位置情報記録装置、同装置を備える撮像装置および位置情報記録方法
【課題】 電波受信不能時には相対的な位置情報を記録し、電波受信が可能になったときに相対的位置情報を測位情報に変換し記録する位置情報記録装置等に関する。
【解決手段】 無線信号を受信する受信手段、測位情報を記録する合図を発する操作手段、無線信号に基づいて地理的位置を測位し測位情報を算出する位置情報算出手段、測位情報を記録する測位情報記録手段、基準位置からの方向と移動距離からなる変位情報を算出する移動軌跡情報算出手段、合図が発せられたとき測位情報が得られていないときには変位情報によって基準となる位置からの相対的な位置に係る相対位置情報を算出し合図に係る情報と関連づけて記録する相対位置情報記録手段と、測位情報が得られたとき、相対位置情報記録手段にすでに記録されている相対位置情報を測位情報に変換する位置情報変換手段、を有する位置情報記録装置による。
【解決手段】 無線信号を受信する受信手段、測位情報を記録する合図を発する操作手段、無線信号に基づいて地理的位置を測位し測位情報を算出する位置情報算出手段、測位情報を記録する測位情報記録手段、基準位置からの方向と移動距離からなる変位情報を算出する移動軌跡情報算出手段、合図が発せられたとき測位情報が得られていないときには変位情報によって基準となる位置からの相対的な位置に係る相対位置情報を算出し合図に係る情報と関連づけて記録する相対位置情報記録手段と、測位情報が得られたとき、相対位置情報記録手段にすでに記録されている相対位置情報を測位情報に変換する位置情報変換手段、を有する位置情報記録装置による。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受信した電波(無線信号)に基づいて現地点を測位し、位置情報を記録する位置情報記録装置に関するものであって、電波の受信ができない状態にあっても相対的な位置情報を記録することができ、電波を受信できるようになったとき(測位可能な状態になったとき)、それまでに記録された相対的な位置情報を、電波に基づく測位によって得られる位置情報と同等の精度の位置情報に変換して記録しなおすことができる位置情報記録装置、位置情報記録方法および同装置を備える撮像装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電波を受信し、この電波に基づいて現地点の地理的位置を測位して位置情報を算出し記録することができる位置情報記録装置は、複数の衛星からの電波を用いて測位するGNSS(Global Navigation Satellite System)を利用することが多い。GNSSを利用したシステムとしては、カーナビゲーションなどの車載型装置に限らず、近年では、携帯型装置や携帯電話に同装置を組み込んだものなどが知られている。
さらに、デジタルカメラ等の撮像装置にもGNSSが搭載されたものがある。このような撮像装置では、撮影した画像データに撮影地点の地理的な位置情報を格納して記録することができる。GNSSによる測位システムの中でも、GPSが著名である。
また、衛星からの電波ではなく道路構造物に無線信号出力装置を配置し、これによる無線信号を用いて現地点の位置を測位するシステムも知られている。
これらに共通する要素は「電波を受信することで測位する」ことである。
【0003】
GNSSにおいて位置情報を算出するには、複数の衛星からの電波が受信できる状態になければならない。よって、電波の受信状況が不良な地点では、測位することができない。例えば、トンネルの中や地下では、十分に電波を受信することができないので、測位することができない。これはGNSSに限らず電波を用いて測位するシステムでは共通の課題である。
【0004】
自動車等に搭載されるナビゲーションシステムは、電波受信状況が不良なときであっても、それまでに測位された位置情報を元にして、加速度センサや角速度センサを併用して、直前の測位点からの移動方向と移動距離を算出して、現地点の位置情報を推定することができるものがある。
ナビゲーションシステムは、推定された位置情報が多少誤差を含むものであっても、電波受信状況が安定したときに、正確な位置情報によって現地点の位置情報を修正すればよいので、推定された位置情報を記録し保存しておく要求はない。
【0005】
一方、デジタルカメラ等の撮像装置は、撮影地点の位置情報を撮影された画像データと共に記録する要求がある。よって、電波状態が不良な場所であっても、その地点の位置情報を記録しておく必要がある。また、推定された位置情報が記録されたときは、電波状態が良好になったときに正確な位置情報へ変換できることが望ましい。
つまり、撮像装置のように位置情報を記録して活用する装置に搭載する位置情報記録装置においては、電波状況が不良なときの位置情報を推定することができること、電波状況が良好になったときには推定されていた位置情報をより正確な位置情報に変換できることが望まれている。
【0006】
画像データと位置情報を関連づけて記録する規格として電子規格情報産業協会が2009年9月に改定した「ディジタルスチルカメラ用画像ファイルフォーマット規格Exif2.21(以下、「EXIF規格」という。)」が知られている(例えば「非特許文献1」を参照)。
EXIF規格において格納される位置情報は「ジオタグ」と呼ばれている。ジオタグは、撮像装置に搭載されたGNSSによって算出された位置情報を緯度、経度、高度の組み合わせで表され、これが画像ファイルのヘッダー部分に格納される。
【0007】
以上述べたような技術的課題、すなわち、携帯して用いることを前提とした撮像装置のようなものに搭載される位置情報記録装置において、電波の受信状況が不良なときに記録された位置情報を正確な位置情報に変換できる方法等を工夫するという課題を解決することを目的とした先行技術文献は見つからなかったが、本発明に関連のある先行技術文献として特許文献1を挙げることができる。特許文献1記載の発明は、撮影モードに応じて撮像手段が有する受光面の基準方向の地理的な方位を検出する方位検出手段を備える撮像装置であって、撮像データと方位情報を関連づけて記録することができるものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
撮像装置など携帯して利用する装置において、電波受信状況が不良であるときに相対的な位置情報を代用として記録することができたとしても、その後において、正確な位置情報(測位による位置情報)に変換することができなければ、相対的な位置情報を記録しても、不正確な位置情報を記録することになり、利用者にとって不便である。
また、GNSSは当該装置を起動させてから位置情報を算出できる状態になるまで、すなわち、複数の電波を受信して測位可能状態になるまで、数十秒のタイムラグが生じる。
これは、地理的な位置(緯度、経度、高度)を精度よく算出するために所定の数の電波が正常に受信できていることを確認する処理や、受信した電波によって現地点を算出する処理に時間を要するからである。
つまり、撮影装置にあっては、電源が投入されて撮影できる状態になっていても、搭載されているGNSSの初期化処理が完了しなければ、位置情報を記録することができない。画像データと合わせて位置情報も記録したければ、GNSSが完全に起動して測位可能な状態になるまで、撮影を待たなければならない。
【0009】
本発明は上記課題を鑑みてなされたものであって、電波を受信することができない状態においては、相対的な位置情報を記録しておき、電波を受信できるようになったときに、それまで記録された相対的な位置情報を測位によって得られる位置情報に変換して記録しなおすことができる位置情報記録装置、位置情報記録方法および同装置を備える撮像装置を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、位置情報記録装置であって、無線信号を受信する受信手段と、測位情報を記録する合図を発する操作手段と、無線信号に基づいて地理的位置を測位し当該位置に係る測位情報を算出する位置情報算出手段と、算出された測位情報を記録する測位情報記録手段と、を有し、 基準となる位置からの方向と移動距離からなる変位情報を算出する移動軌跡情報算出手段と、を有し、合図が発せられたとき、測位情報が得られていないときには変位情報によって基準となる位置からの相対的な位置に係る相対位置情報を算出し、合図に係る情報と関連づけて記録する相対位置情報記録手段と、測位情報が得られたとき、相対位置情報記録手段にすでに記録されている相対位置情報を測位情報に変換する位置情報変換手段と、を有することを主な特徴とする。
【0011】
また本発明に係る位置情報記録装置の他の形態は、基準位置からの移動方向を検出する加速度検出手段と、基準となる方位を検出する地磁気検出手段と、をさらに有し、移動軌跡情報算出手段が、加速度検出手段が検出する移動方向と地磁気検出手段が検出する基準となる方位に基づいて変位情報を算出する、ことを特徴とする。
【0012】
また本発明に係る位置情報記録装置のさらに他の形態は、無線信号に基づく測位ができなかった時間を計測する計時手段をさらに有し、位置情報変換手段が、相対位置情報記録手段が記録した各相対位置情報のうち、計測された時間の所定の時点より後に記録されている相対位置情報に対しては最新の測位情報に基づいて変換を行い、計測された時間の所定の時点より前に記録されている相対位置情報に対しては測位ができなくなる直前に測位されていた測位情報に基づいて変換を行う、ことを特徴とする。
【0013】
また本発明は、上記の位置情報記録装置を備えた撮像装置に係るものであって、被写体を表す光学像を、撮像光学系と撮像素子を介して取得し画像データに変換する撮像手段と、撮像手段にて変換された画像データを記憶する画像記憶手段と、を有し、操作手段はレリーズボタンであり、記合図によって撮像手段も動作して取得された画像データに測位情報または相対位置情報を関連づけて記録する、ことを特徴とする。
【0014】
また本発明は、上記の位置情報記録装置を用いた位置情報記録方法であって、受信手段が無線信号を受信するステップと、測位情報を記録する合図を検知するステップと、合図が発せられたときに無線信号に基づいて地理的位置を測位して測位情報を算出できるか否か判定するステップと、測位情報の算出ができないと判定されたときに、移動軌跡情報算出手段が、基準となる位置からの方向と移動距離からなる変位情報の算出を開始するステップと、合図が発せられたとき、測位情報がが算出されていないときには変位情報によって基準となる位置からの相対的な位置に係る相対位置情報を算出するステップと、算出された相対位置情報を合図に係る情報と関連づけて記録するステップと、測位情報が算出されたとき、相対位置情報記録手段にすでに記録されている相対位置情報を測位情報に変換するステップと、を実行することを特徴とする。
【0015】
また本発明に係る位置情報記録方法の他の形態は、地磁気検出手段が、基準となる方位を検出するステップと、移動軌跡情報算出手段が、加速度検出手段の出力に基づいて傾きを特定するステップと、加速度検出手段の出力と地磁気検出手段の検出結果に基づいて移動方向を特定するステップ、加速度検出手段の出力に基づいて移動速度を算出するステップと、傾き、移動方向、速度に基づいて基準となる位置からの変位量を算出するステップと、を実行することを特徴とする。
【0016】
また本発明に係る位置情報記録方法のさらに他の形態は、位置情報変換手段が、計測された時間の所定の時点よりも前に相対位置情報が記録されているか否かを判定するステップと、所定の時点よりも前に相対位置情報が記録されているときは、相対位置情報記録手段が記録した各相対位置情報のうち所定の時点より後に記録されている相対位置情報に対しては、最新の測位情報を用いて相対位置情報を測位情報に変換するステップと、相対位置情報記録手段が記録した各相対位置情報のうち、所定の時点より前に記録されている相対位置情報に対しては、測位ができなくなる直前に測位されていた測位情報を用いて、相対位置情報を測位情報に変換するステップと、を実行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、電波受信状況が良好であれば、電波による測位で得られる正確な位置情報を記録し、電波受信状況が不良なとき、または、装置の初期化などによって測位が不能なときは、基準となる位置(例えば、電波による測位で得られた最後の位置情報)からの相対的な移動量(変位量)によって算出できる相対位置情報を記録しておき、その後、電波による測位が可能になったときに、それまで記録されていた相対位置情報を測位で得られる正確な位置情報と同等の位置情報に変換することができる。これによって、電波受信状態に関わらず正確な位置情報を記録することができるようになる。
