説明

人体検知装置及び衛生洗浄装置

【課題】 本発明の課題は、発光素子の経年劣化に影響を与えることなく発光量を補正する人体検知装置を提供する。
【解決手段】 本発明では、被検出体からの反射光を受光レンズで集光させて受光する一次元位置検出素子と、前記一次元位置検出素子から検出される長手方向の両端より検出する電流比で被検出体までの距離を演算する距離演算手段とを備えた人体検知装置において、前記一次元位置検出素子の両端より検出する総電流量を測定する総電流量検出手段と、前記発光素子の周囲温度を検出する温度検出手段と前記発光素子の駆動電流量を可変する駆動電流設定手段とを有するとともに、前記駆動電流設定手段は、前記距離演算手段と前記総電流量検出手段と前記温度検出手段の出力を参照し、前記発光素子の駆動電流量を可変する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、従来の人体検知装置と同様に、検出体に発光する発光素子と、前記発光素子の光束を収束させるレンズと、前記発光部から発光された光が前記被検出体による反射光を集光する集光レンズと、前記集光レンズで反射光を受ける単一のPSD(一次元位置検出素子)と、前記PSD(一次元位置検出素子)の長手方向の両端から検出する近点側電流出力及び遠点側電流出力の電流比で被検出体までの距離を演算する距離演算手段で構成している。更に上記の従来の人体検知装置に、前記PSD(一次元位置検出素子)の長手方向の両端からの総電流を検出する総電流量検出手段を備え、前記総電流量検出手段で検出される総電流値が距離演算手段の演算結果に影響を与えない所定の電流値になるように、前記発光素子への駆動電流の増加の要否を判断させる駆動電流設定手段と、前記発光素子の発光量を可変する駆動手段を備え、上記距離を演算する演算手段から算出される被検出体までの距離が人を検出する設定範囲で、温度検出手段で検出される発光素子の周囲温度が所定の温度以上の場合のみ発光素子への電流を増やすことで、発光素子の経年劣化を最小限に抑えて更に、測定精度の高い人体検知装置を有するトイレ装置に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
図7は、従来の測距センサの構造を示す説明図である。
この図のように、従来の人体検知装置は、発光素子2、発光素子2より発光される赤外光4を収束させる発光レンズ3、発光レンズ3で集光された赤外光4が人(被検出体)5で反射して反射光6を集光する受光レンズ7、近点側電極9と遠点側電極10を有するPSD(一次元位置検出素子)8、PSD(一次元位置検出素子)8から出力される遠点電極に発生する電流Ia22と、PSD(一次元位置検出素子)8から出力される近点電極に発生する電流Ib23と、太陽光のように周期的に発光せずに一定の光強度で発光している定常光による出力される定常光信号を遠点電極に発生する電流Ia22と近点電極に発生する電極Ib23から除去する定常光除去手段11、定常光除去手段11で定常光信号を除去された電流Ia22と電流I23の比率で距離を演算する距離演算手段12で構成している。
【0003】
ここで、上記の三角測距を説明すると、前記発光素子から発光された赤外光は、図7に示すように、発光レンズ3で収束され、前記光が人(被検出体)5に当たり反射する。前記反射光6が受光レンズ7によって収束され、前記反射光6がPSD(一次元位置検出素子)8上に集光される。そのPSD(一次元位置検出素子)8上の集光位置を測定することによって人(被検出体)5迄の距離を測定する。
【0004】
図8の従来の三角測距の原理図を参照しながら検知距離の算出を説明する。
ここで、A:投受光レンズの中心間の距離、R:人(被検出体)までの距離、f:受光レンズとPSD(一次元位置検出素子)間の距離、X:PSD(一次元位置検出素子)の遠点側からPSD(一次元位置検出素子)の長手方向の両端から検出する上の集光位置までの距離を表している。
人(被検出体)までの距離Rは下式で求めることができる。
R=A×f/X
上記式中のA(投受光レンズの中心間の距離)とf(受光レンズとPSD間の距離)は既知の値である。つまり、X(PSDの遠点側からPSD上の集光位置までの距離)を求めることによって、人(被検出体)までの距離Rを求めているものである。
【0005】
次に、X(PSDの遠点側からPSD上の集光位置までの距離)の算出を図9の従来の測距センサに搭載しているPSDの等価回路を参照しながら説明する。
