説明

乾燥方法、乾燥装置、および成膜方法、電気光学装置の製造方法、並びに電気光学装置、電子機器

【課題】 基板面内領域間の乾燥ムラを好適に低減することができる乾燥方法、乾燥装置、および、当該乾燥方法を用いた成膜方法、電気光学装置の製造方法、並びに、当該乾燥方法を用いて製造された電気光学装置、電子機器を提供すること。
【解決手段】 基板20上に配置された液状体の個体パターン21…の上方空間を、その配置領域に合わせて仕切り部材31…により区画した状態で基板20全体の乾燥を行う。かくして、個体パターン21の近傍における蒸気流が、基板面内方向で均一化されるため、個体パターン21内の各領域においてムラなく乾燥、膜化がなされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液状体が塗布された基板を乾燥させて成膜を行う成膜方法、および、そのための乾燥方法、乾燥装置、並びに、当該成膜方法を用いた電気光学装置の製造方法、電気光学装置、電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体装置や電気光学装置の製造プロセスに用いられる成膜方法として、基板の一面に塗布された液状体を乾燥等により膜化させるいわゆる液相法がある。この液相法においては、液状体近傍の蒸気圧分布を制御することは重要な技術である。例えば、基板の中央領域は、周囲の隣接領域からの蒸気拡散の影響で蒸気の滞留が起こりやすいため、外縁領域に比べて蒸気圧が高くなる傾向があり、このような蒸気圧のムラを低減することは良好なプロファイルの機能性膜(膜)を得る上で重要である。
【0003】
特許文献1には、多孔質の整流板を基板と対向して配置し、基板上方の蒸気を整流板の全面から一様に排気させるようにして、蒸気流の均一化を図った乾燥方法が提案されている。また、この文献に係る乾燥方法では、基板の外縁に臨んで溶剤噴霧手段を設けて、外縁領域における蒸気圧を補正することにより、蒸気圧分布の一層の均一化を図っている。
【0004】
【特許文献1】特開2004−186419号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のような溶剤噴霧手段を利用した乾燥方法の場合、複雑な装置構成の乾燥装置が必要であり、また、多様なサイズや形状の基板に対応させることも困難である。
【0006】
また近年、微小ノズルから液滴を吐出させて描画を行ういわゆる液滴吐出法により、基板上に液状体をパターニングし、パターン化された機能性膜を形成する手法が広く用いられるようになってきている(例えば、特開平11−274671号公報など)。このようにあらかじめパターニングされている液状体を乾燥させるにあたっては、基板の全面に塗布された液状体の場合とは異なった特有の問題がある。すなわち、個体単位でパターニングされた液状体(以下、個体パターンとする)は、それぞれが独立した集合体をなしているので、各個体パターン内の中央領域と外縁領域との間で、上述したような蒸気圧分布のムラが生じてしまうのである。
【0007】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたもので、基板面内領域間の乾燥ムラを好適に低減することができる乾燥方法、乾燥装置、および、当該乾燥方法を用いた成膜方法、電気光学装置の製造方法、並びに、当該乾燥方法を用いて製造された電気光学装置、電子機器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、一面に液状体の個体パターンが配置された基板についての乾燥方法であって、前記基板の一面側における空間を、前記基板の外形に合わせて物理的に区画する区画工程と、前記基板を乾燥させる乾燥工程と、を有することを特徴とする。
【0009】
この発明の乾燥方法によれば、基板の一面側の空間を基板の外形に合わせて区画した状態で、基板(個体パターン)の乾燥を行うことにより、区画空間内における液状体の蒸気流を基板面に垂直にするように規制することができる。これにより、比較的簡単な方法でありながら、個体パターン近傍における蒸気圧分布が基板面内の領域間で均一化され、当該領域間の乾燥ムラが低減される。
【0010】
本発明は、一面に液状体の個体パターンが配置された基板についての乾燥方法であって、前記基板の一面側における空間を、前記個体パターンの配置領域に合わせて物理的に区画する区画工程と、前記基板を乾燥させる乾燥工程と、を有することを特徴とする。