また、撮像装置に本発明を搭載することで、電波が受信できない地下や、起動開始直後に撮影した画像データに対しても、正確な位置情報を関連づけて格納することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る位置情報記録装置を搭載した撮像装置の例を示す正面図である。
【図2】上記撮像装置に用いられる制御系統の例を示す機能ブロック図である。
【図3】本発明に係る位置情報記録装置が実行する位置情報算出処理の例を示すフローチャートである。
【図4】本発明に係る位置情報記録装置が実行する位置情報記録処理の例を示すフローチャートである。
【図5】本発明に係る位置情報記録装置が実行する相対位置情報記録処理の例を示すフローチャートである。
【図6】本発明に係る位置情報記録装置が実行する移動軌跡情報記録処理の例を示すフローチャートである。
【図7】本発明に係る位置情報記録装置が実行する位置情報算出処理の別の例を示すフローチャートである。
【図8】本発明に係る位置情報記録装置が実行する相対位置情報記録処理の別の例を示すフローチャートである。
【図9】本発明に係る位置情報記録装置において相対位置情報の算出に用いる移動軌跡情報の例を示す模式図である。
【図10】本発明に係る位置情報記録装置が備える加速度検出部の出力信号の概要を示す模式図である。
【図11】本発明に係る位置情報記録装置が備える加速度検出部の出力から傾きを特定する原理を示す模式図である。
【図12】本発明に係る位置情報記録装置が備える地磁気検出部の出力から傾きを特定する原理を示す模式図である。
【図13】本発明に係る位置情報記録装置が備える加速度検出部の出力信号の経時変化の例を示す模式図である。
【図14】本発明に係る位置情報記録装置が備える加速度検出部の出力信号から平均加速度を算出する例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る位置情報記録装置、位置情報記録方法および同装置を備える撮像装置の実施の形態について図面を用いながら説明する。
本発明に係る位置情報記録装置は、撮像装置に搭載されるものに限らないが、本明細書においては、本発明に係る位置情報記録装置が撮像装置に搭載される実施形態を例に用いて説明をする。
【0020】
図1は、本発明に係る位置情報記録装置を備えた撮像装置の外観の例を示す正面図である。図1において撮像装置1は、正面にズームレンズやフォーカスレンズを含む鏡胴ユニット2を備えており、また、ストロボ発光部3、被写体までの距離を測定する測距ユニット4、光学ファインダ5を備えている。撮像装置1の上面には、シャッタースイッチであるレリーズボタンSW1、撮影モードを選択するためのモードダイヤルSW2とジョグダイヤルスイッチSW3が配置されている。
また、測位に用いる複数の電波を受信するアンテナ6が撮像装置1の匡体上面部に内蔵されている。アンテナ6は、電波を受けやすい位置であれば、これに限ることはない。
【0021】
次に、図2を用いて撮像装置1の機能ブロックの例について説明する。図2に示すように撮像装置1は、装置全体の動作を制御するプロセッサである演算部11と各処理部をつなぐデータバス22によって構成されている。
撮像装置1は、撮像光学系を介して取得した被写体像を画像データに変換し画像ファイルを生成する撮像部12、画像データや操作メニューを表示する表示部20、レリーズボタンSW1やモードダイヤルSW2の入力を検出する操作部21、画像ファイルを記録する外部記憶部19を主な構成とする。さらに、加速度センサを備える加速度検出部13、角速度センサを備える角速度検出部14、地磁気センサを備える地磁気検出部15、アンテナ6によって受信した複数の電波から現地点を測位し、位置情報を算出するGNSSを備える位置情報算出部16、を有してなる。
また、演算部11における各種の演算処理を行うときにワークエリアとして用いられ、また、演算処理の結果を一時的に記憶する記憶領域として用いられるRAM17、画像データの記憶・保存、測位によって得られた位置情報、相対位置情報、後述する移動軌跡情報を記録するFlashメモリ18を備えている。
【0022】
演算部11は、加速度検出部13、角速度検出部14、地磁気検出部15からの出力によって、当該装置の移動経路を算出する演算を行う。この移動経路に係る情報を移動軌跡情報とする。移動軌跡情報に基づいて相対位置情報が算出される。
また、演算部11は、操作部21からの所定の入力(合図)によって、移動軌跡情報に基づいて相対位置情報を算出し、Flashメモリ18に記録する。
位置情報検出部16は、図示しないアンテナを介して受信した電波(無線信号)から現地点の地理的位置を測位し、これに係る位置情報(測位情報)を算出する。算出された測位情報はFlashメモリ18に記録される。
演算部11、加速度検出部13、角速度検出部14、地磁気検出部15、位置情報検出部16、RAM17、Flashメモリ18、外部記憶部19によって、本発明に係る位置情報記録装置が構成される。
【0023】
次に、本発明に係る位置情報記録装置における位置情報記録方法の例について、撮像装置の実施形態の例とともにフローチャートを用いて説明をする。各フローチャートにおいて処理のステップを、(S1)、(S2)、・・・のように表記している。
【0024】
まず、本発明に係る位置情報記録方法の実施形態の例について、図3のフローチャートを用いて説明する。
電源が投入されて装置(例えば撮像装置)の動作が開始すると、位置情報算出部16の初期化処理が行われて、電波の受信を開始する。電波が十分に受信されるまで、若干のタイムラグがあるので、起動直後からしばらくの間は、測位不能である(S1のNo)。しばらく時間が経過すると測位可能な状態になるので、所定の時間間隔をもって測位情報が算出されてFlashメモリ18に順次記録される(S1)。
【0025】
測位情報算出処理(S1)は、衛星から受信した電波に基づいて現在地の地理的位置を特定する測位情報を算出する演算処理であって、測位情報が算出できる状態であるか否かの判定処理を含む。よって、測位情報が算出できる状態になっていないときは(S1のNo)、移動軌跡情報算出処理(S2)を開始して、測位情報が算出できるようになるまで移動軌跡情報を算出しつづける。移動情報算出処理(S2)の詳細な説明は後述する。
「測位情報が算出可能な状態」とは、所定の数の衛星からの電波が正常に受信されている状態をいう。所定の衛星の数とは例えば4である。4つの衛星からの電波を正常に受信するとき、緯度と経度と高度からなる測位情報を算出することができる。
測位情報の形式は例えば緯度(Gx)、経度(Gy)、高度(Gz)を所定の単位の数値で表して(Gx、Gy、Gz)のように表すことができ、この測位情報はFlashメモリ18に記録されるとき、また、画像ファイルのヘッダー情報に格納されるときも、この形式によればよい。
【0026】
測位情報が算出可能な状態になったとき(S1の測位可能)、測位不能な間に相対位置情報が記録された否かを判定し(S3)、相対位置情報が記録されていなければ(S3の無し)処理をS1に戻す。
つまり、測位情報が算出可能な状態であって、相対位置情報が記録されていなければ、測位情報は繰り返して算出されてFlashメモリ18に記録される。
【0027】
測位情報が算出可能な状態になったとき(S1のYes)、測位ができなかった間に記録された相対位置情報が記録されていれば(S3の有り)、記録されている相対位置情報を測位情報に変換する処理を行う(S4)。変換された測位情報(変換位置情報)は、所定の記録領域に格納される(S5)。装置の電源が切られるまで、上記の処理が繰り返される。
【0028】
ここで、移動軌跡情報算出処理(S2)の詳細な処理の流れの例について、図6のフローチャートを用いて説明する。移動軌跡情報算出処理(S2)が開始されるとまず、傾き特定処理(S21)が行われる。
傾き特定処理(S21)は、本発明に係る位置情報記録装置が、どのような姿勢で移動しているのかを特定する処理である。例えば、撮像装置の場合、移動時の匡体の姿勢は水平状態が維持されているとは限らず、むしろ、様々な姿勢で移動することの方が多い。
移動軌跡情報は、相対位置情報の算出に用いる情報であるから、当該装置がいかなる方向に向かって移動しているのかをきちんと把握した上で算出する必要がある。
そのためには、加速度検出部13及び角速度検出部14の向き(傾き)を特定する必要がある。
傾きを特定することで、加速度検出部13の出力に基づいて当該装置の移動方向と移動量からなる変位量を算出することができる。
【0029】
図10は、加速度検出部13から出力される信号のイメージを示す。緯度方向に対応するX軸、経度方向に対応するY軸、高度方向に対応するZ軸の、それぞれの出力をGx、Gy、Gzで表している。軸の交点を基準点とし、各軸方向の出力の合成が加速度(Xg、Yg、Zg)として出力される。
【0030】
図11は、傾き特定処理(S21)において、加速度検出部13の出力データから傾きを特定する方法の例を示す。図11において、当該装置の匡体の垂直方向の軸と水平方向の軸に比べて、加速度検出部13から出力される加速度(Xg、Yg、Zg)は、θgだけ傾きを有している。この傾き角θgは、Z軸とX軸−Y軸平面(Gx−Gy平面)のズレ角と等しい。重力加速度Gは常に垂直方向に作用しているので、加速度検出部13のZ軸出力(Zg)と重力加速度Gを用いることで傾き角度θgを算出することができる。傾き角度θgと重力加速度GおよびZ軸出力の間には、Sinθg=Zg/Gの関係が成り立つ。
【0031】
地磁気検出部15の出力によるX軸の傾きを特定する方法を図12に示す。地磁気検出部15は北(North)を検出する。通常は北を基準となる方位とする。地磁気検出部12が検出する「基準となる方位」を用いることで、図12に示すように、Y軸が北(North)からどのくらい傾いているか(図12に示すθc)を算出することができる。X軸−Y軸平面(Gx−Gy平面)と加速度検出部13のX軸のズレ角(傾き)は、当該装置のY軸が北からどのくらいずれているかに等しい。
当該装置のY軸が基準となる方位(北)に向いているときは地磁気検出部15の出力は0度であって、当該装置のY軸が東に向いている(当該装置が横向きに倒れている)ときは、地磁気検出部15の出力は90度となる。
【0032】
このように、加速度検出部13の出力と地磁気検出部15の出力によって、上記のθgとθcを算出することができ、この傾き角θgおよびθcによって、加速度検出部13の3次元ベクトル情報(Xg,Yg,Zg)を、垂直・水平基準(North基準)のベクトル情報に変換することができる。
このベクトル変換処理は、最初に、垂直−水平成分に分解して、次に、水平成分をEast成分(X成分)、North成分(Y成分)に分解することで行うことができる。
このように、加速度検出部13と地磁気検出部15の出力によって当該装置の傾きを特定することができる。
【0033】
傾きが特定されると移動方向が特定できるので、次に移動速度を算出する処理が行われる(S22)。
ここで、本発明に係る位置情報記録装置および撮像装置のように、携帯される装置における移動速度の算出には、注意すべき点があるので、それを説明する。
当該装置が全く移動せずに静止しているときであっても、加速度検出部13は重力加速度Gを出力している。
