説明

位置決め装置の異常変位を判定するためのシステム、方法、および装置

【課題】 空間内の位置決め装置が変位されたかどうかを判定するための技術的解決法を提供する。
【解決手段】 本発明の実施例では、空間内の位置決め装置が変位されたかどうかを判定するためのシステム、方法、および装置が提供される。具体的には、測距信号を発する機能を有するタグと、当該タグからの測距信号に基づいて、当該タグが位置する位置点の位置決め装置に対する相対座標を取得するように構成された位置決め装置と、空間内の位置点の相対座標、位置決め装置の較正パラメータ、および信頼済み絶対座標に基づいて、位置決め装置が変位されたかどうかを判断するように構成されたサーバとを備えることのできるシステムが提供される。本発明の実施例により、位置決め装置が変位されたかどうかの判定を正確、包括的、かつリアルタイムに行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は位置決め分野に関し、特に、空間内で位置決め装置が変位したかどうかを判定するためのシステム、方法、および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
位置情報は、ユーザと環境との間の地理的関係を特定する際に利用できる基本的なコンテキスト情報であり、これによりユーザの行動をより深く理解することが可能になる。位置認識用途の重要性と将来性を背景に、位置情報を提供するシステムの設計および実装が盛んとなり、特に室内および都市環境に適用されるシステムにおいてこの傾向が顕著となっている。現在では、人や物を正確かつリアルタイムに追跡する位置決めシステムがいくつか開発されており、オフィス、医療、炭坑、地下鉄、スマートビルディング、レストラン等の環境で様々な用途に利用されている。
【0003】
現在、これらの位置決めシステムは、超音波を利用するものと超広帯域無線を利用するものとに大別される。これらのシステムに共通する特徴は、1センチ単位の精度で位置決めを行う点にある。こうした位置決め装置の中には、関心領域(AOI:Area of Interest)内で移動する対象物の位置を監視するためには、使用環境内に位置決め装置を配置し、その後継続的に較正を実行する必要があるものがある。通常、移動する対象物の位置をリアルタイムで追跡できる位置決めシステムは、位置ベースサービスを提供するために使用される。例えば、オフィス環境であれば、位置決め装置を配置することにより、端末や従業員の位置を追跡することが可能になる。そのため、位置ベースのアクセスルールを設定することにより、「セキュリティ管理区域」を定義することができる。つまり、秘密情報を格納したデータベースへのアクセスを、セキュリティ管理区域内でのみ許可し、その他の場所では禁止するわけである。このセキュリティ管理区域は、1つの部屋、職場の一部分、さらには1つのテーブルにも設定することができる。
【0004】
図1は、従来技術における位置決めシステムの配置と変位を示した概略図である。ここでは部屋を例にとる。位置決め装置(例えば、<x,y,d>〜<x,y,d>に位置する位置決め装置)は、通常、部屋の天井に配列を形成するように配置される。これらの位置決め装置はすべて較正されているため、タグの位置を監視することにより、そのタグを付けた人または物の位置と行動を監視することができる。(x,y)は部屋の中のi番目の位置決め装置の位置であり、dはi番目の位置決め装置とタグとの距離である。
【0005】
ただし、位置決めシステムの中の一部の位置決め装置(例えば、図1に示す<x,y,d>)が攻撃者によって密かに変位されると、位置決め装置の較正済み位置パラメータが実際の位置パラメータと一致しなくなり、それによって位置決めシステム全体がタグの位置を正確に判定できなくなる可能性がある。この場合、関心領域を正確に監視することは不可能になる。こうなると、アクセス権を持たない人が関心領域内のコンピュータにアクセス可能になるため、セキュリティの落とし穴が生じることになる。これは「移動攻撃(moving attack)」と呼ばれる。
【0006】
そのため、位置決め分野では、位置決め装置が変位されたかどうかを判定するための技術的解決法が必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、空間内の位置決め装置が変位されたかどうかを判定するための技術的解決法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の1つの態様によれば、システムが提供される。当該システムは、測距信号を発する機能を有するタグと、前記タグからの測距信号に基づいて、前記タグが位置する位置点の、位置決め装置に対する相対座標を取得するように構成された位置決め装置と、空間内の位置点の相対座標、位置決め装置の較正パラメータ、および信頼済み絶対座標に基づいて、位置決め装置が変位されたかどうかを判断するように構成されたサーバとを備える。
【0009】
本発明の他の態様によれば、位置決め装置が空間内で変位されたかどうかを判定するための方法が提供される。当該方法は、空間内における位置決め装置に対する位置点の相対座標、位置決め装置の較正パラメータ、および空間内の位置点における信頼済み絶対座標を受信するステップと、相対座標、較正パラメータ、および信頼済み絶対座標に基づいて、位置決め装置が変位されたかどうかを判断するステップとを備える。
【0010】