【0011】
この発明の乾燥方法によれば、基板の一面側の空間を個体パターンの配置領域に合わせて区画した状態で、基板(個体パターン)の乾燥を行うことにより、区画空間内における液状体の蒸気流を基板面に垂直にするように規制することができる。これにより、個体パターン近傍における蒸気圧分布が個体パターン内の領域間で均一化され、当該領域間の乾燥ムラが低減される。
【0012】
また好ましくは、前記乾燥方法において、前記個体パターンの配置領域と前記区画された空間領域の境界との基板面内距離が、前記区画された空間内における前記液状体の蒸気の平均自由行程ないしその100倍の距離の範囲内で設定されていることを特徴とする。
この発明の乾燥方法によれば、区画空間を形成することによる蒸気流の規制の効果を十分なものとすることができる。
【0013】
また好ましくは、前記乾燥方法において、前記区画工程は、前記基板の一面側に仕切り部材を設置して行うことを特徴とする。
この発明の乾燥方法によれば、仕切り部材を用いて簡単に上記区画工程を行うことができる。
【0014】
また好ましくは、仕切り部材を用いる前記乾燥方法において、前記仕切り部材と前記基板の一面とを密着させることを特徴とする。
この発明の乾燥方法によれば、区画空間を形成することによる蒸気流の規制をより確実に行うことができる。
【0015】
また好ましくは、前記乾燥方法において、前記区画された空間を介して前記基板と対向するように整流板が配置された状態で、前記乾燥工程を行うことを特徴とする。
この発明の乾燥方法によれば、整流板によって区画空間内における蒸気圧分布をより均一化させることができる。
【0016】
本発明は、一面に液状体の個体パターンが配置された基板の乾燥を行うための乾燥装置であって、前記基板を収容するための気密室と、前記気密室内において、前記基板の一面側における空間を前記基板の外形に合わせて物理的に区画可能な区画手段と、を備えることを特徴とする。
【0017】
この発明の乾燥装置によれば、基板の一面側の空間を基板の外形に合わせて区画した状態で、基板(個体パターン)の乾燥を行い、区画空間内における液状体の蒸気流を基板面に垂直にするように規制することができる。これにより、比較的簡単な方法でありながら、個体パターン近傍における蒸気圧分布が基板面内の領域間で均一化され、当該領域間の乾燥ムラが低減される。
【0018】
本発明は、一面に液状体の個体パターンが配置された基板の乾燥を行うための乾燥装置であって、前記基板を収容するための気密室と、前記気密室内において、前記基板の一面側における空間を前記個体パターンの配置領域に合わせて物理的に区画可能な区画手段と、を備えることを特徴とする。
【0019】
この発明の乾燥装置によれば、基板の一面側の空間を個体パターンの配置領域に合わせて区画した状態で、基板(個体パターン)の乾燥を行い、区画空間内における蒸気流を基板面に垂直にするように規制することができる。これにより、個体パターン近傍における蒸気圧分布が個体パターン内の領域間で均一化され、当該領域間の乾燥ムラが低減される。
【0020】
また好ましくは、前記乾燥装置において、前記区画手段を介して前記基板と対向して配置される整流板をさらに備えることを特徴とする。
この発明の乾燥方法によれば、整流板によって区画空間内の蒸気圧分布をより均一化させることができる。
【0021】
本発明の成膜方法は、基板の一面に液状体の個体パターンを配置し、前記乾燥方法で前記基板の乾燥を行って、前記個体パターンを膜化させることを特徴とする。
【0022】
本発明は、パターン化された機能性膜を備える電気光学装置の製造方法であって、前記機能性膜は、前記成膜方法を用いて形成されることを特徴とする。
【0023】
本発明は、パターン化された機能性膜を備える電気光学装置であって、前記機能性膜は、基板の一面に液状体の個体パターンが配置され、前記基板の一面側における空間が前記基板の外形に合わせて物理的に区画された状態で乾燥されて形成されることを特徴とする。
【0024】
本発明は、パターン化された機能性膜を備える電気光学装置であって、前記機能性膜は、基板の一面に液状体の個体パターンが配置され、前記基板の一面側における空間が前記個体パターンの配置領域に合わせて物理的に区画された状態で乾燥されて形成されることを特徴とする。
【0025】