ここで、L:PSD(一次元位置検出素子)の全長、(RL):PSD(一次元位置検出素子)の全抵抗値、X:PSD(一次元位置検出素子)の遠点側からPSD(一次元位置検出素子)上の集光位置までの距離、(Rx):PSD(一次元位置検出素子)の遠点側からPSD(一次元位置検出素子)上の集光位置までの抵抗値、Ia:遠点電極に発生する電流22、Ib:近点電極に発生する電流23、Io:PSD(一次元位置検出素子)発生電流を表している。
【0006】
PSD(一次元位置検出素子)8の遠点側からPSD(一次元位置検出素子)8上の集光位置までの距離がXでPSD(一次元位置検出素子)8から電流源Io21が発生している。この電流源Io21は、PSD(一次元位置検出素子)表面の抵抗膜を通じて遠点電極に発生する電流Ia22と近点電極に発生する電流Ib23に分流する。
PSD(一次元位置検出素子)8の遠点側からPSD(一次元位置検出素子)8上の集光位置までの距離Xは下式で求めることができる。
X=(Ib/(Ia+Ib))×L
上記式中のL(PSDの全長)は既知の値である。
つまり、Ia(遠点電極に発生する電流22)とIb(近点電極に発生する電流23)を求めることによって、PSD(一次元位置検出素子)8の遠点側からPSD上の集光位置までの距離Xを求めているものである。
即ち、上記の三角測距の原理とPSD(一次元位置検出素子)8の等価回路より、PSD(一次元位置検出素子)8のIa(遠点電極に発生する電流22)とIb(近点電極に発生する電流23)を求めることで、人(被検出体)までの距離Rは求まることがわかる。
【0007】
しかしながら、実際には、定常光は定常光除去手段で完全に取り除くことができないので、取り除かれなかった定常光はノイズ電流として△Ia、△Ibとして発生する。
ここで、△Ia:遠点電極に発生するノイズ電流、△Ib:近点電極に発生するノイズ電流、を表している。
その結果、前記近点側電流出力Ib23及び遠点側電流出力Ia22に上記のノイズ電流である△Ia、△Ib
が加算されて、PSD(一次元位置検出素子)8の遠点側からPSD上の集光位置までの距離Xは下式となる。
X=((Ib+△Ib)/((Ia+△Ia)+(Ib+△Ib))×L
【0008】
上記の式から、従来の人体検知装置では、省スペースと低コストを目的にして、投受光レンズをレンズ径が小さく面積が小さいレンズを用いた場合と、被検出体迄の距離が遠くなる場合と、被検出体の反射率が低い場合は、PSD(一次元位置検出素子)上に受光される光量が減衰する。それに伴い、PSD(一次元位置検出素子)の前記近点側電流出力Ib及び遠点側電流出力Iaは僅となるので、上記のノイズ電流△Ia、△Ibの影響が大きくなってPSD(一次元位置検出素子)の遠点側からPSD(一次元位置検出素子)上の集光位置までの距離Xに誤差を発生させるので、PSD(一次元位置検出素子)の出力電流比の演算結果に影響を与えて測定精度が低下して人体検知性能が低下する問題があった。
【0009】
このため、上記のように、センサの小型化を進めるため主要要因であるレンズの径を小さくし、レンズのF値を下げて設計する場合、被検出体の特性(反射率)や感知距離の影響が大きくなる。よって、PSD電流が、PSD(一次元位置検出素子)の出力電流比の演算結果に影響を与えない電流以上になるように、発光素子の発光出力を決定している。
また、発光素子は半導体である以上、発行量は周囲温度に大きく依存し、PSD(一次元位置検出素子)上に受光される光量は、発光素子の周囲温度が高くなるほど発光量は減少する特性となるので、PSD(一次元位置検出素子)上に受光される光量が、著しく低下する問題がある。
【0010】
ここで、発光素子の光量が低下することに関する従来例の測距センサの提案によれば、先に述べたように、人体検知装置の周囲温度が高い場合に、発光素子の発光量が低下することによって測定精度が低下する問題があるので、温度に応じて距離演算出力信号を最適に補正(クランプ)する信号補正手段を設けて測定精度を向上さるものもある。(例えば、特開平8−94920参照)
しかし、この場合も温度の補正は可能になるが、温度の補正を必要としない場合で、被検出体の反射率が低い場合、又は、温度の補正を必要としない場合で、被検出体までの距離が遠い場合には温度補正による信号補正ができないので測定精度が低下する問題があった。
また、上記の条件では、前記のノイズ電流△Ia、△Ibの影響が大きくなってPSD(一次元位置検出素子)の遠点側からPSD(一次元位置検出素子)上の集光位置までの距離Xに誤差を発生させることに関して解決できない問題があった。
【0011】