本発明のさらに他の態様によれば、位置決め装置が空間内で変位されたかどうかを判定するための装置が提供される。当該装置は、空間内における位置決め装置に対する位置点の相対座標、位置決め装置の較正パラメータ、および空間内の位置点における信頼済み絶対座標を受信するための受信手段と、相対座標、較正パラメータ、および信頼済み絶対座標に基づいて、位置決め装置が変位されたかどうかを判断するための判断手段とを備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明の実施例の効果は、位置決め装置が変位されたかどうかの判定を正確、包括的、かつリアルタイムに行うことができるので、潜在的な移動攻撃を効果的に防止できることである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】従来技術における位置決め装置の配置および変位を示した概略図である。
【図2】本発明が実装される空間の一例として部屋を使用した、空間の概略図である。
【図3】本発明の一実施例による位置決め装置の概略図である。
【図4】本発明の一実施例による基準空間の3次元概略図である。
【図5】本発明の当該実施例による基準空間を簡略化した2次元概略図である。
【図6】本発明の一実施例による、1つの較正済み位置決め装置に基づいて他の位置決め装置を較正する方法を示す概略図である。
【図7】本発明の一実施例による、位置決め装置が変位されたかどうかを判定するためのシステムの概略ブロック図である。
【図8】本発明の一実施例による、タグが変位されたかどうかを判定するための方法のフローチャートである。
【図9】本発明の一実施例による、位置決め装置のオフセットを判定するための方法の空間的概略図である。
【図10】本発明の他の実施例による、位置決め装置が変位されたかどうかを判定するための方法のフローチャートである。
【図11】本発明の他の実施例による、位置決め装置が変位された後のパラメータの変化を表す概略図である。
【図12】本発明の一実施例による、較正済みの他の位置決め装置を用いて、位置決め装置が変位されたかどうかを判定する方法の空間的概略図である。
【図13】本発明の一実施例による、位置決め装置が変位されたかどうかを判定するための装置のブロック図である。
【図14】本発明の一実施例による判断手段のブロック図である。
【図15】本発明の他の実施例による判断手段のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図2および図3を参照して、まず本発明の実施例において使用される用語を簡単に説明する。
【0014】
1.空間
本発明の実施例における「空間」とは、対象物が移動する空間を意味し、これには部屋、オフィス、会議室等が含まれる。図2は、部屋を例にとった空間10の概略図である。本発明の実施例は図2に示すような四角形の部屋に限定されず、どんな形の部屋であってもよいことは理解されるであろう。
【0015】
2.空間特徴位置点
「空間特徴位置点」とは、空間を決定するための位置点を意味する。例えば、図2の例の部屋である空間20内においては、空間特徴位置点は部屋の隅の位置点11、12、および13とすることができる。基本的には、空間を決定するために使用できる限り、空間内の任意の点を空間特徴点として選択可能である。部屋が六角形等の他の多角形である場合は、その多角形の頂点を特徴位置点として使用できる。部屋が不整形な形状である場合には、部屋の境界線上にある3つ以上の位置点を使用して多角形に適合させるので、多角形以外の形状の部屋でも多角形として扱うことができる。
【0016】
3.単一装置上での位置決め(POD:Positioning on One Device)
本発明の実施例によるPODは、空間内の位置点の座標を決定するための装置である。図3は、本発明の実施例において使用されるPODの一例を示したものである。図3に示すように、本発明の実施例において使用されるPODは、複数の葉ノード位置点を有するセンサ配列である。このセンサ配列には、少なくとも2つの葉ノード位置点が含まれる。換言すれば、PODは少なくとも2つの葉ノード位置点センサを備え、少なくとも2つの葉ノード位置点センサの間に1つのセンサが配置される。一般には、葉ノード位置ノード点が多いほど位置決め精度が高くなる。図3のPODは6つの葉ノード位置点を有する。図3に示す実用用途においては、POD14は、通常、空間10の天井に配置される。POD14は、空間10内の対象物の位置点に向けて測距信号を発し、空間10内の対象物の位置点から測距信号を受信することができる。
【0017】
本発明ではPODの受信機能のみが使用される。ただし、PODには、受信した測距信号に基づいて関連の計算を実行する計算機能を備えることができる。あるいは、PODを有線または無線でリモートサーバか専用コンピュータ機器に接続し、このリモートサーバか専用コンピュータ機器において測距信号に基づく計算を実行することもできる。
【0018】
通常、空間内の対象物位置点の座標は、PODが対象物位置点から受信した測距信号に基づいて、従来の三角測量または座標変換により得ることができる。PODの構造と機能は当該技術ではよく知られているため、その詳細は省略する。
【0019】
4.絶対座標系
本発明の実施例では、空間内の位置点が座標原点として使用される座標系を「絶対座標系」と称する。絶対座標系の原点としては、空間内の任意の特徴位置点を使用できる。例えば、図2に示す空間10における絶対座標系の原点としては、特徴位置点11が使用されている。当然ながら、当該技術に精通した当業者には、1つの特徴位置点を原点として選択すると計算は容易になるが、絶対に必要というわけではないことは理解されるであろう。座標原点として他の位置点を選択した場合でも、単純な座標変換によって上記の絶対座標系を得ることができる。この座標変換は当業者にはよく知られているため、その詳細は省略する。
【0020】
5.相対座標系
本発明の実施例では、原点としてPODが使用される座標系を「相対座標系」と称する。相対座標系の原点はPODの中心点であり、X軸方向はPODの第1センサ(図示せず)である。ここでいう「第1センサ」は、POD製造中の初期構成時に指定してもよい。X軸が指定されると、POD平面上のX軸に垂直な方向がY軸として定義される。
