説明

代替エネルギーシステム制御方法および装置

多変数制御システムは、注目している複数の制御変数に対して調整を行なうが、それは、対応する設定値に関する調整のために変数の特定の一つを選択することにもとづいたものであり、制御変数のすべてが許容範囲内となるように維持する必要のために、他の制御変数を監視し、選択されなかった変数の一つに調整制御の対象を切り換え調整を行ないながら調整を行なう。本システムは、調整制御のために選択された特定の変数のために自身を調節する、一つあるいはそれ以上の数のPIDレギュレータを含んでいる。一実施例では、制御システムは、代替エネルギーシステムを制御するように構成されており、代替エネルギーシステムは、電気エネルギー蓄積装置(EESD)(30)と共通DCバスと外部AC電気システムとの間の電力潮流を制御する、一つあるいはそれ以上の数の電力潮流装置(20)を含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の背景)
本発明は、一般的に、代替エネルギーシステムに関するものであり、特に、このシステムの制御に関するものである。
【背景技術】
【0002】
代替エネルギーシステムは、従来のユーティリティグリッド電源に対して、実現性の高い代替手段あるいは補助手段となるものである。例えば、発電および制御技術の進歩により、燃料電池による発電システムの出力密度および信頼性は向上し、住居および小規模事業所向けの局所電源として実用化すること、さらに、グリッド接続された代替エネルギーシステムが、その出力電力の一部をユーティリティグリッドに入力するようなコジェネレーションシステムを構築することが、現実性を増してきている。
【0003】
これらのシステムは、通常、電力インバータを用いて、燃料電池(あるいは、他の局所電源)からのDC電力を、AC電力に変換する。さらに、これらのシステムは、通常、一つあるいはそれ以上の数のバッテリを備え、バックアップ電力を提供し、さらに、少なくとも一時的なものとして、燃料電池などの一次電源装置により提供される電力よりも多くの電力を提供する。現実的には、通常の代替エネルギーシステムは、複数のエネルギー源(例えば、燃料電池およびバックアップ電池)を備え、一つの電力システム変数よりも多くのものを制御できることが必要となる。ここで重要となる不確定要素の例としては、これらに限定されるものではないが、燃料電池電流、バッテリ電流および、あるいは電圧、さらにDCバス電圧がある。
【0004】
複数の、潜在的に衝突しあうシステム変数にもとづき、これらのシステムを制御することは、制御として重要な課題がもたらされることとなり、特に、スタンドアロンやグリッド接続などの様々なモードを切り換えてシステムを動作させる状況となる。例えば、ある動作モードでは、所望の制御動作をもたらすために用いられる、一つあるいはそれ以上の数の制御要素がシステム内に存在するものとなる。
【発明の開示】
【0005】
(発明の概要)
本発明は、共通の制御要素を用いて多変数システムを制御するための方法および装置からなり、ここでは、制御監視および選択論理は、所望の制御モードと監視される変数の状態に基づき制御すべき制御変数を選択する。システムの一例では、複数の制御ループを組み合わせて、例えば、適切なゲイン、遅延、フィルタリングなどの制御特性をもたらすように構成された共通の制御回路を実現している。
【0006】
制御ループ全体は、一度に一つのみのフィードバック変数について閉じた状態、すなわち、制御応答は、選択された制御変数に対して行われる状態となるが、本例の装置は、注目している全ての制御変数の監視を継続し、いずれかの変数が、許容されない、あるいは制限値を逸脱した状態に入ったかどうかを判定する。もし、そのような状態となった場合には、装置は、その制御を、制限値を逸脱した変数を制御するように変更が可能であり、制限値を逸脱した状況での制御で、優先して扱うべき変数を決めるために、制御の階層あるいは優先度を確立する論理を含んでいる。
【0007】
模範的な実施例では、本発明は、代替エネルギーシステムなどの多変数システムを制御する方法からなり、本方法は、システム内の注目している複数の制御変数を監視するステップと、制御変数の一つを選択し、選択されなかった他の制御変数の監視を続けながら、所望する設定に関して選択された制御変数を制御するステップと、調整制御を選択されなかった他の制御変数の一つに選択的に切り換え、その一つの制御変数が許容値を超えるものと検知された場合に、その一つの制御変数が所望の設定となるように調整するステップとから構成されている。例えば、多変数コントローラは、バッテリ電圧、バッテリ電流、燃料電池電流、内部DCバス電圧等の一つを調整し、これらの変数の一つを調整する状態から、所望の操作モードに応じ、これらの変数のいくつかが許容される操作制限を越えるかどうかに応じて、他の変数を調整する状態に選択的に切り換ええる。
【0008】
一実施例では、上記の模範的な方法の例およびその変形例は、例えば、デジタル信号プロセッサ(DSP)、他のマイクロプロセッサあるいは論理回路によって実行するように構成されたコンピュータから読取り可能となっている媒体に格納されたコンピュータプログラムの命令として実装される。実際には、本発明による処理論理は、その全体あるいはその一部が、デジタル処理の構成によって実装されている。
【0009】
他の実施例では、本発明は、代替エネルギーシステム制御装置から構成されている。装置の一例は、装置内に設けられたDCバスに一つあるいはそれ以上の数のバッテリを接続する双方向コンバータと、燃料電池をDCバスに接続する逆阻止回路と、DCバス上のDC電力から出力電力を生成するインバーター回路と、複数の制御変数の中から一つを選択し、対応する所望の設定に対して調整制御し、同時に、他の制御変数についての監視を継続するように構成された多変数制御回路とから構成されている。複数の制御変数の例としては、燃料電池電流、バッテリ電流、バッテリ電圧およびDCバス電圧の中の2つの変数、あるいはそれ以上の数の変数がある。さらに、多変数制御回路の例として、調整制御を、選択的に制御変数の他の一つに切り換え、その一つの制御変数が許容値を超えるものと検知された場合に、その他の一つの制御変数を、対応する所望の設定に対して調整制御するように構成されたものがある。
【実施例】
【0010】
(発明の詳細説明)
図1は、代替エネルギーシステム内で動作するように構成された多変数制御システム10の一例を示す図である。システム10は、多変数コントローラ12から構成され、多変数コントローラは、上位レベルの論理制御とともに構成されたDC制御14およびAC制御16、共有(共通)DCバス18、双方向コンバータ20、逆阻止回路22、主インバータ24、コンバータ回路26、およびシステム10の制御動作を支援する一つあるいはそれ以上の数のセンサ28とから構成されている。この代替エネルギーシステムの構成では、システム10は、一つのバッテリ(あるいは複数のバッテリ)30、燃料電池32、一つあるいはそれ以上の数の補助負荷34、グリッド接続手段36、および監視コントローラ40を含んでいる。グリッド接続手段36は、コンタクタあるいはそれに類似のものから構成されている。また、それらは、他の構成要素、あるいは付加された構成要素を含むものであってもよいが、通常、補助負荷34は、燃料電池32に対する機械的補助を提供する構成要素を表すものとなっている。
【0011】
システム10は、本質的に任意の種類の電気的エネルギー蓄積装置(EESD)を、バッテリ30の場所に設けることが可能であると考えられる。例えば、バッテリ30の場所には、エネルギーを蓄積するキャパシタや、他の(電気的、電気化学的、電気機械的などの)エネルギー蓄積要素を用いることが可能である。同様に、システム10は、本質的に任意の種類の代替エネルギー発生装置(AEGD)が、燃料電池32の場所に設けることが可能であると考えられる。例えば、太陽電池、マイクロタービン、あるいは、他の種類のDC発電機などを、燃料電池32の場所に用いることが可能である。従って、ここでは、説明を簡単にするために、バッテリと燃料電池を用いることにするが、本発明は、EESDおよびAEGDについては、上記に掲げた特定の種類のものに限定されるものではない。従って、バッテリ電流およびバッテリ電圧と称する場合であっても、これらは、一般的には、EESD電圧および電流を指すものであると考えられる。これと同様の一般化の考え方は、燃料電池の電流/電圧についても、AEGDに概念を拡張して適用することが可能である。
【0012】
システム10は、監視コントローラ40により生成される、全モード制御および他のコマンドに応答して動作する。監視コントローラ40は、例えば、制御エリアネットワーク(CAN)バス、あるいは他のネットワークあるいは信号インターフェースを介して、システム10と通信可能となるように接続されている。システム10の主インバータ24は、DCバス18のDC電力を、グリッド接続手段36に接続された局所負荷に送られるAC出力電圧に変換する。グリッド接続手段36が、グリッド並列モードなどでユーティリティグリッドに接続されている場合には、主インバータ24が出力するAC電力の一部あるいは全てが、グリッドに送出されるが、この方式は、しばしばACコジェネレーションと呼ばれるものである。
【0013】
DCバス18で利用可能となるDC電力は、バッテリ30、燃料電池32、あるいはバッテリ30と燃料電池32の組み合わせによって供給される。以下で詳細に説明するように、多変数コントローラ12は、選択された制御変数を調整することに応じて、その変数が所望の設定となるように、双方向インバータ20によりDCバス18に送られる電流の量を制御するように構成されている。従って、このような構成では、システム10は、複数のエネルギー源(例えば、バッテリ30と燃料電池32)を含む代替エネルギーシステムから構成され、一つ以上の電力システム制御変数を調整できるようになっている必要がある。これらの複数の制御変数の例としては、燃料電池電流(IFC)、バッテリ電流(IBAT)、バッテリ電圧(VBAT)およびDCバス電圧(VBUS)の中の2つあるいはそれ以上の数の変数があげられる。図示した構成では、コントローラ12は、双方向コンバータ20を制御し、上述の変数の任意の一つを制御することができるが、監視コントローラ40から指定されたモード情報によって、設定調整制御のために選択された制御変数のうち特に一つが、少なくとも部分的に決定される。