したがって、速度の算出に用いる時間から重力加速度Gのみが出力されている時間を除く必要がある。そのためには、加速度検出部13の出力が重力加速度Gと等しいとき、静止しているのか、移動しているが等速運動をしているのか、いずれの状態であるかを判定しなければならない。
図13に加速度検出部13から出力される信号のイメージを示す。図13において、縦軸は出力の大きさ、すなわち、加速度の大きさを示している。横軸は時間を示している。図13に示すように、加速度検出部13の各軸の加速度(Xg、Yg、Zg)は、時間とともに変化している。
【0034】
地球上で生活しているかぎりはおいて、人や乗り物の移動が長時間にわたって等加速度運動が続く事は現実的に起こり得ない。移動しているならば、3軸のいずれかに重力加速度Gとは異なる加速度が出力されている。よって、3軸の加速度の出力変位がすべて一定時間以上、変化していないときを(同じ加速度が3軸全てにおいて出力されているとき)静止状態として判定し、この間を移動軌跡情報の算出から除けばよい。
図13においては、矩形130で囲んだ範囲の加速度は3軸ともに変換せず一定二なっている。よって、この間は静止していたと判定することができる。後述する速度算出処理において、この間の時間数を除いて速度算出処理(S22)を行えばよい。
【0035】
ただし、この方法だけでは誤差が大きくなる可能性もあるため、より精度よく移動軌跡情報を算出するためには、角速度検出部14の出力信号を併用し、角速度検出部14の出力信号を用いて傾きを特定すればよい。角速度検出部14を併用する場合は、上記方法ではなく、角速度検出部14の出力が一定時間以上0のとき、静止状態と判断すればよい。実際には静止状態であっても角速度検出部14が備える角速度センサはノイズを出力するので、角速度検出部14の出力が一定レベル以下の時に静止状態と判定すればよい。
【0036】
上記を踏まえて速度算出処理(S22)の説明をする。すでに説明をした方法を用いて、当該装置が静止状態であるか否かを判定し、加速度検出部13から出力されるX、Y、Z方向の加速度から、移動速度の算出に用いるデータを選別する。
加速度検出部13は、任意の時間間隔(周期)をもってデータを出力する。よって、加速度検出部13から出力されたデータに基づいて、上記図11、12、13を用いて説明した演算処理をNorth方向(X軸)、East方向(Y軸)、天頂方向(Z軸)の3軸それぞれにおいて行なえばよい。
よって、加速度検出部13の出力周期は短い方が誤差は小さく、より精度が高い移動軌跡情報を算出することができる。しかし、周期が短くなると演算処理の負荷が高くなり他の演算処理の妨げになり、消費電力が増大することになる。よって、加速度検出部13の出力信号の変位パターン(図13に例示)から、移動形態を分析し、徒歩による移動であるのか、自動車による移動であるのか、電車による移動であるのかを分析し、各移動形態に適した算出間隔を選定できるようにすれば良い。
【0037】
また、速度算出処理(S22)の都度、それまでの加速度検出部13の出力信号をまとめて積分演算をすると、演算負荷が高くなり、消費電力や他の演算処理の妨げになるため、速度演算処理がオーバーフローしない程度の時間間隔で予め加速度検出部13の出力を積分しておき、その間の平均の加速度を算出しておくとよい。
図14に平均加速度を算出するイメージを示す。図14において、縦軸は3軸それぞれの加速度を示し、横軸は時間を示している。基準点Sから任意の時点140までの平均加速度は、この間の加速度を積分することで算出することができる。よって、基準点Sから任意の時点140までの経過時間が長いと、積分処理がオーバーフローしたり、積分処理の演算負荷が高くなりすぎたり、不具合が生じる可能性がある。
そこで、任意の時点140(例えば撮影処理のタイミング)までに、所定の時間間隔で平均加速度を算出しておき、時点140においては、各区間の平均加速度を合算して平均を算出し、全行程の平均加速度を算出すればよい。
【0038】
このように、X軸、Y軸、Z軸のそれぞれにおける任意のポイントまでの平均加速度Aを算出したのちに、任意の時点140までの経過時間をt、前回の速度算出処理にて算出された速度をCとすると、時点140における速度VはV=At+C(式1)で算出することができる。
このようにして、式1を用いて、X軸、Y軸、Z軸それぞれにおける速度を算出する(S22)。
【0039】
次に、変位量算出処理(S23)を行う。変位量とは基準となる相対位置(0,0,0)から任意の時点140までのX軸、Y軸、Z軸方向のそれぞれの距離である。
速度算出処理(S22)にて算出されたX軸、Y軸、Z軸の速度(Vx、Vy、Vz)から、X軸、Y軸、Z軸方向のそれぞれの距離である変位量(Px、Py、Pz)を算出することができる。
すなわち、P=(A/2)*t2+Ct+C´(式2)によって算出することができる。式2において、Aは時点140における平均加速度、tは基準位置から時点140までの経過時間、Cは前回の速度算出処理(S22)で算出された速度、C´は前回の変位量算出処理で算出された変位量である。
式2によって、変位量(Px、Py、Pz)を算出し、これを移動軌跡情報としてFrashメモリ18に記録しておく。
【0040】
次に所定の合図によって位置情報を記録する処理について説明をする。この処理は、図1に示した位置情報を算出する処理と並行して行われる処理である。例えば撮像装置であれば、レリーズボタンSW1が押されたときが「合図」となり、これを契機に位置情報を記録する処理が行われる。
図4のフローチャートを用いて、位置情報記録処理の例について説明をする。本発明に係る位置情報の記録方法はこれに限られるものではないが、図4に示す位置情報記録処理は、撮像装置1(図1、図2参照)を用いて、撮影した画像の記録を行うと同時に撮影場所の位置情報を記録する処理を例として用いている。
まず、位置情報の記録の合図であり、撮影のトリガーであるレリーズボタンSW1の所定の操作(押下など)が検出されると(S6のYes)、撮像処理が行われる(S7)。レリーズボタンSW1の所定の操作(レリーズ)が検出されるまで処理はループする(S6のNo)。
【0041】
撮像処理(S7)は、撮像光学系を構成するズームレンズやフォーカスレンズを含む鏡胴ユニット2(図1)を介して取得した被写体像を、撮像部12(図2)によって所定の画像処理が行われて画像データが生成される処理である。生成された画像データは表示部20に表示され、画像ファイルとしてFlashメモリ18または外部記憶部19に記録される。
【0042】
次に、測位情報がすでに算出されているか否かを判定する(S8)。この判定処理(S8)は、Flashメモリ18に測位情報が記録されているか否かで判定すればよい。測位情報がまだ算出されていなければ(S8の無し)、相対位置情報記録処理(S9)が行われる。
測位情報がすでに算出されていれば(S8の有り)、測位情報格納処理(S10)が行われる。
【0043】
測位情報格納処理は、撮像処理(S7)で生成された画像ファイルのEXIFヘッダーに測位情報をジオタグ形式で格納する処理である。
【0044】
次に、相対位置情報記録処理(S9)の詳細な処理の流れの例について図5のフローチャートを用いて説明をする。
まず、すでに相対位置情報が記録されているか否かを判定する(S91)、相対位置情報がまだ記録されていなければ(S91の無し)、現地点(撮影された場所)の位置を基準相対位置として、Flashメモリ18に記録する(S93)。
相対位置情報がすでに記録されていれば(S91の有り)、記録されている相対位置情報のうち、最も新しいタイミングで記録されている相対位置情報と、現地点まで記録されている移動軌跡情報(図6)を用いて、現地点の相対位置情報を算出する(S92)。
次に、算出した相対位置情報または基準となる相対位置情報を、撮像処理(S7)によって生成された画像ファイルと関連づけてFlashメモリ18に記録する(S94)。画像ファイルは、EXIF規格に則ったファイルフォーマットを有しているので、ヘッダーファイルのメーカーノート欄に相対位置情報を格納することで、当該画像ファイルと相対位置情報を関連づけて記録することができる。
また、相対位置情報記録処理(S94)の他に、相対位置情報確認処理(S3)における判定が容易に行えるように、RAM17に「相対位置情報あり」を示す所定のフラグ情報を記録する処理を行ってもよい。
【0045】
ここで、相対位置情報算出処理(S92)の詳細について説明する。図9は、相対位置情報の算出に用いる移動軌跡情報のイメージを示す図である。
図9は、移動軌跡情報を線901によって表現している。装置の電源が投入され、測位情報の算出可能状態になる前に、合図が検出され(図4のS6)、かつ、相対位置情報がまだ一つも記録されていないときは(S91の「無し」)、そのときの地点を基準点902として記録する。基準点の相対位置情報は(0,0,0)とする。
【0046】
次に合図が検出されたとき(図4のS6)、まだ測位情報が算出されていなければ、このときの位置に係る相対位置情報903(撮影1)を記録する。
相対位置情報903は、基準点902が記録された後に算出された移動軌跡情報に基づいて、X、Y、Zぞれぞれの基準点902からの距離を相対位置情報903(X1、Y1、Z1)として、記録すればよい(図5のS94)。
さらに、次に合図が検出されたとき(図4のS6)、まだ測位情報が算出されていなければ、このときの位置に係る相対位置情報903(撮影2)を、一つ前の相対基準情報903(撮影1)から算出された移動軌跡情報に基づいて、相対位置情報903(X2、Y2、Z2)を算出し、これを当該地点の相対位置情報として記録すればよい(S94)。
図9は、さらに次の合図によって相対位置情報903(X3、Y3、Z3)までが記録された状態を示している。
このように、相対位置情報算出処理(S92)は基準となる相対位置(0,0,0)からの移動軌跡情報に基づいて、基準となる相対位置からの距離をその座標情報として算出する。
【0047】
次に相対位置情報変換処理(図3のS4)の詳細な処理について、図9のイメージ図を用いて説明する。すでに説明をしたとおり、図9においては撮影3の地点から以降も、しばらくは測位情報が算出されていない。
その後、測位情報が算出された地点をFIX904とする。撮影3(X3、Y3、Z3)からFIX904までの移動軌跡情報に基づいて、FIX904の測位情報に、移動軌跡情報を合わせて撮影3の地点の測位情報を算出する。これを変換位置情報とする。
図9に示すように、相対位置情報は基準点も含めてあと3つあるので、これらすべての相対位置情報に対して、FIX904における測位情報に対して、移動軌跡情報を合わせて、各地点の測位情報を算出する。
このように、測位情報が算出できた時点でそこまでに記録されている相対位置情報の記録時間が新しいものから順番に遡って変換処理を行えばよい。
言い換えると、FIX904を測位情報の基準位置と仮定して、それまで相対的に算出されていた位置情報を、測位情報に基づく変換を行う処理が相対位置情報変換処理(S4)である。
【0048】
このように、算出された変換位置情報は、その元となる相対位置情報に対応する画像データのEXIFヘッダーにジオタグとして格納される(S5)。このとき、変換位置情報であることを示す情報を、EXIFヘッダーのメーカーノート欄に格納すればよい。
【0049】
以上、本実施の形態にかかる位置情報記録装置によれば、電波による正確な測位ができたときは、仮想的に設定する基準位置からの移動軌跡によって、相対的な位置情報を記録しておき、測位情報が算出されたときに、それまでの軌跡情報と測位情報に基づいて相対的な位置情報を測位に基づく位置情報に変換して記録しなおすことができる。
これによって、電波の届かないトンネルの中や地下、または、起動開始直後で測位情報の算出ができないときであっても、より正確な位置情報の記録ができるようになる。
これを撮像装置に搭載することで、電波状況によらず、撮影した場所の位置情報を正確に記録することができ、測位情報の算出を待つことなく撮影をすることもできるようになる。
【0050】