【0021】
POD較正時に、相対座標系と絶対座標系との間に夾角θが形成されることがある。本発明においては、この「夾角」は、絶対座標系におけるPODの取り付け角度を意味し、図2ではPOD角度18に対応する。そのため、空間内におけるPODの位置(図2のPOD位置17に対応)の位置パラメータは、絶対座標系における絶対座標と、PODの取り付け角度θとで構成される。
【0022】
6.タグ
本発明の実施例においては、「タグ」とは測距信号を発生する機能を有するタグを意味し、これにはRFタグ等が含まれる。1つのタグを空間内の1つの位置点に配置し、そのタグから発せられた測距信号をPODで受信することにより、当該位置点の相対座標または絶対座標を得ることができる。測距信号には、超音波、赤外線、レーザー、RF信号、超広帯域パルス信号、ドップラー信号、音波を始めとして、様々なタイプがある。PODとタグにより位置点の相対座標または絶対座標を決定する方法は当該技術ではよく知られているため、その詳細は省略する。
【0023】
7.関心領域(AOI)およびAOI特徴点
「関心領域」とは、用途に固有な要件(例えば、セキュリティ保護など)に関連して、ユーザにより特徴付けられた地理的空間を意味する。関心領域は空間内に存在する。例えば、「セキュアテーブル」の用途においては、そのテーブルが関心領域として定義される。秘密情報へのアクセスは関心領域内でのみ許可され、それ以外の場所では秘密情報へのアクセスは禁じられる。「AOI特徴点」とは、関心領域の特徴付けに使用される位置点を意味する。図2に、関心領域15とAOI特徴点16を示す。
【0024】
図を参照して、本発明の一実施例による、位置決め装置を最初に較正するための方法についてまず説明する。
【0025】
本発明の一実施例によれば、空間内の3つの空間特徴位置点(図2の基準空間特徴位置点に対応)が選択され、3つの空間特徴位置点の位置決め装置に対する相対座標を決定するために、測距信号の発生機能を有するタグがこれらの特徴位置点に配置される。空間特徴位置点の相対座標を決定するために、個々のタグは各空間特徴位置点に配置される。あるいは、これらの空間特徴位置点の相対座標を決定するために、選択された空間特徴位置点に1つの同一のタグを順次配置してもよい。
【0026】
次に、位置決め装置が空間内に配置される。位置決め装置は空間内のどこに配置してもよい。位置決め装置は、空間内の天井に配置することもできる。この初期配置場所は任意なので、天井のどの場所であってもよい。次に、位置決め装置は、タグからの測距信号に基づいて、これらの空間特徴位置点の自装置に対する相対座標を取得する。
【0027】
位置決め装置は例えば、自装置の中心点を座標原点として、3つのセンサの相対座標を決定する。次に、3つのセンサが、空間特徴位置点に配置されたタグからの測距信号に基づいて、自センサから各空間特徴位置点までの距離を取得する。そして最後に、個々の空間特徴位置点から各センサまでの距離と各センサの相対座標とに基づき、従来の三角測量アルゴリズム(例:最小二乗平均誤差アルゴリズム)を使用して、位置決め装置に対する各空間特徴位置点の相対座標が取得される。従来の三角測量アルゴリズムを使用して位置決め装置に対する各空間特徴位置点の相対座標を取得する方法は当該技術ではよく知られているため、その詳細は省略する。
【0028】
その後、関連の計算により空間内の位置決め装置の位置パラメータが自動的に決定され、それにより位置決め装置が自動的に較正される。これについては、以下で詳細に説明する。または、位置パラメータは、空間内における位置決め装置の絶対座標(x,y,z)と取り付け角度とから成る。本発明においては、較正済み位置決め装置の位置パラメータを「位置決め装置の較正パラメータ」と称する。
【0029】
ここで、図4および図5を参照して、四角形の部屋において、取得された3つの基準空間特徴位置点の相対座標に基づき、空間内における位置決め装置の位置パラメータを決定する方法について説明する。
【0030】
図4に示すように、地表面上の3つの基準空間特徴位置点の相対座標が、(x,y,z)、(x,y,z)、(x,y,z)として取得される。これらの相対座標は、位置決め装置とタグとを使用して決定されたものである。特徴位置点(x,y,z)は、基準空間における絶対座標系(0,0,0)の原点として定義される。部屋の長さ(l)、幅(w)、および高さ(h)、位置決め装置の絶対座標(x,y,z)、PODの取り付け角度θは未知である。
【0031】
まず、位置決め装置のz座標(すなわち、位置決め装置の高さ(h))が決定される。天井は概して地表面に平行なので、位置決め装置の高さはh、すなわちz=h=z=z=zである。ただし、地表面の不均一性による誤差の可能性があることを考慮して、z座標はz=h=(z+z+z)/3として決定される。
【0032】
zが決定された後には、2次元空間の他の2つの未知値を解決する必要がある。
【0033】
図5は、本発明による、2次元空間内における未知値(例えば、部屋の長さ(l)、幅(w)、および高さ(h)、PODの絶対座標(x,y)および取り付け角度θなど)の計算方法を示す概略図である。
【0034】
図5に示すように、本発明においては、実線で示す座標系は絶対座標系であり、点線で示す座標系は位置決め装置を原点とする相対座標系である。2つの座標系が形成する夾角(すなわち位置決め装置の取り付け角度)はθとする。
【0035】
図5によれば、等式群(1)は従来の座標変換によって得られる。
sin(θ)−ycos(θ)+y=0
cos(θ)−ysin(θ)+x=l
sin(θ)−ycos(θ)+y=w (1)
cos(θ)−ysin(θ)+x=l
sin(θ)−ycos(θ)+y=0
(x−x+(y−y=l
(x−x+(y−y=w