更に、被検出体の反射率が低い場合、又は、被検出体までの距離が遠い場合に、発光素子の発光強度を増加させることによって、反射光量の低下を防いで測定精度を向上させることが可能になるが、一方、発光強度を増加させることによって、発光素子の経年劣化による光量の低下が顕著に発生して初期の測定精度を保てない問題があった。一方、発光量をあげるために、常に発光素子の発光量を大きくすれば、素子自体の寿命が短くなるので問題がある。
【0012】
【特許文献1】特開平8−94920号公報(第8頁、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、人体検知装置の測定において、被検出体の反射率が低い場合と、被検出体までの測定距離が遠い場合と、発光素子の周囲温度が高い場合は、PSD(一次元位置検出素子)上に受光される光量が減少する。
特に、前記の場合が重なった場合には、著しく反射光量が減少してPSD(一次元位置検出素子)上に受光する光量は僅かになり測定精度が著しく低下する問題がある。
一方、反射光量の低下を防いで測定精度を向上させるために、発光素子の発光強度を増加させることによって可能になるが、発光強度を増加させることによって、発光素子の経年劣化による光量の低下が顕著となり初期の測定精度を保てない問題があった。
【0014】
本発明は、この相反する問題を解決するためになされたもので、本発明の課題は、被検出体の反射率が低い場合と、被検出体の人を検出する設定範囲で被検出体までの測定距離が遠い場合と、発光素子の周囲温度が高い場合の条件が重なった場合にも測定精度を低下させずに、且つ、発光素子の経年劣化に影響を与えることなく発光素子の発光量を補正することを可能とする人体検知装置を構成するものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために請求項1記載の発明によれば、従来の人体検知装置と同様に、被検出体に向け投光レンズで収束させて発光させる発光素子と前記被検出体からの反射光を受光レンズで集光させて受光する一次元位置検出素子と、前記一次元位置検出素子から検出される長手方向の両端より検出する電流比で被検出体までの距離を演算する距離演算手段で構成している。上記従来の人体検知装置に、更に、前記一次元位置検出素子の両端より検出する総電流量を検出する総電流量検出手段と、前記発光素子の周囲温度を検出する温度検出手段と前記発光素子の駆動電流量を可変する駆動電流設定手段とを有するとともに、前記駆動電流設定手段は、前記距離演算手段と前記総電流量検出手段と前記温度検出手段の出力を参照することで、発光素子の電流設定を被検出体までの距離とPSD電流と発光素子の周囲温度の条件を組み合わせることができる。
前記発光素子は、通電量が増加する程、発光素子が劣化して発光量が低下する。また、温度が高温になる程、発行量が低下する特性をもつ。
そこで本発明の前記駆動電流設定手段によると、前記の条件を組み合わせることができるので、発光素子への電流設定を必要にして最小限の条件のみに電流を増加させることができる。
【0016】
次に、請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の駆動手段において、前記駆動電流設定手段で電流を増加させる条件は、前記演算手段から算出される被検出体までの距離が人を検出する設定範囲で、前記総電流量検出手段から検出される電流が所定の電流値以下で、かつ、前記温度検出手段で検出される発光素子の周囲温度が所定の温度以上の場合に、前記発光素子への駆動電流を増加させている。
人体検知センサは常時距離を測定する為に、発光素子を常時発光させているので、発光量を増させると発光量が低下する問題がある。
そこで、本発明は、上記の条件が組み合わさった場合にのみ発光素子の光量を増加させることで、発光量を増加させる時間は、常時発光している時間に比べ、僅かな時間となるので、発光量を増加させても発光素子の劣化による発光量の低下を受けにくくした。
即ち、発光素子の発行量の補正を発光素子の劣化を受けにくくすることを可能にした。
【0017】
次に、請求項3記載の発明によれば、前記人体検知装置の出力に連動して衛生洗浄装置の負荷の制御を行う制御部を備えた衛生洗浄装置において、前記衛生洗浄装置は局部を乾燥させる温風装置を有するとともに、前記温風装置に搭載している温風温度検出手段と前記温度検出手段を兼用できるので、人体検知手段に温度検出検出手段を不要とし、衛生洗浄装置を更に省スペースと低コストを可能とするものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、人体検知装置の構成で、投受光レンズをレンズ径が小さく面積が小さいレンズを用いた構成で、被検出体の反射率が低い場合と、被検出体までの距離が遠い場合と、発光素子の周囲温度が高い場合の条件が重なった場合にも、PSD(一次元位置検出素子)の出力電流比の演算結果に影響を与えることなく、高い測定精度を維持することができて、人体検知性能の向上と、人体検知装置の小型化が可能となる。