【0014】
より一般的には、本発明は、複数のシステム変数を同時に監視し、前記複数の変数の一つを調整のために選択する方法を提供するものである。さらに、制御の一例としては、他のシステム変数の監視を継続しながら、選択された変数を所望の設定値となるように調整する。他のシステム変数の一つが、許容される最大の動作条件を超えるような場合には、制御を切り換えて、新たに別の変数を所望の設定値となるように調整する。もし、一つ以上の変数が、その許容される最大の動作条件を超えるような場合には、どの変数を調整するかを決定するために、制御の順番の優先度が確立される。
【0015】
この多変数制御の方法では、システム10は、バッテリ30を(電流調整モードあるいは電圧調整モードのいずれかで)充電し、燃料電池32からの電流を調整するか、バス18のDCバス電圧を調整するように構成されている。多くの動作モードでは、双方向コンバータ20は、システム10の単一の独立した電力制御装置として動作し、選択された制御変数の調整制御を行なうように制御される。すなわち、多くの動作モードでは、システム変数の例を調整するための唯一の利用可能な制御手段が、双方向インバータ20となっている。従って、設定電流IBiをDCバス18に送るように、双方向インバータ20が制御され、さらに、設定電流IBiは、他のシステム変数を調整するために用いられる。
【0016】
以下に示す表1は、システム10の制御モードの一例を示すものである。表1は、システム10の一例での、主要な制御モードと、各モードに体操した制御変数の設定値を表している。異なる制御モード間の遷移は、基本的には、監視コントローラ40からの指示によって行なわれるが、その遷移の一部は、システム10により自動的に決定されるものであってもよい。
【表1】

【0017】
以下で詳細に説明するように、システム10は、各制御変数と、その設定値とを連続的に比較する。これらの比較の結果として、システム10は、どの変数がその設定値に実施的に等しくなっているか(すなわち、設定値の付近の値域に収まっているか)、あるいは、その変数が、設定値に対して大きいか小さいかを決定する。各変数については、設定値に対して大きいか、小さいかの条件のいずれかは、許容できる動作状態を表し、一方、他の大きいか、小さいかの条件は、許容されない動作状態を表すものとなっている。いずれかの変数が、許容されない状態となっている場合には、制御方法は、自動的にその変数を調整し、その変数が許容できる動作領域に戻す。一つ以上の変数が、許容されない状態となっている場合には、制御は、予め定められた優先度の順番、すなわち、定義された調整の優先度に従い、調整すべき制御変数の一つを選ぶ。もし、全ての制御変数が、それらの許容できる動作状態に収まっている場合には、制御は、調整すべき変数としてデフォルトの変数を選択するか、調整すべきものとして以前に選択されたいずれかの変数を継続して調整する。このようにして、システム10は、複数の制御変数の中から、最も注目すべきものとして一つの変数を決定し、必要なもの、あるいは適切なものとして、その変数を調整する。
【0018】
以下に示す表2は、表1で示した注目している制御変数について、許容できる動作状態、および許容されない動作状態を示すものである。各変数は、その変数に対応した設定値と実質的に一致する場合に、“範囲に収まっている”ものとして定義される。DCバス18の電圧、VBUSは、その対応する設定値よりも大きな値で動作することが許されているが、その値以下では動作が許されていない。燃料電池電流、IFCと、バッテリ電圧VBATは、それらの対応する設定値よりも小さな値で動作することが許されているが、それらの値以上では動作が許されていない。同様の原則が、バッテリ電流、IBATについても適用されるが、IBATの正値が、バッテリ30の放電を表し、バッテリ30の充電中はIBATが負値となるため、電流の意味が逆となる点で異なる。すなわち、バッテリの充電電流(−IBAT)は、設定値よりも小さい値で動作することが許されるが、大きな値では動作が許されていないこととなる。
【表2】

【0019】
“オフライン”モードの例では、燃料電池32と補助負荷34は活性状態になく、バッテリ30が、コントローラ12を動作させるために必要な最小の電力を供給する。このモードでは、通常、コントローラ12などの処理ロジックのための電源を除き、システム10内の電源は無効となっている。システム10は、起動前および停止後は、オフラインモードで動作する。
【0020】
“スタンバイ”モードの例では、補助負荷34は活性状態となるが、燃料電池32と主インバータ24は、不活性状態のままである。バッテリ30は、双方向インバータ20の動作によって、補助負荷34に必要な電力を供給する。この双方向インバータは、DCバス18に電流を供給したり、そこから電流を得る。システム10は、起動あるいは停止の間、あるいは、燃料電池32のガスが引き抜かれている間は、スタンバイモードで動作する。スタンバイモードでは、双方向インバータは20は、DCバス電圧(VBUS)を燃料電池の端子電圧よりも高い電圧となるように調整し、逆阻止回路22は、燃料電池32からDCバス18に電流が流れ込むことを阻止する。従って、逆阻止回路22の例では、VBUSの値が、燃料電池32の端子電圧よりも高い場合に逆バイアスがかけられる、直列ダイオードを含んでいる。この阻止動作によって、逆電流が燃料電池32に流れることを防ぎながら、同時に、燃料電池32に負荷がかかることを防いでいる。表1に示したように、他の制御変数の設定値は、極めて大きな値とすることが可能であり、これにより、システム10は、他の制御変数を調整することなく、VBUSの調整を続けられることが保証される。
【0021】
“アイドル”モードの例では、燃料電池32が活性状態となり、電力を補助負荷34に供給し、必要に応じてバッテリ30を再充電する。主インバータ24は、活性状態とはなっていないままである。このモードでは、主インバータ24が活性状態となる前、あるいはインバータ24が停止する直前に、システム10が動作する。アイドルモードでは、双方向コンバータ20は、監視コントローラ40で設定された要求を満足するために、必要に応じて、制御変数の中の任意のものを調整する。DCバス電圧の設定値は、燃料電池32から与えられる許容電圧の最小値の付近に設定され、これにより、電力需要に応えるには不適切な燃料が燃料電池32に供給されるような極端な場合でも、システム10は、VBUSを調整するだけで済む。燃料電池電流の設定値(IFC)は、監視コントローラ40によって与えられる許容電流の最大値に設定される。バッテリ充電の設定値(VBATおよびIBAT)は、監視コントローラ40により与えられる指令値に設定される。このように、VBUSあるいはIFCが、各々の許容値を超えない限り、システム10はバッテリー充電に対する要求を満足できる。
【0022】
“スタンドアロン”モードの一例では、主インバータ24が活性状態となり、グリッド接続手段36に接続されたローカル負荷にAC電力を供給する。燃料電池32は、活性状態となったままであり、(インバータ24を介して)ローカル負荷と補助負荷34に電力を供給する。また、必要に応じて、燃料電池32は、バッテリ30を再充電する。ACメインが存在しないか、主電圧あるいは主周波数が、それらの通常の動作限界を超えていると検出された場合に、システム10は、スタンドアロンモードで動作する。この場合、主インバータ24は、AC出力電圧レギュレータとして動作し、インバータの入力端子でDCバス18から引き出される電力は、インバータ24に設けられたAC負荷によって指示される。燃料電池32によっては満足させることができない、付加的な負荷への切り換えや、突入負荷を扱うことへの要求など、短期間のAC負荷電力に対する要求は、バッテリ30によって満たされる。インバータ24が活性状態であることを除き、アイドルモードの例で示したものと同様に、システム10は、制御変数を調整する。
【0023】
グリッド並列モードの一例では、燃料電池32およびインバータ24は、活性状態となったままである。インバータのAC出力は、ACメインに並列に接続され、負荷電力に対する要求は、メインあるいはインバータ24のいずれかによって満足されるようになっている。さらに、本モードでは、ローカル負荷が必要とするよりも多くの電力をインバータが提供するように、インバータ24を動作させることが可能となっており、この場合、正味のAC電力が、ACメインに供給(注入)される。また、メインからの電力は、逆にインバータを介して、双方向インバータからバッテリへ、あるいは、バック・コンバータから補助負荷へ、供給するように、インバータ24を動作させることが可能となっている。グリッド並列とは、システム10が完全に起動状態にあり動作中となっている場合、および、ACメインが存在し、通常の動作範囲で動作している場合に、システム10が通常に動作する状態を指している。燃料電池32は、インバータ24と、必要に応じて補助負荷34に電力を供給し、必要に応じてバッテリ30を再充電する。インバータ電力制御機能により、燃料電池32の電流IFCを制御することと、潜在的にVBUSを制御することが行なわれる。このようにして、表1に示すように、IFCとVBUSのDCシステム制御が無効状態となる。バッテリ充電の設定値(IBATとVBAT)は、監視コントローラ40で指示された値に設定されており、これにより、インバータの動作とは独立して、バッテリ充電に対する要求を満足させることができる。
【0024】