【0036】
当該技術に精通する当業者には、基準空間特徴位置点を多くするほど、等式群(1)を構成する等式数(すなわち、係数行列の行数)が多くなることは理解されるであろう。このことは当業者にはよく知られているため、詳細は省略する。
【0037】
位置決め装置の絶対座標(x,y)および角度θと、基準空間の長さlおよび幅wは、等式群(1)を解くことによって導出される。この計算プロセスは以下のとおりである。
【数1】


【数2】


x=(x+y−x−y)/l (4)
y=x+y−x−y)/w (5)

【数3】

【0038】
これにより、基準空間のサイズと基準空間における位置決め装置の位置パラメータ(位置決め装置の絶対座標(x,y,z)、取り付け角度θなど)とが得られ、位置決め装置の較正パラメータの取得を目的とした、空間のサイズの決定と位置決め装置の較正とが自動的に完了する。
【0039】
較正後、位置決め装置は既存の三角測量アルゴリズムを使用して、空間内における任意の点の絶対座標を直接取得できるようになる。位置決め装置はさらに、相対座標から絶対座標に変換することにより、空間内における任意の点の絶対座標を取得することができる。すなわち、空間内における位置点の位置決め装置に対する相対座標が取得され、その後、従来の座標変換により位置点の絶対座標が取得される。
【0040】
上記の例では、3つの空間特徴位置点を選択した場合の本発明による位置決め装置の較正プロセスについて説明した。しかし本発明は3つの空間特徴位置点を使用した実装に限定されず、ある実装では、1つまたは2つの空間特徴位置点のみを使用して位置決め装置の較正を実行することが可能である。例えば、位置決め装置を部屋の天井に配置した場合には、自装置の相対座標系のX軸(第1センサの方向)は、当該空間の絶対座標系のX軸に平行となる。この場合、位置決め装置の取り付け角度θは実際にはゼロである。この時点で、部屋の1つの隅部が絶対座標系の原点(すなわち、この隅部の絶対座標)は(0,0,0)として確定される。位置決め装置に対するこの隅部の相対座標は、位置決め装置によって取得することができる。前述したように、位置決め装置のZ座標は、隅部の位置決め装置に対する相対座標のZ座標値に等しい。2次元平面においては、位置決め装置の絶対X座標と絶対Y座標は、隅部の相対座標と絶対座標に基づいて、通常の座標系並進変換で取得される。この変換は当該技術ではよく知られているので、その詳細は省略する。
【0041】
本発明によれば、選択された空間特徴位置点が多いほど、座標変換により得られる等式数は増加し、より正確な位置決め装置の位置パラメータが決定されることは理解されるであろう。
【0042】
また、上記では四角形の部屋にある位置決め装置の較正プロセスについて説明してきたが、前述の実施例は四角形の部屋に限定されないことも同様に理解されるであろう。空間が不整形な形状の場合は、空間の境界上にある3つ以上の点を使って多角形に適合させることができるので、不整形な形状の空間でも多角形の空間のように処理することができる。
【0043】
本発明の他の実施例によれば、空間内に複数のPODが配置されているときには、上記の方法によって1つのPODを較正した後に、別のPODを較正することができる。説明を簡素化するため、較正済みPODを「第1位置決め装置(POD1)」と称し、較正対象のPODを「第2位置決め装置(POD2)」と称する。
【0044】
図6は、本発明の他の実施例による、較正済みの第1位置決め装置(POD1)に基づいて第2位置決め装置(POD2)を較正する方法を示す概略図である。
【0045】
図6のPOD1は、等式群(1)に従って較正されている。本実施例によれば、POD2を較正するため、まずPOD1とPOD2各々のカバー領域を決定するが、このとき、POD1のカバー領域とPOD2のカバー領域が重複する部分ができるように決定する必要がある。図6に示すように、POD1のカバー領域は「第1カバー領域」と称し、POD2のそれは「第2カバー領域」と称し、POD1とPOD2のカバー領域は一部が重複している。重複カバー領域は様々な方法によって決定することができる。例えば、POD1が高さ3メートルの位置にあり、そのカバー領域の半径は4メートルである場合には、POD2を約6メートルの距離に配置することが可能である。また、ある位置が重複するカバー領域内にあるかどうかを知りたいときには、POD1とPOD2の両方がその位置にあるタグを検出できるかどうかによって判断することができる。
【0046】
続いて、POD2を較正するため、部屋内におけるPOD2の絶対座標(x20,y20,z20)と、POD2の角度θ20を計算する。具体的には、重複カバー領域内で2つの位置点(説明の便宜上「重複カバー領域位置点」と称する)を選択し、測距信号(同様の理由から「重複カバー領域測距信号」と称する)を発するために各位置点にタグ(同様の理由から「重複カバー領域タグ」とする)を配置する。このように、POD1はまず、自装置の座標系におけるこれら2つの重複カバー領域位置点の相対座標を取得し、その後、座標変換によりこれら2つの重複カバー領域位置点の絶対座標(x11,y11,z11)および(x12,y12,z12)を取得する。言うまでもなく、POD1は、既存の三角測量アルゴリズムにより直接、これら2つの重複カバー領域位置点の絶対座標を取得することができる。較正済み位置決め装置により目標対象物(例えば、空間内の位置点)の絶対座標を取得する方法は当該技術ではよく知られているため、その詳細は省略する。
【0047】
POD2は同時に、例えば自座標系における(x21,y21,z21)および(x22,y22,z22)として示される、これら2つの重複カバー領域位置点の相対座標を取得することができる。POD1はすでに較正されているため、これら2つの重複カバー領域位置点の絶対座標は既知である。また、POD2もこの例ではやはり天井に配置されているため、POD2の絶対座標はz20=h=(z1+z2+z3)/3である。これにより、POD2の座標(x20,y20,z20)と角度θ20の計算は簡素化され、2次元座標で実行することが可能になる。
【0048】
基準空間内におけるPOD2の絶対座標は、以下の等式群を利用して、従来の座標変換により計算できる。
【数4】