【0019】
更に、発光素子の発光量を増加して補正しても発光素子の経年劣化に影響を与えることなく発光量を増加して補正することが可能となる。
即ち、測定精度の高精度と高信頼性を兼ね備え、省スペースと低コストを達成する人体検知装置を構成することも可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、添付図面を参照しながら本発明の最良の形態を詳細に説明する。
図1は本発明の測距センサの構造を示す説明図である。従来の測距センサと同様に、発光素子(赤外線発光ダイオード)2、発光素子2より発光される赤外光4を収束させる発光レンズ3、発光レンズ3で集光された赤外光4が人(被検出体)5で反射して反射光6を集光する受光レンズ7、人(被検出体)5が近くに位置する場合に、人(被検出体)5からの反射光6がPSD(一次元位置検出素子)8上に集光される側の電極を近点電極9、一方、人(被検出体)5が遠くに位置する場合に、人(被検出体)5からの反射光6がPSD(一次元位置検出素子)8上に集光される側の電極を遠点電極10、近点側電極9と遠点側電極10を有するPSD(一次元位置検出素子)8、PSD(一次元位置検出素子)8から出力される遠点電極に発生する電極Ia22と、近点電極に発生する電極Ib23から太陽光のように周期的に発光せずに一定の光強度で発光している定常光による出力される定常光信号を除去する定常光除去手段11、定常光除去手段11で定常光信号を除去された電流Ia24と電流Ib25の比率で距離を演算する距離演算手段12で構成して、距離演算結果をトイレ装置の制御手段26に出力している。
【0021】
本発明は、上記した従来の測距センサに更に、前記PSD(一次元位置検出素子)電流Ia22と電流Ib23を加算する総電流量検出手段13、発光素子2の周囲温度を検出する温度検出手段14、発光素子2の光量の調整を判断する駆動電流設定手段15を備える構成で、前記駆動電流設定手段15は、前記距離演算手段12と前記総電流量検出手段15と前記温度検出手段14の出力を参照し、前記発光素子2の駆動電流量を可変することが特徴である。
【0022】
本発明の概略を以下に示す。
本発明は、人を検出する範囲18内に人(被検出体)5が存在した場合で、人(被検出体)5の反射率が低い場合で、発光素子2の周囲温度が高い場合に、距離演算手段12が、ノイズ電流の影響を受けても演算結果に影響を与えないように、PSDの両端より検出する総電流を所定の電流値20となるように、駆動電流設定手段15にて発行素子2への発光量を設定するものである。
【0023】
先ず、人(被検出体)5が人を検出する範囲18内なのか距離演算手段12で判断させ、その結果が人を検出する範囲18内の場合で、人(被検出体)5の反射率が低くてPSDの両端より検出する総電流が小さい場合において、ノイズ電流の影響によって距離演算手段12の演算結果に影響を与える電流なのか総電流量検出手段13で判断させる。
その結果が距離の演算結果に影響を与える小電流の場合で、更に、温度検出手段14で発光素子2の周囲温度を検出して、その結果が影響を与える温度の場合にのみ、駆動電流設定手段15によって発光素子2の光量を増加させるために第一の駆動手段16と第二の駆動手段17を駆動させるものである。
【0024】
尚、上記の発光素子2の周囲温度を検出する温度検出手段14の取り付け位置は、人体検知装置1のプリント基板上に温度検出手段14を構成する温度検出素子を搭載するものである。
更に、発光素子2の周囲温度を人体検知装置1を制御している本体制御手段に設けている周囲温度を兼用することで、人体検知装置1に上記の温度検出手段14を備えなくてもよく、前記の本体制御手段26に温度検出手段の結果を人体検知装置に駆動電流設定手段15に入力しても良い。
【0025】
上記温度検出手段14は、図11の本発明の人体検知装置のプリント基板上の部品構成を示す構成図に示すとおり、プリント基板27上に駆動電流設定手段15と距離演算手段12からなる制御IC28と、発光素子2と、PSD8と、コネクタ29で構成される狭い部品の間に搭載している。
つぎに、図12の本発明の温度検出手段を備えたトイレ装置の説明図に基づいて人体検知装置1を小型にする場合を、説明する。
トイレ装置である温水洗浄便座30の本体制御手段26には、温風装置31に搭載している温度検出手段14の温度情報を入力している。