バッテリ充電を可能とするモード(アイドルモード、スタンドアロンモードあるいはグリッド並列モード)では、さらに、監視コントローラ40の制御によって、バッテリ充電機能を無効とすることが可能である。この場合、IBATとVBATの調整モードが無効状態となり、システム10は、IFCとVBUSのみを、これらの変数に関する制御調整ルールに従って、調整する。アイドル・モードとスタンドアロン・モードでは、補助負荷34および、あるいはインバータ24のDC負荷要求が、燃料電池32の短期間の供給能力を超えない場合に限り、この調整動作により、双方向コンバータを不活性状態に維持することが可能となる。この場合、システム10は、バッテリ30からの過大な負荷要求に対して、IFCあるいはVBUSを調整する。グリッド並列モードでは、IFCおよびVBUS調整モードは、すでに無効状態となっているため、バッテリ充電を無効化することにより、双方向コンバータ20を完全に無効化することができる。
【0025】
バッテリ充電については、システム10は、定電流充電モードあるいは定電圧充電モードのバッテリ充電動作を提供している。監視コントローラ40は、調整の設定値をシステム10に送り、これらの値を必要に応じて更新することが可能となっていたり、あるいは、システム10は、例えば、デフォルトの調整の設定値に対応した一つあるいはそれ以上の数の設定値を格納するように構成することが可能となっている。充電が有効状態となる(すなわち、CHARGEが指示される)と、制御システムは、バッテリ電圧VBATがVBAT設定値を超えない限り、デフォルトの調整変数として、IBAT設定値に対して、IBATを調整しようとする。この場合、システム10は、自動的に、調整制御をIBATからVBATに切り換える。
【0026】
同様にして、バッテリ電圧を調整する際には、IBATがIBAT設定値を超えない場合に、VBAT設定値に対して制御変数VBATが調整され、この場合は、システム10は、自動的に、調整制御をVBATからIBATに切り換える。すなわち、システム10は、バッテリ変数(VBATまたはIBAT)のいずれか一方を調整し、他の変数の監視を続けながら、バッテリ充電電流の制限が超えないことを保証する。これにより、バッテリ充電の電圧制限と電流制限の基本機能が提供される。
【0027】
双方向インバータ20は、このような制御をある程度実現することができる。図2は、双方向インバータ20の一実施例を示したものである。図示したように、双方向インバータ20は、バッテリ30をDCバス10に接続するスイッチリアクタンス回路から構成され、ゲートドライバ50−1および50−2、インダクタ52、キャパシタ54および56、ダイオード58および60、ならびに、トランジスタ62および64を含んでいる。ここで、トランジスタ62および64は、バイポーラ・ジャンクション・トランジスタ(BJT)で構成されているが、(MOSFET、IGBTなどの)他の種類のトランジスタを使うことが可能であることは、当業者にとって自明である。
【0028】
この構成では、コンバータ20は、システム10の対応するバッテリ接続端子に接続された、単一の電力極と容量性フィルタとから構成されており、電力極の中心点は、フィルタ・インダクタとして動作するインダクタ52に接続されている。インダクタ52の他方の端点は、DCバス18に接続されている。電力極を含んでいるトランジスタ62および64は、タンデムで切り換えられる(すなわち、一方のトランジスタがオン状態となると、他方がオフ状態となる)。電力極は、固定されたキャリア周波数で切り換えられ、そのデューティサイクルは、コントローラ12により変化させることにより、双方向コンバータ20の制御を実現している。デューティーサイクルDを、上側のトランジスタ(トランジスタ62)のオン状態の時間(ton)として定義した場合には、電力極の中央タップでの電圧VBiは、(インダクタ電流が連続伝導性をもつと仮定した場合)以下の式で定義される。
【数1】

【0029】
コントローラ12は、双方向インバータのデューティーサイクルを変化させて、必要に応じてこの電圧を調整し、バッテリ30を充電あるいは放電させるために、フィルタインダクタ52を流れる所定の電流値を決定することが可能となっている。なお、バッテリ30の充電中は、下側のトランジスタ64と上側のダイオード58が動作状態となり、バッテリ30に電力を供給する標準的なブースト・コンバータを形成する。また、放電中は、上側のトランジスタ62と下側のダイオード60が動作状態となり、DCバスに電力を供給する標準的なバック・コンバータを形成する。このように、回路動作のデューティーサイクルを変化させることにより、コントローラ12は、双方向コンバータ20を介してDCバスに供給される電流を制御することが可能である。なお、この動作により、さらに、DCバス電圧VBUSの制御が可能となっている。フィルタインダクタ52は、DCバス18に対する電力の供給(あるいは電力の引き出し)を援助し、さらに、双方向インバータ20を介した、DCバス18との間で流れる電流IBiの平滑化に寄与している。
【0030】
簡単に言うと、コントローラ12の制御論理は、双方向コンバータ20に印加される切り換え信号のデューティサイクルを変化させることより、電力極の中央タップに現れる電圧VBiを変化させるように構成されている。このデューティーサイクルの変化は、次に、DCバス18への(あるいは、からの)電流IBiの変化率を決定する。このIBiに関する制御により、DC制御14に対して、注目する任意の変数の調整が可能となる単独の制御手段を提供するものとなる。例えば、燃料電池の電流IFCの調整中に、IFCを上昇させることが必要となった場合には、DC制御14は、電圧IBiを一時的に下げることにより、DBバス18に流入するIBiを少なくすることができる。これらの制御動作については、以下で詳細に説明するが、基本的には、双方向コンバータ20が、DCバス18に流入する、あるいはそこから流出する電力潮流を制御するための“パワー・バルブ”として作用する。他の種類の回路を用いても、同様の機能が果たせるため、本発明は、図示したような特定のコンバータ回路に限定されないことは、当業者にとって自明なことである。
【0031】
図3は、双方向コンバータ20を制御するため、コントローラ12内に設けられるコンバータ制御回路70の一実施例を示したものである。コンバータ制御回路70は、機能的に、第一の加算器72、利得段74、第二の加算器76、乗算/除算回路78およびリミッタ80から構成されている。コンバータ制御回路70は、双方向コンバータ電流IBi、その設定値IBi、さらに、DCバス電圧VBUSおよびバッテリ電圧VBATを、入力として受け取る。
【0032】
コンバータ制御回路70は、その動作において、設定値IBiで示された双方向コンバータ電流の所望の値に応じて、双方向コンバータ20のゲートドライバ50に適用されるデューティサイクルを決定する。回路70は、指示された電流設定値を最小の時間で達成するために、フィルタインダクタ52に印加される電圧を制御する改良型デッドビート制御方式を実装している。この制御は離散時間で行われ、各時間ステップごとに、次の時間ステップで所望の電流値を達成するために、インダクタ52に印加するために必要な電圧値を計算する。
【0033】
理想としては、このインダクタ電流制御は、以下に示す制御則に従って行われ、現在のインダクタ電流IBiが、一つの時間ステップ幅Δtの間に、望ましい電流値IBiに変化するよう、十分なインダクタ電圧VLを決定する。
【数2】


さらに、望ましいインダクタ電圧を印加するために必要な双方向コンバータの電圧は、次式で与えられる。
【数3】


ここで、K=L/Δtである。従って、望ましいインダクタ電圧を達成する双方向コンバータのデューティサイクルDは、次式で与えられる。
【数4】

【0034】
式(28)は、図3の制御回路で実装された制御則を表す。さらに、デューティサイクルDは、たとえ、制御則から導かれた値であったとしても、その値が0を下回ったり、1を上回ったりすることがないよう、制限を受ける。現実的には、制御ゲインKの実際の値は、制御ループの安定化を確保するために、理想値よりも小さくなるように定められる。K=0.33(L/Δt)という値にすれば、安定性と応答速度の適切なバランスが得られることが分かっている。このように、双方向コンバータ20は、電流レギュレータとして動作することにより、多変数コントローラ12によって用いられる外部制御ループのための必須となる基礎ブロックを提供する高速で安定した内部ループを提供することができ、これにより、システム10で注目している複数の制御変数を調整することが可能となる。
【0035】
図4は、多変数コントローラ12に実装された制御論理の一部の実施例を示すものである。特に、図4は、注目する制御変数を監視し、これらの変数の設定値を受信することにより、調整モードの制御を行うモードコントローラ90を図示したものである。図示したように、モードコントローラ90は、モード調停状態機械92、比例・積分・微分(PID)レギュレータ94、および、3状態リレー96−1〜96−4、設定値リミッタ98−1および98−2、ローパスフィルタ(LPF)100−1〜100−4、リミッタ102−1および102−2、および加算器104−1および104−2などの、様々な補助論理要素とから構成されている。
【0036】
図示した実施例では、4つの制御変数の設定値の各々が、制限値を設けられ、これにより、制限値を超えるような設定値が指令されないようにしている。従って、指令値、VBUS、IFC、VBATおよびIBATの各々は、設定値リミッタ98−1あるいは98−2のどちらか一方、あるいはリミッタ102−1あるいは102−2の一方に入力される。設定値入力の変化率を制限することにより、コントローラ12は、急激な指令値の変化によって、対応する制御変数がオーバーシュートを起こすことを防いでいる。許容される制御範囲を超えて、一時的に制御動作のほかに、オーバーシュートは、リミットサイクル型の動作を発生させてしまう危険性がある。この状況では、制御は、一つの所定の制御モードを選んでそのモードを維持するのではなく、一つあるいはそれ以上の数の制御モードの間を周期的に切り換えてゆく。変化率を制限することは、特に、VBUSの設定値VBUSにとって有利であり、変化率制限によって、DCバスに大きな充電電流が流れてしまうことを防ぎ、それにより、DCバス電圧VBUSが急激に変化しないようにすることができる。
【0037】