次に、本発明に係る撮像装置の別の実施の形態の例について説明をする。図7は、本実施の形態に係る位置情報記録方法の別の例を示すフローチャートである。
すでに説明をした実施形態にかかる位置情報記録方法と同じ処理には、同じ符号を付している。
本実施例は、測位情報の算出ができる状態であったのちに、電波の受信状況等が変化して、正確な測位情報が算出できる状態ではなくなったとき、電波の受信状況が不良な間だけ相対位置情報を記録し、再度、正確な測位情報の算出ができる状態になったときに、それまで記録された相対位置情報を測位情報に変換する際の処理を軽減することができるものである。
【0051】
電源が投入されて装置の動作が開始されると、位置情報算出部16の初期化処理が行われて、電波の受信を開始する。電波が十分に受信されれば測位情報が所定の時間間隔で算出され、Flashメモリ18に順次記録される(S1)。
その後、衛星から電波の受信状態が良好であれば、測位情報が算出されて(S1のYes)、相対位置情報がなければ、測位情報を繰り返し算出する(S3の無し)。
【0052】
測位情報が算出できる状態になっていないときは(S1のNo)、移動軌跡情報算出処理(S2)を開始する前に、以前に測位情報が算出されていたか否かを判定する(S11)。これによって、現時点の状態が、電波状況の悪化によって測位情報が算出できなくなったものであるか、当該装置の起動開始時であるかが判定される。
過去において、測位情報が算出されていなければ(S11の無し)、移動軌跡情報算出処理(S2)を開始して、処理を繰り返す。
過去において、測位情報が算出されていれば(S11の有り)、すでにタイマーが稼働中であるか否かを判定し(S12)、タイマーが稼働していなければ、タイマーをスタートさせてから(S13)移動軌跡情報記録処理(S2)を開始する。
ここでS13にて稼働させるタイマーとは、測位情報が算出できない状態の時間を計測するためのものである。
【0053】
処理がS1に戻って、測位情報が算出可能になっていれば(S1のYes)それまでタイマーが稼働しているか否かを判定し(S14)、稼働中のタイマーを停止してから(S15)、相対位置情報確認処理(S3)に移行する。
【0054】
次に、タイマーが稼働している間に相対位置情報が記録されていた場合の相対位置情報変換処理(S4a)の詳細について図8のフローチャートを用いて説明する。
測位情報が算出される状態になるまでに相対位置情報が記録されていたとき(図7のS3の有り)、まずタイマーが稼働していたか否かを判定する(S41)。
タイマーが稼働していなければ(S41のNo)、最新の測位情報に基づく位置情報変換処理を行う(S43)。S43の変換処理はすでに説明をした実施形態に係る相対位置情報変換処理(S4)と同じ処理である。
【0055】
タイマーが稼働していたならば(S41のYes)、タイマー稼働時間の半分(1/2)に相当するまでの間に相対位置情報が記録されていたか否かを判定する(S42)。
タイマー稼働時間の半分に相当するときまでの間に、相対位置情報が記録されていなければ(S42のNo)、最新の測位情報に基づいて相対位置情報を測位情報に変換する処理を行う(S43)。
タイマー稼働時間の半分に相当するときまでの間に、相対位置情報が記録されていたならば(S42のYes)、記録されている相対位置情報のうち、タイマー稼働時間の半分を過ぎてから記録された相対位置情報に対しては、最新の測位情報に基づく変換処理を行う(S45)
続いて、記録されている相対位置情報のうち、タイマー稼働時間の半分より以前に記録された相対位置情報に対しては、測位不能になる直前の測位情報に基づいて、相対位置情報から測位情報への変換処理を行う(S46)。
【0056】
本実施例においては、相対位置情報を測位情報に変換する処理に用いる測位情報を「最新のもの」とするか「測位不能になる直前の測位情報」とするかの判定基準に、「タイマー稼働時間の半分に相当するとき」を例示して説明していた。しかし、本実施において、判定基準をこれに限ることはない。タイマー稼働時間(計時手段によって計測された時間)における「所定の時点」を判定基準とすることで、本実施と同等の効果を得ることができる。
例えば、最新の測位情報の精度(補足衛星数で判定すればよい)と、直前の測位情報の精度が所定の基準を超え、かつ、同等の精度であるもの同士の取得時間差を「タイマー稼働時間」として、この取得時間差の半分の時点を「所定の時点」としてもよい。
【0057】
また、最新の測位情報を算出したときの補足衛星数と、直前の測位情報を算出したときの補足衛星数が異なるときは、補足衛星数の差に応じて「所定の時点」を決定してもよい。例えば、補足衛星数の比率に応じて、上記変換処理(S46)の対象となる相対位置情報の数を決定すればよい。つまり、補足衛星数が多い測位情報を用いた変換処理をより多く行うようにすればよい。これによって、より精度よく変換処理(S46)を行うことができる。
【0058】
S45とS46にて、相対位置情報の記録タイミングによって異なる変換処理を行う理由について説明する。
すでに説明をしたとおり相対位置情報から測位情報への変換処理は、通常は、最新の測位情報を元にして、時系列をさかのぼって、それぞれの相対位置情報を測位情報に変換している。一度は測位情報が算出された後に相対位置情報が記録されたのであれば、その相対位置情報のうち、最も古いものは、測位情報が算出されていたときの比較的後であって、最新の測位情報に基づいて変換処理をするよりも、過去において算出されていた相対位置情報に基づいて変換処理を行う方が、より精度が高くなる。
【0059】
よって、本実施形態にて説明したように、タイマーが稼働された後に相対位置情報変換処理(S4a)を行うのであれば、タイマー時間の半分より以前の相対位置情報に対しては、以前算出されていた測位情報のうち最も最近の測位情報を用いて変換処理を行い、タイマー時間の半分より以後の相対位置情報に対しては、最新の測位情報を用いて変換処理を行えばよい。
上記の処理を全ての相対位置情報に対して行う(S44)。
【0060】
以上、本実施例に係る位置情報記録方法によれば、電波状況の変化が生じて測位情報が算出できないときであっても、その後に算出された測位情報と、それ以前に算出されていた測位情報によって、相対位置情報をより正確な測位情報に変換することができるようになる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明に係る位置情報記録装置は、撮像装置に搭載する以外に、ハンディタイプのナビゲーション装置に適用することもできる。
【符号の説明】
【0062】
11 演算部
13 加速度検出部
14 角速度検出部
15 地磁気検出部
16 位置情報算出部
17 RAM
16 Flashメモリ
19 外部記録部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0063】
【特許文献1】特許第4312566号公報
【非特許文献】
【0064】
【非特許文献1】JEITA CP−3451A ディジタルスチルカメラ用画像ファイルフォーマット規格Exif2.21統合版 2009年9月改定(社団法人 電子情報技術産業協会発行)
【技術分野】
【0001】
本発明は、受信した電波(無線信号)に基づいて現地点を測位し、位置情報を記録する位置情報記録装置に関するものであって、電波の受信ができない状態にあっても相対的な位置情報を記録することができ、電波を受信できるようになったとき(測位可能な状態になったとき)、それまでに記録された相対的な位置情報を、電波に基づく測位によって得られる位置情報と同等の精度の位置情報に変換して記録しなおすことができる位置情報記録装置、位置情報記録方法および同装置を備える撮像装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電波を受信し、この電波に基づいて現地点の地理的位置を測位して位置情報を算出し記録することができる位置情報記録装置は、複数の衛星からの電波を用いて測位するGNSS(Global Navigation Satellite System)を利用することが多い。GNSSを利用したシステムとしては、カーナビゲーションなどの車載型装置に限らず、近年では、携帯型装置や携帯電話に同装置を組み込んだものなどが知られている。
さらに、デジタルカメラ等の撮像装置にもGNSSが搭載されたものがある。このような撮像装置では、撮影した画像データに撮影地点の地理的な位置情報を格納して記録することができる。GNSSによる測位システムの中でも、GPSが著名である。
また、衛星からの電波ではなく道路構造物に無線信号出力装置を配置し、これによる無線信号を用いて現地点の位置を測位するシステムも知られている。
これらに共通する要素は「電波を受信することで測位する」ことである。
【0003】
GNSSにおいて位置情報を算出するには、複数の衛星からの電波が受信できる状態になければならない。よって、電波の受信状況が不良な地点では、測位することができない。例えば、トンネルの中や地下では、十分に電波を受信することができないので、測位することができない。これはGNSSに限らず電波を用いて測位するシステムでは共通の課題である。
【0004】
自動車等に搭載されるナビゲーションシステムは、電波受信状況が不良なときであっても、それまでに測位された位置情報を元にして、加速度センサや角速度センサを併用して、直前の測位点からの移動方向と移動距離を算出して、現地点の位置情報を推定することができるものがある。
ナビゲーションシステムは、推定された位置情報が多少誤差を含むものであっても、電波受信状況が安定したときに、正確な位置情報によって現地点の位置情報を修正すればよいので、推定された位置情報を記録し保存しておく要求はない。
【0005】
一方、デジタルカメラ等の撮像装置は、撮影地点の位置情報を撮影された画像データと共に記録する要求がある。よって、電波状態が不良な場所であっても、その地点の位置情報を記録しておく必要がある。また、推定された位置情報が記録されたときは、電波状態が良好になったときに正確な位置情報へ変換できることが望ましい。
つまり、撮像装置のように位置情報を記録して活用する装置に搭載する位置情報記録装置においては、電波状況が不良なときの位置情報を推定することができること、電波状況が良好になったときには推定されていた位置情報をより正確な位置情報に変換できることが望まれている。
【0006】
画像データと位置情報を関連づけて記録する規格として電子規格情報産業協会が2009年9月に改定した「ディジタルスチルカメラ用画像ファイルフォーマット規格Exif2.21(以下、「EXIF規格」という。)」が知られている(例えば「非特許文献1」を参照)。
EXIF規格において格納される位置情報は「ジオタグ」と呼ばれている。ジオタグは、撮像装置に搭載されたGNSSによって算出された位置情報を緯度、経度、高度の組み合わせで表され、これが画像ファイルのヘッダー部分に格納される。
【0007】
以上述べたような技術的課題、すなわち、携帯して用いることを前提とした撮像装置のようなものに搭載される位置情報記録装置において、電波の受信状況が不良なときに記録された位置情報を正確な位置情報に変換できる方法等を工夫するという課題を解決することを目的とした先行技術文献は見つからなかったが、本発明に関連のある先行技術文献として特許文献1を挙げることができる。特許文献1記載の発明は、撮影モードに応じて撮像手段が有する受光面の基準方向の地理的な方位を検出する方位検出手段を備える撮像装置であって、撮像データと方位情報を関連づけて記録することができるものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
撮像装置など携帯して利用する装置において、電波受信状況が不良であるときに相対的な位置情報を代用として記録することができたとしても、その後において、正確な位置情報(測位による位置情報)に変換することができなければ、相対的な位置情報を記録しても、不正確な位置情報を記録することになり、利用者にとって不便である。