本発明の電子機器は、前記電気光学装置を備えることを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の好適な実施の形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
なお、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。また、以下の説明で参照する図では、各層や各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、これらの縮尺を実際のものとは異なるように表している。
【0027】
(第1実施形態)
(乾燥装置)
まずは、図1、図2を参照して本発明に係る乾燥装置について説明する。
図1は、本発明に係る乾燥装置の構成を一部模式化して示す概略図である。図2は、乾燥装置内における整流ユニットと基板との関係を示す斜視図である。
【0028】
図1に示す乾燥装置1は、一面(基板表面20a)に個体パターン21…が配置された基板20を乾燥させて、機能性膜(膜)を形成(成膜)するのに用いられるものである。ここで、個体パターン21…は、図2に示すように、所定の形状でパターニングされた個体単位の液状体のパターン(集合体)であり、本実施形態では、一つの基板20で9つの個体の機能性膜を形成するようになっている。尚、基板20上に形成される機能性膜の個体数については特別な限定があるわけではなく、例えば、基板20上に単一の個体パターンを配置して機能性膜の形成を行ってもよい。
【0029】
図1において、乾燥装置1は、気密室としてのチャンバ9を形成する容器体2および蓋体3と、チャンバ9内において基板20を載置するための載置台4と、チャンバ9内を減圧するための減圧ポンプ5および送気管6と、チャンバ9内において基板20と対向して設けられた整流ユニット30と、を備えている。送気管6は、容器体2の底部に複数設けられた排気口7を介してチャンバ9と連通されている。整流ユニット30は、蓋体3の内壁側で可動連結部8と連結されており、図示しない駆動機構により図の上下方向に移動可能となっている。
【0030】
整流ユニット30は、図2に示すように、枠体32と弾性体33とからなる複数の区画手段としての仕切り部材31…と、整流板34と、を備えている。枠体32は、板状部材を加工して形成されており、例えば本実施形態では、厚みが1mm、高さ(図の上下方向の寸法)が5mmのSUSプレートが用いられている。弾性体33には、例えば、ゴム等が用いられている。整流板34には、特許文献1に係るような多孔質のセラミック基板を用いることもできるが、本実施形態では、SUSプレートに1.2mm間隔で直径1mmの貫通孔35を穿設したものが用いられている。
【0031】
仕切り部材31…は、整流板34の下面にそれぞれ接着固定されて所定の配列をなしており、弾性体33が基板表面20aと密着した状態において、基板表面20aに配置された個体パターン21…の上方空間を、それぞれの配置領域に合わせて物理的に区画するようになっている。
【0032】
上述のように、整流ユニット30における仕切り部材31…の区画形状や配列は、個体パターン21…の形状や位置と関連して決められるものである。そこで、整流ユニット30は、形成される機能性膜の種類に応じて対応したものが用意されており、必要に応じて交換が可能となっている。
【0033】
(液滴吐出装置)
次に、図3を参照して、個体パターンの描画に用いる液滴吐出装置について説明する。図3は、液滴吐出装置の構成の一例を示す模式図である。
【0034】
図3において、液滴吐出装置200は、一面に複数のノズル212を配した吐出ヘッド201と、吐出ヘッド201と対向する位置に吐出対象媒体202を載置するための載置台203とを備えている。また、吐出ヘッド201を、吐出対象媒体202との距離を保ったまま縦横に移動(走査)させる走査手段204と、吐出ヘッド201に液状体を供給する液状体供給手段205と、吐出ヘッド201の吐出制御を行う吐出制御手段206と、を備えている。
【0035】
吐出ヘッド201には、複数に枝分かれした微細な流路が形成されており、当該流路の端部は、圧力室(キャビティ)211、ノズル212となっている。圧力室211の外郭の一面は、圧電素子210によって変形可能となっており、吐出制御手段206からの駆動信号によって圧力室211内に圧力を発生させることで、ノズル212から液滴213が吐出される。尚、吐出技術としては、この例のような電気機械方式の他に、電気信号を熱に変換して圧力を発生させるいわゆるサーマル方式などもある。