設定値の値とその変化率を制限した後、注目している制御変数の各々について、その制御変数の値から設定値を差し引いて、誤差信号を生成する。一実施例では、各誤差信号の正負については、正の値であれば、その変数の許容されない状態となっていることを表すように定義する。例えば、VBUSの値が、設定値の最小を下回るような状況は補正しなければならず、この状況では、正の誤差信号が生成される。同様に、IFCの値が、設定値(IFC)を上回るような状況は補正しなければならず、この状況では、IFC制御変数の正の誤差信号が生成される。
【0038】
これらの様々な、制御変数の誤差信号は、実質的に二つの方法で用いられる。一つ目は、各制御変数が、その設定値と実質的に等しく、すなわち許容される動作範囲に収まっているか、あるいは許可されない動作範囲に外れてしまっているかを判定するために用いられる。二つ目は、これらの誤差信号は、PIDレギュレータ94の入力として選択的に用いられ、調整中の制御変数に関して正の誤差が発生した場合には、それに対応し、双方向コンバータ電流IBiを増加するように作用し、また、制御変数に関して負の誤差が発生した場合には、それに対応して、双方向インバータ電流を減少するように作用する。
【0039】
図5は、設定値リミッタ98に実装され、上記で説明した機能を組み込んだ、値と変化率を合わせたリミッタと誤差計算の演算論理の一例を示したものである。図示したように、この演算論理の一例には、リミッタ110および112、加算器114、116および118、ならびに遅延要素119が含まれている。
【0040】
再び、図4を参照すると、制御変数について生成された誤差信号は、ローパスフィルタにかけられる。制御変数をローパスフィルタにかけると、制御への入力となる制御変数の計測信号に含まれる、主周波数の二倍のところにあるリップル成分を実質的に除去することができる。本実施例では、フィルタ100−1から100−4が、主周期の半分の長さをもつ移動平均フィルタ(同一係数FIR)として実装され、主周波数の二倍のところを除去することに関して最適化されている。また、ローパスフィルタにより、システムのモード調停論理がその制御状態を変更する応答速度が低下することになり、上述したリミットサイクルの発生を防止する一助となる。
【0041】
フィルタがかけられた誤差信号の各々は、3状態制御リレー96の中の対応するものに送られる。図6は、リレー96の各々の一実施例を示すものである。機能的には、各リレー96−x(ここで、xは、リレー96の中の所定のものを表す)は、絶対値回路120、ヒステリシスに基づくコンパレータ122、符号検出器124および126、さらに出力論理(NOR)ゲート128および130から構成されている。この構成により、各リレー96−xは、その入力誤差信号を検査して、誤差が、誤差ゼロの前後で予め定められた許容範囲内に収まるかどうかを判定し、もし収まる場合には、INBAND信号をオン状態とする。もし、誤差が、許容範囲内に収まっていないならば、誤差信号の正負に応じて、LOあるいはHI出力信号を出力する。誤差信号の正負について上で説明したように、LO信号は、誤差が許容範囲内に収まっていることを示しており、一方、HI信号は、誤差が許容されない範囲に入っている、すなわち、対応する制御変数は許容範囲を超えていることを示している。
【0042】
リレーの“チャタリング”の可能性を最小とするために、INBAND比較は、ヒステリシスをもって行なわれる。すなわち、INBAND領域に入ったことを判定するための許容範囲は、INBAND領域から出たことを判定するための許容範囲よりも狭く定義されている。このように、INBAND領域に出入りすることに関する許容範囲の設定は、各リレー96−x毎に、個々に決定され、リレー96―xによって扱われている特定の制御変数の誤差信号の特性を補償することができるようになっている。
【0043】
リレー96からのINBANDおよびLO/HI出力は、状態機械92に送られる。また、状態機械92は、所望のバッテリ充電モード(充電可能あるいは充電不可)を示す情報を、監視コントローラ40から受信し、さらに、インバータ24が、グリッド並列、あるいはスタンドアロンモードで動作しているかどうかを示す情報を受信する。次に、状態機械92は、二つの出力値、MODE信号とRESET信号フラグを生成する。MODE信号は、システム10の調整モードを制御する。すなわち、注目している複数の制御変数のどれを選択し、その対応する設定値に対して調整制御を行なうかを決定する。RESET信号フラグは、調整する動作を行なう必要がない場合に、双方向コンバータ20を無効化する。
【0044】
図7Aおよび7Bは、状態機械92を実装するための論理の一例を示すものである。この論理では、状態機械92が起動した時に、「No Control」モードを示す値に設定されたMODE信号によってその動作を開始する。サンプリングを行なうごとに、状態機械92内のモード選択論理は、異なる制御モードに変更するような条件が成立するかどうかを判定し、もし条件が成立した場合には、変更される制御モードを表すようにMODE信号の値を更新する。このようにして、PIDレギュレータ94は、システム10の注目している複数の制御変数の一つを調整するようになる。例えば、IFC、IBAT、VBAT、VBUSなどの、各制御変数は、それ自身の制御ループ(リミッタ/フィルタ、誤差信号生成回路)を持っていて、この制御ループは、状態機械92から送られたMODE信号にもとづき、PIDレギュレータ94によって選択してループを閉鎖することが可能となっている。このようにして、同一のPIDレギュレータ94は、全ての制御ループに共通なものとなっているが、これは、調整のために選択された特定の制御変数に応じて、動的に(ゲインなどを)再構成するようになっている。
【0045】
調整制御のための制御変数の中から、特定の一つを選択することについて、あるいは、制御変数の中で現在選択されているものを調整することから、選択されなかった残りの制御変数の中から新たに選択されたものを調整することに変更することについて、以下に記載する論理は、状態機械92の一実施例を示すものとなっている。まず始めに、システム10が、充電可能モードとなっている場合には、システム10は、以下の論理に従って動作する。
− 任意の誤差信号「HI」は、以下の優先順序で調整する。はじめに、VBUS、次に、IFC、さらに、VBAT、最後にIBAT
− もし、「HI」の誤差信号がなく、全ての誤差信号が「LO」という訳でもない場合には、最後のモードを維持する。
− 4つの誤差信号すべてが、「LO」ならば、デフォルトとしてIBATを調整する。
【0046】
もし、システム10が、充電不可能モードとなっている場合には、以下の論理に従って動作する。
− VBATおよびIBATの誤差信号を無視する。
− 任意の誤差信号「HI」は、以下の優先順序で調整する。はじめに、VBUS、次に、IFC
− もし、(VBATあるいはIBAT以外の信号に)「HI」の誤差信号がなく、(VBATあるいはIBAT以外の信号の)全ての誤差信号が「LO」という訳でもない場合には、最後のモードを維持する。
− (VBATおよびIBATの信号を除く)両方の誤差信号が「LO」ならば、デフォルトとして、調整を行なわず(双方向コンバータ20をオフにする)。
【0047】
上記のモード選択規則に加え、もしシステム10が、グリッド並列モードになっている場合は、以下の論理に従って動作する。
− すでにシステムが、VBUS調整中、あるいはIFC調整中である場合には、上記のバッテリー充電モードに従い、デフォルトの調整モード(IBAT調整モードあるいは調整なし)に戻る。
− 上記の規則によって指示されたとしても、システムが、VBUS調整、あるいはIFC調整にならないようにする。
図7Bは、上記の規則を実行するように構成された論理の一例を示すものである。図示された論理は、図7Aに示した回路からの入力に対して、MODE信号を生成するように構成されており、ここでは、モード信号は、異なるモードに対して異なる値をとるようになっている(例えば、VBUS調整モードの場合は値=“1”、IFC調整モードの場合は値=“2”、VBAT調整モードの場合は値=“3”、IBAT調整モードの場合は値=“4”、さらに、No_CNTRLモードの場合は値=“5”とする)。MODE信号を用いて、図7Bに示した論理は、MODE信号の値が“2”あるいはそれ未満となっているか(すなわち、モードがVBUSあるいはIFCであるか)、また、主インバータ24がグリッド並列モードで動作していることを示すGRID_PAR信号が発行されているかを判定し、上記の調整規則を適用する。もし、両方の条件が成立した場合には、“BAILOUT”信号が生成され、図7Aに示す論理回路に送られ、調整制御をデフォルト変数に戻す。一実施例では、デフォルト変数は、充電モードのIBATと、非充電モードのNo_CNTRLである。
【0048】
同様に、もしシステム10が、充電不可モードになっている場合には、以下の論理に従って動作する。
− すでにシステムが、VBAT調整中、あるいはIBAT調整中である場合には、デフォルトの(調整なし)モードに戻る。
− 上記の規則によって指示されたとしても、システムが、VBAT調整、あるいはIBAT調整にならないようにする。
図7Bは、上記の規則を実行するように構成された論理の一例を示すものである。MODE信号を用いて、図7Bに示した論理は、MODE信号の値が“3”あるいは“4”となっているか(すなわち、モードがVBATあるいはIBATであるか)、また、CHARGE信号が発行されているかを判定し、上記の調整規則を適用する。もし、現在のモードが、VBATあるいはIBAT調整であり、CHARGE信号が発行されていない場合には、“BAILOUT”信号が生成され、調整制御をデフォルト変数に戻し、すなわち、No_CNTRLとする。No_CNTRL調整では、DC制御14は、双方向コンバータ20を動作させないため、バッテリ30は充電されない。なお、多変数コントローラ12は、VBUSを最小の指示値に、また、IFCを適用可能な上限の制限値に設定し、もしグリッド並列モードでない場合には、いずれかの制限値に引っかかった際に、双方向コンバータ20を再び動作させる。
【0049】
