、第一の回動中心(175a)から決められた間隔となる曲面を備えた請求項1に記載の乗用型田植機。
【請求項3】
ローラ(189)を偏心ローラとし、該偏心ローラ(189)の偏心位置を選択して従動体(179)と偏心ローラ(189)の間隔を設定し、該設定された従動体(179)との偏心ローラ(189)の間隔に基づき、従動体(179)の動くタイミングを変化させて対応する左右のクラッチ(I,I)の作動タイミングを変更する作動タイミング変更手段を設けた請求項2記載の乗用型田植機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図2】
【図3】
【図4】
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【図16】
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【図18】
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【図20】
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【図22】
【図23】
【公開番号】特開2011−41568(P2011−41568A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−224814(P2010−224814)
【出願日】平成22年10月4日(2010.10.4)
【分割の表示】特願2004−193721(P2004−193721)の分割
【原出願日】平成16年6月30日(2004.6.30)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月4日(2010.10.4)
【分割の表示】特願2004−193721(P2004−193721)の分割
【原出願日】平成16年6月30日(2004.6.30)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
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