【0036】
上述の構成において、吐出ヘッド201の走査と同期したノズル212毎の吐出制御を行うことにより、吐出対象媒体202上に所望のパターン(形状、大きさ)で液状体を配置することが可能となっている。尚、液滴吐出装置200は、一走査中において複数種の液状体を吐出可能なように構成することもできる。
【0037】
(成膜方法)
次に、図4のフローチャートに沿って、図1、図2、図5を参照して、本発明に係る成膜方法(乾燥方法含む)について説明する。
図4は、成膜工程のフローを示すフローチャートである。図5は、区画空間内における蒸気流を示す概略断面図である。
【0038】
最初の工程S1では、液滴吐出装置200(図3参照)を用いて、基板表面20a上に図2に示すように液状体の個体パターン21…を配置する。尚、図2では、矩形状のパターンが個々の個体パターン21とされているが、その態様は機能性膜の種類によって様々である。例えば、所定領域に複数の独立パターン(集合体)が互いに分断されて配置されているような態様であっても、当該個々の独立パターンが互いに関連して個体としての性格を有するのならば、全体を一つの個体パターンとみなすことができる。
【0039】
液状体には、得ようとする機能性膜を構成する機能性材料を水や有機溶媒に溶解ないし分散させたものが用いられる。また、液状体には、レオロジー特性や保存安定性を調整するための添加剤や、バインダー樹脂等を添加することもできる。
【0040】
基板表面20aとは、狭義に基材表面のみのことを表しているのではなく、基材表面上に電気配線等の機能層が形成されている場合も含めた最表層のことを表している。また、個体パターン21…の配置に先立って、基板表面20aの親液性/撥液性の改質のために、プラズマ処理を施したり、官能基を有する鎖状分子からなる自己組織化膜を形成しておくこともできる。また、個体パターン21…の形状を高精度に規定するために、基板表面20aにあらかじめ樹脂等で区画構造物(バンク)を形成しておくこともできる。
【0041】
次の工程S2では、乾燥装置1の蓋体3を開けて、載置台4上に基板20を移送する。基板20は、図示しない位置決め手段によって載置台4上の所定の位置に載置され、整流ユニット30との位置関係が規定されるようになっている。
【0042】
次の工程S3では、図示しない駆動手段によって整流ユニット30が基板20に向かって降下され、基板20上に設置される。これにより、個体パターン21…の上方の空間が各仕切り部材31…によって区画される。すなわち、この工程S3は、本発明における区画工程となっている。
【0043】
次の工程S4では、減圧ポンプ5の稼動によりチャンバ9内を減圧させ、100Pa程度の真空度で基板20(個体パターン21…)の乾燥を行う。すなわち、この工程S4は、本発明における乾燥工程となっている。
【0044】
図5に示すように、仕切り部材31で区画された区画空間36内における液状体の蒸気流(矢印で図示)は、基板20の基板面にほぼ垂直となる。これは、仕切り部材31によって蒸気拡散の基板面内方向の成分が打ち消されるためであり、仕切り部材31による区画領域を個体パターン21配置領域に近接させることで、その効果は大きくなる。好ましくは、仕切り部材31と個体パターン21との基板面内距離dを、区画空間36内における蒸気の平均自由行程(数百μmオーダー)ないしその100倍の範囲内とすることが理想的である。また、本実施形態では、弾性体33により仕切り部材31と基板表面20aとを密着させることで、このような蒸気流の規制をより確実に行うようにしている。
【0045】
かくして、個体パターン21の近傍における蒸気流が、基板面内方向で均一化されるため、個体パターン21内の各領域においてムラなく乾燥、膜化がなされ、プロファイルの良好な機能性膜を得ることができる。
【0046】
また、本実施形態では、特に基板20と対向して多孔性の整流板34を配置することで、区画空間36内における蒸気流の一層の均一化を図ると共に、個々の区画空間36間の蒸気圧ムラの低減を図っている。これは、整流板34の配置によって、一の区画空間36から排気された蒸気が、隣接する他の区画空間36内に最流入しにくくなるためであり、言い換えるならば、個々の区画空間36が、隣接領域の影響を受けない擬似気密空間としての性格を有することになるためである。