前記本体制御手段26の周囲温度は、前記温風装置31の動作が停止してから前記温度検出装置32の温度が前記人体検知装置1の周囲温度と同一となる時間後に、周囲温度に確定させる。一方、前期温風装置31が動作中は周囲温度に確定させずに、動作前の最新の周囲温度と見なしている。
この本体制御手段26で確定した周囲温度情報を人体検知装置1に入力することで、図11に示す人体検知装置の基板に搭載している温度検出装置手段を削除できる。
【0026】
図2に本発明の発光素子の駆動ブロック図を示す。
本発明の特徴は、発光素子2の駆動を複数の並列に挿入された駆動手段の組み合わせで駆動させることにより、従来のただ駆動電流が異なる複数の駆動手段の切替による駆動に比べて、発光素子2の光量を著しく可変させることができて正確な距離測定を可能にするものである。
先ず、発光素子2の駆動は、駆動制御手段25によって第一の駆動手段16の場合で駆動する場合と、第一の駆動手段16と第一の駆動手段16に並列に挿入している第二の駆動手段17を共に駆動する場合とを組み合わせて駆動させて、距離演算手段がノイズ電流の影響を受けずに距離の演算結果に影響を与えない所定の電流値20になるように駆動している。
この所定の電流値20については後で詳説する。
【0027】
このように、第一の駆動手段16と第二の駆動手段17を並列に独立した駆動装置で構成することにより、独立した駆動装置の定格電流はそれぞれ異なる定格電流とすることを可能としている。
それ故、発光素子2への駆動電流を著しく増加させる必要がある場合は、第二の駆動手段17の定格電流は第一の駆動手段16よりも大きな定格電流の駆動装置を選択できるので、発光素子2の光量を十分確保でき、距離演算手段がノイズ電流の影響を受けずに距離の演算結果に影響を与えない所定の電流値20を確保することを可能としている。
【0028】
図3に本発明の発光素子の発光出力と駆動タイミング図を示す。
本発明の特徴は、発光素子2の駆動を複数の並列に挿入された駆動手段の組み合わせで駆動させることにより、発光素子2の光量を著しく可変させることができるものの、一方で、発光タイミングがズレると、発光素子2の発光出力が不連続値となり安定した出力が得られずに測定誤差がでてしまう。
それ故、発光素子2の発光出力が一定値にさせて安定した出力が得られるように駆動を同期させるものである。
【0029】
先ず、従来の測距センサ同様に、発光素子の駆動は、発光素子を劣化させずに、更に、PSDのパルス電流値をA/D変換して距離演算装置で演算させる際に、パルス電流を充放電させて、放電時間をカウントすることによりA/D変換させることを目的に、発光素子2の駆動を一般的なデューティー1/3として0Nパルス時間が30msecで周期が100msecのパルスで駆動を行なって一周期毎に、距離演算手段12で距離を演算出力している。
【0030】
本発明は、上記従来の測距センサに更に、第一の駆動手段に並列に挿入される第二の駆動手段を第一の駆動手段と同時に駆動させる際は、第一の駆動手段のONパルスが立ち上がる場合に同期させて駆動している。
発光素子の発光出力は、第一の駆動手段と第二の駆動手段で加算される発光出力となるので、同期発光させることで、発光出力が不連続値でなく一定値にさせて安定した出力が得られる。
【0031】
更に、発光素子に第二の駆動手段で駆動する電流は、第一の駆動手段で駆動する電流よりも大電流を駆動させている。
即ち、第二の駆動手段を第一の駆動手段と同時に駆動させる場合は、ただ並列にして2倍の電流を流すのではなくて、2倍以上の大電流を流せて発光素子の光量を大幅に増加することを可能にしている。
【0032】
ここで、センサーの駆動電流の設定について、図10の本発明の駆動手段を組み合わせ場合の駆動電流設定表を参照しながら説明する。
まず始めに、第一の駆動手段の定格電流は駆動電流300mAを駆動できる定格電流としている。
第二の駆動手段17の駆動電流は第一の駆動手段16に比べ4倍の1200mAとし、第二の駆動手段の定格電流は駆動電流1200mAを駆動できる定格電流としている。
第一の駆動手段と第二の駆動手段を並列に独立した駆動装置で構成することにより、発光素子の駆動電流値は第一の駆動手段単独の駆動電流300mAに対して、第一の駆動手段の駆動電流と第二の駆動手段を加算した1200mA+300mA=1500mAとなる5倍の電流を流すことを可能として、距離演算手段がノイズ電流の影響受けずに距離の演算結果に影響を与えない所定の電流値20を確保している。
【0033】
ここで、駆動電流とノイズ電流と所定の電流値20の関係を下記に示す。