また、GNSSは当該装置を起動させてから位置情報を算出できる状態になるまで、すなわち、複数の電波を受信して測位可能状態になるまで、数十秒のタイムラグが生じる。
これは、地理的な位置(緯度、経度、高度)を精度よく算出するために所定の数の電波が正常に受信できていることを確認する処理や、受信した電波によって現地点を算出する処理に時間を要するからである。
つまり、撮影装置にあっては、電源が投入されて撮影できる状態になっていても、搭載されているGNSSの初期化処理が完了しなければ、位置情報を記録することができない。画像データと合わせて位置情報も記録したければ、GNSSが完全に起動して測位可能な状態になるまで、撮影を待たなければならない。
【0009】
本発明は上記課題を鑑みてなされたものであって、電波を受信することができない状態においては、相対的な位置情報を記録しておき、電波を受信できるようになったときに、それまで記録された相対的な位置情報を測位によって得られる位置情報に変換して記録しなおすことができる位置情報記録装置、位置情報記録方法および同装置を備える撮像装置を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、位置情報記録装置であって、無線信号を受信する受信手段と、測位情報を記録する合図を発する操作手段と、無線信号に基づいて地理的位置を測位し当該位置に係る測位情報を算出する位置情報算出手段と、算出された測位情報を記録する測位情報記録手段と、を有し、 基準となる位置からの方向と移動距離からなる変位情報を算出する移動軌跡情報算出手段と、を有し、合図が発せられたとき、測位情報が得られていないときには変位情報によって基準となる位置からの相対的な位置に係る相対位置情報を算出し、合図に係る情報と関連づけて記録する相対位置情報記録手段と、測位情報が得られたとき、相対位置情報記録手段にすでに記録されている相対位置情報を測位情報に変換する位置情報変換手段と、を有することを主な特徴とする。
【0011】
また本発明に係る位置情報記録装置の他の形態は、基準位置からの移動方向を検出する加速度検出手段と、基準となる方位を検出する地磁気検出手段と、をさらに有し、移動軌跡情報算出手段が、加速度検出手段が検出する移動方向と地磁気検出手段が検出する基準となる方位に基づいて変位情報を算出する、ことを特徴とする。
【0012】
また本発明に係る位置情報記録装置のさらに他の形態は、無線信号に基づく測位ができなかった時間を計測する計時手段をさらに有し、位置情報変換手段が、相対位置情報記録手段が記録した各相対位置情報のうち、計測された時間の所定の時点より後に記録されている相対位置情報に対しては最新の測位情報に基づいて変換を行い、計測された時間の所定の時点より前に記録されている相対位置情報に対しては測位ができなくなる直前に測位されていた測位情報に基づいて変換を行う、ことを特徴とする。
【0013】
また本発明は、上記の位置情報記録装置を備えた撮像装置に係るものであって、被写体を表す光学像を、撮像光学系と撮像素子を介して取得し画像データに変換する撮像手段と、撮像手段にて変換された画像データを記憶する画像記憶手段と、を有し、操作手段はレリーズボタンであり、記合図によって撮像手段も動作して取得された画像データに測位情報または相対位置情報を関連づけて記録する、ことを特徴とする。
【0014】
また本発明は、上記の位置情報記録装置を用いた位置情報記録方法であって、受信手段が無線信号を受信するステップと、測位情報を記録する合図を検知するステップと、合図が発せられたときに無線信号に基づいて地理的位置を測位して測位情報を算出できるか否か判定するステップと、測位情報の算出ができないと判定されたときに、移動軌跡情報算出手段が、基準となる位置からの方向と移動距離からなる変位情報の算出を開始するステップと、合図が発せられたとき、測位情報がが算出されていないときには変位情報によって基準となる位置からの相対的な位置に係る相対位置情報を算出するステップと、算出された相対位置情報を合図に係る情報と関連づけて記録するステップと、測位情報が算出されたとき、相対位置情報記録手段にすでに記録されている相対位置情報を測位情報に変換するステップと、を実行することを特徴とする。
【0015】
また本発明に係る位置情報記録方法の他の形態は、地磁気検出手段が、基準となる方位を検出するステップと、移動軌跡情報算出手段が、加速度検出手段の出力に基づいて傾きを特定するステップと、加速度検出手段の出力と地磁気検出手段の検出結果に基づいて移動方向を特定するステップ、加速度検出手段の出力に基づいて移動速度を算出するステップと、傾き、移動方向、速度に基づいて基準となる位置からの変位量を算出するステップと、を実行することを特徴とする。
【0016】
また本発明に係る位置情報記録方法のさらに他の形態は、位置情報変換手段が、計測された時間の所定の時点よりも前に相対位置情報が記録されているか否かを判定するステップと、所定の時点よりも前に相対位置情報が記録されているときは、相対位置情報記録手段が記録した各相対位置情報のうち所定の時点より後に記録されている相対位置情報に対しては、最新の測位情報を用いて相対位置情報を測位情報に変換するステップと、相対位置情報記録手段が記録した各相対位置情報のうち、所定の時点より前に記録されている相対位置情報に対しては、測位ができなくなる直前に測位されていた測位情報を用いて、相対位置情報を測位情報に変換するステップと、を実行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、電波受信状況が良好であれば、電波による測位で得られる正確な位置情報を記録し、電波受信状況が不良なとき、または、装置の初期化などによって測位が不能なときは、基準となる位置(例えば、電波による測位で得られた最後の位置情報)からの相対的な移動量(変位量)によって算出できる相対位置情報を記録しておき、その後、電波による測位が可能になったときに、それまで記録されていた相対位置情報を測位で得られる正確な位置情報と同等の位置情報に変換することができる。これによって、電波受信状態に関わらず正確な位置情報を記録することができるようになる。
また、撮像装置に本発明を搭載することで、電波が受信できない地下や、起動開始直後に撮影した画像データに対しても、正確な位置情報を関連づけて格納することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る位置情報記録装置を搭載した撮像装置の例を示す正面図である。
【図2】上記撮像装置に用いられる制御系統の例を示す機能ブロック図である。
【図3】本発明に係る位置情報記録装置が実行する位置情報算出処理の例を示すフローチャートである。
【図4】本発明に係る位置情報記録装置が実行する位置情報記録処理の例を示すフローチャートである。
【図5】本発明に係る位置情報記録装置が実行する相対位置情報記録処理の例を示すフローチャートである。
【図6】本発明に係る位置情報記録装置が実行する移動軌跡情報記録処理の例を示すフローチャートである。
【図7】本発明に係る位置情報記録装置が実行する位置情報算出処理の別の例を示すフローチャートである。
【図8】本発明に係る位置情報記録装置が実行する相対位置情報記録処理の別の例を示すフローチャートである。
【図9】本発明に係る位置情報記録装置において相対位置情報の算出に用いる移動軌跡情報の例を示す模式図である。
【図10】本発明に係る位置情報記録装置が備える加速度検出部の出力信号の概要を示す模式図である。
【図11】本発明に係る位置情報記録装置が備える加速度検出部の出力から傾きを特定する原理を示す模式図である。
【図12】本発明に係る位置情報記録装置が備える地磁気検出部の出力から傾きを特定する原理を示す模式図である。
【図13】本発明に係る位置情報記録装置が備える加速度検出部の出力信号の経時変化の例を示す模式図である。
【図14】本発明に係る位置情報記録装置が備える加速度検出部の出力信号から平均加速度を算出する例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る位置情報記録装置、位置情報記録方法および同装置を備える撮像装置の実施の形態について図面を用いながら説明する。
本発明に係る位置情報記録装置は、撮像装置に搭載されるものに限らないが、本明細書においては、本発明に係る位置情報記録装置が撮像装置に搭載される実施形態を例に用いて説明をする。
【0020】
図1は、本発明に係る位置情報記録装置を備えた撮像装置の外観の例を示す正面図である。図1において撮像装置1は、正面にズームレンズやフォーカスレンズを含む鏡胴ユニット2を備えており、また、ストロボ発光部3、被写体までの距離を測定する測距ユニット4、光学ファインダ5を備えている。撮像装置1の上面には、シャッタースイッチであるレリーズボタンSW1、撮影モードを選択するためのモードダイヤルSW2とジョグダイヤルスイッチSW3が配置されている。
また、測位に用いる複数の電波を受信するアンテナ6が撮像装置1の匡体上面部に内蔵されている。アンテナ6は、電波を受けやすい位置であれば、これに限ることはない。
【0021】
次に、図2を用いて撮像装置1の機能ブロックの例について説明する。図2に示すように撮像装置1は、装置全体の動作を制御するプロセッサである演算部11と各処理部をつなぐデータバス22によって構成されている。
撮像装置1は、撮像光学系を介して取得した被写体像を画像データに変換し画像ファイルを生成する撮像部12、画像データや操作メニューを表示する表示部20、レリーズボタンSW1やモードダイヤルSW2の入力を検出する操作部21、画像ファイルを記録する外部記憶部19を主な構成とする。さらに、加速度センサを備える加速度検出部13、角速度センサを備える角速度検出部14、地磁気センサを備える地磁気検出部15、アンテナ6によって受信した複数の電波から現地点を測位し、位置情報を算出するGNSSを備える位置情報算出部16、を有してなる。
また、演算部11における各種の演算処理を行うときにワークエリアとして用いられ、また、演算処理の結果を一時的に記憶する記憶領域として用いられるRAM17、画像データの記憶・保存、測位によって得られた位置情報、相対位置情報、後述する移動軌跡情報を記録するFlashメモリ18を備えている。
【0022】
演算部11は、加速度検出部13、角速度検出部14、地磁気検出部15からの出力によって、当該装置の移動経路を算出する演算を行う。この移動経路に係る情報を移動軌跡情報とする。移動軌跡情報に基づいて相対位置情報が算出される。
また、演算部11は、操作部21からの所定の入力(合図)によって、移動軌跡情報に基づいて相対位置情報を算出し、Flashメモリ18に記録する。
位置情報検出部16は、図示しないアンテナを介して受信した電波(無線信号)から現地点の地理的位置を測位し、これに係る位置情報(測位情報)を算出する。算出された測位情報はFlashメモリ18に記録される。
演算部11、加速度検出部13、角速度検出部14、地磁気検出部15、位置情報検出部16、RAM17、Flashメモリ18、外部記憶部19によって、本発明に係る位置情報記録装置が構成される。
【0023】
次に、本発明に係る位置情報記録装置における位置情報記録方法の例について、撮像装置の実施形態の例とともにフローチャートを用いて説明をする。各フローチャートにおいて処理のステップを、(S1)、(S2)、・・・のように表記している。
【0024】
まず、本発明に係る位置情報記録方法の実施形態の例について、図3のフローチャートを用いて説明する。
電源が投入されて装置(例えば撮像装置)の動作が開始すると、位置情報算出部16の初期化処理が行われて、電波の受信を開始する。電波が十分に受信されるまで、若干のタイムラグがあるので、起動直後からしばらくの間は、測位不能である(S1のNo)。しばらく時間が経過すると測位可能な状態になるので、所定の時間間隔をもって測位情報が算出されてFlashメモリ18に順次記録される(S1)。
【0025】