【0049】
等式群(7)から、以下の行列計算が導出される。
【数5】

【0050】
この行列を解決することにより、POD2の絶対座標および角度θ20として以下が取得される。
【数6】

【0051】
ここで、
【数7】

である。
【0052】
このように、較正対象であるPOD2の絶対座標および角度が決定され、POD2を較正することによりその較正パラメータを取得することが可能になる。
【0053】
ここで、3つ以上の重複カバー領域位置点でも選択できることに留意されたい。これにより前述の係数行列の行数が増えるが、計算プロセスは前述の計算プロセスと同じである。選択する重複カバー領域位置点の数を増やすと、位置決め精度が向上する。
【0054】
さらに、較正済みPODに基づき、上記の方法を使用して、さらに多数のPODを漸進的に較正すれば、カバーする面積を増やすことができる。ここでは詳細は省略する。上記では、前述の実施例における2つの重複カバー領域位置点を選択して、本発明の実施例による位置決め装置の較正プロセスを実行する場合について説明したが、本発明の実施例は2つの重複カバー領域位置点に限定されない。ある実装では、1つの重複カバー領域位置点のみを使用して位置決め装置の較正を実行することが可能である。例えば、第1位置決め装置が較正済みで、これから第2位置決め装置を較正する場合は、第2位置決め装置のX軸を第1位置決め装置のX軸と平行に設定することができる。この場合、第2位置決め装置の取り付け角度は、既知である第1位置決め装置の取り付け角度と同じである。この時点で、較正済みの第1位置決め装置によって重複カバー領域位置点の絶対座標が取得され、第2位置決め装置によって第2位置決め装置に対する位置点の相対座標が取得される。その後、通常の座標変換によって第2位置決め装置の絶対座標を取得することができる。
【0055】
当該技術に精通する技術者であれば、図2〜6を参照して行った説明から、「相対座標」、「絶対座標」、「座標変換」等の概念の知識を得ると共に、位置決め装置の較正パラメータを取得するために1つ以上の較正装置を較正する方法を理解できるであろう。
【0056】
以下では、本発明の一実施例に基づき、較正済み位置決め装置が空間内で変位されたかどうかを判定するための方法について説明する。図7は、本発明の一実施例による、空間内で較正済み位置決め装置が変位されたかどうかを判定するためのシステム100の概略図である。
【0057】
図7に示すように、システム100は、測距信号を発する機能を有し、空間内の1つの位置点に配置されたタグ110と、タグからの測距信号に基づいて、タグが配置された位置点の自装置に対する相対座標を取得するように構成された、空間内に配置された位置決め装置120と、空間内における位置点の相対座標、空間内における位置点の信頼済み絶対座標、および位置決め装置120の較正パラメータに基づいて、位置決め装置120が変位されたかどうかを判断するように構成されたサーバ130とを備える。
【0058】
位置決め装置120は、上記で説明した、位置決め装置120の較正パラメータを事前に取得する方法を使用して、事前に較正することができる。言うまでもなく、当該技術において既知である他の方法を使用して、位置決め装置120を事前に較正する(すなわち、位置決め装置120の較正パラメータを取得する)ことも可能である。較正パラメータは、事前に記憶しておくこともできる。
【0059】
本発明の実施例における「信頼済み絶対座標」とは、空間内における位置点の信頼できる絶対座標を意味する。位置点の信頼済み絶対座標は、例えば、較正済みで変位されていないと判定された位置決め装置を用いて取得することが可能である。
【0060】
次に、図8を参照して、本発明の一実施例による、位置決め装置120が変位されたかどうかを判断するための方法について説明する。
【0061】
図8に示すように、ステップS210において、空間内における位置決め装置120に対する位置点の相対座標が受信され、ステップS220において、位置決め装置120の相対座標と較正パラメータとに基づいて、空間内における位置点の絶対座標が計算され、ステップS230において、信頼済み絶対座標と計算された絶対座標とに基づいて、位置決め装置120が変位されたかどうかの判定が行われる。
【0062】
ここで、ステップS210〜S230の具体的な実装プロセスについて説明する。
【0063】
ステップS210において、空間内の1つの位置点を選択し、その位置点に1つのタグを配置する。当該位置点の信頼済み絶対座標は、すでに取得され記憶されている。位置決め装置120が変位されたかどうかをチェックする必要が生じた際には、位置決め装置120はまずタグの測距信号を受信し、その測距信号から、位置決め装置120に対する位置点の相対座標を取得する。
【0064】
この位置点は任意に選択することができる。本発明の好適な実施例によれば、当該位置点としては、空間内の、例えば部屋の隅部のような計算がしやすくなるような位置が選択される。
【0065】
あるいは、攻撃者の悪意ある行為を防止するために、タグを隠すこともできる(本明細書では「隠しタグ」と称する)。ここで「隠す」とは、タグを壁に埋め込んだり、タグを空間内の位置点に無作為に配置したりすることをいう。例えば、位置決め装置120が較正済みの場合、空間内のいくつかの位置点を無作為に選択し、位置決め装置120にこれらの位置点の信頼済み絶対座標を計算させ、記憶させることができる。位置決め装置120が変位されたことが疑われる場合には、タグをもう一度最初の位置点に置き、図8に示される実施例に従って、位置決め装置120が変位されたかどうかを判定すればよい。こうした設計の利点は、特徴位置点が無作為に選択されるため、攻撃者は最初に選択された位置点はどこかを知ることができず、隠しタグを損傷することは不可能なことである。前述の説明に関連して当業者のために追記すれば、「隠す」という用語には、視覚的な隠蔽のみならず、攻撃者がタグの位置を知ることを防止するためのあらゆる手段が含まれる。
【0066】
言うまでもなく、タグを配置することは単なる一実施例であって本発明はそれに限定されないため、手作業による測定を始めとする既知の方法のうち任意のものを使用することができる。
【0067】
続いて、ステップ220において、取得された位置決め装置120の相対座標に基づき、かつ位置決め装置120の較正パラメータを基準として、空間内における位置点の絶対座標が計算される。次に、図9を参照して、絶対座標の計算プロセスについて説明する。
【0068】
位置決め装置120の、例えば空間内におけるPODの較正パラメータが(x,y,z,θ)であるとする。ここで、(x,y,z)は基準空間内におけるPODの中心点の絶対座標であり、θは前述した較正済みPOD角度である。これらのパラメータは、式(4)〜(6)によって得ることができる。
【0069】
図9に示すように、基準空間内に4つの隠しタグが配置され、最初に計算された絶対座標が各々(x,y,z)〜(x,y,z)であるとする。これら4つの座標は、信頼済み絶対座標として記憶しておくことができる。説明の便宜上、これらの座標を「較正済み座標」と称する。
【0070】
位置決め装置が変位されたことが疑われる場合には、隠しタグの絶対座標(ここでは、「疑わしい絶対座標(x’,y’)」と称する)が、以下の等式群によって計算される。
【数8】

【0071】
ここで、(xri’,yri’)は、位置決め装置によって検知された、位置決め装置に対する隠しタグの現在の相対座標であり、rは「相対」を意味し、iは隠しタグの索引を意味し、nは隠しタグの個数を意味する。実際には、式(10)の解は式(7)の解と類似している。
【0072】
ここで、位置決め装置はz座標を直接検知できるので、z座標の計算は省略されていることに留意されたい。
【0073】
式(10)の解決法は、位置決め装置120の較正座標(x,y,z)を基準として実装されるため、タグが変位されておらず、位置決め装置120が変位されている場合には、取得されたタグの疑わしい絶対座標は、最初に記憶された信頼済み絶対座標と一致しない。逆に、位置決め装置120が変位されていない場合には、疑わしい絶対座標は最初に記憶された信頼済み絶対座標と一致する。
【0074】
隠しタグの疑わしい絶対座標(x’,y’)が取得された後は、位置決め装置が変位されたかどうかを判断するために、様々な手段を用いることができる。
【0075】
例えば、取得された絶対座標と信頼済み絶対座標との間の誤差を対象に統計をとり、誤差が予め定められたしきい値を上回る場合は、位置決め装置が変位されたと判断することができる。
【0076】
ここでいう「誤差」の基準としては、多数のものが可能である。取得された疑わしい絶対座標と信頼済み絶対座標との差の平均や、疑わしい絶対座標と信頼済み絶対座標との平均平方誤差(MSE:Mean Square Error)や、あるいはこれらの間の共分散を計算することができる。例えば、MSEを計算するプロセスは、式(11)として表現される。
【数9】