図9の従来の測距センサに搭載しているPSDの等価回路で説明したとおりに、PSDの遠点側からPSD上の集光位置までの距離Xは下式となる。
X=((Ib+△Ib)/((Ia+△Ia)+(Ib+△Ib))×L
L:PSDの全長、Ia:遠点電極に発生する電流22、Ib:近点電極に発生する電流23、
△Ia:遠点電極に発生するノイズ電流、△Ib:近点電極に発生するノイズ電流、を表している。
上記の式より、距離Xのノイズ電流の影響による測定誤差が許容できる10%以下になるように所定の電流値を求めている。三角測距の原理で説明したとおり、PSD上の距離Xと人(被検出体)5迄の距離は相似で求まるので、人(被検出体)5迄の距離の測定誤差も10%以下となる。
【0034】
所定の電流値20について下記に図1の本発明を示す測距センサセンサの構造を示す説明図と、図9の従来の測距センサに搭載しているPSDの等価回路を参照しながら説明する。
ここでは、PSDの大きさで出力特性が異なるので、一例として示す。
先ず、人(被検出体)5の反射率が低反射率で、人が遠方に位置している距離Rで、PSD(一次元位置検出素子)8上の集光位置が遠点側に9割の位置に設定した場合には、遠点電極に発生する電流22と近点電極に発生する電流23の比率は9:1となる。
又、反射体がなくて測定距離が∞でPSD(一次元位置検出素子)8上に反射光6が集光されない場合には、ノイズ電流は0.1nA発生している。
次に、駆動電流によるノイズ電流の影響を下記する。
【0035】
駆動電流が300mAの場合
ノイズ電流=0nA、PSD電流=10nAでは、
X=1L/(9+1)=0.1L
又、ノイズ電流=1nA、PSD電流=10nAでは、
X=1.1L/(9.1+1.1)=0.11L
従って、ノイズ電流の影響は(0.11L−0.1L)/0.1L×100=10%
このことから、駆動電流が300mAの場合では、距離Xのノイズ電流の影響による測定誤差が許容できる10%以下となるPSD電流=10nAを所定の電流値20としている。
【0036】
駆動電流が1500mAの場合
ノイズ電流=0nA、PSD電流=50nAでは、
X=5L/(45+5)=0.1L
又、ノイズ電流=1nA、PSD電流=50nAでは、
X=5.1L/(45.1+5.1)=0.1L
従って、ノイズ電流の影響は(0.1L−0.1L)/0.1L×100=0%
このことから、駆動電流が1500mAの場合では、距離Xのノイズ電流の影響によるノイズの影響が0%となる。
即ち、他の要因でPSDから検出される総電流が低下してもノイズの影響を受けない。
【0037】
図4に従来のPSD総検出電流の距離特性を示す。
従来の測距センサと同様に、PSDから検出される総電流は、測距センサから被検出体迄の距離が遠い程、又、被検出体の反射率が低い程、PSD上に受光される光量が低下して少なくなることを示している。
【0038】
従って、従来の測距センサと同様に、被検出体の反射率が低い場合で、人が遠方に位置している距離Rを、人を検出させる範囲18内の距離に最大許容誤差を加えた距離とした場合で、且つ、発光素子2の光量が経年変化で低下してもPSDから検出される総電流が距離演算手段の演算結果に影響を与えない所定の電流値20(斜線のレベル以上)になるように、第一の駆動手段で発光素子の駆動電流を設定している。
【0039】
更に、被検出体の反射率が低い場合の動作について簡単に説明する。
第一の駆動手段の駆動電流の設定は、被検出体の反射率が低い5%の場合で、人を検出させる範囲18内の距離が700mmから1000mmに設定して、人が遠方に位置している距離Rを人を検出させる範囲18内の距離に最大許容誤差の50mmを加えた1050mmに設定した場合で、且つ、発光素子2の光量が経年変化で低下してもPSDから検出される総電流が、距離演算手段の演算結果に影響を与えない所定の電流値20の(斜線のレベル以上)10nA以上になるように、第一の駆動手段で発光素子の電流を300mAに設定している。
【0040】
図5に従来のPSD総検出電流−温度特性を示す。
従来の測距センサと同様に、被検出体の反射率が低い場合で、人が遠方に位置している距離Rで、PSDから検出される総電流が距離演算手段の演算結果に影響を与えない所定の電流値20(塗りつぶしたレベル以上)になるように発光素子2の電流を設定しているものの、PSDから検出される総電流は、発光素子の素子特性によって発光素子の周囲温度が高くなる程、発光素子の光量が低下するので、所定の温度24以上になるとPSDから検出される総電流が距離演算手段の演算結果に影響を与えない所定の電流値20以下(斜線のレベル)になり測定精度が低下することを示す。