測位情報算出処理(S1)は、衛星から受信した電波に基づいて現在地の地理的位置を特定する測位情報を算出する演算処理であって、測位情報が算出できる状態であるか否かの判定処理を含む。よって、測位情報が算出できる状態になっていないときは(S1のNo)、移動軌跡情報算出処理(S2)を開始して、測位情報が算出できるようになるまで移動軌跡情報を算出しつづける。移動情報算出処理(S2)の詳細な説明は後述する。
「測位情報が算出可能な状態」とは、所定の数の衛星からの電波が正常に受信されている状態をいう。所定の衛星の数とは例えば4である。4つの衛星からの電波を正常に受信するとき、緯度と経度と高度からなる測位情報を算出することができる。
測位情報の形式は例えば緯度(Gx)、経度(Gy)、高度(Gz)を所定の単位の数値で表して(Gx、Gy、Gz)のように表すことができ、この測位情報はFlashメモリ18に記録されるとき、また、画像ファイルのヘッダー情報に格納されるときも、この形式によればよい。
【0026】
測位情報が算出可能な状態になったとき(S1の測位可能)、測位不能な間に相対位置情報が記録された否かを判定し(S3)、相対位置情報が記録されていなければ(S3の無し)処理をS1に戻す。
つまり、測位情報が算出可能な状態であって、相対位置情報が記録されていなければ、測位情報は繰り返して算出されてFlashメモリ18に記録される。
【0027】
測位情報が算出可能な状態になったとき(S1のYes)、測位ができなかった間に記録された相対位置情報が記録されていれば(S3の有り)、記録されている相対位置情報を測位情報に変換する処理を行う(S4)。変換された測位情報(変換位置情報)は、所定の記録領域に格納される(S5)。装置の電源が切られるまで、上記の処理が繰り返される。
【0028】
ここで、移動軌跡情報算出処理(S2)の詳細な処理の流れの例について、図6のフローチャートを用いて説明する。移動軌跡情報算出処理(S2)が開始されるとまず、傾き特定処理(S21)が行われる。
傾き特定処理(S21)は、本発明に係る位置情報記録装置が、どのような姿勢で移動しているのかを特定する処理である。例えば、撮像装置の場合、移動時の匡体の姿勢は水平状態が維持されているとは限らず、むしろ、様々な姿勢で移動することの方が多い。
移動軌跡情報は、相対位置情報の算出に用いる情報であるから、当該装置がいかなる方向に向かって移動しているのかをきちんと把握した上で算出する必要がある。
そのためには、加速度検出部13及び角速度検出部14の向き(傾き)を特定する必要がある。
傾きを特定することで、加速度検出部13の出力に基づいて当該装置の移動方向と移動量からなる変位量を算出することができる。
【0029】
図10は、加速度検出部13から出力される信号のイメージを示す。緯度方向に対応するX軸、経度方向に対応するY軸、高度方向に対応するZ軸の、それぞれの出力をGx、Gy、Gzで表している。軸の交点を基準点とし、各軸方向の出力の合成が加速度(Xg、Yg、Zg)として出力される。
【0030】
図11は、傾き特定処理(S21)において、加速度検出部13の出力データから傾きを特定する方法の例を示す。図11において、当該装置の匡体の垂直方向の軸と水平方向の軸に比べて、加速度検出部13から出力される加速度(Xg、Yg、Zg)は、θgだけ傾きを有している。この傾き角θgは、Z軸とX軸−Y軸平面(Gx−Gy平面)のズレ角と等しい。重力加速度Gは常に垂直方向に作用しているので、加速度検出部13のZ軸出力(Zg)と重力加速度Gを用いることで傾き角度θgを算出することができる。傾き角度θgと重力加速度GおよびZ軸出力の間には、Sinθg=Zg/Gの関係が成り立つ。
【0031】
地磁気検出部15の出力によるX軸の傾きを特定する方法を図12に示す。地磁気検出部15は北(North)を検出する。通常は北を基準となる方位とする。地磁気検出部12が検出する「基準となる方位」を用いることで、図12に示すように、Y軸が北(North)からどのくらい傾いているか(図12に示すθc)を算出することができる。X軸−Y軸平面(Gx−Gy平面)と加速度検出部13のX軸のズレ角(傾き)は、当該装置のY軸が北からどのくらいずれているかに等しい。
当該装置のY軸が基準となる方位(北)に向いているときは地磁気検出部15の出力は0度であって、当該装置のY軸が東に向いている(当該装置が横向きに倒れている)ときは、地磁気検出部15の出力は90度となる。
【0032】
このように、加速度検出部13の出力と地磁気検出部15の出力によって、上記のθgとθcを算出することができ、この傾き角θgおよびθcによって、加速度検出部13の3次元ベクトル情報(Xg,Yg,Zg)を、垂直・水平基準(North基準)のベクトル情報に変換することができる。
このベクトル変換処理は、最初に、垂直−水平成分に分解して、次に、水平成分をEast成分(X成分)、North成分(Y成分)に分解することで行うことができる。
このように、加速度検出部13と地磁気検出部15の出力によって当該装置の傾きを特定することができる。
【0033】
傾きが特定されると移動方向が特定できるので、次に移動速度を算出する処理が行われる(S22)。
ここで、本発明に係る位置情報記録装置および撮像装置のように、携帯される装置における移動速度の算出には、注意すべき点があるので、それを説明する。
当該装置が全く移動せずに静止しているときであっても、加速度検出部13は重力加速度Gを出力している。
したがって、速度の算出に用いる時間から重力加速度Gのみが出力されている時間を除く必要がある。そのためには、加速度検出部13の出力が重力加速度Gと等しいとき、静止しているのか、移動しているが等速運動をしているのか、いずれの状態であるかを判定しなければならない。
図13に加速度検出部13から出力される信号のイメージを示す。図13において、縦軸は出力の大きさ、すなわち、加速度の大きさを示している。横軸は時間を示している。図13に示すように、加速度検出部13の各軸の加速度(Xg、Yg、Zg)は、時間とともに変化している。
【0034】
地球上で生活しているかぎりはおいて、人や乗り物の移動が長時間にわたって等加速度運動が続く事は現実的に起こり得ない。移動しているならば、3軸のいずれかに重力加速度Gとは異なる加速度が出力されている。よって、3軸の加速度の出力変位がすべて一定時間以上、変化していないときを(同じ加速度が3軸全てにおいて出力されているとき)静止状態として判定し、この間を移動軌跡情報の算出から除けばよい。
図13においては、矩形130で囲んだ範囲の加速度は3軸ともに変換せず一定二なっている。よって、この間は静止していたと判定することができる。後述する速度算出処理において、この間の時間数を除いて速度算出処理(S22)を行えばよい。
【0035】
ただし、この方法だけでは誤差が大きくなる可能性もあるため、より精度よく移動軌跡情報を算出するためには、角速度検出部14の出力信号を併用し、角速度検出部14の出力信号を用いて傾きを特定すればよい。角速度検出部14を併用する場合は、上記方法ではなく、角速度検出部14の出力が一定時間以上0のとき、静止状態と判断すればよい。実際には静止状態であっても角速度検出部14が備える角速度センサはノイズを出力するので、角速度検出部14の出力が一定レベル以下の時に静止状態と判定すればよい。
【0036】
上記を踏まえて速度算出処理(S22)の説明をする。すでに説明をした方法を用いて、当該装置が静止状態であるか否かを判定し、加速度検出部13から出力されるX、Y、Z方向の加速度から、移動速度の算出に用いるデータを選別する。
加速度検出部13は、任意の時間間隔(周期)をもってデータを出力する。よって、加速度検出部13から出力されたデータに基づいて、上記図11、12、13を用いて説明した演算処理をNorth方向(X軸)、East方向(Y軸)、天頂方向(Z軸)の3軸それぞれにおいて行なえばよい。
よって、加速度検出部13の出力周期は短い方が誤差は小さく、より精度が高い移動軌跡情報を算出することができる。しかし、周期が短くなると演算処理の負荷が高くなり他の演算処理の妨げになり、消費電力が増大することになる。よって、加速度検出部13の出力信号の変位パターン(図13に例示)から、移動形態を分析し、徒歩による移動であるのか、自動車による移動であるのか、電車による移動であるのかを分析し、各移動形態に適した算出間隔を選定できるようにすれば良い。
【0037】
また、速度算出処理(S22)の都度、それまでの加速度検出部13の出力信号をまとめて積分演算をすると、演算負荷が高くなり、消費電力や他の演算処理の妨げになるため、速度演算処理がオーバーフローしない程度の時間間隔で予め加速度検出部13の出力を積分しておき、その間の平均の加速度を算出しておくとよい。
図14に平均加速度を算出するイメージを示す。図14において、縦軸は3軸それぞれの加速度を示し、横軸は時間を示している。基準点Sから任意の時点140までの平均加速度は、この間の加速度を積分することで算出することができる。よって、基準点Sから任意の時点140までの経過時間が長いと、積分処理がオーバーフローしたり、積分処理の演算負荷が高くなりすぎたり、不具合が生じる可能性がある。
そこで、任意の時点140(例えば撮影処理のタイミング)までに、所定の時間間隔で平均加速度を算出しておき、時点140においては、各区間の平均加速度を合算して平均を算出し、全行程の平均加速度を算出すればよい。
【0038】
このように、X軸、Y軸、Z軸のそれぞれにおける任意のポイントまでの平均加速度Aを算出したのちに、任意の時点140までの経過時間をt、前回の速度算出処理にて算出された速度をCとすると、時点140における速度VはV=At+C(式1)で算出することができる。
このようにして、式1を用いて、X軸、Y軸、Z軸それぞれにおける速度を算出する(S22)。
【0039】
次に、変位量算出処理(S23)を行う。変位量とは基準となる相対位置(0,0,0)から任意の時点140までのX軸、Y軸、Z軸方向のそれぞれの距離である。
速度算出処理(S22)にて算出されたX軸、Y軸、Z軸の速度(Vx、Vy、Vz)から、X軸、Y軸、Z軸方向のそれぞれの距離である変位量(Px、Py、Pz)を算出することができる。
すなわち、P=(A/2)*t2+Ct+C´(式2)によって算出することができる。式2において、Aは時点140における平均加速度、tは基準位置から時点140までの経過時間、Cは前回の速度算出処理(S22)で算出された速度、C´は前回の変位量算出処理で算出された変位量である。
式2によって、変位量(Px、Py、Pz)を算出し、これを移動軌跡情報としてFrashメモリ18に記録しておく。
【0040】
次に所定の合図によって位置情報を記録する処理について説明をする。この処理は、図1に示した位置情報を算出する処理と並行して行われる処理である。例えば撮像装置であれば、レリーズボタンSW1が押されたときが「合図」となり、これを契機に位置情報を記録する処理が行われる。
図4のフローチャートを用いて、位置情報記録処理の例について説明をする。本発明に係る位置情報の記録方法はこれに限られるものではないが、図4に示す位置情報記録処理は、撮像装置1(図1、図2参照)を用いて、撮影した画像の記録を行うと同時に撮影場所の位置情報を記録する処理を例として用いている。
まず、位置情報の記録の合図であり、撮影のトリガーであるレリーズボタンSW1の所定の操作(押下など)が検出されると(S6のYes)、撮像処理が行われる(S7)。レリーズボタンSW1の所定の操作(レリーズ)が検出されるまで処理はループする(S6のNo)。
【0041】
撮像処理(S7)は、撮像光学系を構成するズームレンズやフォーカスレンズを含む鏡胴ユニット2(図1)を介して取得した被写体像を、撮像部12(図2)によって所定の画像処理が行われて画像データが生成される処理である。生成された画像データは表示部20に表示され、画像ファイルとしてFlashメモリ18または外部記憶部19に記録される。
【0042】
次に、測位情報がすでに算出されているか否かを判定する(S8)。この判定処理(S8)は、Flashメモリ18に測位情報が記録されているか否かで判定すればよい。測位情報がまだ算出されていなければ(S8の無し)、相対位置情報記録処理(S9)が行われる。