【0047】
(液晶表示装置およびその製造方法)
次に、図6を参照して、本発明に係る電気光学装置の一例としての液晶表示装置について説明する。
図6は、液晶表示装置の要部構造を示す概略断面図である。
【0048】
図6に示すように、電気光学装置としての液晶表示装置50は、パッシブマトリクス型液晶表示装置であって、複数の着色膜64を有するカラーフィルタ基板(CF基板)61と、複数の電極68を有する対向基板71と、CF基板61と対向基板71との間に狭持された液晶70とを備えた液晶表示パネル60を有している。このような液晶表示装置50は、受光型の表示装置であるため、例えば対向基板71の背面側にLED素子、EL、冷陰極管などの光源を有する照明装置(図示を省略)を備えている。尚、本実施形態の液晶表示装置50は、これに限定されず、例えば対向基板71にTFTやTFDなどのスイッチング素子を備えたアクティブマトリクス型液晶表示装置であってもよい。
【0049】
対向基板71は、例えば透明な樹脂またはガラス基板を用いており、その液晶70側の表面にITOからなる透明な複数の電極68を有している。電極68は、対向するCF基板61に設けられたITOからなる透明な電極66と直交してY方向に延在している。すなわち、液晶表示パネル60は、互いに対向すると共に直交して格子状に配置された電極66と電極68とを有している。そして電極66と電極68とが直交して重なった部分が表示用の画素領域となっている。
【0050】
CF基板61は、例えば透明な樹脂またはガラス基板を用いており、表面に色要素領域に対応して開口している下層バンクとしての遮光膜62と、遮光膜62の上に設けられた上層バンク63とを備えている。また上層バンク63によって区画された色要素領域にR(赤色)、G(緑色)、B(青色)に対応する色要素としての着色膜64と、着色膜64と上層バンク63とを覆う平坦化層としてのOC(オーバーコート)膜65とを備えている。電極66はOC膜65上に形成されている。尚、電極66との密着性を確保するために、OC膜65の上にさらにSiO2などの薄膜を形成するようにしてもよい。
【0051】
液晶表示パネル60は、このようなCF基板61と対向基板71とをギャップ材72を介して所定の間隔で対向配置させ、図示しないシール材を用いて接合させたものである。また、シール材により液晶70を2つの基板61,71の間に封止したものである。2つの基板61,71の液晶70に面する側には、液晶70を所定の方向に配向させる配向膜67,69が設けられている。
【0052】
尚、液晶表示パネル60の前面側と背面側の表面には、通常、入射あるいは出射する光を偏向させる偏光板や、視角等を改善するための光学機能性フィルムとしての位相差フィルム等が配設されるが、これらは省略している。
【0053】
遮光膜62は、CF基板61上に、Cr、Ni、Al等の不透明な金属、あるいはこれらの金属の酸化物等の化合物を材料として、気相法とフォトリソグラフィー法を用いて製造することができる。
【0054】
上層バンク63は、遮光膜62が形成されたCF基板61上に、ロールコート法やスピンコート法により厚みがおよそ2μmの感光性樹脂層を形成した後、フォトリソグラフィー法によりパターニングを施して得ることができる。
【0055】
機能性膜としての着色膜64B,64G,64Rは、それぞれB,G,Rに対応する三色の色材(有機顔料)を含む液状体を用い、上述した成膜方法により形成することができる。すなわち、上層バンク63によって区画された色要素領域に液状体を付与して個体パターンの配置を行い、区画工程S3および乾燥工程S4(図4参照)を経て着色膜64B,64G,64Rを形成する。この場合において、複数の色要素領域にそれぞれ配置された液状体パターンの、液晶表示パネル60の個体毎における集合が、それぞれの個体パターンを構成することになる。
【0056】
機能性膜としてのOC膜65は、透明なアクリル系樹脂を含む液状体を用いて、スピンコート法、オフセット印刷により形成することができるほか、上述した成膜方法により形成することもできる。
【0057】
機能性膜としての電極66,68は、気相法およびフォトリソグラフィー法を用いて形成することができるほか、液状体としてAu,Ag,Pt等の金属微粒子の分散液を用い、上述した成膜方法により形成することもできる。