【0041】
即ち、PSD電流がPSD(一次元位置検出素子)8の出力電流比の演算結果に影響を与えない所定の電流値20以下(斜線のレベル)となる場合は、対象物の反射率が低い場合で、人が遠方に位置している距離Rの時で、且つ、発光素子の周囲温度が高くなる所定の温度24以上の場合である。
【0042】
本発明の特徴は、図4、5で説明したように、上記の条件が重なった場合に、発光素子を第一の駆動手段のみで駆動すると、PSDから検出される総電流が距離演算手段の演算結果に影響を与えない所定の電流値20以下(塗りつぶしたレベル)となり測定精度が低下するので、発光素子に大電流が駆動できる第二の駆動手段と第一の駆動手段を同時に駆動させて、発光量を増加させてPSDから検出される総電流が、距離演算手段の演算結果に影響を与えない所定の電流値20(斜線のレベル以上)になるように発光素子の出力を補正するものである。
【0043】
更に、反射率が低く温度が高い場合についての動作について簡単に説明する。
被検出体の反射率が低い5%の場合に、人が遠方に位置している距離Rを人を検出させる範囲18内の距離が700mmから1000mm最大距離1000mmで許容できる測定誤差を加えた1050mmに設定した場合で、且つ、光量が経値(斜線のレベル以上)の10nA以上に設定するように、図10の駆動手段を組み合わせ場合の駆動電流設定表に示すとおり、駆動電流を増加させることなく第一の駆動手段16で発光させて発光素子の駆動電流は300mAとしている。
上記の条件に更に、発光素子の周囲温度が所定温度25℃以上の場合では、PSDから検出される総電流が距離演算手段の演算結果に影響を与えない所定の電流値の10nA以下(斜線のレベル)となるので、電流を増加する必要がある。
このことから、第一の駆動手段と並列に1200mA駆動できる第二の駆動手段を同時に駆動させて、発光素子の駆動電流は第一の駆動手段単独の駆動電流300mAに対して、第一の駆動手段の駆動電流と第二の駆動手段の駆動電流を加算した300mA+1200mA=1500mAとなる5倍の電流を流すことでPSDから検出される総電流が距離演算手段の演算結果に影響を与えない所定の電流値(斜線のレベル)の10nA以上を確保している。
【0044】
このように、発光素子を第二の駆動手段を用いて、第一の駆動手段と第二の駆動手段を同時に駆動させて大電流を供給する場合は、被検出体の反射率が低い場合で、人が遠方に位置している距離Rを人を検出させる範囲18内の距離に最大許容誤差を加えた距離とした場合で、更に、発光素子の周囲温度が所定温度以上の場合のみとなるので、発光頻度が僅となる為、発光素子2への電流は大電流を流しても発光素子2の通電電流による発光量の経年劣化に影響を及ぼさないことを可能にしている。
【0045】
図6に本発明の駆動手段の駆動判断を表すフローチャートを示す。
先ず、S101にて発光素子を駆動する。
次に、S102にて被検出体までの距離を距離演算手段で演算する。
次にS103にて距離演算手段での距離演算結果が人を検知する範囲内か判断する。否定で有ればS109に進み駆動制御手段によって第一の駆動手段を選択して第一の駆動手段で発光素子を駆動して、S103にて肯定で有ればS104に進む。
【0046】
次に、S104にてPSDから検出される総電流を総電流量検出手段で測定する。
次にS105にてPSD電流が距離演算手段の演算結果に影響を与えない所定の電流値以下か判断する。否定で有ればS109に進み駆動制御手段によって第一の駆動手段を選択して第一の駆動手段で発光素子を駆動する。S105にて肯定で有ればS106に進む。
【0047】
次に、S106にて発光素子の周囲温度を温度検出手段で測定する。
次にS107にて発光素子の周囲温度が所定の温度以上か判断する。否定で有ればS109に進み駆動制御手段によって第一の駆動手段を選択して第一の駆動手段で発光素子を発光する。S107にて肯定であれば、PSDから検出される総電流が距離演算手段の演算結果に影響を与えない所定の電流値以下になり測定精度が低下して人体検知性能が低下するので、S108に進み駆動制御手段によって第一の駆動手段と第二の駆動手段を選択して、第一の駆動手段と第二の駆動手段で発光素子を駆動して発光素子の光量を増加させて発光素子の発光出力を補正可能としている。否定であればS109に進み駆動制御手段によって第一の駆動手段を選択して第一の駆動手段で発光素子を駆動する。
【0048】