【0077】
ここで、式(11)は2次元のみを表しているが、これは位置決め装置の高さが変化することは稀なのでz座標の計算を省略しているためである。言うまでもなく、式(11)を3次元に拡張することは当業者には容易である。
【0078】
さらに、しきい値は使用条件に応じて選択される。しきい値を小さくすると感度は高くなるが、ささいな干渉でも位置決め装置が変位されたと解釈されてしまう。逆に、しきい値を大きくすると感度は低くなるが、潜在的な移動攻撃を見逃す恐れがある。
【0079】
前述の判断基準に加えて、他のパラメータも判定基準として使用することができる。あるいは、平均値を判断基準として使用することも可能である。一例としては、複数の位置点について、疑わしい絶対座標と信頼済み絶対座標との差を合計して平均する方法が挙げられる。さらに、重みを判断に使用することもできる。この場合は、重み付けの対象を、x座標のような特定のパラメータや、特定の位置決め装置とすることができる。例えば、複数の位置決め装置がある場合、いくつかの特定の位置決め装置に大きな重みを割り当てる。すると、これらの位置決め装置がわずかに変位されただけでも、MSEや他の判断基準において有意な影響が生じることになる。そのため、これらの特定の位置決め装置が変位されたかどうかの判断は、他より高感度になる。
【0080】
上記では本発明を数種類の判断基準についてのみ説明してきたが、本発明はこれらの判断基準に限定されず、データ変動を反映できる当該技術で既知の方法であれば使用することができる。
【0081】
本発明の他の実施例によれば、位置決め装置のオフセットを計算することにより、位置決め装置が変位されたかどうかを判定することが可能である。以下では、図10を参照して、本発明の他の実施例による、位置決め装置120が変位されたかどうかを判断するための方法について説明する。
【0082】
図10に示すように、ステップS310において、空間内における位置点の位置決め装置に対する相対座標が受信される。ステップS320において、位置点の信頼済み絶対座標と位置決め装置の較正パラメータが受信される。ステップS330において、相対座標、信頼済み絶対座標、および位置決め装置の較正パラメータに基づいて、位置決め装置のオフセットが計算される。ステップS340において、オフセットが予め定められたしきい値を上回る場合は、位置決め装置が変位されたと判定される。次に、図11および図12を参照して、ステップS310〜S340の実装プロセスを詳細に説明する。
【0083】
図11に示すように、PODのような位置決め装置が変位されると、その座標や角度などの当初の較正パラメータも変わる可能性があることを理解する必要がある。この図では、PODの当初の較正済み位置パラメータを(x,y,z,θ)とし、変更後の位置パラメータを(x+△x,y+△y,z+△z,θ+△θ)としている。このオフセット(△x,△y,△z,△θ)を計算すると、位置決め装置が変位されたかどうかが判定される。
【0084】
ここでもやはり△zの計算は省略されるが、当業者であればこの計算を3次元に拡張できるのは言うまでもない。
【0085】
未知値が3つの場合には、これら3つの未知値を解くために少なくとも3つの式が必要である。1つの位置点には2つの式が伴うため、位置決め装置のオフセットを決定するためには少なくとも2つの位置点が必要とされる。
【0086】
N個の位置点(例えば、N個の隠しタグ)が選択され、これらの位置点の初期絶対座標(すなわち、信頼済み絶対座標)を(x,y),(x,y),...(x,y)として表すとする。位置決め装置が変位された疑いがある場合は、位置決め装置に対するこれらN個の位置点の相対座標(xr1,yr1),(xr2,yr2),..(xrN,yrN)が、この位置決め装置を使用して取得される。
【0087】
その後、座標変換によって、位置決め装置の位置パラメータのオフセット(△x,△y,△z,△θ)が計算される。等式群(12)は、この具体的な計算プロセスを表現したものである。
【数10】

【0088】
等式群(12)は、計2N個の式から成る。そのため、Nが2であれば、オフセット(△x,△y,△θ)は解決される。
【0089】
同様に、本発明の一具体例においてはMSEのような誤差を判定基準として使用することができ、オフセットを特定のしきい値と比較することにより位置決め装置が変位されたかどうかが判断される。オフセットがこの特定のしきい値を上回る場合は、位置決め装置が変位されたと判定される。
【0090】
位置決め装置が変位された場合に、位置決め装置の取り付け角度に変化がないと判断されるなら、位置決め装置のオフセットは1つの位置点のみで判定できることは理解する必要がある。
【0091】
前述の説明における「信頼済み絶対座標」とは、事前に記憶された、少なくとも1つの位置点の信頼できる絶対座標である。本発明の他の実施例によれば、信頼済み絶対座標は、変位されていないと判断され、かつ位置決め装置120との重複カバー領域を有する他の位置決め装置によって取得することができる。よって、図7のシステムは、較正済みでかつ変位されていないと判定された他の位置決め装置を備えることができる。
【0092】
本発明のこの実施例によれば、位置点は位置決め装置120と他の位置決め装置との重複カバー領域内に存在し、他の位置決め装置は較正済みでかつ変位されていないと判定されている。位置点の信頼済み絶対座標は、当該他の位置決め装置によって取得することができる。
【0093】
以下では、図12を参照して、この実施例の具体的な実装について説明する。
【0094】
図12に示すように、重複カバー領域を共有する2つの位置決め装置(この例では、POD1およびPOD2)が存在し、POD1は較正済みで変位されていないと判定されているとする。POD1は較正済みなので、自装置のカバー領域内にある任意の位置点の絶対座標を座標変換よって直接または間接的に取得することができ、この絶対座標は信頼済み絶対座標ということになる。
【0095】
POD2が変位されたかどうかを判定するために、まずPOD1およびPOD2の重複カバー領域内の1つの位置点が選択される。そして、POD1がその位置点の絶対座標を信頼済み絶対座標として取得し、POD2は当該位置点の自装置に対する相対座標を取得する。これにより、POD2が変位されたかどうかを、図8および10に示す方法を使用し、かつPOD1によって特定された絶対座標、POD2に対する当該位置点の相対座標、および事前に取得されたPOD2の較正パラメータに基づいて、判定することが可能になる。
【0096】
POD2が変位されたかどうかの判定は、重複カバー領域内の複数の位置点を選択することによって行うのが望ましい。これにより、判断の精度が向上する。
【0097】
複数の位置点を選択する方法には、様々なものがある。例えば、重複カバー領域に複数タグを同時に配置し、POD1とPOD2がこれらのタグで表される特徴位置点の座標を受信できるようにする。本発明の当該実施例においては、この目的を達成するために、モバイルタグ(重複カバー領域内を移動できるタグ)を使用できるのが望ましい。この場合は、モバイルタグが移動する間に、モバイルタグが通過した特徴位置点を反映するデータ集合を取得することができる。
【0098】
ここで、各PODは、モバイルタグが重複カバー領域内を移動する際に、自装置に関連するモバイルタグのタプル[podID,rpos,t](podIDはPODの索引、rposはモバイルタグのPODに対する相対位置、およびtは現在時刻)を取得できるとする。時間の経過に伴って、このタプルのシーケンスが、[pod,rpos11,t]、[pod,rpos21,t]、[pod,rpos12,t],[pod,rpos22,t],...[pod,rpos1k,t]、[pod,rpos2k,t]として取得される。ここで、kは時刻位置点の個数を表し、タプル[pod,rpos1k,t]は時刻tにおけるモバイルタグのPOD1に対する相対位置rpos1kを表し、同様に、タプル[pod,rpos2k,t]は時刻tにおけるモバイルタグのPOD2に対する相対位置rpos2kを表す。各シーケンスについて、計2kのタプルを取得することが可能である。さらに、POD1は変位されていないと判定されているので、POD1に対応するタプルによって特定されたモバイルタグの位置は真である。
【0099】
ここで、時刻tにおけるモバイルタグのj番目のPODに対する相対座標を(xjrt’,yjrt’)とする。「r」は「relative(相対的)」を意味する。すると、等式群(13)によって、各PODについて、モバイルタグの絶対座標(xjt’,yjt’)を得ることができる。
【数11】