【0058】
機能性膜としての配向膜67,69は、ポリイミド樹脂などを含む液状体を用いて、上述した成膜方法により成膜を行った後、ラビング処理により配向性を付与して形成される。
【0059】
このように、上述の成膜方法を用いて製造された液晶表示装置50は、プロファイルの良好な各種機能性膜を備えているので、高品質である。
【0060】
(電子機器)
次に、図7を参照して、本発明に係る電子機器の一例としての携帯型情報処理装置について説明する。
図7は、携帯型情報処理装置を示す概略斜視図である。
【0061】
図7に示すように、電子機器としての携帯型情報処理装置300は、入力用のキーボード301を有する情報処理装置本体303と、表示部302とを備えている。表示部302には、液晶表示装置50が用いられている。この携帯型情報処理装置300は、上記液晶表示装置50を備えているので、高品質である。
【0062】
(第2実施形態)
次に、図8を参照して、本発明の第2実施形態ついて、第1実施形態との相違点を中心に説明する。図8は、第2実施形態に係る仕切り部材と基板との関係を示す断面図である。
【0063】
この第2実施形態では、乾燥装置内において、基板20の外形に合わせて個体パターン21…の上方空間を区画するように仕切り部材41が配置され、さらに仕切り部材41を挟んで基板20と対向するように整流板42が配置されるようになっている。仕切り部材41と整流板42とは独立した構成となっており、仕切り部材41は、図示しない位置決め手段によって載置台4上の規定された位置に載置される。また、整流板42は、仕切り部材41の上縁41aからわずかに離間して配置される。
【0064】
この実施形態のように、仕切り部材と整流板とは独立した構成となっていてもよいし、仕切り部材と整流板とは、離間して配置されるようになっていてもよい。
【0065】
また、この第2実施形態のように、基板20の外形に合わせて区画を行うようにした態様にあっては、仕切り部材41による蒸気流の整流作用によって、基板面内の領域間における蒸気圧分布の均一化が図られる。これにより、個体パターン21…個々の乾燥(膜化)が一様になされ、膜プロファイルの個体ばらつきが好適に抑えられる。
【0066】
本発明は上述の実施形態に限定されない。
例えば、上述の実施形態は、単一の基板上に複数の個体パターンが配置される態様であったが、複数の個片基板を単一パレット上に配列した状態において、個体パターンの配置、区画、乾燥の各工程を行うようにしてもよい。
また、区画工程は、印刷法等を用いて、基板表面上に区画構造物を形成することで行うようにしてもよい。
また、乾燥工程は、整流板を用いず、仕切り部材のみで行うようにしてもよい。
また、乾燥方式は、上述の実施形態のような減圧乾燥に限定されるものではなく、温風送風による乾燥や、自然乾燥等であってもよい。
また、本発明に係る電気光学装置ないし機能性膜の別の例として、有機エレクトロルミネッセンス表示装置における発光膜や正孔輸送膜、プラズマディスプレイ装置における蛍光膜、電界放出型表示装置(表面電界型を含む)などを挙げることができる。また、これらの電気光学装置において、画素駆動用配線やTFT素子などを上述の成膜方法を用いて形成することもできる。
また、各実施形態の各構成はこれらを適宜組み合わせたり、省略したり、図示しない他の構成と組み合わせたりすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明に係る乾燥装置の構成を一部模式化して示す概略図。
【図2】乾燥装置内における整流ユニットと基板との関係を示す斜視図。
【図3】液滴吐出装置の構成の一例を示す模式図。
【図4】成膜工程のフローを示すフローチャート。
【図5】区画空間内における蒸気流を示す概略断面図。
【図6】液晶表示装置の要部構造を示す概略断面図。
【図7】携帯型情報処理装置を示す概略斜視図。
【図8】第2実施形態に係る仕切り部材と基板との関係を示す断面図。
【符号の説明】
【0068】