上記の論理の規則に組み込まれ、状態機械92によって実行される、調整の優先度の順番は、多くの物理的な制約によって、管理システム10で課題となる無数の問題について一例と思われる方法を表しているにすぎない。例えば、許容範囲の最小電圧以下で燃料電池32を動作させると、その物理的な損傷につながる恐れがあるため、VBUSは、常に、調整制御について最も高い優先度をもつ制御変数である。また、燃料電池の電圧と電流の間には逆関係があるため、燃料電池電圧が減少を制限することにより、燃料電池電流の上昇を制限することもできる。従って、燃料電池の電圧が極度に低下するのと同時に、燃料電池の電流が極度に高くなった場合には、VBUSを調整することにより、両方の変数をそれらの設定値に近づけることができる。VBUSを調整した後で、もし、IFCが高い状態を維持している場合には、コントローラ12は、IFCの制御に切り換え、VBUSを許容範囲内の値に変化させる。これと同様の関係は、選択された調整の優先度の順番に反映された各制御変数の間に成立する。
【0050】
同様に、デフォルトの調整変数を選び、全ての制御変数がそれらの許容範囲内に収まっているときに、良好なシステム応答性能を発揮できるようにする。例えば、システムが充電可能モードにあり、全ての制御変数がLO領域に収まっている場合は、システムはデフォルトとしてIBAT調整を行う。これにより、−IBATのレベルを引き上げ、同じように、−IBiのレベルを引き上げる(すなわち、バッテリ30により多くの電流が送られ、より多くの電流を双方向コンバータ20を介してDCバス18から引き出す)。これにより、次に、IFCのレベルを引き上げ、VBUSのレベルが下げられる。これらの動作が一体となって作用し、制御変数がそれぞれの設定値に近づくようになる。この動作は、(1)IBATが設定に近づくか、(2)他の変数の一つが、その許容範囲を外れてしまうようになるまで続けられる。後者の場合には、コントローラ12は、許容範囲を外れている制御変数に対する調整制御に切り換える。
【0051】
DC制御14とAC制御16が干渉しないようにするため、グリッド並列モードに関する特別のモード選択規則が必要となる。スタンドアロン動作では、インバータ24は、電圧レギュレータとしてのみ動作し、インバータ24を流れる電力潮流は、AC負荷の要求によって主に決定される。この場合、すべてのDC側の調整は、DC制御14によって行う必要がある。グリッド並列動作では、インバータ24は、DCバス18からACメインへの電力潮流を制御する。これにより、図4に示した多変数制御回路と同様の制御回路を、AC制御16内に付け加える必要がある。
【0052】
図8は、グリッド並列のために所望の制御機能を提供するための、AC制御16の一部として実装される回路140の一例を示すものである。この場合、AC制御16は、燃料電池32および、あるいはDCバス電圧からの電流を調整する役目を担っており、DC制御14は、バッテリ充電(VBATあるいはIBAT)を調整する役目を独立して担っている。特に、インバータ24は、逆向きの電力潮流を防止する整流回路を含んでいない場合には、メインに対してAC電力を出力するための入力DC電力を使用するか、それと逆向きに、ACメイン電力を用いて、DC電力をDCバス18に出力することは、当業者にとって自明なものとなっている。すなわち、インバータ24は、ACメインから得られたDC電流を、DCバス18に送り、それゆえに、双方向インバータ20がDCコントロール14に関して共通の制御手段を提供していることと同様に、AC制御16は、VBUSおよびIFCを調整するための“共通の”制御手段として主インバータを利用している。従って、グリッド並列動作の一例では、DC制御14は、(監視コントローラ40によって与えられるCHARGE信号状態に応じて)VBATとIBATに対する調整制御を提供し、AC制御16は、VBUSとIFCに対する調整制御を提供する。この調整制御の機能により、システム10は、補助負荷34への電源供給やバッテリ30の充電のために、ACメインからのDC電力を利用することが可能となる。
【0053】
図4に戻って説明すると、状態機械92は、GRID_PAR信号が発行された場合には、VBUSおよびIFC変数に対しては応答せず、状態機械142が同時に調整動作を行うことを許可する。(なお、コントローラ12には、処理制御論理を追加し、例えば、ACグリッドが通常のパラメータ範囲内で動作して、主インバータ24がグリッドと適切に同期して動作していることを検証した結果に基づいて、GRID_PAR信号を生成するように構成することが可能である。)従って、グリッド並列動作では、同時に、二つのシステム変数を調整することが可能となる。回路140は、モード調停状態機械142を含んでおり、これは、同様に、状態機械92、PIDレギュレータ144、および3状態リレー96−5および96−6、設定リミッタ98−3および98−4、LPF100−5および100−6などの様々な補助的な論理要素を構成するために用いられていることが図8からわかる。
【0054】
以下の表3は、上述した制御規則と状態機械92の動作に関して、調整モードの決定、すなわち、調整制御変数の選択に関する組み合わせ論理の一例を示したものである。もし制御状態変化信号の一つがその入力で活性状態となった場合に、調整モードは、その信号で示された状態に切り換るように、図7Bに示した組み合わせ論理ブロックは動作する。このような論理は、必要や要望に応じて、様々な構成に従って実装可能であることは、当業者にとって自明なことである。しかし、以下の表3は、このような論理の一例を示すものであり、様々な制御モードに整数1から5を対応させてまとめてある。
【表3】


Next_Mode値は、次の時間ステップでは、どのモードを選択すべきかを、現在の時間ステップでの信号値に基づいて決定する。もし、制御状態変化信号が活性状態となっていない場合には、Next_Modeの値はゼロであり、制御は、以前の調整モード(“Hold Last State”)に維持される。所定の時刻に、一つ以上の制御状態変化信号が活性状態となることは、モード選択論理の排他的な特徴から見て、不可能となっている。いずれの場合でも、一つ以上の制御状態変化信号が同時に活性状態となった場合には、制御は、最後に有効となっていた状態に留まるように応答する。
【0055】
なお、各制御設定値は、その制御変数の一方の側の制限値を表すものである。いくつかの制御変数では、システムの物理的な構造上、他方の側の制限値も必要となる場合がある。その他の場合として、システムチェックを追加して実施し、他方の側の制限値を人工的に設け、この動作範囲を超えないようにシステムを動作させることが必要となる場合もある。このような状況を、以下の表4に示す。
【表4】

【0056】
例えば、燃料電池の電流設定値(IFC)は、上限値を表しているが、その設定値の下限値(IFC=0)は、燃料電池32に直列接続された遮断ダイオードによって与えられる。すなわち、もしDCバス電圧が燃料電池の電圧よりも高くなった場合に、燃料電池32に逆方向に電流が流れることを、逆遮断/フィルタ回路22が防止する。他の例としては、DCバス電圧の設定値(VBUS)は、下限値を表すが、システム上では物理的な上限値は存在しないため、システムを偶発的な損傷から保護するためのバス過電圧トリップ機能が設けられている。実際には、この上限値は、監視コントローラ40が矛盾した制御設定値の組み合わせを与えてしまうような特別な場合に作用する。表に示したトリップ条件(バス過電圧およびバッテリ過電流)は、共に、システム10を自動的にオフラインモードに戻す結果をもたらす。
【0057】
図4に戻って説明すると、状態機械92によって生成されたMODE信号およびRESET信号と、以前に計算された誤差信号は、PIDレギュレータ94に送られることがわかる。前述したように、PIDレギュレータ94は、双方向コンバータ電流IBiを制御し、選択された制御変数を、その設定値に一致するように調節する。PIDレギュレータ94の一例を、図9に示す。
【0058】
図示したPIDレギュレータ94は、複数のゲイン回路ブロック150−1〜150−3から構成されている。これらのゲイン回路は、注目している制御変数の各々に適した、比例、微分および積分ゲインを与える。このようにして、切り換え回路152−1〜152−3は、現在選択されている制御変数、すなわち、状態機械92によって与えられたMODE信号の値に応じて、PIDレギュレータ94により調整中の制御変数に対する適切なゲインを、選択的に切り換える装置を提供している。PIDレギュレータ94は、ゲイン回路153、微分器154、再設定可能な積分器156、論理ゲートおよびコンパレータ158、160および162、加算器164、制限定数166および168、遅延ゲート170、加算器172、およびスイッチ178などの様々な補助構成回路を含んでいる。なお、スイッチ178は、RESET信号の状態によって、IBiを、“ゼロ”信号、あるいはPID演算調整信号として、選択的に、コンバータ・コントローラ回路17に与えている。
【0059】
PIDレギュレータの出力値は、リミッタ174により制限され、双方向コンバータ20に対する電流制御指示が、適度な値を超えてしまうことを防止している。また、PIDレギュレータ94には、ワインドアップ防止保護が備えられ、レギュレータの出力値が飽和した場合に、積分器が積分を続けてしまうことを防止している。また、オプションとしてフィードフォワード制御信号を加えることも可能となっている(加算器172にIFCのフィードフォワード項をオプションと設けるためのスイッチ152−4参照のこと)。
【0060】
PIDレギュレータ94は、異なる制御変数を調整するために選択して用いられるため、一つあるいはそれ以上の数のその動作パラメータは、システム10により現在調整中となっている制御変数の独自の特性のための制御動作に合わせて、変化させたり更新することが可能となっている。一実施例としては、PIDレギュレータ94は、一つあるいはそれ以上の数の、ゲインブロック150で用いられる比例、積分および微分ゲインなどの可変パラメータを格納するためのメモリを含んでいる。それに代えて、システム10内のほかの要素や回路が、これらのパラメータを格納(あるいは、監視コントローラ40からこれらのパラメータを受信)し、PIDレギュレータ94に適切なものを提供することも可能である。