測位情報がすでに算出されていれば(S8の有り)、測位情報格納処理(S10)が行われる。
【0043】
測位情報格納処理は、撮像処理(S7)で生成された画像ファイルのEXIFヘッダーに測位情報をジオタグ形式で格納する処理である。
【0044】
次に、相対位置情報記録処理(S9)の詳細な処理の流れの例について図5のフローチャートを用いて説明をする。
まず、すでに相対位置情報が記録されているか否かを判定する(S91)、相対位置情報がまだ記録されていなければ(S91の無し)、現地点(撮影された場所)の位置を基準相対位置として、Flashメモリ18に記録する(S93)。
相対位置情報がすでに記録されていれば(S91の有り)、記録されている相対位置情報のうち、最も新しいタイミングで記録されている相対位置情報と、現地点まで記録されている移動軌跡情報(図6)を用いて、現地点の相対位置情報を算出する(S92)。
次に、算出した相対位置情報または基準となる相対位置情報を、撮像処理(S7)によって生成された画像ファイルと関連づけてFlashメモリ18に記録する(S94)。画像ファイルは、EXIF規格に則ったファイルフォーマットを有しているので、ヘッダーファイルのメーカーノート欄に相対位置情報を格納することで、当該画像ファイルと相対位置情報を関連づけて記録することができる。
また、相対位置情報記録処理(S94)の他に、相対位置情報確認処理(S3)における判定が容易に行えるように、RAM17に「相対位置情報あり」を示す所定のフラグ情報を記録する処理を行ってもよい。
【0045】
ここで、相対位置情報算出処理(S92)の詳細について説明する。図9は、相対位置情報の算出に用いる移動軌跡情報のイメージを示す図である。
図9は、移動軌跡情報を線901によって表現している。装置の電源が投入され、測位情報の算出可能状態になる前に、合図が検出され(図4のS6)、かつ、相対位置情報がまだ一つも記録されていないときは(S91の「無し」)、そのときの地点を基準点902として記録する。基準点の相対位置情報は(0,0,0)とする。
【0046】
次に合図が検出されたとき(図4のS6)、まだ測位情報が算出されていなければ、このときの位置に係る相対位置情報903(撮影1)を記録する。
相対位置情報903は、基準点902が記録された後に算出された移動軌跡情報に基づいて、X、Y、Zぞれぞれの基準点902からの距離を相対位置情報903(X1、Y1、Z1)として、記録すればよい(図5のS94)。
さらに、次に合図が検出されたとき(図4のS6)、まだ測位情報が算出されていなければ、このときの位置に係る相対位置情報903(撮影2)を、一つ前の相対基準情報903(撮影1)から算出された移動軌跡情報に基づいて、相対位置情報903(X2、Y2、Z2)を算出し、これを当該地点の相対位置情報として記録すればよい(S94)。
図9は、さらに次の合図によって相対位置情報903(X3、Y3、Z3)までが記録された状態を示している。
このように、相対位置情報算出処理(S92)は基準となる相対位置(0,0,0)からの移動軌跡情報に基づいて、基準となる相対位置からの距離をその座標情報として算出する。
【0047】
次に相対位置情報変換処理(図3のS4)の詳細な処理について、図9のイメージ図を用いて説明する。すでに説明をしたとおり、図9においては撮影3の地点から以降も、しばらくは測位情報が算出されていない。
その後、測位情報が算出された地点をFIX904とする。撮影3(X3、Y3、Z3)からFIX904までの移動軌跡情報に基づいて、FIX904の測位情報に、移動軌跡情報を合わせて撮影3の地点の測位情報を算出する。これを変換位置情報とする。
図9に示すように、相対位置情報は基準点も含めてあと3つあるので、これらすべての相対位置情報に対して、FIX904における測位情報に対して、移動軌跡情報を合わせて、各地点の測位情報を算出する。
このように、測位情報が算出できた時点でそこまでに記録されている相対位置情報の記録時間が新しいものから順番に遡って変換処理を行えばよい。
言い換えると、FIX904を測位情報の基準位置と仮定して、それまで相対的に算出されていた位置情報を、測位情報に基づく変換を行う処理が相対位置情報変換処理(S4)である。
【0048】
このように、算出された変換位置情報は、その元となる相対位置情報に対応する画像データのEXIFヘッダーにジオタグとして格納される(S5)。このとき、変換位置情報であることを示す情報を、EXIFヘッダーのメーカーノート欄に格納すればよい。
【0049】
以上、本実施の形態にかかる位置情報記録装置によれば、電波による正確な測位ができたときは、仮想的に設定する基準位置からの移動軌跡によって、相対的な位置情報を記録しておき、測位情報が算出されたときに、それまでの軌跡情報と測位情報に基づいて相対的な位置情報を測位に基づく位置情報に変換して記録しなおすことができる。
これによって、電波の届かないトンネルの中や地下、または、起動開始直後で測位情報の算出ができないときであっても、より正確な位置情報の記録ができるようになる。
これを撮像装置に搭載することで、電波状況によらず、撮影した場所の位置情報を正確に記録することができ、測位情報の算出を待つことなく撮影をすることもできるようになる。
【0050】
次に、本発明に係る撮像装置の別の実施の形態の例について説明をする。図7は、本実施の形態に係る位置情報記録方法の別の例を示すフローチャートである。
すでに説明をした実施形態にかかる位置情報記録方法と同じ処理には、同じ符号を付している。
本実施例は、測位情報の算出ができる状態であったのちに、電波の受信状況等が変化して、正確な測位情報が算出できる状態ではなくなったとき、電波の受信状況が不良な間だけ相対位置情報を記録し、再度、正確な測位情報の算出ができる状態になったときに、それまで記録された相対位置情報を測位情報に変換する際の処理を軽減することができるものである。
【0051】
電源が投入されて装置の動作が開始されると、位置情報算出部16の初期化処理が行われて、電波の受信を開始する。電波が十分に受信されれば測位情報が所定の時間間隔で算出され、Flashメモリ18に順次記録される(S1)。
その後、衛星から電波の受信状態が良好であれば、測位情報が算出されて(S1のYes)、相対位置情報がなければ、測位情報を繰り返し算出する(S3の無し)。
【0052】
測位情報が算出できる状態になっていないときは(S1のNo)、移動軌跡情報算出処理(S2)を開始する前に、以前に測位情報が算出されていたか否かを判定する(S11)。これによって、現時点の状態が、電波状況の悪化によって測位情報が算出できなくなったものであるか、当該装置の起動開始時であるかが判定される。
過去において、測位情報が算出されていなければ(S11の無し)、移動軌跡情報算出処理(S2)を開始して、処理を繰り返す。
過去において、測位情報が算出されていれば(S11の有り)、すでにタイマーが稼働中であるか否かを判定し(S12)、タイマーが稼働していなければ、タイマーをスタートさせてから(S13)移動軌跡情報記録処理(S2)を開始する。
ここでS13にて稼働させるタイマーとは、測位情報が算出できない状態の時間を計測するためのものである。
【0053】
処理がS1に戻って、測位情報が算出可能になっていれば(S1のYes)それまでタイマーが稼働しているか否かを判定し(S14)、稼働中のタイマーを停止してから(S15)、相対位置情報確認処理(S3)に移行する。
【0054】
次に、タイマーが稼働している間に相対位置情報が記録されていた場合の相対位置情報変換処理(S4a)の詳細について図8のフローチャートを用いて説明する。
測位情報が算出される状態になるまでに相対位置情報が記録されていたとき(図7のS3の有り)、まずタイマーが稼働していたか否かを判定する(S41)。
タイマーが稼働していなければ(S41のNo)、最新の測位情報に基づく位置情報変換処理を行う(S43)。S43の変換処理はすでに説明をした実施形態に係る相対位置情報変換処理(S4)と同じ処理である。
【0055】
タイマーが稼働していたならば(S41のYes)、タイマー稼働時間の半分(1/2)に相当するまでの間に相対位置情報が記録されていたか否かを判定する(S42)。
タイマー稼働時間の半分に相当するときまでの間に、相対位置情報が記録されていなければ(S42のNo)、最新の測位情報に基づいて相対位置情報を測位情報に変換する処理を行う(S43)。
タイマー稼働時間の半分に相当するときまでの間に、相対位置情報が記録されていたならば(S42のYes)、記録されている相対位置情報のうち、タイマー稼働時間の半分を過ぎてから記録された相対位置情報に対しては、最新の測位情報に基づく変換処理を行う(S45)
続いて、記録されている相対位置情報のうち、タイマー稼働時間の半分より以前に記録された相対位置情報に対しては、測位不能になる直前の測位情報に基づいて、相対位置情報から測位情報への変換処理を行う(S46)。
【0056】
本実施例においては、相対位置情報を測位情報に変換する処理に用いる測位情報を「最新のもの」とするか「測位不能になる直前の測位情報」とするかの判定基準に、「タイマー稼働時間の半分に相当するとき」を例示して説明していた。しかし、本実施において、判定基準をこれに限ることはない。タイマー稼働時間(計時手段によって計測された時間)における「所定の時点」を判定基準とすることで、本実施と同等の効果を得ることができる。
例えば、最新の測位情報の精度(補足衛星数で判定すればよい)と、直前の測位情報の精度が所定の基準を超え、かつ、同等の精度であるもの同士の取得時間差を「タイマー稼働時間」として、この取得時間差の半分の時点を「所定の時点」としてもよい。
【0057】
また、最新の測位情報を算出したときの補足衛星数と、直前の測位情報を算出したときの補足衛星数が異なるときは、補足衛星数の差に応じて「所定の時点」を決定してもよい。例えば、補足衛星数の比率に応じて、上記変換処理(S46)の対象となる相対位置情報の数を決定すればよい。つまり、補足衛星数が多い測位情報を用いた変換処理をより多く行うようにすればよい。これによって、より精度よく変換処理(S46)を行うことができる。
【0058】
S45とS46にて、相対位置情報の記録タイミングによって異なる変換処理を行う理由について説明する。
すでに説明をしたとおり相対位置情報から測位情報への変換処理は、通常は、最新の測位情報を元にして、時系列をさかのぼって、それぞれの相対位置情報を測位情報に変換している。一度は測位情報が算出された後に相対位置情報が記録されたのであれば、その相対位置情報のうち、最も古いものは、測位情報が算出されていたときの比較的後であって、最新の測位情報に基づいて変換処理をするよりも、過去において算出されていた相対位置情報に基づいて変換処理を行う方が、より精度が高くなる。
【0059】
よって、本実施形態にて説明したように、タイマーが稼働された後に相対位置情報変換処理(S4a)を行うのであれば、タイマー時間の半分より以前の相対位置情報に対しては、以前算出されていた測位情報のうち最も最近の測位情報を用いて変換処理を行い、タイマー時間の半分より以後の相対位置情報に対しては、最新の測位情報を用いて変換処理を行えばよい。
上記の処理を全ての相対位置情報に対して行う(S44)。
【0060】
以上、本実施例に係る位置情報記録方法によれば、電波状況の変化が生じて測位情報が算出できないときであっても、その後に算出された測位情報と、それ以前に算出されていた測位情報によって、相対位置情報をより正確な測位情報に変換することができるようになる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明に係る位置情報記録装置は、撮像装置に搭載する以外に、ハンディタイプのナビゲーション装置に適用することもできる。
【符号の説明】
【0062】
11 演算部
13 加速度検出部
14 角速度検出部
15 地磁気検出部
16 位置情報算出部
17 RAM