1…乾燥装置、2…容器体、3…蓋体、4…載置台、5…減圧ポンプ、6…送気管、7…排気口、8…可動連結部、9…気密室としてのチャンバ、20…基板、20a…基板の一面としての基板表面、21…個体パターン、30…整流ユニット、31…区画手段としての仕切り部材、32…枠体、33…弾性体、34…整流板、35…貫通孔、36…区画空間、41…区画手段としての仕切り部材、42…整流板、50…電気光学装置としての液晶表示装置、60…液晶表示パネル、61…CF基板、62…遮光膜、63…上層バンク、64…機能性膜としての着色膜、65…機能性膜としてのOC膜、66,68…機能性膜としての電極、67,69…機能性膜としての配向膜、70…液晶、71…対向基板、72…ギャップ材、300…電子機器としての携帯型情報処理装置、301…キーボード、302…表示部、303…情報処理装置本体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一面に液状体の個体パターンが配置された基板についての乾燥方法であって、
前記基板の一面側における空間を、前記基板の外形に合わせて物理的に区画する区画工程と、
前記基板を乾燥させる乾燥工程と、を有することを特徴とする乾燥方法。
【請求項2】
一面に液状体の個体パターンが配置された基板についての乾燥方法であって、
前記基板の一面側における空間を、前記個体パターンの配置領域に合わせて物理的に区画する区画工程と、
前記基板を乾燥させる乾燥工程と、を有することを特徴とする乾燥方法。
【請求項3】
前記個体パターンの配置領域と前記区画された空間領域の境界との基板面内距離が、前記区画された空間内における前記液状体の蒸気の平均自由行程ないしその100倍の距離の範囲内で設定されていることを特徴とする請求項2に記載の乾燥方法。
【請求項4】
前記区画工程は、前記基板の一面側に仕切り部材を設置して行うことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の乾燥方法。
【請求項5】
前記仕切り部材と前記基板の一面とを密着させることを特徴とする請求項4に記載の乾燥方法。
【請求項6】
前記区画された空間を介して前記基板と対向するように整流板が配置された状態で、前記乾燥工程を行うことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一項に記載の乾燥方法。
【請求項7】
一面に液状体の個体パターンが配置された基板の乾燥を行うための乾燥装置であって、
前記基板を収容するための気密室と、
前記気密室内において、前記基板の一面側における空間を前記基板の外形に合わせて物理的に区画可能な区画手段と、を備えることを特徴とする乾燥装置。
【請求項8】
一面に液状体の個体パターンが配置された基板の乾燥を行うための乾燥装置であって、
前記基板を収容するための気密室と、
前記気密室内において、前記基板の一面側における空間を前記個体パターンの配置領域に合わせて物理的に区画可能な区画手段と、を備えることを特徴とする乾燥装置。
【請求項9】
前記区画手段を介して前記基板と対向して配置される整流板をさらに備えることを特徴とする請求項7または8に記載の乾燥装置。
【請求項10】
基板の一面に液状体の個体パターンを配置し、請求項1ないし6のいずれか一項に記載の乾燥方法で前記基板の乾燥を行って、前記個体パターンを膜化させる成膜方法。
【請求項11】
パターン化された機能性膜を備える電気光学装置の製造方法であって、
前記機能性膜は、請求項10に記載の成膜方法を用いて形成されることを特徴とする電気光学装置の製造方法。
【請求項12】
パターン化された機能性膜を備える電気光学装置であって、
前記機能性膜は、基板の一面に液状体の個体パターンが配置され、前記基板の一面側における空間が前記基板の外形に合わせて物理的に区画された状態で乾燥されて形成されることを特徴とする電気光学装置。
【請求項13】
パターン化された機能性膜を備える電気光学装置であって、
前記機能性膜は、基板の一面に液状体の個体パターンが配置され、前記基板の一面側における空間が前記個体パターンの配置領域に合わせて物理的に区画された状態で乾燥されて形成されることを特徴とする電気光学装置。
【請求項14】
請求項12または13に記載の電気光学装置を備える電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−90200(P2007−90200A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−281512(P2005−281512)
【出願日】平成17年9月28日(2005.9.28)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】