【0061】
一実施例では、状態機械93から送られるMODE信号は、調整すべき所望の変数に応じて、レギュレータ94によって用いられる(比例、積分および微分の)ゲインの適切な組み合わせを選択する。さらに、MODE信号は、注目しているシステム制御変数(例えば、VBUS、IFC、VBATあるいはIBAT)のどれを調整するべきかを決定する。“No Control”モード(MODE=5)の場合は、調整の各パラメータには、ゼロ値が送られる。RESET信号フラグが発行されている場合は、積分状態はゼロにリセットされ、レギュレータ94は、コンバータ制御回路70に送られたIBi指示に対しては、ゼロ値を強制的に出力する。
【0062】
コンバータ制御回路70の動作については、すでに図3を引用して説明した。なお、注目している全ての制御変数が、同一のPIDレギュレータ94を共有する利点の一つとして、コンバータ制御回路70によって、双方向コンバータ20のデューティーサイクルを設定するために用いられる制御信号IBiが、モード切り換えの前後で連続的となり、モード間でシームレスな遷移が可能となるという点がある。
【0063】
本発明の制御方法の一実施例では、制御パラメータの選択を決定するために、複雑な関係が存在する。調整可能な制御変数と、これらが影響を及ぼす制御特性のいくつかを、以下の表5に示す。
【表5】

【0064】
一つあるいはそれ以上の数の制御パラメータを変化させる際には、複数の制御特性について様々なトレードオフが発生する。例えば、チャタリングを防止するためにリレー96で用いられるヒステリシス領域制限を狭くして、より良好な制御精度をもたらすようにすると、異なる制御モード間でのリミットサイクルが発生しやすくなるという問題がある。また、ランプ・レートが早くなると高速なシステム応答をもたらすが、同時に、ランプのずれやオーバーシュートが発生するという問題がある。ローパスフィルタ100を減速させることにより、120Hzの除波を改善しリミットサイクルの発生を防ぐことが可能となるが、許容制限を越えた制御変数に対して、モードの切り換えを行なう際の遅延が増してしまうという問題がある。制御パラメータを調整するために、他にも多くの性能上のトレードオフが行なわれる。
【0065】
このようなトレードオフに対して、本発明は、PIDレギュレータ94の調整と、コンバータ制御回路70のデッドビート制御則のための方法の一例を提供している。始めに、双方向コンバータの電流制御ループ(IBi)のデッドビートゲインを調節し、適度な安定性を確保しオーバーシュートを抑えながら、可能な限り高速な応答をもたらすようにする。上述したように、K=0.33(L/Δt)の値は、この点に関して、良好な結果をもたらすことがわかっている。次に、レギュレータ94のDCバス電圧と、燃料電池電流制御ループのためのPIDゲインを決定する。これらのゲインは、オーバーシュートを最小としながら、可能な限り高速な応答をもたらすように決定する。DCバス電圧フィードバック制御ループのさらに他の目的は、負荷変動に対しても、良好な制御特性を維持することにある。最後に、バッテリ電圧とバッテリ電流のフィードバック制御ループのPIDゲインを決定し、(他のループに比べ)適度な応答時間をもたらすようにする。これら後者の二つのループの応答を、幾分、遅めにすることが、リミットサイクルを起こしにくくするために有利なものとなる。
【0066】
一般的に、燃料電池電流IFCを除いた制御変数については、ゼロでない微分ゲインを用いることは、必ずしも必須ではない。(PID制御に比べ)PI制御は、テスト状態の領域で注目している他の制御変数について、適度な制御特性をもたらすことがわかっている。燃料電池電流の制御については、PID制御ではなくPI制御を採用することは、入力フィルタの構成にどのようなものを選択したかに大きく依存する(図1に示した逆阻止回路22を参照のこと)。逆阻止回路22が、堅実な入力源をもつLC入力フィルタを含む場合には、燃料電池電流のPID制御で行なうことは、システム10を安定化させる上で必要であることがわかっている。PID制御を用いると、燃料電池電流とバッテリ電流から120Hzの電流成分を除去することを、犠牲とせざるを得なくなる。純粋に容量性の入力フィルタを用いた場合、燃料電池電流のPI制御は、適切な制御安定性をもたらすものとなる。燃料電池32自体は、システム特性を極めて緩やかなものにするため、LC入力フィルタを用いたPI制御を採用することも可能となるが、この場合は、システム10で用いられる特定の燃料電池32の動特性に合うように、PI制御のパラメータを注意深く調整する必要がある。
【0067】
以上で、本発明を、代替エネルギー制御システム10に適用した一実施例について説明してきたが、ここで示した装置および方法は、様々なシステムの形態で用いられる多変数制御を実現するものである。これに限定されない例として、本発明は、固定あるいは変動するDC負荷に供給する、一つあるいはそれ以上の数のDC電力源DCを含むDC配電システムの制御、単一の電力制御が一つあるいはそれ以上の数の制御量を選択して制御するような電力システムの制御、単一の制御手段をもち相互依存した、非電気系システムを含む他の多変数システムの制御、(太陽電池、燃料電池、マイクロタービンなどの)代替エネルギー源がACメインに接続された単相インバータの制御、そして、UPSシステムや代替エネルギーシステムのためのバッテリバックアップシステムの制御などに有利に適用することが可能である。
【0068】
概略的には、本発明は、単一の制御手段を用いて、複数のシステム変数の制御を可能とするものである。代替エネルギーシステム10に適用した場合、本発明により、双方向コンバータ20によって提供される単一の制御手段を介して、異なる条件のもとでシステム10の変動するニーズに応えるために必要となる、バッテリの充電、燃料電池電流あるいは内部DCバス電圧の調節が可能となる。システム10は、通常、一度に一つの制御変数のみを調整するが、システム10自体の構成部分、あるいはそれに接続された構成部分に損傷を与えるような動作領域に、制御変数が入らないように、システムは動作する。
【0069】
方法の一例として、システム10は、注目している各制御変数の制御ループを提供し、これらの制御ループの中から一つを選択して、PIDレギュレータ94によってループを完結させるが、このループは、異なる制御ループによって共有されるものである。PID94内での動的な切り換えにより、切り換え可能なゲインの選択結果に応じて、その制御動作を各々の制御変数の調整に合わせることができる。このように、状態機械92のモード調停論理と、PIDレギュレータ94の切り換え可能なゲインを用いて、多変数コントローラ12は、自動的な変数選択と調整制御を提供し、モードと、注目している制御変数の各々の監視状態(LO/HI/INBAND)とに応じて必要とされる調整(および調節)のために、制御変数の中から一つを自動的に選択することが可能となる。
【0070】
このように、システム10は、複数の制御変数のフィードバック制御ループを組み合わせて、共通のPIDレギュレータを用いる単一の多変数制御を構成する。この制御方法は、各変数の誤差信号を監視し、それを3状態あるい3値論理信号(HI/LO/INBAND)に変換する。組み合わせ論理および状態機械による技術を、新たな方法で用いて、システム10の正しい調整制御モードを決定する。この制御は、一つあるいはそれ以上の数のデジタル信号プロセッサ(DSP)、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、あるいは、ASIC、FPGAなどの他の処理回路や、他の複雑なプログラム可能な装置内部で、全体あるいはその一部を実装することが可能である。実際には、本発明は、コンピュータで読取り可能な媒体に格納されたコンピュータプログラムとして実装することが可能であり、このコンピュータプログラムは、上記でその一例を説明した方法の各ステップを実行するためのプログラム命令から構成されている。
【0071】
本発明を、電気系システムと非電気系システムを含む様々な制御形態とシステム構成に適用できることは、当業者であれば容易に理解できるものである。本発明は、上記で詳細に説明した内容に限定されるものではなく、以下のクレームとそれらの合理的な等価なもの範囲にのみ限定を受けるものである。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明による、代替エネルギー制御システムとして構成された多変数制御システムの一例を示すブロック図。
【図2】図1のシステムに実装可能な、双方向コンバータあるいはバッテリ充電器の一例を示すブロック図。
【図3】図1のシステムに実装可能な、双方向コンバータのコントローラの一例を示すブロック図。
【図4】図1のシステムに実装可能な、多変数制御回路の一例を示すブロック図。
【図5】図1のシステムに実装可能な、ゲイン値と変化率の設定値のリミッタの一例を示すブロック図。
【図6】図1のシステムに実装可能な、3状態制御リレーの一例を示すブロック図。
【図7A】図1のシステムに実装可能な、モードコントローラの一例を示すブロック図。
【図7B】同じく図1のシステムに実装可能な、モードコントローラの一例を示すブロック図。
【図8】グリッド並列モードでの操作に関するモード制御論理の一例を示すブロック図であり、主インバータ制御は、電圧ではなく出力電力にもとづき制御されるブロック図。
【図9】図1のシステムに実装可能な、PID制御器の一例を示すブロック図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多変数システムを制御する方法であって、
システム内の注目している複数の制御変数を監視するステップと、
制御変数の一つを選択し、選択されなかった他の制御変数の監視を続けながら、所望する設定値に関して選択された制御変数を制御するステップと、