16 Flashメモリ
19 外部記録部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0063】
【特許文献1】特許第4312566号公報
【非特許文献】
【0064】
【非特許文献1】JEITA CP−3451A ディジタルスチルカメラ用画像ファイルフォーマット規格Exif2.21統合版 2009年9月改定(社団法人 電子情報技術産業協会発行)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線信号を受信する受信手段と、
測位情報を記録する合図を発する操作手段と、
上記無線信号に基づいて地理的位置を測位し、当該位置に係る測位情報を算出する位置情報算出手段と、
算出された測位情報を記録する測位情報記録手段と、を有する位置情報記録装置であって、
基準となる位置からの方向と移動距離からなる変位情報を算出する移動軌跡情報算出手段と、
上記合図が発せられたとき、上記測位情報が得られていないときには上記変位情報によって上記基準となる位置からの相対的な位置に係る相対位置情報を算出し、上記合図に係る情報と関連づけて記録する相対位置情報記録手段と、
上記測位情報が得られたとき、上記相対位置情報記録手段にすでに記録されている相対位置情報を測位情報に変換する位置情報変換手段と、を有することを特徴とする位置情報記録装置。
【請求項2】
上記基準位置からの移動方向を検出する加速度検出手段と、
基準となる方位を検出する地磁気検出手段と、をさらに有し、
上記移動軌跡情報算出手段が、上記加速度検出手段が検出する上記移動方向と上記地磁気検出手段が検出する基準となる方位に基づいて上記変位情報を算出する、ことを特徴とする請求項1記載の位置情報記録装置。
【請求項3】
上記無線信号に基づく測位ができなかった時間を計測する計時手段をさらに有し、
上記位置情報変換手段が、
上記相対位置情報記録手段が記録した各相対位置情報のうち、
上記計測された時間の所定の時点より後に記録されている相対位置情報に対しては、最新の測位情報に基づいて上記変換を行い、
上記計測された時間の所定の時点より前に記録されている相対位置情報に対しては、測位ができなくなる直前に測位されていた測位情報に基づいて上記変換を行う、ことを特徴とする請求項1記載の位置情報記録装置。
【請求項4】
上記請求項1乃至3のいずれかに記載の位置情報記録装置を備え、
被写体を表す光学像を、撮像光学系と撮像素子を介して取得し画像データに変換する撮像手段と、
撮像手段にて変換された画像データを記憶する画像記憶手段と、を有し、
上記操作手段はレリーズボタンであり、
上記合図によって上記撮像手段も動作して取得された画像データに、上記測位情報または上記相対位置情報を関連づけて記録することができる撮像装置。
【請求項5】
無線信号を受信する受信手段と、測位情報を記録する合図を発する操作手段と、上記無線信号に基づいて地理的位置を測位して、当該位置に係る測位情報を算出する位置情報算出手段と、算出された測位情報を記録する測位情報記録手段と、を有する位置情報記録装置であって、基準となる位置からの方向と移動距離からなる変位情報を算出する移動軌跡情報算出手段と、上記合図が発せられたとき、上記測位情報が得られていないときには上記変位情報によって上記基準となる位置からの相対的な位置に係る相対位置情報を算出し、上記合図に係る情報と関連づけて記録する相対位置情報記録手段と、上記測位情報が得られたとき、上記相対位置情報記録手段がすでに記録している相対位置情報を測位情報に変換する位置情報変換手段と、を有する位置情報記録装置によって実行される位置情報記録方法であって、
上記受信手段が無線信号を受信するステップと、
上記測位情報を記録する合図を検知するステップと、
上記合図が発せられたときに上記無線信号に基づいて地理的位置を測位して測位情報を算出できるか否か判定するステップと、
測位情報の算出ができないと判定されたときに、上記移動軌跡情報算出手段が、基準となる位置からの方向と移動距離からなる変位情報の算出を開始するステップと、
上記合図が発せられたとき、上記測位情報がが算出されていないときには上記変位情報によって上記基準となる位置からの相対的な位置に係る相対位置情報を算出するステップと、
算出された相対位置情報を上記合図に係る情報と関連づけて記録するステップと、
上記測位情報が算出されたとき、上記相対位置情報記録手段にすでに記録されている相対位置情報を測位情報に変換するステップと、を実行することを特徴とする位置情報記録装置。
【請求項6】
上記基準位置からの移動方向を検出する加速度検出手段と、基準となる方位を検出する地磁気検出手段と、をさらに有し、
上記地磁気検出手段が、基準となる方位を検出するステップと、
上記移動軌跡情報算出手段が、
上記加速度検出手段の出力に基づいて、傾きを特定するステップと、
上記加速度検出手段の出力と上記地磁気検出手段の検出結果に基づいて、移動方向を特定するステップと、
上記加速度検出手段の出力によって移動速度を算出するステップと、
上記傾き、移動方向、速度に基づいて基準となる位置からの変位量を算出するステップと、を実行することを特徴とする請求項5記載の位置情報記録方法。
【請求項7】
上記無線信号に基づく測位が時間を計測する計時手段をさらに有し、
上記位置情報変換手段が、
上記計測された時間の所定の時点よりも前に相対位置情報が記録されているか否かを判定するステップと、
上記所定の時点よりも前に相対位置情報が記録されているときは、
上記相対位置情報記録手段が記録した各相対位置情報のうち、上記所定の時点より後に記録されている相対位置情報に対しては、最新の測位情報を用いて上記相対位置情報を測位情報に変換するステップと、
上記相対位置情報記録手段が記録した各相対位置情報のうち、上記所定の時点より前に記録されている相対位置情報に対しては、測位ができなくなる直前に測位されていた測位情報を用いて、上記相対位置情報を測位情報に変換するステップと、を実行することを特徴とする請求項5記載の位置情報記録方法。
【請求項1】
無線信号を受信する受信手段と、
測位情報を記録する合図を発する操作手段と、
上記無線信号に基づいて地理的位置を測位し、当該位置に係る測位情報を算出する位置情報算出手段と、
算出された測位情報を記録する測位情報記録手段と、を有する位置情報記録装置であって、
基準となる位置からの方向と移動距離からなる変位情報を算出する移動軌跡情報算出手段と、
上記合図が発せられたとき、上記測位情報が得られていないときには上記変位情報によって上記基準となる位置からの相対的な位置に係る相対位置情報を算出し、上記合図に係る情報と関連づけて記録する相対位置情報記録手段と、
上記測位情報が得られたとき、上記相対位置情報記録手段にすでに記録されている相対位置情報を測位情報に変換する位置情報変換手段と、を有することを特徴とする位置情報記録装置。
【請求項2】
上記基準位置からの移動方向を検出する加速度検出手段と、
基準となる方位を検出する地磁気検出手段と、をさらに有し、
上記移動軌跡情報算出手段が、上記加速度検出手段が検出する上記移動方向と上記地磁気検出手段が検出する基準となる方位に基づいて上記変位情報を算出する、ことを特徴とする請求項1記載の位置情報記録装置。
【請求項3】
上記無線信号に基づく測位ができなかった時間を計測する計時手段をさらに有し、
上記位置情報変換手段が、
上記相対位置情報記録手段が記録した各相対位置情報のうち、
上記計測された時間の所定の時点より後に記録されている相対位置情報に対しては、最新の測位情報に基づいて上記変換を行い、
上記計測された時間の所定の時点より前に記録されている相対位置情報に対しては、測位ができなくなる直前に測位されていた測位情報に基づいて上記変換を行う、ことを特徴とする請求項1記載の位置情報記録装置。
【請求項4】
上記請求項1乃至3のいずれかに記載の位置情報記録装置を備え、
被写体を表す光学像を、撮像光学系と撮像素子を介して取得し画像データに変換する撮像手段と、
撮像手段にて変換された画像データを記憶する画像記憶手段と、を有し、
上記操作手段はレリーズボタンであり、
上記合図によって上記撮像手段も動作して取得された画像データに、上記測位情報または上記相対位置情報を関連づけて記録することができる撮像装置。
【請求項5】
無線信号を受信する受信手段と、測位情報を記録する合図を発する操作手段と、上記無線信号に基づいて地理的位置を測位して、当該位置に係る測位情報を算出する位置情報算出手段と、算出された測位情報を記録する測位情報記録手段と、を有する位置情報記録装置であって、基準となる位置からの方向と移動距離からなる変位情報を算出する移動軌跡情報算出手段と、上記合図が発せられたとき、上記測位情報が得られていないときには上記変位情報によって上記基準となる位置からの相対的な位置に係る相対位置情報を算出し、上記合図に係る情報と関連づけて記録する相対位置情報記録手段と、上記測位情報が得られたとき、上記相対位置情報記録手段がすでに記録している相対位置情報を測位情報に変換する位置情報変換手段と、を有する位置情報記録装置によって実行される位置情報記録方法であって、
上記受信手段が無線信号を受信するステップと、
上記測位情報を記録する合図を検知するステップと、
上記合図が発せられたときに上記無線信号に基づいて地理的位置を測位して測位情報を算出できるか否か判定するステップと、
測位情報の算出ができないと判定されたときに、上記移動軌跡情報算出手段が、基準となる位置からの方向と移動距離からなる変位情報の算出を開始するステップと、
上記合図が発せられたとき、上記測位情報がが算出されていないときには上記変位情報によって上記基準となる位置からの相対的な位置に係る相対位置情報を算出するステップと、
算出された相対位置情報を上記合図に係る情報と関連づけて記録するステップと、
上記測位情報が算出されたとき、上記相対位置情報記録手段にすでに記録されている相対位置情報を測位情報に変換するステップと、を実行することを特徴とする位置情報記録装置。
【請求項6】
上記基準位置からの移動方向を検出する加速度検出手段と、基準となる方位を検出する地磁気検出手段と、をさらに有し、
上記地磁気検出手段が、基準となる方位を検出するステップと、
上記移動軌跡情報算出手段が、
上記加速度検出手段の出力に基づいて、傾きを特定するステップと、
上記加速度検出手段の出力と上記地磁気検出手段の検出結果に基づいて、移動方向を特定するステップと、
上記加速度検出手段の出力によって移動速度を算出するステップと、
上記傾き、移動方向、速度に基づいて基準となる位置からの変位量を算出するステップと、を実行することを特徴とする請求項5記載の位置情報記録方法。
【請求項7】
上記無線信号に基づく測位が時間を計測する計時手段をさらに有し、
上記位置情報変換手段が、
上記計測された時間の所定の時点よりも前に相対位置情報が記録されているか否かを判定するステップと、
上記所定の時点よりも前に相対位置情報が記録されているときは、
上記相対位置情報記録手段が記録した各相対位置情報のうち、上記所定の時点より後に記録されている相対位置情報に対しては、最新の測位情報を用いて上記相対位置情報を測位情報に変換するステップと、
上記相対位置情報記録手段が記録した各相対位置情報のうち、上記所定の時点より前に記録されている相対位置情報に対しては、測位ができなくなる直前に測位されていた測位情報を用いて、上記相対位置情報を測位情報に変換するステップと、を実行することを特徴とする請求項5記載の位置情報記録方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−247775(P2011−247775A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−121873(P2010−121873)
【出願日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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