【0100】
ここで、(xPj,yPj,θPj)は、較正済みであるj番目のPODの当初の位置パラメータであり、事前に記憶しておくことができる。z座標の計算はここでは省略されるが、当業者であれば必要に応じてこの計算を容易に3次元に拡張できるのは言うまでもない。
【0101】
次に、信頼済みPOD1によって計算された位置点の信頼済み絶対座標を(x1t,y1t)として表し、POD2によって計算された、対応する特徴位置点の疑わしい絶対座標を(x2t’,y2t’)として表す。すると、これらの間の平均平方誤差(MSE)は式(14)で計算され、これによってPOD2が変位されたかどうかが判定される。
【数12】

【0102】
POD2が安全であるとの判定が下された後、POD3、POD4(図示せず)等々が、すべてのPODが判定されるまで順に判定される。
【0103】
また、PODが複数個ある場合には、疑わしいPODの変位オフセットは等式群(12)に示す方法を使用して判定できる。この場合、必要となる位置点の座標は、モバイルタグによって提供される。ここでは、詳細は省略する。
【0104】
本発明の他の実施例によれば、位置決め装置の変位が検出されると、ユーザに対してアラームが発行される。アラームの方法には警報音、警報信号の点滅が含まれるが、これに限定されるものではない。さらに、ディスプレイによって、様々な位置決め装置の正確な位置パラメータをグラフィックス形式や表形式でユーザに対して表示し、ユーザがこれらの位置パラメータに基づいて位置決め装置が変位されたかどうかを判定できるようにすることもできる。
【0105】
本発明のさらに他の実施例によれば、図8に示す方法と図10に示す方法が結合される。この場合は、まず、図8の方法に従って位置決め装置が変位されたかどうかが判定される。そして、位置決め装置が変位されている場合は、図10の方法に従って空間内における位置決め装置のオフセットが判定される。位置決め装置は、必要に応じて、取得されたオフセットに基づいて再較正される。
【0106】
本発明のさらに他の態様によれば、図13に示すように、位置決め装置が空間内で変位されたかどうかを判定するための装置400が提供される。装置400は、空間内における位置決め装置に対する位置点の相対座標、位置決め装置の較正パラメータ、および空間内における位置点の信頼済み絶対座標を受信するための受信手段410と、相対座標、較正パラメータ、および信頼済み絶対座標に基づいて、位置決め装置が変位されたかどうかを判断するための判断手段420とを備える。
【0107】
一具体例においては、図14に示すように、判断手段420は、較正パラメータおよび相対座標に基づいて空間内の位置点の絶対座標を計算するための絶対座標計算手段510と、計算された絶対座標と信頼済み絶対座標との誤差を計算するための誤差統計手段520と、誤差が予め定められたしきい値を上回る場合に位置決め装置が変位されたと判定するための判定手段530とを備えることができる。
【0108】
図15に示すように、他の具体例において、判断手段は、相対座標、較正パラメータ、および信頼済み絶対座標に基づいて位置決め装置のオフセットを計算するためのオフセット計算手段610と、オフセットが予め定められたしきい値を上回る場合に位置決め装置が変位されたと判定するための判定手段620とを備えることができる。
【0109】
本発明のさらに他の実施例によれば、図14に示す具体例と図15に示す具体例を結合することもできる。この場合は、まず、図14の具体例に従って位置決め装置が変位されたかどうかが判定される。そして、位置決め装置が変位されている場合は、図15の具体例に従って空間内における位置決め装置のオフセットが判定される。位置決め装置は、必要に応じて、取得されたオフセットに基づいて再較正される。
【0110】
本実施例の一具体例においては、位置点は絶対座標が予め決定された固定点であり、測距信号を発する機能を有するタグが当該位置点に配置され、当該タグからの測距信号に基づいて位置決め装置により相対座標が取得される。タグは隠蔽してもよい。
【0111】
本実施例の一具体例によれば、位置点は、位置決め装置と、較正済みで変位されていないと判定された他の位置決め装置との間の重複カバー領域内にランダムに位置し、位置点に測距信号の発生機能を有するタグが配置され、タグからの測距信号に基づいて位置決め装置により相対座標が取得され、タグからの測距信号に基づいて当該他の位置決め装置により信頼済み絶対座標が取得される。タグは、重複カバー領域内で移動可能としてもよい。
【0112】
本発明のさらに他の具体例によれば、図14に示す具体例と図15に示す具体例を結合することもできる。この場合は、まず、図14の具体例に従って位置決め装置が変位されたかどうかが判定される。そして、位置決め装置が変位されている場合は、図15の具体例に従って空間内における位置決め装置のオフセットが判定される。位置決め装置は、必要に応じて、取得されたオフセットに基づいて再較正される。
【0113】
装置400は、位置決め装置に内蔵することも、あるいは通信リンクを介して位置決め装置のリモートサーバまたはサーバに接続することも可能であることに、留意されたい。装置400はさらに、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、またはこれらの組み合わせとして実装することができる。
【0114】
本発明の方法および装置は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、またはこれらの組み合わせとして実装することができる。ハードウェア部分は専用論理を使用して実装でき、ソフトウェア部分は、メモリ内に格納しておき、マイクロプロセッサ、パーソナルコンピュータ(PC)、メインフレーム等の適切な命令実行システムによって実行することができる。
【0115】
上記では例示と説明を目的として本発明の明細書を提示したが、これは本発明を網羅的に示すことを意図するものではなく、本発明は開示された形態に限定されない。多数の変更や改変が可能なことは、当該技術に通常に精通した当業者には明らかであろう。
【0116】
したがって、上記の実施例は、本発明の原理と実用用途をより明快に説明すると共に、本発明の精神から逸脱することなくなされたすべての変更および改変が、付記される請求項に定義される本発明の保護範囲に含まれるということを、当該技術に通常に精通した当業者が理解できるように、選択され説明されたものである。
【符号の説明】
【0117】
100:システム
110:タグ
120:位置決め装置
130:サーバ
400:装置
410:受信手段
420:判定手段
510:絶対座標計算手段
520:誤差統計手段
530:判定手段
610:オフセット計算手段
620:判定手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測距信号を発する機能を有するタグと、
前記タグからの測距信号に基づいて、前記タグが位置する位置点の、位置決め装置に対する相対座標を取得するように構成された位置決め装置と、
空間内の位置点の相対座標、位置決め装置の較正パラメータ、および信頼済み絶対座標に基づいて、前記位置決め装置が変位されたかどうかを判断するように構成されたサーバと
を備えることを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記サーバが、