選択されなかった他の制御変数の一つに選択的に調整制御を切り換え、その一つの制御変数が許容値を超えるものと検知された場合に、その一つの制御変数が所望の設定値となるように調整するステップとから構成されていることを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法は、さらに、
各制御変数の一つあるいはそれ以上の数のパラメータ値を格納するステップと、
制御変数の特定の一つに対応した格納されたパラメータ値でを用いるように制御回路を構成するステップであり、該特定の制御変数は、調整制御のために選択されたことを特徴としたステップとから構成されていることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項2記載の方法において、
前記制御回路は、PIDコントローラから構成され、各制御変数の格納されたパラメータ値は、比例ゲイン、積分ゲインおよび微分ゲインの項のうち少なくとも一つから構成されていることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項3記載の方法は、さらに、
各制御変数に対して個々の制御ループを提供するステップと、
選択された制御変数に対応してた制御ループを、PIDコントローラによって確立するステップとから構成されていることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1記載の方法は、さらに、
一つあるいはそれ以上の数の制御変数が、それらの許容値を超えるものと検出された場合に、調整制御のために選択すべき特定の制御変数を決定する制御優先度の順番を定義するステップから構成されていることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1記載の方法は、さらに、
制御変数の中の特定の一つを、デフォルトの調整変数として指定するステップと、最下位の制御優先度をデフォルトの調整変数に割り当てるステップとから構成されていることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1記載の方法において、
多変数システムは、電気エネルギー蓄積装置(EESD)から動作するように構成された代替エネルギーシステムと、代替エネルギー発生装置(AEGD)とから構成され、該方法は、さらに、EESDとDCバスとの間の電力潮流を制御する第一の電力潮流制御装置によって、システムのEESD入力をDCバスに接続するステップと、
DCバスからAEGDへの電力潮流を防止する逆阻止回路によって、AEGD入力をDCバスに接続するステップとから構成されていることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項7記載の方法において、
制御変数の一つを選択し、選択されなかった他の制御変数の監視を続けながら、所望する設定値に関して選択された制御変数を制御するステップは、選択された制御変数と、選択された制御変数の所望の設定値との間の誤差を測定した結果に応じて、EESDとDCバスとの間の電力潮流を制御することにより、選択された制御変数を調整するステップから構成されていることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項8記載の方法において、選択されなかった他の制御変数の一つに選択的に調整制御を切り換え、その一つの制御変数が許容値を超えるものと検知された場合に、その一つの制御変数が所望の設定値となるように調整するステップは、選択されなかった制御変数の一つを、新しい調整制御変数として選択するステップと、新しい調整制御変数の測定値と、それに対応する所望の設定値との間の誤差に応じて、EESDとDCバスとの間の電力潮流を制御するステップとから構成されていることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項8記載の方法において、第一の電力潮流装置は、印加された切り換え信号のデューティサイクルに応じて、双方向コンバータ電流を制御する双方向コンバータから構成され、電力潮流の制御は、切り換え信号のデューティサイクルを制御することから構成されていることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項7記載の方法において、代替エネルギーシステムは、さらに、代替エネルギーシステムの動作のグリッド並列モードにおいて、選択的にAC電気系システムに接続されたACインバータから構成されていることを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項11記載の方法は、さらに、ACインバータを、第二の電力潮流装置として動作させ、DCバスとAC電気系システムとの間の電力潮流を制御することによって、AEGD電流とDCバス電圧を選択的に調整するステップから構成されていることを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項12記載の方法は、さらに、グリッド並列モードで動作中に、第一の電力潮流装置によって、選択的にEESD電圧とEESD電流を調整するステップと、第二の電力潮流装置によって、選択的にAEGD電流とDCバス電圧を調整するステップとから構成されていることを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項7記載の方法において、複数の制御変数は、EESD電流、EESD電圧、DCバス電圧およびAEGD電流から構成され、さらに、制御変数の制御優先度の順番を定義するステップと、制御優先度の順番に応じて調整のための制御変数を選択するステップとから構成されていることを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項14記載の方法において、代替エネルギーシステムの充電モードにおいて、制御優先度の順番は、DCバス電圧、AEGD電流、および、EESD電圧あるいはEESD電流のいずれかの順とし、それらの値の最大値の設定に関する関数として定義することを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項14記載の方法において、代替エネルギーシステムの非充電モードにおいて、制御優先度の順番は、DCバス電圧、AEGD電流の順として定義することを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項14記載の方法は、さらに、制御変数の一つをデフォルト変数として選択するステップと、デフォルト変数に対して、制御優先度の最下位の順番を割り当てるステップとから構成されていることを特徴とする方法。
【請求項18】
システムで注目している複数の対応する制御変数の所望の設定値に関する誤差信号を生成するように構成されている一つあるいはそれ以上の数の監視回路と、調整制御のために制御変数の中から一つを選択し、対応する誤差信号に応じて、選択された制御変数を調整するように構成され、さらに、選択されていない制御変数のいずれか一つが許容値を超えていると検知したことに応じて、選択されていない制御変数のいずれか一つに調整制御を選択的に切り替えるように構成された制御回路とから構成されていることを特徴とする、多変数システムを制御する多変数制御システム。
【請求項19】
請求項18記載の装置は、さらに、各制御変数の一つあるいはそれ以上の数の制御回路とともに動作し、一つあるいはそれ以上の数のパラメータ値を格納する格納装置から構成され、制御回路は、制御変数の特定の一つに対応して格納されたパラメータ値を用いるように構成され、該特定の制御パラメータは調整制御のために選択されることを特徴とする装置。
【請求項20】
請求項19記載の装置において、制御回路は、PIDコントローラから構成され、各制御変数の格納されたパラメータ値は、比例ゲイン、積分ゲインおよび微分ゲインのうち少なくとも一つから構成されていることを特徴とする装置。
【請求項21】
請求項20記載の装置において、PIDコントローラは、各制御変数に対して個々の制御ループを提供し、選択された制御変数に対応してた制御ループをPIDコントローラによって確立するように構成されていることを特徴とする装置。
【請求項22】
請求項18記載の装置において、制御回路は、一つあるいはそれ以上の数の制御変数が、それらの許容値を超えるものと検出された場合に、調整制御のために選択すべき特定の制御変数を決定する制御優先度の順番の定義に従って、制御変数を選択するように構成されていることを特徴とする装置。
【請求項23】
請求項18記載の装置において、装置は代替エネルギーシステムの少なくとも一部から構成され、さらに、装置は、電気エネルギー蓄積装置(EESD)を代替エネルギーシステム内のDCバスに接続する第一の電力潮流制御装置と、代替エネルギー発生装置(AEGD)をDCバスに接続する逆阻止回路とから構成され、第一の電力潮流制御装置は、EESDとDCバスとの間の電力潮流を制御するように構成され、逆阻止回路は、DCバスからAEGDへの電力潮流を防止するように構成されていることを特徴とする装置。
【請求項24】
請求項23記載の装置において、装置は、対応する誤差信号に応じて、EESDとDCバスとの間の電力潮流を制御することにより、選択された制御変数を調整することを特徴とする装置。
【請求項25】
請求項24記載の装置において、第一の電力潮流装置は、印加された切り換え信号のデューティサイクルに応じて、双方向コンバータ電流を制御する双方向コンバータから構成され、装置は、切り換え信号のデューティサイクルを制御することにより、EESDとDCバスとの間の電力潮流を制御することを特徴とする装置。
【請求項26】
請求項23記載の装置において、代替エネルギーシステムは、さらに、代替エネルギーシステムの動作のグリッド並列モードにおいて、選択的にAC電気系システムに接続されたACインバータから構成されていることを特徴とする装置。
【請求項27】