即ち、被検出体の反射率が低い場合で、人を検出させる範囲18内の距離の場合でPSDから検出される総電流が所定の電流値以下の場合で、更に、発光素子の周囲温度が所定温度以上の場合のみに第一の駆動手段と第二の駆動手段を同期して駆動することで発光素子の光量を増加させて、PSDから検出される総電流が所定の電流値を確保させる制御を行なうことで、測距センサが測定距離と、被検出体の反射率と、発光素子の周囲温度の影響を受けにくくすることができ測定精度を向上することを可能としている。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は上述の実施例に限定されること無く種々の変形が可能であり、例えばトイレ装置として、温水洗浄乾燥便器のほか大便器や小便器や換気扇や照明やパネルヒータやエアコンで人体を検知させるものであっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の測距センサの構造を示す説明図
【図2】本発明の発光素子のブロック図
【図3】本発明の発光素子の発光出力と駆動タイミング図
【図4】従来のPSD総検出電流−距離特性
【図5】従来のPSD総検出電流−温度特性
【図6】本発明第二、第三の実施例における駆動手段の駆動判断を表すフローチャート
【図7】従来の測距センサの構造を示す説明図
【図8】従来の三角測距の原理図
【図9】従来の測距センサに搭載しているPSDの等価回路
【図10】本発明の駆動手段を組み合わせ場合の駆動電流設定表
【図11】本発明の人体検知装置のプリント基板上の部品構成を示す構造図
【図12】本発明の温度検出手段を備えたトイレ装置の説明図
【符号の説明】
【0051】
1: 人体検知装置
2: 発光素子
3: 発光レンズ
4: 赤外光
5: 人(被検出体)
6: 反射光
7: 受光レンズ
8: PSD(一次元位置検出素子)
9: 近点側電極
10: 遠点側電極
11: 定常光除去手段
12: 距離演算手段
13: 総電流量検出手段
14: 温度検出手段
15: 駆動電流設定手段
16: 第一の駆動手段
17: 第二の駆動手段
18: 人を検出する範囲
20: 所定の電流値
21: 電流源Io
22: 遠点電極に発生する電流Ia
23: 近点電極に発生する電流Ib
24: 所定の温度
25: 駆動制御手段
26: 本体制御手段
R:人が遠方に位置している距離
27:プリント基板
28:制御IC
29:コネクタ
30:温水洗浄便座
31:温風装置



【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検出体に向け投光レンズで収束させて発光させる発光素子と前記被検出体からの反射光を受光レンズで集光させて受光する一次元位置検出素子と、前記一次元位置検出素子から検出される長手方向の両端より検出する電流比で被検出体までの距離を演算する距離演算手段とを備えた人体検知装置において、前記一次元位置検出素子の両端より検出する総電流量を測定する総電流量検出手段と、前記発光素子の周囲温度を検出する温度検出手段と前記発光素子の駆動電流量を可変する駆動電流設定手段とを有するとともに、前記駆動電流設定手段は、前記距離演算手段と前記総電流量検出手段と前記温度検出手段の出力を参照し、前記発光素子の駆動電流量を可変することを特徴とする人体検知装置。
【請求項2】
請求項1記載の人体検知装置において、前記駆動電流設定手段は、前記演算手段から算出される被検出体までの距離が人を検出する設定範囲で、前記総電流量検出手段から検出される電流値が所定の電流値以下で、かつ、前記温度検出手段で検出される発光素子の周囲温度が所定温度以上の場合、前記発光素子への駆動電流を増加させることを特徴とする人体検知装置。
【請求項3】
請求項1乃至2記載の人体検知装置を搭載して、前記人体検知装置の出力に連動して衛生洗浄装置の負荷の制御を行う制御部を備えた衛生洗浄装置において、前記衛生洗浄装置は局部を乾燥させる温風装置を有するとともに、前記温風装置に搭載している温風温度検出手段と前記温度検出手段を兼用することを特徴とする衛生洗浄装置。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図1】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−10598(P2006−10598A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−190840(P2004−190840)
【出願日】平成16年6月29日(2004.6.29)
【出願人】(000010087)東陶機器株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】