前記相対座標と較正パラメータに基づいて、前記空間内の前記位置点の絶対座標を計算し、
計算された絶対座標と前記信頼済み絶対座標との間の誤差の統計をとり、
前記誤差が所定のしきい値を上回る場合に位置決め装置が変位されたと判断するように構成されることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記サーバが、
前記相対座標、前記較正パラメータ及び前記信頼済み絶対座標に基づいて、前記空間内における前記位置決め装置のオフセットを計算し、
前記オフセットが所定のしきい値を上回る場合に位置決め装置が変位されたと判断するように構成されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記位置決め装置が、前記オフセットに基づいて再較正されることを特徴とする請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記較正パラメータが、前記空間内における前記位置決め装置の較正済み絶対座標と較正済み取り付け角度を含むことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記位置点が、絶対座標が予め決定された固定点であることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
較正済みで変位されていないと判定された他の位置決め装置を備え、
前記位置点が、前記位置決め装置と前記他の位置決め装置との間の重複カバー領域内にランダムに配置され、
前記信頼済み絶対座標が、前記タグからの測距信号に基づいて前記他の位置決め装置によって取得されることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
位置決め装置が空間内で変位されたかどうかを判定するための方法であって、
空間内における位置決め装置に対する位置点の相対座標、位置決め装置の較正パラメータ、および空間内の位置点における信頼済み絶対座標を受信するステップと、
相対座標、較正パラメータ、および信頼済み絶対座標に基づいて、位置決め装置が変位されたかどうかを判断するステップと
を有することを特徴とする方法。
【請求項9】
前記位置決め装置が変位されたかどうかを判断するステップが、
前記較正パラメータと前記相対座標とに基づいて、前記空間内の前記位置点の絶対座標を計算するステップと、
計算された絶対座標と前記信頼済み絶対座標との間の誤差の統計をとるステップと、
前記誤差が所定のしきい値を上回る場合に位置決め装置が変位されたと判断するステップとを含むことを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項10】
前記位置決め装置が変位されたかどうかを判断するステップが、
前記相対座標、前記較正パラメータ及び前記信頼済み絶対座標に基づいて、前記空間内における前記位置決め装置のオフセットを計算するステップと、
前記オフセットが所定のしきい値を上回る場合に位置決め装置が変位されたと判断するステップとを含むことを特徴とする請求項8又は請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記位置決め装置が、前記オフセットに基づいて再較正されることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記較正パラメータが、前記空間内における前記位置決め装置の較正済み絶対座標と較正済み取り付け角度を含むことを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記位置点が、絶対座標が予め決定された固定点であることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項14】
測距信号を発する機能を有するタグが、前記位置点に配置され、
前記相対座標が、前記タグからの測距信号に基づいて前記位置決め装置によって取得されることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記位置点が、前記位置決め装置と較正済みで変位されていないと判定された他の位置決め装置との間の重複カバー領域内にランダムに配置され、
測距信号を発する機能を有するタグが、前記位置点に配置され、
前記相対座標が、前記タグからの測距信号に基づいて前記位置決め装置によって取得され、
前記信頼済み絶対座標が、前記タグからの測距信号に基づいて前記他の位置決め装置によって取得されることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項16】
位置決め装置が空間内で変位されたかどうかを判定するための装置であって、
空間内における位置決め装置に対する位置点の相対座標、位置決め装置の較正パラメータ、および空間内の位置点における信頼済み絶対座標を受信するための受信手段と、
相対座標、較正パラメータ、および信頼済み絶対座標に基づいて、位置決め装置が変位されたかどうかを判断するための判断手段と
を備えることを特徴とする装置。
【請求項17】
前記判断手段が、
前記較正パラメータと前記相対座標とに基づいて、前記空間内の前記位置点の絶対座標を計算する絶対座標計算手段と、
計算された絶対座標と前記信頼済み絶対座標との間の誤差の統計をとる誤差統計手段と、
前記誤差が所定のしきい値を上回る場合に位置決め装置が変位されたと判断する第1の判定手段とを含むことを特徴とする請求項16に記載の装置。
【請求項18】
前記判断手段が、
前記相対座標、前記較正パラメータ及び前記信頼済み絶対座標に基づいて、前記空間内における前記位置決め装置のオフセットを計算するオフセット計算手段と、
前記オフセットが所定のしきい値を上回る場合に位置決め装置が変位されたと判断する第2の判定手段とを含むことを特徴とする請求項16に記載の装置。
【請求項19】
前記位置決め装置が、前記オフセットに基づいて再較正されることを特徴とする請求項18に記載の装置。
【請求項20】
前記位置点が、絶対座標が予め決定された固定点であり、
測距信号を発する機能を有するタグが、前記位置点に配置され、
前記相対座標が、前記タグからの測距信号に基づいて前記位置決め装置によって取得されることを特徴とする請求項16に記載の装置。
【請求項21】
前記位置点が、前記位置決め装置と較正済みで変位されていないと判定された他の位置決め装置との間の重複カバー領域内にランダムに配置され、
測距信号を発する機能を有するタグが、前記位置点に配置され、
前記相対座標が、前記タグからの測距信号に基づいて前記位置決め装置によって取得され、
前記信頼済み絶対座標が、前記タグからの測距信号に基づいて前記他の位置決め装置によって取得されることを特徴とする請求項16に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−185692(P2011−185692A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−50156(P2010−50156)
【出願日】平成22年3月8日(2010.3.8)
【出願人】(505418870)エヌイーシー(チャイナ)カンパニー, リミテッド (108)
【氏名又は名称原語表記】NEC(China)Co.,Ltd.
【Fターム(参考)】