請求項26記載の装置において、装置は、ACインバータを、第二の電力潮流装置として動作させ、DCバスとAC電気系システムとの間の電力潮流を制御することによって、AEGD電流とDCバス電圧を選択的に調整するように構成されていることを特徴とする装置。
【請求項28】
請求項27記載の装置において、グリッド並列モードで動作中に、第一の電力潮流装置によって、選択的にEESD電圧とEESD電流を調整し、第二の電力潮流装置によって、選択的にAEGD電流とDCバス電圧を調整することを特徴とする装置。
【請求項29】
代替エネルギーシステムを制御する多変数制御装置であって、
該システムに付随した電気エネルギー蓄積装置(EESD)とシステム内に含まれるDCバスとの間の電力潮流を制御する第一の電力潮流装置と、
代替エネルギー発生装置(AEGD)をDCバスに接続し、DCバスからAEGDへの電力潮流を防止する逆阻止回路と、
DCバスによって供給されたDC電力から、AC電力を生成するACインバータと、
EESD電圧、EESD電流、AEGD電流およびDCバス電圧の中から一つあるいはそれ以上の数のものから構成される制御変数の組を監視する多変数制御回路とから構成されたシステムにおいて、
前記多変数制御回路は、代替エネルギーシステムの一つあるいはそれ以上の数の動作モードで、第一の電力潮流装置を制御し、対応する所望の設定値に関して、複数の制御変数の中から選択された一つを調整し、選択されなかった制御変数が許容値を超えると検出されたことに応じて、調整制御のために選択すべき制御変数を変更するように構成されていることを特徴とする装置。
【請求項30】
請求項29記載の装置において、ACインバータは、DCバスとAC電気系システムとの間の電力潮流を制御することによって、第二の電力潮流装置として動作し、ACインバータが外部電気系システムに接続されるグリッド並列モードでは、多変数制御回路は、第二の電力潮流装置を制御することによりAEGD電流およびDCバス電圧の中から一つを選択して調整し、同時に、第一の電力潮流装置を制御することによりEESD電圧とEESD電流の中から一つを選択して調整するように構成されていることを特徴とする装置。
【請求項31】
請求項30記載の装置において、多変数制御回路は、第一の電力潮流装置を制御するDC制御回路と、第二の電力潮流装置を制御するAC制御回路とから構成されていることを特徴とする装置。
【請求項32】
請求項31記載の装置において、DC制御回路は、グリッド並列モードでない場合、EESD電圧、EESD電流、AEGD電流およびDCバス電圧の中から一つを選択して調整するように構成されていることを特徴とする装置。
【請求項33】
請求項29記載の装置において、第一の電力潮流装置は、印加された切り換え信号のデューティサイクルに応じて、EESDとDCバスとの間の電力潮流を制御する双方向コンバータから構成され、多変数制御回路は、切り換え信号のデューティサイクルを制御することにより選択された制御変数を調整するように構成されていることを特徴とする装置。
【請求項34】
請求項29記載の装置において、装置は、一つあるいはそれ以上の数のモードで動作し、多変数制御回路は、モードに依存した優先度の順番に従って調整制御のための制御変数を選択するように構成されていることを特徴とする装置。
【請求項35】
請求項29記載の装置において、一つあるいはそれ以上の数のモードには、EESD充電モードが含まれ、多変数制御回路は、許容される最大値に関して、EESD電圧とEESD電流を監視し、該監視にもとづき、両者のうち一方を調整制御のために選択するように構成されていることを特徴とする装置。
【請求項36】
請求項35記載の装置において、多変数制御回路は、EESD電圧とEESD電流のいずれもがそれらの各々の許容される最大値を超える場合、充電モードでの調整制御にEESD電流を選択するように構成されていることを特徴とする装置。
【請求項37】
請求項29記載の装置において、多変数制御回路は、DCバス電圧に対応した設定値を、最小値となるように調節し、DC電圧が許容範囲を外れることがないようにして、DCバス電圧が調整制御のために選択されないようにして、アイドルモードで動作するように構成されていることを特徴とする装置。
【請求項38】
請求項37記載の装置において、多変数制御回路は、さらに、AEGD電流を下げるように調整し始める前に、AEGD電流に対応した設定値を調整し、AEGD電流が許容される最大値にまで上昇できるように構成されていることを特徴とする装置。
【請求項39】
請求項38記載の装置において、多変数制御回路は、監視制御回路から指示値を受信することにもとづき、DCバス電圧とAEGD電流に対応した設定値を調整するように構成されていることを特徴とする装置。
【請求項40】
請求項29記載の装置において、多変数制御回路は、
複数の制御変数の組の中の各制御変数の制御ループ入力回路と、
各制御ループ入力回路から一つあるいはそれ以上の数の検出信号を受取ることにもとづき、調整モードを選択するモード選択回路と、
選択された制御信号と、それに対応した所望の設定値との間の誤差にもとづき、第一の電力潮流装置の制御信号を生成するPIDレギュレータ回路とから構成されていることを特徴とする装置。
【請求項41】
請求項40記載の装置において、PIDレギュレータ回路は、選択された制御変数にもとづき、一つあるいはそれ以上の数の微分ゲイン、比例ゲインおよび積分ゲインを調整するように構成されていることを特徴とする装置。
【請求項42】
請求項41記載の装置において、各制御変数の一つあるいはそれ以上の数のパラメータにもとづき、一つあるいはそれ以上の数のゲインを設定することにより、複数の制御変数の組の中の各制御変数を調整するために、その動作を調節するように構成されていることを特徴とする装置。
【請求項43】
請求項40記載の装置は、さらに、ACインバータを第二の電力潮流装置として制御する第二のPIDレギュレータ回路から構成され、該装置がグリッド並列モードで動作している際には、多変数制御回路は、第一のPIDレギュレータ回路を介して第一の電力潮流装置を制御することにより、EESD電流とEESD電圧のうち選択された一方を調整するように構成され、また、第二のPIDレギュレータ回路を介して第二の電力潮流装置を制御することにより、AEGD電流とDCバス電圧のうち選択された一方を調整するように構成されていることを特徴とする装置。
【請求項44】
請求項29記載の装置において、第一の電力潮流装置は、制御信号のデューティサイクルに応じて、EESDとDCバスの間に流れる双方向コンバータ電流を制御するように構成された双方向コンバータコントローラから構成されていることを特徴とする装置。
【請求項45】
多変数システムを制御するためのコンピュータプログラムを格納したコンピュータで読取り可能な媒体であって、該コンピュータプログラムは、
システム内の注目している複数の制御変数を監視するプログラム命令と、
制御変数の一つを調整制御のために選択し、選択されなかった他の制御変数の監視を続けながら、所望する設定値に関して選択された制御変数を制御するプログラム命令と、
選択されなかった他の制御変数の一つに選択的に調整制御を切り換え、その一つの制御変数が許容値を超えるものと検知された場合に、その一つの制御変数が所望の設定値となるように調整するプログラム命令とから構成されていることを特徴とする媒体。
【請求項46】
請求項45記載のコンピュータプログラムを格納したコンピュータで読取り可能な媒体において、多変数システムは、外部電気系システムに接続され、代替エネルギーシステム内のDCバスによって供給されたDC電力からAD電力を生成するように構成されたACインバータを含む代替エネルギーシステムから構成されており、代替エネルギーシステムは、さらに、電気エネルギー蓄積装置(EESD)をDCバスに接続し、EESDとDCバスの間の電力潮流を制御する第一の電力潮流装置と、代替エネルギー発生装置(AEGD)をDCバスに接続し、DCバスからAEGDへの電力潮流を防止する逆阻止回路とから構成されており、複数の制御変数を監視するプログラム命令は、EESD電流、EESD電圧、AEGD電流およびDCバス電圧の中から二つあるいはそれ以上の数のものを監視するプログラム命令から構成されていることを特徴とする媒体。
【請求項47】
請求項46記載のコンピュータプログラムを格納したコンピュータで読取り可能な媒体において、コンピュータプログラムは、さらに、複数の制御変数の組の中からどれを調整制御すべきものであるかを選択し、代替エネルギーシステムの動作モードにもとづき、選択の優先順番を設定するプログラム命令から構成されていることを特徴とする媒体。
【請求項48】
請求項46記載のコンピュータプログラムを格納したコンピュータで読取り可能な媒体において、選択された制御変数を所望の設定値に関して調整し、同時に、制御されなかった制御変数の監視するプログラム命令は、第一の電力潮流装置によりEESDとDBバス間の電力潮流を制御することにより、選択された制御変数の調整制御を行なうプログラム命令から構成されていることを特徴とする媒体。
【請求項49】
請求項48記載のコンピュータプログラムを格納したコンピュータで読取り可能な媒体は、さらに、EESD電流とEESD電圧の中から選択された一方を調整するプログラム命令と、同時に、ACインバータを第二の電力潮流装置として動作させ、これによりDCバスと外部電気系システムとの間の電力潮流を制御し、第二の電力潮流装置によって、AEGD電流とDCバス電圧の選択された一方を調整するプログラム命令とから構成されていることを特徴とする媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2007−521583(P2007−521583A)
【公表日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−547109(P2006−547109)
【出願日】平成16年12月13日(2004.12.13)
【国際出願番号】PCT/US2004/041807
【国際公開番号】WO2005/066726
【国際公開日】平成17年7月21日(2005.7.21)
【出願人】(500015799)スクウエアー ディー カンパニー (3)
【Fターム(参考)】